説明

電線端末用固定具

【課題】基板の実装用のフリースペースを広く確保することができ、かつ電線を高い保持力で支持することができる電線端末用固定具を提供すること。
【解決手段】芯線31の外周を絶縁内皮部、編組部、絶縁外皮部の順に被覆して形成されるシールド電線3の端末部を保持して基板41の一方の面47に固定される金属板材からなる電線端末用固定具1であり、金属板材は、シールド電線の延在方向の両側を同じ方向に折り曲げて基板の一方の面と当接させて固着する2つの側板部7,9と、これらの側板部の間に設けられ、シールド電線3の絶縁外皮部及び露出された編組部を圧着して保持する2つのU字状の圧着部11,13とを有し、側板部7,9には、シールド電線3が挿通される電線挿通穴15,19が形成されるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線の端末部を保持して実装基板に取り付けられる電線端末用固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線の端末部において、絶縁被覆部から露出された芯線を基板(実装基板)の導体部分に接続する形態として、特許文献1には、金属製の薄板をプレス加工により成型し、露出された芯線を把持する把持部と、この把持部から延在して形成される筒状の取り付け部とを備えた端子構造が開示されている。
【0003】
この端子構造によれば、電線の端末部から芯線を露出させ、この露出された芯線とこの芯線の外周を覆う絶縁被覆部をそれぞれ2つの把持部で把持し、次いで端子の取付部を実装基板に形成された貫通穴に挿入し、基板の穴に挿入された取り付け部をかしめて端子を基板上に固定することにより、芯線と基板上の導体部分(例えば、プリント回路)を電気的に接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−294315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の端子構造によれば、基板に固定される端子の固定力を確保するため、端子の取り付け部、言い換えれば、基板の貫通穴を所定の大きさで形成する必要がある。すなわち、貫通穴が小さすぎると端子の固定力が不足するおそれがあり、また、端子を基板に取り付ける作業を手作業で行う場合には、貫通穴が小さすぎると取り付け部を穴に挿入しづらくなり作業効率が低下する。そのため、基板には比較的大きな貫通穴、つまり端子取り付け用のスペースを確保しなければならず、結果として実装用のフリースペースの面積が制限されるという問題がある。
【0006】
一方、基板に取り付けられる電線には、芯線の外周を絶縁内皮部、編組部、絶縁外皮部の順に被覆して形成され、芯線、絶縁内皮、編組部を電線の端から順に露出させた同軸線が用いられることがある。このような同軸線を特許文献1の端子を用いて基板に接続する場合、仮に露出された芯線と絶縁外皮の2箇所を端子で把持したとしても、電線に外力が加えられて編組部などに倒れが生じると、編組部が端子の導体部分と接触してショートするおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、基板の実装用のフリースペースを広く確保することができ、かつ電線を高い保持力で支持することができる電線端末用固定具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電線端末用固定具は、上記課題を解決するため、芯線の外周を絶縁外皮部で被覆した電線の端末部を保持して実装基板の一方の面に固定される金属板材からなる電線端末用固定具であって、金属板材は、電線の延在方向の両側を同じ方向に折り曲げて実装基板の一方の面に当接させて固着する2つの側板部と、この2つの側板部の間に設けられ、電線の絶縁外皮部を圧着して保持するU字状の圧着部とを有してなり、側板部には、電線が挿通される電線挿通穴が形成されてなることを特徴とする。
【0009】
本発明の電線端末用固定具は、芯線が露出された電線の端末部を圧着保持した状態で、実装基板の一方の面、つまりプリント回路などが形成される実装面と反対側の面に取り付けて使用することができる。ここで、露出された芯線は、実装基板に形成された貫通穴に挿通させて他方の面、つまり実装面から半田付けすることにより、電線と実装基板の導電部分を電気的に接続することができる。これにより、実装基板の端子取り付け用のスペースは貫通穴の周縁に限定されるため、実装用のフリースペースを広く確保することができる。
【0010】
