説明

面発光型半導体レーザ装置およびその駆動方法、光走査光学系、およびそれらを用いた画像形成装置

【課題】複数の発光チャネルを有する半導体レーザ(LD)において、個別の発光チャネルの温度制御をする方法は実用化されていない。温度センサをLD基板に設けて温度制御をする場合、全体の平均的な温度は制御できるが、個別の発光チャネルに対しては制御ができない。特に、画像形成装置などに用いる高密度のLDアレイの場合は、発光チャネルの駆動負荷が一様に生ずるとは限らず、個別の発熱ばらつきが大きくなりやすい。
【解決手段】ピラー型の発光チャネルの近傍に温度調整部としてのピラーを設け、温度上昇した発光チャネルからの輻射熱を吸収させる。温度調整部が吸収した熱は温度調整部からの輻射熱をして放散される。発光チャネルの温度が下がりすぎて光量ムラが問題になる構成の場合は、温度調整部自身も電流注入による発熱可能な構成にし、常時ほぼ一定の温度に制御することもできる。温度調整部を発光チャネルと同様構成にすることもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光型半導体レーザ装置で特に複数の発光チャネルを有するものに関する。とりわけ、光双安定性を示し偏光スイッチング動作が可能な偏光双安定面発光型半導体レーザの温度変動による双安定特性の変化あるいは消失を回避・低減することが可能なレーザ装置とその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザは、温度変動に伴いレーザ共振器長の伸縮や歪発生によって発振波長や発振モードが変動することがよく知られており、温度センサや光パワーモニタ等の検出信号を元にしたフィードバック制御による安定化対策とともに使用されることが多い。
また、半導体レーザにおいて光双安定性が発現されることが着目されており、偏光特性の高速スイッチング動作の光通信への応用が検討されてきている(例えば、特許文献1 参照。)。光双安定性を示す場合、注入電流と発振光強度の関係にヒステリシス特性が現れ、ヒステリシスループ特性を示す。このヒステリシスループ特性には温度依存性があることが知られており、所定の温度範囲を超えると、ヒステリシスループ特性が消失する。このことから、光双安定性を用いた超高速スイッチングを安定動作させるためにも温度制御は重要であると認識されている(例えば、特許文献2、特許文献3 参照。)。
【0003】
また、近年においては、発光面を同一面上に集積可能な面発光型半導体レーザアレイによって光通信の多チャンネル化、それによる大容量高速化が検討されてきている。あるいはまた、光書き込み装置においても、面発光型半導体レーザアレイによって書き込みの高速高密度化が実現しつつある(例えば、非特許文献1 参照。)。
非特許文献1のfig1には、偏光双安定レーザの活性層温度とヒステリシスループの関係が示されている。所定の温度範囲をはずれると、ヒステリシスループ特性が消失する。また、ヒステリシスループは、活性層の温度が高くなると注入電流が少ない側で偏光スイッチングが発生し、活性層温度が低くなると注入電流が多い側で偏光が切り替る。
上記の面発光型半導体レーザ(VCSEL)にも偏光双安定性を示す面発光型半導体レーザがあり、これを用いることによって、マルチチャネルの超高速偏光双安定スイッチングの実現が期待されている。この際においても、偏光双安定性を良好に維持するため、VCSELの温度を安定に維持することが重要であることに変わりはない。これに加えて、VCSELのように発光素子がアレイ構造を有する場合には、チャネル間の発光特性の均一化も重要となってくる。
本発明は特にピラー構造体に形成されたVCSEL(例えば、特許文献4 参照)の温度制御に関するものである。
【0004】
【特許文献1】特公平6―40595号公報
【特許文献2】特開平1−215078号公報
【特許文献3】特開2007―48905号公報
【特許文献4】特開2005―45243号公報
【非特許文献1】Y.C.Chen and J.M.Liu、Switchinng mechanism in polarization-stable semiconductor lasers、Optical and Quantum Electronics、Springer Netherlannds、1987年7月、Vol.19、S93-S102
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの重要課題に対し、温度センサやペルチェ素子やフィードバック回路によって、素子の全体的な温度を安定化する方法については示されてきているものの、多チャネル構造を有するこの種の素子において、各々の発光チャネルの温度を個別に制御し、チャネル間の温度差を均一にする方法については示されていなかった。
本発明は上記の背景に鑑み、面発光型半導体レーザにおいて、個々の発光チャネルの温度を独立に制御し、チャネル間の温度バラツキを抑制できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、光信号の生成に用いる複数の発光チャネルを有する面発光型半導体レーザ装置であって、1つの発光チャネル、または複数の発光チャネルに対して、その温度を調整する温度調整部を1つ以上具備し、該温度調節部の温度が前記発光チャネルの温度よりも低いときには、該温度調節部が前記発光チャネルの熱を吸収することを特徴とする。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の面発光型半導体レーザ装置において、前記温度調節部は電流注入が可能な構成を有し、該温度調整部への電流注入によって、該温度調整部の温度を上昇させ、該温度調整部の熱によって前記発光チャネルの温度を上昇させることもできることを特徴とする。
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の面発光型半導体レーザ装置において、前記温度調節部は前記発光チャネル(以下便宜上、主チャネルと呼ぶ)と同等の機能を有するチャネル(以下便宜上、副チャネルと呼ぶ)からなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、1つの前記発光チャネルに対し温度制御可能な位置に複数の温度制御部が対応づけられていることを特徴とする。
【0007】
請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、1つの発光チャネルに対する温度制御部の数は、チャネル配列面内の周辺部よりも中心部の方が多く対応づけられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、発光チャネル同士の間隔はチャネル配列面内の周辺部よりも中心部の方が広く配置されていることを特徴とする。
請求項7に記載の発明では、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、チャネル配列面内の周辺部よりも中心部の方が、温度調節部の総体積が大きくなるように構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項8に記載の発明では、請求項1ないし7のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、チャネル配列面内の周辺部よりも中心部の方が、温度調節部の露出表面積が大きくなるように構成されていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明では、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、前記温度調節部は放熱フィンとしての機能を有することを特徴とする。
