風力発電用のプロペラ型タービン装置
【課題】簡単且つ安価な構成でありながら強風に対しても安心して使用することができる風力発電用のプロペラ型タービン装置を提供する。
【解決手段】主翼3は主翼軸4を中心として回転可能に支持され、主翼3の基端部にアングル部材6を介して補助翼7が固定連結されている。前方から風Wを受けると、補助翼7は後方へと押圧され、補助翼7により主翼軸4の周りに風Wの強さに応じたモーメントが発生して主翼3のピッチ角が自動的に調整され、風Wの方向に対する主翼3の角度が小さくなり、出力軸1の周りの主翼3の回転数が所定値以上に大きくなることが防止される。
【解決手段】主翼3は主翼軸4を中心として回転可能に支持され、主翼3の基端部にアングル部材6を介して補助翼7が固定連結されている。前方から風Wを受けると、補助翼7は後方へと押圧され、補助翼7により主翼軸4の周りに風Wの強さに応じたモーメントが発生して主翼3のピッチ角が自動的に調整され、風Wの方向に対する主翼3の角度が小さくなり、出力軸1の周りの主翼3の回転数が所定値以上に大きくなることが防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、風力発電用のプロペラ型タービン装置に係り、特に主翼で風を受けて出力軸を回転させるプロペラ型タービン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーの利用として風力発電が注目されている。この風力発電においては、例えば、プロペラにより風を受けて出力軸を回転させ、出力軸に連結された発電機を駆動するため、風の強さに応じて出力軸の回転数が変化するが、強風によりプロペラが破損したり、プロペラの回転数が高くなり過ぎて発電機に支障を来すおそれがある。
そこで、特許文献1には、風速に対応して翼のピッチ角を制御することにより、風速に関わらずに発電機の出力を一定とする風力発電機のピッチ角制御装置が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−37850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、発電機の出力と定格出力の偏差に基づいてピッチ角の指令値を演算する制御回路と、制御回路で演算されたピッチ角の指令値に基づいて翼のピッチ角を調整するピッチ角調整装置とが必要となり、これら制御回路及びピッチ角調整装置の構成が複雑で部品点数も多く、設備費用が嵩むという問題がある。
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、簡単且つ安価な構成でありながら強風に対しても安心して使用することができる風力発電用のプロペラ型タービン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置は、主翼で風を受けて出力軸を回転させる風力発電用のプロペラ型タービン装置において、出力軸に固定され且つ出力軸と共に回転する支持部材と、支持部材に回転可能に支持された主翼軸を有する主翼と、主翼に連結され且つ風を受けて回転するときに主翼に主翼軸の周りのモーメントを発生させるための補助翼とを備え、風力に応じて補助翼により主翼に発生する主翼軸の周りのモーメントの大きさが変化し、主翼のピッチ角が風力と出力軸の回転数に応じて自動的に調整されるものである。
好ましくは、主翼のピッチ角が設定値となるように支持部材に対して主翼を付勢するバネを備えている。このようにすると、補助翼が風を受けて回転するときに補助翼に発生する揚力に起因してバネの付勢力に抗して主翼が主翼軸の周りに回転することにより主翼のピッチ角が設定値から変化し、補助翼が風を受けないときにはバネの付勢力により主翼のピッチ角が設定値となる。
また、外周部にストッパ用ノッチが形成された偏心カムを主翼軸に取り付けると共に、偏心カムの外周部に対して付勢されるようにスプリングプランジャを支持部材に支持させてもよい。このようにすると、突風を受けたときに主翼軸と共に偏心カムが回転してスプリングプランジャが偏心カムのストッパ用ノッチに係合することにより主翼のピッチ角を所定の角度に固定することができる。
バネは、支持部材の内部に設けられていてもよい。
2つの主翼軸を有し、各主翼軸は、ブレードピッチ角連動同調リンクによって接続されていてもよい。
主翼のピッチ角を最適ピッチ(16°〜30°)に調整するための第1ストッパを有し、主翼のピッチ角を最大角度に維持するための第2ストッパを有してもよい。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、風力に応じて補助翼により主翼に発生する主翼軸の周りのモーメントの大きさが変化して主翼のピッチ角が風力と出力軸の回転数に応じて自動的に調整されるので、複雑な回路や装置を用いることなく、強風に対しても過回転の心配なく、突風に対しても可変ピッチ機構が即応するため、可及的に回転力が上がり、安心して使用することができるプロペラ型タービン装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置を示す。図示しない発電機に連結される出力軸1の端部にブロック状の支持部材2が固定されている。この支持部材2を挟んで一対の主翼3が互いに逆方向に延びるように配置されており、各主翼3に固定された主翼軸4が、対応するベアリング5を介して支持部材2に支持されている。これにより、一対の主翼3は、それぞれの主翼軸4を中心として回転可能、すなわちピッチ角が可変となるように支持されている。また、各主翼3の基端部にはアングル部材6を介してそれぞれ対応する補助翼7が固定連結され、この補助翼7により主翼3に主翼軸4を中心とした大きなモーメントを発生させるように構成されている。それぞれの主翼3と補助翼7は、互いに直角方向に延びるように配置されている。
【0008】
図2に示されるように、支持部材2には、各主翼3に対応して一対のアーム8が、出力軸1の軸方向とほぼ平行で且つこのプロペラ装置の前方に向かって突出形成されており、各アーム8の先端部とアングル部材6に配設された係合部9との間にバネ10が掛けわたされている。また、各アーム8には下方に向かって延びるロッド形状のストッパ11が取り付けられている。
