露光ヘッド、画像形成装置
【課題】フォーカス位置に依らず、スポットの大きさを安定させつつスポットの異方性を緩和して、良好な露光を実現可能とする技術を提供する。
【解決手段】光を発光する発光素子と、径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する第1のスポット、および径方向によって径が異なるとともに第1の方向と異なる第2の方向に第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さの長辺を有する第2のスポットを発光素子が発光する光から生成し、被露光面に重ねる光学倍率が1と異なる光学系と、を備える。
【解決手段】光を発光する発光素子と、径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する第1のスポット、および径方向によって径が異なるとともに第1の方向と異なる第2の方向に第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さの長辺を有する第2のスポットを発光素子が発光する光から生成し、被露光面に重ねる光学倍率が1と異なる光学系と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子が透過した光を光学系により被露光面に照射する露光ヘッドおよび当該露光ヘッドを用いる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子が射出した光を光学系により結像することで、被露光面に光のスポットを照射するものが知られている。また、こうして、スポットにより被露光面を露光する構成では、スポットの大きさをある程度の範囲内に収めることが適当となる。しかしながら、光学系の結像位置が被露光面からずれると、スポットの大きさがぼやける等して変動してしまう場合があった。
【0003】
そこで、特許文献1の露光ヘッドでは、複数の結像位置を点在させている。つまり、この露光ヘッドでは、互いに異なる焦点距離を有する複数の領域が形成されたレンズを用いて、光学系が構成されている。そのため、レンズでの光の通過領域に応じて、複数の結像位置が光学系の光軸方向に点在することとなる。したがって、例えば、露光ヘッドと被露光面との距離が変動して、一の結像位置が被露光面からずれたとしても、他の結像位置が略被露光面上に来ることで、スポットの大きさを安定化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−202579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記露光ヘッドは、スポットの大きさを安定化できる点では好適であるが、スポットの形状に異方性が現れてしまうといった問題が生じる場合があった。詳述すると、上記露光ヘッドでは、点在する複数の結像位置それぞれに光(光線)を集中させる構成であるため、各結像位置では比較的等方的なスポットが形成される一方、一の結像位置と他の結像位置との間等のデフォーカス位置ではスポットの形状に異方性が現れてしまう。その結果、例えば被露光面の位置が変動してデフォーカスしたような場合に、スポットの大きさは安定していても、スポットに異方性が現れて、良好な露光が実現できない場合があった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、フォーカス位置に依らず、スポットの大きさを安定させつつスポットの異方性を緩和して、良好な露光を実現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、光を発光する発光素子と、径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する第1のスポット、および径方向によって径が異なるとともに第1の方向と異なる第2の方向に第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さの長辺を有する第2のスポットを発光素子が発光する光から生成し、被露光面に重ねる光学倍率が1と異なる光学系と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、潜像担持体と、発光素子と、径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する第1のスポット、および径方向によって径が異なるとともに第1の方向と異なる第2の方向に第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さの長辺を有する第2のスポットを発光素子が発光する光から生成し、潜像担持体に重ねる光学倍率が1と異なる光学系を有する露光ヘッドと、を備える。
【0009】
このように構成された発明(露光ヘッド、画像形成装置)では、発光素子が発光する光から2つのスポット(第1のスポット、第2のスポット)を生成する。しかも、第1のスポットは、径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する一方、第2のスポットは、径方向によって径が異なるとともに第1の方向と異なる第2の方向に長辺を有する。つまり、これら第1・第2のスポットは、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、第2のスポットの長辺は、第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さとなっている。そして、このような第1・第2のスポットを被露光面(潜像担持体)に重ねることで、1つのスポットが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットの大きさを安定させつつスポットの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0010】
また、光学系は、第1の領域および第1の領域と異なる位置に配接された第2の領域を有するレンズと、開口絞りを備え、開口絞りを通過した光を第1の領域で結像して第1のスポットを生成し、開口絞りを通過した光を第2の領域で結像して第2のスポットを生成するように構成しても良い。このような構成では、傾きが異なり長さの等しいもしくは略等しい第1のスポットおよび第2のスポットを重ねて1つのスポットを合成して、大きさが安定しつつ異方性の緩和された(合成)スポットで良好な露光が実現できる。
【0011】
この際、第1の領域は第1の球面収差を有し、第2の領域は第1の球面収差と異なる第2の球面収差を有するように構成しても良い。これにより、傾きが異なり長さの等しいもしくは略等しい第1のスポットおよび第2のスポットを重ねて1つのスポットを合成して、大きさが安定しつつ異方性の緩和された(合成)スポットで良好な露光が実現できる。
【0012】
より具体的には、第1の球面収差と第2の球面収差が等しいもしくは略等しい大きさを有する場合には、開口絞りを円形もしくは略円形とすることで、傾きが異なり長さの等しいもしくは略等しい第1のスポットおよび第2のスポットを重ねて、大きさが安定しつつ異方性の緩和されたスポットで良好な露光が実行でき、第1の球面収差が第2の球面収差よりも大きい場合には、開口絞りを第2の方向を長軸とする楕円形とすることで、傾きが異なり長さの等しいもしくは略等しい第1のスポットおよび第2のスポットを重ねて、大きさが安定しつつ異方性の緩和されたスポットで良好な露光が実行できる。
【0013】
また、光学系は、発光素子が発光した光を絞る円形もしくは略円形の開口絞りと、開口絞りを通過した光が入射するレンズと、レンズが配設された基板とを有し、基板の法線方向から基板に投影したレンズの幾何重心を通って基板の法線方向に平行な仮想軸をz軸とし、z軸に直交してレンズの幾何重心を通る仮想軸をx軸としたとき、レンズの曲率半径Rは、z軸周りに反時計回りにとったx軸に対する回転角度θの周期関数で与えられ、光学系は、開口絞りを通過した光をレンズで結像して、第1のスポットおよび第2のスポットを生成するように構成しても良い。これにより、傾きが異なり長さの等しいもしくは略等しい第1のスポットおよび第2のスポットを重ねて、大きさが安定しつつ異方性の緩和されたスポットを合成して、良好な露光が実現できる。
【0014】
より具体的には、レンズの曲率半径Rが、次の関係、R=J+L×cos(M×θ)、J:定数、L:定数、M:正の整数を有するように構成しても良く、あるいは、レンズの曲率半径Rが、次の関係、R=J+L×|cos(M×θ)|、J:定数、L:定数、M:正の整数を有するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図。
【図2】図1の装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図。
【図4】本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図。
【図5】本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図。
【図6】レンズが構成する結像光学系と感光体ドラムとの配置関係を示す模式図。
【図7】第1実施形態におけるレンズLS1の構成を示す平面図。
【図8】第1実施形態において被露光面に照射される光ビームの断面形状を示す図。
【図9】第1実施形態において被露光面に形成されるスポットダイアグラムを示す図。
【図10】第2実施形態でレンズLS1の構成を示す平面図。
【図11】第2実施形態で被露光面に照射される光ビームの断面形状を示す図。
【図12】第2実施形態で被露光面に形成されるスポットダイアグラムを示す平面図。
【図13】第3実施形態の結像光学系のレンズLS1が有する構成を示す模式図。
【図14】主走査方向断面における結像光学系の光線図。
【図15】レンズデータのレンズ面形状を定義する式を一覧で示した図。
【図16】結像光学系を透過する光の波長とレンズの有効径を表として示す図。
【図17】結像光学系のレンズデータ。
【図18】結像光学系の面S4の形状を与える各係数を表として示す図。
【図19】結像光学系の面S7の形状を与える各係数を表として示す図。
【図20】第3実施形態と比較形態とのスポットダイアグラムを示す図。
【図21】結像光学系の光線図。
【図22】レンズデータのレンズ面形状を定義する式を一覧で示した図。
【図23】結像光学系を透過する光の波長と開口絞りの径を表と示す図。
【図24】結像光学系のレンズデータ。
【図25】結像光学系の面S4の形状を与える各係数を表として示す図。
【図26】結像光学系の面S6の形状を与える各係数を表として示す図。
【図27】第4実施形態のスポットダイアグラムを示す図。
【図28】比較形態での結像光学系の面S6の形状を与える各係数を示す図。
【図29】比較形態のスポットダイアグラムを示す図。
【図30】結像光学系の面S4の形状を与える各係数を示す図。
【図31】第5実施形態のスポットダイアグラムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1実施形態
図1は本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。また、図2は図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、互いに異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。そして、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能となっている。
【0017】
この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCはエンジンコントローラーECに制御信号を与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。このとき、メインコントローラーMCは、ヘッドコントローラーHCから水平リクエスト信号HREQを受け取る毎に、主走査方向MDに1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。また、ヘッドコントローラーHCは、メインコントローラーMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラーECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメーター値とに基づき、各色の画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kそれぞれのラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部ENGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシート状の記録媒体RMに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0018】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは、トナー色を除けばいずれも同じ構造および機能を有している。そこで、図1では、図を見やすくするために、画像形成ステーション2Cを構成する各部品にのみ符号を付し、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kに付すべき符号については記載を省略する。また、以下の説明では、図1に付した符号を参照して画像形成ステーション2Cの構造および動作を説明するが、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kの構造および動作も、トナー色が異なることを除けば同じである。
【0019】
画像形成ステーション2Cには、シアン色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されており、図1中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに移動することとなる。
【0020】
感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21表面を所定の電位に帯電させるコロナ帯電器である帯電器22と、感光体ドラム21表面を画像信号に応じて露光することで静電潜像を形成するラインヘッド29と、該静電潜像をトナー像として顕像化する現像器24と、第1スクイーズ部25と、第2スクイーズ部26と、転写後の感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーニングユニットとが、それぞれこれらの順に感光体ドラム21の回転方向D21(図1では、時計回り)に沿って配設されている。
【0021】
この実施形態では、帯電器22は2つのコロナ帯電器221、222で構成されており、感光体ドラム21の回転方向D21においてコロナ帯電器221がコロナ帯電器222に対して上流側に配置されており、2つのコロナ帯電器221、222により2段階で帯電されるように構成されている。各コロナ帯電器221、222は同一構成であり、感光体ドラム21の表面に接触しないものであり、スコロトロン帯電器である。
【0022】
そして、コロナ帯電器221、222により帯電された感光体ドラム21表面に対して、ラインヘッド29がビデオデータVDに基づいて静電潜像を形成する。つまり、ヘッドコントローラーHCがラインヘッド29にビデオデータVDを送信すると、このビデオデータVDに基づいて各発光素子Eが発光する。これにより、感光体ドラム21表面が露光されて、画像信号に対応した静電潜像が形成される。なお、ラインヘッド29の構成および動作の詳細は後述する。
【0023】
