説明

非スランプ性極低セメント系ボンドキャスタブル組成物及びその施工方法

【課題】耐食性と熱間強度等の高温での機械的特性を向上させるため、結合剤としてのアルミン酸カルシウムセメントの使用量を極限まで少なくした非スランプ性、高密度、低水分のキャスタブル組成物、及びその施工方法を提供すること。
【解決手段】アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が固形分100重量%中で0.2〜1重量%となる量のアルミン酸カルシウムセメント、粘土と珪酸質微粒子を合量で6〜15重量%と、0.01〜0.5重量%の解膠剤と、残部の耐火性の骨材及び微粉とからなる固形分100重量%を、ポンプ圧送可能なコンシステンシィの達成に足りる量の水とで混練したポンプ圧送可能第1成分、及び、施工時に第1成分に対して添加される第2成分の凝集剤とからなる非スランプ性極低セメント系ボンドキャスタブル組成物、及び、その施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属容器、溶融金属処理装置、セメントキルン、焼却炉等に使用する新規な非スランプ性キャスタブル組成物に関し、また、型や型枠を使用せずに上記のキャスタブル組成物を施工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポルトランドセメントベースの湿式吹付け用組成物及びその施工方法は古く、周知である。例えば、砂、礫及びポルトランドセメントを含む混合物を作り、これを水と混練してポンプ圧送しうるコンシステンシィとなし、次いでこのコンクリートをポンプに入れてノズルにまで導く。このノズルではセメント硬化促進剤及び空気が加えられて、そのコンクリート材料を被吹付け対象物の表面、例えば壁面に対して吹き付ける。その表面ではコンクリートは、その吹付け表面から崩落(スランプ)しないように充分に迅速に固くなる。このような硬化は化学的硬化促進剤がポルトランドセメントと反応して硬化作用を迅速に開始させる結果であり、それによってコンクリートの粘度が崩落(スランプ)を防止するのに充分高い水準までに急速に上昇する。
【0003】
しかしながら、これは土木建設等の用途にとっては適当であるものの、耐火性コンクリートは結合剤としてのポルトランドセメントと一緒では満足に使用されない。なんとなればポルトランドセメントは耐火性材料が置かれる高い温度及び腐食性環境に耐えられないからである。従って、耐火性キャスタブルとして知られている大多数の耐火性コンクリートは、ポルトランドセメントではなくアルミン酸カルシウムセメントを含んでいる。アルミン酸カルシウムセメントは、はるかに高い耐火性を有し、また高温耐火材用途において見られる環境に対して一層高い耐食性を有する。
【0004】
このようなアルミン酸カルシウムセメントを結合剤として使用する湿式吹付け用のキャスタブル組成物及びその施工方法としては、特許文献1に示されるものが知られている。しかしながら、前記特許文献1に開示されている組成物は、アルミン酸カルシウムセメントを20重量%も含んでおり、また、添加水分量が10〜20重量%と多いために、耐火材料としての耐食性及び高温での機械的特性に劣る組成物となっている。
【0005】
そこで、特許文献2において、非スランプ性、低水分、低アルミン酸カルシウムセメントのキャスタブル組成物が示されている。
【特許文献1】特開昭54−61005号公報
【特許文献2】米国特許第5549745号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に示される非スランプ性、低水分、低アルミン酸カルシウムセメントのキャスタブル組成物は、通常使用される耐火材料としては十分な耐食性と機械的特性を有しているが、セメント中に含まれるカルシアは酸性あるいは中性の耐火材料と低融物を形成するので、さらに耐食性と熱間強度等の高温での機械的特性を向上させるためには、カルシア成分つまりセメントの添加量を極限まで減少させることが望ましい場合がある。
【0007】
