説明

靴選択支援システムおよび靴選択支援方法

足の状態から足の解剖学的特性を推定することにより、顧客に適合する靴のタイプを選択して提示することが可能な靴選択支援システムである。本システムは、被計測者の足の状態を表すデータを計測して入力する計測データ入力部1と、計測データ入力部1より入力されたデータを正規化し、得られた正規化データを少なくとも一時的に記憶する正規化処理部2と、複数種類の靴の情報を格納した靴カタログデータベース6と、前記正規化データに基づいて当該被計測者の足の解剖学的特性を推定し、前記解剖学的特性に基づいて靴カタログデータベース6を参照することにより、当該被計測者に適合する靴タイプを選択して提示する選択部3とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、顧客が靴を選択する際に、当該顧客に適合する靴のタイプを選択して提示する靴選択支援システムに関し、特に、足の状態から当該顧客の足の解剖学的特性を推定する靴選択支援システムに関する。
【背景技術】
従来、靴の販売店等において、測定機器によって顧客の足形状を計測し、その顧客に適した靴を選択するシステムが知られている。
このような従来のシステムとして、例えば、三次元足型計測器で顧客の足型データを計測し、このデータに適合若しくは近似する試し履き靴モデルを抽出するシステムが知られている(特開2002−199905号公報参照)。
また、人それぞれに適応する歩行用靴を導き出すことを目的として、履用する靴の傾斜角と同じ傾斜面上にフットプリンター等を位置させて、その上で履用者の足底圧の分布、アーチの形状を調べ、その結果に応じて足底板を挿入する方法も提案されている(特開2001−275716号公報参照)。
さらに、足スキャナユニットを用いて足の3次元形の位相的な電子画像を生成することにより、ユーザに適した履物を選択することを可能とするシステムも提案されている(特許第3025530号公報参照)。
靴は、例えばトップアスリート用の競技シューズ等を除いては、量産されるものである。一方、足の形状は個人差が大きいため、例えば上記従来のシステムのように三次元的に各人の足型を正確に測定できたとしても、足長、幅、甲の高さ等の様々な要素が存在するため、その人の足にどの靴が適合するかを適切に判断することは非常に難しい。
【発明の開示】
本発明は、足の状態を計測し、計測結果から足の解剖学的特性を推定することにより、顧客に適合する靴のタイプを選択して提示することが可能な靴選択支援システムを提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明にかかる靴選択支援システムは、被計測者の足の状態を表すデータを計測して入力する計測データ入力部と、前記計測データ入力部より入力されたデータを正規化し、得られた正規化データを少なくとも一時的に記憶する正規化処理部と、複数種類の靴の情報を格納した靴情報記憶部と、前記正規化データに基づいて当該被計測者の足の解剖学的特性を推定し、前記解剖学的特性に基づいて靴情報記憶部を参照することにより、当該被計測者に適合する靴タイプを選択して提示する選択部とを備え、前記選択部が、足の解剖学的特性として、足のアーチ高率および足の柔軟度の少なくとも一つを推定する構成である。
本発明にかかる靴選択支援方法は、被計測者の足の状態を表すデータを計測するステップと、前記足の状態を表すデータを正規化するステップと、前記正規化データに基づいて当該被計測者の足の解剖学的特性として、足のアーチ高率および足の柔軟度の少なくとも一つを推定するステップと、推定された足の解剖学的特性に基づいて靴情報記憶部を参照することにより、当該被計測者に適合する靴タイプを選択して提示するステップとを含む。
本発明にかかるコンピュータプログラムは、被計測者の足の状態を表すデータを入力するステップと、前記足の状態を表すデータを正規化するステップと、前記正規化データに基づいて当該被計測者の足の解剖学的特性として、足のアーチ高率および足の柔軟度の少なくとも一つを推定するステップと、推定された足の解剖学的特性に基づいて靴情報記憶部を参照することにより、当該被計測者に適合する靴タイプを選択して提示するステップとをコンピュータに実行させるプログラムである。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる靴選択支援システムの概略構成を示すブロック図である。
図2は、第1の実施形態にかかる靴選択支援システムにおけるフットプリントの正規化処理の一例を示すフローチャートである。
図3は、フットプリントに対する正規化処理の説明図である。
図4(a)は標準フットプリントの一例、図4(b)はアーチ高率に関する感度マップの一例、図4(c)はアーチ硬さに関する感度マップの一例を示す写真である。
図5は、第1の実施形態にかかる靴選択支援システムにおける選択部による処理の一例を示すフローチャートである。
図6は、アーチ高率の算出方法の説明図である。
図7(a)〜(e)は、足タイプに応じて選択される靴タイプの一例を示す説明図である。
図8は、フットプリント上の圧力分布等高線の一例である。
図9(a)は、踵荷重が内側へ偏心している足の説明図、図9(b)は、踵荷重が外側へ偏心している足の説明図である。
図10(a)〜(c)は、足タイプに応じて選択される靴タイプの一例を示す説明図である。
図11(a)および図11(b)は、足タイプに応じて選択される靴タイプの一例を示す説明図である。
図12は、過回内リスクファクターの一例を示す説明図である。
図13は、衝撃暴露リスクファクターの一例を示す説明図である。
図14(a)〜図14(c)は、ミッドソールに用いられる波板状パーツの例を示す斜視図である。
図15は、本発明の第2の実施形態にかかる靴選択支援システムの概略構成を示すブロック図である。
図16は、本発明の第3の実施形態にかかる靴選択支援システムにおける、足タイプ別の標準フットプリントの表示態様の一例を示す図である。
図17は、本発明の第4の実施形態にかかる靴選択支援システムの概略構成を示すブロック図である。
図18は、フットプリントからアーチ高率に関する特徴量を抽出する様子を示す図であり、図18(a)はローアーチの場合、図18(b)はハイアーチの場合を示す。
図19は、フットプリントからアーチ硬さに関する特徴量を抽出する様子を示す図であり、図19(a)は軟らかい足の場合、図19(b)は硬い足の場合を示す。
図20は、フットプリントからアーチ高率を推定する方法を示す図であり、図20(a)はローアーチ、図20(b)は標準アーチ、図20(c)はハイアーチの場合を示す。
図21は、フットプリントからアーチ硬さを推定する方法を示す図であり、図21(a)は軟らかい足、図21(b)は硬い足の場合を示す。
図22は、本発明の第5の実施形態にかかる靴選択支援システムの概略構成を示すブロック図である。
図23は、本発明の第3の実施形態にかかる靴選択支援システムにおける、足タイプ別の標準フットプリントが画面に表示された様子を示す図である。
図24は、本発明の第3の実施形態にかかる靴選択支援システムにおける、足タイプ別の標準フットプリントが画面に表示された様子を示す図である。
図25は、本発明の第3の実施形態にかかる靴選択支援システムにおける、足タイプ別の標準フットプリントが画面に表示された様子を示す図である。
図26は、本発明の第3の実施形態にかかる靴選択支援システムにおける、足タイプ別の標準フットプリントが画面に表示された様子を示す図である。
図27は、本発明の第6の実施形態にかかる靴選択支援システムの概略構成を示すブロック図である。
図28(a)および図28(b)は、第6の実施形態において足の形状を測定する際のマーカー貼り付け位置の一例を示す正面図である。図28(c)は、第6の実施形態において足長Lを計測する手法の説明図である。
図29は、第6の実施形態にかかる靴選択支援システムの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
上記の構成にかかる本発明の靴選択支援システムにおいて、前記計測データ入力部が、前記被計測者の静止立位における足裏の接地状態の計測を光学センサおよび圧力センサの少なくとも一つを用いて行うことが好ましい。あるいは、前記計測データ入力部が、前記被計測者の足の状態として、当該被計測者の足の三次元形状を、光学センサを用いて計測する構成とすることも好ましい。
また、上記の構成にかかる靴選択支援システムは、標準的な足の状態を表す標準データを記憶する標準データ記憶部をさらに備え、前記選択部が、前記正規化データと前記標準データとの比較に基づき、当該被計測者の足の解剖学的特性を推定することが好ましい。
また、上記の構成にかかる靴選択支援システムにおいて、前記選択部が、前記正規化データに基づいて、当該被計測者の踵の荷重の内側または外側への偏心傾向を判定し、判定された偏心傾向も加味して当該被計測者に適合する靴タイプを選択することが好ましい。
また、上記の構成にかかる靴選択支援システムにおいて、前記選択部が、足の解剖学的特性として、足のアーチ高率および足の柔軟度の両方を推定すると共に、推定された足のアーチ高率と足の柔軟度との組み合わせに基づいて当該被計測者における足の障害発生リスクを判定し、判定された障害発生リスクに応じた靴タイプを選択することが好ましい。
この場合、前記選択部が、前記アーチ高率および柔軟性の組み合わせに基づいて、当該被計測者の足関節の過回内レベルを判定し、過回内レベルが高いほどより安定性の高いタイプの靴を選択することが有効である。あるいは、前記選択部が、前記アーチ高率および柔軟性の組み合わせに基づいて、当該被計測者の足関節の衝撃暴露レベルを判定し、衝撃暴露レベルが高いほどよりクッション性の高いタイプの靴を選択することが有効である。
