靱性ヒドロゲル
本発明は、加工された靱性ヒドロゲル、ヒドロゲル含有組成物、およびそれらの製造方法を提供する。本発明は、靱性ヒドロゲル、またはヒドロゲル含有組成物を体内移植または投与し、必要とする患者を処置する方法も提供する。予備固化した、または予備ゲル化したヒドロゲル粒子を架橋させ、架橋した靱性ヒドロゲルを製造する方法、および架橋した靱性ヒドロゲルを含む組成物も提供する。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2005年6月6日提出の米国仮出願第60/687,317号および2005年7月26日提出の米国仮出願第60/702,279号(これら全文は引用することにより本願明細書の開示の一部とされる)に対して優先権を主張する。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、靱性ヒドロゲルの加工、靱性ヒドロゲル含有組成物、ならびに、加工された靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物の製造方法に関する。本発明は、加工された靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物の必要とする患者の処置における使用にも関する。
【発明の背景】
【0003】
ヒドロゲルは、人または動物における合成関節軟骨置換機器等の用途に用いられる生物材料の候補である。ヒドロゲルは、親水性の重合体状構造であり、高濃度の水を含む。典型的には、ヒドロゲルは、生物相容性、低摩擦係数、および高含水量の望ましい特性を有する。しかしながら、ヒドロゲルは、体にある関節のほとんどに存在する高負荷を支持するのに必要な機械的特性が不足している場合が多い。例えば、膝における軸方向負荷は、患者の体重の3〜5倍の高さにまで達することがある。そのような負荷の下で、関節軟骨の機能を置き換えるヒドロゲル材料は、その形状および機能を長期間維持することが期待される。人関節の機械的サイクル負荷および接合状態に耐えるためにヒドロゲル材料から期待される必要条件には、対向する軟骨表面の高剛性、高強度、高靱性、高耐摩耗性、および/または低摩擦係数が挙げられる。
【0004】
関節軟骨置換用途に使用できるヒドロゲル系は、人関節の高い負荷に耐えるのに必要な機械的強度を有していない場合が多い。以下に記載する各種の脱水和および変形加工方法を組み合わせて併用し、ヒドロゲルの特性を改良することができる。
【0005】
ヒドロゲルの溶剤脱水和は、Bao(米国特許第5,705,780号)により開示されている。Baoは、PVAヒドロゲルを、エタノール/水混合物等の溶剤中に室温で浸漬し、形状の歪みを起こさせずにPVAヒドロゲルを脱水和する方法を記載している。
【0006】
HyonおよびIkada(米国特許第4,663,358号)およびBao(米国特許第5,705,780号)は、水と有機溶剤との混合物を使用してPVA粉末を溶解させ、続いてその溶液を室温未満に冷却し、室温に再加熱して、ヒドロゲルを形成する方法を記載している。次いで、ヒドロゲルを水中に浸漬して有機溶剤を除去する。HyonおよびIkadaは、PVA粉末を溶解させるための溶剤として水のみを使用する凍結融解方法により形成されたヒドロゲルとは対象的に、上記のようにして形成されたPVAヒドロゲルが透明であることを特許請求の範囲に記載している。
【0007】
Bao(米国特許第5,522,898号)は、空気脱水和、真空脱水和、または部分湿度脱水和を使用して脱水和速度を制御し、PVAヒドロゲルの形状歪みを防止し、髄核を置換するための補欠脊椎装置として使用する、脱水和方法を記載している。Baoの出発ゲルは、米国特許第5,705,780号に記載されている凍結融解ゲルである。
【0008】
Kuら(米国特許第5,981,826号)は、PVA水溶液に対して凍結融解を実施し、続いて水中に浸漬し、水中に浸漬しながらさらに凍結融解サイクルを実施することにより、PVAヒドロゲルを形成する凍結融解方法を記載している。
【0009】
しかしながら、この分野においては、今まで、機械的強度を必要とする関節軟骨置換用途向けの、人関節の高負荷に耐えられる靱性ヒドロゲルは得られていない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、一般的には靱性ヒドロゲル、靱性ヒドロゲル含有組成物、ならびに靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物の製造方法に関する。本発明は、靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物を必要とする患者の処置(例えば人関節の高負荷に耐えるのに必要な機械的強度に適合する関節軟骨置換用途)に使用する方法にも関する。
【0011】
本発明の一態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、前記ヒドロゲルを、前記ヒドロゲルの融点より低いか、または高い温度に加熱すること、および前記加熱されたヒドロゲルを室温に冷却することを含んでなる、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靱性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶媒に不溶な重合体を含んでなり、前記溶媒が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させること、を含んでなる、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および前記ヒドロゲルに対して少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施し、前記ヒドロゲルを室温に温めることを含んでなる、ヒドロゲル試料が脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0014】
本発明の別の態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、前記ヒドロゲルを前記ヒドロゲルの融点よりも低いまたは高い温度に加熱すること、および前記加熱されたヒドロゲルを室温に冷却することを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものである、方法を提供する。
【0015】
本発明の別の態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させることを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものである、方法を提供する。
【0016】
本発明の別の態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させこと、および前記ヒドロゲルに対して少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施し、前記ヒドロゲルを室温に温めることを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものである、方法を提供する。
【0017】
本発明の別の態様は、PVA粉末である重合体材料を用意すること、前記重合体状材料を水および/またはPEGと混合して溶液を形成すること、前記溶液に対して、少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施して、ヒドロゲルを形成すること、および前記ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工して、靱性ヒドロゲルを形成すること、を含んでなることを特徴とする、靱性ヒドロゲルの製造方法を提供する。
【0018】
本発明の別の態様は、PVA粉末である重合体材料を用意すること、前記重合体材料を水および/またはPEGと、室温より高い温度で混合して、溶液を形成すること、前記溶液を常温に冷却して、ヒドロゲルまたはヒドロゲル粒子を形成すること、および前記ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工して、靱性ヒドロゲルを形成すること、を含んでなることを特徴とする、靭性ヒドロゲルの製造方法を提供する。
【0019】
本発明の別の態様は、前記ヒドロゲルがPVAまたはヒドロゲル粒子を含んでなり、前記ヒドロゲルが水および/または一種以上の他の成分を含んでなる、上記の方法を提供する。前記成分は、PVA、PEG、および/または塩、プロテオグリカン、水溶性重合体、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミンであり、前記成分は、部分的または完全に水溶性である。
【0020】
別の態様においては、前記成分がPEGであり、前記PEGが、水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または好適な溶剤の溶液中にある。
【0021】
別の態様においては、前記成分が不揮発性である。
【0022】
別の態様においては、前記成分が、少なくとも部分的に水と混和し得るものである。
【0023】
別の態様においては、前記成分が、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、およびアミノ酸、分子量が異なるPEG、または分子量が異なるPEGのブレンドである。
【0024】
別の態様においては、水と混和し得る重合体が、PEO、プルロニック(Pluronic)、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、多糖、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸(keratin sulfate)、またはデキストラン硫酸である。
【0025】
別の態様においては、ヒドロゲルの重量の少なくとも0.1%が一種以上の不揮発性成分を構成する。
【0026】
別の態様においては、ヒドロゲルを、a)非溶剤(i.前記非溶剤はPEG、イソプロピルアルコール、飽和食塩水、ビタミン、またはカルボン酸、アルカリ金属の塩の水溶液であり、かつ、ii.前記非溶剤は、水、PEG、ビタミン、重合体、エステル、プロテオグリカン、およびカルボン酸を包含する2種類以上の成分を含む)、またはb)超臨界流体中に入れることにより、脱水和が行われる。
【0027】
別の態様においては、ヒドロゲルを空気中に放置することにより、ヒドロゲルを室温で、または高温で、例えば40℃で、約40℃強、約80℃、80℃強、約90℃、約100℃、100℃強、約150℃、約160℃、160℃強、約180℃、約200℃、または200℃強の温度で、真空中に置くことにより、脱水和が行われる。
【0028】
別の態様においては、ヒドロゲルを空気または不活性ガス中で高温に加熱することにより脱水和が行われ、その際の、加熱速度は遅いまたは速い、もしくは加熱が真空または空気脱水和に続いて行われる。
【0029】
別の態様においては、脱水和されたヒドロゲルを、i)水、食塩水溶液、リンガー溶液、食塩を加えた水、緩衝溶液等の中、ii)高湿度チャンバー中、またはiii)室温もしくは高温、に置くことにより、脱水和されたヒドロゲルを再水和させる。
【0030】
別の態様においては、上記の方法が、ヒドロゲルを変形加工することをさらに含んでなる。
【0031】
別の態様においては、上記の方法が、ヒドロゲルを約40℃強〜約200℃以上の温度に加熱して、変形加工する工程をさらに含んでなる。
【0032】
別の態様においては、上記の方法が、PEGを含んでなるヒドロゲルを変形加工して、脱PEG化する工程をさらに含んでなる。
【0033】
別の態様においては、上記の方法が、a)ヒドロゲルを約40℃強〜約200℃以上の温度に加熱して、変形加工すること、およびb)PEGを含んでなるヒドロゲルを脱PEG化すること、をさらに含んでなる。
【0034】
別の態様においては、ヒドロゲルが、一軸圧縮、チャネル−ダイ圧縮、または他の変形加工方式により変形加工される。
【0035】
別の態様においては、ヒドロゲルを、ヒドロゲルの融点よりも低い温度に加熱して、変形加工し、その際、平坦または湾曲したプラテンを使用して、あるいは1つの平坦なプラテンと1つの湾曲したプラテンとを使用して圧縮下でヒドロゲルを変形加工する。
【0036】
別の態様においては、ヒドロゲルを、空気または不活性ガス下で、または流体媒体中で変形加工し、その際、流体媒体は、食塩水溶液、リンガー溶液、PEG、PEG水溶液、塩溶液、DMSO、またはいずれかの好適な流体媒体である。
【0037】
別の態様においては、ヒドロゲルを、ヒドロゲルの融点よりも低い温度で変形加工して、その際、温度は約0℃〜約100℃、約10℃〜約100℃、約0℃〜約40℃、約10℃〜約30℃、約17℃〜約25℃、または略室温である。
【0038】
別の態様においては、ヒドロゲルを、変形加工の前または後に脱水和する。
【0039】
別の態様においては、上記の方法により製造された靱性ヒドロゲルを平衡に達するまで再水和させ、その際、靱性ヒドロゲルを水または塩溶液中で再水和させる。
【0040】
本発明の一態様は、少なくとも約1%〜約50%の平衡水を含む、重合体および水を含んでなる靱性ヒドロゲルを提供する。
【0041】
本発明の別の態様は、上記のいずれかに記載の方法により製造された、脱水和または変形加工されたヒドロゲルを提供する。
【0042】
本発明の別の態様は、上記の製法のいずれかにより製造された靱性ヒドロゲルであって、靱性ヒドロゲルが、脱水和に続いて再水和させることができ、前記脱水和によりヒドロゲルの重量が34%強減少し、前記再水和により、再水和されたヒドロゲル中に少なくとも約46%の平衡含水量が得られる、靱性ヒドロゲルを提供する。
【0043】
別の態様においては、靱性ヒドロゲルが、二軸延伸または単軸延伸されており、高い限界引張強度を有する。
【0044】
本発明のさらに別の態様は、靱性ヒドロゲルを含んでなる、挿入機器等の医療用充填材を提供するが、挿入機器はユニスペーサーであり、ユニスペーサーは、人関節、例えば膝、股、肩、肘、または上側もしくは上肢関節における自由浮揚関節充填材である。
【0045】
他に規定されていない限り、ここで種々の文法的形式で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で記載するものと類似の方法および材料は、本発明の実施および試験で使用できるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。矛盾が生じた場合、本明細書中の定義に従う。さらに、材料、方法および例は、説明のために記載されたものであり、本発明を限定するものではない。
【0046】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、特許請求の範囲および下記の詳細な説明から明らかである。しかし、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい態様を示しているが、当業者にはこの詳細な説明から、本発明の精神および範囲内で様々な変形および修正が明らかであり、例示のためにのみ記載することを理解すべきである。
【発明の詳細な説明】
【0047】
本発明は、加工された靱性ヒドロゲル、靱性ヒドロゲル含有組成物、ならびに靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物の製造方法に関する。本発明は、加工された靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物の必要とする患者の処置における使用にも関する。
【0048】
本明細書において開示する方法を使用して本発明の靱性ヒドロゲルを製造するための出発材料として、先行技術に記載されているヒドロゲル(例えば米国特許第4,663,358号、第5,981,826号、および第5,705,780号、米国公開出願第20040092653号および第20040171740号)を使用することができる。本発明において提供する靱性ヒドロゲルは、全ての体組織、例えば軟骨、筋肉、胸部組織、椎間板の髄核、他の軟組織、一般的に関節中でクッションとして作用する挿入機器等の補強または置換に使用することができる。
【0049】
靱性ヒドロゲルは、一般的に重合体、重合体ブレンド、またはポリビニルアルコール(PVA)の共重合体、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリアクリル酸(PAA)、アルジネート、多糖、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリ−N−アルキルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、またはそれらの2種類以上の組合せを包含する。
【0050】
本明細書において開示する靱性ヒドロゲルは、ポリビニルアルコール(PVA)を含んでなる、一様に分布したヒドロゲル分子またはヒドロゲル粒子から構成され、該ポリビニルアルコール(PVA)は、他の重合体またはゲル化剤、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、ポリエチレンオキシド(PEO)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸等の少なくとも一種、またはそれらの2種類以上の組合せと共重合および/またはブレンドされている。
【0051】
本発明の一態様においては、靱性ヒドロゲルは、他の重合体の少なくとも一種と共重合および/またはブレンドされたポリビニルアルコール(PVA)を含んでなる。
【0052】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル溶液が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、またはそれらの2種類以上の組合せを含んでなる。
【0053】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル溶液はポリビニルアルコール(PVA)溶液である。
【0054】
本発明の靱性ヒドロゲルは、哺乳動物の関節、例えば人関節で種々の方式による使用することができる。例えば、人関節の高負荷に耐えるのに必要な機械的強度を有し、関節軟骨置換用途に使用できる挿入機器を、靱性ヒドロゲルから製造することができる。挿入機器は、典型的には関節中でクッションとして作用し、軟骨表面同士の接触を最少に抑える(図1参照)。これは、関節炎の患者に有益である。軟骨病巣を有する初期関節炎の関節は、患者の損傷を受けた軟骨表面間の接触を最少に抑えるような挿入機器で処置することができる。挿入機器は、Fellらにより記載されている(米国特許第6,923,831号、第6,911,044号、第6,866,684号、および第6,855,165号参照)。これらの機器は、種々の形状およびサイズを有することができる。ヒドロゲル挿入機器を生体内で長期間使用するには、機器が、先ず高いクリープ耐性を有する必要がある。これは、生体内使用中に挿入ヒドロゲル機器の形状変化を最少に抑えるためである。本発明の、剛性を増強させた靱性ヒドロゲル材料は、高いクリープ耐性を示す。本発明のヒドロゲル挿入機器は、機械的特性、例えば靱性、耐摩耗性、高クリープ耐性等にも優れている。
【0055】
ヒドロゲル充填材のもう一つの使用方法は、関節中の空隙を充填することによる。この空隙は、既存の空隙であるか、または外科手術によりできた空隙でよい。靱性ヒドロゲルプラグをこの空隙中に挿入することができる。図2は、ヒドロゲルプラグを充填した空隙の一例を示す。ヒドロゲルプラグは、どのような形状およびサイズにでもでき、例えば円筒形でよい。実施態様においては、プラグは、周囲の軟骨表面から隆起するように過剰サイズを有することができる。別の実施態様においては、プラグは、空隙中で窪むように過小サイズでもよい。過剰サイズまたは過小サイズは、プラグが、約1mm未満、約1mm、約1mm強、約2mm、約3mm、もしくは約3mm強、周囲の軟骨表面から上に突き出るか、または周囲の軟骨表面から下に窪むようなサイズでよい。いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルプラグは、空隙中に容易に設置できるように、僅かに脱水和し、そのサイズを収縮させることができる。次いで、そのヒドロゲルプラグを、その場で水和させて膨潤させ、空隙中により効果的に適合させることができる。ヒドロゲルプラグの脱水和した、および再水和させた寸法を適切に調節し、再水和および膨潤の後に、プラグの良好な適合、過小サイズまたは過剰サイズを得ることができる。体内で再水和させることにより、プラグと空隙との間の摩擦適性を高めることもできる。これは、再水和により、プラグの断面が空隙の断面より、例えば約1mm、1mm未満、または1mm強、大きくなるように、寸法および脱水和程度を適切に調整することにより、達成することができる。いくつかの実施態様においては、空隙を注入可能な、体内で硬化するヒドロゲル系(例えば、RubertiおよびBraithwaite(米国公開出願第20040092653号および第20040171740号参照)、Muratogluら(米国暫定出願第60/682,0008号、2005年5月18日提出)、Lowman(米国公開出願第2004/0220296号))および他の注入可能な系により充填する。
【0056】
本発明は、人関節の高負荷の下で形状を維持できる靱性ヒドロゲルを得るための、ヒドロゲル系の加工方法を提供する。本発明の一態様において、靱性ヒドロゲルは、ヒドロゲルの剛性、靱性および強度を改善して、クリープ耐性および耐摩耗性を高めることにより、得られる。本発明は、ヒドロゲルの機械的特性を改良する脱水和方法を提供する。本発明は、ヒドロゲルのクリープ耐性を高める永久的可塑変形加工方法も提供する。上記の種々の脱水和および変形加工方法を組み合わせて使用し、ヒドロゲルの特性を改良することができる。脱水和方法のいずれでも、それ自体で、または他の脱水和方法と組み合わせて使用し、ヒドロゲルの機械的特性を改良することができる。可塑変形加工方法も、それ自体で使用し、ヒドロゲルのクリープ耐性を高めることができる。
【0057】
ヒドロゲルを極度に脱水和する場合、いくつかの用途では、その後にヒドロゲルを少なくともある程度再水和し、ある種の実施態様に向けて、水の存在により付与される潤滑性を再度獲得することが重要になる場合がある。水、および一種以上の、ほとんどの実施態様では不揮発性である他の成分(例えば、低分子量PEG、その他、例えばPVP、PEO、コンドロイチン硫酸)を含むヒドロゲルから出発して、熱脱水和を行う場合、脱水和されたヒドロゲルは、様々なレベルに容易に再水和される。本発明の一態様においては、熱脱水和に続く再水和のレベルは、脱水和前の最初のヒドロゲルの水相中にある他の成分の濃度によって異なる。対照的に、出発ヒドロゲルが水以外の他の成分を含まない場合、熱脱水和に続く再水和の程度は、他の成分の存在下で脱水和されたヒドロゲルの再水和レベルと比較して、著しく低下する。水以外の他の成分の存在は、熱脱水和およびその後の再水和に続くヒドロゲルのクリープ挙動にも関係する。ヒドロゲルは、他の成分の存在下で熱処理された場合、粘弾性がより高くなる。
【0058】
別の態様においては、PEG等の低分子量成分を含むPVAヒドロゲルは、熱脱水和しても不透明性が維持される。対照的に、そのような成分を含まず、同等の条件下で熱脱水和したPVAヒドロゲルは、不透明性がなくなって透明になり、分子多孔度の低下が示される。分子多孔度は、構造中の自由空間であり、そこで水分子がヒドロゲルに浸透し、水和させると考えられている。そのような成分を全く含まないヒドロゲルを熱脱水和した時の不透明性の低下は、再水和能力が著しく低下することに原因がある場合がある。本発明の一態様においては、熱脱水和の際に不揮発性成分がヒドロゲル構造中に残って分子多孔性の崩壊を阻止し、ヒドロゲルを熱脱水和に続いて再水和させる。
【0059】
本発明は、凍結融解により製造されたPVA(FT−PVA)ヒドロゲルであって、ヒドロゲルが、約160℃でアニーリングすることにより、靱性が付与されたヒドロゲルを提供する。再水和により、アニーリングされたゲルは透明のままであり、弾性で靱性があり、ほとんどゴム状の材料を形成する。この材料は、ある種の用途には有用であるが、ヒドロゲル中に高含水量を必要とする用途には向いていない場合がある。再水和の程度は、アニーリング前にPEGのような成分を水相に添加することにより、アニーリングされたFT−PVAでさらに適切に調整される。
【0060】
本発明の別の態様においては、永久的変形加工を使用し、ヒドロゲルのクリープ耐性を著しく高める。さらに、高照射線量により、ヒドロゲルの架橋密度を増加させることもできる。
【0061】
本発明の一態様においては、ヒドロゲル材料が可塑的に変形加工される。可塑的変形加工により、材料中に分子配向を導入する。材料は、それが変形加工された方向でクリープ耐性が増加する。したがって、このヒドロゲルは、高クリープ耐性充填材として使用できる。一実施態様においては、例えば図1に示すように、この変形加工が、人関節における軸方向負荷の方向になるように、充填材を加工する。
【0062】
別の実施態様においては、可塑的変形を、単軸圧縮、チャネル−ダイ圧縮張力、曲げ、せん断、または他の変形加工方式により行う。可塑的変形は、ヒドロゲルの融点未満のいずれかの温度で誘起される。可塑的変形は、静的または動的に誘起される。別の実施態様においては、変形をチャネル−ダイ変形加工により誘起する。変形加工の種類に関しては、図3を参照。
【0063】
別の実施態様においては、平坦または湾曲したプラテンを使用する圧縮下で変形加工する。平坦なプラテンにより、平坦に変形加工されたヒドロゲル表面が得られる。湾曲したプラテンにより、湾曲した変形加工された表面が得られる(図3参照)。別の実施態様においては、1つの平坦なプラテンと湾曲したプラテンとにより変形を誘起する。
【0064】
別の実施態様においては、ヒドロゲルの変形加工を、変形加工されたヒドロゲルが最終的な充填材の形状になるか、または最終的な充填材に近い形状になるように、所定の形状を有するプラテンで行う。
【0065】
別の実施態様においては、変形加工されたヒドロゲルをさらに機械加工し、最終的な充填材形状を得る。
【0066】
別の実施態様においては、ヒドロゲル充填材を包装し、滅菌する。包装は、ヒドロゲル装置を水溶液に浸漬し、体内移植するまで、例えば滅菌および貯蔵の間、脱水和を防止するような包装でよい。水溶液は、水、脱イオン水、食塩水溶液、リンガー溶液、または食塩を加えた水でよい。水溶液は、ポリ−エチレングリコールの水溶液でもよい。溶液は、PEG5重量%未満、約5重量%、約5重量%強、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約30重量%、約50重量%、約90重量%もしくは約100重量%の溶液でよい。ヒドロゲル装置は、滅菌し、不揮発性溶剤または非溶剤中に保存することができる。
【0067】
ヒドロゲル充填材の滅菌は、ガンマ線滅菌、ガスプラズマ滅菌、またはエチレンオキシド滅菌により行う。一実施態様においては、ヒドロゲルをオートクレーブにより滅菌する。滅菌は工場で行うか、または充填材を病院に輸送し、そこでオートクレーブにより滅菌する。ヒドロゲル充填材の滅菌にも使用するエチレンオキシド滅菌装置を備えている病院もある。
【0068】
一実施態様においては、ヒドロゲル充填材を包装の後で滅菌する。別の実施態様においては、ヒドロゲル充填材を滅菌し、無菌の水溶液中に入れる。
【0069】
別の実施態様においては、凍結融解方法を使用してPVAヒドロゲルを製造し、PVA水溶液(少なくとも約1重量%PVA、約1重量%強PVA、約5重量%PVA、約10重量%PVA、約10重量%強PVA、約15重量%PVA、約20重量%PVA、約25重量%PVA、約25重量%強PVA)から出発して、それに凍結融解サイクル(少なくとも1サイクル、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル以上)を実施する。凍結融解サイクルは、PVA溶液を0℃未満に冷却し、それを0℃より上に再加熱することとして定義される。次いで、PVAヒドロゲルを脱水和する。続いて、脱水和されたヒドロゲルを食塩水溶液中に入れ、再水和させる。この方法により、非常に僅かに再水和された、機械的強度が高いPVAヒドロゲルが得られる。
【0070】
本発明の一実施態様においては、PVAヒドロゲル用の不揮発性非溶剤としてPEGを使用する。ヒドロゲルの前駆物質であるPVA水溶液の製造において、水の代わりにDMSOを使用する。
【0071】
本発明の一実施態様においては、PEG溶液は、PEGを溶剤(好ましくは水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または他の溶剤)に入れた溶液である。溶液濃度は、0.1重量%PEG〜99.9重量%PEGの範囲である。溶液中のPEGは、種々の分子量(好ましくは300、400、または500g/モル、300g/モル強、1000g/モル、5000g/モル以上)を有することができる。溶液中のPEGは、種々の平均分子量を有するPEGのブレンドでよい。
【0072】
別の実施態様においては、PEG含有PVAヒドロゲルは、凍結融解方法を使用して製造し、PVA水溶液(少なくとも約1重量%PVA、約1重量%強PVA、約5重量%PVA、約10重量%PVA、約10重量%強PVA、約15重量%PVA、約20重量%PVA、約25重量%PVA、約25重量%強PVA)から出発して、それに凍結融解サイクル(少なくとも1サイクル、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル以上)を実施する。この工程において、所望によりPVAヒドロゲルを食塩水中に入れ、完全に水和させることができる。続いて、ゲルを低分子量PEG溶液に入れる。これは、ヒドロゲルを非溶剤PEGでドーピングするためである。PEG溶液の浸漬期間は、ヒドロゲル全体にわたって均質な平衡PEG含有量に達するか、または不均質PEG分布に達する(浸漬時間を短縮することにより)まで、変えることができる。後者により、PEG濃度が高い表皮およびPVAヒドロゲル内部のPEG濃度勾配が得られる。
【0073】
別の実施態様においては、PEG含有PVAヒドロゲルは、PVA水溶液(少なくとも約1重量%PVA、約1重量%強PVA、約5重量%PVA、約10重量%PVA、約10重量%強PVA、約15重量%PVA、約20重量%PVA、約25重量%PVA、約25重量%強PVA)から出発して、これを低分子量PEG溶液と高温(室温より高いか、または50℃を超える)で混合することにより製造する。室温に冷却することにより、この混合物は、水および非溶剤PEGを含むPVAヒドロゲルを形成する。別の実施態様においては、高温PVA/PEG混合物を室温に冷却せず、その代わりに、凍結融解サイクルを実施する。
【0074】
別の実施態様においては、PVAヒドロゲルを熱脱水和する。PVAヒドロゲルは、熱脱水和(またはアニーリング)の際にPEGを含む。熱脱水和は、40℃で、約40℃強で、80℃で、80℃強で、90℃で、100℃で、100℃強で、150℃で、160℃で、160℃強で、180℃で、200℃で、または200℃強で行う。熱脱水和は、どのような環境中でも、好ましくは不活性ガス、例えば窒素またはアルゴン、もしくは真空中で行うことができる。熱脱水和は、空気あるいはアセチレンガスまたはアルゴンもしくは真空中でも行うことができる。熱脱水和は、ヒドロゲルをすでに加熱されている環境中に置き、熱脱水和の速度をより高くするか、またはヒドロゲルを徐々に加熱し、熱脱水和の速度を遅くすることができる。熱脱水和速度は、ヒドロゲルが、水を1日あたり1重量%失う、1日あたり10重量%失う、1日あたり50重量%失う、毎時1重量%失う、毎時10重量%失う、毎時50重量%失う、毎分1重量%失う、毎分5重量%失う、毎分10重量%失う、毎分50重量%失う、あるいはそれらに近いか、またはそれらの間の量で水を失うことにより、重量が低下するような速度でよい。熱脱水和の速度は、温度の上昇速度およびヒドロゲルのサイズによって異なる。熱脱水和の前に、真空脱水和によりヒドロゲルの水和レベルを下げることができる。熱脱水和に続いて、ヒドロゲルを食塩水溶液中に入れて再水和する。これによって、PVAヒドロゲル中に良好な再水和レベルが得られ、人軟骨または他の親水性表面に対して接合した時に、高い機械的強度および良好な潤滑性を得ることができる。このヒドロゲルは、その水素結合した構造を維持することが期待され、したがって、水、食塩水または体液中で長期間の溶解を受けない。
【0075】
本説明および例は、PVAヒドロゲルに関して記載するが、重合体状構造の、すなわち長鎖分子を含む全てのヒドロゲル系に適用できる。したがって、本発明は、基礎材料としてPVAを包含するヒドロゲル系を提供するが、これらに限定するものではない。
【0076】
重合体状材料は、機械的変形加工により配向させることができる。変形加工により、分子が配向する。典型的には、分子配向方向における機械的特性は、等方性の変形加工していない重合体構造の機械的特性より優れている。本発明は、重合体材料のこの特性を利用し、ヒドロゲル系の機械的特性を改良した。ヒドロゲル材料を分子配向させることにより、重合体材料の剛性および強度が改善される。
【0077】
加工のいずれの工程においても、ヒドロゲルをe線またはガンマ線で照射して架橋させることができる。照射は、空気、不活性ガス、増感性ガス、または流体媒体(例えば、水、食塩水溶液、ポリ−エチレングリコール溶液)等の中で行うことができる。放射線量は、1kGy〜10,000kGy、好ましくは25kGy、40kGy、50kGy、200kGy、250kGy以上である。
【0078】
用語「ヒドロゲル」とは、変形加工していないもしくは変形加工したヒドロゲル、または靱性ヒドロゲルを意味する。ここに記載する用語「ヒドロゲル」は、「靱性ヒドロゲル」を含み、脱水和された、および/または変形加工されたヒドロゲルを包含する。靱性ヒドロゲルは、吸収された水を含む親水性重合体の網目であり、破損する前に大量のエネルギー、例えば機械的エネルギーを吸収することができる。
【0079】
本発明の一態様においては、ポリビニルアルコール(PVA)をベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースPVAヒドロゲルは、良く知られている凍結融解法により、PVA溶液(PVAを溶剤、例えば水またはDMSO)に対して1または多サイクルの凍結融解を実施することにより、製造することができる。凍結融解法に使用するPVA溶液は、PEGのような他の成分を含むことができる。ベースPVAヒドロゲルは、PVA溶液の放射線架橋により製造することもできる。PVAヒドロゲルのもう一つの製造方法を使用し、PVA溶液をゲル化剤、例えば(PEG)と高温でブレンドし、室温に冷却することができる。
【0080】
一実施態様においては、ヒドロゲルは、立方体形状、円筒形状、長方形プリズム形状、または充填材形状のような、いずれの形状であってもよい。
【0081】
別の実施態様においては、ベースヒドロゲルとしてNIPAAMを使用することができる。ベースNIPAAMヒドロゲルは、NIPAAM溶液の放射線架橋により製造することができる。あるいは、Lowmanらにより開示されている方法を使用することができる。
【0082】
別の実施態様においては、ベースヒドロゲルとして二重網目(DN)ヒドロゲル構造を使用することができる。ベースDNヒドロゲルは、Gongら(Advanced Materials, 2003, 15, No. 14: 1155-1158参照)により記載されている方法により製造することができる。第一網目は、親水性モノマー、例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)を、架橋剤の存在下で反応させることにより形成することができる。次いで、このゲルを、別の種類のモノマー、例えばアクリル酸アミド(AAm)を含む水溶液中に浸漬する。続いて、これらの新たに導入したモノマーから第二網目を合成してDNヒドロゲルを製造し、これをベースヒドロゲルとして使用することができる。
【0083】
別の実施態様においては、位相(topological)ゲル(TP)をベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースTPヒドロゲルは、Tanakaら(Progress in Polymer Science, 2005, 30: 1-9参照)により記載されている方法により、製造することができる。TPゲル中の重合体鎖は、個々の鎖に沿ってスライドする架橋剤により、フレキシブルに結合している。
【0084】
下記の実施態様においては、ナノ複合材料(NC)ゲル構造をベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースNCヒドロゲルは、Tanakaら(Prog. Polym. Sci. 2005, 30: 1-9参照)により記載されている方法により、製造することができる。
【0085】
いくつかの実施態様においては、脱水和されたヒドロゲルをベースヒドロゲルとして使用することができる。脱水和のレベルは、ベースヒドロゲルが水99%〜1%、より好ましくは水99%〜5%、より好ましくは水99%〜25%、より好ましくは水99%〜50%、より好ましくは水99%〜75%、より好ましくは水約70重量%、または水80重量%を含むように制御することができる。
【0086】
ヒドロゲルの含水量は、その平衡水和レベルと、脱水和レベルとの間の重量変化を測定することにより、決定することができる。
【0087】
いくつかの実施態様においては、PVA/PEGの高温水溶液を室温に冷却し、その「ゲル化した時の」形態で使用する。
【0088】
本発明の一態様においては、PVA/PEGヒドロゲルを水、脱イオン水、食塩水溶液、リン酸塩緩衝された食塩水溶液、リンガー溶液、または食塩を加えた水に浸漬し、PEGを除去する。この方法は、脱PEG化方法と呼ばれる。脱PEG化の際、ヒドロゲルは水も吸収して平衡含水量に近づく。したがって、脱PEG化は再水和方法とも呼ばれる。
【0089】
これらの実施態様の一つにおいて、ヒドロゲルを負荷の下で変形加工し、永久的に変形させる。
【0090】
別の実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルを脱水和する。
【0091】
別の実施態様においては、脱水和されたヒドロゲルを再水和させる。いくつかの実施態様においては、再水和されたヒドロゲルは、脱水和工程前のヒドロゲルよりも含水量が低い。
【0092】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルの寸法が、医療用装置を機械加工できるように十分に大きい。
【0093】
いくつかの実施態様においては、出発ヒドロゲルが、あらゆる変形加工の前に脱水和される。
【0094】
いくつかの実施態様おいては、ヒドロゲルに連続的な脱水和および変形加工サイクルを実施する。
【0095】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルに脱水和と変形加工サイクルとを同時に実施する。
【0096】
ヒドロゲルの脱水和は、種々の方法により行うことができる。例えば、ヒドロゲルを室温で、または高温で真空中に置き、水を追い出して脱水和させる。脱水和の際にヒドロゲルを配置する真空チャンバーに空気またはガスを加えることにより、真空の量を下げることができる。ヒドロゲルの脱水和は、ヒドロゲルを空気または不活性ガス中に室温もしくは高温で保持することによっても行うことができる。空気または不活性ガス中での脱水和は、室温より低い温度でも行うことができる。ほとんどの実施態様においては、脱水和を高温で行う場合、温度をヒドロゲルの融点よりも低い温度に維持する必要がある。しかし、ヒドロゲルの融点は、脱水和工程中に増加することがあり、脱水和が起こるにつれて、より高い温度に進行させることができる。ヒドロゲルの脱水和は、ヒドロゲルを溶剤中に入れることによっても行うことができる。この場合、溶剤がヒドロゲルの水を追い出す。例えば、PVAヒドロゲルを低分子量PEG(100g/モルを超える、約300〜400g/モル、約500g/モル)中に入れることにより、PVAヒドロゲルの脱水和を引き起こすことができる。この場合、PEGを純粋な状態で、または溶液中で使用することができる。PEG濃度が高い程、脱水和の程度が高くなる。溶剤脱水和は、高温で行うこともできる。これらの脱水和方法同士を互いに組み合わせて使用することができる。
