説明

電線被覆ゴム

【課題】 押出し加工性に優れた電線被覆用ゴム組成物。
【解決手段】 下記の触媒Aの存在下、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンと非共役ポリエンを重合させて得られ、かつ下記の(1)〜(3)の条件を充足するエチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン系共重合ゴムを用いた電線被覆ゴム用組成物。
触媒A:平均組成式、VO(OR)m(OR’)n3-m-n(ただし、Rは2級以上の炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R’は炭素数1〜8の直鎖状炭化水素基を表し、Xはハロゲンを表し、m及びnは正の数を表し、かつm+n≦3、m≠0、nm≠0である。)
(1)系共重合ゴム中のエチレン単位/α−オレフィン単位の重量比が85/15〜65/35であること
(2)よう素価が1〜15であること
(3)共重合ゴムのML粘度(ML1+4,100℃)が、10〜90であること

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線被覆用ゴム用組成物に関するものである。更に詳しくは、エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン系共重合ゴムを主成分として含有し、押出し加工特性と強度のバランスに優れる電線被覆用ゴム用組成物に関する。本発明の押出し成形加硫ゴム用組成物は、電線被覆ゴムとして最適に適用される。
【背景技術】
【0002】
一般に、エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン系共重合ゴムを原料とする加硫ゴムは、押出し成形や、インジェクション成形、型成形などを経て製造される。昨今のコスト削減要望から、いかに生産性を上げるかが工業上の課題となっている。
【0003】
エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン系共重合ゴムにより被覆される電線は、押出し成形を経て製造されており、特に高速成形時の肌荒れが無いことが要求される。得られる加硫ゴムの物性を考慮すると高ムーニー粘度のゴムを使用する必要があるが、生産性を考慮すると流動性の高い、低ムーニー粘度のゴムを使用する必要があり、物性と流動性のバランスをとるのが困難な場合があった。また、流動性と加硫ゴム物性とのバランスを改良する目的で高エチレン含量のエチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン系共重合ゴムとすることも提案されている。このようなエチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン系共重合ゴムではそのエチレン結晶性から得られるゴムが硬くなり、ゴムとして求められているゴム弾性が低下したり、時によっては、バンバリーミキサーなどの混練機で配合剤とゴムとを混練する際に混練不良を生じたりすることがあった。
【0004】
【特許文献1】特開昭61−264035
【特許文献2】特開平08−337619
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる状況の下、本発明が解決しようとする課題は、エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン共重合体ゴムを成分として含有する押出し加工性に優れた電線被覆用ゴム組成物を提供する点に存する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記の触媒Aの存在下、下記の必須成分(a)〜(c)を重合させて得られ、かつ下記の(1)〜(3)の条件を充足するエチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン系共重合ゴムを用いた電線被覆ゴム用組成物に係るものである。
触媒A:平均組成式、VO(OR)m(OR’)n3-m-n(ただし、Rは2級以上の炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R’は炭素数1〜8の直鎖状炭化水素基を表し、Xはハロゲンを表し、m及びnは正の数を表し、かつm+n≦3、m≠0、nm≠0である。)
(a):エチレン
(b):炭素数3〜20のα−オレフィン
(c):非共役ポリエン
(1)系共重合ゴム中のエチレン単位/α−オレフィン単位の重量比が85/15〜65/35であること
(2)よう素価が1〜15であること
(3)共重合ゴムのML粘度(ML1+4,100℃)が、10〜90であること
また、本発明のうち第二の発明は、上記の電線被覆用ゴム組成物を用いた加硫ゴム被覆電線に係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン共重合体ゴムを成分として含有し、押出し加工性に優れた電線被覆用ゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の共重合体ゴムは、触媒Aの存在下に重合される、エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン系共重合体ゴムである。
【0009】
触媒Aは、平均組成式、VO(OR)m(OR’)n3-m-n(ただし、Rは2級以上の炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R’は炭素数1〜8の直鎖状炭化水素基を表し、Xはハロゲンを表し、m及びnは正の数を表し、かつm+n≦3、m≠0、n≠0である。)で表され、例えば、一般式VO(OR)n3-n(ただし、Rは2級以上の炭化水素基を表し、Xはハロゲンを表し、nは整数を表し、かつ0≦n≦3である。)で示されるバナジウム化合物と炭素数1〜8の1級アルコールとを混合・反応させることにより得ることができる。ここでmは0.5〜2であることが好ましい。mの数値が0.5未満の場合、加工性の改良効果に乏しく、2を超えると圧縮永久歪が劣る傾向が認められる場合がある。また、nは1〜2であることが好ましい。nが1未満では圧縮永久歪が劣る傾向が認められ、2を超えると加工性の改良効果が小さくなってくる。具体的には、VO(Oiso−C37)(OEt)Cl、VO(Oiso−C37)(OEt)2、VO(Oiso−C370.5(OEt)1.5ClVO(Oiso−C371.5(OEt)0.5Cl、VO(Oiso−C370.8(OEt)1.1Cl1.1等の平均組成を有する触媒成分を例示することができる。また、これらのうち、合成が容易で特に好ましい例としてVO(Oiso−C370.8(OEt)1.1Cl1.1をあげることができる。これらはVOCl3と対応するアルコールを混合・反応させたり、あるいは、VOCl3とVO(OR)3及び、VO(OR’)3を混合・反応させることによって容易に得ることができる。