こうして形成された静電潜像に対して現像器24からトナーが付与されて、静電潜像がトナーにより現像される。この画像形成装置1の現像器24は、現像ローラー241を有している。この現像ローラー241は円筒状の部材であり、鉄等金属製の内芯の外周部に、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、NBR、PFAチューブなどの弾性層を設けたものである。この現像ローラー241は現像用モーターに接続され、図1紙面において反時計回りに回転駆動されて感光体ドラム21に対してウィズ回転する。また、この現像ローラー241は図示を省略する現像バイアス発生部(定電圧電源)と電気的に接続されており、適当なタイミングで現像バイアスが印加されるように構成されている。
【0024】
また、この現像ローラー241に対して液体現像剤を供給するためにアニロックスローラーが設けられており、アニロックスローラーを介して現像剤貯留部から現像ローラー241へ液体現像剤が供給される。このようにアニロックスローラーは現像ローラー241に対して液体現像剤を供給する機能を有する。このアニロックスローラーは、液体現像剤を担持し易いように表面に微細且つ一様に彫刻された螺旋溝などによる凹部パターンが形成されたローラーである。現像ローラー241と同様に、金属の芯金にウレタン、NBRなどのゴム層を巻き付けたものや、PFAチューブを被せたものなどが用いられる。また、アニロックスローラーは現像用モーターに接続されて回転する。
【0025】
現像剤貯留部に貯留される液体現像剤は、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)を液体キャリアとした低濃度(1〜2wt%)かつ低粘度の常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性樹脂中へ顔料などの着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)の液体現像剤が用いられる。
【0026】
上記のようにして、液体現像剤が供給された現像ローラー241はアニロックスローラーと同時に回転すると共に、感光体ドラム21の表面とは同方向に移動するように回転して現像ローラー241の表面に担持された液体現像剤を現像位置に搬送する。なお、トナー像を形成するため、現像ローラー241の回転方向は、その表面が感光体ドラム21の表面と同方向に移動するようにウィズ回転する必要があるが、アニロックスローラーに対しては、逆方向、或いは、同方向、どちらに移動する構成であってもよい。
【0027】
また、現像器24では、この現像ローラー241の回転方向において現像位置の上流側直前にトナー圧縮コロナ発生器242が現像ローラー241に対向して配置されている。このトナー圧縮コロナ発生器242は現像ローラー241の表面の帯電バイアスを増加させる電界印加手段であり、定電流電源で構成されたトナーチャージ発生部(図示省略)と電気的に接続されている。そして、トナー圧縮コロナ発生器242に対してトナーチャージバイアスが与えられると、現像ローラー241によって搬送される液体現像剤のトナーに対して、このトナー圧縮コロナ発生器242と近接する位置で電界が印加され、帯電、圧縮が施される。なお、このトナー帯電、圧縮には、電解印加によるコロナ放電に代えて、接触して帯電させるコンパクションローラーを用いてもよい。
【0028】
また、このように構成された現像器24は感光体ドラム21上の潜像を現像する現像位置と感光体ドラム21から離れた退避位置との間で往復可能となっている。したがって、現像器24が退避位置に移動して位置決めされると、その間、シアン用の画像形成ステーション2Cでは、感光体ドラム21への新たな液体現像剤の供給は停止される。
【0029】
感光体ドラム21の回転方向D21において現像位置の下流側に、第1スクイーズ部25が配置されるとともに、さらに第1スクイーズ部25の下流側に第2スクイーズ部26が配置されている。これらのスクイーズ部25、26にはスクイーズローラー251、261がそれぞれ設けられている。そして、スクイーズローラー251が第1スクイーズ位置で感光体ドラム21の表面と当接しながらメインモーターからの回転駆動力を受けて回転してトナー像の余剰現像剤を除去する。また、感光体ドラム21の回転方向D21において第1スクイーズ位置の下流側の第2スクイーズ位置でスクイーズローラー261が感光体ドラム21の表面と当接しながらメインモーターからの回転駆動力を受けて回転してトナー像の余剰液体キャリアやカブリトナーを除去する。また、本実施形態ではスクイーズ効率を高めるために、スクイーズローラー251、261に対して図示省略するスクイーズバイアス発生部(定電圧電源)が電気的に接続されており、適当なタイミングでスクイーズバイアスが印加されるように構成されている。なお、本実施形態では2つのスクイーズ部25、26を設けているが、スクイーズ部の個数や配置などはこれに限定されるものではなく、例えば1個のスクイーズ部を配置してもよい。
【0030】
これらのスクイーズ位置を通過してきたトナー像は転写部3の中間転写体31に1次転写される。この中間転写体31は、その表面、より詳しくはその外周面にトナー像を一時的に担持可能な像担持体としての無端状ベルトであり、複数のローラー32、33、34、35および36に掛け渡されている。これらのうちローラー32はメインモーターに連結されて、中間転写体31を図1の矢印方向D31に周回駆動するベルト駆動ローラーとして機能している。なお、本実施形態では、記録紙RMとの密着性を高めて記録紙RMへのトナー像の転写性を高めるために、中間転写体31の表面に弾性層を設け、当該弾性層の表面にトナー像が担持されるように構成されている。
【0031】
ここで、中間転写体31を掛け渡されたローラー32ないし36のうち、メインモーターにより駆動されるのは上記したベルト駆動ローラー32のみであり、他のローラー33ないし36は駆動源を有しない従動ローラーである。また、ベルト駆動ローラー32は、ベルト移動方向D31において一次転写位置TR1の下流側、かつ後述する二次転写位置TR2の上流側で中間転写体31を巻き掛けている。
【0032】
転写部3は一次転写バックアップローラー37を有しており、一次転写バックアップローラー37は中間転写体31を挟んで感光体ドラム21と対向して配設されている。感光体ドラム21と中間転写体31とが当接する一次転写位置TR1では、感光体ドラム21の外周面が中間転写体31と当接して一次転写ニップ部NP1cを形成している。そして、感光体ドラム21上のトナー像が中間転写体31の外周面(一次転写位置TR1において下面)に転写される。こうして画像形成ステーション2Cにより形成されたシアン色のトナー像が中間転写体31に転写される。同様に、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kでもトナー像の転写が実行されることで、各色のトナー像が中間転写体31上に順次重ね合わされ、フルカラーのトナー像が形成される。一方、モノクロトナー像が形成される際には、ブラック色に対応した画像形成ステーション2Kのみにおいて、中間転写体31へのトナー像転写が行われる。
【0033】
こうして中間転写体31に転写されたトナー像は、ベルト駆動ローラー32への巻き掛け位置を経由して二次転写位置TR2に搬送される。この二次転写位置TR2では、中間転写体31を巻き掛けられたローラー34に対して二次転写部4の二次転写ローラー42が中間転写体31を挟んで対向配置されており、中間転写体31表面と転写ローラー42表面とが互いに当接して二次転写ニップ部NP2を形成している。すなわち、ローラー34は二次転写バックアップローラーとして機能している。バックアップローラー34の回転軸は、例えばバネのような弾性部材である押圧部345によって弾性的に、かつ中間転写体31に対して近接・離間移動自在に支持されている。
【0034】
二次転写位置TR2においては、中間転写体31上に形成された単色あるいは複数色のトナー像が、一対のゲートローラー51から搬送経路PTに沿って搬送される記録媒体RMに転写される。また、トナー像が二次転写された記録媒体RMは、二次転写ローラー42から搬送経路PT上に設けられた定着ユニット7へ送出される。定着ユニット7では、記録媒体RMに転写されたトナー像に熱や圧力などが加えられて記録媒体RMへのトナー像の定着が行われる。こうして、記録媒体RMに所望の画像を形成することができる。
【0035】
以上が画像形成装置の概略構成である。続いて、本実施形態にかかる画像形成装置に適用可能なラインヘッド29の詳細について説明する。図3、図4および図5は、本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図である。特に、図3は、ラインヘッド29が備える発光素子およびレンズの位置関係を、レンズが構成する結像光学系の光軸方向Doaから見た平面図であり、図4は、ラインヘッド29の部分斜視図であり、図5は、ラインヘッド29のA−A線(図3の階段状の二点鎖線)における部分階段断面図であって、該断面をラインヘッド29の長手方向LGDから見た場合に相当する。図3では、レンズLS1、LS2が一点鎖線で記載されているが、これは、発光素子EとレンズLS1、LS2とが光軸方向Doaにおいて異なる位置にあることを考慮したものである。また、図6は、レンズが構成する結像光学系と感光体ドラムとの配置関係を示す模式図である。
【0036】
このラインヘッド29は、長手方向LGDに長尺で幅方向LTDに短尺な全体構成を備える。そこで、図3〜図6および以下の図面では必要に応じて、ラインヘッド29の長手方向LGDおよび幅方向LTDを示す。また、レンズが構成する結像光学系の光軸方向Doaについても、図3〜図6および以下の図面で適宜示すとともに、必要に応じて、光軸方向Doaの矢印側を「表」あるいは「上」と表現し、光軸方向Doaの矢印と反対側を「裏」「下」あるいは「底」と表現する。なお、これらの方向LGD、LTD、Doaは互いに直交もしくは略直交している。
【0037】
また、上述のとおり、同ラインヘッド29を画像形成装置に適用するにあたっては、ラインヘッド29は、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに移動する感光体ドラム21表面に対して露光を行なうものであり、しかも、感光体ドラム21表面の主走査方向MDはラインヘッド29の長手方向LGDに平行もしくは略平行であり、感光体ドラム21表面の副走査方向SDはラインヘッド29の幅方向LTDに平行もしくは略平行である。そこで、必要に応じて、長手方向LGD・幅方向LTDと一緒に、主走査方向MD・副走査方向SDも図示することとする。
【0038】
ラインヘッド29では、複数(図1の例では15個)の発光素子Eを長手方向LGDに2行千鳥で並べて、1個の発光素子グループEGが構成されている。さらに、複数の発光素子グループEGが3行千鳥で長手方向LGDに並べられている。かかる配列態様は、換言すれば次のようにも説明できる。つまり、長手方向LGDへ距離3×Dg毎に発光素子グループEGを配置して、長手方向LGDに直線的に並ぶ複数の発光素子グループEGから1行の発光素子グループ行GRa等が構成される。さらに、3行の発光素子グループ行GRa、GRb、GRcは、幅方向LTDに距離Dtを空けて配置されるとともに、長手方向LGDに距離Dgだけ互いにシフトされている。
【0039】
また、各発光素子Eは、互いに同一の発光スペクトルを有するボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である。つまり、各発光素子Eを構成する有機EL素子は、長手方向LGDに長く幅方向LTDに短いガラス平板であるヘッド基板293の裏面293−tに形成されて、ガラス製の封止部材294により封止されている。なお、この封止部材294は、ヘッド基板293の裏面293−tに接着剤により固定されている。
【0040】
上述のように配置された複数の発光素子グループEGそれぞれに対しては1つの結像光学系OSが対向している。具体的には、この結像光学系OSは、発光素子グループEG側に凸の2枚のレンズLS1、LS2から構成されている。なお、図4、図5では、発光素子グループEGとレンズLS1、LS2との間には遮光部材297が図示されているが、これについては結像光学系の説明の後に説明する。
【0041】
このラインヘッド29では、3行千鳥で並ぶ複数の発光素子グループEGのそれぞれに対向してレンズLS1、LS2を配置するために、複数のレンズLS1を3行千鳥で並べたレンズアレイLA1と、複数のレンズLS2を3行千鳥で並べたレンズアレイLA2とが設けられている。つまり、レンズアレイLA1(LA2)では、長手方向LGDへ距離3×Dg毎にレンズLS1(LS2)を配置して、長手方向LGDに直線的に並ぶ複数のレンズLS1(LS2)から1行のレンズ行が構成される。さらに、3行のレンズ行は、幅方向LTDに距離Dtを空けて配置されるとともに、長手方向LGDに距離Dgだけ互いにシフトされている。
【0042】
ちなみに、レンズアレイLA1(LA2)は、光透過製のガラス平板SBに樹脂製のレンズLS1(LS2)を形成することで構成することができる。また、この実施形態では、長手方向LGDに長尺なレンズアレイを一体的な構成で作成することは困難であることに鑑みて、比較的短尺なガラス平板に樹脂製のレンズLS1(LS2)を3行千鳥で形成して1つの短尺なレンズアレイLA1(LA2)を作製し、この短尺レンズアレイLA1(LA2)を長手方向LGDに複数並べることで、長手方向LGDに長尺なレンズアレイを構成している。
【0043】
より具体的には、ヘッド基板表面293−hの幅方向LTDの両端部それぞれには、複数のスペーサーSP1が長手方向LGDに直線的に間隔を空けて並べられている。そして、幅方向LTDへスペーサーSP1、SP1に架設された状態で、複数のレンズアレイLA1が長手方向LGDに並べられて、1つの長尺レンズアレイが構成されている。また、レンズアレイLA1からなる長尺レンズアレイ表面の幅方向LTDの両端部それぞれには、複数のスペーサーSP2が長手方向LGDに直線的に間隔を空けて並べられている。そして、幅方向LTDへスペーサーSP2、SP2に架設された状態で、複数のレンズアレイLA2が長手方向LGDに並べられて、1つの長尺レンズアレイが構成されている。さらに、レンズアレイLA2からなる長尺レンズアレイ表面には平板状の支持ガラスSSが接着されており、複数のレンズアレイLA2は各スペーサーSP2のみならず、当該スペーサーSP2の反対側から支持ガラスSSによっても支持されている。また、この支持ガラスSSは、各レンズアレイLA2が外部に露出しないように、当該レンズアレイLA2を覆う機能も併せ持つ。
【0044】
つまり、上述のように構成された2枚レンズアレイLA1、LA2をヘッド基板293に対向させることで、発光素子グループEGの3行千鳥配置に対応して、2枚のレンズLS1、LS2で構成される結像光学系OSが3行千鳥で長手方向LGDに並ぶこととなる。そして、発光素子グループEGの各発光素子Eが射出した光は、結像光学系OSおよび支持ガラスSSを透過して、感光体ドラム21表面に照射される。なお、図5では、発光素子グループ行GRaに属する発光素子グループEGからの光を結像する結像光学系OSに対して符号OSaが併記されている。また、同様にして、発光素子グループ行GRb、GRcに属する発光素子グループEGからの光を結像する結像光学系OSに対して符号OSb、OScが併記されている。すなわち、幅方向LTDに互いに異なる位置に配置された結像光学系OSに対して、異なる符合OSa、OSb、OScが付されている。
【0045】
このように、ラインヘッド29では、複数の発光素子グループEGそれぞれに対して専用の結像光学系OSが配置されている。このようなラインヘッド29では、発光素子グループEGからの光は、当該発光素子グループEGに設けられた結像光学系OSにのみ入射し、それ以外の結像光学系OSに入射しないことが望ましい。そこで、ヘッド基板293の表面293−hとレンズアレイLA1との間には、遮光部材297が設けられている。この遮光部材297は、発光素子グループEGから当該発光素子グループEGに対向する結像光学系OSに向かう光を制限する機能を果たす。具体的には、遮光部材297には、発光素子グループEGからこれに対向する結像光学系OSへと向かう導光孔2971が、光軸方向Doaに貫通形成されている。導光孔2971は円柱形状の孔であり、その中心軸は結像光学系OSの光軸OAと概ね一致している。したがって、発光素子グループEGから射出された光のうち、遮光部材297の底面で遮られることなく導光孔2971を通過した光が、結像光学系OSに入射することとなる。
【0046】
