説明

非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置及び静電分離システム並びに静電分離方法

【課題】非磁性金属含有プラスチックの粉砕物から非磁性金属を低コストかつ効率よく分離除去してプラスチック粉砕物を回収する。
【解決手段】静電気を発生させる静電気発生部と、該静電気発生部の導電体に接続された導電性連結具31、該導電性連結具31に接続されて前記静電気が帯電し、上面が傾斜面とされた帯電体35,36、及び、前記傾斜面の下辺から離間し、該下辺に対向するように横設され、前記帯電体35,36と絶縁されたアース体37,37からなる静電分離部3と、該静電分離部3の帯電体35の傾斜面に非磁性金属含有プラスチック粉砕物11を供給する供給部4とを備え、前記傾斜面に供給され、該傾斜面に沿って降下する非磁性金属含有プラスチック粉砕物11から、静電反発作用を利用して非磁性金属を分離する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムや銅等からなる非磁性金属を含有するプラスチックの粉砕物から前記非磁性金属を分離除去してプラスチック粉砕物を回収し、再生原料として再資源化を図る、静電分離装置及び静電分離システム並びに静電分離方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のフロントガラスやリアガラスのパッキン及びモール材等の自動車用部品、具体的には、フラッシュマウントモール、オープニングトリム、サイドモール及びルーフモール(天井窓用パッキン)等においては、寸法安定性を保持するために、鉄線、アルミ線、銅線材等からなる金属が使用されている。したがって、これら自動車用部品の製造時の端材又は不良品等の廃材は、鉄、アルミニウム、銅等の金属を含有しているため、前記端材又は廃材を粉砕して再利用しようとする場合、鉄は磁石で磁選できるものの、アルミニウム、銅等からなる非磁性金属を分離することは容易でなく、これら金属を分離しなければ再利用することができない。
【0003】
また、前記非磁性金属を分離する場合、大掛かりな装置が必要となり処理費用が高くなるため、埋立処理あるいは焼却処理されるのが常となっている。しかしながら、埋立処理においては、埋立処理場のスペースの減少による処理費用の増大及び環境への影響等の問題が生じてきており、焼却処理においては、前記自動車用部品を構成する樹脂成分の大半が塩化ビニール系樹脂から構成されており、かつ、アルミニウム、銅等を含有しているため、焼却時に塩化水素ガスの発生やアルミニウムの炉体への溶融付着、酸化燃焼による燃焼温度上昇により焼却炉にトラブルを生じること、また、環境への影響等の問題が生じてきている。したがって、埋立処理及び焼却処理も制限される状況となっている。
【0004】
ここで、従来における前記非磁性金属を含有する廃棄プラスチックからアルミニウムや銅等の金属を分離除去するために使用される装置の概要について説明する。このような装置としては、電気的選別装置である渦電流選別装置と静電分離装置が公知である。渦電流選別装置は、導電性を有する物体に変化磁界をかけ、物体内に誘導電流を発生させて、その電流により生じた磁界と外部からかけられた磁界との作用により渦電流力を生じて導電性の物体が移動するという作用を利用して選別する装置であり、スチール缶とアルミ缶の選別等で使用されている装置である。
【0005】
一方、静電分離装置としては、ドラム静電電極を使用した装置(例えば、特許文献1参照)、平板状静電電極を使用した装置(例えば、特許文献2参照)等があり、ドラム静電電極を使用した装置の概念図を図6に示す。接地された金属ロールAに平行に置かれた金属円筒Bには高電圧がかけられており、金属円筒Bの極性が負であれば、金属ロールA表面は正に帯電する。金属ロールAと金属円筒Bとの間に入った粒子101は静電誘導によって分極し、金属ロールAに近い側に負電荷を、反対側に正電荷を生じる。ここで、粒子101が導電性粒子であれば、金属ロールAに接すると電荷を失って全体が正に帯電し金属ロールAに反発される(軌跡102参照)。また、前記粒子101が絶縁性粒子であれば、負電荷によって金属ロールAに吸引され電界の外で吸引力を失って落下する(軌跡103参照)。この結果、導電性粒子と絶縁性粒子は、落下位置が異なることになるため、分離されて回収される。さらに、静電分離方法として、プリント銅箔基板や包装材ラミネート箔を破砕、風力選別、微粉砕した後に静電分離する方法(特許文献3)も公知である。
【0006】
しかしながら、前記非磁性金属を含有する廃棄プラスチックを粉砕して、これらの非磁性金属の選別を行う場合においては、分離が充分でないため、その改良が希求されている。また、渦電流選別装置を使用すると、前記非磁性金属の体積が小さく磁界中で生じる渦電流力が弱くなるため、分離効率が向上しないという問題点があり、静電分離装置を使用すると、専用の電極を有する装置が必要であるため、費用が嵩むという問題点がある。さらに、特許文献3の方法では、金属含有プラスチックの微粉砕処理を施す必要があるため、静電分離の処理効率が劣るという問題がある。
【0007】
さらにまた、前記非磁性金属を含有する廃棄プラスチックは、粉砕処理後、必要により廃棄プラスチックに混入した軽量物を分離するために風力分離処理を行った後、公知の非磁性金属分離装置により非磁性金属を分離除去後、押出機により溶融ペレット化し、再生、リサイクルされているが、分離レベルの低い場合においては、押出機にメッシュスクリーンが設置されているため、アルミニウムや銅等の異物は除去されるものの、アルミニウムや銅等の量が多いと、メッシュスクリーンの目詰まりが生じ、メッシュスクリーンの頻繁な取替えが必要となり、押出機の定常運転ができないという問題があった。
【0008】
また、静電分離装置として、ブロワー、プラスチック製配管、サイクロン、貯槽を接続した循環経路を形成し、該循環経路の内部にプラスチック破砕物等を入れて循環させ、前記プラスチック製配管の表面に静電気を発生させ、該プラスチック製配管に金属製配管を外嵌し、該金属製配管を偏心させる位置に配置して前記プラスチック製配管と接線にて接触させ、前記プラスチック製配管の表面に発生する静電気を前記接触部に集中させ、該高電圧静電気発生部位に予め粉砕したアルミニウムを含有する廃棄プラスチック被処理物を供給して接触後、アルミニウムを静電反発作用により弾き飛ばして分離除去するものも提案されており(特許文献4参照)、図7にその概念図を示す。
【0009】
特許文献4の構成は、汎用機器を組み合わせて高電圧の静電気を安定的に発生させることで、アルミニウムを含有する廃棄プラスチックからアルミニウムを低コストで静電分離除去することを可能にすること等の特徴を有するものであるが、静電気で弾き飛ばされるアルミ片の方向性を制御し難い場合があること等から、分離精度の向上等については改良の余地があるものである。