【0097】
ヒドロゲルの再水和は、含水溶液中(例えば、食塩水、水、脱イオン水、食塩を加えた水、または水溶液もしくはDMSO中)で行うことができる。
【0098】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルを医療用機器に成形し、続いて脱水和する。次いで、脱水和された充填材を再水和させる。脱水和により引き起こされる収縮およびその後の再水和により引き起こされる膨潤(ほとんどの実施態様では、脱水和収縮は再水和膨潤より大きい)により、人関節に使用できる所望の充填材サイズおよび形状が得られるように、医療用充填材の初期サイズおよび形状を適切に調整する。
【0099】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルの、変形加工前の初期形状は、長方形プリズム、円筒、立方体、または不均一形状でよい。
【0100】
一実施態様においては、ヒドロゲルを2個の金属板の間で単軸圧縮する。次いで、変形加工したヒドロゲルを一定変形の下で長時間保持し、永久的変形を達成する。変形加工の程度は、試料の初期高さと試料の最終高さとの比である圧縮比として測定する。変形加工の程度は、試料の変位と初期高さとの比であるひずみとしても測定する。ひずみにより測定される好ましい変形加工程度は、10%〜99%、より好ましくは20%〜95%、より好ましくは50%〜95%、より好ましくは75%〜95%、より好ましくは80%〜90%、最も好ましくは90%、またはそれらの近傍、もしくはそれらの中間の値である。一定変形に保持した後、変形加工したヒドロゲルをプレスから取り外す。いくつかの実施態様においては、応力緩和が平衡に達するのに十分な時間、変形を保持する。いくつかの多の実施態様おいては、ヒドロゲルを変形加工の際にサイクル状の負荷作用を施す。
【0101】
一実施態様においては、ヒドロゲルをチャネル−ダイ中に置き、次いでヒドロゲルをチャネル−ダイ中で圧縮し、図3に示すように、主として流れ方向における分子配向を達成することにより、ヒドロゲル中に変形を誘発する。好ましい変形加工比の程度は、10%〜99%、より好ましくは20%〜95%、より好ましくは50%〜95%、より好ましくは75%〜95%、より好ましくは80%〜90%、最も好ましくは90%、またはそれらの近傍、もしくはそれらの中間の値である。
【0102】
別の実施態様においては、ヒドロゲルをチャネル−ダイ中に入れることにより、変形加工を達成するが、その際、ブロックの幅をチャネル−ダイの幅よりも小さくする。変形加工の初期段階では、ヒドロゲルブロックがチャネル−ダイの壁と接触するまで、分子の二軸延伸が起こり得るが、その時点の後は、主としてチャネル−ダイ中の流れ方向である一方向で連続的に分子配向が起こり得る。これらの実施態様においては、変形加工されたヒドロゲルは、変形加工の平面内で、2つの直交する方向で異なった変形加工レベルを有することができる。圧縮方向は、変形加工の平面に対して直角である。
【0103】
別の実施態様においては、ブロックの変形加工を単軸張力下で達成する。
【0104】
特定の実施態様では、約1mm/分未満、約1mm/分、より好ましくは1mm/分〜10mm/分、より好ましくは10mm/分〜100mm/分、より好ましくは約20mm/分、またはそれらの近傍、もしくはそれらの中間の値の変形加工比で、変形加工を行う。
【0105】
いくつかの実施態様おいては、変形加工をサイクル状に実施する。
【0106】
いくつかの実施態様においては、変形加工を連続的に実施する。これらの実施態様においては、ヒドロゲルを所望の変形加工比の一部に変形加工し、一定変形下に保持し、ある程度応力緩和させ、変形加工および応力緩和工程を、所望の変形加工比に達するまで繰り返す。例えば、最終的な所望の変形加工比が90%のひずみに相当する場合、ヒドロゲルを30%増加量で変形加工し、各増加量間で応力緩和させる。
【0107】
特定の実施態様においては、変形加工をガス媒体(例えば、空気または不活性ガス)、あるいは、またはそれに加えて、流体媒体(例えば、食塩水、DMSO、またはPEG)中で行う。いくつかの実施態様においては、変形加工の際に媒体を、変形加工しているヒドロゲルの融点未満に加熱する。ヒドロゲルの融点は、変形加工の最中に変化することがあるので、媒体の温度を調節して融解を回避する。
【0108】
いくつかの実施態様においては、変形加工を流体媒体(例えば、食塩水溶液、リンガー溶液、PEG、PEG水溶液、塩溶液、その他の流体媒体)中で行う。
【0109】
特定の実施態様においては、変形加工を約10℃〜約30℃の室温で、より好ましくは約17℃〜約25℃、より好ましくはヒドロゲルの融点未満、より好ましくは約0℃〜約40℃、より好ましくは約10℃〜約100℃で、またはそれらの近傍、もしくはそれらの中間の温度で行う。
【0110】
一実施態様においては、ヒドロゲルを2つのプラテン間で単軸圧縮方式により圧縮し、その際、変形加工の際にヒドロゲルに接触するプラテンの表面は、最終的な圧縮されたヒドロゲルが、挿入機器の所望の最終的形状を有するような形状を有する。
【0111】
一実施態様においては、ヒドロゲルをチャネル−ダイ中で圧縮し、その際、変形加工の際にヒドロゲルに接触するプランジャーおよびダイ表面は、最終的な圧縮されたヒドロゲルが、挿入機器の所望の最終的形状を有するような形状を有する。
【0112】
特定の実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルを、医療用機器、例えば、膝用の腎臓形状をした挿入機器、股用のカップ形状をした挿入機器、肩用の関節窩形状をした挿入機器、および他の人関節用挿入機器、として作用する所望の形状に機械加工することができる。また、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルの機械加工により、円筒形、立方体形、または他の、関節中に存在するか、または外科手術の際に調製された軟骨欠損を充填するための形状を得ることができる。
【0113】
ヒドロゲル医療用機器は、人関節(例えば膝関節、股関節、肩関節、肘関節)、ならびに上および下肢関節における自由浮揚関節充填材として作用する挿入機器、例えばユニスペーサー、でよい。
【0114】
いくつかの実施態様においては、変形加工に続いて、変形加工されたヒドロゲルを脱水和する。続いて、脱水和されたヒドロゲルを食塩水溶液中に入れて再水和させる。
【0115】
ヒドロゲルを連続的に変形加工するいくつかの実施態様においては、変形加工されたヒドロゲルを、連続的な変形加工の全ての、またはいくつかの工程で、後に続く変形加工工程の前に、異なったレベルに脱水和することができる。
【0116】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルを、100%PEG中に入れ、変形加工されたヒドロゲルを脱水和する。続いて、脱水和されたヒドロゲルを食塩水溶液中に入れて再水和させる。この方法により、ゲル中の平衡含水量が低下し、したがって、ヒドロゲルの機械的特性がさらに改良される。
【0117】
別の実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルをPEG水溶液中に入れて脱水和を抑制し、続いて食塩水中で再水和させる。PEG水溶液の濃度を適切に調整し、ヒドロゲルに望ましいレベルの脱水和を達成することができる。脱水和レベルが高い程、機械的特性が改良され、脱水和レベルが低い場合、改良程度は低い。用途によっては、剛性を低くするのが望ましく、したがって、より低いPEGおよび/または水濃度の溶液を脱水和工程に使用することができる。
【0118】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルを、真空中、室温または高温で脱水和する。真空脱水和は、約10℃、約10℃強、約30、40、50、60、75、80、90℃、約100℃または100℃強、あるいは、またはそれに加えて、130℃またはそれらの近傍、もしくはそれらの中間の温度で行うことができる。
【0119】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルの真空脱水和を先ず室温で、所望レベルの脱水和に達するまで行い、その後、昇温して、ヒドロゲルをさらに脱水和する。温度は、好ましくは約100℃強に、約160℃に、または160℃強に昇温する。
【0120】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルを空気または不活性ガスもしくは不活性ガスの部分真空中で加熱する。
【0121】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルを、空気または不活性ガス中で加熱する前に、真空脱水和する。
【0122】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルの加熱を徐々に、例えば約1℃/分未満、約1℃/分強、2、5、10℃/分以上で行う。ある種のヒドロゲル処方物で、加熱速度が遅い程、高い加熱速度よりも、強いゲルが得られる。
【0123】
ほとんどの場合、完成した医療用機器は包装され、滅菌される。
【0124】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルに脱水和を実施する。脱水和は、空気または不活性ガス中、高温(例えば約160℃におけるアニーリング)で行う。脱水和により、水が失われ、したがって、体積が減少すると共に、重量も低下する。重量低下は水が失われることによる。他方、体積の減少は、水が失われるか、またはヒドロゲルがさらに結晶化するためであろう。いくつかの実施態様においては、脱水和は、ヒドロゲルを低分子量重合体に入れる(例えばPVAヒドロゲルをPEG溶液に入れる)ことにより行う。場合により、脱水和は水の損失により引き起こされるが、ほとんどの場合、ヒドロゲルによる非溶剤の吸収もある。したがって、ヒドロゲルの重量変化は、水の損失および非溶剤の吸収の総計である。この場合の体積変化は、水の損失、非溶剤の吸収、ヒドロゲルのさらなる結晶化、または水が細孔中で満たしていた空間を占有していない非溶剤の多孔質構造が部分的に崩壊することによる。
【0125】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルが金属基材に取り付けられる。金属基材は、体内で骨が内部成長し、ヒドロゲルを所定の位置に固定するのに使用される多孔質裏側表面である。基材上の、ヒドロゲルと接触する所に多孔質表面を設けることにより、金属基材をヒドロゲルに取り付けることができ、ゲル化するヒドロゲル溶液(例えば高温PVAおよび/またはPEGの水中混合物)が、ヒドロゲルを形成する時に、多孔質表面に浸透し、ヒドロゲルは、多孔質空間を満たすことにより、金属基材と相互接続することができる。
【0126】
いくつかの実施態様においては、2個以上の金属基材をヒドロゲルに取り付け、体内で複数の箇所にヒドロゲルを固定する。
【0127】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲル/金属基材の構造を、上記の処理工程、例えば脱PEG化、溶剤脱水和、非溶剤脱水和、照射、包装、滅菌等で使用することができる。
【0128】
いくつかの実施態様においては、溶液中に存在するヒアルロン酸(HA)を使用してヒドロゲルを形成することにより、および/またはHAをヒドロゲル中に拡散させることにより、ヒドロゲルがHAを含む。いくつかの実施態様では、HA含有ヒドロゲルを照射する。照射は、処理工程、例えば真空脱水和、非溶剤脱水和、再水和、アニーリング、および/または変形加工の前後、または最中に行うことができる。照射により、ヒドロゲルマトリックスが架橋し、いくつかの実施態様においては、HAとの共有結合を形成する。HAをヒドロゲルの一部に付加することにより、ヒドロゲル充填材の潤滑性が増大する。これは、含水量が著しく低い靱性ヒドロゲルに有益である。
【0129】
いくつかの実施態様においては、水和されたヒドロゲル充填材を表面で僅かに加熱し、ヒドロゲルを部分的に融解させ、吸収性を高くし、潤滑性を高くして改良することができる。
【0130】
いくつかの実施態様においては、マイクロ波加熱炉を使用してPVA溶液を調製する。PVA粉末を水に入れ、混合物をマイクロ波加熱炉中で加熱し、溶液を形成する。
【0131】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルの熱脱水和またはアニーリングをマイクロ波加熱炉中で行う。
【0132】
本発明の一実施態様においては、PVA粉末等の重合体材料を用意する工程、室温よりも高い温度(例えば約50℃〜60℃)で水と混合して溶液を形成する工程、前記溶液に少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施するか、または融点未満の温度、例えば約80℃、に加熱する工程、前記加熱された溶液を常温、例えば室温に冷却して、ヒドロゲル(一般的に一様であり、ヒドロゲル粒子も含むことがある)を形成する工程、および前記ヒドロゲルを変形加工および/または脱水和して、靱性ヒドロゲルを形成する工程、を含んでなる方法により、靱性ヒドロゲルを製造する。別の実施態様においては、所望により、約40℃〜200℃強に加熱することにより、ヒドロゲルを脱水和し、脱PEG化を実施する。
【0133】
本発明の一実施態様は、a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、b)前記ヒドロゲルを、前記ヒドロゲルの融点より低いか、または高い温度に加熱すること、およびc)前記加熱されたヒドロゲルを室温に冷却することを含んでなり、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靱性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶媒に不溶な重合体を含んでなり、前記溶媒が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0134】
本発明の別の態様は、a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、およびb)前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させること、を含んでなり、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0135】
本発明の別の態様は、a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、およびb)前記ヒドロゲルに対して少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施し、前記ヒドロゲルを室温に温めることを含んでなり、前記ヒドロゲル試料が脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0136】
本発明の別の態様は、靱性ヒドロゲルの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、該重合体状材料がPVA粉末である工程、b)該重合体状材料を水および/またはPEGと混合し、溶液を形成する工程、c)該溶液を少なくとも一回の凍結融解サイクルにかけ、ヒドロゲルを形成する工程、およびd)該ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工し、靱性ヒドロゲルを形成する工程を含んでなる、方法を提供する。
【0137】
本発明の別の態様は、a)PVA粉末である重合体材料を用意すること、b)前記重合体材料を水および/またはPEGと、室温より高い温度で混合して、溶液を形成すること、c)前記溶液を常温に冷却して、ヒドロゲルまたはヒドロゲル粒子を形成すること、およびd)前記ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工して、靱性ヒドロゲルを形成すること、を含んでなる、方法を提供する。
【0138】
本発明の実施態様および態様は、下記の内容も包含する。
1.脱水和に続いて再水和し得るヒドロゲルであり、靱性ヒドロゲルが、脱水和に続いて再水和させることができ、a)脱水和によりヒドロゲルの重量が34%減少し、b)再水和により、再水和されたヒドロゲル中に少なくとも約46%の平衡含水量が得られる。
2.二軸延伸されたヒドロゲル。
3.単軸延伸された(チャネルダイ変形加工により)ヒドロゲル。
4.高い限界引張強度を有するヒドロゲル。
5.ヒドロゲルの変形加工方法であって、
a)ヒドロゲルが水および/または一種以上の他の成分(例えばPEG、プロテオグリカン、水溶性重合体、塩、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミン)を含んでなり、追加成分が、完全にまたは部分的に水溶性であり、
b)前記成分が不揮発性であり、
c)前記成分が、少なくとも部分的に水と混和性であり、
d)前記ヒドロゲル重量の少なくとも0.1%が、一種以上の不揮発性成分、例えばPEG等を構成し、
e)前記成分が水と混和し得る重合体、例えばPEO、プルロニック、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等であり、
f)前記成分が、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、アミノ酸等の群から選択され、
g)前記成分がPEG(ここで、i.種々の分子量のPEG、ii.PEGのブレンドである。)、
h)前記ヒドロゲルが、変形加工の前後に脱水和され、例えば
i.脱水和を、完全に、または部分的に水と混和し得る非溶剤(ここで、a.前記非溶剤は、PEG、イソプロピルアルコール、飽和食塩水、ビタミン、およびカルボン酸から選択され、b.非溶剤は、2種類以上の成分、例えば水、PEG、ビタミン、重合体、エステル、プロテオグリカン等を含み、c.混合物である前記ヒドロゲルを融解させるものである。)中に入れることにより行い、
ii.ヒドロゲルを空気中に放置することにより脱水和し、
iii.ヒドロゲルを真空中に放置することにより脱水和し、
iv.ヒドロゲルを真空中に室温で放置することにより脱水和し、
v.ヒドロゲルを真空中に高温で放置することにより脱水和し、または
vi.超臨界CO2中に高温で放置することにより脱水和し、
i)変形加工が単軸方向であるか、または、
j)変形加工がチャネル−ダイにより行われ、
6.水および/または一種以上の他の成分(例えばPEGまたは塩)を含むヒドロゲルの脱水和であり、ここで、
a)前記成分は不揮発性、例えばPEGであり、
b)前記成分は、少なくとも部分的に水と混和性であり、
c)前記ヒドロゲル重量の少なくとも0.1%が、一種以上の不揮発性成分、例えばPEG、炭化水素等を構成し、
d)前記成分は、水と混和し得る重合体、例えばPEO、プルロニック、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、多糖、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、デキストラン硫酸等であり、
e)前記成分は、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、アミノ酸等の群から選択され、
f)前記成分はPEG(ここで、i.種々の分子量のPEG、ii.PEGのブレンドである。)であり、
g)前記脱水和を、非溶剤(ここで、i.前記非溶剤は、PEG、イソプロピルアルコール、飽和食塩水、アルカリ金属の塩の水溶液、ビタミン、カルボン酸等から選択され、ii.前記非溶剤は、2種類以上の成分、例えば水、PEG、ビタミン、重合体、プロテオグリカン、カルボン酸、エステル、等を含む。)中に入れることにより行い、
h)前記脱水和を、ヒドロゲルを空気中に放置することにより行い、
i)前記脱水和を、ヒドロゲルを真空中に放置することにより行い、
j)前記脱水和を、ヒドロゲルを真空中に室温で放置することにより行い、
k)前記脱水和を、ヒドロゲルを真空中に高温で放置することにより行い、
l)前記脱水和を、ヒドロゲルを空気中または不活性ガス中で高温に加熱する(ここで、i.加熱速度が遅い、ii.加熱速度が速い、iii.加熱を真空または空気脱水和に続いて行う。)ことにより行い、そして
m)前記脱水和されたヒドロゲルを
i.水、食塩水溶液、Ringer溶液、塩を加えた水、緩衝溶液、等の中に入れることにより、
ii.相対湿度チャンバー中に入れることにより、または
iii.室温または高温に置くことにより、
行う。
【0139】
上記した各組成物およびそれに付随する態様、ならびに各方法およびそれに付随する態様は、本明細書に含まれる開示内容と一致する様式で、他の態様と組み合わせることができる。
【実施例】
【0140】
本発明を下記の例によりさらに説明するが、これらの例は本発明を、いかなる様式においても、制限するものではない。
【0141】
1.PVA/PEGゲル化溶液の製造
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=118,000)30グラムを冷脱イオン水170グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。この溶解した溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0142】
PEG(約90℃で)52.88グラムを、高温(約90℃で)PVA溶液160グラムと、加熱しながら機械的に攪拌することにより、徐々に混合した。このPVAとPEGの高温混合物をPVA/PEGゲル化溶液と呼ぶ。
【0143】
ゲル化溶液を、90℃に維持した様々なサイズの型の中に注ぎ込んだ。型を断熱性毛布で覆い、放置して室温に冷却させた。この溶液は、室温に冷却することにより、ヒドロゲルを形成した。PVA/PEG溶液のいくつかのバッチを調製し、下記の例に記載するように、様々な寸法およびサイズのゲルを注型した。
【0144】
いくつかの例では、注型したゲルを型から取り出し、さらなる処理にかけた。いくつかの例では、試験に使用した、および/またはそれらの「ゲル化した時の」形態で、すなわちPEGを含む状態で、さらなる処理にかけた。いくつかの例では、ゲルを先ず「脱PEG化」し、次いで試験に使用した、および/またはそれらの「脱PEG化した」形態で、さらなる処理にかけた。「ゲル化した時の」ゲルとは、ゲルを型から取り出した直後に液体をぬぐい取った状態にあることを意味する。「脱PEG化した」ゲルとは、大量の食塩水溶液に浸漬してPEGを除去し、ゲルを、重量測定により確認して平衡になるまで水和させた状態にあるゲルを意味する。
【0145】
2.ヒドロゲル中の平衡含水量(EWC)の測定
下記の方法を用いてヒドロゲル中の平衡含水量(EWC)を測定した。試料を先ず食塩水溶液中に攪拌しながら浸漬し、結合していない分子を除去し、水和を平衡状態にした。ゲルが平衡に達した時を確認するために、ゲルの重量変化を毎日記録し、食塩水溶液を新しい食塩水溶液に交換した。平衡水和レベルに達した後、試料の平衡水和重量を記録した。続いて、ゲル試料を空気対流式加熱炉中、90℃で、大きな重量変動が検出されなくなるまで乾燥させた。次いで、ゲル中のEWCを、水和された重量と脱水和された重量との間の差と、平衡化された水和状態における重量の比により計算した。
【0146】
3.円筒形PVAヒドロゲルの単軸圧縮
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=118,000)30グラムを冷脱イオン水170グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。この溶解した溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0147】
PEG(約90℃で)52.88グラムを、高温(約90℃で)PVA溶液160グラムと、機械的に攪拌することにより、徐々に混合した。混合物は、攪拌中、約90℃に維持した。次いで、混合物溶液を、約90℃に維持した高温型の中に注ぎ込んだ。この方法を使用し、PVA/PEG溶液のいくつかのバッチを調製し、大きな型の中にゲルをキャスティングした。
【0148】
この大きな型は、形状が円筒形であり、PlexiGlass(商品名)管材料(高さ50mm、直径160mm)から製造した。管の一端を、厚さ7mmのPlexiGlass(商品名)シート片を接着することにより、覆った。この型を、先ず空気対流式加熱炉中で約90℃に加熱し、次いでやはり約90℃に維持した高温PVA/PEG混合物を上部まで入れた(完全に満たした)。型の開いた上部を別のPlexiGlass(商品名)シート片で覆い、混合物から蒸発する水を最少に抑え、平滑な上部表面を造り出した。型を断熱性毛布で覆い、16時間かけて室温に冷却させた。冷却により、PVA/PEG水溶液混合物はヒドロゲルを形成した。ヒドロゲルを型から取り外した。ヒドロゲルの高さは46.8mmであり、直径は157.3mmであった。ヒドロゲルは、典型的には形成される際に収縮し、一般的にそれがキャスティングされた型よりも小さい。
【0149】
ゲルを型から取り出し、MTS機械(MiniBionix)に取り付けた2個の平らなプラテン間に配置した。したがって、変形加工は、PVAヒドロゲルの、水とPEGの両方を含む「ゲル化した時」の形態で行った(変形加工の前に食塩水溶液中に攪拌しながら浸漬することにより、PEGを除去することもできる)。ヒドロゲルを金属板同士の間に配置し、円筒の短軸に沿って圧縮した。圧縮は、0.2mm/分の速度で、圧縮比約10の地点まで進行させた。圧縮比は、ヒドロゲルの初期高さと最終高さの比として定義される。圧縮下のゲル高さが約5mmに達した時、その変位を少なくとも24時間保持し、応力緩和平衡を達成する。変形加工中にヒドロゲルが大きく横方向膨脹するため、圧縮されたヒドロゲルの周辺部は、所望の圧縮比に達する前に、プラテンの範囲から外に押し出された。直径が僅かに小さな型を使用するか、またはプラテンの直径を増加し、押出を防止することができる。
【0150】
圧縮から取り出した時のヒドロゲルの中央における最終高さは約8mmであった。ゲルの切断断面を図4に示す。
【0151】
上記の方法を使用し、単軸圧縮により分子の二軸延伸を誘発したヒドロゲル充填材を加工することができる。変形加工の後、ヒドロゲルの厚さを、所望の充填材の厚さに少なくとも等しいか、またはそれ以上にするために、先ず、所望量の圧縮比を決定する。充填材は、この時点で変形加工したヒドロゲルシートから機械加工するか、あるいは、変形加工の後に、変形加工されたヒドロゲル充填材が、充填材の最終的な形状またはそれに近い形状を有するように、変形加工の際に使用したプラテンが、それらの、ヒドロゲルと接触する面上に刻み込んだ充填材の形状を有することができる。この段階で、特に最終的な形状に近い形状を有する充填材には、さらなる機械加工が必要になる。
【0152】
4.ヒドロゲルの溶剤脱水和
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製した。型を断熱性毛布で覆い、16時間かけて室温に冷却させた。冷却により、型の内側でヒドロゲルブロックが形成された。型の寸法は、ヒドロゲルブロックが寸法7mm×25mm×45mmを有するシート形状を有するような寸法であった。このようにして、いくつかの同一のヒドロゲルシートを加工した。
【0153】
ヒドロゲルシートを円筒形の試験試料に切断し、これらの試験試料を異なった媒体中に入れ、重量変化を記録することにより、平衡膨潤および/または平衡脱膨潤(deswelling)の程度を定量した。使用した媒体は、水性飽和NaCl(5.2M)、食塩水(0.9%水性NaCl)、アセトン、イソ−プロピルアルコール、分子量400g/モルのポリエチレングリコール(PEG)であった。円筒状試験試料は、直径9mmの冠状鋸で切断することにより、ヒドロゲルシートから調製した(templated)。各媒体に対して、5個の円筒状試験試料を使用した。
【0154】
先ず、全ての試験片の重量および寸法(直径および高さ)を、冠状鋸で切断した直後の「ゲル化した時の」形態で記録した。次いで、5個の試験試料を、上に挙げたそれぞれの媒体中に浸漬した。これらの試料を、それぞれの媒体を満たしたガラス容器の中に保存し、プラットホームシェーカー上、室温で振とうさせた(Innova200 Platform Shaker, New Brunswick Scientific, Edison, NJ)。全試料の重量および寸法を、最初の浸漬8時間では1時間毎に記録し、毎日の測定を、連続的振とう下で平衡膨潤または脱膨潤に達するまで続行した。ヒドロゲル試験試料は、様々な媒体中に保存している間に、様々な程度に膨潤または脱膨潤した。続いて、全試験試料をそれぞれの媒体から取り出し、平衡再水和に達するまで食塩水中に入れた。重量変化を、最初の食塩水再水和8時間では1時間毎に記録し、毎日の測定を、平衡再水和レベルに達するまで続行した。食塩水溶液を毎日交換し、ヒドロゲル試験試料から出てくる他の媒体を全て除去した。
【0155】
膨潤および/または脱膨潤値を、各測定工程における重量と試料の初期重量との差を、試料の初期重量で割ることにより、計算した。全ての場合で、初期重量は、試料を「ゲル化した時の」形態で、冠状鋸で切断した直後に記録した重量である。
【0156】
ヒドロゲル試料は、食塩水および飽和NaCl溶液中では膨潤し、他の媒体中では脱膨潤した(図5)。PEG400、アセトンおよびIPAはヒドロゲル試料を脱膨潤させた。この脱膨潤は、周囲の媒体中に水が失われたためと考えられる。最初の段階、すなわち媒体浸漬、の際にはヒドロゲル中に媒体が吸収されたと思われる。媒体浸漬に続いて、試料を食塩水中に入れた時、明らかな再水和が起きた。再水和の平衡レベルは、アセトン、PEG400、および飽和NaCl中で予め脱膨潤させたヒドロゲル試料で同等であった。
【0157】
ヒドロゲルを特定の媒体中に浸漬することにより、平衡水和レベルを下げることができる。水和レベルを下げることにより、ヒドロゲルの機械的特性が改良された。
【0158】
この例で記載する溶剤脱水和技術的を使用して充填材を加工することができる。生体内に内移植した後に充填材で達成される最終的な平衡寸法が所望の寸法になるように、溶剤脱水和および/またはそれに続く再水和により引き起こされる寸法変化を考慮する必要がある。また、充填材を、内移植まで、脱膨潤を引き起こすことができる媒体中に保存し、充填材を、その膨潤した状態で人体中に挿入することができ、次いで体液が充填材を膨潤させることができる。
【0159】
5.PVAヒドロゲルのチャネルダイ変形加工
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製した。この溶液を、約90℃に維持した高温型の中に注ぎ込み、カバーをしてヒドロゲルシートを形成した。室温で1日ゲル化させた後、ヒドロゲルを型から取りだした。ヒドロゲルの寸法は54mm×44mm×54mmであった。そのようなヒドロゲルブロック2個を製造した。型から取り出した後、一方のヒドロゲルを、その「ゲル化した時の」形態で直ちに変形加工した。第二のブロックを、先ず(脱PEG化、すなわちPEGを除去し、平衡再水和させるため)食塩水中に攪拌しながら浸漬し、その後、変形加工した。
【0160】
内側チャネル寸法が長さ12”、高さ2”、および幅8”であるアルミニウムチャネルダイを注文製造した。このダイを、MTS加負荷フレームに取り付けた2個の平行な金属板の間に配置した(図6)。長方形プリズム形状のヒドロゲルをチャネルの中央に置き、ダイプランジャーをヒドロゲルの上部表面と接触させて保持した。圧縮は、MTS機械(MTSサーボ−油圧試験機、MTS, Minneapolis MN)上で行い、0.2mm/分の速度で、圧縮比が約10(初期高さ:最終高さ)になるまで進行させた。圧縮下のヒドロゲル高さが約5mmに達した時、その変位を一定に維持し、応力緩和させた。
【0161】
圧縮完了後、ヒドロゲルをチャネルダイから取り出した(図7)。脱PEG化したヒドロゲルの重量は124.4gから55.5gに減少し、その厚さは54mmから6.6mmに減少した。プランジャーは、変形加工によりヒドロゲルブロックの厚さが5mmになるように変位させたが、プランジャーに対する負荷を除去した後、変形加工されたブロックは6.6mmに弾性的に回復した。
【0162】
変形加工したゲルを6個の等しい断片に切断し、他の処理工程にかける試料として使用した。試料のいくつかを食塩水中、室温で、重量測定により確認して平衡水和に達するまで再水和させた。試料のいくつかは室温で、平衡脱水和に達するまで(重量測定により確認)真空脱水和したが、これには5日間を要した。試料のいくつかは、ポリエチレングリコール(PEG400、MW=400g/モル)中に入れ、平衡脱水和に達するまで(重量測定により確認)脱水和したが、これには2日間を要した。各脱水和工程に続いて、いくつかの試料に緩アニーリングを行い、また、いくつかの試料に160℃で短時間アニーリングを行った。短時間アニーリングは、窒素中160℃で、脱水和した試料をすでに160℃に加熱してある加熱炉中に1時間入れることにより、行った(短時間アニーリング)。緩アニーリングは、室温から160℃に約5℃/分で加熱し、続いて160℃に1時間の総アニーリング時間保持することにより行った(緩アニーリング)。短時間または緩アニーリングの後、全ての試料を食塩水中に、重量測定により確認して平衡水和に達するまで浸漬した。最後に、例2に記載する方法を使用してゲルを分析し、EWCを求めた。
【0163】
表1は、チャネル−ダイ変形加工したヒドロゲル試料の、様々な処理スキームに続く平衡重量変化およびEWCを示す。変形加工および再水和の後、ゲルは36%の重量損失を示し、水が失われたことを示唆している。追加の実験も、変形加工程度の増加と共に水損失の程度が増加することを示しており、したがって、変形加工の程度を変えることにより、変形加工されたヒドロゲルの平衡含水量を適切に調整することができる。PEG400脱水和だけでは、EWCに著しい影響を及ぼさなかった。他方、両方のアニーリングスキーム共、EWCを大きく下げた。EWCが低い程、強く、強靱なゲルが製造された。最も強いゲルは、チャネル−ダイ変形加工した脱PEG化ゲルを、真空脱水和に続いてアニーリングすることにより達成された。上記の工程のいずれかを使用して完成した充填材を製造し、所望のEWCを適切に調整することができる。
【0164】
6.PVA/PEGゲルの、90%単軸圧縮までの変形加工
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製した。この溶液を、約90℃に維持した長方形プリズム形状の型(40mm×45mm×50mm)の中に注ぎ込み、断熱性毛布で型を覆い、断熱した。この型を放置して室温に冷却し、ヒドロゲルを形成した。2個のそのようなヒドロゲルブロックを調製した。一方のブロックを、その「ゲル化した時の」形態で使用し、他方を食塩水中に室温で浸漬し、PEGを除去(脱PEG化)し、平衡水和させた。
【0165】
【表1】
【0166】
長方形プリズム形状のゲルを、MTS機械(MTSサーボ−油圧試験機、MTS, Minneapolis MN)に取り付けた2個の平らな金属板の間に配置し、最長軸に沿って圧縮した。圧縮は、0.2mm/分の速度で、圧縮比が約10(初期高さ:最終高さ)になるまで進行させた。圧縮下のヒドロゲル高さが約5mmに達した時、その変位を、応力緩和平衡が達成されるまで、少なくとも24時間一定に維持した。単軸圧縮により、ヒドロゲル分子が二軸延伸された、永久変形加工されたゲルが得られた。変形加工に続いて、ゲルをMTS機械から取り出した。負荷を除いた時、ある程度の弾性反発(弾性変形の回復)があったが、得られたゲルは永久変形していた。単軸変形加工を、ゲル化した時の、および脱PEG化したヒドロゲルの両方で行った。
【0167】
この段階で、医療用装置、例えば関節(股、膝、または肩)挿入機器、を変形加工したPVAゲルから機械加工することができる。
【0168】
単軸圧縮完了時点で、長方形プリズム形状の「ゲル化した時の」ヒドロゲル試料は、長さ41.83mm、幅47.37mm、および高さ49.75mmから、長さ88.29mm、幅97.74mm、および高さ6.4mmに変化していた。脱PEG化されたヒドロゲルの場合、試料の寸法は長さ43.49mm、幅50.01mm、および高さ53.03mmから、長さ93.17mm、幅97.78mm、および高さ6.71mmに変化していた。
【0169】
変形加工したゲルを5個の断片に切断し、各切断試料にその後の処理を施した。
【0170】
「ゲル化し、変形加工した」群および「脱PEG化し、変形加工した」群から得た試料のいくつかを食塩水中、室温で、重量測定により確認して平衡水和に達するまで再水和させた。両方の群から得たヒドロゲル試料のいくつかは室温で、平衡脱水和に達するまで(重量測定により確認)真空脱水和したが、これには5日間を要した。各群から得たヒドロゲルのいくつかは、ポリエチレングリコール(PEG400、MW=400g/モル)中に入れ、平衡脱水和に達するまで(重量測定により確認)脱水和したが、これには2日間を要した。各脱水和工程に続いて、いくつかの試料に緩アニーリングを行い、また、いくつかの試料に160℃で短時間アニーリングを行った。短時間アニーリングは、窒素中160℃で、脱水和した試料をすでに160℃に加熱してある加熱炉中に1時間入れることにより行った(短時間アニーリング)。緩アニーリングは、室温から160℃に約5℃/分で加熱し、続いて160℃に1時間の総アニーリング時間保持することにより行った(緩アニーリング)。短時間または緩アニーリングの後、全ての試料を食塩水中に、重量測定により確認して平衡水和に達するまで浸漬した。最後に、例2に記載する方法を使用してゲルを分析し、EWCを求めた。
【0171】
表2〜3は、変形加工したヒドロゲル試料の、様々な処理スキームに続く平衡重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。変形加工の後、ゲル化した状態の試料は、脱PEG化した試料よりも多く再水和されたが、恐らく、ゲル化した状態のヒドロゲル中に存在するPEGが細孔構造を保護し、それらの崩壊を阻止し、これによって、ヒドロゲルの再水和容量が改良されたのであろう。変形加工の直後に再水和した場合のEWCは、ゲル化し、変形加工された試料の方が、脱PEG化され、変形加工された試料よりも高かった。同様に、他の処理スキーム全てに関して、ゲル化した状態の試料は、脱PEG化された試料よりも、EWCが高かった。PEG400脱水和だけでは、EWCに著しい影響を及ぼさなかった。他方、両方のアニーリングスキーム共、EWCを大きく下げた。EWCが低い程、強く、強靱なゲルが製造された。上記の工程のいずれかを使用して完成した充填材を製造し、所望のEWCを適切に調整することができる。
【0172】
【表2】
【0173】
7.PVAヒドロゲルの脱膨潤に対するPEG濃度の影響
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製し、カバーを備えた高温型(高さ7mm×直径2.5mm×幅4.5mm)の中に注ぎ込み、ヒドロゲルシートを形成した。室温で1日ゲル化させた後、成形したヒドロゲルシートを、ドリルプレス(Enco Manufacturing Co, Model 105-1100, Chicago, IL)に取り付けた冠状鋸刃(角膜冠状鋸刃、直径9.5mm、Stradis Medical, Alpharetta, GA)を使用して円筒形ゲルに切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の初期高さ、直径および重量を測定した。これらの円筒形試験試料は、ゲル化後に全く処理にかけてなく、ゲル化溶液中にあったPEGを含むので、「ゲル化した時の」円筒形試験試料と呼ぶ。