また、この遮光部材297の上面には絞り平板295が設けられている。この絞り平板295は、遮光部材297とレンズアレイLA1の間に位置しており、導光孔2971とこれに対向する結像光学系OSの間に開口絞りDa(図6)を有している。したがって、導光孔2971、開口絞りDaおよび結像光学系OSが光軸方向Doaに直線的に並ぶこととなり、発光素子グループEGから射出された光は、導光孔2971を通過後に開口絞りDaで絞られて結像光学系OSに入射する。そして、結像光学系OSで結像された光が感光体ドラム21表面(被露光面)にスポットSTとして照射されて、感光体ドラム21表面が露光される(図6)。なお、結像光学系OSは1とは異なる(つまり、正立等倍ではない)光学倍率を有する。
【0047】
なお、上述のとおり、この実施形態では、結像光学系OSa、OSb、OScが幅方向LTDの異なる位置に配設されている。この際、各結像光学系OSa、OSb、OScは、幅方向LTDへのピッチDtが等しくなるとともに、中央の結像光学系OSbの光軸OAが感光体ドラム21の曲率中心C21を通るように配置される。したがって、幅方向LTD中央の結像光学系OSbがスポットSTを形成する位置と、幅方向LTD端部の結像光学系OSa、OSbがスポットを形成する位置とは、光軸方向Doaに距離dだけずれる(図6)。
【0048】
ところで、結像光学系OS(OSa、OSb、OSc)は、2枚のレンズLS1、LS2で構成されているが、これらのうちレンズLS1は、面形状の異なる複数の領域からなる。これについて、図7〜図9を用いて説明する。ここで、図7は、第1実施形態におけるレンズLS1の構成を示す平面図であり、同図では、レンズLS1の他にこれに開口する開口絞りDaの平面図が併記されている。図8は、第1実施形態において被露光面に照射される光ビームの断面形状を示す図であり、デフォーカス量が横軸にとられている。図9は、第1実施形態において被露光面に形成されるスポットダイアグラムを示す平面図であり、デフォーカス量が横軸にとられている。
【0049】
なお、これらの図では、レンズアレイLA1を構成するガラス平板SBの法線方向から当該ガラス平板SB(の裏面)に投影したレンズLS1の幾何重心を通って当該ガラス平板SBの法線方向に平行な仮想軸(ここでは光軸OAに一致)をz軸として表し、z軸に直交してレンズLS1の上記幾何重心を通る仮想軸(ここでは主走査方向MDに一致)をx軸として表し、z軸およびx軸に直交してレンズLS1の上記幾何重心を通る仮想軸(ここでは副走査方向SDに一致)をy軸として表している。また、以下で適宜示す座標軸x、y、zの内容も同様である。
【0050】
図7の上段「開口絞り平面図」の欄に示すように、第1実施形態では、開口絞りDaは円形もしくは略円形であり、その中心(幾何重心)は結像光学系OSの光軸と一致している。一方、図7の下段「レンズ平面図」の欄に示すように、レンズLS1は4つの領域DM1〜DM4で構成されている。領域DM1〜DM4のそれぞれは中心角が90°の扇形であり、各円弧を繋いで1つの円を形成するようにレンズLS1の周方向に並んでいる。領域DM1、DM3は何れもy軸に対して左右対称であるとともに、互いにx軸に対して上下対称である。一方、領域DM2、DM4は何れもx軸に対して上下対称であるとともに、互いにy軸に対して左右対称である。
【0051】
領域DM1、DM3の面形状Sf1と領域DM2、DM4の面形状Sf2は互いに異なっている。面形状Sf1はx軸方向に大きな球面収差Slaを有するとともに、y軸方向に小さな球面収差Ssaを有する(Sla>Ssa)。一方、面形状Sf2はy軸方向に大きな球面収差Slaを有するとともにx軸方向に小さな球面収差Ssaを有する(Sla>Ssa)。つまり、各面形状が有する大きな球面収差を主たる球面収差と称すると、面形状Sf1の主たる球面収差と面形状Sf2の主たる球面収差は、それらの収差量が等しいもしくは略等しい(=Sla)とともに、それらの方向が互いに直交もしくは略直交している。また、面形状Sf1が有する小さな球面収差と面形状Sf2が有する小さな球面収差についても同様の関係が成立している。
【0052】
ところで、このような構成では、被露光面に照射される光ビームの断面のサイズは、レンズLS1の各領域が有する球面収差と、レンズLS1に入射する光を制限する開口絞りDaの径で決まる。詳述すると、領域DM1、DM3はx軸方向に大きくy軸方向に小さい球面収差を有するため、領域DM1、DM3を通過した光ビームは、主走査方向断面(x軸方向断面)において広く、副走査方向断面(y軸方向断面)において狭い断面を有する。一方、領域DM2、DM4はy軸方向に大きくx軸方向に小さい球面収差を有するため、領域DM2、DM4を通過した光ビームは、副走査方向断面(y軸方向断面)において広く、主走査方向断面(x軸方向断面)において狭い断面を有する。
【0053】
さらに、領域DM1、DM3のx軸方向への主たる球面収差と領域DM2、DM4のy軸方向への主たる球面収差はいずれもSlaで等しく、しかも、開口絞りDaの径はx軸とy軸で等しい。したがって、図8に示すように、領域DM1を通過した光ビームの主走査方向断面(x軸方向断面)と領域DM2を通過した光ビームの副走査方向断面(y軸方向断面)は等しくなる。また、領域DM1を通過した光ビームの副走査方向断面(y軸方向断面)と領域DM2を通過した光ビームの主走査方向断面(x軸方向断面)についても同様の関係が成立する。
【0054】
そして、光ビームが上述した図8のような特性を有することから、領域DM1、DM3を通過した光ビームは、x軸方向に伸びる異方性を持つスポットFL1を被露光面に形成する(図9)。また、領域DM2、DM4を通過した光ビームは、y軸方向に伸びる異方性を持つスポットFL2を被露光面に形成する(図9)。こうして、長辺方向の傾きが互いに異なるスポットFL1、FL2が被露光面に形成される。さらに、スポットFL1の長辺方向(x軸方向)の長さと、スポットFL2の長辺方向(y軸方向)の長さは等しいもしくは略等しい(図9)。このようにして、等しい長さを有するとともに互いに直交する異方性スポットFL1、FL2が被露光面で重ね合わされて、1つのスポットSTが合成される。図9に示すように、こうして形成される合成スポットSTの大きさは、デフォーカス量によって多少変動しているものの、一定の範囲内で概ね安定している。また、スポットSTのx軸方向およびy軸方向への径は等しく、スポットSTの異方性が緩和されている。
【0055】
以上のように、本実施形態では、発光素子Eが発光する光から2つのスポットFL1、FL2(第1のスポット、第2のスポット)を生成する。しかも、スポットFL1は、径方向によって径が異なるとともにx軸方向(第1の方向)に長辺を有する一方、スポットFL2は、径方向によって径が異なるとともにx軸方向(第1の方向)と異なるy軸方向(第2の方向)に長辺を有する。
【0056】
なお、本明細書において、「径方向」とは、スポットの幾何重心を通る仮想直線の方向であり、「径」とは、ある径方向におけるスポットの一端から他端までの距離として定められる。さらに、「径方向によって径が異なる」とは、幾何重心を中心として径方向を回転させた際に、径の大きさが変化するような状態を指し示す。また、長辺方向とは、幾何重心を中心として径方向を回転させた際に、径が最大もしくは略最大となる径方向として求めることができる。
【0057】
つまり、これらスポットFL1、FL2は、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、スポットFL2の長辺は、スポットFL1の長辺と等しいか略等しい長さとなっている。そして、このようなスポットFL1、FL2を感光体ドラム21表面(被露光面)に重ねることで、1つのスポットSTが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0058】
第2実施形態
図10は、第2実施形態におけるレンズLS1の構成を示す平面図であり、同図では、レンズLS1の他にこれに開口する開口絞りDaの平面図が併記されている。図11は、第2実施形態において被露光面に照射される光ビームの断面形状を示す図であり、デフォーカス量が横軸にとられている。図12は、第2実施形態において被露光面に形成されるスポットダイアグラムを示す平面図であり、デフォーカス量が横軸にとられている。第1実施形態と第2実施形態の違いは開口絞りDaおよびレンズLS1の構成であるので、以下ではこの違いについて主に説明することとし、共通部分については適宜省略する。
【0059】
図10の上段「開口絞り平面図」の欄に示すように、第2実施形態では、開口絞りDaは、y軸を長軸とするとともにx軸を短軸とする楕円形であり、その幾何重心は結像光学系OSの光軸と一致している。一方、図10の下段「レンズ平面図」の欄に示すように、レンズLS1は、中心角が90°の扇形を有する4つの領域DM1〜DM4で構成される点では第1実施形態と共通するが、各領域DM1〜DM4の形状が第1実施形態と異なっている。この点について詳述すると次のとおりである。
【0060】
領域DM1、DM3は面形状Sf3を有するともに、領域DM2、DM3は面形状Sf4を有しており、これら面形状Sf3、Sf4は互いに異なっている。面形状Sf3はx軸方向に大きな球面収差Slbを有するとともに、y軸方向に小さな球面収差Ssbを有する(Slb>Ssb)。一方、面形状Sf4はy軸方向に大きな球面収差Slcを有するとともにx軸方向に小さな球面収差Sscを有する(Slc>Ssc)。また、面形状Sf3の主たる球面収差Slbは面形状Sf4の主たる球面収差Slcよりも大きく(Slb>Slc)、これらは互いに直交している。同様に、面形状Sf3の小さな球面収差Ssbは面形状Sf4の小さな球面収差Sscよりも大きく(Ssb>Ssc)、これらは互いに直交している。
【0061】
第1実施形態でも説明したとおり、このような構成では、被露光面に照射される光ビームの断面のサイズは、レンズLS1の各領域が有する球面収差と、レンズLS1に入射する光を制限する開口絞りDaの径で決まる。詳述すると、領域DM1、DM3はx軸方向に大きくy軸方向に小さい球面収差を有するため、領域DM1、DM3を通過した光ビームは、主走査方向断面(x軸方向断面)において広く、副走査方向断面(y軸方向断面)において狭い断面を有する。一方、領域DM2、DM4はy軸方向に大きくx軸方向に小さい球面収差を有するため、領域DM2、DM4を通過した光ビームは、副走査方向断面(y軸方向断面)において広く、主走査方向断面(x軸方向断面)において狭い断面を有する。
【0062】
このとき、開口絞りDaの径はx軸方向よりもy軸方向に大きく、開口絞りDaを通過した直後の光ビームの幅はx軸方向に狭くy軸方向に広い。これに対して、領域DM1、DM3のx軸方向への主たる球面収差Slbは、領域DM2、DM4のy軸方向への主たる球面収差Slcよりも大きいため、レンズLS1は、入射してきた光ビームをx軸方向よりもy軸方向に引き伸ばすように作用する。したがって、開口絞りDaとレンズLS1の各作用が協働すると、結果的には、図11に示すように、領域DM1を通過した光ビームの主走査方向断面(x軸方向断面)と領域DM2を通過した光ビームの副走査方向断面(y軸方向断面)は等しくなる。また、領域DM1を通過した光ビームの副走査方向断面(y軸方向断面)と領域DM2を通過した光ビームの主走査方向断面(x軸方向断面)についても同様の関係が成立する。
【0063】
なお、図11の最上段「領域DM1を通過した光ビームの主走査方向断面」の欄では、実線で表される光ビーム断面と破線で表される光ビーム断面が併記されているが、実線が第2実施形態での光ビーム断面であり、破線は開口絞りDaの形状が円形であった場合の光ビーム断面を参考までに示したものである。この破線が示すように、円形の開口絞りDaを用いた場合は、領域DM1を通過した光ビームの主走査方向断面(x軸方向断面)は、領域DM2を通過した光ビームの副走査方向断面(y軸方向断面)よりも広くなることが判る。
【0064】
そして、光ビームがこのような特性を有することから、図12の上段「楕円系の開口絞りDaを使用」に示すように、領域DM1、DM3を通過した光ビームは、x軸方向に伸びる異方性スポットFL1を被露光面に形成し、また、領域DM2、DM4を通過した光ビームは、異方性スポットFL1と等しい長さを有するとともにy軸方向に伸びる異方性スポットFL2を被露光面に形成する。このようにして、等しい長さを有するとともに互いに直交する異方性スポットFL1、FL2が被露光面で重ね合わされて、スポットSTが形成される。図12の上段に示すように、このようにして形成されるスポットSTの大きさは、デフォーカス量によって多少変動しているものの、一定の範囲内で概ね安定している。また、スポットSTのx軸方向およびy軸方向への径は等しく、スポットSTの異方性が緩和されている。
【0065】
なお、図12の下段には「円系の開口絞りDaを使用」した場合が示されているが、これは開口絞りDaの形状が円形であった場合のスポットダイアグラムを参考までに示したものである。これによると、円形の開口絞りDaを用いた場合は、y軸方向に伸びる異方性スポットFL1がx軸方向に伸びる異方性スポットFL2より長くなって、これらの長さが等しくならないことが判る。
【0066】
以上のように、本実施形態では、発光素子Eが発光する光から2つのスポットFL1、FL2(第1のスポット、第2のスポット)を生成する。しかも、スポットFL1は、径方向によって径が異なるとともにx軸方向(第1の方向)に長辺を有する一方、スポットFL2は、径方向によって径が異なるとともにx軸方向(第1の方向)と異なるy軸方向(第2の方向)に長辺を有する。
【0067】
つまり、これらスポットFL1、FL2は、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、スポットFL2の長辺は、スポットFL1の長辺と等しいか略等しい長さとなっている。そして、このようなスポットFL1、FL2を感光体ドラム21表面(被露光面)に重ねることで、1つのスポットSTが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0068】
第3実施形態
図13は、第3実施形態の結像光学系のレンズLS1が有する構成を示す模式図であり、同図上段の「平面図」の欄は、発光素子E側から光軸方向DoaにレンズLS1を平面視した場合を示し、同図下段の「側面図」の欄は、光軸方向Doaに垂直な方向から結像光学系OSを見た場合を示している。
【0069】
z軸の回りに反時計回りにとったx軸に対する回転角度をθ(−π≦θ≦π)としたとき、レンズLS1(のレンズ面)の曲率半径Rは、次の関係
R=J+f(θ)
J:定数
f(θ):θを変数とする周期関数
を有している。なお、第3実施形態では、f(θ)は余弦関数であり、次の関係
f(θ)=L×cos(M×θ)
L:定数
M:正の整数
を有する。また、本明細書において角度θの単位はラジアン[rad]とする。
【0070】
レンズLS1がこのような構成を有するため、結像光学系OSの結像位置は、位置P0を略中心とする位置P1から位置P2までの範囲に連続的に分布することとなる。ここで、レンズLS1と位置P0との間隔D(J)は、上述の定数Jによって決まる。したがって、定数Jを調整することで、結像位置の分布範囲の略中心を設定することができる。また、結像位置の分布範囲D(f(θ))は、関数f(θ)によって決まる。したがって、関数f(θ)を調整することで、結像位置の分布範囲D(f(θ))を設定することができる。
【0071】
また、このように、レンズLS1の曲率半径Rを角度θに対して変化させることで、複数の非点収差をレンズに持たせ、延いては、各非点収差により形成される異方性スポット(焦線)を互いに傾斜させるといった光学特性、換言すれば、各非点収差が形成するスポットダイアグラム(異方性スポット)の長径が互いに傾斜するといった光学特性を実現することができる。この光学特性について、結像光学系OSのより詳細なデータを用いて説明する。
【0072】
