説明

顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置

【課題】顕微鏡観察画像視野下で顕体試料とマイクロプローブの針先を観察しながら、半導体集積回路などの多層微細配線深層部へダイレクトに電気的特性の測定を行ない不良箇所の解析を行なうにおいて、絶縁膜を効率的に除去し、測定対象箇所へのプローブの移動と位置決めを効率的に行ない、同時に操作性および確実性に優れた微細作業を行なうことのできるマニピュレーション装置の提供
【構成】局所プラズマ機構、および該局所プラズマ機構の先端部であるプラズマキャピラリー管を把持するプラズマキャピラリー管位置決めステージ、試料ステージおよび1つまたはそれ以上のプローバがプローバベース上に載置され、該プローバベースが顕微鏡の視野下に着脱自在に装着できる構造を有することを特徴とする顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス等極めて微細な顕体試料を、顕微鏡の視野の中に捉えて、その画像を観察しながら該顕体試料の性能検査、電気的測定等の微細作業を行ない半導体デバイス等の不良解析を行なうための装置に関するものであり、更に詳しくは、半導体集積回路などの多層微細配線深層部へダイレクトに電気的特性の測定を行なうにおいて、プラズマによるエッチングにより絶縁膜の剥離等の微細作業を行なうマイクロマニピュレーション装置を提供する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体デバイス等微小な顕体試料を、単に顕微鏡で観察するだけではなく、顕微鏡観察下で極めて微細な加工を行なうという所謂微細作業は、従来から一般的に行なわれていた。しかしながら、半導体デバイスは近年益々多様化が進み、今まで使用されていなかった分野でも使われ始めており、その傾向は今後も拡大して行くと予測される。同時にデバイスそのものもULSI(Ultra−Large Scale Integration)に見られるように、更に高集積化デバイスが増加し、製造プロセスにおいても、更に複雑で高精度化が要求されて来る。特に近年、上述の半導体デバイスの高集積化、多層化に伴なう作業の微細化、高度化に対する要求と重要性に対応して、マイクロマシンを応用し、顕体試料を顕微鏡視野の中に捉えてマニピュレータを用いて電気的な測定、不良解析等の作業を行なう技術の重要性はより高まりつつある。
【0003】
特に開発段階においては、その開発期間を短縮するために、所謂不良解析という手法を取り入れ、設計段階での不具合やプロセス上の問題を早期に解明し、製造工程にフィードバックしてゆくことが重要となる。この不良解析の解析手法として、例えば、設計のCAD図と実際に製造されたパターンとを画像処理技術を用いて比較し、相違箇所を特定して行く方法もあるが、微細詳細部分の不良解析となるとこの方法では不十分である。実際には対象箇所を半導体基板から切り出し断面検査面の微細配線上にプローブ(微細導電性針)を接触、操作し電気的特性を実測することが行われる。具体的には、一つ一つの作業を、オペレーターが光学顕微鏡の視野下でマニピュレータをマニュアルで動かし、特定箇所に電気的に絶縁されたプローブを作用させて行なうという手法がとられている。
【0004】
顕微鏡の視野下において、マニピュレータに取り付けられたマイクロプローブを操作して顕体試料の正確な移動や加工を行なう装置については例えば特許文献1において開示されており、更にマニピュレータに取り付けられた電気的機能を有するマイクロプローブを操作して顕体試料の電気的特性値の測定作業を行なう装置については、例えば特許文献2にて顕微鏡下での微細試料とマイクロプローブの動きを連動せしめ、三次元の方向での位置決め、移動や加工を行ない易くした装置が開示されている。
【0005】
更に、次世代デバイスにおいては配線同士の間隔が65nmになるとされており、現状一般化されている駆動機構およびマイクロプローブでは対応できず、より高分解能にする必要があった。また、不良解析のためにこのような駆動機構を実現しても、数十nmクラスの回路パターンに直接測定する場合は、接触圧をnNクラスで制御しなくては回路パターンを破壊してしまう問題がある。この問題に対応するために、例えばカーボンナノチューブなどのナノスケールのサブプローブをメインプローブ先端に取り付けて精度の高い測定を可能にするとともにそのサブプローブの随時の交換が可能な装置をすでに提案した(特許文献3参照)。これらの装置に使用する顕微鏡としては、光学顕微鏡の他、走査型電子顕微鏡(以下SEMと略記する)等が好ましく用いられる。
