説明

鞍乗り型車両

【課題】本発明は、ユニットスイングを揺動可能に支持させた鞍乗り型車両において、車両を短くすることができる技術を提供することを課題とする。
【解決手段】車体フレーム20からリンクピボット23を介して車両後方にリンク機構24を延ばし、このリンク機構24にエンジンと後輪が軸支されるユニットスイングを揺動可能に支持させた自動二輪車10において、左右の一対のロアフレーム87の間にクロスフレーム91が渡され、このクロスフレーム91にリンク機構24の回動量を規制するリンク規制部55を下方に吊り下げることにより、リンクピボット23をロアフレーム87の下方に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと後輪とを有するユニットスイングが車体フレームに揺動可能に設けられている鞍乗り型車両の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ユニットスイングが車体フレームに揺動可能に設けられている鞍乗り型車両が知られている(例えば、特許文献1(図7)参照。)。
【0003】
特許文献1の図7に示されるように、メインフレーム部(27)(括弧付き数字は、特許文献1記載の符号を示す。以下同じ。)の後端部に筒状のラバー支持部(31)が挿入され、このラバー支持部(31)にストッパラバー(53)を介してアーム(52)が挿入され、このアーム(52)に外筒(47)を介してリンク部材(46)が取付けられ、このリンク部材(46)の車両後端部に回動筒(44)を介して連結軸(45)が揺動可能に支持されている。外筒(47)の内方にゴムブッシュを介して同軸に内筒(48)が設けられ、この内筒(48)に揺動支軸(51)が挿嵌される。
【0004】
特許文献1の技術では、揺動支軸(51)は、メインフレーム部(27)の車両後方に配置されている。
このように、メインフレーム部(27)の後方に揺動支軸(51)を配置すると、この揺動支軸(51)がメインフレーム部(27)の後方に移動する分だけ車両が長くなる。
ユニットスイングを揺動可能に支持させた鞍乗り型車両において、車両を短くすることができる技術があれば好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−341575公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、車体フレームにユニットスイングを揺動可能に支持させた鞍乗り型車両において、車両を短くすることができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、操向系を軸支するヘッドパイプから車両後下方へ延ばされるダウンフレームとこのダウンフレームの下部から車両後方へ延ばされる左右一対のロアフレームとこのロアフレームの後端部から車両後上方に延ばされるシートフレームとからなる車体フレームを設け、この車体フレームからリンクピボットを介して車両後方にリンク機構を延ばし、このリンク機構に動力を発生するエンジンと後端部に後輪が軸支されるユニットスイングを設けることにより、車体フレームにユニットスイングを揺動可能に支持させた鞍乗り型車両において、左右の一対のロアフレームの間にクロスフレームが渡され、このクロスフレームにリンク機構の回動量を規制するリンク規制部を下方に吊り下げることにより、リンクピボットを左右一対のロアフレームの下方に配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、リンク規制部は、車両後方に向け開放する箱状に形成される箱部と、この箱部に挿入される弾性部材とからなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明では、リンク規制部は、クロスフレームの長手方向に複数配置されることを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、クロスフレームの車両前方に下に凸に湾曲することでクロスフレームよりも下方に位置し左右のロアフレームの間に渡されるフロントクロスフレームを設け、このフロントクロスフレームにダウンフレームの下端を接続することを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明では、車両前後方向から見て、フロントクロスフレームは、リンク規制部と重なる位置に配置されると共に、このリンク規制部の下端はフロントクロスフレームの下端よりも上方に配置されることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、ロアフレームの後端から所定距離前方にクロスフレームが配置され、ロアフレームから下方にリンクブラケットが延ばされ、このリンクブラケットの下部にリンクピボットが支持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、クロスフレームにリンク機構の回動量を規制するリンク規制部を下方に吊り下げることにより、リンクピボットを左右一対のロアフレームの下方に配置した。
