電磁弁駆動装置
【課題】電磁弁に対してピーク電流およびホールド電流を供給する構成を簡素化し得る電磁弁駆動装置を提供する。
【解決手段】ピーク電流をコイル11a,12aに供給可能なコンデンサCが、直流電源Bからコイル11a,12aへの給電経路に対して並列に接続されている。そして、駆動期間の開始時にオン状態になることで、コンデンサCの高電圧を印加してピーク電流をコイル11a,12aに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで直流電源Bの電源電圧を印加してホールド電流をコイル11a,12aに供給するスイッチ22a,22bが、コイル11a,12aの低電位側(ローサイド)にそれぞれ配置されている。
【解決手段】ピーク電流をコイル11a,12aに供給可能なコンデンサCが、直流電源Bからコイル11a,12aへの給電経路に対して並列に接続されている。そして、駆動期間の開始時にオン状態になることで、コンデンサCの高電圧を印加してピーク電流をコイル11a,12aに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで直流電源Bの電源電圧を印加してホールド電流をコイル11a,12aに供給するスイッチ22a,22bが、コイル11a,12aの低電位側(ローサイド)にそれぞれ配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁を駆動する電磁弁駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁弁を駆動する電磁弁駆動装置は、設定された駆動期間の開始時に電磁弁を速やかに開弁させるためのピーク電流と、上記駆動期間が終了するまで電磁弁の開弁状態を保持するための電流であって上記ピーク電流よりも小さいホールド電流とを、電磁弁に供給するように構成されている。このように、ピーク電流およびホールド電流を電磁弁に供給可能な電磁弁駆動装置として、下記特許文献1に開示される電磁弁駆動装置が知られている。
【0003】
この電磁弁駆動装置は、設定された駆動期間の間、インジェクタ(電磁弁)のコイルの下流側に設けられた電磁弁駆動用のスイッチング素子をオンすると共に、上記駆動期間の開始時には、ピーク電流供給用のスイッチング素子もオンして、コンデンサに充電された高電圧をインジェクタのコイルに印加してピーク電流を供給し、その後は上記駆動期間の終了時まで、ホールド電流供給用のスイッチング素子をオン/オフ制御してインジェクタのコイルにホールド電流を供給するように構成されている。
【0004】
また、下記特許文献2に開示される電磁負荷の駆動装置でも同様に、インジェクタ駆動時に、ピーク電流供給用のトランジスタをオンすることで、コンデンサに充電された高電圧がインジェクタのコイルに印加されてピーク電流が供給される。このトランジスタのオン以後、ホールド電流供給用のトランジスタを周期的にオン/オフすることで、電源電圧による定電流(ホールド電流)がインジェクタのソレノイドに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−063993号公報
【特許文献2】特開2002−180878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電磁弁を速やかに開弁させるためのピーク電流と、電磁弁の開弁状態を保持するためのホールド電流との異なる大きさの電流を供給するためには、上記特許文献1,2に開示された構成のように、ピーク電流供給用としての電流供給回路(スイッチング素子等)とホールド電流供給用としての電流供給回路(スイッチング素子等)との双方を設ける必要がある。このように、両電流を供給する構成として少なくとも2つの電流供給回路を設ける必要があるため、電磁弁を駆動する駆動回路の簡素化が困難となり低コスト化等の阻害要因になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電磁弁に対してピーク電流およびホールド電流を供給する構成を簡素化し得る電磁弁駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の電磁弁駆動装置では、電磁弁のコイルに対して、設定された駆動期間の開始時に前記電磁弁を速やかに開弁させるためのピーク電流と、前記駆動期間が終了するまで前記電磁弁の開弁状態を保持するための電流であって前記ピーク電流よりも小さいホールド電流とを供給する電磁弁駆動装置であって、前記ピーク電流を前記コイルに供給可能なコンデンサと、直流電源から電源電圧よりも高い高電圧を生成して前記コンデンサを充電する充電手段と、を備え、前記コンデンサは、前記直流電源から前記コイルへの給電経路に対して並列に接続されて、前記コイルの高電位側および低電位側のいずれかに配置されて、前記駆動期間の開始時にオン状態になることで、前記コンデンサの高電圧を印加して前記ピーク電流を前記コイルに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで前記直流電源の電源電圧を印加して前記ホールド電流を前記コイルに供給するスイッチング素子を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電磁弁駆動装置において、前記コンデンサの静電容量は、前記コイルに対して前記ピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電磁弁駆動装置において、同時に前記開弁状態にならない2つ以上の電磁弁から構成される電磁弁群が駆動対象であって、前記スイッチング素子は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの高電位側に配置されて、前記電磁弁群のうち前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して前記ピーク電流および前記ホールド電流を供給可能に構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電磁弁駆動装置において、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段を備え、前記スイッチ手段は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のいずれか1つが前記開弁状態となる場合に、これら各電磁弁のコイルの低電位側を全て接地することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1または2に記載の電磁弁駆動装置において、同時に前記開弁状態にならない2つ以上の電磁弁から構成される電磁弁群が駆動対象であって、前記スイッチング素子は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの低電位側に配置されて、前記電磁弁群のうち前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して前記ピーク電流および前記ホールド電流を供給可能に構成されることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置において、前記電磁弁群に対して、前記コンデンサ、前記充電手段および前記スイッチング素子を一組とする電流供給手段が複数組設けられることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置において、1つの前記充電手段に対して複数の前記コンデンサを備え、前記充電手段は、前記複数のコンデンサを充電可能に構成され、前記スイッチング素子は、前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、前記複数のコンデンサのいずれか1つの高電圧を印加することで、前記ピーク電流を供給可能に構成されることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置において、複数の前記電磁弁群が駆動対象であって、これら各電磁弁群に対して、前記コンデンサ、前記充電手段および前記スイッチング素子を一組とする電流供給手段がそれぞれ設けられ、前記電流供給手段の前記スイッチング素子は、前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、同じ組の前記コンデンサの高電圧と他の組の前記コンデンサの高電圧とのいずれかを印加することで前記ピーク電流を供給可能に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、ピーク電流をコイルに供給可能なコンデンサが、直流電源からコイルへの給電経路に対して並列に接続されている。そして、駆動期間の開始時にオン状態になることで、コンデンサの高電圧を印加してピーク電流をコイルに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで直流電源の電源電圧を印加してホールド電流をコイルに供給するスイッチング素子が、コイルの高電位側(ハイサイド)および低電位側(ローサイド)のいずれかに配置されている。
【0017】
このように、スイッチング素子の動作に応じて、コンデンサの高電圧が印加されることでピーク電流が供給された後に、直流電源の電源電圧が印加されることでホールド電流が供給されるので、ピーク電流供給用およびホールド電流供給用の2つの電流供給回路を設けることなく、異なる大きさの電流をコイルに供給することができる。
したがって、電磁弁に対してピーク電流およびホールド電流を供給する構成を簡素化することができる。
【0018】
請求項2の発明では、コンデンサの静電容量は、コイルに対してピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されるため、コンデンサの低容量化が図られて、当該コンデンサの小型化や低コスト化を図ることができる。
【0019】
請求項3の発明では、スイッチング素子は、電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの高電位側に配置されて、電磁弁群のうち開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対してピーク電流およびホールド電流を供給可能に構成される。このように、同時に開弁状態にならない2つ以上の電磁弁が駆動対象であっても、各コイルの高電位側に配置されるスイッチング素子の動作に応じて、ピーク電流およびホールド電流を所望のコイルに供給することができる。
【0020】
請求項4の発明では、電磁弁群を構成する各電磁弁のいずれか1つが開弁状態となる場合に、スイッチ手段により、これら各電磁弁のコイルの低電位側が全て接地される。
【0021】
例えば、同時に開弁状態にならない2つの電磁弁が駆動対象である場合、従来構成では、両電磁弁のコイルの低電位側に、上記コンデンサまたは直流電源からの電圧を当該コイルに印加するためのスイッチ手段として、当該低電位側を接地するスイッチがそれぞれ設けられる。このような構成では、開弁状態にすべき一方の電磁弁のコイル(以下、駆動コイルという)の上記スイッチを閉状態(オン状態)にしてその低電位側を接地することで当該コイルに所定の電圧が印加されるとき、この所定の電圧が他方の電磁弁のコイル(以下、休止コイルという)にも印加されるものの、その低電位側のスイッチは開状態(オフ状態)のままである。このとき、休止コイルの高電位側および低電位側は、駆動コイルの高電位側と同電位になり、駆動コイルの低電位側は、接地電位になる。
【0022】
このため、上記休止コイルにおける高電位側の電圧と低電位側の電圧との平均電圧(以下、コモンモード電圧という)が、上記駆動コイルにおけるコモンモード電圧よりも大きくなる。コモンモード電圧が大きくなるほど電磁ノイズが大きくなるので、駆動していない電磁弁のコモンモード電圧に起因する電磁ノイズが、駆動している電磁弁の電磁ノイズよりも大きくなってしまう。
【0023】
そこで、請求項4の発明では、高電位側に配置されるスイッチング素子により開弁状態にすべき電磁弁のコイル(駆動コイル)に上記電圧が印加されるとき、スイッチ手段により、これら各電磁弁のコイルの低電位側が全て接地される。このため、開弁状態にすべき電磁弁と異なる電磁弁では、そのコイル(休止コイル)の高電位側および低電位側が接地電位となりコモンモード電圧が低くなるので、コモンモード電圧に起因する電磁ノイズの影響を抑制することができる。
【0024】
請求項5の発明では、スイッチング素子は、電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの低電位側に配置されて、電磁弁群のうち開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対してピーク電流およびホールド電流を供給可能に構成される。このように、同時に開弁状態にならない2つ以上の電磁弁が駆動対象であっても、各コイルの低電位側に配置されるスイッチング素子の動作に応じて、ピーク電流およびホールド電流を所望のコイルに供給することができる。
【0025】
請求項6の発明では、電磁弁群に対して、コンデンサ、充電手段およびスイッチング素子を一組とする電流供給手段が複数組設けられるため、1の電流供給手段のコンデンサが充電状態であっても他の電流供給手段の満充電状態のコンデンサを利用することで、電磁弁群のうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間を短縮することができる。
【0026】
請求項7の発明では、1つの充電手段に対して複数のコンデンサが設けられており、充電手段は、これら複数のコンデンサを充電可能に構成されている。そして、スイッチング素子は、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、複数のコンデンサのいずれか1つの高電圧を印加することで、ピーク電流を供給可能に構成される。これにより、1のコンデンサが充電状態であっても他の満充電状態のコンデンサを利用することができるので、電磁弁群のうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間を短縮することができる。
【0027】
請求項8の発明では、複数の電磁弁群が駆動対象であって、これら各電磁弁群に対して、コンデンサ、充電手段およびスイッチング素子を一組とする電流供給手段がそれぞれ設けられている。電流供給手段のスイッチング素子は、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、同じ組のコンデンサの高電圧と他の組のコンデンサの高電圧とのいずれかを印加することでピーク電流を供給可能に構成される。これにより、同じ組のコンデンサが充電状態であっても他の組の満充電状態のコンデンサを利用することができるので、電磁弁群のうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】電磁弁の駆動期間における電磁弁駆動装置の動作および作用を示すタイムチャートである。
【図3】図3(A)は、ピーク電流供給時の通電状態を説明するための説明図であり、図3(B)は、コンデンサへの回収状態を説明するための説明図である。
【図4】第2実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】第3実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】第4実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7(A)は、ピーク電流供給時の通電状態を説明するための説明図であり、図7(B)は、コンデンサへの回収状態を説明するための説明図である。
【図8】図8(A)は、図6の休止コイルにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートであり、図8(B)は、図6の駆動コイルにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートである。
【図9】電磁弁のコモンモード電圧に起因する電磁ノイズに対する低減の効果を説明するためのグラフである。
【図10】第5実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】第6実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】第7実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図13】従来の電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図14】図14(A)は、図13の休止コイルにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートであり、図14(B)は、図13の駆動コイルにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る電磁弁駆動装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る電磁弁駆動装置20を採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示す燃料噴射制御装置10は、例えば車両に搭載された2気筒エンジンの各気筒に燃料を噴射供給する電磁ソレノイド式ユニットインジェクタ(以下単に、電磁弁11,12という)と、これら各電磁弁11,12を駆動する電磁弁駆動装置20とを備えている。
【0031】
電磁弁11,12は、それぞれコイル11a,12aを有した常閉式(ノーマルクローズタイプ)の電磁弁であり、そのコイル11a,12aに通電されると、図示しない弁体がリターンスプリングの付勢力に抗して開弁位置に移動してその開弁状態が維持されることで、燃料噴射が行われる。また、コイル11a,12aの通電が遮断されると、弁体が元の閉弁位置に戻り、燃料噴射が停止される。これら両電磁弁11,12は、電磁弁駆動装置20により、同時に開弁状態にならないように駆動制御される。
【0032】
電磁弁駆動装置20は、出力端子として、電磁弁11のコイル11aの高電位側(ハイサイド)が接続される出力端子P1と、コイル11aの低電位側(ローサイド)が接続される出力端子P2と、電磁弁12のコイル12aの高電位側が接続される出力端子P3と、コイル12aの低電位側が接続される出力端子P4と、を備えている。また、電磁弁駆動装置20は、一端がグランドライン(GND=0V)に接続された電流検出用抵抗R1の他端と出力端子P2との間に直列に設けられた電磁弁11の駆動用のスイッチ22aと、電流検出用抵抗R1の他端と出力端子P4との間に直列に設けられた電磁弁12の駆動用のスイッチ22bと、アノードがグランドラインに接続されカソードが出力端子P1および出力端子P3に接続されたダイオードD2と、各電磁弁11,12のいずれかを速やかに開弁状態へ移行させるためのピーク電流をコイル11a,12aに流すためのコンデンサCと、コンデンサCの正極側を出力端子P1および出力端子P3に接続するためのスイッチ23と、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1を介してコンデンサCに供給することによりコンデンサCを充電するDCDCコンバータ24と、スイッチ22a,22b,23及びDCDCコンバータ24を制御するマイコン等からなる制御回路21とを備えている。なお、DCDCコンバータ24は、特許請求の範囲に記載の「充電手段」の一例に相当し得る。