図3に示されるように、各アングル部材6に配設された係合部9は、主翼軸4の位置よりも補助翼7側に配置されており、主翼3は、バネ10の引っ張り力により主翼軸4を中心として補助翼7が配設されている側がアーム8に向かって回動するような向きに付勢されている。ただし、アーム8に取り付けられたストッパ11の先端部にアングル部材6が当接することにより、風等による外力を受けないとき、あるいは外力がバネ10の引っ張り力以下の場合には、図4に実線で示されるように、主翼3は、ストッパ11の長さにより決定されるピッチ角θ1に設定されることとなる。
【0009】
また、補助翼7は、主翼3に対して角度θ2だけ、このプロペラ装置の前方に向かって傾斜すると共に、図5に示されたピッチ角θ3を有している。図4において、Sは、主翼軸4を通り且つ出力軸1に対して垂直な、プロペラ型タービン装置の基準面を示しており、一対の主翼3の主翼軸4は、共にこの基準面S上に位置している。
図4からわかるように、主翼3に対する補助翼7の傾斜角θ2は主翼3のピッチ角θ1より大きく設定されており、このため、補助翼7は、風等による外力を受けないときには、基準面Sよりもプロペラ型タービン装置の前方側に傾いた状態となっている。
なお、図4では、簡略化のため、一方の主翼3及び補助翼7のみが描かれているが、他方の主翼3及び補助翼7も同様の角度θ1〜θ3を有している。
【0010】
この状態で、プロペラ型タービン装置の前方から風Wを受けると、主翼3のピッチ角θ1と回転数に応じて主翼3に出力軸1の周りのモーメントが発生し、一対の主翼3はそれぞれ対応する補助翼7と共に出力軸1の周りに回転する。その結果、出力軸1に連結されている図示しない発電機により発電が行われる。
【0011】
このとき、補助翼7に発生する揚力に起因して、補助翼7はプロペラ型タービン装置の後方へと移動し、この補助翼7により主翼3に主翼軸4の周りのモーメントが発生する。この補助翼7により発生する主翼軸4の周りのモーメントは、風Wの強さと回転数に応じて変化し、風Wが強いほど、大きなモーメントを主翼3に発生させる。
ただし、補助翼7に発生する揚力がバネ10の引っ張り力以下の場合には、補助翼7は主翼軸4を中心として回動することがなく、図6に示されるように、一対の主翼3は共にピッチ角θ1を維持した状態で出力軸1の周りに回転する。
【0012】
一方、風Wが強くなって補助翼7に発生する揚力がバネ10の引っ張り力を超えると、補助翼7は、バネ10の引っ張り力に抗してプロペラ型タービン装置の後方へと移動し、主翼軸4の周りに回動を始める。例えば、図4に二点鎖線で示されるように、主翼軸4の周りの大きなモーメントが発生して、補助翼7が主翼軸4の周りに角度Δθだけ回転すると、補助翼7と共に主翼3も主翼軸4の周りに角度Δθだけ回転することとなる。その結果、図7に示されるように、一対の主翼3のピッチ角は、それぞれθ1+Δθとなって、風Wの方向に対する主翼3の角度が小さくなり、これにより主翼3を出力軸1の周りを回転させようとするモーメントの増大が抑制される。このため、それ以上に風Wが強くなっても、出力軸1の周りの主翼3の回転数が所定値以上に大きくなることは防止される。
【0013】
このように、風力に応じて補助翼7により主翼3に発生する主翼軸4の周りのモーメントの大きさが変化して主翼3のピッチ角が自動的に調整されるので、出力軸1の周りの回転数は所定値以上に大きくならないように制御され、強風を受けても回転数が高くなり過ぎることはなく、しかも低回転域でのトルク特性を著しく向上させることで、良好な発電特性が与えられ、プロペラ型タービン装置や発電機の破損等を未然に防ぐことができる。
【0014】
なお、図8及び9に示されるように、各主翼軸4に偏心カム12が取り付けられており、偏心カム12の外周部にストッパ用ノッチ12aが形成されている。また、支持部材2には、偏心カム12の外周部に対向するようにスプリングプランジャ13が支持され、スプリングプランジャ13の先端部が偏心カム12の外周部に対して付勢されている。
上述したように、風力に応じて補助翼7により主翼3が主翼軸4の周りに回転するが、このとき主翼軸4と共に偏心カム12も回転する。そして、突風を受けたときには、主翼3が風の方向にほぼ平行になったところで、図9に示されるように、偏心カム12のストッパ用ノッチ12aにスプリングプランジャ13の先端部が係合し、主翼3のピッチ角が固定されるように構成されている。これにより、突風時に主翼3が風から受ける影響を最小とすることができる。
突風が治まった後は、手動により、あるいは電磁石等を利用することにより主翼軸4を回転させて、ストッパ用ノッチ12aとスプリングプランジャ13との係合を解除すればよい。
【0015】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置について説明する。尚、実施の形態2において、図1〜9の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0016】
図10及び20に示されるように、支持部材2内において、2つの主翼軸4,4は、ブレードピッチ角連動同調リンク20によって連結されている。これにより、各主翼軸4は、常に同じピッチ角で回転するようになる。また、図10及び11にそれぞれ示されるように、各主翼軸4には、カム21が取り付けられている。実施の形態1において支持部材2の外部に設けられていたバネ10の一端が、支持部材2内においてカム21に接続され、バネ10の他端は、支持部材2に設けられたバネ用ポスト22に接続されている。
【0017】
図12に示されるように、支持部材2には、第1ストッパ31と、第2ストッパ32とが設けられている。風Wがあまり強くない時には、第1ストッパ31は、アングル部材6に当接するようになっており、アングル部材6が第1ストッパ31に当接する状態では、基準面Sに対する補助翼7のなす角度は、15°以上として、主ブレードの後流の影響を避けている。このとき、主翼3は、基準面Sに対して、最適なピッチ角(16°〜30°)をなすようになっている。また、第2ストッパ32は、補助翼7が強い風Wを受けたときに主翼3に当接するようになっており、風Wによって基準面Sに対する補助翼7のなす角度が変化したときに、主翼3が第2ストッパ32に当接する状態では、基準面Sに対する主翼3のなす角度は、最大角度となっている。ここで、主翼軸4は、ブレードピッチ角連動同調リンク20により、フェザーリンクの角度(0°〜90°)まで可動することができるようにする。