図14は、主走査方向断面における結像光学系の光線図である。図15は、レンズデータのレンズ面形状を定義する式を一覧で示した図である。式1および式2は、x−y直交座標とr−θ極座標とを対応付ける式である。式3は、レンズLS2のレンズ面(xy多項式面)の形状あるいはレンズLS1のレンズ面(f(θ)面)の形状を与える式である。具体的には、式4で与えられるレンズの曲率Cv=1/Rを一定値とすると、式3はレンズLS2のレンズ面(xy多項式面)の形状を与える。一方、曲率半径Rを式5で示す角度θの関数とし、これに対応してレンズの極率Cv=1/Rも角度θの関数となるとき、式3はレンズLS1のレンズ面(f(θ)面)の形状を与える。なお、各式で用いられるその他の係数A〜I等の内容については、同図に記載のとおりである。
【0073】
図16は、結像光学系OSを透過する光の波長と、レンズLS1、LS2の有効径を表として示す図である。図17は、結像光学系OSのレンズデータである。図18は、結像光学系OSのf(θ)面である面S4の形状を与える各係数を表として示す図である。図19は、結像光学系OSのxy多項式面である面S7の形状を与える各係数を表として示す図である。この実施形態では、発光素子(物体面S1)とレンズLS1(f(θ)面S4)との間に円形もしくは略円形の開口絞り(絞り面S3)が設けられており、開口絞りで絞られた光が、レンズLS1を透過した後にレンズLS2を透過して像面S10に照射される。
【0074】
このように本実施形態では、レンズLS1の曲率半径Rは、次式
R=J+L×cos(M×θ)
で与えられている。したがって、余弦関数cos(M×θ)の角度θに対する変化に応じて、曲率半径Rも連続的に変化し、その結果、レンズLS1に複数の非点収差を持たせることができる。そして、複数の非点収差それぞれが異方性スポットを被露光面に形成することで、同じ長さを有するとともに互いに傾きの異なる複数の異方性スポットを重なり合わせて、図20に示すようなスポットSTを形成することができる。
【0075】
図20は、第3実施形態と比較形態とのスポットダイアグラムを示す図であり、各形態についてデフォーカス量を−40(μm)から+40(μm)まで変化させた際のスポットダイアグラムが示されている。同図は、図13で示した位置P0をデフォーカス量が0(μm)の位置としている。同図上段の「実施形態」に示すスポットダイアグラムは、上記レンズデータに基づいて求めたものである。一方、同図下段の「比較形態」に示すスポットダイアグラムは、特許文献1に記載のレンズデータに基づいて求めたものである。「比較形態」では、スポットSTは、デフォーカス量が負の範囲において縦長な異方性を示すとともに、デフォーカス量が正の範囲において横長な異方性を示している。これに対して、「実施形態」では、長径の傾きが互いに異なる複数のスポットダイアグラム(異方性スポット)を合成してスポットSTが形成されることから、デフォーカス状態での異方性が緩和されていることが判る。
【0076】
以上のように、本実施形態では、発光素子Eが発光する光から複数のスポットを生成する。しかも、各スポットは、径方向によって径が異なるとともに、互いに異なる方向に長辺を有する。つまり、各スポットは、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、各スポットの長辺は互いに等しいか略等しい長さとなっている。そして、このような複数のスポットを感光体ドラム21表面(被露光面)に重ねることで、1つのスポットSTが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0077】
第4実施形態
続いて、第4実施形態について説明する。先の第3実施形態と第4実施形態は、いずれもレンズLS1の曲率半径が角度θの周期関数f(θ)で与えられる点は共通するが、周期関数f(θ)の内容において異なる。以下では、この違いについて主に説明するとともに、共通部分については適宜説明を省略する。
【0078】
図21は、主走査方向断面(同図上段)および副走査方向断面(同図下段)における結像光学系の光線図である。なお、図21の主走査方向断面では、光軸上に位置する発光素子E0と、光軸からずれた位置に位置する発光素子E1が併記されている。図22は、レンズデータのレンズ面形状を定義する式を一覧で示した図である。式6および式7は、x−y直交座標とr−θ極座標とを対応付ける式である。式8は、レンズLS2のレンズ面(非球面)の形状あるいはレンズLS1のレンズ面(f(θ)面)の形状を与える式である。具体的には、式9で与えられるレンズの曲率Cv=1/Rを一定値とすると、式8はレンズLS2のレンズ面(xy多項式面)の形状を与える。一方、曲率半径Rを式10で示す角度θの関数とし、これに対応してレンズの極率Cv=1/Rも角度θの関数となるとき、式8はレンズLS1のレンズ面(f(θ)面)の形状を与える。なお、各式で用いられるその他の係数A〜I等の内容については、同図に記載のとおりである。
【0079】
図23は、結像光学系OSを透過する光の波長と、開口絞りの径を表と示す図である。図24は、結像光学系OSのレンズデータである。図25は、結像光学系OSのf(θ)面である面S4の形状を与える各係数を表として示す図である。図26は、結像光学系OSのxy多項式面である面S6の形状を与える各係数を表として示す図である。この実施形態では、発光素子(物体面S1)とレンズLS1(f(θ)面S4)との間に円形もしくは略円形の開口絞り(絞り面S3)が設けられており、この開口絞りで絞られた光が、レンズLS1を透過した後にレンズLS2を透過して像面S10に照射される。
【0080】
このように本実施形態では、レンズLS1の曲率半径Rは、次式
R=J+L×|cos(M×θ)|
で与えられている。ここで、記号||は絶対値を示す。したがって、余弦関数cos(M×θ)の絶対値の角度θに対する変化に応じて曲率半径Rも連続的に変化するため、余弦関数の値が0となるラインを境界としてレンズLS1は2×M個の領域に分割され、しかも、各領域のそれぞれが非点収差を持つこととなる。その結果、レンズLS1に複数の非点収差を持たせることができる。そして、複数の非点収差それぞれが異方性スポットを被露光面に形成することで、同じ長さを有するとともに互いに傾きの異なる複数の異方性スポットを重なり合わせて、図27に示すようなスポットSTを形成することができる。以下は、領域を6個に分割した場合に相当する。
【0081】
図27は、第4実施形態のスポットダイアグラムを示す図である。なお、以下の説明では、図28、図29に示す比較形態と併せて、実施形態のスポットダイアグラムについて説明する。ここで、図28は、比較形態における結像光学系OSのxy多項式面である面S6の形状を与える各係数を表として示す図であり、実施形態のS6面のデータを図28のものに置き換えることで、比較形態のレンズデータが得られる。また、図29は、比較形態のスポットダイアグラムを示す図である。図27および図29では、発光素子E0、E1のそれぞれが形成するスポットダイアグラムが、デフォーカス量を−40(μm)から+40(μm)まで変化させた場合について示されている。ちなみに、図13で示した位置P0をデフォーカス量が0(μm)の位置としている。
【0082】
「比較形態」では、スポットSTの大きさがデフォーカス量の変化に応じて大きく変化してしまっている。これに対して、「実施形態」では、長さが等しく傾きの異なる複数の異方性スポットを重ね合わせてスポットSTが形成されることから、フォーカス位置に依らず、スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となっている。
【0083】
以上のように、本実施形態では、発光素子Eが発光する光から複数のスポットを生成する。しかも、各スポットは、径方向によって径が異なるとともに、互いに異なる方向に長辺を有する。つまり、各スポットは、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、各スポットの長辺は互いに等しいか略等しい長さとなっている。そして、このような複数のスポットを感光体ドラム21表面(被露光面)に重ねることで、1つのスポットSTが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0084】
第5実施形態
図30は、結像光学系OSのf(θ)面である面S4の形状を与える各係数を表として示す図である。図31は、第5実施形態のスポットダイアグラムを示す図である。第5実施形態と先の第4実施形態の違いはレンズLS1の領域の個数のみであり、具体的には、第5実施形態ではレンズLS1は10個の領域に分割されている。図31に示すように、分割数を増加させることで、スポットはより円形に近づき、スポットの異方性が緩和されていることが判る。
【0085】
以上のように、本実施形態では、発光素子Eが発光する光から複数のスポットを生成する。しかも、各スポットは、径方向によって径が異なるとともに、互いに異なる方向に長辺を有する。つまり、各スポットは、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、各スポットFL2の長辺は互いに等しいか略等しい長さとなっている。そして、このような複数のスポットを感光体ドラム21表面(被露光面)に重ねることで、1つのスポットSTが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0086】
その他
以上のように、上記実施形態では、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当している。また、開口絞りDaおよび結像光学系OSが協働して本発明の「光学系」として機能している。また、被露光面で重なり合う複数の異方性スポットが本発明の「第1のスポット」「第2のスポット」に相当している。また、第1・第2実施形態では、主走査方向MDあるいはx軸方向が本発明の「第1の方向」に相当し、副走査方向SDあるいはy軸方向が本発明の「第2の方向」に相当し、領域DM1、DM3が本発明の「第1の領域」に相当し、領域DM2、DM4が本発明の「第2の領域」に相当している。また、第1実施形態では、領域DM1、DM3の球面収差Slaが本発明の「第1の球面収差」に相当し、領域DM2、DM4の球面収差Slaが本発明の「第2の球面収差」に相当している。また、第2実施形態では、球面収差Slbが本発明の「第1の球面収差」に相当し、球面収差Slcが本発明の「第2の球面収差」に相当している。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記第1実施形態では、楕円系のスポットFL1、FL2が形成されていたが、これらのスポットの形状は楕円形に限られず、例えば、長方形であっても良い。この場合、長方形の対角方向が「長辺方向」に相当することとなり、長方形の対角線が「長辺」に相当する。
【0088】
また、上記実施形態では、結像光学系OSは、2枚のレンズLS1、LS2で構成されていた。しかしながら、結像光学系OSを構成するレンズの枚数は2枚に限られず、1枚あるいは3枚以上であっても良い。
【0089】
また、第1・2実施形態では、4個の領域DM1〜DM4によりレンズLS1を構成していたが、レンズLS1を構成する領域の個数は4個に限られない。
【0090】
また、第1・第2実施形態では、傾きの異なる2個の異方性スポットFL1、FL2を重ね合わせてスポットSTを形成していたが、傾きの異なる3個以上の異方性スポットを重ね合わせてスポットSTを形成するように構成しても良い。
【0091】
また、第1・第2実施形態では、レンズLS1に複数の球面収差を持たせることで、傾きの異なる複数の異方性スポットを重ね合わせていたが、レンズLS1以外の例えばレンズLS2に複数の球面収差を持たせることで、傾きの異なる複数の異方性スポットを重ね合わせるように構成しても良い。
【0092】
また、開口絞りDaの位置も種々の変更が可能であり、上記の実施形態で説明した位置に限られない。
【0093】
また、上記第3〜5実施形態では、レンズLS1の曲率半径が角度θに応じて変化するように構成していた。しかしながら、結像光学系OSを構成するその他のレンズの曲率変形が角度θに応じて変化するように構成しても良い。
【0094】
また、感光体ドラム21と結像光学系OSa、OSb、OScとの配置関係は図6に示したものに限られず、結像光学系OSaまたは結像光学系OScの光軸が曲率中心C21を通るように構成したり、あるいは結像光学系OSa、OSb、OScのいずれの光軸OAも曲率中心C21から外れるように構成したりすることができる。
【0095】
また、副走査方向SDに異なる位置に配置される結像光学系OSの個数(換言すれば、レンズ行の行数)は3個に限られず、2個あるいは4個以上であっても良い。
【0096】
また、上記実施形態では、結像光学系OSの光学倍率については特に言及しなかった。しかしながら、結像光学系OSとしては、倒立像を結像するもの、正立像を結像するもの、縮小像を結像するもの、拡大像を結像するもの、あるいはこれらを組み合わせた光学特性を有するものを用いることができる。
【0097】
また、発光素子グループEGを構成する発光素子Eの個数や、配置態様も種々の変更が可能である。
【0098】
また、上述の有機EL素子以外に、LED(Light Emitting Diode)等の光源を、発光素子Eとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0099】
21…感光体ドラム、 24…現像器、 29…ラインヘッド、 E…発光素子、 EG…発光素子グループ、 Da…開口絞り、 LS1、LS2…レンズ、 OS、OSa、OSb、OSc…結像光学系、 MC…メインコントローラー、 HC…ヘッドコントローラー、 R…曲率半径、 θ…z軸の回りの角度、 DM1、DM2、DM3、DM4…レンズ面の領域、 FL1、FL2…異方性スポット
【技術分野】
【0001】
この発明は、発光素子が透過した光を光学系により被露光面に照射する露光ヘッドおよび当該露光ヘッドを用いる画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光素子が射出した光を光学系により結像することで、被露光面に光のスポットを照射するものが知られている。また、こうして、スポットにより被露光面を露光する構成では、スポットの大きさをある程度の範囲内に収めることが適当となる。しかしながら、光学系の結像位置が被露光面からずれると、スポットの大きさがぼやける等して変動してしまう場合があった。
【0003】
そこで、特許文献1の露光ヘッドでは、複数の結像位置を点在させている。つまり、この露光ヘッドでは、互いに異なる焦点距離を有する複数の領域が形成されたレンズを用いて、光学系が構成されている。そのため、レンズでの光の通過領域に応じて、複数の結像位置が光学系の光軸方向に点在することとなる。したがって、例えば、露光ヘッドと被露光面との距離が変動して、一の結像位置が被露光面からずれたとしても、他の結像位置が略被露光面上に来ることで、スポットの大きさを安定化させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−202579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記露光ヘッドは、スポットの大きさを安定化できる点では好適であるが、スポットの形状に異方性が現れてしまうといった問題が生じる場合があった。詳述すると、上記露光ヘッドでは、点在する複数の結像位置それぞれに光(光線)を集中させる構成であるため、各結像位置では比較的等方的なスポットが形成される一方、一の結像位置と他の結像位置との間等のデフォーカス位置ではスポットの形状に異方性が現れてしまう。その結果、例えば被露光面の位置が変動してデフォーカスしたような場合に、スポットの大きさは安定していても、スポットに異方性が現れて、良好な露光が実現できない場合があった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、フォーカス位置に依らず、スポットの大きさを安定させつつスポットの異方性を緩和して、良好な露光を実現可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明にかかる露光ヘッドは、上記目的を達成するために、光を発光する発光素子と、径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する第1のスポット、および径方向によって径が異なるとともに第1の方向と異なる第2の方向に第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さの長辺を有する第2のスポットを発光素子が発光する光から生成し、被露光面に重ねる光学倍率が1と異なる光学系と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この発明にかかる画像形成装置は、上記目的を達成するために、潜像担持体と、発光素子と、径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する第1のスポット、および径方向によって径が異なるとともに第1の方向と異なる第2の方向に第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さの長辺を有する第2のスポットを発光素子が発光する光から生成し、潜像担持体に重ねる光学倍率が1と異なる光学系を有する露光ヘッドと、を備える。
