非接触式スイッチ装置
【課題】GMR素子を利用した場合においても、迅速にスイッチング操作を行うことができる非接触式スイッチ装置を提供すること。
【解決手段】操作者からの操作に応じて往復動可能な磁石Mと、この磁石Mからの磁場の向きを検出するGMR素子65とを具備し、GMR素子65で検出した磁場の向きに応じて出力信号を切り替える非接触式スイッチ装置1であって、GMR素子65が有するフリー層の磁化方向は、上記磁石Mからの磁場のみによって変化することを特徴とする。
【解決手段】操作者からの操作に応じて往復動可能な磁石Mと、この磁石Mからの磁場の向きを検出するGMR素子65とを具備し、GMR素子65で検出した磁場の向きに応じて出力信号を切り替える非接触式スイッチ装置1であって、GMR素子65が有するフリー層の磁化方向は、上記磁石Mからの磁場のみによって変化することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式スイッチ装置に関し、特に、往復動可能な磁石からの磁場の向きをGMR素子で検出することで出力信号を切り替える非接触式スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチケース内に、ホールICと、磁石が固定された可動部材と、この可動部材を支持するコイルバネとを配設し、スイッチケースの上面から突出する可動部材の上端部で押圧操作を受け付けると、可動部材に固定された磁石の位置に応じてホールICの出力信号をオフからオンに変化させる小型磁気感応スイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、現在、磁石からの磁場の向きを検出して出力信号を変化させる巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)を利用した磁気センサが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このようなGMR素子を利用した磁気センサにおいては、磁石からの磁場の向きの変化に応じたGMR素子における電気抵抗値の変化に基づいて出力信号を変化させる。
【特許文献1】特開2003−151390号公報
【特許文献2】特開2006−276983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような小型磁気感応スイッチにおいて、ホールICの代わりにGMR素子を配設し、GMR素子を利用した非接触式のスイッチ装置を構成することが考えられる。一般に、GMR素子は、ピン層(ピン止め磁性層)及びフリー層(フリー磁性層)等を積層して形成される。フリー層における磁化方向は、例えば、素子内に形成されたハードバイアス層によって予め規制されている。このようにフリー層の磁化方向を規制することで、GMR素子における電気抵抗値を安定させている。しかしながら、このようなGMR素子をスイッチ装置に利用する場合には、フリー層に対する規制がGMR素子における電気抵抗値の変化を鈍らせ、スイッチング動作を迅速に行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、GMR素子を利用した場合においても、迅速にスイッチング操作を行うことができる非接触式スイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の非接触式スイッチ装置は、操作者からの操作に応じて往復動可能な磁石と、前記磁石からの磁場の向きを検出するGMR素子とを具備し、前記GMR素子で検出した磁場の向きに応じて出力信号を切り替える非接触式スイッチ装置であって、前記GMR素子が有するフリー層の磁化方向は、前記磁石からの磁場のみによって変化することを特徴とする。
【0007】
上記非接触式スイッチ装置によれば、GMR素子が有するフリー層の磁化方向を、磁石からの磁場のみによって変化させるようにしたことから、磁石からの磁場以外の要因によりフリー層の磁化方向が規制されることがないので、GMR素子における電気抵抗値の変化が鈍くなる事態を防止することができる。この結果、GMR素子を利用した場合においても、迅速にスイッチング操作を行うことが可能となる。
【0008】
上記非接触式スイッチ装置においては、前記磁石が組み込まれ、操作者からの操作を受け付けて往復動する可動部材と、前記磁石からの磁場が前記GMR素子のフリー層に作用する範囲内で往復動可能に前記可動部材を収容するケースとを更に具備することが好ましい。この場合には、磁石が組み込まれた可動部材(例えば、後述するスライダ)を、当該磁石からの磁場がGMR素子のフリー層に作用する範囲内で往復動可能にケース内に収容することができるので、GMR素子のフリー層の磁化方向が不定となる事態を確実に防止することが可能となる。
【0009】
特に、上記非接触式スイッチ装置においては、前記ケースに、前記GMR素子を含むセンサユニットが配置される凹部を形成し、前記凹部に前記センサユニットを配置した状態の前記ケースを一体的に保持するカバー部材(例えば、後述する第1カバー部材)を更に具備することが好ましい。この場合には、凹部にセンサユニットを配置した状態のケースがカバー部材によって一体的に保持されることから、磁石とGMR素子との位置関係を一定に維持することができるので、本非接触式スイッチ装置における動作の安定性を確保することが可能となる。
【0010】
上記非接触式スイッチ装置において、前記カバー部材は、外部からの磁気を遮断することが好ましい。この場合には、カバー部材によって外部からの磁気が遮断されるので、外部からの磁気によって本非接触式スイッチ装置における動作が不安定になる事態を防止することが可能となる。
【0011】
上記非接触式スイッチ装置において、前記磁石は、表裏面が単純2極着磁され、当該磁石の表面又は裏面を前記GMR素子の磁気検知面に対向配置させた状態で往復動することが好ましい。この場合には、複雑な態様で着磁した磁石を必要としないで迅速にスイッチング操作を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、GMR素子が有するフリー層の磁化方向を、磁石からの磁場のみによって変化させるようにしたことから、磁石からの磁場以外の要因によりフリー層の磁化方向が規制されることがないので、GMR素子における電気抵抗値の変化が鈍くなる事態を防止することができる。この結果、GMR素子を利用した場合においても、迅速にスイッチング操作を行うことができる非接触式スイッチ装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の分解斜視図である。図3は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の外観を示す斜視図である。なお、図1及び図2においては、それぞれ反対側の側面から本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置を示している。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1は、ケース2と、ケース2内に収納される圧縮バネ3及びスライダ4と、ケース2に収納されたスライダ4の上に載置されるゴムカバー5と、ケース2に取り付けられるセンサユニット6と、これらの構成要素を収納すると共にセンサユニット6が取り付けられたケース2に被せられる第1カバー部材7と、ケース1の下方に配置される第2カバー部材8とを備えている。
