説明

非水の過酸化水素源を使用する蒸気滅菌装置および滅菌法

【課題】本発明は尿素−過酸化物複合体のような実質的に非水の有機過酸化水素複合体から放出された過酸化水素蒸気を使用する、医療器具および同様の装置の過酸化水素蒸気滅菌装置および方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明においては、場合によりプラズマを蒸気と共に使用することができる。さらに、実質的に非水の過酸化水素複合体の製造法もまた提供される。これらの複合体は過酸化水素蒸気滅菌器の過酸化物蒸気源として、また自己滅菌包装材料の成分として有用である。

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】
【0001】
本出願は1994年4月28日に出願された米国特許出願番号No.08/234,738(その開示は参考文献として本明細書に組込まれる)の一部継続出願である。
【0002】
本発明は医療器具のような製品を滅菌するため過酸化水素蒸気を使用する装置および方法、さらに詳しくはこのような方法における非水の過酸化水素蒸気源の使用に関する。本発明はまた、非水の有機および無機過酸化水素複合体を合成するための気相法を提供する。
【従来技術および発明が解決しようとする課題】
【0003】
医療器具は伝統的に、スチームにより供給されるような熱、あるいは気体または蒸気状態のホルムアルデヒドまたはエチレンオキシドのような化学薬品を使用して滅菌されている。これらの方法は何れも欠点を有する。ファイバーオプチックス装置、内視鏡、電動工具などのような医療装置の多くは熱、水分または両方に対して感応しやすい。ホルムアルデヒドおよびエチレンオキシドは共に作業員のヘルスケアに潜在的な危険をもたらす毒性の気体である。エチレンオキシドに伴う問題はその使用が滅菌された製品から気体を除去するのに長時間のエアレーションを必要とするため、特に深刻である。このことは滅菌のサイクル時間を長くし、望ましくない。さらに、ホルムアルデヒドおよびエチレンオキシドは共にシステム中に多量の水分の存在を必要とする。したがって、滅菌する装置は化学薬品を導入する前に湿らす必要があり、または化学薬品および水分を同時に導入しなければならない。水分は表1に示されるようにエチレンオキシドおよびホルムアルデヒドの他に、気体または蒸気状態の様々な化学薬品と一緒に滅菌において役割を果たす。
【0004】
[表1]
最適効力のための
化学薬品 相対湿度要求条件 参考文献
エチレンオキシド 25〜50% 1
プロピレンオキシド 25〜50% 1
オゾン 75〜90% 2
ホルムアルデヒド 75%未満 1
グルタルアルデヒド 80〜90% 3
二酸化塩素 60〜80% 4
臭化メチル 40〜70% 1
β−プロピオラクトン 75%未満 1
過酢酸 40〜80% 5
1.Bruch, C.W. の「気体滅菌」,Ann. Rev. Microbiology 15,245〜262(1961年)。
2.Janssen, D.W. およびSchneider,P.M.の「エチレンオキシド代替滅菌技術の概説」,Zentralsterilisation 1,16〜32(1993年)。
3.Bovallius, A. および Anas.P.の「気体−エーロゾル相のグルタルアルデヒドの表面−汚染除去作用」,Applied and Environmental Microbiology, 129〜134(1977年8月)。
4.Knapp, J.E. らの「気体滅菌剤としての二酸化塩素」,Medical Device & Diagnostic Industry, 48〜51(1986年9月)。
5.Portner, D.M. および Hoffman,R.K. の「過酢酸蒸気の殺胞子作用」,Applied Microbiology 16,1782〜1785(1968年)。
【0005】
過酸化水素蒸気を使用する滅菌は他の化学的滅菌法(例えば米国特許第4,169,123号および第4,169,249号参照)と比べて幾つかの利点を有することがわかっており、また過酸化水素とプラズマの組合せは1987年2月17日に発行されたJacobsらの米国特許第4,643,876号に開示されているような利点をさらに与える。これらの開示において、過酸化水素蒸気は過酸化水素の水溶液から発生し、それにより確実に水分がシステム中に存在する。これらの開示は表1の概要と一緒になって、蒸気相の過酸化水素が効果的であるためには、またはその最大殺胞子活性を示すためには水分が必要であることを教示している。しかしながら、滅菌のため過酸化水素蒸気を発生させるのに過酸化水素の水溶液を使用することは問題を引き起こす。大気圧のような高圧で、システム中の過剰の水は凝縮を引き起こしうる。したがって、水性過酸化水素蒸気を導入する前に滅菌用閉鎖容器中の相対湿度を下げなければならない。
【0006】
細長い内腔(lumen)のような拡散が制限される領域を含む製品の滅菌は過酸化水素の水溶液から発生させた過酸化水素蒸気について特別なチャレンジをしている。
理由:1.水は過酸化水素より高い蒸気圧を有し、水溶液から過酸化水素より速く気化
するため。
2.水は過酸化水素より低い分子量を有し、蒸気状態で過酸化水素より速く拡散
するため。
【0007】
このため、過酸化水素の水溶液が気化される場合、水が最初に高濃度で滅菌される製品に到達する。したがって、水蒸気は小さな隙間および細長い内腔のような拡散が制限される領域への過酸化水素蒸気の浸透に対してバリヤーになる。65重量%以上の過酸化水素の濃縮溶液は溶液の酸化性により危険となりうるため、水溶液から水を除去し、より濃縮された過酸化水素を使用することによっては問題を解決することができない。
【0008】
それぞれ、BierおよびCummingsらに発行された2つの特許、米国特許第4,642,165号および同第4,744,951号はこの問題を取り扱っている。Bierは過酸化水素溶液の小インクレメントを加熱表面上に計量して、次のインクレメントが加えられる前に各インクレメントが気化されるようにすることにより問題の解決を試みている。このことは、過酸化水素と水との蒸気圧および揮発性の違いを排除するのに役立つが、蒸気状態で水が過酸化水素より速く拡散するという事実には触れていない。
【0009】
Cummingsらは過酸化水素および水の比較的希薄な溶液から過酸化水素を濃縮し、そして濃縮過酸化水素を蒸気形態で滅菌チェンバーに供給する方法を開示している。この方法は多量の水を溶液から気化させ、そして濃縮過酸化水素蒸気を滅菌チェンバーに導入する前に生成した水蒸気を除去することを含む。濃縮過酸化水素溶液の好ましい範囲は50〜80重量%である。この方法は危険な範囲、すなわち65%以上の過酸化水素を含有する溶液を用いて作業するという欠点を有し、また蒸気状態からすべての水を除去するわけではない。水が溶液中にまだ存在するため、それは最初に気化し、より速く拡散し、そして最初に滅菌される製品に到達する。この作用は特に細長い内腔において著しい。
【0010】
Jacobsらに発行された「内腔を有する製品の蒸気滅菌法」という名称の米国特許第4,943,414号は少量の揮発性液体滅菌剤溶液を含有する導管が内腔に取付けられ、そして滅菌サイクルの間に圧力が減少されると滅菌剤が気化し、製品の内腔に直接流入する方法を開示している。このシステムは水および過酸化水素蒸気が存在する差圧により内腔を通して引っ張られ、内腔の滅菌速度を増加するという利点を有するが、導管を滅菌される内腔のそれぞれに取付ける必要があるという欠点を有する。さらに、水はより速く気化され、過酸化水素蒸気より先に内腔に入る。
【0011】
Merianosは米国特許第5,008,106号において、PVPおよびH22 の実質的に無水の複合体は表面の微生物含量を減らすのに有用であることを開示している。白色の微粉末形態の複合体は抗微生物溶液、ゲル、軟膏などを生成するために使用される。それはまた、ガーゼ、綿棒、スポンジなどに塗布することができる。H22 は微生物を含有する表面上に存在する水と接触して放出される。したがって、この方法は水分の存在を非常に必要とするため滅菌を行うことができない。
【0012】
Nikolskayaらは旧ソ連特許明細書No.SU1681860において、フッ化アンモニウムペルオキソ水和物(NH4 F・H22 )を使用して表面を必ずしも滅菌できないが、汚染除去できることを開示している。しかしながら、この無機過酸化物複合体は70〜86℃の非常に狭い温度範囲内でのみ汚染除去する。この範囲内でさえ、汚染除去時間は非常に長く、少なくとも2時間を要した。さらに、フッ化アンモニウムは40℃以上の温度で分解してアンモニアおよびフッ化水素酸となることが知られている。その毒性および反応性のため、フッ化水素酸は殆どの滅菌システムにおいて望ましくない。また、Nikolskayaらの文献は60℃でその過酸化水素の90%を放出するにも関わらず、NH4 F・H22はこの温度での表面の汚染除去において効果的でないことを開示している。したがって、過酸化水素以外の要因が上記の汚染除去に関与すると考えられる。
【0013】
過酸化水素は有機および無機化合物の両方と複合体を生成することができる。これらの複合体の結合は複合体を生成する化合物の電子に富む官能基と過酸化物の水素との間の水素結合によるものである。複合体は漂白剤、消毒剤、滅菌剤、有機合成における酸化試薬およびラジカル重合反応用触媒のような商業的および工業的用途に使用されている。
【0014】
一般に、これらのタイプの化合物は水溶液からの複合体の結晶化により製造されている。例えば、尿素−過酸化水素複合体はLu,Hughes およびGiguere 〔J.Amer. Chem. Soc.63(1),1507〜1513(1941年)〕により、尿素溶液を過酸化水素溶液に加え、適当な条件下で複合体を結晶化することによって、液相中で製造された。Gates ら(米国特許第2,986,448号)はNa2 CO3 飽和水溶液を50〜90%H22 溶液と共に閉サイクルシステムにおいて0〜5℃で4〜12時間処理することにより炭酸ナトリウム−過酸化水素複合体を製造した。最近、Hallら(米国特許第3,870,783号)は過酸化水素および炭酸ナトリウムの水溶液をバッチまたは連続結晶化器で反応させることにより炭酸ナトリウム−過酸化水素複合体を製造した。結晶をろ過または遠心分離により単離し、溶液をさらに炭酸ナトリウム溶液を生成するために使用する。これらの方法は水溶液から安定で結晶性のさらさらした生成物を生成する過酸化物複合体についてはうまくゆく。
【0015】
