説明

頂角可変のプリズムを用いた立体視の方法及び装置

【課題】視差画像を交差法により、最適な大きさで容易に立体視できる立体視装置を提供する。
【解決手段】2枚の透明板12、13とその間に満たされた透明流体14からなる頂角可変のプリズム3、4、その1枚の透明板を操作して頂角を変更するための頂角調整機構6、2組のプリズムをそれぞれ向きを微調整するためのプリズム向き調整機構7、そのプリズムを通過してきた画像を両眼で見るための双眼鏡8または同等の光学機構からなる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
2台のカメラでわずかに角度をずらした2枚の写真又は2組の映像(以下、これを視差画像又は単に画像と呼称する)を取得し、その視差画像を右目で左カメラから取得した画像を左目で右カメラから取得した画像をそれぞれを交差してみることによって立体視する技術に関する発明である。
【従来技術】

【公知例】
【0002】
公開番号 特開平10−142715
公開日 1998年5月29日
名称 立体視可能複数画面
従来の立体視の方法は、大別して専用メガネを用いる方法と、裸眼で行う方法に分けられる。
【0003】
1)専用メガネを用いる方法
▲1▼右目用と左目用の画像を重ねて表示し、3Dメガネで左目と右目画像を分離し て立体視する方法。
▲2▼時間分割立体視方式
液晶シャッタ眼鏡方式、偏光フィルタ眼鏡方式、RGB色分割フィルタ眼鏡方 式などがあり、左目用画像と右目用画像を交互に切り替え表示し、専用メガネ で左目用と右目用画像に分離する方法。液晶シャッタ方式では、その画像表示 に同期して液晶シャッタを開閉する。
【0004】
2)裸眼立体視
裸眼立体視法には、平行法と交差法がある。ツールを使わないのでどこでもいつでも見ることができる便利さがあるが、欠点としては練習しないと立体的に見えないことである。第4図に平行法と交差法の立体視法を示す。
▲1▼平行法
右目で右側の画像を見て、左目で左側の画像を見る立体視の方法である。この方法では、2つの画像の間隔をあまり大きくできず、画像の大きさに制限がある。第2図(a)に平行法の立体視を示す。
▲2▼交差法
右目で左側の画像を見て、左目で右側の画像を見る立体視の方法である。この方法では、2つの画像の間隔を大きくでき、画像の大きさに制限がない。第2図(b)に交差法の立体視を示す。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の専用メガネを用いる立体視法では、特殊な加工を画像に加える必要があり、画質も通常の写真には及ばない。通常のカメラを2台あれば画像作成できる裸眼立体視である平行法や交差法は画像に何ら手を加える必要がなく簡便で、画質も通常の写真の品質を有し、立体視用の画像と通常の画像とを区別せず管理できる等のメリットがある。一方、平行法、交差法いずれも訓練しないと、立体として見えないという不便さがある。プリズムを使用した交差法による立体視のアイデアはあるが、通常、2つの画像間距離、画像とプリズム前面までの距離は不定であり、最適なプリズムを常に使用することは不可能であり実用されていない。この欠点を除くべく、交差法を基本にした新しい立体視の装置を発明したので以下述べる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1図に頂角を可変としたプリズムを使用した立体視の構成図を示す。
本方法では、右の画像2を左目で、左の画像1を右目で明瞭かつ確実にみるために双眼鏡8を使用する。画像1及び2の像は、頂角可変なプリズム3及び4を介して、ほぼ正面に双眼鏡に入ってくる。そのために、双眼鏡では、右の眼には、左の像のみが、左の眼には右の像のみが見えるようにできる。
画像の中心間距離16(以下Bとする)と双眼鏡の両目間隔17(以下bとする)、両画像1,2とプリズム前面までの距離18(以下Lとする)、プリズムによる光の屈折角19(以下δとする)には、以下の関係が要求される。