【0010】
【特許文献1】特開2002−136896号公報
【特許文献2】特開昭55−102446号公報
【特許文献3】特開平10−57927号公報
【特許文献4】特開2002−45728号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、アルミニウムや銅等からなる非磁性金属を含むプラスチックを有効利用するために、前記プラスチックの粉砕物から前記非磁性金属を低コストかつ効率よく分離除去してプラスチック粉砕物を回収し、リサイクルするための静電分離装置及び静電分離システム並びに静電分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置は、前記課題解決のために、静電気を発生させる静電気発生部と、該静電気発生部の導電体に接続された導電性連結具、該導電性連結具に接続されて前記静電気が帯電し、上面が傾斜面とされた帯電体、及び、前記傾斜面の下辺から離間し、該下辺に対向するように横設され、前記帯電体と絶縁されたアース体からなる静電分離部と、該静電分離部の帯電体の傾斜面に非磁性金属含有プラスチック粉砕物を供給する供給部とを備え、前記傾斜面に供給され、該傾斜面に沿って降下する非磁性金属含有プラスチック粉砕物から、静電反発作用を利用して非磁性金属を分離するものである。
【0013】
ここで、前記静電気発生部が、遠心力集塵装置、該遠心式集塵装置の下側に連結され、プラスチック破砕物及び粒状物の少なくともどちらかからなる循環物を貯留可能な貯槽、並びに、該貯槽と第1の配管により連結されるとともに前記遠心式集塵装置と第2の配管により連結される送風機により循環経路を形成し、前記第1の配管及び第2の配管の一方をプラスチック製配管とし、他方をその中間部分を導電性配管とし該導電性配管の両側に連結される部分をプラスチック製配管としてなり、前記循環物が前記循環経路を循環することにより前記導電性配管に静電気を発生させるものであると好ましい。
【0014】
また、前記帯電体が前記導電性連結具により支持されてなると好ましい。
【0015】
さらに、前記循環物と前記導電性配管との摩擦抵抗が大きくなるように、前記導電性配管を屈曲させてなると好ましい。
【0016】
さらにまた、前記帯電体を導電性板材とし、該板材を上下方向に複数、隣接する上下段の板材が側面視略くの字状となるように配設し、上段の板材の下端縁の直下に、該下端縁から離間させて下段の板材の上端部を位置させ、上下複数段の板材のそれぞれの下端縁から離間させ、該下端縁に対向するように前記アース体をそれぞれ横設してなり、前記静電反発作用を利用して行う非磁性金属の分離を複数回連続して行うと好ましい。
【0017】
本発明に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離システムは、前記課題解決のために、非磁性金属含有プラスチックを粉砕する衝撃式粉砕機と、前記静電分離装置と、前記衝撃式粉砕機により粉砕された粉砕物を前記静電分離装置の供給部に搬送する輸送装置とを備えてなるものである。
【0018】
本発明に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法は、前記課題解決のために、非磁性金属含有プラスチックを衝撃式粉砕機で粉砕する粉砕工程と、該粉砕工程により粉砕された粉砕物を前記静電分離装置の供給部に搬送する搬送工程と、該搬送工程により搬送され前記供給部に供給された前記粉砕物を前記静電分離装置の静電分離部によって静電分離する静電分離工程とからなるものである。
【0019】
ここで、前記粉砕工程で使用する衝撃式粉砕機が、粉砕物の大きさを規制するパンチングメタル又は格子の目開きが2mm以上20mm以下であるスクリーンを設置したスイングハンマクラッシャであると好ましい。
【0020】
また、前記粉砕工程の後に、篩により微粉を除去する篩選別工程を設けてなると好ましい。
【0021】
さらに、前記粉砕工程及び搬送工程の少なくともどちらかにおいて、磁力選別して磁性金属を分離すると好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置によれば、静電気を発生させる静電気発生部と、該静電気発生部の導電体に接続された導電性連結具、該導電性連結具に接続されて前記静電気が帯電し、上面が傾斜面とされた帯電体、及び、前記傾斜面の下辺から離間し、該下辺に対向するように横設され、前記帯電体と絶縁されたアース体からなる静電分離部と、該静電分離部の帯電体の傾斜面に非磁性金属含有プラスチック粉砕物を供給する供給部とを備え、前記傾斜面に供給され、該傾斜面に沿って降下する非磁性金属含有プラスチック粉砕物から、静電反発作用を利用して非磁性金属を分離するので、プラスチックの再生事業者にとって極めて汎用的な機器の組み合わせにより、特殊なドラム電極や電気装置を必要としない安価かつコンパクトな構成により、アルミニウムや銅等からなる非磁性金属を含むプラスチックの粉砕物から前記非磁性金属を低コストかつ効率よく分離除去してプラスチック粉砕物を回収し、リサイクルすることができる。また、前記静電気発生部と前記静電分離部とを前記導電性連結具により接続し、前記静電気発生部と前記静電分離部とを離しているため、前記静電分離部において前記静電気発生部で発生した静電気を利用して静電分離を効率よく行うことができる。また前記帯電体及びアース体を用いて静電分離を行うため、静電気で弾き飛ばされる非磁性体の方向性を制御しやすくなり、非磁性体の分離精度を向上させることができる。
【0023】
また、前記静電気発生部が、遠心力集塵装置、該遠心式集塵装置の下側に連結され、プラスチック破砕物及び粒状物の少なくともどちらかからなる循環物を貯留可能な貯槽、並びに、該貯槽と第1の配管により連結されるとともに前記遠心式集塵装置と第2の配管により連結される送風機により循環経路を形成し、前記第1の配管及び第2の配管の一方をプラスチック製配管とし、他方をその中間部分を導電性配管とし該導電性配管の両側に連結される部分をプラスチック製配管としてなり、前記循環物が前記循環経路を循環することにより前記導電性配管に静電気を発生させるものであると、プラスチックの再生事業者にとって極めて汎用的な機器の組み合わせからなる安価かつコンパクトな構成により、静電気を安定的に発生させることができる。
【0024】
さらに、前記帯電体が前記導電性連結具により支持されてなると、構成の簡素化及び低コスト化を図ることができるとともに、前記静電気発生部の振動が前記導電性連結具を介して前記帯電体に伝わり、該帯電体が振動するため、前記帯電体の上面傾斜面に沿う前記プラスチック粉砕物の降下の確実化及び均一化を図ることができる。
【0025】
さらにまた、前記循環物と前記導電性配管との摩擦抵抗が大きくなるように、前記導電性配管を屈曲させてなると、前記静電気発生部において、簡素かつコンパクトな構成によって、より高電圧の静電気を効率的に発生させることができる。