また本発明において、電線は絶縁外皮部が圧着保持されるとともに、その圧着保持された両側の電線部分が電線挿通穴に挿通されてガイドされるため、例えば電線の後足側に外力が加えられても圧着部分に掛かる負担を少なくすることができ、電線の高い保持力を確保することができる。
【0011】
このような電線端末用固定具は、芯線の外周を絶縁内皮部、編組部、絶縁外皮部の順に被覆して形成され、芯線、絶縁内皮部、編組部を端部から順に露出させたシールド電線を保持する場合においても、絶縁内皮部及び編組部を有しない一般電線を保持する場合と同様の効果を得ることができるが、シールド電線を用いる場合は、特に、以下のように構成したものを適用することができる。
【0012】
すなわち、シールド電線の端末部を保持して実装基板の一方の面に固定される金属板材からなる電線端末用固定具であって、金属板材は、シールド電線の延在方向の両側を同じ方向に折り曲げて実装基板の一方の面と当接させて固着する2つの側板部と、この2つの側板部の間に設けられ、シールド電線の絶縁外皮部及び露出された編組部を圧着して保持する2つのU字状の圧着部とを有してなり、側板部には、シールド電線が挿通される電線挿通穴が形成されてなるものとする。
【0013】
このように、電線を絶縁外皮部と編組部で圧着保持するとともに、例えば電線挿通穴内に電線の絶縁内皮部と絶縁外皮部をそれぞれ位置させるようにすれば、電線に外力が加えられても、圧着部分に掛かる負担を少なくすることができ、さらに、電線は圧着保持された部分の両側が電線挿通穴にガイドされるため、電線の倒れなどが抑えられ、芯線と編組部のショートを抑制することができる。
【0014】
また、上記のような電線端末用固定具は、側板部に実装基板の一方の面と当接する折り曲げ面が形成されてなるものとする。このようにすれば、実装基板の一方の面と側板部との接触面積を大きくすることができるため、電線端末用固定具を実装基板に固着させる作業が容易になり、かつ電線端末用固定具の固定力を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板の実装用のフリースペースを広く確保することができ、かつ電線を高い保持力で支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明を適用してなる電線端末用固定具に電線を保持した状態を示す斜視図である。
【図2】本発明を適用してなる電線端末用固定具が電線を保持した状態で実装基板に固着させた状態を示す斜視図である。
【図3】本発明を適用してなる電線端末用固定具に保持される電線の端末部の斜視図である。
【図4】本発明を適用してなる電線端末用固定具において電線をセットする前の状態を示す斜視図である。
【図5】本発明を適用してなる電線端末用固定具において電線をセットして圧着する前の状態を示す斜視図である。
【図6】本発明を適用してなる電線端末用固定具において電線を圧着した後の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用してなる電線端末用固定具の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0018】
本実施の形態の電線端末用固定具1は、シールド電線3の端末部を保持した状態で、実装基板(以下、基板と略す。)の一方の面に取り付けられるものである。この電線端末用固定具1は、図1に示すように、基底部5と、第1の側板部7と、第2の側板部9と、第1の圧着部11と、第2の圧着部13を備えて構成され、金属板材に打ち抜き加工などのプレス加工を施して所定の形状の板材を形成し、これに必要な曲げ加工などを施すことにより形成される。
【0019】
第1の側板部7と第2の側板部9は、基底部5の長手方向、つまり電線の延在方向の両側を同じ方向に折り曲げて形成される。第1の側板部7には、シールド電線3が挿通される第1の電線挿通穴15が形成されるとともに、その折り曲げた先には、基板の面と当接される第1の設置部17が形成される。また、第2の側板部9には、シールド電線3が挿通される第2の電線挿通穴19が形成されるとともに、その折り曲げた先には、基板の一方の面と当接される第2の設置部21が形成される。第1の設置部17は、第1の側板部7を第2の側板部9の方向に略直角に折り曲げて形成され、第2の設置部21は、第2の側板部9を第1の側板部7の方向に略直角に折り曲げて形成される。
【0020】
