説明

非共鳴2光子吸収重合用組成物及びそれを用いた3次元光記録媒体

【課題】非線形2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な2光子吸収重合性組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも2光子吸収化合物、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーを有し、非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能である2光子吸収重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非線形光学効果を発現する材料に関し、特に非共鳴2光子吸収断面積が大きく、非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能である、有機非線形光学材料を含む2光子吸収重合性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、非線形光学効果とは、印加する光電場の2乗、3乗あるいはそれ以上に比例する非線型な光学応答のことであり、印加する光電場の2乗に比例する2次の非線形光学効果としては、第二高調波発生(SHG)、光整流、フォトリフラクティブ効果、ポッケルス効果、パラメトリック増幅、パラメトリック発振、光和周波混合、光差周波混合などが知られている。また印加する光電場の3乗に比例する3次の非線形光学効果としては第三高調波発生(THG)、光カー効果、自己誘起屈折率変化、2光子吸収などが挙げられる。
【0003】
これらの非線形光学効果を示す非線形光学材料としてはこれまでに多数の無機材料が見い出されてきた。ところが無機物においては、所望の非線形光学特性や、素子製造のために必要な諸物性を最適化するためのいわゆる分子設計が困難であることから実用するのは非常に困難であった。一方、有機化合物は分子設計により所望の非線形光学特性の最適化が可能であるのみならず、その他の諸物性のコントロールも可能であるため、実用の可能性が高く、有望な非線形光学材料として注目を集めている。
【0004】
近年、有機化合物の非線形光学特性の中でも3次の非線形光学効果が注目されており、その中でも特に、非共鳴2光子吸収が注目を集めている。2光子吸収とは、化合物が2つの光子を同時に吸収して励起される現象であり、化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2光子の吸収が起こる場合を非共鳴2光子吸収という。なお、以下の記述において特に明記しなくても2光子吸収とは非共鳴2光子吸収を指す。
【0005】
ところで、非共鳴2光子吸収の効率は印加する光電場の2乗に比例する(2光子吸収の2乗特性)。このため、2次元平面にレーザーを照射した場合においては、レーザースポットの中心部の電界強度の高い位置のみで2光子の吸収が起こり、周辺部の電界強度の弱い部分では2光子の吸収は全く起こらない。一方、3次元空間においては、レーザー光をレンズで集光した焦点の電界強度の大きな領域でのみ2光子吸収が起こり、焦点から外れた領域では電界強度が弱いために2光子吸収が全く起こらない。印加された光電場の強度に比例してすべての位置で励起が起こる線形吸収に比べて、非共鳴2光子吸収では、この2乗特性に由来して空間内部の1点のみで励起が起こるため、空間分解能が著しく向上する。
通常、非共鳴2光子吸収を誘起する場合には、化合物の(線形)吸収帯が存在する波長領域よりも長波でかつ吸収の存在しない、近赤外領域の短パルスレーザーを用いることが多い。いわゆる透明領域の近赤外光を用いるため、励起光が吸収や散乱を受けずに試料内部まで到達でき、非共鳴2光子吸収の2乗特性のために試料内部の1点を極めて高い空間分解能で励起できる。
したがって、非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて重合を起こすことができれば、3次元空間の任意の場所に重合を起こせ、究極の高密度記録媒体と考えられる3次元光記録媒体や、微細3次元光造形材料等への応用も可能となる。
【0006】
非共鳴2光子吸収化合物を用いて2光子光重合を行い、光造形等へ応用した例は以下の文献に記載されている(B.H.Cumpston et al.,Nature.1999年,398巻,51頁[非特許文献1])、K.D.Belfield et al.,J.Phys.Org.Chem.,2000年、13巻、837頁[非特許文献2]、C.Li et al.,Chem.Phys.Lett.,2001年、340巻、444頁[非特許文献3]、K.D.Belfield et al.,J.Am.Chem.Soc.,2000年、122巻、1217頁[非特許文献4]、S.Maruo et al.,Oppt.Lett.,1997年、22巻、132頁[非特許文献5]
【0007】
しかし、これらの例では、以下の問題点がある。
1)2光子吸収化合物の2光子吸収断面積が小さい
2)2光子吸収化合物を用いずに、2光子吸収断面積の極めて低い重合開始剤に直接2光子吸収させている
3)重合開始剤を用いていない
4)重合開始剤を用いていても、2光子吸収化合物とのマッチングが悪い
等、高効率な2光子吸収化合物及び適切な重合開始剤を用いていないため、重合の効率が悪く、重合により光造形等を行うためには強いレーザーを長時間照射しなければならず、実用上問題であった。
また、これらの文献には光重合により光重合組成物の屈折率が重合部と非重合部で変調されるような工夫はされておらず、またそのような記載も一切ない。
【0008】
一方、従来から、レーザー光により一回限りの情報の記録が可能な光情報記録媒体(光ディスク)が知られており、追記型CD(いわゆるCD−R)、追記型DVD(いわゆるDVD−R)などが実用化されている。
例えば、DVD−Rの代表的な構造は、照射されるレーザー光のトラッキングのための案内溝(プレグルーブ)がCD−Rに比べて半分以下(0.74〜0.8μm)と狭く形成された透明な円盤状基板上に、色素からなる記録層、そして通常は該記録層の上に光反射層、そして更に必要により保護層からなる。
DVD−Rへの情報の記録は、可視レーザー光(通常は630nm〜680nmの範囲)を照射し、記録層の照射部分がその光を吸収して局所的に温度上昇し、物理的あるいは化学的変化(例えば、ピットの生成)が生じてその光学的特性を変えることにより行われる。一方、情報の読み取り(再生)もまた記録用のレーザー光と同じ波長のレーザー光を照射することにより行われ、記録層の光学的特性が変化した部位(記録部分)と変化しない部位(未記録部分)との反射率の違いを検出することにより情報が再生される。この反射率の違いはいわゆる「屈折率の変調」に基づくものであり、記録部分と非記録部分の屈折率差が大きい程、光の反射率の比が大きい、すなわち再生のS/N比が大きくなり好ましい。
【0009】
最近、インターネット等のネットワークやハイビジョンTVが急速に普及している。また、HDTV(High Definition Television)の放映も間近にひかえて、民生用途においても50GB以上の画像情報を安価簡便に記録するための大容量記録媒体の要求が高まっている。
さらにコンピューターバックアップ用途、放送バックアップ用途等、業務用途においては、1TB程度あるいはそれ以上の大容量の情報を高速かつ安価に記録できる光記録媒体が求められている。
そのような中、DVD−Rのような従来の2次元光記録媒体は物理原理上、たとえ記録再生波長を短波長化したとしてもせいぜい25GB程度で、将来の要求に対応できる程の充分大きな記録容量が期待できるとは言えない状況である。
【0010】
そのような状況の中、究極の高密度、高容量記録媒体として、3次元光記録媒体が俄然注目されてきている。3次元光記録媒体は、3次元(膜厚)方向に何十、何百層もの記録を重ねることで、従来の2次元記録媒体の何十、何百倍もの超高密度、超高容量記録を達成しようとするものである。3次元光記録媒体を提供するためには、3次元(膜厚)方向の任意の場所にアクセスして書き込みできなければならないが、その手段として、2光子吸収材料を用いる方法とホログラフィ(干渉)を用いる方法とある。
2光子吸収材料を用いる3次元光記録媒体では、上記で説明した物理原理に基づいて何十、何百倍にもわたっていわゆるビット記録が可能であって、より高密度記録が可能であり、まさに究極の高密度、高容量光記録媒体であると言える。
2光子吸収材料を用いた3次元光記録媒体としては、記録再生に蛍光性物質を用いて蛍光で読み取る方法(レウ"ィッチ、ユージーン、ポリス他、特表2001−524245号[特許文献1]、パベル、ユージエン他、特表2000−512061号[特許文献2])、フォトクロミック化合物を用いて吸収または蛍光で読み取る方法(コロティーフ、ニコライ・アイ他、特表2001−522119号[特許文献3]、アルセノフ、ウ"ラディミール他、特表2001−508221号[特許文献4])等が提案されているが、いずれも具体的な2光子吸収材料の提示はなく、また抽象的に提示されている2光子吸収化合物の例も2光子吸収効率の極めて小さい2光子吸収化合物を用いており、さらに、非破壊読み出し、記録の長期保存性、再生のS/N比等に問題があり、光記録媒体として実用性のある方式であるとは言えない。
特に非破壊読出し、記録の長期保存性等の点では、不可逆材料を用いて反射率(屈折率)の変化で再生するのが好ましいが、このような機能を有する2光子吸収材料を具体的に開示している例はなかった。
また、河田聡、川田善正、特開平6−28672号、河田聡、川田善正他、特開平6−118306号には、屈折率変調により3次元的に記録する記録装置、及び再生装置、読み出し方法等が開示されているが、2光子吸収重合性組成物を用いた方法についての具体的な記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2001−524245号公報
【特許文献2】特表2000−512061号公報
【特許文献3】特表2001−522119号公報
【特許文献4】特表2001−508221号公報
【特許文献5】特開平6−28672号公報
【特許文献6】特開平6−118306号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】B.H.Cumpston et al.,Nature.1999年,398巻,51頁
【非特許文献2】K.D.Belfield et al.,J.Phys.Org.Chem.,2000年、13巻、837頁
【非特許文献3】C.Li et al.,Chem.Phys.Lett.,2001年、340巻、444頁
【非特許文献4】K.D.Belfield et al.,J.Am.Chem.Soc.,2000年、122巻、1217頁
【非特許文献5】S.Maruo et al.,Oppt.Lett.,1997年、22巻、132頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上に述べたように、非共鳴2光子吸収により得た励起エネルギーを用いて重合を起こし、その結果レーザー焦点部と非焦点部で屈折率を変調することができれば、3次元空間の任意の場所に極めて高い空間分解能で屈折率変調を起こすことができ、究極の高密度記録媒体と考えられる3次元光記録媒体への応用も可能となる。さらに、非破壊読み出しが可能で、かつ不可逆材料であるため良好な保存性も期待でき実用的である。
しかし、現時点で利用可能な2光子吸収化合物では、2光子吸収能及び重合開始能が低く、また重合開始剤とのマッチングも悪く重合効率は極めて低い。したがって、光源としては非常に高出力のレーザーが必要で、かつ記録時間も長くかかる。
特に3次元光記録媒体に使用するためには、速い転送レート達成のために、高感度にて光重合できる2光子吸収重合性組成物の構築が必須である。
また、不可逆的に3次元屈折率変調を達成できる機能を有する2光子吸収化合物を含む材料の構築も必須である。
【0014】
本発明の目的は、非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能なことを特徴とする2光子吸収重合性組成物を提供することであり、さらに、その2光子吸収重合性組成物を用いた3次元光記録媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らの鋭意検討の結果、高効率に2光子を吸収する材料、すなわち2光子吸収断面積の大きな材料と、その励起エネルギーから効率よく重合を引き起こすことができる重合開始剤、さらに所望の屈折率変調を引き起こすことができる重合性化合物及びバインダーを見出すことに至った。
よって、本発明の上記目的は、下記の手段により達成された。
【0016】
(1) 少なくとも2光子吸収化合物、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーを有し、非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能なことを特徴とする2光子吸収重合性組成物。
(2) 該2光子吸収重合性組成物において、重合性化合物とバインダーの屈折率が異なり、非共鳴2光子吸収により起こる光重合によって、レーザー焦点部と非焦点部にて重合性化合物及びその重合反応物とバインダーとの組成比の不均一化が起こることにより、3次元的屈折率変調が可能なことを特徴とする(1)記載の2光子吸収重合性組成物。
(3) 該重合性化合物または該バインダーのいずれか一方が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、または硫黄原子を含み、残りの一方はそれらを含まないことを特徴とする、(1)または(2)記載の2光子吸収重合性組成物。
(4) 該重合性化合物が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、または硫黄原子を含み、該バインダーはそれらを含まないことを特徴とする、(3)記載の2光子吸収重合性組成物。
(5) 該重合性化合物の少なくとも1つが沸点100℃以上の液体であることを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
(6) 該バインダーが該重合性化合物より低屈折率であり、バインダーがセルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールまたはフッ素を含む高分子を含むことを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
(7) 該重合性化合物が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、または硫黄原子を含み、バインダーが重合性化合物より低屈折率であり、バインダーがセルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールまたはフッ素を含む高分子を含むことを特徴とする、(6)記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な2光子吸収重合性組成物。
(8) 該2光子吸収化合物が有機色素であることを特徴とする、(1)〜(7)のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
(9) 該2光子吸収化合物がメチン色素またはフタロシアニン色素であることを特徴とする、(8)記載の2光子吸収重合性組成物。
(10) 該2光子吸収化合物がシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、フタロシアニン色素または下記一般式(1)にて表される化合物であることを特徴とする、(9)記載の該2光子吸収重合性組成物。
一般式(1)
【0017】
【化1】