【0026】
また、前記帯電体を導電性板材とし、該板材を上下方向に複数、隣接する上下段の板材が側面視略くの字状となるように配設し、上段の板材の下端縁の直下に、該下端縁から離間させて下段の板材の上端部を位置させ、上下複数段の板材のそれぞれの下端縁から離間させ、該下端縁に対向するように前記アース体をそれぞれ横設してなり、前記静電反発作用を利用して行う非磁性金属の分離を複数回連続して行うと、簡素かつコンパクトな構成により効率よく静電分離を行うことができるとともに、回収される樹脂粉砕物における非磁性金属の分離精度を向上することができる。
【0027】
本発明に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離システムによれば、非磁性金属含有プラスチックを粉砕する衝撃式粉砕機と、前記静電分離装置と、前記衝撃式粉砕機により粉砕された粉砕物を前記静電分離装置の供給部に搬送する輸送装置とを備えてなるので、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有する複合廃プラスチックから、前記非磁性金属を効率よく、かつ、精度良く分離できるため、これらの金属を分離除去したプラスチックを押出し溶融装置により容易にペレット化することができ、これまで再利用が困難であった廃棄プラスチックの再生が可能となる。
【0028】
本発明に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法によれば、非磁性金属含有プラスチックを衝撃式粉砕機で粉砕する粉砕工程と、該粉砕工程により粉砕された粉砕物を前記静電分離装置の供給部に搬送する搬送工程と、該搬送工程により搬送され前記供給部に供給された前記粉砕物を前記静電分離装置の静電分離部によって静電分離する静電分離工程とからなるので、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有する複合廃プラスチックから、前記非磁性金属を効率よく、かつ、精度良く分離できるため、これらの金属を分離除去したプラスチックを押出し溶融装置により容易にペレット化することができ、これまで再利用が困難であった廃棄プラスチックの再生が可能となる。
【0029】
また、前記粉砕工程で使用する衝撃式粉砕機が、粉砕物の大きさを規制するパンチングメタル又は格子の目開きが2mm以上20mm以下であるスクリーンを設置したスイングハンマクラッシャであると、非磁性金属を含有するプラスチックに適度の衝撃力を与えて金属成分も粉砕するとともに、金属成分を樹脂被覆層から剥離させる作用を併せ持つため、静電分離工程において非磁性金属含有プラスチック粉砕物から非磁性金属を精度よく分離することができる。
【0030】
さらに、前記粉砕工程の後に、篩により微粉を除去する篩選別工程を設けてなると、静電分離工程において前記静電分離部のアース体に微粉が纏わり付いて静電分離性能が低下することを防止することができるため、静電分離工程における非磁性金属の分離精度を向上させることができる。
【0031】
さらにまた、前記粉砕工程及び搬送工程の少なくともどちらかにおいて、磁力選別して磁性金属を分離すると、前記粉砕工程により粉砕された非磁性金属含有プラスチックの粉砕物から鉄等の磁性金属を磁石に吸着させて効率的に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明するが、本発明は、添付図面に示された形態に限定されず特許請求の範囲に記載の要件を満たす実施形態の全てを含むものである。また、以下において詳細に説明するように、本発明に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置1は、例えばプラスチック破砕物及び粒状物の少なくともどちらかからなる循環物29が循環経路Cを循環することにより静電気を発生させる静電気発生部2と、該静電気発生部2により発生した静電気を利用してなる静電反発作用により、アルミニウムや銅等からなる非磁性金属を含有するプラスチック粉砕物11から非磁性金属を分離する静電分離部3と、該静電分離部3に非磁性金属含有プラスチック粉砕物11を供給する供給部4とを備えてなるものである。
【0033】
図1及び図2は、本発明の実施の形態に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置1の構成を示す概略図であり、図1は主に前記静電気発生部2の構成を、図2は前記静電分離部3及び供給部4の構成を示している。図1において、静電気発生部2は、例えばサイクロンセパレーターである遠心力集塵装置21、遠心式集塵装置21の下側に連結され、前記循環物29を貯留可能な、例えば硬質塩化ビニール樹脂製の貯槽22、並びに、貯槽22と第1の配管24により連結されるとともに遠心式集塵装置21と第2の配管25により連結される、例えばファンである送風機23により構成される。そして、遠心力集塵装置21、貯槽22、第1の配管24、送風機23及び第2の配管25により、これらの機器及び配管内に循環経路Cが形成され、該循環経路Cに前記循環物29を入れて循環させることにより、前記のとおり静電気を発生させるものである。なお、循環物29の循環速度は、プラスチック粉砕物の移送に通常使用されるところの、20m/s以上50m/s以下程度の速度とすればよい。
【0034】
ここで、第1の配管24はプラスチック製配管26とされ、第2の配管25は、その中間部分が導電性配管28とされ、該導電性配管28の両側に連結される部分がプラスチック製配管27a,27bとされる。なお、第2の配管25をプラスチック製配管とし、第1の配管24の中間部分を導電性配管としてもよい。プラスチック製配管26,27a,27b内を該プラスチック製配管と異なる材質、あるいは同種の循環物29が循環すると、プラスチック製配管26,27a,27bと循環物29との摩擦によりプラスチック製配管26,27a,27b上に高電圧の静電気が発生する。プラスチック製配管26,27a,27bと循環物29の材質の組合せは、その材料の誘電率が高く、かつ、摩擦帯電列の差が大きいほど発生する静電気電圧は高くなり、また、この組み合わせ方により、発生する静電気電圧の極性(正または負)を選択可能である。
【0035】
プラスチック製配管26,27a,27bは、塩化ビニール樹脂等の塩化ビニール系樹脂製、FRP(ファイバーレインフォースドプラスチック)製、ポリプロピレン樹脂製、ポリエチレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂製、ポリフェニレンエーテル系樹脂製のもの等種々のものが使用できる。これらの内、任意の配管径のものが選択し易いこと、樹脂の剛性が高いこと及びコストが安いこと等から、塩化ビニール樹脂製のプラスチック製配管を使用するのが好ましい。また、導電性配管28は、良導電性材料からなる鉄、ステンレス又はアルミニウム配管等の金属製配管、あるいは、プラスチック配管を金属製配管に内挿したライニング管等を使用することができる。なお、循環物29の衝突及び摩擦による配管の磨耗を考慮すると、導電性配管28として鉄配管又はステンレス製配管が好ましい。