Shiraeff(米国特許第3,376,110号および第3,480,557号)は過酸化水素とN−ビニル複素環式重合体化合物(PVP)の複合体の水溶液からの製造を開示した。得られる複合体は変動しうる量の過酸化水素および多量の水を含有した。。Merianosは米国特許第5,008,093号において、PVPおよびH22 のさらさらした、安定で実質的に無水の複合体がPVP懸濁液およびH22 溶液を酢酸エチルのような無水の有機溶媒中で反応させることにより得られることを開示した。最近、Biss(米国特許第5,077,047号)は30〜80重量%の過酸化水素水溶液の微細な液滴を周囲温度〜60℃に維持されたPVP流動床に加えることによりPVP−過酸化水素生成物を生成するための工業プロセスを開示した。得られる生成物は過酸化水素濃度が15〜24%である安定で実質的に無水のさらさらした粉末であることがわかった。
【0016】
Moschnerら(米国特許第5,030,380号)は最初に水溶液中で複合体を生成し、次に反応生成物を真空下で乾燥することにより、または生成物の熱分解を回避できる程低い温度で噴霧乾燥することにより、過酸化水素との固体重合体電解質複合体を製造した。
【0017】
これらの従来の過酸化水素複合体の製造法はすべて、過酸化水素溶液を使用する。複合体は過酸化水素を含有する溶液中で生成され、または過酸化水素溶液の液滴が反応物質の流動床に噴霧される。
【0018】
蒸気相および気相反応はよく知られている合成法である。例えば、Roetheli(米国特許第2,812,244号)は脱水素、熱分解および脱メタンの固体−気体プロセスを開示した。Fujimotoら(Journal of Catalysis, 133,370〜382(1992年))はメタノールの蒸気相カルボニル化を開示した。Zellersら(Analytical Chemistry,62,1222〜1227(1990年))はスチレン蒸気と正方平面形の有機白金醋体との反応を検討した。しかしながら、これらの従来の蒸気相および気相反応は過酸化水素複合体を生成するのに使用されなかった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一面は製品の過酸化水素滅菌装置に関する。本装置は滅菌する製品を保持するための容器およびその容器内に位置する過酸化水素蒸気源を包含する。蒸気源は実質的に非水の有機過酸化水素複合体を含有し、滅菌を行うために蒸気が製品と接触できるように配置される。ある態様において、容器は通気性バリヤーを含有する。使用される複合体は尿素−過酸化物複合体、ポリビニルピロリドン−過酸化物複合体、ナイロン6−過酸化物複合体または1,3−ジメチル尿素−過酸化物複合体のような種々の有機過酸化水素複合体であってよい。特定の態様において、複合体は真空下で不安定であり、例えば無水グリシン−過酸化物複合体である。本装置はまた容器内に位置するヒーターを含有し、それにより複合体はヒーターの上に配置され、複合体からの蒸気の放出を容易にするため加熱される。特定の態様において、本装置はその中に複合体が位置する容器の外側に設置された囲いおよび容器と囲いの間を流体伝達する入口を含有し、それにより複合体から放出された蒸気が入口を通って容器の中に移動して滅菌を行う。他の特定の態様において、本装置は入口の中に設置された閉鎖可能な弁を含有し、それにより弁が閉ざされると、囲いの容器から分離される。本装置はまた、容器を排気するための、容器と流体伝達する真空ポンプを含有することができる。容器および囲いと流体伝達する真空ポンプをポンプと容器の間、ポンプと囲いの間、そして囲いと容器の間に設置された閉鎖可能な弁と一緒に含有することもでき、それにより囲いおよび容器を独立してまたは同時に排気することができる。製品の周囲にプラズマを発生させるための電極を容器の内部に含有することもできる。好ましい態様において、複合体は固相である。本装置は複合体を加熱するように配置されたヒーターを含有することができる。
【0020】
本発明の別の面は製品の過酸化水素蒸気滅菌法に関する。この方法は製品を容器の中に入れ、そして製品と接触し、滅菌するために実質的に非水の有機過酸化水素複合体から放出された過酸化水素蒸気と製品を接触させる工程を包含する。好ましい態様において、蒸気は約10%以下の水を有する複合体から放出される。複合体は複合体からの蒸気の放出を容易にするため加熱することができる。場合により、滅菌を増進するために圧力で律動的に送る(pressure pulsing)ことができる。幾つかの態様において、容器は蒸気を容器の中に導入する前に排気される。本法はまた、蒸気を容器の中に導入した後に容器中でプラズマを発生させる工程を包含することができる。
【0021】
本発明のさらに別の面において、製品の過酸化水素プラズマ滅菌法が提供される。この方法は製品を容器の中に入れ;製品と接触するために実質的に非水の有機過酸化水素複合体から放出された過酸化水素蒸気と製品を接触させ;容器中でプラズマを発生させて製品を取り囲み;そして製品の滅菌を行うのに十分な時間および/または残留の過酸化水素を製品から除去するのに十分な時間、プラズマ中で製品を維持することを包含する。ある態様において、過酸化物処理は第1チェンバーで行われ、そしてプラズマ処理は別の第2チェンバーで行われる。
【0022】
本発明のもう1つの面もまた、製品の過酸化水素プラズマ滅菌法に関する。この方法は製品を容器の中に入れ;製品と接触するために実質的に非水の有機過酸化水素複合体から放出された過酸化水素蒸気と製品を接触させ;製品から離れた場所でプラズマを発生させ;製品を含有する容器にプラズマを流し;そして製品の滅菌を行うのに十分な時間および/または残留の過酸化水素を製品から除去するのに十分な時間、プラズマ中で製品を維持することを包含する。プラズマ処理は過酸化物処理が行われるチェンバーと同じまたは異なるチェンバーで行うことができる。
【0023】
本発明の別の面は、製品を実質的に非水の過酸化水素複合体を含有する囲いの中に入れ;その囲いを密封し;そしてその囲いをおよそ大気圧および約70℃以下、好ましくは約40℃以下の温度で、複合体から実質的に非水の過酸化水素蒸気を放出するのに十分な時間放置して製品の滅菌を行うことを包含する、製品の過酸化水素滅菌法に関する。囲いを大気圧より低い圧力で放置したり、そして/または蒸気の放出を容易にするため23℃以上の温度に加熱することができる。囲いはパウチ、容器、チェンバーまたは部屋であってよい。過酸化水素複合体は粉末または錠剤の形態であってよい。密封工程は囲いをTYVEK(商標)、CSRラップまたは紙のような気体透過性材料で密封することからなってもよい。
【0024】
本発明の別の面は滅菌製品および過酸化水素蒸気を放出することのできる実質的に非水の過酸化水素複合体を含有する密封された囲いに関する。
【0025】
本発明のさらに別の面は外部およびその中の狭い内腔を有する製品の過酸化水素滅菌法に関する。この方法は実質的に非水の過酸化水素複合体を含有する導管を製品の内腔に接続し;製品を容器の中に入れ;容器を排気し;そして製品の内腔を実質的に非水の過酸化水素複合体から放出された過酸化水素蒸気と約70℃以下の温度で接触させることを包含する。好ましい態様において、本法はまた製品の外部を第2源の滅菌剤、例えば過酸化水素蒸気を放出するものと接触させることを包含することができる。この第2源の滅菌剤からの過酸化水素蒸気は第2の実質的に非水の過酸化水素複合体から放出させることができる。この態様において、第2の実質的に非水の過酸化水素複合体は接続工程で使用される過酸化水素複合体と同じまたは異なる複合体であってよい。本法はまた、容器中でプラズマを発生させて製品を取り囲み、そして製品をプラズマ中で、製品の滅菌を行うのに十分な時間維持することを包含することができる。さらに、本法は容器中でプラズマを発生させて製品を取り囲み、そして製品をプラズマ中で、残留の過酸化水素を製品から除去するのに十分な時間維持することを包含することができる。
【0026】
本発明のさらに別の面は実質的に非水の過酸化水素複合体の製造法に関する。この方法は(a)組成物を含有するチェンバーを排気し、そして(b)過酸化水素蒸気をチェンバーに導入する工程を包含し、それにより過酸化水素蒸気が組成物と反応して複合体を生成する。組成物はアルコール、エーテル、ケトン、酸、アミノ酸、エステル、有機塩、アミン、アミド、尿素、ビウレット、ポリアミド、ポリウレタン、アルカリ金属炭酸塩、水酸化物またはピロ燐酸四ナトリウムであってよい。特に好ましい組成物の例としては、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルメチルケトン)、ポリ(アクリル酸)、グリシン、L−ヒスチジン、ポリ(酢酸ビニル)、酢酸セルロース、アルギン酸ナトリウム、硫酸セルロース(ナトリウム塩)、ヒスタミン、無水グリシン、プロピオンアミド、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(4−ビニルピリジン)、ナイロン6、ナイロン6,6フィルム、ポリエーテルポリウレタン、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、重炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムおよび1,3−ジメチル尿素が挙げられる。幾つかの態様において、過酸化水素蒸気は実質的に無水である。
【0027】
本発明の別の面は、ポリ(ビニルアルコール)−過酸化水素複合体、ポリ(ビニルメチルエーテル)−過酸化水素複合体、ポリ(ビニルメチルケトン)−過酸化水素複合体、ポリ(アクリル酸)−過酸化水素複合体、ポリ(酢酸ビニル)−過酸化水素複合体、酢酸セルロース−過酸化水素複合体、アルギン酸ナトリウム−過酸化水素複合体、硫酸セルロースナトリウム塩−過酸化水素複合体、グリシン−過酸化水素複合体、ポリ(4−ビニルピリジン)−過酸化水素複合体、ヒスタミン−過酸化水素複合体、プロピオンアミド−過酸化水素複合体、1,3−ジメチル尿素−過酸化水素複合体、ビウレット−過酸化水素複合体、ポリアクリルアミド−過酸化水素複合体、ナイロン6−過酸化水素複合体、ナイロン6,6フィルム−過酸化水素複合体、ポリエーテルポリウレタン−過酸化水素複合体および炭酸ルビジウム−過酸化水素複合体に関する。
【0028】
本発明のさらに別の面は、製品を容器の中に入れ、そして製品と接触し、滅菌するために過酸化水素蒸気と製品を接触させることを包含する製品の過酸化水素蒸気滅菌法に関する。この方法において、蒸気は分解してハロゲン化水素酸を放出しない実質的に非水の過酸化水素複合体から放出される。本明細書において、ハロゲン化水素酸はHCl、HF、HBrなどのような、水素原子およびハロゲン原子で構成される酸として定義される。
【0029】
