説明

風力発電装置及び方法並びにプログラム

【課題】電力系統の低電圧事象の発生後の電力系統の復帰時における有効電力の落ち込み及び無効電力消費を抑制すること。
【解決手段】風力によって回転する風車ロータハブ11と、風車ロータハブ11の回転により駆動される固定速方式の誘導発電機13と、風車ロータハブ11の回転を制動させるブレーキ20とを備え、電力系統15に連系される風力発電装置1であって、電力系統15の電圧が第1閾値より小さくなった場合に低電圧事象が発生したと判断し、誘導発電機13の回転数を、同期速度と定格出力が得られる誘導発電機13の回転数との間の回転数となるようブレーキ20を制御する制御部18を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力発電装置及び方法並びにプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、風力発電設備の電力系統連系要件のガイドラインが整備されており、設置される風力発電装置は、連系要件に適合させる必要がある。また、電力系統の事故発生に伴い、短時間の電力系統の低電圧事象が発生した場合に、風力発電装置を電力系統側から解列させずに、電力系統に及ぼす影響を最小限に抑える運用、即ち、LVRT(Low Voltage Ride Through)に対応する機能が要求されている。
【0003】
例えば、電力系統側の事故発生に伴って電力系統の電圧が低下する低電圧事象が発生すると、風力発電装置の発電機は、負荷がなくなることにより回転数が上昇するが、所定量以上回転数が上昇すると風力発電装置が故障するので、所定の回転速度に制御し故障を防ぐ技術が検討されている。
下記特許文献1には、電力系統の事故発生時には、風車ブレードのピッチ角を制御して事故に伴う発電機の過回転を防止し、また、電力系統の電圧値が事故前の状態に復帰した場合には、ピッチ角を制御して回転速度を運転可能領域内に制御し、運転再開までの時間を短縮する技術が提案されている。
【0004】
また、例えば、電力系統の電圧が低下した状態から回復すると、そのときのすべりに応じて大きな電流が流れるとともに大きなトルクが発生し、機器への荷重が大きくかかるので、発電機の回転数が同期回転数またはそれ以上となるように風車ブレードのピッチ角を制御して、コンバータ及びインバータの制御が再開されたときに生じる大きなトルク発生、或いは、反負荷トルクの発生を防止する技術が提案されている(下記特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−35418号公報
【特許文献2】国際公開第2010/095248号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び上記特許文献2の方法のようにピッチ角制御による回転数制御を行う場合には、電力系統の電圧値が事故前の状態に復帰した時点で、風車ブレードがフェザー側(風を逃がす側)にあるので、図7(b)実線で示されるように、有効電力値の落ち込みが生じるという問題があった。
また、電力系統の電圧値の復帰時において、過回転に起因して、固定速方式で誘導発電機を搭載している風力発電装置では誘導発電機が消費する無効電力が、図7(b)の点線で示されるように、多くなる。このような場合には、風力発電装置と電力系統との連系点の電圧は、電力系統側から見て結果的に低下することとなり、図7(a)の実線で示されるように、電力系統の電圧値(図7(a)の点線)まで上がりきらない。従来は、こうした無効電力消費を抑制する方法がなく、無効電力の消費を抑制することができないという問題点があった。さらに、風車ブレードのピッチ角制御による回転数の制御は、応答速度が遅いのでLVRTのような瞬時に発生する低電圧事象に対しては、不向きであった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、電力系統の低電圧事象の発生後、電力系統の電圧値の復帰時における有効電力の落ち込み、及び無効電力消費を抑制できる風力発電装置及び方法並びにプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明は、風力によって回転するロータと、前記ロータの回転により駆動される固定速方式の誘導発電機と、前記ロータの回転を制動させるブレーキとを備え、電力系統に連系される風力発電装置であって、前記電力系統の電圧が第1閾値より小さくなった場合に低電圧事象が発生したと判断し、前記誘導発電機の回転数を、同期速度と定格出力が得られる前記誘導発電機の回転数との間の回転数となるよう前記ブレーキを制御する制御手段を具備する風力発電装置を提供する。