その他の構成については、実施の形態1と同じである。
【0018】
このように、2つの主翼軸4,4にブレードピッチ角連動同調リンク20を設けることにより、各主翼軸4が同じ角度で回転するので、各主翼3の基準面Sに対してなす角度を同じにすることができる。
また、風Wがあまり強くない時には、第1ストッパ31により、各主翼3のなす角度を、最適なピッチ角(16°〜30°)に調整することができる。また、風Wが強いときには、第2ストッパ32により、各主翼3のなす角度を、ブレードピッチ角連動同調リンク20によって決定される最大角度に保つことができる。
【0019】
次に、この特許申請に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置において、アクティブピッチ制御方式の実証実験を述べる。
この実証に用いたプロペラ型タービン装置において、翼径850mm、先端ブレード弦長50mm、根本ブレード弦長80mm、主翼ブレード先端ピッチ角3°、主翼ブレード根本ピッチ角26°である。このプロペラ型タービン装置の風速5m/sにおける出力と回転数との関係を図13に示す。図13には、この翼を2枚使用した場合の関係の他に、この2枚の翼に、翼径1/2〜1/3及び弦長1/2〜1/3の副翼を付加した準4枚翼の場合の関係を示している。尚、副翼の先端ピッチ角は、0°、10°、20°とした。
【0020】
図13において、縦軸は、風車出力を風本来の保有エネルギーの比とした無次元出力係数であるCpであり、横軸は、風車先端速度と風速の比である無次元回転数λである。
【0021】
副翼の先端ピッチ角を0°とすれば、準4枚翼型風車として回転域を変えることなく性能が向上し、副翼の先端ピッチ角を20°とすれば、ブレーキ効果により、低回転域に移行、出力性能は大幅に低下する。
【0022】
通常翼ピッチ角を全体的に10°、20°と深めた場合(副翼なし)の出力性能から、トルク特性が著しく低回転域に移行し、抗力スラスト係数も著しく低下し、突風・強風に対し有効になることが示されている。
【0023】
風車の性能を落とさない副翼の取り付け条件で主翼ブレードピッチ角制御に直結させる優れたアクティブピッチ制御方式が以下に考えられる。
図14に、副翼と連動する主翼ブレードピッチ制御機構の具体例を示す。副翼のスラスト(回転中の揚力又は突風)により、時間遅れなく突風・強風時のピッチ角変化が即応できることが予想される。
【0024】
先に述べた条件で、主翼ブレードピッチ角に連動する副翼(径1/2、弦長1/2)の先端ピッチ角を0〜30°とした場合の無次元出力及び回転数の関係を図15に示す。副翼のピッチ角を小さくするほど、副翼に作用するスラストが強くなり、結果として、主翼ブレードピッチ角が深まり、過回転防止として、出力特性が低回転域に著しく移行する。
【0025】
同様に、図16に、これと同一条件における通常の2枚翼に対し副翼を設置した場合の無次元トルク及び回転数の関係を示す。副翼に作用する強いトラストにより、主翼ブレードのピッチ角が深まり、低回転域でトルクは向上すると共に中回転域以上でトルクは著しく低下する強風に対し、過回転防止効果が大きいことを示している。
【0026】
図17に、この場合において、負荷トルク一定の下、風速を3.5m/sから突然4.7m/sに上げた場合の時間に対する回転数の過度応答特性を示す。副翼と主翼ブレードピッチ角とを連動させた場合と固定させた場合、及び副翼を外した場合を、負荷トルク毎に示しているが、ピッチ角に連動させた場合、応答性が3倍程向上し、回転数増加も半分としている。
【0027】
以上の結果より、主翼ブレードピッチ角に連動させた副翼ピッチ制御方式は、突風・休風対策として、極めて優れた方式といえる。
本機構の類似のアクティブピッチ制御方式として、風車面の抗力をピッチ制御に利用する試みがあるが、機構が複雑で、作動上、主翼ブレードのピッチ角が深まればスラストが低下し、主翼ブレードピッチ角に独立した本方式程のピッチ角制御はできない(その分弱強風)ものと考えられる。
【0028】
なお、アーム8に取り付けられたストッパ11の長さを変えることにより、風を受けないときの主翼3のピッチ角θ1を調整することができる。このため、アーム8から突出する長さを調節できるように、ストッパ11をアーム8に対して進退可能に取り付けることが好ましい。
上記の実施の形態では、バネ10の引っ張り力により主翼3に付勢力を付与していたが、図18に示されるように、圧縮コイルバネ14の押し出し力を利用して主翼3を付勢してもよい。
【0029】
主翼3及び補助翼7の大きさ、主翼3のピッチ角θ1、主翼3に対する補助翼7の傾斜角θ2、補助翼7のピッチ角θ3は、このプロペラ型タービン装置に接続される発電機に要求される電力量、プロペラ型タービン装置の設置場所における平均風力等に応じて適宜設定される。例えば、初期の主翼3のピッチ角θ1は、24度に設定することができる。補助翼7の大きさ、傾斜角θ2及びピッチ角θ3を変えることにより、風の強さに対して主翼3に発生させる主翼軸4の周りのモーメントの大きさを調整することが可能となる。
この発明のプロペラ型タービン装置Aを用いた風力発電装置の一例を図19に示す。立設された支柱15に対して水平面内で回転自在に回転アーム16を連結すると共に回転アーム16の先端に発電機17を固定し、この発電機17の回転軸を出力軸1としてプロペラ型タービン装置Aが取り付けられている。回転アーム16及び発電機17は、カバー18によって覆われている。風Wが吹くと、風Wに対してプロペラ型タービン装置Aが支柱15及び発電機17の下流側に位置するように回転アーム16が支柱15の周りに回転し、この状態で主翼3及び補助翼7が出力軸1の周りに回転して発電機17により発電が行われる。