【0033】
コンデンサCは、図1に示すように、直流電源Bからコイル11a,12aへの給電経路に対して並列に接続されており、このコンデンサCの静電容量は、コイル11a,12aに対して後述するピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されている。具体的には、例えば、ピーク電流が22A、コイル11a,12aのインダクタンスが80μHなどであることから、コンデンサCの静電容量は、33μFに設定されている。このように、コンデンサCの静電容量は、コイル11a,12aのインダクタンス等に応じて設定されるもので、好適には、20μF〜60μF程度に設定することができる。また、上述した各スイッチ22a,22b,23は、例えば、MOSFET等のスイッチング素子である。
【0034】
また、出力端子P2とコンデンサCの正極側との間には、コイル11aからコンデンサCへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサC側にして電流方向制御用のダイオードD3aが設けられている。また、出力端子P4とコンデンサCの正極側との間にも同様に、コイル12aからコンデンサCへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサC側にして電流方向制御用のダイオードD3bが設けられている。
【0035】
一方、DCDCコンバータ24は、直流電源Bとグランドラインとの間に直列に設けられたインダクタ24a及びスイッチ24bを備えており、そのスイッチ24bがオン/オフされることでインダクタ24aに蓄積したエネルギーがダイオードD1を通じてコンデンサCを充電する周知のものである。
【0036】
次に、上記のように構成された電磁弁駆動装置20の作用を、図2および図3を用いて説明する。図2は、電磁弁11の駆動期間における電磁弁駆動装置20の動作および作用を示すタイムチャートであり、図2(A)は、コンデンサCの電圧変化を示し、図2(B)は、コイル11aの電流変化を示し、図2(C)は、スイッチ23のオン/オフ制御状態を示し、図2(D)は、スイッチ22aのオン/オフ制御状態を示す。図3(A)は、ピーク電流供給時の通電状態を説明するための説明図であり、図3(B)は、コンデンサCへの回収状態を説明するための説明図である。
【0037】
まず、制御回路21は、エンジン回転数やアクセル開度などのエンジン運転情報に基づいて、各気筒毎に、電磁弁11,12のコイル11a,12aに通電すべき駆動期間を設定し、コイル11aに通電すべき駆動期間だけスイッチ23をオンする。
【0038】
また、制御回路21は、両電磁弁11,12の駆動期間が始まる前に、DCDCコンバータ24を作動させて、コンデンサCを、そのコンデンサの充電電圧(正極側の電圧)が目標電圧Vc1になるまで充電させる。この目標電圧Vc1は、コイル11a,12aに対してピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されるもので、本実施形態では、例えば、50Vに設定されている。
【0039】
そして、制御回路21は、何れかの電磁弁の駆動期間の開始タイミングになると、その電磁弁に対応するスイッチをオンし、それと同時にスイッチ23もオンする。例えば、電磁弁11の駆動期間の開始タイミングになると、図2(C),(D)に示すように、スイッチ22aをオンし、それと同時にスイッチ23もオンする。
【0040】
このため、コンデンサCの正極側がスイッチ23を介して出力端子P1に接続されると、コンデンサCに充電されていたエネルギーがコイル11aに放出されて、コンデンサCの高電圧がコイル11aに印加される(図3(A)の矢印α1参照)。そして、このとき、図2(A),(B)に示すように、コイル11aには、コンデンサCの放電により、電磁弁11を速やかに開弁状態へと移行させるための大電流、すなわち、ピーク電流が流れる。
【0041】
このようなコンデンサCの放電に際し、高電位となる出力端子P1側から電源ライン側への回り込みは、ダイオードD2によって防止される。また更に、スイッチ22aがオンされても、コンデンサCの正極側からエネルギー回収用経路を介してスイッチ22aへ直接電流が流れてしまうことは、ダイオードD3aにより防止される。
【0042】
そして、制御回路21は、スイッチ22aをオンした後において、コイル11aに流れるコイル電流を抵抗R1に生じる電圧により検出し、そのコイル電流がピーク電流の目標電流値Ipになると、スイッチ22aをオフする。なお、コイル11aに流れるコイル電流を検出することなく、スイッチ22aを一定時間だけオンするように構成されてもよい。
【0043】
このようにして、電磁弁11の駆動期間の開始時には、スイッチ22aがオンされて、コンデンサCの蓄積エネルギーがコイル11aに放出され、これにより、そのコイル11aにピーク電流が流れて、電磁弁11の開弁応答が早まる。
【0044】
そして、制御回路21は、スイッチ22aをオフした後において、抵抗R1に生じる電圧により検出されるコイル電流が、上記ピーク電流の目標電流値よりも小さい一定電流Ihとなるように、スイッチ22aのスイッチング(オン/オフ制御)を開始する。この一定電流は、電磁弁の開弁状態を保持するための電流(以下、ホールド電流という)であって、コイル電流がピーク電流の目標電流値Ipに達した後は、スイッチ22aのオン/オフが繰り返されて、コイル電流の平均値が上記ホールド電流に制御されることとなる(図2(B)参照)。
【0045】
このようなスイッチ22aによる定電流制御時は、コンデンサCに蓄えたエネルギーと直流電源Bの電源電圧VBとにより、スイッチ23を通じてコイル11aに上記ホールド電流が流れ、そのホールド電流により、電磁弁11が開弁状態に保持される。すなわち、スイッチ22aは、コイル11aの低電位側に配置されて、駆動期間の開始時にオン状態になることで、コンデンサCの高電圧を印加してピーク電流をコイル11aに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで直流電源Bの電源電圧を印加してホールド電流をコイル11aに供給するスイッチング素子として機能する。
【0046】
また、ダイオードD2は、スイッチ23がオンしている状態で、スイッチ22aがオフされた時に、グランドライン側からコイル11aに電流を還流させるための電流還流用ダイオードとし機能する。このため、スイッチ22aのオン/オフ制御中に該スイッチ22aがオフされた際において、コイル11aに流れる電流は、そのダイオードD2を介して還流する電流である。
【0047】
その後、駆動期間が終了すると、制御回路21は、スイッチ23をオフすると共に、スイッチ22aのオン/オフ制御(即ち、定電流制御)を終了して、そのスイッチ22aもオフ状態に保持する。すると、コイル11aへの通電が停止して電磁弁11が閉弁し、その電磁弁11による燃料噴射が終了される。
【0048】
また、スイッチ22a及びスイッチ23がオフされると、コイル11aにフライバックエネルギーが発生するが、そのフライバックエネルギーは、コイル11aの出力端子P2からエネルギー回収用のダイオードD3aを通じてコンデンサCへ、電流の形で回収される(図3(B)の矢印α2参照)。
【0049】
一方、制御回路21は、スイッチ23をオフした後に、DCDCコンバータ24によりコンデンサCの充電を再開させる。これは、次回の電磁弁駆動に備えるためである。なお、制御回路21は、スイッチ23をオンしている間は、コンデンサCからの放電電流を安定させるために、DCDCコンバータ24によるコンデンサCの充電動作を禁止する。
【0050】
このように電磁弁11が閉弁した後に、電磁弁12の駆動期間の開始タイミングになると、スイッチ22aがオフされた状態でスイッチ22bをオンし、それと同時にスイッチ23もオンする。
【0051】
このため、コンデンサCの正極側がスイッチ23を介して出力端子P3に接続されると、コンデンサCに充電されていたエネルギーがコイル12aに放出されて、コンデンサCの高電圧がコイル12aに印加され、ピーク電流がコイル12aに流れる。そして、制御回路21は、スイッチ22bをオンした後において、コイル12aに流れるコイル電流がピーク電流の目標電流値になると、スイッチ22bをオフする。このようにして、電磁弁12の駆動期間の開始時には、スイッチ22bがオンされて、コンデンサCの蓄積エネルギーがコイル12aに放出され、これにより、そのコイル12aにピーク電流が流れて、電磁弁12の開弁応答が早まる。
【0052】
このようなコンデンサCの放電に際し、高電位となる出力端子P3側から電源ライン側への回り込みは、ダイオードD2によって防止される。また更に、スイッチ22bがオンされても、コンデンサCの正極側からエネルギー回収用経路を介してスイッチ22bへ直接電流が流れてしまうことは、ダイオードD3bにより防止される。
【0053】
そして、制御回路21は、スイッチ22bをオフした後において、抵抗R1に生じる電圧により検出されるコイル電流が、上記ホールド電流となるように、スイッチ22bのオン/オフ制御を行うことで、電磁弁12が開弁状態に保持される。
【0054】
また、ダイオードD2は、スイッチ23がオンしている状態で、スイッチ22bがオフされた時に、グランドライン側からコイル12aに電流を還流させるための電流還流用ダイオードとし機能する。このため、スイッチ22bのオン/オフ制御中に該スイッチ22bがオフされた際において、コイル12aに流れる電流は、そのダイオードD2を介して還流する電流である。
【0055】
その後、駆動期間が終了すると、制御回路21は、スイッチ23をオフすると共に、スイッチ22bのオン/オフ制御(即ち、定電流制御)を終了して、そのスイッチ22bもオフ状態に保持する。すると、コイル12aへの通電が停止して電磁弁12が閉弁し、その電磁弁12による燃料噴射が終了される。
【0056】
また、スイッチ22b及びスイッチ23がオフされると、コイル12aにフライバックエネルギーが発生するが、そのフライバックエネルギーは、コイル12aの出力端子P4からエネルギー回収用のダイオードD3bを通じてコンデンサCへ、電流の形で回収される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る電磁弁駆動装置20では、ピーク電流をコイル11a,12aに供給可能なコンデンサCが、直流電源Bからコイル11a,12aへの給電経路に対して並列に接続されている。そして、駆動期間の開始時にオン状態になることでコンデンサCの高電圧を印加してピーク電流をコイル11a,12aに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで直流電源Bの電源電圧を印加してホールド電流をコイル11a,12aに供給するスイッチ22a,22bが、コイル11a,12aの低電位側(ローサイド)にそれぞれ配置されている。
【0058】
このように、スイッチ22a,22bの動作に応じて、コンデンサCの高電圧が印加されることでピーク電流が供給された後に、直流電源Bの電源電圧が印加されることでホールド電流が供給されるので、ピーク電流供給用およびホールド電流供給用の2つの電流供給回路を設けることなく、異なる大きさの電流をコイル11a,12aに供給することができる。
したがって、電磁弁11,12に対してピーク電流およびホールド電流を供給する構成を簡素化することができる。このように簡素化されることで、電磁弁駆動装置の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0059】
また、コンデンサCの静電容量は、コイル11a,12aに対してピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されるため、コンデンサCの低容量化が図られて、当該コンデンサCの小型化や低コスト化を図ることができる。
【0060】
なお、電磁弁11の駆動期間では、スイッチ23をオンした状態でスイッチ22aをオン/オフ制御することに限らず、スイッチ23およびスイッチ22aの双方を同じタイミングでオン/オフ制御してもよい。また、電磁弁12の駆動期間では、スイッチ23をオンした状態でスイッチ22bをオン/オフ制御することに限らず、スイッチ23およびスイッチ22bの双方を同じタイミングでオン/オフ制御してもよい。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る電磁弁駆動装置について図を参照して説明する。図4は、第2実施形態に係る電磁弁駆動装置20aを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
本第2実施形態に係る電磁弁駆動装置20aは、上記第1実施形態に対して、4気筒エンジンの各気筒に燃料を噴射供給する電磁弁であって同時に開弁状態にならない4つの電磁弁11〜14から構成される電磁弁群Gを駆動対象として駆動制御するように構成されている。
【0062】
具体的には、図4に示すように、電磁弁駆動装置20aは、出力端子として、出力端子P1〜P4に加えて、電磁弁13のコイル13aの高電位側(ハイサイド)が接続される出力端子P5と、コイル13aの低電位側(ローサイド)が接続される出力端子P6と、電磁弁14のコイル14aの高電位側が接続される出力端子P7と、コイル14aの低電位側が接続される出力端子P8と、を備えている。また、電磁弁駆動装置20aは、スイッチ22a,22bに加えて、電流検出用抵抗R1の他端と出力端子P6との間に直列に設けられた電磁弁13の駆動用のスイッチ22cと、電流検出用抵抗R1の他端と出力端子P8との間に直列に設けられた電磁弁14の駆動用のスイッチ22dと、を備えている。
【0063】
また、出力端子P6とコンデンサCの正極側との間には、コイル13aからコンデンサCへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサC側にして電流方向制御用のダイオードD3cが設けられている。また、出力端子P8とコンデンサCの正極側との間にも同様に、コイル14aからコンデンサCへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサC側にして電流方向制御用のダイオードD3dが設けられている。
【0064】
このように、第2実施形態に係る電磁弁駆動装置20aでは、スイッチ22a〜22dは、電磁弁群Gを構成する各電磁弁11〜14のコイル11a〜14aの低電位側に配置されて、電磁弁群Gのうち開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対してピーク電流およびホールド電流を供給可能に構成される。このように、同時に開弁状態にならない4つの電磁弁が駆動対象であっても、各コイルの低電位側に配置されるいずれかのスイッチの動作に応じて、ピーク電流およびホールド電流を所望のコイルに供給することができる。なお、電磁弁駆動装置20aが駆動対象とする電磁弁群Gは、同時に開弁状態にならない4つの電磁弁から構成されることに限らず、同時に開弁状態にならない3つの電磁弁から構成されてもよいし、同時に開弁状態にならない5つ以上の電磁弁から構成されてもよい。
【0065】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る電磁弁駆動装置について図5を参照して説明する。図5は、第3実施形態に係る電磁弁駆動装置20bを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
本第3実施形態に係る電磁弁駆動装置20bは、上述した電磁弁群Gに対して、コンデンサ、DCDCコンバータ(充電手段)およびスイッチを一組とする電流供給手段が、上記電磁弁群Gに対してそれぞれ電流供給可能に2組設けられるように、構成されている。
【0066】
具体的には、図5に示すように、電磁弁駆動装置20bは、ピーク電流をコイル11a〜14aに流すための第1コンデンサCaと、この第1コンデンサCaの正極側を出力端子P1,P3,P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ25aと、このスイッチ25aと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4aと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1aを介して第1コンデンサCaに供給することにより第1コンデンサCaを充電するDCDCコンバータ24と、を有する第1電流供給手段31を備えている。また、電磁弁駆動装置20bは、ピーク電流をコイル11a〜14aに流すための第2コンデンサCbと、この第2コンデンサCbの正極側を出力端子P1,P3,P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ25bと、このスイッチ25bと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4bと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1bを介して第2コンデンサCbに供給することにより第2コンデンサCbを充電するDCDCコンバータ24cと、を有する第2電流供給手段32を備えている。
【0067】
このように、第3実施形態に係る電磁弁駆動装置20bでは、電磁弁群Gに対して、コンデンサ、DCDCコンバータ(充電手段)およびスイッチを一組とする第1電流供給手段31および第2電流供給手段32が設けられるため、第1電流供給手段31の第1コンデンサCaが充電状態であっても、スイッチ25bをオン状態にして第2電流供給手段32の満充電状態の第2コンデンサCbを利用することができる。このように、スイッチ25bがオン状態になることで第2コンデンサCbからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD4aにより、各出力端子P1,P3,P5,P7の電圧が第1コンデンサCaの電圧より大きいためスイッチ25aの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。また、第2電流供給手段32の第2コンデンサCbが充電状態であっても、スイッチ25aをオン状態にして第1電流供給手段31の満充電状態の第1コンデンサCaを利用することができる。このように、スイッチ25aがオン状態になることで第1コンデンサCaからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD4bにより、各出力端子P1,P3,P5,P7の電圧が第2コンデンサCbの電圧より大きいためスイッチ25bの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。