【0009】
このような構成によれば、風力によって回転するロータの回転を制動させるブレーキを制御する制御手段は、電力系統の電圧が第1閾値より小さくなった場合に低電圧事象が発生したと判断して、ロータの回転数を、同期速度と定格出力が得られる誘導発電機の回転数との間の回転数となるようにブレーキを制御する。
このように、誘導発電機の回転数は、風力発電装置の軸に設けられるロータの回転を制動させるブレーキを用いて制御するので、発電機回転数が上昇することにより発生する無効電力の消費を抑制でき、電力系統と風力発電装置との連系点における電圧の速やかな復帰に寄与できる。また、風車ブレードのピッチ角によって回転数制御する場合にはピッチ角をフェザー側にしているが、本発明ではピッチ角による回転数制御をしていないので、電力系統の電圧が復帰した場合における有効電力の落ち込みを低減できる。さらに、発電機回転数を風車ブレードのピッチ角制御によって制御する場合と比較して、電力系統が復帰した場合において、連系点における電圧復帰にかかる時間を短縮することができる。制御手段によって制御される発電機回転数は、好ましくは略同期速度である。
【0010】
上記風力発電装置の前記制御手段は、前記ブレーキをオンオフ制御することにより前記誘導発電機の回転数を制御することとしてもよい。
オンオフ制御により簡便に発電機回転数を制御できる。
【0011】
上記風力発電装置の前記制御手段は、同期速度と定格出力が得られる前記誘導発電機の回転数との間の回転数の範囲で設定された目標回転数に、前記誘導発電機の回転数が一致するようにフィードバック制御することとしてもよい。
発電機回転数を目標回転数に一致するようにフィードバック制御することにより発電機回転数を精度よく制御できるので、オンオフ制御する場合と比較して、無効電力消費の抑制及び有効電力の復帰を効果的に行える。
【0012】
上記風力発電装置は、前記誘導発電機と前記電力系統との間に電力調整手段を具備し、前記電力調整手段は、前記電力系統の前記低電圧事象が発生した後に、前記電力系統の電圧値が第2閾値より大きくなった場合に系統復帰したと判断し、当該風力発電装置の出力電力値が、前記低電圧事象が発生する直前の電力値となるように電力調整することとしてもよい。
【0013】
例えば、系統復帰後において風速の低下が生じた場合であっても、低電圧事象直前の電力値となるように電力調整される。或いは、低電圧事象の後、電圧復帰し、その後に風速が弱くなる事態が発生すると、電力系統側に供給される電力は減少増大減少と、不安定な状態となるが、電力調整手段により電力調整されることにより電力系統側に安定した出力が供給される。
また、低電圧事象後の電圧復帰を加速するために、電力調整手段により無効電力を供給することとしてもよい。
【0014】
上記風力発電装置の前記電力調整手段は、蓄電できる電力貯蔵装置であることとしてもよい。
電力貯蔵装置によって、電力調整を簡便に行うことができる。また、電力貯蔵装置は、例えば、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池等の二次電池である。
【0015】
上記風力発電装置の前記電力貯蔵装置は、前記制御手段に電力を供給することとしてもよい。
電力貯蔵装置に蓄電された電力を制御手段の電源として使用でき、電力を有効活用することができる。
【0016】
本発明は、風力によって回転するロータと、前記ロータの回転により駆動される固定速方式の誘導発電機と、前記ロータの回転を制動させるブレーキとを備え、電力系統に連系される風力発電装置の制御方法であって、前記電力系統の電圧が第1閾値より小さくなった場合に低電圧事象が発生したと判断し、前記誘導発電機の回転数を、同期速度と定格出力が得られる前記誘導発電機の回転数との間の回転数となるよう前記ブレーキを制御する風力発電装置の制御方法を提供する。
【0017】