この発明のプロペラ型タービン装置Aは、強風や突風に対しても安心して使用することができるだけでなく、簡単な構造のため安価に製造することができ、家庭用や小規模発電用に対しても十分に適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置を示す正面図である。
【図2】実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の中心部を示す側面図である。
【図3】実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の中心部を示す拡大正面図である。
【図4】実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の機能を模式的に示す図である。
【図5】実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の機能を模式的に示す図である。
【図6】風を受けないときの主翼と補助翼の状態を示す側面図である。
【図7】風を受けたときの主翼と補助翼の状態を示す側面図である。
【図8】主翼軸に取り付けられた偏心カムと支持部材に支持されたスプリングプランジャの関係を示す正面図である。
【図9】突風を受けたときの偏心カムとスプリングプランジャの関係を示す側面図である。
【図10】実施の形態2に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の中心部を示す拡大正面図である。
【図11】実施の形態2に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置におけるバネの取り付けられた状態を説明するための図である。
【図12】実施の形態2に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の機能を模式的に示す図である。
【図13】風速5m/sにおけるプロペラ型タービン装置の無次元出力と回転数との関係である。
【図14】副翼と連動する主翼ブレードピッチ制御機構の斜視図である。
【図15】主翼ブレードピッチ角に連動する副翼(径1/2、弦長1/2)の先端ピッチ角を0〜30°とした場合のプロペラ型タービン装置における無次元出力と回転数との関係である。
【図16】図15と同一条件における通常の2枚翼に対し副翼を設置した場合のプロペラ型タービン装置における無次元出力と回転数との関係である。
【図17】負荷トルク一定の下、風速を3.5m/sから突然4.7m/sに上げた場合の時間に対する回転数の過度応答特性である。
【図18】圧縮コイルバネが取り付けられた変形例を示す図である。
【図19】実施の形態に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置を用いた風力発電装置の一例を示す部分斜視図である。
【図20】実施の形態2に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置のブレードピッチ角連動同調リンクの側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 出力軸、2 支持部材、3 主翼、4 主翼軸、5 ベアリング、6 アングル部材、7 補助翼、8 アーム、9 係合部、10 バネ、11 ストッパ、12 偏心カム、12a ストッパ用ノッチ、13 スプリングプランジャ、14 圧縮コイルバネ、15 支柱、16 回転アーム、17 発電機、18 カバー、20 ブレードピッチ角連動同調リンク、31 第1ストッパ、32 第2ストッパ、A プロペラ型タービン装置、S 基準面、θ1 主翼のピッチ角、θ2 主翼に対する補助翼の傾斜角、θ3 補助翼の傾斜角。
【技術分野】
【0001】
この発明は、風力発電用のプロペラ型タービン装置に係り、特に主翼で風を受けて出力軸を回転させるプロペラ型タービン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、クリーンエネルギーの利用として風力発電が注目されている。この風力発電においては、例えば、プロペラにより風を受けて出力軸を回転させ、出力軸に連結された発電機を駆動するため、風の強さに応じて出力軸の回転数が変化するが、強風によりプロペラが破損したり、プロペラの回転数が高くなり過ぎて発電機に支障を来すおそれがある。
そこで、特許文献1には、風速に対応して翼のピッチ角を制御することにより、風速に関わらずに発電機の出力を一定とする風力発電機のピッチ角制御装置が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−37850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の装置では、発電機の出力と定格出力の偏差に基づいてピッチ角の指令値を演算する制御回路と、制御回路で演算されたピッチ角の指令値に基づいて翼のピッチ角を調整するピッチ角調整装置とが必要となり、これら制御回路及びピッチ角調整装置の構成が複雑で部品点数も多く、設備費用が嵩むという問題がある。
この発明はこのような問題点を解消するためになされたもので、簡単且つ安価な構成でありながら強風に対しても安心して使用することができる風力発電用のプロペラ型タービン装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置は、主翼で風を受けて出力軸を回転させる風力発電用のプロペラ型タービン装置において、出力軸に固定され且つ出力軸と共に回転する支持部材と、支持部材に回転可能に支持された主翼軸を有する主翼と、主翼に連結され且つ風を受けて回転するときに主翼に主翼軸の周りのモーメントを発生させるための補助翼とを備え、風力に応じて補助翼により主翼に発生する主翼軸の周りのモーメントの大きさが変化し、主翼のピッチ角が風力と出力軸の回転数に応じて自動的に調整されるものである。
好ましくは、主翼のピッチ角が設定値となるように支持部材に対して主翼を付勢するバネを備えている。このようにすると、補助翼が風を受けて回転するときに補助翼に発生する揚力に起因してバネの付勢力に抗して主翼が主翼軸の周りに回転することにより主翼のピッチ角が設定値から変化し、補助翼が風を受けないときにはバネの付勢力により主翼のピッチ角が設定値となる。