【0174】
「ゲル化した時の」試料のいくつかを、分子量400g/モル(PEG400)の100%ポリ−エチレングリコール中に浸漬し、5個の別の「ゲル化した時の」試料を50%ポリエチレングリコール400水溶液に室温で攪拌しながら浸漬した。PEG中に浸漬することにより、PVAヒドロゲルから水が除去され、脱水和および脱膨潤が起きる。円筒形試験試料のPEG浸漬は少なくとも24時間行い、平衡脱水和状態を確保した。
【0175】
【表3】
【0176】
5個の別の「ゲル化した時の」円筒形試験試料は、食塩水中に浸漬し、ヒドロゲルからPEGを除去した(脱PEG化)。
【0177】
100%および50%PEG400中にあったヒドロゲル試料の平衡脱膨潤が達成された時、すなわち各ヒドロゲル重量に大きな変化が検出されなくなった時、これらのヒドロゲル試料をそれぞれの媒体から取り出し、食塩水溶液中に攪拌しながら室温で少なくとも2日間入れ、再水和させ、ヒドロゲルからPEGを除去した。食塩水溶液は、これらの試料を食塩水で浸漬する際に、毎日新しい食塩水と交換した。ヒドロゲル試料が平衡再水和に達し、長時間で重量に大きな変化が検出されなくなった時、ヒドロゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を記録した。
【0178】
PEG浸漬およびそれに続く再水和後のヒドロゲル試料の、重量測定による膨潤および/または脱膨潤を、「ゲル化した時の」状態に対して計算した(表4参照)。
【0179】
【表4】
【0180】
PEG浸漬中のヒドロゲル試料における脱膨潤度は、PEG溶液の濃度により影響を受ける。「ゲル化した時の」ヒドロゲルは、100%PEG400中で約45%、50%PEG400溶液中では約27%脱膨潤した。100%PEG中に浸漬したゲルは、形状が僅かに歪んでいた。各円筒形ヒドロゲルの上部および底部表面の中央区域が僅かに窪んでいたが、これは恐らく、ヒドロゲルのコアおよび表皮における膨潤速度が一様ではないためであろう。対照的に、50%PEG溶液における試料は、脱水和の後に識別できる形状歪みは無かった。
【0181】
100%PEGおよび50%PEG溶液中で膨潤させた試料は、食塩水で浸漬した後、膨潤した。
【0182】
本例の観察は、ヒドロゲル充填材、例えばモザイク形成(mosaicplasty)プラグまたは挿入機器として使用できる充填材の貯蔵規定を決定するのに重要である。例えば、再水和された状態で同一の、または類似の寸法に到達できるゲルは、体空隙中に容易に挿入できるように、ヒドロゲル貯蔵溶液中のPEG濃度を単純に調整することにより、様々な寸法範囲に、ヒドロゲル形状の歪みを最小にして予め縮小することができる。
【0183】
8.PVAヒドロゲルの脱水和に対するPEG分子量の影響
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製し、カバーを備えた、90℃に維持した高温型(高さ7mm×直径2.5cm×幅4.5cm)の中に注ぎ込み、ヒドロゲルシートを形成した。型を断熱性毛布で覆い、室温に冷却させた。室温で1日ゲル化させた後、成形したヒドロゲルシートを、ドリルプレスに取り付けた冠状鋸刃(角膜冠状鋸刃、直径9.5mm、Stradis Medical, Alpharetta, GA)を使用して円筒形ヒドロゲルに切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定した。
【0184】
ヒドロゲル円筒形試料は、それらの「ゲル化した時の」形態で使用した。「ゲル化した時の」形態とは、使用したPVA/PEGゲル化溶液中に存在していた水およびPEGを含むPVAヒドロゲルの形態である。
【0185】
ヒドロゲル試料を、様々な分子量(MW)を有するポリエチレングリコールの50%水溶液中に浸漬し、ヒドロゲル脱膨潤の程度に対するPEGMWの影響を確認した。
【0186】
円筒形ヒドロゲルのいくつかを50%PEG400(PEGMW=400g/モル)水溶液中に、ヒドロゲルのいくつかを50%PEG600(PEGMW=600g/モル)水溶液中に、室温で攪拌しながら、少なくとも24時間浸漬し、平衡化した脱膨潤状態を確保した。ヒドロゲルのいくつかを、PEG脱膨潤のない食塩水中に浸漬し、比較用として使用した。50%PEG400または50%PEG600溶液に浸漬することにより、恐らく水が除去されるために、ヒドロゲル試料の重量が低下し、したがって、50%PEGにヒドロゲル試料を浸漬することにより、脱膨潤が引き起こされる。
【0187】
ヒドロゲル試料の脱膨潤が平衡に達した時、すなわち長時間にわたってヒドロゲル重量に大きな変化が検出されなくなった時、ヒドロゲル試料を食塩水溶液中に攪拌しながら室温で少なくとも2日間入れ、再水和させ、ヒドロゲル試料からPEGを除去した。ヒドロゲル試料から溶出するPEGを除去するために浸漬する際、食塩水溶液を毎日新しい食塩水と交換した。ヒドロゲルが平衡再水和に達し、長時間にわたって重量に大きな変化が無くなった時、ヒドロゲル試料を食塩水溶液から取り出し、液体をぬぐい取り、ヒドロゲル試料の最終的な高さおよび重量を記録した。PEG脱水和およびそれに続く食塩水中再水和後の重量測定による膨潤および/または膨潤を、「ゲル化した時の」状態に対して計算した(表5参照)。すなわち、特定の工程におけるヒドロゲルの脱膨潤百分率または膨潤百分率は、その工程におけるヒドロゲルの重量と、「ゲル化した時の」重量との間の差と、「ゲル化した時の」試料の重量の比である。
【0188】
浸漬の際に使用した50%PEG水溶液におけるPEGの分子量は、「ゲル化した時の」ヒドロゲル試料の脱膨潤程度に僅かに影響を与えた。「ゲル化した時の」ヒドロゲル試料は、50%水性PEG400中で27%、50%水性PEG600中で31%脱膨潤した。PEGMWが高い程、PEG浸漬後にPVAヒドロゲルは大きく脱膨潤した。50%PEG400中および50%PEG600中で脱膨潤したヒドロゲルは、両方共、認められる程の形状の歪みを示さなかった。
【0189】
【表5】
【0190】
ヒドロゲル充填材を加工することができ、様々な媒体での浸漬を使用して機械的特性を適切に調整し、充填材の寸法を管理することができる。そのような方法の一つは、分子量が異なったPEG水溶液中に充填材を浸漬することである。上記の方法は、先ずヒドロゲルからPEGを除去(食塩水中に攪拌しながら浸漬−脱PEG化)し、次いでヒドロゲルをPEG溶液中に浸漬することにより、使用することもできる。
【0191】
9.ヒドロゲルの、脱水和に続いて再水和する容量に対する、PVAヒドロゲルにおけるPEG存在の影響
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製し、長方形の型(44mm×54mm)の中にキャスティングし、厚さ7mmまたは21mmのシートを調製した。型を断熱性毛布で覆い、16時間放置して室温に冷却させた。このようにして、これらの型の中でヒドロゲルを形成した。
【0192】
各厚さ(7mmおよび21mm)のヒドロゲルシート4枚を食塩水中に浸漬し、PEGを除去(脱PEG化)し(I群)、別の4枚の群を「ゲル化した時の」形態に維持した(II群)。両方の群のヒドロゲル試料を先ず秤量し、続いて室温で真空中に置き、脱水和させた。平衡脱水和レベルに達するまで、重量変化を毎日記録した(「ゲル化した時の」II群では5日間、脱PEG化したI群では7日間)。真空脱水和の後、各群から採った1個の試料を食塩水中に直接浸漬し、再水和させた。平衡再水和レベルに達するまで、重量変化を毎日記録した(5〜6日間)。
【0193】
別の7mmヒドロゲルシートの群(III群)を使用し、室温空気脱水和の影響を研究した。この実験には、3枚のヒドロゲルシートを秤量し、次いで空気中に室温(約24℃)で9日間まで放置した。試料の重量変化を毎日記録した。
【0194】
別のヒドロゲルシートの群(IV群)を使用し、ヒドロゲルシートからPEGを除去した後の室温脱水和の影響を研究した。この実験には、3枚のヒドロゲルシートを、室温で、食塩水中で攪拌しながら、平衡水和レベルに達するまで(約6日間)脱PEG化した。続いて、ヒドロゲルシートを秤量し、空気中に室温で9日間まで放置した。重量変化を毎日記録した。
【0195】
真空脱水和に続いて、I群およびII群のそれぞれから採った1個の試料を、すでに160℃に加熱した加熱炉中に1時間入れることにより、窒素中、160℃でアニーリングした(短時間アニーリング)。アニーリングの前および後に、試料の重量および寸法を記録した。各群から採った別の試料を、室温から160℃に約5℃/分で加熱し、続いて160℃に総アニーリング時間1時間保持することにより、アニーリングした(緩アニーリング)。短時間または緩アニーリングの後、全ての試料を食塩水中に、平衡水和に達するまで浸漬した。試料の重量および寸法を毎日記録した。
【0196】
厚さ21mmのゲル化した時の、および脱PEG化したPVA/PEGの平衡含水量を、様々な処理工程で測定した。この目的には、(1)真空脱水和し、続いて再水和させた、(2)真空脱水和し、次いで緩アニーリングし、続いて再水和させた、および(3)真空脱水和し、次いで短時間アニーリングし、続いて再水和させたゲルのそれぞれから3個の試料を切り取った。全試料の平衡重量を測定し、次いで90℃の対流式加熱炉中に入れた。各試料の重量測定を、加熱炉乾燥の第一日に2回、その後は毎日、3日間続行した。全ての試料が加熱炉乾燥1日後に平衡に達した。試料の平衡乾燥重量を使用し、3群の平衡再水和させたゲル中の含水量を計算した。
【0197】
図8は、7mm試料に関する、真空脱水和後の「ゲル化した時の」および脱PEG化した試料の外観の違いを示す。出発ヒドロゲル試料は、真空脱水和の前は不透明であった。真空脱水和の前に脱PEG化したヒドロゲルは、真空脱水和の後に半透明になったのに対し、「ゲル化した時の」形態で真空脱水和した試料は。その不透明性を維持していた。この外観の変化は、「ゲル化した時の」試料における細孔構造が真空脱水和の際に維持されることに帰せられる。「ゲル化した時の」試料中に存在するPEGが、ヒドロゲル中の多孔質空間を占有することにより、真空脱水和の際に細孔崩壊から保護したと思われる。PEGは揮発性の分子ではなく、そのために、真空脱水和の際に試料から水が蒸発するのに対し、PEGは構造中に残留したのである。対照的に、脱PEG化はPEGを除去し、これらのヒドロゲル試料の多孔質構造を水だけで充填した。水の蒸発により、細孔が空になり、その結果、真空脱水和の際にヒドロゲルが崩壊し、これらの試料がより半透明を呈したのである。
【0198】
真空脱水和は、空気脱水和よりはるかに高速で進行し、重量損失の速度は真空中の方がより速く、真空中に放置した試料は、空気中に放置した試料より平衡脱水和または脱膨潤レベルに、より速く到達した。どちらの方法で到達した平衡脱水和値も同等であった。したがって、どちらの脱水和方法でも選択することができる。
【0199】
表6〜7は、7mmのゲル化した時の、および脱PEG化したヒドロゲルの、種々の処理工程の後に到達した平衡再水和レベルの程度を示す。真空脱水和の後、平衡再水和レベルは、緩アニーリング、または短時間アニーリング工程で処理したヒドロゲルにより達成されたレベルよりもはるかに高かった。ゲル化した時の群では、短時間アニーリング工程により達成された再水和の量は最も低かった。脱PEG化された試料は、ゲル化した時の試料より少ない再水和を示した。
【0200】
図9は、様々な処理工程における21mmヒドロゲルシートを示す。ヒドロゲルのゲル化した時の形態におけるPEGの存在により、脱PEG化した、PEGを全く含まないゲルの場合より、真空脱水和による体積脱膨潤は非常に少なくなった。
【0201】
表8〜9は、21mmのゲル化した時の、および脱PEG化したヒドロゲルの、種々の処理工程の後に到達した平衡再水和レベルの程度を示す。真空脱水和の後、平衡再水和レベルは、緩アニーリング、または短時間アニーリング工程で処理したヒドロゲルにより達成されたレベルよりもはるかに高かった。ゲル化した時の群では、短時間アニーリング工程により達成された再水和の量は最も低かった。脱PEG化した試料は、ゲル化した時の試料より少ない再水和を示した。
【0202】
【表6】
【0203】
【表7】
【0204】
ゲル化した時の試料は、脱水和工程のどの一つにおいても、脱PEG化した試料より、かなり高い再水和レベルを示した。真空脱水和後の平衡再水和レベルは、ゲル化した時の、および脱PEG化したゲルに対して、それぞれ−6.3%および−47.4%であった。真空脱水和および短時間アニーリング工程後の平衡再水和レベルは、ゲル化した時の、および脱PEG化したゲルに対して、それぞれ−42%および−80%であった。これは、脱水和の際に多孔質構造の崩壊を阻止するPEGの保護効果を示すさらなる証拠である。これにより、ゲル化した時のヒドロゲルでは、脱水和工程に続いて再水和容量がより高くなるのに対し、脱PEG化した試料は、真空脱水和工程または真空脱水和に続くアニーリング脱水和工程の後、より低い再水和容量を示した。
【0205】
【表8】
【0206】
【表9】
【0207】
上記の方法の一つまたはいくつか、もしくは全てを使用し、ヒドロゲル充填材の機械加工に使用できるヒドロゲル原材料を製造することができる。処理の際に起こる寸法変化を考慮し、所望の充填材サイズおよび形状に到達することができるように、適切に成形した充填材から出発することもできる。その充填材を、上記の方法の一つ、または複数もしくは全てを実施し、最終的な形状または最終的な形状に近い充填材を製造することができる。
【0208】
表10は、様々な処理工程後の、21mmPVA/PEGゲルの平衡含水量(EWC)を示す。再水和した試料のEWCは、真空脱水和に続いてアニーリングを行った試料で、より低かった。水和したゲルを90℃より上に加熱することにより、ゲルの融解を引き起こすが、真空脱水和がゲルの融点を上昇させ、融解させずにアニーリングすることができるので、真空脱水和はアニーリング前の不可欠な工程である。脱PEG化した試料は、それらのゲル化した時の試料よりも低いEWCを示した。
【0209】
【表10】
【0210】
EWC測定の際、厚さ21mmのヒドロゲルシートは、シート全体とは異なった特性を有する表皮層を形成したことが分かった。この表皮は、全体よりも強靱であることが分かった。したがって、表皮(自由表面から最初の3mm)、表面から約5mm下(中間)、および表面から約10mm下(コア)で追加のEWC測定を行った。表11は、ゲル化した時の、および脱PEG化した21mmヒドロゲルシートの両方に対して、様々な処理工程で、これらの深さで測定したEWC値を示す。表皮の存在は、脱PEG化した試料でより明らかであり、全体よりも表皮で、より低いEWCを示した。ヒドロゲル中に特性の勾配を造り出すアニーリング方法を使用することができる。加熱速度が、表皮層の厚さに影響を及ぼし、勾配がどの程度鮮明であるかを支配する。加熱速度が遅い程、勾配はより滑らかであると予想される。
【0211】
10.変形加工したPVAゲルのPEG処理
例1に記載するように変形加工したゲルを調製し、例5に記載するようにCarver Pressで変形加工した。変形加工したゲルをCarver Pressから取り出した後、その変形加工されたゲルを100%PEG400液の中に室温で攪拌しながら24時間浸漬した。PEG400中に浸漬することにより、ゲルから水が部分的〜完全に除去され、したがって、ゲルが部分的〜完全脱水和された。ゲルの高さは変形加工プレスから取り外した時点では6.2mmであり、PEGに24時間浸漬した後は4.36mmに減少した。PEG脱水和に続いて、変形加工されたゲルを食塩水溶液中に攪拌しながら、室温または37℃で入れ、再水和させ、ゲルからPEGを除去した。この工程で、医療用装置、例えば関節(股、膝、または肩)挿入機器、をPVAゲルから機械加工することができる。
【0212】
【表11】
【0213】
11.90%単軸圧縮したPVA/PEGゲルの、形状を有する型の中における追加変形加工
変形加工したゲルを調製し、続いて例10に記載するようにPEG処理を行った。再水和し、変形加工したゲルを、形状を有する型の上部と底部の間に配置した。
【0214】
ゲルおよび型をCarver Press中で上部型と底部型が接触するまで一つに圧縮し、中間のゲルを型の内側形状に一致させた(図10参照)。形状を有する型同士の間に挟まれた、変形加工されたヒドロゲルを、一定変形下に24時間保持した。続いて、変形加工されたヒドロゲルを型から取り出し、100%PEG400中に24時間浸漬することにより、さらにPEG処理した。PEG400から取り出した後、変形加工されたヒドロゲルを食塩水溶液中に室温で入れ、平衡再水和レベルに到達させた。ヒドロゲルは、その平衡水和にあった工程を包含する各工程を通して、その成形された形状を維持していた。最終的なゲルは、挿入機器の形状を得た。
【0215】
12.1回のPEG浸漬および連続的なPEG浸漬の影響
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製し、カバーを備えた、高温型(高さ7mm×深さ2.5mm×幅4.5mm)の中に注ぎ込み、ヒドロゲルシートを形成した。室温で1日ゲル化させた後、成形されたヒドロゲルシートを、ドリルプレスに取り付けた冠状鋸刃(直径9.5mm)を使用して円筒形ヒドロゲルに切断した。「ゲル化した時の」形態で切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定した。続いてヒドロゲルを、分子量400g/モルのポリエチレングリコール(PEG400)中に浸漬することにより、処理した。ヒドロゲルのいくつかを、1回のポリエチレングリコール浸漬工程により、他を複数の浸漬工程により、各工程間で食塩水中再水和しながら、処理した。
【0216】
1回のPEG浸漬では、成形したヒドロゲルシートから切り取ったヒドロゲル円筒を100%PEG400中に、「ゲル化した時の」状態で、機械的に一定攪拌しながら浸漬した。70個のヒドロゲル試料から5個を、下記の時間段階、すなわち1、2、3、4、5、および6、ならびに1、2、3、4、および6日、にPEG400液から取り出した。各時間段階で、液をぬぐい取った後、ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。各ヒドロゲル試料の重量低下%を時間段階のそれぞれで計算した、試料の「ゲル化した時の」重量を、重量%低下計算の初期重量として使用した。PEG400から取り出した後、試料を食塩水中で再水和させた。再水和させたヒドロゲル試料の、「ゲル化した時の」状態からの重量%変化を計算した。
【0217】
連続的なPEG浸漬では、ヒドロゲル円筒を、「ゲル化した時の」状態か、または「脱PEG化した」状態で、PEG浸漬を行った。
【0218】
「脱PEG化した」群では、型から取りだした後、ヒドロゲル試料を先ず食塩水溶液中に攪拌しながら少なくとも2日間浸漬し、PEGを除去し、水和を平衡化した。この段階で、試料の重量および寸法を記録し、続いて試料をPEG400中に浸漬した。
【0219】
「ゲル化した時の」ヒドロゲル円筒および「脱PEG化した」ヒドロゲル円筒の両方を100%PEG400中に室温で攪拌しながら少なくとも24時間浸漬し、各ヒドロゲル試料で水和を確実に平衡化した。PEG脱水和に続いて、試料を食塩水溶液中に室温で攪拌しながら少なくとも2日間浸漬し、PEGを除去し、平衡再水和に到達させた。これによって、1サイクルの、1回PEG脱水和/再水和手順が完了した。同じヒドロゲルをさらなるPEG脱水和/再水和工程にかけた(合計3連続脱水和/再水和工程)。各段階の脱水和および再水和の後、液をぬぐい取った後、ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。
【0220】
各ヒドロゲル試料の重量%変化を、「ゲル化した時の」および「脱PEG化した」群の両方に関して、脱水和および再水和のそれぞれで、測定した。両方の群で、試料の「ゲル化した時の」重量を、重量%低下計算の初期重量として使用した。
【0221】
図11に示すように、100%PEG400中に浸漬したPVAヒドロゲルは、重量測定により急速な脱膨潤を起こし、浸漬6時間以内に約−40%の平衡重量低下に接近した。PEG400中に1日浸漬した後、ヒドロゲル円筒は、平衡脱膨潤に達し、その後、試料の重量にほとんど変化はなかった。したがって、1回のPEG浸漬で到達できる脱膨潤の最大量は、−40%であった。
【0222】
「ゲル化した時の」および「脱PEG化した」群の両方に関して、平衡脱膨潤レベルの増加が、連続PEG浸漬および再水和工程で観察された(表12)。「ゲル化した時の」群では、平衡脱膨潤は、最初のPEG浸漬の際に約−45%であり、この値は、第二PEG浸漬の際に約−71%に、第三PEG浸漬工程の際に約−76%に低下した。前の工程と比較した平衡脱膨潤の差は、脱水和/再水和サイクル数の増加と共に減少した。最後の食塩水中平衡再水和を包含する3回の連続PEG浸漬サイクルが完了した後、「ゲル化した時の」PVAヒドロゲルの重量測定による永久脱膨潤は−36%であった。先にPEG処理を行わずに食塩水中で水和させたヒドロゲル試料は、約+15%の重量増加(膨潤)を示した。対照的に、連続的にPEG処理したヒドロゲル試料は、かなりの緻密化を示し、機械的により強い外観を呈した。
【0223】
【表12】
【0224】
ヒドロゲルの重量%変化は、「ゲル化した時の」重量に対して計算した。例えば、(−)の記号は、本来の「ゲル化した時の」状態からの脱膨潤(重量損失)を表すのに対し、(+)の記号は、「ゲル化した時の」状態からの膨潤(重量増加)を表す。
【0225】
「脱PEG化した」試料群は、全てのPEG浸漬工程で、「ゲル化した時の」群より急速な、重量測定による脱膨潤を示した。各PEG浸漬サイクルの最後に食塩水中で達成された平衡再水和も、「脱PEG化した」群で、「ゲル化した時の」群より低かった。「脱PEG化した」試料は、「ゲル化した時の」群と同等の挙動を示し、PEG浸漬/食塩水再水和工程の数が増加するにつれて、脱水和レベルが連続的に低下した。
【0226】
13.動物軟骨に対して関節作用するヒドロゲルプラグによるピン−オン−ディスク(POD)摩耗試験
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=115,000g/モル)40グラムを、冷脱イオン水160グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した20重量%PVA溶液を調製した。溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0227】
PEG400(約90℃で)62.22グラムを、高温(約90℃で)PVA溶液200グラムと、加熱しながら機械的に攪拌することにより、徐々に混合した。次いで、混合物溶液を高温型の中に注ぎ込んだ。PVA/PEG溶液のいくつかのバッチを調製し、種々の寸法およびサイズのゲルをキャスティングした。
【0228】
高温PVA−PEG混合溶液を、カバーを備えた高温型(高さ7mm×深さ25mm×幅45mm)の中に注ぎ込み、ヒドロゲルシートを形成した。様々な厚さ、例えば8mmおよび9mm、の他の型も使用し、より厚いヒドロゲルシートを製造した。室温で1日ゲル化させた後、ドリルプレスに取り付けた冠状鋸刃(直径6.5mm股は7.0mm)を使用して円筒形ヒドロゲルに切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定し、「ゲル化した時の」基準重量および寸法として使用した。
【0229】
円筒形ヒドロゲルのいくつかを50%PEG400水溶液または100%PEG400液中に、攪拌しながら室温で少なくとも24時間浸漬し、これらのヒドロゲルプラグから水を部分的に除去した。部分的脱水和により、ヒドロゲルプラグから寸法および重量が減少した。この収縮により、プラグを軟骨中の円筒形空隙の中に容易に挿入することができる。この例で使用するヒドロゲルプラグは、100%PEG400中で脱水和した。
【0230】
成体の雌牛の膝(左側)を動物PODモデルに使用した。X線でこの膝は良好な骨原料を有することが確認された。膝蓋骨および遠位大腿骨の周りの軟質組織を除去した。続いて、帯のこを使用して2個の軟骨試料30mm×15mm×15mmを滑車溝から切り取り、2方向ピン−オン−ディスク(POD)摩耗試験機上の関節対として使用した。軟骨切片の裏側にある準軟骨の骨(subchondral bone)を、ドリルで粗くし、Surgical Simplex P骨セメント(Stryker Howmedica Rutherford, NJ)でステンレス鋼ホルダー上に固定した。このホルダーをPODに取り付け、荷重をかけて2個の軟骨試料間の接触面積を測定した。直径5.0mmドリル、続いて平底ドリルを使用して上軟骨片上に欠損部を造り、深さ約6.mmの円筒形空隙を形成した。この欠損部は接触区域内にあった。空隙の最終寸法は、直径5.2mm、深さ約6.7mmと測定された(図12)。
【0231】
Fuji感圧フィルムを使用し、軸方向負荷890Nの下で接触面積および接触圧を測定した。Fujiフィルムを軟骨表面間に配置し、荷重を2分間作用させた。平均圧は5.0〜6.0MPaであった。
【0232】
下側軟骨片を2方向POD上に取り付け、PODが、X−Yテーブル(Parkers Systems, Rohnert Park, CA)を使用し、軟骨片を5mm×10mmの長方形トラック上、0.5Hzで移動させた。この試験は、100%ウシ血清環境中で行った。血清は、試験の前にペニシリン−ストレプトマイシンと混合し、細菌成長を遅延させ、軟骨を保護した。テーブルは、MTSサーボ−油圧試験機(MTS, Minneapolis MN)上に取り付けた。荷重は、ピーク荷重890Nおよび予備荷重90Nの二重ピークPaul型荷重曲線として作用させた(Bragdonら、Journal of Arthroplasty, 2001. 16(5): p. 658-65)。
【0233】
表13に示すように、ヒドロゲルシートから切り取ったヒドロゲルプラグの初期寸法(表13)は、空隙の寸法(表13)より意図的にやや大きくしてある。最初、ヒドロゲルプラグは直径約6.53mm、高さが8.76mmであり、空隙の寸法は直径約5.2mm、高さが約6.7mmであった。ヒドロゲルプラグを100%PEG中で脱水和して一時的に寸法を収縮させることにより、プラグを軟骨空隙の中に挿入し易くなる。
【0234】
図13は、空隙中に即挿入できる円筒形ヒドロゲルプラグを示す。ヒドロゲルプラグは、100%PEG浸漬の後、部分的に脱水和された(重量測定により、初期のゲル化した時の重量に対して46%脱膨潤した)。
【0235】
図14は、POD試験のために、ウシ膝の軟骨空隙中に挿入されたヒドロゲルプラグを示す。上面図および側面図の両方が、挿入されたヒドロゲルプラグの寸法が空隙の寸法に良く適合していることを示している。空隙の内側にあるヒドロゲルの高さが、周囲の軟骨の高さとほぼ等しいか、またはそれよりほんの僅かに高いことに注意する。
【0236】
ヒドロゲルプラグを挿入した後、軟骨試料をPODに取り付けた。試料は、ウシ血清中に、運動や負荷をかけずに、約1時間保持し、POD試験の前にヒドロゲルプラグを再水和させた。この時点で、別の円筒形ヒドロゲル試料(「浸漬比較用」)を同じ容器の中に入れ、自由浮揚している、閉じ込めていないヒドロゲルプラグの、POD試験を行う際のウシ血清中再水和程度を測定した。
【0237】
挿入されたヒドロゲルプラグは、血清中に1時間露出した後、ある程度の膨潤を示し、周囲の軟骨から僅かに突き出ている(図15)。表14は、POD試験の際の軟骨設定と同じ血清浴中に浸漬した「浸漬比較用」ヒドロゲル円筒における寸法変化を示す。図15における挿入されたヒドロゲルプラグと同様に、浸漬比較用ヒドロゲルプラグは、血清に1時間露出した後、急速に再水和し、完全に再水和した平衡重量および寸法の94%を超えて回復するためと考えられる、再膨潤を示した。
【0238】
軟骨対向面に対する関節作用80,000サイクルの後、ヒドロゲルプラグは、軟骨空隙のさらに内側に位置し、高さが僅かな減少した(図16)。POD試験の160,000サイクル時間の後、このプラグは依然として安定しており、80,000サイクル後の高さと同じプラグ高さを維持していた。ヒドロゲルプラグの目に見える摩耗または裂け目は観察されなかった(図17参照)。
【0239】
【表13】
【0240】
14.PVAヒドロゲルを100%または50%PEG水溶液中に浸漬し、続いて緩アニーリングを行う
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製し、90℃に維持した高温型(高さ7mm×深さ2.5cm×幅4.5cm)の中に注ぎ込み、型を断熱性毛布で覆い、断熱した。型を放置して室温に冷却させ、ヒドロゲルシートを形成した。室温で1日ゲル化させた後、成形したヒドロゲルシートを、ドリルプレスに取り付けた冠状鋸刃(直径9.5mm)を使用して円筒形ヒドロゲルに切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定し、「ゲル化した時の」基準として使用した。
【0241】
【表14】
【0242】
円筒形ヒドロゲルのいくつかを100%PEG400液に浸漬し、ヒドロゲルのいくつかを50%PEG400水溶液に室温で攪拌しながら30日間浸漬した。100%PEG400または50%PEG400溶液に浸漬することにより、ヒドロゲルから水を部分的〜完全に除去し、それによって、ヒドロゲルを部分的または完全に脱水和した。
【0243】
100%PEG浸漬したヒドロゲル試料および50%PEG浸漬した試料を個別に食塩水溶液中に室温で攪拌しながら入れ、再水和およびヒドロゲルからのPEG除去を6日間行った。浸漬中、毎日、食塩水溶液を新しい食塩水と交換した。ヒドロゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を、毎日、液をぬぐい取った後に記録した。PEG脱水和およびそれに続く食塩水中再水和の後、ヒドロゲルの重量%変化を、「ゲル化した時の」状態に対して計算した。次いで、ゲルをさらに分析し、例2に記載するように、平衡含水量を求めた。
【0244】
1時間の緩アニーリング群
100%PEG400浸漬したゲル試料および50%PEG400浸漬した試料を、液をぬぐい取り、室温から160℃に約5℃/分で加熱し、続いて160℃に1時間の総アニーリング時間保持することにより、アニーリングを行った(緩アニーリング)。アニーリング前後のゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。アニーリングの後、試料を食塩水溶液中に攪拌しながら室温で浸漬し、再水和およびヒドロゲルからのPEG除去を6日間行った。浸漬中、毎日、食塩水溶液を新しい食塩水と交換した。ゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を、毎日、液をぬぐい取った後に記録した。PEG脱水和、アニーリングおよびそれに続く食塩水中再水和の後、ヒドロゲルの重量%変化を、「ゲル化した時の」状態に対して計算した。次いで、ゲルをさらに分析し、例2に記載するように、平衡含水量を求めた。
【0245】
5時間の緩アニーリング群
100%PEG400浸漬したゲル試料および50%PEG400浸漬した試料を、液をぬぐい取り、室温から160℃まで1時間、さらに160℃で4時間保持の緩アニーリングを行った。アニーリング前後のゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。アニーリングの後、ゲルを食塩水溶液中に攪拌しながら室温で浸漬し、ヒドロゲルの再水和およびPEG除去を6日間行った。浸漬中、毎日、食塩水溶液を新しい食塩水と交換した。ヒドロゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を、毎日、液をぬぐい取った後に記録した。PEG脱水和、アニーリングおよびそれに続く食塩水中再水和の後、ゲルの重量%変化を、「ゲル化した時の」状態に対して計算した。次いで、ゲルをさらに分析し、例2に記載するように、平衡含水量を求めた。
【0246】
比較用試料群および1時間および5時間の緩アニーリング群全てが、室温における食塩水溶液中浸漬約1日で平衡再水和に達した。
【0247】
【表15】
* 各工程におけるヒドロゲルの総重量%変化は、「ゲル化した時の」重量に対して計算した。例えば、(−)の記号は、本来の「ゲル化した時の」状態からの脱膨潤(重量損失)を表すのに対し、(+)の記号は、「ゲル化した時の」状態からの膨潤(重量増加)を表す。
a PEG400脱水和工程と緩アニーリング工程との間の重量%変化を表す。
b 緩アニーリング工程と食塩水中平衡再水和の間の重量%変化を表す。
【0248】
ヒドロゲル試料は、表15に示すように、PEG400溶液中で重量が低下、すなわち脱膨潤した。平衡重量損失は、50%PEG400溶液中で約30%、100%PEG400溶液中で40%であった。緩アニーリングは、さらなる重量損失を引き起こした。1時間および5時間の緩アニーリングは、同じ量の、約20%の、さらなる重量損失を引き起こし、「ゲル化した時の」重量から総重量損失が約50%になった。50%PEG400中に浸漬することにより処理し、1時間および5時間アニーリングしたヒドロゲルの両方が、アニーリングの後、同じ程度に再水和されたが、「ゲル化した時の」重量の−35%に過ぎなかった。他方、50%PEG400脱水和した比較用試料(緩アニーリングしなかった)の食塩水中再水和は、はるかに高い平衡再水和レベルを示した。
【0249】
緩アニーリング処理の後、ヒドロゲル試料の表面が残留PEGで僅かに濡れていることが分かった。したがって、緩アニーリングの際のさらなる脱膨潤には、PEGの損失ならびに水の損失が含まれる。
【0250】
PEG脱水和後のアニーリングは、ヒドロゲル充填材の製造に使用できる。平衡再水和レベルは、アニーリング工程の前に使用するPEG溶液の濃度に基づいて適切に調整することができる。
【0251】
【表16】
【0252】
表16は、ゲル化した時の試料の、上記の様々な処理工程の後の平衡含水量(EWC)を示す。PEG400脱水和により、EWCが僅かに増加した。遅い、および短時間アニーリングの両方が、PEG400脱水和した試料のEWCをさらに減少させた。脱水和工程の際に使用したPEG400溶液の濃度は、続いて再水和させた、またはアニーリングし、次いで再水和したゲルのEWCに影響しなかった。
【0253】
15.5サイクルの凍結融解PVA/PEGヒドロゲルの脱水和および再水和
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=115,000)30グラムを、冷脱イオン水170グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリ(エチレングリコール)(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0254】
高温PEG(約90℃で)52.88グラムを、高温(約90℃で)PVA溶液160グラムと、加熱しながら機械的に攪拌することにより、徐々に混合した。次いで、混合物溶液を高温型(高さ7mm×深さ25mm×幅45mm)の中に注ぎ込み、カバーで密封し、ヒドロゲルシートを形成した。次いで、この型を直ちに−17℃の冷凍機の中に16時間入れ、取り出し、室温で8時間融解させた。これを1「凍結融解(FT)」サイクルとする。この凍結融解処理を5サイクルまで繰り返し、5サイクル凍結融解PVA/PEGヒドロゲルを形成した。ヒドロゲルシートを型から取りだした後、冠状鋸刃(直径6.5mm)を使用して円筒形試料に切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定し、「凍結融解した」基準とした。この段階では、ヒドロゲル試料がPVA、PEG、および水を含むことに注意する。
【0255】
PEG脱水和した群
凍結融解処理した円筒形ヒドロゲル試料のいくつかを100%PEG400液中に、攪拌しながら室温で7日間浸漬した。100%PEG中に浸漬することにより、ヒドロゲルから水が除去された。7日間のPEG400浸漬に続いて、これらの試料を、すでに160℃に加熱した加熱炉中に1時間入れることにより、窒素中、160℃でアニーリングした(短時間アニーリング)。次いで、アニーリングした試料を、平衡再水和に達するまで、室温で食塩水溶液中に入れた。PEG400処理したヒドロゲル試料のいくつかを、アニーリングせずに、食塩水溶液中に入れて再水和させた。
【0256】
真空脱水和した群
凍結融解処理した円筒形ヒドロゲル試料のいくつかを真空中、室温で7日間脱水和した。真空脱水和により、ヒドロゲル試料が脱水和された。7日間の真空脱水和に続いて、これらの試料を、短時間アニーリングにより、さらに脱水和した。次いで、アニーリングした試料を、平衡再水和に達するまで、室温で食塩水溶液中に入れた。真空処理したヒドロゲル試料のいくつかを、アニーリングせずに、食塩水溶液中に入れて再水和させた。
【0257】
PEG脱水和および真空脱水和した試料群の両方に対して、アニーリングの前および後のゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。同様に、試料を食塩水溶液中に攪拌しながら室温で浸漬し、ヒドロゲルの再水和およびPEG除去を行った。浸漬中、毎日、食塩水溶液を新しい食塩水と交換した。ゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を、毎日、液をぬぐい取った後に記録した。PEG脱水和、アニーリングおよびそれに続く食塩水中再水和の後、ヒドロゲルの重量%変化を、「凍結融解させた時の」状態に対して計算した。
【0258】
凍結融解した時のゲルは、食塩水溶液中で約29%膨潤した。この膨潤は、ゲルと食塩水溶液との間でPEG/水が交換された結果であろう。凍結融解した時のゲルは、PEG中に浸漬した、または真空中に入れた時に、それぞれ約−21%および−60%脱膨潤した。脱膨潤の程度は、PEG中よりも、真空中の方がはるかに大きかった。脱膨潤したゲルを食塩水中に入れて再水和させた時、PEGおよび真空脱水和した試料の平衡重量は、凍結融解した時の重量から、それぞれ27および36%変化した。短時間アニーリングは、真空脱水和後のゲル重量に影響しなかったが、PEG脱水和されたゲルは、それらの凍結融解した時の重量から、−43%脱膨潤した。短時間アニーリングに続く平衡再水和により、PEG脱水和された試料は、真空脱水和された試料より、凍結融解した時の重量に関して、より大きい収縮(約−16%)を示した。したがって、短時間アニーリングを凍結融解処理したPVA/PEGゲルで使用する場合、真空脱水和よりもPEG脱水和により、より緻密なヒドロゲルを得ることができる。これらの、より緻密なゲルは、緻密でないゲルよりも、靱性も高かった。
【0259】
16.5サイクルの凍結融解15%PVAヒドロゲルの脱水和および再水和
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=115,000)30グラムを、冷脱イオン水170グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。
【0260】
高温PVA溶液を高温型(高さ7mm×深さ25mm×幅45mm)の中に注ぎ込み、カバーで密封し、ヒドロゲルシートを形成した。次いで、この型を直ちに−17℃の冷凍機の中に16時間入れ、取り出し、室温で8時間融解させた。これを1「凍結融解(FT)」サイクルとする。この凍結融解処理を5サイクルまで繰り返し、5サイクル凍結融解15%PVAヒドロゲルを形成した。ヒドロゲルシートを型から取りだした後、冠状鋸刃(直径6.5mm)を使用して円筒形試料に切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定し、「凍結融解した時の」基準とした。
【0261】
【表17】
