説明

露光装置の照明光強度分布測定装置、及び露光装置

【課題】 比レチクルを照明する照明光の分布を、精度よく測定できる露光装置の照明光強度分布測定装置、及びこの装置の検出部を搭載可能な露光装置を提供する。
【解決手段】 検出部1の下側からは、照明光が照射され、EUV光検出用光センサアレイ3と光センサアレイ5により検出される。レチクルステージ9を矢印のように走査させることにより、EUV光検出用光センサアレイ3と光センサアレイ5により、照射面における図の左右方向の照射領域のEUV光の照度、及び全光照度を測定することができる。EUV光検出用光センサアレイ3と光センサアレイ5の出力は、それぞれプリアンプ4とプリアンプ6とで増幅され、通信装置8によって信号処理装置に無線(電波、赤外線等による)通信されて受信される。必要な電源は充電電池7から供給される。検出部1がこのような構成であるので、検出部1をレチクルステージ9に搭載したとき、配線処理が不要である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置においてレチクルを照明する照明光の強度分布を測定する照明光強度分布測定装置、及びその検出部が搭載可能とされた露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レチクルに形成されたパターンを、レチクル等の感応基板に露光転写する露光装置は、半導体やマイクロマシン等のマイクロデバイス製造工程におけるリソグラフィ工程に用いられている。これらマイクロデバイスの微小化に伴い、露光に使用される光の波長も短くなっており、i線を使用したi線ステッパやエキシマレーザを光源とした露光機が一般的に使用されている。
【0003】
さらに近年、光の回折限界によって制限される光学系の解像力を向上させるために、従来の紫外線に代えてこれより短い波長(11〜14nm)のEUV光を使用した投影リソグラフィ技術が開発されている。この技術は、最近ではEUV(Extreme UltraViolet)リソグラフィと呼ばれており、従来の波長190nm程度の光線を用いた光リソグラフィでは実現不可能な、50nm以下の解像力を得られる技術として期待されている。
【0004】
これら露光装置においては、レチクルを照明する光の強度分布を均一にする必要がある。特にEUV光を使用したEUV露光装置においては、通常、レーザプラズマから発生するEUV光を、照明光学系により均一分布を有する照明光としているため、照明光学系の調整のために、照明光の強度分布を測定することが重要となってきている。
【0005】
照明光の強度分布を測定するためには、従来は、均一な透過面又は反射面を有するレチクルを使用して投影露光を行い、ウエハが載置される面で光センサによる光量分布を測定したり、実際にウエハを露光して現像し、現像されたウエハの形状から推定する方法が採用されていた。又、このような方法の代わりに、レチクルステージに光センサを取り付け、レチクルステージを走査させて照明光の強度分布を測定する方法も考えられていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ウエハ位置で光量を測定したり、実際にウエハを露光する方法では、測定に手間がかかるほか、投影光学系の影響を受けるので、照明光の分布測定としては必ずしも良好と言えるものではなかった。又、レチクルステージに光センサを取り付け、レチクルステージを走査させて照明光の強度分布測定を行う方法では、レチクルステージが大きくなり、かつ、要求されるストロークが大きくなるという問題点があった。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、比較的簡単に、レチクルを照明する照明光の強度分布を、精度よく測定できる露光装置の照明光強度分布測定装置、及びこの装置の検出部を搭載可能な露光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための第1の手段は、露光装置のレチクルステージに搭載可能とされ、レチクルを照明する照明光学系よりの照明光の強度を測定する光センサが取り付けられた検出部を有することを特徴とする露光装置の照明光強度分布測定装置である。
【0009】
本手段においては、検出部を搭載したレチクルステージを駆動することにより、検出部に取り付けられた光センサの位置を変化させて光量測定を行うことができるので、簡単な方法により、レチクルを照明する照明光の分布を正確に測定することができる。検出部をレチクルが配置される面と同じ位置で移動できれば良いため、実際にレチクルが配置されるステージとは別の専用ステージを配置することも可能である。本発明ではこのようなレチクル面で移動可能な専用ステージもレチクルステージという。
【0010】
前記課題を解決するための第2の手段は、前記第1の手段であって、前記光センサが、前記レチクルステージの走査方向と直角な方向に長さ方向を有する光センサアレイであることを特徴とするものである。