【0068】
これにより、電磁弁群Gのうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間(インターバル時間)を短縮することができる。なお、電磁弁駆動装置20bが駆動対象とする電磁弁群Gは、同時に開弁状態にならない4つの電磁弁から構成されることに限らず、同時に開弁状態にならない3つの電磁弁から構成されてもよいし、同時に開弁状態にならない5つ以上の電磁弁から構成されてもよい。
【0069】
なお、電流供給手段は、電磁弁群Gに対してそれぞれ電流供給可能に2組設けられることに限らず、上記インターバル時間を更に短縮するため、3組以上設けられてもよい。
【0070】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る電磁弁駆動装置について図を参照して説明する。図6は、第4実施形態に係る電磁弁駆動装置20cを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。図7(A)は、ピーク電流供給時の通電状態を説明するための説明図であり、図7(B)は、コンデンサCへの回収状態を説明するための説明図である。図8(A)は、図6の休止コイル12aにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートであり、図8(B)は、図6の駆動コイル11aにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートである。
【0071】
図6に示すように、本第4実施形態に係る電磁弁駆動装置20cは、上記第1実施形態にて述べたスイッチ22a,22b、ダイオードD2、スイッチ23に代えて、電流検出用抵抗R1の他端と出力端子P2,P4との間に直列に設けられたスイッチ22と、アノードがグランドラインに接続されカソードが出力端子P1に接続されたダイオードD2aと、アノードがグランドラインに接続されカソードが出力端子P3に接続されたダイオードD2bと、コンデンサCの正極側を出力端子P1に接続するためのスイッチ23aと、コンデンサCの正極側を出力端子P3に接続するためのスイッチ23bと、を備えている。
【0072】
ここで、スイッチ22は、両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段として機能し、両電磁弁11,12のいずれか1つが開弁状態となる場合に、これら両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側を全て接地するように構成されている。
【0073】
また、出力端子P2,P4とコンデンサCの正極側との間には、コイル11a,12aからコンデンサCへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサC側にして電流方向制御用のダイオードD3が設けられている。
【0074】
次に、上記のように構成された電磁弁駆動装置20cの作用を以下に説明する。
まず、制御回路21は、エンジン回転数やアクセル開度などのエンジン運転情報に基づいて、各気筒毎に、電磁弁11,12のコイル11a,12aに通電すべき駆動期間を設定し、コイル11aに通電すべき駆動期間だけスイッチ22をオンする。
【0075】
そして、制御回路21は、何れかの電磁弁の駆動期間の開始タイミングになると、その電磁弁に対応するスイッチをオンし、それと同時にスイッチ22もオンする。例えば、電磁弁11の駆動期間の開始タイミングになると、スイッチ22をオンし、それと同時にスイッチ23aもオンする。
【0076】
このため、コンデンサCの正極側がスイッチ23aを介して出力端子P1に接続されると、コンデンサCに充電されていたエネルギーがコイル11aに放出されて、コンデンサCの高電圧がコイル11aに印加される(図7(A)の矢印α3参照)。そして、このとき、コイル11aには、コンデンサCの放電により、電磁弁11を速やかに開弁状態へと移行させるための大電流、すなわち、ピーク電流が流れる。
【0077】
このようなコンデンサCの放電に際し、高電位となる出力端子P1側から電源ライン側への回り込みは、ダイオードD2aによって防止される。また更に、スイッチ22がオンされても、コンデンサCの正極側からエネルギー回収用経路を介してスイッチ22へ直接電流が流れてしまうことは、ダイオードD3により防止される。
【0078】
そして、制御回路21は、スイッチ23aをオンした後において、コイル11aに流れるコイル電流を抵抗R1に生じる電圧により検出し、そのコイル電流がピーク電流の目標電流値Ipになると、スイッチ23aをオフする。なお、コイル11aに流れるコイル電流を検出することなく、スイッチ23aを一定時間だけオンするように構成されてもよい。
【0079】
このようにして、電磁弁11の駆動期間の開始時には、スイッチ23aがオンされて、コンデンサCの蓄積エネルギーがコイル11aに放出され、これにより、そのコイル11aにピーク電流が流れて、電磁弁11の開弁応答が早まる。
【0080】
そして、制御回路21は、スイッチ23aをオフした後において、抵抗R1に生じる電圧により検出されるコイル電流が、上記ピーク電流の目標電流値よりも小さい一定電流Ihとなるように、スイッチ23aのスイッチング(オン/オフ制御)を開始する。コイル電流がピーク電流の目標電流値Ipに達した後は、スイッチ23aのオン/オフが繰り返されて、コイル電流の平均値が上記ホールド電流に制御されることとなる。
【0081】
このようなスイッチ23aによる定電流制御時は、コンデンサCに蓄えたエネルギーと直流電源Bの電源電圧VBとにより、スイッチ23aを通じてコイル11aに上記ホールド電流が流れ、そのホールド電流により、電磁弁11が開弁状態に保持される。すなわち、スイッチ23aは、コイル11aの高電位側に配置されて、駆動期間の開始時にオン状態になることで、コンデンサCの高電圧を印加してピーク電流をコイル11aに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで直流電源Bの電源電圧を印加してホールド電流をコイル11aに供給するスイッチング素子として機能する。
【0082】
また、ダイオードD2aは、スイッチ22がオンしている状態で、スイッチ23aがオフされた時に、グランドライン側からコイル11aに電流を還流させるための電流還流用ダイオードとし機能する。このため、スイッチ23aのオン/オフ制御中に該スイッチ23aがオフされた際において、コイル11aに流れる電流は、そのダイオードD2aを介して還流する電流である。
【0083】
その後、駆動期間が終了すると、制御回路21は、スイッチ22をオフすると共に、スイッチ23aのオン/オフ制御(即ち、定電流制御)を終了して、そのスイッチ23aもオフ状態に保持する。すると、コイル11aへの通電が停止して電磁弁11が閉弁し、その電磁弁11による燃料噴射が終了される。
【0084】
また、スイッチ22及びスイッチ23aがオフされると、コイル11aにフライバックエネルギーが発生するが、そのフライバックエネルギーは、コイル11aの出力端子P2からエネルギー回収用のダイオードD3aを通じてコンデンサCへ、電流の形で回収される(図7(B)の矢印α4参照)。
【0085】
このように電磁弁11が閉弁してコンデンサCが再び満充電状態になった後に、電磁弁12の駆動期間の開始タイミングになると、スイッチ23aがオフされた状態でスイッチ23bをオンし、それと同時にスイッチ22もオンする。
【0086】
このため、コンデンサCの正極側がスイッチ23bを介して出力端子P3に接続されると、コンデンサCに充電されていたエネルギーがコイル12aに放出されて、コンデンサCの高電圧がコイル12aに印加され、ピーク電流がコイル12aに流れる。そして、制御回路21は、スイッチ23bをオンした後において、コイル12aに流れるコイル電流がピーク電流の目標電流値になると、スイッチ23bをオフする。このようにして、電磁弁12の駆動期間の開始時には、スイッチ23bがオンされて、コンデンサCの蓄積エネルギーがコイル12aに放出され、これにより、そのコイル12aにピーク電流が流れて、電磁弁12の開弁応答が早まる。
【0087】
このようなコンデンサCの放電に際し、高電位となる出力端子P3側から電源ライン側への回り込みは、ダイオードD2bによって防止される。
【0088】
そして、制御回路21は、スイッチ23bをオフした後において、抵抗R1に生じる電圧により検出されるコイル電流が、上記ホールド電流となるように、スイッチ23bのオン/オフ制御を行うことで、電磁弁12が開弁状態に保持される。
【0089】
また、ダイオードD2bは、スイッチ22がオンしている状態で、スイッチ23bがオフされた時に、グランドライン側からコイル12aに電流を還流させるための電流還流用ダイオードとし機能する。このため、スイッチ23bのオン/オフ制御中に該スイッチ23bがオフされた際において、コイル12aに流れる電流は、そのダイオードD2bを介して還流する電流である。
【0090】
その後、駆動期間が終了すると、制御回路21は、スイッチ22をオフすると共に、スイッチ23bのオン/オフ制御(即ち、定電流制御)を終了して、そのスイッチ23bもオフ状態に保持する。すると、コイル12aへの通電が停止して電磁弁12が閉弁し、その電磁弁12による燃料噴射が終了される。
【0091】
また、スイッチ23b及びスイッチ22がオフされると、コイル12aにフライバックエネルギーが発生するが、そのフライバックエネルギーは、コイル12aの出力端子P4からエネルギー回収用のダイオードD3を通じてコンデンサCへ、電流の形で回収される。
【0092】
このように、本実施形態に係る電磁弁駆動装置20cでは、スイッチ23a,23bは、各電磁弁11,12のコイル11a,12aの高電位側に配置されて、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対してピーク電流およびホールド電流を供給可能に構成されている。このようにしてもピーク電流およびホールド電流を供給する構成が簡素化されて、各コイルの高電位側に配置されるスイッチ23a,23bの動作に応じて、ピーク電流およびホールド電流を所望のコイルに供給することができる。
【0093】
なお、電磁弁11の駆動期間では、スイッチ22をオンした状態でスイッチ23aをオン/オフ制御することに限らず、スイッチ23aをオンした状態でスイッチ22をオン/オフ制御してもよい。また、電磁弁12の駆動期間では、スイッチ22をオンした状態でスイッチ23bをオン/オフ制御することに限らず、スイッチ23bをオンした状態でスイッチ22をオン/オフ制御してもよい。
【0094】
次に、両コイル11a,12aの低電位側を全て接地するように構成されるスイッチ22の作用効果について、図13に示す従来の電磁弁駆動装置100を比較対象として、以下に説明する。図13は、従来の電磁弁駆動装置100を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。図14(A)は、図13の休止コイル12aにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートであり、図14(B)は、図13の駆動コイル11aにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートである。
【0095】
図13に示す従来の電磁弁駆動装置100は、例えば、上記第1実施形態における電磁弁駆動装置20に対して、ホールド電流供給用としてのスイッチング素子101(電流供給回路)等を有するように構成されている。この場合、両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側には、上記コンデンサCまたは直流電源Bからの電圧を当該コイル11a,12aに印加するためのスイッチ手段として、当該低電位側を接地するスイッチ110,120がそれぞれ設けられる。
【0096】
このような構成では、開弁状態にすべき一方の電磁弁のコイル(駆動コイル)の上記スイッチを閉状態(オン状態)にしてその低電位側を接地することで当該コイルに所定の電圧が印加されるとき、この所定の電圧が他方の電磁弁のコイル(休止コイル)にも印加されるものの、その低電位側のスイッチは開状態(オフ状態)のままである。このとき、休止コイルの高電位側および低電位側は、駆動コイルの高電位側と同電位になり、駆動コイルの低電位側は、接地電位になる。
【0097】
このため、上記休止コイルにおける高電位側の電圧と低電位側の電圧との平均電圧、すなわちコモンモード電圧が、上記駆動コイルにおけるコモンモード電圧よりも大きくなる。コモンモード電圧が大きくなるほど電磁ノイズが大きくなるので、駆動していない電磁弁のコモンモード電圧に起因する電磁ノイズが、駆動している電磁弁の電磁ノイズよりも大きくなってしまう。
【0098】
例えば、電磁弁11の駆動期間であることから、コイル11aが駆動コイルでありコイル12aが休止コイルである場合には、図14(A),(B)に示すように、休止コイル12aにおけるコモンモード電圧(図14(A))は、駆動コイル11aにおけるコモンモード電圧(図14(B))よりも大きくなる。
【0099】
そこで、本実施形態では、高電位側に配置されるスイッチ23a,23bにより開弁状態にすべき電磁弁のコイル(駆動コイル)に上記電圧が印加されるとき、スイッチ22により、これら両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側が全て接地される。このため、開弁状態にすべき電磁弁と異なる電磁弁では、そのコイル(休止コイル)の高電位側および低電位側が接地電位となる。
【0100】
例えば、電磁弁11の駆動期間であることから、コイル11aが駆動コイルでありコイル12aが休止コイルである場合には、休止コイル12aにおけるコモンモード電圧は、図8(A)に示すように0(V)となり、駆動コイル11aにおけるコモンモード電圧(図8(B))よりも小さくなる。
【0101】
ここで、上述した電磁ノイズの低減の効果を図9を用いて説明する。図9は、電磁弁のコモンモード電圧に起因する電磁ノイズに対する低減の効果を説明するためのグラフである。図9において、符号T1は、本実施形態に係る電磁弁駆動装置20cにおける駆動コイル11aおよび休止コイル12aでのコモンモード電圧を周波数分析したAM帯(510kHz〜1710kHz)での最大値を示す。また、符号T2は、従来の電磁弁駆動装置100における駆動コイル11aおよび休止コイル12aでのコモンモード電圧を周波数分析したAM帯(510kHz〜1710kHz)での最大値を示す。
【0102】
図9に示すように、本実施形態に係る電磁弁駆動装置20c(図9の符号T1)の方が、従来の電磁弁駆動装置100(図9の符号T2)よりも15dBほど低くなっていることがわかる。
このように、休止コイルの高電位側および低電位側が接地電位となりコモンモード電圧が低くなるので、コモンモード電圧に起因する電磁ノイズの影響を抑制することができる。
【0103】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る電磁弁駆動装置について図を参照して説明する。図10は、第5実施形態に係る電磁弁駆動装置20dを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
本第5実施形態に係る電磁弁駆動装置20dは、上記第4実施形態に対して、4気筒エンジンの各気筒に燃料を噴射供給する電磁弁であって同時に開弁状態にならない4つの電磁弁11〜14から構成される電磁弁群Gが駆動対象であって、この電磁弁群Gに対して、コンデンサ、DCDCコンバータ(充電手段)およびスイッチを一組とする電流供給手段が、上記電磁弁群Gに対してそれぞれ電流供給可能に2組設けられるように、構成されている。
【0104】
具体的には、図10に示すように、電磁弁駆動装置20dは、出力端子として、出力端子P1〜P4に加えて、電磁弁13のコイル13aの高電位側(ハイサイド)が接続される出力端子P5と、コイル13aの低電位側(ローサイド)が接続される出力端子P6と、電磁弁14のコイル14aの高電位側が接続される出力端子P7と、コイル14aの低電位側が接続される出力端子P8と、を備えている。また、電磁弁駆動装置20aは、スイッチ23a,23bに加えて、コンデンサの正極側を出力端子P5に接続するためのスイッチ23cと、コンデンサの正極側を出力端子P7に接続するためのスイッチ23dと、を備えている。
【0105】
このため、スイッチ22は、各電磁弁11〜14のコイル11a〜14aの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段として機能し、各電磁弁11〜14のいずれか1つが開弁状態となる場合に、これら各電磁弁11〜14のコイル11a〜14aの低電位側を全て接地するように機能する。
【0106】
また、電磁弁駆動装置20dは、ピーク電流をコイル11a〜14aに流すための第1コンデンサCaと、この第1コンデンサCaの正極側を出力端子P1,P3,P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ25aと、このスイッチ25aと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4aと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1aを介して第1コンデンサCaに供給することにより第1コンデンサCaを充電するDCDCコンバータ24と、を有する第1電流供給手段31を備えている。また、電磁弁駆動装置20dは、ピーク電流をコイル11a〜14aに流すための第2コンデンサCbと、この第2コンデンサCbの正極側を出力端子P1,P3,P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ25bと、このスイッチ25bと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4bと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1bを介して第2コンデンサCbに供給することにより第2コンデンサCbを充電するDCDCコンバータ24cと、を有する第2電流供給手段32を備えている。
【0107】
