説明

鞍乗り型車両

【課題】理論空燃比よりも小さい空燃比で燃焼を行う内燃機関を備えた鞍乗り型車両において、NOxの浄化率を向上させる。
【解決手段】本発明による鞍乗り型車両は、理論空燃比よりも小さい空燃比で燃焼を行う内燃機関1と、内燃機関1から燃焼ガスを排出する排気経路7a内に設けられた第1の触媒2Aと、排気経路7a内において第1の触媒2Aよりも下流側に設けられた第2の触媒2Bと、排気経路7aの、第1の触媒2Aと第2の触媒2Bとの間の部分に二次空気を導入する二次空気導入装置3と、を備える。第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bのそれぞれは、Pt、Rh、PdおよびAuの少なくとも1つを含む貴金属成分を含む。第1の触媒2Aは、さらに、ゼオライト担体と、ゼオライト担体にイオン交換可能量よりも多く担持されたCoまたはFeと、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車等の鞍乗り型車両に関し、特に、理論空燃比よりも小さい空燃比(つまり燃料リッチ側の空燃比)で燃焼を行う内燃機関を備えた鞍乗り型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車両のエンジンから排出される燃焼ガス(排気ガス)を浄化するため、三元触媒が広く用いられている。三元触媒は、排気ガスに含まれるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)およびNOx(窒素酸化物)を水や二酸化炭素、窒素に還元または酸化させる。
【0003】
三元触媒を用いて効率よく還元・酸化を行うためには、燃料と空気とが過不足なく燃焼する空燃比(「理論空燃比」と呼ばれる。)で燃焼を行うことが好ましい。そのため、排気ガス中の酸素濃度を酸素センサにより検出し、検出した酸素濃度に基づいて空燃比が理論空燃比となるように燃料噴射量をフィードバック制御する方式が提案されている。
【0004】
ところが、エンジンは、理論空燃比よりも小さい空燃比(つまり燃料リッチ側の空燃比)で燃焼を行う方が高い出力が得られるので、空燃比が常に理論空燃比となるように燃料噴射量を制御すると、四輪自動車に比べて排気量の小さい自動二輪車等の鞍乗り型車両では、十分に高いエンジン出力を得られないことがある。また、厳密なフィードバック制御を行なうためには、現在自動二輪車に多く用いられているキャブレタ方式ではなく、インジェクション(燃料噴射)方式で混合気を作り出す必要があるので、製造コストが増加してしまう。
【0005】
特許文献1には、燃料リッチ側の空燃比で燃焼を行うエンジン用の排気ガス浄化システムが提案されている。図10に、特許文献1に開示されている排気ガス浄化システム200を示す。
【0006】
排気ガス浄化システム200は、図10に示すように、エンジン201と、エンジン201の排気ポートに接続された排気管207を備えている。排気管207内には、第1の触媒202Aと、第1の触媒202Aよりも下流側に配置された第2の触媒202Bとが設けられており、さらに、排気管207の第1の触媒202Aと第2の触媒202Bとの間の部分に、二次空気を導入するための二次空気導入管203が接続されている。第1の触媒202Aおよび第2の触媒202Bは、例えば公知の三元触媒と同じ成分を有している。
【0007】
この排気ガス浄化システム200では、エンジン201は、燃料リッチ側の空燃比で運転される。エンジン201からの排気ガスは、まず第1の触媒202Aに接触する。三元触媒は、燃料リッチ側の空燃比では高いNOx浄化率を示すため、排気ガス中のNOxは、第1の触媒202Aによって最終所要浄化率まで浄化される。また、このとき、排気ガス中のCOおよびHCの一部も浄化される。
【0008】
次に、第1の触媒202Aを通過した排気ガスに、二次空気導入管203から導入された二次空気が混入され、排気ガスの空燃比は燃料リーン側にシフトする。この燃料リーン側の空燃比の排気ガスが第2の触媒202Bに接触することによって、排気ガス中の未浄化のCOおよびHCが浄化される。
【0009】
つまり、この方式では、排気ガスをまず還元雰囲気下で第1の触媒202Aと接触させて主にNOxを浄化し、その後排気ガスを酸化雰囲気下で第2の触媒202Bと接触させて残りのCOおよびHCを浄化することにより、排気ガス中のCO、HCおよびNOxを高効率で浄化することができる。
【0010】
特許文献1の排気ガス浄化システム200によれば、エンジン201に供給される混合気の空燃比を理論空燃比より小さく(つまり燃料リッチ側に設定)できるので、排気量の小さい鞍乗り型車両のエンジン出力を高くでき、ドライバビリティーを向上できる。また、混合気を作り出す方式としてキャブレタ方式で十分であり、インジェクション方式を採用する場合に比べてコストの点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2004/113696号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示されている方式では、後に詳述するように、第1の触媒202AによってNOxの一部が窒素(N2)ではなくアンモニア(NH3)に還元されてしまう。そのため、生成したNH3が第2の触媒202Bによって酸化されてNOxが生成してしまう。