【0036】
プラスチック製配管27a,27bは導電性配管28に内挿されており、プラスチック製配管27a,27bに帯電した高電圧の静電気は導電性配管28に電荷が移動するため、導電性配管28には高電圧の静電気が安定的に生じることとなる。このような構成により、後述する静電分離部3における静電気の電圧を安定的に、かつ、その絶対値が10kV以上の高電圧とすることが可能となる。
【0037】
また、導電性配管28を循環物29との摩擦抵抗が大きくなるように屈曲させた形状とすると、循環物29との摩擦抵抗の増大によって、より高電圧の静電気を発生させることができる。このような導電性配管28の屈曲形状については、ジグザグ状等様々な形状が考えられるが、図1に示すように、送風機23の排出方向に対して流れ方向を90°ずつ3回曲げてなる略U字状の管路とすると、循環物29の循環を損なうことなく、高電圧の静電気を発生させることができるため好ましい。なお、このように高電圧の静電気を発生させる位置は、発生した静電気がアースされないような絶縁措置を取れば、静電気発生部2の循環経路Cにおける適宜位置とすることができる。
【0038】
循環物29の配管内面及び機器内面等への衝突及び摩擦等により数百μm以下に微細粉化された微細粉は、遠心力集塵装置21により分離して循環経路C内から除去するのが好ましく、微細粉を含む循環物29は、遠心力集塵装置21の円筒状の筒内に接線方向から流入されて塔内を旋回し、微細粉は上昇する気流に乗って上昇し、上部の排風部21aから排出される。一方、微細粉が分離された循環物は遠心力により塔壁に衝突して貯槽22に降下し、連続した次の循環に供される。なお、循環物29は、一定時間循環後、微細粉を篩選別して分離除去してもよい。また、循環物29は、微細粉を除去することにより減量するので、所定時間ごとに補充して循環量を一定とすることが好ましい。
【0039】
遠心力集塵装置21及び貯槽22を設ける構成により、循環物29の前記衝突及び摩擦等により発生する微細粉による循環経路Cの閉塞が抑制される。このことにより循環物29の循環が良好となり、プラスチック製配管上に高電圧の静電気を長期にわたって安定的に発生させることができる。さらに、貯槽22に、遠心力集塵装置21の下側から冷却用空気を循環管路Cに導入する空気導入部22aを設けることにより、循環物29が冷却されるため、循環物29の加熱溶融や送風機23への付着等による配管経路C内での閉塞を防止することができる。
【0040】
循環経路C内を循環させる循環物29としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、硬質塩化ビニール系樹脂、軟質塩化ビニール系樹脂等からなる樹脂の1種以上を使用することが最も好ましく、高電圧の静電気を発生することができる。その他のプラスチック種として、ポリスチレン等のポリスチレン系樹脂、ABS樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリメチルアクリレート樹脂等のアクリレート系樹脂、ポリウレタン樹脂等のポリウレタン系樹脂等を使用することもできるが、静電気発生部位であるプラスチック製配管部の材質によっては、循環速度を通常より速めて、例えば、30m/s以上50m/s以下にすることにより循環量を増やす必要がある。
【0041】
循環物29は、その粒径を1mm以上、10mm以下程度に粉砕、又は破砕した物を使用することが好ましい。より好ましくは、粒径が3mm以上、5mm以下程度である。このような循環物29は、硬質の樹脂を使用することもできるが、循環時に衝撃を受けて破砕され易いため、どちらかといえば軟らかい樹脂を使用することが好ましい。さらに、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、炭酸バリュウム、硫酸バリュウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、クレー、タルク等の無機充填剤が含まれない樹脂を使用することが、循環物の衝撃による破砕での微粉の発生を低減できるため好ましい。また、循環物29としては、廃棄物を粉砕又は破砕して使用することもでき、安価であることから好ましい。
【0042】
なお、静電気発生部2の構成は、図1に示す構成に限定されるものではなく、静電気を発生させ得る構成であればよい。しかし、図1に示すような構成とすれば、プラスチックの再生事業者にとって極めて汎用的な機器の組み合わせからなる安価かつコンパクトな構成により、静電気を安定的に発生させることができるため、より好ましいものである。
【0043】
図2において、静電分離部3は、静電気発生部2の導電体である導電性配管28に接続された導電性連結具31、導電性連結具31により支持されて静電気発生部2により発生した静電気が帯電し、上面が傾斜面とされた帯電体35,36、前記傾斜面の下辺(下端縁35a,36a)から離間し、該下辺(下端縁35a,36a)に対向するように横設され、帯電体35,36と絶縁されるとともに接地された導電体であるアース体37,37等により構成される。また、供給部4は、静電分離部3の帯電体35の上面傾斜面の例えば上部35cから非磁性金属含有プラスチック粉砕物を供給するものであり、供給ホッパー41及びスクリューコンベア42等により構成される。
【0044】
前記のとおり静電気発生部2により発生した静電気は、導電性連結具31を介して帯電体35,36を帯電させる。すなわち、図1に示すように、静電気発生部2の導電性配管28には、接続部材32である導電性バンド32a,…及び導電性プレート32bが、導電性バンド32a,…を導電性配管28に外嵌して、該導電性バンド32a,…に導電性プレート32bを連結固定することにより取り付けられる。そして、図1及び図2に示すように、導電性プレート32bに上端がボルト等により固定された、例えば棒状の導電性の支持部材33により導電性の帯電体35,36が支持された状態で固定部材34,34により固定されるため、帯電体35,36には前記静電気が帯電する。このように帯電体35,36に帯電させる静電気は、その静電気電圧の絶対値が10kV以上の高電圧となり、安全上の点から30kV以下とすることが好ましい。このようにして、静電気発生部2と静電分離部3とを導電性連結具31により接続し、静電気発生部2と静電分離部3との位置を離すことにより、作業性をより向上させることができる。
【0045】