また、外周部にストッパ用ノッチが形成された偏心カムを主翼軸に取り付けると共に、偏心カムの外周部に対して付勢されるようにスプリングプランジャを支持部材に支持させてもよい。このようにすると、突風を受けたときに主翼軸と共に偏心カムが回転してスプリングプランジャが偏心カムのストッパ用ノッチに係合することにより主翼のピッチ角を所定の角度に固定することができる。
バネは、支持部材の内部に設けられていてもよい。
2つの主翼軸を有し、各主翼軸は、ブレードピッチ角連動同調リンクによって接続されていてもよい。
主翼のピッチ角を最適ピッチ(16°〜30°)に調整するための第1ストッパを有し、主翼のピッチ角を最大角度に維持するための第2ストッパを有してもよい。
【発明の効果】
【0006】
この発明によれば、風力に応じて補助翼により主翼に発生する主翼軸の周りのモーメントの大きさが変化して主翼のピッチ角が風力と出力軸の回転数に応じて自動的に調整されるので、複雑な回路や装置を用いることなく、強風に対しても過回転の心配なく、突風に対しても可変ピッチ機構が即応するため、可及的に回転力が上がり、安心して使用することができるプロペラ型タービン装置が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
図1に実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置を示す。図示しない発電機に連結される出力軸1の端部にブロック状の支持部材2が固定されている。この支持部材2を挟んで一対の主翼3が互いに逆方向に延びるように配置されており、各主翼3に固定された主翼軸4が、対応するベアリング5を介して支持部材2に支持されている。これにより、一対の主翼3は、それぞれの主翼軸4を中心として回転可能、すなわちピッチ角が可変となるように支持されている。また、各主翼3の基端部にはアングル部材6を介してそれぞれ対応する補助翼7が固定連結され、この補助翼7により主翼3に主翼軸4を中心とした大きなモーメントを発生させるように構成されている。それぞれの主翼3と補助翼7は、互いに直角方向に延びるように配置されている。
【0008】
図2に示されるように、支持部材2には、各主翼3に対応して一対のアーム8が、出力軸1の軸方向とほぼ平行で且つこのプロペラ装置の前方に向かって突出形成されており、各アーム8の先端部とアングル部材6に配設された係合部9との間にバネ10が掛けわたされている。また、各アーム8には下方に向かって延びるロッド形状のストッパ11が取り付けられている。
図3に示されるように、各アングル部材6に配設された係合部9は、主翼軸4の位置よりも補助翼7側に配置されており、主翼3は、バネ10の引っ張り力により主翼軸4を中心として補助翼7が配設されている側がアーム8に向かって回動するような向きに付勢されている。ただし、アーム8に取り付けられたストッパ11の先端部にアングル部材6が当接することにより、風等による外力を受けないとき、あるいは外力がバネ10の引っ張り力以下の場合には、図4に実線で示されるように、主翼3は、ストッパ11の長さにより決定されるピッチ角θ1に設定されることとなる。
【0009】
また、補助翼7は、主翼3に対して角度θ2だけ、このプロペラ装置の前方に向かって傾斜すると共に、図5に示されたピッチ角θ3を有している。図4において、Sは、主翼軸4を通り且つ出力軸1に対して垂直な、プロペラ型タービン装置の基準面を示しており、一対の主翼3の主翼軸4は、共にこの基準面S上に位置している。
図4からわかるように、主翼3に対する補助翼7の傾斜角θ2は主翼3のピッチ角θ1より大きく設定されており、このため、補助翼7は、風等による外力を受けないときには、基準面Sよりもプロペラ型タービン装置の前方側に傾いた状態となっている。
なお、図4では、簡略化のため、一方の主翼3及び補助翼7のみが描かれているが、他方の主翼3及び補助翼7も同様の角度θ1〜θ3を有している。
【0010】
この状態で、プロペラ型タービン装置の前方から風Wを受けると、主翼3のピッチ角θ1と回転数に応じて主翼3に出力軸1の周りのモーメントが発生し、一対の主翼3はそれぞれ対応する補助翼7と共に出力軸1の周りに回転する。その結果、出力軸1に連結されている図示しない発電機により発電が行われる。
【0011】
このとき、補助翼7に発生する揚力に起因して、補助翼7はプロペラ型タービン装置の後方へと移動し、この補助翼7により主翼3に主翼軸4の周りのモーメントが発生する。この補助翼7により発生する主翼軸4の周りのモーメントは、風Wの強さと回転数に応じて変化し、風Wが強いほど、大きなモーメントを主翼3に発生させる。
ただし、補助翼7に発生する揚力がバネ10の引っ張り力以下の場合には、補助翼7は主翼軸4を中心として回動することがなく、図6に示されるように、一対の主翼3は共にピッチ角θ1を維持した状態で出力軸1の周りに回転する。
【0012】
一方、風Wが強くなって補助翼7に発生する揚力がバネ10の引っ張り力を超えると、補助翼7は、バネ10の引っ張り力に抗してプロペラ型タービン装置の後方へと移動し、主翼軸4の周りに回動を始める。例えば、図4に二点鎖線で示されるように、主翼軸4の周りの大きなモーメントが発生して、補助翼7が主翼軸4の周りに角度Δθだけ回転すると、補助翼7と共に主翼3も主翼軸4の周りに角度Δθだけ回転することとなる。その結果、図7に示されるように、一対の主翼3のピッチ角は、それぞれθ1+Δθとなって、風Wの方向に対する主翼3の角度が小さくなり、これにより主翼3を出力軸1の周りを回転させようとするモーメントの増大が抑制される。このため、それ以上に風Wが強くなっても、出力軸1の周りの主翼3の回転数が所定値以上に大きくなることは防止される。
【0013】
このように、風力に応じて補助翼7により主翼3に発生する主翼軸4の周りのモーメントの大きさが変化して主翼3のピッチ角が自動的に調整されるので、出力軸1の周りの回転数は所定値以上に大きくならないように制御され、強風を受けても回転数が高くなり過ぎることはなく、しかも低回転域でのトルク特性を著しく向上させることで、良好な発電特性が与えられ、プロペラ型タービン装置や発電機の破損等を未然に防ぐことができる。
