説明

電磁弁

【課題】全てのポートが常時連通する異常な状態になってもエンジンに不具合が発生しない安全側に動作する電磁弁を提供する。
【解決手段】制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの油圧通路の圧力損失がアクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの油圧通路の圧力損失よりも大きくなるようボール弁14のストロークを規制する位置規制部材16を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばオイルコントロールバルブとして用いられる電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オイルコントロールバルブにおいては、従来からボール弁によるブリード式電磁弁を用いてポート間の遮断、連通を行う構成が開示されている。例えば、特許文献1の電磁弁によれば、供給圧ポート(入力ポート)から制御圧ポート(出力ポート)への油圧通路上にはボール弁と弁座が設けられており、制御圧ポートからドレンポートへの油圧通路上には弁体と弁座が設けられている。電磁弁はシャフトを駆動させてボール弁と弁体を移動させ、どちらかの油圧通路を連通するように構成されている。
電磁弁は、オン状態のときに供給圧ポートから制御圧ポートへの油圧通路を連通し、例えばオイルポンプから供給圧ポートと制御圧ポートを介してアクチュエータにエンジンオイルを供給し、アクチュエータがエンジンオイルの供給圧に応じてオイルポンプを制御する。オイルポンプはエンジンオイルの供給量を増やさないように制御されて必要のないエンジンオイルの供給を抑制する。
一方、電磁弁は、例えば断線により電力が供給されない等の電磁弁の不具合によってオイルポンプの制御が不能な状態になった場合、シャフトがボール弁の閉方向に戻ってオフ状態になるよう設定されている。電磁弁はオフ状態のときに供給圧ポートから制御圧ポートへの油圧通路を遮断して制御圧ポート内の油圧をドレンポートから大気圧に開放し、オイルポンプはアクチュエータによる制御が解除され、エンジンの回転数に応じた油圧でエンジンオイルを供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−118629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の構成において、作動油としてのエンジンオイル中に不純物等(コンタミ)の大きな異物がボール弁と弁座との間に付着した場合、ボール弁と弁座の間が完全には遮断されず、全てのポートが常時連通した異常な状態になるという課題があった。このような異常な状態において、制御ポートの圧力が高まりオイルポンプが低油圧制御となってしまった際に、エンジンを高回転域(例えば4000rpm超)等の高負荷で運転した場合、オイルポンプからのエンジンオイルの供給量が不足してエンジンが焼き付いてしまうという重大な不具合が考えられる。
【0005】
この発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、全てのポートが常時連通する異常な状態になってもエンジンに不具合が発生しない安全側に動作する電磁弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る電磁弁は、シャフトを軸方向に駆動させる駆動部を搭載した第1のハウジングと、シャフトを一端から挿入して第1のハウジングと一体的に組み付けられ、オイルポンプからオイルを入力する入力ポート、オイルポンプを制御するアクチュエータにオイルを供給する出力ポート、出力ポートのオイルを排出するドレンポートを有する第2のハウジングと、第2のハウジング内に配置され、軸方向に連通する軸穴の両端に弁座を有し、軸穴と出力ポートの間を連通する穴を有する円筒体と、円筒体の軸穴に端部が挿入され、シャフトによって軸方向に駆動されて円筒体の一方の弁座と密着して出力ポートからドレンポートへの油圧通路を遮断する弁体と、弁体の端部と当接し、弁体の動作により押されて円筒体の他方の弁座と離れ、入力ポートから出力ポートへの油圧通路を連通させるボール弁と、ボール弁を円筒体の他方の弁座に付勢するスプリングとを有する電磁弁において、第2のハウジング内に設けられ、入力ポートから出力ポートへの油圧通路の圧力損失が出力ポートからドレンポートへの油圧通路の圧力損失よりも大きくなるようボール弁のストロークを規制する位置規制部材を備えている。