【0006】
これらの装置における微小作業は、顕体試料を載置し、その上で作業を行なう試料台と、プローブを取り付けたマニピュレータとの動きによって行なわれるのであり、その駆動は各々試料台とマニピュレータに搭載した圧電素子あるいはピエゾ素子にフィードバック用の変位検出機能を付加したもので行なわれている。これによれば、数10nmレベルの微小移動が可能であり、変位検出手段にもよるが、1nm以下の分解能も比較的容易に実現する事が可能である。それぞれのマニピュレータ、即ち、それぞれのプローブにX軸、Y軸、Z軸方向への微小直線移動、更には回転作用が行なえるようにすることで、三次元レベルでの微細な作業、即ちマニピュレーションを確実に行なうことを可能にしている。
【0007】
近年のICあるいはLSI等の高集積化は、一平面内の電気回路の微細化、高集積化を行なうに留まらず、回路自体を積層し多層化することで高集積化を行なうことが主流の技術になってきており、性能検査、電気的測定等の微細作業の対象も一つの平面内にある表層の微細配線回路のみではなく、絶縁膜で隔てられた二層目、三層目更にはその深部にある多層深層部の微細配線回路をも対象としたものへ拡大しつつあるのが現状である。
【0008】
前述の通り、縦方向に多層化された集積回路においては、各々の層は酸化珪素等の絶縁膜により隔絶されており、前述の装置では表層部分の微細配線回路の解析は行なえても、深層部分の解析は行なえない。即ち、例えX軸、Y軸、Z軸方向への微小直線移動が行なえるマイクロプローブであっても、このマイクロプローブ先端をマニピュレータの機械的動きにより強制的に深層部の所定位置に移動しても、その過程において周辺のデバイスや微細配線回路部を破壊したりダメージを与えてしまい、不良解析や測定の意味をなさなくなるのみならずプローブ自体の破損という問題にも繋がる。現在この深層部の微細配線回路の不良解析を行なうには、対象箇所の試料を半導体基板から切り出し断面検査面について、走査型電子顕微鏡(SEM)、収束イオンビーム装置(FIB)および透過型電子顕微鏡(TEM)等を駆使すれば可能ではあるが、その作業には多大の労力と時間を要する。
【0009】
従って、深層部にある微細配線回路の性能検査、電気的測定あるいは修復作業を行なうにおいては酸化珪素等の薄膜よりなる絶縁膜を、必要最小限の微小部分において効果的に剥離しかつ周囲の微細配線回路に対しては、剥離作業に伴なって損傷を与えるようなことをせず、悪影響を及ぼさないようにすることが肝要である。しかしながら、マイクロマシンを応用し、顕体試料を顕微鏡視野の中に捉えてマニピュレータ先端のプローブを用いての機械的手段による剥離作業を行なうと、前述の通り絶縁膜の必要箇所のみならず周辺部分あるいは回路部分まで損傷してしまい、好ましくない。即ち、微細部分に対する機械的な手段による剥離作業は問題が多く、その改善が強く求められているのである。剥離作業が、対象となる極めて微細な局所のみに集中して完璧に行われて初めて、所定部位の抵抗値、導電率や電流値あるいは電流波形の測定、電圧印加、絶縁性の確認等、電気的特性のダイレクトな測定を行なうことができ、不良解析のためのデータを得ることができる。
【0010】
半導体技術の一つに、半導体装置の解析断面を切り出し、その断面をプラズマエッチングしSEMで観察し不良解析を行なうという方法もある(例えば特許文献4)。更に、半導体製造技術の一つにプラズマを照射して、回路パターンをエッチングする技法がある。エッチャーと呼ばれるその装置は、レジスト膜をマスクパターンとして、酸化膜・シリコン基板をエッチングするものであり、成膜工程と組合せることで、シリコン基板上に、回路パターンやトランジスタなどを多層に形成して行くために用いられている。即ちプラズマエッチング手法である。更に、このプラズマエッチング手法は例えばシリコン層の膜厚に応じて局所的に制御し、均一な膜厚のシリコン層を得るというCMP手法にも応用されている(例えば特許文献5)。