従来から使用されている過酸化水素滅菌器はその滅菌剤源として過酸化水素の水溶液を使用している。これらの滅菌器はシステム中に水が存在することにより生じる欠点を有する。大気圧のような高圧で、システム中の過剰の水は凝縮を引き起こしうる。このことは水性過酸化水素蒸気を導入する前に、滅菌される囲いの中の大気の相対湿度を許容レベルまで減少するために行う余分な工程を必要とする。これらの滅菌器はまた、水が過酸化水素より高い蒸気圧を有し、水溶液からより速く気化するという事実および水が過酸化水素より低い分子量を有し、速く拡散するという事実により生じる欠点を有する。医療装置などが滅菌器に封入された時、過酸化水素源から装置に到達する初期の滅菌剤はその源の濃度と比べて希薄である。希薄な滅菌剤は特に滅菌される装置が内視鏡のような、狭い内腔を有する製品である場合、その後に到達する滅菌剤に対してバリヤーとなるうる。これらの欠点を克服するために過酸化水素の濃縮溶液をその源として使用することは、このような溶液が危険であるため不満足である。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、医療器具のような製品を滅菌するため、実質的に非水の過酸化水素複合体から放出された過酸化水素蒸気を使用する装置および方法が提供される。本発明においては、潜在的に危険な濃縮過酸化水素溶液の使用が回避され、また実質的に水が存在しないため、より速く、より効率的に滅菌を行うことができる。
【0031】
本発明において、従来の過酸化水素滅菌器の欠点は実質的に非水の過酸化水素蒸気を放出する実質的に非水(すなわち、実質的に無水)の過酸化水素源を使用することにより克服される。好ましい態様において、実質的に非水の過酸化水素蒸気は実質的に非水の過酸化水素複合体から直接発生する。しかしながら、実質的に非水の過酸化水素蒸気はまた、水を除去するために気化中に、例えば真空下で処理される水性複合体から発生させることもできる。したがって、水性過酸化水素複合体を使用する場合、本発明の方法を実施しながら、水性複合体を実質的に非水の過酸化水素複合体に変換する。好ましくは、実質的に非水の過酸化水素複合体は約20%以下、より好ましくは約10%以下、さらにより好ましくは約5%以下、そして最も好ましくは約2%以下の水を含有する。
【0032】
上記した、本発明で使用される実質的に非水の過酸化水素複合体に含まれる水の好ましい百分率から明らかなように、最も好ましい過酸化水素複合体およびそれから発生する過酸化物蒸気は実質的に無水である。にも関わらず、これらの数値からも明らかなように、システム中に水が少し存在しうる。この水の幾らかが過酸化水素の分解を誘導して水と酸素を副生成物として生成したり、またこの水と複合体の水素結合が幾らか生じることもある。
【0033】
種々の相対湿度に維持したチェンバーを用いて、水の効果を一連の試験で測定した。試験条件は下記の実施例1に記載した通りであり、胞子を3mm/50cmのステンレス鋼内腔中、ステンレス鋼ブレードで支持した。表2を見てわかるように、試験条件下で5%の相対湿度は効力に全く影響を及ぼさないが、10%の相対湿度は滅菌速度を減少する。この例は少量の水分が非水の過酸化物複合体から発生した過酸化水素を用いたシステム中で許容され、またシステム中の水の存在は暴露時間を増加することにより克服できることを示している。
【0034】
[表2]
効力における相対湿度の効果
3mm×5cmのステンレス鋼内腔中のステンレス鋼ブレード
滅菌結果(陽性/サンプル)
拡散時間 1%の相対湿度 5%の相対湿度 10%の相対湿度
5 0/3 0/3 3/3
10 0/3 0/3 2/3
15 0/3 0/3 0/3
30 0/3 0/3 0/3
過酸化水素源の組成における主要な基準は温度および圧力の関数としての、その安定度と過酸化水素蒸発速度の関係である。滅菌法のパラメーター、例えば圧力、温度などに応じて、高めまたは低めの過酸化物蒸発速度が好ましく、また過酸化物源の加熱が必要または不必要である。過酸化物複合体の加熱の必要性は複合体の蒸気圧に依存する。幾つかの過酸化物複合体は複合体を加熱することなく有意な量の過酸化水素蒸気を放出できる程十分に高い蒸気圧を有する。一般に、複合体の加熱は過酸化水素の蒸気圧を増加し、複合体からの過酸化物の放出を促進する。
【0035】
所望の高い蒸発速度を与えるために、この源は好ましくは大きい表面積を有する。したがって、その源は微粉末、または大きい表面積を有する材料上のコーチングであってよい。勿論、材料の安全性、入手可能性およびコストもまた重要な基準である。尿素、ポリビニルピロリドン、ナイロン−6、無水グリシンおよび1,3−ジメチル尿素との過酸化水素複合体からの過酸化水素の放出が評価された。尿素、ポリビニルピロリドン、ナイロン−6および無水グリシンと過酸化水素の複合体は固体である。1,3−ジメチル尿素−過酸化水素複合体は液体である。無水グリシン−過酸化水素複合体は評価された他の複合体よりも減圧下で不安定な複合体であり、また真空条件下で殆どの過酸化水素がさらに加熱する必要なしに複合体から放出されうる。
尿素−過酸化水素複合体は錠剤でFluka Chemical社から、また粉末でAldrich Chemical社から入手できる。この複合体は尿素過酸化物、過酸化水素−尿素複合体、ペルオキシド尿素、ペルオキシド尿素アダクト、尿素過酸化物アダクト、ペルカルバミド、カルバミド過水和物およびカルバミド過酸化物としても知られている。本明細書で使用される「尿素過酸化物」なる用語は上記の用語のすべてを包含する。
【0036】
ポリビニルピロリドン−過酸化水素複合体(PVP−H22 )は国際出願公報No.WO92/17158に開示されている方法により製造することができる。あるいは、PVP、ナイロン−6、1,3−ジメチル尿素および無水グリシンとの、並びに他の有機および無機化合物との複合体は下記に詳細に開示される方法により製造することができる。
【0037】
その源からの無水過酸化物蒸気の適当な蒸発速度は高温および/または減圧により容易に達成されうる。したがって、過酸化物源のヒーターおよび/または滅菌チェンバーを排気する真空ポンプは好ましくは滅菌器の一部である。好ましくは、その源は気体透過性材料、例えばTYVEK(商標)ポリエチレン不織布、SPUNGUARD(商標)のようなポリプロピレン不織布、または過酸化物蒸気を通過させるが過酸化物複合体生成物質を通過させない同様の材料の層でカバーされる。有孔アルミニウムまたは他の適当な有孔材料もまたカバーとして使用することができる。
【0038】
図3は種々の温度条件下で過酸化水素複合体からの過酸化水素の放出を測定するために使用されうる装置80を示す。この装置において、アルミニウムパン90はメディカルグレードのTYVEK(商標)の層のような気体透過性層92でカバーされる。パン90はパイレックス(登録商標)パン96の中にある加熱パッド94の上部に配置される。熱電対温度計98はパン90の外側の、その底から約1cmの所に置かれる。
【0039】
過酸化物源を保持するための好ましい容器99は図4に示される。容器99は場合により固体状過酸化物複合体を加熱するために使用されるヒーターを取付けた金属プレート100、例えばアルミニウムプレートを含む。温度計のような温度モニター101をプレート100の上に置いて温度を監視することができる。過酸化物複合体はプレート100の上に直接置かれる。別法として、すべての過酸化物複合体を均一に加熱するために、過酸化物複合体をプレート100の上部にある1個以上のアルミニウムスクリーン102,104の間に置くことができる。より多い量の過酸化物複合体が使用される場合、アルミニウムスクリーン102,104はより大きい表面積および複合体の均一な加熱を与える。過酸化物複合体またはスクリーン102,104は次にメディカルグレードのTYVEK(商標)またはSPUNGUARD(商標)の層のような気体透過性層106でカバーされ、それにより複合体から放出された過酸化水素はカバー106を通過して残りのチェンバー中に拡散する。有孔アルミニウムプレート108は場合によりTYVEK(商標)またはSPUNGUARD(商標)層106の上部に置かれ、それにより複合体と熱プレート100の接触を維持し、過酸化物複合体の均一な加熱を確実にする圧力を与える。
【0040】
上記の装置は複合体を均一に加熱し、その結果過酸化物複合体から放出される過酸化水素蒸気の量が増加する。
【0041】
図1は本発明の過酸化水素蒸気滅菌装置の略図である。チェンバー10は滅菌される製品12を保持し、その製品は好都合には棚14の上に置かれる。ドア16によりチェンバー10の内部に接近できる。非水の過酸化水素源18は温度コントローラー22により制御される任意のヒーター20の上に描かれる。過酸化物濃度は任意のモニター24により監視することができる。所望ならば、チェンバー10はポンプ26を使用して排気することができるが、滅菌はまた大気圧で行うことができる。
【0042】
滅菌される製品を保持する容器は排気される慣用の滅菌チェンバーであってよく、または大気圧の容器(または部屋)であってよい。
【0043】
製品を滅菌するのに必要な時間は製品の性質、数および包装、並びにチェンバー中のそれらの位置に依存する。あるいは、それは滅菌されるチェンバーそのもの(または部屋全体)に依存する。何れにせよ、最適な滅菌時間は経験的に決定することができる。
【0044】
滅菌技術においてよく知られているように、滅菌剤気体の浸透および抗微生物活性を高めるために圧力で律動的に送ることを非水の過酸化水素滅菌法に応用することもできる。下記に詳細に記載されるように、さらに活性を高めるためにプラズマもまた使用することができる。
【0045】
滅菌工程の最後に、装置と接触する空気を交換することにより、過酸化物に対する親和性を有する装置から過剰の過酸化水素を除去することができる。これは温風を装置に長時間流すことにより、またはチェンバーを排気することにより行うことができる。
【0046】
過酸化水素蒸気にさらして先に滅菌した製品をさらにプラズマにさらして製品に残留する残りの過酸化水素を除去することができる。過酸化水素がプラズマ処理中、非毒性の生成物に分解されるため、追加の工程を全く必要とすることなく滅菌製品を使用することができる。
【0047】
蒸気の再吸収を避けるために過酸化物蒸気が放出された後に、または過酸化物源をプラズマにさらすのを避けるためにプラズマが使用される時に、滅菌器から過酸化物源を分離することが望ましい。分離はまた、使用される複合体が真空下で不安定を場合に有利である。分離は当該技術分野においてよく知られている弁または他の分離装置を使用して行うことができる。
【0048】
図2は本発明の過酸化水素プラズマ滅菌システムの略図である。滅菌はプラズマの使用の有無に関係なく行うことができる。過酸化物蒸気の殺胞子活性を高めるために、そして/または滅菌製品に残留する残りの過酸化水素を除去するために、プラズマを使用することができる。
【0049】
滅菌はそれを通して滅菌される製品を入れることができるドアまたは開き32を含むチェンバー30で行われる。チェンバー30はそれを通してチェンバーを排気することができる真空ポンプ36までの出口34を含む。出口34はチェンバーを真空ポンプ36から分離する弁38を含む。チェンバー30はまた、過酸化水素複合体を含有する囲い42に取付けられた入口40を含む。入口40は囲い42をチェンバーから分離する弁44を含む。滅菌システムはまた、囲い42と真空ポンプ36を接続する入口41を含み、それは弁43を含む。このシステムは囲い42とチェンバー30の同時排気、あるいは囲い42またはチェンバー30の単独排気を可能にする。排気は弁38,44および43の開閉により制御される。当業者には明らかなように、各チェンバーにつき1個ずつ、すなわち2個のポンプをこのシステムで使用することもできる。
