説明

非対称に置換されたホスホラン触媒

本発明は、一般式(I)の新規配位子系に基づいている。これらの配位子系は、遷移金属で触媒された不斉合成において有利に使用されることができる。同様に、こうして製造された遷移金属錯体、前記配位子を製造する方法及び不斉合成における錯体の使用が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のビスホスファン配位子及びホスホラン型の触媒に関する。特に、本発明は、一般式(I)の配位子に関する。
【0002】
【化1】

【0003】
鏡像体豊富化した(enantiomerically enriched)キラルな配位子は、不斉合成及び不斉触媒反応において使用される。ここでは、配位子の電子的性質及び立体化学的性質が、個々の触媒反応の問題に最適に調節されることが本質的である。これらの種類の化合物の成功の重要な一面は、これらの配位子系による金属中心の特に不斉な環境の生成に帰する。キラリティーの効率的な移動のためのそのような環境を利用するために、不斉誘導の固有制限として配位子系のフレキシビリティーを制御することは有利である。
【0004】
リン含有配位子の物質の種類の中で、環状ホスフィン、特にホスホランは、特別な重要性を達成している。二座のキラルなホスホランは、例えば、不斉触媒反応において使用されるDuPhos及びBPE配位子である(Cobley, Christopher J.; Johnson, Nicholas B.; Lennon, Ian C.; McCague, Raymond; Ramsden, James A.; Zanotti-Gerosa, Antonio. The application of DuPHOS rhodium(I) catalysts for commercial scale asymmetric hydrogenation. Asymmetric Catalysis on Industrial Scale (2004), 269-282)。
【0005】
しかしながら、理想的な場合には、多様に変性可能でキラルな配位子の基本骨格が入手可能であり、この基本骨格はその立体的性質及び電子的性質に関して幅広い範囲内で変更されることができる。
【0006】
国際公開(WO)第03/084971号パンフレットには、特に水素化において、極めて明確な結果が達成されることができる配位子及び触媒系が紹介されている。特に、無水マレイン酸及び環状マレイミドから誘導されているタイプの触媒は、キラルな配位子としてのそれらの性質において、使用される錯体の中心原子の周囲に、これらの錯体が一部の水素化のためのこれまで公知の最良の水素化触媒よりも優れているように良好な環境を明らかに生成する。
【0007】
非対称に置換されたビスホスホラン配位子及び触媒は、例えば、Pringle他により及び欧州特許出願公開(EP)第1124833号明細書、欧州特許出願公開(EP)第1243591号明細書、欧州特許出願公開(EP)第1318155号明細書及び欧州特許出願公開(EP)第1318156号明細書に紹介されている。これらは、公知のDuPhos配位子から実質的に誘導されるか(Dalton Transactions 2004, 12, 1901-5)、又は橋としてフレキシブルな−(CH2)−単位を有する。
【0008】
しかしながら、触媒が、全ての触媒反応の問題に等しく有効に適用できないことも知られている。むしろ、実情は、特定の触媒が、選択された触媒反応プロセスに有効に使用されることができ、かつその他の目的にあまり適していないようである。故に、できるだけ多数の触媒反応の問題を最適に取り扱うことができるように用意できる触媒構造の高い多様性を有することが依然として重要である。
【0009】
故に、本発明の課題は、エナンチオ選択的な触媒反応において成功裏に使用されることができるさらなる配位子構造を挙げることである。前記配位子は、容易に入手可能な前駆物質化合物から単純な方法で製造可能であるべきであり、工業用途において安定であるべきであり、かつ、経済的及び生態学的な観点から、公知の先行技術の触媒よりも優れているべきである。
【0010】
この課題は、特許請求の範囲に従って解決される。請求項1〜3は配位子系に関する。請求項4及び5は、本発明による錯体に向けられている。請求項6は、本発明による配位子を製造する好ましい態様に関するものであり、かつ請求項7〜15は、不斉合成における記載された触媒の使用を含む。
【0011】
一般式(I)
【化2】

[式中、
*は立体中心を表し、
3及びR4は、それぞれ独立して、
(C1〜C8)−アルキル、(C1〜C8)−アルコキシ、HO−(C1〜C8)−アルキル、(C2〜C8)−アルコキシアルキル、(C6〜C18)−アリール、(C7〜C19)−アラルキル、(C3〜C18)−ヘテロアリール、(C4〜C19)−ヘテロアラルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C6〜C18)−アリール、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C18)−ヘテロアリール、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル−(C1〜C8)−アルキルからなる群から選択されており、
7及びR8は、それぞれ独立して、H、R3であるか、又は
3及びR7及び/又はR7及びR8及び/又はR8及びR4は、(C3〜C5)−アルキレン橋を介して互いに結合されており、