【0015】
ケース2は、例えば、合成樹脂材料で成形され、上面視にて概してL字形状を有している。ケース2の側面には、センサユニット6が取り付けられる凹部21が形成されている。また、ケース2の内部には、圧縮バネ3及びスライダ4が収納される溝部22が形成されている。溝部22は、ケース2の側面形状に対応し、概してL字形状を有している。この溝部22の底面には、圧縮バネ3の下方側の一端を保持する保持片が形成されている(図1及び図2に不図示)。
【0016】
ケース2の上面であって、溝部22の周囲には、ゴムカバー5の一部を収容する収容部23が形成されている。収容部23は、ゴムカバー5の形状に対応してケース2の上面から一段下がった長円形状を有している。また、ケース2の側面には、後述する第1カバー部材7の開口部72に係合する凸部24が突出形成されている。さらに、ケース2の下面には、第2カバー部材8を収容する収容部25が形成されている(図1に不図示、図2参照)。収容部25は、第2カバー部材8の形状に対応してケース2の下面から一段上がった形状を有している。
【0017】
圧縮バネ3は、ケース2の溝部22内に収納される。その下方側の一端が溝部22内に形成された保持片に保持される一方、その上方側の一端がスライダ4の内部に収容されることで保持される。このように両端をケース2及びスライダ4に保持されることで、スライダ4を上方側に押し上げる付勢力を付与している。
【0018】
スライダ4は、例えば、合成樹脂材料で成形され、ケース2の溝部22に対応した形状を有している。すなわち、スライダ4は、上面視にて概してL字形状を有している。スライダ4の上面には、上方側に突出する概して円筒形状の突出片41が形成されている。突出片41は、上方側に向かって段階的に細くなる形状を有している。突出片41の上端部は、後述するゴムカバー5の孔を介して露出する操作片42を構成する。この操作片42の先端は、球形状に設けられている。スライダ4の内部には、圧縮バネ3の上方側の一端を収容する凹部が形成されている(図1及び図2に不図示)。また、スライダ4におけるケース2の凹部21に対応する側面には長方形状の開口部43が形成され、この開口部43に磁石Mが嵌め込まれている(図2参照)。
【0019】
ゴムカバー5は、上面視にて長円形状を有しており、スライダ4の操作片41に対応する位置にドーム形状部51を有している。ドーム形状部51の内側には空間が形成されており、下方側から突出片41を収容可能に構成されている。ドーム形状部51の頂部には孔52が形成されており、この孔52からスライダ4の操作片42を上方側に露出可能に構成されている。
【0020】
センサユニット6は、センサIC61と、このセンサIC61に接続される複数の端子62と、これらのセンサIC61及び端子62を保持するセンサベース63とから構成される。センサIC61は、センサベース63の内部に配置されている。センサベース63の上面には、ゴムカバー5の一部を収容する収容部64が形成されている。収容部64は、ゴムカバー5の形状に対応してセンサベース63の上面から一段下がった形状を有している。センサユニット6がケース2に取り付けられ、ケース2の収容部23と一体化することで、ゴムカバー5全体を収容可能に構成されている。なお、センサIC61の構成については後述する。
【0021】
第1カバー部材7は、例えば、所定の形状に打ち抜いた金属板に折り曲げ加工を施すことにより形成され、下方側に開口した箱形状を有している。第1カバー部材7の上面には、円形状の開口部71が形成されている。ゴムカバー5のドーム形状部51は、この開口部71から上方側に露出するように構成されている。また、第1カバー部材7の側面には、ケース2の凸部24と係合する矩形状の開口部72が形成されている。第2カバー部材8は、第1カバー部材7と同様に、所定の形状に打ち抜かれて形成され、ケース2の収容部25に収容される。第1カバー部材7及び第2カバー部材8は、外部からの磁気を遮断する磁気シールドとしての役割を果たす。
【0022】
このような構成を有する非接触式スイッチ装置1を組み立てると、図3に示すように、ケース2に載置されたゴムカバー5のドーム形状部51が開口部71を介して上方側に突出した状態でケース2に第1カバー部材7が被せられる。そして、ケース2の凸部24が第1カバー部材7の開口部72と係合することでケース2に第1カバー部材7が取り付けられる。また、ドーム形状部51の孔52からは、スライダ4の操作片42が上方側に突出した状態となっている。本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、このように上方側に突出する操作片42で操作者による押圧操作を受け付け、この押圧操作に応じてスライダ4が上下方向に往復移動するように構成されている。
【0023】
ここで、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1が有するセンサIC61及び磁石Mの構成について説明する。図4は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1が有するセンサIC61及び磁石Mの周辺の拡大図である。
【0024】
図4に示すように、センサIC61は、GMR素子65と、制御IC66とを含んで構成されている。GMR素子65は、磁気検知面をスライダ4に嵌め込まれた磁石Mに対向するように配設される。制御IC66は、GMR素子65の側方側に配設される。本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1おいては、磁石Mからの磁場をGMR素子65に作用させ、GMR素子65の電気抵抗値の変化を磁場により生じさせて、制御IC66にてGMR素子65の出力信号から磁石Mの位置を検出する。そして、検出された磁石Mの位置に応じて本非接触式スイッチ装置1からの出力信号(オン/オフ信号)を切り替える。
【0025】
ここで、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に利用されるGMR素子65の構成について説明する。図5は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に利用されるGMR素子65の構成について説明するための模式図である。なお、図5においては、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に利用されるGMR素子65の断面について示している。
【0026】
図5(b)に示すように、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に利用されるGMR素子65は、基本的な構成として、反強磁性層65aと、ピン層65bと、中間層65cと、フリー層65dとを基板67上に積層して形成され、巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(Giant Magnet Resistance)素子の一種である磁気抵抗効果素子として構成されている。
【0027】