リンクピボットをロアフレームの下方に配置したので、リンクピボットをロアフレームの後方に配置する場合に較べて、ユニットスイングを車両前方に寄せることができ、ユニットスイングを車両前方に寄せることによって、車両を短くすることができる。
【0014】
請求項2に係る発明では、リンク規制部は、箱部とこの箱部に挿入される弾性部材とからなる。リンク規制部を箱部と弾性部材とからなる簡単な構造でリンク機構の回動量を規制するようにしたので、車両のコストアップを抑えることができる。
【0015】
請求項3に係る発明では、リンク規制部は複数配置される。複数のリンク規制部を設けたので、1つのリンク規制部を設ける場合に較べて、リンク規制部への負荷が半減し、リンク規制部の設計が容易になる。
【0016】
請求項4に係る発明では、リンク規制部を支えるクロスフレームの車両前方且つ下方にフロントクロスフレームを設けた。このフロントクロスフレームは、クロスフレームよりも下方に位置する。飛び石等はリンク規制部に至る前に、フロントクロスフレームに当たる。すなわち、フロントクロスフレームがリンク規制部の保護材となる。リンク規制部は、フロントクロスフレームによって保護されるので、リンク規制部の厚肉化が抑えられ、車両の重量増加が抑えられる。
また、フロントクロスフレームにダウンフレームの下端を接続したので、車体フレームの剛性を高めることができる。
【0017】
請求項5に係る発明では、車両前後方向から見て、リンク規制部の下端はフロントクロスフレームの下端よりも上方に配置される。リンク規制部の下端は、このリンク規制部の車両前方に配置されるフロントクロスフレームによりガードされるので、リンク規制部の板厚を薄く抑えることができる。
【0018】
請求項6に係る発明では、ロアフレームから下方にリンクピボットを支持するリンクブラケットが延ばされている。ロアフレームからリンクブラケットを延ばしたので、リンクブラケットを小型軽量にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る自動二輪車の左側面図である。
【図2】図1の要部断面図である。
【図3】車体フレームの左側面図である。
【図4】図3の4矢視図(平面視)である。
【図5】図4の5矢視図(後面視)である。
【図6】リンクユニットを説明する図である。
【図7】リンク規制部の分解斜視図である。
【図8】リンク規制部の下面図である。
【図9】実施例を比較例と比較して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。図中及び実施例において、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」は、各々、自動二輪車に乗車する運転者から見た方向を示す。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0021】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、自動二輪車10は、車両前部に配置されハンドル11によって操向可能に設けた前輪12と、この前輪12の後方に配置される駆動源としてのエンジン13と、このエンジン13の後方に配置されエンジン13によって駆動される後輪14と、前輪12と後輪14の間に設けたシート15とを有し、このシート15に乗員が跨って座る形態の鞍乗り型車両である。
【0022】
自動二輪車10は、車体フレーム20を備え、この車体フレーム20の前部にハンドル11を含む操向系21を備え、車体フレーム20から軸部材としてのリンクピボット23を介して車両後方にリンク機構24を延ばし、このリンク機構24に後端部に後輪14が軸支されるユニットスイング30を取付けることにより、車体フレーム20にユニットスイング30を揺動可能に支持させるようにした車両である。
【0023】
ユニットスイング30に、動力を発生するエンジン13が一体的に備えられている。ユニットスイング30は、スイングアームの機能を兼ね備えており、ユニットスイング30の後部と車体フレーム20の間には、左右のクッションユニット35L、35R(図手前側の符号35Lのみ示す。)が介在されている。また、ユニットスイング30に吸気系37を構成するエアクリーナ38が設けられている。