このように構成される電磁弁駆動装置20dでは、電磁弁群Gに対して、コンデンサ、DCDCコンバータ(充電手段)およびスイッチを一組とする第1電流供給手段31および第2電流供給手段32の2組が設けられるため、第1電流供給手段31の第1コンデンサCaが充電状態であっても、スイッチ25bをオン状態にすることで第2電流供給手段32の満充電状態の第2コンデンサCbを利用することができる。このように、スイッチ25bがオン状態になることで第2コンデンサCbからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD4aにより、各出力端子P1,又はP3,又はP5,又はP7の電圧が第1コンデンサCaの電圧より大きいためスイッチ25aの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。また、第2電流供給手段32の第2コンデンサCbが充電状態であっても、スイッチ25aをオン状態にすることで第1電流供給手段31の満充電状態の第1コンデンサCaを利用することができる。このように、スイッチ25aがオン状態になることで第1コンデンサCaからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD4bにより、各出力端子P1,又はP3,又はP5,又はP7の電圧が第2コンデンサCbの電圧より大きいためスイッチ25bの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。
【0108】
これにより、コモンモード電圧に起因する電磁ノイズの影響を抑制するとともに、電磁弁群Gのうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間(インターバル時間)を短縮することができる。なお、電磁弁駆動装置20dが駆動対象とする電磁弁群Gは、同時に開弁状態にならない4つの電磁弁から構成されることに限らず、同時に開弁状態にならない3つの電磁弁から構成されてもよいし、同時に開弁状態にならない5つ以上の電磁弁から構成されてもよい。
【0109】
なお、電流供給手段は、電磁弁群Gに対してそれぞれ電流供給可能に2組設けられることに限らず、上記インターバル時間を更に短縮するため、3組以上設けられてもよい。
【0110】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る電磁弁駆動装置について図を参照して説明する。図11は、第6実施形態に係る電磁弁駆動装置20eを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
本第6実施形態に係る電磁弁駆動装置20eは、上記第5実施形態に対して、同時に開弁状態にならない2つの電磁弁11,12から構成される第1電磁弁群G1と、同時に開弁状態にならない2つの電磁弁13,14から構成される第2電磁弁群G2と、が駆動対象となるように構成されている。すなわち、電磁弁駆動装置20eは、グループ(群)が異なる電磁弁を同時に開弁可能に構成される。
【0111】
図11に示すように、電磁弁駆動装置20eは、上記第1電磁弁群G1に対して電流を供給する第1電流供給手段31aと、上記第2電磁弁群G2に対して電流を供給する第2電流供給手段32aと、を備えている。
【0112】
第1電流供給手段31aは、ピーク電流をコイル11a,12aに流すためのコンデンサCa,Ccと、コンデンサCaの正極側を出力端子P1,P3のいずれかに接続するためのスイッチ26aと、コンデンサCcの正極側を出力端子P1,P3のいずれかに接続するためのスイッチ26cと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1aを介してコンデンサCa,Ccに供給することによりコンデンサCa,Ccを充電するDCDCコンバータ24と、を備えている。すなわち、1つの充電手段であるDCDCコンバータ24に対して2つのコンデンサCa,Ccが設けられており、DCDCコンバータ24は、これら2つのコンデンサCa,Ccを充電可能に構成される。
【0113】
このため、スイッチ23a,23bは、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、2つのコンデンサCa,Ccのいずれか1つの高電圧を印加することで、ピーク電流を供給可能なスイッチング素子として構成されることとなる。
【0114】
また、第2電流供給手段32aは、ピーク電流をコイル13a,14aに流すためのコンデンサCb,Cdと、コンデンサCbの正極側を出力端子P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ26bと、コンデンサCdの正極側を出力端子P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ26dと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1bを介してコンデンサCb,Cdに供給することによりコンデンサCb,Cdを充電するDCDCコンバータ24cと、を備えている。すなわち、1つの充電手段であるDCDCコンバータ24cに対して2つのコンデンサCb,Cdが設けられており、DCDCコンバータ24cは、これら2つのコンデンサCb,Cdを充電可能に構成される。
【0115】
このため、スイッチ23c,23dは、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、2つのコンデンサCb,Cdのいずれか1つの高電圧を印加することで、ピーク電流を供給可能なスイッチング素子として構成されることとなる。
【0116】
また、電磁弁駆動装置20dでは、電流検出用抵抗R1aの他端と出力端子P2,P4との間にスイッチ22eが直列に設けられ、電流検出用抵抗R1bの他端と出力端子P6,P8との間にスイッチ22fが直列に設けられている。このため、スイッチ22eは、両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段として機能し、両電磁弁11,12のいずれか1つが開弁状態となる場合に、これら両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側を全て接地するように構成されている。また、スイッチ22fは、両電磁弁13,14のコイル13a,14aの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段として機能し、両電磁弁13,14のいずれか1つが開弁状態となる場合に、これら両電磁弁13,14のコイル13a,14aの低電位側を全て接地するように構成されている。これにより、上記第4実施形態と同様に、コモンモード電圧に起因する電磁ノイズの影響を抑制することができる。
【0117】
また、出力端子P2,P4とコンデンサCcの正極側との間には、コイル11a,12aからコンデンサCcへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサCc側にして電流方向制御用のダイオードD3aが設けられている。また、出力端子P6,P8とコンデンサCdの正極側との間にも同様に、コイル13a,14aからコンデンサCdへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサCd側にして電流方向制御用のダイオードD3bが設けられている。
【0118】
このように構成される電磁弁駆動装置20eでは、第1電磁弁群G1のいずれかの電磁弁のコイルにピーク電流を供給する場合には、コンデンサCaおよびコンデンサCcのうち満充電状態のコンデンサの正極側のスイッチ(26a,26c)がオン状態になることで、開弁状態にすべき電磁弁のコイルにピーク電流を供給しその後ホールド電流を供給する。また、第2電磁弁群G2のいずれかの電磁弁のコイルにピーク電流を供給する場合には、コンデンサCbおよびコンデンサCdのうち満充電状態のコンデンサの正極側のスイッチ(26b,26d)がオン状態になることで、開弁状態にすべき電磁弁のコイルにピーク電流を供給しその後ホールド電流を供給する。
【0119】
このように、本実施形態に係る電磁弁駆動装置20eでは、グループ(群)が異なる電磁弁、例えば、第1電磁弁群G1の電磁弁11と第2電磁弁群G2の電磁弁13とを同時に開弁可能に駆動制御することができる。
【0120】
特に、第1電流供給手段31aにはDCDCコンバータ24に対して2つのコンデンサCa,Ccが設けられているため、制御回路21によるスイッチ26a,26cの制御により、1のコンデンサが充電状態であっても他の満充電状態のコンデンサを利用することができる。これにより、第1電磁弁群G1のうちの1の電磁弁(例えば、電磁弁11)を駆動させた後に他の電磁弁(例えば、電磁弁12)を駆動させるまでの時間を短縮することができる。
【0121】
同様に、第2電流供給手段32aにはDCDCコンバータ24cに対して2つのコンデンサCb,Cdが設けられているため、制御回路21によるスイッチ26b,26dの制御により、1のコンデンサが充電状態であっても他の満充電状態のコンデンサを利用することができる。これにより、第2電磁弁群G2のうちの1の電磁弁(例えば、電磁弁13)を駆動させた後に他の電磁弁(例えば、電磁弁14)を駆動させるまでの時間を短縮することができる。
【0122】
なお、電磁弁駆動装置20eは、第1電磁弁群G1および第2電磁弁群G2の2つの電磁弁群を駆動対象とすることに限らず、3つ以上の電磁弁群を駆動対象としてもよい。また、各電磁弁群は、同時に開弁状態にならない2つの電磁弁から構成されることに限らず、同時に開弁状態にならない3つ以上の電磁弁から構成されてもよい。
【0123】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係る電磁弁駆動装置について図を参照して説明する。図12は、第7実施形態に係る電磁弁駆動装置20fを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
本第7実施形態に係る電磁弁駆動装置20fは、上記第6実施形態に対して、電流供給手段31a,32aに代えて上述した電流供給手段31,32を採用するとともに、これら2つの電流供給手段31,32のそれぞれが同じ組のコンデンサと他の組のコンデンサとのいずれかを利用可能に構成されている。
【0124】
具体的には、図12に示すように、電磁弁駆動装置20fには、第1コンデンサCaの正極側を出力端子P1,P3のいずれかに接続するためのスイッチ25aと、このスイッチ25aと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4aと、第2コンデンサCbの正極側を出力端子P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ25bと、このスイッチ25bと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4bと、が設けられている。そして、スイッチ25aのコンデンサ側とスイッチ25bのコイル側とを通電可能に接続するスイッチ27aと、このスイッチ27aとスイッチ25bのコイル側との間に配置される逆流防止用のダイオードD5aと、スイッチ25aのコイル側とスイッチ25bのコンデンサ側とを通電可能に接続するスイッチ27bと、このスイッチ27bとスイッチ25aのコイル側との間に配置される逆流防止用のダイオードD5bと、が設けられている。
【0125】
これにより、第1電磁弁群G1の電磁弁11と電磁弁12とを連続して駆動制御する場合には、スイッチ27a,27bをオフ状態にするとともにコイル11aにピーク電流およびホールド電流を供給するようにスイッチ22e,23a,23b等を制御することで、第1コンデンサCaを利用した電磁弁11の駆動制御が実施される。そして、電磁弁11の駆動期間終了後に、スイッチ27bをオン状態にすることで第1電磁弁群G1に対して第2コンデンサCbの高電圧を印加可能な状態にし、コイル12aにピーク電流およびホールド電流を供給するようにスイッチ22e,23a,23b等を制御することで、第2コンデンサCbを利用した電磁弁12の駆動制御が実施される。このように、スイッチ27bがオン状態になることで第2コンデンサCbからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD4aにより、各出力端子P1,又はP3の電圧が第1コンデンサCaの電圧より大きいためスイッチ25aの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。また、スイッチ25bがオン状態になることで第2コンデンサCbからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD5bにより、各出力端子P5,又はP7の電圧が第1コンデンサCaの電圧より大きいためスイッチ27bの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。
【0126】
このように、電磁弁駆動装置20fは、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、同じ組のコンデンサの高電圧と他の組のコンデンサの高電圧とのいずれかを印加することでピーク電流を供給可能に構成される。これにより、同じ組のコンデンサが充電状態であっても他の組の満充電状態のコンデンサを利用することができるので、電磁弁群のうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間(インターバル時間)を短縮することができる。
【0127】
なお、電磁弁駆動装置20fは、第1電磁弁群G1および第2電磁弁群G2の2つの電磁弁群を駆動対象とすることに限らず、3つ以上の電磁弁群を駆動対象としてもよい。また、各電磁弁群は、同時に開弁状態にならない2つの電磁弁から構成されることに限らず、同時に開弁状態にならない3つ以上の電磁弁から構成されてもよい。
【0128】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明に係る電磁弁駆動装置は、2気筒エンジンの各気筒に燃料を噴射供給する電磁弁や4気筒エンジンの各気筒に燃料を噴射供給する電磁弁を制御対象とすることに限らず、例えば、3気筒エンジン用の電磁弁を制御対象としてもよいし、5気筒以上の多気筒エンジン用の電磁弁を制御対象としてもよい。また、2気筒以上のエンジンとしては、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等が挙げられる。
【0129】
(2)上述した各スイッチのうちスイッチング制御されないスイッチには、MOSFET等のスイッチング素子が採用されることに限らず、オン/オフ制御可能なスイッチ手段等が採用されてもよい。
【0130】
(3)使用状況に応じて、上述したエネルギー回収用経路上に設けられるエネルギー回収用のダイオードを省いてもよい。
【符号の説明】
【0131】
10…燃料噴射制御装置
11〜14…電磁弁
11a〜14a…コイル
20,20a〜20f…電磁弁駆動装置
24,24c…DCDCコンバータ(充電手段)
22,22a〜22f…スイッチ
23,23a〜23d…スイッチ
C,Ca〜Cd…コンデンサ
G,G1,G2…電磁弁群
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁弁を駆動する電磁弁駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁弁を駆動する電磁弁駆動装置は、設定された駆動期間の開始時に電磁弁を速やかに開弁させるためのピーク電流と、上記駆動期間が終了するまで電磁弁の開弁状態を保持するための電流であって上記ピーク電流よりも小さいホールド電流とを、電磁弁に供給するように構成されている。このように、ピーク電流およびホールド電流を電磁弁に供給可能な電磁弁駆動装置として、下記特許文献1に開示される電磁弁駆動装置が知られている。
【0003】
この電磁弁駆動装置は、設定された駆動期間の間、インジェクタ(電磁弁)のコイルの下流側に設けられた電磁弁駆動用のスイッチング素子をオンすると共に、上記駆動期間の開始時には、ピーク電流供給用のスイッチング素子もオンして、コンデンサに充電された高電圧をインジェクタのコイルに印加してピーク電流を供給し、その後は上記駆動期間の終了時まで、ホールド電流供給用のスイッチング素子をオン/オフ制御してインジェクタのコイルにホールド電流を供給するように構成されている。
【0004】
また、下記特許文献2に開示される電磁負荷の駆動装置でも同様に、インジェクタ駆動時に、ピーク電流供給用のトランジスタをオンすることで、コンデンサに充電された高電圧がインジェクタのコイルに印加されてピーク電流が供給される。このトランジスタのオン以後、ホールド電流供給用のトランジスタを周期的にオン/オフすることで、電源電圧による定電流(ホールド電流)がインジェクタのソレノイドに供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−063993号公報