【0018】
式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R、R、R、Rのうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよい。nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、nおよびmが2以上の場合、複数個のR、R、RおよびRは同一でもそれぞれ異なってもよい。ただし、n、m同時に0となることはない。XおよびXは独立に、アリール基、ヘテロ環基、または一般式(2)で表される基を表す。
一般式(2)
【0019】
【化2】

【0020】
式中、Rは水素原子または置換基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基を表し、Zは5または6員環を形成する原子群を表す。
(11) 一般式(1)で表される化合物において、R1 とR3 が連結して環を形成することを特徴とする(10)記載の2光子吸収重合性組成物。
(12) 一般式(1)で表される化合物において、RとR が連結して、カルボニル基と共にシクロペンタノン環を形成することを特徴とする(11)記載の2光子吸収重合性組成物。
(13) 一般式(1)で表される化合物のX、Xが一般式(2)にて表されることを特徴とする(10)〜(12)のいずれかに記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な2光子吸収重合性組成物。
(14) 一般式(1)で表される化合物において、X 、X が一般式(2)で表され、R はアルキル基であり、Zで形成される環が、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環のいずれかで表されることを特徴とする(13)記載の2光子吸収重合性組成物。
(15) 一般式(1)で表される化合物において、X 、X が一般式(2)で表され、R はアルキル基であり、Zで形成される環が、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環のいずれかで表されることを特徴とする(14)記載の2光子吸収重合性組成物。
(16) (10)にて、シアニン色素が下記一般式(3)にて、メロシアニン色素が下記一般式(4)にて、オキソノール色素が一般式(5)にて表されることを特徴とする、(10)記載の2光子吸収重合性組成物。
【0021】
【化3】