【0009】
このように構成された発明(露光ヘッド、画像形成装置)では、発光素子が発光する光から2つのスポット(第1のスポット、第2のスポット)を生成する。しかも、第1のスポットは、径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する一方、第2のスポットは、径方向によって径が異なるとともに第1の方向と異なる第2の方向に長辺を有する。つまり、これら第1・第2のスポットは、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、第2のスポットの長辺は、第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さとなっている。そして、このような第1・第2のスポットを被露光面(潜像担持体)に重ねることで、1つのスポットが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットの大きさを安定させつつスポットの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0010】
また、光学系は、第1の領域および第1の領域と異なる位置に配接された第2の領域を有するレンズと、開口絞りを備え、開口絞りを通過した光を第1の領域で結像して第1のスポットを生成し、開口絞りを通過した光を第2の領域で結像して第2のスポットを生成するように構成しても良い。このような構成では、傾きが異なり長さの等しいもしくは略等しい第1のスポットおよび第2のスポットを重ねて1つのスポットを合成して、大きさが安定しつつ異方性の緩和された(合成)スポットで良好な露光が実現できる。
【0011】
この際、第1の領域は第1の球面収差を有し、第2の領域は第1の球面収差と異なる第2の球面収差を有するように構成しても良い。これにより、傾きが異なり長さの等しいもしくは略等しい第1のスポットおよび第2のスポットを重ねて1つのスポットを合成して、大きさが安定しつつ異方性の緩和された(合成)スポットで良好な露光が実現できる。
【0012】
より具体的には、第1の球面収差と第2の球面収差が等しいもしくは略等しい大きさを有する場合には、開口絞りを円形もしくは略円形とすることで、傾きが異なり長さの等しいもしくは略等しい第1のスポットおよび第2のスポットを重ねて、大きさが安定しつつ異方性の緩和されたスポットで良好な露光が実行でき、第1の球面収差が第2の球面収差よりも大きい場合には、開口絞りを第2の方向を長軸とする楕円形とすることで、傾きが異なり長さの等しいもしくは略等しい第1のスポットおよび第2のスポットを重ねて、大きさが安定しつつ異方性の緩和されたスポットで良好な露光が実行できる。
【0013】
また、光学系は、発光素子が発光した光を絞る円形もしくは略円形の開口絞りと、開口絞りを通過した光が入射するレンズと、レンズが配設された基板とを有し、基板の法線方向から基板に投影したレンズの幾何重心を通って基板の法線方向に平行な仮想軸をz軸とし、z軸に直交してレンズの幾何重心を通る仮想軸をx軸としたとき、レンズの曲率半径Rは、z軸周りに反時計回りにとったx軸に対する回転角度θの周期関数で与えられ、光学系は、開口絞りを通過した光をレンズで結像して、第1のスポットおよび第2のスポットを生成するように構成しても良い。これにより、傾きが異なり長さの等しいもしくは略等しい第1のスポットおよび第2のスポットを重ねて、大きさが安定しつつ異方性の緩和されたスポットを合成して、良好な露光が実現できる。
【0014】
より具体的には、レンズの曲率半径Rが、次の関係、R=J+L×cos(M×θ)、J:定数、L:定数、M:正の整数を有するように構成しても良く、あるいは、レンズの曲率半径Rが、次の関係、R=J+L×|cos(M×θ)|、J:定数、L:定数、M:正の整数を有するように構成しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図。
【図2】図1の装置の電気的構成を示すブロック図。
【図3】本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図。
【図4】本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図。
【図5】本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図。
【図6】レンズが構成する結像光学系と感光体ドラムとの配置関係を示す模式図。
【図7】第1実施形態におけるレンズLS1の構成を示す平面図。
【図8】第1実施形態において被露光面に照射される光ビームの断面形状を示す図。
【図9】第1実施形態において被露光面に形成されるスポットダイアグラムを示す図。
【図10】第2実施形態でレンズLS1の構成を示す平面図。
【図11】第2実施形態で被露光面に照射される光ビームの断面形状を示す図。
【図12】第2実施形態で被露光面に形成されるスポットダイアグラムを示す平面図。
【図13】第3実施形態の結像光学系のレンズLS1が有する構成を示す模式図。
【図14】主走査方向断面における結像光学系の光線図。
【図15】レンズデータのレンズ面形状を定義する式を一覧で示した図。
【図16】結像光学系を透過する光の波長とレンズの有効径を表として示す図。
【図17】結像光学系のレンズデータ。
【図18】結像光学系の面S4の形状を与える各係数を表として示す図。
【図19】結像光学系の面S7の形状を与える各係数を表として示す図。
【図20】第3実施形態と比較形態とのスポットダイアグラムを示す図。
【図21】結像光学系の光線図。
【図22】レンズデータのレンズ面形状を定義する式を一覧で示した図。
【図23】結像光学系を透過する光の波長と開口絞りの径を表と示す図。
【図24】結像光学系のレンズデータ。
【図25】結像光学系の面S4の形状を与える各係数を表として示す図。
【図26】結像光学系の面S6の形状を与える各係数を表として示す図。
【図27】第4実施形態のスポットダイアグラムを示す図。
【図28】比較形態での結像光学系の面S6の形状を与える各係数を示す図。
【図29】比較形態のスポットダイアグラムを示す図。
【図30】結像光学系の面S4の形状を与える各係数を示す図。
【図31】第5実施形態のスポットダイアグラムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
第1実施形態
図1は本発明を適用可能な画像形成装置の一例を示す図である。また、図2は図1の装置の電気的構成を示すブロック図である。この画像形成装置1は、互いに異なる色の画像を形成する4個の画像形成ステーション2Y(イエロー用)、2M(マゼンタ用)、2C(シアン用)および2K(ブラック用)を備えている。そして、画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)およびブラック(K)の4色のトナーを重ね合わせてカラー画像を形成するカラーモードと、ブラック(K)のトナーのみを用いてモノクロ画像を形成するモノクロモードとを選択的に実行可能となっている。
【0017】
この画像形成装置では、ホストコンピューターなどの外部装置から画像形成指令がCPUやメモリーなどを有するメインコントローラーMCに与えられると、このメインコントローラーMCはエンジンコントローラーECに制御信号を与えるとともに画像形成指令に対応するビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。このとき、メインコントローラーMCは、ヘッドコントローラーHCから水平リクエスト信号HREQを受け取る毎に、主走査方向MDに1ライン分のビデオデータVDをヘッドコントローラーHCに与える。また、ヘッドコントローラーHCは、メインコントローラーMCからのビデオデータVDとエンジンコントローラーECからの垂直同期信号Vsyncおよびパラメーター値とに基づき、各色の画像形成ステーション2Y、2M、2C、2Kそれぞれのラインヘッド29を制御する。これによって、エンジン部ENGが所定の画像形成動作を実行し、複写紙、転写紙、用紙およびOHP用透明シートなどのシート状の記録媒体RMに画像形成指令に対応する画像を形成する。
【0018】
各画像形成ステーション2Y、2M、2Cおよび2Kは、トナー色を除けばいずれも同じ構造および機能を有している。そこで、図1では、図を見やすくするために、画像形成ステーション2Cを構成する各部品にのみ符号を付し、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kに付すべき符号については記載を省略する。また、以下の説明では、図1に付した符号を参照して画像形成ステーション2Cの構造および動作を説明するが、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kの構造および動作も、トナー色が異なることを除けば同じである。
【0019】
画像形成ステーション2Cには、シアン色のトナー像がその表面に形成される感光体ドラム21が設けられている。感光体ドラム21は、その回転軸が主走査方向MD(図1の紙面に対して垂直な方向)に平行もしくは略平行となるように配置されており、図1中矢印D21の方向に所定速度で回転駆動される。これにより、感光体ドラム21の表面が、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに移動することとなる。
【0020】
感光体ドラム21の周囲には、感光体ドラム21表面を所定の電位に帯電させるコロナ帯電器である帯電器22と、感光体ドラム21表面を画像信号に応じて露光することで静電潜像を形成するラインヘッド29と、該静電潜像をトナー像として顕像化する現像器24と、第1スクイーズ部25と、第2スクイーズ部26と、転写後の感光体ドラム21の表面をクリーニングするクリーニングユニットとが、それぞれこれらの順に感光体ドラム21の回転方向D21(図1では、時計回り)に沿って配設されている。
【0021】
この実施形態では、帯電器22は2つのコロナ帯電器221、222で構成されており、感光体ドラム21の回転方向D21においてコロナ帯電器221がコロナ帯電器222に対して上流側に配置されており、2つのコロナ帯電器221、222により2段階で帯電されるように構成されている。各コロナ帯電器221、222は同一構成であり、感光体ドラム21の表面に接触しないものであり、スコロトロン帯電器である。
【0022】
そして、コロナ帯電器221、222により帯電された感光体ドラム21表面に対して、ラインヘッド29がビデオデータVDに基づいて静電潜像を形成する。つまり、ヘッドコントローラーHCがラインヘッド29にビデオデータVDを送信すると、このビデオデータVDに基づいて各発光素子Eが発光する。これにより、感光体ドラム21表面が露光されて、画像信号に対応した静電潜像が形成される。なお、ラインヘッド29の構成および動作の詳細は後述する。
【0023】
こうして形成された静電潜像に対して現像器24からトナーが付与されて、静電潜像がトナーにより現像される。この画像形成装置1の現像器24は、現像ローラー241を有している。この現像ローラー241は円筒状の部材であり、鉄等金属製の内芯の外周部に、ポリウレタンゴム、シリコンゴム、NBR、PFAチューブなどの弾性層を設けたものである。この現像ローラー241は現像用モーターに接続され、図1紙面において反時計回りに回転駆動されて感光体ドラム21に対してウィズ回転する。また、この現像ローラー241は図示を省略する現像バイアス発生部(定電圧電源)と電気的に接続されており、適当なタイミングで現像バイアスが印加されるように構成されている。
【0024】
また、この現像ローラー241に対して液体現像剤を供給するためにアニロックスローラーが設けられており、アニロックスローラーを介して現像剤貯留部から現像ローラー241へ液体現像剤が供給される。このようにアニロックスローラーは現像ローラー241に対して液体現像剤を供給する機能を有する。このアニロックスローラーは、液体現像剤を担持し易いように表面に微細且つ一様に彫刻された螺旋溝などによる凹部パターンが形成されたローラーである。現像ローラー241と同様に、金属の芯金にウレタン、NBRなどのゴム層を巻き付けたものや、PFAチューブを被せたものなどが用いられる。また、アニロックスローラーは現像用モーターに接続されて回転する。
【0025】
現像剤貯留部に貯留される液体現像剤は、従来一般的に使用されている、Isopar(商標:エクソン)を液体キャリアとした低濃度(1〜2wt%)かつ低粘度の常温で揮発性を有する揮発性液体現像剤ではなく、高濃度かつ高粘度の、常温で不揮発性樹脂中へ顔料などの着色剤を分散させた平均粒径1μmの固形子を、有機溶媒、シリコンオイル、鉱物油又は食用油等の液体溶媒中へ分散剤とともに添加し、トナー固形分濃度を約20%とした高粘度(30〜10000mPa・s程度)の液体現像剤が用いられる。
【0026】
上記のようにして、液体現像剤が供給された現像ローラー241はアニロックスローラーと同時に回転すると共に、感光体ドラム21の表面とは同方向に移動するように回転して現像ローラー241の表面に担持された液体現像剤を現像位置に搬送する。なお、トナー像を形成するため、現像ローラー241の回転方向は、その表面が感光体ドラム21の表面と同方向に移動するようにウィズ回転する必要があるが、アニロックスローラーに対しては、逆方向、或いは、同方向、どちらに移動する構成であってもよい。
【0027】
また、現像器24では、この現像ローラー241の回転方向において現像位置の上流側直前にトナー圧縮コロナ発生器242が現像ローラー241に対向して配置されている。このトナー圧縮コロナ発生器242は現像ローラー241の表面の帯電バイアスを増加させる電界印加手段であり、定電流電源で構成されたトナーチャージ発生部(図示省略)と電気的に接続されている。そして、トナー圧縮コロナ発生器242に対してトナーチャージバイアスが与えられると、現像ローラー241によって搬送される液体現像剤のトナーに対して、このトナー圧縮コロナ発生器242と近接する位置で電界が印加され、帯電、圧縮が施される。なお、このトナー帯電、圧縮には、電解印加によるコロナ放電に代えて、接触して帯電させるコンパクションローラーを用いてもよい。
【0028】
また、このように構成された現像器24は感光体ドラム21上の潜像を現像する現像位置と感光体ドラム21から離れた退避位置との間で往復可能となっている。したがって、現像器24が退避位置に移動して位置決めされると、その間、シアン用の画像形成ステーション2Cでは、感光体ドラム21への新たな液体現像剤の供給は停止される。
【0029】
感光体ドラム21の回転方向D21において現像位置の下流側に、第1スクイーズ部25が配置されるとともに、さらに第1スクイーズ部25の下流側に第2スクイーズ部26が配置されている。これらのスクイーズ部25、26にはスクイーズローラー251、261がそれぞれ設けられている。そして、スクイーズローラー251が第1スクイーズ位置で感光体ドラム21の表面と当接しながらメインモーターからの回転駆動力を受けて回転してトナー像の余剰現像剤を除去する。また、感光体ドラム21の回転方向D21において第1スクイーズ位置の下流側の第2スクイーズ位置でスクイーズローラー261が感光体ドラム21の表面と当接しながらメインモーターからの回転駆動力を受けて回転してトナー像の余剰液体キャリアやカブリトナーを除去する。また、本実施形態ではスクイーズ効率を高めるために、スクイーズローラー251、261に対して図示省略するスクイーズバイアス発生部(定電圧電源)が電気的に接続されており、適当なタイミングでスクイーズバイアスが印加されるように構成されている。なお、本実施形態では2つのスクイーズ部25、26を設けているが、スクイーズ部の個数や配置などはこれに限定されるものではなく、例えば1個のスクイーズ部を配置してもよい。