また、上記の構成にかかる靴選択支援システムにおいて、前記選択部が、多変量解析により当該被計測者の足の解剖学的特性を推定する態様としても良い。あるいは、前記選択部が、ニューラルネットワークを用いて当該被計測者の足の解剖学的特性を推定する態様としても良い。
上記の構成にかかる靴選択支援システムにおいて、前記選択部が、当該被計測者に適合する靴タイプを、ソール性能に基づいて選択することが好ましい。前記ソール性能は、靴のミッドソールに内蔵あるいは積層されるパーツの材質および/または形状により類別することができる。あるいは、靴のミッドソールを構成するパーツの材質および/または形状により類別することもできる。このパーツが波板状である態様とすることが好ましい。
また、上記の構成にかかる靴選択支援システムにおいて、前記選択部が、当該被計測者に適合する靴タイプの選択を、当該被計測者に適合する中敷の選択を含めて行う態様としても良い。この場合、前記中敷の選択を被計測者の左右の足のそれぞれについて個別に行うこととしても良い。
また、上記の構成にかかる靴選択支援システムにおいて、被計測者に関して、当該被計測者の足の解剖学的特性を表すデータを含む被計測者関連データを入力する特性入力部と、前記正規化処理部により得られた正規化データを、前記特性入力部により入力された解剖学的特性と関連付けて蓄積記憶する正規化データ蓄積記憶部と、前記正規化データ蓄積記憶部に蓄積記憶された正規化データから、足の解剖学的特性の種別毎に、標準的な足裏接地状態を表す足タイプ別標準データを生成する標準データ生成部と、前記標準データ生成部により生成された足タイプ別標準データを格納する足タイプ別標準データ記憶部とをさらに備えた態様としても良い。
上記の態様において、前記特性入力部より入力される被計測者関連データが、足の解剖学的特性を表すデータとして、足長の実測値、舟状骨粗面高の実測値、アーチ高率、最大回外角度の実測値、最大回内角度の実測値、足の柔軟度、足関節可動範囲、Q−アングル値、および、拇趾または子趾の外反角、のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
また、上記の構成にかかる靴選択支援システムにおいて、前記標準データ記憶部に格納された足タイプ別標準データを、前記正規化処理部によって得られた正規化データと比較可能な状態に、表示または印刷出力する標準データ提示部をさらに備えた態様とすることも好ましい。
また、上記の構成にかかる靴選択支援システムにおいて、前記正規化処理部により得られた正規化データを画像として表示すると共に、表示された正規化データ画像上で操作者により指定された点の座標および操作指示を入力する表示入力部と、前記表示入力部を用いて正規化データ画像上で指定された点の座標に基づいて、被計測者の足の解剖学的特性を推定するための特徴値を求める特徴抽出部とをさらに備え、前記選択部が、前記正規化データから前記特徴抽出部により求められた特徴値に基づいて、当該被計測者の足の解剖学的特性を推定する態様とすることも好ましい。
また、上記の構成にかかる靴選択支援システムにおいて、前記計測データ入力部、正規化処理部、選択部のうち少なくともいずれか二つがインターネットを介して接続された態様としても良い。
また、上記の構成にかかる靴選択支援システムにおいて、前記選択部が、当該被計測者に適合する靴タイプと共に、当該靴に関する情報や、当該被計測者の足の解剖学的特性に関する情報を提示することも好ましい。
以下、発明のさらに具体的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、本実施形態にかかる靴選択支援システムの概略構成を示すブロック図である。本実施形態にかかる靴選択支援システムは、靴専門店や靴売り場等に設置されるものであり、計測データ入力部1、正規化処理部2、選択部3、フットプリントデータベース4、ディスプレイ5、靴カタログデータベース(靴情報記憶部)6、入力デバイス7を備えている。フットプリントデータベース4は、後に詳しく説明するが、正規化データ記憶部4a、一般データ記憶部4b、標準フットプリント記憶部4cを備えている。
計測データ入力部1は、顧客(被計測者)の静止立位における足裏の接地状態を表すデータを計測して入力する。計測データ入力部1は、例えば、透明板からなる足載せ台の裏側に光学センサを備え、足載せ台の上に顧客を立たせてその足裏を前記光学センサでスキャンすることによって、足裏の接地状態を光学的に計測する構成としても良い。または、足載せ台の裏側にCCDカメラあるいはデジタルカメラを配置し、足裏の接地状態を撮影する構成も可能である。あるいは、圧力センサが一面に埋設された足載せ台を備え、この足載せ台の上に顧客を立たせた状態で前記圧力センサにより圧力分布を検出することにより、足裏の接地状態を計測する構成としても良い。圧力センサを用いる場合は、少なくとも1cmに1個のセンサが埋設されていることが好ましい。なお、圧力センサは、抵抗変化型センサおよび容量変化型センサのいずれであっても良い。また、光学センサおよび圧力センサの両方によって、足裏の接地状態を計測する構成としても良い。
前述のような光学センサおよび/または圧力センサによる計測結果は、足裏の接地状態を二次元的(映像的)に表したデータ(フットプリントデータ)として正規化処理部2へ送られる。例えば光学センサを用いる場合は、輝度データの分布によってフットプリントデータが構成される。圧力センサを用いる場合は、圧力分布によってフットプリントデータが構成される。なお、計測データ入力部1による足裏接地状態の計測は、左右のどちらかの足のみについて行うようにしても良いし、両足について片足ずつ行っても良く、あるいは、両足について同時に行うこととしても良い。また、計測データ入力部1による足裏接地状態の計測は、正確性の観点からは裸足で行うことが好ましいといえるが、靴下を履いた状態で行うことも可能である。
正規化処理部2は、計測データ入力部1より入力されたデータを正規化し、得られた正規化データを少なくとも一時的に記憶する。ここで、図2および図3を参照し、正規化処理部2による正規化処理の一例を説明する。図2は、正規化処理部2による正規化処理の一例を示すフローチャートである。
図2に示すように、正規化処理部2は、まず、計測データ入力部1からフットプリントデータを読み込み(ステップS1)、フットプリントデータを所定の閾値により2値化する(ステップS2)。ステップS2の閾値は、予め設定された所定値を用いても良いし、計測条件に応じて調整した値を用いても良い。例えば、光学センサにより足裏接地状態を計測する場合等に、顧客の靴下の色合い等に応じて閾値を調整することが考えられる。ここで、ステップS2の2値化により、例えば図3に示すようなフットプリントデータが得られたものとする。
次に、正規化処理部2は、2値化されたフットプリントデータにおいて、足の内側接線Lと外側接線Lを求め(ステップS3)、さらに、内側接線Lと外側接線Lとのなす角を二等分する中心線Lを求める(ステップS4)。次に、中心線Lに垂直な爪先側の接線Lと踵側の接線Lとをそれぞれ求める(ステップS5,S6)。そして、中心線Lと接線Lとの交点Pと、中心線Lと接線Lとの交点Pとをそれぞれ求める(ステップS7,S8)。さらに、交点Pと交点Pとの中点Pを求める(ステップS9)。以上の処理を終了した後、2値化フットプリントを元のフットプリントに復元する(ステップS10)。
次に、正規化処理部2は、中点Pが足裏のほぼ中央部と一致するように、復元フットプリントを平行移動する(ステップS11)。
正規化処理部2は、さらに、中心線Lが垂直線となるように、中点Pを原点(中心)としてフットプリントを回転移動させる(ステップS12)。正規化処理部2は、次に、中点Pを固定したまま、フットプリントを足長方向(L方向)に250/L倍に伸縮する(ステップS13)。なお、Lは足長(mm)である。足長Lの値は、計測データ入力部1において光学センサまたは圧力センサによって測定しても良いし、入力デバイス7から顧客あるいは店員またはシューフィッター等が入力しても良い。正規化処理部2は、さらに、中点Pを固定したまま、フットプリントを足幅方向(Lと垂直な方向)にα倍する(ステップS14)。なお、
α=102/((12×(L−250)/50)+102)
であり、Lは前述のとおり足長(mm)である。ただし、ここで示したαの算出式は、日本人の成人用のグレーディング例であり、年齢層や民族等の種々の見地から、この例とは異なる計算式を用いることも可能である。
以上のステップS1〜S14によって、正規化フットプリントデータ(正規化データ)が得られる。得られた正規化フットプリントデータは、正規化処理部2からフットプリントデータベース4へ送られ、正規化データ記憶部4aに記憶される(ステップS15)。なお、正規化フットプリントデータを正規化データ記憶部4aへ記憶させる際に、入力デバイス7から顧客に関する種々のデータ(例えば、顧客名、住所、電話番号、メールアドレス、購入歴、靴に関する好み、足の障害歴等)を入力し、これらのデータを、前記正規化フットプリントデータと関連づけた状態で、フットプリントデータベース4の一般データ記憶部4bに記憶させても良い。
次に、選択部3の機能について、図4,図5を参照しながら説明する。選択部3は、正規化処理部2より正規化された顧客のフットプリントを入力し、フットプリントデータベース4の標準フットプリント記憶部4cに記憶されている標準フットプリントと比較することにより、顧客の足の解剖学的特性を推定し、顧客に適した靴のタイプを選択して提示する。