【0011】
ここで言うプラズマエッチングとは、プラズマ化した反応性ガスによる除去作用をいうものであり、例えばプラズマ化したフッ素等の反応性ガスを材料表面に照射し、生成した揮発性化合物を蒸発せしめることにより照射をうけた材料表面を精度よく除去して行くことができる。作用の効果は用いる反応性ガスの種類により異なり、また時間や印加する電圧を加減することによりその強弱をコントロールすることができるので平坦化等の手法としても用いることができる。
【0012】
上述の技術は、プラズマ中で作られた反応性ガスの強い除去能力を応用したものであるが、この技術は、特殊原料ガスの供給が必要であり、反応管、電極等の付帯設備があり、反応ガスや蒸発ガスの吸引も必要であるため装置自体を顕微鏡に搭載して行なうということは行われていなかった。即ち、汎用SEM等の顕微鏡に搭載が可能で、絶縁膜を効率的に除去し、半導体集積回路などの多層微細配線深層部へダイレクトに電気的特性の測定を行ない不良箇所の解析を迅速にかつ非破壊で行なうという目的からは程遠いものである。
【特許文献1】特開2000−221409号公報
【特許文献2】特開2002−365334号公報
【特許文献3】特願2005−038093
【特許文献4】特開平9−205122号公報
【特許文献5】特開平9−246250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者等は、上述の問題点に鑑み、顕微鏡観察画像視野下で顕体試料とマイクロプローブの針先を観察しながら、半導体集積回路などの多層微細配線深層部へダイレクトに電気的特性の測定を行ない不良箇所の解析を行なうにおいて、絶縁膜を効率的に除去し、測定対象箇所へのプローブの移動と位置決めを効率的に行ない、同時に操作性および確実性に優れた微細作業を行なうことのできるマニピュレーション装置について鋭意研究を行なったものである。すなわち、本発明者等は、プラズマエッチング機能を備えたプローブと、X軸、Y軸、Z軸方向への駆動及びおよびT軸及び/またはR軸の回転が各々独立に可能な1つまたはそれ以上のプローバを備えたマイクロマニピュレーション装置を用いることで、深層部の不良解析が容易にできることを見出したものである。つまり、本発明の目的は半導体集積回路などの多層微細配線深層部へダイレクトに電気的特性の測定を行ない不良箇所の解析を行なうことのできるマイクロマニピュレーション装置を提供することにある。なお、本発明でいうプローバとは、プローブ(微細導電性針)を搭載した駆動系のステージを指すものとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述の目的は、局所プラズマ機構、および該局所プラズマ機構の先端部であるプラズマキャピラリー管を把持するプラズマキャピラリー管位置決めステージ、試料ステージおよび1つまたはそれ以上のプローバがプローバベース上に載置され、該プローバベースが顕微鏡の視野下に着脱自在に装着できる構造を有することを特徴とする顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置により達成できる。ここでいう顕微鏡とは、光学顕微鏡、電子顕微鏡等全て公知の顕微鏡を指すものであって特に限定を受けるものではないが、特に好ましくは走査型電子顕微鏡(SEM)が用いられる。即ち、前述の顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置において、使用する顕微鏡が走査型電子顕微鏡であり、プローバベースが走査型電子顕微鏡の試料導入室を通して走査型電子顕微鏡チャンバー中に着脱自在に装着できる構造を有することが特に好ましい。
【0015】