本発明の課題は、耐食性と熱間強度等の高温での機械的特性をさらに向上させるために、結合剤としてのセメント量を非常に少なくした非スランプ性、高密度、低水分のキャスタブル組成物及びその施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が固形分100重量%中で0.2〜1重量%となる量のアルミン酸カルシウムセメントと、粘土と珪酸質微粒子を合計で6〜15重量%と、0.01〜0.5重量%の解膠剤と、残部が耐火性の骨材及び微粉からなる固形分100重量%を、ポンプ圧送可能なコンシステンシィの達成に足りる量の水とで混練したポンプ圧送可能第1成分、及び、施工時に第1成分に対して添加される第2成分の凝集剤とからなる極低セメント系ボンドキャスタブル組成物、及びその施工方法によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、溶融金属容器、溶融金属処理装置、セメントキルン、焼却炉等に使用する、結合剤としてのアルミン酸カルシウムセメントの使用量を極限まで少なくした非スランプ性、高密度、低水分のキャスタブル組成物及びその施工方法を提供する。
【0010】
これによって、耐食性と熱間強度等の高温での機械的特性を向上させることが可能となる。
【0011】
更に、キャスタブル組成物が、充分に硬化してスランプを生じなくなるまで所定位置に保持するための型や型枠を設けることなく施工することができるとともに、労働力及び時間を掛けてそのような型枠を設けそして除去するコストが省かれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のキャスタブル組成物の第1成分は、耐火性の骨材及び微粉、アルミン酸カルシウムセメント、粘土と珪酸質微粒子の一方あるいは両方、解膠剤と、ポンプ圧送可能なコンシステンシィを達成するのに足りる量の水とからなり混練される。
【0013】
耐火性の骨材及び微粉としては、溶融金属容器、溶融金属処理装置、セメントキルン、焼却炉等の耐火材料として適当ないずれのものであってもよく、例えば、電融又は焼結アルミナ、仮焼アルミナ、ボーキサイト、電融又は合成ムライト、シリマナイト、アンダリューサイト、カイヤナイト、バン土頁岩、シャモット、ロー石、珪石、溶融シリカ、電融又は焼結マグネシア、電融又は焼結スピネル、電融又は焼結ジルコニア、ジルコン、クロム鉱、電融又は焼結マグネシア−ライム、電融ジルコニア−ムライト、電融アルミナ−ジルコニア、チタニア、炭化珪素、窒化珪素、天然又は人造の黒鉛、石油コークス、ピッチコークス、無煙炭、ピッチ、カーボンブラック等の無定形炭素等が挙げられ、これらの内の1種又は2種以上を使用する。
【0014】
黒鉛あるいは無定形炭素等の炭素成分を含有するキャスタブル組成物の場合は、炭素の酸化防止や強度向上の目的で、アルミニウム、アルミニウム−シリコン合金、アルミニウム−マグネシウム合金、シリコン、マグネシウム等の金属粉、炭化珪素、炭化硼素等の炭化物、硼化ジルコニウム等の硼化物、硼珪酸ガラス等のガラス成分を使用することもできる。
【0015】
尚、本発明で言う、微粉とは粒径が0.2mm以下であり、実質的にその内の50重量%以上が74μm以下であるの前記原料のことを意味する。
【0016】
アルミン酸カルシウムセメントとしては、耐火性不定形組成物に一般的に使用されているいずれのものも本発明のために使用されうる。例えば、JISの第1種に相当するカルシア含有量15〜22重量%のもの、JISの第2種に相当するカルシア含有量25〜30重量%のもの、JISの第3種あるいは第4種に相当するカルシア含有量30〜40重量%のもの、および、その他のアルミン酸カルシウムセメントの1種又は2種以上を使用する。
【0017】
粘土としては、ボールクレーに代表されるカオリン族粘土やベントナイトに代表されるモンモリロナイト族粘土、あるいは、イライト族粘土等の1種又は2種以上を使用する。また、粘土は、第1成分に可塑性を付与する可塑剤としても働くが、無論、可塑性を与える目的のためには、耐火性不定形組成物において一般的に使用されている有機性可塑剤を使用することもできる。
【0018】
珪酸質微粒子としては、シリコンあるいはフェロシリコン製造時に副産物的に発生する蒸発(揮発)シリカと呼ばれるものやホワイトカーボン、無水又は含水無定形珪酸、シラス、および、シリカゾル等の1種又は2種以上を使用する。珪酸質微粒子は、第1成分に流動性を付与する流動性助剤としても働くが、無論、前記した耐火性の微粉の中で、粒径が10μm以下の仮焼アルミナ、チタニアやカーボンブラック等の微粉も流動性助剤としての機能を有する。