【0030】
これらのスクイーズ位置を通過してきたトナー像は転写部3の中間転写体31に1次転写される。この中間転写体31は、その表面、より詳しくはその外周面にトナー像を一時的に担持可能な像担持体としての無端状ベルトであり、複数のローラー32、33、34、35および36に掛け渡されている。これらのうちローラー32はメインモーターに連結されて、中間転写体31を図1の矢印方向D31に周回駆動するベルト駆動ローラーとして機能している。なお、本実施形態では、記録紙RMとの密着性を高めて記録紙RMへのトナー像の転写性を高めるために、中間転写体31の表面に弾性層を設け、当該弾性層の表面にトナー像が担持されるように構成されている。
【0031】
ここで、中間転写体31を掛け渡されたローラー32ないし36のうち、メインモーターにより駆動されるのは上記したベルト駆動ローラー32のみであり、他のローラー33ないし36は駆動源を有しない従動ローラーである。また、ベルト駆動ローラー32は、ベルト移動方向D31において一次転写位置TR1の下流側、かつ後述する二次転写位置TR2の上流側で中間転写体31を巻き掛けている。
【0032】
転写部3は一次転写バックアップローラー37を有しており、一次転写バックアップローラー37は中間転写体31を挟んで感光体ドラム21と対向して配設されている。感光体ドラム21と中間転写体31とが当接する一次転写位置TR1では、感光体ドラム21の外周面が中間転写体31と当接して一次転写ニップ部NP1cを形成している。そして、感光体ドラム21上のトナー像が中間転写体31の外周面(一次転写位置TR1において下面)に転写される。こうして画像形成ステーション2Cにより形成されたシアン色のトナー像が中間転写体31に転写される。同様に、他の画像形成ステーション2Y、2Mおよび2Kでもトナー像の転写が実行されることで、各色のトナー像が中間転写体31上に順次重ね合わされ、フルカラーのトナー像が形成される。一方、モノクロトナー像が形成される際には、ブラック色に対応した画像形成ステーション2Kのみにおいて、中間転写体31へのトナー像転写が行われる。
【0033】
こうして中間転写体31に転写されたトナー像は、ベルト駆動ローラー32への巻き掛け位置を経由して二次転写位置TR2に搬送される。この二次転写位置TR2では、中間転写体31を巻き掛けられたローラー34に対して二次転写部4の二次転写ローラー42が中間転写体31を挟んで対向配置されており、中間転写体31表面と転写ローラー42表面とが互いに当接して二次転写ニップ部NP2を形成している。すなわち、ローラー34は二次転写バックアップローラーとして機能している。バックアップローラー34の回転軸は、例えばバネのような弾性部材である押圧部345によって弾性的に、かつ中間転写体31に対して近接・離間移動自在に支持されている。
【0034】
二次転写位置TR2においては、中間転写体31上に形成された単色あるいは複数色のトナー像が、一対のゲートローラー51から搬送経路PTに沿って搬送される記録媒体RMに転写される。また、トナー像が二次転写された記録媒体RMは、二次転写ローラー42から搬送経路PT上に設けられた定着ユニット7へ送出される。定着ユニット7では、記録媒体RMに転写されたトナー像に熱や圧力などが加えられて記録媒体RMへのトナー像の定着が行われる。こうして、記録媒体RMに所望の画像を形成することができる。
【0035】
以上が画像形成装置の概略構成である。続いて、本実施形態にかかる画像形成装置に適用可能なラインヘッド29の詳細について説明する。図3、図4および図5は、本発明を適用可能なラインヘッドの一例を示す図である。特に、図3は、ラインヘッド29が備える発光素子およびレンズの位置関係を、レンズが構成する結像光学系の光軸方向Doaから見た平面図であり、図4は、ラインヘッド29の部分斜視図であり、図5は、ラインヘッド29のA−A線(図3の階段状の二点鎖線)における部分階段断面図であって、該断面をラインヘッド29の長手方向LGDから見た場合に相当する。図3では、レンズLS1、LS2が一点鎖線で記載されているが、これは、発光素子EとレンズLS1、LS2とが光軸方向Doaにおいて異なる位置にあることを考慮したものである。また、図6は、レンズが構成する結像光学系と感光体ドラムとの配置関係を示す模式図である。
【0036】
このラインヘッド29は、長手方向LGDに長尺で幅方向LTDに短尺な全体構成を備える。そこで、図3〜図6および以下の図面では必要に応じて、ラインヘッド29の長手方向LGDおよび幅方向LTDを示す。また、レンズが構成する結像光学系の光軸方向Doaについても、図3〜図6および以下の図面で適宜示すとともに、必要に応じて、光軸方向Doaの矢印側を「表」あるいは「上」と表現し、光軸方向Doaの矢印と反対側を「裏」「下」あるいは「底」と表現する。なお、これらの方向LGD、LTD、Doaは互いに直交もしくは略直交している。
【0037】
また、上述のとおり、同ラインヘッド29を画像形成装置に適用するにあたっては、ラインヘッド29は、主走査方向MDに直交もしくは略直交する副走査方向SDに移動する感光体ドラム21表面に対して露光を行なうものであり、しかも、感光体ドラム21表面の主走査方向MDはラインヘッド29の長手方向LGDに平行もしくは略平行であり、感光体ドラム21表面の副走査方向SDはラインヘッド29の幅方向LTDに平行もしくは略平行である。そこで、必要に応じて、長手方向LGD・幅方向LTDと一緒に、主走査方向MD・副走査方向SDも図示することとする。
【0038】
ラインヘッド29では、複数(図1の例では15個)の発光素子Eを長手方向LGDに2行千鳥で並べて、1個の発光素子グループEGが構成されている。さらに、複数の発光素子グループEGが3行千鳥で長手方向LGDに並べられている。かかる配列態様は、換言すれば次のようにも説明できる。つまり、長手方向LGDへ距離3×Dg毎に発光素子グループEGを配置して、長手方向LGDに直線的に並ぶ複数の発光素子グループEGから1行の発光素子グループ行GRa等が構成される。さらに、3行の発光素子グループ行GRa、GRb、GRcは、幅方向LTDに距離Dtを空けて配置されるとともに、長手方向LGDに距離Dgだけ互いにシフトされている。
【0039】
また、各発光素子Eは、互いに同一の発光スペクトルを有するボトムエミッション型の有機EL(Electro-Luminescence)素子である。つまり、各発光素子Eを構成する有機EL素子は、長手方向LGDに長く幅方向LTDに短いガラス平板であるヘッド基板293の裏面293−tに形成されて、ガラス製の封止部材294により封止されている。なお、この封止部材294は、ヘッド基板293の裏面293−tに接着剤により固定されている。
【0040】
上述のように配置された複数の発光素子グループEGそれぞれに対しては1つの結像光学系OSが対向している。具体的には、この結像光学系OSは、発光素子グループEG側に凸の2枚のレンズLS1、LS2から構成されている。なお、図4、図5では、発光素子グループEGとレンズLS1、LS2との間には遮光部材297が図示されているが、これについては結像光学系の説明の後に説明する。
【0041】
このラインヘッド29では、3行千鳥で並ぶ複数の発光素子グループEGのそれぞれに対向してレンズLS1、LS2を配置するために、複数のレンズLS1を3行千鳥で並べたレンズアレイLA1と、複数のレンズLS2を3行千鳥で並べたレンズアレイLA2とが設けられている。つまり、レンズアレイLA1(LA2)では、長手方向LGDへ距離3×Dg毎にレンズLS1(LS2)を配置して、長手方向LGDに直線的に並ぶ複数のレンズLS1(LS2)から1行のレンズ行が構成される。さらに、3行のレンズ行は、幅方向LTDに距離Dtを空けて配置されるとともに、長手方向LGDに距離Dgだけ互いにシフトされている。
【0042】
ちなみに、レンズアレイLA1(LA2)は、光透過製のガラス平板SBに樹脂製のレンズLS1(LS2)を形成することで構成することができる。また、この実施形態では、長手方向LGDに長尺なレンズアレイを一体的な構成で作成することは困難であることに鑑みて、比較的短尺なガラス平板に樹脂製のレンズLS1(LS2)を3行千鳥で形成して1つの短尺なレンズアレイLA1(LA2)を作製し、この短尺レンズアレイLA1(LA2)を長手方向LGDに複数並べることで、長手方向LGDに長尺なレンズアレイを構成している。
【0043】
より具体的には、ヘッド基板表面293−hの幅方向LTDの両端部それぞれには、複数のスペーサーSP1が長手方向LGDに直線的に間隔を空けて並べられている。そして、幅方向LTDへスペーサーSP1、SP1に架設された状態で、複数のレンズアレイLA1が長手方向LGDに並べられて、1つの長尺レンズアレイが構成されている。また、レンズアレイLA1からなる長尺レンズアレイ表面の幅方向LTDの両端部それぞれには、複数のスペーサーSP2が長手方向LGDに直線的に間隔を空けて並べられている。そして、幅方向LTDへスペーサーSP2、SP2に架設された状態で、複数のレンズアレイLA2が長手方向LGDに並べられて、1つの長尺レンズアレイが構成されている。さらに、レンズアレイLA2からなる長尺レンズアレイ表面には平板状の支持ガラスSSが接着されており、複数のレンズアレイLA2は各スペーサーSP2のみならず、当該スペーサーSP2の反対側から支持ガラスSSによっても支持されている。また、この支持ガラスSSは、各レンズアレイLA2が外部に露出しないように、当該レンズアレイLA2を覆う機能も併せ持つ。
【0044】
つまり、上述のように構成された2枚レンズアレイLA1、LA2をヘッド基板293に対向させることで、発光素子グループEGの3行千鳥配置に対応して、2枚のレンズLS1、LS2で構成される結像光学系OSが3行千鳥で長手方向LGDに並ぶこととなる。そして、発光素子グループEGの各発光素子Eが射出した光は、結像光学系OSおよび支持ガラスSSを透過して、感光体ドラム21表面に照射される。なお、図5では、発光素子グループ行GRaに属する発光素子グループEGからの光を結像する結像光学系OSに対して符号OSaが併記されている。また、同様にして、発光素子グループ行GRb、GRcに属する発光素子グループEGからの光を結像する結像光学系OSに対して符号OSb、OScが併記されている。すなわち、幅方向LTDに互いに異なる位置に配置された結像光学系OSに対して、異なる符合OSa、OSb、OScが付されている。
【0045】
このように、ラインヘッド29では、複数の発光素子グループEGそれぞれに対して専用の結像光学系OSが配置されている。このようなラインヘッド29では、発光素子グループEGからの光は、当該発光素子グループEGに設けられた結像光学系OSにのみ入射し、それ以外の結像光学系OSに入射しないことが望ましい。そこで、ヘッド基板293の表面293−hとレンズアレイLA1との間には、遮光部材297が設けられている。この遮光部材297は、発光素子グループEGから当該発光素子グループEGに対向する結像光学系OSに向かう光を制限する機能を果たす。具体的には、遮光部材297には、発光素子グループEGからこれに対向する結像光学系OSへと向かう導光孔2971が、光軸方向Doaに貫通形成されている。導光孔2971は円柱形状の孔であり、その中心軸は結像光学系OSの光軸OAと概ね一致している。したがって、発光素子グループEGから射出された光のうち、遮光部材297の底面で遮られることなく導光孔2971を通過した光が、結像光学系OSに入射することとなる。
【0046】
また、この遮光部材297の上面には絞り平板295が設けられている。この絞り平板295は、遮光部材297とレンズアレイLA1の間に位置しており、導光孔2971とこれに対向する結像光学系OSの間に開口絞りDa(図6)を有している。したがって、導光孔2971、開口絞りDaおよび結像光学系OSが光軸方向Doaに直線的に並ぶこととなり、発光素子グループEGから射出された光は、導光孔2971を通過後に開口絞りDaで絞られて結像光学系OSに入射する。そして、結像光学系OSで結像された光が感光体ドラム21表面(被露光面)にスポットSTとして照射されて、感光体ドラム21表面が露光される(図6)。なお、結像光学系OSは1とは異なる(つまり、正立等倍ではない)光学倍率を有する。
【0047】
なお、上述のとおり、この実施形態では、結像光学系OSa、OSb、OScが幅方向LTDの異なる位置に配設されている。この際、各結像光学系OSa、OSb、OScは、幅方向LTDへのピッチDtが等しくなるとともに、中央の結像光学系OSbの光軸OAが感光体ドラム21の曲率中心C21を通るように配置される。したがって、幅方向LTD中央の結像光学系OSbがスポットSTを形成する位置と、幅方向LTD端部の結像光学系OSa、OSbがスポットを形成する位置とは、光軸方向Doaに距離dだけずれる(図6)。
【0048】
ところで、結像光学系OS(OSa、OSb、OSc)は、2枚のレンズLS1、LS2で構成されているが、これらのうちレンズLS1は、面形状の異なる複数の領域からなる。これについて、図7〜図9を用いて説明する。ここで、図7は、第1実施形態におけるレンズLS1の構成を示す平面図であり、同図では、レンズLS1の他にこれに開口する開口絞りDaの平面図が併記されている。図8は、第1実施形態において被露光面に照射される光ビームの断面形状を示す図であり、デフォーカス量が横軸にとられている。図9は、第1実施形態において被露光面に形成されるスポットダイアグラムを示す平面図であり、デフォーカス量が横軸にとられている。
【0049】
なお、これらの図では、レンズアレイLA1を構成するガラス平板SBの法線方向から当該ガラス平板SB(の裏面)に投影したレンズLS1の幾何重心を通って当該ガラス平板SBの法線方向に平行な仮想軸(ここでは光軸OAに一致)をz軸として表し、z軸に直交してレンズLS1の上記幾何重心を通る仮想軸(ここでは主走査方向MDに一致)をx軸として表し、z軸およびx軸に直交してレンズLS1の上記幾何重心を通る仮想軸(ここでは副走査方向SDに一致)をy軸として表している。また、以下で適宜示す座標軸x、y、zの内容も同様である。
【0050】
図7の上段「開口絞り平面図」の欄に示すように、第1実施形態では、開口絞りDaは円形もしくは略円形であり、その中心(幾何重心)は結像光学系OSの光軸と一致している。一方、図7の下段「レンズ平面図」の欄に示すように、レンズLS1は4つの領域DM1〜DM4で構成されている。領域DM1〜DM4のそれぞれは中心角が90°の扇形であり、各円弧を繋いで1つの円を形成するようにレンズLS1の周方向に並んでいる。領域DM1、DM3は何れもy軸に対して左右対称であるとともに、互いにx軸に対して上下対称である。一方、領域DM2、DM4は何れもx軸に対して上下対称であるとともに、互いにy軸に対して左右対称である。
【0051】
領域DM1、DM3の面形状Sf1と領域DM2、DM4の面形状Sf2は互いに異なっている。面形状Sf1はx軸方向に大きな球面収差Slaを有するとともに、y軸方向に小さな球面収差Ssaを有する(Sla>Ssa)。一方、面形状Sf2はy軸方向に大きな球面収差Slaを有するとともにx軸方向に小さな球面収差Ssaを有する(Sla>Ssa)。つまり、各面形状が有する大きな球面収差を主たる球面収差と称すると、面形状Sf1の主たる球面収差と面形状Sf2の主たる球面収差は、それらの収差量が等しいもしくは略等しい(=Sla)とともに、それらの方向が互いに直交もしくは略直交している。また、面形状Sf1が有する小さな球面収差と面形状Sf2が有する小さな球面収差についても同様の関係が成立している。
【0052】