本発明は、風力によって回転するロータと、前記ロータの回転により駆動される固定速方式の誘導発電機と、前記ロータの回転を制動させるブレーキとを備え、電力系統に連系される風力発電装置の制御プログラムであって、前記電力系統の電圧が第1閾値より小さくなった場合に低電圧事象が発生したと判断し、前記誘導発電機の回転数を、同期速度と定格出力が得られる前記誘導発電機の回転数との間の回転数となるよう前記ブレーキを制御することをコンピュータに実行させるための風力発電装置の制御プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、電力系統の低電圧事象の発生後、電力系統の電圧値の復帰時における有効電力の落ち込み、及び無効電力消費を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る風力発電装置の概略構成を示した図である。
【図2】第1の実施形態に係る回転数制御をした場合の(a)系統電圧と連系点電圧の傾向、(b)発電機から供給される有効電力と無効電力の傾向、(c)発電機回転数の傾向の一例を示した図である。
【図3】第1の実施形態に係る制御部の動作フローである。
【図4】本発明の第3の実施形態に係る風力発電装置の概略構成を示した図である。
【図5】電圧復帰後に風速が低下した場合において、発電機から供給される有効電力と無効電力の傾向の一例を示した図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る回転数制御をした場合の(a)系統電圧と連系点電圧の傾向、(b)発電機から供給される有効電力と無効電力の傾向、(c)発電機回転数の傾向の一例を示した図である。
【図7】従来の制御の場合の(a)系統電圧と連系点電圧の傾向、(b)発電機から供給される有効電力と無効電力の傾向、(c)発電機回転数の傾向を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔第1の実施形態〕
以下に、本発明に係る風力発電装置及び方法並びにプログラムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0021】
図1は、本実施形態に係る風力発電装置1の概略構成を示したブロック図である。図1に示されるように、本実施形態に係る風力発電装置1は、風車ブレード10、風車ロータハブ(ロータ)11、ギア12、発電機(誘導発電機)13、電磁弁14、油圧ポンプ19、電圧計9、制御部(制御手段)18、及びブレーキ20を備えており、連系点Yにおいて電力系統15と接続(連系)されている。
風車ブレード10は、風車ロータハブ11に複数枚が放射状に取り付けられている。風車ロータハブ11の主軸には、所定の変速比を持ったギア12を介して発電機13が接続されており、機械的に連結され、一体に回転可能となっている。
【0022】
したがって、風車ブレード10が風力エネルギーを受けて風車ロータハブ11と共に回転し、発電機13を駆動して発電することにより風力エネルギーを電気エネルギーに変換するようになっている。発電機13は、固定速方式の誘導発電機であり、例えば、かご型誘導発電機である。
風力発電装置1と電力系統15との連系点Yの近傍には、電圧計9が設けられている。電圧計9は、連系点Yの電圧を計測し、計測結果を制御部18に出力する。
【0023】
油圧ポンプ19は、図示しないタンク内の作動流体(例えば、作動油)が送り出されるようになっており、送り出された作動流体は、電磁弁14に送り込まれる。
電磁弁14は、制御部18によってオンオフが制御される。電磁弁14は、オン状態である場合に、油圧ポンプ19から送り込まれた作動流体によりブレーキ20を作動させ、オフ状態である場合に、ブレーキ20の作動を解除する。
【0024】
ギア12と発電機13との間には、風車ロータハブ11の回転を制動させるブレーキ20が設けられている。ブレーキ20は、電磁弁14を介して油圧ポンプ19と接続されている。
ブレーキ20は、ブレーキディスク16とブレーキキャリパ17とを備えている。ブレーキディスク16は、風車ロータハブ11と一体に回転するように機械的に連結されている。ブレーキキャリパ17は、ブレーキディスク16と対峙する面に図示しないブレーキパッドを備え、電磁弁14がオン状態となることで供給される作動流体によって、ブレーキキャリパ17がブレーキパッドを介してブレーキディスク16を挟み込み、ブレーキディスク16の回転を制動する。このようにブレーキディスク16の回転を制動することで、風車ロータハブ11の回転を調整させたり、回転を停止させたりする。