【0024】
自動二輪車10の操向系21は、車体フレーム20の前端部に回動可能に設けたステアリング軸26と、このステアリング軸26の下端に接続し前輪12を支えるフロントフォーク27と、ステアリング軸26の上端に取付けるハンドル11とからなる。
【0025】
自動二輪車10の車体フレーム20は、車体カバー40で覆われている。
車体カバー40は、車体の前方を覆うフロントカバー41と、このフロントカバー41に操向系21の上部を車両後方から覆うように取付けたセンタカウル42と、フロントカバー41の端部から車両後方に延びている左右のサイドカバー43L、43R(図手前側の符号43Lのみ示す。)と、シート15の前方にて左右のサイドカバー43L、43Rの間に渡されると共にセンタカウル42の後端部に連続して設けられるトンネル部材44と、左右のサイドカバー43L、43Rの下方に配置され運転者が足を置く左右のステップ45L、45R(図手前側の符号45Lのみ示す。)を有する左右のアンダカバー46L、46R(図手前側の符号46Lのみ示す。)と、左右のサイドカバー43L、43Rの端部からシート15の下方にて車両後方に延びている左右のリヤサイドカバー47L、47R(図手前側の符号47Lのみ示す。)とからなる。
【0026】
以下、シート15の前方に位置し、左右のステップ45L、45Rから上方に延びている左右のサイドカバー43L、43Rと、これらの左右のサイドカバー43L、43Rの間に渡されるトンネル部材44とで形成される部位をセンタートンネル49と云うことにする。センタートンネル49の上方に、運転者が乗降の際に足を通すことで容易に乗降ができる足通し空間51が形成される。
【0027】
フロントカバー41の上端にウインドシールド52が延ばされている。前輪12の上方にフロントフェンダ53が配置され、後輪14の後上方にリヤフェンダ54が配置されている。
次図にて、センタートンネル下方及びシート下方の構造等について説明する。
【0028】
図2に示すように、車体フレーム20の下部にリンク機構24が設けられ、このリンク機構24に揺動自在にエンジン13を有するユニットスイング30が軸支される。
リンク機構24の車両前方にて車体フレーム20に、リンク機構24の回動量を規制するリンク規制部55が設けられている。
【0029】
エンジン13はシリンダ軸56が前が若干上となるように略水平となるように配置され、クランクケース57と、このクランクケース57の前端に取付けるシリンダブロック58と、このシリンダブロック58の前端に取付けるシリンダヘッド59と、このシリンダヘッド59の前端に被せるヘッドカバー61とを有する。シリンダヘッド59の上面に吸気系37が接続され、シリンダヘッド59の下面に排気系62が接続される。
【0030】
エンジン13の車両前方にてセンタートンネル49の内側に燃料タンク65が配置される。燃料タンク65は、第1タンクブラケット67と、この第1タンクブラケット67の後方に設けた第2タンクブラケット68を介して車体フレーム20に取付けられる。
【0031】
燃料タンク65は、車両側面視で略三角形状を呈する容器であり、燃料タンクの上面71は、後下方を向くように傾斜している。燃料タンク65は、上フランジ部73をもつ上半体74と下フランジ部75をもつ下半体76とを、上下のフランジ部73、75にて接合することで形成される。これらの上下のフランジ部73、75は後下方に延びている。上半体74は、上フランジ部73から上方に膨出される膨出部77を有している。
【0032】
燃料タンク65の上半体74に燃料を吸気系37に送り出す燃料ポンプ81が取付けられ、この燃料ポンプ81の車両前上方に燃料タンク65で蒸発した燃料ガスを吸着するキャニスタ82が取付けられ、このキャニスタ82の前上方に給油口83が設けられ、この給油口83の車両前方に上方に延びる膨出部77が設けられ、この膨出部77の車両前方にパージコントロール弁84が設けられる。このパージコントロール弁84は燃料タンク65に取付けられる。パージコントロール弁84は、キャニスタ82に蓄えた燃料ガスをエンジン13の吸気系37への供給を制御する部材である。
【0033】
図3〜4では、車体フレームの構成について説明する。
図3に示すように、車体フレーム20は、前端部に操向系(図1、符号21)を操向可能に軸支するヘッドパイプ85と、このヘッドパイプ85から車両後下方へ延ばされるダウンフレーム86と、このダウンフレーム86の下部から車両後方へ延ばされる左右一対のロアフレーム87L、87R(図手前側の符号87Lのみ示す。)と、これらのロアフレーム87L、87Rの後端部から車両後上方に延ばされるシートフレーム88L、88R(図手前側の符号88Lのみ示す。)とを主要素とする。