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る電磁弁によれば、入力ポートから出力ポートへの油圧通路の圧力損失が出力ポートからドレンポートへの油圧通路の圧力損失よりも大きくなるようボール弁のストロークを規制する位置規制部材を備える構成にしたので、異物がボール弁と弁座との間に付着して全てのポートが常時連通した状態においても、アクチュエータ内の油圧をドレンポートから大気圧に開放して安全側に動作させることができる。その結果、全てのポートが常時連通した異常な状態において、エンジンを高回転域等の高負荷で運転した場合でもエンジンが焼き付く不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1の電磁弁を示す図である。
【図2】実施の形態1の電磁弁によりオイルポンプを制御するシステムの構成の一例を示す図である。
【図3】実施の形態1の電磁弁の構成を示す図1の一部を拡大した図である。
【図4】実施の形態1の電磁弁のバルブの形状を示す図3のA−A線断面図である。
【図5】実施の形態1の電磁弁のテーパスプリングの挿入方向を示す図である。
【図6】実施の形態1の電磁弁の動作を示す図である。
【図7】実施の形態1の電磁弁によるエンジンオイルの供給量を示す図である。
【図8】実施の形態2の電磁弁の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
電磁弁1は、図1に示すように第2のハウジング2、第1のハウジング3、弁部10、駆動部20、コネクタ30で構成されており、ボールを弁としたブリード式の電磁弁である。第2のハウジング2は、油圧通路としての制御側ポート(入力ポート)2a、アクチュエータ側ポート(出力ポート)2b、ドレン側ポート(ドレンポート)2cを有している。第2のハウジング2の制御側ポート2aは後述する図2のオイルポンプ5に接続されており、オイルポンプ5から送出されたエンジンオイルを入力して供給する。アクチュエータ側ポート2bは後述する図2のアクチュエータ6に接続されており、エンジンオイルをアクチュエータ6に出力して供給する。ドレン側ポート2cは後述する図2のドレン1aに接続されており、アクチュエータ側ポート2bを介してアクチュエータ6に供給されたエンジンオイルを排出してアクチュエータ6内の油圧を大気圧に開放する。
【0010】
駆動部20は、図1に示すようにスプリング21、ボス22、シャフト23、プランジャー24、パイプ25、コア26、コイル27、ボビン28、Oリング29a,29b,29cで構成されている。ここでシャフト23はプランジャー24と一体に取り付けられており、プランジャー24と一体的に動作する。スプリング21は押圧ばねとしてプランジャー24の後端に取り付けられており、シャフト23の軸前方(先端方向)に付勢している。駆動部20は既知の技術によりシャフト23を軸前方(先端方向)に駆動させる。また、駆動部20は、例えば断線により電力が供給されなくなった場合、シャフト23の駆動を停止し、シャフト23は、後述するテーパスプリング15の付勢力で軸後端方向に移動する。この構成により、駆動部20は電磁弁1としての動作上で不具合が生じた場合、テーパスプリング15の付勢力によりシャフト23を安全(フェールセーフ)側に動作させることができる。
コネクタ30はターミナル31を有しており、図示しない外部の電源から駆動部20へ電流を供給する。
【0011】
弁部10は、弁体12、円筒体13、ボール弁14、スプリング21より強いテーパスプリング15、位置規制部材16で構成されており、第2のハウジング2の内部に搭載され制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの油圧通路、アクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの油圧通路を遮断又は連通して油圧通路を切り換えるように機能する。詳細については後述する。
【0012】
弁部10は第2のハウジング2に搭載されており、駆動部20は第1のハウジング3に搭載されている。第2のハウジング2には第1のハウジング3のシャフト23が一端から挿入され、第2のハウジング2と第1のハウジング3は軸方向に一体的に組み付けられている。
【0013】
ここで、実施の形態1の電磁弁1によりオイルの供給量を制御するシステムについて図2を用いて説明する。図2に示すように電磁弁1の制御側ポート2aがオイルポンプ5に接続されており、アクチュエータ側ポート2bがアクチュエータ6に接続されており、ドレン側ポート2cがドレン1aに接続されている。
【0014】
オイルポンプ5はタンク5a内のオイルを出力して供給するポンプであり、例えば車両においては、図2に示すa,a´の配管を介して図示しないエンジンと電磁弁1にエンジンの回転数に応じてエンジンオイルを供給する。