なお、導電性連結具31は、図2に示すような帯電体35,36を支持する構成に限定されるものではなく、導電性連結具が導電線であり該導電線により帯電体35,36を帯電させるように構成してもよい。具体的には、静電分離部3を木材や紙材等に上に帯電体35,36の支持部材を別途設けて絶縁し、静電気発生部2の導電体である導電性配管28と帯電体35,36を、導電線により接続して帯電させることも可能である。即ち、帯電体35,36の支持部材を別途設けて、該支持部材を筐体等と絶縁することもできるが、図2に示すように、例えば棒状の導電性の支持部材33を有する導電性連結具31により帯電体35,36を支持する構成の方が、構成の簡素化及び低コスト化の観点から、より好ましい構成である。
【0046】
図2に示すように、帯電体35,36は、例えばステンレス、アルミニウム、鉄板等の導電性の板材であり、アース体37,37は、例えば金属線又は金属板等からなる導体である。そして、前記板材である帯電体35,36は、水平軸まわりの傾斜方向を交互に変更して上下方向に並設され、上下段の板材が側面視略くの字状となるように配設される。また、上段の帯電体35の下端縁35aの直下に、該下端縁35aから離間させて下段の帯電体36の上端部36cを位置させ、上段の帯電体35の下端縁35aから離間させて、該下端縁35aに対向するようにアース体37を横設している。また、下段の帯電板36の下端縁36aから離間させて、該下端縁36aに対向するようにアース体37を横設している。
【0047】
以上のような構成により、帯電体35,36には静電気が帯電するとともに、その上面は傾斜面となっている。なお、帯電体35,36の上面傾斜面の傾斜角度、すなわち帯電体35,36が板材である場合は該板材の傾斜角度は、帯電体35,36の上面に沿ってプラスチック粉砕物が略均一に降下する角度に設置すれば良い。例えば、水平に対して20°以上40°以下程度の角度とすることが好ましい。
【0048】
予め粉砕処理したアルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有するプラスチック粉砕物11を供給部4の供給ホッパー41に投入した後、インバーター等にて回転数を制御して供給速度を変速可能なスクリューコンベア42により上面が傾斜面となっている帯電体35の全面に広がるように投入して供給すると、アルミニウムや銅からなる非磁性金属片は静電気を帯びた帯電体35に接触しつつ前記傾斜面に沿って降下する。なお、図1及び図2に示すように、帯電体35,36は導電性連結具31により支持されており、図1の静電気発生部2における遠心力集塵装置21及び送風機23の振動が第2の配管25及び導電性連結具31を介して図2の帯電体35,36に伝わるため、帯電体35,36は若干振動することになる。したがって、前記帯電体35,36の振動により、該帯電体35,36の上面傾斜面に沿うプラスチック粉砕物11の降下の確実化及び均一化を図ることができる。このようにしてプラスチック粉砕物11が帯電体35,36の上面傾斜面に沿って降下する過程で粉砕物11中に含まれる非磁性金属12は静電気を帯びて帯電し、帯電体35の上面下辺近傍(下端縁35a近傍)位置において、前記アース体37に向かって静電反発作用により弾き飛ばされて回収容器38に回収される。
【0049】
一方、非磁性金属の大部分が分離除去された残存プラスチック粉砕物13は、帯電体35の下端縁35aから重力により帯電体36の上端部36cに落下し、残存プラスチック粉砕物13に含まれる非磁性金属14は帯電体36の傾斜に沿って移動ながら帯電し、帯電体36の上面下辺近傍(下端縁36a近傍)位置において、前記アース体37に向かって静電反発作用により弾き飛ばされて回収容器39に回収される。そして、このようにして非磁性金属が分離除去された残存プラスチック粉砕物15は、帯電体36の下端縁36aから重力により落下し、回収容器40内に回収される。以上のような簡素かつコンパクトな構成により効率よく静電分離され、回収容器40内に回収された残存プラスチック粉砕物15は、スクリューフィーダー等の輸送装置や輸送ブロワーを用いて貯留タンクやフレコンバックに回収される。
【0050】
以上のような構成の静電分離部3における帯電体は、図2に示すような上面が傾斜面とされた上下2段の帯電体35,36を用いる構成に限定されるものではなく、例えば図3に示すような上面が傾斜面とされた1段の帯電体35のみとする構成としてもよいし、上面が傾斜面とされた3段以上の帯電体を上下方向に並設して非磁性金属の静電分離を3回以上連続して行うようにしてもよい。このように、非磁性金属の静電分離を複数回連続して行う構成とすれば、回収される樹脂粉砕物における非磁性金属の分離精度を向上することができる。さらに、回収容器40内に回収された残存プラスチック粉砕物15を、再度静電分離部3で静電分離してもよいし、残存プラスチック粉砕物15を細かく粉砕した後に再度静電分離部3で静電分離するようにしてもよく、このような静電分離方法によっても回収される樹脂粉砕物における非磁性金属の分離精度を向上することができる。
【0051】
アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有するプラスチックにおいては、基材樹脂内にこれら金属が内挿されて接着されており分離が非常に困難であるため、前記静電分離装置1により非磁性金属含有プラスチック粉砕物11から非磁性金属を精度よく分離するためには、粉砕時に適度の衝撃力を与えて樹脂内に挿入された金属を樹脂被覆層から剥離して分離する必要がある。したがって、適度な衝撃力と剪断力を与えて粉砕するために好適な衝撃式粉砕機を使用することが好ましい。また、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有するプラスチックの粉砕時において、これらの非磁性金属を含有するプラスチックに適度の衝撃力を与えて金属成分も粉砕するとともに、金属成分を樹脂被覆層から剥離させる作用を併せ持つことから、前記衝撃式粉砕機としてスイングハンマクラッシャを使用することが好ましい。
【0052】
図4は、本発明の実施の形態に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法における粉砕工程の構成を示す概略図であり、衝撃式粉砕機としてスイングハンマクラッシャ5を用いた構成例を示している。図において、スイングハンマクラッシャ5の排出側側方下部に吸引用エアダクトを設けて送風機6を連結し、該送風機6と例えばサイクロンセパレーターである遠心力集塵装置7とを配管10により連結し、遠心力集塵装置7の下側に磁選用磁石8を設置した回収容器9を設置している。アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有するプラスチックがスイングハンマクラッシャ5の投入口51に投入されると、高速で回転ハンマからなる回転刃52によりスクリーン53の開口径より小さい大きさになるまで粉砕されて粉砕品受け槽54に集積され、これら粉砕物は送風機6で吸引されて遠心力集塵装置7に送られ、前記非磁性金属を含有するプラスチック粉砕物11が回収容器9に回収される。