【特許文献2】特開2002−180878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電磁弁を速やかに開弁させるためのピーク電流と、電磁弁の開弁状態を保持するためのホールド電流との異なる大きさの電流を供給するためには、上記特許文献1,2に開示された構成のように、ピーク電流供給用としての電流供給回路(スイッチング素子等)とホールド電流供給用としての電流供給回路(スイッチング素子等)との双方を設ける必要がある。このように、両電流を供給する構成として少なくとも2つの電流供給回路を設ける必要があるため、電磁弁を駆動する駆動回路の簡素化が困難となり低コスト化等の阻害要因になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、電磁弁に対してピーク電流およびホールド電流を供給する構成を簡素化し得る電磁弁駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の電磁弁駆動装置では、電磁弁のコイルに対して、設定された駆動期間の開始時に前記電磁弁を速やかに開弁させるためのピーク電流と、前記駆動期間が終了するまで前記電磁弁の開弁状態を保持するための電流であって前記ピーク電流よりも小さいホールド電流とを供給する電磁弁駆動装置であって、前記ピーク電流を前記コイルに供給可能なコンデンサと、直流電源から電源電圧よりも高い高電圧を生成して前記コンデンサを充電する充電手段と、を備え、前記コンデンサは、前記直流電源から前記コイルへの給電経路に対して並列に接続されて、前記コイルの高電位側および低電位側のいずれかに配置されて、前記駆動期間の開始時にオン状態になることで、前記コンデンサの高電圧を印加して前記ピーク電流を前記コイルに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで前記直流電源の電源電圧を印加して前記ホールド電流を前記コイルに供給するスイッチング素子を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電磁弁駆動装置において、前記コンデンサの静電容量は、前記コイルに対して前記ピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の電磁弁駆動装置において、同時に前記開弁状態にならない2つ以上の電磁弁から構成される電磁弁群が駆動対象であって、前記スイッチング素子は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの高電位側に配置されて、前記電磁弁群のうち前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して前記ピーク電流および前記ホールド電流を供給可能に構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電磁弁駆動装置において、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段を備え、前記スイッチ手段は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のいずれか1つが前記開弁状態となる場合に、これら各電磁弁のコイルの低電位側を全て接地することを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1または2に記載の電磁弁駆動装置において、同時に前記開弁状態にならない2つ以上の電磁弁から構成される電磁弁群が駆動対象であって、前記スイッチング素子は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの低電位側に配置されて、前記電磁弁群のうち前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して前記ピーク電流および前記ホールド電流を供給可能に構成されることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置において、前記電磁弁群に対して、前記コンデンサ、前記充電手段および前記スイッチング素子を一組とする電流供給手段が複数組設けられることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置において、1つの前記充電手段に対して複数の前記コンデンサを備え、前記充電手段は、前記複数のコンデンサを充電可能に構成され、前記スイッチング素子は、前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、前記複数のコンデンサのいずれか1つの高電圧を印加することで、前記ピーク電流を供給可能に構成されることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明は、請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置において、複数の前記電磁弁群が駆動対象であって、これら各電磁弁群に対して、前記コンデンサ、前記充電手段および前記スイッチング素子を一組とする電流供給手段がそれぞれ設けられ、前記電流供給手段の前記スイッチング素子は、前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、同じ組の前記コンデンサの高電圧と他の組の前記コンデンサの高電圧とのいずれかを印加することで前記ピーク電流を供給可能に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明では、ピーク電流をコイルに供給可能なコンデンサが、直流電源からコイルへの給電経路に対して並列に接続されている。そして、駆動期間の開始時にオン状態になることで、コンデンサの高電圧を印加してピーク電流をコイルに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで直流電源の電源電圧を印加してホールド電流をコイルに供給するスイッチング素子が、コイルの高電位側(ハイサイド)および低電位側(ローサイド)のいずれかに配置されている。
【0017】
このように、スイッチング素子の動作に応じて、コンデンサの高電圧が印加されることでピーク電流が供給された後に、直流電源の電源電圧が印加されることでホールド電流が供給されるので、ピーク電流供給用およびホールド電流供給用の2つの電流供給回路を設けることなく、異なる大きさの電流をコイルに供給することができる。
したがって、電磁弁に対してピーク電流およびホールド電流を供給する構成を簡素化することができる。
【0018】
請求項2の発明では、コンデンサの静電容量は、コイルに対してピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されるため、コンデンサの低容量化が図られて、当該コンデンサの小型化や低コスト化を図ることができる。
【0019】
請求項3の発明では、スイッチング素子は、電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの高電位側に配置されて、電磁弁群のうち開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対してピーク電流およびホールド電流を供給可能に構成される。このように、同時に開弁状態にならない2つ以上の電磁弁が駆動対象であっても、各コイルの高電位側に配置されるスイッチング素子の動作に応じて、ピーク電流およびホールド電流を所望のコイルに供給することができる。
【0020】
請求項4の発明では、電磁弁群を構成する各電磁弁のいずれか1つが開弁状態となる場合に、スイッチ手段により、これら各電磁弁のコイルの低電位側が全て接地される。
【0021】
例えば、同時に開弁状態にならない2つの電磁弁が駆動対象である場合、従来構成では、両電磁弁のコイルの低電位側に、上記コンデンサまたは直流電源からの電圧を当該コイルに印加するためのスイッチ手段として、当該低電位側を接地するスイッチがそれぞれ設けられる。このような構成では、開弁状態にすべき一方の電磁弁のコイル(以下、駆動コイルという)の上記スイッチを閉状態(オン状態)にしてその低電位側を接地することで当該コイルに所定の電圧が印加されるとき、この所定の電圧が他方の電磁弁のコイル(以下、休止コイルという)にも印加されるものの、その低電位側のスイッチは開状態(オフ状態)のままである。このとき、休止コイルの高電位側および低電位側は、駆動コイルの高電位側と同電位になり、駆動コイルの低電位側は、接地電位になる。
【0022】
このため、上記休止コイルにおける高電位側の電圧と低電位側の電圧との平均電圧(以下、コモンモード電圧という)が、上記駆動コイルにおけるコモンモード電圧よりも大きくなる。コモンモード電圧が大きくなるほど電磁ノイズが大きくなるので、駆動していない電磁弁のコモンモード電圧に起因する電磁ノイズが、駆動している電磁弁の電磁ノイズよりも大きくなってしまう。
【0023】
そこで、請求項4の発明では、高電位側に配置されるスイッチング素子により開弁状態にすべき電磁弁のコイル(駆動コイル)に上記電圧が印加されるとき、スイッチ手段により、これら各電磁弁のコイルの低電位側が全て接地される。このため、開弁状態にすべき電磁弁と異なる電磁弁では、そのコイル(休止コイル)の高電位側および低電位側が接地電位となりコモンモード電圧が低くなるので、コモンモード電圧に起因する電磁ノイズの影響を抑制することができる。
【0024】
請求項5の発明では、スイッチング素子は、電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの低電位側に配置されて、電磁弁群のうち開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対してピーク電流およびホールド電流を供給可能に構成される。このように、同時に開弁状態にならない2つ以上の電磁弁が駆動対象であっても、各コイルの低電位側に配置されるスイッチング素子の動作に応じて、ピーク電流およびホールド電流を所望のコイルに供給することができる。
【0025】
請求項6の発明では、電磁弁群に対して、コンデンサ、充電手段およびスイッチング素子を一組とする電流供給手段が複数組設けられるため、1の電流供給手段のコンデンサが充電状態であっても他の電流供給手段の満充電状態のコンデンサを利用することで、電磁弁群のうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間を短縮することができる。
【0026】
請求項7の発明では、1つの充電手段に対して複数のコンデンサが設けられており、充電手段は、これら複数のコンデンサを充電可能に構成されている。そして、スイッチング素子は、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、複数のコンデンサのいずれか1つの高電圧を印加することで、ピーク電流を供給可能に構成される。これにより、1のコンデンサが充電状態であっても他の満充電状態のコンデンサを利用することができるので、電磁弁群のうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間を短縮することができる。
【0027】
請求項8の発明では、複数の電磁弁群が駆動対象であって、これら各電磁弁群に対して、コンデンサ、充電手段およびスイッチング素子を一組とする電流供給手段がそれぞれ設けられている。電流供給手段のスイッチング素子は、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、同じ組のコンデンサの高電圧と他の組のコンデンサの高電圧とのいずれかを印加することでピーク電流を供給可能に構成される。これにより、同じ組のコンデンサが充電状態であっても他の組の満充電状態のコンデンサを利用することができるので、電磁弁群のうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】電磁弁の駆動期間における電磁弁駆動装置の動作および作用を示すタイムチャートである。
【図3】図3(A)は、ピーク電流供給時の通電状態を説明するための説明図であり、図3(B)は、コンデンサへの回収状態を説明するための説明図である。
【図4】第2実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図5】第3実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図6】第4実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】図7(A)は、ピーク電流供給時の通電状態を説明するための説明図であり、図7(B)は、コンデンサへの回収状態を説明するための説明図である。
【図8】図8(A)は、図6の休止コイルにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートであり、図8(B)は、図6の駆動コイルにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートである。
【図9】電磁弁のコモンモード電圧に起因する電磁ノイズに対する低減の効果を説明するためのグラフである。
【図10】第5実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図11】第6実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図12】第7実施形態に係る電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図13】従来の電磁弁駆動装置を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図14】図14(A)は、図13の休止コイルにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートであり、図14(B)は、図13の駆動コイルにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係る電磁弁駆動装置について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態に係る電磁弁駆動装置20を採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
【0030】
図1に示す燃料噴射制御装置10は、例えば車両に搭載された2気筒エンジンの各気筒に燃料を噴射供給する電磁ソレノイド式ユニットインジェクタ(以下単に、電磁弁11,12という)と、これら各電磁弁11,12を駆動する電磁弁駆動装置20とを備えている。
【0031】
電磁弁11,12は、それぞれコイル11a,12aを有した常閉式(ノーマルクローズタイプ)の電磁弁であり、そのコイル11a,12aに通電されると、図示しない弁体がリターンスプリングの付勢力に抗して開弁位置に移動してその開弁状態が維持されることで、燃料噴射が行われる。また、コイル11a,12aの通電が遮断されると、弁体が元の閉弁位置に戻り、燃料噴射が停止される。これら両電磁弁11,12は、電磁弁駆動装置20により、同時に開弁状態にならないように駆動制御される。
【0032】
電磁弁駆動装置20は、出力端子として、電磁弁11のコイル11aの高電位側(ハイサイド)が接続される出力端子P1と、コイル11aの低電位側(ローサイド)が接続される出力端子P2と、電磁弁12のコイル12aの高電位側が接続される出力端子P3と、コイル12aの低電位側が接続される出力端子P4と、を備えている。また、電磁弁駆動装置20は、一端がグランドライン(GND=0V)に接続された電流検出用抵抗R1の他端と出力端子P2との間に直列に設けられた電磁弁11の駆動用のスイッチ22aと、電流検出用抵抗R1の他端と出力端子P4との間に直列に設けられた電磁弁12の駆動用のスイッチ22bと、アノードがグランドラインに接続されカソードが出力端子P1および出力端子P3に接続されたダイオードD2と、各電磁弁11,12のいずれかを速やかに開弁状態へ移行させるためのピーク電流をコイル11a,12aに流すためのコンデンサCと、コンデンサCの正極側を出力端子P1および出力端子P3に接続するためのスイッチ23と、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1を介してコンデンサCに供給することによりコンデンサCを充電するDCDCコンバータ24と、スイッチ22a,22b,23及びDCDCコンバータ24を制御するマイコン等からなる制御回路21とを備えている。なお、DCDCコンバータ24は、特許請求の範囲に記載の「充電手段」の一例に相当し得る。
【0033】
コンデンサCは、図1に示すように、直流電源Bからコイル11a,12aへの給電経路に対して並列に接続されており、このコンデンサCの静電容量は、コイル11a,12aに対して後述するピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されている。具体的には、例えば、ピーク電流が22A、コイル11a,12aのインダクタンスが80μHなどであることから、コンデンサCの静電容量は、33μFに設定されている。このように、コンデンサCの静電容量は、コイル11a,12aのインダクタンス等に応じて設定されるもので、好適には、20μF〜60μF程度に設定することができる。また、上述した各スイッチ22a,22b,23は、例えば、MOSFET等のスイッチング素子である。
【0034】
また、出力端子P2とコンデンサCの正極側との間には、コイル11aからコンデンサCへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサC側にして電流方向制御用のダイオードD3aが設けられている。また、出力端子P4とコンデンサCの正極側との間にも同様に、コイル12aからコンデンサCへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサC側にして電流方向制御用のダイオードD3bが設けられている。
【0035】
一方、DCDCコンバータ24は、直流電源Bとグランドラインとの間に直列に設けられたインダクタ24a及びスイッチ24bを備えており、そのスイッチ24bがオン/オフされることでインダクタ24aに蓄積したエネルギーがダイオードD1を通じてコンデンサCを充電する周知のものである。
【0036】
次に、上記のように構成された電磁弁駆動装置20の作用を、図2および図3を用いて説明する。図2は、電磁弁11の駆動期間における電磁弁駆動装置20の動作および作用を示すタイムチャートであり、図2(A)は、コンデンサCの電圧変化を示し、図2(B)は、コイル11aの電流変化を示し、図2(C)は、スイッチ23のオン/オフ制御状態を示し、図2(D)は、スイッチ22aのオン/オフ制御状態を示す。図3(A)は、ピーク電流供給時の通電状態を説明するための説明図であり、図3(B)は、コンデンサCへの回収状態を説明するための説明図である。
【0037】
まず、制御回路21は、エンジン回転数やアクセル開度などのエンジン運転情報に基づいて、各気筒毎に、電磁弁11,12のコイル11a,12aに通電すべき駆動期間を設定し、コイル11aに通電すべき駆動期間だけスイッチ23をオンする。
【0038】
また、制御回路21は、両電磁弁11,12の駆動期間が始まる前に、DCDCコンバータ24を作動させて、コンデンサCを、そのコンデンサの充電電圧(正極側の電圧)が目標電圧Vc1になるまで充電させる。この目標電圧Vc1は、コイル11a,12aに対してピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されるもので、本実施形態では、例えば、50Vに設定されている。
【0039】
そして、制御回路21は、何れかの電磁弁の駆動期間の開始タイミングになると、その電磁弁に対応するスイッチをオンし、それと同時にスイッチ23もオンする。例えば、電磁弁11の駆動期間の開始タイミングになると、図2(C),(D)に示すように、スイッチ22aをオンし、それと同時にスイッチ23もオンする。
【0040】
このため、コンデンサCの正極側がスイッチ23を介して出力端子P1に接続されると、コンデンサCに充電されていたエネルギーがコイル11aに放出されて、コンデンサCの高電圧がコイル11aに印加される(図3(A)の矢印α1参照)。そして、このとき、図2(A),(B)に示すように、コイル11aには、コンデンサCの放電により、電磁弁11を速やかに開弁状態へと移行させるための大電流、すなわち、ピーク電流が流れる。
【0041】
このようなコンデンサCの放電に際し、高電位となる出力端子P1側から電源ライン側への回り込みは、ダイオードD2によって防止される。また更に、スイッチ22aがオンされても、コンデンサCの正極側からエネルギー回収用経路を介してスイッチ22aへ直接電流が流れてしまうことは、ダイオードD3aにより防止される。