【0015】
アクチュエータ6は供給されるオイルの圧力(供給圧)に応じてオイルポンプ5をオン状態又はオフ状態に制御する。アクチュエータ6は例えば供給されるエンジンオイルの圧力が所定の圧力以上になるとオイルポンプ5からのエンジンオイルの供給量を抑制し(オン状態)、オイルポンプ5は低油圧でエンジンオイルを送出する。アクチュエータ6は供給されるエンジンオイルの圧力が所定の圧力より小さいときオイルポンプ5を初期待機状態(オフ状態)にし、オイルポンプ5はエンジンの回転数に応じた高油圧でエンジンオイルを送出するように設定されている。
【0016】
次に弁部10の各構成について図3、図4、図5を用いて説明する。弁体12は図3に示すように軸方向に小径部12a、中径部12b、大径部12cを有している。弁体12の小径部12a側端部はボール弁14に当接しており、弁体12の大径部12c側端部は駆動部20のシャフト23の先端が当接している。小径部12aは端部が後述する円筒体13の軸穴13dに挿入されており、小径部12aの端部はボール弁14に当接している。中径部12bは後述する円筒体13の弁座13bと密着する形状を有しており、シャフト23により弁体12が押されて移動すると、弁座13bと密着してアクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの油圧通路を遮断する。大径部12cは円筒体13側と上述した図1の駆動部20側を連通する溝12dを有しており、溝12dは図4に示すように第2のハウジング2の内壁に沿って設けられ、大径部12cの軸方向前後のエンジンオイルを流通させて弁体12が滑らかに移動するように機能する。
【0017】
円筒体13は第2のハウジング2の内周に密接する略円筒形状に形成されており、その円筒中心の軸穴13dには上述した図1に示す駆動部20側から弁体12の小径部12aが挿入されている。円筒体13は図3に示すように略円筒形状の軸方向の両端に弁座13aと弁座13bを有している。また、円筒体13には軸穴13dと第2のハウジング2のアクチュエータ側ポート2bとを連通する穴13cが設けられている。ボール弁14側の弁座13aにはテーパスプリング15に付勢されたボール弁14が当接しており、制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの油圧通路を遮断している。
【0018】
また、円筒体13は弁体12側の端部に弁座13bを有しており、駆動部20のシャフト23が駆動して弁体12をボール弁14の開方向に押し付けると、弁体12が円筒体13方向に移動して弁体12の中径部12bと円筒体13の弁座13bが密着し、アクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの油圧通路を遮断する。
【0019】
ボール弁14は略球状に形成されており、円筒体13の軸穴13dから弁体12の小径部12aの先端が当接している。また、ボール弁14は弁体12に対向する方向からテーパスプリング15に付勢されて円筒体13の弁座13aに密着されている。ボール弁14は、弁体12の動作により小径部12aの先端を押し付けられると、円筒体13の弁座13aから離れて制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの油圧通路を連通する。
【0020】
テーパスプリング15はテーパ形状に形成されたばねであり、第2のハウジング2内の弁体12に対向してボール弁14に当接するよう配置され、ボール弁14を円筒体13の弁座13a方向に付勢している。
【0021】
位置規制部材16は、弁座13aに密着したボール弁14との間に図3に示す隙間Bを設けるように構成されており、ボール弁14の可動可能なストロークを隙間B分のみに規制するストローク規制部材として機能する。隙間Bの大きさは、制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの圧力損失がアクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの圧力損失よりも大きくなる(制御側ポート2a→アクチュエータ側ポート2bの圧力損失>アクチュエータ側ポート2b→ドレン側ポート2cの圧力損失)大きさで設定されている。このように設定された隙間Bにより、異物が円筒体13の弁座13aとボール弁14との間に付着して全ポートが連通した場合においてもドレン側ポート2cの影響が大きくなり、アクチュエータ側ポート2bの圧力状態がドレン側ポート2cに接続したドレンの圧力状態と同じになる。その結果、アクチュエータ6はオフ状態になり、オイルポンプ5はエンジンの回転数に応じた高油圧でエンジンオイルをエンジンに供給して、エンジンが焼き付くことはないので、異常が生じた場合にも常に安全(フェールセーフ)側に動作させることができる。