なお、GMR素子65が巨大磁気抵抗効果(GMR)を発揮するためには、例えば、反強磁性層65aがα−Fe2O3層、ピン層65bがNiFe層、中間層65cがCu層、フリー層65dがNiFe層から形成されることが好ましいが、これらのものに限定されるものではなく、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、いずれのものであってもよい。また、GMR素子65は、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、上記の積層構造のものに限定されるものではない。
【0028】
図5に示すGMR65のピン層65bは、反強磁性層65aで磁化され、この反強磁性層65aによって磁化方向が特定方向に固定(ピン止め)されている。フリー層65dは、磁石Mからの磁場の向きのみによって、ピン層65bの磁化方向に対する磁化方向が変化する。なお、フリー層65dには、磁石Mからの磁場以外に磁化方向を規制するものはない。GMR素子65の両端には、図5(a)に示すように、電極65eが接合形成されている。そして、ピン層65bの固定された磁化方向に対して、磁場の向きによりフリー層65dの磁化方向が変化することにより、2つの電極65e間での電気抵抗値の変化が出力信号として出力される。
【0029】
一方、スライダ4に嵌め込まれた磁石Mは、図4に示すように、GMR素子65と一定距離を空けて対向配置されている。そして、スライダ4の移動に伴って図4に示す上下方向に往復動可能に構成されている。本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1において、磁石Mは、表裏面を単純2極着磁した磁石で構成されている。特に、本実施の形態においては、GMR素子65に対向する面にN極が着磁されると共に、反対側の面がS極に着磁されている(図6参照)。
【0030】
ここで、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1におけるGMR素子65と、磁石Mからの磁場との関係について説明する。図6は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1におけるGMR素子65と、磁石Mからの磁場との関係について説明するための模式図である。なお、図6においては、説明の便宜上、磁石Mの移動方向を左右方向に示している。また、図6においては、磁石Mの中心部がGMR素子65の中心部に対向配置された場合について示している。
【0031】
磁石Mの中心部がGMR素子65の中心部に対向配置された場合、磁石Mからは図6に示すような磁場が発生している。このような磁場を発生させる磁石Mが図6に示す左右方向に移動すると、GMR素子65においては、図7に示す電気抵抗値の変化が得られる。図7は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1において、磁石Mの位置に応じたGMR素子65における電気抵抗値の変化を説明するための図である。なお、図7においては、縦軸に電気抵抗値の変化の割合を示し、横軸に磁石Mの位置を示している。また、図7においては、図6に示すように磁石Mの中心部がGMR素子65の中心部に対向配置された場合における磁石Mの位置を「0」と示している。図7に示すように、GMR素子65における電気抵抗値は、磁石Mの中心部が、GMR素子65の中心部に対向配置された状態を境界として急激に変化することが分かる。
【0032】
次に、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1における動作について説明する。図8は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1の側面図である。図9〜図11は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1の断面図である。なお、図9〜図11においては、図8に示す1点鎖線A及び1点鎖線Bにおける断面について示している。
【0033】
図9においては、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に対して、操作者から押圧操作が行われていない状態について示している。この場合、図9(a)に示すように、スライダ4は、圧縮バネ3により最上方位置まで押し上げられ、操作片42に係合したドーム形状部51は上方に引き上げられた状態となっている。スライダ4に嵌め込まれた磁石Mは、図9(b)に示すように、センサIC61のGMR素子65よりも僅かに上方側の位置に配置されている。
【0034】
磁石Mが図9に示す位置に配置された場合のGMR素子65における磁場の強度及びGMR素子65の出力電圧について説明する。図12は、図9に示す位置に磁石Mが配置された場合のGMR素子65における磁場の強度及びGMR素子65の出力電圧について説明するための図である。図12(a)は、図9に示す位置に磁石Mが配置された場合における磁石MとGMR素子65との位置関係を説明するための模式図である。なお、この場合において、磁石Mは、その中心部がGMR素子65の中心部から概ね0.7mmだけ上方側に配置されているものとする。磁石Mが図9に示す位置に配置された場合、GMR素子65における磁場の強度は、図12(b)に示すように、約−800[Oe]を示し、GMR素子65の出力電圧は、図12(c)に示すように、約2.37Vを示している。
【0035】
そして、図9に示す状態から操作者によって押圧操作が行われると、スライダ4が下方側に移動する。なお、図10においては、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に対して押圧操作が行われ、出力信号が切り替わる状態について示している。この場合、図10(a)に示すように、スライダ4は、圧縮バネ3の付勢力に抗して下方側に押し下げられ、操作片42に係合したドーム形状部51が下方に僅かに膨らんだ状態となっている。スライダ4に嵌め込まれた磁石Mは、図10(b)に示すように、その中心部がセンサIC61のGMR素子65の中心部に対向配置されている。
【0036】
磁石Mが図10に示す位置に配置された場合のGMR素子65における磁場の強度及びGMR素子65の出力電圧について説明する。図13は、図10に示す位置に磁石Mが配置された場合のGMR素子65における磁場の強度及びGMR素子65の出力電圧について説明するための図である。図13(a)は、図10に示す位置に磁石Mが配置された場合における磁石MとGMR素子65との位置関係を説明するための模式図である。磁石Mが図10に示す位置に配置された場合、GMR素子65における磁場の強度は、図13(b)に示すように、0[Oe]を示し、GMR素子65の出力電圧は、図13(c)に示すように、2.5Vを示している。
【0037】
さらに、図10に示す状態から操作者によって押圧操作が行われると、スライダ4が下方側に移動する。なお、図11においては、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に対して、最下方位置まで押圧操作が行われた状態について示している。この場合、図11(a)に示すように、スライダ4は、その下端部がケース2の底面部に接触する位置まで押し下げられた状態となっている。スライダ4に嵌め込まれた磁石Mは、図11(b)に示すように、センサIC61のGMR素子65よりも下方側の位置に配置されている。
【0038】