【0050】
囲い42は過酸化水素複合体の温度を制御するために温度コントローラー46が取付けられた任意のヒーター49を含む。蒸気状態の過酸化水素複合体濃度は任意の過酸化物モニター48により監視することができる。チェンバーの内部は高周波(RF)電極50を含み、それに整合回路網52およびRF電源54が取付けられる。好都合な形態の電極はサンプルを取り囲み、両端が開いている有孔シリンダーである。本発明の方法の一般操作は次の通りである:
【0051】
1.滅菌する製品56をチェンバー30の中に入れる。
2.チェンバー30は大気圧であるか、または過酸化水素の浸透を容易にするため排気することができる。排気は弁38を開き、真空ポンプ36を作動させることにより行われる。別法として、弁38,44および/または43を開くことによりチェンバー30と囲い42の両方を排気することができる。
3.真空ポンプ36をチェンバー30および囲い42から分離するために弁38および43を閉じ、そして弁44を開く。過酸化水素蒸気の放出を容易にするため加熱することができる過酸化水素源から過酸化水素蒸気をチェンバー30中に放出する。場合により、空気または不活性気体もまた加えることができる。
4.滅菌する製品56を過酸化物蒸気で処理して滅菌するか、またはチェンバー30において過酸化物蒸気で前処理して、滅菌するのに十分な電力でプラズマを発生させる。必要ならば、チェンバー30はこの時プラズマの発生を容易にするため排気することができる。予備プラズマ保持期間の時間は使用されるパッケージの種類、滅菌される製品の性質および数、並びにチェンバー中の製品の位置に依存する。最適な時間は経験的に決定することができる。
5.RF電源54からRF電極50に電力を加えることにより製品56をプラズマにさらす。プラズマを発生させるために使用されるRFエネルギーはパルス状にすることができ、または連続的であってよい。製品56は完全滅菌を行う期間および/または残留の過酸化水素を除去する期間、プラズマ中に留まる。特定の態様において、プラズマは5〜30分間使用される。しかしながら、最適な時間は経験的に決定することができる。
【0052】
本明細書全体を通して使用される「プラズマ」なる用語はそれに伴って生じうる放射線を含む、加えた電場の結果として生じる電子、イオン、遊離基、解離および/または励起原子または分子を含有する気体または蒸気を包含することを意図する。加える電場は幅広い範囲の周波数を包含するが、通常は高周波またはマイクロ波が使用される。
【0053】
本発明で開示される非水の過酸化水素デリバリーシステムはまた、前記の米国特許第4,643,876号に開示されている方法により発生させるプラズマを使用することができる。別法として、それは滅菌される製品がプラズマ源と離れたチェンバー中に位置する米国特許第5,115,166号または第5,087,418号に記載されているプラズマを使用することができる。
【0054】
上記の装置は真空下で不安定な過酸化物複合体を使用する場合、特に有利である。真空工程中の過酸化水素の損失を最小限にするために使用することができる少なくとも2つの可能な方法がある。第1に、小さいチェンバーを単独に排気することができる。第2に、十分に小さいチェンバーが使用される場合、小さいチェンバーを排気する必要は全くない。
【0055】
このような不安定な非水の過酸化物複合体の1つは無水グリシン−過酸化物である。この化合物は真空下に置かれると過酸化水素蒸気を放出する。図5は真空下での無水グリシン−過酸化物複合体からの過酸化水素蒸気の放出を示すグラフ図である。無水グリシン複合体から過酸化水素を放出するために使用した手順は次の通りである:(1)弁43および44を閉じて、主要なチェンバー30を排気した。(2)弁38および44を閉じ、弁43を開いて、過酸化水素複合体を含有するチェンバー42を排気した。(3)弁43を閉じ、弁44を開いて、過酸化水素蒸気をチェンバー30中に拡散した。
【0056】
グラフ図に示されるように、過酸化水素蒸気は加熱しない場合でも減圧されると複合体から放出される。図5を見てわかるように、過酸化物蒸気の放出は複合体を高温に加熱することにより有意に増加される。したがって、不安定な過酸化物複合体でさえ本発明の滅菌法において有用である。
【0057】
本発明は初期の過酸化水素滅菌システムと比べて少なくとも4つの利点を与える:
1.潜在的に危険な濃縮過酸化水素溶液の使用が回避される。
2.凝縮を防止するために予め滅菌される領域の相対湿度を下げる必要性が排除される。
3.水がシステムから実質的に排除され、その結果細長い内腔中への拡散について水と過酸化水素の間の競合は殆どない。
4.滅菌剤気体を細長い内腔中に運ぶための特別な導管を取付ける必要性が大抵排除されうる。
【0058】
水分の実質的な不在下で過酸化水素蒸気を使用して滅菌を行うことができるということは本発明の驚くべき発見の1つである。従来技術は化学的な気体または蒸気状態の滅菌法で滅菌を行うためには水の存在が必要であることを教示している。有利には、本発明はシステムから水を実質的に除去し、そのことはより速く、より効率的で有効な滅菌をもたらす。
【0059】
種々の非水の過酸化水素複合体の滅菌効力を下記の実施例1〜4に記載されているように測定した。
【実施例】
【0060】
実施例1.
生物チャレンジとして金属およびTEFLON(商標)プラスチック内腔中で枯草菌変異株(niger )胞子を使用し、実質的に無水の尿素過酸化物複合体から放出される過酸化水素蒸気を用いて効力データを得た。
【0061】
A.試験手順
1.装置
4gの粉砕された過酸化水素−尿素アダクト錠剤(Fluka Cemical 社製)を図3に示されているようなアルミニウムパン90に入れた。パン90の上部をメディカルグレードのTYVEK(商標)92(通気性のスパンボンドポリエチレン布)でカバーした。それにより複合体から放出された過酸化水素はすべてTYVEK(商標)カバーを通過してから残りのチェンバー中に拡散した。アルミニウムパン90をアルミニウム滅菌チェンバー(図1参照)の中にあるパイレックス(登録商標)皿96の中の加熱パッド94の上に置いた。容量が約173lの滅菌チェンバーはまた、
・蒸気相の過酸化水素濃度を測定するための過酸化水素モニター、
・加熱パッドの温度を制御するための温度コントローラー、
・それを通して過酸化水素液体をチェンバー中に注入することができる注入口、
・その上に内腔装置を含有するプラスチックトレーを試験するために置いた金属棚、
・効力試験の間チェンバー温度を45℃に維持するチェンバー壁の外部にある抵抗加熱ヒーターを含んだ。
【0062】
2.生物チャレンジおよび試験
非水の過酸化物デリバリーシステムの効力を評価するために、ステンレス鋼メスのブレード上の1.04×106 枯草菌変異株(niger )胞子からなる生物チャレンジを寸法が3mmの内径×40cmの長さ、3mmの内径×50cmの長さおよび1mmの内径×50cmの長さのステンレス鋼内腔のそれぞれの端から等しく離れた所に置いた。これらの内径および長さは医療装置で使用される金属内腔において典型的なものである。生物学的試験片を含有する内腔のそれぞれの中間部分の寸法は13mmの内径×7.6cmの長さであった。金属内腔を用いた生物学的試験において、1試験あたり全部で9個の内腔を評価した。これらは入手できる3つの異なるセットの内径および長さのそれぞれについて3個の内腔からなる。
【0063】
寸法が1mmの内径×1mの長さ、1mmの内径×2mの長さ、1mmの内径×3mの長さおよび1mmの内径×4mの長さのTEFLON(商標)内腔の端から等しく離れた所に位置する紙ストリップ(6mm×4mmのWhatman #1クロマトグラフィー用紙)上の4.1×105 枯草菌変異株(niger )胞子からなる生物チャレンジを用いて同様の試験を行った。生物学的試験片を含有するこれらの内腔の中心部分の寸法は15mmの内径×7.6cmの長さであった。TEFLON(商標)内腔を用いた生物学的試験において、1試験あたり全部で12個の内腔を評価した。これらは入手できる4つの異なる長さのそれぞれについて3個の内腔からなる。
【0064】
生物学的試験サンプルを含有する内腔をプラスチックトレーの中に入れ、それを次に滅菌チェンバー中の棚の上に置いた。チェンバーのドアを閉じ、真空ポンプを用いてチェンバーを0.2トルの圧力まで排気した。次に、過酸化水素−尿素アダクトを含有するアルミニウムパンをアルミニウムパンの側壁の、パンの底から約1cm離れた所にある熱電対温度計により測定して、80〜81℃に5分間加熱した。この時間の間、チェンバー中の過酸化水素濃度を過酸化物モニターにより測定して6mg/lまで増加した。
【0065】
生物学的試験サンプルを過酸化水素蒸気に5、10、15、20および25分間さらした。過酸化水素蒸気にさらした後、生物学的試験サンプルを277ユニットのカタラーゼを含有する15mlのトリプチカーゼ大豆ブイヨンに無菌的に移して試験サンプル中に残留する残りの過酸化物水素を中和した。すべてのサンプルを32℃で7日間インキュベートし、成長を観測した。
【0066】
50%過酸化水素水溶液を滅菌チェンバー中に注入し、熱インジェクター(加熱された金属表面)から気化させる比較試験もまた行った。注入した過酸化水素溶液の容量は6mg/lの過酸化水素蒸気相濃度を与えた。これらの試験で使用した試験内腔および生物学的試験サンプルは非水の過酸化水素試験で使用したものと同じである。過酸化水素にさらした後の生物学的試験サンプルの処理もまた同じである。
【0067】
B.試験結果
それぞれ表3および4に示されるステンレス鋼およびTEFLON(商標)内腔を用いたこれらの試験結果は金属および非金属内腔の両方において非水の過酸化物デリバリーシステムが有利であることを示している。細菌性胞子の全滅は評価した中で最小の内径および最長の内腔においても非水の過酸化物デリバリーシステムを用いて5分以内に達成された。同時に、50%過酸化水素水溶液を用いた場合、25分間の拡散時間後でさえ全滅しなかった。
【0068】
【表3】

【0069】
【表4】

【0070】
実質的な量の水の不在下で迅速な滅菌を行うことができるという事実は過酸化水素以外の様々な滅菌剤による化学的な気体/蒸気相滅菌中で一般に水分が存在しているという事実に照らして見れば驚くべきことである。過酸化水素蒸気相滅菌システムは過酸化水素の水溶液を使用するため、これらのシステム中にもまた水分が存在している。
様々な他の過酸化物複合体の滅菌効力を試験するために、次の実験を行った。
【0071】
実施例2,3および4.