【0053】
スイングハンマクラッシャ5は、被処理物に与える衝撃頻度が高い点に特徴があり、その回転数が1000rpm以上1800rpm以下である場合に粉砕効率が高く、望ましい態様である。また、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有するプラスチックを粉砕して粉砕物11とする場合、粉砕物11の粒径が2mm以上20mm以下、好ましくは、3mm以上15mm以下になるようにスイングハンマクラッシャ5で粉砕することが好ましい。該粉砕物11の大きさは、粉砕物11の大きさを規制するためのパンチングメタルあるいは格子の目開きを有するスクリーン53をスイングハンマクラッシャ5に設置して粉砕することにより達成される。この範囲の目開きのスクリーン53を用いると効率よく粉砕することができ、引き続き行う静電分離工程において良好にアルミニウムや銅からなる非磁性金属が分離されるため、該非磁性金属が分離されたプラスチック粉砕物(例えば、図2における残存プラスチック粉砕物15)を回収して再資源化できるためである。
【0054】
また、粉砕物11の粒径を20mm以下となるように選択すると、基材樹脂と金属の剥離性が損なわれることがなく、樹脂成分と金属成分の分離精度の低下が抑制されるため好ましい。さらに、粉砕物11の粒径を3mm以上15mm以下となるように選択すると、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有するプラスチックを効率よく粉砕でき、金属成分が樹脂成分から十分に剥離されるためより好ましい。なお、スクリーン53としてパンチングメタルを使用する場合、各開口の形状は、円形が最も一般的であるが、特に限定は無く、楕円形、矩形、その他どのような形でもよい。
【0055】
図5は、本発明の実施の形態に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法を示すフロー図である。主に、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有するプラスチックをスイングハンマクラッシャ5により粉砕して前記粉砕物11とする粉砕工程、粉砕物11を静電分離装置1の供給部4に搬送する搬送工程、及び、静電分離装置1により静電分離する静電分離工程からなり、これらの工程により、非磁性金属が効率的に除去された樹脂粉砕物を回収することができる。
【0056】
また、スイングハンマクラッシャ5により、前記非磁性金属を含有するプラスチックを粉砕して粉砕物11とした後に、篩での篩選別を行って微粉を篩下に除去して選別することにより、静電分離工程において、静電分離装置1における静電分離部3の前記アース体37に前記微粉が纏わり付いて静電分離性能が低下することを防止することができ、その結果、非磁性金属の分離精度を向上させることができる。篩選別する際に用いる篩の目開きは、スイングハンマクラッシャ5に設置するスクリーン53の開口径より小さく、0.1mm以上のものを使用することが好ましい。篩選別工程は、図5に示すように、粉砕工程の後に設けることが好ましい。
【0057】
また、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有するプラスチックを粉砕して静電分離装置1における供給部4に搬送する搬送工程は、ベルトコンベアによる輸送装置、又は、送風機と遠心力集塵装置とを組み合わせた輸送装置により空気輸送する方法を採用することができるが、供給部4に供給する前に磁石を使用して磁選を行い、鉄等の磁性金属を分離することが好ましい。この際に、ベルトコンベアや送風機排出口、あるいは、図4に示す遠心力集塵装置7の下部に強力な磁選用磁石8を設置すれば、鉄等の磁性金属を磁石8に吸着させて除去することができる。
【0058】
さらに、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有するプラスチックを、30℃以上100℃以下、好ましくは、30℃以上50℃以下に加熱処理した後に粉砕、又は、粉砕物11に対して前記加熱処理すると、アルミニウムや銅等からなる非磁性金属の分離効率の向上が図れるため好ましい。ここで、加熱方法としては、熱風による加熱、搬送工程において前記ベルトコンベアを用いる場合に、そのベルトコンベア上の粉砕物11に対してランプ照射して乾燥する方法、静電分離工程における静電分離部3の帯電体35上の粉砕物11に対してランプ照射して乾燥する方法等により、前記非磁性金属を含有するプラスチック粉砕物11に付着した水分を乾燥する方法等が挙げられる。一方、送風機と遠心力集塵装置とを組み合わせた輸送装置により空気輸送する方法を選定すれば、送風機の送風空気に、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有するプラスチック粉砕物11が晒され、付着水分を低減できるため、静電分離工程における付着水分によるトラブルや分離精度の低下を防止することも可能となる。
【0059】
雨天時、開放された建屋において、静電分離工程における図2の静電分離装置1を運転した場合であっても、静電分離部3における帯電体35,36の静電気電圧は、例えば安定的に−10kV以下であり、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を含有する樹脂廃棄物から、良好にアルミニウムや銅を分離することができた。
【0060】
また、本発明に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法により回収した樹脂粉砕物を押出溶融装置によりペレット化した結果、アルミニウムや銅からなる非磁性金属を静電分離しない場合は運転ができなかったものが、押出溶融装置における100メッシュスクリーンの取替えを2時間以上必要としない定常運転可能なレベルでペレット化が可能となり、これまで再利用が困難であった廃棄プラスチックの再生、リサイクルが可能となった。
【実施例】
【0061】
図1の静電気発生部2を構成するプラスチック製配管26,27a,27bとして塩化ビニール樹脂製の配管(外径114mm、厚さ6.6mm、長さ1m〜1.5mの三菱樹脂製菱パイプVP100)を使用し、プラスチック製配管27a,27bの外径より大きい内径である図1のように屈曲させた金属製配管28を、プラスチック製配管27a,27bに接続し、循環経路Cを循環させる循環物29と配管との摩擦抵抗が大きくなるように構成した。静電気発生部2の循環経路C内部には、炭酸カルシウム等の充填剤が含有されていない軟質塩化ビニール系樹脂の5mm粉砕物、約5kgを風速30m/sで循環させて、図2の静電分離部3の帯電体(導電性板材)35,36にに、−10kV〜−16kVの静電気を安定的に発生させ、被処理物としては、塩化ビニール樹脂製自動車モール材を予め粉砕した物(該粉砕物中に含まれていた金属は、アルミニウム1wt%、銅0.1wt%)を使用して静電分離を行った。