図4(a)に、標準フットプリントの一例を示す。標準フットプリントとしては、適切に選択された母集団から統計的に得られた平均的なフットプリントを用いることが好ましく(ただしこれに限定されない)、本実施形態では、フットプリントデータベース4の標準フットプリント記憶部4cに予め記憶されるものである。なお、標準フットプリントとして、例えば、性別、年代別、人種別、スポーツ種目別等のように特定の性質を有する母集団毎に得られた複数種類のフットプリントを標準フットプリント記憶部4cに予め記憶させておき、顧客に応じた標準フットプリントを用いるようにしても良い。
図5は、選択部3による処理の一例を示すフローチャートである。なお、ここでは、フットプリントが輝度分布によって構成されている場合を例に説明するが、圧力分布によって構成されている場合も同様の処理を行うことができる。選択部3は、正規化処理部2より正規化された顧客のフットプリントを入力すると(ステップS21)、標準フットプリント記憶部4cから標準フットプリントを取り出し(ステップS22)、正規化フットプリントと標準フットプリントとの各画素における輝度の差分を計算する(ステップS23)。
そして、ステップS23で得られた輝度差から、アーチ高率に関する感度マップを生成し(ステップS24)、生成した感度マップに基づいてアーチ高率を推定(計算)する(ステップS25)。
なお、アーチ高率に関する感度マップとは、例えば図4(b)に示すようなマップであり、母集団から得られるフットプリントの画像輝度とアーチ高率との関係の傾向を統計的に分析し、その傾向に基づいた重み、あるいはニューラルネットワークの学習過程で得られる各領域毎の重みを、足の領域単位で求めることにより生成される。
アーチ高率とは、本来、図6に示すように、足長Lと舟状骨粗面高Hとを実測し、その比(H/L)を計算することにより求められるものである。しかし、本実施形態の選択部3は、足長Lおよび舟状骨粗面高Hの実測値を用いることなく、アーチ高率に関する感度マップから得られたフットプリントの画像輝度と標準フットプリントの画像輝度との差をピクセル単位で求め、その差を、アーチ高率に関する感度マップの全領域に渡って積和することによって、アーチ高率の値を推定する。
選択部3は、ステップS25で推定したアーチ高率に基づいて、顧客の足が「ハイアーチ」、「標準アーチ」、「ローアーチ(扁平足)」のいずれの分類に属するかを判定する(ステップS26)。ステップS25で推定したアーチ高率の値が、例えば、男性であれば22%以上、女性であれば20%以上である場合は、「ハイアーチ」と判定する。ステップS25で推定したアーチ高率の値が、例えば、男性であれば15%以下、女性であれば13%以下である場合は、「ローアーチ」と判定する。また、アーチ高率がこれらの範囲以外であれば、「標準アーチ」と判定する。なお、ここで示したアーチ高率に対する分類閾値はあくまでも一例であり、本発明を限定するものではない。
次に、選択部3は、ステップS23で得られた輝度差から、アーチの硬さ(足の柔軟度)に関する感度マップを生成し(ステップS27)、生成した感度マップに基づいてアーチ硬さを推定(計算)する(ステップS28)。
なお、アーチ硬さに関する感度マップとは、例えば図4(c)に示すようなマップであり、母集団から得られるフットプリントの画像輝度とアーチ硬さとの関係の傾向を統計的に分析し、その傾向に基づいた重み、あるいはニューラルネットワークの学習過程で得られる各領域毎の重みを、足の領域単位で求めることにより生成される。
アーチ硬さとは、本来、体重をかけた状態とかけていない状態との間での舟状骨粗面高さの変化を足長で除することにより定量的に求められるものであるが、本実施形態の選択部3は、このように実際の足の所見によることなく、アーチ硬さに関する感度マップから得られたフットプリントの画像輝度と標準フットプリントの画像輝度との差をピクセル単位で求め、その差を、アーチ硬さに関する感度マップの全領域に渡って積和することによってアーチ硬さの値を推定する。
選択部3は、ステップS28で推定したアーチ硬さの値に基づいて、顧客の足が「硬い」、「標準」、「軟らかい」のいずれの分類に属するかを判定する(ステップS29)。
以上のステップS21〜S29により、選択部3は、顧客の足の解剖学的特性を、「アーチ高率」について「ハイアーチ」、「標準アーチ」、「ローアーチ(扁平足)」の3タイプ、「アーチ硬さ(足の柔軟度)」について「硬い」、「標準」、「軟らかい」の3タイプに分類する。従って、本実施形態では、顧客の足は、アーチ高率およびアーチ高さの組み合わせによって、3×3=9タイプのいずれかのタイプに分類されることとなる。
なお、本発明における足の解剖学的特性の分類方法は、この具体例にのみ限定されるものではなく、足裏の接地状態に基づいて推定することが可能な任意の特性に分類することが可能である。また、例えば、上記のステップS21〜26のみを行ってアーチ高率についての分類のみを行っても良いし、上記ステップS21〜23を行った後に、ステップS24〜S26を行わずにステップS25〜29を行うことにより、アーチ硬さについての分類のみを行っても良い。
本実施形態では、選択部3は、ステップS26で判定したアーチ高率とステップS29で判定したアーチ硬さに基づいて、靴カタログデータベース6から顧客に適合する靴のタイプを選択し(ステップS30)、選択した結果をディスプレイ5に表示する(ステップS31)。ここで、選択部3が選択する靴タイプは、その顧客に最も適合すると推定される1種類のみに絞っても良いが、複数種類を選択して表示しても良い。
靴カタログデータベース6には、選択部3において分類される足タイプのそれぞれについて、適合する靴タイプの情報が予め格納されている。例えば、本実施形態において、選択部3が、顧客の足の解剖学特性を、上述のようにアーチ高率(3タイプ)とアーチ高さ(3タイプ)の組み合わせによる合計9タイプに分類する場合、靴カタログデータベース6には少なくともこれらの9タイプのそれぞれについて適合する靴タイプの情報(以下、靴タイプ情報と称する)が予め格納されている。
なお、靴カタログデータベース6に格納されている靴タイプ情報としては、靴の品番または型式番号あるいは商品名の他、その靴に関する付加的情報を含んでいても良い。靴に関する付加的情報としては、例えば、その靴の機能的特徴、効果、価格、その靴が用いられる競技や競技レベルに関する情報、その靴の使用場所に関する情報等の内容を、テキスト、音声データ、静止画像、動画像等の任意のデータ形式で表現したものが考えられる。顧客に選択した靴タイプを提示する際に、ディスプレイ5にこれらの付加的情報を表示することにより、顧客サービスをさらに向上させることができる。
また、前記の靴タイプ情報は、商品としての靴そのものを特定するための情報に限らず、靴の木型番号や、靴のパーツの種類を表す情報であっても良い。なお、「靴のパーツ」とは、例えば、アウターソール、中敷(インソール)、ミッドソール、アッパー、各種クッション材等を含む。
靴メーカーが、足タイプ別に用意した複数種類のパーツを適宜組み合わせることによって多種多様の商品ラインを提供する場合に、販売店において本実施形態にかかる靴選択支援システムを用いれば、これらの商品ラインから顧客に適合するパーツからなる靴を適切に選択することが可能となり、顧客サービスが向上する。または、販売店において本実施形態にかかる靴選択支援システムを用いて顧客に適合するパーツを選択し、フルオーダーあるいはカスタムオーダーで受注生産を行うことも考えられる。
あるいは、靴メーカーが、1種類または足タイプの大まかな分類に応じてタイプ別に設計された複数種類の靴本体と、足タイプの細かな分類に応じて靴本体に組み込むオプションパーツ(例えば中敷)とを提供する場合、本実施形態にかかる靴選択支援システムを用いて、靴本体とオプションパーツとの組み合わせを選択することも考えられる。
例えば、アーチの硬さが「硬い」と判定される人は、足の柔軟性が低いために踵接地時に衝撃を受け易い。従って、靴本体として、アーチの硬さが「硬い」人向けにクッション性が特に高いものと、アーチの硬さが「標準」または「軟らかい」人向けに標準的なクッション性を有するものとの二種類を用意し、アーチ高率への適合性については、中敷やミッドソール等のパーツの形状や厚さのバリエーションで調整する、というような選択方法も考えられる。
ここで、選択部3による、足タイプに応じた靴の選択方法の一例について説明する。
まず、アーチ高率に関して、「ハイアーチ」と判定された顧客の場合、靴の内側が、足の内側縦アーチ部をそのハイアーチ形状に保持するような形状になっている靴が好ましい。このため、選択部3は、例えば図7(a)において黒く塗りつぶして示した箇所が標準に比べて厚く形成された靴(または靴本体とオプションパーツとの組み合わせ等)を、靴カタログデータベース6からの選択候補とする。
反対に、アーチ高率に関して、「ローアーチ(扁平足)」と判定された顧客の場合は、靴の内側が、足の内側縦アーチ部をそのローアーチ形状に保持するような形状になっている靴が好ましい。このため、選択部3は、例えば図7(a)において黒く塗りつぶして示した箇所が標準に比べて薄く形成された靴(または靴本体とオプションパーツとの組み合わせ等)を、靴カタログデータベース6からの選択候補とする。
アーチ硬さに関して、「硬い」と判定された顧客の場合、内反捻挫を起こし易いので、これを予防するために、例えば図7(b)において黒く塗りつぶして示した箇所が、外側縦アーチ部を保持する形状に形成された靴や、図7(c)において黒く塗りつぶして示した箇所が、踵接地後内側へ荷重移動し易い形状に形成された靴、あるいは、図7(b)と図7(c)とを組み合わせた構成を有する靴を、靴カタログデータベース6からの選択候補とする。なお、ここで選択候補とするのは、靴そのものに限らず、靴本体とオプションパーツとの組み合わせ等であっても良いことは言うまでもない。