1及びR2は、それぞれ独立して、(C1〜C8)−アルキル、(C6〜C18)−アリール、(C7〜C19)−アラルキル、(C3〜C18)−ヘテロアリール、(C4〜C19)−ヘテロアラルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C6〜C18)−アリール、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C18)−ヘテロアリール、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル−(C1〜C8)−アルキル、(C1〜C8)−アルキル−O、(C6〜C18)−アリール−O、(C7〜C19)−アラルキル−O、(C3〜C8)−シクロアルキル−O、(C1〜C8)−アルキル−NH、(C6〜C18)−アリール−NH、(C7〜C19)−アラルキル−NH、(C3〜C8)−シクロアルキル−NH、((C1〜C8)−アルキル)2N、((C6〜C18)−アリール)2N、((C7〜C19)−アラルキル)2N、((C3〜C8)−シクロアルキル)2Nであり、
AはC2橋であり、ここで、双方の炭素原子はsp2混成を有し、かつヘテロ原子を有していてもよい、3員環系、4員環系、5員環系、6員環系、7員環系又は8員環系の一部分を形成し、かつこの環系は、Aが1,2−橋かけされたフェニル環である場合には、フッ素、塩素、CF3CO、CF3SO2、CF3、Cn2n+1からなる群から選択される少なくとも1つの電子吸引基により置換されている]で示される構造を有する配位子系を提供することにより、挙げた課題に対する解決手段は、極めて単純であるが、しかし同じように有利な方法で達成される。記載された配位子系は、不斉合成において単純な方法で使用されることができ、かつ例えば、多様な有機誘導体、例えばβ−アセトアミドケイ皮酸エステルの不斉水素化において、良好ないし極めて良好な結果を提供する。
【0012】
本発明による配位子系の部分系Aが、次のホスホラン部分構造により片側で置換されている場合が有利であり、ここで、nはこの場合に1、2又は3の値を想定することができ、かつRは、(C1〜C8)−アルキルであってよい:
【化3】

【0013】
橋かけする分子部分Aのためには、当業者は、当該目的に有用な任意の基を原則的には使用することができ、但し、前記基がC2橋を有し、ここで双方の炭素原子がsp2混成を有し、かつ前記基が、3員環系、4員環系、5員環系、6員環系、7員環系又は8員環系の一部分を形成する。故に、A基としての1,2−橋かけするフェニル環に関する上記で扱った制限が当てはまる。上記で扱った環系は、場合により、1個又はそれ以上のヘテロ原子を有していてよい。有用なヘテロ原子は、特に酸素原子、硫黄原子又は窒素原子である。前記のsp2混成に加えて、それらは、さらに不飽和を有していてよく、かつ芳香族性であってよい。これらは、別の基、特に、(C1〜C8)−アルキル、(C1〜C8)−アルコキシ、HO−(C1〜C8)−アルキル、(C2〜C8)−アルコキシアルキル、(C6〜C18)−アリール、(C7〜C19)−アラルキル、(C3〜C18)−ヘテロアリール、(C4〜C19)−ヘテロアラルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C6〜C18)−アリール、
(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C18)−ヘテロアリール、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル−(C1〜C8)−アルキルからなる群から選択される基によりモノ置換又はポリ置換されていてよい。
【0014】
前記環系は、さらに加えて、環系上に負の誘起効果を作用させる1つ又はそれ以上の置換基を有していてもよい。負の誘起効果は、電子密度が環系からσ結合を介して吸引され、ひいては部分環系Aの電子密度も低下されることをもたらす。これは、この部分系Aに結合されたリン原子の塩基性に決定的な影響を及ぼす。負の誘起効果を有するそのような置換基は、特に、原子又は原子の基から形成され、これらは、単独で又は一緒になって、炭素原子よりも大きい電気陰性度を有し、故に電子吸引基である。これらは、有利には、フッ素、塩素、CF3CO、CF3SO2、CF3、Cn2n+1からなる群から選択されるものである。
【0015】
故に、有利な部分環系Aは、次のタイプの環系に従って形成されるものである:
【化4】

【0016】
この環系中で、n及びmは、それぞれ独立して、0又は1であってよく、かつY1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立して、NH、NR、O、S、CH2、C=O、C=S、C=NH、C=NR、S=O、P=Oからなる群から選択されており、及び/又はY1及びY2又はY2及びY3又はY3及びY4は場合により、モノ不飽和又はポリ不飽和の(C3〜C5)−アルキレン橋であってよく、ここで、R″は、(C1〜C8)−アルキル、(C6〜C18)−アリール、(C7〜C19)−アラルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C6〜C18)−アリール、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル−(C1〜C8)−アルキルであるか、フッ素、塩素、CF3CO、CF3SO2、CF3、Cn2n+1からなる群から選択される電子吸引基であり、かつ破線は、可能な別の二重結合を意味してよい。当該環系が、1,2−橋かけされたフェニル環である場合には、冒頭で説明された制限が参照される。Rは以下に定義される通りである。
【0017】
また、有利であるのは、Aの代わりに、
【化5】

[式中、
Qは、O、NH、NH−NH、NR−NR、NOR、NR、S、CH2又はC=C(R)2であり、
Rは、H、(C1〜C8)−アルキル、(C6〜C18)−アリール、(C7〜C19)−アラルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C6〜C18)−アリール、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル−(C1〜C8)−アルキルであり、
R′は、R又はR″′であり、かつ
R″′は、フッ素、塩素、CF3CO、CF3SO2、CF3、Cn2n+1からなる群から選択される1つ又はそれ以上の電子吸引基であり、
ここでR′及びR″′はそれぞれ、環系中で独立して、1又は1より多く8まで存在していてよい]からなる群から選択される環系を有するそのような本発明による配位子系である。