* 各工程におけるヒドロゲルの総重量%変化は、「凍結融解した時の」重量に対して計算した。(−)の記号は、本来の「凍結融解した時の」状態からの脱膨潤(重量損失)を表すのに対し、(+)の記号は、「凍結融解した時の」状態からの膨潤(重量増加)を表す。固体含有量または平衡含水量は、下記の例と比較するのに必要である(HSB)。
【0262】
PEG脱水和した群
凍結融解処理した円筒形ヒドロゲル試料のいくつかを100%PEG400液中に、攪拌しながら室温で7日間浸漬した。100%PEG中に浸漬することにより、ヒドロゲルから水が除去された。7日間のPEG400浸漬に続いて、これらの試料を、すでに160℃に加熱した加熱炉中に1時間入れることにより、窒素中、160℃でアニーリングした(短時間アニーリング)。次いで、アニーリングした試料を、平衡再水和に達するまで、室温で食塩水溶液中に入れた。PEG400処理したヒドロゲル試料のいくつかを、アニーリングせずに、食塩水溶液中に入れて再水和させた。
【0263】
真空脱水和した群
凍結融解処理した円筒形ヒドロゲル試料のいくつかを真空中、室温で7日間脱水和した。真空脱水和により、ヒドロゲル試料が脱水和された。7日間の真空脱水和に続いて、これらの試料を、短時間アニーリングにより、さらに脱水和した。次いで、アニーリングした試料を、平衡再水和に達するまで、室温で食塩水溶液中に入れた。真空処理したヒドロゲル試料のいくつかを、アニーリングせずに、食塩水溶液中に入れて再水和させた。
【0264】
PEG脱水和および真空脱水和した試料群の両方に対して、アニーリング前後のゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。同様に、試料を食塩水溶液中に攪拌しながら室温で浸漬し、ヒドロゲルの再水和およびPEG除去を行った。浸漬中、毎日、食塩水溶液を新しい食塩水と交換した。ゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を、毎日、液をぬぐい取った後に記録した。PEG脱水和、アニーリングおよびそれに続く食塩水中再水和の後、ヒドロゲルの重量%変化を、「凍結融解させた時の」状態に対して計算した。
【0265】
【表18】
* 各工程におけるヒドロゲルの総重量%変化は、「凍結融解した時の」重量に対して計算した。(−)の記号は、本来の「凍結融解した時の」状態からの脱膨潤(重量損失)を表すのに対し、(+)の記号は、「凍結融解した時の」状態からの膨潤(重量増加)を表す。
【0266】
凍結融解した時のゲルは、食塩水溶液中で約−16%脱膨潤した。この脱膨潤は、ゲルの硬化が続行した結果であると思われ、硬化は、ゲルの架橋密度を増加させ、水を追い出すことができる。凍結融解した時のゲルは、PEG中に浸漬した、または真空中に入れた時に、それぞれ約−75%および−81%脱膨潤した。脱膨潤の程度は、PEG中よりも、真空中の方がはるかに大きかった。脱膨潤したゲルを食塩水中に入れて再水和させた時、PEGおよび真空脱水和した試料の平衡重量は、凍結融解した時の重量から、それぞれ−31および−49%変化した。短時間アニーリングは、使用した2種類の脱水和方法のどちらの後でも、ゲル重量に影響しなかった。短時間アニーリングに続く平衡再水和により、PEG脱水和された試料は、真空脱水和された試料より、凍結融解した時の重量に関して、かなり大きい収縮(約−63%)を示し、事実、それらの凍結融解した時の重量に対して重量増加(約2%)を示した。したがって、短時間アニーリングを凍結融解処理したPVAゲルで使用する場合、真空脱水和よりもPEG脱水和により、より緻密なヒドロゲルを得ることができる。これらの、より緻密なゲルは、緻密でないゲルよりも、靱性も高かった。
【0267】
17.PVAヒドロゲルの二軸圧縮に対するPEG存在の影響
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=115,000)30グラムを、冷脱イオン水170グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリ(エチレングリコール)(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0268】
高温PEG(約90℃で)52.88グラムを、高温(約90℃で)PVA溶液160グラムと、加熱しながら機械的に攪拌することにより、徐々に混合した。次いで、混合物溶液を長方形プリズム形状の高温(約90℃)型(40mm×45mm×50mm)の中に注ぎ込んだ。型を、断熱性毛布の下で放置し、24時間かけて室温に冷却した。このようにして、2個のゲルブロックを製造し、それぞれの重量を記録した。
【0269】
ゲルブロックの一方を、その「ゲル化した時の」、したがって、PEGを含む状態で使用した。もう一つのゲルブロックを、先ず食塩水溶液中に攪拌しながら浸漬してPEGを除去し、1日かけて平衡再水和に到達させた。このブロックを「脱PEG化した」ゲルと呼ぶ。脱PEG化したゲルブロックの重量を測定した。次いで、2個のブロックを単軸圧縮下で変形加工した。
【0270】
次いで、ゲルブロックを、MTS機械(MiniBionix)に取り付けた2個の平らなプラテン間に配置することにより、個別に変形加工した。変形加工は、単軸方向であった。圧縮は、0.2mm/分の速度で、圧縮比(最初と最後の高さの比)10に達するまで進行させた。圧縮比10に達した時、その変位を、平衡応力緩和に達するまで、少なくとも24時間一定に保持した。変形加工した両方のゲルを秤量した。単軸圧縮の後、両方の変形加工したゲルを、平衡再水和に達するまで、食塩水溶液中に浸漬した。ゲルを、その再水和された状態で再度秤量した。ゲルの、「ゲル化した時の」状態からの重量%変化を、様々な処理工程で計算した。
【0271】
単軸圧縮が完了した時、長方形プリズム形状の「ゲル化した時の」ヒドロゲル試料の寸法が、そのゲル化した時の形態における長さ41.83mm、幅47.37mmおよび高さ49.75mmから、長さ88.29mm、幅98.74mm、および高さ6.4mmに変化した。脱PEG化したヒドロゲルの場合、試料寸法は、脱PEG化した状態における長さ43.49mm、幅50.01mm、および高さ53.03mmから、変形加工工程に続く長さ93.17mm、幅97.78mm、および高さ6.71mmに変化した。
【0272】
変形加工したゲルを食塩水中で再水和させた時、PEGの存在下で圧縮された「ゲル化した時の」試料は、PEGの非存在下で「脱PEG化した」試料よりも、多くの異方性再膨潤を示した。
【0273】
【表19】
* 各工程におけるヒドロゲルの総重量%変化は、「ゲル化した時の」重量に対して計算した。(−)の記号は、本来の「ゲル化した時の」状態からの脱膨潤(重量損失)を表すのに対し、(+)の記号は、「ゲル化した時の」状態からの膨潤(重量増加)を表す。
【0274】
表19は、製造の様々な工程におけるゲルの重量%変化を示す。脱PEG化したゲルは、脱PEG化処理の際に重量が約13%増加しているが、これは、ゲル中の水/PEG交換およびPEGの非存在下でさらに膨潤すること、および水吸収の増加によるものであろう。単軸圧縮は、ゲル試料中で重量損失を誘発するが、これは、ゲルから水および/またはPEGが溶出することに帰せられる。重量損失は、ゲル化した時のゲルよりも、より多くの水を含む脱PEG化されたゲルの方が大きく、これは、変形加工の際に追い出される主要成分が水であることを示している。その後の食塩水溶液中における再水和に続いて、ゲル化した時のゲルは、そのゲル化した時の状態から全体で8%の重量損失を示し、対照的に、脱PEG化した試料では50%損失である。したがって、変形加工を大型分子、例えばPEG(400g/モル)、の存在下で行う場合、そのゲルは、大型分子の非存在下で変形加工した場合よりも、より高い水和容量を有する。大型分子は、変形加工の際にゲルの多孔質構造中に残り、構造の崩壊を阻止し、その結果、大きなひずみ塑性変形加工の後でも、これらの保護された細孔中への水吸収が可能になると推測される。他方、大型分子が存在しない場合、変形加工の際に水が細孔から絞り出され、細孔が崩壊する。その後の再水和の際に、水吸収に利用できる細孔の数が減少しているために、変形加工されたゲルの再水和能力は大きく低下する。
【0275】
上記の他の例では、大型分子が高温アニーリングの際に細孔を崩壊から保護し、ゲルの再水和容量が改良されることも示されている。
【0276】
PEGのような大型分子を含むヒドロゲルから出発するか、またはヒドロゲルに大型分子を含浸させ、その、あらゆる種類の変形加工に続く再水和容量を改良することができる。これは、延伸されたヒドロゲルにおける含水量を最大限にする必要がある場合に、特に有用である。
【0277】
18.凍結融解の際の、PEG存在の影響
PVAを脱イオン水に連続的に攪拌しながら90℃で溶解させることにより、15%PVA溶液を調製した。得られた溶液を遠心分離して気泡を除去し、加熱し、約90℃に維持した長方形のガラス製の型(45mm×70mm×7mm)の中に注ぎ込んだ。この型を、90℃に維持したガラス製カバーで覆い、その型を、やはり90℃に維持した2個の厚さ20mmのステンレス鋼製ブロックの間に挟んだ。この挟んだ型を直ちに−20℃の冷凍機の中に入れ、そこに16時間保持し、1冷凍サイクルとした。続いて、挟んだ型を冷凍機から取り出し、第一融解サイクルの間、放置して室温に温めた。凍結および融解をさらに4回繰り返し、合計で5回の凍結融解サイクルにかけた。これらのゲルをFT−PVAと呼ぶ。
【0278】
この5サイクル凍結融解方法を、PEG含有PVA出発溶液で行った。高温15−28PVA/PEGゲル化溶液を、例1に記載するようにして調製した。得られた溶液を上記のように処理し、5回凍結融解処理したPVA/PEGヒドロゲルを得た。これらのゲルをFT−PVA/PEGと呼ぶ。
【0279】
両方の凍結融解ゲルを、それぞれ30個(合計60個)の円筒形試料に6.5mm冠状鋸刃で切断した。これらの試料を、食塩水(水中0.9%NaCl)を含む個別の容器中で浸漬し、5xFT15%PVAゲルの溶解挙動を試験した。10日間にわたって、両群の3個の試料を規則的な間隔で食塩水から取り出し、重量測定により確認して平衡脱水和に達するまで、90℃の空気対流式加熱炉中に入れた。固体含有量(PVA凍結融解ゲルではPVAのみ、PVA/PEG凍結融解ゲルではPVAとPEG)を、重量測定により、ヒドロゲルの乾燥重量をその水和された重量で割ることにより、求めた。
【0280】
FT−PVAの再水和能力に対する真空脱水和持続時間の影響も調査した。6個の円筒形FT−PVA試料を室温で真空中に入れた。1日後に3個の試料を、残りの3個を5日後に真空から取り出した。全ての試料を真空脱水和の直後に食塩水中に浸漬し、重量測定により確認して平衡再水和に到達させた。FT−PVA/PEGヒドロゲル試料は、5日間の真空脱水和とそれに続く再水和のみ実施した。
【0281】
さらに、FT−PVAおよびFT−PVA/PEGに対するアニーリングの影響を試験した。各FT−PVAおよびFT−PVA/PEGの3個の円筒形試料を、先ず真空下、室温で5日間脱水和し、続いて、すでに160℃に加熱した加熱炉中に1時間入れることにより、窒素雰囲気下でアニーリングした(短時間アニーリング)。試料の重量変化を、真空脱水和の後、およびアニーリングの後に再度測定した。アニーリングに続いて、全ての試料を食塩水中で少なくとも5日間再水和させた。最後に、これらの試料の平衡含水量(EWC)を、例2に記載する方法により測定した。
【0282】
【表20】
【0283】
【表21】
【0284】
水和したFT−PVAの平均重量は、食塩水中で貯蔵する間に減少した。これは、以前はPVAが食塩水中に溶解したためと考えられていた。しかし、PVA含有量測定は、10日間の間に測定可能な変化を示さず、FT−PVAゲルが食塩水貯蔵中に硬化、すなわち結晶化し続けたことを示唆しており、そのために、水を追い出し、重量が失われたように見えるのであろう。他方、FT−PVA/PEGゲルは、食塩水貯蔵中に重量増加を示した。食塩水貯蔵中に、PEGが試料から外に拡散し、水が試料の中に拡散すると予想される。恐らく、水の吸収はPEG損失より大きく、そのためにFT−PVA/PEG試料における見掛け上の重量増加になったのであろう。
【0285】
表20〜21は、様々な処理工程の後の重量変化を示す。真空の持続時間は、ゲルの脱水和程度にあまり影響せず、これらのサイズの試料で平衡に達するのに、1日の真空脱水和で十分であることを示している。短時間アニーリングは、真空脱水和したゲルの重量に影響しなかった。FT−PVA/PEGゲルは、FT−PVAよりも、真空脱水和による重量損失が小さい。同じことが、その後に続く短時間アニーリング工程にも当てはまる。FT−PVA/PEGゲルは、FT−PVAゲルよりも、大きく再水和された。真空脱水和、短時間アニーリング、および再水和させたFT−PVA/PEGのEWCは、FT−PVAのそれよりも高かった。FT−PVA/PEGの、脱PEG化および食塩水中再水和後のEWCは、86%であり、真空脱水和とそれに続く短時間アニーリングにより、FT−PVA/PEGのEWCは83%に低下しただけであった。FT−PVAのEWCは81%であり、真空脱水和とそれに続くアニーリングにより、48%に低下し、非常に強靱で、弾性の透明ゲルを形成した。
【0286】
19.PEG脱水和されたPVA/PEGゲルの、75%単軸圧縮への変形加工
PVA/PEGゲルを例1に記載するようにして円筒形状で調製し、約90℃に維持した高温型(直径44mm×高さ40mm)の中に注ぎ込んだ。この型を絶縁毛布の下で室温に冷却し、ゲル化した時のヒドロゲルを形成した。このヒドロゲルを型から取り出し、100%PEG中に攪拌しながら入れ、3時間脱水和してから変形加工した。続いて、このヒドロゲルをCarver Hydraulic Press中で変形加工した。ゲルの初期高さは37mmであり、変形加工後の最終ゲル高さは5mmであった。変形加工工程の後、ゲルを100%PEG中に攪拌しながら24時間浸漬し、続いて食塩水溶液中で攪拌しながら再水和させた。再水和の後、変形加工したゲル試料の最終的なゲル高さは約10mmであった。ゲル化した時の状態における初期ゲル高さと、変形加工後の再水和に続く最終ゲル高さの総変形加工比は約75%であった。
【0287】
20.変形加工により改良された面内剛性
例19で調製した変形加工されたゲルを、MTS機械を使用して試験し、その圧縮変形加工挙動を変形加工していない比較用ゲルと比較して確認した。75%変形加工したゲル試料の厚さは約10mmであった。比較用ゲル試料は、高温15/28PVA/PEG混合物溶液を型の中でゲル化させることにより調製し、厚さ10mmのシートを得た。変形加工したゲルと変形加工していないゲルの両方を切断し、正方形のブロックの形状を有する試験試料(16mm×17mm×10mm)を得た。これらの試験試料を37℃の食塩水中に1日間入れ、次いで個別にMTS機械上で試験した。試験試料を2個の平らな金属製プラテン間に配置し、10mm/分の速度で圧縮した。一定の変形速度を維持するのに必要な負荷は、変位の関数として得た。
【0288】
図18は、変形加工した、および変形加工していない試験試料の負荷変位挙動を示す。変形加工した試験試料は、変形加工していない試験試料よりも、剛性がより高い変形加工挙動を示した。特定の負荷レベルで、変形加工していない比較用ヒドロゲルは、予め変形加工したヒドロゲルよりも、かなり高い変位を示した。永久的変形加工を加えることにより、あらゆるヒドロゲルの剛性を増加させることができる。変形加工レベルが高い程、剛性を高くすることができる。
【0289】
21.ヒドロゲルのクリープ挙動
上記の例から得たヒドロゲル試料を直径16mmの冠状鋸で機械加工し、食塩水中、40℃で少なくとも24時間平衡化させてから、クリープ試験を開始した。ここに含めた例のいくつかは、冠状鋸機械加工の前に照射した。照射の前に、ヒドロゲルシートを食塩水中に入れ、食塩水溶液中で照射した。照射は、2.5MeVのVan de Graaf発生器を使用して行った。25kGyまたは100kGy放射線量をヒドロゲルシートに作用させた。冠状鋸機械加工は、照射の後に行い、クリープ試料を調製した。
【0290】
ヒドロゲルクリープ試験は、MTS(Eden Prairie, MN)858 Mini Bionixサーボ油圧機械で行った。直径約16mm、高さ5〜10mmの円筒形ヒドロゲル試料をステンレス鋼製圧縮板の間に配置して試験した。試験開始の前に、上側および下側圧縮板を一つに合わせ、この位置でLVDT変位をゼロにした。試料を下側板上に載せた後、上側板を、クリープ試料の上表面と接触するまで下降させた。MTS上のLVDTからの読みを試料の高さとして記録した。
【0291】
【表22】
【0292】
圧縮負荷は、最初に50N/分の速度でクリープ負荷100Nに増加させた。この負荷を10時間維持した。続いて負荷を50N/分の速度で、回復負荷10Nに減少させた。この負荷も10時間一定に保持した。加負荷および負荷除去サイクルの間、2秒間毎に時間、変位および負荷の値を記録した。データを圧縮ひずみ vs. 時間としてプロットし、上記の様々なヒドロゲル処方物のクリープ挙動を比較した(図19参照)。
【0293】
本例では、PVAヒドロゲルのクリープ耐性を多くの方法で改良できることが立証される。例えば、放射線架橋がPVAヒドロゲルのクリープ耐性を増加した。同様に、チャネル−ダイにより予め加えた永久的変形がPVAヒドロゲルのクリープ耐性を増加させた。真空脱水和に続くアニーリングの影響もクリープ耐性を増加させた。これらの方法の多くを、多くの組合せで使用し、ヒドロゲルのクリープ耐性を適切に調整することができる。
【0294】
22.クリープ耐性に対する複数の加負荷/負荷除去の影響
本例においては、2個のヒドロゲル試料を使用した。一方の試料は、脱PEG化し、食塩水溶液中で平衡化させた15/28PVA/PEGゲルである(例1)。他方の試料は、先ず脱PEG化し、次いでチャネル−ダイ中で圧縮比10に変形加工し、続いて100%PEG400中で脱水和し、最後に食塩水溶液中で平衡化させた15/28PVA/PEGゲルである。両方のシートは、厚さが約10mmであった。
【0295】
脱PEG化したヒドロゲルシートを16mm冠状鋸で機械加工し、円筒形試験試料を得た。この試験試料は、試験の前に、40℃の食塩水中に少なくとも24時間入れた。続いて、円筒形試験試料をMTS機械の2個の金属板の間に入れ、40℃の食塩水中に浸漬した。MTS機械により100Nの一定負荷を10時間作用させ、続いて負荷を10Nに下げ、10Nの一定負荷をさらに10時間維持した。この全サイクルが1回の加負荷/負荷除去サイクルを構成し、例21に記載するサイクルと同一である。この加負荷/負荷除去サイクルを3回繰り返した。加負荷/負荷除去サイクルの間、円筒形ヒドロゲルの変形程度をMTS機械上で時間との関係で測定した。
【0296】
図20は、3回の加負荷/負荷除去サイクルの際の圧縮ひずみと時間の関係を示す。最初の加負荷サイクルの際、100Nの負荷をかけた時、大きな弾性変形約59.5%があった。これに続いて、10時間の一定負荷中に粘弾性変形があり、総変形レベルが77.4%に達した。10時間の完了後、負荷を10Nに減少した時、弾性回復13.4%があり、全体的な変形が約64%になった。その後の10時間負荷除去サイクルでは、クリープ変形にほとんど回復は無かった。
【0297】
多サイクルの加負荷/負荷除去を使用してヒドロゲル試料をクリープ処理し、それらのクリープ耐性を増加させた。加負荷および負荷除去サイクルを繰り返すと、その後の加負荷サイクルの際のクリープ変形程度が減少し、材料のクリープ耐性が増加したことを示している。この方法を使用し、挿入機器における用途向けヒドロゲルのクリープ耐性を改良することができる。例えば、大きなヒドロゲルブロックを、2個のある形状を有する金属板同士の間で複数回の加負荷/負荷除去サイクルで変形させ、クリープ耐性が改良された、最終的な形状に近い充填材を得ることができる。あるいは、大きなヒドロゲルブロックを、2個の金属板同士の間で、複数回の加負荷/負荷除去サイクルにかけて変形させ、そのクリープ耐性を改良することができる。次いで、変形加工したヒドロゲルを、所望の充填材の形状に機械加工することができる。この充填材を包装し、滅菌することができる。
【0298】
上記の複数回の加負荷/負荷除去を、最初に脱PEG化した15/28PVA/PEGゲルに繰り返し、次いでチャネル−ダイ中で圧縮比10に変形加工し、続いて100%PEG400中で脱水和し、最後に食塩水溶液中で平衡化した。それぞれの持続時間を短くした(加負荷5時間および負荷除去5時間)以外は、加負荷/負荷除去サイクルは等しかった。この試料も、加負荷/負荷除去サイクル数の増加と共に、クリープ耐性の増加を示した(図21)。
【0299】
ポリビニルアルコール医療用装置の包装および滅菌
本例に記載するゲル医療用装置を食塩水溶液中で包装し、滅菌した。滅菌は、ガンマ線により行った。いくつかの実施態様においては、ガンマ線滅菌を、包装した装置の滅菌およびゲル医療用装置の架橋の両方に使用した。高架橋密度が望ましい場合、より高い放射線量(40kGyを超える)を使用した。
【0300】
また、ゲル医療用装置をクリーンルーム中で無菌成分から製造し、無菌の食塩水溶液中に包装した。したがって、さらなる滅菌は必要無い。
【0301】
また、ゲル医療用装置をガス透過性包装物中に包装し、ガスプラズマまたはエチレンオキシドを使用して滅菌し、続いてクリーンルーム中で無菌の食塩水溶液中に包装し、出荷する。
上記の別の包装方法で使用する食塩水溶液を、100%PEGまたはPEG/水混合物で置き換え、ゲル医療用装置中に様々な脱水和レベルを達成することができる。ゲル医療用装置は、完全な、または部分的な脱水和状態で出荷することができる。体内に挿入した後で再水和が起こり、ゲル医療用装置が膨潤し、それを配置する空間(例えば膝関節、股関節、肩関節、等)を部分的または完全に充填する。
【0302】
説明、具体例およびデータは、代表的な実施態様を示しているが、例示のために記載したのであり、本発明を制限するものではない。本明細書に含まれる考察、開示およびデータから、当業者には本発明の種々の変形および修正が明らかであり、したがって、本発明の一部であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0303】
【図1】人体により加えられる軸方向負荷により負荷を受ける挿入物装置を示す典型的な人関節である。
【図2】関節中の空隙欠損およびヒドロゲル充填を示す。
【図3】ヒドロゲルの単軸変形加工を示す。
【図4】ヒドロゲルを変形加工し、6個の等しい断片に切断し、その中の1個を示す。変形加工されたヒドロゲルは、中央の厚さが8mmである。ゲルの押出により引き起こされる「ピザ皮」形状の周辺部にも注意する。
【図5】15/28PVA−PEGゲルに対する溶剤脱水和を示す。白抜き記号は、各媒体中に浸漬している間に記録したデータであり、黒地記号は、その後の食塩水中に浸漬している間に記録したデータである。
【図6】(A)ヒドロゲルを、一方向圧縮用にチャネルダイの内側に入れたものである。(B)圧縮前に、プランジャーをダイ中にヒドロゲルと接触して挿入したものである。(C)チャネル内側のヒドロゲルを圧縮し、応力緩和が平衡に達するまで、変位を保持したものである。
【図7】右側は、変形加工前のヒドロゲルプリズムであり、左側は、代表的なチャネル−ダイ変形加工したヒドロゲルプリズムである(これは、左側に示す変形加工前のヒドロゲルと同じ寸法を有する)。
【図8】厚さ7mmの試料に関する、左側の「ゲル化した状態」と、右側の、真空脱水和後の脱PEG処理した試料の外観の違いを示す。
【図9】左から順に、「ゲル化した状態」のヒドロゲル、続いて真空脱水和した「ゲル化した状態」のヒドロゲル、脱PEG処理6日間後の「ゲル化した状態」のヒドロゲル、真空脱水和した、脱PEG処理したヒドロゲル、における厚さ21mmのヒドロゲルを示す。全ての試料は、もとを同サイズとした。
【図10】(A)変形加工したPVA/PEGゲルの、ある形状を有する型の間に挟んだ追加変形加工を示す。変形加工の最後に、型の2個の部分が互いに接触していることに注意する。型からはみ出した過剰のヒドロゲルは廃棄した。(B)ある形状を有する型および変形加工され、型の形状に一致する最終的な形状を有するヒドロゲルを示す。
【図11】「ゲル化した状態」のヒドロゲル試料の、100%PEG400浸漬中の重量損失を示す。24時間未満で平衡脱水和に達していることに注意する。
【図12】ウシの膝軟骨にドリル加工した円筒形欠損空隙の上面光学顕微鏡写真である。
【図13】空隙中に挿入するために100%PEG400中で部分的に脱水和した円筒形ヒドロゲルプラグの光学顕微鏡写真であり、ヒドロゲルプラグの(A)上面図、(B)底面図および(C)側面図を示す。
【図14】部分的に脱水和したヒドロゲルプラグの、ウシの膝軟骨の円筒形欠損空隙中に挿入した状態の光学顕微鏡写真、(A)上面図および(B)側面図を示す。
【図15】円筒形欠損空隙中に挿入したヒドロゲルプラグの、POD実行前に血清中で1時間再水和した後の、光学顕微鏡写真、(A)上面図、(B)斜めにした上面図および(C)側面図を示す。挿入されたヒドロゲルプラグの直径および高さが、図14と比較して増加していることに注意する。
【図16】円筒形欠損空隙中に挿入したヒドロゲルプラグの、80,000サイクルPOD実行時点における光学顕微鏡写真、(A)上面、(B)斜めにした上面および(C)側面を示す。
【図17】円筒形欠損空隙中に挿入したヒドロゲルプラグの、160,000サイクルPOD実行時点における光学顕微鏡写真、(A)上面、(B)斜めにした上面および(C)側面を示す。
【図18】脱PEG化PVA/PEGゲルおよび75%単軸変形加工にかけた脱PEG化PVA/PEGゲルに関する負荷対変位曲線を示す。
【図19】クリープ挙動を、それぞれ10時間の負荷作用および負荷除去サイクルに関するひずみ対時間のプロットで示す。試料番号は、表22から参照できる。試料2、8および13は、10時間の負荷除去サイクルの終了前に停止した。
【図20】脱PEG化し、食塩水溶液中で平衡化した15−28PVA/PEGゲルに対する、複数のクリープ変形加工および回復サイクルの際の、圧縮ひずみの時間変化を示す。
【図21】先ず脱PEG化し、次いでチャネル−ダイ中で圧縮比10に変形加工し、続いて100%PEG中で脱水和した15−28PVA/PEGゲルに対する、複数のクリープ変形加工および回復サイクルの際の、圧縮ひずみの時間変化を示す。
【関連出願】
【0001】
本願は、2005年6月6日提出の米国仮出願第60/687,317号および2005年7月26日提出の米国仮出願第60/702,279号(これら全文は引用することにより本願明細書の開示の一部とされる)に対して優先権を主張する。
【発明の分野】
【0002】
本発明は、靱性ヒドロゲルの加工、靱性ヒドロゲル含有組成物、ならびに、加工された靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物の製造方法に関する。本発明は、加工された靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物の必要とする患者の処置における使用にも関する。
【発明の背景】
【0003】
ヒドロゲルは、人または動物における合成関節軟骨置換機器等の用途に用いられる生物材料の候補である。ヒドロゲルは、親水性の重合体状構造であり、高濃度の水を含む。典型的には、ヒドロゲルは、生物相容性、低摩擦係数、および高含水量の望ましい特性を有する。しかしながら、ヒドロゲルは、体にある関節のほとんどに存在する高負荷を支持するのに必要な機械的特性が不足している場合が多い。例えば、膝における軸方向負荷は、患者の体重の3〜5倍の高さにまで達することがある。そのような負荷の下で、関節軟骨の機能を置き換えるヒドロゲル材料は、その形状および機能を長期間維持することが期待される。人関節の機械的サイクル負荷および接合状態に耐えるためにヒドロゲル材料から期待される必要条件には、対向する軟骨表面の高剛性、高強度、高靱性、高耐摩耗性、および/または低摩擦係数が挙げられる。
【0004】
関節軟骨置換用途に使用できるヒドロゲル系は、人関節の高い負荷に耐えるのに必要な機械的強度を有していない場合が多い。以下に記載する各種の脱水和および変形加工方法を組み合わせて併用し、ヒドロゲルの特性を改良することができる。
【0005】
ヒドロゲルの溶剤脱水和は、Bao(米国特許第5,705,780号)により開示されている。Baoは、PVAヒドロゲルを、エタノール/水混合物等の溶剤中に室温で浸漬し、形状の歪みを起こさせずにPVAヒドロゲルを脱水和する方法を記載している。
【0006】
HyonおよびIkada(米国特許第4,663,358号)およびBao(米国特許第5,705,780号)は、水と有機溶剤との混合物を使用してPVA粉末を溶解させ、続いてその溶液を室温未満に冷却し、室温に再加熱して、ヒドロゲルを形成する方法を記載している。次いで、ヒドロゲルを水中に浸漬して有機溶剤を除去する。HyonおよびIkadaは、PVA粉末を溶解させるための溶剤として水のみを使用する凍結融解方法により形成されたヒドロゲルとは対象的に、上記のようにして形成されたPVAヒドロゲルが透明であることを特許請求の範囲に記載している。
【0007】
Bao(米国特許第5,522,898号)は、空気脱水和、真空脱水和、または部分湿度脱水和を使用して脱水和速度を制御し、PVAヒドロゲルの形状歪みを防止し、髄核を置換するための補欠脊椎装置として使用する、脱水和方法を記載している。Baoの出発ゲルは、米国特許第5,705,780号に記載されている凍結融解ゲルである。
【0008】
Kuら(米国特許第5,981,826号)は、PVA水溶液に対して凍結融解を実施し、続いて水中に浸漬し、水中に浸漬しながらさらに凍結融解サイクルを実施することにより、PVAヒドロゲルを形成する凍結融解方法を記載している。
【0009】
しかしながら、この分野においては、今まで、機械的強度を必要とする関節軟骨置換用途向けの、人関節の高負荷に耐えられる靱性ヒドロゲルは得られていない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、一般的には靱性ヒドロゲル、靱性ヒドロゲル含有組成物、ならびに靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物の製造方法に関する。本発明は、靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物を必要とする患者の処置(例えば人関節の高負荷に耐えるのに必要な機械的強度に適合する関節軟骨置換用途)に使用する方法にも関する。
【0011】
本発明の一態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、前記ヒドロゲルを、前記ヒドロゲルの融点より低いか、または高い温度に加熱すること、および前記加熱されたヒドロゲルを室温に冷却することを含んでなる、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靱性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶媒に不溶な重合体を含んでなり、前記溶媒が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させること、を含んでなる、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0013】
本発明の別の態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および前記ヒドロゲルに対して少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施し、前記ヒドロゲルを室温に温めることを含んでなる、ヒドロゲル試料が脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0014】
本発明の別の態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、前記ヒドロゲルを前記ヒドロゲルの融点よりも低いまたは高い温度に加熱すること、および前記加熱されたヒドロゲルを室温に冷却することを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものである、方法を提供する。
【0015】
本発明の別の態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させることを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものである、方法を提供する。
【0016】
本発明の別の態様は、ヒドロゲルを有機溶剤と接触させこと、および前記ヒドロゲルに対して少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施し、前記ヒドロゲルを室温に温めることを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものである、方法を提供する。
【0017】
本発明の別の態様は、PVA粉末である重合体材料を用意すること、前記重合体状材料を水および/またはPEGと混合して溶液を形成すること、前記溶液に対して、少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施して、ヒドロゲルを形成すること、および前記ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工して、靱性ヒドロゲルを形成すること、を含んでなることを特徴とする、靱性ヒドロゲルの製造方法を提供する。
【0018】
本発明の別の態様は、PVA粉末である重合体材料を用意すること、前記重合体材料を水および/またはPEGと、室温より高い温度で混合して、溶液を形成すること、前記溶液を常温に冷却して、ヒドロゲルまたはヒドロゲル粒子を形成すること、および前記ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工して、靱性ヒドロゲルを形成すること、を含んでなることを特徴とする、靭性ヒドロゲルの製造方法を提供する。
【0019】
本発明の別の態様は、前記ヒドロゲルがPVAまたはヒドロゲル粒子を含んでなり、前記ヒドロゲルが水および/または一種以上の他の成分を含んでなる、上記の方法を提供する。前記成分は、PVA、PEG、および/または塩、プロテオグリカン、水溶性重合体、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミンであり、前記成分は、部分的または完全に水溶性である。
【0020】
別の態様においては、前記成分がPEGであり、前記PEGが、水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または好適な溶剤の溶液中にある。
【0021】
別の態様においては、前記成分が不揮発性である。
【0022】
別の態様においては、前記成分が、少なくとも部分的に水と混和し得るものである。
【0023】
別の態様においては、前記成分が、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、およびアミノ酸、分子量が異なるPEG、または分子量が異なるPEGのブレンドである。
【0024】
別の態様においては、水と混和し得る重合体が、PEO、プルロニック(Pluronic)、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、多糖、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸(keratin sulfate)、またはデキストラン硫酸である。
【0025】
別の態様においては、ヒドロゲルの重量の少なくとも0.1%が一種以上の不揮発性成分を構成する。
【0026】
別の態様においては、ヒドロゲルを、a)非溶剤(i.前記非溶剤はPEG、イソプロピルアルコール、飽和食塩水、ビタミン、またはカルボン酸、アルカリ金属の塩の水溶液であり、かつ、ii.前記非溶剤は、水、PEG、ビタミン、重合体、エステル、プロテオグリカン、およびカルボン酸を包含する2種類以上の成分を含む)、またはb)超臨界流体中に入れることにより、脱水和が行われる。
【0027】
別の態様においては、ヒドロゲルを空気中に放置することにより、ヒドロゲルを室温で、または高温で、例えば40℃で、約40℃強、約80℃、80℃強、約90℃、約100℃、100℃強、約150℃、約160℃、160℃強、約180℃、約200℃、または200℃強の温度で、真空中に置くことにより、脱水和が行われる。
【0028】
別の態様においては、ヒドロゲルを空気または不活性ガス中で高温に加熱することにより脱水和が行われ、その際の、加熱速度は遅いまたは速い、もしくは加熱が真空または空気脱水和に続いて行われる。
【0029】
別の態様においては、脱水和されたヒドロゲルを、i)水、食塩水溶液、リンガー溶液、食塩を加えた水、緩衝溶液等の中、ii)高湿度チャンバー中、またはiii)室温もしくは高温、に置くことにより、脱水和されたヒドロゲルを再水和させる。
【0030】
別の態様においては、上記の方法が、ヒドロゲルを変形加工することをさらに含んでなる。
【0031】
別の態様においては、上記の方法が、ヒドロゲルを約40℃強〜約200℃以上の温度に加熱して、変形加工する工程をさらに含んでなる。
【0032】
別の態様においては、上記の方法が、PEGを含んでなるヒドロゲルを変形加工して、脱PEG化する工程をさらに含んでなる。
【0033】
別の態様においては、上記の方法が、a)ヒドロゲルを約40℃強〜約200℃以上の温度に加熱して、変形加工すること、およびb)PEGを含んでなるヒドロゲルを脱PEG化すること、をさらに含んでなる。
【0034】
別の態様においては、ヒドロゲルが、一軸圧縮、チャネル−ダイ圧縮、または他の変形加工方式により変形加工される。
【0035】
別の態様においては、ヒドロゲルを、ヒドロゲルの融点よりも低い温度に加熱して、変形加工し、その際、平坦または湾曲したプラテンを使用して、あるいは1つの平坦なプラテンと1つの湾曲したプラテンとを使用して圧縮下でヒドロゲルを変形加工する。
【0036】
別の態様においては、ヒドロゲルを、空気または不活性ガス下で、または流体媒体中で変形加工し、その際、流体媒体は、食塩水溶液、リンガー溶液、PEG、PEG水溶液、塩溶液、DMSO、またはいずれかの好適な流体媒体である。
【0037】
別の態様においては、ヒドロゲルを、ヒドロゲルの融点よりも低い温度で変形加工して、その際、温度は約0℃〜約100℃、約10℃〜約100℃、約0℃〜約40℃、約10℃〜約30℃、約17℃〜約25℃、または略室温である。
【0038】
別の態様においては、ヒドロゲルを、変形加工の前または後に脱水和する。
【0039】
別の態様においては、上記の方法により製造された靱性ヒドロゲルを平衡に達するまで再水和させ、その際、靱性ヒドロゲルを水または塩溶液中で再水和させる。
【0040】
本発明の一態様は、少なくとも約1%〜約50%の平衡水を含む、重合体および水を含んでなる靱性ヒドロゲルを提供する。
【0041】
本発明の別の態様は、上記のいずれかに記載の方法により製造された、脱水和または変形加工されたヒドロゲルを提供する。
【0042】
本発明の別の態様は、上記の製法のいずれかにより製造された靱性ヒドロゲルであって、靱性ヒドロゲルが、脱水和に続いて再水和させることができ、前記脱水和によりヒドロゲルの重量が34%強減少し、前記再水和により、再水和されたヒドロゲル中に少なくとも約46%の平衡含水量が得られる、靱性ヒドロゲルを提供する。
【0043】
別の態様においては、靱性ヒドロゲルが、二軸延伸または単軸延伸されており、高い限界引張強度を有する。
【0044】
本発明のさらに別の態様は、靱性ヒドロゲルを含んでなる、挿入機器等の医療用充填材を提供するが、挿入機器はユニスペーサーであり、ユニスペーサーは、人関節、例えば膝、股、肩、肘、または上側もしくは上肢関節における自由浮揚関節充填材である。
【0045】
他に規定されていない限り、ここで種々の文法的形式で使用される全ての技術的および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。本明細書で記載するものと類似の方法および材料は、本発明の実施および試験で使用できるが、好ましい方法および材料を以下に記載する。矛盾が生じた場合、本明細書中の定義に従う。さらに、材料、方法および例は、説明のために記載されたものであり、本発明を限定するものではない。