【0010】
また、重合の実施に際しては、助触媒も必要とされる。助触媒としては、一般式R’mAlX3-m(ただし、R’は炭化水素基を表し、Xはハロゲンを表し、mは整数を表し、かつ0≦m≦3である。)で示される有機アルミニウム化合物を使用することができ、(C252AlCl、(C492AlCl、(C6132AlCl、(C251.5AlCl1.5、(C491.5AlCl1.5、(C6131.5AlCl1.5、C25AlCl2、C49AlCl2、C613AlCl2等が例示できる。
【0011】
重合反応における有機アルミニウム化合物とバナジウム化合物(触媒A)の割合は、重合の活性安定性観点からモル比で2.5以上であることが好ましい。
【0012】
また、コモノマーのα−オレフィンとしては、炭素数3〜20のα−オレフィンが好ましく、具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等の直鎖状オレフィン類、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の分岐オレフィン類、ビニルシクロヘキサン等が例示される。中でも入手の容易性の観点から、好ましくは、プロピレン、1−ブテンであり、特に好ましくはプロピレンである。α−オレフィンとしては、同時に二種類以上のものを用いることもできる。
【0013】
非共役ポリエンとしては、たとえば、1,4−ヘキサジエン、1,6−オクタジエン、2−メチル−1,5−ヘキサジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエンなどのような鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラインデン、5−ビニルノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、6−クロロメチル−5−イソプロペニル−2−ノルボルネンのような環状非共役ジエン;2,3−ジイソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−エチリデン−3−イソプロピリデン−5−ノルボルネン、2−プロペニル−2,2−ノルボルナジエン、1,3,7−オクタトリエン、1,4,9−デカトリエンのようなトリエンがあげられ、その一種を単独で使用してもよく、又は二種以上を併用してもよい。なお、5−エチリデン−2−ノルボルネン及び/又はジシクロペンタジエンが好ましい。更に、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−(2−プロペニル)−2−ノルボルネン、5−(3−ブテニル)−2−ノルボルネン、5−(4−ペンテニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘキセニル)−2−ノルボルネン、5−(5−ヘプテニル)−2−ノルボルネン、5−(7−オクテニル)−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、6,10−ジメチル−1,5,9−ウンデカトリエン、5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、13−エチル−9−メチル−1,9,12−ペンタデカトリエン、5,9,13−トリメチル−1,4,8,12−テトラデカジエン、8,14,16−トリメチル−1,7,14−ヘキサデカトリエン、4−エチリデン−12−メチル−1,11−ペンタデカジエンを例示することができる。
【0014】
本発明の共重合体ゴム中のエチレン由来単位/α−オレフィン由来単位のモル比は0.90/0.10〜0.50/0.50であり、好ましくは0.88/0.12〜0.55/0.45である。該モル比が高過ぎると耐寒性が悪化し、低過ぎると強度が不足する。
【0015】
本発明の共重合体ゴム中のよう素価は1〜15(g/100gポリマー)であり、好ましくは1〜12であり、更に好ましくは3〜12である。よう素価が低過ぎると加硫に困難をきたし、高過ぎると耐候性に劣る。
【0016】
本発明の共重合体ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、30〜90であり、好ましくは30〜80の範囲である。該ムーニー粘度が低すぎると強度が不足し、高すぎると押出し加工性が低下する。
【0017】
本発明の共重合体ゴムは、一種を単独で、又は二種類以上をブレンドして上記のエチレン/α−オレフィン比、ムーニー粘度、非共役ポリエン含有量になるものが用いられる。
【0018】
本発明のゴム組成物を加硫して得られる加硫ゴムは、電線被覆ゴムなどの分野に最適に用いられる。
【0019】
本発明のゴム組成物には、必要に応じて共重合体ゴム以外の有機ポリマーをブレンドすることもできる。有機ポリマーとしては特に制限はなく、通常本分野で使用されているたとえば、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴムや液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状イソプレンゴム、変性液状イソプレンゴムなどの液状ジエン系ポリマーがあげられる。有機ポリマーのブレンドにあたっては、一種類の有機ポリマーをブレンドする場合もあるし、二種類以上の有機ポリマーをブレンドすることもできる。
【0020】