アーチ硬さに関して、「軟らかい」と判定された顧客の場合、踵接地直後に過回内を生じ易いので、これを予防するために、例えば図7(d)において黒く塗りつぶして示した箇所が、距骨の内側への倒れ込みを防ぐ形状に形成された靴や、図7(e)において黒く塗りつぶして示した箇所が、踵接地後外側へ荷重移動し易い形状に形成された靴、あるいは、図7(d)と図7(e)とを組み合わせた構成を有する靴を、靴カタログデータベース6からの選択候補とする。なお、ここで選択候補とするのは、靴そのものに限らず、靴本体とオプションパーツとの組み合わせ等であっても良いことは言うまでもない。
また、選択部3が、アーチ高率およびアーチ高さだけでなく、他の解剖学的特性をも加味して靴タイプの選択を行うようにしても良い。他の解剖学的特性としては、例えば、踵の荷重の内側または外側への偏心傾向等がある。踵の荷重の偏心傾向が内側および外側のどちらであるかの判定は、選択部3において、正規化フットプリントから図8に示すような圧力分布等高線を生成し、踵の内側および外側のどちらにおいて等高線が密になっているかを判断することによって可能である。
すなわち、踵の荷重の内側への偏心傾向が見られる場合、図9(a)に示すように、踵部が外反している(内側に倒れている)と推定される。このような足は、足裏の内側に荷重がかかり易いので、靴のソールの内側が減りやすく、アッパーも内側に傾く傾向がある。また、オーバープロネーションが生じ易いので、これを予防するために、内側へ偏っている荷重を踵接地後に外側へ移動し易くする機能を有する靴が好ましい。このため、選択部3は、前述したようにアーチ高率およびアーチ高さに応じて選択された候補のうち、図10(a)において黒く塗りつぶした箇所も標準に比べて厚く形成された靴を、靴カタログデータベース6からの選択候補とする。あるいは、距骨の内側への倒れを防ぐために、図10(b)において黒く塗りつぶした箇所が標準に比べて厚く形成された靴や、内側縦アーチ部全体を保持し、内側への倒れを防ぐために、図10(c)において黒く塗りつぶした箇所が標準に比べて厚く形成された靴も有効である。または、図10(a)〜(c)のうちの二つあるいはこれらの全ての組み合わせからなる靴も有効である。なお、ここで選択候補とするのは、靴そのものに限らず、靴本体とオプションパーツとの組み合わせ等であっても良いことは言うまでもない。
一方、踵の荷重の外側への偏心傾向が見られる場合、図9(b)に示すように、踵部が内反している(外側に倒れている)と推定される。このような足は、足裏の外側に荷重がかかり易いので、靴のソールの外側が減りやすく、アッパーも外側に傾く傾向がある。また、オーバーサピネーションが生じ易いので、これを予防するために、外側へ偏っている荷重を、踵接地後に内側へ移動し易くする機能を有する靴が好ましい。このため、選択部3は、前述したようにアーチ高率およびアーチ高さに応じて選択された候補のうち、図11(a)において黒く塗りつぶした箇所が標準に比べて厚く形成された靴を、靴カタログデータベース6からの選択候補とする。あるいは、内反捻挫を防ぐために、図11(b)において黒く塗りつぶした箇所が標準に比べて厚く形成されたことにより外側縦アーチ全体を保持する靴も有効である。または、図11(a)および(b)の組み合わせからなる靴も有効である。なお、ここでも、選択候補とするのは、靴そのものに限らず、靴本体とオプションパーツとの組み合わせ等であっても良いことは言うまでもない。
また、本発明における靴タイプの選択方法は、以上に示した具体例にのみ限定されるものではない。例えば、以下のように、アーチ高率とアーチ硬さとの組み合わせに基づいて、その顧客の足に対する障害発生リスクを判定し、判定された障害発生リスクに応じた靴タイプを選択する方法も考えられる。
この場合、選択部3は、図5のステップS26およびステップS29でそれぞれ判定したアーチ高率のタイプとアーチ硬さのタイプとに基づき、障害発生リスクとして、例えば図12に示すような過回内リスクファクターを算出する。図12に示す過回内リスクファクターは、アーチ高率が「ハイアーチ」であれば−1点、「標準アーチ」であれば0点、「ローアーチ」であれば1点とし、アーチ硬さが「硬い」であれば−1点、「標準」であれば0点、「軟らかい」であれば1点として、各組み合わせにおいてこれらの点数を加算することによって得られる。そして、選択部3は、過回内リスクファクターの値が大きいほど、安定性の高い靴(またはオプションパーツ等)を、靴カタログデータベース6から選択する。
また、障害発生リスクとして、上記の過回内リスクファクター以外に、例えば図13に示すような衝撃暴露リスクファクターを用いても良い。図13に示す衝撃暴露リスクファクターは、アーチ高率が「ハイアーチ」であれば1点、「標準アーチ」であれば0点、「ローアーチ」であれば−1点とし、アーチ硬さが「硬い」であれば1点、「標準」であれば0点、「軟らかい」であれば−1点として、各組み合わせにおいてこれらの点数を加算することによって得られる。そして、選択部3は、過回内リスクファクターの値が大きいほど、クッション性の高い靴(またはオプションパーツ等)を、靴カタログデータベース6から選択する。
ここで、靴カタログデータベース6に格納されている靴タイプの一具体例について説明する。なお、以下の説明はあくまでも一例であって、本発明をこの態様に限定するものではない。
靴の性能は、ソール性能に依存するところが比較的大きいので、靴カタログデータベース6における靴タイプの分類は、主としてソールの性能別になされていることが好ましい。また、靴のミッドソールを構成するパーツ、あるいはミッドソールに内蔵あるいは積層されるパーツの、材質および/または形状を適宜設計することにより、所望のソール性能が得られることが分かっている。例えば、図14(a)〜(c)に示すような波板状のパーツを、ミッドソールそのものとして、あるいはミッドソールに内蔵あるいは積層するパーツとして用いることにより、足タイプに応じた性能を有する靴を提供できる。なお、図14(a)〜(c)に示した波板状のパーツは、材質、質量、波の数、波の高さおよび振幅、内側および外側での波の間隔等が互いに異なっている。なお、図14(a)〜(c)に示したパーツは左足用であり、図中左側が踵側である。図14(a)に示したパーツが最もクッション性が高く、図14(c)に示したパーツが最も安定性が高い。図14(a)に示したパーツは、波はほぼ等間隔に形成されており、「ハイアーチ」で「硬い」足に適している。図14(b)に示したパーツは、波の振幅が外側よりも内側においてやや大きく、波の間隔が足の外側よりも内側において大きくなるように形成されており、「標準アーチ」で「標準」の硬さの足に適している。図14(c)に示したパーツは、波の振幅が図14(b)のパーツと同じであり、図14(c)において表面に見えているプレート(第1のプレート)の裏面に、足の全幅よりも狭い幅を有する第2のプレートが配されている。第2のプレートは、図14(c)から分かるように、第1のプレートの内側端部に沿って配置されているので、第1のプレートと第2のプレートを重ね合わせてなる図14(c)のパーツは、足のアーチ部分の厚みが外側よりも厚くなっている。従って、図14(c)のパーツは、「ローアーチ」で「軟らかい」足に適している。また、図14(a)および(b)に示したパーツには、踵の内反または外反を防止するための立ち上がり部が踵部両脇に設けられている。
以上に説明したように、本実施形態によれば、正規化処理部2がフットプリントの正規化を行い、選択部3が正規化フットプリントに基づいて足の解剖学的特性を推定することにより、顧客の足の解剖学的特性をより正確に判断することが可能となる。
なお、本実施形態では、正規化処理の一例として、図2のフローチャートに手順を示したが、本発明における正規化処理は、図2の具体例にのみ限定されるものではない。本発明における「正規化」としては、計測データ入力部により計測されたフットプリントを、標準フットプリントとの比較が可能な程度、あるいは足の解剖学的特性の推定が可能な程度に加工する処理であれば、任意の処理を行うことができる。
また、本実施形態では、選択部3による選択結果をディスプレイに表示する構成を例示したが、選択結果の出力は印刷出力であっても良い。後述の各実施形態においても同様である。
なお、本実施形態において、選択部3が、多変量解析またはニューラルネットワークによって足タイプの推定を行う構成とすることも好ましい。多変量解析による場合は、多変量解析への入力を、輝度マトリックスあるいは圧力マトリックスとする。出力は、アーチ高率およびアーチ硬さ、あるいはこれらにさらに加えて、踵荷重の偏心となる。ニューラルネットワークによる場合も、少ない入力で精度の高い判別を行うことを目的とするので、入力項は上記と同様に少なくて良い。
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態にかかる靴選択支援システムについて、以下に説明する。
本実施形態にかかる靴選択支援システムは、図15に示すように、第1の実施形態にかかる靴選択支援システムの構成に加えて、標準データ生成部8を備えている。第1の実施形態では、統計的に得られた標準フットプリントを、フットプリントデータベース4の標準フットプリント記憶部4cに予め記憶させた構成を例示したが、第2の実施形態では、正規化処理部2によって生成され正規化データ記憶部4aに蓄積記憶された正規化フットプリントから、標準データ生成部8が、足タイプ別の標準フットプリントを生成するようになっている。
このため、本実施形態にかかる靴選択支援システムでは、顧客に対して靴の選択を行う毎に、店員またはシューフィッターが、その顧客の足長Lと舟状骨粗面高Hとを実際に測定し、入力デバイス7(特性入力部)より入力する。入力デバイス7は、入力された測定結果(あるいは測定結果から計算されたH/Lの値)を、フットプリントデータベース4へ送り、その顧客の正規化フットプリントデータと関連付けて、一般データ記憶部4bへ格納させる。また、店員またはシューフィッターは、顧客の足の柔軟度についての所見も、入力デバイス7より入力する。この所見も、正規化フットプリントデータに関連付けた状態で、一般データ記憶部4bへ格納される。すなわち、本実施形態のフットプリントデータベース4には、正規化フットプリントデータと共に、その顧客の実際の足タイプ(解剖学的特性)を表す情報が格納されている。