【0007】
tan(δ)=(B+b)/2L
δ=tan−1{(B+b)/2L} (1)
ここで、
L:画像と見る人の距離であり可変であるべきである。
B:画像の大きさや表示画面の大きさにより変わるべきものである。
b:観察者の目の視線間隔であり、それ程、差はないが、個人差を調整できるように双眼鏡はしてある。δは、このような変動するパラメータから2式により得られるので、δを可変とする必要がある。通常のプリズムでは、頂角が一定であり、δを可変にすることはできない。第3図に従来のプリズム21と今回の発明品の頂角φを可変にしたプリズムを示す。従来のプリズムは一体構造のために頂角φは一定である。第3図(b)は頂角φを可変にした本発明のプリズムの一例を示す。12及び13は透明板、14は透明流体物質、11は流体を保持するための隔壁膜である。
透明板12は、支点15を中心に回転でき、そのため頂角φを変更可能な構造となっている。透明な流体物質が2枚の透明板の間に満たされているために光を屈折する機能を有する。
本発明の立体視法では、プリズムの屈折角δを変更するためにプリズムの頂角を調整する。頂角の調整によってどの程度、光の経路が変わるかについて定量的な検討を行う。
【0008】
1)プリズムの頂角がプリズムの光の屈折に与える効果についての検討
第4図を用いて2枚の透明板間に透明流体を満たしたプリズムについて光の 屈折について記述する。
透明板12に垂直に光が入ってくる場合について検討する。
空中の屈折率をn、透明版の屈折率をn、透明流体物質の屈折率をn とする。
A,B点では、光は垂直に入るので直進する。C点と,D点での屈折を検討 すればよい。C点での入射角はプリズムの頂角φに等しい。屈折角をSと すると、屈折率nの流体物質から入射角φで、屈折率nの透明板に屈折 角Sで入ることになるのでsnellの法則により次式が成立する。
sinφ/sinS=n/n (2)
【0010】
さらに、D点では、屈折率nの透明板から入射角Sで屈折率nの空中 に屈折角tで入ることになるので次式が成立する。
sin S/sin t=n/n (3)
ここで、S=Sであるから、(2)式と(3)式から
sinφ/sin t=n/n
t=sin1{(n/n)sinφ} (4)
プリズムの屈折角δは、
δ=t−φ=sin−1{(n/n)sinφ}−φ (5)
【0011】
透明板の影響は上式には現れない。プリズムの屈折率は空気と透明流体物の影響だけを考えればよい。
表1に頂角可変のプリズムの特性(その1)を示す。空中の屈折率をn=1とし、流体を水(n=1.33)としたときの頂角と屈折角の関係を計算した。(4)式におけるφとtの関係及び(5)式における頂角φに対するtを計算したものである。
表1に示すようにプリズムの頂角の調整により光の経路を変更することは効果があることを実証できたので、本発明では、L、B、bの変化に対して頂角を調整する方法をとることにした。
【0012】
本発明の立体視の装置では、第5図に示すようにプリズムの向き20(以下βとする)を変えて光の経路を変更する仕組みを付加した。プリズムは、調整機構7により支点5を中心に回転できる構成とした。βを変更したときのプリズムの光の屈折に与える影響を定量的に以下検討した。
【0013】
2)プリズムの向きβを変えた場合のプリズムの光の屈折に与える効果の検討
透明板12に垂直に光が斜め(βだけ垂直線から傾斜)入ってくる場合につい て検討する。
第6図によりプリズム面に傾斜した場合の光の屈折について検討する。
A点では、屈折率nの空気中から入射角βで屈折率nの透明板に屈折角uで入射するので、snellの法則により次式が成立する。
sinβ/sin u=n/n (6)
B点についても同様に、
sin u/sin u=n/n (7)
ただし、u=uだから(6)式、(7)式から
sinβ/sin u=n/n
=sin−1((n/n)sinβ) (8)
C点についても同様に、
sin u/sin u=n/n (9)
ただし、u+u=δだから