本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、磁石Mが図10に示す位置よりも上方側に配置されている場合、すなわち、GMR素子65の出力電圧が2.5Vより小さい場合にオフ信号を出力する一方、図10に示す位置よりも下方側に配置されている場合、すなわち、GMR素子65の出力電圧が2.5Vより大きい場合にオン信号を出力するように設定されている。従って、磁石Mが図9に示す位置から図10に示す位置に移動する過程ではオフ信号が継続して出力される一方、図10に示す位置から図11に示す位置に移動する過程ではオン信号が継続して出力されることとなる。なお、このように磁石Mが移動する間、GMR素子65のフリー層65dの磁化方向は、磁石Mからの磁場のみによって変化するようになっており、磁石Mからの磁場以外の要因により規制されていない。
【0039】
このように本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、GMR素子65が有するフリー層65dの磁化方向を、磁石Mからの磁場のみによって変化させるようにしている。これにより、磁石Mからの磁場以外の要因によりフリー層65dの磁化方向が規制されることがないので、GMR素子65における電気抵抗値の変化が鈍くなる事態を防止することができる。この結果、GMR素子65を利用した場合においても、迅速にスイッチング操作を行うことが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、磁石Mが組み込まれ、操作者からの押圧操作を受け付けて往復動するスライダ4と、磁石Mからの磁場がGMR素子65のフリー層に作用する範囲内で往復動可能にスライダ4を収容するケース2とを備えている。これにより、スライダ4を磁石Mからの磁場がGMR素子65のフリー層に作用する範囲内で往復動できるようにケース2内に収容しているので、GMR素子65のフリー層の磁化方向が不定となる事態を確実に防止することが可能となる。
【0041】
特に、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、ケース2にGMR素子65を含むセンサユニット6が配置される凹部21を形成し、この凹部21にセンサユニット6を配置した状態のケース2を一体的に保持する第1カバー部材7を備えている。これにより、凹部21にセンサユニット6を配置した状態のケース2が第1カバー部材7によって一体的に保持されることから、磁石MとGMR素子65との位置関係を一定に維持することができるので、本非接触式スイッチ装置1における動作の安定性を確保することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、第1カバー部材7に、外部からの磁気を遮断する機能を具備させている。これにより、第1カバー部材7によって外部からの磁気が遮断されるので、外部からの磁気によって本非接触式スイッチ装置1における動作が不安定になる事態を防止することが可能となる。
【0043】
さらに、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、磁石Mを、表裏面が単純2極着磁した磁石で構成し、当該磁石Mの表面又は裏面をGMR素子65の磁気検知面に対向配置させた状態で往復動させるようにしている。これにより、複雑な態様で着磁した磁石を必要としないで迅速にスイッチング操作を行うことが可能となる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の分解斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の外観を示す斜視図である。
【図4】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置が有するセンサIC及び磁石の周辺の拡大図である。
【図5】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置に利用されるGMR素子の構成について説明するための模式図である。
【図6】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置におけるGMR素子と、磁石からの磁場との関係について説明するための模式図である。
【図7】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置において、磁石の位置に応じたGMR素子における電気抵抗値の変化を説明するための図である。
【図8】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の側面図である。
【図9】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の断面図である。
【図10】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の断面図である。
【図11】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の断面図である。
【図12】図9に示す位置に磁石が配置された場合のGMR素子における磁場の強度及びGMR素子の出力電圧について説明するための図である。
【図13】図10に示す位置に磁石が配置された場合のGMR素子における磁場の強度及びGMR素子の出力電圧について説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
1 非接触式スイッチ装置
2 ケース
21 凹部
22 溝部
3 圧縮バネ
4 スライダ
41 突出片
42 操作片
5 ゴムカバー
51 ドーム形状部
6 センサユニット
61 センサIC
65 GMR素子
66 制御IC
7 第1カバー部材
71 開口部
8 第2カバー部材
M 磁石
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式スイッチ装置に関し、特に、往復動可能な磁石からの磁場の向きをGMR素子で検出することで出力信号を切り替える非接触式スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スイッチケース内に、ホールICと、磁石が固定された可動部材と、この可動部材を支持するコイルバネとを配設し、スイッチケースの上面から突出する可動部材の上端部で押圧操作を受け付けると、可動部材に固定された磁石の位置に応じてホールICの出力信号をオフからオンに変化させる小型磁気感応スイッチが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、現在、磁石からの磁場の向きを検出して出力信号を変化させる巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)を利用した磁気センサが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このようなGMR素子を利用した磁気センサにおいては、磁石からの磁場の向きの変化に応じたGMR素子における電気抵抗値の変化に基づいて出力信号を変化させる。
【特許文献1】特開2003−151390号公報