【0022】
一般式(3)〜(5)中、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員環を形成する原子群を表わす。Ra、Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
Ma〜Ma14はそれぞれ独立にメチン基を表わし、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。na、na及びnaはそれぞれ0または1であり、ka、及びkaはそれぞれ0〜3の整数を表わす。kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよく、kaが2以上の時、複数のMa12、Ma13は同じでも異なってもよい。kaは0〜8の整数を表わし、kaが2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
(17) 該2光子吸収化合物が少なくとも1個の水素結合性基を有することを特徴とする(1)〜(16)のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
(18) 該水素結合性基が−COOH基または−CONH基であることを特徴とする(17)記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な2光子吸収重合性組成物。
(19) 該重合開始剤が1)ケトン系重合開始剤、2)有機過酸化物系重合開始剤、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、5)ジアゾニウム塩系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、8)トリフェニルアルキルホウ酸塩系重合開始剤、9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤、10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤、11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤、12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤、13)金属アレーン錯体系重合開始剤、14)スルホン酸エステル系重合開始剤、のいずれかであることを特徴とする(1)〜(18)のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
(20) 該重合開始剤が1)ケトン系重合開始剤、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤、12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤、のいずれかであることを特徴とする(19)記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な2光子吸収重合性組成物。
(21) 該重合開始剤が少なくとも1種のラジカルを発生する重合開始剤を含み、重合性化合物が少なくとも1種のラジカルにより重合するラジカル重合性化合物を含むことを特徴とする(1)〜(20)のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
(22) (21)にて、少なくとも1種のラジカルを発生するラジカル重合開始剤が1)ケトン系重合開始剤、2)有機過酸化物系重合開始剤、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、5)ジアゾニウム塩系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、8)トリフェニルアルキルホウ酸塩系重合開始剤、9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤、10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤、11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤、12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤、13)金属アレーン錯体系重合開始剤、のいずれかであることを特徴とする、(21)記載の2光子吸収重合性組成物。
(23) (22)にて、少なくとも1種のラジカルを発生するラジカル重合開始剤が1)ケトン系重合開始剤、3)ビスイミダゾール系重合開始剤、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤、12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤、のいずれかであることを特徴とする(22)記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な2光子吸収重合性組成物。
(24) (22)にて、少なくとも1種のラジカルを発生するラジカル重合開始剤が3)ビスイミダゾール系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤、12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤、のいずれかであることを特徴とする(22)記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な2光子吸収重合性組成物。
(25) 該重合開始剤が少なくとも1種の酸を発生する重合開始剤を含み、該重合性化合物が少なくとも1種の酸により重合するカチオン重合性化合物を含むことを特徴とする(1)〜(20)のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
(26) (25)にて、少なくとも1種の酸を発生するラジカル重合開始剤が、4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤、5)ジアゾニウム塩系重合開始剤、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤、13)金属アレーン錯体系重合開始剤、14)スルホン酸エステル系重合開始剤のいずれかであることを特徴とする(25)記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な2光子吸収重合性組成物。
(27) (25)にて、少なくとも1種のラジカル及び酸を共に発生するラジカル重合開始剤が、6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤、7)スルホニウム塩系重合開始剤のいずれかであることを特徴とする(25)記載の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能な2光子吸収重合性組成物。
(28) 少なくとも、2光子吸収化合物、重合性化合物、バインダーを有し、非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能であることを特徴とする2光子吸収重合性組成物。
(29) (28)にて、2光子吸収化合物が一般式(3)にて表されるシアニン色素、一般式(4)にて表されるメロシアニン色素、一般式(5)にて表されるオキソノール色素、一般式(1)にて表される化合物、のいずれかであることを特徴とする(28)記載の2光子吸収重合性組成物。
(30) 形成される屈折率変調量が0.005以上であることを特徴とする(1)〜(29)のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
(31) (1)〜(30)のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物を含むことを特徴とする3次元光記録媒体。
【発明の効果】
【0023】
本発明の2光子吸収重合性組成物を用いることで、レーザー焦点部と非焦点部での屈折率を3次元的に変調できることがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に本発明の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能なことを特徴とする2光子吸収重合性組成物について詳しく説明する。
【0025】
本発明の2光子吸収重合性組成物は、2光子吸収化合物、その励起エネルギーを用いてラジカルまたは酸を発生するラジカルまたはカチオン重合開始剤、ラジカルまたはカチオンにより重合する重合性化合物、高分子化合物からなるバインダーを含み、必要に応じて連鎖移動剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を用いる。
本発明の2光子吸収重合組成物においては、重合性化合物とバインダーの屈折率が異なることが好ましい。その結果、非共鳴2光子吸収により起こる光重合によって、レーザー焦点部と非焦点部にて重合性化合物及びその重合反応物とバインダーとの組成比の不均一化が起こり、3次元的屈折率変調が可能になる。
形成される屈折率変調は0.005より大きいことが好ましく、0.01より大きいことがより好ましく、0.05より大きいことがさらに好ましい。
重合性化合物とバインダーの屈折率の違いは、重合性化合物の方がより屈折率が大きくても、バインダーの方がより屈折率が大きくてもどちらでも構わないが、重合性化合物の方がバインダーよりも屈折率が大きいことがより好ましい。
【0026】
まず本発明の2光子吸収重合性組成物における2光子吸収化合物について説明する。
本発明の2光子吸収化合物は、非共鳴2光子吸収(化合物の(線形)吸収帯が存在しないエネルギー領域で2つの光子を同時に吸収して励起される現象)を行う化合物である。
【0027】
本発明の2光子吸収化合物は好ましくは有機化合物である。
なお、本発明において、特定の部分を「基」と称した場合には、特に断りの無い限りは、一種以上の(可能な最多数までの)置換基で置換されていても、置換されていなくても良いことを意味する。例えば、「アルキル基」とは置換または無置換のアルキル基を意味する。また、本発明における化合物に使用できる置換基は、置換の有無にかかわらず、どのような置換基でも良い。
また、本発明において、特定の部分を「環」と称した場合、あるいは「基」に「環」が含まれる場合は、特に断りの無い限りは単環でも縮環でも良く、置換されていても置換されていなくても良い。
例えば、「アリール基」はフェニル基でもナフチル基でも良く、置換フェニル基でも良い。
【0028】
本発明の2光子吸収化合物はより好ましくは色素である。なおここで色素とは可視光領域(400〜700nm)または近赤外領域(700〜2000nm)に吸収の一部を有する化合物に対する総称である。
本発明における色素としてはいかなるものでも良いが、例えば、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、インジゴ色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、または金属錯体色素が挙げられる。
【0029】
好ましくは、シアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素、トリフェニルメタン色素、キサンテン色素、アゾ色素、ポルフィリン色素、フタロシアニン色素、または金属錯体色素が挙げられ、より好ましくはシアニン色素、ヘミシアニン色素、ストレプトシアニン色素、スチリル色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、オキソノール色素、スクアリウム色素、アリーリデン色素等、メチン色素、及びフタロシアニン色素、アゾ色素が挙げられ、さらに好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、またはオキソノール色素である。
【0030】
これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F.M.Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズーシアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D.M.Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons) 社−ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds)」2nd.Ed.vol.IV,partB,1977刊、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、などに記載されている。
【0031】
シアニン色素、メロシアニン色素またはオキソノール色素の具体例としては、F.M.Harmer著、Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds、John&Wiley&Sons、New York、London、1964年刊に記載のものが挙げられる。
【0032】
シアニン色素、メロシアニン色素の一般式は、米国特許第5,340,694号第21及び22頁の(XI)、(XII)に示されているもの(ただしn12、n15の数は限定せず、0以上の整数(好ましくは0〜4の整数)とする)が好ましい。
【0033】
本発明の2光子吸収化合物がシアニン色素の時、好ましくは一般式(3)にて表わされる。
【0034】
一般式(3)中、Za及びZaはそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わす。形成される5員または6員の含窒素複素環として好ましくは炭素原子数(以下C数という)3〜25のオキサゾール核(例えば、2−3−メチルオキサゾリル、2−3−エチルオキサゾリル、2−3,4−ジエチルオキサゾリル、2−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−3−メチルチオエチルベンゾオキサゾリル、2−3−メトキシエチルベンゾオキサゾリル、2−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−メチル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−メチル−α−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−スルホプロピル−β−ナフトオキサゾリル、2−3−(3−ナフトキシエチル)ベンゾオキサゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾオキサゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾオキサゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾオキサゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾオキサゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾオキサゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾオキサゾリル)、C数3〜25のチアゾール核(例えば、2−3−メチルチアゾリル、2−3−エチルチアゾリル、2−3−スルホプロピルチアゾリル、2−3−スルホブチルチアゾリル、2−3,4−ジメチルチアゾリル、2−3,4,4−トリメチルチアゾリル、2−3−カルボキシエチルチアゾリル、2−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチルベンゾチアゾリル、2−3−ブチルベンゾチアゾリル、2−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−メチル−β−ナフトチアゾリル、2−3−スルホプロピル−γ−ナフトチアゾリル、2−3−(1−ナフトキシエチル)ベンゾチアゾリル、2−3,5−ジメチルベンゾチアゾリル、2−6−クロロ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−6−ヨード−3−エチルベンゾチアゾリル、2−5−ブロモ−3−メチルベンゾチアゾリル、2−3−エチル−5−メトキシベンゾチアゾリル、2−5−フェニル−3−スルホプロピルベンゾチアゾリル、2−5−(4−ブロモフェニル)−3−スルホブチルベンゾチアゾリル、2−3−ジメチル−5,6−ジメチルチオベンゾチアゾリルなどが挙げられる)、C数3〜25のイミダゾール核(例えば、2−1,3−ジエチルイミダゾリル、2−1,3−ジメチルイミダゾリル、2−1−メチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,4−トリエチルイミダゾリル、2−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3,5−トリメチルベンゾイミダゾリル、2−6−クロロ−1,3−ジメチルベンゾイミダゾリル、2−5,6−ジクロロ−1,3−ジエチルベンゾイミダゾリル、2−1,3−ジスルホプロピル−5−シアノ−6−クロロベンゾイミダゾリルなどが挙げられる)、C数10〜30のインドレニン核(例えば、3,3−ジメチルインドレニン)、C数9〜25のキノリン核(例えば、2−1−メチルキノリル、2−1−エチルキノリル、2−1−メチル6−クロロキノリル、2−1,3−ジエチルキノリル、2−1−メチル−6−メチルチオキノリル、2−1−スルホプロピルキノリル、4−1−メチルキノリル、4−1−スルホエチルキノリル、4−1−メチル−7−クロロキノリル、4−1,8−ジエチルキノリル、4−1−メチル−6−メチルチオキノリル、4−1−スルホプロピルキノリルなどが挙げられる)、C数3〜25のセレナゾール核(例えば、2−3−メチルベンゾセレナゾリルなどが挙げられる)、C数5〜25のピリジン核(例えば、2−ピリジルなどが挙げられる)などが挙げられ、さらに他にチアゾリン核、オキサゾリン核、セレナゾリン核、テルラゾリン核、テルラゾール核、ベンゾテルラゾール核、イミダゾリン核、イミダゾ[4,5−キノキザリン]核、オキサジアゾール核、チアジアゾール核、テトラゾール核、ピリミジン核を挙げることができる。
【0035】
これらは置換されても良く、置換基として好ましくは例えば、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル、2−ブテニル、1,3−ブタジエニル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、アルキニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、エチニル、2−プロピニル、1,3−ブタジイニル、2−フェニルエチニル)、ハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、I)、アミノ基(好ましくはC数0〜20、例えば、アミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジブチルアミノ、アニリノ)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、メルカプト基、カルボキシル基、スルホ基、ホスホン酸基、アシル基(好ましくはC数1〜20、例えば、アセチル、ベンゾイル、サリチロイル、ピバロイル)、アルコキシ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メトキシ、ブトキシ、シクロヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくはC数6〜26、例えば、フェノキシ、1−ナフトキシ)、アルキルチオ基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチルチオ、エチルチオ)、アリールチオ基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニルチオ、4−クロロフェニルチオ)、アルキルスルホニル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メタンスルホニル、ブタンスルホニル)、アリールスルホニル基(好ましくはC数6〜20、例えば、ベンゼンスルホニル、パラトルエンンスルホニル)、スルファモイル基(好ましくはC数0〜20、例えばスルファモイル、N−メチルスルファモイル、N−フェニルスルファモイル)、カルバモイル基(好ましくはC数1〜20、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N、N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイル)、アシルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、イミノ基(好ましくはC数2〜20、例えばフタルイミノ)、アシルオキシ基(好ましくはC数1〜20、例えばアセチルオキシ、ベンゾイルオキシ)、アルコキシカルボニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、メトキシカルボニル、フェノキシカルボニル)、カルバモイルアミノ基(好ましくはC数1〜20、例えばカルバモイルアミノ、N−メチルカルバモイルアミノ、N−フェニルカルバモイルアミノ)、であり、より好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、またはアルコキシカルボニル基である。
【0036】
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0037】
Za及びZaにより形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、インドレニン環であり、さらに好ましくはオキサゾール核、イミダゾール核、インドレニン環であり、最も好ましくはオキサゾール核である。
【0038】
Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)であり、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
【0039】
Ma〜Maはそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma〜Maは無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma〜Maは互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0040】
na及びnaは0または1であり、好ましくは共に0である。
【0041】
kaは0〜3の整数を表わし、より好ましくはkaは1〜3を表し、さらに好ましくはkaは1または2を表す。
kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよい。
【0042】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0043】
本発明の2光子吸収化合物がメロシアニン色素の時、好ましくは一般式(4)で表わされる。
【0044】
一般式(1)中、Zaは5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、Za、Zaと同義(好ましい例もZa、Zaと同じ)であり、これらは置換されても良く(好ましい置換基の例はZa、Za上の置換基の例と同じ))、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
【0045】
Zaにより形成される5員または6員の含窒素複素環としてより好ましくは、オキサゾール核、イミダゾール核、チアゾール核、インドレニン環であり、さらに好ましくはオキサゾール核、インドレニン環である。
【0046】
Zaは5員または6員環を形成する原子群を表わす。Zaから形成される環は一般に酸性核と呼ばれる部分であり、James 編、The Theory of the Photographic Process、第4版、マクミラン社、1977年、第198頁により定義される。Zaとして好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、イミダゾリン−5−オン、ヒダントイン、2または4−チオヒダントイン、2−イミノオキサゾリジン−4−オン、2−オキサゾリン−5−オン、2−チオオキサゾリン−2,4−ジオン、イソローダニン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、インドリン−2−オン、インドリン−3−オン、2−オキソインダゾリウム、5,7−ジオキソ−6,7−ジヒドロチアゾロ〔3,2−a 〕ピリミジン、3,4−ジヒドロイソキノリン−4−オン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオン、インダゾリン−2−オン、ピリド[1,2−a]ピリミジン−1,3−ジオン、ピラゾロ〔1,5−b〕キナゾロン、ピラゾロピリドンなどの核が挙げられる。
Zaから形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくは、ピラゾリジン−3,5−ジオン、インダン−1,3−ジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはピラゾリジン−3,5−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸である。
【0047】
Zaから形成される環は置換されても良く、(好ましい置換基の例はZa上の置換基の例と同じ)置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
【0048】
これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。縮環する環として好ましくはベンゼン環、ベンゾフラン環、ピリジン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環等が挙げられる。
【0049】
Raはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基であり(以上好ましい例はRa、Raと同じ)、より好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)またはスルホアルキル基(好ましくは3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル)である。
【0050】
Ma〜Ma11はそれぞれメチン基を表わし、置換基を有していても良く(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、置換基としてより好ましくはアルキル基である。
Ma〜Ma11は無置換メチン基またはアルキル基(好ましくはC数1〜6)置換メチン基であることが好ましく、より好ましくは無置換、エチル基置換、メチル基置換のメチン基である。
Ma〜Ma11は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0051】
naは0または1であり、好ましくは0である。
【0052】
kaは0〜8の整数を表わし、好ましくは0〜4の整数を表し、より好ましくは2〜4の整数を表す。
kaが2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
【0053】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0054】
本発明の2光子吸収化合物がオキソノール色素の時、好ましくは一般式(5)で表わされる。
【0055】
一般式(5)中、Za及びZaは各々5員または6員環を形成する原子群を表わし、Zaと同義(好ましい例もZaと同じ)であり、これらは置換されても良く(好ましい置換基の例はZa上の置換基の例と同じ)、これらの複素環はさらに縮環されていてもよい。
Za及びZaから形成される環としてより好ましくは、2−ピラゾロン−5−オン、ピラゾリジン−3,5−ジオン、ローダニン、インダン−1,3−ジオン、チオフェン−3−オン、チオフェン−3−オン−1,1−ジオキシド、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、バルビツール酸、2−チオバルビツール酸、クマリンー2,4−ジオンであり、さらに好ましくはバルビツール酸、2−チオバルビツール酸であり、最も好ましくはバルビツール酸である。
【0056】
Ma12〜Ma14は各々メチン基を表わし、置換基を有していても良く、(好ましい置換基の例はZa及びZa上の置換基の例と同じ)、置換基として好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基、ニトロ基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アシルアミノ基、カルバモイル基、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキルチオ基、シアノ基などが挙げられ、より好ましくはアルキル基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、カルバモイル基、カルボキシ基であり、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基である。
Ma12〜Ma14は無置換メチン基であることが好ましい。
Ma12〜Ma14は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0057】
kaは0から3までの整数を表わし、好ましくは0から2までの整数を表し、より好ましくは1または2を表し、最も好ましくは2を表す。
kaが2以上の時、Ma12、Ma13は同じでも異なってもよい。
【0058】
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【0059】
また、本発明の化合物は一般式(1)にて表されることも好ましい。
【0060】
一般式(1)において、R 、R 、R 、R はそれぞれ独立に、水素原子または置換基を表し、置換基として好ましくは、アルキル基(好ましくはC数1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、3−メチル−3−スルホプロピル、2’−スルホベンジル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、シクロアルキル基(好ましくはC数3〜20、例えばシクロペンチル、シクロヘキシル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)である。
、R 、R 、R として好ましくは水素原子またはアルキル基である。R、R 、R 、R のうちのいくつか(好ましくは2つ)が互いに結合して環を形成してもよい。特に、RとR が結合して環を形成することが好ましく、その際カルボニル炭素原子と共に形成する環が6員環または5員環または4員環であることが好ましく、5員環または4員環であることがより好ましく、5員環であることが最も好ましい。
【0061】
一般式(1)において、nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは1〜4の整数を表す。ただし、n、m同時に0となることはない。
nおよびmが2以上の場合、複数個のR 、R 、R およびR は同一でもそれぞれ異なってもよい。
【0062】
およびX は独立に、アリール基[好ましくはC数6〜20、好ましくは置換アリール基(例えば置換フェニル基、置換ナフチル基、置換基の例として好ましくはMa〜Maの置換基と同じ)であり、より好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、さらに好ましくはアルキル基、アミノ基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルアミノ基が置換したアリール基を表し、最も好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したフェニル基を表す。その際複数の置換基が連結して環を形成しても良く、形成する好ましい環としてジュロリジン環が挙げられる。]、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、好ましくは3〜8員環、より好ましくは5または6員環、例えばピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリル、インドリル、カルバゾリル、フェノチアジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ、より好ましくはインドリル、カルバゾリル、ピロリル、フェノチアジノ。ヘテロ環は置換していても良く、好ましい置換基は前記アリール基の際の例と同じ)、または一般式(2)で表される基を表す。
【0063】
一般式(2)中、R は水素原子または置換基(好ましい例はR 〜R と同じ)を表し、好ましくは水素原子またはアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
は水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、またはヘテロ環基(これらの置換基の好ましい例はR 〜Rと同じ)を表し、好ましくはアルキル基(好ましくはC数1〜6のアルキル基)である。
【0064】
は5または6員環を形成する原子群を表す。
形成されるヘテロ環として好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、イミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環、ピリジン環であり、より好ましくはインドレニン環、アザインドレニン環、ピラゾリン環、ベンゾチアゾール環、チアゾール環、チアゾリン環、ベンゾオキサゾール環、オキサゾール環、オキサゾリン環、ベンゾイミダゾール環、チアジアゾール環、キノリン環であり、最も好ましくは、インドレニン環、アザインドレニン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾイミダゾール環である。
により形成されるヘテロ環は置換基を有しても良く(好ましい置換基の例はZa、Za上の置換基の例と同じ)、置換基としてより好ましくは、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、アルコキシ基、カルバモイル基、アルコキシカルボニル基である。
【0065】
およびX として好ましくはアリール基または一般式(2)で表される基で表され、より好ましくは4位にジアルキルアミノ基またはジアリールアミノ基が置換したアリール基または一般式(2)で表される基で表される。
【0066】
本発明の2光子吸収化合物は水素結合性基を分子内に有することも好ましい。ここで水素結合性基とは、水素結合における水素を供与する基または水素を受容する基を表し、そのどちらの性質も有している基がより好ましい。
また本発明の水素結合性基を有する化合物は溶液または固体状態にて水素結合性基同士の相互作用により会合的相互作用することが好ましく、分子内相互作用でも分子間相互作用でも良いが、分子間相互作用である方がより好ましい。
【0067】
本発明の水素結合性基としては、好ましくは、−COOH、−CONHR11、−SOH、−SONHR12、−P(O)(OH)OR13、−OH、−SH、−NHR14、−NHCOR15、−NR16C(O)NHR17のいずれかで表される。ここで、R11、R12はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数(以下C数という)1〜20、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、n−ペンチル、ベンジル、3−スルホプロピル、4−スルホブチル、カルボキシメチル、5−カルボキシペンチル)、アルケニル基(好ましくはC数2〜20、例えば、ビニル、アリル)、アリール基(好ましくはC数6〜20、例えば、フェニル、2−クロロフェニル、4−メトキシフェニル、3−メチルフェニル、1−ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくはC数1〜20、例えば、ピリジル、チエニル、フリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピロリジノ、ピペリジノ、モルホリノ)、−COR18または−SO19を表し、R13〜R19はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはヘテロ環基を表す(以上好ましい例はR11、R12と同じ)。
【0068】
11として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、−COR18基、または−SO19基を表し。その際R18、R19としてはアルキル基またはアリール基が好ましい。
11としてより好ましくは水素原子、アルキル基、または−SO19基を表し、最も好ましくは水素原子を表す。
12として好ましくは水素原子、アルキル基、アリール基、−COR18基、または−SO19基を表し。その際R18、R19としてはアルキル基またはアリール基が好ましい。
12としてより好ましくは水素原子、アルキル基、または−COR18基を表し、最も好ましくは水素原子を表す。
13として好ましくは水素原子、アルキル基、またはアリール基を表し、より好ましくは水素原子を表す。
14として好ましくは水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
15として好ましくはアルキル基、またはアリール基を表す。
16として好ましくは水素原子を表し、R17として好ましくは水素原子、アルキル基、またはアリール基を表す。
【0069】
水素結合性基としてより好ましくは、−COOH、−CONHR11、−SONHR12、−NHCOR15、−NR16C(O)NHR17のいずれかであり、さらに好ましくは−COOH、−CONHR11、−SONHR12のいずれかであり、最も好ましく−COOH、−CONHのいずれかである。
【0070】
本発明の2光子吸収化合物はモノマー状態で用いても良いが、会合状態で用いても良い。
ここで、色素発色団同士が特定の空間配置に、共有結合又は配位結合、あるいは種々の分子間力(水素結合、ファン・デル・ワールス力、クーロン力等)などの結合力によって固定されている状態を、一般的に会合(又は凝集)状態と称している。
本発明の2光子吸収化合物は、分子間会合状態で用いても、2光子吸収を行うクロモフォアを分子内に2個以上有し、それらが分子内会合状態にて2光子吸収を行う状態で用いても良い。
【0071】
参考のため、以下に会合体の説明を行う。会合体については、例えばジェイムス(James)編「ザ・セオリー・オブ・ザ・フォトグラフィック・プロセス」(The Theory of the Photographic Process)第4版、マクミラン出版社、1977年、第8章、第218〜222頁、及び小林孝嘉著「J会合体(J-Aggregates)」ワールド・サイエンティフィック・パブリッシング社(World Scientific Publishing Co.Pte.Ltd.)、1996年刊)などに詳細な説明がなされている。
モノマーとは単量体を意味する。会合体の吸収波長の観点では、モノマー吸収に対して、吸収が短波長にシフトする会合体をH会合体(2量体は特別にダイマーと呼ぶ)、長波長にシフトする会合体をJ会合体と呼ぶ。
【0072】
会合体の構造の観点では、レンガ積み会合体において、会合体のずれ角が小さい場合はJ会合体と呼ばれるが、ずれ角が大きい場合はH会合体と呼ばれる。レンガ積み会合体については、ケミカル・フィジックス・レター(Chemical Physics Letters)、第6巻、第183頁(1970年)に詳細な説明がある。また、レンガ積み会合体と同様な構造を持つ会合体として梯子または階段構造の会合体がある。梯子または階段構造の会合体については、Zeitschrift fur Physikalische Chemie,第49巻、第324頁、(1941年)に詳細な説明がある。
【0073】
また、レンガ積み会合体以外を形成するものとして、矢はず(Herringbone)構造をとる会合体(矢はず会合体と呼ぶことができる)などが知られている。
矢はず(Herringbone)会合体については、チャールズ・ライヒ(Charles Reich)著、フォトグラフィック・サイエンス・アンド・エンジニアリング(Photographic Science and Engineering)第18巻、第3号、第335頁(1974年)に記載されている。矢はず会合体は、会合体に由来する2つの吸収極大を持つ。
【0074】
会合状態を取っているかどうかは、前記の通りモノマー状態からの吸収(吸収λmax、ε、吸収形)の変化により確認することができる。
本発明の化合物は会合により短波長化(H会合)しても長波長化(J会合)してもその両方でもいずれでも良いが、J会合体を形成することがより好ましい。
【0075】
化合物の分子間会合状態は様々な方法に形成することができる。
例えば溶液系では、ゼラチンのようなマトリックスを添加した水溶液(例えばゼラチン0.5wt%・化合物10−4M水溶液)、KClのような塩を添加した水溶液(例えばKCl5%・化合物2×10−3M水溶液)に化合物を溶かす方法、良溶媒に化合物を溶かしておいて後から貧溶媒を加える方法(例えばDMF−水系、クロロホルム−トルエン系等)等が挙げられる。
また膜系では、ポリマー分散系、アモルファス系、結晶系、LB膜系等の方法が挙げられる。
さらに、バルクまたは微粒子(μm〜nmサイズ)半導体(例えばハロゲン化銀、酸化チタン等)、バルクまたは微粒子金属(例えば金、銀、白金等)に吸着、化学結合、または自己組織化させることにより分子間会合状態を形成させることもできる。カラー銀塩写真における、ハロゲン化銀結晶上のシアニン色素J会合吸着による分光増感はこの技術を利用したものである。
分子間会合に関与する化合物数は2個であっても、非常に多くの化合物数であっても良い。
【0076】
以下に、本発明で用いられる2光子吸収化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0077】
【化4】