前記局所プラズマ機構は、プラズマ発生部(プラズマ電極)と、プラズマキャピラリー管と、局所プラズマ機構排気系から構成されており、そして上述のプラズマキャピラリー管は、プラズマキャピラリー管位置決めステージにて把持されている。該プラズマキャピラリー管位置決めステージは、前述の試料ステージおよび1つまたはそれ以上のプローバとともに、X軸、Y軸、Z軸方向への駆動およびT軸及び/またはR軸の回転がそれぞれ独立に可能であることがより好ましい。該プラズマキャピラリー管位置決めステージをX軸、Y軸、Z軸方向への駆動およびT軸及び/またはR軸の回転可能とすることにより、該プラズマキャピラリー管は、任意の方向へその筒先を向けることが可能となる。また、試料ステージをT軸及び/またはR軸の回転、即ち傾斜を可能とすることにより、プラズマキャピラリー管の先端に直交する面に試料面を置くことが可能となる。これにより局所プラズマ照射における、試料面とプラズマキャピラリー管の微小ギャップによるエッチング精度の問題点を解消することができる。更に試料ステージはθ軸(縦軸)まわりの回転を可能とすることもできる。
【0016】
上述のプラズマ発生部と、それに連結するプラズマキャピラリー管は、プローバベースに接続された3軸稼動可能なベローズ構造を有する配管中に収納され、その先端は顕微鏡チャンバー内に突出し、前記キャピラリー管とベローズ処理された配管先端部との接合部には例えばOリング等の真空シール部材が設けられている。該接合部に真空シール部材が設けられていることにより、顕微鏡チャンバー内部は外気より遮断され真空状態を保つことができるので、SEM等真空環境下で観察が行なわれるタイプの顕微鏡に対応が可能であるとともに、大気側での電界発生に伴ないプラズマ発生部で発生されたプラズマが真空側に照射が可能となる。前記配管は3軸稼動可能なベローズ構造を有するため可撓性を有し、プラズマキャピラリー管位置決めステージの駆動とともにベローズおよび真空シール部材の持つ自由度の範囲内でキャピラリー管先端を顕微鏡画像により顕微鏡視野下へ、更には測定試料の目的位置への駆動及び位置決めを行なうことができる。
【0017】
更に、本発明のX軸、Y軸、Z軸方向への駆動およびT軸及び/またはR軸の回転が各々独立に可能な1つまたはそれ以上のプローバを構成するプローブは、メインプローブとそれに接合するサブプローブよりなるデュアルプローブであることが好ましい。ここでいうサブプローブとは、例えばカーボンナノチューブ(以下CNTと略記する)等からなるナノスケール微小針を指す。
【0018】
本発明でいうプラズマキャピラリー管位置決めステージ、試料ステージおよび1つまたはそれ以上のプローバがT軸及び/またはR軸の回転が各々独立に可能であるということは、プラズマキャピラリー管位置決めステージ、試料ステージおよび1つまたはそれ以上のプローバがθx軸ないし、θy軸及び/またはθz軸(縦軸)を中心に自在に上下左右に傾斜し得る構造であることを言う。また、試料ステージのθ軸回りの回転とは、試料ステージがθz軸(縦軸)を360度回転が可能であることを示す。
【発明の効果】
【0019】
本発明になる局所プラズマ機構を備えた顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置を用いることにより、従来長い時間と膨大な手間が必要であった半導体集積回路の多層微細配線の深層部にある回路の不良解析が容易にできるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置について以下に詳細に述べる。本発明の肝要は、従来のマイクロマニピュレーション装置に局所プラズマ機構を具備せしめ、それにより局所のプラズマエッチングを可能にしたものである。即ち、半導体集積回路の多層微細配線の深層部にある回路の不良解析を行なうに際し、各層間の隔壁である絶縁膜を効率的に剥離し、穿孔された部分からプローブ先端を挿入し、目的とする回路部分に針当てを行ないダイレクトに電気的特性等の測定を行なうことができる。
【0021】
本発明にいう局所プラズマ機構とは以下の如き特徴を有するものである。即ち、プラズマとしてはRF(ラジオフリーケンシー)プラズマに属し、CF、CHF等の原料ガスをRF発振機により高周波励起し、プラズマ化し分解されたフッ素系反応ガスプラズマ雰囲気を発生させる。そして局所プラズマ機構とは、その反応ガスを極細のキャピラリー管の先端より噴射し、SiOの酸化膜の微小部分、即ち、局所に照射し固体中の原子と反応させることにより揮発性分子を形成せしめ、それを蒸発除去する。その際、アルゴンガスあるいはOガスをアシストガスとして併用し反応の円滑化をはかる。反応ガスにより除去すべき微小部分はもっとも大きく見積もっても、直径20μm、深さ500nm程度であり、効率的処理を行なうためには、プラズマキャピラリー管の先端部の穴径は0.01ないし0.1mmφとし、反応性ガスの流量が0.1ないし数cc/分となるようにすることが好ましい。局所プラズマ機構の形態としては、極細ペンシル型プラズマ銃でガス導入とプラズマ発生、照射が行なえる一体型のものが好ましく用いられる。極細ペンシル型プラズマ銃の性能を変えることで、エッチングの他に、成膜、クリーナーとして機能させることも可能である。