【0011】
特にEUV露光装置においては、レチクルステージは一方向(走査方向)には大きく移動し、光センサはこの方向の照射領域全体を測定することができるが、走査方向と直角な方向には移動量が限られている。よって、走査方向と直角な方向に長さ方向を有する光センサアレイを使用することにより、走査方向と直角な方向についても、射領域全体の測定を行うことが可能となる。かつ、光センサアレイを用いることにより、短時間で測定を行うことができる。
【0012】
前記課題を解決するための第3の手段は、前記第1の手段であって、前記光センサが、2次元光センサアレイであることを特徴とするものである。
【0013】
本手段においては、2次元光センサアレイを使用しているので、測定時間を短縮することができる。特に、照射領域全面をカバーするような2次元光センサアレイを使用れば、レチクルステージを走査させなくても、照射領域全面の強度分布を測定することができる。
【0014】
前記課題を解決するための第4の手段は、前記第1の手段から第3の手段のいずれかであって、前記露光装置がEUV露光装置であり、前記光センサが露光に使用されるEUV光のみを検出する光センサと、当該EUV光を含めた波長域の光を検出するセンサの2種類の光センサであることを特徴とするものである。
【0015】
本手段においては、EUV光のみを検出する光センサの信号に基づいて露光に使用されるEUV光の強度分布を調整すると共に、ノイズとなるそれ以外の波長域の光を含んだものの強度分布を測定することにより、ノイズ光の調整を行うこともできる。
【0016】
前記課題を解決するための第5の手段は、前記第1の手段から第4の手段のいずれかであって、前記検出部が、外部との無線信号通信手段を有していることを特徴とするものである。
【0017】
本手段においては、検出部が、外部との無線信号通信手段を有しているので、その結果を信号処理装置等の外部機器に送信することができる。検出部に電源装置を備えたり、電磁誘導により外部から電源を供給可能とすることが好ましく、こうすることにより配線を用いることなく測定を行うことができる。
【0018】
前記課題を解決するための第6の手段は、前記第1の手段から第4の手段のいずれかであって、前記検出部が、測定結果を記憶する記憶手段を有していることを特徴とするものである。
【0019】
本手段においては、測定結果を記憶手段に記憶し、検出部をレチクルステージから取り外した後で、記憶手段に記憶された信号を読み出して処理することができるので、外部との配線を必要としない。
【0020】
前記課題を解決するための第7の手段は、前記第1の手段から第6の手段のいずれかであって、前記検出部が、前記露光装置に使用されるレチクルと同一形状であることを特徴とするものである。
【0021】
本手段においては、検出部をレチクルと同様の方法を用いてレチクルステージに搭載することができる。
【0022】
前記課題を解決するための第8の手段は、前記第1の手段から第7の手段のいずれかの露光装置の照明光強度分布測定装置の検出部が、レチクルステージに搭載可能とされていることを特徴とする露光装置である。
【0023】
本手段においては、前記検出部をレチクルステージに搭載することにより、簡単にレチクルを照明する照明光の強度分布を測定することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、比較的簡単に、レチクルを照明する照明光の分布を、精度よく測定できる露光装置の照明光強度分布測定装置、及びこの装置の検出部を搭載可能な露光装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態の例を、図を用いて説明する。図1は、本発明の露光装置の照明光強度分布測定装置の検出部の例を示す図である。図1において(a)は平面図(下面図)、(b)は(a)におけるA−A断面図である。
【0026】
検出部1においては、枠体2の中に、EUV光検出用光センサアレイ3とそのプリアンプ4、通常の光センサアレイ5とそのプリアンプ6、充電電池7、通信装置8がモールドにより埋め込まれている。この検出部は、(b)に示すように、EUV光検出用光センサアレイ3と光センサアレイ5の光電検出面を下にして、露光装置のレチクルステージ9の静電チャック10にその上面をチャッキングされて使用される。充電電池7の代わりに乾電池を使用しても構わない。
【0027】
検出部1の下側からは、照明光が照射され、EUV光検出用光センサアレイ3と光センサアレイ5により検出される。なお、照明光は円弧等のある領域を持っているが、図1(b)においては、そのうち1本の光線のみを図示している。レチクルステージ9を矢印のように走査させることにより、EUV光検出用光センサアレイ3と光センサアレイ5により、照射面における図の左右方向の照射領域のEUV光の強度、及びより広い波長域の光強度をそれぞれ測定することができる。なお、この矢印の方向は露光時の走査方向と同一である。又、EUV光検出用光センサアレイ3と光センサアレイ5の長さが、照射面における図の紙面に垂直な方向の照射領域をカバーする長さとなっていれば、紙面に垂直な方向にレチクルステージ9を移動させなくても強度測定が可能である。EUV光検出用光センサアレイ3と光センサアレイ5の長さが、照射面における図の紙面に垂直な方向の照射領域をカバーする長さとなっていない場合は、レチクルステージ9を紙面に垂直な方向にも走査させて測定を行う。