【0034】
図4に示すように、左右の一対のロアフレーム87L、87Rの間にクロスフレーム91が渡され、このクロスフレーム91の車両前方にて左右の一対のロアフレーム87L、87Rの間にフロントクロスフレーム92が渡され、このフロントクロスフレーム92にダウンフレームの下端86bを接続する。フロントクロスフレーム92にダウンフレームの下端86bを接続したので、フロントクロスフレーム92をダウンフレーム86で補強することができる。
【0035】
シートフレーム88L、88Rにシートクロスフレーム93が渡され、このシートクロスフレーム93の車両後端部にリヤクロスフレーム94が渡される。
左右の一対のロアフレーム87L、87Rに、各々、運転者が足を置くステップを固定するステップステー95L、95Rが付設されている。
【0036】
図3を併せて参照して、詳細には、左右の一対のロアフレーム87L、87Rは、前から後に、各々、車両下方に延ばされる下がり部101と、この下がり部101から車両後方へ延ばされる水平部102と、これらの水平部102から車両斜め後上方に延ばされる傾斜部103とを有し、左右の一対のロアフレーム87L、87Rの後端部(左右の傾斜部103の後端部)が各々左右のシートフレーム88L、88Rの中間部に接続される。
【0037】
前記左右の傾斜部103の間に、車両平面視で略U字状を呈しシート(図1、符号15等)を支えるU字部材97が閉じ側を前にして渡される。このU字部材の中間部97bに、前記左右のシートフレームの前端88La、88Ra(図手前側の符号88Laのみ示す。)が各々固着される。クロスフレーム91の近傍にて水平部102の後部から傾斜部103の前部に渡って左右のロアフレーム87L、87Rに、各々、板状の左右のリンクブラケット105L、105R(図手前側の符号105Lのみ示す。)が固着される。
【0038】
次に、クロスフレームに取付けたリンク規制部等について説明する。
図5に示すように、板状の左右のリンクブラケット105L、105Rは、各々、下部にてインナ部材107とアウタ部材108とを張り合わせてなる。インナ部材107とアウタ部材108とにより各々左右のリンクブラケット105L、105Rを構成したので、1枚の部材で構成する場合に較べてリンクブラケット105L、105Rの剛性を高めることができる。
クロスフレーム91の車幅方向左右に、リンク規制部55の構成要素としての箱部111L、111Rが吊り下げるように取付けられている。
【0039】
クロスフレーム91の車両前方にフロントクロスフレーム92を設けた。フロントクロスフレーム92は、下に凸に湾曲することでクロスフレーム91よりも下方に位置し左右のロアフレーム87L、87Rの間に渡される。すなわち、フロントクロスフレームの下端92bよりもリンク規制部55を構成する箱部の下端111Lb、111Rbが上方に位置するようにフロントクロスフレーム92を配置した。
【0040】
フロントクロスフレーム92を下方に延出させ、クロスフレーム91よりも下方に配置することでリンク規制部55を構成する箱部111L、111Rを保護することができる。リンク規制部55は、フロントクロスフレーム92によって保護されるので、リンク規制部55を厚肉化することなく済ませることができ、車両の重量増加が抑えられる。
【0041】
次に、リンク機構の構成要素であるリンクユニットを説明する。
図6(a)にリンクユニットの側面図が示され、図6(b)に図6(a)のb矢視図が示されている。
図6(a)及び図6(b)を参照して、リンク機構24の構成要素としてのリンクユニット113は、外筒114と、この外筒114の内側に同軸に配置されリンクピボット(図2、符号23)が挿通される左右の内筒115L、115Rと、これらの左右の内筒115L、115Rと外筒114の間に介在される左右のゴムブッシュ116、116と、外筒114から車両前方に延ばされ弾性部材としてのストッパラバー120、120が装着されるアーム部117L、117Rと、外筒114から車両後方に延ばされる左右のリンク部118L、118Rと、これらの左右のリンク部118L、118Rの後端に固着され車幅方向に延ばされユニットスイング30側に設けた連結軸(図1、符号119)が挿通される回動筒121とを主要素とする。
【0042】
左右の内筒115L、115Rの間に内カラー122が渡されて連結され、左右のリンク部の下面118Lb、118Rbに各々ガード部材123、123が設けられている。
左右のアーム部117L、117Rは、各々、コ字部材125と、このコ字部材125の両端に立設した上端部材126とからなる。
【0043】