第1の圧着部11と第2の圧着部13は、いずれも基底部5の短手方向の両側からそれぞれ外側に向かってU字状に延在する圧着片を内側に折り曲げることにより、シールド電線3を包み込むようにして圧着するようになっている。
【0021】
電線端末用固定具1に保持されるシールド電線3は、図3に示すように、芯線31の外周を覆う絶縁内皮部33と、この絶縁内皮部33の外周を覆う導電性の編組部35と、この編組部35の外周を覆う絶縁外皮部37とから構成される。絶縁内皮部33及び絶縁外皮部37は合成樹脂製の絶縁体にて形成され、芯線31及び編組部35は、導電体となっている。このシールド電線3の端末部は、芯線31、絶縁内皮部33、編組部35の順に露出させた状態となっている。
【0022】
次に、電線端末用固定具1にシールド電線3を組み付けて保持する方法について、図4乃至図6を参照して説明する。
【0023】
まず、図4に示す電線端末用固定具1と、図3に示す端末部が露出処理されたシールド電線3を用意する。次に、電線端末用固定具1の第2の電線挿通穴19からシールド電線3を挿入し、さらに挿入したシールド電線3の先を第1の電線挿通穴15に挿入させる。このシールド電線3の挿入は、例えば、第1の圧着部11と第2の圧着部13の間の基底部5に形成される段差に絶縁外皮部37の端部が当接したところで停止させる。
【0024】
図5に示すように、シールド電線3の挿入を停止させた時点で、第1の電線挿通穴15内と第2の電線挿通穴19内にはそれぞれ絶縁内皮部3、絶縁外皮部37が配置され、さらに、第1の圧着部11(2枚の圧着片)に挟まれた基底部5の位置には絶縁内皮部33が配置され、第2の圧着部13(2枚の圧着片)に挟まれた基底部5の位置には絶縁外皮部37が配置される。
【0025】
このような状態とした後、電線端末用固定具1は、図6に示すように、第1の圧着部11の2枚の圧着片を折り曲げて編組部35を包み込むようにして圧着し、第2の圧着部13の2枚の圧着片を折り曲げて絶縁外皮部37を包み込むようにして圧着する。そして、第1の電線挿通穴15を貫通したシールド電線3から露出する芯線31は、第1の側板部7と第2の側板部9が延在する方向、つまり電線端末用固定具1が取り付けられる基板の面側に向けて折り曲げられる。
【0026】
次に、このようにしてシールド電線3を圧着保持した電線端末用固定具1を基板41にセットする。ここで、基板41には、図2に示すように、芯線3を挿通させるための貫通穴43と、第1の設置部17及び第2の設置部21がそれぞれ設置される半田付け面45が設けられている。そのため、電線端末用固定具1を基板41に取り付ける際は、電線端末用固定具1に支持されたシールド電線3の芯線31を貫通穴43に挿通させた状態で、第1の設置部17と第2の設置部21をそれぞれ半田付け面45に当接させ、半田付けにより固着させる。
【0027】
基板41の貫通穴43に挿入され、電線端末用固定具1が固着された基板41の取り付け面47の反対側の実装面49から突出した芯線31は、貫通穴43の周縁が半田付けされ、実装面49に形成されたプリント回路などと電気的に接続される。電線端末用固定具1に保持されたシールド電線3は、基板41の取り付け面47に沿って配索されて図示しない電源側などに接続され、実装面49のプリント回路などは図示しない電気部品などに通電される。
【0028】
このように本実施の形態によれば、シールド電線3の芯線31と基板41の導電部分との接続を、基板41に形成された貫通穴43の周縁で半田付けすることによりなされるため、例えば特許文献1のように端子の取り付け部を基板に形成された貫通穴に挿入し、これをかしめて基板上に固定する端子構造と比べた場合、端子取り付け用のスペースを小さくすることができる。そのため、基板41の実装面49などにおいては、プリント回路などの実装可能なフリースペースを広く確保することができ、例えば、グラウンドパターンが広くなることによるノイズの低減が可能となる。
【0029】
また、本実施の形態の電線端末用固定具1では、シールド電線3を保持する構造として、編組部35と絶縁外皮部37をそれぞれ圧着保持するとともに、第1の電線挿通穴15内に絶縁内皮部33を配置させ、第2の電線挿通穴19内に絶縁外皮部37を配置させてガイドするようにしている。そのため、シールド電線3の後足側に外力が加えられても圧着部分などに掛かる負担を少なくすることができ、シールド電線3の高い保持力を確保することができる。また、例えば、電線端末用固定具1を基板41に組み付ける際、シールド電線3の絶縁内皮部33や編組部35などに外力が加えられたとしても、芯線31は電線端末用固定具1から離れた位置に配置されており、芯線31を除いた端末部分に倒れなどが生じることもないため、例えば、芯線31と編組部35とのショートを抑制することができる。