請求項10に記載の発明では、請求項1ないし9のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、1つないしそれ以上の発光チャネルに対して、該発光チャネルの温度を制御する温度調節部は2つ以上対応づけられていることを特徴とする。
請求項11に記載の発明では、請求項1ないし10のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、該面発光型半導体レーザ装置は偏光双安定型であることを特徴とする。
【0009】
請求項12に記載の発明では、請求項3ないし10のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置を駆動する駆動方法であって、予め定められた所定のタイミングで前記主チャネルから前記副チャネルに発光モードが切り替わり、前記主チャネルは非発光モードになり、他の予め定められた所定のタイミングで前記副チャネルから前記主チャネルに発光モードが切り替わり、前記副チャネルは非発光モードになることを特徴とする。
請求項13に記載の発明では、請求項12に記載の面発光型半導体レーザ装置を駆動する駆動方法において、非発光モードにあるチャネルは温度制御部として働かせることを特徴とする。
請求項14に記載の発明では、請求項13に記載の面発光型半導体レーザ装置を駆動する駆動方法において、前記温度調節部のチャネルに注入する単位時間あたりの電流量が、前記発光モードにあるチャネルの発光時間が長いとき小さくし、非発光時間が長いとき大きくなるように駆動させることを特徴とする。
請求項15に記載の発明では、請求項13または14に記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、前記前記温度調節部のチャネルは対応する発光モードにあるチャネルごとに独立して注入電流量を制御されることを特徴とする。
【0010】
請求項16に記載の発明では、請求項13ないし15のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、前記温度調節部のチャネルに電流注入する時間が、前記発光モードにあるチャネルの発光時間が長いとき短くし、非発光時間が長いときに長くなるように駆動させることを特徴とする。
請求項17に記載の発明では、請求項16に記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、前記温度調節部のチャネルは対応する発光モードにあるチャネルごとに独立して電流注入時間を制御されることを特徴とする。
請求項18に記載の発明では、請求項13ないし15のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、前記発光モードにあるチャネルが発光、非発光のときに、前記温度調節部のチャネルに注入する電流をそれぞれIon、Ioffとするとき、Ion<Ioffとなるように電流注入することを特徴とする。
請求項19に記載の発明では、請求項13ないし18のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、温度調節部のチャネル数が複数ある時、温度制御に用いるチャネル数を、前記発光モードにあるチャネルと温度制御に用いるチャネル間の温度差が大きいとき多くなるように選択的に駆動させることを特徴とする。
請求項20に記載の発明では、請求項12ないし19のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、該面発光型半導体レーザは偏光双安定型であることを特徴とする。
請求項21に記載の発明では、光源と、光走査手段と、結像光学系を有する光走査装置において、前記光源は、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置であることを特徴とする。
請求項22に記載の発明では、光走査光学装置と、複数の感光体と、現像装置と、転写装置を少なくとも有する画像形成装置において、前記光走査光学装置は、請求項21に記載の光走査光学装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光チャネルの温度をチャネルごとに個別に制御できるようになる。これにより、チャネル間の温度バラツキや、チャネル間の発光特性のバラツキを少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明の実施形態を説明するための図である。同図(a)は2次元アレイ状に配列された面発光型半導体レーザの平面図、同図(b)は発光チャネルと温度調整部が1対1で配列された構成を示す平面模式図、同図(c)はその側面図、同図(d)は1個の発光チャネルに複数の温度調整部が対応する構成の平面模式図、(e)は複数の発光チャネルに対して1個の温度調整部が対応する構成の平面模式図である。
同図において符号1は発光チャネル、2は太いピラーをそれぞれ示す。
発光チャネル1の円形部は外形を示し、内部の長方形はレーザ発振の開口部を示す。
図2は放熱性を高めた構成を示す図である。
同図において、符号3は細いピラーを示す。
本発明の実施形態においては、1次元(図示省略)ないしは図1(a)に示す2次元のアレイ状に発光チャネルが配列された面発光型半導体レーザにおいて、発光チャネルの周囲には温度調節機構が設けられている。温度調節機構は以下に示すように種々の変形があり得るので、同図では温度調節機構を省略して示している。温度調節機構の構造としてはピラー構造体が筆頭に例示できる。ピラー構造体とは面に対し柱状に延びた構造体をいい、構成の条件によっては周期的な集合体として形成できる。
【0013】
このピラー構造体は温度制御の仕様によって任意の形状や数を取り得る。同図(b)は発光チャネルと温度調節機構としてのピラー(以下温度調節部という)が1対1で対応づけられている例を示す。この図では発光チャネルおよび温度調節部は円柱型を基本としている。同図では煩雑さを避けるため発光チャネルとそれに対応する温度調節部を1組だけ表示し、基板を省略してある。発光チャネル1はレーザ光の発光に伴って必然的に発熱が生ずる。この熱によって発光チャネルの温度が上がりすぎると予定通りの発光ができなくなるので、所定の温度範囲を超えないようにする必要がある。発光チャネルの近傍に温度調節部を設けることによって、発光チャネル1の円柱体から発する輻射熱が、発光チャネルより温度の低い温度調節部によって吸収されるとともに、基板を介しての伝導熱によっても発光チャネルから温度調節部に熱が吸収される。
同図に示す発光チャネルと温度調節部の組み合わせを1組としてこのような組を複数並べて発光体アレイを構成する。アレイが1次元構成の場合であれば、例えば同図の組を同図の上下方向に複数並べることで構成できる。
【0014】
同図(d)は1個の発光チャネルに対し4個の温度調節部が対応づけられている構成を示しているが、4個に限るものではなく、2個であっても3個であってもかまわない。ただし、後述のようになるべく温度制御は発光チャネルに対し対称的である方が望ましいので、発光チャネルが1個の場合は発光チャネルを中心とした対称配置にするのがよい。同図も基板は省略してある。以下の各図においても、発光チャネルや温度調節部の配列のみを示すときは基板の記載を省略する。