従って、NOxの浄化率を十分に高くすることができない。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、理論空燃比よりも小さい空燃比で燃焼を行う内燃機関を備えた鞍乗り型車両において、NOxの浄化率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による鞍乗り型車両は、理論空燃比よりも小さい空燃比で燃焼を行う内燃機関と、前記内燃機関から燃焼ガスを排出する排気経路内に設けられた第1の触媒と、前記排気経路内において前記第1の触媒よりも下流側に設けられた第2の触媒と、前記排気経路の、前記第1の触媒と前記第2の触媒との間の部分に二次空気を導入する二次空気導入装置と、を備え、前記第1の触媒および前記第2の触媒のそれぞれは、Pt、Rh、PdおよびAuの少なくとも1つを含む貴金属成分を含み、前記第1の触媒は、さらに、ゼオライト担体と、前記ゼオライト担体にイオン交換可能量よりも多く担持されたCoまたはFeと、を含む。
【0015】
ある好適な実施形態において、前記ゼオライト担体に対するCoまたはFeの担持量は、イオン交換可能量の2倍以上である。
【0016】
ある好適な実施形態において、前記ゼオライト担体に対するCoまたはFeの担持量は、25wt%以下である。
【0017】
ある好適な実施形態において、前記ゼオライト担体に対するCoまたはFeの担持量は、20wt%以下である。
【0018】
ある好適な実施形態において、前記第1の触媒は、0.2g/L以上の担持量でRhを含む。
【0019】
ある好適な実施形態において、前記内燃機関は、12.5以上14.5以下の空燃比で燃焼を行う。
【0020】
ある好適な実施形態において、本発明による鞍乗り型車両は、マフラをさらに備え、前記第1の触媒および前記第2の触媒は前記マフラ内に配置されている。
【0021】
ある好適な実施形態において、前記第1の触媒は、前記内燃機関から前記排気経路に沿って500mm以上離れている。
【0022】
本発明による鞍乗り型車両は、排気経路内に第1の触媒と、第1の触媒よりも下流側に設けられた第2の触媒とを備えており、さらに、排気経路の、第1の触媒と第2の触媒との間の部分に二次空気を導入する二次空気導入装置を備えている。理論空燃比よりも小さい空燃比で燃焼を行う内燃機関から排出された燃焼ガス(排気ガス)は、まず、第1の触媒に接触し、続いて、二次空気導入装置によって導入された二次空気と混合された後に第2の触媒に接触する。第1の触媒および第2の触媒のそれぞれは、Pt、Rh、PdおよびAuの少なくとも1つを含む貴金属成分を含んでいるので、まず、第1の触媒によって排気ガス中のNOxと、COおよびHCの一部が浄化され、続いて、第2の触媒によって残りのCOおよびHCが浄化される。本発明による鞍乗り型車両の第1の触媒は、CoまたはFeと、CoまたはFeを担持するゼオライト担体とを含む。CoおよびFeは、アンモニア(NH3)を分解する触媒として機能する。また、ゼオライト担体は、CoおよびFeの担体としてだけでなく、アンモニアを分解する際の助触媒としても機能する。このように、第1の触媒がアンモニア分解成分を含んでいるので、第1の触媒の貴金属成分がNOxを還元することにより生成したNH3を分解することができ、第2の触媒でのNOxの生成を抑制できる。そのため、本発明によれば、NOxの浄化率を向上することができる。さらに、本発明によれば、アンモニア分解成分であるCoまたはFeが、ゼオライト担体にイオン交換可能量よりも多く担持されているので、ゼオライト担体中にCoやFeが活性の高いゼロ価の状態で存在する。そのため、NOxの浄化率がいっそう向上する。また、本発明による鞍乗り型車両の内燃機関は、理論空燃比よりも小さい空燃比(つまり燃料リッチ側の空燃比)で燃焼を行うので、高い出力が得られ、ドライバビリティーが向上する。従って、本発明による鞍乗り型車両は、走行性能と環境性能の両方に優れる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、理論空燃比よりも小さい空燃比で燃焼を行う内燃機関を備えた鞍乗り型車両において、NOxの浄化率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の好適な実施形態における鞍乗り型車両が備える排気ガス浄化システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】ゼオライトの構造を模式的に示す図である。
【図3】ゼオライト担体へのCo担持量と、NOx発生量との関係を示すグラフである。
【図4】ゼオライト担体にCoが担持されている様子を模式的に示す図であり、Coの担持量がイオン交換可能量以下である場合を示している。
【図5】ゼオライト担体にCoが担持されている様子を模式的に示す図であり、Coの担持量がイオン交換可能量よりも多い場合を示している。
【図6】実施例1〜6と比較例1および2について、ゼオライト担体に対するCo担持量(wt%)とNOx浄化率との関係を示すグラフである。
【図7】第1の触媒を通過後の排気ガスにおけるNOx濃度、NH3濃度と第1の触媒の温度との関係を示すグラフである。
【図8】本発明の好適な実施形態における鞍乗り型車両が備える排気ガス浄化システムの構成を模式的に示す図である。