【0030】
また、本実施の形態では、電線端末用固定具1において、第1の電線挿通穴15と第2の電線挿通穴19の穴の大きさについて特に言及していないが、第1の電線挿通穴15は、絶縁内皮部33が挿通されて編組部35が挿通されない範囲、言い換えれば、絶縁内皮部33が挿通された状態で第1の電線挿通穴15がガイド機能を損なわない程度の僅かな隙間ができる程度の穴径に形成され、第2の電線挿通穴19は、絶縁外皮部37が挿通された状態で第2の電線挿通穴19がガイド機能を損なわない程度の僅かな隙間ができる程度の穴径に形成されていることが好ましい。このようにすれば、電線端末用固定具1にシールド電線3を挿通させる際に、第1の電線挿通穴15にストッパとしての機能をもたせることができ、さらに、第1の電線挿通穴15と第2の電線挿通穴19によるガイド機能を高めることができる。
【0031】
また、本実施の形態では、電線端末用固定具1において、第1の側板部7に第1の設置部17を形成し、第2の側板部9に第2の設置部21を形成することにより、第1の側板部7及び第2の側板部9が基板41の取り付け面47と接触する面積を広く確保している。そのため、電線端末用固定具1を基板41に固着させる作業を容易化することができ、しかも、電線端末用固定具1の固定力を向上させることができる。
【0032】
また、上記実施の形態においては、電線端末用固定具1に保持される電線として、シールド電線3を用いる場合について説明したが、絶縁内皮部33と編組部35を有しない一般電線を保持することも当然可能である。その場合、電線端末用固定具は、芯線の外周を覆う絶縁外皮部のみを圧着保持することになる。
【0033】
また、上記実施の形態においては、電線端末用固定具1を基板41の取り付け面47に形成される半田付け面45に半田付けして取り付ける場合について説明したが、取り付け方法はこの例に限定されるものではなく、要は、電線端末用固定具1が、第1の側板部7及び第2の側板部9を介して基板41に固着される構造であれば、基板41の構造はこれに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0034】
1 電線端末用固定具
3 シールド電線
5 基底部
7 第1の側板部
9 第2の側板部
11 第1の圧着部
13 第2の圧着部
15 第1の電線挿通穴
17 第1の設置部
19 第2の電線挿通穴
21 第2の設置部
31 芯線
33 絶縁内皮部
35 編組部
37 絶縁外皮部
41 基板
43 貫通穴
45 半田付け面
47 取り付け面
49 実装面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線の外周を絶縁外皮部で被覆した電線の端末部を保持して実装基板の一方の面に固定される金属板材からなる電線端末用固定具であって、
前記金属板材は、前記電線の延在方向の両側を同じ方向に折り曲げて前記実装基板の一方の面に当接させて固着する2つの側板部と、この2つの側板部の間に設けられ、前記電線の前記絶縁外皮部を圧着して保持するU字状の圧着部とを有してなり、前記側板部には、前記電線が挿通される電線挿通穴が形成されてなる電線端末用固定具。
【請求項2】
芯線の外周を絶縁内皮部、編組部、絶縁外皮部の順に被覆して形成されるシールド電線の端末部を保持して実装基板の一方の面に固定される金属板材からなる電線端末用固定具であって、
前記金属板材は、前記シールド電線の延在方向の両側を同じ方向に折り曲げて前記実装基板の一方の面と当接させて固着する2つの側板部と、この2つの側板部の間に設けられ、前記シールド電線の前記絶縁外皮部及び露出された前記編組部を圧着して保持する2つのU字状の圧着部とを有してなり、
前記側板部には、前記シールド電線が挿通される電線挿通穴が形成されてなる電線端末用固定具。
【請求項3】
前記側板部には、前記実装基板の一方の面と当接する折り曲げ面が形成されてなる請求項1又は2のいずれかに記載の電線端末用固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−49045(P2011−49045A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196822(P2009−196822)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】