同図(e)は2個の発光チャネルに対し1個の温度調整部を設ける例を示しているが、この2個の発光チャネルの温度制御を同時に同等におこなって良い場合に限って利用できる構成である。
【0015】
温度調節部は体積の大きいものほど熱容量が大きく、発光チャネルからの熱の吸収性において優れている。しかしながら、単に熱容量が大きいだけでは放熱効率が低くなり、温度制御の応答特性は遅くなる。放熱効果とその応答性を改善するには、表面積の大きい形状に優位性が認められる。たとえば太いピラーを一本設ける場合と比較して、図2に示すように細いピラーを多数設けることによって、放熱性、熱吸収性、温度制御の応答性を両立させることができるので、好ましい形態である。表面積を大きくするために、温度調節部の形状をフィン構造にすることも有効である。
【0016】
ピラー構造体への電流注入手段を付与することにより、ピラー構造体にヒータとしての作用を与え、下降した温度を上昇させるべく制御することも可能である。
温度調節部は発光チャネルと基本的には同じ工程で作られるので、工程中で用いられるマスクによって、温度調節部と発光チャネルとは作り分けできる。発光チャネルには電極構造が付与されるので、温度調節部にも同様に電極構造を付与することができ、ピラー構造体の上下方向に2つの電極を形成し、その間を抵抗体に形成すれば、両電極間に通電することで、発熱させることができる。
【0017】
図3は他の実施形態を説明するための図である。
同図において符号2’は温度制御部、4は発光チャネルの側面、5はピラー構造体の発光チャネルに向いた側面をそれぞれ示す。
半導体レーザ装置における、主たる発熱体となる発光チャネル1の構造側面4から輻射される熱を温度調節部2’の発光チャネル1に向いた面が吸収する。吸収効率という観点から、特に発光チャネル1が円筒ピラー形状を為す場合には、その側面4にならう曲面形状5を与えることに優位性が認められる。同図において、ピラー構造体の発光チャネル1に向いた側面5は、発光チャネルの側面4の形状にならうような形状をしている。このような側面形状は輻射熱の吸収という点において好ましい形態である。
【0018】
図4は温度調節部への電流注入による発光チャネルの温度変化を示す模式図である。
同図において符号6は温度制御部への注入電流信号波形、7は温度制御部の温度変動、8は発光チャネルの非発光時の温度変動をそれぞれ示す。以下、温度調節部を符号2で代表する。
温度調節部2を前記のように電流注入可能な構成にすることができる。この構成によって、温度制御部を単に熱吸収のみの機能に留まらず、逆に発熱機能を持たせることができる。発光チャネルの入力信号が少ないとき、自然放熱により発光チャネルの温度が下がりすぎるようなことがあると、連続的に入力信号があるときに比べて出力変動が生ずるので、それを避けるため或る程度の温度上昇を積極的に行う必要がある。この機能により、発光チャネルの温度をほぼ一定に保つことができるようになり、出力変動をさほど気にしなくてすむ様になる。
これらの温度調節部への電流注入によって発生する熱は隣接する発光チャネル側に輻射および基板を介した伝導により伝達され、これにともない発光チャネルの温度も上昇することになる。温度調節部への電流注入量を少なくすると温度調整部の温度上昇は緩和され、発光チャネルの温度上昇への寄与も低下する。電流を注入しないとき放熱が優勢となって温度調整機構の温度は下降に転じる。本発明において、注入電流の調整による温度制御のパターンには状態に応じた自在の選択性が与えられ得るものである。
【0019】
図5は他の実施形態を説明するための図である。
同図において符号9は発光チャネル、10は温度調節部をそれぞれ示す。
温度調節機構の放熱の効率を高めるうえで、温度調節部として好ましい構造は、発光チャネルの位置によらず同一なる構造とすることが最も簡便である。同図において、発光チャネル9と、温度調節部10は同一形状である。
【0020】
図6は他の実施形態を説明するための図である。
同図において符号11は、チャネル基板上における放熱されにくいチャネル位置における発光チャネル、12は温度調節部をそれぞれ示す。
図7は他の実施形態を説明するための図である。
同図において符号13は、チャネル基板上における放熱されやすいチャネル位置における発光チャネル、14は温度調節部をそれぞれ示す。
特にチャネル基板上においてアレイ配列を為すチャネルの位置によって放熱特性が異なることを考慮すれば、温度調節部としての配置もまたこれに対応して工夫されたものであることが好ましく、たとえば放熱されにくいチャネル位置においてはその放熱性が高い配置をとることが有用である。
図6のように、放熱されにくいチャネル位置(例えば、チャネル配列面内の周辺部)においては温度調節部12の数を多くし、逆に、図7のように放熱されやすいチャネル位置(例えば、チャネル配列面内の周辺部)においては、温度調節部14の数を少なくする。
【0021】
放熱性を高めるためには、ピラー構造体の本数を増やすなどして総表面積を増やすことが好ましい。
あるいは、熱伝導特性の良好なる金属系材料が効果的に選択される。たとえばAlなどが好適である。また、輻射熱の吸収効率の点から、表面反射率が低いこと、黒体化されていることなどが好ましい。このようにすることによっても、発光チャネルからの輻射熱の吸収効率は改善される。
【0022】
図8は熱吸収効率を高めたピラー構造体を説明するための図である。
同図において符号15はVCSELの積層構造、16はVCSELの側面、17はピラー構造、18はVCSELの高さ、19はピラー構造体の高さをそれぞれ示す。
主に円筒形状を為すVCSELの積層構造15に対し、この側面16を少なくとも部分的に囲む構造を有する特殊な形状のピラー構造17によっても、積層構造体からの輻射熱の吸収効率を高くして、熱的調整効果を高めることができる。
【0023】
このようなピラー構造体における高さ19は、VCSEL発光部積層構造15の高さ18と概ね一致するように構成されることが、VCSELから発光される光を受ける受光素子やマイクロレンズなどの光学素子モジュールらとの配置構成の関係上から好ましい。
【0024】
VCSEL発光部積層構造15に対して密着ないし所定の間隙を以って配置され、VCSEL発光部の積層構造体15を囲い込む構成を取り得るものである。左記のピラー構造体を、複数のVCSELチャネルの各々に対して、それらの間隙に自在に構成することは、マスクプロセスを用いれば容易に実現可能である。
なお、本発明は、上に例示した構造特性を有するピラーに限定されるものではない。
【0025】
また、ピラー構造体を用いて、発光チャネルの各々に対して独立に温度調節を行うことも可能である。既に述べたように、ピラー構造体に電流注入手段が付与され、電流を注入するピラーを選択することによって、熱的制御作用を与える発光チャネルを選択することができる。
なお、図1ないし図7に示した発光チャネルもVCSELの積層構造体であってかまわない。
【0026】
図9は電流注入方向を示す模式図である。
VCSEL積層方向の全体に均等な熱的制御作用を与えるためには、同図のように、上記の電流注入はピラーの高さ方向(Z方向)に導通されることが望ましい。
【0027】
ピラー自身の抵抗値が高い場合においても、ピラーの中央部に電極細線20を同図のZ方向に埋め込むことによりピラー全体を均等に発熱させることができる。
なお、本発明は、上に例示した電流注入手段に限定されるものではない。
【0028】