【0078】
【化5】

【0079】
【化6】

【0080】
【化7】

【0081】
【化8】

【0082】
【化9】

【0083】
【化10】

【0084】
【化11】

【0085】
【化12】

【0086】
【化13】

【0087】
【化14】

【0088】
【化15】

【0089】
次に本発明の2光子吸収重合性組成物における重合開始剤について説明する。 本発明の重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動(電子を与えるまたは電子を受ける)を行うことによりラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を発生し、重合性化合物の重合を開始することができる化合物のことである。
本発明の重合開始剤は好ましくは、ラジカルを発生して重合性化合物のラジカル重合を開始することができるラジカル重合開始剤と、ラジカルを発生することなく酸のみ発生して重合性化合物のカチオン重合のみを開始することができるカチオン重合開始剤と、ラジカル及び酸を両方発生して、ラジカル及びカチオン重合両方を開始することができる重合開始剤のいずれかである。
【0090】
本発明の重合開始剤としては好ましくは、以下の14個の系が挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、必要に応じて任意の比率で2種以上の混合物として用いてもよい。
【0091】
1)ケトン系重合開始剤
2)有機過酸化物系重合開始剤
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
8)ホウ酸塩系重合開始剤
9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
14)スルホン酸エステル系重合開始剤
【0092】
以下に好ましい上記の系について具体的に説明していく。
【0093】
1)ケトン系重合開始剤
【0094】
ケトン系重合開始剤としては、好ましくは芳香族ケトン、芳香族ジケトン等が挙げられる。
好ましい例としては例えば、ベンゾフェノン誘導体(例えばベンゾフェノン、ミヒラーズケトン)、ベンゾイン誘導体(例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン)、アセトイン誘導体(アセトイン、ピバロイン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、アシロインエーテル誘導体(例えばジエトキシアセトフェノン)、α−ジケトン誘導体(ジアセチル、ベンジル、4,4´−ジメトキシベンジル、ベンジルジメチルケタール、2,3−ボルナンジオン(カンファーキノン)、2,2,5,5−テトラメチルテトラヒドロ−3,4−フラン酸(イミダゾールトリオン))、キサトン誘導体(例えばキサントン)、チオキサントン誘導体(例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン)、ケトクマリン誘導体等が挙げられる。
【0095】
市販品としては例えば、チバガイギー社より上市されている下記式で表されるイルガキュアー184、651、907等が挙げられる。
【0096】
【化16】

【0097】
また、好ましい例としてキノン系重合開始剤(例えば、9,10−アンスラキノン、1−クロロアンスラキノン、2−クロロアンスラキノン、2−メチルアンスラキノン、2−エチルアンスラキノン、2−t−ブチルアンスラキノン、オクタメチルアンスラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナンスレンキノン、1,2−ベンズアンスラキノン、2,3−ベンズアンスラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジクロロナフトキノン、1,4−ジメチルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、2−フェニルアンスラキノン、2,3−ジメチルアンスラキノン、アンスラキノンアルファ−スルホン酸のナトリウム塩、3−クロロ−2−メチルアンスラキノン、レテネキノン、7,8,9,10−テトラヒドロナフタセンキノン、並びに1,2,3,4−テトラヒドロベンズ(a)アンスラセン−7,12−ジオン)も挙げられる。
【0098】
2)有機過酸化物系重合開始剤
【0099】
好ましい例としては、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、特開昭59−189340号公報および特開昭60−76503号公報記載の3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0100】
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
【0101】
ビスイミダゾール系重合開始剤にて好ましいのは、ビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール誘導体であり、例えばビス(2,4,5−トリフェニル)イミダゾール、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ビス(m−メトキシフェニル)−イミダゾールダイマー(CDM−HABI)、1,1′−ビイミダゾール、2,2′−ビス(o−クロロフェニル)−4,4′5,5′−テトラフェニル(o−Cl−HABI)、1H−イミダゾール、2,5−ビス(o−クロロフェニル)−4−〔3,4−ジメトキシフェニル〕−ダイマー(TCTM−HABI)などが挙げられる。
【0102】
ビスイミダゾール系重合開始剤は水素供与体と共に用いられることが好ましい。水素供与体として好ましくは、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、などが挙げられる。
【0103】
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
【0104】
トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(11)にて表される。
【0105】
【化17】