【0018】
一般式(I)中に示され、かつ*で示されている炭素原子は、当該の分子にキラリティーを付与する立体中心を表す。しかしながら、*で示された炭素原子に加えて、ホスホラン環中の別の炭素原子の全部までが、本発明の配位子系中で立体中心を形成することも可能である。特に適した化合物は、できるだけ多い鏡像体豊富化した形で存在する一般式(I)の化合物である。これらは、触媒反応の基礎となるプロセスにおいて基質にキラル誘導を移すのに特に適しており、故に、生成物中にも高い鏡像体豊富化度を生成することができる。特に有利な化合物は、>90%、より好ましくは91%、92%、93%、94%及び最も好ましくは≧95%の鏡像体豊富化度を有する一般式(I)の化合物である。極めて好ましくは、一般式(I)の化合物は、>98%の鏡像体豊富化度を有していてもよい。
【0019】
本発明はまた、式(I)の本発明による配位子及び少なくとも1つの遷移金属を含有する錯体を提供する。
適した錯体、特に一般式(V)の錯体は、式(V)
[Mxyzq]Ar (V)
で示される本発明による配位子を含有し、ここで、一般式(V)中で、Mは、遷移金属中心であり、Lは、同じか又は異なる、配位する有機又は無機の配位子であり、かつPは、式(I)の本発明による二座の有機リン配位子であり、Sは、配位溶剤分子を表し、かつAは、配位しないアニオンの当量(equivalents)を表し、ここで、x及びyは、1に等しいか又は1よりも大きい整数を表し、z、q及びrは、0に等しいか又は0よりも大きい整数を表す。
【0020】
金属中心の利用できる配位中心によるy+z+qの総和の上限が存在するが、しかし必ずしも全ての配位サイトが占有される必要はない。個々の遷移金属中心の周囲でひずんでいてもよい、八面体、擬八面体、四面体、擬四面体、正方平面の配位圏を有する錯体が好ましい。そのような錯体中のy+z+qの総和は、6に等しいか又は6未満である。
【0021】
本発明による錯体は、少なくとも1個の遷移金属原子又はイオン、特にパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、コバルト、ニッケル又は銅の原子又はイオンを、触媒反応上、関連性のある任意の酸化状態で含有する。
【0022】
4個よりも少ない金属中心を有する錯体が好ましく、1個又は2個の金属中心を有するものが特に好ましい。金属中心は、多様な金属原子及び/又は金属イオンにより占有されていてよい。
【0023】
そのような錯体の好ましい配位子Lは、ハロゲン化物、特にCl、Br及びI、ジエン、特にシクロオクタジエン、ノルボルナジエン、オレフィン、特にエチレン及びシクロオクテン、アセタト、トリフルオロアセタト、アセチルアセトナト、アリル、メタリル、アルキル、特にメチル及びエチル、ニトリル、特にアセトニトリル及びベンゾニトリル、並びにカルボニル及びヒドリド配位子である。
【0024】
好ましい配位溶剤Sは、エーテル、アミン、特にトリエチルアミン、アルコール、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、及び芳香族化合物、特にベンゼン及びクメン、DMF又はアセトンである。
【0025】
好ましい配位しないアニオンAは、トリフルオロ酢酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、BF4、ClO4、PF6、SbF6及びBAr4であり、ここでArは(C6〜C18)−アリールであってよい。
【0026】
個々の錯体は、個々の成分M、P、L、S及びAの異なる分子、原子又はイオンを含有していてよい。
【0027】
イオン錯体の中では、Pが式(I)の本発明による配位子を表す[RhP(ジエン)]+-型の化合物が好ましい。
【0028】
本発明はまた、一般式(II)又は(II′)
【化6】

[式中、
Aは、冒頭で定義された通りであってよく、
Xは、逃核脱離基(nucleofugic leaving group)であり、かつ
1及びR2は、それぞれ、上記で定義された通りであってよい]で示される化合物を、一般式(III)
【化7】

[式中、R3、R4、R7及びR8は、それぞれ、上記で定義された通りであってよく、かつ
Mは、Li、Na、K、Mg、Caからなる群からの金属であってよいか、又はオルガノシリル基である]で示される化合物と、(II)又は(II′)のX基が置換されるように反応させ、かつ欠けているホスフィン基PR12が、その後に、(III)と(II)との反応の生成物中へ導入されることによって、異なって置換されたリン原子を有する本発明による配位子を製造する方法も提供する。
【0029】
出発化合物の製造及び当該反応における条件に関して、次の文献が参照される(独国特許(DE)第10353831号明細書;国際公開(WO)第03/084971号パンフレット;欧州特許(EP)第592552号明細書;米国特許(US)第5329015号明細書)。
【0030】
配位子及び錯体の可能な一製造変法は、次の図式に詳説されている:
【化8】

【0031】
一例としてちょうど示された本発明による金属−配位子錯体の製造は、金属塩又は相応する前駆錯体(precomplex)と、一般式(I)の配位子との反応により、インサイチューで行われることができる。そのうえ、金属−配位子錯体は、金属塩又は適切な前駆錯体と、一般式(I)の配位子との反応、及びその後の単離により得られることができる。
【0032】
そのような金属塩の例は、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物、金属シアン化物、金属硝酸塩、金属酢酸塩、金属アセチルアセトナート、金属ヘキサフルオロアセチルアセトナート、金属テトラフルオロホウ酸塩、金属ペルフルオロ酢酸塩又は金属トリフラート、特にパラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、コバルト、ニッケル又は銅の金属塩である。
【0033】
前駆錯体の例は次のものである:
シクロオクタジエンパラジウム塩化物、シクロオクタジエンパラジウムヨウ化物、
1,5−ヘキサジエンパラジウム塩化物、1,5−ヘキサジエンパラジウムヨウ化物、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)塩化物、ビス(アセトニトリル)パラジウム(II)臭化物、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)塩化物、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)臭化物、ビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)ヨウ化物、ビス(アリル)パラジウム、ビス(メタリル)パラジウム、アリルパラジウム塩化物二量体、メタリルパラジウム塩化物二量体、テトラメチルエチレンジアミンパラジウム二塩化物、テトラメチルエチレンジアミンパラジウム二臭化物、テトラメチルエチレンジアミンパラジウム二ヨウ化物、テトラメチルエチレンジアミンパラジウムジメチル、
シクロオクタジエン白金塩化物、シクロオクタジエン白金ヨウ化物、1,5−ヘキサジエン白金塩化物、
1,5−ヘキサジエン白金ヨウ化物、ビス(シクロオクタジエン)白金、エチレントリクロロ白金酸カリウム、
シクロオクタジエンロジウム(I)塩化物二量体、ノルボルナジエンロジウム(I)塩化物二量体、
1,5−ヘキサジエンロジウム(I)塩化物二量体、トリス(トリフェニル−ホスフィン)ロジウム(I)塩化物、
ヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)塩化物、
ビス(ノルボルナジエン)ロジウム(I)過塩素酸塩、ビス(ノルボルナジエン)ロジウム(I)テトラフルオロホウ酸塩、ビス(ノルボルナジエン)ロジウム(I)トリフラート、
ビス(アセトニトリルシクロオクタジエン)ロジウム(I)過塩素酸塩、ビス(アセトニトリルシクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロホウ酸塩、ビス(アセトニトリルシクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフラート、
ハロゲン化物アニオン、トリフラートアニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、過塩素酸アニオンとのビス(アセトニトリルシクロオクタジエン)ロジウム(I)過塩素酸塩、ビス(アセトニトリルシクロオクタジエン)ロジウム(I)テトラフルオロホウ酸塩、ビス(アセトニトリルシクロオクタジエン)ロジウム(I)トリフラート、1,5−シクロオクタジエンロジウム(I)アセトアセトナート塩、
シクロペンタジエンロジウム(III)塩化物二量体、ペンタメチルシクロペンタジエンロジウム(III)塩化物二量体、
(シクロオクタジエン)Ru(η3−アリル)2、((シクロオクタジエン)Ru)2−(酢酸塩)4、((シクロオクタジエン)Ru)2(トリフルオロ酢酸塩)4、RuCl2(アレーン)二量体、(RuアレーンI22、トリス(トリフェニルホスフィン)−ルテニウム(II)塩化物、シクロオクタジエンルテニウム(II)塩化物、OsCl2(アレーン)二量体、シクロオクタジエンイリジウム(I)塩化物二量体、ビス(シクロオクテン)イリジウム(I)塩化物二量体、
ビス(シクロオクタジエン)ニッケル、(シクロドデカトリエン)ニッケル、トリス(ノルボルネン)ニッケル、ニッケルテトラカルボニル、ニッケル(II)アセチルアセトナート、
(アレーン)銅トリフラート、(アレーン)銅過塩素酸塩、(アレーン)銅トリフルオロ酢酸塩、コバルトカルボニル。
【0034】
特にRu、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cuの群からの、金属元素の1つ又はそれ以上の金属及び一般式(I)の配位子をベースとする錯体は、既に触媒でありうるか、又は特にRu、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cuの群からの、金属元素の1つ又はそれ以上の金属をベースとする本発明による触媒を製造するのに使用されることができる。
【0035】
本発明による全ての錯体は、不斉反応のための触媒として特に適している。不斉水素化、ヒドロホルミル化、転位、アリル位アルキル化、シクロプロパン化、ヒドロシリル化、ヒドリド移動(hydride transfer)反応、ヒドロホウ素化、ヒドロシアン化、ヒドロカルボキシル化、アルドール反応又はヘック(Heck)反応のためのそれらの使用が特に好ましい。
例えば、高い活性及び選択率を有するC=C、C=O又はC=N結合の、不斉水素化、及びヒドロホルミル化におけるそれらの使用が極めて特に好ましい。特に、ここでは、一般式(I)の配位子が、それらの単純で幅広い変性可能性によって立体的及び電子的に関して個々の基質及び接触反応に極めて効率的に調節されることができることが有利であることが見出されている。
【0036】
プロキラルなN−アシル化されたβ−アミノアクリル酸又はそれらの誘導体のE/Z混合物を水素化するための本発明による錯体又は触媒の使用が特に好ましい。ここで使用されるN−アシル基は、好ましくは、アセチル、ホルミル又はウレタン保護基又はカルバモイル保護基であってよい。これらの水素化基質のE及びZ誘導体の双方が、類似して良好な鏡像体過剰率で水素化されることができるので、予め分離することなく、全体として卓越した鏡像体豊富化度を有するプロキラルなN−アシル化されたβ−アミノアクリル酸又はそれらの誘導体のE/Z混合物を水素化することが可能である。使用すべき反応条件に関しては、欧州特許(EP)第1225166号明細書が参照される。ここで挙げた触媒は、同等の方法で使用されることができる。