ここで、入力デバイス7より入力される足タイプデータとしては、足長の実測値、舟状骨粗面高の実測値、アーチ高率、最大回外角度の実測値、最大回内角度の実測値、足の柔軟度、足関節可動範囲、Q−アングル値、および、拇趾または子趾の外反角のうち、少なくとも一つとすることが好ましい。また、足タイプデータの他に、その顧客に関する一般データとして、身長、体重、体脂肪率、性別、日常的に実施している運動種目、疾病情報、年齢、国籍、または、血液生化学的情報等を入力し、正規化フットプリントデータと共にフットプリントデータベース4の一般データ記憶部4bへ格納するようにしても良い。これにより、これらの一般データのいずれかの項目に基づいてフットプリントの統計や分類を行うことも可能となる。
標準データ生成部8は、予め定められた期間毎に、あるいは、外部からの命令に従って、フットプリントデータベース4にアクセスし、正規化データ記憶部4aに蓄積記憶された正規化フットプリントデータを抽出する。標準データ生成部8は、抽出した正規化フットプリントデータを、実際の足タイプ別に分類して、足タイプのそれぞれについて、蓄積記憶されていた正規化フットプリントデータを統計処理することにより、足タイプ別の標準フットプリントを生成する。標準データ生成部8は、このように生成した足タイプ別の標準フットプリントを、標準フットプリント記憶部4cに足タイプ別に設けられた領域(図示せず)に格納する。
以上のように、本実施形態によれば、蓄積記憶した正規化フットプリントを、実際の足タイプ別に統計処理することによって足タイプ別の標準フットプリントを生成することにより、正規化フットプリントに基づく足タイプの推定精度を向上させることが可能となる。
なお、足タイプ別のフットプリントをさらに分類して、性別、年代別、人種別、スポーツ種目別等で標準フットプリントを生成するようにしても構わない。
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態にかかる靴選択支援システムについて、以下に説明する。
第1の実施形態では、選択部3が、正規化フットプリントと標準フットプリントとの比較によって、顧客の足タイプを自動判定する構成を例示した。本実施形態にかかる靴選択支援システムは、その構成は図1に示した第1の実施形態の靴選択支援システムとほぼ同様であるが、選択部3の機能が異なる。すなわち、本実施形態における選択部3は、ディスプレイ5(標準データ提示部)に、顧客のフットプリント(正規化フットプリント)と、足タイプ別の標準フットプリントとを比較可能な状態で表示する。そして、店員またはシューフィッターあるいは顧客自身に、その顧客の足タイプがどれであるかを入力デバイス7から選択入力させ、選択部3が、入力された足タイプに適合する靴を選択する。
図16に、足タイプ別の標準フットプリントの表示態様の一例を示す。この例では、アーチ高率について3段階(LOW,MEDIUM,HIGH)、アーチ硬さについて3段階(SOFT,MEDIUM,HARD)の合計9種類に足タイプを分類し、それらの標準フットプリントを示したものである。なお、足タイプの分類方法や足タイプの呼称はこの具体例にのみ限定されず、靴メーカーから提供される靴およびオプションパーツの種類に応じて決定すれば良い。例えば、アーチ高率について3段階、アーチ硬さについて5段階の合計15分類としても良いことは勿論である。
また、顧客のフットプリント(正規化フットプリント)とこれらの標準フットプリントとの表示態様は、これらのフットプリントを比較可能な状態であれば任意の態様とすることができる。例えば、ディスプレイ5の画面を分割して正規化フットプリントと全ての足タイプの標準フットプリントとを並べて同時に表示しても良い。あるいは、正規化フットプリントの隣にあるいは正規化フットプリントにオーバーラップさせるように、標準フットプリントを1種類ずつ表示するようにしても良い。さらに、正規化フットプリントと標準フットプリントとをディスプレイに表示するのではなく、比較可能な状態で印刷出力することも、本発明の技術的範囲に属する。
以上のように、本実施形態にかかる靴選択支援システムでは、顧客のフットプリント(正規化フットプリント)と標準フットプリントとを比較可能な状態に表示または印刷出力することにより、顧客の足タイプを選択させるようになっている。この際、顧客のフットプリントが正規化されていることにより、標準フットプリントとの比較が容易であるので、顧客の足タイプをより正確に判定することができるという利点がある。
(第4の実施形態)
本発明の第4の実施形態にかかる靴選択支援システムについて、以下に説明する。
図17は、本実施形態にかかる靴選択支援システムの概略構成を示すブロック図である。図17に示すように、本実施形態の靴選択支援システムは、図1に示した第1の実施形態にかかる靴選択システムの構成に、特徴抽出部9を追加した構成である。
本実施形態にかかる靴選択支援システムでは、正規化処理部2により得られた正規化データを画像としてディスプレイ5に表示し、この正規化データ画像上で、店員またはシューフィッターあるいは顧客自身(操作者)が、足タイプを推定するために必要な特徴値を求めるための入力操作を行うようになっている。このため、本実施形態にかかる靴選択システムでは、ディスプレイ5が、GUI(Graphical User Interface)対応のディスプレイ(表示入力部)で構成され、画面上の任意の点を入力デバイス7(ポインティングデバイス等)で指定すれば、その点の座標を特定できるように構成されている。また、入力デバイス7の操作に応じて、座標の指定の他に、例えば画面上に直線を描く等の操作指示も可能である。
特徴抽出部9は、入力デバイス7を用いて画面上で指定された点の座標に基づいて、顧客の足タイプを推定するための特徴値を求める。求められた特徴値は選択部3へ送られ、選択部3が、この特徴値に基づいて、顧客の足タイプを推定し、適切な靴を選択する。
ここで、本実施形態の靴選択システムにおいて靴を選択する際の手順について、具体例を用いて説明する。
まず、第1の実施形態で説明したように、顧客の足裏の接地状態を、計測データ入力部1により計測し、その結果を正規化処理部2によって正規化することにより、正規化フットプリントを生成する。生成された正規化フットプリントは、正規化データ記憶部4aへ格納されると共に、ディスプレイ5にフットプリント画像として表示される。
ここで、店員またはシューフィッターあるいは顧客自身(操作者)は、入力デバイス7を用いて、ディスプレイ5に表示された正規化フットプリントの内側および外側それぞれに接線を引く。この接線が引かれた状態の例を、図18(a)および(b)に示す。なお、図18(a)の足タイプはローアーチであり、図18(b)の足タイプはハイアーチである。図18(a)および(b)を比較すれば、図18(b)のハイアーチの足の方が、中足部付近において接線とフットプリントの内側輪郭との距離dが、図18(a)のローアーチの足における距離dよりも大きいことが分かる。また、内側接線とフットプリントの外側輪郭との距離についても同様のことがいえる。すなわち、この距離を、前記の「特徴値」として求めれば、この特徴値に基づいてアーチ高率を推定することが可能である。
そこで、操作者は、正規化フットプリントの中足部付近において接線と最も距離のある点を、内側および外側のそれぞれにおいて入力デバイス7で指定する。特徴抽出部9は、入力デバイス7からそれらの点の座標を取得し、内側および外側接線のそれぞれとの距離を算出する。特徴抽出部9は、さらに、算出した距離の和を計算し、その結果を特徴値として選択部3へ渡す。
選択部3は、特徴抽出部9から送られた特徴値がフットプリントの母趾の幅よりも大きければ「ハイアーチ」、特徴値が母趾の幅の半分より小さければ「ローアーチ」、それ以外であれば、「標準アーチ」であると判定する。
次に、操作者は、ディスプレイ5に表示された正規化フットプリントにおいて、計測データ入力部1における計測面(ガラス面または圧力検知面等)と接触している領域の外周を、入力デバイス7で特定する。例えば、図19(a)は軟らかい足のフットプリント、図19(b)は硬い足のフットプリントの例であるが、軟らかい足の場合は、計測面と接触している領域が、足の前後方向で完全に連続した一つの領域になっているのに対して、硬い足の場合は、この領域が足の前後方向で二つに分離している。従って、特徴抽出部9は、入力デバイス7によって特定された領域外周の連続性を表す情報を、特徴値として選択部3へ渡す。
選択部3は、特徴抽出部9から送られた特徴値が「連続」を表している場合は「軟らかい足」、特徴値が「完全に分離」を表している場合は「硬い足」、それ以外(「接している」)の場合は「標準」であると推定する。
なお、足タイプの推定方法は、上記の方法に限定されない。例えば、選択部3が、以下のような方法でアーチ高率を推定するようにしても良い。図20(a)〜(c)に示すように、選択部3が、顧客のフットプリントにおける踏付部外縁と踵の外縁とを結んだ線22を生成してディスプレイ5に表示し、この線22に対してフットプリント外縁21がどのような位置にあるかに基づいてアーチ高率を推定する。なお、この線22およびフットプリント外縁21は、選択部3が輝度データに基づいて自動認識しても良いし、ディスプレイ5上で入力デバイス7により操作者に入力させても良い。図20(a)に示すように、線22に対してフットプリント外縁21がほぼ平行な直線状になっている(あるいはフットプリント外縁21が線22よりも外側に飛び出している)場合、選択部3は、この顧客の足は「ローアーチ」であると推定する。また、図20(b)に示すように、フットプリント外縁21が線22に対して内側にややくぼんでいる(小指の幅の半分程度)場合、選択部3は、この顧客の足は「標準アーチ」であると推定する。また、図20(c)に示すように、フットプリント外縁21が線22よりかなり内側に入っている(小指の幅の半分以上)場合、選択部3は、この顧客の足は「ハイアーチ」であると推定する。なお、選択部3による判断基準となる前記の「小指の幅」は、操作者(店員等)が実測して入力デバイス7により入力すれば良い。