【0022】
本発明において、実際に性能検査や電気的測定等の微細作業を行なうプローブ(評価プローブ)は、三次元運動を行なう駆動系のステージ上に搭載されたプローバの形で1つまたはそれ以上存在し、それぞれが独立にX軸、Y軸、Z軸方向への駆動及びT軸及び/またはR軸の回転が可能な動きをするものである。また、顕体試料は、独立の駆動系により前記プローバとは独立したX軸、Y軸、Z軸方向への駆動及びT軸及び/またはR軸の回転が可能な試料ステージ上に載置される。これとは別に、プラズマキャピラリー管位置決めステージがあり、これもまた独立の駆動系によりX軸、Y軸、Z軸方向への駆動及びθ軸の回転を含む三次元運動が可能である。
【0023】
本発明になる顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置において、プラズマキャピラリー管と顕体試料との相対的位置決め作業、プラズマエッチングによる剥離作業およびプローバによる微細作業は、好ましくはSEMを顕微鏡として用いる環境下で行なわれる。即ち、上述の作業は、SEMの真空環境でSEM観察下にて、オペレーターの目視による手法、あるいはSEM画像のモニターテレビによる画像処理の手法を用いて行われる。前述のプラズマキャピラリー管位置決めステージおよびそれに把持されたプラズマキャピラリー管、試料ステージおよび1つまたはそれ以上のプローバは、プローバベース上に載置され、該プローバベースはSEMの試料導入室を通してSEMチャンバー中に着脱自在に装着できる構造を有する。即ち、既成のSEM標準ステージと交換することで、SEM本体を改造することなく本発明による装置をSEMチャンバー中に着脱自在にし、使用することができる。
【0024】
更に、前述のプローバベースには局所プラズマ機構排気系配管が具備されている。これに接続した排気装置によりSEMチャンバー内をプラズマ発生気圧(10−4ないし50Pa程度)に保持することができるとともに、局所プラズマ照射による反応性ガスやプラズマエッチングによる蒸発ガスの排気除去を行なうことができる。つまり、この局所プラズマ機構排気系はSEM排気系とは全く独立して設けられている。プラズマエッチングを行なう間、SEMポートでサポートされたSEM鏡筒シャッターおよびSEM排気系シャッターを遮断しSEM本体機能と切り離しておき、前記局所プラズマ機構排気系を稼動させることにより、SEMチャンバー内を真空にし、更に局所プラズマ照射による反応性ガスやプラズマエッチングによる蒸発ガスの排気除去を行なうことができる。即ち、プラズマ作業時に発生する反応性ガスや蒸発ガスによるSEM鏡筒やSEM排気系の腐食や汚染を防止することができる。
【0025】
上記の局所プラズマ機構部は上述の通り、SEMチャンバー内でプラズマ処理を行ってもよいし、あるいはSEMとプラズマ環境を完全に切り離すために、対象試料の任意位置をSEM像で確認した後、位置制御された搬送システムでSEMチャンバーと切り分けられた試料導入室でプラズマ処理を行ってもよい。即ち、本発明になる装置は、プラズマを利用した試料の前処理と、その後のプローバアプローチまでの一連の作業が同一SEM内で実現できるようにした装置である。
【0026】