本発明のゴム組成物には、必要に応じて可塑剤、補強剤、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、加工助剤、老化防止剤、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂等の各種配合剤が適宜添加配合される。この可塑剤としては、通常ゴムに使用される可塑剤が使用されるが、例えば、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン、コールタールピッチ、ヒマシ油、アマニ油、サブ、密ロウ、リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、アタクチックポリプロピレンなどをあげることができる。中でも、特にプロセスオイルが好ましく用いられる。通常、これらの可塑剤は、共重合体ゴム100重量部に対して0〜150重量部、好ましくは0〜100重量部用いられる。かかる範囲で可塑剤を用いることにより、目的とする柔らかさのゴム組成物を得ることができる。
【0021】
本発明で使用される補強剤とは、便覧ゴム・プラスチック配合薬品(発行所 (株)ラバーダイジェスト社)に記載のとおり、ゴムに配合して加硫物の硬度、引張強度、モジュラス、引裂強度などの物性を向上させる配合剤を指す。具体的には、乾式法シリカ、湿式法シリカ、合成ケイ酸塩系シリカ、コロイダルシリカ、塩基性炭酸マグネシウム、活性化炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、マイカ、ケイ酸マグネシウム、クレー類、ケイ酸アルミニウム、ハイスチレン樹脂、環化ゴム、クマロン・インデン樹脂、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、ビニルトルエン共重合樹脂、リグニン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどがあげられる。通常、これらの補強剤は、共重合体ゴム100重量部に対して1〜250重量部、好ましくは2〜100重量部用いられる。かかる範囲で補強剤を用いることにより、目的とする硬さのゴム組成物を得ることができる。
【0022】
本発明で使用される加硫剤としては、硫黄、有機過酸化物などをあげることができる。有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(第三ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−(第三ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ第三ブチルペルオキシド、ジ第三ブチルペルオキシド−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、第三ブチルヒドロペルオキシドなどがあげられる。特に、ジクミルペルオキシド、ジ第三ブチルペルオキシド、ジ第三ブチルペルオキシド−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンなどをあげることができる。通常、これらの加硫剤は、共重合体ゴム100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜8重量部用いられる。
【0023】
加硫剤に有機過酸化物を使用する場合、必要に応じて、助剤を使用することができる。助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、アリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、メタアクリロキシエチルホスフェート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、N−メチロールメタクリルアミド、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、メタクリル酸アルミニウム、メタクリル亜鉛、メタクリル酸カルシウム、メタクリル酸マグネシウム、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレートがあげられる。通常、これら助剤は、共重合体ゴム100重量部に対して0.05〜15重量部、好ましくは0.1〜8重量部用いられる。
【0024】
本発明で使用される加硫助剤としては、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物をあげることができるが、酸化亜鉛の使用が好ましい。通常、これらの加硫助剤は共重合体ゴム100重量部に対して0.1〜20重量部用いられる。
【0025】
本発明で使用される加工助剤としては特に制限はなく、通常本分野で使用されているたとえばオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの脂肪酸;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸金属塩;脂肪酸エステル;エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのグリコール類などがあげられ、単独又は二種類以上の加工助剤を混合して使用することができる。これら加工助剤は、共重合体ゴム100重量部に対して、通常0.2〜10重量部用いられる。
【0026】
本発明で使用される老化防止剤としては特に制限はなく、通常ゴム分野で使用されているたとえばフェニルナフチルアミン、N,N’−ジ−2−ナフチルフェニレンジアミンなどの芳香族第二アミン系安定剤;ジブチルヒドロキシトルエンテトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタンなどのフェノール系安定剤;ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキルチオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]スルフィドなどのチオエーテル系安定剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケルなどのカルバミン酸塩系安定剤などがあげられ、単独又は二種類以上の老化防止剤を混合して使用することができる。これら老化防止剤は、共重合体ゴム100重量部に対して、通常0.1〜10重量部用いられる。
【0027】
本発明のゴム組成物を用いて加硫ゴム組成物を得るには、例えば、エチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン共重合体ゴムの他、必要に応じて老化防止剤、加硫促進剤、加工助剤、ステアリン酸、充填剤、可塑剤、軟化剤、加硫剤などをロール、バンバリー、ニーダーなどの通常の混練機を用いて混合することにより、加硫可能なゴム組成物とし、通常、120℃以上、好ましくは140℃〜240℃の温度で約1〜60分間で加硫すればよい。なお、加硫は熱空気槽、蒸気釜、高周波加熱など、いずれも適用できる。場合によっては、加硫剤を用いず、電子線による架橋により加硫ゴムを得ることもできる。