【0042】
そして、制御回路21は、スイッチ22aをオンした後において、コイル11aに流れるコイル電流を抵抗R1に生じる電圧により検出し、そのコイル電流がピーク電流の目標電流値Ipになると、スイッチ22aをオフする。なお、コイル11aに流れるコイル電流を検出することなく、スイッチ22aを一定時間だけオンするように構成されてもよい。
【0043】
このようにして、電磁弁11の駆動期間の開始時には、スイッチ22aがオンされて、コンデンサCの蓄積エネルギーがコイル11aに放出され、これにより、そのコイル11aにピーク電流が流れて、電磁弁11の開弁応答が早まる。
【0044】
そして、制御回路21は、スイッチ22aをオフした後において、抵抗R1に生じる電圧により検出されるコイル電流が、上記ピーク電流の目標電流値よりも小さい一定電流Ihとなるように、スイッチ22aのスイッチング(オン/オフ制御)を開始する。この一定電流は、電磁弁の開弁状態を保持するための電流(以下、ホールド電流という)であって、コイル電流がピーク電流の目標電流値Ipに達した後は、スイッチ22aのオン/オフが繰り返されて、コイル電流の平均値が上記ホールド電流に制御されることとなる(図2(B)参照)。
【0045】
このようなスイッチ22aによる定電流制御時は、コンデンサCに蓄えたエネルギーと直流電源Bの電源電圧VBとにより、スイッチ23を通じてコイル11aに上記ホールド電流が流れ、そのホールド電流により、電磁弁11が開弁状態に保持される。すなわち、スイッチ22aは、コイル11aの低電位側に配置されて、駆動期間の開始時にオン状態になることで、コンデンサCの高電圧を印加してピーク電流をコイル11aに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで直流電源Bの電源電圧を印加してホールド電流をコイル11aに供給するスイッチング素子として機能する。
【0046】
また、ダイオードD2は、スイッチ23がオンしている状態で、スイッチ22aがオフされた時に、グランドライン側からコイル11aに電流を還流させるための電流還流用ダイオードとし機能する。このため、スイッチ22aのオン/オフ制御中に該スイッチ22aがオフされた際において、コイル11aに流れる電流は、そのダイオードD2を介して還流する電流である。
【0047】
その後、駆動期間が終了すると、制御回路21は、スイッチ23をオフすると共に、スイッチ22aのオン/オフ制御(即ち、定電流制御)を終了して、そのスイッチ22aもオフ状態に保持する。すると、コイル11aへの通電が停止して電磁弁11が閉弁し、その電磁弁11による燃料噴射が終了される。
【0048】
また、スイッチ22a及びスイッチ23がオフされると、コイル11aにフライバックエネルギーが発生するが、そのフライバックエネルギーは、コイル11aの出力端子P2からエネルギー回収用のダイオードD3aを通じてコンデンサCへ、電流の形で回収される(図3(B)の矢印α2参照)。
【0049】
一方、制御回路21は、スイッチ23をオフした後に、DCDCコンバータ24によりコンデンサCの充電を再開させる。これは、次回の電磁弁駆動に備えるためである。なお、制御回路21は、スイッチ23をオンしている間は、コンデンサCからの放電電流を安定させるために、DCDCコンバータ24によるコンデンサCの充電動作を禁止する。
【0050】
このように電磁弁11が閉弁した後に、電磁弁12の駆動期間の開始タイミングになると、スイッチ22aがオフされた状態でスイッチ22bをオンし、それと同時にスイッチ23もオンする。
【0051】
このため、コンデンサCの正極側がスイッチ23を介して出力端子P3に接続されると、コンデンサCに充電されていたエネルギーがコイル12aに放出されて、コンデンサCの高電圧がコイル12aに印加され、ピーク電流がコイル12aに流れる。そして、制御回路21は、スイッチ22bをオンした後において、コイル12aに流れるコイル電流がピーク電流の目標電流値になると、スイッチ22bをオフする。このようにして、電磁弁12の駆動期間の開始時には、スイッチ22bがオンされて、コンデンサCの蓄積エネルギーがコイル12aに放出され、これにより、そのコイル12aにピーク電流が流れて、電磁弁12の開弁応答が早まる。
【0052】
このようなコンデンサCの放電に際し、高電位となる出力端子P3側から電源ライン側への回り込みは、ダイオードD2によって防止される。また更に、スイッチ22bがオンされても、コンデンサCの正極側からエネルギー回収用経路を介してスイッチ22bへ直接電流が流れてしまうことは、ダイオードD3bにより防止される。
【0053】
そして、制御回路21は、スイッチ22bをオフした後において、抵抗R1に生じる電圧により検出されるコイル電流が、上記ホールド電流となるように、スイッチ22bのオン/オフ制御を行うことで、電磁弁12が開弁状態に保持される。
【0054】
また、ダイオードD2は、スイッチ23がオンしている状態で、スイッチ22bがオフされた時に、グランドライン側からコイル12aに電流を還流させるための電流還流用ダイオードとし機能する。このため、スイッチ22bのオン/オフ制御中に該スイッチ22bがオフされた際において、コイル12aに流れる電流は、そのダイオードD2を介して還流する電流である。
【0055】
その後、駆動期間が終了すると、制御回路21は、スイッチ23をオフすると共に、スイッチ22bのオン/オフ制御(即ち、定電流制御)を終了して、そのスイッチ22bもオフ状態に保持する。すると、コイル12aへの通電が停止して電磁弁12が閉弁し、その電磁弁12による燃料噴射が終了される。
【0056】
また、スイッチ22b及びスイッチ23がオフされると、コイル12aにフライバックエネルギーが発生するが、そのフライバックエネルギーは、コイル12aの出力端子P4からエネルギー回収用のダイオードD3bを通じてコンデンサCへ、電流の形で回収される。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る電磁弁駆動装置20では、ピーク電流をコイル11a,12aに供給可能なコンデンサCが、直流電源Bからコイル11a,12aへの給電経路に対して並列に接続されている。そして、駆動期間の開始時にオン状態になることでコンデンサCの高電圧を印加してピーク電流をコイル11a,12aに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで直流電源Bの電源電圧を印加してホールド電流をコイル11a,12aに供給するスイッチ22a,22bが、コイル11a,12aの低電位側(ローサイド)にそれぞれ配置されている。
【0058】
このように、スイッチ22a,22bの動作に応じて、コンデンサCの高電圧が印加されることでピーク電流が供給された後に、直流電源Bの電源電圧が印加されることでホールド電流が供給されるので、ピーク電流供給用およびホールド電流供給用の2つの電流供給回路を設けることなく、異なる大きさの電流をコイル11a,12aに供給することができる。
したがって、電磁弁11,12に対してピーク電流およびホールド電流を供給する構成を簡素化することができる。このように簡素化されることで、電磁弁駆動装置の小型化や低コスト化を図ることができる。
【0059】
また、コンデンサCの静電容量は、コイル11a,12aに対してピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されるため、コンデンサCの低容量化が図られて、当該コンデンサCの小型化や低コスト化を図ることができる。
【0060】
なお、電磁弁11の駆動期間では、スイッチ23をオンした状態でスイッチ22aをオン/オフ制御することに限らず、スイッチ23およびスイッチ22aの双方を同じタイミングでオン/オフ制御してもよい。また、電磁弁12の駆動期間では、スイッチ23をオンした状態でスイッチ22bをオン/オフ制御することに限らず、スイッチ23およびスイッチ22bの双方を同じタイミングでオン/オフ制御してもよい。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る電磁弁駆動装置について図を参照して説明する。図4は、第2実施形態に係る電磁弁駆動装置20aを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
本第2実施形態に係る電磁弁駆動装置20aは、上記第1実施形態に対して、4気筒エンジンの各気筒に燃料を噴射供給する電磁弁であって同時に開弁状態にならない4つの電磁弁11〜14から構成される電磁弁群Gを駆動対象として駆動制御するように構成されている。
【0062】
具体的には、図4に示すように、電磁弁駆動装置20aは、出力端子として、出力端子P1〜P4に加えて、電磁弁13のコイル13aの高電位側(ハイサイド)が接続される出力端子P5と、コイル13aの低電位側(ローサイド)が接続される出力端子P6と、電磁弁14のコイル14aの高電位側が接続される出力端子P7と、コイル14aの低電位側が接続される出力端子P8と、を備えている。また、電磁弁駆動装置20aは、スイッチ22a,22bに加えて、電流検出用抵抗R1の他端と出力端子P6との間に直列に設けられた電磁弁13の駆動用のスイッチ22cと、電流検出用抵抗R1の他端と出力端子P8との間に直列に設けられた電磁弁14の駆動用のスイッチ22dと、を備えている。
【0063】
また、出力端子P6とコンデンサCの正極側との間には、コイル13aからコンデンサCへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサC側にして電流方向制御用のダイオードD3cが設けられている。また、出力端子P8とコンデンサCの正極側との間にも同様に、コイル14aからコンデンサCへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサC側にして電流方向制御用のダイオードD3dが設けられている。
【0064】
このように、第2実施形態に係る電磁弁駆動装置20aでは、スイッチ22a〜22dは、電磁弁群Gを構成する各電磁弁11〜14のコイル11a〜14aの低電位側に配置されて、電磁弁群Gのうち開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対してピーク電流およびホールド電流を供給可能に構成される。このように、同時に開弁状態にならない4つの電磁弁が駆動対象であっても、各コイルの低電位側に配置されるいずれかのスイッチの動作に応じて、ピーク電流およびホールド電流を所望のコイルに供給することができる。なお、電磁弁駆動装置20aが駆動対象とする電磁弁群Gは、同時に開弁状態にならない4つの電磁弁から構成されることに限らず、同時に開弁状態にならない3つの電磁弁から構成されてもよいし、同時に開弁状態にならない5つ以上の電磁弁から構成されてもよい。
【0065】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る電磁弁駆動装置について図5を参照して説明する。図5は、第3実施形態に係る電磁弁駆動装置20bを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
本第3実施形態に係る電磁弁駆動装置20bは、上述した電磁弁群Gに対して、コンデンサ、DCDCコンバータ(充電手段)およびスイッチを一組とする電流供給手段が、上記電磁弁群Gに対してそれぞれ電流供給可能に2組設けられるように、構成されている。
【0066】
具体的には、図5に示すように、電磁弁駆動装置20bは、ピーク電流をコイル11a〜14aに流すための第1コンデンサCaと、この第1コンデンサCaの正極側を出力端子P1,P3,P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ25aと、このスイッチ25aと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4aと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1aを介して第1コンデンサCaに供給することにより第1コンデンサCaを充電するDCDCコンバータ24と、を有する第1電流供給手段31を備えている。また、電磁弁駆動装置20bは、ピーク電流をコイル11a〜14aに流すための第2コンデンサCbと、この第2コンデンサCbの正極側を出力端子P1,P3,P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ25bと、このスイッチ25bと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4bと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1bを介して第2コンデンサCbに供給することにより第2コンデンサCbを充電するDCDCコンバータ24cと、を有する第2電流供給手段32を備えている。
【0067】
このように、第3実施形態に係る電磁弁駆動装置20bでは、電磁弁群Gに対して、コンデンサ、DCDCコンバータ(充電手段)およびスイッチを一組とする第1電流供給手段31および第2電流供給手段32が設けられるため、第1電流供給手段31の第1コンデンサCaが充電状態であっても、スイッチ25bをオン状態にして第2電流供給手段32の満充電状態の第2コンデンサCbを利用することができる。このように、スイッチ25bがオン状態になることで第2コンデンサCbからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD4aにより、各出力端子P1,P3,P5,P7の電圧が第1コンデンサCaの電圧より大きいためスイッチ25aの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。また、第2電流供給手段32の第2コンデンサCbが充電状態であっても、スイッチ25aをオン状態にして第1電流供給手段31の満充電状態の第1コンデンサCaを利用することができる。このように、スイッチ25aがオン状態になることで第1コンデンサCaからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD4bにより、各出力端子P1,P3,P5,P7の電圧が第2コンデンサCbの電圧より大きいためスイッチ25bの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。
【0068】
これにより、電磁弁群Gのうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間(インターバル時間)を短縮することができる。なお、電磁弁駆動装置20bが駆動対象とする電磁弁群Gは、同時に開弁状態にならない4つの電磁弁から構成されることに限らず、同時に開弁状態にならない3つの電磁弁から構成されてもよいし、同時に開弁状態にならない5つ以上の電磁弁から構成されてもよい。
【0069】
なお、電流供給手段は、電磁弁群Gに対してそれぞれ電流供給可能に2組設けられることに限らず、上記インターバル時間を更に短縮するため、3組以上設けられてもよい。
【0070】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る電磁弁駆動装置について図を参照して説明する。図6は、第4実施形態に係る電磁弁駆動装置20cを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。図7(A)は、ピーク電流供給時の通電状態を説明するための説明図であり、図7(B)は、コンデンサCへの回収状態を説明するための説明図である。図8(A)は、図6の休止コイル12aにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートであり、図8(B)は、図6の駆動コイル11aにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートである。
【0071】
図6に示すように、本第4実施形態に係る電磁弁駆動装置20cは、上記第1実施形態にて述べたスイッチ22a,22b、ダイオードD2、スイッチ23に代えて、電流検出用抵抗R1の他端と出力端子P2,P4との間に直列に設けられたスイッチ22と、アノードがグランドラインに接続されカソードが出力端子P1に接続されたダイオードD2aと、アノードがグランドラインに接続されカソードが出力端子P3に接続されたダイオードD2bと、コンデンサCの正極側を出力端子P1に接続するためのスイッチ23aと、コンデンサCの正極側を出力端子P3に接続するためのスイッチ23bと、を備えている。
【0072】
ここで、スイッチ22は、両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段として機能し、両電磁弁11,12のいずれか1つが開弁状態となる場合に、これら両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側を全て接地するように構成されている。
【0073】
また、出力端子P2,P4とコンデンサCの正極側との間には、コイル11a,12aからコンデンサCへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサC側にして電流方向制御用のダイオードD3が設けられている。
【0074】
次に、上記のように構成された電磁弁駆動装置20cの作用を以下に説明する。
まず、制御回路21は、エンジン回転数やアクセル開度などのエンジン運転情報に基づいて、各気筒毎に、電磁弁11,12のコイル11a,12aに通電すべき駆動期間を設定し、コイル11aに通電すべき駆動期間だけスイッチ22をオンする。
【0075】
そして、制御回路21は、何れかの電磁弁の駆動期間の開始タイミングになると、その電磁弁に対応するスイッチをオンし、それと同時にスイッチ22もオンする。例えば、電磁弁11の駆動期間の開始タイミングになると、スイッチ22をオンし、それと同時にスイッチ23aもオンする。
【0076】
このため、コンデンサCの正極側がスイッチ23aを介して出力端子P1に接続されると、コンデンサCに充電されていたエネルギーがコイル11aに放出されて、コンデンサCの高電圧がコイル11aに印加される(図7(A)の矢印α3参照)。そして、このとき、コイル11aには、コンデンサCの放電により、電磁弁11を速やかに開弁状態へと移行させるための大電流、すなわち、ピーク電流が流れる。
【0077】
このようなコンデンサCの放電に際し、高電位となる出力端子P1側から電源ライン側への回り込みは、ダイオードD2aによって防止される。また更に、スイッチ22がオンされても、コンデンサCの正極側からエネルギー回収用経路を介してスイッチ22へ直接電流が流れてしまうことは、ダイオードD3により防止される。
【0078】