一般的に、β−アミノ酸前駆物質(酸又はエステル)は、文献の方法により製造される。前記化合物の合成において、Zhang他(G. Zhu, Z. Chen, X. Zhang J. Org. Chem. 1999, 64, 6907-6910)及びNoyori他(W. D. Lubell, M. Kitamura, R. Noyori Tetrahedron: Asymmetry 1991, 2, 543-554)及びMelillo他(D. G. Melillo, R. D. Larsen, D. J. Mathre, W. F. Shukis, A. W. Wood, J. R. Colleluori J. Org. Chem. 1987 52, 5143-5150)の一般的な方法に従うことが可能である。相応する3−ケトカルボン酸エステルから出発して、酢酸アンモニウムとの反応及びその後のアシル化は、所望のプロキラルなエナミドを提供する。
水素化生成物は、当業者に知られる(α−アミノ酸に類似した)手段によりβ−アミノ酸に変換されることができる。
【0037】
原則的には、配位子及び錯体/触媒は、移動水素化の形で当業者に知られた方法で使用される("Asymmetric transferhydrogenation of C=O and C=N bonds", M. Wills他 Tetrahedron: Asymmetry 1999, 10, 2045; "Asymmetric transferhydrogenation catalyzed by chiral ruthenium complexes" R. Noyori他 Acc. Chem. Res. 1997, 30, 97; "Asymmetric catalysis in organic synthesis", R. Noyori, John Wiley & Sons, New York, 1994, p.123; "Transition metals for organic Synthesis" M. Beller, C. Bolm編, Wiley-VCH, Weinheim, 1998, Vol. 2, p. 97; "Comprehensive Asymmetric Catalysis" Jacobsen, E.N.; Pfaltz, A.; Yamamoto, H.編, Springer-Verlag, 1999)が、しかし元素状水素を用いる古典的な方法で行われることもできる。それに応じて、この方法は、水素ガスでの水素化を用いるか又は移動水素化を用いて、操作することができる。
【0038】
エナンチオ選択的水素化において、好ましくは、水素化すべき基質及び錯体/触媒を溶剤中に溶解させて行われる。上記で示した通り、この触媒は好ましくは、基質が添加される前に反応によるか又は前水素化により、キラルな配位子の存在でプレ触媒(precatalyst)から形成される。
【0039】
その後に、水素化は、0.1〜100bar、好ましくは0.5〜10barの水素圧で行われる。
水素化における温度は、反応が、所望の鏡像体過剰率で十分に迅速に進行するが、しかし副反応が、できるだけ回避されるように選択されるべきである。有利に、操作は、−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃の温度で行われる。
基質対触媒の比は、経済的な配慮により決定される。前記反応は、できるだけ少ない錯体/触媒濃度で十分に迅速に進行すべきである。しかしながら、50 000:1〜10:1、好ましくは1000:1〜50:1の基質/触媒比で操作することが好ましい。本発明に従って効率的に水素化可能な別の基質は、α−エナミド、イタコナート、保護されていないβ−エナミンである。
【0040】
国際公開(WO)第0384971号パンフレットに従って、膜反応器中で実施される接触法においてポリマー拡大された(polymer-enlarged)配位子又は錯体を使用することが有利である。この場合に、この装置中でバッチ方式及び半連続方式に加えて可能である連続方式は、十字流ろ過方式(図2)において又は全量ろ過(図1)として所望の通り実施されることができる。
双方の変法は原則的に先行技術に記載されている(Engineering Processes for Bioseparations, L. R. Weatherley編, Heinemann, 1994, 135-165; Wandrey et al., Tetrahedron Asymmetry 1999, 10, 923-928)。
【0041】
錯体/触媒が、膜反応器中での使用に適していると思われるためには、多種多様な基準を満足しなければならない。まず最初に、ポリマー拡大された錯体/触媒のための適切に高い保持容量が、経済的な操作に関して不利である(独国特許(DE)第19910691号明細書)連続的に錯体/触媒が補給される必要なく、反応器中で所望の期間に亘って満足すべき活性であるように存在していなければならないことが確実にされなければならない。さらに、使用される触媒は、経済的に実現できる期間内で基質を生成物に変換することができるように、適切なTOF(turnover frequency)を有するべきである。
【0042】
本発明に関連して、ポリマー拡大された錯体/触媒は、キラル誘導を生じさせる1つ又はそれ以上の活性単位(配位子)が、このために適した形で、別のモノマーと共重合されるか、又はこれらの配位子が、既に存在しているポリマー上へ当業者に知られた方法によりカップリングされているという事実を意味すると理解される。共重合に適した単位の形は、当業者に十分知られており、かつ彼らにより自由に選択されることができる。好ましくは、当該分子を、共重合のタイプに依存して共重合することのできる基で誘導体化して、例えば、(メタ)アクリラートとの共重合の場合にアクリラート/アクリルアミド分子上へカップリングすることにより行われる。これに関連して、特に、欧州特許(EP)第1120160号明細書及びそこで詳説されたポリマー拡大が参照される。
【0043】