【0046】
本発明の他の特徴、目的、および利点は、特許請求の範囲および下記の詳細な説明から明らかである。しかし、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい態様を示しているが、当業者にはこの詳細な説明から、本発明の精神および範囲内で様々な変形および修正が明らかであり、例示のためにのみ記載することを理解すべきである。
【発明の詳細な説明】
【0047】
本発明は、加工された靱性ヒドロゲル、靱性ヒドロゲル含有組成物、ならびに靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物の製造方法に関する。本発明は、加工された靱性ヒドロゲルおよび靱性ヒドロゲル含有組成物の必要とする患者の処置における使用にも関する。
【0048】
本明細書において開示する方法を使用して本発明の靱性ヒドロゲルを製造するための出発材料として、先行技術に記載されているヒドロゲル(例えば米国特許第4,663,358号、第5,981,826号、および第5,705,780号、米国公開出願第20040092653号および第20040171740号)を使用することができる。本発明において提供する靱性ヒドロゲルは、全ての体組織、例えば軟骨、筋肉、胸部組織、椎間板の髄核、他の軟組織、一般的に関節中でクッションとして作用する挿入機器等の補強または置換に使用することができる。
【0049】
靱性ヒドロゲルは、一般的に重合体、重合体ブレンド、またはポリビニルアルコール(PVA)の共重合体、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリアクリル酸(PAA)、アルジネート、多糖、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体、ポリ−N−アルキルアクリルアミド、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸、またはそれらの2種類以上の組合せを包含する。
【0050】
本明細書において開示する靱性ヒドロゲルは、ポリビニルアルコール(PVA)を含んでなる、一様に分布したヒドロゲル分子またはヒドロゲル粒子から構成され、該ポリビニルアルコール(PVA)は、他の重合体またはゲル化剤、例えばポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、ポリエチレンオキシド(PEO)、コンドロイチン硫酸、デキストラン硫酸、デルマタン硫酸等の少なくとも一種、またはそれらの2種類以上の組合せと共重合および/またはブレンドされている。
【0051】
本発明の一態様においては、靱性ヒドロゲルは、他の重合体の少なくとも一種と共重合および/またはブレンドされたポリビニルアルコール(PVA)を含んでなる。
【0052】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル溶液が、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PNIAAm)、またはそれらの2種類以上の組合せを含んでなる。
【0053】
本発明の別の態様においては、ヒドロゲル溶液はポリビニルアルコール(PVA)溶液である。
【0054】
本発明の靱性ヒドロゲルは、哺乳動物の関節、例えば人関節で種々の方式による使用することができる。例えば、人関節の高負荷に耐えるのに必要な機械的強度を有し、関節軟骨置換用途に使用できる挿入機器を、靱性ヒドロゲルから製造することができる。挿入機器は、典型的には関節中でクッションとして作用し、軟骨表面同士の接触を最少に抑える(図1参照)。これは、関節炎の患者に有益である。軟骨病巣を有する初期関節炎の関節は、患者の損傷を受けた軟骨表面間の接触を最少に抑えるような挿入機器で処置することができる。挿入機器は、Fellらにより記載されている(米国特許第6,923,831号、第6,911,044号、第6,866,684号、および第6,855,165号参照)。これらの機器は、種々の形状およびサイズを有することができる。ヒドロゲル挿入機器を生体内で長期間使用するには、機器が、先ず高いクリープ耐性を有する必要がある。これは、生体内使用中に挿入ヒドロゲル機器の形状変化を最少に抑えるためである。本発明の、剛性を増強させた靱性ヒドロゲル材料は、高いクリープ耐性を示す。本発明のヒドロゲル挿入機器は、機械的特性、例えば靱性、耐摩耗性、高クリープ耐性等にも優れている。
【0055】
ヒドロゲル充填材のもう一つの使用方法は、関節中の空隙を充填することによる。この空隙は、既存の空隙であるか、または外科手術によりできた空隙でよい。靱性ヒドロゲルプラグをこの空隙中に挿入することができる。図2は、ヒドロゲルプラグを充填した空隙の一例を示す。ヒドロゲルプラグは、どのような形状およびサイズにでもでき、例えば円筒形でよい。実施態様においては、プラグは、周囲の軟骨表面から隆起するように過剰サイズを有することができる。別の実施態様においては、プラグは、空隙中で窪むように過小サイズでもよい。過剰サイズまたは過小サイズは、プラグが、約1mm未満、約1mm、約1mm強、約2mm、約3mm、もしくは約3mm強、周囲の軟骨表面から上に突き出るか、または周囲の軟骨表面から下に窪むようなサイズでよい。いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルプラグは、空隙中に容易に設置できるように、僅かに脱水和し、そのサイズを収縮させることができる。次いで、そのヒドロゲルプラグを、その場で水和させて膨潤させ、空隙中により効果的に適合させることができる。ヒドロゲルプラグの脱水和した、および再水和させた寸法を適切に調節し、再水和および膨潤の後に、プラグの良好な適合、過小サイズまたは過剰サイズを得ることができる。体内で再水和させることにより、プラグと空隙との間の摩擦適性を高めることもできる。これは、再水和により、プラグの断面が空隙の断面より、例えば約1mm、1mm未満、または1mm強、大きくなるように、寸法および脱水和程度を適切に調整することにより、達成することができる。いくつかの実施態様においては、空隙を注入可能な、体内で硬化するヒドロゲル系(例えば、RubertiおよびBraithwaite(米国公開出願第20040092653号および第20040171740号参照)、Muratogluら(米国暫定出願第60/682,0008号、2005年5月18日提出)、Lowman(米国公開出願第2004/0220296号))および他の注入可能な系により充填する。
【0056】
本発明は、人関節の高負荷の下で形状を維持できる靱性ヒドロゲルを得るための、ヒドロゲル系の加工方法を提供する。本発明の一態様において、靱性ヒドロゲルは、ヒドロゲルの剛性、靱性および強度を改善して、クリープ耐性および耐摩耗性を高めることにより、得られる。本発明は、ヒドロゲルの機械的特性を改良する脱水和方法を提供する。本発明は、ヒドロゲルのクリープ耐性を高める永久的可塑変形加工方法も提供する。上記の種々の脱水和および変形加工方法を組み合わせて使用し、ヒドロゲルの特性を改良することができる。脱水和方法のいずれでも、それ自体で、または他の脱水和方法と組み合わせて使用し、ヒドロゲルの機械的特性を改良することができる。可塑変形加工方法も、それ自体で使用し、ヒドロゲルのクリープ耐性を高めることができる。
【0057】
ヒドロゲルを極度に脱水和する場合、いくつかの用途では、その後にヒドロゲルを少なくともある程度再水和し、ある種の実施態様に向けて、水の存在により付与される潤滑性を再度獲得することが重要になる場合がある。水、および一種以上の、ほとんどの実施態様では不揮発性である他の成分(例えば、低分子量PEG、その他、例えばPVP、PEO、コンドロイチン硫酸)を含むヒドロゲルから出発して、熱脱水和を行う場合、脱水和されたヒドロゲルは、様々なレベルに容易に再水和される。本発明の一態様においては、熱脱水和に続く再水和のレベルは、脱水和前の最初のヒドロゲルの水相中にある他の成分の濃度によって異なる。対照的に、出発ヒドロゲルが水以外の他の成分を含まない場合、熱脱水和に続く再水和の程度は、他の成分の存在下で脱水和されたヒドロゲルの再水和レベルと比較して、著しく低下する。水以外の他の成分の存在は、熱脱水和およびその後の再水和に続くヒドロゲルのクリープ挙動にも関係する。ヒドロゲルは、他の成分の存在下で熱処理された場合、粘弾性がより高くなる。
【0058】
別の態様においては、PEG等の低分子量成分を含むPVAヒドロゲルは、熱脱水和しても不透明性が維持される。対照的に、そのような成分を含まず、同等の条件下で熱脱水和したPVAヒドロゲルは、不透明性がなくなって透明になり、分子多孔度の低下が示される。分子多孔度は、構造中の自由空間であり、そこで水分子がヒドロゲルに浸透し、水和させると考えられている。そのような成分を全く含まないヒドロゲルを熱脱水和した時の不透明性の低下は、再水和能力が著しく低下することに原因がある場合がある。本発明の一態様においては、熱脱水和の際に不揮発性成分がヒドロゲル構造中に残って分子多孔性の崩壊を阻止し、ヒドロゲルを熱脱水和に続いて再水和させる。
【0059】
本発明は、凍結融解により製造されたPVA(FT−PVA)ヒドロゲルであって、ヒドロゲルが、約160℃でアニーリングすることにより、靱性が付与されたヒドロゲルを提供する。再水和により、アニーリングされたゲルは透明のままであり、弾性で靱性があり、ほとんどゴム状の材料を形成する。この材料は、ある種の用途には有用であるが、ヒドロゲル中に高含水量を必要とする用途には向いていない場合がある。再水和の程度は、アニーリング前にPEGのような成分を水相に添加することにより、アニーリングされたFT−PVAでさらに適切に調整される。
【0060】
本発明の別の態様においては、永久的変形加工を使用し、ヒドロゲルのクリープ耐性を著しく高める。さらに、高照射線量により、ヒドロゲルの架橋密度を増加させることもできる。
【0061】
本発明の一態様においては、ヒドロゲル材料が可塑的に変形加工される。可塑的変形加工により、材料中に分子配向を導入する。材料は、それが変形加工された方向でクリープ耐性が増加する。したがって、このヒドロゲルは、高クリープ耐性充填材として使用できる。一実施態様においては、例えば図1に示すように、この変形加工が、人関節における軸方向負荷の方向になるように、充填材を加工する。
【0062】
別の実施態様においては、可塑的変形を、単軸圧縮、チャネル−ダイ圧縮張力、曲げ、せん断、または他の変形加工方式により行う。可塑的変形は、ヒドロゲルの融点未満のいずれかの温度で誘起される。可塑的変形は、静的または動的に誘起される。別の実施態様においては、変形をチャネル−ダイ変形加工により誘起する。変形加工の種類に関しては、図3を参照。
【0063】
別の実施態様においては、平坦または湾曲したプラテンを使用する圧縮下で変形加工する。平坦なプラテンにより、平坦に変形加工されたヒドロゲル表面が得られる。湾曲したプラテンにより、湾曲した変形加工された表面が得られる(図3参照)。別の実施態様においては、1つの平坦なプラテンと湾曲したプラテンとにより変形を誘起する。
【0064】
別の実施態様においては、ヒドロゲルの変形加工を、変形加工されたヒドロゲルが最終的な充填材の形状になるか、または最終的な充填材に近い形状になるように、所定の形状を有するプラテンで行う。
【0065】
別の実施態様においては、変形加工されたヒドロゲルをさらに機械加工し、最終的な充填材形状を得る。
【0066】
別の実施態様においては、ヒドロゲル充填材を包装し、滅菌する。包装は、ヒドロゲル装置を水溶液に浸漬し、体内移植するまで、例えば滅菌および貯蔵の間、脱水和を防止するような包装でよい。水溶液は、水、脱イオン水、食塩水溶液、リンガー溶液、または食塩を加えた水でよい。水溶液は、ポリ−エチレングリコールの水溶液でもよい。溶液は、PEG5重量%未満、約5重量%、約5重量%強、約10重量%、約15重量%、約20重量%、約30重量%、約50重量%、約90重量%もしくは約100重量%の溶液でよい。ヒドロゲル装置は、滅菌し、不揮発性溶剤または非溶剤中に保存することができる。
【0067】
ヒドロゲル充填材の滅菌は、ガンマ線滅菌、ガスプラズマ滅菌、またはエチレンオキシド滅菌により行う。一実施態様においては、ヒドロゲルをオートクレーブにより滅菌する。滅菌は工場で行うか、または充填材を病院に輸送し、そこでオートクレーブにより滅菌する。ヒドロゲル充填材の滅菌にも使用するエチレンオキシド滅菌装置を備えている病院もある。
【0068】
一実施態様においては、ヒドロゲル充填材を包装の後で滅菌する。別の実施態様においては、ヒドロゲル充填材を滅菌し、無菌の水溶液中に入れる。
【0069】
別の実施態様においては、凍結融解方法を使用してPVAヒドロゲルを製造し、PVA水溶液(少なくとも約1重量%PVA、約1重量%強PVA、約5重量%PVA、約10重量%PVA、約10重量%強PVA、約15重量%PVA、約20重量%PVA、約25重量%PVA、約25重量%強PVA)から出発して、それに凍結融解サイクル(少なくとも1サイクル、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル以上)を実施する。凍結融解サイクルは、PVA溶液を0℃未満に冷却し、それを0℃より上に再加熱することとして定義される。次いで、PVAヒドロゲルを脱水和する。続いて、脱水和されたヒドロゲルを食塩水溶液中に入れ、再水和させる。この方法により、非常に僅かに再水和された、機械的強度が高いPVAヒドロゲルが得られる。
【0070】
本発明の一実施態様においては、PVAヒドロゲル用の不揮発性非溶剤としてPEGを使用する。ヒドロゲルの前駆物質であるPVA水溶液の製造において、水の代わりにDMSOを使用する。
【0071】
本発明の一実施態様においては、PEG溶液は、PEGを溶剤(好ましくは水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または他の溶剤)に入れた溶液である。溶液濃度は、0.1重量%PEG〜99.9重量%PEGの範囲である。溶液中のPEGは、種々の分子量(好ましくは300、400、または500g/モル、300g/モル強、1000g/モル、5000g/モル以上)を有することができる。溶液中のPEGは、種々の平均分子量を有するPEGのブレンドでよい。
【0072】
別の実施態様においては、PEG含有PVAヒドロゲルは、凍結融解方法を使用して製造し、PVA水溶液(少なくとも約1重量%PVA、約1重量%強PVA、約5重量%PVA、約10重量%PVA、約10重量%強PVA、約15重量%PVA、約20重量%PVA、約25重量%PVA、約25重量%強PVA)から出発して、それに凍結融解サイクル(少なくとも1サイクル、2、3、4、5、6、7、8、9、10サイクル以上)を実施する。この工程において、所望によりPVAヒドロゲルを食塩水中に入れ、完全に水和させることができる。続いて、ゲルを低分子量PEG溶液に入れる。これは、ヒドロゲルを非溶剤PEGでドーピングするためである。PEG溶液の浸漬期間は、ヒドロゲル全体にわたって均質な平衡PEG含有量に達するか、または不均質PEG分布に達する(浸漬時間を短縮することにより)まで、変えることができる。後者により、PEG濃度が高い表皮およびPVAヒドロゲル内部のPEG濃度勾配が得られる。
【0073】
別の実施態様においては、PEG含有PVAヒドロゲルは、PVA水溶液(少なくとも約1重量%PVA、約1重量%強PVA、約5重量%PVA、約10重量%PVA、約10重量%強PVA、約15重量%PVA、約20重量%PVA、約25重量%PVA、約25重量%強PVA)から出発して、これを低分子量PEG溶液と高温(室温より高いか、または50℃を超える)で混合することにより製造する。室温に冷却することにより、この混合物は、水および非溶剤PEGを含むPVAヒドロゲルを形成する。別の実施態様においては、高温PVA/PEG混合物を室温に冷却せず、その代わりに、凍結融解サイクルを実施する。
【0074】
別の実施態様においては、PVAヒドロゲルを熱脱水和する。PVAヒドロゲルは、熱脱水和(またはアニーリング)の際にPEGを含む。熱脱水和は、40℃で、約40℃強で、80℃で、80℃強で、90℃で、100℃で、100℃強で、150℃で、160℃で、160℃強で、180℃で、200℃で、または200℃強で行う。熱脱水和は、どのような環境中でも、好ましくは不活性ガス、例えば窒素またはアルゴン、もしくは真空中で行うことができる。熱脱水和は、空気あるいはアセチレンガスまたはアルゴンもしくは真空中でも行うことができる。熱脱水和は、ヒドロゲルをすでに加熱されている環境中に置き、熱脱水和の速度をより高くするか、またはヒドロゲルを徐々に加熱し、熱脱水和の速度を遅くすることができる。熱脱水和速度は、ヒドロゲルが、水を1日あたり1重量%失う、1日あたり10重量%失う、1日あたり50重量%失う、毎時1重量%失う、毎時10重量%失う、毎時50重量%失う、毎分1重量%失う、毎分5重量%失う、毎分10重量%失う、毎分50重量%失う、あるいはそれらに近いか、またはそれらの間の量で水を失うことにより、重量が低下するような速度でよい。熱脱水和の速度は、温度の上昇速度およびヒドロゲルのサイズによって異なる。熱脱水和の前に、真空脱水和によりヒドロゲルの水和レベルを下げることができる。熱脱水和に続いて、ヒドロゲルを食塩水溶液中に入れて再水和する。これによって、PVAヒドロゲル中に良好な再水和レベルが得られ、人軟骨または他の親水性表面に対して接合した時に、高い機械的強度および良好な潤滑性を得ることができる。このヒドロゲルは、その水素結合した構造を維持することが期待され、したがって、水、食塩水または体液中で長期間の溶解を受けない。
【0075】
本説明および例は、PVAヒドロゲルに関して記載するが、重合体状構造の、すなわち長鎖分子を含む全てのヒドロゲル系に適用できる。したがって、本発明は、基礎材料としてPVAを包含するヒドロゲル系を提供するが、これらに限定するものではない。
【0076】
重合体状材料は、機械的変形加工により配向させることができる。変形加工により、分子が配向する。典型的には、分子配向方向における機械的特性は、等方性の変形加工していない重合体構造の機械的特性より優れている。本発明は、重合体材料のこの特性を利用し、ヒドロゲル系の機械的特性を改良した。ヒドロゲル材料を分子配向させることにより、重合体材料の剛性および強度が改善される。
【0077】
加工のいずれの工程においても、ヒドロゲルをe線またはガンマ線で照射して架橋させることができる。照射は、空気、不活性ガス、増感性ガス、または流体媒体(例えば、水、食塩水溶液、ポリ−エチレングリコール溶液)等の中で行うことができる。放射線量は、1kGy〜10,000kGy、好ましくは25kGy、40kGy、50kGy、200kGy、250kGy以上である。
【0078】
用語「ヒドロゲル」とは、変形加工していないもしくは変形加工したヒドロゲル、または靱性ヒドロゲルを意味する。ここに記載する用語「ヒドロゲル」は、「靱性ヒドロゲル」を含み、脱水和された、および/または変形加工されたヒドロゲルを包含する。靱性ヒドロゲルは、吸収された水を含む親水性重合体の網目であり、破損する前に大量のエネルギー、例えば機械的エネルギーを吸収することができる。
【0079】
本発明の一態様においては、ポリビニルアルコール(PVA)をベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースPVAヒドロゲルは、良く知られている凍結融解法により、PVA溶液(PVAを溶剤、例えば水またはDMSO)に対して1または多サイクルの凍結融解を実施することにより、製造することができる。凍結融解法に使用するPVA溶液は、PEGのような他の成分を含むことができる。ベースPVAヒドロゲルは、PVA溶液の放射線架橋により製造することもできる。PVAヒドロゲルのもう一つの製造方法を使用し、PVA溶液をゲル化剤、例えば(PEG)と高温でブレンドし、室温に冷却することができる。
【0080】
一実施態様においては、ヒドロゲルは、立方体形状、円筒形状、長方形プリズム形状、または充填材形状のような、いずれの形状であってもよい。
【0081】
別の実施態様においては、ベースヒドロゲルとしてNIPAAMを使用することができる。ベースNIPAAMヒドロゲルは、NIPAAM溶液の放射線架橋により製造することができる。あるいは、Lowmanらにより開示されている方法を使用することができる。
【0082】
別の実施態様においては、ベースヒドロゲルとして二重網目(DN)ヒドロゲル構造を使用することができる。ベースDNヒドロゲルは、Gongら(Advanced Materials, 2003, 15, No. 14: 1155-1158参照)により記載されている方法により製造することができる。第一網目は、親水性モノマー、例えば2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)を、架橋剤の存在下で反応させることにより形成することができる。次いで、このゲルを、別の種類のモノマー、例えばアクリル酸アミド(AAm)を含む水溶液中に浸漬する。続いて、これらの新たに導入したモノマーから第二網目を合成してDNヒドロゲルを製造し、これをベースヒドロゲルとして使用することができる。
【0083】
別の実施態様においては、位相(topological)ゲル(TP)をベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースTPヒドロゲルは、Tanakaら(Progress in Polymer Science, 2005, 30: 1-9参照)により記載されている方法により、製造することができる。TPゲル中の重合体鎖は、個々の鎖に沿ってスライドする架橋剤により、フレキシブルに結合している。
【0084】
下記の実施態様においては、ナノ複合材料(NC)ゲル構造をベースヒドロゲルとして使用することができる。ベースNCヒドロゲルは、Tanakaら(Prog. Polym. Sci. 2005, 30: 1-9参照)により記載されている方法により、製造することができる。
【0085】
いくつかの実施態様においては、脱水和されたヒドロゲルをベースヒドロゲルとして使用することができる。脱水和のレベルは、ベースヒドロゲルが水99%〜1%、より好ましくは水99%〜5%、より好ましくは水99%〜25%、より好ましくは水99%〜50%、より好ましくは水99%〜75%、より好ましくは水約70重量%、または水80重量%を含むように制御することができる。
【0086】
ヒドロゲルの含水量は、その平衡水和レベルと、脱水和レベルとの間の重量変化を測定することにより、決定することができる。
【0087】
いくつかの実施態様においては、PVA/PEGの高温水溶液を室温に冷却し、その「ゲル化した時の」形態で使用する。
【0088】
本発明の一態様においては、PVA/PEGヒドロゲルを水、脱イオン水、食塩水溶液、リン酸塩緩衝された食塩水溶液、リンガー溶液、または食塩を加えた水に浸漬し、PEGを除去する。この方法は、脱PEG化方法と呼ばれる。脱PEG化の際、ヒドロゲルは水も吸収して平衡含水量に近づく。したがって、脱PEG化は再水和方法とも呼ばれる。
【0089】
これらの実施態様の一つにおいて、ヒドロゲルを負荷の下で変形加工し、永久的に変形させる。
【0090】
別の実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルを脱水和する。
【0091】
別の実施態様においては、脱水和されたヒドロゲルを再水和させる。いくつかの実施態様においては、再水和されたヒドロゲルは、脱水和工程前のヒドロゲルよりも含水量が低い。
【0092】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルの寸法が、医療用装置を機械加工できるように十分に大きい。
【0093】
いくつかの実施態様においては、出発ヒドロゲルが、あらゆる変形加工の前に脱水和される。
【0094】
いくつかの実施態様おいては、ヒドロゲルに連続的な脱水和および変形加工サイクルを実施する。
【0095】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルに脱水和と変形加工サイクルとを同時に実施する。
【0096】
ヒドロゲルの脱水和は、種々の方法により行うことができる。例えば、ヒドロゲルを室温で、または高温で真空中に置き、水を追い出して脱水和させる。脱水和の際にヒドロゲルを配置する真空チャンバーに空気またはガスを加えることにより、真空の量を下げることができる。ヒドロゲルの脱水和は、ヒドロゲルを空気または不活性ガス中に室温もしくは高温で保持することによっても行うことができる。空気または不活性ガス中での脱水和は、室温より低い温度でも行うことができる。ほとんどの実施態様においては、脱水和を高温で行う場合、温度をヒドロゲルの融点よりも低い温度に維持する必要がある。しかし、ヒドロゲルの融点は、脱水和工程中に増加することがあり、脱水和が起こるにつれて、より高い温度に進行させることができる。ヒドロゲルの脱水和は、ヒドロゲルを溶剤中に入れることによっても行うことができる。この場合、溶剤がヒドロゲルの水を追い出す。例えば、PVAヒドロゲルを低分子量PEG(100g/モルを超える、約300〜400g/モル、約500g/モル)中に入れることにより、PVAヒドロゲルの脱水和を引き起こすことができる。この場合、PEGを純粋な状態で、または溶液中で使用することができる。PEG濃度が高い程、脱水和の程度が高くなる。溶剤脱水和は、高温で行うこともできる。これらの脱水和方法同士を互いに組み合わせて使用することができる。
【0097】
ヒドロゲルの再水和は、含水溶液中(例えば、食塩水、水、脱イオン水、食塩を加えた水、または水溶液もしくはDMSO中)で行うことができる。
【0098】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルを医療用機器に成形し、続いて脱水和する。次いで、脱水和された充填材を再水和させる。脱水和により引き起こされる収縮およびその後の再水和により引き起こされる膨潤(ほとんどの実施態様では、脱水和収縮は再水和膨潤より大きい)により、人関節に使用できる所望の充填材サイズおよび形状が得られるように、医療用充填材の初期サイズおよび形状を適切に調整する。
【0099】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルの、変形加工前の初期形状は、長方形プリズム、円筒、立方体、または不均一形状でよい。
【0100】
一実施態様においては、ヒドロゲルを2個の金属板の間で単軸圧縮する。次いで、変形加工したヒドロゲルを一定変形の下で長時間保持し、永久的変形を達成する。変形加工の程度は、試料の初期高さと試料の最終高さとの比である圧縮比として測定する。変形加工の程度は、試料の変位と初期高さとの比であるひずみとしても測定する。ひずみにより測定される好ましい変形加工程度は、10%〜99%、より好ましくは20%〜95%、より好ましくは50%〜95%、より好ましくは75%〜95%、より好ましくは80%〜90%、最も好ましくは90%、またはそれらの近傍、もしくはそれらの中間の値である。一定変形に保持した後、変形加工したヒドロゲルをプレスから取り外す。いくつかの実施態様においては、応力緩和が平衡に達するのに十分な時間、変形を保持する。いくつかの多の実施態様おいては、ヒドロゲルを変形加工の際にサイクル状の負荷作用を施す。
【0101】
一実施態様においては、ヒドロゲルをチャネル−ダイ中に置き、次いでヒドロゲルをチャネル−ダイ中で圧縮し、図3に示すように、主として流れ方向における分子配向を達成することにより、ヒドロゲル中に変形を誘発する。好ましい変形加工比の程度は、10%〜99%、より好ましくは20%〜95%、より好ましくは50%〜95%、より好ましくは75%〜95%、より好ましくは80%〜90%、最も好ましくは90%、またはそれらの近傍、もしくはそれらの中間の値である。
【0102】
別の実施態様においては、ヒドロゲルをチャネル−ダイ中に入れることにより、変形加工を達成するが、その際、ブロックの幅をチャネル−ダイの幅よりも小さくする。変形加工の初期段階では、ヒドロゲルブロックがチャネル−ダイの壁と接触するまで、分子の二軸延伸が起こり得るが、その時点の後は、主としてチャネル−ダイ中の流れ方向である一方向で連続的に分子配向が起こり得る。これらの実施態様においては、変形加工されたヒドロゲルは、変形加工の平面内で、2つの直交する方向で異なった変形加工レベルを有することができる。圧縮方向は、変形加工の平面に対して直角である。
【0103】
別の実施態様においては、ブロックの変形加工を単軸張力下で達成する。
【0104】
特定の実施態様では、約1mm/分未満、約1mm/分、より好ましくは1mm/分〜10mm/分、より好ましくは10mm/分〜100mm/分、より好ましくは約20mm/分、またはそれらの近傍、もしくはそれらの中間の値の変形加工比で、変形加工を行う。
【0105】
いくつかの実施態様おいては、変形加工をサイクル状に実施する。
【0106】
いくつかの実施態様においては、変形加工を連続的に実施する。これらの実施態様においては、ヒドロゲルを所望の変形加工比の一部に変形加工し、一定変形下に保持し、ある程度応力緩和させ、変形加工および応力緩和工程を、所望の変形加工比に達するまで繰り返す。例えば、最終的な所望の変形加工比が90%のひずみに相当する場合、ヒドロゲルを30%増加量で変形加工し、各増加量間で応力緩和させる。
【0107】
特定の実施態様においては、変形加工をガス媒体(例えば、空気または不活性ガス)、あるいは、またはそれに加えて、流体媒体(例えば、食塩水、DMSO、またはPEG)中で行う。いくつかの実施態様においては、変形加工の際に媒体を、変形加工しているヒドロゲルの融点未満に加熱する。ヒドロゲルの融点は、変形加工の最中に変化することがあるので、媒体の温度を調節して融解を回避する。
【0108】
いくつかの実施態様においては、変形加工を流体媒体(例えば、食塩水溶液、リンガー溶液、PEG、PEG水溶液、塩溶液、その他の流体媒体)中で行う。
【0109】
特定の実施態様においては、変形加工を約10℃〜約30℃の室温で、より好ましくは約17℃〜約25℃、より好ましくはヒドロゲルの融点未満、より好ましくは約0℃〜約40℃、より好ましくは約10℃〜約100℃で、またはそれらの近傍、もしくはそれらの中間の温度で行う。
【0110】
一実施態様においては、ヒドロゲルを2つのプラテン間で単軸圧縮方式により圧縮し、その際、変形加工の際にヒドロゲルに接触するプラテンの表面は、最終的な圧縮されたヒドロゲルが、挿入機器の所望の最終的形状を有するような形状を有する。
【0111】
一実施態様においては、ヒドロゲルをチャネル−ダイ中で圧縮し、その際、変形加工の際にヒドロゲルに接触するプランジャーおよびダイ表面は、最終的な圧縮されたヒドロゲルが、挿入機器の所望の最終的形状を有するような形状を有する。
【0112】
特定の実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルを、医療用機器、例えば、膝用の腎臓形状をした挿入機器、股用のカップ形状をした挿入機器、肩用の関節窩形状をした挿入機器、および他の人関節用挿入機器、として作用する所望の形状に機械加工することができる。また、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルの機械加工により、円筒形、立方体形、または他の、関節中に存在するか、または外科手術の際に調製された軟骨欠損を充填するための形状を得ることができる。
【0113】
ヒドロゲル医療用機器は、人関節(例えば膝関節、股関節、肩関節、肘関節)、ならびに上および下肢関節における自由浮揚関節充填材として作用する挿入機器、例えばユニスペーサー、でよい。
【0114】
いくつかの実施態様においては、変形加工に続いて、変形加工されたヒドロゲルを脱水和する。続いて、脱水和されたヒドロゲルを食塩水溶液中に入れて再水和させる。
【0115】
ヒドロゲルを連続的に変形加工するいくつかの実施態様においては、変形加工されたヒドロゲルを、連続的な変形加工の全ての、またはいくつかの工程で、後に続く変形加工工程の前に、異なったレベルに脱水和することができる。
【0116】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルを、100%PEG中に入れ、変形加工されたヒドロゲルを脱水和する。続いて、脱水和されたヒドロゲルを食塩水溶液中に入れて再水和させる。この方法により、ゲル中の平衡含水量が低下し、したがって、ヒドロゲルの機械的特性がさらに改良される。
【0117】
別の実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルをPEG水溶液中に入れて脱水和を抑制し、続いて食塩水中で再水和させる。PEG水溶液の濃度を適切に調整し、ヒドロゲルに望ましいレベルの脱水和を達成することができる。脱水和レベルが高い程、機械的特性が改良され、脱水和レベルが低い場合、改良程度は低い。用途によっては、剛性を低くするのが望ましく、したがって、より低いPEGおよび/または水濃度の溶液を脱水和工程に使用することができる。
【0118】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルを、真空中、室温または高温で脱水和する。真空脱水和は、約10℃、約10℃強、約30、40、50、60、75、80、90℃、約100℃または100℃強、あるいは、またはそれに加えて、130℃またはそれらの近傍、もしくはそれらの中間の温度で行うことができる。
【0119】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルまたは変形加工されたヒドロゲルの真空脱水和を先ず室温で、所望レベルの脱水和に達するまで行い、その後、昇温して、ヒドロゲルをさらに脱水和する。温度は、好ましくは約100℃強に、約160℃に、または160℃強に昇温する。
【0120】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルを空気または不活性ガスもしくは不活性ガスの部分真空中で加熱する。
【0121】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルを、空気または不活性ガス中で加熱する前に、真空脱水和する。
【0122】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルの加熱を徐々に、例えば約1℃/分未満、約1℃/分強、2、5、10℃/分以上で行う。ある種のヒドロゲル処方物で、加熱速度が遅い程、高い加熱速度よりも、強いゲルが得られる。
【0123】
ほとんどの場合、完成した医療用機器は包装され、滅菌される。
【0124】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルに脱水和を実施する。脱水和は、空気または不活性ガス中、高温(例えば約160℃におけるアニーリング)で行う。脱水和により、水が失われ、したがって、体積が減少すると共に、重量も低下する。重量低下は水が失われることによる。他方、体積の減少は、水が失われるか、またはヒドロゲルがさらに結晶化するためであろう。いくつかの実施態様においては、脱水和は、ヒドロゲルを低分子量重合体に入れる(例えばPVAヒドロゲルをPEG溶液に入れる)ことにより行う。場合により、脱水和は水の損失により引き起こされるが、ほとんどの場合、ヒドロゲルによる非溶剤の吸収もある。したがって、ヒドロゲルの重量変化は、水の損失および非溶剤の吸収の総計である。この場合の体積変化は、水の損失、非溶剤の吸収、ヒドロゲルのさらなる結晶化、または水が細孔中で満たしていた空間を占有していない非溶剤の多孔質構造が部分的に崩壊することによる。
【0125】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルが金属基材に取り付けられる。金属基材は、体内で骨が内部成長し、ヒドロゲルを所定の位置に固定するのに使用される多孔質裏側表面である。基材上の、ヒドロゲルと接触する所に多孔質表面を設けることにより、金属基材をヒドロゲルに取り付けることができ、ゲル化するヒドロゲル溶液(例えば高温PVAおよび/またはPEGの水中混合物)が、ヒドロゲルを形成する時に、多孔質表面に浸透し、ヒドロゲルは、多孔質空間を満たすことにより、金属基材と相互接続することができる。
【0126】
いくつかの実施態様においては、2個以上の金属基材をヒドロゲルに取り付け、体内で複数の箇所にヒドロゲルを固定する。
【0127】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲル/金属基材の構造を、上記の処理工程、例えば脱PEG化、溶剤脱水和、非溶剤脱水和、照射、包装、滅菌等で使用することができる。
【0128】
いくつかの実施態様においては、溶液中に存在するヒアルロン酸(HA)を使用してヒドロゲルを形成することにより、および/またはHAをヒドロゲル中に拡散させることにより、ヒドロゲルがHAを含む。いくつかの実施態様では、HA含有ヒドロゲルを照射する。照射は、処理工程、例えば真空脱水和、非溶剤脱水和、再水和、アニーリング、および/または変形加工の前後、または最中に行うことができる。照射により、ヒドロゲルマトリックスが架橋し、いくつかの実施態様においては、HAとの共有結合を形成する。HAをヒドロゲルの一部に付加することにより、ヒドロゲル充填材の潤滑性が増大する。これは、含水量が著しく低い靱性ヒドロゲルに有益である。
【0129】
いくつかの実施態様においては、水和されたヒドロゲル充填材を表面で僅かに加熱し、ヒドロゲルを部分的に融解させ、吸収性を高くし、潤滑性を高くして改良することができる。
【0130】
いくつかの実施態様においては、マイクロ波加熱炉を使用してPVA溶液を調製する。PVA粉末を水に入れ、混合物をマイクロ波加熱炉中で加熱し、溶液を形成する。
【0131】
いくつかの実施態様においては、ヒドロゲルの熱脱水和またはアニーリングをマイクロ波加熱炉中で行う。
【0132】
本発明の一実施態様においては、PVA粉末等の重合体材料を用意する工程、室温よりも高い温度(例えば約50℃〜60℃)で水と混合して溶液を形成する工程、前記溶液に少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施するか、または融点未満の温度、例えば約80℃、に加熱する工程、前記加熱された溶液を常温、例えば室温に冷却して、ヒドロゲル(一般的に一様であり、ヒドロゲル粒子も含むことがある)を形成する工程、および前記ヒドロゲルを変形加工および/または脱水和して、靱性ヒドロゲルを形成する工程、を含んでなる方法により、靱性ヒドロゲルを製造する。別の実施態様においては、所望により、約40℃〜200℃強に加熱することにより、ヒドロゲルを脱水和し、脱PEG化を実施する。
【0133】
本発明の一実施態様は、a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、b)前記ヒドロゲルを、前記ヒドロゲルの融点より低いか、または高い温度に加熱すること、およびc)前記加熱されたヒドロゲルを室温に冷却することを含んでなり、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靱性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶媒に不溶な重合体を含んでなり、前記溶媒が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0134】
本発明の別の態様は、a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、およびb)前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させること、を含んでなり、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0135】