また、左右のリンク部118L、118Rは、各々、外筒114と回動筒121との間に上コ字状部材127を上方から渡すようにして、上コ字状部材127の両端を外筒114と回動筒121とに固着し、下コ字状部材128を下方から渡すようにして、下コ字状部材128の両端を外筒114と回動筒121とに固着してなる。
【0044】
次に、リンク機構の回動量を規制するリンク規制部の詳細について説明する。
図7に示すように、リンク規制部55は、車両後方に向け開放する箱状に形成される箱部111Lと、この箱部111Lに挿入される弾性部材としてのストッパラバー120とからなる。箱部111Lは、クロスフレーム91に下側から固着されている。
【0045】
箱部111Lは、底板部131と、この底板部131の両端から上方に延ばされる左右の壁部132L、132Rと、底部の後端から上方に延ばされると共に左右の壁部132L、132Rの間に渡される奥壁133と、底板部131の上方位置にて左右の壁部132L、132Rの間に渡される上板部134とからなる。奥壁133にエア抜きのための孔部135が開けられる。
【0046】
底板部131と左右の壁部と上板部134とで囲まれる空間136にストッパラバー120を挿入し、このストッパラバー120の車両後方側に形成した溝部137にリンクユニット113のアーム部117Lを挿入する。
【0047】
このように、リンク規制部55は箱部111Lと弾性部材としてのストッパラバー120とからなる簡単な構造で済ませたので、車両のコストアップを抑えることができる。
以上、車幅方向左側に設けたリンク規制部について説明したが、車幅方向右側にも同様な構造のリンク規制部が設けられている。説明は省略する。
【0048】
図8にリンクユニットのアーム部をリンク規制部に挿入した状態が示されている。
左右の箱部111L、111Rにストッパラバー120、120を介してリンクユニット113のアーム部117L、117Rが挿入されている。リンクユニット113の左右端部は、リンクブラケット105L、105Rを介して軸支されている。
【0049】
図3を併せて参照して、ロアフレーム87L、87Rの後端から所定距離前方にクロスフレーム92が配置され、ロアフレーム87L、87Rから下方にリンクブラケット105L、105Rが延ばされ、これらのリンクブラケット105L、105Rの下部にリンクピボット23が支持される。
ロアフレーム87L、87Rから各々リンクブラケット105L、105Rを延ばしたので、リンクブラケット105L、105Rを小型軽量にすることができる。
【0050】
以上に述べた鞍乗型車両の作用を次に述べる。
図9(a)に実施例が示されており、左右のロアフレーム87L、87Rに、各々、左右のリンクブラケット105L、105Rが下方に延ばされ、これらの左右のリンクブラケット105L、105Rの間にリンクピボット23が渡されている。このリンクピボット23の車両前方にて左右のロアフレーム87L、87Rの間にクロスフレーム91が渡され、このクロスフレーム91にリンク機構24の回動量を規制するリンク規制部55L、55Rが下方に吊り下げられている。リンクピボット23は、外筒114L、114Rに同軸上に挿入される。これにより、リンクピボット23を左右一対のロアフレーム87L、87Rの下方に配置した。
【0051】
図9(b)に比較例が示されており、一本のメインフレーム151の後端部にクロスフレーム152が車幅方向に延ばされ、このクロスフレーム152の両端から車両上後方へ左右のリヤフレーム153L、153Rが延ばされている。クロスフレーム91Bを貫通してメインフレーム151には筒状のラバー支持部154が挿入され、このラバー支持部154にストッパラバー155を介してアーム117Bが挿入され、このアーム117Bに外筒114を介してリンク部118Bが取付けられている。外筒114の内側に同軸状にリンクピボット23Bが延びており、リンクピボット23Bの車幅方向両端は、左右のリンクブラケット105L、105Rによって軸支される。
【0052】
この場合に、アーム117Bはメインフレーム151の側へ挿入されるため、軸部材としてのリンクピボット23Bは、距離δだけ車両後方に配置される。このため、リンクピボット23Bの両端を軸支する左右のリンクブラケット105L、105Rは、各々、メインフレーム151の後端部から後上方へ延びている左右のリヤフレーム105BL、105BRに渡って設けられることになる。
【0053】
この点、本発明では、クロスフレーム91にリンク機構24の回動量を規制するリンク規制部55を下方に吊り下げることでリンクピボット23をロアフレーム87L、87Rの下方に潜り込ませるように配置したので、リンクピボット23をロアフレーム87L、87Rの後方に配置する場合に較べて、ユニットスイング30を車両前方に寄せることができる。結果、車両を長さδだけ短くできる。