【0019】
解膠剤としては、縮合燐酸、ポリアクリル酸、ポリカルボン酸、ホスホン酸、フミン酸、アルキルスルホン酸、芳香族スルホン酸等、あるいはそれらの塩類の1種又は2種以上を使用する。
【0020】
また、本発明の第1成分は、一般的耐火性不定形組成においてスポーリングによる剥離を低減する目的で添加されるスチールファイバー、乾燥時の爆裂を防止する目的で添加される有機繊維や金属アルミニウムを通常の慣用量で使用することができる。
【0021】
添加水は、スイング弁ポンプ及びそれと共に使用される吹付けノズルで使用するのに適当なポンプ圧送可能なコンシステンシィを持った第1成分を得ることが可能なできるだけ少ない量で添加されるようにする。
【0022】
混練された第1成分は、吹付けノズル部で第2成分の凝集剤が添加されるまでは、ポンプ圧送可能なコンシステンシィを持続する必要があるが、このポンプ圧送可能なコンシステンシィを持続する時間である可使時間は、アルミニウムイオンとカルシウムイオンのキレート作用のある化合物を添加することで延長することが可能である。
【0023】
第2成分の凝集剤は、第1成分に導入された解膠剤の効果を「圧倒」し、すなわち消失せしめ、第1成分を即座に粘稠可塑性物に変えるように作用し、最終的には、キャスタブル材がスランプを起こさないで壁面に付着されるのに充分な粘着性と剛性を付与する。すなわち、凝集剤は、第1成分を凝集せしめると共に、アルミン酸カルシウムセメントの水和による水硬を促進する。
【0024】
このような作用がある凝集剤としては、アルミン酸ソーダ等のアルミン酸塩、炭酸ソーダ等の炭酸塩、珪酸ソーダ等の珪酸アルカリ、塩化カルシウム等の塩化物、水酸化ソーダや水酸化カルシウム等の水酸化物、アルミン酸カルシウム、ポルトランドセメント等の水溶液、懸濁液あるいは粉体があり、これらの1種あるいは2種以上を使用する。
【0025】
第1成分の固形分100重量%は、アルミン酸カルシウムセメントが含有されるカルシア成分の量が第1成分である固形分に対して0.2〜1重量%となる量のアルミン酸カルシウムセメント、合計で6〜15重量%となる量の粘土と珪酸質微粒子のいずれか一方又は両方と、0.01〜0.5重量%の解膠剤と、残部である耐火性の骨材及び微粉で構成される。
【0026】
アルミン酸カルシウムセメントの使用量は、アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が第1成分の固形分100重量%に対して0.2〜1重量%となるようにする。アルミン酸カルシウムセメントの使用量を、アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が固形分100重量%中に0.2重量%以上となるように制限するのは、それ未満の使用量では結合部が充分に形成されないために付着性が悪く低強度となるからである。また、固形分100重量%中でアルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が1重量%以下となるように制限するのは、アルミン酸カルシウムセメント中のカルシア成分の量がこれ以上多くなると高温での低融物の生成量が多くなり、耐食性及び熱間強度等の高温での機械的特性の改善効果が低下するからである。
【0027】
粘土と珪酸質微粒子の使用量は、合計の使用量が6〜15重量%であり、粘土と珪酸質微粒子のどちらか一方の使用でもかまわない。粘土と珪酸質微粒子の合計の使用量を1重量%以上と制限するのは、6重量%未満の使用量では付着性が悪く低強度となるからである。また、粘土と珪酸質微粒子の合計の使用量を15重量%以下と制限するのは、15重量%を越えると超微粒子であることに起因して高温時に過焼結現象を生じるとともに、耐食性及び熱間強度等の高温での機械的特性の改善効果が低下する場合があるからである。特に、珪酸質微粒子の使用量は10重量%以下にすることが望ましい。
【0028】
解膠剤の使用量は、0.01〜0.5重量%とする。解膠剤の使用量を0.01重量%以上と制限するのは、0.01重量%未満の使用量では解膠剤としての効果が発現しないために低水分でポンプ圧送可能な第1成分が得られないからである。また、0.5重量%以下と制限するのは、添加量が0.5重量%を越えると第2成分である凝集剤の凝集効果が低下してキャスタブル組成物の付着性が低下するとともに、第1成分の解膠性が低下して低水分ではポンプ圧送できなくなったり、強度等の機械的特性が低下したり、耐食性が低下する場合があるからである。