【図9】図1または図8に示す排気ガス浄化システムを備えた自動二輪車の例を示す図である。
【図10】従来の排気ガス浄化システムの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0026】
図1に、本実施形態における鞍乗り型車両が備える排気ガス浄化システムの構成を模式的に示す。本実施形態における鞍乗り型車両は、図1に示すように、内燃機関1と、第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bと、二次空気導入装置3とを備えている。
【0027】
内燃機関(典型的にはガソリンエンジン)1は、理論空燃比よりも小さい空燃比で燃焼を行う。理論空燃比よりも小さい空燃比、すなわち、燃料リッチ側の空燃比で燃焼を行うことにより、理論空燃比で燃焼を行う場合よりも高い出力を得られる。典型的には、12.5以上14.5以下の空燃比で燃焼が行われる。内燃機関1は、キャブレタ(気化器)4から吸気経路5aを介して混合気を供給される。吸気経路5aは、内燃機関1の吸気ポートに接続された吸気管5によって囲まれた空間であり、キャブレタ4の上流側には、エアクリーナ6が設けられている。
【0028】
第1の触媒2Aは、内燃機関1から燃焼ガスを排出する排気経路7a内に設けられており、第2の触媒2Bは、排気経路7a内において第1の触媒2Aよりも下流側に設けられている。排気経路7aは、内燃機関1の排気ポートに接続された排気管7によって囲まれた空間である。
【0029】
二次空気導入装置3は、排気経路7aの、第1の触媒2Aと第2の触媒2Bとの間の部分7a’に二次空気を導入する。二次空気導入装置3は例えば図示しているように、排気管7に接続された二次空気導入管3aと、二次空気導入管3aとエアクリーナ6との間に設けられたリードバルブ3bとを含んでいる。リードバルブ3bは、エアクリーナ6から二次空気導入管3aに供給される二次空気の逆流を防止する逆止弁として機能する。なお、二次空気導入装置3は、第1の触媒2Aと第2の触媒2Bとの間に二次空気を導入し得る構成であればよく、二次空気導入装置3の構成はここで例示しているものに限定されない。排気管7の下流側端部には、排気音を低減させるためのマフラ(消音器)8が接続されている。
【0030】
第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bのそれぞれは、貴金属成分を含んでいる。貴金属成分は、具体的には、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)および金(Au)の少なくとも1つを含む。第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bの貴金属成分は、内燃機関1から排出される燃焼ガス(排気ガス)中のCO、HCを酸化し、NOxを還元することによって浄化する。
【0031】
本実施形態における排気ガス浄化システムの第1の触媒2Aは、さらに、コバルト(Co)または鉄(Fe)と、CoまたはFeを担持する担体としてのゼオライト(「ゼオライト担体」)とを含む。CoおよびFeは、アンモニア(NH3)を分解する触媒として機能する。また、ゼオライト担体は、CoおよびFeの担体としてだけでなく、アンモニアを分解する際の助触媒としても機能する。このように、第1の触媒2Aは、アンモニア分解成分を含んでいる。
【0032】
本実施形態における排気ガス浄化システムは、上述した構成を有する第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bを含むことにより、燃料リッチ側の空燃比で燃焼を行う内燃機関1からの排気ガスを高効率で浄化することができる。特に、NH3に由来するNOxの生成を防止でき、最終的なNOx浄化率を向上できる。以下、この理由を具体的に説明する。
【0033】
まず、図10に示した従来の排気ガス浄化システム200を燃料リッチ側の空燃比で燃焼を行う内燃機関に適用した場合において、NOxの浄化率を十分に高くできない理由を説明する。表1に、従来の排気ガス浄化システム200の第1の触媒202Aおよび第2の触媒202Bにおける反応を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
第1の触媒202Aでは、式(1)、(2)および(3)で示されているように、CO、HCおよびNOxの浄化が行われる。具体的には、COおよびHCは、式(1)および(2)でそれぞれ示されるように、排気ガス中に含まれるH2Oと反応してCO2とH2とを生成する。また、NOxは、生成されたH2と反応してNH3とH2Oとを生成する。一部のNOxは、式(3)の反応により生成したNH3と反応して、式(4)に示すようにN2とH2Oとに分解されるが、すべてのNH3がこの反応によって消費されるわけではない。また、式(5)に示されるように分解されるNH3もわずかである。つまり、従来の排気ガス浄化システム200では、内燃機関が理論空燃比ではなく燃料リッチ側の空燃比で燃焼を行うため、そもそも排気ガス中におけるO2量が少ない。そのため、上流側の第1の触媒202AにおけるNOx浄化の際にNH3が生成され、その一部が第2の触媒202Bに供給されてしまう。この現象は、燃料リッチ側の空燃比で燃焼を行う内燃機関から排出される排気ガスを、二次空気を導入しつつ、2つの触媒(二次空気の導入部よりも上流側と下流側とにそれぞれ配置された触媒)で浄化処理する場合に発生する特異なものである。