【0106】
一般式(11)中、R21、R22、R23はそれぞれ独立にハロゲン原子を表し、好ましくは塩素原子を表す。R24、R25はそれぞれ独立に水素原子、−CR212223、置換基を表す(好ましい例はZa上の置換基と同じ)。R24は好ましくは−CR212223を、より好ましくは−CCl基を表し、R25は好ましくは、 −CR212223、アルキル基、アルケニル基、アリール基である。
【0107】
トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤の具体例としては、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4’−トリフルオロメチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(p−メトキシフェニルビニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4'−メトキシ−1'−ナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどが例示される。好ましい例として、英国特許1388492号および特開昭53−133428号公報記載の化合物も挙げられる。
【0108】
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
【0109】
ジアゾニウム塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(12)にて表される。
【0110】
【化18】

【0111】
26はアリール基またはヘテロ環基を表し(以上好ましい例はZa上の置換基と同じ)、好ましくはアリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
27は置換基を表し(好ましい例はZa上の置換基と同じ)、a21は0〜5の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。a21が2以上の時、複数のR27は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良い。
21は、HX21がpKa4以下(水中、25℃)、好ましくは3以下、より好ましくは2以下の酸となる陰イオンで、好ましくは例えば、クロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどである。
【0112】
ジアゾニウム系重合開始剤の具体例としては例えば、ベンゼンジアゾニウム、4−メトキシジアゾニウム、4−メチルジアゾニウムの上記X21-塩などが挙げられる。
【0113】
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
【0114】
ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(13)にて表される。
【0115】
【化19】

【0116】
一般式(13)中、X21は一般式(12)と同義である。R28、R29はそれぞれ独立に置換基を表し(好ましい例はZa上の置換基と同じ)、好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、またはニトロ基を表す。a22、a23はそれぞれ独立に0〜5の整数を表し、好ましくは0〜1の整数を表す。a22、a23が各々、2以上の時、複数のR28、R29は同じでも異なっても良く、互いに連結して環を形成しても良い。
【0117】
ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤の具体例としては、ジフェニルヨードニウム、4,4'−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4'−ジメチルジフェニルヨードニウム、4,4' −t-ブチルジフェニルヨードニウム、3,3'−ジニトロジフェニルヨードニウム、フェニル(p−メトキシフェニル)ヨードニウム、ビス(p−シアノフェニル)ヨードニウムなどのクロリド、ブロミド、ヨージド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが挙げられる。
また、「マクロモレキュールス(Macromolecules)」、第10巻、p1307(1977年)に記載の化合物、特開昭58−29803号公報、特開平1−287105号公報、特願平3−5569号に記載されているようなジアリールヨードニウム塩類も挙げられる。
【0118】
7)スルホニウム塩系重合開始剤
【0119】
スルホニウム塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(14)にて表される。
【0120】
【化20】

【0121】
一般式(14)中、X21は一般式(12)と同義である。R30、R31、R32はそれぞれ独立にアルキル基、アリール基、ヘテロ環基(以上好ましい例はZa上の置換基と同じ)を表し、好ましくは、アルキル基、フェナシル基、アリール基を表す。
【0122】
スルホニウム塩系重合開始剤の具体例としては、トリフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジメチルフェナシルスルホニウム、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウム、4−ターシャリーブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス( 4−メトキシフェニル)スルホニウム、4−フェニルチオトリフェニルスルホニウム、ビス−1−(4−(ジフェニルスルホニウム)フェニル)スルフィドなどのスルホニウム塩のクロリド、ブロミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、ヘキサフルオロアンチモネート、パークロレート、トリフルオロメタンスルホネート、9,10−ジメトキシアントラセン−2−スルホネート、メタンスルホレート、ベンゼンスルホネート、4−トリフルオロメチルベンゼンスルホネート、トシレート、テトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどが例示される。
【0123】
8)ホウ酸塩系重合開始剤
【0124】
ホウ酸塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(15)にて表される。
【0125】
【化21】

【0126】
一般式(15)中、R33、R34、R35、R36はそれぞれ独立に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基を表し(以上好ましい例はZa上の置換基と同じ)、好ましくはアルキル基またはアリール基である。ただし、R33、R34、R35、R36の全てが同時にアリール基となることはない。X22は陽イオンを表す。
より好ましくはR33、R34、R35はアリール基であり、R36がアルキル基であり、最も好ましくはR33、R34、R35はフェニル基であり、R36はn−ブチル基である。
【0127】
ホウ酸塩系重合開始剤の具体例としては、テトラブチルアンモニウムn−ブチルトリフェニルボレート、テトラメチルアンモニウムsec−ブチルトリフェニルボレートなどが挙げられる。
【0128】
9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
【0129】
ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(16)にて表される。
【0130】
【化22】

【0131】
一般式(16)中、R28、R29、a22、a23は一般式(13)と同義であり、R33、R34、R35、R36は一般式(15)と同義である。
【0132】
ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤の具体例としては以下に示すI−1〜I−3が挙げられる。
【0133】
【化23】

【0134】
さらに、特開平3−704号公報記載のジフェニルヨードニウム(n−ブチル)トリフェニルボレートなどのヨードニウム有機ホウ素錯体も好ましい例として挙げられる。
【0135】
10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
【0136】
スルホニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤は好ましくは以下の一般式(17)にて表される。
【0137】
【化24】

【0138】
一般式(17)中、R33、R34、R35、R36は一般式(15)と同義である。R37、R38、R39はそれぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基であり(以上好ましい例はZa上の置換基に同じ)、より好ましくはアルキル基、フェナシル基、アリール基、アルケニル基である。R37、R38、R39は互いに連結して環を形成しても良い。R40は酸素原子もしくは孤立電子対を表す。
【0139】
スルホニウム有機ホウ素錯体塩系重合開始剤の具体例としては以下に示すI−4〜I−10が挙げられる。
【0140】
【化25】

【0141】
さらに、特開平5−255347号、特開平5−213861号記載のスルホニウム有機ホウ素錯体も好ましい例として挙げられる。
【0142】
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
【0143】
本発明の重合開始剤がカチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤の場合は、そのカチオン性2光子吸収化合物が本発明の2光子吸収化合物の役割を行っても良い。
カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤は好ましくは一般式(18)にて表される。
【0144】
【化26】

【0145】
一般式(18)中、(Dye−1)は非共鳴2光子吸収を行いかつカチオン性の化合物であり、好ましい例としては先述した通りである。R33、R34、R35、R36は一般式(15)と同義である。
【0146】
カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤の具体例としては例えば、以下に示すI−11、I−12、I−13、I−14等が挙げられる。
【0147】
【化27】

【0148】
また、特開昭62−143044号、62−150242号公報に記載の陽イオン染料−ボレート陰イオン錯体も具体例として挙げられる。
【0149】
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
【0150】
本発明の重合開始剤がアニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤の場合は、そのアニオン性2光子吸収化合物が本発明の2光子吸収化合物の役割を行っても良い。
アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩系重合開始剤は好ましくは一般式(19)にて表される。
【0151】
【化28】

【0152】
一般式(19)中、(Dye-2)は非共鳴2光子吸収を行いかつアニオン性の化合物であり、好ましい例としては先述した通りである。X23は一般式(12)のジアゾニウム塩のカチオン部分、一般式(13)のジアリールヨードニウム塩のカチオン部分、一般式(14)のスルホニウム塩のカチオン部分を表し(いずれも好ましい例は先述した通り)、好ましくは一般式(13)のジアリールヨードニウム塩のカチオン部分または一般式(14)のスルホニウム塩のカチオン部分である。
【0153】
アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩系重合開始剤の具体例としては例えば、以下に示すI−15〜I−32等が挙げられる。
【0154】
【化29】