上記の実施形態では、発光チャネルとは非同一なる温度調整機構を設けているが、VCSELが有する複数の発光チャネルの一部を温度調整用途に供するという発想によって、素子構成並びに作製プロセスを大幅に容易化することができる。
発光に供するチャネルをここでは主チャネルと称し、温度調整用途に供するチャネルをここでは副チャネルと称することにする。副チャネルは主チャネルと同様の構造体であってもよく、主チャネルと同時に作製することができる。副チャネルは主チャネルと同等直径、高さ、体積を有することもできる。主チャネルと副チャネルの区別をしないで両者をまとめて言うときは単にチャネルと言うことがある。
【0029】
図10は他の実施形態を説明するための図である。
同図において符号21は主チャネル、22は副チャネル、23は主チャネルの高さ、24は副チャネルの高さをそれぞれ示す。
同図は図2に示した配置における温度調節部を副チャネルに置き換えた構成に対応する斜視図である。
副チャネル22の直径を主チャネル21とは異なるように作製することもできる。また、断面円形にこだわることなく、断面長方形その他、図3や図8に示した温度調節部のような異形にすることもできる。
主チャネルの高さ23と副チャネルの高さ24がほぼ等しいことは、主チャネルと副チャネルの間での熱的相互作用が積層構造の全体に及びうる点から好ましい。
【0030】
副チャネル22は主チャネル21と同一の工程によって作製され、その機能を同一化できるので、主チャネルと同様に電流を注入させることもまた可能であるから、電流注入制御方式によって温度制御を行うことは極めて自然かつ効率的な選択である。副チャネルへの電流注入によって、副チャネルに発生した熱を隣接する主チャネルに伝達することができるので、主チャネルの温度が所望の範囲よりも低い状態においてはその温度を上昇させるように制御することができる。
副チャネルは基本構成が主チャネルと同じであるため、主チャネルの発光に必要な注入電流と同じレベルの電流を注入すると副チャネルも発光してしまう。そこで、温度上昇を目的として副チャネルに電流を注入するときは、副チャネルの発振開始の閾値レベル以下の電流値の範囲で注入しなければならない。
なお、本発明は、上に例示した副チャネルに限定されるものではない。
【0031】
また、副チャネルへの電流注入を行わない場合には、副チャネルは温度吸収部して作用し、主チャネルで発生している熱を吸収し、あるいは放熱する。副チャネルを、温度調節用に用いる場合、副チャネルのことを温度調節部と呼ぶ。
着目する1つの主チャネルに対し、その周囲には副チャネルが少なくともひとつあることが好ましい。
【0032】
図11は他の実施形態を説明するための図である。
同図において符号25は主チャネル、26は副チャネルをそれぞれ示す。
温度制御の仕様目的によっては、同図のように1つの主チャネル25に対して複数の副チャネル26を対応させることもできる。
この構成の場合、場所によっては1つの副チャネルが複数の主チャネルに対向することになるので、どの副チャネルの電流注入量を制御するかは、主チャネルと副チャネルとの温度差の大きさを参考に定める。例えば、主チャネルの発光時間が長いものは温度が上がりやすいので、直接温度の測定をしないでも、注入電流と注入時間との積から上昇温度を推定して、制御すべき副チャネルを選択して、その注入電流を制御することができる。
【0033】
図12はVCSELアレイの側面図である。
同図において符号27は発光面を示す。
図13、14、15は主チャネルに対する副チャネルの配置例をそれぞれ示す図である。
図13は図の上下左右を対称に配置する例。同図(a)は1つの主チャネルに着目したときの配列を示す図、同図(b)は複数の主チャネルを配列するときの構成例を示す図である。
図14は主チャネルの配列方向に対し対角線方向に発振方向を設定した場合の構成を説明するための図である。同図(a)、(b)は図13のそれらと同様である。なお、同図(b)は図11と同じ形態になる。
図15は主チャネルに対し同心円状に対称となるように副チャネルを配置する例を示す図である。同図(a)は1つの主チャネルに着目したときの配列を示す図、同図(b)は複数の主チャネルを配列するときの構成を示す図である。
各図において符号28は主チャネル、29は副チャネルをそれぞれ示す。
【0034】
VCSELアレイにおける発光面27内の温度分布の対称性を考慮すると、1つの主チャネル28に対し、図13の上下(Y方向)左右(X方向)の温度分布が対称となるように副チャネル29を対称配置する、乃至は図14のように対角方向が対称となるように副チャネルを対称配置する、あるいは同心円状に対称となるように副チャネルを対称配置する(図15)ことにより、温度分布の対称性を改善する上での効果を高めることができる。温度分布の対称性を高めることによって、熱とその分布に伴いデバイスに非対称な歪が発生することを回避できるので、安定的な偏光双安定性を維持する上での効果が得られるほか、発振モードの安定性への効果も得られる。
図15に示す構成は、上下・左右に加えて対角線方向も対称に配置する例であるが、本発明は、上に例示した副チャネルの配置パターンに限定されるものではない。例えば、上下・左右に加えて対角線方向も対称に配置する他の例として図16に示す配列も可能である。図15および16に示す構成の場合は、主チャネルを取り囲む副チャネルが他の主チャネルと隣接していないので、温度制御が各主チャネル毎に独立して行える点で優れている。
【0035】
このような副チャネルによる温度制御を行っても、極めて特異的な光信号列などによって、著しく主チャネルの温度が上昇する場合も想定される。しかしながら、このような場合においても、副チャネルにも光信号生成機能があるため、副チャネルと主チャネルを入れ替えて用いることができる。副チャネルの温度が主チャネルの温度と比較して低い場合において特に有効な手段である。この用途の場合はすべてのチャネルが発光チャネルになりうるので主チャネルと副チャネルの区別は無意味になるが、便宜上主チャネルと副チャネルの表現を用いるものとする。
画像形成装置に用いるための光源であれば、主チャネルと副チャネルを入れ替えて発光することによって、画像書き込みの位置が両チャネルの配置位置分だけずれることになる。この問題を避けるためには、すべての副チャネルを対応する主チャネルと相対的に同一の関係となるようにし、いずれかの発光チャネルが所定温度を超えそうになったら、主チャネルと副チャネルの切換を全発光チャネルに関し一斉に切り替えることが望ましい。そうすることによって、上記の位置ずれは、そのずれ量がすべて同じ量になるため、光学的なずれ補正も容易になり、構成によっては単に書き込みタイミングの調整のみによっても補正が可能になる。
【0036】
1つの主チャネルに対して副チャネルが複数ある場合には、切換に用いる副チャネルを、主チャネルに対し特定の位置関係にある副チャネルに限定して切り替えることにするのがよい。
図16に示す配列の場合、現在発光しているすべてのチャネルを一斉に上下左右のいずれかの副チャネルに切り替えることができ、例えば、上、右、下、左のように順に切り替えていくことで、温度低下のための時間を十分取ることができるようになる。この場合、発光チャネルの位置ずれは、例えば、上下の切換時は光学的に補正し、左右の切換時は書き込みタイミングを電気的に補正してもよい。
1つの主チャネルに対して副チャネルが複数ある場合に、温度制御に用いるチャネル数を、発光モードにあるチャネルと温度制御に用いるチャネル間の温度差が大きいとき多くなるように選択的に駆動させても良い。
【0037】