本発明の時点で、本明細書で紹介された配位子系が、公知の先行技術の系に比較して実質的により強烈な条件下に使用されることができる触媒系の開発を可能にし、かつ同時に、先行技術の系の有利な性質及び能力が確認されることを可能にすることは決して明らかではなかった。特に、非対称に置換されたホスホラン−ホスフィン系は、先行技術において知られた対称系よりも、それらがあまり高価でない方法で製造されることができる点で優れている、それというのも、これらは、高価なキラルなホスホラン単位の1つの分子のみを必要とするからである。これにもかかわらず、本発明による配位子及び触媒系は、基礎となる触媒反応における高いキラル誘導を特徴とする。
【0044】
(C1〜C8)−アルキル基は、それらの結合異性体の全てを含めて、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル又はオクチルであるとみなされる。
(C1〜C8)−アルコキシ基は、(C1〜C8)−アルキル基に相当するが、但し、これは分子に酸素原子を介して結合されている。
(C2〜C8)−アルコキシアルキルは、アルキル鎖が、少なくとも1つの酸素官能基により中断されている基を意味するが、その場合に2個の酸素原子が互いに結合されていてはならない。炭素原子の数は、基中に存在する炭素原子の総数を挙げる。
(C3〜C5)−アルキレン橋は、3〜5個の炭素原子を有する炭素鎖であり、その際にこの鎖は、当該分子に2個の異なる炭素原子を介して結合されている。
前記のパラグラフに記載された基は、ハロゲン及び/又は窒素含有基、酸素含有基、リン含有基、硫黄含有基、ケイ素含有基によりモノ置換又はポリ置換されていてよい。これらは、特に、前記のタイプのアルキル基であって、それらの鎖中でこれらのヘテロ原子の1個又はそれ以上を有するか、又は分子にこれらのヘテロ原子の1個を介して結合されている。
【0045】
(C3〜C8)−シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル又はシクロヘプチル基等を意味すると理解される。これらは、1つ又はそれ以上のハロゲン及び/又は窒素含有基、酸素含有基、リン含有基、硫黄含有基、ケイ素含有基により置換されていてよい及び/又は環中に窒素、酸素、リン、硫黄原子を有していてよく、例えば1−、2−、3−、4−ピペリジル、1−、2−、3−ピロリジニル、2−、3−テトラヒドロフリル、2−、3−、4−モルホリニルである。
【0046】
(C3〜C8)−シクロアルキル−(C1〜C8)−アルキル基は、分子に上記の通りのアルキル基を介して結合されている、上記で詳説された通りのシクロアルキル基を表す。
【0047】
本発明に関連して、(C1〜C8)−アシルオキシは、最大8個の炭素原子を有し、かつ分子にCOO官能基を介して結合されている、上記で定義された通りのアルキル基を意味する。
【0048】
本発明に関連して、(C1〜C8)−アシルは、最大8個の炭素原子を有し、かつ分子にCO官能基を介して結合されている、上記で定義された通りのアルキル基を意味する。
【0049】
(C6〜C18)−アリール基は、炭素原子6〜18個を有する芳香族基を意味すると理解される。特に、これは、例えばフェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル、ビフェニル基のような化合物、又は当該分子に縮合された前記のタイプの系、例えばインデニル系を含み、これらは場合により、ハロゲン、(C1〜C8)−アルキル、(C1〜C8)−アルコキシ、NH2、NH(C1〜C8)−アルキル、N((C1〜C8)−アルキル)2、OH、CF3、NH(C1〜C8)−アシル、N((C1〜C8)−アシル)2、(C1〜C8)−アシル、(C1〜C8)−アシルオキシにより置換されていてよい。
【0050】
(C7〜C19)−アラルキル基は、分子に(C1〜C8)−アルキル基を介して結合された(C6〜C18)−アリール基である。
【0051】
本発明に関連して、(C3〜C18)−ヘテロアリール基は、炭素原子3〜18個から構成されており、かつ環中にヘテロ原子、例えば窒素、酸素又は硫黄を有する五員、六員又は七員の芳香族環系を表す。そのようなヘテロ芳香族は、特に、例えば1−、2−、3−フリル、例えば1−、2−、3−ピロリル、1−、2−、3−チエニル、2−、3−、4−ピリジル、2−、3−、4−、5−、6−、7−インドリル、3−、4−、5−ピラゾリル、2−、4−、5−イミダゾリル、アクリジニル、キノリニル、フェナントリジニル、2−、4−、5−、6−ピリミジニルのような基であるとみなされる。この基は、前記のアリール基と同じ基で置換されていてよい。
【0052】
(C4〜C19)−ヘテロアラルキルは、(C7〜C19)−アラルキル基に対応するヘテロ芳香族系を意味すると理解される。
【0053】
有用なハロゲン(Hal)は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を含む。
【0054】
PEGは、ポリエチレングリコールを意味する。
【0055】
N−アシル基は、窒素原子の保護のためのアミノ酸化学において、通常、一般的に使用される保護基を意味すると理解される。特に、例は、次のものを含む:ホルミル、アセチル、Moc、Eoc、フタリル、Boc、Alloc、Z、Fmoc、等。
【0056】
逃核脱離基は、ハロゲン原子、特に塩素又は臭素、又はいわゆる擬ハロゲン化物を意味すると本質的には理解される。別の脱離基は、トシル、トリフラート、ノシラート(nosylate)、メシラートであってよい。
【0057】
本発明に関連して、鏡像体豊富化した又は鏡像体過剰率という用語は、>50%及び<100%の範囲内での、その光学対掌体との混合物中の1つの鏡像体の割合を意味すると理解される。ee値は次のように計算される:
([鏡像体1]−[鏡像体2])/([鏡像体1]+[鏡像体2])=ee値。
【0058】
本発明に関連して、本発明による錯体及び配位子の言及は、考えられる全てのジアステレオマーを含んでおり、かつ個々のジアステレオマーの2つの光学対掌体も含むものとする。
【0059】
本文書において引用された文献の箇所は、本開示に含まれているとみなされる。
【0060】