実施例1の装置を使用して、ポリビニルピロリドン−過酸化水素複合体(実施例2)、ナイロン6−過酸化水素複合体(実施例3)および1,3−ジメチル尿素−過酸化水素複合体(実施例4)の効力を試験した。これらの化合物は下記の実施例12および13に記載の方法に従って合成した。試験パラメーターは次の通りである:

実 施 例

チェンバー温度 45℃ 45℃ 45℃
初期圧力 0.2 トル 1.0 トル 1.0 トル
過酸化物(重量%) 17% 10.5% 26.6%
過酸化物濃度 6 mg/l 6 mg/l 6 mg/l
1サイクルあたり使用
される複合体の重量 8 g 18g 6g
過酸化物 110 ℃ 110 ℃ 80℃
【0072】
各場合、胞子支持材はプラスチック内腔中の6mm×4mm紙支持体およびステンレス鋼内腔中のステンレス鋼ブレードである。この効力試験の結果を下記の表5に示す。
【0073】
【表5】

【0074】
表5の結果は試験した過酸化水素複合体が何れも僅か5分間の暴露で有効に滅菌する過酸化物蒸気を発生することを示している。
【0075】
蒸気の固体状複合体から過酸化水素蒸気を放出するのに必要な温度はアルミニウムパンの外側の、パンの底から約1cm離れた所にある熱電対温度計により測定される温度である。さらに、パンの内底にあるフルオロオプチック(fluoroptic)温度計のような温度計を使用する試験は下記の実施例5に記載されるようにパンの底の温度が約30〜35℃高めであることを示した。したがって、前記実施例において、パンの底の温度は熱電対温度計が80℃を示す時約110〜115℃であり、また熱電対温度計が110℃を示す時約140〜145℃であった。
【0076】
実施例5.
固体状過酸化物複合体を含有するために使用されるアルミニウムパンの底の温度を測定するために、フルオロオプチック温度計をアルミニウムパンの内底にテープでとめた。Omega (商標)熱電対温度計をアルミニウムパンの外側の、パンの底から約1cm離れた所に置いた。温度計の読み取りを3回行った。それぞれ、パンをパンの側面にある温度計により示される所望の温度まで加熱し、冷却し、次に所望の温度まで再び加熱した。
記録した温度を下記に示す:
パンの側面の温度 パンの底の温度(℃)
1回目 2回目 3回目 平 均
80 ℃ 110.9 110.6 110.6 110.7
100 ℃ 131.5 132.6 132.0 132.0
これらの結果はアルミニウムパンの底の温度がパンの側面にある熱電対温度計により示される温度より約30〜35℃高いことを示している。
【0077】
さらに、開放(非内腔)システムで水性および非水の過酸化物源を使用して得られた効力データを比較する試験を行った。その実験を下記に詳しく説明する。
【0078】
実施例6.
TYVEK(商標)/MYLAR(商標)エンベロープで包装されたWhatman #1クロマトグラフィー用紙の6mm×4mmストリップ上の6.8×105 枯草菌変異株(niger )胞子からなる生物チャレンジと共に実施例1の装置を使用した(TYVEK(商標)はポリエチレン製の気体透過性布である。MYLAR(商標)は非気体透過性ポリエステル材料である)。包装された生物チャレンジストリップを軟質のファイバーオプチックスS状結腸鏡を含んだポリフェニレンオキシドトレーの前、中間および後に置いた。拡散するための入口を上部に1個、底部に2個有するポリフェニレンオキシド容器にトレーを入れた。直径4インチの入口を通気性ポリプロピレン包装材料(SPUNGUARD(商標)Heavy Duty Sterilization Wrap )でカバーして滅菌後の容器の内容物の無菌性を維持した。容器を実施例1の装置の中に入れ、チェンバー中の圧力を0.2トルまで減圧した。次に、2gの過酸化水素−尿素アダクト(Fluka Chemical社製)を含有するアルミニウムパンをアルミニウムパンの外側の、アルミニウムパンの底から約1cm離れた所にある熱電対温度計により測定して80〜81℃に5分間加熱して3mg/lの過酸化水素蒸気をチェンバー中に供給した。生物学的試験サンプルを過酸化水素蒸気に5〜10分間さらした。暴露後、試験サンプルを実施例1と同様に処理した。
【0079】
50%過酸化水素水溶液を滅菌チェンバー中に注入し、熱インジェクターから気化させる比較試験もまた行った。注入した過酸化水素溶液の容量は3mg/lの蒸気相濃度を与えた。試験位置、生物学的試験サンプルの組成および暴露後の生物学的試験サンプルの処理はすべて、非水の過酸化水素試験のものと同じである。これらの試験の結果を表6に示す。
【0080】
[表6]
開放システムでの水性/非水の効力比較
(非内腔試験)
過酸化物源 拡散時間(分) 滅菌結果(陽性/サンプル)
50%溶液 5 3/3
10 3/3
尿素過酸化物 5 1/3
10 0/3
【0081】
これらの試験の結果は生物サンプルを内腔の中に入れない“開放”システムにおける水性過酸化水素法と比較して非水の場合の効力の方がより大きいことを示している。すなわち、驚くべきことに過酸化水素を細長い内腔中に拡散する必要がない時でさえ、非水のシステムは優れた滅菌を与えることを見出した。このことは過酸化水素の作用機構が水を含むシステムと水を含まないシステムとでは異なることを示唆している。
【0082】
さらに、減圧されない常圧での非水の過酸化物蒸気の効力を測定する試験を行った。この試験を下記で詳しく説明する。
【0083】
実施例7.
大気圧において開放システムで尿素過酸化物複合体から放出された過酸化水素蒸気を用いて効力試験を行った。この試験において、ステンレス鋼外科用ブレード上の1.04×106 枯草菌変異株(niger )胞子の生物チャレンジをTYVEK(商標)/MYLAR(商標)エンベロープで包装した。包装された生物チャレンジブレードをポリフェニレンオキシドトレーの前、中間および後に置いた。そのトレーを実施例1の装置の中に入れ、チェンバーのドアを閉じた。4.0gの尿素過酸化物(Fluka Chemical社製)を含有するアルミニウムパンを試験中に、アルミニウムパンの側面の、パンの底から約1cm離れた所にある熱電対温度計により測定して80〜81℃に加熱した。生物学的試験サンプルを過酸化水素蒸気に5、10、20および30分間さらした。暴露後、試験サンプルを実施例1と同様に処理した。これらの試験の結果を表7に示す。これらは大気圧における開放システムでの非水の過酸化物滅菌法の効力を証明している。
【0084】
[表7]
大気圧における開放システムでの非水の過酸化物滅菌法の効力
過酸化物源 拡散時間(分) 滅菌結果(陽性/サンプル)
尿素過酸化物 5 3/3
10 1/3
20 0/3
30 0/3
さらに、様々な温度において過酸化水素−尿素複合体から放出される過酸化物の概量を測定する試験を行った。この試験を実施例8に記載する。
【0085】
実施例8.
商業的に入手できる錠剤(Fluka Chemical社製)を粉砕して得られた尿素過酸化物粉末を12.7cm×12.7cmの寸法を有する図4の装置において2個のアルミニウムスクリーンの間に置いた。次に、アルミニウムプレートを加熱し、アルミニウムプレートのコーナー付近にある温度計を使用して温度を監視した。表8に、5分間の加熱後に様々な温度で放出される過酸化物のおおよその百分率を示す。これらのデータは約100%の過酸化物が140℃の温度で複合体から放出されることを示している。より低い温度では、放出される過酸化物の百分率はより小さい。
【0086】
[表8]
様々な温度における非水の過酸化物の放出
加熱温度 放出される過酸化物(%)
80℃ 〜25%
100℃ 〜65%
120℃ 〜80%
130℃ 〜90%
140℃ 〜100%
【0087】
尿素過酸化物複合体のような、室温および大気圧で過酸化水素蒸気を放出することができる過酸化物複合体は様々な滅菌適用において使用するのに有効である。これらを上記の本発明の滅菌装置で使用することができるだけでなく、本発明の化合物を自己滅菌包装材料の一部として使用することや、ガーゼ、スポンジ、綿などのような支持体上に塗布することもできる。本化合物は室温または高温での密封パッケージの滅菌を可能にし、また特に包装された医療または外科用製品の滅菌において有用である。
【0088】
本発明の化合物の特定の用途を以下の実施例に記載する。以下の実施例で使用した過酸化物複合体は錠剤の形態(Fluka Chemical社製)または錠剤を粉砕して得られた粉末の形態の尿素過酸化物である。
【0089】
実施例9.