【0036】
第2の触媒202Bでは、式(6)および(7)で示されるように、残りのCO、HCの浄化が行われる。具体的には、COおよびHCは、導入された二次空気中の酸素と反応し、式(6)および(7)でそれぞれ示されるように、酸化されてCO2あるいはCO2とH2とを生成する。また、第2の触媒202Bでは、式(8)で示されるように、NH3が酸化されてNOxが生成されてしまう。
【0037】
このように、従来の排気ガス浄化システム200では、第1の触媒202AでNOxがN2だけでなくNH3にも還元されてしまうので、NH3が第2の触媒202Bで酸化されてNOxが生成されてしまう。そのため、NOxの浄化率を十分に高くすることができない。
【0038】
続いて、本実施形態における排気ガス浄化システムを燃料リッチ側の空燃比で燃焼を行う内燃機関1に適用した場合において、NOxの浄化率を向上できる理由を説明する。表2に、本実施形態における排気ガス浄化システムの第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bにおける反応を示す。
【0039】
【表2】

【0040】
第1の触媒2Aでは、式(1)、(2)および(3)で示されているように、CO、HCおよびNOxの浄化が行われる。式(3)で示されているように、NOxの還元によりNH3が生成されるが、本実施形態の第1の触媒2Aはアンモニア分解成分を含んでいるので、生成されたNH3は式(5)で示される反応によって分解される。つまり、本実施形態の第1の触媒2Aでは、式(5)のアンモニア分解反応が主反応として起こる。
【0041】
そのため、第2の触媒2Bでは、式(6)および(7)で示されるような残りのCO、HCの浄化は行われるが、表1の式(8)に示したようなNH3の酸化反応は減少する。そのため、NOxの生成が抑制される。
【0042】
このように、本実施形態における排気ガス浄化システムでは、第1の触媒2Aに含まれるアンモニア分解成分によってNH3(NOxの還元によって生成したNH3)が分解される。予め第1の触媒2AによってNH3の発生量を減少させているので、第2の触媒2BにおけるNOxの生成が抑制され、NOxの浄化率が向上する。
【0043】
また、本実施形態における排気ガス浄化システムの第1の触媒2Aは、アンモニア分解成分としてCoまたはFeを含んでいる。CoおよびFeは、式(5)で表されるアンモニア分解反応を還元雰囲気下で効率的に進めることができる。また、ゼオライト担体は、CoまたはFeによるアンモニア分解反応(式(5))を促進することができる。ゼオライトとしては、シリカ/アルミナ比(SiO2/Al23比)が10mol/mol以上のものを好適に用いることができ、例えば、MFI型、FAU型、BEA型およびMOR型のゼオライトを好適に用いることができる。MOR(モルデナイト)型のゼオライトとしては、例えば東ソー株式会社製のHSZ−600シリーズを用いることができる。
【0044】
さらに、本実施形態における排気ガス浄化システムでは、CoまたはFeは、ゼオライト担体にイオン交換可能量よりも多く担持されている。ここで、「イオン交換可能量」とは、後述するようなイオン交換反応によってゼオライト中に取り込むことのできるCoまたはFeの最大量である。本実施形態では、第1の触媒2Aが、ゼオライト担体にイオン交換可能量よりも多く担持されたCoまたはFeを含んでいることにより、NOxの浄化率がいっそう向上する。以下、この理由を詳細に説明する。
【0045】
ゼオライトは、結晶中に微細孔を有するアルミノ珪酸塩である。ゼオライトは、図2に模式的に示すように、二酸化ケイ素からなる骨格を基本構造として有し、一部のケイ素がアルミニウムに置き換わることによって結晶格子全体が負に帯電している。そのため、ゼオライトは、微細孔内にナトリウムなどのカチオン(陽イオン)を含み、そのことによって電荷のバランスを取っている。このような構造を有するゼオライトを、別の種類のカチオンを含む水溶液中にいれると、微細孔内と水溶液中との間でイオン交換が起こる。つまり、ゼオライトは、微細孔内のカチオンを放出する代わりに、水溶液中のカチオンを取り込む。
【0046】
ゼオライトを触媒金属の担体として用いる場合、一般的にはこのようなイオン交換反応を利用してゼオライトへの触媒金属の取り込みを行う。そのため、CoやFeをゼオライト担体に担持する(Co2+、Fe2+として微細孔内に取り込まれる)場合でも、通常、これらの元素がイオン交換可能量よりも多く担持されることはない。
【0047】
これに対し、本実施形態における排気ガス浄化システムの第1の触媒2Aは、従来の技術常識にいわば反するように、ゼオライト担体にイオン交換可能量よりも多く担持されたCoまたはFeを含んでいる。図3に、ゼオライト担体へのCo担持量と、NOx発生量との関係の例を示す。図3には、ゼオライト担体のCoについてのイオン交換可能量が約2.4wt%の場合を示している。
【0048】
図3からわかるように、Co担持量がイオン交換可能量よりも多いと、NOx発生量が顕著に減少する。この理由は明らかではないが、アンモニア分解反応では、ゼロ価のCo(Co0)が活性種として有効に働くためと考えられる。
【0049】