本発明に関連して、膜反応器は、分子量拡大された(molecular weight-enlarged)触媒が、反応器中に閉じ込められているのに対し、低分子量物質が、反応器に供給されるか又はこの反応器を去ることができる任意の反応容器を意味すると理解される。この膜は、反応室中へ直接一体化されていてよいか、又は反応室の外側で、反応溶液がろ過モジュールを通して連続的又は断続的に流れ、かつ濃縮水が反応器中へ再循環される別個なろ過モジュール中に取り付けられていてよい。適した実施態様は、国際公開(WO)第98/22415号パンフレット及びWandrey他 1998年報, Verfahrenstechnik und Chemieingenieurwesen, VDI p.151以降; Wandrey他 Applied Homogeneous Catalysis with Organometallic Compounds, Vol. 2, VCH 1996, p. 832以降; Kragl他, Angew. Chem. 1996, 6, 684以降に記載されたものを含む。
【0061】
本発明に関連して、ポリマー拡大された配位子/錯体は、分子量拡大されたポリマーが配位子に共有結合されているものを意味すると理解される。
【0062】
n2n+1基中で、nは2〜5の整数である。
【0063】
オルガノシリル基は、R′R″R″′Si基であり、ここでR′、R″及びR″′は、それぞれ独立して、(C1〜C8)−アルキル基又は(C6〜C18)−アリール基であってよい。
【0064】
図面の説明:
図1は、全量ろ過を有する膜反応器を示す。基質Iは、ポンプ2を介して、膜5を有する反応室3中へ移される。撹拌機操作される反応器室中には、触媒4、生成物6及び未変換の基質1並びに溶剤が存在する。主に低分子量のもの6は、膜5を通してろ別される。
【0065】
図2は、十字流ろ過を有する膜反応器を示す。ここで、基質7は、ポンプ8を介して、溶剤、触媒9及び生成物14も存在する撹拌反応器室中へ移される。ポンプ16は、場合により存在する熱交換器12を通して十字流ろ過セル15中へ流れる溶剤流を調節するのに使用される。ここでは、低分子量生成物14は、膜13を用いて除去される。高分子量触媒9は、その後に、溶剤流と共に、場合によりバルブ11を経て及び場合により再び熱交換器12を通して、反応器10中へ返送される。
【0066】
実施例
【化9】

【0067】
iPr2P−SiMe3 1当量(571mg)を、5ml中のN−ブチルジクロロマレイミド666mgの溶液に−78℃でゆっくりと添加する。黄色−橙色の溶液を室温(RT)に温め、1.5h撹拌する。その後に、トリメチルシリルホスホランをさらに1当量、冷時条件下に添加し、この混合物をRTでさらに2時間撹拌する。
【0068】
NMR試料:
化合物A: 6%の割合(場合により(THF−d8)一酸化物形)での+17.5ppm及び−7.6ppm(2×d);
化合物B: 14%(?)の程度までの−3.4ppm及び−4.1ppm(2×s)
化合物C: 74%の程度までの−3.3ppm及び−4.4ppm(2×d)。
【0069】
溶剤を除去し、残留物をTHF 2mlに吸収させ、−20℃で、[Rh(cod)2]BF4 1当量(1.2g)の溶液にカニューレを介して滴加した。エーテルを用いる沈殿、ろ過及び洗浄後に、錯体を減圧下に乾燥させた。
【0070】
NMR(CDCl3):化合物A: 11%の程度までの+73.6ppm(dd、15.3Hz及び147Hz)及び+60.8ppm(dd、15.3Hz及び150Hz);
化合物B: 79%の程度までの+71.6ppm(dd、16.5Hz及び150Hz)及び+65.0ppm(dd、16.5Hz及び150Hz)。
【0071】
一般的な水素化法
プレ触媒0.005mmol及びプロキラルな基質0.5mmolを、H2雰囲気下に適当な水素化容器中に装入し、25℃で温度制御する。適当な溶剤(メタノール、テトラヒドロフラン又はジクロロメタン7.5ml)の添加及び(大気圧への)圧力平衡後に、撹拌を開始し、かつ等圧条件下でのガス消費の自動記録と共に始めることにより、水素化を開始させる。ガスの吸収が終了した後に、実験を終了し、水素化の転化率及び選択率を、ガスクロマトグラフィーを用いて決定する。
【0072】
25℃、1bar、100:1で水素化。
【0073】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】全量ろ過を有する膜反応器を示す略示図。
【図2】十字流ろ過を有する膜反応器を示す略示図。
【符号の説明】
【0075】
1 基質、 2 ポンプ、 3 反応室、 4 触媒、 5 膜、 6 生成物、 7 基質、 8 ポンプ、 9 触媒、 10 反応器、 11 バルブ、 12 熱交換器、 13 膜、 14 生成物、 15 十字流ろ過セル、 16 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、
*は立体中心を表し、
3及びR4は、それぞれ独立して、
(C1〜C8)−アルキル、(C1〜C8)−アルコキシ、HO−(C1〜C8)−アルキル、(C2〜C8)−アルコキシアルキル、(C6〜C18)−アリール、(C7〜C19)−アラルキル、(C3〜C18)−ヘテロアリール、(C4〜C19)−ヘテロアラルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C6〜C18)−アリール、
(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C18)−ヘテロアリール、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル−(C1〜C8)−アルキルからなる群から選択されており、
7及びR8は、それぞれ独立して、H、R3であるか、又は
3及びR7及び/又はR7及びR8及び/又はR8及びR4は、(C3〜C5)−アルキレン橋を介して互いに結合されており、