自己滅菌パウチを次のようにして組立てた:その表面上に3.8×105 枯草菌変異株(niger )胞子を有する外科用メスを無菌のペトリ皿の中に入れた。その皿を錠剤または粉末形態の尿素過酸化物1gと共に、より大きいペトリ皿の中に入れた。次に、より大きいペトリ皿をTYVEK(商標)/MYLAR(商標)(気体透過性、表9)、MYLAR(商標)/MYLAR(商標)(非気体透過性、表10)または紙/MYLAR(商標)(気体透過性、表10)で作られたパウチに挿入した。次に、パウチを密封した。
【0090】
各パウチを下記の表9および10に示されるように様々な時間の間、様々な温度に付した。生物学的試験サンプルを実施例1に記載のようにして滅菌について評価した。その結果を表9および10に示す。“+”の符号は細菌の成長を意味する。
【0091】
【表9】

【0092】
表10に、通気性バリヤーとして紙/MYLAR(商標)を用いた場合とMYLAR(商標)/MYLAR(商標)を用いない場合の自己滅菌パウチの効力データを示す。パウチを上記のようにして組立てたが、過酸化物蒸気源は粉末形態の尿素過酸化物だけである。
【0093】
【表10】

【0094】
この試験の結果は、通気性バリヤーの有無に関係なく、パウチ中に含まれる本発明の尿素過酸化物複合体は室温および大気圧で水分の不在下、僅か2〜3時間後にパウチの内部の製品を有効に滅菌することを示している。より高い温度では、滅菌は僅か1時間で行われる。
密封容器中での本発明の滅菌システムの効力を測定するために、次の実験を行った。
【0095】
実施例10.
自己滅菌容器を次のようにして組立てた:その表面上に3.8×105 枯草菌変異株(niger )胞子を有する(表11)またはその表面上に9.2×105 枯草菌変異株(niger )胞子を有する(表12)ステンレス鋼支持体をその表面に20個の穴(3/16インチの大きさ)を有する小さいポリエチレン(PE)バイアルの中に置いた。そのバイアルをより大きいPEバイアルの中に入れ、それを気密性のキャップまたはSPUNGUARD(商標)(CSRラップ)の気体透過性層でカバーした。その表面に20個の穴(3/16インチの大きさ)を有する第2のPEバイアルもまた、より大きいバイアルの中に含ませた。このバイアルは粉末または錠剤形態の尿素過酸化物1gを含有した。これをSPUNGUARD(商標)(CSRラップ)またはTYVEK(商標)パウチで密封した。
【0096】
各容器を下記の表11および12に示されるように様々な時間の間、様々な温度に付した。生物学的試験サンプルを実施例1に記載のようにして滅菌について評価した。その結果を表11および12に示す。“+”の符号は細菌の成長を意味する。
【0097】
【表11】

【0098】
【表12】

【0099】
この試験の結果は、通気性バリヤーの有無に関係なく容器中に含まれる非水の尿素過酸化物複合体は室温で僅か3〜4時間後に有効な滅菌を与えることを示している。より高い温度では、滅菌は僅か0.5時間で行われる。
過酸化物蒸気を放出する非水の過酸化物複合体は室温、より効果的にはより高い温度における製品の滅菌に有用であることがわかった。これらの複合体はパウチ、容器、チェンバー、部屋また密封されうる領域に置くことができ、そこで過酸化物蒸気を放出し、有効に製品を滅菌する。これらの複合体は蒸気の放出を容易にするため、また室温滅菌に必要な時間より短い時間で滅菌するために加熱することができる。したがって、本発明の化合物は滅菌が必要な種々の用途において有用である。滅菌される製品を含有する密封領域に複合体を入れることにより、滅菌を簡単に行うことができる。従来の方法と比べて、過酸化水素を活性化するのに水分と接触させる必要はない。
【0100】
より低い圧力、より短い時間で非水の過酸化物複合体を使用して滅菌を行うことができることを確認するために、次の実験を行った。
【0101】
実施例11.
自己滅菌容器を次のようにして組立てた:その表面上に9.2×105 枯草菌変異株(niger )胞子を有するステンレス鋼支持体をその表面に20個の穴(3/16インチの大きさ)を有する小さいPEバイアルの中に置いた。そのバイアルをより大きいPEバイアルの中に入れ、それをCSRラップ(SPUNGUARD(商標))の気体透過性層でカバーした。その表面に20個の穴(3/16インチの大きさ)を有する第2のPEバイアルもまた、より大きいバイアルの中に含ませた。このバイアルは粉末または錠剤形態の尿素過酸化物1gを含有した。次に、そのバイアルをCSRラップまたはTYVEK(商標)パウチで密封した。
【0102】
大きいバイアルを4.5lの滅菌チェンバーまたは173lの滅菌チェンバー中に入れた。各容器を表13に示されるように100トルの圧力および23℃の温度に2時間付した。生物学的試験サンプルを実施例1に記載のようにして滅菌について評価した。その結果を表13に示す。
【0103】
【表13】

【0104】
これらの結果は通気性バリヤーを持つ容器の中に含まれた非水の尿素過酸化物複合体が100トルおよび室温で僅か2時間後に有効な滅菌を与えることを示している。これらの結果は表12の結果と比べて、本発明の過酸化物複合体が大気圧で滅菌を行うのに必要な時間より短い時間で減圧下の滅菌を与えることを証明している。
【0105】
したがって、本発明の過酸化水素複合体は有意に短い時間で有効な滅菌を与えることができる。さらに、上記したように、プラズマを使用して過酸化水素蒸気の活性を高めるために使用することもできる。滅菌される製品を過酸化物蒸気にさらした後プラズマに付し、そして完全滅菌を行うのに十分な時間プラズマ中に留める。
【0106】
過酸化水素蒸気にさらして滅菌した製品をプラズマにさらして、製品に残留する残りの過酸化水素を除去することができる。残留の過酸化水素はプラズマ処理中に非毒性の生成物に分解されるため、滅菌した製品は追加の工程なしにすぐに次の処理に使用される。
【0107】
非水の過酸化物複合体は様々な用途において、例えば自己滅菌包装の成分として有用である。さらに、これらの複合体は米国特許第4,943,414号に開示されている方法のような種々の製品の蒸気滅菌法において使用するのに適している。この特許は少量の気化性液体の滅菌剤溶液を含有する導管が内腔に取付けられ、そし滅菌サイクル中に減圧されると滅菌剤が気化し、直接製品の内腔に流入する方法を開示している。本特許に開示されている方法を修正して非水の過酸化物化合物を使用することができる。化合物を導管に入れ、それを滅菌する製品の内腔に接続する。次に、製品を容器の中に入れ、その容器を排気する。製品の内腔および製品の外部を非水の化合物から放出された過酸化水素蒸気と接触させる。場合により、プラズマを発生させて、滅菌を促進するために、そして/または製品から残留の過酸化水素を除去するために使用することができる。
【0108】
上記のシステムにおける非水の過酸化物複合体の使用は水溶液中の水が過酸化水素蒸気よりも速く気化し、先に内腔に入るという欠点を克服する。したがって、より有効な滅菌が達成され、また滅菌を行うのに必要な時間はより短い。無水グリシンとのような過酸化水素複合体は複合体をさらに加熱することなく減圧下で有意な量の過酸化水素を放出するため、特に有利である。
【0109】
非水の過酸化水素複合体の合成
本発明はさらに、上記したように過酸化水素蒸気滅菌器の蒸気源として、または自己滅菌包装の成分として有用な非水の過酸化水素複合体の製造法を提供する。勿論、過酸化水素複合体は他の用途、例えば漂白剤、コンタクトレンズ用溶液、触媒および当業者によく知られている他の用途に使用することができる。
【0110】
本発明の過酸化水素複合体を製造するための一般手順は次のとおりである:
(1)反応体物質をチェンバー中に入れる
過酸化水素と反応する物質は様々な形態の固体(例えば、好ましくは反応速度を増加する高い表面積を有する粉末、結晶、フィルムなど)である。反応体物質はチェンバーの減圧後に溶媒を蒸発させるのに十分な時間が許容されるならば、水または他の溶媒中の溶液として存在することもできる。本物質はまた、その沸点が過酸化水素の沸点(150℃)より高い液体であってもよい。反応速度は高温でより速いため、チェンバーは好ましくは反応体組成物が導入される前またはその後に加熱される。しかしながら、その温度は反応体が沸騰または気化する程高くはない。
反応体組成物は過酸化物蒸気と接触する容器の中に含ませることができる。それが粉末形態またはチェンバーが排気されると吹き散る他の形態である場合、反応体は過酸化水素の容器中への拡散が可能な透過性容器の中に保持することができる。
【0111】
(2)チェンバーを排気する
好ましくは、チェンバーは確実にすべての過酸化物を蒸気相にするため、過酸化水素の蒸気圧より低い圧力(その濃度および温度に依存する)に排気される。蒸気圧は温度を増加させると増加し、過酸化物濃度を増加させると減少する。殆ど実験において、チェンバーを約0.2トルに排気し、その温度を周囲温度以上にした。
【0112】
(3)過酸化水素蒸気を発生させる
過酸化水素蒸気は過酸化水素溶液または実質的に無水の過酸化水素複合体から発生させることができる。後者は蒸気状態の乾燥過酸化水素を与え、それは蒸気と反応する物質または生成する複合体が吸湿性である場合有利である。実質的に無水の複合体から過酸化水素蒸気を発生させる他の利点は、生成する複合体の過酸化水素百分率が蒸気をH22 の水溶液から発生させる場合より高いことである。これは恐らく、H22 蒸気を発生させるために水溶液が使用される場合、複合体の結合部位について水分子とH22 分子が競合するためである。
過酸化物蒸気は反応体物質を含むチェンバーと同じチェンバーの中で、または真空弁によりそれと分離された別のチェンバーの中で発生させることができる。
【0113】
(4)反応体物質を過酸化水素と反応させる
反応に必要な時間は勿論、反応体と過酸化水素の反応の速度に依存する。それは過酸化物と反応体物質の結合の間に減少する圧力を監視することにより経験的に決定することができる。典型的には、反応時間は約5〜30分間である。気化した過酸化水素の濃度および出発物質の重量が最終反応生成物の過酸化物の重量百分率を決定する。反応体と過酸化水素の重量比が増加すると、複合体の過酸化水素の重量百分率は減少する。複合体の過酸化水素濃度を増加するために、反応を多数回繰り返すことができる。
【0114】
(5)再び、チェンバーを排気する
反応の最後に、チェンバーをさらに約2トルに排気して未反応の過酸化水素を除去する。
【0115】
(6)チェンバーをガス抜きし、過酸化水素複合体を回収する
過酸化水素が反応体物質と複合体を生成するメカニズムは完全にはわかっていない。複合体の生成は過酸化水素と反応体物質の酸素および/または窒素を含有する電子に富む官能基との間の水素結合の生成を包含すると考えられる。これが唯一の結合形態であるかどうかはわからない。しかしながら、広範囲の官能基を有する物質が過酸化水素と複合体を生成することが見出された。
【0116】
過酸化水素複合体の初期の製造法と比べて蒸気相反応は次のような利点を有する:
1.過酸化水素と反応体物質の比は蒸気状態で存在する過酸化水素の量または蒸気にさらす反応体物質の量を変えることにより正確に制御することができる。
2.反応生成物から溶媒を除去する必要性が排除される。
3.液体または固体、例えば粉末、結晶、フィルムなどである過酸化物複合体を生成することができる。
4.吸湿性物質の過酸化物複合体を製造することができる。
【0117】
本発明の非水の過酸化物複合体の合成をさらに、次の実施例で説明する。これらの化合物の多くは当業者により容易に理解されるように、本明細書により詳しく記載された実用性を有する他に、触媒として利用できる。これらの実施例は本発明の組成物および製造法の態様を示すが、本発明の範囲を全く制限しない。
【0118】
無水グリシンの過酸化水素複合体を次のようにして製造した。1.0gの無水グリシン(Aldrich Chemical社製)のサンプルを45℃の温度に維持された173lのチェンバー中のアルミニウムトレーの中に入れた。チェンバーが減圧された時に無水グリシンがトレーから流出するのを防止するが、通気性であるため過酸化水素を吸収しないTYVEK(商標)不織布でアルミニウムトレーの上部をカバーした。チェンバーのドアを閉じ、そしてチェンバーを真空ポンプで排気することによりチェンバーの圧力を0.2トルまで減圧した。適当な容量の70%過酸化水素水溶液(FMC社製)をチェンバー中に蒸発させることにより、10mg/lの過酸化水素濃度とした。過酸化水素蒸気を無水グリシンと20分間接触させた。反応の最後に、チェンバーの圧力を2トルまで減圧してから大気圧に戻した。反応生成物をチェンバーから取り出し、次のヨウ素滴定反応により過酸化水素の重量百分率について分析した。
【0119】
H2O2+2Kl+H2SO4 → I2+K2SO4 +2H2O
I2+2Na2S2O3 → Na2S4O6 +2Nal
【0120】
終点における色の変化を強調するために、澱粉指示薬をヨウ素−チオ硫酸ナトリウム滴定反応で使用した。過酸化水素の重量百分率を次式により計算した。
H2O2(重量%)=〔(Na2S2O3 のml数)×(Na2S2O3 の規定度)×1.7 〕
/(サンプルの重量(g))
無水グリシン複合体の過酸化水素の重量百分率は24.3%であった。
【0121】
実施例13.
