説明

電解コンデンサの劣化予測方法

【課題】 簡便で実用的な手順で電源回路の出力電圧の平滑用電解コンデンサの劣化を予測すること。
【解決手段】 基準となる時点および前記基準となる時点からN年経過後に測定した電解コンデンサ17の等価直列抵抗17bの値ESRoおよびESRnと、前記基準となる時点および前記基準となる時点からN年経過後の電解コンデンサ17の電解液量VoおよびVnとの関係式 ESRn/ESRo=(Vo/Vn2 から、前記基準となる時点からN年経過後の電解コンデンサ17の電解液の残存率νn=Vn/Voを算出し、1年当たりの前記電解液の減少率δ=(1−νn)/Nを算出し、ESRnとESRoとの平均値Rを求め、前記電解液の減少の加速因子K=ESRn/Rを定義し、前記基準となる時点からN+1年経過後の電解液の残存率νn+1=νn−δKを予測し、予測したνn+1に対応する等価直列抵抗17bの値ESRn+1を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばスイッチングレギュレータ等の電源回路に使用されているこの電源回路の出力電圧の平滑用の電解コンデンサの劣化予測方法に関し、特に簡便で実用的な電解コンデンサの劣化予測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチングレギュレータ等の電源回路にその出力電圧中のリップル電圧を減少させるために平滑用の電解コンデンサが使用されている。この電解コンデンサは通常電源回路の他の抵抗、インダクタンス、トランス、能動部品等に比べて寿命が短い。このため、ほとんどの場合電解コンデンサの寿命が電源回路の寿命を決定することになる。したがって、電源回路の電解コンデンサの寿命を予測することは重要なことである。
電解コンデンサの寿命を予測する方法として、電解コンデンサの電解液の減少率の二乗に反比例して電解コンデンサの等価直列抵抗が増加するという関係を利用する方法がある(たとえば非特許文献1参照)。
具体的には、まず上記関係から20℃における電解コンデンサの等価直列抵抗ESRを算出する(ステップ101)。つぎに、この等価直列抵抗は温度依存性があるので、予め実験的に温度と等価直列抵抗との関係式を求める。そして、この関係式により電解コンデンサの使用による発熱により電解コンデンサの温度が上昇したときの等価直列抵抗ESRhotを算出し(ステップ102)、算出した等価直列抵抗ESRhotとこの等価直列抵抗ESRhotを流れる電流による発熱量と電解コンデンサの熱抵抗とから電解コンデンサの温度上昇分ΔTを算出する(ステップ103)。つぎに、算出した温度上昇分ΔTと周囲温度とから電解コンデンサの内部温度Tを算出する(ステップ104)。つぎに、算出した内部温度Tを使用して電解コンデンサの電解液の蒸気圧P(前記内部温度Tの関数である。)を算出し(ステップ105)、算出した蒸気圧Pを使用して一定期間(たとえば100時間)における電解液の損失量Vl(蒸気圧Pの関数である。)を算出する(ステップ106)。
つぎに、算出した電解液の損失量Vlを使用して電解コンデンサの電解液の残量Vを算出する。つぎに、前記電解コンデンサの電解液の減少率の二乗に反比例して電解コンデンサの等価直列抵抗が増加するという関係により決まる電解コンデンサの電解液の残量Vに相当する電解コンデンサの等価直列抵抗ESRが一定の限度(初めの値の3倍の値)を超えているときには(ステップ107)、電解コンデンサの寿命がつきているので、この寿命予測を終了し、超えていないときには、超えるまで前記ステップ101からステップ107までを繰り返す。このようにして、前記電解コンデンサの劣化を予測する。
【非特許文献1】アルミ電解コンデンサの寿命予測モデル マイケル・ガスペリ ロックウェル先端技術研究所 1996 IAS Conf.Rec.Vol3.pp1347−1351
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の従来例では、電解コンデンサの等価直列抵抗と温度との関係式を予め実験的に求めること、電解コンデンサの使用時の発熱量の計算、電解コンデンサの温度上昇分の算出、電解コンデンサの内部温度の算出、電解液の蒸気圧の算出、電解液の損失量の算出、電解液の残量の算出、電解液の残量に対応する等価直列抵抗の予測という複雑な手順が必要となるという問題があった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、簡便で実用的な手順で電源回路の出力電圧の平滑用の電解コンデンサの等価直列抵抗を予測してこの電解コンデンサの劣化を予測できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、電解コンデンサの劣化予測方法であって、基準となる時点に測定した前記電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRoと、前記基準となる時点からN年等のN単位時間経過後に測定した前記電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRnとを測定し、前記測定したESRoおよびESRnと、前記基準となる時点での前記電解コンデンサの電解液量Voおよび前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサの電解液量Vnとの関係式