【0054】
図8に戻って、リンク規制部55は車幅方向に左右一対配置される。左右一対のリンク規制部55を設けたので、1つのリンク規制部を設ける場合に較べて、リンク規制部55の耐荷重の設定を容易に行えるようになる。
なお、リンク規制部は、3つでも4つでも良く、任意の数に設定可能である。
【0055】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、鞍乗り型三輪車にも適用可能であり、一般の鞍乗り型車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、自動二輪車に好適である。
【符号の説明】
【0057】
10…鞍乗り型車両(自動二輪車)、14…後輪、21…操向系、23…リンクピボット、24…リンク機構、30…ユニットスイング、55…リンク規制部、85…ヘッドパイプ、86…ダウンフレーム、87L、87R…ロアフレーム、88L、88R…シートフレーム、91…クロスフレーム、92…フロントクロスフレーム、92b…フロントクロスフレームの下端、111L、111R…箱部、111Lb、111Rb…リンク規制部の下端(箱部の下端)、120…弾性部材(ストッパラバー)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操向系(21)を軸支するヘッドパイプ(85)から車両後下方へ延ばされるダウンフレーム(86)とこのダウンフレーム(86)の下部から車両後方へ延ばされる左右一対のロアフレーム(87L、87R)とこのロアフレーム(87L、87R)の後端部から車両後上方に延ばされるシートフレーム(88L、88R)とからなる車体フレーム(20)を設け、この車体フレーム(20)からリンクピボット(23)を介して車両後方にリンク機構(24)を延ばし、このリンク機構(24)に動力を発生するエンジン(13)と後端部に後輪(14)が軸支されるユニットスイング(30)を設けることにより、前記車体フレーム(20)に前記ユニットスイング(30)を揺動可能に支持させた鞍乗り型車両において、
前記左右の一対のロアフレーム(87L、87R)の間にクロスフレーム(91)が渡され、
このクロスフレーム(91)に前記リンク機構(24)の回動量を規制するリンク規制部(55)を下方に吊り下げることにより、前記リンクピボット(23)を前記左右一対のロアフレーム(87L、87R)の下方に配置したことを特徴とする鞍乗り型車両。
【請求項2】
前記リンク規制部(55)は、車両後方に向け開放する箱状に形成される箱部(111L、111R)と、この箱部(111L、111R)に挿入される弾性部材(120)とからなることを特徴とする請求項1記載の鞍乗り型車両。
【請求項3】
前記リンク規制部(55)は、前記クロスフレーム(91)の長手方向に複数配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の鞍乗り型車両。
【請求項4】
前記クロスフレーム(91)の車両前方に下に凸に湾曲することで前記クロスフレーム(91)よりも下方に位置し前記左右のロアフレーム(87L、87R)の間に渡されるフロントクロスフレーム(92)を設け、このフロントクロスフレーム(92)に前記ダウンフレーム(86)の下端を接続することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の鞍乗り型車両。
【請求項5】
車両前後方向から見て、前記フロントクロスフレーム(92)は、前記リンク規制部(55)と重なる位置に配置されると共に、このリンク規制部の下端(111Lb、111Rb)は前記フロントクロスフレームの下端(92b)よりも上方に配置されることを特徴とする請求項4項記載の鞍乗り型車両。
【請求項6】
前記ロアフレーム(87L、87R)の後端から所定距離前方に前記クロスフレーム(92)が配置され、前記ロアフレーム(87L、87R)から下方にリンクブラケット(105L、105R)が延ばされ、このリンクブラケット(105L、105R)の下部に前記リンクピボット(23)が支持されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の鞍乗り型車両。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−158241(P2012−158241A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18725(P2011−18725)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】