そして、制御回路21は、スイッチ23aをオンした後において、コイル11aに流れるコイル電流を抵抗R1に生じる電圧により検出し、そのコイル電流がピーク電流の目標電流値Ipになると、スイッチ23aをオフする。なお、コイル11aに流れるコイル電流を検出することなく、スイッチ23aを一定時間だけオンするように構成されてもよい。
【0079】
このようにして、電磁弁11の駆動期間の開始時には、スイッチ23aがオンされて、コンデンサCの蓄積エネルギーがコイル11aに放出され、これにより、そのコイル11aにピーク電流が流れて、電磁弁11の開弁応答が早まる。
【0080】
そして、制御回路21は、スイッチ23aをオフした後において、抵抗R1に生じる電圧により検出されるコイル電流が、上記ピーク電流の目標電流値よりも小さい一定電流Ihとなるように、スイッチ23aのスイッチング(オン/オフ制御)を開始する。コイル電流がピーク電流の目標電流値Ipに達した後は、スイッチ23aのオン/オフが繰り返されて、コイル電流の平均値が上記ホールド電流に制御されることとなる。
【0081】
このようなスイッチ23aによる定電流制御時は、コンデンサCに蓄えたエネルギーと直流電源Bの電源電圧VBとにより、スイッチ23aを通じてコイル11aに上記ホールド電流が流れ、そのホールド電流により、電磁弁11が開弁状態に保持される。すなわち、スイッチ23aは、コイル11aの高電位側に配置されて、駆動期間の開始時にオン状態になることで、コンデンサCの高電圧を印加してピーク電流をコイル11aに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで直流電源Bの電源電圧を印加してホールド電流をコイル11aに供給するスイッチング素子として機能する。
【0082】
また、ダイオードD2aは、スイッチ22がオンしている状態で、スイッチ23aがオフされた時に、グランドライン側からコイル11aに電流を還流させるための電流還流用ダイオードとし機能する。このため、スイッチ23aのオン/オフ制御中に該スイッチ23aがオフされた際において、コイル11aに流れる電流は、そのダイオードD2aを介して還流する電流である。
【0083】
その後、駆動期間が終了すると、制御回路21は、スイッチ22をオフすると共に、スイッチ23aのオン/オフ制御(即ち、定電流制御)を終了して、そのスイッチ23aもオフ状態に保持する。すると、コイル11aへの通電が停止して電磁弁11が閉弁し、その電磁弁11による燃料噴射が終了される。
【0084】
また、スイッチ22及びスイッチ23aがオフされると、コイル11aにフライバックエネルギーが発生するが、そのフライバックエネルギーは、コイル11aの出力端子P2からエネルギー回収用のダイオードD3aを通じてコンデンサCへ、電流の形で回収される(図7(B)の矢印α4参照)。
【0085】
このように電磁弁11が閉弁してコンデンサCが再び満充電状態になった後に、電磁弁12の駆動期間の開始タイミングになると、スイッチ23aがオフされた状態でスイッチ23bをオンし、それと同時にスイッチ22もオンする。
【0086】
このため、コンデンサCの正極側がスイッチ23bを介して出力端子P3に接続されると、コンデンサCに充電されていたエネルギーがコイル12aに放出されて、コンデンサCの高電圧がコイル12aに印加され、ピーク電流がコイル12aに流れる。そして、制御回路21は、スイッチ23bをオンした後において、コイル12aに流れるコイル電流がピーク電流の目標電流値になると、スイッチ23bをオフする。このようにして、電磁弁12の駆動期間の開始時には、スイッチ23bがオンされて、コンデンサCの蓄積エネルギーがコイル12aに放出され、これにより、そのコイル12aにピーク電流が流れて、電磁弁12の開弁応答が早まる。
【0087】
このようなコンデンサCの放電に際し、高電位となる出力端子P3側から電源ライン側への回り込みは、ダイオードD2bによって防止される。
【0088】
そして、制御回路21は、スイッチ23bをオフした後において、抵抗R1に生じる電圧により検出されるコイル電流が、上記ホールド電流となるように、スイッチ23bのオン/オフ制御を行うことで、電磁弁12が開弁状態に保持される。
【0089】
また、ダイオードD2bは、スイッチ22がオンしている状態で、スイッチ23bがオフされた時に、グランドライン側からコイル12aに電流を還流させるための電流還流用ダイオードとし機能する。このため、スイッチ23bのオン/オフ制御中に該スイッチ23bがオフされた際において、コイル12aに流れる電流は、そのダイオードD2bを介して還流する電流である。
【0090】
その後、駆動期間が終了すると、制御回路21は、スイッチ22をオフすると共に、スイッチ23bのオン/オフ制御(即ち、定電流制御)を終了して、そのスイッチ23bもオフ状態に保持する。すると、コイル12aへの通電が停止して電磁弁12が閉弁し、その電磁弁12による燃料噴射が終了される。
【0091】
また、スイッチ23b及びスイッチ22がオフされると、コイル12aにフライバックエネルギーが発生するが、そのフライバックエネルギーは、コイル12aの出力端子P4からエネルギー回収用のダイオードD3を通じてコンデンサCへ、電流の形で回収される。
【0092】
このように、本実施形態に係る電磁弁駆動装置20cでは、スイッチ23a,23bは、各電磁弁11,12のコイル11a,12aの高電位側に配置されて、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対してピーク電流およびホールド電流を供給可能に構成されている。このようにしてもピーク電流およびホールド電流を供給する構成が簡素化されて、各コイルの高電位側に配置されるスイッチ23a,23bの動作に応じて、ピーク電流およびホールド電流を所望のコイルに供給することができる。
【0093】
なお、電磁弁11の駆動期間では、スイッチ22をオンした状態でスイッチ23aをオン/オフ制御することに限らず、スイッチ23aをオンした状態でスイッチ22をオン/オフ制御してもよい。また、電磁弁12の駆動期間では、スイッチ22をオンした状態でスイッチ23bをオン/オフ制御することに限らず、スイッチ23bをオンした状態でスイッチ22をオン/オフ制御してもよい。
【0094】
次に、両コイル11a,12aの低電位側を全て接地するように構成されるスイッチ22の作用効果について、図13に示す従来の電磁弁駆動装置100を比較対象として、以下に説明する。図13は、従来の電磁弁駆動装置100を採用した燃料噴射制御装置の概略構成を示すブロック図である。図14(A)は、図13の休止コイル12aにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートであり、図14(B)は、図13の駆動コイル11aにおけるコモンモード電圧の電圧変化を示すタイムチャートである。
【0095】
図13に示す従来の電磁弁駆動装置100は、例えば、上記第1実施形態における電磁弁駆動装置20に対して、ホールド電流供給用としてのスイッチング素子101(電流供給回路)等を有するように構成されている。この場合、両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側には、上記コンデンサCまたは直流電源Bからの電圧を当該コイル11a,12aに印加するためのスイッチ手段として、当該低電位側を接地するスイッチ110,120がそれぞれ設けられる。
【0096】
このような構成では、開弁状態にすべき一方の電磁弁のコイル(駆動コイル)の上記スイッチを閉状態(オン状態)にしてその低電位側を接地することで当該コイルに所定の電圧が印加されるとき、この所定の電圧が他方の電磁弁のコイル(休止コイル)にも印加されるものの、その低電位側のスイッチは開状態(オフ状態)のままである。このとき、休止コイルの高電位側および低電位側は、駆動コイルの高電位側と同電位になり、駆動コイルの低電位側は、接地電位になる。
【0097】
このため、上記休止コイルにおける高電位側の電圧と低電位側の電圧との平均電圧、すなわちコモンモード電圧が、上記駆動コイルにおけるコモンモード電圧よりも大きくなる。コモンモード電圧が大きくなるほど電磁ノイズが大きくなるので、駆動していない電磁弁のコモンモード電圧に起因する電磁ノイズが、駆動している電磁弁の電磁ノイズよりも大きくなってしまう。
【0098】
例えば、電磁弁11の駆動期間であることから、コイル11aが駆動コイルでありコイル12aが休止コイルである場合には、図14(A),(B)に示すように、休止コイル12aにおけるコモンモード電圧(図14(A))は、駆動コイル11aにおけるコモンモード電圧(図14(B))よりも大きくなる。
【0099】
そこで、本実施形態では、高電位側に配置されるスイッチ23a,23bにより開弁状態にすべき電磁弁のコイル(駆動コイル)に上記電圧が印加されるとき、スイッチ22により、これら両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側が全て接地される。このため、開弁状態にすべき電磁弁と異なる電磁弁では、そのコイル(休止コイル)の高電位側および低電位側が接地電位となる。
【0100】
例えば、電磁弁11の駆動期間であることから、コイル11aが駆動コイルでありコイル12aが休止コイルである場合には、休止コイル12aにおけるコモンモード電圧は、図8(A)に示すように0(V)となり、駆動コイル11aにおけるコモンモード電圧(図8(B))よりも小さくなる。
【0101】
ここで、上述した電磁ノイズの低減の効果を図9を用いて説明する。図9は、電磁弁のコモンモード電圧に起因する電磁ノイズに対する低減の効果を説明するためのグラフである。図9において、符号T1は、本実施形態に係る電磁弁駆動装置20cにおける駆動コイル11aおよび休止コイル12aでのコモンモード電圧を周波数分析したAM帯(510kHz〜1710kHz)での最大値を示す。また、符号T2は、従来の電磁弁駆動装置100における駆動コイル11aおよび休止コイル12aでのコモンモード電圧を周波数分析したAM帯(510kHz〜1710kHz)での最大値を示す。
【0102】
図9に示すように、本実施形態に係る電磁弁駆動装置20c(図9の符号T1)の方が、従来の電磁弁駆動装置100(図9の符号T2)よりも15dBほど低くなっていることがわかる。
このように、休止コイルの高電位側および低電位側が接地電位となりコモンモード電圧が低くなるので、コモンモード電圧に起因する電磁ノイズの影響を抑制することができる。
【0103】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5実施形態に係る電磁弁駆動装置について図を参照して説明する。図10は、第5実施形態に係る電磁弁駆動装置20dを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
本第5実施形態に係る電磁弁駆動装置20dは、上記第4実施形態に対して、4気筒エンジンの各気筒に燃料を噴射供給する電磁弁であって同時に開弁状態にならない4つの電磁弁11〜14から構成される電磁弁群Gが駆動対象であって、この電磁弁群Gに対して、コンデンサ、DCDCコンバータ(充電手段)およびスイッチを一組とする電流供給手段が、上記電磁弁群Gに対してそれぞれ電流供給可能に2組設けられるように、構成されている。
【0104】
具体的には、図10に示すように、電磁弁駆動装置20dは、出力端子として、出力端子P1〜P4に加えて、電磁弁13のコイル13aの高電位側(ハイサイド)が接続される出力端子P5と、コイル13aの低電位側(ローサイド)が接続される出力端子P6と、電磁弁14のコイル14aの高電位側が接続される出力端子P7と、コイル14aの低電位側が接続される出力端子P8と、を備えている。また、電磁弁駆動装置20aは、スイッチ23a,23bに加えて、コンデンサの正極側を出力端子P5に接続するためのスイッチ23cと、コンデンサの正極側を出力端子P7に接続するためのスイッチ23dと、を備えている。
【0105】
このため、スイッチ22は、各電磁弁11〜14のコイル11a〜14aの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段として機能し、各電磁弁11〜14のいずれか1つが開弁状態となる場合に、これら各電磁弁11〜14のコイル11a〜14aの低電位側を全て接地するように機能する。
【0106】
また、電磁弁駆動装置20dは、ピーク電流をコイル11a〜14aに流すための第1コンデンサCaと、この第1コンデンサCaの正極側を出力端子P1,P3,P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ25aと、このスイッチ25aと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4aと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1aを介して第1コンデンサCaに供給することにより第1コンデンサCaを充電するDCDCコンバータ24と、を有する第1電流供給手段31を備えている。また、電磁弁駆動装置20dは、ピーク電流をコイル11a〜14aに流すための第2コンデンサCbと、この第2コンデンサCbの正極側を出力端子P1,P3,P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ25bと、このスイッチ25bと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4bと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1bを介して第2コンデンサCbに供給することにより第2コンデンサCbを充電するDCDCコンバータ24cと、を有する第2電流供給手段32を備えている。
【0107】
このように構成される電磁弁駆動装置20dでは、電磁弁群Gに対して、コンデンサ、DCDCコンバータ(充電手段)およびスイッチを一組とする第1電流供給手段31および第2電流供給手段32の2組が設けられるため、第1電流供給手段31の第1コンデンサCaが充電状態であっても、スイッチ25bをオン状態にすることで第2電流供給手段32の満充電状態の第2コンデンサCbを利用することができる。このように、スイッチ25bがオン状態になることで第2コンデンサCbからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD4aにより、各出力端子P1,又はP3,又はP5,又はP7の電圧が第1コンデンサCaの電圧より大きいためスイッチ25aの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。また、第2電流供給手段32の第2コンデンサCbが充電状態であっても、スイッチ25aをオン状態にすることで第1電流供給手段31の満充電状態の第1コンデンサCaを利用することができる。このように、スイッチ25aがオン状態になることで第1コンデンサCaからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD4bにより、各出力端子P1,又はP3,又はP5,又はP7の電圧が第2コンデンサCbの電圧より大きいためスイッチ25bの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。
【0108】
これにより、コモンモード電圧に起因する電磁ノイズの影響を抑制するとともに、電磁弁群Gのうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間(インターバル時間)を短縮することができる。なお、電磁弁駆動装置20dが駆動対象とする電磁弁群Gは、同時に開弁状態にならない4つの電磁弁から構成されることに限らず、同時に開弁状態にならない3つの電磁弁から構成されてもよいし、同時に開弁状態にならない5つ以上の電磁弁から構成されてもよい。
【0109】
なお、電流供給手段は、電磁弁群Gに対してそれぞれ電流供給可能に2組設けられることに限らず、上記インターバル時間を更に短縮するため、3組以上設けられてもよい。
【0110】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6実施形態に係る電磁弁駆動装置について図を参照して説明する。図11は、第6実施形態に係る電磁弁駆動装置20eを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
本第6実施形態に係る電磁弁駆動装置20eは、上記第5実施形態に対して、同時に開弁状態にならない2つの電磁弁11,12から構成される第1電磁弁群G1と、同時に開弁状態にならない2つの電磁弁13,14から構成される第2電磁弁群G2と、が駆動対象となるように構成されている。すなわち、電磁弁駆動装置20eは、グループ(群)が異なる電磁弁を同時に開弁可能に構成される。
【0111】
図11に示すように、電磁弁駆動装置20eは、上記第1電磁弁群G1に対して電流を供給する第1電流供給手段31aと、上記第2電磁弁群G2に対して電流を供給する第2電流供給手段32aと、を備えている。
【0112】
第1電流供給手段31aは、ピーク電流をコイル11a,12aに流すためのコンデンサCa,Ccと、コンデンサCaの正極側を出力端子P1,P3のいずれかに接続するためのスイッチ26aと、コンデンサCcの正極側を出力端子P1,P3のいずれかに接続するためのスイッチ26cと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1aを介してコンデンサCa,Ccに供給することによりコンデンサCa,Ccを充電するDCDCコンバータ24と、を備えている。すなわち、1つの充電手段であるDCDCコンバータ24に対して2つのコンデンサCa,Ccが設けられており、DCDCコンバータ24は、これら2つのコンデンサCa,Ccを充電可能に構成される。
【0113】
このため、スイッチ23a,23bは、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、2つのコンデンサCa,Ccのいずれか1つの高電圧を印加することで、ピーク電流を供給可能なスイッチング素子として構成されることとなる。
【0114】
また、第2電流供給手段32aは、ピーク電流をコイル13a,14aに流すためのコンデンサCb,Cdと、コンデンサCbの正極側を出力端子P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ26bと、コンデンサCdの正極側を出力端子P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ26dと、直流電源(バッテリ)Bの電源電圧VBを昇圧してその電源電圧VBよりも高い高電圧を生成し、その高電圧をダイオードD1bを介してコンデンサCb,Cdに供給することによりコンデンサCb,Cdを充電するDCDCコンバータ24cと、を備えている。すなわち、1つの充電手段であるDCDCコンバータ24cに対して2つのコンデンサCb,Cdが設けられており、DCDCコンバータ24cは、これら2つのコンデンサCb,Cdを充電可能に構成される。