【特許文献2】特開2006−276983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような小型磁気感応スイッチにおいて、ホールICの代わりにGMR素子を配設し、GMR素子を利用した非接触式のスイッチ装置を構成することが考えられる。一般に、GMR素子は、ピン層(ピン止め磁性層)及びフリー層(フリー磁性層)等を積層して形成される。フリー層における磁化方向は、例えば、素子内に形成されたハードバイアス層によって予め規制されている。このようにフリー層の磁化方向を規制することで、GMR素子における電気抵抗値を安定させている。しかしながら、このようなGMR素子をスイッチ装置に利用する場合には、フリー層に対する規制がGMR素子における電気抵抗値の変化を鈍らせ、スイッチング動作を迅速に行うことができないという問題がある。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、GMR素子を利用した場合においても、迅速にスイッチング操作を行うことができる非接触式スイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の非接触式スイッチ装置は、操作者からの操作に応じて往復動可能な磁石と、前記磁石からの磁場の向きを検出するGMR素子とを具備し、前記GMR素子で検出した磁場の向きに応じて出力信号を切り替える非接触式スイッチ装置であって、前記GMR素子が有するフリー層の磁化方向は、前記磁石からの磁場のみによって変化することを特徴とする。
【0007】
上記非接触式スイッチ装置によれば、GMR素子が有するフリー層の磁化方向を、磁石からの磁場のみによって変化させるようにしたことから、磁石からの磁場以外の要因によりフリー層の磁化方向が規制されることがないので、GMR素子における電気抵抗値の変化が鈍くなる事態を防止することができる。この結果、GMR素子を利用した場合においても、迅速にスイッチング操作を行うことが可能となる。
【0008】
上記非接触式スイッチ装置においては、前記磁石が組み込まれ、操作者からの操作を受け付けて往復動する可動部材と、前記磁石からの磁場が前記GMR素子のフリー層に作用する範囲内で往復動可能に前記可動部材を収容するケースとを更に具備することが好ましい。この場合には、磁石が組み込まれた可動部材(例えば、後述するスライダ)を、当該磁石からの磁場がGMR素子のフリー層に作用する範囲内で往復動可能にケース内に収容することができるので、GMR素子のフリー層の磁化方向が不定となる事態を確実に防止することが可能となる。
【0009】
特に、上記非接触式スイッチ装置においては、前記ケースに、前記GMR素子を含むセンサユニットが配置される凹部を形成し、前記凹部に前記センサユニットを配置した状態の前記ケースを一体的に保持するカバー部材(例えば、後述する第1カバー部材)を更に具備することが好ましい。この場合には、凹部にセンサユニットを配置した状態のケースがカバー部材によって一体的に保持されることから、磁石とGMR素子との位置関係を一定に維持することができるので、本非接触式スイッチ装置における動作の安定性を確保することが可能となる。
【0010】
上記非接触式スイッチ装置において、前記カバー部材は、外部からの磁気を遮断することが好ましい。この場合には、カバー部材によって外部からの磁気が遮断されるので、外部からの磁気によって本非接触式スイッチ装置における動作が不安定になる事態を防止することが可能となる。
【0011】
上記非接触式スイッチ装置において、前記磁石は、表裏面が単純2極着磁され、当該磁石の表面又は裏面を前記GMR素子の磁気検知面に対向配置させた状態で往復動することが好ましい。この場合には、複雑な態様で着磁した磁石を必要としないで迅速にスイッチング操作を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、GMR素子が有するフリー層の磁化方向を、磁石からの磁場のみによって変化させるようにしたことから、磁石からの磁場以外の要因によりフリー層の磁化方向が規制されることがないので、GMR素子における電気抵抗値の変化が鈍くなる事態を防止することができる。この結果、GMR素子を利用した場合においても、迅速にスイッチング操作を行うことができる非接触式スイッチ装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明の一実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の分解斜視図である。図3は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の外観を示す斜視図である。なお、図1及び図2においては、それぞれ反対側の側面から本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置を示している。
【0014】
図1及び図2に示すように、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1は、ケース2と、ケース2内に収納される圧縮バネ3及びスライダ4と、ケース2に収納されたスライダ4の上に載置されるゴムカバー5と、ケース2に取り付けられるセンサユニット6と、これらの構成要素を収納すると共にセンサユニット6が取り付けられたケース2に被せられる第1カバー部材7と、ケース1の下方に配置される第2カバー部材8とを備えている。
【0015】
ケース2は、例えば、合成樹脂材料で成形され、上面視にて概してL字形状を有している。ケース2の側面には、センサユニット6が取り付けられる凹部21が形成されている。また、ケース2の内部には、圧縮バネ3及びスライダ4が収納される溝部22が形成されている。溝部22は、ケース2の側面形状に対応し、概してL字形状を有している。この溝部22の底面には、圧縮バネ3の下方側の一端を保持する保持片が形成されている(図1及び図2に不図示)。
【0016】
ケース2の上面であって、溝部22の周囲には、ゴムカバー5の一部を収容する収容部23が形成されている。収容部23は、ゴムカバー5の形状に対応してケース2の上面から一段下がった長円形状を有している。また、ケース2の側面には、後述する第1カバー部材7の開口部72に係合する凸部24が突出形成されている。さらに、ケース2の下面には、第2カバー部材8を収容する収容部25が形成されている(図1に不図示、図2参照)。収容部25は、第2カバー部材8の形状に対応してケース2の下面から一段上がった形状を有している。
【0017】
圧縮バネ3は、ケース2の溝部22内に収納される。その下方側の一端が溝部22内に形成された保持片に保持される一方、その上方側の一端がスライダ4の内部に収容されることで保持される。このように両端をケース2及びスライダ4に保持されることで、スライダ4を上方側に押し上げる付勢力を付与している。
【0018】
スライダ4は、例えば、合成樹脂材料で成形され、ケース2の溝部22に対応した形状を有している。すなわち、スライダ4は、上面視にて概してL字形状を有している。スライダ4の上面には、上方側に突出する概して円筒形状の突出片41が形成されている。突出片41は、上方側に向かって段階的に細くなる形状を有している。突出片41の上端部は、後述するゴムカバー5の孔を介して露出する操作片42を構成する。この操作片42の先端は、球形状に設けられている。スライダ4の内部には、圧縮バネ3の上方側の一端を収容する凹部が形成されている(図1及び図2に不図示)。また、スライダ4におけるケース2の凹部21に対応する側面には長方形状の開口部43が形成され、この開口部43に磁石Mが嵌め込まれている(図2参照)。