【0029】
水の添加量は、第1成分の比重と粒度構成によって当然異なるが、通常、5.0〜8.0重量%の水分量で容易にポンプ圧送可能な第1成分が得られる。但し、第1成分を非常に長距離、そして、高所まで圧送する場合は水分量を1〜3重量%程度多く添加する場合もあり、また、断熱材のように意図的に材料の気孔率を大きくする場合には、更に水の添加量を多くすることも有り得る。
【0030】
吹付けの直前に添加される第2成分である凝集剤の添加量は、キャスタブル組成物の望ましい気孔率(見掛け気孔率)に悪影響を与えることがあるので重要である。気孔率は、強度及び耐食性のようなその他のすべての性質がいずれのキャスタブル組成物の気孔率にも直接的に比例することから、キャスタブル組成物において最も重要な物理的性質であると考えられる。一般的に気孔率が増加すると、耐食性及び強度のいずれも低減するので、気孔率はできるだけ小さいことが望ましい。したがって、凝集剤の添加量は、キャスタブル組成物が十分な速さで硬化し、かつ、高密度なキャスタブル組成物として脱水後の気孔率が25%以下、好ましくは20%以下となるように調整する。通常は、第1成分の固形分100重量%に対して、外掛けで0.2〜3重量%の範囲の添加量で前記条件が満たされる。添加量が0.2重量%より少ないと、ノズル部で第1成分と均一に混合することが困難である。また、3重量%より多いと、キャスタブル組成物の硬化速度が大きくなり過ぎるために施工体の気孔率が大きくなったり、凝集剤が水溶液や懸濁液の場合はキャスタブル組成物全体の添加水分量が多くなるために施工体の気孔率が大きくなることがあるので好ましくない。
【0031】
但し、断熱材料のように意図的に材料の気孔率を大きくする場合は、第2成分である凝集剤の添加量を多くすることもできる。即ち、耐食性や強度よりも断熱性が望まれるキャスタブル組成物の場合は、気孔率を25%より大きくすることもあり得る。
【0032】
スイング弁ポンプは材料移送の非常に効率的な手段であり、したがって、従来に比べて非常に少ない水分量の第1成分を、長距離、そして、高所まで移送可能である。このスイング弁ポンプは通常は鋼管及び/またはホースを介してノズル装置に接続される。このようなノズル装置は空気ライン配管を有し、ポンプ圧送可能な第1成分を、耐火材料でライニングされるべき表面へ吹付けするためにその空気ライン配管から空気がノズルに供給される。
【0033】
本発明のさらなる一面は、第1成分が耐火性容器あるいは装置の表面に向けて吹付けされようとしているときに、第2成分の凝集剤を、好ましくは上記の空気ラインを介してノズルへ添加することである。
【0034】
第2成分の凝集剤をノズルに対して供給するための装置は、スイング弁ポンプの所与の材料排出量と釣り合うような容量を有すべきであり、また、空気ライン内の空気圧(通常は約3.52〜7.03kg/cm2=約50〜100psi)以上の充分な圧力を発生しうるべきである。
【実施例】
【0035】
本発明による実施例および比較例を表1、表2、表3、及び表4に示す。
【0036】
本発明で規定している第1成分の実施例と比較例の適用については、以下に示す耐火原料の骨材と微粉、アルミン酸カルシウムセメント、粘土、珪酸質微粒子、解膠剤を使用した。すなわち、耐火原料の骨材と微粉としては、純度99.5%の電融アルミナ、純度98.6%の電融マグネシア、純度99.7%の焼結アルミナ、純度99.3%の焼結スピネル、純度95.4%の焼結マグネシア、純度99.6%平均粒径1.5μmの仮焼アルミナ、純度93.7%の炭化珪素、固定炭素量60.0%のピッチを使用した。アルミン酸カルシウムセメントとしてはラファージュ社製の「SECAR71」を使用し、粘土としてはボールクレーを使用し、珪酸質微粒子としては純度96.0%平均粒径0.28μmの蒸発シリカを使用した。また、解膠剤としてはポリアクリル酸ソーダとリグニンスルホン酸ソーダを使用した。尚、ここに示したものは実施例に限定されるものでは無く、本発明の実施の形態に記載のものであれば同等の効果が得られる。ここで、微粉の平均粒径は、すべてレーザー回折法による測定値である。
【0037】