本発明の別の態様は、a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、およびb)前記ヒドロゲルに対して少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施し、前記ヒドロゲルを室温に温めることを含んでなり、前記ヒドロゲル試料が脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものである、方法を提供する。
【0136】
本発明の別の態様は、靱性ヒドロゲルの製造方法であって、a)重合体状材料を用意し、該重合体状材料がPVA粉末である工程、b)該重合体状材料を水および/またはPEGと混合し、溶液を形成する工程、c)該溶液を少なくとも一回の凍結融解サイクルにかけ、ヒドロゲルを形成する工程、およびd)該ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工し、靱性ヒドロゲルを形成する工程を含んでなる、方法を提供する。
【0137】
本発明の別の態様は、a)PVA粉末である重合体材料を用意すること、b)前記重合体材料を水および/またはPEGと、室温より高い温度で混合して、溶液を形成すること、c)前記溶液を常温に冷却して、ヒドロゲルまたはヒドロゲル粒子を形成すること、およびd)前記ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工して、靱性ヒドロゲルを形成すること、を含んでなる、方法を提供する。
【0138】
本発明の実施態様および態様は、下記の内容も包含する。
1.脱水和に続いて再水和し得るヒドロゲルであり、靱性ヒドロゲルが、脱水和に続いて再水和させることができ、a)脱水和によりヒドロゲルの重量が34%減少し、b)再水和により、再水和されたヒドロゲル中に少なくとも約46%の平衡含水量が得られる。
2.二軸延伸されたヒドロゲル。
3.単軸延伸された(チャネルダイ変形加工により)ヒドロゲル。
4.高い限界引張強度を有するヒドロゲル。
5.ヒドロゲルの変形加工方法であって、
a)ヒドロゲルが水および/または一種以上の他の成分(例えばPEG、プロテオグリカン、水溶性重合体、塩、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミン)を含んでなり、追加成分が、完全にまたは部分的に水溶性であり、
b)前記成分が不揮発性であり、
c)前記成分が、少なくとも部分的に水と混和性であり、
d)前記ヒドロゲル重量の少なくとも0.1%が、一種以上の不揮発性成分、例えばPEG等を構成し、
e)前記成分が水と混和し得る重合体、例えばPEO、プルロニック、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等であり、
f)前記成分が、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、アミノ酸等の群から選択され、
g)前記成分がPEG(ここで、i.種々の分子量のPEG、ii.PEGのブレンドである。)、
h)前記ヒドロゲルが、変形加工の前後に脱水和され、例えば
i.脱水和を、完全に、または部分的に水と混和し得る非溶剤(ここで、a.前記非溶剤は、PEG、イソプロピルアルコール、飽和食塩水、ビタミン、およびカルボン酸から選択され、b.非溶剤は、2種類以上の成分、例えば水、PEG、ビタミン、重合体、エステル、プロテオグリカン等を含み、c.混合物である前記ヒドロゲルを融解させるものである。)中に入れることにより行い、
ii.ヒドロゲルを空気中に放置することにより脱水和し、
iii.ヒドロゲルを真空中に放置することにより脱水和し、
iv.ヒドロゲルを真空中に室温で放置することにより脱水和し、
v.ヒドロゲルを真空中に高温で放置することにより脱水和し、または
vi.超臨界CO2中に高温で放置することにより脱水和し、
i)変形加工が単軸方向であるか、または、
j)変形加工がチャネル−ダイにより行われ、
6.水および/または一種以上の他の成分(例えばPEGまたは塩)を含むヒドロゲルの脱水和であり、ここで、
a)前記成分は不揮発性、例えばPEGであり、
b)前記成分は、少なくとも部分的に水と混和性であり、
c)前記ヒドロゲル重量の少なくとも0.1%が、一種以上の不揮発性成分、例えばPEG、炭化水素等を構成し、
d)前記成分は、水と混和し得る重合体、例えばPEO、プルロニック、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、多糖、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、デキストラン硫酸等であり、
e)前記成分は、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、アミノ酸等の群から選択され、
f)前記成分はPEG(ここで、i.種々の分子量のPEG、ii.PEGのブレンドである。)であり、
g)前記脱水和を、非溶剤(ここで、i.前記非溶剤は、PEG、イソプロピルアルコール、飽和食塩水、アルカリ金属の塩の水溶液、ビタミン、カルボン酸等から選択され、ii.前記非溶剤は、2種類以上の成分、例えば水、PEG、ビタミン、重合体、プロテオグリカン、カルボン酸、エステル、等を含む。)中に入れることにより行い、
h)前記脱水和を、ヒドロゲルを空気中に放置することにより行い、
i)前記脱水和を、ヒドロゲルを真空中に放置することにより行い、
j)前記脱水和を、ヒドロゲルを真空中に室温で放置することにより行い、
k)前記脱水和を、ヒドロゲルを真空中に高温で放置することにより行い、
l)前記脱水和を、ヒドロゲルを空気中または不活性ガス中で高温に加熱する(ここで、i.加熱速度が遅い、ii.加熱速度が速い、iii.加熱を真空または空気脱水和に続いて行う。)ことにより行い、そして
m)前記脱水和されたヒドロゲルを
i.水、食塩水溶液、Ringer溶液、塩を加えた水、緩衝溶液、等の中に入れることにより、
ii.相対湿度チャンバー中に入れることにより、または
iii.室温または高温に置くことにより、
行う。
【0139】
上記した各組成物およびそれに付随する態様、ならびに各方法およびそれに付随する態様は、本明細書に含まれる開示内容と一致する様式で、他の態様と組み合わせることができる。
【実施例】
【0140】
本発明を下記の例によりさらに説明するが、これらの例は本発明を、いかなる様式においても、制限するものではない。
【0141】
1.PVA/PEGゲル化溶液の製造
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=118,000)30グラムを冷脱イオン水170グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。この溶解した溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0142】
PEG(約90℃で)52.88グラムを、高温(約90℃で)PVA溶液160グラムと、加熱しながら機械的に攪拌することにより、徐々に混合した。このPVAとPEGの高温混合物をPVA/PEGゲル化溶液と呼ぶ。
【0143】
ゲル化溶液を、90℃に維持した様々なサイズの型の中に注ぎ込んだ。型を断熱性毛布で覆い、放置して室温に冷却させた。この溶液は、室温に冷却することにより、ヒドロゲルを形成した。PVA/PEG溶液のいくつかのバッチを調製し、下記の例に記載するように、様々な寸法およびサイズのゲルを注型した。
【0144】
いくつかの例では、注型したゲルを型から取り出し、さらなる処理にかけた。いくつかの例では、試験に使用した、および/またはそれらの「ゲル化した時の」形態で、すなわちPEGを含む状態で、さらなる処理にかけた。いくつかの例では、ゲルを先ず「脱PEG化」し、次いで試験に使用した、および/またはそれらの「脱PEG化した」形態で、さらなる処理にかけた。「ゲル化した時の」ゲルとは、ゲルを型から取り出した直後に液体をぬぐい取った状態にあることを意味する。「脱PEG化した」ゲルとは、大量の食塩水溶液に浸漬してPEGを除去し、ゲルを、重量測定により確認して平衡になるまで水和させた状態にあるゲルを意味する。
【0145】
2.ヒドロゲル中の平衡含水量(EWC)の測定
下記の方法を用いてヒドロゲル中の平衡含水量(EWC)を測定した。試料を先ず食塩水溶液中に攪拌しながら浸漬し、結合していない分子を除去し、水和を平衡状態にした。ゲルが平衡に達した時を確認するために、ゲルの重量変化を毎日記録し、食塩水溶液を新しい食塩水溶液に交換した。平衡水和レベルに達した後、試料の平衡水和重量を記録した。続いて、ゲル試料を空気対流式加熱炉中、90℃で、大きな重量変動が検出されなくなるまで乾燥させた。次いで、ゲル中のEWCを、水和された重量と脱水和された重量との間の差と、平衡化された水和状態における重量の比により計算した。
【0146】
3.円筒形PVAヒドロゲルの単軸圧縮
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=118,000)30グラムを冷脱イオン水170グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。この溶解した溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0147】
PEG(約90℃で)52.88グラムを、高温(約90℃で)PVA溶液160グラムと、機械的に攪拌することにより、徐々に混合した。混合物は、攪拌中、約90℃に維持した。次いで、混合物溶液を、約90℃に維持した高温型の中に注ぎ込んだ。この方法を使用し、PVA/PEG溶液のいくつかのバッチを調製し、大きな型の中にゲルをキャスティングした。
【0148】
この大きな型は、形状が円筒形であり、PlexiGlass(商品名)管材料(高さ50mm、直径160mm)から製造した。管の一端を、厚さ7mmのPlexiGlass(商品名)シート片を接着することにより、覆った。この型を、先ず空気対流式加熱炉中で約90℃に加熱し、次いでやはり約90℃に維持した高温PVA/PEG混合物を上部まで入れた(完全に満たした)。型の開いた上部を別のPlexiGlass(商品名)シート片で覆い、混合物から蒸発する水を最少に抑え、平滑な上部表面を造り出した。型を断熱性毛布で覆い、16時間かけて室温に冷却させた。冷却により、PVA/PEG水溶液混合物はヒドロゲルを形成した。ヒドロゲルを型から取り外した。ヒドロゲルの高さは46.8mmであり、直径は157.3mmであった。ヒドロゲルは、典型的には形成される際に収縮し、一般的にそれがキャスティングされた型よりも小さい。
【0149】
ゲルを型から取り出し、MTS機械(MiniBionix)に取り付けた2個の平らなプラテン間に配置した。したがって、変形加工は、PVAヒドロゲルの、水とPEGの両方を含む「ゲル化した時」の形態で行った(変形加工の前に食塩水溶液中に攪拌しながら浸漬することにより、PEGを除去することもできる)。ヒドロゲルを金属板同士の間に配置し、円筒の短軸に沿って圧縮した。圧縮は、0.2mm/分の速度で、圧縮比約10の地点まで進行させた。圧縮比は、ヒドロゲルの初期高さと最終高さの比として定義される。圧縮下のゲル高さが約5mmに達した時、その変位を少なくとも24時間保持し、応力緩和平衡を達成する。変形加工中にヒドロゲルが大きく横方向膨脹するため、圧縮されたヒドロゲルの周辺部は、所望の圧縮比に達する前に、プラテンの範囲から外に押し出された。直径が僅かに小さな型を使用するか、またはプラテンの直径を増加し、押出を防止することができる。
【0150】
圧縮から取り出した時のヒドロゲルの中央における最終高さは約8mmであった。ゲルの切断断面を図4に示す。
【0151】
上記の方法を使用し、単軸圧縮により分子の二軸延伸を誘発したヒドロゲル充填材を加工することができる。変形加工の後、ヒドロゲルの厚さを、所望の充填材の厚さに少なくとも等しいか、またはそれ以上にするために、先ず、所望量の圧縮比を決定する。充填材は、この時点で変形加工したヒドロゲルシートから機械加工するか、あるいは、変形加工の後に、変形加工されたヒドロゲル充填材が、充填材の最終的な形状またはそれに近い形状を有するように、変形加工の際に使用したプラテンが、それらの、ヒドロゲルと接触する面上に刻み込んだ充填材の形状を有することができる。この段階で、特に最終的な形状に近い形状を有する充填材には、さらなる機械加工が必要になる。
【0152】
4.ヒドロゲルの溶剤脱水和
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製した。型を断熱性毛布で覆い、16時間かけて室温に冷却させた。冷却により、型の内側でヒドロゲルブロックが形成された。型の寸法は、ヒドロゲルブロックが寸法7mm×25mm×45mmを有するシート形状を有するような寸法であった。このようにして、いくつかの同一のヒドロゲルシートを加工した。
【0153】
ヒドロゲルシートを円筒形の試験試料に切断し、これらの試験試料を異なった媒体中に入れ、重量変化を記録することにより、平衡膨潤および/または平衡脱膨潤(deswelling)の程度を定量した。使用した媒体は、水性飽和NaCl(5.2M)、食塩水(0.9%水性NaCl)、アセトン、イソ−プロピルアルコール、分子量400g/モルのポリエチレングリコール(PEG)であった。円筒状試験試料は、直径9mmの冠状鋸で切断することにより、ヒドロゲルシートから調製した(templated)。各媒体に対して、5個の円筒状試験試料を使用した。
【0154】
先ず、全ての試験片の重量および寸法(直径および高さ)を、冠状鋸で切断した直後の「ゲル化した時の」形態で記録した。次いで、5個の試験試料を、上に挙げたそれぞれの媒体中に浸漬した。これらの試料を、それぞれの媒体を満たしたガラス容器の中に保存し、プラットホームシェーカー上、室温で振とうさせた(Innova200 Platform Shaker, New Brunswick Scientific, Edison, NJ)。全試料の重量および寸法を、最初の浸漬8時間では1時間毎に記録し、毎日の測定を、連続的振とう下で平衡膨潤または脱膨潤に達するまで続行した。ヒドロゲル試験試料は、様々な媒体中に保存している間に、様々な程度に膨潤または脱膨潤した。続いて、全試験試料をそれぞれの媒体から取り出し、平衡再水和に達するまで食塩水中に入れた。重量変化を、最初の食塩水再水和8時間では1時間毎に記録し、毎日の測定を、平衡再水和レベルに達するまで続行した。食塩水溶液を毎日交換し、ヒドロゲル試験試料から出てくる他の媒体を全て除去した。
【0155】
膨潤および/または脱膨潤値を、各測定工程における重量と試料の初期重量との差を、試料の初期重量で割ることにより、計算した。全ての場合で、初期重量は、試料を「ゲル化した時の」形態で、冠状鋸で切断した直後に記録した重量である。
【0156】
ヒドロゲル試料は、食塩水および飽和NaCl溶液中では膨潤し、他の媒体中では脱膨潤した(図5)。PEG400、アセトンおよびIPAはヒドロゲル試料を脱膨潤させた。この脱膨潤は、周囲の媒体中に水が失われたためと考えられる。最初の段階、すなわち媒体浸漬、の際にはヒドロゲル中に媒体が吸収されたと思われる。媒体浸漬に続いて、試料を食塩水中に入れた時、明らかな再水和が起きた。再水和の平衡レベルは、アセトン、PEG400、および飽和NaCl中で予め脱膨潤させたヒドロゲル試料で同等であった。
【0157】
ヒドロゲルを特定の媒体中に浸漬することにより、平衡水和レベルを下げることができる。水和レベルを下げることにより、ヒドロゲルの機械的特性が改良された。
【0158】
この例で記載する溶剤脱水和技術的を使用して充填材を加工することができる。生体内に内移植した後に充填材で達成される最終的な平衡寸法が所望の寸法になるように、溶剤脱水和および/またはそれに続く再水和により引き起こされる寸法変化を考慮する必要がある。また、充填材を、内移植まで、脱膨潤を引き起こすことができる媒体中に保存し、充填材を、その膨潤した状態で人体中に挿入することができ、次いで体液が充填材を膨潤させることができる。
【0159】
5.PVAヒドロゲルのチャネルダイ変形加工
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製した。この溶液を、約90℃に維持した高温型の中に注ぎ込み、カバーをしてヒドロゲルシートを形成した。室温で1日ゲル化させた後、ヒドロゲルを型から取りだした。ヒドロゲルの寸法は54mm×44mm×54mmであった。そのようなヒドロゲルブロック2個を製造した。型から取り出した後、一方のヒドロゲルを、その「ゲル化した時の」形態で直ちに変形加工した。第二のブロックを、先ず(脱PEG化、すなわちPEGを除去し、平衡再水和させるため)食塩水中に攪拌しながら浸漬し、その後、変形加工した。
【0160】
内側チャネル寸法が長さ12”、高さ2”、および幅8”であるアルミニウムチャネルダイを注文製造した。このダイを、MTS加負荷フレームに取り付けた2個の平行な金属板の間に配置した(図6)。長方形プリズム形状のヒドロゲルをチャネルの中央に置き、ダイプランジャーをヒドロゲルの上部表面と接触させて保持した。圧縮は、MTS機械(MTSサーボ−油圧試験機、MTS, Minneapolis MN)上で行い、0.2mm/分の速度で、圧縮比が約10(初期高さ:最終高さ)になるまで進行させた。圧縮下のヒドロゲル高さが約5mmに達した時、その変位を一定に維持し、応力緩和させた。
【0161】
圧縮完了後、ヒドロゲルをチャネルダイから取り出した(図7)。脱PEG化したヒドロゲルの重量は124.4gから55.5gに減少し、その厚さは54mmから6.6mmに減少した。プランジャーは、変形加工によりヒドロゲルブロックの厚さが5mmになるように変位させたが、プランジャーに対する負荷を除去した後、変形加工されたブロックは6.6mmに弾性的に回復した。
【0162】
変形加工したゲルを6個の等しい断片に切断し、他の処理工程にかける試料として使用した。試料のいくつかを食塩水中、室温で、重量測定により確認して平衡水和に達するまで再水和させた。試料のいくつかは室温で、平衡脱水和に達するまで(重量測定により確認)真空脱水和したが、これには5日間を要した。試料のいくつかは、ポリエチレングリコール(PEG400、MW=400g/モル)中に入れ、平衡脱水和に達するまで(重量測定により確認)脱水和したが、これには2日間を要した。各脱水和工程に続いて、いくつかの試料に緩アニーリングを行い、また、いくつかの試料に160℃で短時間アニーリングを行った。短時間アニーリングは、窒素中160℃で、脱水和した試料をすでに160℃に加熱してある加熱炉中に1時間入れることにより、行った(短時間アニーリング)。緩アニーリングは、室温から160℃に約5℃/分で加熱し、続いて160℃に1時間の総アニーリング時間保持することにより行った(緩アニーリング)。短時間または緩アニーリングの後、全ての試料を食塩水中に、重量測定により確認して平衡水和に達するまで浸漬した。最後に、例2に記載する方法を使用してゲルを分析し、EWCを求めた。
【0163】
表1は、チャネル−ダイ変形加工したヒドロゲル試料の、様々な処理スキームに続く平衡重量変化およびEWCを示す。変形加工および再水和の後、ゲルは36%の重量損失を示し、水が失われたことを示唆している。追加の実験も、変形加工程度の増加と共に水損失の程度が増加することを示しており、したがって、変形加工の程度を変えることにより、変形加工されたヒドロゲルの平衡含水量を適切に調整することができる。PEG400脱水和だけでは、EWCに著しい影響を及ぼさなかった。他方、両方のアニーリングスキーム共、EWCを大きく下げた。EWCが低い程、強く、強靱なゲルが製造された。最も強いゲルは、チャネル−ダイ変形加工した脱PEG化ゲルを、真空脱水和に続いてアニーリングすることにより達成された。上記の工程のいずれかを使用して完成した充填材を製造し、所望のEWCを適切に調整することができる。
【0164】
6.PVA/PEGゲルの、90%単軸圧縮までの変形加工
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製した。この溶液を、約90℃に維持した長方形プリズム形状の型(40mm×45mm×50mm)の中に注ぎ込み、断熱性毛布で型を覆い、断熱した。この型を放置して室温に冷却し、ヒドロゲルを形成した。2個のそのようなヒドロゲルブロックを調製した。一方のブロックを、その「ゲル化した時の」形態で使用し、他方を食塩水中に室温で浸漬し、PEGを除去(脱PEG化)し、平衡水和させた。
【0165】
【表1】
【0166】
長方形プリズム形状のゲルを、MTS機械(MTSサーボ−油圧試験機、MTS, Minneapolis MN)に取り付けた2個の平らな金属板の間に配置し、最長軸に沿って圧縮した。圧縮は、0.2mm/分の速度で、圧縮比が約10(初期高さ:最終高さ)になるまで進行させた。圧縮下のヒドロゲル高さが約5mmに達した時、その変位を、応力緩和平衡が達成されるまで、少なくとも24時間一定に維持した。単軸圧縮により、ヒドロゲル分子が二軸延伸された、永久変形加工されたゲルが得られた。変形加工に続いて、ゲルをMTS機械から取り出した。負荷を除いた時、ある程度の弾性反発(弾性変形の回復)があったが、得られたゲルは永久変形していた。単軸変形加工を、ゲル化した時の、および脱PEG化したヒドロゲルの両方で行った。
【0167】
この段階で、医療用装置、例えば関節(股、膝、または肩)挿入機器、を変形加工したPVAゲルから機械加工することができる。
【0168】
単軸圧縮完了時点で、長方形プリズム形状の「ゲル化した時の」ヒドロゲル試料は、長さ41.83mm、幅47.37mm、および高さ49.75mmから、長さ88.29mm、幅97.74mm、および高さ6.4mmに変化していた。脱PEG化されたヒドロゲルの場合、試料の寸法は長さ43.49mm、幅50.01mm、および高さ53.03mmから、長さ93.17mm、幅97.78mm、および高さ6.71mmに変化していた。
【0169】
変形加工したゲルを5個の断片に切断し、各切断試料にその後の処理を施した。
【0170】
「ゲル化し、変形加工した」群および「脱PEG化し、変形加工した」群から得た試料のいくつかを食塩水中、室温で、重量測定により確認して平衡水和に達するまで再水和させた。両方の群から得たヒドロゲル試料のいくつかは室温で、平衡脱水和に達するまで(重量測定により確認)真空脱水和したが、これには5日間を要した。各群から得たヒドロゲルのいくつかは、ポリエチレングリコール(PEG400、MW=400g/モル)中に入れ、平衡脱水和に達するまで(重量測定により確認)脱水和したが、これには2日間を要した。各脱水和工程に続いて、いくつかの試料に緩アニーリングを行い、また、いくつかの試料に160℃で短時間アニーリングを行った。短時間アニーリングは、窒素中160℃で、脱水和した試料をすでに160℃に加熱してある加熱炉中に1時間入れることにより行った(短時間アニーリング)。緩アニーリングは、室温から160℃に約5℃/分で加熱し、続いて160℃に1時間の総アニーリング時間保持することにより行った(緩アニーリング)。短時間または緩アニーリングの後、全ての試料を食塩水中に、重量測定により確認して平衡水和に達するまで浸漬した。最後に、例2に記載する方法を使用してゲルを分析し、EWCを求めた。
【0171】
表2〜3は、変形加工したヒドロゲル試料の、様々な処理スキームに続く平衡重量変化および平衡含水量(EWC)を示す。変形加工の後、ゲル化した状態の試料は、脱PEG化した試料よりも多く再水和されたが、恐らく、ゲル化した状態のヒドロゲル中に存在するPEGが細孔構造を保護し、それらの崩壊を阻止し、これによって、ヒドロゲルの再水和容量が改良されたのであろう。変形加工の直後に再水和した場合のEWCは、ゲル化し、変形加工された試料の方が、脱PEG化され、変形加工された試料よりも高かった。同様に、他の処理スキーム全てに関して、ゲル化した状態の試料は、脱PEG化された試料よりも、EWCが高かった。PEG400脱水和だけでは、EWCに著しい影響を及ぼさなかった。他方、両方のアニーリングスキーム共、EWCを大きく下げた。EWCが低い程、強く、強靱なゲルが製造された。上記の工程のいずれかを使用して完成した充填材を製造し、所望のEWCを適切に調整することができる。
【0172】
【表2】
【0173】
7.PVAヒドロゲルの脱膨潤に対するPEG濃度の影響
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製し、カバーを備えた高温型(高さ7mm×直径2.5mm×幅4.5mm)の中に注ぎ込み、ヒドロゲルシートを形成した。室温で1日ゲル化させた後、成形したヒドロゲルシートを、ドリルプレス(Enco Manufacturing Co, Model 105-1100, Chicago, IL)に取り付けた冠状鋸刃(角膜冠状鋸刃、直径9.5mm、Stradis Medical, Alpharetta, GA)を使用して円筒形ゲルに切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の初期高さ、直径および重量を測定した。これらの円筒形試験試料は、ゲル化後に全く処理にかけてなく、ゲル化溶液中にあったPEGを含むので、「ゲル化した時の」円筒形試験試料と呼ぶ。
【0174】
「ゲル化した時の」試料のいくつかを、分子量400g/モル(PEG400)の100%ポリ−エチレングリコール中に浸漬し、5個の別の「ゲル化した時の」試料を50%ポリエチレングリコール400水溶液に室温で攪拌しながら浸漬した。PEG中に浸漬することにより、PVAヒドロゲルから水が除去され、脱水和および脱膨潤が起きる。円筒形試験試料のPEG浸漬は少なくとも24時間行い、平衡脱水和状態を確保した。
【0175】
【表3】
【0176】
5個の別の「ゲル化した時の」円筒形試験試料は、食塩水中に浸漬し、ヒドロゲルからPEGを除去した(脱PEG化)。
【0177】
100%および50%PEG400中にあったヒドロゲル試料の平衡脱膨潤が達成された時、すなわち各ヒドロゲル重量に大きな変化が検出されなくなった時、これらのヒドロゲル試料をそれぞれの媒体から取り出し、食塩水溶液中に攪拌しながら室温で少なくとも2日間入れ、再水和させ、ヒドロゲルからPEGを除去した。食塩水溶液は、これらの試料を食塩水で浸漬する際に、毎日新しい食塩水と交換した。ヒドロゲル試料が平衡再水和に達し、長時間で重量に大きな変化が検出されなくなった時、ヒドロゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を記録した。
【0178】
PEG浸漬およびそれに続く再水和後のヒドロゲル試料の、重量測定による膨潤および/または脱膨潤を、「ゲル化した時の」状態に対して計算した(表4参照)。
【0179】
【表4】
【0180】
PEG浸漬中のヒドロゲル試料における脱膨潤度は、PEG溶液の濃度により影響を受ける。「ゲル化した時の」ヒドロゲルは、100%PEG400中で約45%、50%PEG400溶液中では約27%脱膨潤した。100%PEG中に浸漬したゲルは、形状が僅かに歪んでいた。各円筒形ヒドロゲルの上部および底部表面の中央区域が僅かに窪んでいたが、これは恐らく、ヒドロゲルのコアおよび表皮における膨潤速度が一様ではないためであろう。対照的に、50%PEG溶液における試料は、脱水和の後に識別できる形状歪みは無かった。
【0181】
100%PEGおよび50%PEG溶液中で膨潤させた試料は、食塩水で浸漬した後、膨潤した。
【0182】
本例の観察は、ヒドロゲル充填材、例えばモザイク形成(mosaicplasty)プラグまたは挿入機器として使用できる充填材の貯蔵規定を決定するのに重要である。例えば、再水和された状態で同一の、または類似の寸法に到達できるゲルは、体空隙中に容易に挿入できるように、ヒドロゲル貯蔵溶液中のPEG濃度を単純に調整することにより、様々な寸法範囲に、ヒドロゲル形状の歪みを最小にして予め縮小することができる。
【0183】
8.PVAヒドロゲルの脱水和に対するPEG分子量の影響
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製し、カバーを備えた、90℃に維持した高温型(高さ7mm×直径2.5cm×幅4.5cm)の中に注ぎ込み、ヒドロゲルシートを形成した。型を断熱性毛布で覆い、室温に冷却させた。室温で1日ゲル化させた後、成形したヒドロゲルシートを、ドリルプレスに取り付けた冠状鋸刃(角膜冠状鋸刃、直径9.5mm、Stradis Medical, Alpharetta, GA)を使用して円筒形ヒドロゲルに切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定した。
【0184】
ヒドロゲル円筒形試料は、それらの「ゲル化した時の」形態で使用した。「ゲル化した時の」形態とは、使用したPVA/PEGゲル化溶液中に存在していた水およびPEGを含むPVAヒドロゲルの形態である。
【0185】
ヒドロゲル試料を、様々な分子量(MW)を有するポリエチレングリコールの50%水溶液中に浸漬し、ヒドロゲル脱膨潤の程度に対するPEGMWの影響を確認した。
【0186】
円筒形ヒドロゲルのいくつかを50%PEG400(PEGMW=400g/モル)水溶液中に、ヒドロゲルのいくつかを50%PEG600(PEGMW=600g/モル)水溶液中に、室温で攪拌しながら、少なくとも24時間浸漬し、平衡化した脱膨潤状態を確保した。ヒドロゲルのいくつかを、PEG脱膨潤のない食塩水中に浸漬し、比較用として使用した。50%PEG400または50%PEG600溶液に浸漬することにより、恐らく水が除去されるために、ヒドロゲル試料の重量が低下し、したがって、50%PEGにヒドロゲル試料を浸漬することにより、脱膨潤が引き起こされる。
【0187】
ヒドロゲル試料の脱膨潤が平衡に達した時、すなわち長時間にわたってヒドロゲル重量に大きな変化が検出されなくなった時、ヒドロゲル試料を食塩水溶液中に攪拌しながら室温で少なくとも2日間入れ、再水和させ、ヒドロゲル試料からPEGを除去した。ヒドロゲル試料から溶出するPEGを除去するために浸漬する際、食塩水溶液を毎日新しい食塩水と交換した。ヒドロゲルが平衡再水和に達し、長時間にわたって重量に大きな変化が無くなった時、ヒドロゲル試料を食塩水溶液から取り出し、液体をぬぐい取り、ヒドロゲル試料の最終的な高さおよび重量を記録した。PEG脱水和およびそれに続く食塩水中再水和後の重量測定による膨潤および/または膨潤を、「ゲル化した時の」状態に対して計算した(表5参照)。すなわち、特定の工程におけるヒドロゲルの脱膨潤百分率または膨潤百分率は、その工程におけるヒドロゲルの重量と、「ゲル化した時の」重量との間の差と、「ゲル化した時の」試料の重量の比である。
【0188】
浸漬の際に使用した50%PEG水溶液におけるPEGの分子量は、「ゲル化した時の」ヒドロゲル試料の脱膨潤程度に僅かに影響を与えた。「ゲル化した時の」ヒドロゲル試料は、50%水性PEG400中で27%、50%水性PEG600中で31%脱膨潤した。PEGMWが高い程、PEG浸漬後にPVAヒドロゲルは大きく脱膨潤した。50%PEG400中および50%PEG600中で脱膨潤したヒドロゲルは、両方共、認められる程の形状の歪みを示さなかった。
【0189】
【表5】
【0190】
ヒドロゲル充填材を加工することができ、様々な媒体での浸漬を使用して機械的特性を適切に調整し、充填材の寸法を管理することができる。そのような方法の一つは、分子量が異なったPEG水溶液中に充填材を浸漬することである。上記の方法は、先ずヒドロゲルからPEGを除去(食塩水中に攪拌しながら浸漬−脱PEG化)し、次いでヒドロゲルをPEG溶液中に浸漬することにより、使用することもできる。
【0191】
9.ヒドロゲルの、脱水和に続いて再水和する容量に対する、PVAヒドロゲルにおけるPEG存在の影響
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製し、長方形の型(44mm×54mm)の中にキャスティングし、厚さ7mmまたは21mmのシートを調製した。型を断熱性毛布で覆い、16時間放置して室温に冷却させた。このようにして、これらの型の中でヒドロゲルを形成した。
【0192】
各厚さ(7mmおよび21mm)のヒドロゲルシート4枚を食塩水中に浸漬し、PEGを除去(脱PEG化)し(I群)、別の4枚の群を「ゲル化した時の」形態に維持した(II群)。両方の群のヒドロゲル試料を先ず秤量し、続いて室温で真空中に置き、脱水和させた。平衡脱水和レベルに達するまで、重量変化を毎日記録した(「ゲル化した時の」II群では5日間、脱PEG化したI群では7日間)。真空脱水和の後、各群から採った1個の試料を食塩水中に直接浸漬し、再水和させた。平衡再水和レベルに達するまで、重量変化を毎日記録した(5〜6日間)。
【0193】
別の7mmヒドロゲルシートの群(III群)を使用し、室温空気脱水和の影響を研究した。この実験には、3枚のヒドロゲルシートを秤量し、次いで空気中に室温(約24℃)で9日間まで放置した。試料の重量変化を毎日記録した。
【0194】
別のヒドロゲルシートの群(IV群)を使用し、ヒドロゲルシートからPEGを除去した後の室温脱水和の影響を研究した。この実験には、3枚のヒドロゲルシートを、室温で、食塩水中で攪拌しながら、平衡水和レベルに達するまで(約6日間)脱PEG化した。続いて、ヒドロゲルシートを秤量し、空気中に室温で9日間まで放置した。重量変化を毎日記録した。
【0195】
真空脱水和に続いて、I群およびII群のそれぞれから採った1個の試料を、すでに160℃に加熱した加熱炉中に1時間入れることにより、窒素中、160℃でアニーリングした(短時間アニーリング)。アニーリングの前および後に、試料の重量および寸法を記録した。各群から採った別の試料を、室温から160℃に約5℃/分で加熱し、続いて160℃に総アニーリング時間1時間保持することにより、アニーリングした(緩アニーリング)。短時間または緩アニーリングの後、全ての試料を食塩水中に、平衡水和に達するまで浸漬した。試料の重量および寸法を毎日記録した。
【0196】
厚さ21mmのゲル化した時の、および脱PEG化したPVA/PEGの平衡含水量を、様々な処理工程で測定した。この目的には、(1)真空脱水和し、続いて再水和させた、(2)真空脱水和し、次いで緩アニーリングし、続いて再水和させた、および(3)真空脱水和し、次いで短時間アニーリングし、続いて再水和させたゲルのそれぞれから3個の試料を切り取った。全試料の平衡重量を測定し、次いで90℃の対流式加熱炉中に入れた。各試料の重量測定を、加熱炉乾燥の第一日に2回、その後は毎日、3日間続行した。全ての試料が加熱炉乾燥1日後に平衡に達した。試料の平衡乾燥重量を使用し、3群の平衡再水和させたゲル中の含水量を計算した。
【0197】
図8は、7mm試料に関する、真空脱水和後の「ゲル化した時の」および脱PEG化した試料の外観の違いを示す。出発ヒドロゲル試料は、真空脱水和の前は不透明であった。真空脱水和の前に脱PEG化したヒドロゲルは、真空脱水和の後に半透明になったのに対し、「ゲル化した時の」形態で真空脱水和した試料は。その不透明性を維持していた。この外観の変化は、「ゲル化した時の」試料における細孔構造が真空脱水和の際に維持されることに帰せられる。「ゲル化した時の」試料中に存在するPEGが、ヒドロゲル中の多孔質空間を占有することにより、真空脱水和の際に細孔崩壊から保護したと思われる。PEGは揮発性の分子ではなく、そのために、真空脱水和の際に試料から水が蒸発するのに対し、PEGは構造中に残留したのである。対照的に、脱PEG化はPEGを除去し、これらのヒドロゲル試料の多孔質構造を水だけで充填した。水の蒸発により、細孔が空になり、その結果、真空脱水和の際にヒドロゲルが崩壊し、これらの試料がより半透明を呈したのである。
【0198】
真空脱水和は、空気脱水和よりはるかに高速で進行し、重量損失の速度は真空中の方がより速く、真空中に放置した試料は、空気中に放置した試料より平衡脱水和または脱膨潤レベルに、より速く到達した。どちらの方法で到達した平衡脱水和値も同等であった。したがって、どちらの脱水和方法でも選択することができる。
【0199】
表6〜7は、7mmのゲル化した時の、および脱PEG化したヒドロゲルの、種々の処理工程の後に到達した平衡再水和レベルの程度を示す。真空脱水和の後、平衡再水和レベルは、緩アニーリング、または短時間アニーリング工程で処理したヒドロゲルにより達成されたレベルよりもはるかに高かった。ゲル化した時の群では、短時間アニーリング工程により達成された再水和の量は最も低かった。脱PEG化された試料は、ゲル化した時の試料より少ない再水和を示した。
【0200】
図9は、様々な処理工程における21mmヒドロゲルシートを示す。ヒドロゲルのゲル化した時の形態におけるPEGの存在により、脱PEG化した、PEGを全く含まないゲルの場合より、真空脱水和による体積脱膨潤は非常に少なくなった。
【0201】
表8〜9は、21mmのゲル化した時の、および脱PEG化したヒドロゲルの、種々の処理工程の後に到達した平衡再水和レベルの程度を示す。真空脱水和の後、平衡再水和レベルは、緩アニーリング、または短時間アニーリング工程で処理したヒドロゲルにより達成されたレベルよりもはるかに高かった。ゲル化した時の群では、短時間アニーリング工程により達成された再水和の量は最も低かった。脱PEG化した試料は、ゲル化した時の試料より少ない再水和を示した。
【0202】
【表6】
【0203】
【表7】
【0204】
ゲル化した時の試料は、脱水和工程のどの一つにおいても、脱PEG化した試料より、かなり高い再水和レベルを示した。真空脱水和後の平衡再水和レベルは、ゲル化した時の、および脱PEG化したゲルに対して、それぞれ−6.3%および−47.4%であった。真空脱水和および短時間アニーリング工程後の平衡再水和レベルは、ゲル化した時の、および脱PEG化したゲルに対して、それぞれ−42%および−80%であった。これは、脱水和の際に多孔質構造の崩壊を阻止するPEGの保護効果を示すさらなる証拠である。これにより、ゲル化した時のヒドロゲルでは、脱水和工程に続いて再水和容量がより高くなるのに対し、脱PEG化した試料は、真空脱水和工程または真空脱水和に続くアニーリング脱水和工程の後、より低い再水和容量を示した。
【0205】
【表8】
【0206】
【表9】
【0207】
上記の方法の一つまたはいくつか、もしくは全てを使用し、ヒドロゲル充填材の機械加工に使用できるヒドロゲル原材料を製造することができる。処理の際に起こる寸法変化を考慮し、所望の充填材サイズおよび形状に到達することができるように、適切に成形した充填材から出発することもできる。その充填材を、上記の方法の一つ、または複数もしくは全てを実施し、最終的な形状または最終的な形状に近い充填材を製造することができる。
【0208】
表10は、様々な処理工程後の、21mmPVA/PEGゲルの平衡含水量(EWC)を示す。再水和した試料のEWCは、真空脱水和に続いてアニーリングを行った試料で、より低かった。水和したゲルを90℃より上に加熱することにより、ゲルの融解を引き起こすが、真空脱水和がゲルの融点を上昇させ、融解させずにアニーリングすることができるので、真空脱水和はアニーリング前の不可欠な工程である。脱PEG化した試料は、それらのゲル化した時の試料よりも低いEWCを示した。
【0209】
【表10】
【0210】
EWC測定の際、厚さ21mmのヒドロゲルシートは、シート全体とは異なった特性を有する表皮層を形成したことが分かった。この表皮は、全体よりも強靱であることが分かった。したがって、表皮(自由表面から最初の3mm)、表面から約5mm下(中間)、および表面から約10mm下(コア)で追加のEWC測定を行った。表11は、ゲル化した時の、および脱PEG化した21mmヒドロゲルシートの両方に対して、様々な処理工程で、これらの深さで測定したEWC値を示す。表皮の存在は、脱PEG化した試料でより明らかであり、全体よりも表皮で、より低いEWCを示した。ヒドロゲル中に特性の勾配を造り出すアニーリング方法を使用することができる。加熱速度が、表皮層の厚さに影響を及ぼし、勾配がどの程度鮮明であるかを支配する。加熱速度が遅い程、勾配はより滑らかであると予想される。
【0211】
10.変形加工したPVAゲルのPEG処理