本発明で用いるプローバを構成するプローブは、メインプローブとそれに接合するサブプローブよりなるデュアルプローブであることが好ましい。即ち、2種類の電極を一体化させたプローブである。その2種類の電極は、マイクロオーダーでの作業・測定に対応したマイクロプローブ(メインプローブ)とナノオーダーの作業・測定に対応したナノプローブ(サブプローブ)から構成されている。各メイン・サブプローブ共に微細作業および電気的測定が可能である。例えば、先端半径約2μmのプローブをメインプローブとし、その先端にナノスケール径のCNTよりなるサブプローブを接合して用いる。例えば、深層部にある65nm幅の配線回路を対象とした場合、プラズマエッチングをして酸化珪素絶縁膜の穿孔した孔に2台のプローバに搭載されたCNTよりなるサブプローブ先端を入れ、該当測定箇所に針当てを行なう。これにより、微小回路を損傷することなく目的の電気的測定を行なうことができる。メインプローブの材質としては、非磁性、導電性に優れた物質、例えばタングステン、金、白金あるいはリン青銅とすることが好ましい。
【0027】
メインプローブとサブプローブの接合は本発明装置で顕微鏡視野下で観察しながら行なう。取り付け方法については、プラズマ照射を応用した方法、電子線を利用したコンタミ接合法、タングステンデポ(CVD)接合法あるいはナノ粒子接合法等を利用して行なうことができ、特に限定を受けるものではない。接合させる位置は、例えば電解研磨等の方法で先端を尖らせたメインプローブの先端にCNT等のサブプローブの端部を合わせて、接合を行なう。サブプローブの先端に角度を設けることにより、CNT等のサブプローブの試料面への接触を確実に行なうことができる。
【0028】
前述のデュアルプローブに取り付けるサブプローブとしてナノスケール径のCNTを用いる場合、CNTは比較的消耗が激しく、あるいは測定作業によっては、作業終了時点で切断されて使い捨てになる場合もある。このようなことから、サブプローブは真空下での微細作業時にSEMチャンバー内にて、真空を破壊することなく、SEM観察視野内にて確認しながら交換が可能としておくことができる。交換用サブプローブは、検体試料を載置する試料ステージ上に載置されるようにしておくことが好ましい。これにより、デュアルプローブと交換用サブプローブは、各々独立した動きをするものとなるから、効率的な交換作業が可能となる。また、連続的な不良解析作業も可能となる。
【0029】
以下図面に基づいて、本発明になる顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置の実施の態様について具体的に説明を行なうが、これにより本発明の限定を行なうものではない。
【0030】
図1は本発明の顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置の1例を示す概略説明図である。SEMチャンバー1内にプローバベース2があり、プローバベース上には複数のプローバ3と試料ステージ4が載置されており、更にプローバベースにはベローズ構造を有する配管5が取り付けられており、その中には極細のペンシル型プラズマ電子銃6が収納されている。該ペンシル型プラズマ電子銃6はプラズマ電極7とプラズマキャピラリー管8により構成されており、このプラズマキャピラリー管8の先端部はプラズマキャピラリー管位置決めステージ9により把持されており、また、配管5との接続部分にはOリング10が配置されSEMチャンバー内の機密を保つようになっている。前述のプラズマキャピラリー管位置決めステージ9、試料ステージ4およびプローバ3は、各々独立にX軸、Y軸、Z軸方向への駆動およびT軸及び/またはR軸の回転が可能である。これら各々のユニットの粗動はDCモータを駆動源とし、微動は圧電素子を駆動源として用いた(いずれも図示せず)。更にプローバベース2にはプラズマ機構排気系11が設けられている。プローバベース2上に載置された前記部品で、全体として局所プラズマ機構を構成する。
【0031】
SEMチャンバー1の頂部にはSEM鏡筒12が配置されてなり、前記プローバ3、試料ステージ4上の顕体試料(図示せず)、キャピラリー管8をSEM視野に納めることができる。またSEMチャンバー1の底部にはSEM排気系13が設置されており、SEMチャンバー1内を真空にする作用を行なう。更にSEM鏡筒12に接するようにSEM鏡筒シャッター14が、SEM排気系13に接するようにSEM排気系シャッター15が設けられている。またSEMチャンバー1の側部には試料導入室16が設けられている。プローバベース2上に設けられた局所プラズマ機構は、前記試料導入室16からSEMチャンバー1に自在に着脱可能である。
【0032】