【0019】
ゴムカバー5は、上面視にて長円形状を有しており、スライダ4の操作片41に対応する位置にドーム形状部51を有している。ドーム形状部51の内側には空間が形成されており、下方側から突出片41を収容可能に構成されている。ドーム形状部51の頂部には孔52が形成されており、この孔52からスライダ4の操作片42を上方側に露出可能に構成されている。
【0020】
センサユニット6は、センサIC61と、このセンサIC61に接続される複数の端子62と、これらのセンサIC61及び端子62を保持するセンサベース63とから構成される。センサIC61は、センサベース63の内部に配置されている。センサベース63の上面には、ゴムカバー5の一部を収容する収容部64が形成されている。収容部64は、ゴムカバー5の形状に対応してセンサベース63の上面から一段下がった形状を有している。センサユニット6がケース2に取り付けられ、ケース2の収容部23と一体化することで、ゴムカバー5全体を収容可能に構成されている。なお、センサIC61の構成については後述する。
【0021】
第1カバー部材7は、例えば、所定の形状に打ち抜いた金属板に折り曲げ加工を施すことにより形成され、下方側に開口した箱形状を有している。第1カバー部材7の上面には、円形状の開口部71が形成されている。ゴムカバー5のドーム形状部51は、この開口部71から上方側に露出するように構成されている。また、第1カバー部材7の側面には、ケース2の凸部24と係合する矩形状の開口部72が形成されている。第2カバー部材8は、第1カバー部材7と同様に、所定の形状に打ち抜かれて形成され、ケース2の収容部25に収容される。第1カバー部材7及び第2カバー部材8は、外部からの磁気を遮断する磁気シールドとしての役割を果たす。
【0022】
このような構成を有する非接触式スイッチ装置1を組み立てると、図3に示すように、ケース2に載置されたゴムカバー5のドーム形状部51が開口部71を介して上方側に突出した状態でケース2に第1カバー部材7が被せられる。そして、ケース2の凸部24が第1カバー部材7の開口部72と係合することでケース2に第1カバー部材7が取り付けられる。また、ドーム形状部51の孔52からは、スライダ4の操作片42が上方側に突出した状態となっている。本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、このように上方側に突出する操作片42で操作者による押圧操作を受け付け、この押圧操作に応じてスライダ4が上下方向に往復移動するように構成されている。
【0023】
ここで、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1が有するセンサIC61及び磁石Mの構成について説明する。図4は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1が有するセンサIC61及び磁石Mの周辺の拡大図である。
【0024】
図4に示すように、センサIC61は、GMR素子65と、制御IC66とを含んで構成されている。GMR素子65は、磁気検知面をスライダ4に嵌め込まれた磁石Mに対向するように配設される。制御IC66は、GMR素子65の側方側に配設される。本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1おいては、磁石Mからの磁場をGMR素子65に作用させ、GMR素子65の電気抵抗値の変化を磁場により生じさせて、制御IC66にてGMR素子65の出力信号から磁石Mの位置を検出する。そして、検出された磁石Mの位置に応じて本非接触式スイッチ装置1からの出力信号(オン/オフ信号)を切り替える。
【0025】
ここで、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に利用されるGMR素子65の構成について説明する。図5は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に利用されるGMR素子65の構成について説明するための模式図である。なお、図5においては、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に利用されるGMR素子65の断面について示している。
【0026】
図5(b)に示すように、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に利用されるGMR素子65は、基本的な構成として、反強磁性層65aと、ピン層65bと、中間層65cと、フリー層65dとを基板67上に積層して形成され、巨大磁気抵抗効果を利用したGMR(Giant Magnet Resistance)素子の一種である磁気抵抗効果素子として構成されている。
【0027】
なお、GMR素子65が巨大磁気抵抗効果(GMR)を発揮するためには、例えば、反強磁性層65aがα−Fe2O3層、ピン層65bがNiFe層、中間層65cがCu層、フリー層65dがNiFe層から形成されることが好ましいが、これらのものに限定されるものではなく、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、いずれのものであってもよい。また、GMR素子65は、磁気抵抗効果を発揮するものであれば、上記の積層構造のものに限定されるものではない。
【0028】
図5に示すGMR65のピン層65bは、反強磁性層65aで磁化され、この反強磁性層65aによって磁化方向が特定方向に固定(ピン止め)されている。フリー層65dは、磁石Mからの磁場の向きのみによって、ピン層65bの磁化方向に対する磁化方向が変化する。なお、フリー層65dには、磁石Mからの磁場以外に磁化方向を規制するものはない。GMR素子65の両端には、図5(a)に示すように、電極65eが接合形成されている。そして、ピン層65bの固定された磁化方向に対して、磁場の向きによりフリー層65dの磁化方向が変化することにより、2つの電極65e間での電気抵抗値の変化が出力信号として出力される。
【0029】
一方、スライダ4に嵌め込まれた磁石Mは、図4に示すように、GMR素子65と一定距離を空けて対向配置されている。そして、スライダ4の移動に伴って図4に示す上下方向に往復動可能に構成されている。本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1において、磁石Mは、表裏面を単純2極着磁した磁石で構成されている。特に、本実施の形態においては、GMR素子65に対向する面にN極が着磁されると共に、反対側の面がS極に着磁されている(図6参照)。
【0030】
ここで、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1におけるGMR素子65と、磁石Mからの磁場との関係について説明する。図6は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1におけるGMR素子65と、磁石Mからの磁場との関係について説明するための模式図である。なお、図6においては、説明の便宜上、磁石Mの移動方向を左右方向に示している。また、図6においては、磁石Mの中心部がGMR素子65の中心部に対向配置された場合について示している。