ところで、このような構成では、被露光面に照射される光ビームの断面のサイズは、レンズLS1の各領域が有する球面収差と、レンズLS1に入射する光を制限する開口絞りDaの径で決まる。詳述すると、領域DM1、DM3はx軸方向に大きくy軸方向に小さい球面収差を有するため、領域DM1、DM3を通過した光ビームは、主走査方向断面(x軸方向断面)において広く、副走査方向断面(y軸方向断面)において狭い断面を有する。一方、領域DM2、DM4はy軸方向に大きくx軸方向に小さい球面収差を有するため、領域DM2、DM4を通過した光ビームは、副走査方向断面(y軸方向断面)において広く、主走査方向断面(x軸方向断面)において狭い断面を有する。
【0053】
さらに、領域DM1、DM3のx軸方向への主たる球面収差と領域DM2、DM4のy軸方向への主たる球面収差はいずれもSlaで等しく、しかも、開口絞りDaの径はx軸とy軸で等しい。したがって、図8に示すように、領域DM1を通過した光ビームの主走査方向断面(x軸方向断面)と領域DM2を通過した光ビームの副走査方向断面(y軸方向断面)は等しくなる。また、領域DM1を通過した光ビームの副走査方向断面(y軸方向断面)と領域DM2を通過した光ビームの主走査方向断面(x軸方向断面)についても同様の関係が成立する。
【0054】
そして、光ビームが上述した図8のような特性を有することから、領域DM1、DM3を通過した光ビームは、x軸方向に伸びる異方性を持つスポットFL1を被露光面に形成する(図9)。また、領域DM2、DM4を通過した光ビームは、y軸方向に伸びる異方性を持つスポットFL2を被露光面に形成する(図9)。こうして、長辺方向の傾きが互いに異なるスポットFL1、FL2が被露光面に形成される。さらに、スポットFL1の長辺方向(x軸方向)の長さと、スポットFL2の長辺方向(y軸方向)の長さは等しいもしくは略等しい(図9)。このようにして、等しい長さを有するとともに互いに直交する異方性スポットFL1、FL2が被露光面で重ね合わされて、1つのスポットSTが合成される。図9に示すように、こうして形成される合成スポットSTの大きさは、デフォーカス量によって多少変動しているものの、一定の範囲内で概ね安定している。また、スポットSTのx軸方向およびy軸方向への径は等しく、スポットSTの異方性が緩和されている。
【0055】
以上のように、本実施形態では、発光素子Eが発光する光から2つのスポットFL1、FL2(第1のスポット、第2のスポット)を生成する。しかも、スポットFL1は、径方向によって径が異なるとともにx軸方向(第1の方向)に長辺を有する一方、スポットFL2は、径方向によって径が異なるとともにx軸方向(第1の方向)と異なるy軸方向(第2の方向)に長辺を有する。
【0056】
なお、本明細書において、「径方向」とは、スポットの幾何重心を通る仮想直線の方向であり、「径」とは、ある径方向におけるスポットの一端から他端までの距離として定められる。さらに、「径方向によって径が異なる」とは、幾何重心を中心として径方向を回転させた際に、径の大きさが変化するような状態を指し示す。また、長辺方向とは、幾何重心を中心として径方向を回転させた際に、径が最大もしくは略最大となる径方向として求めることができる。
【0057】
つまり、これらスポットFL1、FL2は、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、スポットFL2の長辺は、スポットFL1の長辺と等しいか略等しい長さとなっている。そして、このようなスポットFL1、FL2を感光体ドラム21表面(被露光面)に重ねることで、1つのスポットSTが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0058】
第2実施形態
図10は、第2実施形態におけるレンズLS1の構成を示す平面図であり、同図では、レンズLS1の他にこれに開口する開口絞りDaの平面図が併記されている。図11は、第2実施形態において被露光面に照射される光ビームの断面形状を示す図であり、デフォーカス量が横軸にとられている。図12は、第2実施形態において被露光面に形成されるスポットダイアグラムを示す平面図であり、デフォーカス量が横軸にとられている。第1実施形態と第2実施形態の違いは開口絞りDaおよびレンズLS1の構成であるので、以下ではこの違いについて主に説明することとし、共通部分については適宜省略する。
【0059】
図10の上段「開口絞り平面図」の欄に示すように、第2実施形態では、開口絞りDaは、y軸を長軸とするとともにx軸を短軸とする楕円形であり、その幾何重心は結像光学系OSの光軸と一致している。一方、図10の下段「レンズ平面図」の欄に示すように、レンズLS1は、中心角が90°の扇形を有する4つの領域DM1〜DM4で構成される点では第1実施形態と共通するが、各領域DM1〜DM4の形状が第1実施形態と異なっている。この点について詳述すると次のとおりである。
【0060】
領域DM1、DM3は面形状Sf3を有するともに、領域DM2、DM3は面形状Sf4を有しており、これら面形状Sf3、Sf4は互いに異なっている。面形状Sf3はx軸方向に大きな球面収差Slbを有するとともに、y軸方向に小さな球面収差Ssbを有する(Slb>Ssb)。一方、面形状Sf4はy軸方向に大きな球面収差Slcを有するとともにx軸方向に小さな球面収差Sscを有する(Slc>Ssc)。また、面形状Sf3の主たる球面収差Slbは面形状Sf4の主たる球面収差Slcよりも大きく(Slb>Slc)、これらは互いに直交している。同様に、面形状Sf3の小さな球面収差Ssbは面形状Sf4の小さな球面収差Sscよりも大きく(Ssb>Ssc)、これらは互いに直交している。
【0061】
第1実施形態でも説明したとおり、このような構成では、被露光面に照射される光ビームの断面のサイズは、レンズLS1の各領域が有する球面収差と、レンズLS1に入射する光を制限する開口絞りDaの径で決まる。詳述すると、領域DM1、DM3はx軸方向に大きくy軸方向に小さい球面収差を有するため、領域DM1、DM3を通過した光ビームは、主走査方向断面(x軸方向断面)において広く、副走査方向断面(y軸方向断面)において狭い断面を有する。一方、領域DM2、DM4はy軸方向に大きくx軸方向に小さい球面収差を有するため、領域DM2、DM4を通過した光ビームは、副走査方向断面(y軸方向断面)において広く、主走査方向断面(x軸方向断面)において狭い断面を有する。
【0062】
このとき、開口絞りDaの径はx軸方向よりもy軸方向に大きく、開口絞りDaを通過した直後の光ビームの幅はx軸方向に狭くy軸方向に広い。これに対して、領域DM1、DM3のx軸方向への主たる球面収差Slbは、領域DM2、DM4のy軸方向への主たる球面収差Slcよりも大きいため、レンズLS1は、入射してきた光ビームをx軸方向よりもy軸方向に引き伸ばすように作用する。したがって、開口絞りDaとレンズLS1の各作用が協働すると、結果的には、図11に示すように、領域DM1を通過した光ビームの主走査方向断面(x軸方向断面)と領域DM2を通過した光ビームの副走査方向断面(y軸方向断面)は等しくなる。また、領域DM1を通過した光ビームの副走査方向断面(y軸方向断面)と領域DM2を通過した光ビームの主走査方向断面(x軸方向断面)についても同様の関係が成立する。
【0063】
なお、図11の最上段「領域DM1を通過した光ビームの主走査方向断面」の欄では、実線で表される光ビーム断面と破線で表される光ビーム断面が併記されているが、実線が第2実施形態での光ビーム断面であり、破線は開口絞りDaの形状が円形であった場合の光ビーム断面を参考までに示したものである。この破線が示すように、円形の開口絞りDaを用いた場合は、領域DM1を通過した光ビームの主走査方向断面(x軸方向断面)は、領域DM2を通過した光ビームの副走査方向断面(y軸方向断面)よりも広くなることが判る。
【0064】
そして、光ビームがこのような特性を有することから、図12の上段「楕円系の開口絞りDaを使用」に示すように、領域DM1、DM3を通過した光ビームは、x軸方向に伸びる異方性スポットFL1を被露光面に形成し、また、領域DM2、DM4を通過した光ビームは、異方性スポットFL1と等しい長さを有するとともにy軸方向に伸びる異方性スポットFL2を被露光面に形成する。このようにして、等しい長さを有するとともに互いに直交する異方性スポットFL1、FL2が被露光面で重ね合わされて、スポットSTが形成される。図12の上段に示すように、このようにして形成されるスポットSTの大きさは、デフォーカス量によって多少変動しているものの、一定の範囲内で概ね安定している。また、スポットSTのx軸方向およびy軸方向への径は等しく、スポットSTの異方性が緩和されている。
【0065】
なお、図12の下段には「円系の開口絞りDaを使用」した場合が示されているが、これは開口絞りDaの形状が円形であった場合のスポットダイアグラムを参考までに示したものである。これによると、円形の開口絞りDaを用いた場合は、y軸方向に伸びる異方性スポットFL1がx軸方向に伸びる異方性スポットFL2より長くなって、これらの長さが等しくならないことが判る。
【0066】
以上のように、本実施形態では、発光素子Eが発光する光から2つのスポットFL1、FL2(第1のスポット、第2のスポット)を生成する。しかも、スポットFL1は、径方向によって径が異なるとともにx軸方向(第1の方向)に長辺を有する一方、スポットFL2は、径方向によって径が異なるとともにx軸方向(第1の方向)と異なるy軸方向(第2の方向)に長辺を有する。
【0067】
つまり、これらスポットFL1、FL2は、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、スポットFL2の長辺は、スポットFL1の長辺と等しいか略等しい長さとなっている。そして、このようなスポットFL1、FL2を感光体ドラム21表面(被露光面)に重ねることで、1つのスポットSTが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0068】
第3実施形態
図13は、第3実施形態の結像光学系のレンズLS1が有する構成を示す模式図であり、同図上段の「平面図」の欄は、発光素子E側から光軸方向DoaにレンズLS1を平面視した場合を示し、同図下段の「側面図」の欄は、光軸方向Doaに垂直な方向から結像光学系OSを見た場合を示している。
【0069】
z軸の回りに反時計回りにとったx軸に対する回転角度をθ(−π≦θ≦π)としたとき、レンズLS1(のレンズ面)の曲率半径Rは、次の関係
R=J+f(θ)
J:定数
f(θ):θを変数とする周期関数
を有している。なお、第3実施形態では、f(θ)は余弦関数であり、次の関係
f(θ)=L×cos(M×θ)
L:定数
M:正の整数
を有する。また、本明細書において角度θの単位はラジアン[rad]とする。
【0070】
レンズLS1がこのような構成を有するため、結像光学系OSの結像位置は、位置P0を略中心とする位置P1から位置P2までの範囲に連続的に分布することとなる。ここで、レンズLS1と位置P0との間隔D(J)は、上述の定数Jによって決まる。したがって、定数Jを調整することで、結像位置の分布範囲の略中心を設定することができる。また、結像位置の分布範囲D(f(θ))は、関数f(θ)によって決まる。したがって、関数f(θ)を調整することで、結像位置の分布範囲D(f(θ))を設定することができる。
【0071】
また、このように、レンズLS1の曲率半径Rを角度θに対して変化させることで、複数の非点収差をレンズに持たせ、延いては、各非点収差により形成される異方性スポット(焦線)を互いに傾斜させるといった光学特性、換言すれば、各非点収差が形成するスポットダイアグラム(異方性スポット)の長径が互いに傾斜するといった光学特性を実現することができる。この光学特性について、結像光学系OSのより詳細なデータを用いて説明する。
【0072】
図14は、主走査方向断面における結像光学系の光線図である。図15は、レンズデータのレンズ面形状を定義する式を一覧で示した図である。式1および式2は、x−y直交座標とr−θ極座標とを対応付ける式である。式3は、レンズLS2のレンズ面(xy多項式面)の形状あるいはレンズLS1のレンズ面(f(θ)面)の形状を与える式である。具体的には、式4で与えられるレンズの曲率Cv=1/Rを一定値とすると、式3はレンズLS2のレンズ面(xy多項式面)の形状を与える。一方、曲率半径Rを式5で示す角度θの関数とし、これに対応してレンズの極率Cv=1/Rも角度θの関数となるとき、式3はレンズLS1のレンズ面(f(θ)面)の形状を与える。なお、各式で用いられるその他の係数A〜I等の内容については、同図に記載のとおりである。
【0073】
図16は、結像光学系OSを透過する光の波長と、レンズLS1、LS2の有効径を表として示す図である。図17は、結像光学系OSのレンズデータである。図18は、結像光学系OSのf(θ)面である面S4の形状を与える各係数を表として示す図である。図19は、結像光学系OSのxy多項式面である面S7の形状を与える各係数を表として示す図である。この実施形態では、発光素子(物体面S1)とレンズLS1(f(θ)面S4)との間に円形もしくは略円形の開口絞り(絞り面S3)が設けられており、開口絞りで絞られた光が、レンズLS1を透過した後にレンズLS2を透過して像面S10に照射される。
【0074】
このように本実施形態では、レンズLS1の曲率半径Rは、次式
R=J+L×cos(M×θ)
で与えられている。したがって、余弦関数cos(M×θ)の角度θに対する変化に応じて、曲率半径Rも連続的に変化し、その結果、レンズLS1に複数の非点収差を持たせることができる。そして、複数の非点収差それぞれが異方性スポットを被露光面に形成することで、同じ長さを有するとともに互いに傾きの異なる複数の異方性スポットを重なり合わせて、図20に示すようなスポットSTを形成することができる。
【0075】
図20は、第3実施形態と比較形態とのスポットダイアグラムを示す図であり、各形態についてデフォーカス量を−40(μm)から+40(μm)まで変化させた際のスポットダイアグラムが示されている。同図は、図13で示した位置P0をデフォーカス量が0(μm)の位置としている。同図上段の「実施形態」に示すスポットダイアグラムは、上記レンズデータに基づいて求めたものである。一方、同図下段の「比較形態」に示すスポットダイアグラムは、特許文献1に記載のレンズデータに基づいて求めたものである。「比較形態」では、スポットSTは、デフォーカス量が負の範囲において縦長な異方性を示すとともに、デフォーカス量が正の範囲において横長な異方性を示している。これに対して、「実施形態」では、長径の傾きが互いに異なる複数のスポットダイアグラム(異方性スポット)を合成してスポットSTが形成されることから、デフォーカス状態での異方性が緩和されていることが判る。
【0076】
以上のように、本実施形態では、発光素子Eが発光する光から複数のスポットを生成する。しかも、各スポットは、径方向によって径が異なるとともに、互いに異なる方向に長辺を有する。つまり、各スポットは、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、各スポットの長辺は互いに等しいか略等しい長さとなっている。そして、このような複数のスポットを感光体ドラム21表面(被露光面)に重ねることで、1つのスポットSTが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0077】
第4実施形態
続いて、第4実施形態について説明する。先の第3実施形態と第4実施形態は、いずれもレンズLS1の曲率半径が角度θの周期関数f(θ)で与えられる点は共通するが、周期関数f(θ)の内容において異なる。以下では、この違いについて主に説明するとともに、共通部分については適宜説明を省略する。
【0078】
図21は、主走査方向断面(同図上段)および副走査方向断面(同図下段)における結像光学系の光線図である。なお、図21の主走査方向断面では、光軸上に位置する発光素子E0と、光軸からずれた位置に位置する発光素子E1が併記されている。図22は、レンズデータのレンズ面形状を定義する式を一覧で示した図である。式6および式7は、x−y直交座標とr−θ極座標とを対応付ける式である。式8は、レンズLS2のレンズ面(非球面)の形状あるいはレンズLS1のレンズ面(f(θ)面)の形状を与える式である。具体的には、式9で与えられるレンズの曲率Cv=1/Rを一定値とすると、式8はレンズLS2のレンズ面(xy多項式面)の形状を与える。一方、曲率半径Rを式10で示す角度θの関数とし、これに対応してレンズの極率Cv=1/Rも角度θの関数となるとき、式8はレンズLS1のレンズ面(f(θ)面)の形状を与える。なお、各式で用いられるその他の係数A〜I等の内容については、同図に記載のとおりである。