図17は主チャネルと副チャネルの入力信号を切り替える例を説明するための図である。
同図において符号IthはVCSELの発光開始に至る注入電流の閾値を示す。
主チャネル28と副チャネル29の発光モードと非発光モードを切り替えるようにする。切り替えるタイミングは、主チャネルの動作履歴を元に温度上昇を推定するなど適宜判断することができる。発光モードになると、画像データなどの信号入力が行われ、非発光モードになると、温度調整用の入力が行われる。
主チャネルが発光モードになっているときは、主チャネルの非発光時間帯に副チャネルに対し閾値電流Ith以下の電流Ioffを与えておく。逆に副チャネルが発光モードになっているときは、副チャネルの非発光時間帯に主チャネルに対し閾値電流Ith以下の電流を与える。このようにすることによって、発光モードになっているチャネルの温度変動を小さく抑えることができる。この例では、発光モードになっていない側のチャネルは温度制御部として働いている。同図では、発光モードになっているチャネルが発光しているとき、非発光モードになっているチャネルに対する注入電流Ionを0にして示してあるが、放熱しやすい条件にあるチャネルに対しては微小ではあるが注入電流を与えることもある。その場合でも、Ion<Ioffの関係になるように定めておく。
以下の説明では、温度の制御に関する記述の場合、煩雑さを避けるため発光モードにあるチャネルを主チャネルと称し、非発光モードにあるチャネルを副チャネル、あるいは温度調節部と称す。
【0038】
図18は動作履歴を記憶する手段を設ける例を説明するための図である。
同図において符号30は主チャネル、31は副チャネル、32は制御回路をそれぞれ示す。
主チャネル30の信号履歴を記憶し、履歴を元に、主チャネルの推定温度上昇が予め定めた温度以上になる見込みになったら、そのタイミングをもって副チャネル31の駆動信号を生成して副チャネル31を駆動させうる制御回路32を設ける。
【0039】
図19は他の実施形態を説明するための図である。
同図において符号33は温度センサ、34は判断回路、35は副チャネルの駆動回路をそれぞれ示す。
温度センサ33によって計測された温度が所定値を上回ったときにこれを判断する判断回路34によって主副の駆動回路35を介してそれらの動作を切り替えるタイミングを定める方法もまた実施可能である。なお、同図では主チャネルの駆動回路は記載を省略している。
【0040】
図20は主チャネルの発光時間と温度変化の関係を示す模式線図である。
同図において符号Ttは温度変化を示す線図である。
主チャネルにおける温度変化Ttは主チャネルにおける発光時間が長いほど上昇し、主チャネルにおける非発光時間が長いほど下降するので、主チャネルにおける発光、非発光の信号パターンに応じた温度制御を、副チャネルを用いて行うことによって、主チャネルに対する温度制御の精度を高めることができる。
主チャネルにおける非発光時間が長い(発光時間が短い)ときには副チャネルに注入する電流の積算値を増やし、逆に、主チャネルにおける発光時間が長いときには副チャネルに注入する電流の積算値を減らすようにすると、主チャネルの温度変動は抑制される。
注入電流の積算値は、単位時間あたりの注入量と注入時間の積であるので、これらの2つの制御パラメータの少なくとも一方を以って温度制御することが可能である。
【0041】
図21は主副双方のチャネルへの電流注入に伴う主チャネルの温度変動特性を模式的に示す図である。
同図において符号36、39は主チャネルへの注入電流領域、37、45は主チャネルの温度上昇領域、38、41、44、46は副チャネルの注入電流領域、40、42、43は主チャネルの温度下降領域、Iは主チャネルへの注入電流、Iは副チャネルへの注入電流、Topは主チャネルに対する所望の温度領域をそれぞれ示す。
主チャネルが発光状態のとき、発熱にともない主チャネルの温度は符号37に示すように上昇しているので、これを冷却するように副チャネルを動作させることが好ましい。具体的には、注入電流領域38に示すように電流Iを注入しないようにする。これによって、副チャネルは発熱せず、主チャネルの熱を吸収放熱できるので、主チャネルの温度上昇は抑制される。
【0042】
次に、主チャネルへの注入電流領域39に示すように、主チャネルが非発光状態(I=0)のときには、主チャネルの温度下降領域40に示すように、残余の熱が放熱されながら主チャネルの温度は下降する。この放熱過程においては、副チャネルの注入電流領域41に示すように、副チャネルに電流Iを注入しないようにすることで、主チャネルの温度下降効果を高めることができる。これによって、主チャネルの温度下降領域42は、所望の温度領域Top内に収まることになる。
【0043】
次に、非発光時間がさらに伸びて、主チャネルの温度下降領域43に示すように、主チャネルの温度が所望の温度Topを下回ったような場合には、副チャネルの注入電流領域44に示すように、副チャネルに電流Iを注入して、主チャネルの温度を上昇させることができる。温度が上昇して、主チャネルの温度上昇領域45に示すように、所望の温度領域Topに達したら、電流注入量を減らす、ないしは、副チャネルの注入電流領域46に示すように、注入しないようにする。
このように、非発光の状態においては、非発光時間に応じて、これらの2つの制御パターンを適宜選択することができる。よって、主チャネルの発光時の副チャネルへの注入電流量は、主チャネルの非発光時の副チャネルへの注入電流量よりも小さいほうが好ましい。
【0044】
主チャネルが複数ある場合、それらの温度変動特性は一様ではない、ということを考慮して注入電流制御を行うことが好ましい。どのチャネルの信号パターンも常に同一であるということは希有であるので、温度変動特性もチャネルによって異なるから、主チャネルごとに独立して注入電流量を制御し、各々のチャネルの信号パターンに応じた電流注入制御を行うことにより、それぞれのチャネルに適した温度制御が為され、チャネル全体の温度バラツキを少なくすることができる。この場合においても、注入電流の積算値は、単位時間あたりの注入量と注入時間の積であることから、これらを制御パラメータとして補正することが可能である。
【0045】
図22は注入電流レベルと時間幅の関係を説明するための模式図である。
同図において符号47、48は副チャネルへの注入電流波形、iは電流レベル、tは時間幅をそれぞれ示す。
電流レベルは、波形47がi、波形48が2iであり、注入時間は波形47がt、波形48が1/2tであるとする。発光を目的とした注入電流でない場合は、2iは発光に必要な閾値電流より小さいものとする。
波形48の電流レベルは波形47のそれの2倍であるが注入時間幅は1/2であるので、積算値としてみた場合には波形47と波形48は等価である。
【0046】
図23は発光部の配置の条件による冷却効果の違いを説明するための図である。
同図において符号49は中央発光部、50は周辺発光部をそれぞれ示す。
主チャネルを1次元ないし2次元のアレイ状に配列した際には、同図のように、アレイの中央発光部49おける放熱効果は、アレイ周辺発光部50と比較して相対的に低くなるので、注入する電流を低めにするようにして、周辺発光部50よりも冷却効果が相対的に高くなるように制御を行うことが望ましい。なお、同図では副チャネルは省略している。
【0047】
図24は放熱効果を高くする構成例を説明するための図である。
同図において符号51は副チャネルを示す。
放熱効果を高くすることも有効であり、同図のように、副チャネルの放熱部材としての作用が強くなるように、チャネル配列面内における副チャネル51の数を多く配置するなどするとよい。