【0025】
制御部18は、電力系統15の電圧が第1閾値より小さくなった場合に低電圧事象が発生したと判断し、発電機13の回転数を、同期速度と定格出力が得られる発電機13の回転数との間の回転数となるようブレーキ20を制御する。低電圧事象は、例えば、LVRTで要求される短時間の電圧低下パターンを含む。発電機回転数は、好ましくは略同期速度である。具体的には、制御部18は、電圧計9から取得した電圧計測結果が第1閾値より小さいか否かを判定し、第1閾値より小さい場合には、低電圧事象が発生したことと判定する。
また、制御部18は、ブレーキ20をオンオフ制御することにより発電機13の回転数を制御する。具体的には、制御部18は、電磁弁14に対して、電磁弁14のオンオフ制御信号を出力し、電磁弁14のオンオフ状態の切り替えによって、ブレーキ20をオンオフ制御する。
【0026】
制御部18は、例えば、各種演算処理を実行するCPU(中央演算装置)、基本プログラム等を記憶する読み出し専用のメモリであるROM(Read Only Memory)等の補助記憶装置、CPUの作業領域として機能する読み書き自在のメモリであるRAM(Random Access Memory)等の主記憶装置、及びプログラムや各種データを記憶する記憶装置を有するコンピュータシステムを備えている。制御部18のROMには、例えば、風力発電装置の制御プログラムが格納されている。後述の各種機能を実現するための一連の処理過程は、CPUが演算プログラムをRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより実現される。
【0027】
図2は、ブレーキ制御をした場合の発電機の電圧、電力、回転数の傾向の一例を示す図である。図3は、本実施形態にかかる風力発電装置1の回転数制御にかかるブレーキ制御の過程を示す動作フローである。以下に、図2及び図3を用いて、本実施形態に係る風力発電装置1の作用について説明する。ここでは、発電機13の同期速度は1500〔rpm〕とし、定格出力が得られるすべりが2%である場合を例に挙げて説明する。
制御装置18において、風力発電装置1と電力系統15との連系点Yの電圧値が取得される(ステップSA1)。連系点Yの電圧値が第1閾値(例えば、0.6〔pu〕)より小さいか否かが判定され(ステップSA2)、第1閾値より小さくない場合にはステップSA1に戻り、処理を繰り返す。
【0028】
図2の時刻1〔秒〕の時点で、電力系統15側に低電圧事象が発生し、連系点Yの電圧値が第1閾値より小さくなった場合には、発電機13の回転数の情報を取得し(ステップSA3)、発電機回転数が第3閾値(例えば、1530〔rpm〕(=1500〔rpm〕+1500×2〔%〕))より大きいか否かが判定される(ステップSA6)。発電機回転数が第3閾値より大きくない場合にはステップSA1に戻り、処理を繰り返す。
【0029】
発電機回転数が第3閾値より大きくなった場合(例えば、図2の時刻1.4〔秒〕付近)には、ブレーキ制御がオン状態となり、制御装置18から電磁弁14に対してオンオフ制御信号のオン信号が出力され(ステップSA7)、ステップSA1に戻り、処理を繰り返す。電磁弁14は、取得したオン信号に基づいて弁開度をオン状態に制御し、油圧ポンプ19からの作動流体によりブレーキ20を作動させる。電磁弁14がオン状態となりブレーキ20が駆動される場合には、風車ロータハブ11と共に回転しているブレーキディスク16をブレーキキャリパ17が挟み込み、ブレーキキャリパ17とブレーキディスク16との間の摩擦力により、ブレーキディスク16の回転が減速される。
【0030】
そうすると、図2(c)に示されるように、発電機回転数が1530〔rpm〕まで上がった時点でブレーキ制御されるので、その後回転数が下がる。そしてステップSA1に戻り処理を繰り返す。本実施形態では、図2(c)に示されるように、時刻1.4〔秒〕付近と2.0〔秒〕付近とにおいてブレーキ制御が2回行われており、発電機回転数が略同期速度になるように制御されているので、図2(b)の点線で示されるように発電機13が消費する無効電力が、図7(b)で示される無効電力消費量より低減されている。
【0031】
その後、電力系統の電圧が復帰してくると、図2(a)に示されるように、徐々に系統電圧が上昇し、連系点電圧も上昇する。