Co担持量がイオン交換可能量以下である場合、図4に模式的に示すように、ゼオライト担体に担持されたCoは、すべてイオン交換によって微細孔内に取り込まれた2価のカチオン(Co2+)として存在する。Co2+は、この状態で安定であるので、活性が低い。
【0050】
一方、Co担持量がイオン交換可能量より多い場合、ゼオライト担体に担持されたCoには、図5に模式的に示すように、イオン交換によって微細孔内に取り込まれたCo2+だけでなく、微細孔以外の部分にイオン交換されずに担持されたゼロ価のCo(Co0)が存在する。このCo0の活性がCo2+の活性よりも高いために、Co2+しか存在しない場合よりもアンモニア分解反応が促進されてNOx浄化率が向上する。
【0051】
なお、図4および図5には、MOR(モルデナイト)型のゼオライトの骨格を例示している。ゼオライトの骨格は、実際には、立体的な網目状の構造を有しているが、図4および図5では、簡略化して示している。
【0052】
また、上記の説明はCoについて行ったが、Feについても同様の理由により、担持量がイオン交換可能量よりも多いことによって、NOx浄化率を向上させることができる。
【0053】
ゼオライト担体に対してイオン交換可能量よりも多くCo(またはFe)を担持する方法としては、例えば、通常のイオン交換による担持方法(イオン交換法)を以下のように改変した方法を用いることができる。通常のイオン交換法では、Co(またはFe)イオンを含む水溶液にゼオライトを入れてゼオライト中のカチオンと水溶液中のカチオンとを交換した後に、水溶液中の固形分を取り出して洗浄し、乾燥・焼成を行う。これに対し、水溶液中のCoの量を、ゼオライトのイオン交換可能量よりも多くしておき、ゼオライトを入れた水溶液(イオン交換可能量よりも多いCoを含む)をそのまま蒸発乾固・焼成することにより、ゼオライト担体に対してイオン交換可能量よりも多くCo(またはFe)を担持することができる。勿論、Co(またはFe)の担持方法はこの方法に限定されるものではない。
【0054】
ここで、イオン交換可能量の計算方法を説明する。なお、以下の計算では、Si、Al、O、Fe、Coの原子量として表3に示す値を用いた。
【0055】
【表3】

【0056】
ゼオライトとして微細孔中に一価のカチオン(例えばNa+)を含むものを用いる場合、このゼオライトのCoまたはFe(いずれも2価のカチオンとして取り込まれる。)についてのイオン交換可能量(mol)は、下式で表される。
【0057】
イオン交換可能量[mol]=ゼオライト中のカチオン量[mol]/2
【0058】
ゼオライトとして、シリカ/アルミナ比(SiO2/Al23比)が40mol/molのものを用いる場合、ゼオライト中のSi原子に対するAl原子の割合Aは、A=2/40=0.05である。従って、ゼオライトの平均分子量は、(Siの原子量)×(1−A)+(Alの原子量)×A+(Oの原子量)×2=26.6817+1.3491+32=60.0308である。
【0059】
そのため、1gのゼオライトの物質量は、1/60.0308=0.016658molであり、1gのゼオライトに含まれるAlイオンの物質量は、0.016658×0.05=0.000833molである。Alイオンの物質量は、ゼオライト中の一価カチオンの物質量と等しいので、ゼオライト1g当たりのCoまたはFeについてのイオン交換可能量は、0.000833/2≒0.00042molである。
【0060】
このイオン交換可能量を、ゼオライト担体(CoまたはFeを含む)に対するCoまたはFeのwt%で表わすと、Coについては2.39549wt%、Feについては2.272823wt%となる。つまり、シリカ/アルミナ比が40mol/molのゼオライトを担体として用いる場合、イオン交換可能量(wt%)は、Coについては約2.40wt%、Feについては約2.27wt%となる。
【0061】
上述したように、本実施形態の排気ガス浄化システムでは、NOxの浄化率を大きく向上させることができる。図3からもわかるように、基本的にはゼオライト担体に対するCo(またはFe)の担持量が多いほどNOx発生量を低減する効果が高い。そのため、NOx発生量を十分に低減する観点からは、Co(またはFe)の担持量がイオン交換可能量の2倍以上であることが好ましい。
【0062】
ただし、図3に示しているように、ゼオライト担体に対するCo(またはFe)の担持量がある量を超えると、NOx発生量はほとんど変化しなくなる。つまり、NOx浄化率の向上効果が頭打ちになる。従って、Co(またはFe)の担持量を多くしすぎると、NH3の分解に寄与しないCo(またはFe)を増やすことになる。また、Co(またはFe)の担持量を多くしすぎると、耐熱性が低下することがある。そのため、製造コストの低減および耐熱性の確保の観点からは、Co(またはFe)の担持量は25wt%以下であることが好ましく、20wt%以下であることがさらに好ましい。
【0063】
また、第1の触媒2AにおけるCO、HCおよびNOxの浄化反応を好適に進めるためには、第1の触媒2Aは、0.2g/L以上の担持量でRhを含むことが好ましい。
【0064】
次に、本実施形態における排気ガス浄化システムを実際に試作し、その効果を検証した結果を説明する。
【0065】