【0062】
また、図2の上下2段の帯電体(導電性板材)35,36の傾斜角度は、水平に対して30度とし、長さ350mm、幅500mmのステンレス板を使用した。アース体37,37を帯電体(導電性板材)35,36の下端縁35a,36aから略水平方向に約4cm離間させ、該下端縁35a,36aにそれぞれ対向するように鉄線を横設し、銅線を巻いてアースした。なお、静電気電圧の測定は、デジタル静電電位測定器KSD−0102又はKSD−0103(春日電機社製)を使用し、静電分離部の傾斜板14に対して10cmの距離で、測定した。また、アルミニウムと銅線の含有量は、それぞれ、回収した粉砕物15を300g取り出し、手選別して重量を測定して算出した。
【0063】
(実施例1)
図4のスイングハンマクラッシャ5として、目開きが6mmのパンチングメタルからなるスクリーン53を装着したもの(尾上機械製WALD−15型粉砕機;モーター出力11kW)を使用し、塩化ビニール樹脂製自動車モール材を粉砕し、遠心力集塵装置(サイクロンセパレーター)7の下部排出口の下に設置した磁石8により磁選して鉄を除き、粉砕物を回収した。この粉砕物を図2の供給部4の供給ホッパ−41に投入し、スクリューコンベア42により、静電分離部3の帯電体35上に、60kg/hの速度で投入して静電分離を行い、残存プラスチック粉砕物15を回収した。回収した粉砕物15中のアルミニウムと銅線の含有量は、それぞれ、0.045wt%(除去率:95.5%)、0.0081wt%(除去率:91.9%)であった。静電分離した時の帯電体35,36の電圧は、−13kV〜−11kVの範囲であった。
【0064】
(実施例2)
図4のスイングハンマクラッシャ5として、目開きが4mmのパンチングメタルからなるスクリーン53を装着したもの(尾上機械製WALD−15型粉砕機;モーター出力11kW)を使用し、塩化ビニール樹脂製自動車モール材を粉砕し、遠心力集塵装置(サイクロンセパレーター)7の下部排出口の下に設置した磁石8により磁選して鉄を除き、粉砕物を回収した。この粉砕物を2mmの目開きの篩で篩選別して篩上の成分を回収した後に、図2の供給部4の供給ホッパー41に投入し、スクリューコンベア42により、静電分離部3の帯電体35上に、60kg/hの速度で投入して静電分離を行い、残存プラスチック粉砕物15を回収し、該粉砕物15を、さらに、供給ホッパー41に投入して繰り返し静電分離した。回収した粉砕物中のアルミニウムと銅線の含有量は、それぞれ、0.011wt%(除去率:98.9%)、0.0019wt%(除去率:98.1%)であった。静電分離した時の帯電体35,36の電圧は、−15kV〜−11kVの範囲であった。
【0065】
(実施例3)
図4のスイングハンマクラッシャ5として、目開きが6mmのパンチングメタルからなるスクリーン53を装着したもの(尾上機械製WALD−15型粉砕機;モーター出力11kW)を使用し、塩化ビニール樹脂製自動車モール材を粉砕し、遠心力集塵装置(サイクロンセパレーター)7の下部排出口の下に設置した磁石8により磁選して鉄を除き、粉砕物を回収した。この粉砕物を目開き2mmの篩で篩選別して篩上の成分を回収した後に、図2の供給部4の供給ホッパー41に投入し、スクリューコンベア42により、静電分離部3の帯電体35上に、30kg/hの速度で投入して静電分離を行い、残存プラスチック粉砕物15を回収した。回収した粉砕物中のアルミニウムと銅線の含有量は、それぞれ、0.03wt%(除去率:97%)、0.0065wt%(除去率:93.5%)であった。静電分離した時の傾斜板の電圧は、−15kV〜−13kVの範囲であった。
【0066】
(比較例1)
図7に示す静電分離装置55において、プラスチック製配管27a,27bとして、塩化ビニール樹脂製の配管(外径114mm、厚さ6.6mm、長さ130cm、三菱樹脂製菱パイプVP100)を使用し、プラスチック製配管27a,27bの外径より大きい内径である、図1のように屈曲させていない導電性配管(金属製配管)28を、プラスチック製配管27a,27bに接続し、循環物29を循環させる循環経路Cを形成するとともに、プラスチック製配管27aに、該配管27aの外径より大きい内径を有し、かつ、該配管27aより短い長さの鉄配管56(外径139.8mm、厚さ4.5mm、長さ100cm、125A配管)を外嵌し、該鉄配管56をプラスチック製配管27aと偏心させる位置に配置してプラスチック製配管27aと接線にて接触するように懸架した。また、鉄配管56の鉛直上方に傾斜させた木製の振動板の振動により非磁性金属含有プラスチック粉砕物11同士の吸着を排しつつ、前記振動板よりなる供給装置(振動フィーダー)57から、静電気を帯びた鉄配管56に粉砕物11を落下投入して静電分離するように構成した。供給装置57より落下投入された粉砕物11中の非磁性金属は、鉄配管56に接触後、鉄配管56上に発生させた静電気による静電反発作用により鉄配管56の上方に弾き飛ばされ、吸引口58から吸引されて回収され、非磁性金属が分離された残存プラスチック粉砕物15は、重力により鉄配管56に沿って落下して回収容器59に回収される。
【0067】
非磁性金属含有プラスチック粉砕物11として実施例と同じ物を使用し、実施例2と同様にして、図4のスイングハンマラッシャ5として、目開きが4mmのパンチングメタルからなるスクリーン53を装着したもの(尾上機械製WALD−15型粉砕機;モーター出力11kW)を使用して塩化ビニール樹脂製自動車モール材を粉砕し、遠心力集塵装置(サイクロンセパレーター)7の下部排出口の下に設置した磁石8により磁選して鉄を除き、粉砕物を回収した。この粉砕物を2mmの目開きの篩で篩選別して篩上の成分を回収した後に、図7に示す静電分離装置55の供給装置57に投入し、静電分離部である鉄配管56に落下投入した。供給装置57から静電分離部である鉄配管56に、8kg/hの速度で投入して静電分離した結果、回収した粉砕物中のアルミニウムと銅線の含有量は、それぞれ、0.32wt%(除去率:68.0%)、0.088wt%(除去率:12.0%)であった。
【0068】
(比較例2)
図4のスイングハンマクラッシャ5に代えて、目開きが3mmのパンチングメタルからなるスクリーンを装着した剪断式粉砕機(三力製作所製FS−1;モーター出力5.5kW)を使用し、塩化ビニール樹脂製自動車モール材を粉砕し、遠心力集塵装置(サイクロンセパレーター)7の下部排出口の下に設置した磁石8により磁選して鉄を除き、粉砕物を回収した。この粉砕物を目開き3mmの篩で篩選別して篩上と篩下の粉砕物を回収した。篩い分けしたこれらの粉砕物には、それぞれ、樹脂とアルミニウムや銅からなる非磁性金属が混在しており、樹脂とアルミニウムや銅との分離が上手く行かなかった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置における静電気発生部の構成を示す概略図である。