【0028】
EUV光検出用光センサアレイ3と光センサアレイ5の出力は、それぞれプリアンプ4とプリアンプ6とで増幅され、通信装置8によって信号処理装置に無線(電波、赤外線等による)通信されて受信される。必要な電源は充電電池7から供給される。検出部1がこのような構成であるので、検出部1をレチクルステージ9に搭載したとき、配線処理が不要であり、通常のレチクルをチャッキングする場合と同じような手順により、検出部1をレチクルステージ9に装着できる。なお、検出部1には、アライメントマークAMが設けられており、通常のレチクルを装着してアライメントを行う場合と同じように、このアライメントマークAMを使用して、検出部1のアライメントを行う。
【0029】
図1に示す実施の形態では、電源装置として充電電池7を使用しているが、これをコイルに代え、レチクルステージ9に設けられたコイルから、電磁誘導により電源を供給するようにしてもよい。特に、EUV露光装置の場合、高度の真空中で使用されるので、充電電池7(又は乾電池)を使用すると充電電池7(又は乾電池)からアウトガスが発生し、光学系を汚損する可能性があるが、電磁誘導により電源を供給するようにしておけば、このような恐れが無くなり、かつ、検出部1に外部配線を行うことなく電源を供給することができる。
【0030】
又、図1に示す実施の形態では、通信装置8により、検出された信号を信号処理装置等の外部装置に送信していたが、これを記憶装置に代えて、測定結果を記憶しておき、測定完了後に、検出部1をレチクルステージ9から取り外した状態で記憶装置の内容を読み出すようにしてもよい。
【0031】
又、図1に示す実施の形態では、EUV光検出用光センサアレイ3と光センサアレイ5の双方を有している。この場合、光センサアレイとしては同一のものを使用し、EUV光検出用光センサアレイ3にEUV光のみを通過させるフィルタを被せて使用するようにしてもよい。さらには、露光に使用する照射光のみを測定するのみでよい場合は、1種類の光センサアレイを使用すればよい。レチクルステージが2次元的に広い範囲を走査できる場合は、光センサアレイを使用する必要はなく、極端な場合は、1個の光センサを設けるだけでもよいが、光センサアレイを使用して、一度に広範囲の照射面の測定を行った方が、測定時間を短縮できる。従って、図1に示すような1次元光センサアレイの代わりに、2次元光センサアレイを使用すると、特に効率良く測定ができる。特に、照射面全域をカバーするような2次元光センサアレイを使用可能な場合は、レチクルステージ9を走査させずに1度に測定を完了させることができる。この場合、プリアンプ4、プリアンプ6、充電電池7、通信装置8等が邪魔になる場合は、これらをモールド中に埋め込んで、表面に2次元光センサアレイを配置するようにすればよい。
【0032】
検出部1は、通常のレチクルと同一形状としておいた方が、通常レチクルを露光装置に装着する場合と同じハンドリングで露光装置に装着することができ、ハンドリング上都合がよい。なお、図1では照明光が図面の下側から入射してくるため光電検出面を下側に配置したが、照明光が上側から入射してくる場合は光電検出面を上側にして測定を行うことになる。この場合でも、検出部1の作用は以上の説明と変わるところはない。
【0033】
図2は、本発明の露光装置の照明光強度分布測定装置の全体構成の例を示す概要図である。以下の図においては、前出の図に示された構成要素と同じ構成要素には、同じ符号を付してその説明を省略することがある。
【0034】
信号処理装置12は、検出部1から無線送信された光センサアレイの検出信号と、露光装置のレチクルステージ制御装置13から入力されるレチクルステージ位置とを結合して、露光装置の照明領域における照射光の強度分布を作成し、表示装置14に表示する。その際、信号処理装置12からレチクルステージ制御装置13に指令を与え、レチクルステージ9を駆動するようにしてもよいが、測定時のレチクルステージ9の動きを、予めレチクルステージ制御装置13中に記憶しておいてそのとおりにレチクルステージ9を駆動し、レチクルステージ制御装置13は単にレチクルステージ9の位置信号を受け取るのみとするようにしてもよい。一般的には、露光装置はステージの位置を測定する測長干渉計を有するため、この測長干渉計の出力地と光センサアレイの検出信号とを用いて強度分布測定をすることも可能である。調整者は、表示装置14に表示された強度分布を見て、それが許容範囲となるように照明光学系の調整を行う。
【0035】