【0079】
図23は、結像光学系OSを透過する光の波長と、開口絞りの径を表と示す図である。図24は、結像光学系OSのレンズデータである。図25は、結像光学系OSのf(θ)面である面S4の形状を与える各係数を表として示す図である。図26は、結像光学系OSのxy多項式面である面S6の形状を与える各係数を表として示す図である。この実施形態では、発光素子(物体面S1)とレンズLS1(f(θ)面S4)との間に円形もしくは略円形の開口絞り(絞り面S3)が設けられており、この開口絞りで絞られた光が、レンズLS1を透過した後にレンズLS2を透過して像面S10に照射される。
【0080】
このように本実施形態では、レンズLS1の曲率半径Rは、次式
R=J+L×|cos(M×θ)|
で与えられている。ここで、記号||は絶対値を示す。したがって、余弦関数cos(M×θ)の絶対値の角度θに対する変化に応じて曲率半径Rも連続的に変化するため、余弦関数の値が0となるラインを境界としてレンズLS1は2×M個の領域に分割され、しかも、各領域のそれぞれが非点収差を持つこととなる。その結果、レンズLS1に複数の非点収差を持たせることができる。そして、複数の非点収差それぞれが異方性スポットを被露光面に形成することで、同じ長さを有するとともに互いに傾きの異なる複数の異方性スポットを重なり合わせて、図27に示すようなスポットSTを形成することができる。以下は、領域を6個に分割した場合に相当する。
【0081】
図27は、第4実施形態のスポットダイアグラムを示す図である。なお、以下の説明では、図28、図29に示す比較形態と併せて、実施形態のスポットダイアグラムについて説明する。ここで、図28は、比較形態における結像光学系OSのxy多項式面である面S6の形状を与える各係数を表として示す図であり、実施形態のS6面のデータを図28のものに置き換えることで、比較形態のレンズデータが得られる。また、図29は、比較形態のスポットダイアグラムを示す図である。図27および図29では、発光素子E0、E1のそれぞれが形成するスポットダイアグラムが、デフォーカス量を−40(μm)から+40(μm)まで変化させた場合について示されている。ちなみに、図13で示した位置P0をデフォーカス量が0(μm)の位置としている。
【0082】
「比較形態」では、スポットSTの大きさがデフォーカス量の変化に応じて大きく変化してしまっている。これに対して、「実施形態」では、長さが等しく傾きの異なる複数の異方性スポットを重ね合わせてスポットSTが形成されることから、フォーカス位置に依らず、スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となっている。
【0083】
以上のように、本実施形態では、発光素子Eが発光する光から複数のスポットを生成する。しかも、各スポットは、径方向によって径が異なるとともに、互いに異なる方向に長辺を有する。つまり、各スポットは、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、各スポットの長辺は互いに等しいか略等しい長さとなっている。そして、このような複数のスポットを感光体ドラム21表面(被露光面)に重ねることで、1つのスポットSTが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0084】
第5実施形態
図30は、結像光学系OSのf(θ)面である面S4の形状を与える各係数を表として示す図である。図31は、第5実施形態のスポットダイアグラムを示す図である。第5実施形態と先の第4実施形態の違いはレンズLS1の領域の個数のみであり、具体的には、第5実施形態ではレンズLS1は10個の領域に分割されている。図31に示すように、分割数を増加させることで、スポットはより円形に近づき、スポットの異方性が緩和されていることが判る。
【0085】
以上のように、本実施形態では、発光素子Eが発光する光から複数のスポットを生成する。しかも、各スポットは、径方向によって径が異なるとともに、互いに異なる方向に長辺を有する。つまり、各スポットは、異方性を有するとともに、長辺方向が互いに異なる(傾いている)。さらに、各スポットFL2の長辺は互いに等しいか略等しい長さとなっている。そして、このような複数のスポットを感光体ドラム21表面(被露光面)に重ねることで、1つのスポットSTが合成される。したがって、フォーカス位置に依らず、(合成)スポットSTの大きさを安定させつつスポットSTの異方性を緩和することができ、良好な露光が実現可能となる。
【0086】
その他
以上のように、上記実施形態では、ラインヘッド29が本発明の「露光ヘッド」に相当し、感光体ドラム21が本発明の「潜像担持体」に相当している。また、開口絞りDaおよび結像光学系OSが協働して本発明の「光学系」として機能している。また、被露光面で重なり合う複数の異方性スポットが本発明の「第1のスポット」「第2のスポット」に相当している。また、第1・第2実施形態では、主走査方向MDあるいはx軸方向が本発明の「第1の方向」に相当し、副走査方向SDあるいはy軸方向が本発明の「第2の方向」に相当し、領域DM1、DM3が本発明の「第1の領域」に相当し、領域DM2、DM4が本発明の「第2の領域」に相当している。また、第1実施形態では、領域DM1、DM3の球面収差Slaが本発明の「第1の球面収差」に相当し、領域DM2、DM4の球面収差Slaが本発明の「第2の球面収差」に相当している。また、第2実施形態では、球面収差Slbが本発明の「第1の球面収差」に相当し、球面収差Slcが本発明の「第2の球面収差」に相当している。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、上記第1実施形態では、楕円系のスポットFL1、FL2が形成されていたが、これらのスポットの形状は楕円形に限られず、例えば、長方形であっても良い。この場合、長方形の対角方向が「長辺方向」に相当することとなり、長方形の対角線が「長辺」に相当する。
【0088】
また、上記実施形態では、結像光学系OSは、2枚のレンズLS1、LS2で構成されていた。しかしながら、結像光学系OSを構成するレンズの枚数は2枚に限られず、1枚あるいは3枚以上であっても良い。
【0089】
また、第1・2実施形態では、4個の領域DM1〜DM4によりレンズLS1を構成していたが、レンズLS1を構成する領域の個数は4個に限られない。
【0090】
また、第1・第2実施形態では、傾きの異なる2個の異方性スポットFL1、FL2を重ね合わせてスポットSTを形成していたが、傾きの異なる3個以上の異方性スポットを重ね合わせてスポットSTを形成するように構成しても良い。
【0091】
また、第1・第2実施形態では、レンズLS1に複数の球面収差を持たせることで、傾きの異なる複数の異方性スポットを重ね合わせていたが、レンズLS1以外の例えばレンズLS2に複数の球面収差を持たせることで、傾きの異なる複数の異方性スポットを重ね合わせるように構成しても良い。
【0092】
また、開口絞りDaの位置も種々の変更が可能であり、上記の実施形態で説明した位置に限られない。
【0093】
また、上記第3〜5実施形態では、レンズLS1の曲率半径が角度θに応じて変化するように構成していた。しかしながら、結像光学系OSを構成するその他のレンズの曲率変形が角度θに応じて変化するように構成しても良い。
【0094】
また、感光体ドラム21と結像光学系OSa、OSb、OScとの配置関係は図6に示したものに限られず、結像光学系OSaまたは結像光学系OScの光軸が曲率中心C21を通るように構成したり、あるいは結像光学系OSa、OSb、OScのいずれの光軸OAも曲率中心C21から外れるように構成したりすることができる。
【0095】
また、副走査方向SDに異なる位置に配置される結像光学系OSの個数(換言すれば、レンズ行の行数)は3個に限られず、2個あるいは4個以上であっても良い。
【0096】
また、上記実施形態では、結像光学系OSの光学倍率については特に言及しなかった。しかしながら、結像光学系OSとしては、倒立像を結像するもの、正立像を結像するもの、縮小像を結像するもの、拡大像を結像するもの、あるいはこれらを組み合わせた光学特性を有するものを用いることができる。
【0097】
また、発光素子グループEGを構成する発光素子Eの個数や、配置態様も種々の変更が可能である。
【0098】
また、上述の有機EL素子以外に、LED(Light Emitting Diode)等の光源を、発光素子Eとして用いることもできる。
【符号の説明】
【0099】
21…感光体ドラム、 24…現像器、 29…ラインヘッド、 E…発光素子、 EG…発光素子グループ、 Da…開口絞り、 LS1、LS2…レンズ、 OS、OSa、OSb、OSc…結像光学系、 MC…メインコントローラー、 HC…ヘッドコントローラー、 R…曲率半径、 θ…z軸の回りの角度、 DM1、DM2、DM3、DM4…レンズ面の領域、 FL1、FL2…異方性スポット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発光する発光素子と、
径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する第1のスポット、および径方向によって径が異なるとともに前記第1の方向と異なる第2の方向に前記第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さの長辺を有する第2のスポットを前記発光素子が発光する光から生成し、前記被露光面に重ねる光学倍率が1と異なる光学系と、
を備えることを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記光学系は、第1の領域および前記第1の領域と異なる位置に配接された第2の領域を有するレンズと、開口絞りを備え、前記開口絞りを通過した光を前記第1の領域で結像して前記第1のスポットを生成し、前記開口絞りを通過した光を前記第2の領域で結像して前記第2のスポットを生成する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記第1の領域は第1の球面収差を有し、前記第2の領域は前記第1の球面収差と異なる第2の球面収差を有する請求項2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
前記第1の球面収差と前記第2の球面収差は等しいもしくは略等しい大きさを有し、前記開口絞りは円形もしくは略円形である請求項3に記載の露光ヘッド。
【請求項5】
前記光学系は、前記第1の球面収差は前記第2の球面収差よりも大きく、前記開口絞りは前記第2の方向を長軸とする楕円形である請求項3に記載の露光ヘッド。
【請求項6】
前記光学系は、前記発光素子が発光した光を絞る円形もしくは略円形の開口絞りと、前記開口絞りを通過した光が入射するレンズと、前記レンズが配設された基板とを有し、
前記基板の法線方向から前記基板に投影した前記レンズの幾何重心を通って前記基板の法線方向に平行な仮想軸をz軸とし、前記z軸に直交して前記レンズの幾何重心を通る仮想軸をx軸としたとき、前記レンズの曲率半径Rは、z軸周りに反時計回りにとったx軸に対する回転角度θの周期関数で与えられ、
前記光学系は、前記開口絞りを通過した光を前記レンズで結像して、前記第1のスポットおよび前記第2のスポットを生成する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項7】
前記レンズの曲率半径Rは、次の関係
R=J+L×cos(M×θ)
J:定数
L:定数
M:正の整数
を有する請求項6に記載の露光ヘッド。
【請求項8】
前記レンズの曲率半径Rは、次の関係
R=J+L×|cos(M×θ)|
J:定数
L:定数
M:正の整数
を有する請求項6に記載の露光ヘッド。
【請求項9】
潜像担持体と、
発光素子と、径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する第1のスポット、および径方向によって径が異なるとともに前記第1の方向と異なる第2の方向に前記第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さの長辺を有する第2のスポットを前記発光素子が発光する光から生成し、前記潜像担持体に重ねる光学倍率が1と異なる光学系を有する露光ヘッドと、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
光を発光する発光素子と、
径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する第1のスポット、および径方向によって径が異なるとともに前記第1の方向と異なる第2の方向に前記第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さの長辺を有する第2のスポットを前記発光素子が発光する光から生成し、前記被露光面に重ねる光学倍率が1と異なる光学系と、
を備えることを特徴とする露光ヘッド。
【請求項2】
前記光学系は、第1の領域および前記第1の領域と異なる位置に配接された第2の領域を有するレンズと、開口絞りを備え、前記開口絞りを通過した光を前記第1の領域で結像して前記第1のスポットを生成し、前記開口絞りを通過した光を前記第2の領域で結像して前記第2のスポットを生成する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項3】
前記第1の領域は第1の球面収差を有し、前記第2の領域は前記第1の球面収差と異なる第2の球面収差を有する請求項2に記載の露光ヘッド。
【請求項4】
前記第1の球面収差と前記第2の球面収差は等しいもしくは略等しい大きさを有し、前記開口絞りは円形もしくは略円形である請求項3に記載の露光ヘッド。
【請求項5】
前記光学系は、前記第1の球面収差は前記第2の球面収差よりも大きく、前記開口絞りは前記第2の方向を長軸とする楕円形である請求項3に記載の露光ヘッド。
【請求項6】
前記光学系は、前記発光素子が発光した光を絞る円形もしくは略円形の開口絞りと、前記開口絞りを通過した光が入射するレンズと、前記レンズが配設された基板とを有し、
前記基板の法線方向から前記基板に投影した前記レンズの幾何重心を通って前記基板の法線方向に平行な仮想軸をz軸とし、前記z軸に直交して前記レンズの幾何重心を通る仮想軸をx軸としたとき、前記レンズの曲率半径Rは、z軸周りに反時計回りにとったx軸に対する回転角度θの周期関数で与えられ、
前記光学系は、前記開口絞りを通過した光を前記レンズで結像して、前記第1のスポットおよび前記第2のスポットを生成する請求項1に記載の露光ヘッド。
【請求項7】
前記レンズの曲率半径Rは、次の関係
R=J+L×cos(M×θ)
J:定数
L:定数
M:正の整数
を有する請求項6に記載の露光ヘッド。
【請求項8】
前記レンズの曲率半径Rは、次の関係
R=J+L×|cos(M×θ)|
J:定数
L:定数
M:正の整数
を有する請求項6に記載の露光ヘッド。
【請求項9】
潜像担持体と、
発光素子と、径方向によって径が異なるとともに第1の方向に長辺を有する第1のスポット、および径方向によって径が異なるとともに前記第1の方向と異なる第2の方向に前記第1のスポットの長辺と等しいか略等しい長さの長辺を有する第2のスポットを前記発光素子が発光する光から生成し、前記潜像担持体に重ねる光学倍率が1と異なる光学系を有する露光ヘッドと、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2012−11739(P2012−11739A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152814(P2010−152814)
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月5日(2010.7.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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