【0031】
磁石Mの中心部がGMR素子65の中心部に対向配置された場合、磁石Mからは図6に示すような磁場が発生している。このような磁場を発生させる磁石Mが図6に示す左右方向に移動すると、GMR素子65においては、図7に示す電気抵抗値の変化が得られる。図7は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1において、磁石Mの位置に応じたGMR素子65における電気抵抗値の変化を説明するための図である。なお、図7においては、縦軸に電気抵抗値の変化の割合を示し、横軸に磁石Mの位置を示している。また、図7においては、図6に示すように磁石Mの中心部がGMR素子65の中心部に対向配置された場合における磁石Mの位置を「0」と示している。図7に示すように、GMR素子65における電気抵抗値は、磁石Mの中心部が、GMR素子65の中心部に対向配置された状態を境界として急激に変化することが分かる。
【0032】
次に、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1における動作について説明する。図8は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1の側面図である。図9〜図11は、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1の断面図である。なお、図9〜図11においては、図8に示す1点鎖線A及び1点鎖線Bにおける断面について示している。
【0033】
図9においては、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に対して、操作者から押圧操作が行われていない状態について示している。この場合、図9(a)に示すように、スライダ4は、圧縮バネ3により最上方位置まで押し上げられ、操作片42に係合したドーム形状部51は上方に引き上げられた状態となっている。スライダ4に嵌め込まれた磁石Mは、図9(b)に示すように、センサIC61のGMR素子65よりも僅かに上方側の位置に配置されている。
【0034】
磁石Mが図9に示す位置に配置された場合のGMR素子65における磁場の強度及びGMR素子65の出力電圧について説明する。図12は、図9に示す位置に磁石Mが配置された場合のGMR素子65における磁場の強度及びGMR素子65の出力電圧について説明するための図である。図12(a)は、図9に示す位置に磁石Mが配置された場合における磁石MとGMR素子65との位置関係を説明するための模式図である。なお、この場合において、磁石Mは、その中心部がGMR素子65の中心部から概ね0.7mmだけ上方側に配置されているものとする。磁石Mが図9に示す位置に配置された場合、GMR素子65における磁場の強度は、図12(b)に示すように、約−800[Oe]を示し、GMR素子65の出力電圧は、図12(c)に示すように、約2.37Vを示している。
【0035】
そして、図9に示す状態から操作者によって押圧操作が行われると、スライダ4が下方側に移動する。なお、図10においては、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に対して押圧操作が行われ、出力信号が切り替わる状態について示している。この場合、図10(a)に示すように、スライダ4は、圧縮バネ3の付勢力に抗して下方側に押し下げられ、操作片42に係合したドーム形状部51が下方に僅かに膨らんだ状態となっている。スライダ4に嵌め込まれた磁石Mは、図10(b)に示すように、その中心部がセンサIC61のGMR素子65の中心部に対向配置されている。
【0036】
磁石Mが図10に示す位置に配置された場合のGMR素子65における磁場の強度及びGMR素子65の出力電圧について説明する。図13は、図10に示す位置に磁石Mが配置された場合のGMR素子65における磁場の強度及びGMR素子65の出力電圧について説明するための図である。図13(a)は、図10に示す位置に磁石Mが配置された場合における磁石MとGMR素子65との位置関係を説明するための模式図である。磁石Mが図10に示す位置に配置された場合、GMR素子65における磁場の強度は、図13(b)に示すように、0[Oe]を示し、GMR素子65の出力電圧は、図13(c)に示すように、2.5Vを示している。
【0037】
さらに、図10に示す状態から操作者によって押圧操作が行われると、スライダ4が下方側に移動する。なお、図11においては、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1に対して、最下方位置まで押圧操作が行われた状態について示している。この場合、図11(a)に示すように、スライダ4は、その下端部がケース2の底面部に接触する位置まで押し下げられた状態となっている。スライダ4に嵌め込まれた磁石Mは、図11(b)に示すように、センサIC61のGMR素子65よりも下方側の位置に配置されている。
【0038】
本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、磁石Mが図10に示す位置よりも上方側に配置されている場合、すなわち、GMR素子65の出力電圧が2.5Vより小さい場合にオフ信号を出力する一方、図10に示す位置よりも下方側に配置されている場合、すなわち、GMR素子65の出力電圧が2.5Vより大きい場合にオン信号を出力するように設定されている。従って、磁石Mが図9に示す位置から図10に示す位置に移動する過程ではオフ信号が継続して出力される一方、図10に示す位置から図11に示す位置に移動する過程ではオン信号が継続して出力されることとなる。なお、このように磁石Mが移動する間、GMR素子65のフリー層65dの磁化方向は、磁石Mからの磁場のみによって変化するようになっており、磁石Mからの磁場以外の要因により規制されていない。
【0039】
このように本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、GMR素子65が有するフリー層65dの磁化方向を、磁石Mからの磁場のみによって変化させるようにしている。これにより、磁石Mからの磁場以外の要因によりフリー層65dの磁化方向が規制されることがないので、GMR素子65における電気抵抗値の変化が鈍くなる事態を防止することができる。この結果、GMR素子65を利用した場合においても、迅速にスイッチング操作を行うことが可能となる。
【0040】
また、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、磁石Mが組み込まれ、操作者からの押圧操作を受け付けて往復動するスライダ4と、磁石Mからの磁場がGMR素子65のフリー層に作用する範囲内で往復動可能にスライダ4を収容するケース2とを備えている。これにより、スライダ4を磁石Mからの磁場がGMR素子65のフリー層に作用する範囲内で往復動できるようにケース2内に収容しているので、GMR素子65のフリー層の磁化方向が不定となる事態を確実に防止することが可能となる。
【0041】