また、本発明で規定している第2成分となる凝集剤の例としては、40重量%アルミン酸カリウム水溶液を使用したが、本発明の実施の形態に記載のものであれば同等の効果が得られる。
【0038】
表中の水と凝集剤の添加量は、第1成分の固形分100重量%に対する外掛け(+表示)で表示している。
【0039】
吹付け施工は、表に記載した第1成分をミキサーで混練し、アレンタウン(Allentown)製AP−10スイング弁ポンプを用いて、内径0.051m(2インチ)、長さ30.48m(100ft)のヘビーデューティホース内を圧送し、さらに先端に接続した吹付けノズル部において、5.62kg/cm2(80psi)、8.5m3/分(300cft)の圧縮空気を第2成分の凝集剤とともに添加し、垂直に設置した9.29m2(100ft2)の面積のシャモット質れんが表面に吹付ける方法で実施した。ここで、凝集剤移送には、35.15kg/cm2(500psi)ダイヤフラムケミカルポンプを使用した。
【0040】
表中に示したポンプ圧送性の項目は、前記条件で施工した場合おいて、ポンプのシリンダー圧力が140.6kg/cm2(2000psi)以下で非常にポンプ圧送性が良好であったものには『◎』印、ポンプのシリンダー圧力が140.6kg/cm2(2000psi)を越えたがポンプ圧送可能であったものには、『○』印、また、ポンプ圧送できなかったものには『×』印を記入している。
【0041】
表中に示した付着率の項目は、前記条件で施工した場合おいて、全施工重量に対する付着重量の割合が95%以上と非常に良好であったものには『◎』印、90%以上95%未満と良好であったものには『○』印、また、90%未満と不良だったものには『×』印を記入している。
【0042】
表中に示した見掛け気孔率の項目は、前記条件で施工した施工体から切り出した試験片を500℃で3時間焼成後に測定した見掛け気孔率が20%以下であったものには『◎』印、20%より大きく25%以下であったものには『○』印、25%より大きかったものには『×』印を記入している。
【0043】
表中に示した残存線膨張収縮率の項目は、前記条件で施工した施工体から切り出した試験片を使用して、1500℃で3時間焼成の前後で残存線膨張収縮率が0%以上と過焼結を示さなかったものには『◎』印、0%より小さく−0.5%以上と過焼結が十分に小さかったものには『○』印、−0.5%より小さく耐火材料として不適切とされたものには『×』印を記入している。
【0044】
表中に示した熱間曲げ強度の項目は、前記条件で施工した施工体から切り出した断面□40mm、長さ160mm試験片を用い、1500℃の電気炉内、スパン100mmの3点曲げ強度を測定し、その熱間曲げ強度が比較例1(アルミン酸カルシウムセメントの使用量が多い例)の熱間曲げ強度の200%以上と非常に熱間強度が大きいものには『◎』印、150%以上で200%未満と熱間強度が大きいものには『○』印、150%未満と熱間強度の向上が不十分なものには『×』印を記入している。
【0045】
また、表中に示した耐食性の項目は、前記条件で施工した施工体から試験片を切り出し、スラグ回転試食試験をCaO/SiO2(モル比)=1.2のスラグを用いて1600℃で行い、その浸食速度が比較例1の浸食速度の60%以下と非常に耐食性が良好なものには『◎』印、60%より大きく90%以下と耐食性が良好なものには『○』印、90%より大きく耐食性の向上が不十分なものには『×』印を記入している。
【0046】
表1、表2、及び、表4に示す実施例1〜20が本発明が規定する条件を満足する施工体の結果であり、結合剤としてのアルミン酸カルシウムセメントの使用量を極限まで少なくした良好な施工体を得ることができた。
【表1】

【表2】

【表4】

【0047】
表3に比較例1〜10を示す。
【表3】

【0048】
比較例1は、アルミン酸カルシウムセメントを7重量%使用した従来の組成物を示す。アルミン酸カルシウムセメントの添加量が多いために、本発明の実施例と比べると耐食性と熱間強度が劣ったものであった。
【0049】
比較例2はアルミン酸カルシウムセメントの使用量が本発明の規定範囲(アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が第1成分の全固形分100重量%に対して0.2〜1重量%で変化させた実施例1、2、3及び4)以下(アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が第1成分の全固形分100重量%に対して0.1重量%)のために、付着率が満足できるものではなかった。