1及びR2は、それぞれ独立して、(C1〜C8)−アルキル、(C6〜C18)−アリール、(C7〜C19)−アラルキル、(C3〜C18)−ヘテロアリール、(C4〜C19)−ヘテロアラルキル、(C1〜C8)−アルキル(C6〜C18)−アリール、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C18)−ヘテロアリール、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル−(C1〜C8)−アルキル、(C1〜C8)−アルキル−O、(C6〜C18)−アリール−O、(C7〜C19)−アラルキル−O、(C3〜C8)−シクロアルキル−O、(C1〜C8)−アルキル−NH、(C6〜C18)−アリール−NH、(C7〜C19)−アラルキル−NH、(C3〜C8)−シクロアルキル−NH、((C1〜C8)−アルキル)2N、((C6〜C18)−アリール)2N、((C7〜C19)−アラルキル)2N、((C3〜C8)−シクロアルキル)2Nであり、
Aは、C2橋であり、ここで、双方の炭素原子はsp2混成を有し、かつヘテロ原子を有していてよい、3員環系、4員環系、5員環系、6員環系、7員環系又は8員環系の一部分を形成し、かつこの環系は、Aが1,2−橋かけされたフェニル環である場合にはフッ素、塩素、CF3CO、CF3SO2、CF3、Cn2n+1からなる群から選択される少なくとも1つの電子吸引基により置換されている]で示される構造を有している配位子系。
【請求項2】
3員環系、4員環系、5員環系、6員環系、7員環系又は8員環系が、
【化2】

[式中、
Qは、O、NH、NH−NH、NR−NR、NOR、NR、S、CH2又はC=C(R)2であり、
Rは、H、(C1〜C8)−アルキル、(C6〜C18)−アリール、(C7〜C19)−アラルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C6〜C18)−アリール、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C8)−アルキル−(C3〜C8)−シクロアルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル−(C1〜C8)−アルキルであり、
R′は、R又はR″′であり、かつ
R″′は、フッ素、塩素、CF3CO、CF3SO2、CF3、Cn2n+1からなる群から選択される1つ又はそれ以上の電子吸引基である]からなる群から選択される系であってよい、請求項1記載の配位子系。
【請求項3】
式(I)の化合物が、>90%、好ましくは>95%の鏡像体豊富化度を有する、請求項1から2までのいずれか1項記載の配位子。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項記載の配位子及び少なくとも1つの遷移金属を含有する、錯体。
【請求項5】
パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム、オスミウム、イリジウム、コバルト、ニッケル又は銅との、請求項1から3までのいずれか1項記載の配位子を含有する、錯体。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか1項記載の配位子を製造する方法において、
一般式(II)又は(II′)
【化3】

[式中、
Aは、請求項1に定義された通りであってよく、
Xは、逃核脱離基であり、かつ
1及びR2は、それぞれ、請求項1に定義された通りであってよい]で示される化合物を、一般式(III)
【化4】

[式中、R3、R4、R7及びR8は、それぞれ、請求項1に定義された通りであってよく、かつ
Mは、Li、Na、K、Mg、Caからなる群からの金属であってよいか、又はオルガノシリル基である]で示される化合物と、(II)又は(II′)のX基が置換されるように反応させ、かつ欠けているホスフィン基PR12を、その後に、(III)と(II)との反応の生成物中へ導入することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の配位子を製造する方法。
【請求項7】
不斉反応のための触媒としての、請求項4又は5記載の錯体の使用。
【請求項8】
不斉水素化、ヒドロホルミル化、転位、アリル位アルキル化、シクロプロパン化、ヒドロシリル化、ヒドリド移動(hydride transfer)反応、ヒドロホウ素化、ヒドロシアン化、ヒドロカルボキシル化、アルドール反応又はヘック(Heck)反応のための触媒としての、請求項4又は5記載の錯体の使用。
【請求項9】
不斉水素化及びヒドロホルミル化のための触媒としての、請求項4又は5記載の錯体の使用。
【請求項10】
プロキラルなN−アシル化されたβ−アミノアクリル酸又はそれらの誘導体のE/Z混合物を水素化する、請求項9記載の使用。
【請求項11】
水素化に関係し、操作を、水素ガスでの水素化又は移動水素化を用いて行う、請求項7から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
水素ガスでの水素化に関係し、水素化を0.1〜100bar、好ましくは0.5〜10barの水素圧で行う、請求項11記載の使用。
【請求項13】
操作を−20℃〜100℃、好ましくは0℃〜50℃の温度で行う、請求項11記載の使用。
【請求項14】
基質/触媒比を、50 000:1〜10:1、好ましくは1000:1〜50:1で選択する、請求項7から13までのいずれか1項記載の使用。
【請求項15】
触媒反応を膜反応器中で実施する、請求項7から14までのいずれか1項記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−534469(P2008−534469A)
【公表日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−502369(P2008−502369)
【出願日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2006/060409
【国際公開番号】WO2006/100169
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】