また、主チャネルの温度制御には、単数もしくは複数の副チャネルを用いることが可能であり、特に複数の場合においては、副チャネルのチャネル数が多いほど強く制御することができる。主チャネルの温度上昇を強く抑制したい場合には、より多くの副チャネルを用いることによって、熱を吸収し放熱を加速させることができる。あるいは、主チャネルの温度下降を強く抑制したい場合には、より多くの副チャネルを用いて伝熱量を増加させることができる。
【0048】
予め副チャネルを多数用意しておいて、必要に応じて温度制御用として駆動させるチャネル数を調節することも可能である。同図のようにアレイ配列の周辺発光部50も中央発光部49の副チャネル数が相対的に多くなるように構成することにより、熱の逃げにくい中央部の主チャネルの動作を安定化させることができる。
複数の副チャネルのいずれかを発光チャネルに切り替える必要があるとき、
【0049】
図25は場所による放熱効果の違いを考慮した配置例を示す図である。
発光チャネル同士の間隔はチャネル配列面内の周辺部よりも中心部の方が広く配置されている。
このように、主チャネルを1次元ないし2次元のアレイ状に配列した際には中央部における放熱効果が相対的に低くなるので、同図のように、主チャネル49と主チャネル50、50の間隔50dを中央部において相対的に広く配置構成させることを併用するとよい。たとえば同図においては、50d1は50d2よりも長い。また、このように主チャネルを配置することによって広がった主チャネルの間隙に対し、ハッチング表記した副チャネル51を多数配置させて、放熱性を高くすることも可能になる。これによって、中央部の温度上昇を抑制する効果を高めることができる。
【0050】
たとえば、円柱ピラー形状のVCSEL副チャネルの体積は、そのピラーの高さおよび直径によって規定されうるが、直径はMOCVDに代表される成膜プロセスにおいて使用するマスクの開口形状によって自在に変えることができる。直径を変えることによって体積が変わり、熱容量も変えることができる。
すなわち、チャネル配列面内の周辺部よりも中心部の方が、温度調節部の総体積が大きくなるように構成する。あるいは、温度調節部の露出表面積が大きくなるように構成する。
例えば、アレイ配列の中央部近傍における副チャネルの直径を小さくして1個当たりの熱容量を小さくすることで放熱のレスポンスが速くなり、これを多数本配置することによって、放熱の総量を増やすことができる。これにより、中央部近傍における主チャネルの温度上昇をレスポンスよく抑止することができる。もちろん高さを変えてもよいし、円柱状でない場合にも同様にマスクの開口形状によって変更できる。
【0051】
図26は偏光双安定性を示すヒステリシスループ特性に温度依存性があることを示す図である。同図(a)〜(e)は195.2°K〜184.5°Kにそれぞれ対応するヒステリシスループを示す曲線である。
同図において符号TMはTMモード発振のグラフ、TEはTEモード発振のグラフをそれぞれ示す。
各図において横軸は電流(CURRENT):単位[mA]、縦軸は光出力(POWER):単位[mW]をそれぞれ示す。
偏光双安定型のVCSELは優れた超高速偏光スイッチング特性を示し、ピコ秒オーダーのスイッチングが可能であることが知られており、劣化信号を復調させる光2R機能などの優れた機能が提案され、光通信への応用が期待されている。KAWAGUCHIらの論文非特許文献1には、同図に示すように、偏光双安定性を示すヒステリシスループ特性には温度依存性があること、ヒステリシスループ特性を示す温度範囲は限定的であること、所定の温度範囲を超えるとヒステリシスループ特性が消失することが同時に示されている。
上記においてTMモードとは、波の伝播方向に磁場成分を持たない導波モード、TEモードとは、波の伝播方向に電場成分を持たない導波モードのことを言う。
このヒステリシスループは注入電流量と発光強度の関係において発現する双安定性に直結する特性であり、ヒステリシスループ特性が得られる温度範囲でないと光双安定特性が得られない。従って温度制御は極めて重要である。現状はペルチェ素子を用いた温度制御が行われており、温度制御に要するコストは安くないが、民生用途をはじめ、基幹メトロ系においても温度補正コストの低減は今後重要となることが予想される。このような偏光双安定VCSELアレイにおいても、これまでに述べてきたように温度制御機構、ピラー構造体、乃至は単数もしくは複数の副チャネルとそれらへの電流注入駆動制御方法によって、光信号生成に使用する主チャネルの温度を制御することができるようになり、温度制御に要するコストは低廉化される。
【0052】
また、上記のごとき偏光双安定VCSELにおいては、TM偏光状態、および、これを90度回転したTE偏光状態の2状態をスイッチングして使用されることが多く、これらの2つの偏光モードが安定に励起されるレーザ構造が望ましい。これを満たす歪超格子構造は特定の方向に歪が与えられているのであるが、熱的変化によって構成材料の膨張伸縮に伴い歪特性が変化することによって偏光双安定性も崩れてしまうことが示唆される。温度変動幅を少なくすることによって、材料の膨張伸縮およびこれに伴う歪特性の変化を抑制することができる。特に偏光双安定性を発現する方向成分の温度変化が生じにくくなる位置を選んで副チャネルを設け温度変動を抑制することによって、偏光双安定性を維持する上で高い効果が得られる。
【0053】
図27は本発明の他の実施形態を説明するための図である。
同図は、右斜め45°方向に主軸を持つ楕円偏光波53、左斜め45°方向に主軸を持つ楕円偏光波54を励振するVCSELを模式的に示すものであり、右斜め45°方向と左斜め45°方向には副チャネルが配置されているので、これらの方向に対する温度制御性が高い構成となっており、これによって、特性の安定性を高くすることができる。この例をもとにすれば、主チャネルが複数の場合においても同様に、これらの方向に対して温度制御性が高くなるように、各々の主チャネルに対して、右斜め45°方向と左斜め45°方向に副チャネルを配置構成することができる。
【0054】
また、光通信分野においても、光源のマルチチャネル化による通信の高速大容量化が期待されているが、本発明によれば、多チャネルの各々に対して最適な温度補正を行うことができるようになる。
【0055】
図28は近年における位相遅延書き込み型の装置への適用図である。同図(a)は平面図、同図(b)は側面図である。
同図において符号55は半導体レーザ光源、56はコリメータレンズ、57は光路分離手段、58はシリンドリカルレンズ、59は光偏向器、60は走査レンズ、61は折り返しミラー、62は感光体面をそれぞれ示す。同図(b)において、光路分離手段57aとしてたとえば偏光ビームスプリッタが用いられる。光路分離手段57bは57aで分離された光路を偏向する素子で、同図においては90度偏向して、分離した2つの光路は平行に構成される。同図における上下方向は書き込みにおける副走査方向に一致する。光偏向器59は2段のポリゴンミラーから構成され、偏向走査の位相は上段と下段で90度ズレているので、2つの光路を用いて交互に高速に書き込み走査を行うことができる。
本光学装置に対し、光源にVCSELアレイ55を用いることによって感光体面62に複数列の主走査書き込みを行うことができる。あるいはさらに、偏光双安定VCSELを用いると、光路分離素子57aを偏光ビームスプリッタとすることで、2つの光路を用いた書き込み走査を高速に行うことができる。
【0056】