図3は、本発明の光装置の照明光強度分布測定装置を使用する露光装置の一種であるEUV露光装置の概要を示す図である。レチクルステージ9には、静電チャック10によりレチクル11が保持されている。一方、ウエハステージ15には、静電チャック16によりウエハ17が保持されている。図示しない照明光学系から放出されたEUV照明光18は、レチクル11を照明し、その表面に形成されたパターンの像が、投影光学系19によりウエハ17に投影される。レチクルステージ9とウエハステージ15を同期して走査することにより、レチクル11に形成されたパターンの全てを、ウエハ17に投影することができる。
【0036】
このようなEUV露光装置において、レチクル11を照明する照明光の強度分布を測定する場合には、レチクル11の代わりに照明光強度分布測定装置の検出部を、前述のようにレチクルステージ9に搭載して測定を行う。レチクルステージ9には、必要に応じて照明光強度分布測定装置の検出部に電源を供給するためのコイル、照明光強度分布測定装置の検出部の通信装置からの電波や赤外線を受信する受信装置等が設けられる。なお、図3において、20はレチクルアライメントマーク位置測定装置、21はウエハ用アライメントマーク位置測定装置である。照明光強度分布測定装置の検出部の使用に際しては、図1に示すアライメントマークAMを、レチクルアライメントマーク位置測定装置20で検出して、レチクルステージ9を駆動し、検出部の位置合わせを行う。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の露光装置の照明光強度分布測定装置の検出部の例を示す図である。
【図2】本発明の露光装置の照明光強度分布測定装置の全体構成の例を示す概要図である。
【図3】本発明の光装置の照明光強度分布測定装置を使用する露光装置の一種であるEUV露光装置の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1…検出部、2…枠体、3…EUV光検出用光センサアレイ、4…プリアンプ、5…光センサアレイ、6…プリアンプ、7…充電電池、8…通信装置、9…レチクルステージ、10…静電チャック、11…レチクル、12…信号処理装置、13…レチクルステージ制御装置、14…表示装置、15…ウエハステージ、16…静電チャック、17…ウエハ、18…EUV照明光、19…投影光学系、20…レチクルアライメントマーク位置測定装置、21…ウエハアライメントマーク位置測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光装置のレチクルステージに搭載可能とされ、レチクルを照明する照明光学系よりの照明光の強度を測定する光センサが取り付けられた検出部を有することを特徴とする露光装置の照明光強度分布測定装置。
【請求項2】
前記光センサが、前記レチクルステージの走査方向と直角な方向に長さ方向を有する光センサアレイであることを特徴とする請求項1に記載の露光装置の照明光強度分布測定装置。
【請求項3】
前記光センサが、2次元光センサアレイであることを特徴とする請求項1に記載の露光装置の照明光強度分布測定装置。
【請求項4】
前記露光装置がEUV露光装置であり、前記光センサが露光に使用されるEUV光のみを検出する光センサと、当該EUV光を含めた波長域の光を検出するセンサの2種類の光センサであることを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の露光装置の照明光強度分布測定装置。
【請求項5】
前記検出部が、外部との無線信号通信手段を有していることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の照明光強度分布測定装置。
【請求項6】
前記検出部が、測定結果を記憶する記憶手段を有していることを特徴とする請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の露光装置の照明光強度分布測定装置。
【請求項7】
前記検出部が、前記露光装置に使用されるレチクルと同一形状であることを特徴とする請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の露光装置の照明光強度分布測定装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載の露光装置の照明光強度分布測定装置の検出部が、レチクルステージに搭載可能とされていることを特徴とする露光装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−332363(P2006−332363A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−154302(P2005−154302)
【出願日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】