また、選択部3が、以下のような方法でアーチ硬さを推定するようにしても良い。すなわち、図21(a)および(b)に示すように、ディスプレイ5に表示されたフットプリントにおいて、選択部3が、足趾の全てにおいてガラス面に密着した領域31が存在するか否かを輝度データに基づいて判断し、図21(a)のように足趾の全てにおいて領域31が存在すれば「軟らかい」足、図21(b)のように足趾(第2〜第5趾)が接地せずに浮いている(領域31が存在しない)場合は「硬い」足と推定するようにしても良い。
このように、本実施形態では、選択部3は、入力デバイス7で操作者が指定した座標等に基づいて特徴抽出部9により抽出された特徴値に従って、顧客の足タイプを推定する。推定された足タイプに適合した靴を選択する方法については、第1の実施形態で説明したとおりであるので、重複した説明は省略する。
なお、上記の具体例では、同一の正規化フットプリントからアーチ高率とアーチ硬さの両方に関する特徴値を抽出する例を示したが、第1の実施形態で説明したような、アーチ高率に関する感度マップ、アーチ硬さに関する感度マップをそれぞれ用いて、特徴値を抽出しても良い。
(第5の実施形態)
本発明の第5の実施形態にかかる靴選択支援システムについて、以下に説明する。
本実施形態にかかる靴選択支援システムは、遠隔地にいる顧客に対して靴選択支援サービスを提供するものである。このため、本靴選択支援システムは、図22に示すように、顧客の足裏接地状態を計測するための計測データ入力部1と、靴の選択結果を表示するディスプレイ5が、インターネット10を介して、正規化処理部2、選択部3、フットプリントデータベース4、靴カタログデータベース6、入力デバイス7に接続された構成である。計測データ入力部1とディスプレイ5はハードウェアとして一体化されていても良いし、別体のハードウェアとして実現されていても良い。このシステム構成において、計測データ入力部1およびディスプレイ5が持ち運び可能な大きさであれば、例えば、靴の販売者が顧客のところへ出張して注文を受け付けたり、イベントや見本市等の会場で注文を受け付けたりすることが可能となる。
本実施形態にかかる靴選択支援システムの各部の動作は、計測したフットプリントデータを計測データ入力部1からインターネット10を介して正規化処理部2へ送信し、靴の選択結果を選択部3からインターネット10を介してディスプレイ5へ送信する点を除いては、第1の実施形態と同様であるので、重複した説明は省略する。
なお、図22では、計測データ入力部1とディプレイ5とが顧客システム側にあるものとしたが、正規化処理部2も顧客システム側にあっても良い。
また、図22において、計測データ入力部1は必ずしもオフライン状態でなくとも良く、計測データ入力部1で計測したデータをリアルタイムで送信しなくとも良い。すなわち、顧客が、計測データ入力部1を用いて計測したフットプリントデータを電子記録メディア(CD−ROM、ハードディスク、DVD等)に記録しておき、必要なときに、自宅のコンピュータや携帯端末からインターネット10を介して、電子記録メディアに記録しておいたフットプリントデータを送信するようにしても良い。なお、このような構成をとる場合、顧客へ靴タイプの選択結果を提示する際には、それらの靴やパーツ類を入手可能な小売店等の紹介情報も提示することが好ましい。
さらに、図22では、インターネット10を介して、1セットの計測データ入力部1およびディスプレイ5が接続された構成とした。しかし、これに限らず、複数セットの計測データ入力部1およびディスプレイ5が、正規化処理部2、選択部3、フットプリントデータベース4、靴カタログデータベース6等を共有する構成とすることも可能である。このような構成にすれば、例えば、各地に複数の支店を有する販売業者が、いずれかの店舗あるいは本部のみにフットプリントデータベース4等を設置し、複数支店からこれらを共有することができる。
以上のように、本実施形態にかかる靴選択支援システムによれば、遠隔地にいる顧客に対しても、足の解剖学的特性に応じた靴を選択して薦めることができるので、顧客サービスが向上する。
なお、上述の各実施形態は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、発明の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、足タイプの分類数は、上述した具体例に限定されるものではない。障害発生リスクを考慮すれば、一般的には3〜7グループに分類することが好ましいと考えられるが、靴メーカーが提供する靴の種類数や、靴の用途等に応じて適切な分類数に設定すれば良い。
さらに例えば、ディスプレイ5に選択部3が選択した靴タイプの情報を提示する際に、その顧客の足タイプの分析結果も提示することも好ましい。この分析結果としては、例えば、フットプリントの画像、足長、足囲、足の特徴、過去の傷害経験、歩き方の癖等が考えられる。また、足タイプに応じた注意事項等を同時に提示することも有効である。
また、靴タイプの選択は、左右別個に行っても良い。特に、中敷等のパーツ(オプションパーツ)類については、左右の足のそれぞれについて足タイプの推定を行い、適合するものを選択することが好ましい。
また、前述の第3の実施形態において、標準フットプリントの表示例を図16に示したが、これ以外に、例えば図23〜図26のそれぞれに示すような態様で標準フットプリントを表示することも好ましい。
図23は、足タイプを4種類に分類した場合の例であり、各足タイプの典型的なフットプリントを、正規化前の状態(測定した際の画像のまま)でディスプレイ5に表示した態様を示す写真である。図24は、足タイプを9種類に分類した場合の例であって、各足タイプの標準フットプリントを、垂直方向および水平方向のスケール(グリッド)を付した状態でディスプレイ5に表示した態様を示す写真である。このようにスケールを付した態様によれば、足裏各部の寸法(例えば、中足部の幅、拇趾または子趾の幅、アーチ部分の接地幅等)を目測し易いという利点がある。
また、図25は、足タイプを9種類に分類した場合の例であって、各足タイプの標準フットプリントにおいて、接地状態が異なる領域の境界が分かりやすくなるように、それらの領域のエッジを強調してディスプレイ5に表示した態様を示す写真である。なお、図25は、モノトーンで表されているが、境界毎に色分け表示したり、エッジ部分に色付けしたりしても良い。
図26も、足タイプを9種類に分類した場合の例であり、図25に示した各足タイプの標準フットプリントと、「標準アーチ」かつ「標準」の硬さの足タイプの標準フットプリント(図25の中央部のMEDIUM/MEDIUMタイプ)との輝度差をピクセル毎に計算し、その輝度差で各ピクセルを表した画像をディスプレイ5に表示した態様を示す写真である。なお、この図はモノトーンで表されているが、各ピクセルを、輝度差の大きさに応じて異なる色で表示すれば、「標準アーチ」かつ「標準」の硬さの足タイプとの相違が分かりやすくなるので、好ましい。また、図26に示した態様の標準フットプリントを用いる場合は、顧客のフットプリントと「標準アーチ」かつ「標準」の硬さの足の標準フットプリント(図25の中央部に示されたフットプリント)との輝度差を計算し、その輝度差で各ピクセルを表した画像を、顧客の足裏画像として用いる。
(第6の実施形態)
本発明の第6の実施形態にかかる靴選択支援システムについて、以下に説明する。
上述の第1〜第5の実施形態は、足裏の接地状態を計測した結果に基づき足の解剖学的特性を推定するものであった。本実施形態にかかる靴選択システムでは、足の三次元形状を測定した結果から足の解剖学的特性を推定する点において、前述の各実施形態と異なっている。
このため、本実施形態にかかる靴選択支援システムは、図27に示すように、計測データ入力部11、正規化処理部12、選択部13、足情報データベース14、ディスプレイ5、靴カタログデータベース(靴情報記憶部)6、入力デバイス7を備えている。なお、第1の実施形態等で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同じ参照番号を付記し、その詳細な説明を省略する。
計測データ入力部11は、CCDカメラまたはディジタルカメラ等の光学センサを複数台有し、これら複数台の光学センサによって被測定者(顧客)の足を複数方向から撮影することにより、被測定者の足の三次元形状を測定する。計測の際、被測定者の足においては、足の特徴を表す寸法を計測するための基準となる位置に、マーカーを貼り付けることが好ましい。例えば、足の特徴を表す寸法として足長Lと舟状骨粗面高さHとを計測する場合は、図28(a)および図28(b)に示すように、人差し指の付根に当たる第2指中足骨骨頭aと、内側くるぶしの下の突起である舟状骨骨頭bとの少なくとも2箇所にマーカーをそれぞれ貼り付ける。
足の三次元形状データは、足の表面形状全体を表すポリゴンデータとして取得しても良いし、前記マーカー位置と足の外形線のみを表した三次元データとして取得しても良い。計測データ入力部11は、さらに、上記のように測定された足の三次元形状データから、足の特徴を表す寸法を計測する。