【0115】
このため、スイッチ23c,23dは、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、2つのコンデンサCb,Cdのいずれか1つの高電圧を印加することで、ピーク電流を供給可能なスイッチング素子として構成されることとなる。
【0116】
また、電磁弁駆動装置20dでは、電流検出用抵抗R1aの他端と出力端子P2,P4との間にスイッチ22eが直列に設けられ、電流検出用抵抗R1bの他端と出力端子P6,P8との間にスイッチ22fが直列に設けられている。このため、スイッチ22eは、両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段として機能し、両電磁弁11,12のいずれか1つが開弁状態となる場合に、これら両電磁弁11,12のコイル11a,12aの低電位側を全て接地するように構成されている。また、スイッチ22fは、両電磁弁13,14のコイル13a,14aの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段として機能し、両電磁弁13,14のいずれか1つが開弁状態となる場合に、これら両電磁弁13,14のコイル13a,14aの低電位側を全て接地するように構成されている。これにより、上記第4実施形態と同様に、コモンモード電圧に起因する電磁ノイズの影響を抑制することができる。
【0117】
また、出力端子P2,P4とコンデンサCcの正極側との間には、コイル11a,12aからコンデンサCcへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサCc側にして電流方向制御用のダイオードD3aが設けられている。また、出力端子P6,P8とコンデンサCdの正極側との間にも同様に、コイル13a,14aからコンデンサCdへフライバックエネルギーを回収するためのエネルギー回収用経路が設けられており、このエネルギー回収用経路上には、カソードをコンデンサCd側にして電流方向制御用のダイオードD3bが設けられている。
【0118】
このように構成される電磁弁駆動装置20eでは、第1電磁弁群G1のいずれかの電磁弁のコイルにピーク電流を供給する場合には、コンデンサCaおよびコンデンサCcのうち満充電状態のコンデンサの正極側のスイッチ(26a,26c)がオン状態になることで、開弁状態にすべき電磁弁のコイルにピーク電流を供給しその後ホールド電流を供給する。また、第2電磁弁群G2のいずれかの電磁弁のコイルにピーク電流を供給する場合には、コンデンサCbおよびコンデンサCdのうち満充電状態のコンデンサの正極側のスイッチ(26b,26d)がオン状態になることで、開弁状態にすべき電磁弁のコイルにピーク電流を供給しその後ホールド電流を供給する。
【0119】
このように、本実施形態に係る電磁弁駆動装置20eでは、グループ(群)が異なる電磁弁、例えば、第1電磁弁群G1の電磁弁11と第2電磁弁群G2の電磁弁13とを同時に開弁可能に駆動制御することができる。
【0120】
特に、第1電流供給手段31aにはDCDCコンバータ24に対して2つのコンデンサCa,Ccが設けられているため、制御回路21によるスイッチ26a,26cの制御により、1のコンデンサが充電状態であっても他の満充電状態のコンデンサを利用することができる。これにより、第1電磁弁群G1のうちの1の電磁弁(例えば、電磁弁11)を駆動させた後に他の電磁弁(例えば、電磁弁12)を駆動させるまでの時間を短縮することができる。
【0121】
同様に、第2電流供給手段32aにはDCDCコンバータ24cに対して2つのコンデンサCb,Cdが設けられているため、制御回路21によるスイッチ26b,26dの制御により、1のコンデンサが充電状態であっても他の満充電状態のコンデンサを利用することができる。これにより、第2電磁弁群G2のうちの1の電磁弁(例えば、電磁弁13)を駆動させた後に他の電磁弁(例えば、電磁弁14)を駆動させるまでの時間を短縮することができる。
【0122】
なお、電磁弁駆動装置20eは、第1電磁弁群G1および第2電磁弁群G2の2つの電磁弁群を駆動対象とすることに限らず、3つ以上の電磁弁群を駆動対象としてもよい。また、各電磁弁群は、同時に開弁状態にならない2つの電磁弁から構成されることに限らず、同時に開弁状態にならない3つ以上の電磁弁から構成されてもよい。
【0123】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7実施形態に係る電磁弁駆動装置について図を参照して説明する。図12は、第7実施形態に係る電磁弁駆動装置20fを採用した燃料噴射制御装置10の概略構成を示すブロック図である。
本第7実施形態に係る電磁弁駆動装置20fは、上記第6実施形態に対して、電流供給手段31a,32aに代えて上述した電流供給手段31,32を採用するとともに、これら2つの電流供給手段31,32のそれぞれが同じ組のコンデンサと他の組のコンデンサとのいずれかを利用可能に構成されている。
【0124】
具体的には、図12に示すように、電磁弁駆動装置20fには、第1コンデンサCaの正極側を出力端子P1,P3のいずれかに接続するためのスイッチ25aと、このスイッチ25aと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4aと、第2コンデンサCbの正極側を出力端子P5,P7のいずれかに接続するためのスイッチ25bと、このスイッチ25bと各出力端子との間に配置される逆流防止用のダイオードD4bと、が設けられている。そして、スイッチ25aのコンデンサ側とスイッチ25bのコイル側とを通電可能に接続するスイッチ27aと、このスイッチ27aとスイッチ25bのコイル側との間に配置される逆流防止用のダイオードD5aと、スイッチ25aのコイル側とスイッチ25bのコンデンサ側とを通電可能に接続するスイッチ27bと、このスイッチ27bとスイッチ25aのコイル側との間に配置される逆流防止用のダイオードD5bと、が設けられている。
【0125】
これにより、第1電磁弁群G1の電磁弁11と電磁弁12とを連続して駆動制御する場合には、スイッチ27a,27bをオフ状態にするとともにコイル11aにピーク電流およびホールド電流を供給するようにスイッチ22e,23a,23b等を制御することで、第1コンデンサCaを利用した電磁弁11の駆動制御が実施される。そして、電磁弁11の駆動期間終了後に、スイッチ27bをオン状態にすることで第1電磁弁群G1に対して第2コンデンサCbの高電圧を印加可能な状態にし、コイル12aにピーク電流およびホールド電流を供給するようにスイッチ22e,23a,23b等を制御することで、第2コンデンサCbを利用した電磁弁12の駆動制御が実施される。このように、スイッチ27bがオン状態になることで第2コンデンサCbからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD4aにより、各出力端子P1,又はP3の電圧が第1コンデンサCaの電圧より大きいためスイッチ25aの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。また、スイッチ25bがオン状態になることで第2コンデンサCbからピーク電流を供給している場合には、ダイオードD5bにより、各出力端子P5,又はP7の電圧が第1コンデンサCaの電圧より大きいためスイッチ27bの寄生ダイオードを通じて電流が流れることが防止される。
【0126】
このように、電磁弁駆動装置20fは、開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、同じ組のコンデンサの高電圧と他の組のコンデンサの高電圧とのいずれかを印加することでピーク電流を供給可能に構成される。これにより、同じ組のコンデンサが充電状態であっても他の組の満充電状態のコンデンサを利用することができるので、電磁弁群のうちの1の電磁弁を駆動させた後に他の電磁弁を駆動させるまでの時間(インターバル時間)を短縮することができる。
【0127】
なお、電磁弁駆動装置20fは、第1電磁弁群G1および第2電磁弁群G2の2つの電磁弁群を駆動対象とすることに限らず、3つ以上の電磁弁群を駆動対象としてもよい。また、各電磁弁群は、同時に開弁状態にならない2つの電磁弁から構成されることに限らず、同時に開弁状態にならない3つ以上の電磁弁から構成されてもよい。
【0128】
なお、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよい。
(1)本発明に係る電磁弁駆動装置は、2気筒エンジンの各気筒に燃料を噴射供給する電磁弁や4気筒エンジンの各気筒に燃料を噴射供給する電磁弁を制御対象とすることに限らず、例えば、3気筒エンジン用の電磁弁を制御対象としてもよいし、5気筒以上の多気筒エンジン用の電磁弁を制御対象としてもよい。また、2気筒以上のエンジンとしては、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等が挙げられる。
【0129】
(2)上述した各スイッチのうちスイッチング制御されないスイッチには、MOSFET等のスイッチング素子が採用されることに限らず、オン/オフ制御可能なスイッチ手段等が採用されてもよい。
【0130】
(3)使用状況に応じて、上述したエネルギー回収用経路上に設けられるエネルギー回収用のダイオードを省いてもよい。
【符号の説明】
【0131】
10…燃料噴射制御装置
11〜14…電磁弁
11a〜14a…コイル
20,20a〜20f…電磁弁駆動装置
24,24c…DCDCコンバータ(充電手段)
22,22a〜22f…スイッチ
23,23a〜23d…スイッチ
C,Ca〜Cd…コンデンサ
G,G1,G2…電磁弁群
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁弁のコイルに対して、設定された駆動期間の開始時に前記電磁弁を速やかに開弁させるためのピーク電流と、前記駆動期間が終了するまで前記電磁弁の開弁状態を保持するための電流であって前記ピーク電流よりも小さいホールド電流とを供給する電磁弁駆動装置であって、
前記ピーク電流を前記コイルに供給可能なコンデンサと、
直流電源から電源電圧よりも高い高電圧を生成して前記コンデンサを充電する充電手段と、を備え、
前記コンデンサは、前記直流電源から前記コイルへの給電経路に対して並列に接続されて、
前記コイルの高電位側および低電位側のいずれかに配置されて、前記駆動期間の開始時にオン状態になることで、前記コンデンサの高電圧を印加して前記ピーク電流を前記コイルに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで前記直流電源の電源電圧を印加して前記ホールド電流を前記コイルに供給するスイッチング素子を備えることを特徴とする電磁弁駆動装置。
【請求項2】
前記コンデンサの静電容量は、前記コイルに対して前記ピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項3】
同時に前記開弁状態にならない2つ以上の電磁弁から構成される電磁弁群が駆動対象であって、
前記スイッチング素子は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの高電位側に配置されて、前記電磁弁群のうち前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して前記ピーク電流および前記ホールド電流を供給可能に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項4】
前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段を備え、
前記スイッチ手段は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のいずれか1つが前記開弁状態となる場合に、これら各電磁弁のコイルの低電位側を全て接地することを特徴とする請求項3に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項5】
同時に前記開弁状態にならない2つ以上の電磁弁から構成される電磁弁群が駆動対象であって、
前記スイッチング素子は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの低電位側に配置されて、前記電磁弁群のうち前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して前記ピーク電流および前記ホールド電流を供給可能に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項6】
前記電磁弁群に対して、前記コンデンサ、前記充電手段および前記スイッチング素子を一組とする電流供給手段が複数組設けられることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項7】
1つの前記充電手段に対して複数の前記コンデンサを備え、
前記充電手段は、前記複数のコンデンサを充電可能に構成され、
前記スイッチング素子は、前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、前記複数のコンデンサのいずれか1つの高電圧を印加することで、前記ピーク電流を供給可能に構成されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項8】
複数の前記電磁弁群が駆動対象であって、これら各電磁弁群に対して、前記コンデンサ、前記充電手段および前記スイッチング素子を一組とする電流供給手段がそれぞれ設けられ、
前記電流供給手段の前記スイッチング素子は、前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、同じ組の前記コンデンサの高電圧と他の組の前記コンデンサの高電圧とのいずれかを印加することで前記ピーク電流を供給可能に構成されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項1】
電磁弁のコイルに対して、設定された駆動期間の開始時に前記電磁弁を速やかに開弁させるためのピーク電流と、前記駆動期間が終了するまで前記電磁弁の開弁状態を保持するための電流であって前記ピーク電流よりも小さいホールド電流とを供給する電磁弁駆動装置であって、
前記ピーク電流を前記コイルに供給可能なコンデンサと、
直流電源から電源電圧よりも高い高電圧を生成して前記コンデンサを充電する充電手段と、を備え、
前記コンデンサは、前記直流電源から前記コイルへの給電経路に対して並列に接続されて、
前記コイルの高電位側および低電位側のいずれかに配置されて、前記駆動期間の開始時にオン状態になることで、前記コンデンサの高電圧を印加して前記ピーク電流を前記コイルに供給し、このピーク電流の供給後にスイッチングを開始することで前記直流電源の電源電圧を印加して前記ホールド電流を前記コイルに供給するスイッチング素子を備えることを特徴とする電磁弁駆動装置。
【請求項2】
前記コンデンサの静電容量は、前記コイルに対して前記ピーク電流が供給可能な上限電流値となるように設定されることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項3】
同時に前記開弁状態にならない2つ以上の電磁弁から構成される電磁弁群が駆動対象であって、
前記スイッチング素子は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの高電位側に配置されて、前記電磁弁群のうち前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して前記ピーク電流および前記ホールド電流を供給可能に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項4】
前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの低電位側をそれぞれ接地可能に共用されるスイッチ手段を備え、
前記スイッチ手段は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のいずれか1つが前記開弁状態となる場合に、これら各電磁弁のコイルの低電位側を全て接地することを特徴とする請求項3に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項5】
同時に前記開弁状態にならない2つ以上の電磁弁から構成される電磁弁群が駆動対象であって、
前記スイッチング素子は、前記電磁弁群を構成する各電磁弁のコイルの低電位側に配置されて、前記電磁弁群のうち前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して前記ピーク電流および前記ホールド電流を供給可能に構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項6】
前記電磁弁群に対して、前記コンデンサ、前記充電手段および前記スイッチング素子を一組とする電流供給手段が複数組設けられることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項7】
1つの前記充電手段に対して複数の前記コンデンサを備え、
前記充電手段は、前記複数のコンデンサを充電可能に構成され、
前記スイッチング素子は、前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、前記複数のコンデンサのいずれか1つの高電圧を印加することで、前記ピーク電流を供給可能に構成されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置。
【請求項8】
複数の前記電磁弁群が駆動対象であって、これら各電磁弁群に対して、前記コンデンサ、前記充電手段および前記スイッチング素子を一組とする電流供給手段がそれぞれ設けられ、
前記電流供給手段の前記スイッチング素子は、前記開弁状態にすべき電磁弁のコイルに対して、同じ組の前記コンデンサの高電圧と他の組の前記コンデンサの高電圧とのいずれかを印加することで前記ピーク電流を供給可能に構成されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載の電磁弁駆動装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−241668(P2012−241668A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114812(P2011−114812)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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