【0022】
位置規制部材16はテーパスプリング15のテーパに沿ったテーパ形状に形成されており、例えば鉄系の板金材をカップ形状に形成したものである。位置規制部材16はテーパスプリング15の台座としてテーパスプリング15と第2のハウジング2の内壁との間に配置されており、テーパスプリング15を安定的に固定して位置を保持し、テーパスプリング15による第2のハウジング2への直接的摺動による磨耗を防止している。
【0023】
また、位置規制部材16のカップ形状は図5(a)に示すテーパスプリング15と同じ傾斜のテーパ形状を有しており、テーパスプリング15を図5(b)に示すように逆向きに挿入した場合に途中で引っ掛かってテーパスプリング15の逆挿入を防止するように構成されている。
【0024】
なお、位置規制部材16はボール弁14を構成する素材より硬度が低い素材で構成することにより、ボール弁14が摩滅等の損耗を防止することができ、ボール弁14の変形によるシール漏れを防ぐことができる。
【0025】
次に電磁弁1の動作について説明する。図6(a)はアクチュエータ側ポート2bとドレン側ポート2cが連通している状態を示しており、図6(b)は制御側ポート2aとアクチュエータ側ポート2bが連通している状態を示しており、図6(c)は全ポートが連通した異常な状態を示している。図7はエンジン回転数とエンジンオイルの供給量の関係を示す図である。なお、図7においては一例としてエンジンの回転数が4000rpm以上の場合にエンジンオイル不足によるエンジン焼き付きの可能性があるものとして示している。
【0026】
図7に示すエンジン回転数が0からa(rpm)の間では、図1に示す駆動部20が駆動しない。ボール弁14は図6(a)に示すようにテーパスプリング15によって円筒体13方向に付勢されており、ボール弁14は円筒体13の弁座13aに密着して制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの油圧通路を遮断している。一方、弁体12はボール弁14に押されて後退し、これによってスプリング21に抗してシャフト23を後退移動させる。この弁体12の後退によって中径部12bが弁座13bから離れるため、アクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの油圧通路Cは連通している。したがって、アクチュエータ6はドレン側ポート2cと連通して大気圧と略同じであるためオン状態にならない。その結果、オイルポンプ5は図7のFに示すようにエンジンの回転数に応じてエンジンオイルの供給量を増加する。
【0027】
図7に示すエンジン回転数が所定のa(rpm)を超えると、駆動部20が駆動してプランジャー24を介してシャフト23を弁部10方向に駆動させる。シャフト23は弁体12方向に移動し、シャフト23の先端が弁体12の大径部12cを押すと同時に弁体12の小径部12aの先端がボール弁14をテーパスプリング15に抗して開方向に押し付ける。ボール弁14は図6(b)に示すように円筒体13の弁座13aから離れて位置規制部材16と当接する。また、弁体12の中径部12bは円筒体13の弁座13bと密着する。こうして、図6(b)に示すように制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bとへの油圧通路Dを連通すると共に、アクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cとへの油圧通路を遮断してアクチュエータ6にオイルポンプ5から供給されたエンジンオイルを出力する。アクチュエータ6はエンジンオイルの供給圧が所定の圧力を超えてオン状態となりオイルポンプ5を制御するので、オイルポンプ5からのエンジンオイルの供給量は図7のGに示すように維持される。このようにして、オイルポンプはエンジンオイルの供給量を増やさないように制御されて必要のないエンジンオイルの供給を抑制している。
【0028】