例1に記載するように変形加工したゲルを調製し、例5に記載するようにCarver Pressで変形加工した。変形加工したゲルをCarver Pressから取り出した後、その変形加工されたゲルを100%PEG400液の中に室温で攪拌しながら24時間浸漬した。PEG400中に浸漬することにより、ゲルから水が部分的〜完全に除去され、したがって、ゲルが部分的〜完全脱水和された。ゲルの高さは変形加工プレスから取り外した時点では6.2mmであり、PEGに24時間浸漬した後は4.36mmに減少した。PEG脱水和に続いて、変形加工されたゲルを食塩水溶液中に攪拌しながら、室温または37℃で入れ、再水和させ、ゲルからPEGを除去した。この工程で、医療用装置、例えば関節(股、膝、または肩)挿入機器、をPVAゲルから機械加工することができる。
【0212】
【表11】
【0213】
11.90%単軸圧縮したPVA/PEGゲルの、形状を有する型の中における追加変形加工
変形加工したゲルを調製し、続いて例10に記載するようにPEG処理を行った。再水和し、変形加工したゲルを、形状を有する型の上部と底部の間に配置した。
【0214】
ゲルおよび型をCarver Press中で上部型と底部型が接触するまで一つに圧縮し、中間のゲルを型の内側形状に一致させた(図10参照)。形状を有する型同士の間に挟まれた、変形加工されたヒドロゲルを、一定変形下に24時間保持した。続いて、変形加工されたヒドロゲルを型から取り出し、100%PEG400中に24時間浸漬することにより、さらにPEG処理した。PEG400から取り出した後、変形加工されたヒドロゲルを食塩水溶液中に室温で入れ、平衡再水和レベルに到達させた。ヒドロゲルは、その平衡水和にあった工程を包含する各工程を通して、その成形された形状を維持していた。最終的なゲルは、挿入機器の形状を得た。
【0215】
12.1回のPEG浸漬および連続的なPEG浸漬の影響
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製し、カバーを備えた、高温型(高さ7mm×深さ2.5mm×幅4.5mm)の中に注ぎ込み、ヒドロゲルシートを形成した。室温で1日ゲル化させた後、成形されたヒドロゲルシートを、ドリルプレスに取り付けた冠状鋸刃(直径9.5mm)を使用して円筒形ヒドロゲルに切断した。「ゲル化した時の」形態で切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定した。続いてヒドロゲルを、分子量400g/モルのポリエチレングリコール(PEG400)中に浸漬することにより、処理した。ヒドロゲルのいくつかを、1回のポリエチレングリコール浸漬工程により、他を複数の浸漬工程により、各工程間で食塩水中再水和しながら、処理した。
【0216】
1回のPEG浸漬では、成形したヒドロゲルシートから切り取ったヒドロゲル円筒を100%PEG400中に、「ゲル化した時の」状態で、機械的に一定攪拌しながら浸漬した。70個のヒドロゲル試料から5個を、下記の時間段階、すなわち1、2、3、4、5、および6、ならびに1、2、3、4、および6日、にPEG400液から取り出した。各時間段階で、液をぬぐい取った後、ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。各ヒドロゲル試料の重量低下%を時間段階のそれぞれで計算した、試料の「ゲル化した時の」重量を、重量%低下計算の初期重量として使用した。PEG400から取り出した後、試料を食塩水中で再水和させた。再水和させたヒドロゲル試料の、「ゲル化した時の」状態からの重量%変化を計算した。
【0217】
連続的なPEG浸漬では、ヒドロゲル円筒を、「ゲル化した時の」状態か、または「脱PEG化した」状態で、PEG浸漬を行った。
【0218】
「脱PEG化した」群では、型から取りだした後、ヒドロゲル試料を先ず食塩水溶液中に攪拌しながら少なくとも2日間浸漬し、PEGを除去し、水和を平衡化した。この段階で、試料の重量および寸法を記録し、続いて試料をPEG400中に浸漬した。
【0219】
「ゲル化した時の」ヒドロゲル円筒および「脱PEG化した」ヒドロゲル円筒の両方を100%PEG400中に室温で攪拌しながら少なくとも24時間浸漬し、各ヒドロゲル試料で水和を確実に平衡化した。PEG脱水和に続いて、試料を食塩水溶液中に室温で攪拌しながら少なくとも2日間浸漬し、PEGを除去し、平衡再水和に到達させた。これによって、1サイクルの、1回PEG脱水和/再水和手順が完了した。同じヒドロゲルをさらなるPEG脱水和/再水和工程にかけた(合計3連続脱水和/再水和工程)。各段階の脱水和および再水和の後、液をぬぐい取った後、ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。
【0220】
各ヒドロゲル試料の重量%変化を、「ゲル化した時の」および「脱PEG化した」群の両方に関して、脱水和および再水和のそれぞれで、測定した。両方の群で、試料の「ゲル化した時の」重量を、重量%低下計算の初期重量として使用した。
【0221】
図11に示すように、100%PEG400中に浸漬したPVAヒドロゲルは、重量測定により急速な脱膨潤を起こし、浸漬6時間以内に約−40%の平衡重量低下に接近した。PEG400中に1日浸漬した後、ヒドロゲル円筒は、平衡脱膨潤に達し、その後、試料の重量にほとんど変化はなかった。したがって、1回のPEG浸漬で到達できる脱膨潤の最大量は、−40%であった。
【0222】
「ゲル化した時の」および「脱PEG化した」群の両方に関して、平衡脱膨潤レベルの増加が、連続PEG浸漬および再水和工程で観察された(表12)。「ゲル化した時の」群では、平衡脱膨潤は、最初のPEG浸漬の際に約−45%であり、この値は、第二PEG浸漬の際に約−71%に、第三PEG浸漬工程の際に約−76%に低下した。前の工程と比較した平衡脱膨潤の差は、脱水和/再水和サイクル数の増加と共に減少した。最後の食塩水中平衡再水和を包含する3回の連続PEG浸漬サイクルが完了した後、「ゲル化した時の」PVAヒドロゲルの重量測定による永久脱膨潤は−36%であった。先にPEG処理を行わずに食塩水中で水和させたヒドロゲル試料は、約+15%の重量増加(膨潤)を示した。対照的に、連続的にPEG処理したヒドロゲル試料は、かなりの緻密化を示し、機械的により強い外観を呈した。
【0223】
【表12】
【0224】
ヒドロゲルの重量%変化は、「ゲル化した時の」重量に対して計算した。例えば、(−)の記号は、本来の「ゲル化した時の」状態からの脱膨潤(重量損失)を表すのに対し、(+)の記号は、「ゲル化した時の」状態からの膨潤(重量増加)を表す。
【0225】
「脱PEG化した」試料群は、全てのPEG浸漬工程で、「ゲル化した時の」群より急速な、重量測定による脱膨潤を示した。各PEG浸漬サイクルの最後に食塩水中で達成された平衡再水和も、「脱PEG化した」群で、「ゲル化した時の」群より低かった。「脱PEG化した」試料は、「ゲル化した時の」群と同等の挙動を示し、PEG浸漬/食塩水再水和工程の数が増加するにつれて、脱水和レベルが連続的に低下した。
【0226】
13.動物軟骨に対して関節作用するヒドロゲルプラグによるピン−オン−ディスク(POD)摩耗試験
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=115,000g/モル)40グラムを、冷脱イオン水160グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した20重量%PVA溶液を調製した。溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリエチレングリコール(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0227】
PEG400(約90℃で)62.22グラムを、高温(約90℃で)PVA溶液200グラムと、加熱しながら機械的に攪拌することにより、徐々に混合した。次いで、混合物溶液を高温型の中に注ぎ込んだ。PVA/PEG溶液のいくつかのバッチを調製し、種々の寸法およびサイズのゲルをキャスティングした。
【0228】
高温PVA−PEG混合溶液を、カバーを備えた高温型(高さ7mm×深さ25mm×幅45mm)の中に注ぎ込み、ヒドロゲルシートを形成した。様々な厚さ、例えば8mmおよび9mm、の他の型も使用し、より厚いヒドロゲルシートを製造した。室温で1日ゲル化させた後、ドリルプレスに取り付けた冠状鋸刃(直径6.5mm股は7.0mm)を使用して円筒形ヒドロゲルに切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定し、「ゲル化した時の」基準重量および寸法として使用した。
【0229】
円筒形ヒドロゲルのいくつかを50%PEG400水溶液または100%PEG400液中に、攪拌しながら室温で少なくとも24時間浸漬し、これらのヒドロゲルプラグから水を部分的に除去した。部分的脱水和により、ヒドロゲルプラグから寸法および重量が減少した。この収縮により、プラグを軟骨中の円筒形空隙の中に容易に挿入することができる。この例で使用するヒドロゲルプラグは、100%PEG400中で脱水和した。
【0230】
成体の雌牛の膝(左側)を動物PODモデルに使用した。X線でこの膝は良好な骨原料を有することが確認された。膝蓋骨および遠位大腿骨の周りの軟質組織を除去した。続いて、帯のこを使用して2個の軟骨試料30mm×15mm×15mmを滑車溝から切り取り、2方向ピン−オン−ディスク(POD)摩耗試験機上の関節対として使用した。軟骨切片の裏側にある準軟骨の骨(subchondral bone)を、ドリルで粗くし、Surgical Simplex P骨セメント(Stryker Howmedica Rutherford, NJ)でステンレス鋼ホルダー上に固定した。このホルダーをPODに取り付け、荷重をかけて2個の軟骨試料間の接触面積を測定した。直径5.0mmドリル、続いて平底ドリルを使用して上軟骨片上に欠損部を造り、深さ約6.mmの円筒形空隙を形成した。この欠損部は接触区域内にあった。空隙の最終寸法は、直径5.2mm、深さ約6.7mmと測定された(図12)。
【0231】
Fuji感圧フィルムを使用し、軸方向負荷890Nの下で接触面積および接触圧を測定した。Fujiフィルムを軟骨表面間に配置し、荷重を2分間作用させた。平均圧は5.0〜6.0MPaであった。
【0232】
下側軟骨片を2方向POD上に取り付け、PODが、X−Yテーブル(Parkers Systems, Rohnert Park, CA)を使用し、軟骨片を5mm×10mmの長方形トラック上、0.5Hzで移動させた。この試験は、100%ウシ血清環境中で行った。血清は、試験の前にペニシリン−ストレプトマイシンと混合し、細菌成長を遅延させ、軟骨を保護した。テーブルは、MTSサーボ−油圧試験機(MTS, Minneapolis MN)上に取り付けた。荷重は、ピーク荷重890Nおよび予備荷重90Nの二重ピークPaul型荷重曲線として作用させた(Bragdonら、Journal of Arthroplasty, 2001. 16(5): p. 658-65)。
【0233】
表13に示すように、ヒドロゲルシートから切り取ったヒドロゲルプラグの初期寸法(表13)は、空隙の寸法(表13)より意図的にやや大きくしてある。最初、ヒドロゲルプラグは直径約6.53mm、高さが8.76mmであり、空隙の寸法は直径約5.2mm、高さが約6.7mmであった。ヒドロゲルプラグを100%PEG中で脱水和して一時的に寸法を収縮させることにより、プラグを軟骨空隙の中に挿入し易くなる。
【0234】
図13は、空隙中に即挿入できる円筒形ヒドロゲルプラグを示す。ヒドロゲルプラグは、100%PEG浸漬の後、部分的に脱水和された(重量測定により、初期のゲル化した時の重量に対して46%脱膨潤した)。
【0235】
図14は、POD試験のために、ウシ膝の軟骨空隙中に挿入されたヒドロゲルプラグを示す。上面図および側面図の両方が、挿入されたヒドロゲルプラグの寸法が空隙の寸法に良く適合していることを示している。空隙の内側にあるヒドロゲルの高さが、周囲の軟骨の高さとほぼ等しいか、またはそれよりほんの僅かに高いことに注意する。
【0236】
ヒドロゲルプラグを挿入した後、軟骨試料をPODに取り付けた。試料は、ウシ血清中に、運動や負荷をかけずに、約1時間保持し、POD試験の前にヒドロゲルプラグを再水和させた。この時点で、別の円筒形ヒドロゲル試料(「浸漬比較用」)を同じ容器の中に入れ、自由浮揚している、閉じ込めていないヒドロゲルプラグの、POD試験を行う際のウシ血清中再水和程度を測定した。
【0237】
挿入されたヒドロゲルプラグは、血清中に1時間露出した後、ある程度の膨潤を示し、周囲の軟骨から僅かに突き出ている(図15)。表14は、POD試験の際の軟骨設定と同じ血清浴中に浸漬した「浸漬比較用」ヒドロゲル円筒における寸法変化を示す。図15における挿入されたヒドロゲルプラグと同様に、浸漬比較用ヒドロゲルプラグは、血清に1時間露出した後、急速に再水和し、完全に再水和した平衡重量および寸法の94%を超えて回復するためと考えられる、再膨潤を示した。
【0238】
軟骨対向面に対する関節作用80,000サイクルの後、ヒドロゲルプラグは、軟骨空隙のさらに内側に位置し、高さが僅かな減少した(図16)。POD試験の160,000サイクル時間の後、このプラグは依然として安定しており、80,000サイクル後の高さと同じプラグ高さを維持していた。ヒドロゲルプラグの目に見える摩耗または裂け目は観察されなかった(図17参照)。
【0239】
【表13】
【0240】
14.PVAヒドロゲルを100%または50%PEG水溶液中に浸漬し、続いて緩アニーリングを行う
例1に記載するように、高温PVA/PEGゲル化溶液を調製し、90℃に維持した高温型(高さ7mm×深さ2.5cm×幅4.5cm)の中に注ぎ込み、型を断熱性毛布で覆い、断熱した。型を放置して室温に冷却させ、ヒドロゲルシートを形成した。室温で1日ゲル化させた後、成形したヒドロゲルシートを、ドリルプレスに取り付けた冠状鋸刃(直径9.5mm)を使用して円筒形ヒドロゲルに切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定し、「ゲル化した時の」基準として使用した。
【0241】
【表14】
【0242】
円筒形ヒドロゲルのいくつかを100%PEG400液に浸漬し、ヒドロゲルのいくつかを50%PEG400水溶液に室温で攪拌しながら30日間浸漬した。100%PEG400または50%PEG400溶液に浸漬することにより、ヒドロゲルから水を部分的〜完全に除去し、それによって、ヒドロゲルを部分的または完全に脱水和した。
【0243】
100%PEG浸漬したヒドロゲル試料および50%PEG浸漬した試料を個別に食塩水溶液中に室温で攪拌しながら入れ、再水和およびヒドロゲルからのPEG除去を6日間行った。浸漬中、毎日、食塩水溶液を新しい食塩水と交換した。ヒドロゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を、毎日、液をぬぐい取った後に記録した。PEG脱水和およびそれに続く食塩水中再水和の後、ヒドロゲルの重量%変化を、「ゲル化した時の」状態に対して計算した。次いで、ゲルをさらに分析し、例2に記載するように、平衡含水量を求めた。
【0244】
1時間の緩アニーリング群
100%PEG400浸漬したゲル試料および50%PEG400浸漬した試料を、液をぬぐい取り、室温から160℃に約5℃/分で加熱し、続いて160℃に1時間の総アニーリング時間保持することにより、アニーリングを行った(緩アニーリング)。アニーリング前後のゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。アニーリングの後、試料を食塩水溶液中に攪拌しながら室温で浸漬し、再水和およびヒドロゲルからのPEG除去を6日間行った。浸漬中、毎日、食塩水溶液を新しい食塩水と交換した。ゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を、毎日、液をぬぐい取った後に記録した。PEG脱水和、アニーリングおよびそれに続く食塩水中再水和の後、ヒドロゲルの重量%変化を、「ゲル化した時の」状態に対して計算した。次いで、ゲルをさらに分析し、例2に記載するように、平衡含水量を求めた。
【0245】
5時間の緩アニーリング群
100%PEG400浸漬したゲル試料および50%PEG400浸漬した試料を、液をぬぐい取り、室温から160℃まで1時間、さらに160℃で4時間保持の緩アニーリングを行った。アニーリング前後のゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。アニーリングの後、ゲルを食塩水溶液中に攪拌しながら室温で浸漬し、ヒドロゲルの再水和およびPEG除去を6日間行った。浸漬中、毎日、食塩水溶液を新しい食塩水と交換した。ヒドロゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を、毎日、液をぬぐい取った後に記録した。PEG脱水和、アニーリングおよびそれに続く食塩水中再水和の後、ゲルの重量%変化を、「ゲル化した時の」状態に対して計算した。次いで、ゲルをさらに分析し、例2に記載するように、平衡含水量を求めた。
【0246】
比較用試料群および1時間および5時間の緩アニーリング群全てが、室温における食塩水溶液中浸漬約1日で平衡再水和に達した。
【0247】
【表15】
* 各工程におけるヒドロゲルの総重量%変化は、「ゲル化した時の」重量に対して計算した。例えば、(−)の記号は、本来の「ゲル化した時の」状態からの脱膨潤(重量損失)を表すのに対し、(+)の記号は、「ゲル化した時の」状態からの膨潤(重量増加)を表す。
a PEG400脱水和工程と緩アニーリング工程との間の重量%変化を表す。
b 緩アニーリング工程と食塩水中平衡再水和の間の重量%変化を表す。
【0248】
ヒドロゲル試料は、表15に示すように、PEG400溶液中で重量が低下、すなわち脱膨潤した。平衡重量損失は、50%PEG400溶液中で約30%、100%PEG400溶液中で40%であった。緩アニーリングは、さらなる重量損失を引き起こした。1時間および5時間の緩アニーリングは、同じ量の、約20%の、さらなる重量損失を引き起こし、「ゲル化した時の」重量から総重量損失が約50%になった。50%PEG400中に浸漬することにより処理し、1時間および5時間アニーリングしたヒドロゲルの両方が、アニーリングの後、同じ程度に再水和されたが、「ゲル化した時の」重量の−35%に過ぎなかった。他方、50%PEG400脱水和した比較用試料(緩アニーリングしなかった)の食塩水中再水和は、はるかに高い平衡再水和レベルを示した。
【0249】
緩アニーリング処理の後、ヒドロゲル試料の表面が残留PEGで僅かに濡れていることが分かった。したがって、緩アニーリングの際のさらなる脱膨潤には、PEGの損失ならびに水の損失が含まれる。
【0250】
PEG脱水和後のアニーリングは、ヒドロゲル充填材の製造に使用できる。平衡再水和レベルは、アニーリング工程の前に使用するPEG溶液の濃度に基づいて適切に調整することができる。
【0251】
【表16】
【0252】
表16は、ゲル化した時の試料の、上記の様々な処理工程の後の平衡含水量(EWC)を示す。PEG400脱水和により、EWCが僅かに増加した。遅い、および短時間アニーリングの両方が、PEG400脱水和した試料のEWCをさらに減少させた。脱水和工程の際に使用したPEG400溶液の濃度は、続いて再水和させた、またはアニーリングし、次いで再水和したゲルのEWCに影響しなかった。
【0253】
15.5サイクルの凍結融解PVA/PEGヒドロゲルの脱水和および再水和
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=115,000)30グラムを、冷脱イオン水170グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリ(エチレングリコール)(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0254】
高温PEG(約90℃で)52.88グラムを、高温(約90℃で)PVA溶液160グラムと、加熱しながら機械的に攪拌することにより、徐々に混合した。次いで、混合物溶液を高温型(高さ7mm×深さ25mm×幅45mm)の中に注ぎ込み、カバーで密封し、ヒドロゲルシートを形成した。次いで、この型を直ちに−17℃の冷凍機の中に16時間入れ、取り出し、室温で8時間融解させた。これを1「凍結融解(FT)」サイクルとする。この凍結融解処理を5サイクルまで繰り返し、5サイクル凍結融解PVA/PEGヒドロゲルを形成した。ヒドロゲルシートを型から取りだした後、冠状鋸刃(直径6.5mm)を使用して円筒形試料に切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定し、「凍結融解した」基準とした。この段階では、ヒドロゲル試料がPVA、PEG、および水を含むことに注意する。
【0255】
PEG脱水和した群
凍結融解処理した円筒形ヒドロゲル試料のいくつかを100%PEG400液中に、攪拌しながら室温で7日間浸漬した。100%PEG中に浸漬することにより、ヒドロゲルから水が除去された。7日間のPEG400浸漬に続いて、これらの試料を、すでに160℃に加熱した加熱炉中に1時間入れることにより、窒素中、160℃でアニーリングした(短時間アニーリング)。次いで、アニーリングした試料を、平衡再水和に達するまで、室温で食塩水溶液中に入れた。PEG400処理したヒドロゲル試料のいくつかを、アニーリングせずに、食塩水溶液中に入れて再水和させた。
【0256】
真空脱水和した群
凍結融解処理した円筒形ヒドロゲル試料のいくつかを真空中、室温で7日間脱水和した。真空脱水和により、ヒドロゲル試料が脱水和された。7日間の真空脱水和に続いて、これらの試料を、短時間アニーリングにより、さらに脱水和した。次いで、アニーリングした試料を、平衡再水和に達するまで、室温で食塩水溶液中に入れた。真空処理したヒドロゲル試料のいくつかを、アニーリングせずに、食塩水溶液中に入れて再水和させた。
【0257】
PEG脱水和および真空脱水和した試料群の両方に対して、アニーリングの前および後のゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。同様に、試料を食塩水溶液中に攪拌しながら室温で浸漬し、ヒドロゲルの再水和およびPEG除去を行った。浸漬中、毎日、食塩水溶液を新しい食塩水と交換した。ゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を、毎日、液をぬぐい取った後に記録した。PEG脱水和、アニーリングおよびそれに続く食塩水中再水和の後、ヒドロゲルの重量%変化を、「凍結融解させた時の」状態に対して計算した。
【0258】
凍結融解した時のゲルは、食塩水溶液中で約29%膨潤した。この膨潤は、ゲルと食塩水溶液との間でPEG/水が交換された結果であろう。凍結融解した時のゲルは、PEG中に浸漬した、または真空中に入れた時に、それぞれ約−21%および−60%脱膨潤した。脱膨潤の程度は、PEG中よりも、真空中の方がはるかに大きかった。脱膨潤したゲルを食塩水中に入れて再水和させた時、PEGおよび真空脱水和した試料の平衡重量は、凍結融解した時の重量から、それぞれ27および36%変化した。短時間アニーリングは、真空脱水和後のゲル重量に影響しなかったが、PEG脱水和されたゲルは、それらの凍結融解した時の重量から、−43%脱膨潤した。短時間アニーリングに続く平衡再水和により、PEG脱水和された試料は、真空脱水和された試料より、凍結融解した時の重量に関して、より大きい収縮(約−16%)を示した。したがって、短時間アニーリングを凍結融解処理したPVA/PEGゲルで使用する場合、真空脱水和よりもPEG脱水和により、より緻密なヒドロゲルを得ることができる。これらの、より緻密なゲルは、緻密でないゲルよりも、靱性も高かった。
【0259】
16.5サイクルの凍結融解15%PVAヒドロゲルの脱水和および再水和
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=115,000)30グラムを、冷脱イオン水170グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。
【0260】
高温PVA溶液を高温型(高さ7mm×深さ25mm×幅45mm)の中に注ぎ込み、カバーで密封し、ヒドロゲルシートを形成した。次いで、この型を直ちに−17℃の冷凍機の中に16時間入れ、取り出し、室温で8時間融解させた。これを1「凍結融解(FT)」サイクルとする。この凍結融解処理を5サイクルまで繰り返し、5サイクル凍結融解15%PVAヒドロゲルを形成した。ヒドロゲルシートを型から取りだした後、冠状鋸刃(直径6.5mm)を使用して円筒形試料に切断した。切断後、各円筒形ヒドロゲル試料の高さ、直径および重量を測定し、「凍結融解した時の」基準とした。
【0261】
【表17】
* 各工程におけるヒドロゲルの総重量%変化は、「凍結融解した時の」重量に対して計算した。(−)の記号は、本来の「凍結融解した時の」状態からの脱膨潤(重量損失)を表すのに対し、(+)の記号は、「凍結融解した時の」状態からの膨潤(重量増加)を表す。固体含有量または平衡含水量は、下記の例と比較するのに必要である(HSB)。
【0262】
PEG脱水和した群
凍結融解処理した円筒形ヒドロゲル試料のいくつかを100%PEG400液中に、攪拌しながら室温で7日間浸漬した。100%PEG中に浸漬することにより、ヒドロゲルから水が除去された。7日間のPEG400浸漬に続いて、これらの試料を、すでに160℃に加熱した加熱炉中に1時間入れることにより、窒素中、160℃でアニーリングした(短時間アニーリング)。次いで、アニーリングした試料を、平衡再水和に達するまで、室温で食塩水溶液中に入れた。PEG400処理したヒドロゲル試料のいくつかを、アニーリングせずに、食塩水溶液中に入れて再水和させた。
【0263】
真空脱水和した群
凍結融解処理した円筒形ヒドロゲル試料のいくつかを真空中、室温で7日間脱水和した。真空脱水和により、ヒドロゲル試料が脱水和された。7日間の真空脱水和に続いて、これらの試料を、短時間アニーリングにより、さらに脱水和した。次いで、アニーリングした試料を、平衡再水和に達するまで、室温で食塩水溶液中に入れた。真空処理したヒドロゲル試料のいくつかを、アニーリングせずに、食塩水溶液中に入れて再水和させた。
【0264】
PEG脱水和および真空脱水和した試料群の両方に対して、アニーリング前後のゲル試料の高さ、直径および重量を記録した。同様に、試料を食塩水溶液中に攪拌しながら室温で浸漬し、ヒドロゲルの再水和およびPEG除去を行った。浸漬中、毎日、食塩水溶液を新しい食塩水と交換した。ゲル試料の最終的な高さ、直径および重量を、毎日、液をぬぐい取った後に記録した。PEG脱水和、アニーリングおよびそれに続く食塩水中再水和の後、ヒドロゲルの重量%変化を、「凍結融解させた時の」状態に対して計算した。
【0265】
【表18】
* 各工程におけるヒドロゲルの総重量%変化は、「凍結融解した時の」重量に対して計算した。(−)の記号は、本来の「凍結融解した時の」状態からの脱膨潤(重量損失)を表すのに対し、(+)の記号は、「凍結融解した時の」状態からの膨潤(重量増加)を表す。
【0266】
凍結融解した時のゲルは、食塩水溶液中で約−16%脱膨潤した。この脱膨潤は、ゲルの硬化が続行した結果であると思われ、硬化は、ゲルの架橋密度を増加させ、水を追い出すことができる。凍結融解した時のゲルは、PEG中に浸漬した、または真空中に入れた時に、それぞれ約−75%および−81%脱膨潤した。脱膨潤の程度は、PEG中よりも、真空中の方がはるかに大きかった。脱膨潤したゲルを食塩水中に入れて再水和させた時、PEGおよび真空脱水和した試料の平衡重量は、凍結融解した時の重量から、それぞれ−31および−49%変化した。短時間アニーリングは、使用した2種類の脱水和方法のどちらの後でも、ゲル重量に影響しなかった。短時間アニーリングに続く平衡再水和により、PEG脱水和された試料は、真空脱水和された試料より、凍結融解した時の重量に関して、かなり大きい収縮(約−63%)を示し、事実、それらの凍結融解した時の重量に対して重量増加(約2%)を示した。したがって、短時間アニーリングを凍結融解処理したPVAゲルで使用する場合、真空脱水和よりもPEG脱水和により、より緻密なヒドロゲルを得ることができる。これらの、より緻密なゲルは、緻密でないゲルよりも、靱性も高かった。
【0267】
17.PVAヒドロゲルの二軸圧縮に対するPEG存在の影響
ポリ(ビニルアルコール)(PVA、MW=115,000)30グラムを、冷脱イオン水170グラムに加え、加熱しながら約2時間攪拌し、完全に溶解した15重量%PVA溶液を調製した。溶解したPVA溶液を空気対流式加熱炉(DKN600、Yamato)中に90℃で約16時間保持した。ポリ(エチレングリコール)(PEG、MW=400)を空気対流式加熱炉中で90℃に加熱した。
【0268】
高温PEG(約90℃で)52.88グラムを、高温(約90℃で)PVA溶液160グラムと、加熱しながら機械的に攪拌することにより、徐々に混合した。次いで、混合物溶液を長方形プリズム形状の高温(約90℃)型(40mm×45mm×50mm)の中に注ぎ込んだ。型を、断熱性毛布の下で放置し、24時間かけて室温に冷却した。このようにして、2個のゲルブロックを製造し、それぞれの重量を記録した。
【0269】
ゲルブロックの一方を、その「ゲル化した時の」、したがって、PEGを含む状態で使用した。もう一つのゲルブロックを、先ず食塩水溶液中に攪拌しながら浸漬してPEGを除去し、1日かけて平衡再水和に到達させた。このブロックを「脱PEG化した」ゲルと呼ぶ。脱PEG化したゲルブロックの重量を測定した。次いで、2個のブロックを単軸圧縮下で変形加工した。
【0270】
次いで、ゲルブロックを、MTS機械(MiniBionix)に取り付けた2個の平らなプラテン間に配置することにより、個別に変形加工した。変形加工は、単軸方向であった。圧縮は、0.2mm/分の速度で、圧縮比(最初と最後の高さの比)10に達するまで進行させた。圧縮比10に達した時、その変位を、平衡応力緩和に達するまで、少なくとも24時間一定に保持した。変形加工した両方のゲルを秤量した。単軸圧縮の後、両方の変形加工したゲルを、平衡再水和に達するまで、食塩水溶液中に浸漬した。ゲルを、その再水和された状態で再度秤量した。ゲルの、「ゲル化した時の」状態からの重量%変化を、様々な処理工程で計算した。
【0271】
単軸圧縮が完了した時、長方形プリズム形状の「ゲル化した時の」ヒドロゲル試料の寸法が、そのゲル化した時の形態における長さ41.83mm、幅47.37mmおよび高さ49.75mmから、長さ88.29mm、幅98.74mm、および高さ6.4mmに変化した。脱PEG化したヒドロゲルの場合、試料寸法は、脱PEG化した状態における長さ43.49mm、幅50.01mm、および高さ53.03mmから、変形加工工程に続く長さ93.17mm、幅97.78mm、および高さ6.71mmに変化した。
【0272】
変形加工したゲルを食塩水中で再水和させた時、PEGの存在下で圧縮された「ゲル化した時の」試料は、PEGの非存在下で「脱PEG化した」試料よりも、多くの異方性再膨潤を示した。
【0273】
【表19】
* 各工程におけるヒドロゲルの総重量%変化は、「ゲル化した時の」重量に対して計算した。(−)の記号は、本来の「ゲル化した時の」状態からの脱膨潤(重量損失)を表すのに対し、(+)の記号は、「ゲル化した時の」状態からの膨潤(重量増加)を表す。
【0274】
表19は、製造の様々な工程におけるゲルの重量%変化を示す。脱PEG化したゲルは、脱PEG化処理の際に重量が約13%増加しているが、これは、ゲル中の水/PEG交換およびPEGの非存在下でさらに膨潤すること、および水吸収の増加によるものであろう。単軸圧縮は、ゲル試料中で重量損失を誘発するが、これは、ゲルから水および/またはPEGが溶出することに帰せられる。重量損失は、ゲル化した時のゲルよりも、より多くの水を含む脱PEG化されたゲルの方が大きく、これは、変形加工の際に追い出される主要成分が水であることを示している。その後の食塩水溶液中における再水和に続いて、ゲル化した時のゲルは、そのゲル化した時の状態から全体で8%の重量損失を示し、対照的に、脱PEG化した試料では50%損失である。したがって、変形加工を大型分子、例えばPEG(400g/モル)、の存在下で行う場合、そのゲルは、大型分子の非存在下で変形加工した場合よりも、より高い水和容量を有する。大型分子は、変形加工の際にゲルの多孔質構造中に残り、構造の崩壊を阻止し、その結果、大きなひずみ塑性変形加工の後でも、これらの保護された細孔中への水吸収が可能になると推測される。他方、大型分子が存在しない場合、変形加工の際に水が細孔から絞り出され、細孔が崩壊する。その後の再水和の際に、水吸収に利用できる細孔の数が減少しているために、変形加工されたゲルの再水和能力は大きく低下する。
【0275】
上記の他の例では、大型分子が高温アニーリングの際に細孔を崩壊から保護し、ゲルの再水和容量が改良されることも示されている。
【0276】
PEGのような大型分子を含むヒドロゲルから出発するか、またはヒドロゲルに大型分子を含浸させ、その、あらゆる種類の変形加工に続く再水和容量を改良することができる。これは、延伸されたヒドロゲルにおける含水量を最大限にする必要がある場合に、特に有用である。
【0277】
18.凍結融解の際の、PEG存在の影響
PVAを脱イオン水に連続的に攪拌しながら90℃で溶解させることにより、15%PVA溶液を調製した。得られた溶液を遠心分離して気泡を除去し、加熱し、約90℃に維持した長方形のガラス製の型(45mm×70mm×7mm)の中に注ぎ込んだ。この型を、90℃に維持したガラス製カバーで覆い、その型を、やはり90℃に維持した2個の厚さ20mmのステンレス鋼製ブロックの間に挟んだ。この挟んだ型を直ちに−20℃の冷凍機の中に入れ、そこに16時間保持し、1冷凍サイクルとした。続いて、挟んだ型を冷凍機から取り出し、第一融解サイクルの間、放置して室温に温めた。凍結および融解をさらに4回繰り返し、合計で5回の凍結融解サイクルにかけた。これらのゲルをFT−PVAと呼ぶ。
【0278】
この5サイクル凍結融解方法を、PEG含有PVA出発溶液で行った。高温15−28PVA/PEGゲル化溶液を、例1に記載するようにして調製した。得られた溶液を上記のように処理し、5回凍結融解処理したPVA/PEGヒドロゲルを得た。これらのゲルをFT−PVA/PEGと呼ぶ。
【0279】
両方の凍結融解ゲルを、それぞれ30個(合計60個)の円筒形試料に6.5mm冠状鋸刃で切断した。これらの試料を、食塩水(水中0.9%NaCl)を含む個別の容器中で浸漬し、5xFT15%PVAゲルの溶解挙動を試験した。10日間にわたって、両群の3個の試料を規則的な間隔で食塩水から取り出し、重量測定により確認して平衡脱水和に達するまで、90℃の空気対流式加熱炉中に入れた。固体含有量(PVA凍結融解ゲルではPVAのみ、PVA/PEG凍結融解ゲルではPVAとPEG)を、重量測定により、ヒドロゲルの乾燥重量をその水和された重量で割ることにより、求めた。
【0280】
FT−PVAの再水和能力に対する真空脱水和持続時間の影響も調査した。6個の円筒形FT−PVA試料を室温で真空中に入れた。1日後に3個の試料を、残りの3個を5日後に真空から取り出した。全ての試料を真空脱水和の直後に食塩水中に浸漬し、重量測定により確認して平衡再水和に到達させた。FT−PVA/PEGヒドロゲル試料は、5日間の真空脱水和とそれに続く再水和のみ実施した。
【0281】
さらに、FT−PVAおよびFT−PVA/PEGに対するアニーリングの影響を試験した。各FT−PVAおよびFT−PVA/PEGの3個の円筒形試料を、先ず真空下、室温で5日間脱水和し、続いて、すでに160℃に加熱した加熱炉中に1時間入れることにより、窒素雰囲気下でアニーリングした(短時間アニーリング)。試料の重量変化を、真空脱水和の後、およびアニーリングの後に再度測定した。アニーリングに続いて、全ての試料を食塩水中で少なくとも5日間再水和させた。最後に、これらの試料の平衡含水量(EWC)を、例2に記載する方法により測定した。
【0282】
【表20】
【0283】
【表21】
【0284】
水和したFT−PVAの平均重量は、食塩水中で貯蔵する間に減少した。これは、以前はPVAが食塩水中に溶解したためと考えられていた。しかし、PVA含有量測定は、10日間の間に測定可能な変化を示さず、FT−PVAゲルが食塩水貯蔵中に硬化、すなわち結晶化し続けたことを示唆しており、そのために、水を追い出し、重量が失われたように見えるのであろう。他方、FT−PVA/PEGゲルは、食塩水貯蔵中に重量増加を示した。食塩水貯蔵中に、PEGが試料から外に拡散し、水が試料の中に拡散すると予想される。恐らく、水の吸収はPEG損失より大きく、そのためにFT−PVA/PEG試料における見掛け上の重量増加になったのであろう。
【0285】
表20〜21は、様々な処理工程の後の重量変化を示す。真空の持続時間は、ゲルの脱水和程度にあまり影響せず、これらのサイズの試料で平衡に達するのに、1日の真空脱水和で十分であることを示している。短時間アニーリングは、真空脱水和したゲルの重量に影響しなかった。FT−PVA/PEGゲルは、FT−PVAよりも、真空脱水和による重量損失が小さい。同じことが、その後に続く短時間アニーリング工程にも当てはまる。FT−PVA/PEGゲルは、FT−PVAゲルよりも、大きく再水和された。真空脱水和、短時間アニーリング、および再水和させたFT−PVA/PEGのEWCは、FT−PVAのそれよりも高かった。FT−PVA/PEGの、脱PEG化および食塩水中再水和後のEWCは、86%であり、真空脱水和とそれに続く短時間アニーリングにより、FT−PVA/PEGのEWCは83%に低下しただけであった。FT−PVAのEWCは81%であり、真空脱水和とそれに続くアニーリングにより、48%に低下し、非常に強靱で、弾性の透明ゲルを形成した。
【0286】
19.PEG脱水和されたPVA/PEGゲルの、75%単軸圧縮への変形加工
PVA/PEGゲルを例1に記載するようにして円筒形状で調製し、約90℃に維持した高温型(直径44mm×高さ40mm)の中に注ぎ込んだ。この型を絶縁毛布の下で室温に冷却し、ゲル化した時のヒドロゲルを形成した。このヒドロゲルを型から取り出し、100%PEG中に攪拌しながら入れ、3時間脱水和してから変形加工した。続いて、このヒドロゲルをCarver Hydraulic Press中で変形加工した。ゲルの初期高さは37mmであり、変形加工後の最終ゲル高さは5mmであった。変形加工工程の後、ゲルを100%PEG中に攪拌しながら24時間浸漬し、続いて食塩水溶液中で攪拌しながら再水和させた。再水和の後、変形加工したゲル試料の最終的なゲル高さは約10mmであった。ゲル化した時の状態における初期ゲル高さと、変形加工後の再水和に続く最終ゲル高さの総変形加工比は約75%であった。
【0287】
20.変形加工により改良された面内剛性
例19で調製した変形加工されたゲルを、MTS機械を使用して試験し、その圧縮変形加工挙動を変形加工していない比較用ゲルと比較して確認した。75%変形加工したゲル試料の厚さは約10mmであった。比較用ゲル試料は、高温15/28PVA/PEG混合物溶液を型の中でゲル化させることにより調製し、厚さ10mmのシートを得た。変形加工したゲルと変形加工していないゲルの両方を切断し、正方形のブロックの形状を有する試験試料(16mm×17mm×10mm)を得た。これらの試験試料を37℃の食塩水中に1日間入れ、次いで個別にMTS機械上で試験した。試験試料を2個の平らな金属製プラテン間に配置し、10mm/分の速度で圧縮した。一定の変形速度を維持するのに必要な負荷は、変位の関数として得た。
【0288】
図18は、変形加工した、および変形加工していない試験試料の負荷変位挙動を示す。変形加工した試験試料は、変形加工していない試験試料よりも、剛性がより高い変形加工挙動を示した。特定の負荷レベルで、変形加工していない比較用ヒドロゲルは、予め変形加工したヒドロゲルよりも、かなり高い変位を示した。永久的変形加工を加えることにより、あらゆるヒドロゲルの剛性を増加させることができる。変形加工レベルが高い程、剛性を高くすることができる。
【0289】