【0014】
なお、図8及び9に示されるように、各主翼軸4に偏心カム12が取り付けられており、偏心カム12の外周部にストッパ用ノッチ12aが形成されている。また、支持部材2には、偏心カム12の外周部に対向するようにスプリングプランジャ13が支持され、スプリングプランジャ13の先端部が偏心カム12の外周部に対して付勢されている。
上述したように、風力に応じて補助翼7により主翼3が主翼軸4の周りに回転するが、このとき主翼軸4と共に偏心カム12も回転する。そして、突風を受けたときには、主翼3が風の方向にほぼ平行になったところで、図9に示されるように、偏心カム12のストッパ用ノッチ12aにスプリングプランジャ13の先端部が係合し、主翼3のピッチ角が固定されるように構成されている。これにより、突風時に主翼3が風から受ける影響を最小とすることができる。
突風が治まった後は、手動により、あるいは電磁石等を利用することにより主翼軸4を回転させて、ストッパ用ノッチ12aとスプリングプランジャ13との係合を解除すればよい。
【0015】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置について説明する。尚、実施の形態2において、図1〜9の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
【0016】
図10及び20に示されるように、支持部材2内において、2つの主翼軸4,4は、ブレードピッチ角連動同調リンク20によって連結されている。これにより、各主翼軸4は、常に同じピッチ角で回転するようになる。また、図10及び11にそれぞれ示されるように、各主翼軸4には、カム21が取り付けられている。実施の形態1において支持部材2の外部に設けられていたバネ10の一端が、支持部材2内においてカム21に接続され、バネ10の他端は、支持部材2に設けられたバネ用ポスト22に接続されている。
【0017】
図12に示されるように、支持部材2には、第1ストッパ31と、第2ストッパ32とが設けられている。風Wがあまり強くない時には、第1ストッパ31は、アングル部材6に当接するようになっており、アングル部材6が第1ストッパ31に当接する状態では、基準面Sに対する補助翼7のなす角度は、15°以上として、主ブレードの後流の影響を避けている。このとき、主翼3は、基準面Sに対して、最適なピッチ角(16°〜30°)をなすようになっている。また、第2ストッパ32は、補助翼7が強い風Wを受けたときに主翼3に当接するようになっており、風Wによって基準面Sに対する補助翼7のなす角度が変化したときに、主翼3が第2ストッパ32に当接する状態では、基準面Sに対する主翼3のなす角度は、最大角度となっている。ここで、主翼軸4は、ブレードピッチ角連動同調リンク20により、フェザーリンクの角度(0°〜90°)まで可動することができるようにする。
その他の構成については、実施の形態1と同じである。
【0018】
このように、2つの主翼軸4,4にブレードピッチ角連動同調リンク20を設けることにより、各主翼軸4が同じ角度で回転するので、各主翼3の基準面Sに対してなす角度を同じにすることができる。
また、風Wがあまり強くない時には、第1ストッパ31により、各主翼3のなす角度を、最適なピッチ角(16°〜30°)に調整することができる。また、風Wが強いときには、第2ストッパ32により、各主翼3のなす角度を、ブレードピッチ角連動同調リンク20によって決定される最大角度に保つことができる。
【0019】
次に、この特許申請に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置において、アクティブピッチ制御方式の実証実験を述べる。
この実証に用いたプロペラ型タービン装置において、翼径850mm、先端ブレード弦長50mm、根本ブレード弦長80mm、主翼ブレード先端ピッチ角3°、主翼ブレード根本ピッチ角26°である。このプロペラ型タービン装置の風速5m/sにおける出力と回転数との関係を図13に示す。図13には、この翼を2枚使用した場合の関係の他に、この2枚の翼に、翼径1/2〜1/3及び弦長1/2〜1/3の副翼を付加した準4枚翼の場合の関係を示している。尚、副翼の先端ピッチ角は、0°、10°、20°とした。
【0020】
図13において、縦軸は、風車出力を風本来の保有エネルギーの比とした無次元出力係数であるCpであり、横軸は、風車先端速度と風速の比である無次元回転数λである。
【0021】
副翼の先端ピッチ角を0°とすれば、準4枚翼型風車として回転域を変えることなく性能が向上し、副翼の先端ピッチ角を20°とすれば、ブレーキ効果により、低回転域に移行、出力性能は大幅に低下する。
【0022】
通常翼ピッチ角を全体的に10°、20°と深めた場合(副翼なし)の出力性能から、トルク特性が著しく低回転域に移行し、抗力スラスト係数も著しく低下し、突風・強風に対し有効になることが示されている。
【0023】
風車の性能を落とさない副翼の取り付け条件で主翼ブレードピッチ角制御に直結させる優れたアクティブピッチ制御方式が以下に考えられる。
図14に、副翼と連動する主翼ブレードピッチ制御機構の具体例を示す。副翼のスラスト(回転中の揚力又は突風)により、時間遅れなく突風・強風時のピッチ角変化が即応できることが予想される。
【0024】
先に述べた条件で、主翼ブレードピッチ角に連動する副翼(径1/2、弦長1/2)の先端ピッチ角を0〜30°とした場合の無次元出力及び回転数の関係を図15に示す。副翼のピッチ角を小さくするほど、副翼に作用するスラストが強くなり、結果として、主翼ブレードピッチ角が深まり、過回転防止として、出力特性が低回転域に著しく移行する。
【0025】
同様に、図16に、これと同一条件における通常の2枚翼に対し副翼を設置した場合の無次元トルク及び回転数の関係を示す。副翼に作用する強いトラストにより、主翼ブレードのピッチ角が深まり、低回転域でトルクは向上すると共に中回転域以上でトルクは著しく低下する強風に対し、過回転防止効果が大きいことを示している。
【0026】