特に、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、ケース2にGMR素子65を含むセンサユニット6が配置される凹部21を形成し、この凹部21にセンサユニット6を配置した状態のケース2を一体的に保持する第1カバー部材7を備えている。これにより、凹部21にセンサユニット6を配置した状態のケース2が第1カバー部材7によって一体的に保持されることから、磁石MとGMR素子65との位置関係を一定に維持することができるので、本非接触式スイッチ装置1における動作の安定性を確保することが可能となる。
【0042】
また、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、第1カバー部材7に、外部からの磁気を遮断する機能を具備させている。これにより、第1カバー部材7によって外部からの磁気が遮断されるので、外部からの磁気によって本非接触式スイッチ装置1における動作が不安定になる事態を防止することが可能となる。
【0043】
さらに、本実施の形態に係る非接触式スイッチ装置1においては、磁石Mを、表裏面が単純2極着磁した磁石で構成し、当該磁石Mの表面又は裏面をGMR素子65の磁気検知面に対向配置させた状態で往復動させるようにしている。これにより、複雑な態様で着磁した磁石を必要としないで迅速にスイッチング操作を行うことが可能となる。
【0044】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の分解斜視図である。
【図2】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の分解斜視図である。
【図3】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の外観を示す斜視図である。
【図4】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置が有するセンサIC及び磁石の周辺の拡大図である。
【図5】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置に利用されるGMR素子の構成について説明するための模式図である。
【図6】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置におけるGMR素子と、磁石からの磁場との関係について説明するための模式図である。
【図7】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置において、磁石の位置に応じたGMR素子における電気抵抗値の変化を説明するための図である。
【図8】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の側面図である。
【図9】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の断面図である。
【図10】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の断面図である。
【図11】上記実施の形態に係る非接触式スイッチ装置の断面図である。
【図12】図9に示す位置に磁石が配置された場合のGMR素子における磁場の強度及びGMR素子の出力電圧について説明するための図である。
【図13】図10に示す位置に磁石が配置された場合のGMR素子における磁場の強度及びGMR素子の出力電圧について説明するための図である。
【符号の説明】
【0046】
1 非接触式スイッチ装置
2 ケース
21 凹部
22 溝部
3 圧縮バネ
4 スライダ
41 突出片
42 操作片
5 ゴムカバー
51 ドーム形状部
6 センサユニット
61 センサIC
65 GMR素子
66 制御IC
7 第1カバー部材
71 開口部
8 第2カバー部材
M 磁石
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者からの操作に応じて往復動可能な磁石と、前記磁石からの磁場の向きを検出するGMR素子とを具備し、前記GMR素子で検出した磁場の向きに応じて出力信号を切り替える非接触式スイッチ装置であって、前記GMR素子が有するフリー層の磁化方向は、前記磁石からの磁場のみによって変化することを特徴とする非接触式スイッチ装置。
【請求項2】
前記磁石が組み込まれ、操作者からの操作を受け付けて往復動する可動部材と、前記磁石からの磁場が前記GMR素子のフリー層に作用する範囲内で往復動可能に前記可動部材を収容するケースとを更に具備することを特徴とする請求項1記載の非接触式スイッチ装置。
【請求項3】
前記ケースに、前記GMR素子を含むセンサユニットが配置される凹部を形成し、前記凹部に前記センサユニットを配置した状態の前記ケースを一体的に保持するカバー部材を更に具備することを特徴とする請求項2記載の非接触式スイッチ装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、外部からの磁気を遮断することを特徴とする請求項3記載の非接触式スイッチ装置。
【請求項5】
前記磁石は、表裏面が単純2極着磁され、当該磁石の表面又は裏面を前記GMR素子の磁気検知面に対向配置させた状態で往復動することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の非接触式スイッチ装置。
【請求項1】
操作者からの操作に応じて往復動可能な磁石と、前記磁石からの磁場の向きを検出するGMR素子とを具備し、前記GMR素子で検出した磁場の向きに応じて出力信号を切り替える非接触式スイッチ装置であって、前記GMR素子が有するフリー層の磁化方向は、前記磁石からの磁場のみによって変化することを特徴とする非接触式スイッチ装置。
【請求項2】
前記磁石が組み込まれ、操作者からの操作を受け付けて往復動する可動部材と、前記磁石からの磁場が前記GMR素子のフリー層に作用する範囲内で往復動可能に前記可動部材を収容するケースとを更に具備することを特徴とする請求項1記載の非接触式スイッチ装置。
【請求項3】
前記ケースに、前記GMR素子を含むセンサユニットが配置される凹部を形成し、前記凹部に前記センサユニットを配置した状態の前記ケースを一体的に保持するカバー部材を更に具備することを特徴とする請求項2記載の非接触式スイッチ装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、外部からの磁気を遮断することを特徴とする請求項3記載の非接触式スイッチ装置。
【請求項5】
前記磁石は、表裏面が単純2極着磁され、当該磁石の表面又は裏面を前記GMR素子の磁気検知面に対向配置させた状態で往復動することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の非接触式スイッチ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−311199(P2008−311199A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−160561(P2007−160561)
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月18日(2007.6.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】
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