【0155】
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
【0156】
金属アレーン錯体系重合開始剤としては、金属は鉄またはチタンが好ましい。 具体的には、特開平1−54440号、ヨーロッパ特許第109851号、ヨーロッパ特許第126712号および「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」、第30巻、第174頁(1986年)記載の鉄アレーン錯体、「オルガノメタリックス(Organometallics)」、第8巻、第2737頁(1989年)記載の鉄アレーン有機ホウ素錯体、「Prog.Polym.Sci、第21巻、7〜8頁(1996年)記載の鉄アレーン錯体塩、特開昭61−151197号公報に記載されるチタセノン類、などが好ましい例として挙げられる。
【0157】
14)スルホン酸エステル系重合開始剤
【0158】
スルホン酸エステル系重合開始剤としては、好ましくはスルホン酸エステル類、スルホン酸ニトロベンジルエステル類、イミドスルホネート類、等を挙げることができる。
【0159】
スルホン酸エステル類の具体例としては好ましくは、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリメシレート、スルホン酸ニトロベンジルエステル類の具体例としては好ましくは、o−ニトロベンジルトシレート、2,6−ジニトロベンジルトシレート、2',6'−ジニトロベンジル−4−ニトロベンゼンスルホネート、p−ニトロベンジル−9,10−ジエトキシアントラセン−2−スルホネート、2−ニトロベンジルトリフルオロメチルスルホネート、イミドスルホネート類の具体例として好ましくはN−トシルフタル酸イミド、9−フルオレニリデンアミノトシレート、α−シアノベンジリデントシルアミン、等が挙げられる。
【0160】
15)その他の重合開始剤
【0161】
前記1)〜14)以外の重合開始剤としては、4,4’−ジアジドカルコンのような有機アジド化合物、N−フェニルグリシンなどの芳香族カルボン酸、ポリハロゲン化合物(CI、CHI、CBrCI)、1−ベンジル−2−シアノピリジニウム塩ヘキサフルオロアンチモネートのようなピリジニウム塩、フェニルイソオキサゾロン、シラノールアルミニウム錯体、特開平3−209477号公報に記載されるアルミナート錯体などが挙げられる。
【0162】
ここで、本発明の重合開始剤は、
a)ラジカル重合を活性化できる重合開始剤
b)カチオン重合のみ活性化できる重合開始剤
c)ラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤
分類することができる。
【0163】
a)ラジカル重合を活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動(2光子吸収化合物に電子を与えるまたは2光子吸収化合物から電子を受ける)を行うことによりラジカルを発生し、重合性化合物のラジカル重合を開始することができる重合開始剤のことである。
前記の中では、以下の系がラジカル重合を活性化することができる重合開始剤系である。
1)ケトン系重合開始剤
2)有機過酸化物系重合開始剤
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
8)ホウ酸塩系重合開始剤
9)ジアリールヨードニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
10)スルホニウム有機ホウ素錯体系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
【0164】
ラジカル重合を活性化できる重合開始剤としてより好ましくは、
1)ケトン系重合開始剤
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
が挙げられ、さらに好ましくは、
3)ビスイミダゾール系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
11)カチオン性2光子吸収化合物有機ホウ素錯体系重合開始剤
12)アニオン性2光子吸収化合物オニウム塩錯体系重合開始剤
が挙げられる。
【0165】
カチオン重合のみ活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことによりラジカルを発生することなく酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を発生し、酸により重合性化合物のカチオン重合を開始することができる重合開始剤のことである。
【0166】
前記の系の中では、以下の系がカチオン重合のみを活性化することができる重合開始剤系である。
14)スルホン酸エステル系重合開始剤
【0167】
なお、カチオン重合開始剤としては、例えば「UV硬化;科学と技術(UV
CURING;SCIENCE AND TECHNOLOGY)」[p.23〜76、S.ピーター・パーパス(S.PETER PAPPAS)編集、ア・テクノロジー・マーケッティング・パブリケーション(A TECHNOLOGY MARKETING PUBLICATION)]及び「コメンツ・インオーグ.ケム.(Comments Inorg.Chem.)」[B.クリンゲルト、M.リーディーカー及びA.ロロフ(B.KLINGERT、M.RIEDIKER and A.ROLOFF)、第7巻、No.3、p109−138(1988)]などに記載されているものを用いることもできる。
【0168】
ラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤とは、非共鳴2光子吸収により生じた2光子吸収化合物の励起状態からエネルギー移動または電子移動を行うことによりラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)を同時発生し、発生するラジカルにより重合性化合物のラジカル重合を、また発生する酸により重合性化合物のカチオン重合を開始することができる重合開始剤のことである。
【0169】
前記の系の中では、以下の系がラジカル重合とカチオン重合を同時に活性化できる重合開始剤系である。
4)トリハロメチル置換トリアジン系重合開始剤
5)ジアゾニウム塩系重合開始剤
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
13)金属アレーン錯体系重合開始剤
【0170】
ラジカル重合とカチオン重合を活性化できる重合開始剤として好ましくは、
6)ジアリールヨードニウム塩系重合開始剤
7)スルホニウム塩系重合開始剤
を挙げることができる。
【0171】
次に本発明の2光子吸収重合性組成物における重合性化合物について説明する。
本発明の2光子吸収重合組成物においては、重合性化合物とバインダーの屈折率が異なることが好ましい。その結果、非共鳴2光子吸収により起こる光重合によって、レーザー焦点部と非焦点部にて重合性化合物及びその重合反応物とバインダーとの組成比の不均一化が起こり、3次元的屈折率変調が可能になる。
重合性化合物とバインダーの屈折率の違いは、重合性化合物の方がより屈折率が大きくても、バインダーの方がより屈折率が大きくてもどちらでも構わないが、重合性化合物の方がバインダーよりも屈折率が大きいことがより好ましい。
屈折率変調を大きくするためには重合性化合物とバインダーのバルクでの屈折率差は大きいことが好ましく、屈折率差は0.01以上であることが好ましく、0.05以上であることがより好ましく、0.1以上であることがさらに好ましい。
そのためには、重合性化合物またはバインダーのいずれか一方が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、残りの一方はそれらを含まないことが好ましく、より好ましくは、重合性化合物が少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、バインダーはそれらを含まないことが好ましい。
また、屈折率変調を大きくするためには、2光子重合組成物中、重合性化合物が移動しやすいことが好ましい。
【0172】
本発明の重合性化合物とは、2光子吸収化合物と重合開始剤に光を照射することにより発生したラジカルまたは酸(ブレンステッド酸またはルイス酸)により、付加重合を起こしてオリゴマーまたはポリマー化が可能な化合物のことである。
本発明の重合性化合物としては、単官能性でも多官能性でも良く、一成分でも多成分でも良く、モノマー、プレポリマー(例えばダイマー、オリゴマー)でもこれらの混合物でもいずれでも良いが、モノマーであることが好ましい。
また、その形態は、室温において液状であっても固体状であっても良いが、沸点100℃以上の液状であるか、沸点100℃以上の液状モノマーと固体状モノマーの混合物であることが好ましい。
【0173】
本発明の重合性化合物は、ラジカル重合可能な重合性化合物とカチオン重合可能な重合性化合物に大別される。
以下に、ラジカル重合可能な重合性化合物とカチオン重合可能な重合性化合物ごとに、A)屈折率:重合性化合物>バインダーの場合と、B)屈折率:バインダー>重合性化合物、の場合にわけて好ましい重合性化合物の例を説明する。
【0174】
A)屈折率:重合性化合物>バインダーの場合のラジカル重合性化合物の好ましい例
【0175】
この場合、ラジカル重合性化合物は屈折率が高いことが好ましく、本発明の高屈折率ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有し、さらに少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含む化合物が好ましく、また沸点100℃以上の液体であることが好ましい。
【0176】
具体的には以下の重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0177】
高屈折率ラジカル重合性モノマーとして好ましくは、スチレン、2−クロロスチレン、2−ブロモスチレン、メトキシスチレン、アクリル酸フェニル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、アクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチル、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジアクリレート又はジメタクリレート、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ポリオキシエチル−2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジメタクリレート、ビスフェノール−Aのジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、エトキシ化ビスフェノール−Aジアクリレート、ビスフェノール−Aのジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、ビスフェノール−Aのジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−Aのジ(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラクロロ−ビスフェノール−Aのジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−Aのジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、テトラブロモ−ビスフェノール−Aのジ(2−メタクリロキシエチル)エーテル、ジフェノール酸のジ(3−メタクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)エーテル、1,4−ベンゼンジオールジメタクリレート、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、1,3,5−トリイソプロペニルベンゼン、ベンゾキノンモノメタクリレート、アクリル酸2−〔β−(N−カルバジル)プロピオニロキシ〕エチル、フェニルチオアクリレート、4−ヨードフェニルアクリレートなどが挙げられ、より好ましくはアクリル酸2−フェノキシエチル、メタクリル酸2−フェノキシエチル、アクリル酸フェノールエトキシレートアクリレート、アクリル酸2−(p−クロロフェノキシ)エチル、アクリル酸p−クロロフェニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸2−フェニルエチル、ビスフェノール−Aのジ(2−アクリロキシエチル)エーテル、エトキシル化ビスフェノール−Aジアクリレート、並びにアクリル酸2−(1−ナフチロキシ)エチルなどが挙げられる。
【0178】
本発明において有用である重合性化合物は液体であるが、それらはN−ビニルカルバゾール、H.カモガワらによりJournal of Polymer Science:Polymer ChemistryEdition, 18巻、9〜18頁(1979)に開示されているようなエチレン系不飽和カルバゾールモノマー、アクリル酸2−ナフチル、アクリル酸ペンタクロロフェニル、アクリル酸2,4,6−トリブロモフェニル、ビスフェノール−Aジアクリレート、アクリル酸2−(2−ナフチロキシ)エチル、並びにN−フェニルマレイミドのような第2の固体重合性化合物と混合して使用してよい。
【0179】
B)屈折率:バインダー>重合性化合物の場合のラジカル重合性化合物の好ましい例
【0180】
この場合、ラジカル重合性化合物は屈折率が低いことが好ましく、本発明の低屈折率ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有し、さらにアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を一切含まないことが好ましい。
また沸点100℃以上の液体であることが好ましい。
具体的には以下の重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0181】
低屈折率ラジカル重合性モノマーとして好ましくは、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸イソ−ボルニル、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ヘキサメチレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、デカメチレングリコールジアクリレート、1,4−シクロヘキシルジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ポリオキシエチル化トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート及び米国特許3,380,831中開示されている類縁化合物、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパンジアクリレート(462)、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−プロパンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート、フマル酸ジアリル、アクリル酸1H,1H−パーフロロオクチル、メタクリル酸1H,1H,2H,2H−パーフロロオクチル、並びに1−ビニル−2−ピロリジノンなどが挙げられ、より好ましくは、デカンジオールジアクリレート、アクリル酸イソ−ボルニル、トリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、アクリル酸エトキシエトキシエチル、エトキシル化トリメチロールプロパンのトリアクリレートエステル、並びに1−ビニル−2−ピロリジンなどが挙げられる。
【0182】
有用である重合性化合物は液体であるが、それらは、第2の固体重合性化合物モノマー、例えばN−ビニルカプロラクタム等と混合して使用してよい。
【0183】
本発明のカチオン重合性化合物は、2光子吸収化合物とカチオン重合開始剤により発生した酸により重合が開始される化合物で、例えば「ケムテク・オクト・(Chemtech.Oct.)」[J.V.クリベロ(J.V.Crivello)、第624頁、(1980)]、特開昭62−149784号公報、日本接着学会誌[第26巻、No.5,第179−187頁(1990)]などに記載されているような化合物が挙げられる。
【0184】
本発明のカチオン重合性化合物として好ましくは、オキシラン環、オキセタン環、ビニルエーテル基、N−ビニルカルバゾール部位を分子中に少なくとも1個有する化合物であり、より好ましくはオキシラン環部位を有する化合物である。
【0185】
A)屈折率:重合性化合物>バインダーの場合のカチオン重合性化合物の好ましい例
【0186】
この場合、カチオン重合性化合物は屈折率が高いことが好ましく、本発明の高屈折率ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有し、さらに少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含む化合物が好ましく、少なくとも1個のアリール基を含むことが好ましい。また沸点100℃以上の液体であることが好ましい。
【0187】
具体的には以下の重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0188】
オキシラン環を有する高屈折率カチオン重合性モノマーとして好ましくは、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、ジブロモネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、4,4'−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、p−ブロモスチレンオキサイド、ビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール−A−ジグリシジルエーテル、ビスフェノール−F−ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0189】
オキセタン環を有する高屈折率カチオン重合性モノマーの具体例としては、前記のオキシラン環を有する高屈折率カチオン重合性モノマーの具体例のオキシラン環をオキセタン環に置き換えた化合物等が挙げられる。
【0190】
ビニルエーテル基部位を有する高屈折率カチオン重合性モノマーの具体例としては例えば、ビニル−2−クロロエチルエーテル、4−ビニルエーテルスチレン、ハイドロキノンジビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビスフェノールAジビニルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジビニルエーテル、ビスフェノールFジビニルエーテル、フェノキシエチレンビニルエーテル、p−ブロモフェノキシエチレンビニルエーテルなどが挙げられる。
【0191】
他に、N−ビニルカルバゾールも高屈折率カチオン重合性モノマーとして好ましい。
B)屈折率:バインダー>重合性化合物の場合のカチオン重合性化合物の好ましい例
【0192】
この場合、カチオン重合性化合物は屈折率が低いことが好ましく、本発明の低屈折率ラジカル重合性化合物としては、少なくとも1個のエチレン性不飽和二重結合を分子中に有し、さらにアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を一切含まない化合物が好ましい。また沸点100℃以上の液体であることが好ましい。
【0193】
具体的には以下の重合性モノマー及びそれらから成るプレポリマー(ダイマー、オリゴマー等)が挙げられる。
【0194】
オキシラン環を有する低屈折率カチオン重合性モノマーの具体例としては、グリセロールジグリシジルエーテル、グルセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールトリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールモノグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグルコールモノグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1, 6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3',4'−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチル−シクロヘキシルメチル)アジペート、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン、2,2−ビス[4−(2,3−エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]ヘキサフルオロプロパン、1,2,5,6−ジエポキシ−4,7−メタノペルヒドロインデン、2−(3, 4−エポキシシクロヘキシル)−3',4'−エポキシ−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレンジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4',5'−エポキシ−2'−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレングリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、1,3−ビス−(3’,4’−エポキシシクロヘキシルエチル)−1,1,3,3,−テトラメチルジシロキサンなどが挙げられる。
【0195】
オキセタン環を有する低屈折率カチオン重合性モノマーの具体例としては、前記のオキシラン環を有する低屈折率カチオン重合性モノマーの具体例のオキシラン環をオキセタン環に置き換えた化合物等が挙げられる。
【0196】
ビニルエーテル基部位を有する低屈折率カチオン重合性モノマーの具体例としては例えば、ビニル−n−ブチルエーテル、ビニル−t−ブチルエーテル、エチレングリゴールジビニルエーテル、エチレングリコールモノビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールモノビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルグリコール、ネオペンチルグリコールモノビニルグリコール、グリセロールジビニルエーテル、グリセロールトリビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパンモノビニルエーテル、トリメチロールプロパンジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジグリセロールトリビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、アリルビニルエーテル、2,2−ビス(4−シクロヘキサノール)プロパンジビニルエーテル、2,2−ビス(4−シクロヘキサノール)トリフルオロプロパンジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどが挙げられる。
【0197】
本発明の2光子吸収重合性組成物におけるバインダーは重合前の組成物の成膜性、膜厚の均一性、保存時安定性を向上させる等の目的で通常使用される。バインダーとしては、重合性化合物、重合開始剤、2光子吸収化合物と相溶性の良いものが好ましい。
バインダーとしては、溶媒可溶性の熱可塑性重合体が好ましく、単独又は互いに組合せて使用することができる。
【0198】
先述したように本発明のバインダーは重合性化合物と屈折率が違うことが好ましく、重合性化合物の方がより屈折率が大きくても、バインダーの方がより屈折率が大きくてもどちらでも構わないが、重合性化合物の方がバインダーよりも屈折率が大きいことがより好ましい。
そのためには、重合性化合物またはバインダーのいずれか一方が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、残りの一方はそれらを含まないことが好ましく、より好ましくは、重合性化合物が少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、バインダーはそれらを含まないことが好ましい。
【0199】
以下に、A)屈折率:重合性化合物>バインダーの場合と、B)屈折率:バインダー>重合性化合物、の場合にわけて好ましいバインダーの例を説明する。
【0200】
A)屈折率:重合性化合物>バインダーの場合のバインダーの好ましい例。
【0201】
好ましい低屈折率バインダーの具体例としては、アクリレート及びアルファ−アルキルアクリレートエステル及び酸性重合体及びインターポリマー(例えばポリメタクリル酸メチル及びポリメタクリル酸エチル、メチルメタクリレートと他の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸/アクリル酸ビニル、ポリ酢酸/メタクリル酸ビニル及び加水分解型ポリ酢酸ビニル)、エチレン/酢酸ビニル共重合体、飽和及び不飽和ポリウレタン、ブタジエン及びイソプレン重合体及び共重合体及びほぼ4,000〜1,000,000の重量平均分子量を有するポリグリコールの高分子量ポリ酸化エチレン、エポキシ化物(例えば、アクリレート又はメタクリレート基を有するエポキシ化物)、ポリアミド(例えば、N−メトキシメチルポリヘキサメチレンアジパミド)、セルロースエステル(例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートサクシネート及びセルロースアセテートブチレート)、セルロースエーテル(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルベンジルセルロース)、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール(例えば、ポリビニルブチラール及びポリビニルホルマール)、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、米国特許3,458,311中及び米国特許4,273,857中に開示されている酸含有重合体及び共重合体、並びに米国特許4,293,635中開示されている両性重合体バインダーなどが挙げられ、より好ましくはセルロースアセテートブチレート重合体、セルロースアセテートラクテート重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル/メタクリル酸及びメタクリル酸メチル/アクリル酸共重合体を含むアクリル系重合体及びインターポリマー、メタクリル酸メチル/アクリル酸又はメタクリル酸C2〜C4アルキル/アクリル酸又はメタクリル酸の3元重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、並びにそれらの混合物などが挙げられる。
【0202】
また、フッ素原子含有高分子も低屈折率バインダーとして好ましい。好ましいものとしては、フルオロオレフィンを必須成分とし、アルキルビニルエーテル、アリサイクリックビニルエーテル、ヒドロキシビニルエーテル、オレフィン、ハロオレフィン、不飽和カルボン酸およびそのエステル、およびカルボン酸ビニルエステルから選ばれる1種もしくは2種以上の不飽和単量体を共重合成分とする有機溶媒に可溶性の重合体である。好ましくは、その重量平均分子量が5,000から200,000で、またフッ素原子含有量が5ないし70質量%であることが望ましい。
【0203】
フッ素原子含有高分子におけるフルオロオレフィンとしては、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどが使用される。また、他の共重合成分であるアルキルビニルエーテルとしては、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテルなど、アリサイクリックビニルエーテルとしてはシクロヘキシルビニルエーテルおよびその誘導体、ヒドロキシビニルエーテルとしてはヒドロキシブチルビニルエーテルなど、オレフィンおよびハロオレフィンとしてはエチレン、プロピレン、イソブチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなど、カルボン酸ビニルエステルとしては酢酸ビニル、n−酪酸ビニルなど、また不飽和カルボン酸およびそのエステルとしては(メタ)アクリル酸、クロトン酸などの不飽和カルボン酸、および(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリルなどの(メタ)アクリル酸のC1 からC18のアルキルエステル類、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸のC2からC8のヒドロキシアルキルエステル類、およびN,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらラジカル重合性単量体はそれぞれ単独でも、また2種以上組み合わせて使用しても良く、更に必要に応じて該単量体の一部を他のラジカル重合性単量体、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリルなどのビニル化合物と代替しても良い。また、その他の単量体誘導体として、カルボン酸基含有のフルオロオレフィン、グリシジル基含有ビニルエーテルなども使用可能である。
【0204】
前記したフッ素原子含有高分子の具体例として、例えば水酸基を有する有機溶媒可溶性の「ルミフロン」シリーズ(例えばルミフロンLF200、重量平均分子量:約50,000、旭硝子社製)が挙げられる。この他にも、ダイキン工業(株)、セントラル硝子(株)、ペンウオルト社などからも有機溶媒可溶性のフッ素原子含有高分子が上市されており、これらも使用することができる。
【0205】
B)屈折率:バインダー>重合性化合物の場合のバインダーの好ましい例。
【0206】
好ましい高屈折率バインダーの具体例としては、ポリスチレン重合体、並びに例えばアクリロニトリル、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸及びそのエステルとの共重合体、塩化ビニリデン共重合体(例えば、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、ビニリデンクロリド/メタクリレート共重合体、塩化ビニリデン/酢酸ビニル共重合体)、ポリ塩化ビニル及び共重合体(例えば、ポリビニルクロリド/アセテート、塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体)、ポリビニルベンザル合成ゴム(例えば、ブタジエン/アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、メタクリレート/アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体、2−クロロブタジエン−1,3重合体、塩素化ゴム、スチレン/ブタジエン/スチレン、スチレン/イソプレン/スチレンブロック共重合体)、コポリエステル(例えば、式HO(CH)nOH(式中nは、2〜10の整数である)のポリメチレングリコール、並びに(1)ヘキサヒドロテレフタル酸、セバシン酸及びテレフタル酸、(2)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸、(3)テレフタル酸及びセバシン酸、(4)テレフタル酸及びイソフタル酸の反応生成物から製造されたもの、並びに(5)該グリコール及び(i)テレフタル酸、イソフタル酸及びセバシン酸及び(ii)テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸及びアジピン酸から製造されたコポリエステルの混合物)、ポリN−ビニルカルバゾール及びその共重合体、並びにH.カモガワらによりJournal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition,18巻、9〜18頁(1979)中開示されているようなカルバゾール含有重合などが挙げられ、より好ましくはポリスチレン、ポリ(スチレン/アクリロニトリル)、ポリ(スチレン/メタクリル酸メチル)、並びにポリビニルベンザル及びそれらの混合物などが挙げられる。
【0207】
本発明の2光子吸収重合性組成物中の各成分の割合は、一般的に組成物の全質量を基準に以下の%の範囲内であることが好ましい。
バインダー:好ましくは0〜90質量%、より好ましくは45〜75質量%、
重合性化合物:好ましくは5〜60質量%、より好ましくは15〜50質量%、
2光子吸収化合物:好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1 〜7質量%重合開始剤:好ましくは0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜7質量%
【0208】
本発明の2光子吸収重合性組成物は、必要により連鎖移動剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等の添加物を適宜用いることができる。
【0209】
本発明の2光子吸収重合性組成物は連鎖移動剤を用いる方が好ましい場合がある。好ましい連鎖移動剤としてはチオール類であり、例えば、2−メルカプトベンズオキサゾール、2−メルカプトベンズチアゾール、2−メルカプトベンズイミダゾール、4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−チオール、4,4−チオビスベンゼンチオール、p−ブロモベンゼンチオール、チオシアヌル酸、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、p−トルエンチオールなど、また、USP第4414312号や特開昭64−13144号記載のチオール類、特開平2−291561号記載のジスルフィド類、USP第3558322号や特開昭64−17048号記載のチオン類、特開平2−291560号記載のO−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類なども挙げられる。
特に重合開始剤が2,4,5−トリフェニルイミダゾリルダイマーの場合は連鎖移動剤を用いることが好ましい。
連鎖移動剤の使用量は、組成物全体に対して1.0〜30質量%が好ましい。
【0210】
本発明の2光子吸収重合性組成物には、保存時の重合を防止し、保存安定性を保つ目的で熱安定剤(熱重合禁止剤)を添加することができる。
有用な熱安定剤にはハイドロキノン、フェニドン、p−メトキシフェノール、アルキルおよびアリール置換されたハイドロキノンとキノン、カテコール、t−ブチルカテコール、ピロガロール、2-ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、フェノチアジン、およびクロルアニールなどが含まれる。Pazos氏の米国特許第4,168,982号中に述べられた、ジニトロソダイマ類もまた有用である。
熱安定剤は不飽和結合を有する化合物100質量部に対して0.001から5質量部の範囲で添加されるのが好ましい。
【0211】
可塑剤は2光子重合性組成物の接着性、柔軟性、硬さ、およびその他の機械的諸特性を変えるために用いられる。また、重合性化合物の移動を促進し、屈折率変調量を大きくする効果もある。
可塑剤としては例えば、トリエチレングリコールジカプリレート、トリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジエチルセバケート、ジブチルスベレート、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリクレジルホスフェート、ジブチルフタレート等が挙げられる。
【0212】
本発明の2光子吸収重合性組成物は通常の方法で調製されてよい。例えば上述の必須成分および任意成分をそのままもしくは必要に応じて溶媒を加えて調製することができる。
溶媒としては例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールジアセテート、乳酸エチル、セロソルブアセテートなどのエステル系溶媒、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジメチルセロソルブなどのセロソルブ系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、n−ブタノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール系溶媒、2,2,3,3−テトラフルオロプロパノールなどのフッ素系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、N、N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系溶媒、
2光子吸収重合性組成物は基体上に直接塗布することも、スピンコートすることもできるし、あるいはフィルムとしてキャストしついで通常の方法により基体にラミネートすることもできる。使用した溶媒は乾燥時に蒸発除去することができる。
【0213】
本発明の2光子吸収重合組成物はレーザー照射により屈折率変調記録を行った後、UVまたは可視光を全面照射して1光子吸収を起こし、定着処理を行うことが好ましい。またさらに40〜160℃の間で加熱を行うことも好ましい。
【実施例】
【0214】
以下に、本発明の具体的な実施例について実験結果を基に説明する。勿論、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0215】
[実施例1]
本発明の2光子吸収化合物の合成
【0216】
(1)D−73の合成
【0217】
本発明の2光子吸収化合物D−73は以下の方法により合成することができる。
【0218】
【化30】