D点についても同様に、
sin u/sin u=n/n (11)
ここで、u=uだから

δ=β−φ+u (13)
【0014】
透明板をガラス、透明流体物質を水としたときの屈折角の計算結果を表2に示す。このようにプリズムの向きβを変えることにより光の経路を更に変更できることを示した。本発明では、プリズムの頂角の調整とともにプリズムの向きβを変えてL、B、bの変化に対応することとした。
【発明の実施形態1】
【0015】
第1図に本発明の実施例を示す。1,2は視差画像である。左の視差画像1を右目で、右の視差画像を左の眼で見るようにしてある。2つの画像の中心間距離B,双眼鏡の視線間隔b、画像1,2とプリズム前面までの距離Lが決まると最適なプリズムによる屈折角δが決まる。本発明では頂角可変のプリズム3,4を使用しているので、調整機構6によりプリズムの頂角φを変えることにより最適なプリズムの屈折角δを設定できる。左右の光路差の調整は、調整機構7によりプリズムの向きを調整することにより可能な構成とした。このような構成であるから双眼鏡の左右の眼には対応する画像だけが明瞭に見えて容易に立体視できる。双眼鏡の既存の機能を利用することができる。すなわち、焦点合わせ、ズーム機能を使用することにより、左右の目にはそれぞれの画像だけが最適の大きさで焦点のあった画像をみるので視差を有する場合には容易に立体的に見えることが理解されよう。この画像は、通常のカメラ画像と全く同等の画質を有するという長所を持つとともに、素人でも2台のカメラさえあれば立体視用の画像を作成できる特徴を有する。
【発明の効果】
【0016】
(1)実施例1
1) 画像中心間隔、視線間隔、画像と人の間の距離の変動に対して最適のプ リズムによる屈折角を設定できるため双眼鏡の接眼レンズには、右目に は左側の画像、左目には右側の明瞭な画像が得られる。不要な画像を除 いて必要な画像のみを見ることができるので、視差を含む画像の場合に は、容易に立体視できる。
2) 画像を通常のカメラを使用して作成可能なため品質の高い画像での立体 視できる。
3) 立体視画像作成には特別のハードウエアを必要としないこと。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】立体視構成図
【図2】裸眼立体視の一例
【図3】従来のプリズムと本発明のプリズム
【図4】プリズムによる光の屈折(プリズム面に垂直にあてた合の例:プリズムの頂角調整をした場合の効果)
【図5】プリズムの向き調整機構
【図6】プリズムによる光の屈折(プリズム面に斜めに光を当てた場合の例:プリズムの向きを調整した場合の効果)
【0018】
【表1】
頂角可変プリズムの特性

【0019】
【表2】
プリズムの向き(β)の屈折への影響

【符号の説明】
【0020】
1……左画像(右カメラで取得)
2……右画像(左カメラで取得)
3……頂角可変プリズム(右側)
4……頂角可変プリズム(左側)
5……プリズム回転のための支点
6……透明版向き調整機構
7……プリズム向き調整機構
8……双眼鏡又は同等の光学機構
9……対物レンズ
10……接眼レンズ
12……向き可変透明版
13……向き固定透明版
14……透明液
15……透明版回転支点
16……対象画像間距離(B)
17……双眼鏡の左右視線間距離(b)
18……対象画像とプリズム間距離(L)
19……プリズム3,4による屈折角(δ)
20……プリズムの傾斜角(β)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の透明板とその2枚の板の間に満たされた透明流体物質からなる頂角可変プリズム、透明板の1枚を回転させてプリズムの頂角を調整する機構、左右のプリズムのそれぞれの向きを微調整する機構、頂角可変プリズムを通過した左右2つの視差画像を見るための双眼鏡又は同等の光学機構よりなる立体視装置。
【請求項2】
2枚の透明板とその2枚の板の間に満たされた透明流体物質からなる頂角可変プリズム、透明板の1枚を回転させてプリズムの頂角を調整する機構、左右のプリズムのそれぞれの向きを微調整する機構、頂角可変プリズムを通過した左右2つの視差画像を見るための双眼鏡又は同等の光学機構よりなる立体視の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−177715(P2012−177715A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293863(P2010−293863)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(591106462)茨城県 (45)
【Fターム(参考)】