前述のペンシル型プラズマ電子銃6にはRF電源17とプラズマ発生機構18が接続されてなり、ここにおいてプラズマが発生されキャピラリー管8の先端より照射される。キャピラリー管8の先端の対向する箇所に試料ステージ4上に載置された顕体試料の剥離が必要な絶縁膜部分がくるように試料ステージ4とプラズマキャピラリー管位置決めステージ9とを操作する。操作に際しては、SEM鏡筒12で捉えたSEM画像を観察しながら前記両ステージの駆動を行なう。
【0033】
図2はプラズマキャピラリー管8の形状の一例を示す図面である。プラズマキャピラリー管8は、キャピラリー管本体8−1部分とキャピラリー管先端部分8−2より構成され、キャピラリー管本体8−1部分を囲むようにプラズマ電極(図示せず)が配置されている。キャピラリー管先端部分8−2の孔径は目的によって異なるが、大略0.01mmないし0.2mm程度である。キャピラリー管本体8−1部分で発生したプラズマはキャピラリー管先端部分8−2で加速され顕体試料の微小部分(局所)に照射される。
【0034】
図3は本発明に用いる微細作業用プローバ3に搭載するデュアルプローブの先端部の部分の一例を示す図面である。デュアルプローブ19はメインプローブ19−1とCNTよりなるサブプローブ19−2より構成される。2本以上のプローバに載置されたデュアルプローブを駆動し、メインプローブ19−1あるいはそれに接合したサブプローブ19−2の先端を顕体試料の測定位置に移動し、位置決めを行ない必要な測定を行なう。顕体試料はθ軸を中心とした回転を含め平面上の自在に移動が可能であり、高さ方向の変位も可能であり、更に任意の角度で傾斜させることも可能である。デュアルプローブ19は平面上及び高さ方向の自在な移動に加えその傾斜も変えることができるため、顕体試料に対する相対位置および試料に接する角度も自在に変えることができる。即ち、任意の角度で、任意の位置にメインプローブ19−1あるいはメインプローブに接合したサブプローブ19−2の先端を接触させることが可能である。
【0035】
図4は本発明の顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置が装着されるSEMチャンバーの斜視図であり、図5は前記SEMチャンバー1に着脱自在なプローバベース2の斜視図である。プラズマキャピラリー管位置決めステージ、試料ステージおよび1つまたはそれ以上のプローバを搭載したプローバベース2は、一体物として、そのままSEMチャンバー1内に着脱可能である。図6は本発明のプローバベースがSEMチャンバーに装着された状態を示す斜視図である。
【0036】
本発明になる操作型電子顕微鏡マイクロマニピュレーション装置を用いた剥離作業及び不良解析作業の手順の一例を示すと以下の通りである。
【0037】
1.測定対象の顕体試料を試料ステージ4上に載置する。
2.SEM画像を観察しながら剥離を行なう位置に、顕体試料である半導体デバイスの剥離対象箇所の位置決めを行なう。
3.SEM画像を観察しながらプラズマキャピラリー管位置決めステージ9を操作しキャピラリー管8の筒先を顕体試料の剥離対象箇所に対向するようにする。
4.SEM鏡筒シャッター14およびSEM排気系シャッター15を作動せしめ、SEM電子銃および排気系をシャットダウンする。
5.ペンシル型プラズマ電子銃6を稼動せしめ、半導体デバイスの絶縁膜にプラズマを照射し、プラズマエッチングを行なう。
6.プラズマエッチング終了後、プラズマ機構排気系11を稼動せしめ、プラズマ活性ガス、プラズマエッチングに伴なう蒸発物の強制排気/除去を行なう。
7.SEM鏡筒シャッター14およびSEM排気系シャッター15を開き、SEM画像を観察しながらプラズマエッチングにより剥離された孔にデュアルプローブ19のメインプローブ19−1に接合したサブプローブ19−2の先端を挿入し、微細配線深層部の測定部分に接触し、測定評価を行なう。
【0038】
以上の操作が1サイクルであり、同じ顕体試料の別の箇所をターゲットとして同じ操作を行なう場合は、試料ステージ、プラズマキャピラリー管位置決めステージを操作して顕体試料の次の該当箇所にプラズマキャピラリー管の筒先が来るようにし、次のサイクルをそのまま連続して行なう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】SEMに取り付けられた本発明の顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置の一例を示す概略説明図である。