【0219】
4級塩[1]14.3g(40mmol)を水50mlに溶解し、水酸化ナトリウム1.6g(40mmol)を加えて室温にて30分攪拌した。酢酸エチルで3回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮し、メチレンベース[2]のオイル9.2g(収率100%)を得た。
【0220】
ジメチルアミノアクロレイン[3]3.97g(40mmol)をアセトニトリル50mlに溶解し、0℃に冷却しながらオキシ塩化リン6.75g(44mmol)を滴下し、0℃にて10分間攪拌した。続いてメチレンベース[2]9.2gのアセトニトリル溶液を滴下し、35℃にて4時間攪拌した。氷水100mlに注いだ後、16gの水酸化ナトリウムを加え、10分間還流した。冷却後、酢酸エチルで3回抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥後濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:酢酸エチル:ヘキサン=1:10→1:3)で精製し、アルデヒド[4]のオイル4.4g(収率39%)を得た。
【0221】
シクロペンタノン0.126g(1.5mmol)、アルデヒド4 0.85g(3mmol)を脱水メタノール30mlに溶解し、暗所にて窒素雰囲気下還流した。均一になった後、ナトリウムメトキシド28%メタノール溶液0.69g(3.6mmol)を加え、さらに6時間還流した。冷却後析出した結晶をろ別しメタノールにて洗浄し、D−73の深緑色結晶0.50g(収率54%)を得た。なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0222】
(2)D−84の合成
【0223】
本発明の2光子吸収化合物D−84は以下の方法により合成することができる。
【0224】
【化31】