また、制御部18は、連系点Yの電圧が第1閾値より小さいか否かを判定するだけでなく、第1閾値より大きい第2閾値(例えば、0.8〔pu〕)より大きいか否かが判定される(ステップSA4)。第2閾値より大きくない場合にはステップSA1に戻り、本処理を繰り返す。連系点Yの電圧値が、第2閾値より大きい場合には、ブレーキ制御がオフ状態とされ(ステップSA5)、本処理を終了する。
【0032】
ブレーキ制御がオフ状態とされる場合には、制御部18から電磁弁14に対し、オンオフ制御信号のオフ信号が出力され、電磁弁14の弁開度はオフ状態とされる。これにより、風車ブレード10は、ブレーキ制御されることなく運転し、また、低電圧事象が発生した時に回転数制御のためのピッチ角制御が行われていないので、図2(b)の実線で示されるように、電圧復帰後に有効電力が落ち込まない。
【0033】
また、連系点Yの電圧が第1閾値より小さい場合であっても、発電機回転数が第4閾値より小さい場合には(ステップSA8)、ブレーキ制御がオフ状態とされ(ステップSA9)、ステップSA1に戻る。
また、図2(a)に示されるように、本実施形態のように、ブレーキ制御によって発電機回転数を制御し、無効電力の消費を抑制することにより、連系点電圧の電圧値が系統電圧の電圧値に精度よく追従する。
【0034】
以上説明してきたように、本実施形態に係る風力発電装置1及びその方法並びにプログラムによれば、風力によって回転する風車ロータハブ11の回転を制動させるブレーキ20を制御する制御部18は、電力系統15の電圧が第1閾値より小さくなった場合に低電圧事象が発生したと判断し、ロータの回転数を、同期速度と定格出力が得られる発電機13の回転数との間の回転数となるようにブレーキ20を制御する。
このように、発電機13の回転数は、風力発電装置1の軸に設けられる風車ロータハブ11の回転を制動させるブレーキ20を用いて制御するので、発電機回転数が上昇することにより発生する無効電力の消費を抑制でき、連系点Yにおける電圧の速やかな復帰に寄与できる。また、風車ブレード10のピッチ角によって回転数制御する場合にはピッチ角をフェザー側にしているが、本発明ではピッチ角による回転数制御をしていないので、電力系統15の電圧が復帰した場合に、有効電力が落ち込まない。
【0035】
さらに、発電機回転数を風車ブレード10のピッチ角制御によって制御する場合には、図7(b)の実線で示されるように有効電力は時刻5〔秒〕付近で定格運転に復帰しているが、本発明では図2(b)の実線で示されるように有効電力は、時刻2.8〔秒〕付近で電力系統の復帰がされた後、約0.5〔秒〕経過後に定格運転に復帰している。このように、ブレーキ制御を行わない場合と比較して、本発明では、電圧復帰にかかる時間を短縮(上記例では、約2〔秒〕)できる。
【0036】
また、本発明は、ピッチ制御機構を持たないストール制御機構を有する風力発電装置に適用してもよい。
【0037】
〔第2の実施形態〕
以下、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る風力発電装置の制御部が、ブレーキをオンオフ制御していたことに代えて、ブレーキをフィードバック制御する点で第1の実施形態と異なる。本実施形態の風力発電装置について、第1の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0038】
制御部は、同期速度と定格出力が得られる発電機の回転数との間の回転数の範囲で設定された目標回転数に、発電機の回転数が一致するようにフィードバック制御(例えば、PID制御、PI制御)する。例えば、風力発電装置の構成として図1の電磁弁14に代えてサーボ弁を用いる。PID制御する場合には、発電機回転数の情報を制御部にフィードバックし、制御部に設けられるPID制御器により、サーボ弁に対する比例制御(P制御)、積分制御(I制御)および微分制御(D制御)に基づく制御量(サーボ弁の開度指令信号)を生成する。制御部は、生成されたサーボ弁の開度指令信号をサーボ弁に出力し、サーボ弁の弁開度を調整することにより、油圧ポンプ側からブレーキ側に流通させる作動流体の流量を段階的に調整する。
このように、発電機回転数を目標回転数に一致するようにフィードバック制御することにより発電機回転数を精度よく制御できるので、無効電力消費の抑制及び有効電力の復帰をオンオフ制御によって制御する場合と比較して、効果的に行える。