例えば、足長Lは、図28(c)に示すように、第2指中足骨骨頭aから最も遠い位置にある足趾部最突出点cを求め、第2指中足骨骨頭aと足趾部最突出点cとを通る直線と直交し爪先部最突出点dと接する線と、第2指中足骨骨頭aと足趾部最突出点cとを通る直線との交点をeとしたとき、交点eと足趾部最突出点cとの距離として求められる。図28(c)は、足の甲側から被測定者の足を撮影した画像である。なお、足長Lの測定方法は、この例にのみ限定されない。舟状骨粗面高さHは、図28(b)に示すように、床面からの舟状骨骨頭bの高さとして計測される。
足長Lおよび舟状骨粗面高さHの計測は、光学センサで撮影された画像において、足部分(マーカー部分)と背景部分との輝度差等を利用して自動計測することも可能であるし、光学センサによる測定結果をディスプレイ5に表示し、店員またはシューフィッターあるいは顧客自身(操作者)が、足タイプを推定するために必要な特徴値を求めるための入力操作を行うようにしても良い。後者の場合、ディスプレイ5は、GUI(Graphical User Interface)対応のディスプレイ(表示入力部)で構成され、画面上の任意の点を入力デバイス7(ポインティングデバイス等)で指定すれば、その点の座標を特定できるように構成する。そして、例えば、舟状骨粗面高さHを計測する場合は、図28(b)のように足の側面から撮影された画像をディスプレイ5に表示し、舟状骨骨頭bのマーカー部分と、舟状骨骨頭bから床面へ下ろした垂線と床面との交点とをそれぞれポインティングデバイスで指定することにより、指定した座標値から舟状骨粗面高さHを求めることができる。
計測データ入力部11による計測は、左右のどちらかの足のみについて行うようにしても良いし、両足について片足ずつ行っても良く、あるいは、両足同時に行うこととしても良い。
なお、本実施形態では、アーチ高さおよびアーチ硬さを調べるために、非荷重状態および荷重状態の二状態について、足長Lおよび舟状骨粗面高さHを計測する。非荷重状態での計測は、被測定者を椅子等に座らせた状態で行い、荷重状態での計測は、被測定者を立たせた状態で行えば良い。以降、非荷重状態で計測された足長および舟状骨粗面高さをそれぞれLおよびHと表し、荷重状態で計測された足長および舟状骨粗面高さをそれぞれLおよびHと表す。また、例えばスポーツシューズ等の特殊用途の靴の場合、さらに荷重がかかった状態での計測が必要であれば、例えば、被測定者に膝を曲げさせた状態や、片足で立たせた状態等、様々な状態で計測を行っても良い。
ここで、図29を参照しながら、本実施形態にかかる靴選択支援システムの動作について説明する。
まず、上述したように、計測データ入力部11により、非荷重状態および荷重状態の二状態について、足長Lおよび舟状骨粗面高さHを計測する(ステップS41)。
計測データ入力部11による計測結果(L、H、L、H)は、正規化処理部12へ送られる。正規化処理部12は、計測データ入力部11より入力されたデータを正規化し、得られた正規化データを少なくとも一時的に記憶する(ステップS42)。
ステップS42において、正規化処理部12は、非荷重状態の足長L、および舟状骨粗面高さHより、非荷重状態でのアーチ高率Aを求める。アーチ高率Aは、H、/Lとして求められる。求められたアーチ高率は、正規化処理部12から足情報データベース14へ送られ、正規化データ記憶部14aへ記憶される。
なお、アーチ高率を正規化データ記憶部14aへ記憶させる際に、入力デバイス7から顧客に関する種々のデータ(例えば、顧客名、住所、電話番号、メールアドレス、購入歴、靴に関する好み、足の障害歴等)を入力し、これらのデータを、当該顧客のアーチ高率と関連づけた状態で、足情報データベース14の一般データ記憶部14bに記憶させても良い。
次に、正規化処理部12は、ステップS41で計測された荷重状態における足長Lおよび舟状骨粗面高さHを用いて、荷重状態におけるアーチ高率Aを求める(ステップS43)。アーチ高率Aは、H/Lとして求められる。求められたアーチ高率Aは、正規化処理部12から足情報データベース14へ送られ、正規化データ記憶部14aへ記憶される。
次に、選択部13が、ステップS43で求められた荷重状態でのアーチ高率Aを用いて以下の数式により偏差値を求め、求めた偏差値に基づいて、アーチ高さに関する被測定者(顧客)の足のタイプを判定する(ステップS44)。
偏差値=50+10×(A−M)/SD
上記のMは、適切に選択された母集団のアーチ高率(荷重状態)から求められた平均値であり、SDは当該母集団のアーチ高率(荷重状態)の標準偏差である。なお、母集団としては、例えば、性別、年代別、人種別、スポーツ種目別等のように特定の性質を有する人間から構成される母集団を用いることが好ましい。母集団のアーチ高率は、足情報データベース14の標準データ記憶部14cに記憶されていても良いし、母集団のアーチ高率の平均値Mおよび標準偏差SDのみが標準データ記憶部14cに記憶されていても良い。
選択部13は、偏差値が40〜60の場合、アーチ高さタイプを「標準」と判定し、偏差値が40未満の場合はアーチ高さタイプを「低い(ローアーチ)」と判定する。また、偏差値が60を超える場合はアーチ高さタイプを「高い(ハイアーチ)」と判定する。ただし、この判定手法はあくまでも一例であり、タイプ種別の数や閾値はこの例にのみ限定されない。選択部13は、判定結果としてのアーチ高さタイプを一時的に記憶する。
次に、選択部13は、ステップS42およびS43でそれぞれ求められたアーチ高率A、Aに基づいて、アーチ硬さのタイプを判定する(ステップS45)。
ステップS45において、選択部13は、アーチ硬さのタイプの判定を、例えば以下のようにして行う。まず、非荷重状態でのアーチ高率Aに対する荷重状態でのアーチ高率Aの比率K(以下、このKを「アーチ保持率」と称する)を求める。すなわち、K=A/Aである。
ここで、荷重状態におけるアーチ高率Aとアーチ保持率Kとは、AをX軸方向、KをY軸方向にして二次元座標中にマッピングすると、一次関数Y=aX+b(a,bは定数)の周囲に分布する。そこで、選択部13は、このアーチ保持率Kを正規化するために、
STD=K−(a×A+b)
を求める。そして、選択部13は、この正規化されたアーチ保持率KSTDを用いて以下の数式により偏差値を求め、求めた偏差値からアーチ硬さのタイプを判定する。
偏差値=50+10×(KSTD−M)/SD
上記のMは、適切に選択された母集団のアーチ保持率の平均値であり、SDは同母集団のアーチ保持率の標準偏差である。母集団のアーチ保持率は、足情報データベース14の標準データ記憶部14cに記憶されていても良いし、母集団のアーチ保持率の平均値Mおよび標準偏差SDのみが標準データ記憶部14cに記憶されていても良い。
選択部13は、偏差値が40〜60の場合、アーチ硬さタイプを「標準」と判定し、偏差値が40未満である場合はアーチ硬さタイプを「柔らかい」と判定する。また、偏差値が60を超える場合は、アーチ硬さタイプを「硬い」と判定する。ただし、この判定手法はあくまでも一例であり、タイプ種別の数や閾値はこの例にのみ限定されない。選択部13は、判定結果としてのアーチ硬さタイプを一時的に記憶する。
以上のステップS41〜S45により、選択部13は、被測定者の足の解剖学的特性を、「アーチ高率(アーチの高さ)」について「ハイアーチ」、「標準アーチ」、「ローアーチ(扁平足)」の3タイプ、「アーチ硬さ(足の柔軟度)」について「硬い」、「標準」、「軟らかい」の3タイプに分類する。従って、本実施形態では、被測定者の足は、アーチ高率およびアーチ硬さの組み合わせによって、3×3=9タイプのいずれかのタイプに分類されることとなる。
なお、本発明における足の解剖学的特性の分類方法は、この具体例にのみ限定されるものではなく、足の状態に基づいて推定することが可能な任意の特性に分類することが可能である。また、例えば、上記のステップS41,S43,S44のみを行ってアーチ高率についての分類のみを行っても良いし、上記ステップS44を省略することにより、アーチ硬さについての分類のみを行っても良い。
本実施形態では、選択部13は、ステップS44で判定したアーチ高率とステップS45で判定したアーチ硬さに基づいて、靴カタログデータベース6から被測定者に適合する靴のタイプを選択し(ステップS46)、選択した結果をディスプレイ5に表示する(ステップS47)。ここで、選択部13が選択する靴タイプは、その顧客に最も適合すると推定される1種類のみに絞っても良いが、複数種類を選択して表示しても良い。
なお、選択部13による靴タイプ(靴タイプまたはオプションパーツ等)の選択手法については、第1の実施形態において詳細に説明した選択部3と同様であるため、詳しい説明は省略する。
以上のように、本実施形態によれば、足の三次元形状に関するデータを測定し、測定結果に基づいて足の解剖学的特性を推定することにより、足タイプに応じた靴の選択を効果的に支援することができる。
また、本実施形態にかかる靴選択支援システムは、第5の実施形態と同様に、計測データ入力部11やディスプレイ5等が、インターネット等を介して正規化処理部12、選択部13、足情報データベース14、靴カタログデータベース6、入力デバイス7等に接続された構成としても良い。
また、上述の各実施形態では、本発明を靴販売支援システムとして実施する態様について説明した。しかし、本発明は、コンピュータプログラムまたはコンピュータプログラムを記録した記録媒体あるいはプログラム製品としても実施可能である。すなわち、コンピュータに上述の各実施形態で説明した処理を行わせる命令を含むプログラムや、当該プログラムを記録した記録媒体(プログラム製品)も、本発明の一形態である。
【産業上の利用可能性】
以上のように、本発明によれば、足の状態の測定結果から足の解剖学的特性を推定することにより、顧客に適合する靴のタイプを選択して提示することが可能な靴選択支援システムを提供することが可能となる。
【図1】