実施例1〜6および比較例1〜3の排気ガス浄化システムを以下のようにして作製した。実施例1〜6は、第1の触媒2Aにアンモニア分解成分としてイオン交換可能量よりも多いCoを含む本実施形態の排気ガス浄化システムである。これに対し、比較例1の排気ガス浄化システムは、第1の触媒(上流側の触媒)にCoつまりアンモニア分解成分を含まない。また、比較例2の排気ガス浄化システムは、第1の触媒(上流側の触媒)にイオン交換可能量よりも少ないCoを含む。比較例3の排気ガス浄化システムは、第1の触媒にゼオライト担体の代わりにアルミナ担体を含んでいる。
【0066】
(実施例1)
まず、蒸留水100gに硝酸コバルト六水和物を24.7g加えて溶解させ、さらに、シリカ/アルミナ比が40のMFI型ゼオライト(Coについてのイオン交換可能量は約2.4wt%)45gを加える。この水溶液を5時間撹拌した後に蒸発乾固させ、次いで600℃で焼成することによって、10wt%Co−ゼオライトを得た。次に、この10wt%Co−ゼオライト12.5gと、蒸留水50g、γアルミナ26.5g、セリア10gおよびアルミナゾル10g(1gのアルミナに相当)とをボールミルに入れて粉砕し、スラリーを得た。
【0067】
続いて、このスラリーに直径45mmで長さ60mm、セル数100cpsiのメタルハニカムを浸漬し、その後取り出したメタルハニカムから圧縮空気で余分なスラリーを吹き飛ばした。次に、このメタルハニカムを120℃で乾燥、600℃で焼成することにより、γアルミナ、セリアおよびCo−ゼオライトが合計で100g/Lコーティングされたメタルハニカムを得た。
【0068】
次に、コーティングされたメタルハニカムを、蒸留水300gにジニトロジアミン白金と硝酸ロジウムとを加えたものに浸漬して所定時間置くことによって、メタルハニカムの表面にPtとRhを吸着させた。その後、メタルハニカムを120℃で乾燥、600℃で焼成することにより、Ptを1.0g/L、Rhを0.5g/L担持したメタルハニカムを得た。このようにして、貴金属成分、ゼオライト担体およびゼオライト担体にイオン交換可能量よりも多く担持されたCoを含む第1の触媒2Aを作製した。
【0069】
続いて、直径54mmで長さ60mm、セル数100cpsiのメタルハニカムに市販の酸化触媒材料(Pt1.0g/L、Rh0.5g/L)をコーティングすることによって第2の触媒2Bを作製した。
【0070】
その後、排気径路7aの上流側に第1の触媒2A、下流側に第2の触媒2Bを取り付け、図1に示した構成の排気ガス浄化システムを作製した。
【0071】
(実施例2)
第1の触媒2A作製の際の硝酸コバルト六水和物の量を9.3gにすること以外は実施例1と同様にして排気ガス浄化システムを作製した。第1の触媒2Aは、4wt%Co−ゼオライトを含んでいる。
【0072】
(実施例3)
第1の触媒2A作製の際の硝酸コバルト六水和物の量を19.3gにすること以外は実施例1と同様にして排気ガス浄化システムを作製した。第1の触媒2Aは、8wt%Co−ゼオライトを含んでいる。
【0073】
(実施例4)
第1の触媒2A作製の際の硝酸コバルト六水和物の量を55.6gにすること以外は実施例1と同様にして排気ガス浄化システムを作製した。第1の触媒2Aは、20wt%Co−ゼオライトを含んでいる。
【0074】
(実施例5)
第1の触媒2A作製の際のRhの担持量を0g/Lにする(Ptの担持量は1.0g/Lのまま)こと以外は実施例1と同様にして排気ガス浄化システムを作製した。
【0075】
(実施例6)
第1の触媒2A作製の際のRhの担持量を0.2g/Lにする(Ptの担持量は1.0g/Lのまま)こと以外は実施例1と同様にして排気ガス浄化システムを作製した。
【0076】
(比較例1)
第1の触媒2A作製の際の硝酸コバルト六水和物の量を0gにすること以外は実施例1と同様にして排気ガス浄化システムを作製した。第1の触媒2Aは、ゼオライトを含んでいるがCoを含んでいない。
【0077】
(比較例2)
第1の触媒2A作製の際の硝酸コバルト六水和物の量を4.5gにすること以外は実施例1と同様にして排気ガス浄化システムを作製した。第1の触媒2Aは、2wt%Co−ゼオライトを含んでいる。
【0078】
(比較例3)
第1の触媒2A作製の際のMFI型ゼオライトの代わりにγアルミナを用いること以外は実施例1と排気ガス浄化システムを作製した。第1の触媒2Aは、10wt%Co−γアルミナを含んでいる。
【0079】
表4に、実施例1〜6および比較例1〜3について、作製した排気ガス浄化システムを、A/Fが13.0〜14.0の範囲に設定された排気量125ccの自動二輪車に取り付け、ECE40モードで走行してNOx浄化率を測定した結果を示す。なお、表4の「Co担持量」の欄には、Coの担体(ゼオライトまたはアルミナ)に対するCoの担持量(wt%)だけでなく、第1の触媒全体におけるCoの担持量(g/L)が併記されている。また、「Coの担体」の欄には、Coの担体が何であるかだけでなく、第1の触媒全体におけるCoの担体の担持量(g/L)が記載されている。「判定結果」の欄には、NOx浄化率が非常に高い(具体的には70%以上)場合には「◎」、十分に高い(具体的には55%以上70%未満)場合には「○」、十分に高くない(具体的には55%未満)場合には「×」と記載している。また、図6に、実施例1〜4と比較例1および2について、ゼオライト担体に対するCo担持量(wt%)とNOx浄化率との関係を示す。
【0080】
【表4】

【0081】