ESRn/ESRo=(Vo/Vn2 (1)
から、前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサの電解液の残存率νn
νn=Vn/Vo
を算出し、さらに、前記単位時間当たりの前記電解コンデンサの電解液の減少率δを
δ=(1−νn)/N (2)
として算出し、前記ESRnとESRoとの平均値Rを求め、さらに、前記電解液の減少の加速因子Kとして
K=ESRn/R (3)
を定義し、このKを用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解液の残存率νn+1
νn+1=νn−δK (4)
として予測し、予測したνn+1を用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解コンデンサの等価直列抵抗ESRn+1
ESRn+1=ESRo(1/νn+12 (5)
として求め、該ESRn+1に基づいて電解コンデンサの劣化を予測することを特徴とする電解コンデンサの劣化予測方法である。
これにより、前記電解液の減少の加速因子Kとして
K=ESRn/R
を定義し、前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサの電解液の残存率νn、前記単位時間当たりの前記電解コンデンサの電解液の減少率δおよび前記Kを用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解液の残存率νn+1
νn+1=νn−δK
として予測し、予測した電解液の残存率νn+1に対応する等価直列抵抗の値ESRn+1を予測しているので、簡便で実用的な手順により前記等価直列抵抗の値ESRn+1を予測することができる。そして、前記N単位時間経過時を現時点とすれば、現時点から1単位時間経過後の前記等価直列抵抗の値を予測することができる。ここで、等価直列抵抗の値は電解液の減少割合に従って増加するので、等価直列抵抗の値を予測することにより電解コンデンサの劣化を予測することができる。
【0005】
さらに、請求項2記載の発明は、請求項1記載のESRn+1の算出方法を少なくとも2回繰り返して、Mを2以上の整数として、請求項1記載の前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRn+mを求め、該ESRn+mに基づいて電解コンデンサの劣化を予測する電解コンデンサの劣化予測方法であって、1単位時間毎の等価直列抵抗の値を順次予測し、その際、先に予測した等価直列抵抗の値と前記基準となる時点の等価直列抵抗の値を使用して先に等価直列抵抗を予測した時点から1単位時間経過した時点の等価直列抵抗の値を予測することにより、請求項1記載の前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRn+mを求め、該ESRn+mに基づいて電解コンデンサの劣化を予測することを特徴とする電解コンデンサの劣化予測方法である。
これにより、請求項1記載の電解コンデンサのESRn+1の算出方法を使用して、請求項1記載の前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRn+mを求め、該ESRn+mに基づいて電解コンデンサの劣化を予測することができる。そして、前記N単位時間経過時を現時点とすれば、現時点からM単位時間経過後の電解コンデンサの劣化を予測することができる。
【0006】
さらに、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の電解コンデンサの劣化予測方法において、さらに、前記等価直列抵抗の値ESRoが未使用時の電解コンデンサの等価直列抵抗の値であるとき、前記等価直列抵抗の値ESRn+1またはESRn+mの前記等価直列抵抗の値ESRoに対する比が3以上になる時点を予測し、この予測を基に前記電解コンデンサの交換時期を計画することを特徴とする電解コンデンサの劣化予測方法である。
これにより、前記等価直列抵抗の値ESRn+1またはESRn+mの前記等価直列抵抗ESRoに対する比が3以上になる時点においては電解コンデンサの寿命が尽きていると判断できる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、簡便で実用的な手順により、現時点から1単位時間経過後の電解コンデンサの劣化の程度を予測することができる。
さらに、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果とともに、簡便で実用的な手順により、現時点からM単位時間経過後の前記電解コンデンサの劣化の程度を予測することができる。
さらに、請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果とともに、前記電解コンデンサの劣化による交換時期の予測が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明における実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、電解コンデンサを組み込んだスイッチングレギュレータを示し、図2は前記電解コンデンサの劣化予測方法を説明し、図3は本発明による予測データと実測データとの比較を示し、図4は本発明の応用例のフローチャートを示す。