【図2】同じく静電分離部及び供給部の構成を示す概略図である。
【図3】静電分離部の別の構成例を示す概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法における粉砕工程の構成を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法を示すフロー図である。
【図6】従来のドラム式静電分離装置の概念図である。
【図7】従来の静電分離装置の概念図である。
【符号の説明】
【0070】
1 静電分離装置
2 静電気発生部
3 静電分離部
4 供給部
5 スイングハンマクラッシャ(衝撃式粉砕機)
6 送風機
7 遠心力集塵装置
8 磁選用磁石
9 回収容器
10 配管
11 非磁性金属含有プラスチック粉砕物
12 静電分離された非磁性金属含有プラスチック粉砕物
13 残存プラスチック粉砕物
14 静電分離された非磁性金属含有プラスチック粉砕物
15 残存プラスチック粉砕物
21 遠心力集塵装置
21a 排風部
22 貯槽
22a 空気導入部
23 送風機
24 第1の配管
25 第2の配管
26,27a,27b プラスチック製配管
28 導電性配管(導電体)
29 循環物
31 導電性連結具
32 接続部材
32a 導電性バンド
32b 導電性プレート
33 支持部材
34 固定部材
35,36 帯電体
35a,36a 下端縁
35b,36b 上端縁
35c,36c 上端部
37 アース体
38,39,40 回収容器
41 供給ホッパー
42 スクリューコンベア
51 投入口
52 回転刃
53 スクリーン
54 粉砕品受け槽
55 静電分離装置
56 鉄配管
57 供給装置
58 吸込口
59 回収容器
A 金属ロール
B 金属円筒
C 循環経路
101 粒子
102 導電性粒子の軌跡
103 絶縁性粒子の軌跡


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電気を発生させる静電気発生部と、
該静電気発生部の導電体に接続された導電性連結具、該導電性連結具に接続されて前記静電気が帯電し、上面が傾斜面とされた帯電体、及び、前記傾斜面の下辺から離間し、該下辺に対向するように横設され、前記帯電体と絶縁されたアース体からなる静電分離部と、
該静電分離部の帯電体の傾斜面に非磁性金属含有プラスチック粉砕物を供給する供給部とを備え、
前記傾斜面に供給され、該傾斜面に沿って降下する非磁性金属含有プラスチック粉砕物から、静電反発作用を利用して非磁性金属を分離することを特徴とする、非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置。
【請求項2】
前記静電気発生部が、遠心力集塵装置、該遠心式集塵装置の下側に連結され、プラスチック破砕物及び粒状物の少なくともどちらかからなる循環物を貯留可能な貯槽、並びに、該貯槽と第1の配管により連結されるとともに前記遠心式集塵装置と第2の配管により連結される送風機により循環経路を形成し、前記第1の配管及び第2の配管の一方をプラスチック製配管とし、他方をその中間部分を導電性配管とし該導電性配管の両側に連結される部分をプラスチック製配管としてなり、前記循環物が前記循環経路を循環することにより前記導電性配管に静電気を発生させるものであることを特徴とする請求項1記載の非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置。
【請求項3】
前記帯電体が前記導電性連結具により支持されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置。
【請求項4】
前記循環物と前記導電性配管との摩擦抵抗が大きくなるように、前記導電性配管を屈曲させてなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置。
【請求項5】
前記帯電体を導電性板材とし、該板材を上下方向に複数、隣接する上下段の板材が側面視略くの字状となるように配設し、上段の板材の下端縁の直下に、該下端縁から離間させて下段の板材の上端部を位置させ、上下複数段の板材のそれぞれの下端縁から離間させ、該下端縁に対向するように前記アース体をそれぞれ横設してなり、前記静電反発作用を利用して行う非磁性金属の分離を複数回連続して行うことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の非磁性金属含有プラスチックの静電分離装置。
【請求項6】
非磁性金属含有プラスチックを粉砕する衝撃式粉砕機と、
請求項1〜5の何れかに記載の静電分離装置と、
前記衝撃式粉砕機により粉砕された粉砕物を前記静電分離装置の供給部に搬送する輸送装置とを備えてなる、非磁性金属含有プラスチックの静電分離システム。
【請求項7】
非磁性金属含有プラスチックを衝撃式粉砕機で粉砕する粉砕工程と、
該粉砕工程により粉砕された粉砕物を請求項1〜5の何れかに記載の静電分離装置の供給部に搬送する搬送工程と、
該搬送工程により搬送され前記供給部に供給された前記粉砕物を前記静電分離装置の静電分離部によって静電分離する静電分離工程とからなる非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法。
【請求項8】
前記粉砕工程で使用する衝撃式粉砕機が、粉砕物の大きさを規制するパンチングメタル又は格子の目開きが2mm以上20mm以下であるスクリーンを設置したスイングハンマクラッシャであることを特徴とする請求項7記載の非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法。
【請求項9】
前記粉砕工程の後に、篩により微粉を除去する篩選別工程を設けてなることを特徴とする請求項7又は8記載の非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法。
【請求項10】
前記粉砕工程及び搬送工程の少なくともどちらかにおいて、磁力選別して磁性金属を分離することを特徴とする請求項7〜9の何れかに記載の非磁性金属含有プラスチックの静電分離方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−260498(P2007−260498A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85936(P2006−85936)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】