図17に、この場合において、負荷トルク一定の下、風速を3.5m/sから突然4.7m/sに上げた場合の時間に対する回転数の過度応答特性を示す。副翼と主翼ブレードピッチ角とを連動させた場合と固定させた場合、及び副翼を外した場合を、負荷トルク毎に示しているが、ピッチ角に連動させた場合、応答性が3倍程向上し、回転数増加も半分としている。
【0027】
以上の結果より、主翼ブレードピッチ角に連動させた副翼ピッチ制御方式は、突風・休風対策として、極めて優れた方式といえる。
本機構の類似のアクティブピッチ制御方式として、風車面の抗力をピッチ制御に利用する試みがあるが、機構が複雑で、作動上、主翼ブレードのピッチ角が深まればスラストが低下し、主翼ブレードピッチ角に独立した本方式程のピッチ角制御はできない(その分弱強風)ものと考えられる。
【0028】
なお、アーム8に取り付けられたストッパ11の長さを変えることにより、風を受けないときの主翼3のピッチ角θ1を調整することができる。このため、アーム8から突出する長さを調節できるように、ストッパ11をアーム8に対して進退可能に取り付けることが好ましい。
上記の実施の形態では、バネ10の引っ張り力により主翼3に付勢力を付与していたが、図18に示されるように、圧縮コイルバネ14の押し出し力を利用して主翼3を付勢してもよい。
【0029】
主翼3及び補助翼7の大きさ、主翼3のピッチ角θ1、主翼3に対する補助翼7の傾斜角θ2、補助翼7のピッチ角θ3は、このプロペラ型タービン装置に接続される発電機に要求される電力量、プロペラ型タービン装置の設置場所における平均風力等に応じて適宜設定される。例えば、初期の主翼3のピッチ角θ1は、24度に設定することができる。補助翼7の大きさ、傾斜角θ2及びピッチ角θ3を変えることにより、風の強さに対して主翼3に発生させる主翼軸4の周りのモーメントの大きさを調整することが可能となる。
この発明のプロペラ型タービン装置Aを用いた風力発電装置の一例を図19に示す。立設された支柱15に対して水平面内で回転自在に回転アーム16を連結すると共に回転アーム16の先端に発電機17を固定し、この発電機17の回転軸を出力軸1としてプロペラ型タービン装置Aが取り付けられている。回転アーム16及び発電機17は、カバー18によって覆われている。風Wが吹くと、風Wに対してプロペラ型タービン装置Aが支柱15及び発電機17の下流側に位置するように回転アーム16が支柱15の周りに回転し、この状態で主翼3及び補助翼7が出力軸1の周りに回転して発電機17により発電が行われる。
この発明のプロペラ型タービン装置Aは、強風や突風に対しても安心して使用することができるだけでなく、簡単な構造のため安価に製造することができ、家庭用や小規模発電用に対しても十分に適用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置を示す正面図である。
【図2】実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の中心部を示す側面図である。
【図3】実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の中心部を示す拡大正面図である。
【図4】実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の機能を模式的に示す図である。
【図5】実施の形態1に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の機能を模式的に示す図である。
【図6】風を受けないときの主翼と補助翼の状態を示す側面図である。
【図7】風を受けたときの主翼と補助翼の状態を示す側面図である。
【図8】主翼軸に取り付けられた偏心カムと支持部材に支持されたスプリングプランジャの関係を示す正面図である。
【図9】突風を受けたときの偏心カムとスプリングプランジャの関係を示す側面図である。
【図10】実施の形態2に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の中心部を示す拡大正面図である。
【図11】実施の形態2に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置におけるバネの取り付けられた状態を説明するための図である。
【図12】実施の形態2に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置の機能を模式的に示す図である。
【図13】風速5m/sにおけるプロペラ型タービン装置の無次元出力と回転数との関係である。
【図14】副翼と連動する主翼ブレードピッチ制御機構の斜視図である。
【図15】主翼ブレードピッチ角に連動する副翼(径1/2、弦長1/2)の先端ピッチ角を0〜30°とした場合のプロペラ型タービン装置における無次元出力と回転数との関係である。
【図16】図15と同一条件における通常の2枚翼に対し副翼を設置した場合のプロペラ型タービン装置における無次元出力と回転数との関係である。
【図17】負荷トルク一定の下、風速を3.5m/sから突然4.7m/sに上げた場合の時間に対する回転数の過度応答特性である。
【図18】圧縮コイルバネが取り付けられた変形例を示す図である。
【図19】実施の形態に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置を用いた風力発電装置の一例を示す部分斜視図である。
【図20】実施の形態2に係る風力発電用のプロペラ型タービン装置のブレードピッチ角連動同調リンクの側面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 出力軸、2 支持部材、3 主翼、4 主翼軸、5 ベアリング、6 アングル部材、7 補助翼、8 アーム、9 係合部、10 バネ、11 ストッパ、12 偏心カム、12a ストッパ用ノッチ、13 スプリングプランジャ、14 圧縮コイルバネ、15 支柱、16 回転アーム、17 発電機、18 カバー、20 ブレードピッチ角連動同調リンク、31 第1ストッパ、32 第2ストッパ、A プロペラ型タービン装置、S 基準面、θ1 主翼のピッチ角、θ2 主翼に対する補助翼の傾斜角、θ3 補助翼の傾斜角。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主翼で風を受けて出力軸を回転させる風力発電用のプロペラ型タービン装置において、