【図2】本発明のプラズマキャピラリー管の形状の一例を示す図面である。
【図3】本発明に用いる微細作業用プローバに搭載するデュアルプローブの一例で、その先端部部分を示す図面である。
【図4】本発明のプローバベースが装着されるSEMチャンバーの斜視図である。
【図5】SEMチャンバーに着脱自在な本発明のプローバベースの斜視図である。
【図6】本発明のプローバベースがSEMチャンバーに装着された状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 SEMチャンバー 2 プローバベース
3 プローバ 4 試料ステージ
5 ベローズ構造を有する配管
6 ペンシル型プラズマ電子銃
7 プラズマ電極 8 プラズマキャピラリー管
8−1 キャピラリー管本体
8−2 キャピラリー管先端部分
9 プラズマキャピラリー管位置決めステージ
10 Oリング 11 プラズマ機構排気系
12 SEM鏡筒 13 SEM排気系
14 SEM鏡筒シャッター
15 SEM排気系シャッター
16 前記試料導入室 17 RF電源
18 プラズマ発生機構 19 デュアルプローブ
19−1 メインプローブ 19−2 サブプローブ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所プラズマ機構、および該局所プラズマ機構の先端部であるプラズマキャピラリー管を把持するプラズマキャピラリー管位置決めステージ、試料ステージおよび1つまたはそれ以上のプローバがプローバベース上に載置され、該プローバベースが顕微鏡の視野下に着脱自在に装着できる構造を有することを特徴とする顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置。
【請求項2】
顕微鏡が走査型電子顕微鏡であり、プローバベースが走査型電子顕微鏡の試料導入室を通して走査型電子顕微鏡チャンバー中に着脱自在に装着できる構造を有することを特徴とする請求項1に記載の顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置。
【請求項3】
局所プラズマ機構が、プラズマ発生部と、プラズマキャピラリー管と、局所プラズマ機構排気系から構成されていることを特長とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置。
【請求項4】
プラズマキャピラリー管位置決めステージ、試料ステージおよび1つまたはそれ以上のプローバがX軸、Y軸、Z軸方向への駆動およびT軸及び/またはR軸の回転がそれぞれ独立に可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれかに記載の顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置。
【請求項5】
プラズマ発生部とプラズマキャピラリー管がプローバベースに接続された3軸稼動可能なベローズ構造を有する配管中に収納され、プラズマキャピラリー管の先端は走査型電子顕微鏡チャンバー内に突出し、前記プラズマキャピラリー管とベローズ処理された配管先端部との接合部には真空シール部材が設けられており、該シール部材を設けることにより大気側での電界発生に伴ないプラズマ発生部で発生されたプラズマが真空側に照射が可能であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の顕微鏡微細作業用マイクロマニピュレーション装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−46324(P2008−46324A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−221399(P2006−221399)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(393018521)株式会社三友製作所 (6)
【Fターム(参考)】