実施例12の手順に従って、広範囲の有機および無機複合体の過酸化水素複合体を製造した。各場合において、反応条件は無水グリシンの代わりに表14に記載の化合物をそれぞれ1.09g使用することを除けば、実施例12と同じである。
【0122】
【表14】

【0123】
製造した有機複合体は過酸化水素と水素結合を生成することのできる次の範囲の官能基:アルコール、エーテル、ケトン、酸、アミノ酸、エステル、有機塩、アミン、アミド、ポリアミド、ポリウレタン、尿素およびビウレットを含有する。無機複合体はナトリウム、カリウムおよびルビジウムカチオンとの炭酸塩、並びに重炭酸ナトリウムを含有する。さらに、水酸化カルシウムおよびピロ燐酸四ナトリウムの過酸化水素複合体もまた製造した。出発物質は微細粉末または少し大きめの結晶性物質であるが、ナイロン6,6は厚さ0.12mmのフィルムとして加工され、またポリビニルメチルエーテルは50重量%の水溶液である。
【0124】
試験条件下でこれらの物質を用いて得られた過酸化水素複合体は、ポリビニルピロリドン、ヒスタミン、ポリ(ビニルメチルエーテル)、ポリ(ビニルメチルケトン)、プロピオンアミドおよび1,3−ジメチル尿素を除けば固体であった。1,3−ジメチル尿素およびプロピオンアミド過酸化水素複合体は最終生成物を得るために除去する必要のある溶媒がないため、蒸気相合成工程において容易に取り扱われる易流動性の液体であった。ヒスタミン、ポリビニルピロリドン、ポリ(ビニルメチルエーテル)およびポリ(ビニルメチルケトン)複合体は容易に取り扱えないゴム性の物質であった。
【0125】
実施例14および15はさらさらした固体生成物として過酸化物複合体を得るため、異なる作業条件下でポリビニルピロリドンを用いた実験を記載する。
【0126】
実施例14.
ポリビニルピロリドンと蒸気状態の過酸化水素の濃度との重量比を変えることによりポリビニルピロリドン複合体の過酸化水素百分率を変えて、ポリビニルピロリドンとの過酸化水素複合体を製造した。これらの試験条件はポリビニルピロリドンの重量を1.0gから3.0g、5.0gに増加することを除けば、実施例12と同じである。すべての試験において、過酸化水素濃度を10.0mg/l(チェンバーの容量)で一定に保った。これらの試験の結果を表15に示す。
【0127】
実施例15.
過酸化水素と尿素の複合体から過酸化水素を導入して、PVPの過酸化水素複合体を製造した。このようにして導入された過酸化水素は実質的に無水である。この試験においては、5gのPVPを反応チェンバーの中に入れ、そして約7gの35%H22 −尿素複合体を約110℃の温度に約5分間加熱することによりチェンバーの容量1l当たり10mgのH22 を反応チェンバー中に導入した。この試験の残りの条件は実施例12と同じである。PVP複合体の過酸化水素百分率および複合体の物理的状態を表15に示す。
【0128】
[表15]
複合体の過酸化水素百分率および生成物の物理的状態における
ポリビニルピロリドン対蒸気状態の過酸化水素の比の結果
PVPの重量(g) 複合体のH2O2(重量%) 生成物の物理的状態
実施例14 1 29.9 軟質のゴム性生成物
3 23.5 硬質のゴム性生成物
5 17.7 さらさらした固体
実施例15 5 19.7 さらさらした固体
【0129】
これらの試験の結果はPVP対蒸気状態の過酸化水素の比を調節することにより、または実質的に無水の過酸化水素蒸気源を使用することにより、PVP−過酸化水素複合体を用いてさらさらした固体を得ることができることを証明している。
【0130】
この発明の好適な実施態様として以下のものがある。
(A)滅菌する製品を保持するための容器と、前記容器内に位置する過酸化水素蒸気源を包含し、そして前記源が実質的に非水の過酸化水素複合体を備え、滅菌を行うために前記蒸気が前記製品と接触するように配置されることを特徴とする、製品の過酸化水素滅菌装置。
(1)前記容器は通気性バリヤーを含有する実施態様(A)記載の装置。
(2)前記複合体は尿素−過酸化物複合体である実施態様(A)記載の装置。
(3)前記複合体はポリビニルピロリドン−過酸化物複合体である実施態様(A)記載の装置。
(4)前記複合体はナイロン6−過酸化物複合体である実施態様(A)記載の装置。
(5)前記複合体は1,3−ジメチル尿素−過酸化物複合体である実施態様(A)記載の装置。
(6)前記複合体は真空下で不安定である実施態様(A)記載の装置。
(7)前記複合体は無水グリシン−過酸化物複合体である実施態様(6)記載の装置。
(8)さらに、前記複合体を加熱するように配置されたヒーターを包含する実施態様(7)記載の装置。
(9)さらに、前記入口の中に設置された閉鎖可能な弁を包含し、それにより前記弁が閉ざされると、前記囲いは前記容器から分離される実施態様(7)記載の装置。
(10)さらに、容器を排気するための、前記容器と流体伝達する真空ポンプを包含する実施態様(A)記載の装置。
(11)さらに、前記容器または前記囲いと流体伝達する真空ポンプを包含し、それにより前記囲いおよび前記容器を独立してまたは同時に排気することができる実施態様(7)記載の装置。
(12)前記ポンプは前記容器および前記囲いの両方と流体伝達し、さらに前記ポンプと前記容器の間、前記ポンプと前記囲いの間、そして前記囲いと前記容器の間に設置された閉鎖可能な弁を包含する実施態様(11)記載の装置。
(13)前記ポンプは前記容器と流体伝達する第1ポンプであり、さらに前記囲いと流体伝達する第2ポンプを包含する実施態様(11)記載の装置。
(14)さらに、前記製品の周囲にプラズマを発生させるための電極を前記容器の内部に包含する実施態様(A)記載の装置。
(15)前記複合体は固相である実施態様(A)記載の装置。
(B)製品を容器の中に入れ、そして製品と接触し、滅菌するために実質的に非水の有機過酸化水素複合体から放出された過酸化水素蒸気と製品を接触させることを包含する、製品の過酸化水素蒸気滅菌法。
(16)前記複合体は10%未満の水を含有する実施態様(B)記載の方法。
(17)さらに、前記複合体を加熱して前記複合体からの前記蒸気の放出を容易にすることを包含する実施態様(B)記載の方法。
(18)さらに、前記蒸気を前記容器の中に導入する前に容器を排気することを包含する実施態様(B)記載の方法。
(19)さらに、前記蒸気を前記容器の中に導入した後に容器中でプラズマを発生させることを包含する実施態様(B)記載の方法。
(20)接触工程は前記蒸気を圧力で律動的に送ることからなる実施態様(B)記載の方法。
(C)製品を容器の中に入れ;
前記製品と接触するために実質的に非水の有機過酸化水素複合体から放出された過酸化水素蒸気と前記製品を接触させ;
前記容器中でプラズマを発生させて前記製品を取り囲み;そして
前記プラズマ中で前記製品を維持することを包含する、製品の過酸化水素プラズマ滅菌法。
(21)前記製品は製品の滅菌を行うのに十分な時間、前記プラズマ中で維持される実施態様(C)記載の方法。
(22)前記製品は残留の過酸化水素を前記製品から除去するのに十分な時間、前記プラズマ中で維持される実施態様(C)記載の方法。
(23)接触工程は第1チェンバーで行われ、そして発生工程は別の第2チェンバーで行われる実施態様(C)記載の方法。
(D)製品を容器の中に入れ;
前記製品と接触するために実質的に非水の有機過酸化水素複合体から放出された過酸化水素蒸気と前記製品を接触させ;
前記製品から離れた場所でプラズマを発生させ;
前記プラズマを前記製品に対して流し;そして
前記製品を前記プラズマ中で維持することを包含する、製品の過酸化水素プラズマ滅菌法。
(24)前記製品は製品の滅菌を行うのに十分な時間、前記プラズマ中で維持される実施態様(D)記載の方法。
(25)前記製品は残留の過酸化水素を前記製品から除去するのに十分な時間、前記プラズマ中で維持される実施態様(D)記載の方法。
(26)接触工程は第1チェンバーで行われ、そして発生工程は別の第2チェンバーで行われる実施態様(D)記載の方法。
(E)製品を実質的に非水の過酸化水素複合体を含有する囲いの中に入れ;
前記囲いを密封し;そして
前記囲いを約70℃以下の温度で、前記複合体から過酸化水素蒸気を放出するのに十分な時間放置して前記製品の滅菌を行うことを包含する、製品の過酸化水素滅菌法。
(27)前記囲いは大気圧より低い圧力で放置される実施態様(E)記載の方法。
(28)前記囲いは約40℃以下の温度で放置される実施態様(E)記載の方法。
(29)前記囲いは前記蒸気の放出を容易にするため23℃以上の温度に加熱される実施態様(E)記載の方法。
(30)前記囲いはパウチである実施態様(E)記載の方法。
(31)前記囲いは容器である実施態様(E)記載の方法。
(32)前記囲いはチェンバーである実施態様(E)記載の方法。
(33)前記囲いは部屋である実施態様(E)記載の方法。
(34)前記過酸化水素複合体は粉末の形態である実施態様(E)記載の方法。
(35)前記過酸化水素複合体は錠剤の形態である実施態様(E)記載の方法。
(36)前記密封工程は前記囲いを気体透過性材料で密封することからなる実施態様(E)記載の方法。
(37)前記気体透過性材料はTYVEK(商標)、CSRラップおよび紙から成る群より選択される実施態様(36)記載の方法。
(F)滅菌製品および過酸化水素蒸気を放出することのできる実質的に非水の過酸化水素複合体を含有する密封された囲い。
(G)実質的に非水の過酸化水素複合体を含有する導管を製品の内腔に接続し;
前記製品を容器の中に入れ、
容器を排気し;そして
前記製品の内腔を実質的に非水の過酸化水素複合体から放出された過酸化水素蒸気と約70℃以下の温度で接触させることを包含する、外部およびその中の狭い内腔を有する製品の過酸化水素滅菌法。
(38)さらに、前記製品の外部を第2源の滅菌剤と接触させることを包含する実施態様(G)記載の方法。
(39)第2源の滅菌剤は二酸化塩素からなる実施態様(38)記載の方法。