実施例1〜6と比較例1および2との比較から、ゼオライト担体にイオン交換可能量よりも多くCoが担持されている実施例1〜6では、Coを含まない比較例1やCoがイオン交換可能量よりも少なく担持されている比較例2よりも、NOx浄化率が向上していることがわかる。また、実施例1、3、4および6と実施例2との比較から、Coの担持量がイオン交換可能量の2倍よりも多いことによって、NOx浄化率がいっそう向上することがわかる。
【0082】
さらに、実施例1および6と実施例5との比較から、第1の触媒2Aが0.2g/L以上の担持量でRhを含んでいることが好ましいことがわかる。また、実施例1と比較例3との比較からは、Coの担体としてアルミナよりもゼオライトを用いることが好ましいことがわかる。
【0083】
上述したように、本実施形態の排気ガス浄化システムによれば、理論空燃比よりも小さい空燃比で燃焼を行う内燃機関から排出される燃焼ガス中のNOxを高効率で浄化することができる。
【0084】
なお、本実施形態の排気ガス浄化システムでは、上流側に配置された第1の触媒2Aで生成されるNH3を、第1の触媒2Aに含まれるアンモニア分解成分によって分解するが、NH3を分解するために、上流側の触媒ではなく、下流側の触媒(例えば図10に示した排気ガス浄化システム200の第2の触媒202B)にアンモニア分解成分を含ませる構成も考えられる。しかしながら、このような構成では、酸化雰囲気下でNH3とCOおよびHCの酸化をほぼ同時に行うことになるので、NH3が酸化され過ぎてNOxが発生しやすい。あるいは、NOxの発生を抑制しようとすると、COやHCの浄化率を十分に高くすることができず、これを補うためにさらに他の酸化触媒を追加する必要があるので、製造コストが増加してしまう。これに対し、本実施形態のように、第1の触媒2Aがアンモニア分解成分を含んでいると、還元雰囲気下でNOxの浄化とNH3の分解を同時に行うことができるので、上述したような問題が発生しない。
【0085】
また、本実施形態の排気ガス浄化システムでは、第1の触媒2Aがアンモニア分解成分を含んでいることにより、従来よりも低温で十分に高いNOx浄化率を実現することができる。つまり、本実施形態の排気ガス浄化システムは、従来より低い温度でも好適に使用できる。図7は、本実施形態の排気ガス浄化システムおよび従来の排気ガス浄化システム200について、第1の触媒を通過後の排気ガスにおけるNOx濃度、NH3濃度と第1の触媒の温度との関係を示すグラフである。
【0086】
図7に示すように、従来の排気ガス浄化システム200では、650℃以上でないとNH3濃度が高く、最終的なNOx浄化率が低くなってしまう。これに対し、本実施形態の排気ガス浄化システムでは、第1の触媒2Aがアンモニア分解成分を含んでいるので、550℃以上でNH3濃度を十分に低くすることができ、最終的なNOx浄化率を十分に高くすることができる。従って、従来の排気ガス浄化システムの使用温度範囲が650℃〜900℃(図7中の矢印A)であるのに対し、本実施形態の排気ガス浄化システムの使用温度範囲は550℃〜900℃(図7中の矢印B)である。なお、いずれについても使用温度範囲の上限が900℃であるのは、900℃を超えると触媒の耐久性を維持しにくいからである。
【0087】
従来の排気ガス浄化システム200では、第1の触媒202Aの温度が早く上昇するように、第1の触媒202Aをエンジン1にある程度近付けて配置していた。本発明によれば、上述したように排気ガス浄化システムの使用温度範囲が低温側に広がるので、第1の触媒2Aを、内燃機関1から従来よりも離れた位置に配置することができる。例えば、従来の排気ガス浄化システム200では、第1の触媒202Aがエンジン201から150mm〜400mm離れた位置に配置される。これに対し、本実施形態の排気ガス浄化システムでは、第1の触媒2Aは内燃機関1から150mm〜600mm離れた位置に配置され得る。
【0088】
一般に、内燃機関からマフラまでの距離(排気経路に沿った距離)は500mm程度である。本実施形態の排気ガス浄化システムでは、第1の触媒2Aを、内燃機関1から排気経路7aに沿って500mm以上離すことができるので、図8に示すように、第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bの両方をマフラ8内に配置することができる。
【0089】
第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bの周辺は、浄化反応に伴って発生する反応熱により高温となる。第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bを、図8に示すようにマフラ8内に配置(収容)することにより、周辺部品の軟化や劣化(熱害)を防止することができる。また、第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bを収容するために排気管7を太くする必要がないので、排気管7のレイアウトが容易になり、外観面の利点(意匠性の向上など)も得られる。
【0090】