さらに、光源55に偏光双安定VCSELアレイを用いれば、一回の主走査で複数列の書き込みができるので、さらに高速に書き込むことができる。特にこのように複数の主走査列を同時に書き込む際には、各々の走査列におけるビームスポット品質が均一であることが、画質を向上させる上で重要である。VCSELアレイの各チャネルの発光特性にバラツキが生じないようにするため、各々のチャネルに対して、副チャネルを用いた温度制御を行うことができる。これによって、各チャネルの発光特性のバラツキを改善することができる。ビーム品質、特に、発光ビーム強度とビームスポット径が均一化されることによって、感光体上に形成されるドットサイズも均一化され、画質の向上への効果は高い。また、光路伝搬中に生じる光学素子による屈折や反射特性には偏光依存性があるので、発光ビームの偏光特性のバラツキが改善されることによって、これらの特性変動は抑制されることとなって、感光体面に到達するスポットの特性(光量、プロファイルなど)が均一化されるため、感光体面に記録される潜像スポットのバラツキも同様に抑制される。これらの効果によって、画質を改善することができる。
【0057】
あるいは、同図に示すような光路分離手段および2段構成の偏光器を用いなくても、VCSELのアレイによって複数の主走査列を同時に書き込むことができるので、このときに使用されるVCSELアレイに対して、これまでに述べてきた温度制御を行うことによっても、画像品質を高める効果が得られることはいうまでもない。
【0058】
図29は本発明をタンデム型画像形成装置に用いる例を示す図である。
同図において符号63は光走査装置、64は転写ベルト、65は感光体、66は帯電器、67は現像器、68は転写手段、69はクリーニング手段、添字y、c、m、kはイエロー、シアン、マゼンタ、黒の現像色をそれぞれ示す。
上記の光走査書き込み光学系を用いて画像形成装置を構成することができる。これにより、高速かつ高密度に高い画像品質を実現できる。たとえば、光走査書き込み光学系を用いてタンデム型のカラー画像形成装置を実現できる。
【0059】
カラー画像形成装置は、転写ベルト64の移動方向に沿って並置された4つの感光体65y、65m、65c、65kを有している。イエロー画像形成用の感光体65yの周りには、その矢印で示す回転方向において順に、帯電器66y、現像器67y、転写手段68y、クリーニング手段69yが配置されている。他の色についても同様の構成を有しており、帯電器66は、感光体表面を均一に帯電するための帯電装置を構成する帯電部材である。帯電器66と現像器67の間において感光体表面に光走査装置63によりビームが照射され、感光体65に静電潜像が形成されるようになっている。そして、静電潜像に基づき、現像器67により感光体面上にトナー像が形成される。転写手段68により、転写ベルト64で搬送される記録媒体(転写紙:図示せず)に各色の転写トナー像が順次転写され、最終的に定着手段70により重ね合わせ画像が転写紙に定着される。
【0060】
光走査書き込みの場合には、画像に階調性を与えるため、光スポットの強度を変調する、あるいは、光スポットの強度は一定でパルス幅を変調する、などの変調方式が採用されている。光通信においても、信号の多重化のために、パルス幅の変調、パルス強度の変調、パルスの偏光特性の変調などを複合した変調方式がある。
【0061】
これまでに示した実施形態に加えて、パルスの“強度”が変調されている場合においても、パルス信号の強度とパルス幅の積算値が温度変動に関与することから、この積算値に応じて電流注入制御を行うことによって、これまでの説明に示した動作作用によって、各パルスに対する適切な温度制御が可能となる。
【0062】
また、これまでに示した実施形態では、各パルス信号のひとつひとつに対応して逐一温度制御を与えるという主旨の駆動制御を中心に説明してきたが、これに限らず、所定時間内に発生する複数のパルス信号をサンプリングして求めた発光強度の時間積に対して温度制御を行うこともできる。所定時間内に発生するパルス信号列に対して、発光強度の時間積と、非発光時間に所定のマイナスの係数値kを乗じた積和の2つを指標値と見なして、これら値に対して副チャネルへの注入電流値の注入時間積をバランスさせるように制御するようにすれば、副チャネルのオンオフ回数は少なくなり、要するスイッチング動作速度が緩和される。
【0063】
この駆動方式による場合、時間帯A1においてサンプリングした結果の温度制御が、次のサンプリング時間帯A2に行われることになることから、かかる温度制御の作用は、次のサンプリング時間帯A2における発光に影響してくるので、その次の温度制御を行う時間帯A3においては、時間帯A2における発光信号と温度制御信号の双方の影響を加えた補正値を与えるようにすることが好ましい。このように、温度制御の動作作用が次のサンプリング時間帯の発光に影響することを考慮することが好ましい、このことは、以降のサンプリング時間帯においても同様である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施形態を説明するための図である。
【図2】放熱性を高めた構成を示す図である。
【図3】他の実施形態を説明するための図である。
【図4】温度調節機構への電流注入による発光チャネルの温度変化を示す模式図である。
【図5】他の実施形態を説明するための図である。
【図6】他の実施形態を説明するための図である。
【図7】他の実施形態を説明するための図である。
【図8】熱吸収効率を高めたピラー構造体を説明するための図である。
【図9】電流注入方向を示す模式図である。
【図10】他の実施形態を説明するための図である。
【図11】他の実施形態を説明するための図である。
【図12】VCSELアレイの側面図である。
【図13】主チャネルに対する副チャネルの配置例を示す図である。
【図14】主チャネルに対する副チャネルの配置例を示す図である。
【図15】主チャネルに対する副チャネルの配置例を示す図である。
【図16】主チャネルに対する副チャネルの配置例を示す図である。
【図17】主チャネルと副チャネルの入力信号を切り替える例を説明するための図である。
【図18】動作履歴を記憶する手段を設ける例を説明するための図である。
【図19】他の実施形態を説明するための図である。
【図20】主チャネルの発光時間と温度変化の関係を示す模式線図である。
【図21】主副双方のチャネルへの電流注入に伴う主チャネルの温度変動特性を模式的に示す図である。
【図22】注入電流レベルと時間幅の関係を説明するための図である。
【図23】発光部の配置の条件による冷却効果の違いを説明するための図である。
【図24】放熱効果を高くする構成例を説明するための図である。
【図25】場所による放熱効果の違いを考慮した配置例を示す図である。
【図26】偏光双安定性を示すヒステリシスループ特性に温度依存性があることを示す図である。
【図27】本発明の他の実施形態を説明するための図である。
【図28】近年における位相遅延書き込み型の装置への適用図である。
【図29】本発明をタンデム型画像形成装置に用いる例を示す図である。
【符号の説明】
【0065】
1 発光チャネル
2 太いピラーの温度調整部
3 細いピラーの温度調整部
4 発光チャネルの側面
5 温度調整部の内側側面
9、11、13 発光チャネル
10、12、14 温度調整部
32 制御回路
33 温度センサ
34 判断回路