(40)第2源の滅菌剤は過酸化水素を放出する源からなる実施態様(39)記載の方法。
(41)第2源の滅菌剤は第2の実質的に非水の過酸化水素複合体からなり、そして第2の実質的に非水の過酸化水素複合体は接続工程で使用される過酸化水素複合体と同じまたは異なる複合体である実施態様(40)記載の方法。
(42)さらに、前記容器中でプラズマを発生させて前記製品を取り囲み、そして前記製品を前記プラズマ中で、製品の滅菌を行うのに十分な時間維持することを包含する実施態様(E)または(G)記載の方法。
(43)さらに、前記容器中でプラズマを発生させて前記製品を取り囲み、そして前記製品を前記プラズマ中で、残留の過酸化水素を前記製品から除去するのに十分な時間維持することを包含する実施態様(E)または(G)記載の方法。
(H)(a)組成物を含有するチェンバーを排気し;そして
(b)過酸化水素蒸気を前記チェンバーに導入する工程を包含し、それにより前記過酸化水素蒸気が前記組成物と反応して複合体を生成する、実質的に非水の過酸化水素複合体の製造法。
(44)前記組成物はアルコール、エーテル、ケトン、酸、アミノ酸、エステル、有機塩、アミン、アミド、尿素、ビウレット、ポリアミド、ポリウレタン、アルカリ金属炭酸塩、水酸化物およびピロ燐酸四ナトリウムからなる群より選択される実施態様(H)記載の方法。
(45)前記組成物はポリ(ビニルアルコール)である実施態様(H)記載の方法。
(46)前記組成物はポリ(ビニルメチルエーテル)である実施態様(H)記載の方法。
(47)前記組成物はポリ(ビニルメチルケトン)である実施態様(H)記載の方法。
(48)前記組成物はポリ(アクリル酸)である実施態様(H)記載の方法。
(49)前記組成物はグリシンまたはL−ヒスチジンである実施態様(H)記載の方法。
(50)前記組成物はポリ(酢酸ビニル)または酢酸セルロースである実施態様(H)記載の方法。
(51)前記組成物はアルギン酸ナトリウムまたは硫酸セルロースナトリウム塩である実施態様(H)記載の方法。
(52)前記組成物はヒスタミンである実施態様(H)記載の方法。
(53)前記組成物は無水グリシンである実施態様(H)記載の方法。
(54)前記組成物はプロピオンアミドである実施態様(H)記載の方法。
(55)前記組成物はポリアクリルアミドである実施態様(H)記載の方法。
(56)前記組成物はポリビニルピロリドン、ポリ(4−ビニルピリジン)、ナイロン6およびナイロン6,6フィルムからなる群より選択される実施態様(H)記載の方法。
(57)前記組成物はポリエーテルポリウレタンである実施態様(H)記載の方法。
(58)前記組成物は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウムおよび重炭酸ナトリウムからなる群より選択される実施態様(H)記載の方法。
(59)前記組成物は水酸化カルシウムである実施態様(H)記載の方法。
(60)前記組成物は1,3−ジメチル尿素である実施態様(H)記載の方法。
(61)過酸化水素蒸気は実質的に無水である実施態様(H)記載の方法。
(I)ポリ(ビニルアルコール)−過酸化水素複合体、ポリ(ビニルメチルエーテル)−過酸化水素複合体、ポリ(ビニルメチルケトン)−過酸化水素複合体、ポリ(アクリル酸)−過酸化水素複合体、ポリ(酢酸ビニル)−過酸化水素複合体、酢酸セルロース−過酸化水素複合体、アルギン酸ナトリウム−過酸化水素複合体および硫酸セルロースナトリウム塩−過酸化水素複合体からなる群より選択される有機過酸化水素複合体。
(J)グリシン−過酸化水素複合体、ポリ(4−ビニルピリジン)−過酸化水素複合体、ヒスタミン−過酸化水素複合体、プロピオンアミド−過酸化水素複合体、1,3−ジメチル尿素−過酸化水素複合体、ビウレット−過酸化水素複合体、ポリアクリルアミド−過酸化水素複合体、ナイロン6−過酸化水素複合体、ナイロン6,6フィルム−過酸化水素複合体およびポリエーテルポリウレタン−過酸化水素複合体からなる群より選択される有機過酸化水素複合体。
(K)炭酸ルビジウム−過酸化水素複合体。
(L)製品を容器の中に入れ、そして製品と接触し、滅菌するために過酸化水素蒸気と製品を接触させることを包含し、前記蒸気は分解してハロゲン化水素酸を放出しない実質的に非水の過酸化水素複合体から放出される、製品の過酸化水素蒸気滅菌法。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明の蒸気滅菌装置の略図。
【図2】場合により、プラズマを発生させるために使用される電極を含む本発明の蒸気滅菌装置の略図。
【図3】過酸化物複合体を加熱するために使用することのできる装置の略図。
【図4】本発明の滅菌における過酸化物源を保持するための好ましい容器の略図。
【図5】真空下で不安定な非水の過酸化水素複合体からの過酸化水素蒸気の放出を示すグラフ図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(ビニルアルコール)−過酸化水素複合体、ポリ(ビニルメチルエーテル)−過酸化水素複合体、ポリ(ビニルメチルケトン)−過酸化水素複合体、ポリ(アクリル酸)−過酸化水素複合体、ポリ(酢酸ビニル)−過酸化水素複合体、酢酸セルロース−過酸化水素複合体、アルギン酸ナトリウム−過酸化水素複合体、硫酸セルロースナトリウム塩−過酸化水素複合体、グリシン−過酸化水素複合体、ポリ(4−ビニルピリジン)−過酸化水素複合体、ヒスタミン−過酸化水素複合体、プロピオンアミド−過酸化水素複合体、1,3−ジメチル尿素−過酸化水素複合体、ビウレット−過酸化水素複合体、ポリアクリルアミド−過酸化水素複合体、ナイロン6−過酸化水素複合体、ナイロン6,6フィルム−過酸化水素複合体、ポリエーテルポリウレタン−過酸化水素複合体および炭酸ルビジウム−過酸化水素複合体からなる群より選択される過酸化水素複合体。
【請求項2】
前記過酸化水素複合体が、実質的に非水の過酸化水素複合体である、請求項1に記載の過酸化水素複合体。
【請求項3】
(a)組成物を含有するチェンバーを排気し;そして
(b)過酸化水素蒸気を前記チェンバーに導入する工程を包含し、それにより前記過酸化水素蒸気が前記組成物と反応して複合体を生成する、実質的に非水の過酸化水素複合体の製造法。
【請求項4】
前記組成物はアルコール、エーテル、ケトン、酸、アミノ酸、エステル、有機塩、アミン、アミド、尿素、ビウレット、ポリアミド、ポリウレタン、アルカリ金属炭酸塩、水酸化物およびピロ燐酸四ナトリウムからなる群より選択される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物はポリ(ビニルアルコール)である請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物はポリ(ビニルメチルエーテル)である請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記組成物はポリ(ビニルメチルケトン)である請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物はポリ(アクリル酸)である請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記組成物はグリシンまたはL−ヒスチジンである請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記組成物はポリ(酢酸ビニル)または酢酸セルロースである請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物はアルギン酸ナトリウムまたは硫酸セルロースナトリウム塩である請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物はヒスタミンである請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物は無水グリシンである請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物はプロピオンアミドである請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物はポリアクリルアミドである請求項3に記載の方法。
【請求項16】
前記組成物はポリビニルピロリドン、ポリ(4−ビニルピリジン)、ナイロン6およびナイロン6,6フィルムからなる群より選択される請求項3に記載の方法。
【請求項17】
前記組成物はポリエーテルポリウレタンである請求項3に記載の方法。
【請求項18】
前記組成物は炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウムおよび重炭酸ナトリウムからなる群より選択される請求項3に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物は水酸化カルシウムである請求項3に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物は1,3−ジメチル尿素である請求項3に記載の方法。
【請求項21】
過酸化水素蒸気は実質的に無水である請求項3に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−233216(P2006−233216A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47106(P2006−47106)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【分割の表示】特願平7−125562の分割
【原出願日】平成7年4月27日(1995.4.27)
【出願人】(591081686)エシコン・インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】