【0009】
図1に示すように、電源回路の一種のスイッチングレギュレータ10は、直流の一対の入力端子11a、11b、入力端子11a、11b間に加えられた直流電圧を交流電圧に変換するDC/ACスイッチ回路12、DC/ACスイッチ回路12の出力を1次側入力とするトランス13、トランス13の2次側出力を整流するダイオード14、ダイオード14の出力を平滑する平滑回路15および平滑回路15の出力側に接続された一対の出力端子18a、18bを備えている。そして、平滑回路15は、コイル16(ダイオード14の出力側と出力端子18aとの間に接続されている。)および電解コンデンサ17(出力端子18a、18b間に接続されている。)からなり、電解コンデンサ17の等価回路はキャパシタンス17aと等価直列抵抗17bとの直列回路である。
出力端子18a、18b間には電子計測制御装置等の一定の負荷20が接続されている。なお、一定の負荷20の電力消費量は通常経年により変化しないので、電解コンデンサ17の充放電電流の平均実効値も一定である。
【0010】
ESR測定器30は、交流電圧源31、抵抗32および交流電流計33を直列に接続した部分回路、この部分回路に並列に接続された交流電圧計34および交流電圧計34の両端に接続された一対の測定端子35a、35bを備えている。
【0011】
このとき、交流電圧源31の周波数をfとし、キャパシタンス17aの値をCとし、等価直列抵抗17bの抵抗値をESRとし、1/2πfCがESRより著しく小さいようにfを設定すると、電解コンデンサ17のインピーダンスは実質的にESRとなる。また、コイル16のインダクタンスをLとし、2πfLがESRより著しく大きくなるようにfを設定する。また、一定の負荷20は、たとえば5V(出力端子18a、18b間の電圧)、10A程度であるので、このときは一定の負荷20のインピーダンスは0.5Ωとなる。そして、たとえば、Cが1000μFのときにfを100kHzとすると、1/2πfCが約0.0016Ωになる。このときESRがたとえば0.05Ω程度であるので、ESRが1/2πfCより著しく大きくなる。
また、コイル16のインダクタンスはたとえば100μHであるので、このときは2πfLは約63Ωになる。このため、コイル16のインピーダンスはESRより著しく大きくなる。さらに、コイル16のインピーダンスと一定の負荷20のインピーダンスを並列に接続したインピーダンスの値は、約0.5Ωとなる。
このため、前記周波数fでは、電解コンデンサ17のインピーダンスはほぼESRに等しくなり、かつ、電解コンデンサ17に並列に接続されている一定の負荷20およびコイル16のインピーダンスの合成値は電解コンデンサ17のインピーダンスより著しく大きくなる。
【0012】
したがって、電解コンデンサ17の等価直列抵抗17bの値ESRを測定するときには、入力端子11a、11bを前記直流電源から切り離し、電解コンデンサ17の電荷を完全に放電させた状態で、ESR測定器30の一対の測定端子35a、35bを出力端子18a、18bに接続する。そして、交流電圧計34の測定値を交流電流計33の測定値で除すると、等価直列抵抗17bの値ESRを求めることができる。
【0013】
具体的には、以下のような劣化予測プログラムを実行して、等価直列抵抗17bの値ESRの増加を予測して、電解コンデンサ17の劣化を予測することになる。
スイッチングレギュレータ10により一定の負荷20に電力を供給した場合に、図2に示すように、基準となる時点に測定した電解コンデンサ17の等価直列抵抗17bの値ESRoと、前記基準となる時点からN単位時間(たとえばN年、N月等)経過後に測定した等価直列抵抗17bの値ESRnとを測定し、前記測定したESRoおよびESRnと、前記基準となる時点での電解コンデンサ17の電解液量Voおよび前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサ17の電解液量Vnとの関係式
ESRn/ESRo=(Vo/Vn2 (1)
によって、前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサ17の電解液の残存率をνnとして
νn=Vn/Vo
を算出し、さらに、前記単位時間当たりの電解コンデンサ17の電解液の減少率δを
δ=(1−νn)/N (2)
として算出し、さらに、上述のように等価直列抵抗17bの値ESRよりも等価直列抵抗17bに直列に接続されているコイル16のインピーダンスが著しく大きいので、等価直列抵抗17bの値ESRの増加による等価直列抵抗17bを流れる電流値の減少が僅かであるため、等価直列抵抗17bの値ESRの増加により、等価直列抵抗17bによる発熱量が増加し、前記電解液の減少が加速される。このため、前記電解液の減少の加速因子Kとして
K=ESRn/R (3)
を定義する。なお、Rは前記ESRnとESRoとの平均値であり、前記ESRnはESRoより大きいので、Kは1より大きい。そして、このKを用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解液の残存率νn+1
νn+1=νn−δK (4)