前記出力軸に固定され且つ前記出力軸と共に回転する支持部材と、
前記支持部材に回転可能に支持された主翼軸を有する主翼と、
前記主翼に連結され且つ風を受けて回転するときに前記主翼に前記主翼軸の周りのモーメントを発生させるための補助翼と
を備え、風力に応じて前記補助翼により前記主翼に発生する前記主翼軸の周りのモーメントの大きさが変化し、前記主翼のピッチ角が風力と前記出力軸の回転数に応じて自動的に調整されることを特徴とする風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項2】
前記主翼のピッチ角が設定値となるように前記支持部材に対して前記主翼を付勢するバネを備え、
前記補助翼が風を受けて回転するときに前記補助翼に発生する揚力に起因して前記バネの付勢力に抗して前記主翼が前記主翼軸の周りに回転することにより前記主翼のピッチ角が設定値から変化し、
前記補助翼が風を受けないときには前記バネの付勢力により前記主翼のピッチ角が設定値となる請求項1に記載の風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項3】
前記主翼軸に取り付けられ且つ外周部にストッパ用ノッチが形成された偏心カムと、
前記偏心カムの外周部に対して付勢されるように前記支持部材に支持されたスプリングプランジャと
を備え、突風を受けたときに前記主翼軸と共に前記偏心カムが回転して前記スプリングプランジャが前記偏心カムのストッパ用ノッチに係合することにより前記主翼のピッチ角が所定の角度に固定される請求項1または2に記載の風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項4】
前記バネは、前記支持部材の内部に設けられている、請求項2に記載の風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項5】
2つの前記主翼軸を有し、各主翼軸は、ブレードピッチ角連動同調リンクによって接続されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項6】
前記主翼のピッチ角を最適ピッチに調整するための第1ストッパを有し、前記主翼のピッチ角を最大角度に維持するための第2ストッパを有する、請求項5に記載の風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項1】
主翼で風を受けて出力軸を回転させる風力発電用のプロペラ型タービン装置において、
前記出力軸に固定され且つ前記出力軸と共に回転する支持部材と、
前記支持部材に回転可能に支持された主翼軸を有する主翼と、
前記主翼に連結され且つ風を受けて回転するときに前記主翼に前記主翼軸の周りのモーメントを発生させるための補助翼と
を備え、風力に応じて前記補助翼により前記主翼に発生する前記主翼軸の周りのモーメントの大きさが変化し、前記主翼のピッチ角が風力と前記出力軸の回転数に応じて自動的に調整されることを特徴とする風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項2】
前記主翼のピッチ角が設定値となるように前記支持部材に対して前記主翼を付勢するバネを備え、
前記補助翼が風を受けて回転するときに前記補助翼に発生する揚力に起因して前記バネの付勢力に抗して前記主翼が前記主翼軸の周りに回転することにより前記主翼のピッチ角が設定値から変化し、
前記補助翼が風を受けないときには前記バネの付勢力により前記主翼のピッチ角が設定値となる請求項1に記載の風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項3】
前記主翼軸に取り付けられ且つ外周部にストッパ用ノッチが形成された偏心カムと、
前記偏心カムの外周部に対して付勢されるように前記支持部材に支持されたスプリングプランジャと
を備え、突風を受けたときに前記主翼軸と共に前記偏心カムが回転して前記スプリングプランジャが前記偏心カムのストッパ用ノッチに係合することにより前記主翼のピッチ角が所定の角度に固定される請求項1または2に記載の風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項4】
前記バネは、前記支持部材の内部に設けられている、請求項2に記載の風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項5】
2つの前記主翼軸を有し、各主翼軸は、ブレードピッチ角連動同調リンクによって接続されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の風力発電用プロペラ型タービン装置。
【請求項6】
前記主翼のピッチ角を最適ピッチに調整するための第1ストッパを有し、前記主翼のピッチ角を最大角度に維持するための第2ストッパを有する、請求項5に記載の風力発電用プロペラ型タービン装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2009−257310(P2009−257310A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299832(P2008−299832)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(504193837)国立大学法人室蘭工業大学 (70)
【出願人】(594091097)株式会社今組 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(504193837)国立大学法人室蘭工業大学 (70)
【出願人】(594091097)株式会社今組 (1)
【Fターム(参考)】
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