図7に示すエンジン回転数が4000(rpm)目前に達すると、駆動部20は駆動を停止する。ボール弁14がテーパスプリング15の付勢力により円筒体13の方向に移動すると同時に弁体12がボール弁14に押されてシャフト23の方向に移動し、シャフト23は弁体12の大径部12cに押されスプリング21の付勢力に抗して駆動部20の方向に移動し、図6(a)に示す初期状態の位置に戻る。このときボール弁14は円筒体13の弁座13aに密着し、弁体12の中径部12bは弁座13bから離れるので油圧通路Cが連通する。上述した図2のアクチュエータ6の油圧はアクチュエータ側ポート2bとドレン側ポート2cを介して大気圧と略同じになり、アクチュエータ6がオフ状態になる。その結果、オイルポンプ5は図7のH→Iに示すようにエンジンの回転数に応じてエンジンオイルの供給量を増加する。
【0029】
ここで、オイルコントロールバルブとしての電磁弁1に不具合が発生し、電磁弁1がオイルポンプ5を制御不能な状態になった場合について説明する。
例えばエンジンの回転数がa(rpm)と4000(rpm)の間のb(rpm)において、不具合により電磁弁1に電力が供給されなくなった場合、駆動部20は駆動を停止する。シャフト23はスプリング21の付勢力により駆動部20の方向に移動して初期状態の位置に戻る。ボール弁14はテーパスプリング15の付勢力によって円筒体13の弁座13aに密着し、制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの油圧通路を遮断する。同時に、アクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの油圧通路は連通され、図6(a)に示すように油圧通路Cが連通した状態になり、アクチュエータ側ポート2b内の油圧はドレンポート2cから大気圧に開放される。オイルポンプ5はアクチュエータ6による制御が解除されてエンジンオイルの供給量をFの延長線上のF´に増加させ、オイルポンプ5からのエンジンオイルの供給量は図7のJ→F´→Iに示すように推移する。その結果、オイルポンプ5はエンジンの回転数に応じた高油圧でエンジンオイルを供給する。
【0030】
このとき、図6(c)に示すようにエンジンオイル中の異物cが円筒体13の弁座13aとボール弁14との間に付着した場合、ボール弁14が弁座13aに密着せず、制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの油圧通路が連通した状態になる。また、ボール弁14は弁体12を少しだけ押し戻すので、弁体12の中径部12bは弁座13bから離れてアクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの油圧通路も連通した状態になる。
【0031】
ここで、ボール弁14のストロークは、上述した図3に示す隙間Bであり、隙間Bは制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの圧力損失がアクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの圧力損失よりも大きくなるよう設定されている。図6(c)に示すように、アクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの油圧通路Eの流れは、制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの油圧通路E´の流れよりも強いため、エンジンオイルが油圧通路E´、油圧通路Eを通ってドレン側ポート2cへ排出される。アクチュエータ側ポート2bはドレン側ポート2cと連通して大気圧と略同じになるため上述した図2に示すアクチュエータ6はオフ状態となり、アクチュエータ側ポート2b内の油圧はドレンポート2cから大気圧に開放される。オイルポンプ5はアクチュエータ6による制御が解除されてエンジンオイルの供給量をFの延長線上のF´に増加させ、オイルポンプ5からのエンジンオイルの供給量は図7のJ→F´→Iに示すように推移する。その結果、オイルポンプ5はエンジンの回転数に応じた高油圧でエンジンオイルを供給する。
【0032】
以上のように実施の形態1によれば、位置規制部材16は、制御側ポート2aからアクチュエータ側ポート2bへの圧力損失がアクチュエータ側ポート2bからドレン側ポート2cへの圧力損失よりも大きくなるようにボール弁14との間に隙間Bを設けて、ボール弁14のストロークを規制するように構成したので、異物が円筒体13の弁座13aとボール弁14との間に付着して全ポートが連通したままの異常な状態になっても制御側ポート2aからのエンジンオイルがアクチュエータ側ポート2bに供給されずにアクチュエータ内の油圧をドレンポートから大気圧に開放することができる。
その結果、全ポートが連通した異常な状態においても、エンジンを高回転域等の高負荷で運転した場合にエンジンの焼き付きによる不具合を発生させない安全(フェールセーフ)側に動作させることができる。
【0033】
実施の形態2.