【実施例】
【0028】
次に、実施例をあげ、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
攪拌機を備えた100Lのステンレススチール製の重合槽下部より重合溶媒として、ヘキサンを毎時111.8Kg、エチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンを各々毎時3.99Kg、17.28Kg、0.19kg、0.06kgの速度で連続的に供給する。触媒として平均組成式、VO(Oiso−C370.8Cl2.2、エタノールを各々毎時4.0g、0.97gをラインミキサーを用いて、混合・攪拌して触媒A:平均組成式、VO(Oiso−C370.8(OEt)0.75Cl1.45を調整した後に重合槽に供給し、また別にエチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)を毎時12.9gの速度で重合槽に連続的に供給し、重合槽の温度を44℃に保った。重合液を一部抜きだし、スチームストリッピングにより共重合体ゴムを析出させ乾燥した。こうして毎時4.0Kgの共重合体を得た。なお、分子量の調節は水素にて行った。なお、VO(Oiso−C370.8Cl2.2 の平均組成を持つ触媒は、VOCl3と VO(Oiso−C373を予め2.2/0.8のモル比で混合することにより調整した。共重合体ゴムの構造値は次のとおり。共重合体ゴム中のエチレン由来単位/プロピレン由来単位の重量比が68/32、よう素価が8(g/100gポリマー)、100℃で測定したムーニー粘度(ML1+4,100℃)が73であった。得られた共重合ゴムの粘度のせん断速度依存性を(株)東洋精機製キャピログラフ1Cにて測定した。(温度:100℃、L/D=10、せん断速度12.2〜1216sec-1) 得られた共重合体ゴム100重量部に対し、酸化亜鉛2種5重量部、ステアリン酸1重量部、旭60G(FEFカーボンブラック:旭カーボン社製)100重量部及びダイアナPS430(パラフィン系オイル:出光興産社製)60重量部を添加し、スタート温度80℃に調整した1700mlのバンバリーミキサーを用い、ローター回転数60rpmで5分間混練した。その後、8インチのオープンロールを用いて、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、イオウを夫々1.25/0.7/0.63/2.5/1.5重量部を添加・混練し、ゴム組成物を得た。次に、該ゴム組成物を170℃×10分間でプレス加硫し、加硫ゴム組成物を得た。加硫ゴム組成物の引張強度を評価した。(JIS K−6250(1993)準拠) 評価結果を表1に示した。
【0029】
比較例1
ヘキサンを毎時115Kg、エチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエンを各々毎時3.88Kg、16.44Kg、0.14kg、0.06kg、重合触媒にVO(Oiso−C373、助触媒にエチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)を夫々毎時2.8g、13.9g適用し、重合槽の温度を40℃に保った。共重合体ゴム中のエチレン由来単位/プロピレン由来単位の重量比が72/28、よう素価が7(g/100gポリマー)、100℃で測定したムーニー粘度(ML1+4,100℃)が73の共重合体を毎時4.0Kgの速度で得た。評価は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。
【0030】
比較例2
ヘキサンを毎時153Kg、エチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネンを各々毎時3.28Kg、16.03Kg、0.27kg、重合触媒にVOCl3、助触媒にエチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)を夫々毎時8.5g、20.1g適用し、重合槽の温度を48℃に保った。共重合体ゴム中のエチレン由来単位/プロピレン由来単位の重量比が53/47、よう素価が11(g/100gポリマー)、100℃で測定したムーニー粘度(ML1+4,100℃)が44の共重合体を毎時7.3Kgの速度で得た。評価は、実施例1と同様に行った。評価結果を表1に示した。
【0031】
【表1】

【0032】
本発明の要件を満足する実施例1は高速せん断時の粘度が低く、成形性に優れる。また、物理強度にも優れる。一方、本発明の触媒を用いない比較例1は、高速せん断時の粘度低下が小さい。本発明の触媒を用いない比較例2は共重合ゴムの粘度が低いにもかかわらず高速せん断時の粘度低下が小さく、物理強度にも劣る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の触媒Aの存在下、下記の必須成分(a)〜(c)を重合させて得られ、かつ下記の(1)〜(3)の条件を充足するエチレン−α−オレフィン−非共役ポリエン系共重合ゴムを用いた電線被覆ゴム用組成物。
触媒A:平均組成式、VO(OR)m(OR’)n3-m-n(ただし、Rは2級以上の炭素数1〜8の炭化水素基を表し、R’は炭素数1〜8の直鎖状炭化水素基を表し、Xはハロゲンを表し、m及びnは正の数を表し、かつm+n≦3、m≠0、nm≠0である。)
(a):エチレン
(b):炭素数3〜20のα−オレフィン
(c):非共役ポリエン
(1)系共重合ゴム中のエチレン単位/α−オレフィン単位の重量比が85/15〜65/35であること
(2)よう素価が1〜15であること
(3)共重合ゴムのML粘度(ML1+4,100℃)が、10〜90であること
【請求項2】
請求項1の電線被覆用ゴム用組成物を用いたゴム被覆電線。

【公開番号】特開2006−249214(P2006−249214A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66751(P2005−66751)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】