として予測する。そして、予測したνn+1を用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の等価直列抵抗17bの値ESRn+1
ESRn+1=ESRo(1/νn+12 (5)
として予測する。
なお、上記加速因子Kを導入したことにより、図2において、前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の電解コンデンサの電解液の量Vn+1は、V0とVnとを結ぶ直線より下側の点線で示す直線上に位置する。
【0014】
これにより、前記電解液の減少の加速因子Kとして
K=ESRn/R
を定義し、このKを用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解液の残存率νn+1を簡単な代数式である式(4)により
νn+1=νn−δK (4)
として予測し、予測した電解液の残存率νn+1に対応する等価直列抵抗17bの値ESRn+1を予測しているので、簡便で実用的な手順により等価直列抵抗17bの値ESRn+1を予測することができる。これにより、ESRn+1の値が劣化判定レベル(例えば図3に示すように未使用時の等価直列抵抗の3倍)を超えるか否かにより電解コンデンサの劣化を予測することができる。
【0015】
さらに、上述の電解コンデンサ17の劣化予測方法を少なくとも2回繰り返して、Mを2以上の整数として、前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の等価直列抵抗17bの値ESRn+mを予測する。その際、1単位時間毎の等価直列抵抗17bの値を順次予測し、先に予測した等価直列抵抗17bの値と前記基準となる時点の等価直列抵抗17bの値ESR0を使用して先に等価直列抵抗17bの値を予測した時点から1単位時間経過した時点の等価直列抵抗17bの値を予測することにより、前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の等価直列抵抗17bの値ESRn+mを予測する。
これにより、上述の電解コンデンサ17の劣化予測方法を使用して、前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の等価直列抵抗17bの値ESRn+mを予測することができる。そして、前記N単位時間経過時を現時点とすれば、現時点からM単位時間経過後の等価直列抵抗17bの値ESRn+mを予測することができる。
図3において、横軸の経年では5年目の時点を基準時とし、12年目をN年とし、前記基準時のESR0および前記12年目のESRnにより等価直列抵抗17bの値ESRを予測した場合が示されている。このようにして予測した等価直列抵抗17bの値ESRは、経年により増加している。なお、前記ESRの予測データはESRの実測データとよく近似している。
【0016】
さらに、上述の電解コンデンサの劣化予測方法において、さらに、等価直列抵抗17bの値ESRoが未使用時の電解コンデンサ17の等価直列抵抗17bの値であるとき、等価直列抵抗の値ESRn+1またはESRn+mの等価直列抵抗17bの値ESRoに対する比が3以上になる時点を予測し、この予測を基に電解コンデンサ17の交換時期を計画する。
ここで、経験的に電解液が未使用時の状態から約40%低下するときが電解コンデンサの寿命と言われており、これを前述の式(1)に当てはめると等価直列抵抗の比がほぼ3となることから、等価直列抵抗17bの値ESRn+1またはESRn+mの等価直列抵抗17bの値ESRoに対する比が3以上になる時点を予測することにより、電解コンデンサ17の交換時期を計画することができる。
【0017】
(本発明の応用例)
図4に示すフローチャートにおいて、まず、スイッチングレギュレータ10の設置時に電解コンデンサ17の初期ESR0を測定する(ステップS1)。つぎに、6年目の定期点検にてESR6を測定する(ステップS2)。つぎに、12年目の定期点検にてESR12を測定する(ステップS3)。
つぎに、測定したESR6およびESR12を用いて上述の劣化予測プログラムを実行する(ステップS4)。
なお、図3に示すように、電解コンデンサ17の未使用時の等価直列抵抗17bの値と電解コンデンサ17を5年間使用した時点の電解コンデンサ17の使用直前の時点の等価直列抵抗17bの値との差が僅かであるので、経年5年および経年12年のデータを使用した劣化予測結果にて、電解コンデンサ17の寿命の予測が可能であることが判明した。また、通常定期点検の周期が6年・12年であることから、6年目および12年目のデータを使用することにする。ここで、劣化予測プログラムは、請求項1に対応する計算プログラムであるので、上記式(1)から式(5)までの計算をして18年目のESR18を予測することになる。
つぎに、予測したESR18が初期値ESR0の3倍を超えている場合には(ステップS5)、15年目のESR15を測定する(ステップS6)。一方、予測したESR18が初期値ESR0の3倍を超えていない場合には、18年目のESR18を測定する(ステップS7)。そして、測定したESR15またはESR18がESR0の3倍を超えているときは(ステップS8)、スイッチングレギュレータ10の修理、即ち電解コンデンサ17の交換を計画する(ステップS9)。