実施の形態1においては、鉄系の板金材をカップ形状に形成した位置規制部材16を用いてボール弁14のストロークを規制する構成について説明したが、実施の形態2は供給されるエンジンオイルに異物の混入するのを抑制する構成について説明する。なお、実施の形態1と同様の構成については詳細な説明を省略する。
【0034】
位置規制部材17は上述した実施の形態1の位置規制部材16と同様の機能を有する。また、位置規制部材17は図8に示すようにメッシュ状に形成されており、制御側ポート2aとボール弁14とへの油圧通路上に配置されオイルフィルタとして機能する。
【0035】
第2のハウジング2の制御側ポート2aは、図8に示すように第2のハウジング2の軸方向先端に設けられており、制御側ポート2aから円筒体13の弁座13aの間の油圧流路上に位置規制部材17が配置できる位置に形成される。
【0036】
以上のように実施の形態2によれば、位置規制部材17をメッシュ状に形成し、制御側ポート2aから供給されるエンジンオイルがメッシュ状の位置規制部材17を通過するように配置して構成したので、エンジンオイルに混入した異物を取り除くことができ、不具合発生率を低減させることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 電磁弁、1a ドレン、2 第2のハウジング、2a 制御側ポート(入力ポート)、2b アクチュエータ側ポート(出力ポート)、2c ドレン側ポート(ドレンポート)、3 第1のハウジング、5 オイルポンプ、5a タンク、6 アクチュエータ、10 弁部、12 弁体、12a 小径部、12b 中径部、12c 大径部、12d 溝、13 円筒体、13a,13b 弁座、13c 穴、13d 軸穴、14 ボール弁、15 テーパスプリング、16,17 位置規制部材、20 駆動部、21 スプリング、22 ボス、23 シャフト、24 プランジャー、25 パイプ、26 コア、27 コイル、28 ボビン、29a,29b,29c Oリング、30 コネクタ、31 ターミナル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを軸方向に駆動させる駆動部を搭載した第1のハウジングと、
上記シャフトを一端から挿入して上記第1のハウジングと一体的に組み付けられ、オイルポンプからオイルを入力する入力ポート、上記オイルポンプを制御するアクチュエータに上記オイルを供給する出力ポート、上記出力ポートのオイルを排出するドレンポートを有する第2のハウジングと、
上記第2のハウジング内に配置され、軸方向に連通する軸穴の両端に弁座を有し、上記軸穴と上記出力ポートの間を連通する穴を有する円筒体と、
上記円筒体の軸穴に端部が挿入され、上記シャフトによって軸方向に駆動されて上記円筒体の一方の弁座と密着して上記出力ポートから上記ドレンポートへの油圧通路を遮断する弁体と、
上記弁体の端部と当接し、上記弁体の動作により押されて上記円筒体の他方の弁座と離れ、上記入力ポートから上記出力ポートへの油圧通路を連通させるボール弁と、
上記ボール弁を上記円筒体の他方の弁座に付勢するスプリングとを有する電磁弁において、
上記第2のハウジング内に設けられ、上記入力ポートから上記出力ポートへの油圧通路の圧力損失が上記出力ポートから上記ドレンポートへの油圧通路の圧力損失よりも大きくなるよう上記ボール弁のストロークを規制する位置規制部材を備えたことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
上記位置規制部材は、上記スプリングと上記第2のハウジングとの間に配置され、上記スプリングを位置決め保持することを特徴とする請求項1記載の電磁弁。
【請求項3】
上記位置規制部材は、上記スプリングがテーパ形状の場合、上記スプリングのテーパに沿ったテーパ形状に形成されていることを特徴とする請求項2記載の電磁弁。
【請求項4】
上記位置規制部材はメッシュ状で構成されており、上記入力ポートと上記円筒体の他方の弁座との間の油圧通路上に配置されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項に記載の電磁弁。
【請求項5】
上記位置規制部材は上記ボール弁を構成する素材より硬度の低い素材で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項に記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−122651(P2011−122651A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280404(P2009−280404)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】