【0225】
シクロペンタノン33.6g(0.4mol)、DBN2ml、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール400gを5日間還流した。濃縮後アセトンを加えて冷却して結晶をロ別し、冷アセトンで洗浄し、[5]の結晶32.4g(収率42%)を得た。
【0226】
[5]0.78g(4mmol)、4級塩[6]2.78g(8mmol)、ピリジン20mlを窒素雰囲気下暗所にて4時間還流した。冷却後酢酸エチルを加えて結晶をロ別し、酢酸エチルで洗浄した。結晶をメタノールに分散してロ別し、目的のD−84の深青色結晶2.14g(収率56%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0227】
また、他の本発明の一般式(1)で表される2光子吸収化合物についてもD−73、D−84の合成法や、Tetrahedron.Lett.,42巻,6129頁,(2001年)等に記載の方法等に準じて合成することができる。
【0228】
(3)D−1の合成
【0229】
本発明の2光子吸収化合物D−1は以下の方法により合成することができる。
【0230】
【化32】

【0231】
ベンゾオキサゾール[7] 52.25g(0.2mol)、プロパンサルトン[8] 45.75g(0.375mol)を140℃にて4時間加熱攪拌した。冷却後アセトンを加えて結晶をロ別し、アセトンで洗浄して4級塩[9]70.42g(収率85%)を得た。
【0232】
4級塩[9]66.2g(0.2mol)、オルソプロピオン酸トリエチル[10]200ml、ピリジン200ml、酢酸80mlを120℃にて1時間加熱攪拌した。冷却後、酢酸エチルで3回デカンテション洗浄した。メタノール100mlに溶解して攪拌したところに、酢酸ナトリウム4.0g(50mmol)/メタノール20ml溶液を添加し、生じた結晶をロ別した。さらにメタノールに分散してロ別し、目的のD−1の朱色結晶31.36g(収率43.4%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0233】
(4)D−42の合成
【0234】
本発明の2光子吸収化合物D−42は以下の方法により合成することができる。
【0235】
【化33】

【0236】
4級塩[11]2.81g(10mmol)、[12]6.67g(30mmol)、無水酢酸10g、アセトニトリル50mlを30分間還流した。濃縮後酢酸エチルでデカンテーションし、アニル体[13]の粗製品を得た。
アニル体[13]の粗製品にチオバルビツール酸[14]2.00g(10mmol)、トリエチルアミン3.0g(30mmol)、エタノール100mlを加えて1時間還流した。濃縮後、シリカゲルカラムクロマトグラフィ(展開溶媒:クロロホルム:メタノール=20:1→10:1)にて精製し、さらにメタノール−イソプロピルアルコールにて再結晶することにより、目的のD−42の結晶2.55g(トータル収率41.3%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0237】
(5)D−56の合成
【0238】
本発明の2光子吸収化合物D−56は以下の方法により合成することができる。
【0239】
【化34】

【0240】
バルビツール酸[15]3.12g(20mmol)、[16]2.85g(10mmol)、トリエチルアミン4.1g(40mmol)をDMF30mlに溶解し、室温にて2時間攪拌した。希塩酸を加えて生じた結晶をロ別し、水で洗浄、乾燥し、目的のD−56の結晶2.99g(収率80.0%)を得た。
なお構造はNMRスペクトル、MSスペクトル、元素分析にて確認した。
【0241】
また、他のシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素等についても、F.M.Harmer著、Heterocyclic Compounds−Cyanine Dyes and Related Compounds、John&Wiley&Sons、New York、London、1964年刊、D.M.Sturmer 著、Heterocyclic Compounds− Special Topics in Heterocyclic Chemistry 、第18章、第14節、第482から515頁、John&Wiley&Sons 、New York、London等に記載の方法等に準じて合成することができる。
【0242】
ただし、本発明の2光子吸収化合物の合成法はこれに限定されるわけではない。
【0243】
本発明の重合開始剤、重合性化合物、バインダー、連鎖移動剤、熱安定剤、可塑剤、溶媒等のほとんどは市販されたおり、市販品をそのまま用いることができる。
【0244】
[実施例2]
[2光子吸収重合性組成物による3次元的屈折率変調評価]
【0245】
次に、本発明の2光子吸収重合組成物の非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調方法について述べる。用いるレーザー光源としては、本発明の2光子吸収化合物が有する線形吸収帯より長波長で、かつ、線形吸収の存在しない波長のレーザー光を用いる。具体的には、中心波長1000nm付近に発振波長を有する固体レーザーやファイバーレーザー、780nm付近の発振波長を有する半導体レーザー、固体レーザー、ファイバーレーザー、620〜680nmの範囲の発振波長を有する半導体レーザーや固体レーザーなどを用いることができる。
【0246】
以下の組成にて、本発明の2光子吸収重合性組成物の試料101を作成した。さらに、表1に記したように2光子吸収化合物、重合開始剤、重合性モノマー、バインダーを等質量置き換えることで試料102〜111を作成した。なお、連鎖移動剤については、試料101以外は試料106にのみ加えた。
試料はプレパラートガラス板上にバーコート塗布し、溶媒乾燥後、PETフィルムを載せて評価試料とした。膜厚は5〜10μmの範囲であった。
【0247】
<試料101:本発明の2光子吸収重合性組成物>
2光子吸収化合物:D−77 0.02g
重合開始剤: I−54 0.03g
重合性化合物(重合性モノマー): M−1 1.15g
バインダー:CAB 1.25g
連鎖移動剤:I−57 0.045g
溶媒:ジクロロメタン 7.8g
【0248】
【化35】

【0249】
【化36】

【0250】
【表1】

【0251】
本発明の2光子吸収重合性組成物の性能評価には、700nmから1000nmの波長範囲で測定可能なTi:sapphireパルスレーザー(パルス幅:100fs、繰り返し:80MHz、平均出力:1W、ピークパワー:100kW)を用い、本発明の2光子吸収重合性組成物に該レーザー光をNA0.6のレンズで集光して照射した。
照射波長は2光子吸収化合物の10−4M溶液において、2光子吸収断面積δが最大となる波長を用いた。
【0252】
その結果、本発明のいずれの試料においても、光重合後のレーザー焦点部と非焦点部にて屈折率変調(0.005以上)を確認することができた。
さらに、屈折率変調は明所及び暗所に1週間放置した後も同様に確認することができた。
また、いずれの試料においてもレーザー焦点位置を深さ方向に走査することにより、深さ方向、すなわち3次元方向の任意の場所を屈折率変調できることを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2光子吸収化合物、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーを有し、非共鳴2光子吸収により起こる光重合により3次元的屈折率変調が可能であることを特徴とする2光子吸収重合性組成物。
【請求項2】
該2光子吸収重合性組成物において、重合性化合物とバインダーの屈折率が異なり、レーザー光を用いた非共鳴2光子吸収により起こる光重合によって、レーザー焦点部と非焦点部にて重合性化合物及びその重合反応物とバインダーとの組成比の不均一化が起こることにより、3次元的屈折率変調が可能なことを特徴とする請求項1に記載の2光子吸収重合性組成物。
【請求項3】
該重合性化合物または該バインダーのいずれか一方が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、硫黄原子を含み、残りの一方はそれらを含まないことを特徴とする、請求項1または2記載の2光子吸収重合性組成物。
【請求項4】
該重合性化合物が、少なくとも1個のアリール基、芳香族ヘテロ環基、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、または硫黄原子を含み、該バインダーはそれらを含まないことを特徴とする、請求項3記載の2光子吸収重合性組成物。
【請求項5】
該重合性化合物の少なくとも1つが沸点100℃以上の液体であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
【請求項6】
該バインダーが該重合性化合物より低屈折率であり、バインダーがセルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマールおよびフッ素を含む高分子から選ばれる少なくとも1つのポリマーであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
【請求項7】
該2光子吸収化合物が有機色素であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
【請求項8】
該2光子吸収化合物がメチン色素またはフタロシアニン色素であることを特徴とする、請求項7記載の2光子吸収重合性組成物。
【請求項9】
該2光子吸収化合物がシアニン色素、メロシアニン色素、オキソノール色素、フタロシアニン色素または下記一般式(1)にて表される化合物であることを特徴とする、請求項8記載の2光子吸収重合性組成物。
一般式(1)
【化1】

式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表し、R、R、R、Rのうちのいくつかが互いに結合して環を形成してもよい。nおよびmはそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、nおよびmが2以上の場合、複数個のR、R、RおよびRは同一でもそれぞれ異なってもよい。ただし、n、m同時に0となることはない。XおよびXは独立に、アリール基、ヘテロ環基、または一般式(2)で表される基を表す。
一般式(2)
【化2】

式中、Rは水素原子または置換基を表し、Rは水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表し、Zは5または6員環を形成する原子群を表す。
【請求項10】
該シアニン色素が下記一般式(3)にて、メロシアニン色素が下記一般式(4)にて、オキソノール色素が一般式(5)にて表されることを特徴とする、請求項9記載の2光子吸収重合性組成物。
【化3】

一般式(3)〜(5)中、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員の含窒素複素環を形成する原子群を表わし、Za、Za及びZaはそれぞれ5員または6員環を形成する原子群を表わす。Ra、Ra及びRaはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。
Ma〜Ma14はそれぞれ独立にメチン基を表わし、置換基を有していても良く、他のメチン基と環を形成しても良い。na、na及びnaはそれぞれ0または1であり、ka、及びkaはそれぞれ0〜3の整数を表わす。kaが2以上の時、複数のMa、Maは同じでも異なってもよく、kaが2以上の時、複数のMa12、Ma13は同じでも異なってもよい。kaは0〜8の整数を表わし、kaが2以上の時、複数のMa10、Ma11は同じでも異なってもよい。
CIは電荷を中和するイオンを表わし、yは電荷の中和に必要な数を表わす。
【請求項11】
前記重合開始剤が少なくとも1種のラジカルを発生する重合開始剤を含み、重合性化合物が少なくとも1種のラジカルにより重合するラジカル重合性化合物を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
【請求項12】
該重合開始剤が少なくとも1種の酸を発生する重合開始剤を含み、重合性化合物が少なくとも1種の酸により重合するカチオン重合性化合物を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の2光子吸収重合性組成物を含むことを特徴とする3次元光記録媒体。

【公開番号】特開2009−149909(P2009−149909A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74365(P2009−74365)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【分割の表示】特願2003−146527(P2003−146527)の分割
【原出願日】平成15年5月23日(2003.5.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】