【図2】

【図3】


【図5】

【図6】


【図8】




【図12】

【図13】


【図15】

【図16】

【図17】





【図22】

【図23】

【図24】

【図25】

【図26】

【図27】


【図29】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測者の足の状態を表すデータを計測して入力する計測データ入力部と、
前記計測データ入力部より入力されたデータを正規化し、得られた正規化データを少なくとも一時的に記憶する正規化処理部と、
複数種類の靴の情報を格納した靴情報記憶部と、
前記正規化データに基づいて当該被計測者の足の解剖学的特性を推定し、前記解剖学的特性に基づいて靴情報記憶部を参照することにより、当該被計測者に適合する靴タイプを選択して提示する選択部とを備え、
前記選択部が、足の解剖学的特性として、足のアーチ高率および足の柔軟度の少なくとも一つを推定することを特徴とする靴選択支援システム。
【請求項2】
前記計測データ入力部が、前記被計測者の足の状態として、当該被計測者の静止立位における足裏の接地状態を、光学センサおよび圧力センサの少なくとも一つを用いて計測する、請求の範囲1に記載の靴選択支援システム。
【請求項3】
前記計測データ入力部が、前記被計測者の足の状態として、当該被計測者の足の三次元形状を、光学センサを用いて計測する、請求の範囲1に記載の靴選択支援システム。
【請求項4】
標準的な足の状態を表す標準データを記憶する標準データ記憶部をさらに備え、
前記選択部が、前記正規化データと前記標準データとの比較に基づき、当該被計測者の足の解剖学的特性を推定する、請求の範囲1〜3のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項5】
前記選択部が、前記正規化データに基づいて、当該被計測者の踵の荷重の内側または外側への偏心傾向を判定し、判定された偏心傾向も加味して当該被計測者に適合する靴タイプを選択する、請求の範囲4に記載の靴選択支援システム。
【請求項6】
前記選択部が、足の解剖学的特性として、足のアーチ高率および足の柔軟度の両方を推定すると共に、推定された足のアーチ高率と足の柔軟度との組み合わせに基づいて当該被計測者における足の障害発生リスクを判定し、判定された障害発生リスクに応じた靴タイプを選択する、請求の範囲4に記載の靴選択支援システム。
【請求項7】
前記選択部が、前記アーチ高率および柔軟性の組み合わせに基づいて、当該被計測者の足関節の過回内レベルを判定し、過回内レベルが高いほどより安定性の高いタイプの靴を選択する、請求の範囲6に記載の靴選択支援システム。
【請求項8】
前記選択部が、前記アーチ高率および柔軟性の組み合わせに基づいて、当該被計測者の足関節の衝撃暴露レベルを判定し、衝撃暴露レベルが高いほどよりクッション性の高いタイプの靴を選択する、請求の範囲6に記載の靴選択支援システム。
【請求項9】
前記選択部が、多変量解析により当該被計測者の足の解剖学的特性を推定する、請求の範囲1〜8のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項10】
前記選択部が、ニューラルネットワークを用いて当該被計測者の足の解剖学的特性を推定する、請求の範囲1〜8のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項11】
前記選択部が、前記障害発生リスクを3〜7グループに分類して判定する、請求の範囲5〜8のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項12】
前記選択部が、当該被計測者に適合する靴タイプをソール性能に基づいて選択する、請求の範囲1〜11のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項13】
前記ソール性能が、靴のミッドソールに内蔵あるいは積層されるパーツの材質および/または形状により類別される、請求の範囲12に記載の靴選択支援システム。
【請求項14】
前記ソール性能が、靴のミッドソールを構成するパーツの材質および/または形状により類別される、請求の範囲12に記載の靴選択支援システム。
【請求項15】
前記パーツが波板状である、請求の範囲13または14に記載の靴選択支援システム。
【請求項16】
前記選択部が、当該被計測者に適合する靴タイプの選択を、当該被計測者に適合する中敷の選択を含めて行う、請求の範囲1〜15のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項17】
前記選択部が、前記中敷の選択を被計測者の左右の足のそれぞれについて個別に行う、請求の範囲16に記載の靴選択支援システム。
【請求項18】
被計測者に関して、当該被計測者の足の解剖学的特性を表すデータを含む被計測者関連データを入力する特性入力部と、
前記正規化処理部により得られた正規化データを、前記特性入力部により入力された解剖学的特性と関連付けて蓄積記憶する正規化データ蓄積記憶部と、
前記正規化データ蓄積記憶部に蓄積記憶された正規化データから、足の解剖学的特性の種別毎に、標準的な足裏接地状態を表す足タイプ別標準データを生成する標準データ生成部と、
前記標準データ生成部により生成された足タイプ別標準データを格納する足タイプ別標準データ記憶部とをさらに備えた、請求の範囲1〜3のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項19】
前記特性入力部より入力される被計測者関連データが、足の解剖学的特性を表すデータとして、足長の実測値、舟状骨粗面高の実測値、アーチ高率、最大回外角度の実測値、最大回内角度の実測値、足の柔軟度、足関節可動範囲、Q−アングル値、および、拇趾または子趾の外反角、のうち少なくとも一つを含む、請求の範囲18に記載の靴選択支援システム。
【請求項20】
前記標準データ記憶部に格納された足タイプ別標準データを、前記正規化処理部によって得られた正規化データと比較可能な状態に、表示または印刷出力する標準データ提示部をさらに備えた、請求の範囲18または19に記載の靴選択支援システム。
【請求項21】
前記正規化処理部により得られた正規化データを画像として表示すると共に、表示された正規化データ画像上で操作者により指定された点の座標および操作指示を入力する表示入力部と、
前記表示入力部を用いて正規化データ画像上で指定された点の座標に基づいて、被計測者の足の解剖学的特性を推定するための特徴値を求める特徴抽出部とをさらに備え、
前記選択部が、前記正規化データから前記特徴抽出部により求められた特徴値に基づいて、当該被計測者の足の解剖学的特性を推定する、請求の範囲1〜3のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項22】
前記計測データ入力部、正規化処理部、選択部のうち少なくともいずれか二つがインターネットを介して接続された、請求の範囲1〜21のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項23】
前記選択部が、当該被計測者に適合する靴タイプと共に、当該靴に関する情報を提示する、請求の範囲1〜22のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項24】
前記選択部が、当該被計測者に適合する靴タイプと共に、当該被計測者の足の解剖学的特性に関する情報を提示する、請求の範囲1〜22のいずれか一項に記載の靴選択支援システム。
【請求項25】
被計測者の足の状態を表すデータを計測するステップと、
前記足の状態を表すデータを正規化するステップと、
前記正規化データに基づいて、当該被計測者の足の解剖学的特性として、足のアーチ高率および足の柔軟度の少なくとも一つを推定するステップと、
推定された足の解剖学的特性に基づいて靴情報記憶部を参照することにより、当該被計測者に適合する靴タイプを選択して提示するステップとを含む靴選択支援方法。
【請求項26】
被計測者の足の状態を表すデータを入力するステップと、
前記足の状態を表すデータを正規化するステップと、
前記正規化データに基づいて当該被計測者の足の解剖学的特性として、足のアーチ高率および足の柔軟度の少なくとも一つを推定するステップと、
推定された足の解剖学的特性に基づいて靴情報記憶部を参照することにより、当該被計測者に適合する靴タイプを選択して提示するステップとをコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。

【国際公開番号】WO2005/006905
【国際公開日】平成17年1月27日(2005.1.27)
【発行日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511800(P2005−511800)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009046
【国際出願日】平成16年6月21日(2004.6.21)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】