一方、ESR15またはESR18の測定値がESR0の3倍を超えていないときは、劣化判定プログラムを実行する(ステップS10)。このときの条件は、基準となる時点の等価直列抵抗17bの値をESR6とし、N単位時間経過後の等価直列抵抗17bの値をESR15またはESR18の測定値とするものである。そして、ESR0の3倍を超える時点を予測する。
最後に、予測した等価直列抵抗17bの値がESR0の3倍を超える時点の前年に、スイッチングレギュレータ10の修理、即ち電解コンデンサ17の交換をするように計画する(ステップS11)。
このため、スイッチングレギュレータ10を電源とする電子計測制御装置の稼動の信頼度の向上が期待でき、前記電子計測制御装置を含むプラントシステム全体の稼動の信頼度を向上させることができる。
【0018】
なお、上記実施の形態において、電解コンデンサ17はスイッチングレギュレータ10に使用されているが、これに限定されず、本発明はスイッチングレギュレータ10を含む電源回路に使用されているその出力電圧の平滑用の電解コンデンサに適用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電解コンデンサを組み込んだスイッチングレギュレータである。
【図2】前記電解コンデンサの劣化予測方法を説明するグラフである。
【図3】本発明による予測データと実測データとの比較を示すグラフである。
【図4】本発明の応用例のフローチャートである。
【符号の説明】
【0020】
10 スイッチングレギュレータ
17 電解コンデンサ
17a キャパシタンス
17b 等価直列抵抗
20 一定の負荷
30 ESR測定器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解コンデンサの劣化予測方法であって、基準となる時点に測定した前記電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRoと、前記基準となる時点からN年等のN単位時間経過後に測定した前記電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRnとを測定し、
前記測定したESRoおよびESRnと、前記基準となる時点での前記電解コンデンサの電解液量Voおよび前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサの電解液量Vnとの関係式
ESRn/ESRo=(Vo/Vn2
から、前記基準となる時点からN単位時間経過後の電解コンデンサの電解液の残存率νn
νn=Vn/Vo
を算出し、さらに、前記単位時間当たりの前記電解コンデンサの電解液の減少率δを
δ=(1−νn)/N
として算出し、前記ESRnとESRoとの平均値Rを求め、さらに、前記電解液の減少の加速因子Kとして
K=ESRn/R
を定義し、このKを用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解液の残存率νn+1
νn+1=νn−δK
として予測し、予測したνn+1を用いて前記基準となる時点からN+1単位時間経過後の前記電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRn+1
ESRn+1=ESRo(1/νn+12
として求め、該ESRn+1に基づいて電解コンデンサの劣化を予測することを特徴とする電解コンデンサの劣化予測方法。
【請求項2】
請求項1記載のESRn+1の算出方法を少なくとも2回繰り返して、Mを2以上の整数として、請求項1記載の前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRn+mを求め、該ESRn+mに基づいて電解コンデンサの劣化を予測する電解コンデンサの劣化予測方法であって、
1単位時間毎の等価直列抵抗の値を順次予測し、その際、先に予測した等価直列抵抗の値と前記基準となる時点の等価直列抵抗の値を使用して先に等価直列抵抗の値を予測した時点から1単位時間経過した時点の等価直列抵抗の値を予測することにより、請求項1記載の前記基準となる時点からN+M単位時間経過後の電解コンデンサの等価直列抵抗の値ESRn+mを求め、該ESRn+mに基づいて電解コンデンサの劣化を予測することを特徴とする電解コンデンサの劣化予測方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の電解コンデンサの劣化予測方法において、
さらに、前記等価直列抵抗の値ESRoが未使用時の電解コンデンサの等価直列抵抗の値であるとき、前記等価直列抵抗の値ESRn+1またはESRn+mの前記等価直列抵抗の値ESRoに対する比が3以上になる時点を予測し、この予測を基に前記電解コンデンサの交換時期を計画することを特徴とする電解コンデンサの劣化予測方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−78215(P2006−78215A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259742(P2004−259742)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】