35 副チャネルの駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号の生成に用いる複数の発光チャネルを有する面発光型半導体レーザ装置であって、1つの発光チャネル、または複数の発光チャネルに対して、その温度を調整する温度調整部を1つ以上具備し、該温度調節部の温度が前記発光チャネルの温度よりも低いときには、該温度調節部が前記発光チャネルの熱を吸収することを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の面発光型半導体レーザ装置において、前記温度調節部は電流注入が可能な構成を有し、該温度調整部への電流注入によって、該温度調整部の温度を上昇させ、該温度調整部の熱によって前記発光チャネルの温度を上昇させることもできることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の面発光型半導体レーザ装置において、前記温度調節部は前記発光チャネル(以下便宜上、主チャネルと呼ぶ)と同等の機能を有するチャネル(以下便宜上、副チャネルと呼ぶ)からなることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、1つの前記発光チャネルに対し温度制御可能な位置に複数の温度制御部が対応づけられていることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、1つの発光チャネルに対する温度制御部の数は、チャネル配列面内の周辺部よりも中心部の方が多く対応づけられていることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、発光チャネル同士の間隔はチャネル配列面内の周辺部よりも中心部の方が広く配置されていることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、チャネル配列面内の周辺部よりも中心部の方が、温度調節部の総体積が大きくなるように構成されていることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、チャネル配列面内の周辺部よりも中心部の方が、温度調節部の露出表面積が大きくなるように構成されていることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、前記温度調節部は放熱フィンとしての機能を有することを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、1つないしそれ以上の発光チャネルに対して、該発光チャネルの温度を制御する温度調節部は2つ以上対応づけられていることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置において、該面発光型半導体レーザ装置は偏光双安定型であることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置。
【請求項12】
請求項3ないし10のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置を駆動する駆動方法であって、予め定められた所定のタイミングで前記主チャネルから前記副チャネルに発光モードが切り替わり、前記主チャネルは非発光モードになり、他の予め定められた所定のタイミングで前記副チャネルから前記主チャネルに発光モードが切り替わり、前記副チャネルは非発光モードになることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置の駆動方法。
【請求項13】
請求項12に記載の面発光型半導体レーザ装置を駆動する駆動方法において、非発光モードにあるチャネルは温度制御部として働かせることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置の駆動方法。
【請求項14】
請求項13に記載の面発光型半導体レーザ装置を駆動する駆動方法において、前記温度調節部のチャネルに注入する単位時間あたりの電流量が、前記発光モードにあるチャネルの発光時間が長いとき小さくし、非発光時間が長いとき大きくなるように駆動させることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置の駆動方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、前記前記温度調節部のチャネルは対応する発光モードにあるチャネルごとに独立して注入電流量を制御されることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置の駆動方法。
【請求項16】
請求項13ないし15のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、前記温度調節部のチャネルに電流注入する時間が、前記発光モードにあるチャネルの発光時間が長いとき短くし、非発光時間が長いときに長くなるように駆動させることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置の駆動方法。
【請求項17】
請求項16に記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、前記温度調節部のチャネルは対応する発光モードにあるチャネルごとに独立して電流注入時間を制御されることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置の駆動方法。
【請求項18】
請求項13ないし15のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、前記発光モードにあるチャネルが発光、非発光のときに、前記温度調節部のチャネルに注入する電流をそれぞれIon、Ioffとするとき、Ion<Ioffとなるように電流注入することを特徴とする面発光型半導体レーザ装置の駆動方法。
【請求項19】
請求項13ないし18のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、温度調節部のチャネル数が複数ある時、温度制御に用いるチャネル数を、前記発光モードにあるチャネルと温度制御に用いるチャネル間の温度差が大きいとき多くなるように選択的に駆動させることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置の駆動方法。
【請求項20】
請求項12ないし19のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置の駆動方法において、該面発光型半導体レーザは偏光双安定型であることを特徴とする面発光型半導体レーザ装置の駆動方法。
【請求項21】
光源と、光走査手段と、結像光学系を有する光走査装置において、前記光源は、請求項1ないし11のいずれか1つに記載の面発光型半導体レーザ装置であることを特徴とする光走査光学装置。
【請求項22】
光走査光学装置と、複数の感光体と、現像装置と、転写装置を少なくとも有する画像形成装置において、前記光走査光学装置は、請求項21に記載の光走査光学装置であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2009−272561(P2009−272561A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123834(P2008−123834)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】