本実施形態における排気ガス浄化システムは、NOx浄化性能に優れているので、自動二輪車に好適に用いられる。図9に、本実施形態における排気ガス浄化システムを備えた自動二輪車100を示す。自動二輪車100は、ライダーが着座するシート11よりも前方に配置されたエンジン(例えば4ストロークのガソリンエンジン)1と、エンジン1の排気ポートに接続された排気管7と、排気管7に接続され、後輪12の近傍に配置されたマフラ(消音器)8とを備えている。排気管7内には、図示していないが、第1の触媒2A、第2の触媒2Bが設けられており、自動二輪車100は、さらに、排気管7内に二次空気を導入するための二次空気導入装置3も備えている。
【0091】
自動二輪車100では、燃料リッチ側の空燃比でエンジン1が運転されるので、高いエンジン出力が得られ、高いドライバビリティーが得られる。また、自動二輪車100は、上述した排気ガス浄化システムを備えているので、燃料リッチ側の空燃比で運転されるエンジン1からの排気ガスに含まれるNOxを高効率で浄化できる。そのため、自動二輪車100は、走行性能と環境性能の両方に優れる。
【0092】
なお、図1には、キャブレタ4が設けられる構成(キャブレタ方式)を例示したが、自動二輪車100は、インジェクタが設けられる構成を有してもよい(つまりインジェクション方式で混合気を作り出してもよい。)。
【0093】
また、本実施形態における排気ガス浄化システムは、自動二輪車に限定されず、ライダーが跨って乗る鞍乗り型車両全般に好適に用いられる。例えば、バギーなどのATVにも用いられる。一般に、鞍乗り型車両は排気量が小さいので、内燃機関を燃料リッチ側の空燃比で運転することが好ましく、本実施形態の排気ガス浄化システムを搭載する意義が大きい。
【0094】
排気量が400cc以下の単気筒の鞍乗り型車両では、内燃機関がシートよりも前方に配置され、また、マフラが後輪の近傍に配置されるので、内燃機関からマフラまでの距離が長くなる。そのため、マフラ内に第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bを配置した場合、排気ガスがこれらの触媒に到達するまでに排気ガスの温度が低下しやすい。しかしながら、本発明によれば、排気ガス浄化システムの使用温度範囲が低温側に広がるので、このような鞍乗り型車両においてもマフラ内に第1の触媒2Aおよび第2の触媒2Bを配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明によると、理論空燃比よりも小さい空燃比で燃焼を行う内燃機関を備えた鞍乗り型車両において、NOxの浄化率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 内燃機関
2A 第1の触媒
2B 第2の触媒
3 二次空気導入装置
3a 二次空気導入管
3b リードバルブ
4 キャブレタ
5 吸気管
5a 吸気経路
6 エアクリーナ
7 排気管
7a 排気経路
8 消音器
100 自動二輪車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
理論空燃比よりも小さい空燃比で燃焼を行う内燃機関と、
前記内燃機関から燃焼ガスを排出する排気経路内に設けられた第1の触媒と、
前記排気経路内において前記第1の触媒よりも下流側に設けられた第2の触媒と、
前記排気経路の、前記第1の触媒と前記第2の触媒との間の部分に二次空気を導入する二次空気導入装置と、を備え、
前記第1の触媒および前記第2の触媒のそれぞれは、Pt、Rh、PdおよびAuの少なくとも1つを含む貴金属成分を含み、
前記第1の触媒は、さらに、ゼオライト担体と、前記ゼオライト担体にイオン交換可能量よりも多く担持されたCoまたはFeと、を含む、鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記ゼオライト担体に対するCoまたはFeの担持量は、イオン交換可能量の2倍以上である、請求項1に記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記ゼオライト担体に対するCoまたはFeの担持量は、25wt%以下である、請求項1または2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記ゼオライト担体に対するCoまたはFeの担持量は、20wt%以下である、請求項1または2に記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
前記第1の触媒は、0.2g/L以上の担持量でRhを含む、請求項1から4のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記内燃機関は、12.5以上14.5以下の空燃比で燃焼を行う、請求項1または5に記載の鞍乗り型車両
【請求項7】
マフラをさらに備え、
前記第1の触媒および前記第2の触媒は前記マフラ内に配置されている請求項1から6のいずれかに記載の鞍乗り型車両。
【請求項8】
前記第1の触媒は、前記内燃機関から前記排気経路に沿って500mm以上離れている請求項7に記載の鞍乗り型車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−229817(P2010−229817A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74888(P2009−74888)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】