21.ヒドロゲルのクリープ挙動
上記の例から得たヒドロゲル試料を直径16mmの冠状鋸で機械加工し、食塩水中、40℃で少なくとも24時間平衡化させてから、クリープ試験を開始した。ここに含めた例のいくつかは、冠状鋸機械加工の前に照射した。照射の前に、ヒドロゲルシートを食塩水中に入れ、食塩水溶液中で照射した。照射は、2.5MeVのVan de Graaf発生器を使用して行った。25kGyまたは100kGy放射線量をヒドロゲルシートに作用させた。冠状鋸機械加工は、照射の後に行い、クリープ試料を調製した。
【0290】
ヒドロゲルクリープ試験は、MTS(Eden Prairie, MN)858 Mini Bionixサーボ油圧機械で行った。直径約16mm、高さ5〜10mmの円筒形ヒドロゲル試料をステンレス鋼製圧縮板の間に配置して試験した。試験開始の前に、上側および下側圧縮板を一つに合わせ、この位置でLVDT変位をゼロにした。試料を下側板上に載せた後、上側板を、クリープ試料の上表面と接触するまで下降させた。MTS上のLVDTからの読みを試料の高さとして記録した。
【0291】
【表22】
【0292】
圧縮負荷は、最初に50N/分の速度でクリープ負荷100Nに増加させた。この負荷を10時間維持した。続いて負荷を50N/分の速度で、回復負荷10Nに減少させた。この負荷も10時間一定に保持した。加負荷および負荷除去サイクルの間、2秒間毎に時間、変位および負荷の値を記録した。データを圧縮ひずみ vs. 時間としてプロットし、上記の様々なヒドロゲル処方物のクリープ挙動を比較した(図19参照)。
【0293】
本例では、PVAヒドロゲルのクリープ耐性を多くの方法で改良できることが立証される。例えば、放射線架橋がPVAヒドロゲルのクリープ耐性を増加した。同様に、チャネル−ダイにより予め加えた永久的変形がPVAヒドロゲルのクリープ耐性を増加させた。真空脱水和に続くアニーリングの影響もクリープ耐性を増加させた。これらの方法の多くを、多くの組合せで使用し、ヒドロゲルのクリープ耐性を適切に調整することができる。
【0294】
22.クリープ耐性に対する複数の加負荷/負荷除去の影響
本例においては、2個のヒドロゲル試料を使用した。一方の試料は、脱PEG化し、食塩水溶液中で平衡化させた15/28PVA/PEGゲルである(例1)。他方の試料は、先ず脱PEG化し、次いでチャネル−ダイ中で圧縮比10に変形加工し、続いて100%PEG400中で脱水和し、最後に食塩水溶液中で平衡化させた15/28PVA/PEGゲルである。両方のシートは、厚さが約10mmであった。
【0295】
脱PEG化したヒドロゲルシートを16mm冠状鋸で機械加工し、円筒形試験試料を得た。この試験試料は、試験の前に、40℃の食塩水中に少なくとも24時間入れた。続いて、円筒形試験試料をMTS機械の2個の金属板の間に入れ、40℃の食塩水中に浸漬した。MTS機械により100Nの一定負荷を10時間作用させ、続いて負荷を10Nに下げ、10Nの一定負荷をさらに10時間維持した。この全サイクルが1回の加負荷/負荷除去サイクルを構成し、例21に記載するサイクルと同一である。この加負荷/負荷除去サイクルを3回繰り返した。加負荷/負荷除去サイクルの間、円筒形ヒドロゲルの変形程度をMTS機械上で時間との関係で測定した。
【0296】
図20は、3回の加負荷/負荷除去サイクルの際の圧縮ひずみと時間の関係を示す。最初の加負荷サイクルの際、100Nの負荷をかけた時、大きな弾性変形約59.5%があった。これに続いて、10時間の一定負荷中に粘弾性変形があり、総変形レベルが77.4%に達した。10時間の完了後、負荷を10Nに減少した時、弾性回復13.4%があり、全体的な変形が約64%になった。その後の10時間負荷除去サイクルでは、クリープ変形にほとんど回復は無かった。
【0297】
多サイクルの加負荷/負荷除去を使用してヒドロゲル試料をクリープ処理し、それらのクリープ耐性を増加させた。加負荷および負荷除去サイクルを繰り返すと、その後の加負荷サイクルの際のクリープ変形程度が減少し、材料のクリープ耐性が増加したことを示している。この方法を使用し、挿入機器における用途向けヒドロゲルのクリープ耐性を改良することができる。例えば、大きなヒドロゲルブロックを、2個のある形状を有する金属板同士の間で複数回の加負荷/負荷除去サイクルで変形させ、クリープ耐性が改良された、最終的な形状に近い充填材を得ることができる。あるいは、大きなヒドロゲルブロックを、2個の金属板同士の間で、複数回の加負荷/負荷除去サイクルにかけて変形させ、そのクリープ耐性を改良することができる。次いで、変形加工したヒドロゲルを、所望の充填材の形状に機械加工することができる。この充填材を包装し、滅菌することができる。
【0298】
上記の複数回の加負荷/負荷除去を、最初に脱PEG化した15/28PVA/PEGゲルに繰り返し、次いでチャネル−ダイ中で圧縮比10に変形加工し、続いて100%PEG400中で脱水和し、最後に食塩水溶液中で平衡化した。それぞれの持続時間を短くした(加負荷5時間および負荷除去5時間)以外は、加負荷/負荷除去サイクルは等しかった。この試料も、加負荷/負荷除去サイクル数の増加と共に、クリープ耐性の増加を示した(図21)。
【0299】
ポリビニルアルコール医療用装置の包装および滅菌
本例に記載するゲル医療用装置を食塩水溶液中で包装し、滅菌した。滅菌は、ガンマ線により行った。いくつかの実施態様においては、ガンマ線滅菌を、包装した装置の滅菌およびゲル医療用装置の架橋の両方に使用した。高架橋密度が望ましい場合、より高い放射線量(40kGyを超える)を使用した。
【0300】
また、ゲル医療用装置をクリーンルーム中で無菌成分から製造し、無菌の食塩水溶液中に包装した。したがって、さらなる滅菌は必要無い。
【0301】
また、ゲル医療用装置をガス透過性包装物中に包装し、ガスプラズマまたはエチレンオキシドを使用して滅菌し、続いてクリーンルーム中で無菌の食塩水溶液中に包装し、出荷する。
上記の別の包装方法で使用する食塩水溶液を、100%PEGまたはPEG/水混合物で置き換え、ゲル医療用装置中に様々な脱水和レベルを達成することができる。ゲル医療用装置は、完全な、または部分的な脱水和状態で出荷することができる。体内に挿入した後で再水和が起こり、ゲル医療用装置が膨潤し、それを配置する空間(例えば膝関節、股関節、肩関節、等)を部分的または完全に充填する。
【0302】
説明、具体例およびデータは、代表的な実施態様を示しているが、例示のために記載したのであり、本発明を制限するものではない。本明細書に含まれる考察、開示およびデータから、当業者には本発明の種々の変形および修正が明らかであり、したがって、本発明の一部であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0303】
【図1】人体により加えられる軸方向負荷により負荷を受ける挿入物装置を示す典型的な人関節である。
【図2】関節中の空隙欠損およびヒドロゲル充填を示す。
【図3】ヒドロゲルの単軸変形加工を示す。
【図4】ヒドロゲルを変形加工し、6個の等しい断片に切断し、その中の1個を示す。変形加工されたヒドロゲルは、中央の厚さが8mmである。ゲルの押出により引き起こされる「ピザ皮」形状の周辺部にも注意する。
【図5】15/28PVA−PEGゲルに対する溶剤脱水和を示す。白抜き記号は、各媒体中に浸漬している間に記録したデータであり、黒地記号は、その後の食塩水中に浸漬している間に記録したデータである。
【図6】(A)ヒドロゲルを、一方向圧縮用にチャネルダイの内側に入れたものである。(B)圧縮前に、プランジャーをダイ中にヒドロゲルと接触して挿入したものである。(C)チャネル内側のヒドロゲルを圧縮し、応力緩和が平衡に達するまで、変位を保持したものである。
【図7】右側は、変形加工前のヒドロゲルプリズムであり、左側は、代表的なチャネル−ダイ変形加工したヒドロゲルプリズムである(これは、左側に示す変形加工前のヒドロゲルと同じ寸法を有する)。
【図8】厚さ7mmの試料に関する、左側の「ゲル化した状態」と、右側の、真空脱水和後の脱PEG処理した試料の外観の違いを示す。
【図9】左から順に、「ゲル化した状態」のヒドロゲル、続いて真空脱水和した「ゲル化した状態」のヒドロゲル、脱PEG処理6日間後の「ゲル化した状態」のヒドロゲル、真空脱水和した、脱PEG処理したヒドロゲル、における厚さ21mmのヒドロゲルを示す。全ての試料は、もとを同サイズとした。
【図10】(A)変形加工したPVA/PEGゲルの、ある形状を有する型の間に挟んだ追加変形加工を示す。変形加工の最後に、型の2個の部分が互いに接触していることに注意する。型からはみ出した過剰のヒドロゲルは廃棄した。(B)ある形状を有する型および変形加工され、型の形状に一致する最終的な形状を有するヒドロゲルを示す。
【図11】「ゲル化した状態」のヒドロゲル試料の、100%PEG400浸漬中の重量損失を示す。24時間未満で平衡脱水和に達していることに注意する。
【図12】ウシの膝軟骨にドリル加工した円筒形欠損空隙の上面光学顕微鏡写真である。
【図13】空隙中に挿入するために100%PEG400中で部分的に脱水和した円筒形ヒドロゲルプラグの光学顕微鏡写真であり、ヒドロゲルプラグの(A)上面図、(B)底面図および(C)側面図を示す。
【図14】部分的に脱水和したヒドロゲルプラグの、ウシの膝軟骨の円筒形欠損空隙中に挿入した状態の光学顕微鏡写真、(A)上面図および(B)側面図を示す。
【図15】円筒形欠損空隙中に挿入したヒドロゲルプラグの、POD実行前に血清中で1時間再水和した後の、光学顕微鏡写真、(A)上面図、(B)斜めにした上面図および(C)側面図を示す。挿入されたヒドロゲルプラグの直径および高さが、図14と比較して増加していることに注意する。
【図16】円筒形欠損空隙中に挿入したヒドロゲルプラグの、80,000サイクルPOD実行時点における光学顕微鏡写真、(A)上面、(B)斜めにした上面および(C)側面を示す。
【図17】円筒形欠損空隙中に挿入したヒドロゲルプラグの、160,000サイクルPOD実行時点における光学顕微鏡写真、(A)上面、(B)斜めにした上面および(C)側面を示す。
【図18】脱PEG化PVA/PEGゲルおよび75%単軸変形加工にかけた脱PEG化PVA/PEGゲルに関する負荷対変位曲線を示す。
【図19】クリープ挙動を、それぞれ10時間の負荷作用および負荷除去サイクルに関するひずみ対時間のプロットで示す。試料番号は、表22から参照できる。試料2、8および13は、10時間の負荷除去サイクルの終了前に停止した。
【図20】脱PEG化し、食塩水溶液中で平衡化した15−28PVA/PEGゲルに対する、複数のクリープ変形加工および回復サイクルの際の、圧縮ひずみの時間変化を示す。
【図21】先ず脱PEG化し、次いでチャネル−ダイ中で圧縮比10に変形加工し、続いて100%PEG中で脱水和した15−28PVA/PEGゲルに対する、複数のクリープ変形加工および回復サイクルの際の、圧縮ひずみの時間変化を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、
b)前記ヒドロゲルを、前記ヒドロゲルの融点より低いか、または高い温度に加熱すること、および
c)前記加熱されたヒドロゲルを室温に冷却することを含んでなる、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靱性ヒドロゲルの製造方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶媒に不溶な重合体を含んでなり、前記溶媒が、少なくとも部分的に水に混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および
b)前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させること、を含んでなる、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項3】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および
b)前記ヒドロゲルに対して少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施し、前記ヒドロゲルを室温に温めることを含んでなる、前記ヒドロゲル試料が脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項4】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、
b)前記ヒドロゲルを前記ヒドロゲルの融点よりも低いまたは高い温度に加熱すること、および
c)前記加熱されたヒドロゲルを室温に冷却することを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項5】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および
b)前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させることを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項6】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させこと、および
b)前記ヒドロゲルに対して少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施し、前記ヒドロゲルを室温に温めることを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項7】
a)PVA粉末である重合体材料を用意すること、
b)前記重合体状材料を水および/またはPEGと混合して溶液を形成すること、
c)前記溶液に対して、少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施して、ヒドロゲルを形成すること、および
d)前記ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工して、靱性ヒドロゲルを形成すること、を含んでなることを特徴とする、靱性ヒドロゲルの製造方法。
【請求項8】
a)PVA粉末である重合体材料を用意すること、
b)前記重合体材料を水および/またはPEGと、室温より高い温度で混合して、溶液を形成すること、
c)前記溶液を常温に冷却して、ヒドロゲルまたはヒドロゲル粒子を形成すること、および
d)前記ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工して、靱性ヒドロゲルを形成すること、を含んでなることを特徴とする、靭性ヒドロゲルの製造方法。
【請求項9】
前記ヒドロゲルがPVAまたはヒドロゲル粒子を含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒドロゲルが、水および/または一種以上の他の成分を含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記成分が、PVA、PEG、および/または塩、プロテオグリカン、水溶性重合体、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミンであり、前記成分が部分的または完全に水溶性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記成分がPEGであり、前記PEGが、水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または好適な溶剤の溶液中に存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記成分が不揮発性である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記成分が、少なくとも部分的に水と混和し得るものである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記成分が、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、およびアミノ酸からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記成分が、分子量が異なるPEG、または分子量が異なるPEGのブレンドである、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記成分が、水と混和し得る重合体である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記水と混和し得る重合体が、PEO、プルロニック(Pluronic)、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、多糖、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、またはデキストラン硫酸である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ヒドロゲルの重量の少なくとも0.1%が、一種以上の不揮発性成分を構成する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを、
a)非溶剤、または
b)超臨界流体中
に入れることにより行われ、
i)前記非溶剤が、PEG、イソプロピルアルコール、飽和食塩水、ビタミン、またはカルボン酸、アルカリ金属の塩の水溶液であり、かつ
ii)前記非溶剤が、水、PEG、ビタミン、重合体、エステル、プロテオグリカン、およびカルボン酸を包含する、2種類以上の成分を含んでなる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを空気中に放置することにより、行われる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを真空中に放置することにより、行われる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを真空中に室温で放置することにより、行われる、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを真空中に高温で放置することにより、行われる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記脱水和が、40℃で、約40℃強、約80℃、80℃強、約90℃、約100℃、100℃強、約150℃、約160℃、160℃強、約180℃、約200℃、または200℃強で行われる、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを、空気または不活性ガス中で高温に加熱することにより、行われ、
前記加熱速度が遅いまたは速い、もしくは前記加熱が、真空または空気脱水和に続いて行われる、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記脱水和されたヒドロゲルを、
i)水、食塩水溶液、リンガー溶液、食塩を加えた水、緩衝溶液等の中、
ii)高湿度チャンバー中、または
iii.室温もしくは高温、
に置くことにより、前記脱水和されたヒドロゲルが再水和される、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、前記ヒドロゲルを変形加工することをさらに含んでなる、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒドロゲルを、約40℃強〜約200℃以上の温度に加熱し、変形加工する工程をさらに含んでなる、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
PEGを含んでなるヒドロゲルを変形加工し、脱PEG化する工程をさらに含んでなる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
a)前記ヒドロゲルを約40℃強〜約200℃以上の温度に加熱して、変形加工すること、および
b)PEGを含んでなるヒドロゲルを脱PEG化すること、
をさらに含んでなる、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒドロゲルが、一軸圧縮、チャネル−ダイ圧縮、または他の変形加工方式により変形加工される、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒドロゲルが、前記ヒドロゲルの融点よりも低い温度に加熱されて変形加工される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒドロゲルが、平坦または湾曲したプラテンを使用して圧縮下で変形加工される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒドロゲルが、1つの平坦なプラテンと1つの湾曲したプラテンとを使用して、圧縮下で変形加工される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒドロゲルが、空気もしくは不活性ガス下で、または流体媒体中で変形加工される、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒドロゲルが流体媒体中で変形加工され、前記流体媒体が、食塩水溶液、リンガー溶液、PEG、PEG水溶液、塩溶液、DMSO、またはいずれかの好適な流体媒体である、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒドロゲルが、前記ヒドロゲルの融点よりも低い温度で変形加工され、
前記温度が約0℃〜約100℃、約10℃〜約100℃、約0℃〜約40℃、約10℃〜約30℃、約17℃〜約25℃、または略室温である、請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ヒドロゲルが、変形加工の前または後に脱水和される、請求項1〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記靱性ヒドロゲルが、平衡に達するまで再水和される、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記靱性ヒドロゲルが、水または塩溶液中で再水和される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
重合体および水を含んでなり、少なくとも約1%〜約50%の平衡水を含む、靱性ヒドロゲル。
【請求項43】
請求項1〜42のいずれか一項に記載の方法により製造された、脱水和または変形加工されたヒドロゲルを含んでなる、靱性ヒドロゲル。
【請求項44】
請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法により製造された靱性ヒドロゲルであって、前記靱性ヒドロゲルが、脱水和に続いて再水和させることができ、
a.前記脱水和により前記ヒドロゲルの重量が34%強減少し、
b.前記再水和により、前記再水和されたヒドロゲル中に少なくとも約46%の平衡含水量が得られる、靱性ヒドロゲル。
【請求項45】
請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法により製造された靱性ヒドロゲルであって、前記靱性ヒドロゲルが二軸延伸されてなる、靱性ヒドロゲル。
【請求項46】
請求項1〜45のいずれか一項に記載の方法により製造された靱性ヒドロゲルであって、前記靱性ヒドロゲルが単軸延伸されてなる、靱性ヒドロゲル。
【請求項47】
請求項1〜45のいずれか一項に記載の方法により製造された靱性ヒドロゲルであって、前記靱性ヒドロゲルが高限界引張強度を有する、靱性ヒドロゲル。
【請求項48】
請求項1〜47のいずれか一項に記載の靱性ヒドロゲルを含んでなる医療用充填材。
【請求項49】
挿入機器である、請求項48に記載の医療用充填材。
【請求項50】
前記挿入機器がユニスペーサーであり、前記ユニスペーサーが、人関節における自由浮揚関節充填材である、請求項48に記載の医療用充填材。
【請求項51】
前記人関節が、膝、股、肩、肘、または上側もしくは上肢関節である、請求項48に記載の医療用充填材。
【請求項1】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、
b)前記ヒドロゲルを、前記ヒドロゲルの融点より低いか、または高い温度に加熱すること、および
c)前記加熱されたヒドロゲルを室温に冷却することを含んでなる、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靱性ヒドロゲルの製造方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶媒に不溶な重合体を含んでなり、前記溶媒が、少なくとも部分的に水に混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項2】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および
b)前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させること、を含んでなる、前記ヒドロゲルが脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項3】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および
b)前記ヒドロゲルに対して少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施し、前記ヒドロゲルを室温に温めることを含んでなる、前記ヒドロゲル試料が脱水和されて靱性ヒドロゲルが形成される、靭性ヒドロゲルの製造方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水に混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項4】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、
b)前記ヒドロゲルを前記ヒドロゲルの融点よりも低いまたは高い温度に加熱すること、および
c)前記加熱されたヒドロゲルを室温に冷却することを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項5】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させること、および
b)前記ヒドロゲルを室温で空気乾燥させることを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項6】
a)ヒドロゲルを有機溶剤と接触させこと、および
b)前記ヒドロゲルに対して少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施し、前記ヒドロゲルを室温に温めることを含んでなる、ヒドロゲルの脱水和方法であって、
前記ヒドロゲルが、前記溶剤に不溶な重合体を含んでなり、前記溶剤が、少なくとも部分的に水と混和し得るものであることを特徴とする、方法。
【請求項7】
a)PVA粉末である重合体材料を用意すること、
b)前記重合体状材料を水および/またはPEGと混合して溶液を形成すること、
c)前記溶液に対して、少なくとも一回の凍結融解サイクルを実施して、ヒドロゲルを形成すること、および
d)前記ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工して、靱性ヒドロゲルを形成すること、を含んでなることを特徴とする、靱性ヒドロゲルの製造方法。
【請求項8】
a)PVA粉末である重合体材料を用意すること、
b)前記重合体材料を水および/またはPEGと、室温より高い温度で混合して、溶液を形成すること、
c)前記溶液を常温に冷却して、ヒドロゲルまたはヒドロゲル粒子を形成すること、および
d)前記ヒドロゲルを脱水和および/または変形加工して、靱性ヒドロゲルを形成すること、を含んでなることを特徴とする、靭性ヒドロゲルの製造方法。
【請求項9】
前記ヒドロゲルがPVAまたはヒドロゲル粒子を含んでなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ヒドロゲルが、水および/または一種以上の他の成分を含んでなる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記成分が、PVA、PEG、および/または塩、プロテオグリカン、水溶性重合体、アミノ酸、アルコール、DMSO、水溶性ビタミンであり、前記成分が部分的または完全に水溶性である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記成分がPEGであり、前記PEGが、水、エタノール、エチレングリコール、DMSO、または好適な溶剤の溶液中に存在する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記成分が不揮発性である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記成分が、少なくとも部分的に水と混和し得るものである、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記成分が、PEG、塩、NaCl、KCl、CaCl、ビタミン、カルボン酸、炭化水素、エステル、およびアミノ酸からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記成分が、分子量が異なるPEG、または分子量が異なるPEGのブレンドである、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記成分が、水と混和し得る重合体である、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記水と混和し得る重合体が、PEO、プルロニック(Pluronic)、アミノ酸、プロテオグリカン、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、多糖、デルマタン硫酸、ケラタン硫酸、またはデキストラン硫酸である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ヒドロゲルの重量の少なくとも0.1%が、一種以上の不揮発性成分を構成する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを、
a)非溶剤、または
b)超臨界流体中
に入れることにより行われ、
i)前記非溶剤が、PEG、イソプロピルアルコール、飽和食塩水、ビタミン、またはカルボン酸、アルカリ金属の塩の水溶液であり、かつ
ii)前記非溶剤が、水、PEG、ビタミン、重合体、エステル、プロテオグリカン、およびカルボン酸を包含する、2種類以上の成分を含んでなる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを空気中に放置することにより、行われる、請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを真空中に放置することにより、行われる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを真空中に室温で放置することにより、行われる、請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを真空中に高温で放置することにより、行われる、請求項1〜23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記脱水和が、40℃で、約40℃強、約80℃、80℃強、約90℃、約100℃、100℃強、約150℃、約160℃、160℃強、約180℃、約200℃、または200℃強で行われる、請求項1〜24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記脱水和が、前記ヒドロゲルを、空気または不活性ガス中で高温に加熱することにより、行われ、
前記加熱速度が遅いまたは速い、もしくは前記加熱が、真空または空気脱水和に続いて行われる、請求項1〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記脱水和されたヒドロゲルを、
i)水、食塩水溶液、リンガー溶液、食塩を加えた水、緩衝溶液等の中、
ii)高湿度チャンバー中、または
iii.室温もしくは高温、
に置くことにより、前記脱水和されたヒドロゲルが再水和される、請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、前記ヒドロゲルを変形加工することをさらに含んでなる、請求項1〜27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒドロゲルを、約40℃強〜約200℃以上の温度に加熱し、変形加工する工程をさらに含んでなる、請求項1〜28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
PEGを含んでなるヒドロゲルを変形加工し、脱PEG化する工程をさらに含んでなる、請求項1〜29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
a)前記ヒドロゲルを約40℃強〜約200℃以上の温度に加熱して、変形加工すること、および
b)PEGを含んでなるヒドロゲルを脱PEG化すること、
をさらに含んでなる、請求項1〜30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記ヒドロゲルが、一軸圧縮、チャネル−ダイ圧縮、または他の変形加工方式により変形加工される、請求項1〜31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記ヒドロゲルが、前記ヒドロゲルの融点よりも低い温度に加熱されて変形加工される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ヒドロゲルが、平坦または湾曲したプラテンを使用して圧縮下で変形加工される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記ヒドロゲルが、1つの平坦なプラテンと1つの湾曲したプラテンとを使用して、圧縮下で変形加工される、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
前記ヒドロゲルが、空気もしくは不活性ガス下で、または流体媒体中で変形加工される、請求項1〜35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒドロゲルが流体媒体中で変形加工され、前記流体媒体が、食塩水溶液、リンガー溶液、PEG、PEG水溶液、塩溶液、DMSO、またはいずれかの好適な流体媒体である、請求項1〜36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒドロゲルが、前記ヒドロゲルの融点よりも低い温度で変形加工され、
前記温度が約0℃〜約100℃、約10℃〜約100℃、約0℃〜約40℃、約10℃〜約30℃、約17℃〜約25℃、または略室温である、請求項1〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記ヒドロゲルが、変形加工の前または後に脱水和される、請求項1〜38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記靱性ヒドロゲルが、平衡に達するまで再水和される、請求項1〜39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記靱性ヒドロゲルが、水または塩溶液中で再水和される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
重合体および水を含んでなり、少なくとも約1%〜約50%の平衡水を含む、靱性ヒドロゲル。
【請求項43】
請求項1〜42のいずれか一項に記載の方法により製造された、脱水和または変形加工されたヒドロゲルを含んでなる、靱性ヒドロゲル。
【請求項44】
請求項1〜43のいずれか一項に記載の方法により製造された靱性ヒドロゲルであって、前記靱性ヒドロゲルが、脱水和に続いて再水和させることができ、
a.前記脱水和により前記ヒドロゲルの重量が34%強減少し、
b.前記再水和により、前記再水和されたヒドロゲル中に少なくとも約46%の平衡含水量が得られる、靱性ヒドロゲル。
【請求項45】
請求項1〜44のいずれか一項に記載の方法により製造された靱性ヒドロゲルであって、前記靱性ヒドロゲルが二軸延伸されてなる、靱性ヒドロゲル。
【請求項46】
請求項1〜45のいずれか一項に記載の方法により製造された靱性ヒドロゲルであって、前記靱性ヒドロゲルが単軸延伸されてなる、靱性ヒドロゲル。
【請求項47】
請求項1〜45のいずれか一項に記載の方法により製造された靱性ヒドロゲルであって、前記靱性ヒドロゲルが高限界引張強度を有する、靱性ヒドロゲル。
【請求項48】
請求項1〜47のいずれか一項に記載の靱性ヒドロゲルを含んでなる医療用充填材。
【請求項49】
挿入機器である、請求項48に記載の医療用充填材。
【請求項50】
前記挿入機器がユニスペーサーであり、前記ユニスペーサーが、人関節における自由浮揚関節充填材である、請求項48に記載の医療用充填材。
【請求項51】
前記人関節が、膝、股、肩、肘、または上側もしくは上肢関節である、請求項48に記載の医療用充填材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図9】
【図10】
【図11】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【公表番号】特表2008−542518(P2008−542518A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−515680(P2008−515680)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/034662
【国際公開番号】WO2006/132661
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(593030244)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション ディー ビー エイ マサチューセッツ ジェネラル ホスピタル (8)
【出願人】(505271116)ケンブリッジ、ポリマー、グループ、インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE POLYMER GROUP, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2005/034662
【国際公開番号】WO2006/132661
【国際公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(593030244)ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション ディー ビー エイ マサチューセッツ ジェネラル ホスピタル (8)
【出願人】(505271116)ケンブリッジ、ポリマー、グループ、インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】CAMBRIDGE POLYMER GROUP, INC.
【Fターム(参考)】
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