【0050】
比較例3はアルミン酸カルシウムセメントの使用量が本発明の規定範囲(アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が第1成分の全固形分100重量%に対して0.2〜1重量%で変化させた実施例1、2、3及び4)より多い(アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が第1成分の全固形分100重量%に対して1.5重量%)ために、耐食性と熱間強度の向上が小さいものであった。
【0051】
参考例1、2、及び3、実施例5、6、7、8、9、10及び11は、粘土と珪酸質微粒子の合計が1〜15重量%で変化させた。比較例4及び5は粘土と珪酸質微粒子の使用量が1〜15重量%以下(0.5重量%)のために、付着率が満足できるものではなかった。
【0052】
参考例1、2、及び3、実施例5、6、7、8、9、10及び11は、粘土と珪酸質微粒子の合計が1〜15重量%で変化させた。比較例6及び7は粘土と珪酸質微粒子の使用量が1〜15重量%より多い(18.0重量%)ために、過焼結が大きく耐火材料として不適切であり、また、熱間強度の向上も小さいものであった。
【0053】
比較例8は解膠剤の使用量が本発明の規定範囲(0.01〜0.5重量%で変化させた実施例2、12及び13)以下(0.005重量%)のために、低水分ではポンプ圧送することができなかった。
【0054】
比較例9は解膠剤の使用量が本発明の規定範囲(0.01〜0.5重量%で変化させた実施例2、12及び13)より多い(0.7重量%)ために、付着性が悪いものであった。
【0055】
比較例10は第2成分である凝集剤の添加量が多すぎたために、脱水後の見掛け気孔率が大きいものであった。
【0056】
重要なことは、本発明のキャスタブル組成物が、充分に硬化してスランプを生じなくなるまでに所定位置に保持するための型枠を設ける必要なく、施工することができることであり、もちろんこれによって労働力及び時間を掛けてそのような型枠を設けそして除去するコストが省かれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が固形分100重量%中で0.2〜1重量%となる量のアルミン酸カルシウムセメントと、粘土と珪酸質微粒子が合量で6〜15重量%と、0.01〜0.5重量%の解膠剤と、残部が耐火性の骨材及び微粉とからなる固形分100重量%を、水で混練した第1成分であって、前記水が混練された第1成分のポンプ圧送可能なコンシステンシィの達成に足りる量で存在する前記ポンプ圧送可能第1成分、及び、
施工時に第1成分に対して添加される第2成分の凝集剤
からなる極低セメント系ボンドキャスタブル組成物。
【請求項2】
型及び型枠の使用なしで、ポンプ及び付帯吹付けノズルを用いてキャスタブル組成物を吹付け施工する方法であって、
アルミン酸カルシウムセメントに含有されるカルシア成分の量が固形分100重量%中で0.2〜1重量%となる量のアルミン酸カルシウムセメントと、粘土と珪酸質微粒子を合量で6〜15重量%と、0.01〜0.5重量%の解膠剤と、残部が耐火性の骨材及び微粉とからなる固形分100重量%を、前記ポンプ及び吹付けノズルを介してポンプ圧送及び吹付け可能なコンシステンシィの達成に足りる量の水とで混練したポンプ圧送可能な第1成分を作り、
前記第1成分をポンプ圧送するとともに、該第1成分の吹付け直前に吹付けノズル内で第2成分の凝集剤を、第1成分に対して添加する吹付け施工方法。

【公開番号】特開2007−39330(P2007−39330A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252467(P2006−252467)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【分割の表示】特願平8−345081の分割
【原出願日】平成8年12月25日(1996.12.25)
【出願人】(000170716)黒崎播磨株式会社 (314)
【Fターム(参考)】