【0039】
〔第3の実施形態〕
以下、本発明の第3の実施形態について説明する。本第3の実施形態に係る風力発電装置の概略構成は、図4から図6を用いて説明する。本実施形態は、第1の実施形態に係る風力発電装置の構成に加えて、図4に示されるように、電力調整部(電力調整手段)21を備える点で、第1の実施形態、第2の実施形態と異なる。本実施形態の風力発電御装置1´について、第1の実施形態、第2の実施形態と共通する点については説明を省略し、異なる点について主に説明する。
【0040】
図4に示されるように、風力発電装置1´は、発電機13と電力系統15との間に電力調整部21を備えている。
電力調整部21は、電力系統15の低電圧事象が発生した後に、電力系統15の電圧値が第2閾値より大きくなった場合に系統復帰したと判断し、風力発電装置1´の出力電力値が、低電圧事象が発生する直前の電力値となるように電力調整する。
【0041】
具体的には、電力調整部21は、交流直流変換器212と、蓄電する電力貯蔵装置211とを備えている。
交流直流変換器212は、交流と直流を変換する交流直流変換器であって、例えば、制御部18によって決定された有効電力を電力系統15に供給するには、電力貯蔵装置211に蓄電されている直流電力を交流電力に変換し、変換後の交流電力を電力系統15に出力する。
電力貯蔵装置211は、例えば、リチウムイオン電池、鉛蓄電池、ナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池等の二次電池である。また、電力貯蔵装置21は、電力系統15側に電力を供給することに限られず、制御部18に電力を供給する電力供給源として使用されることとしてもよい。
【0042】
制御部18は、ブレーキ20の制御をした後、連系点Yにおける有効電力値が低電圧事象が発生する直前の値になっているか否かを判定する。例えば、系統復帰の後、風速低下などの事象により出力が低下し、図5のXで示されるように、有効電力値が、低電圧事象が発生する直前の電力値よりも小さくなることがある。このような場合に、制御部18は、電力調整部21から電力系統15側に電力を供給させ、有効電力値を低電圧事象が発生する直前の値まで嵩上げする。これにより、図6(b)に示されるように、電力復帰の後、有効電力の落ち込みが発生しない。
このように、電力貯蔵装置211に蓄電された電力によって有効電力を補うことにより、風速変化などの事象が生じた場合であっても、安定した有効電力が電力系統15側に供給できる。
また、低電圧事象後の電圧復帰を加速するために、電力貯蔵装置211より無効電力を電力系統15側に供給することもできる。これにより、より電力系統電圧を安定化できる。
【符号の説明】
【0043】
1、1´ 風力発電装置
13 発電機(誘導発電機)
15 電力系統
16 ブレーキディスク
17 ブレーキキャリパ
18 制御部(制御手段)
20 ブレーキ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力によって回転するロータと、前記ロータの回転により駆動される固定速方式の誘導発電機と、前記ロータの回転を制動させるブレーキとを備え、電力系統に連系される風力発電装置であって、
前記電力系統の電圧が第1閾値より小さくなった場合に低電圧事象が発生したと判断し、前記誘導発電機の回転数を、同期速度と定格出力が得られる前記誘導発電機の回転数との間の回転数となるよう前記ブレーキを制御する制御手段を具備する風力発電装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記ブレーキをオンオフ制御することにより前記誘導発電機の回転数を制御する請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項3】
前記制御手段は、同期速度と定格出力が得られる前記誘導発電機の回転数との間の回転数の範囲で設定された目標回転数に、前記誘導発電機の回転数が一致するようにフィードバック制御する請求項1に記載の風力発電装置。
【請求項4】
前記誘導発電機と前記電力系統との間に電力調整手段を具備し、
前記電力調整手段は、前記電力系統の前記低電圧事象が発生した後に、前記電力系統の電圧値が第2閾値より大きくなった場合に系統復帰したと判断し、当該風力発電装置の出力電力値が、前記低電圧事象が発生する直前の電力値となるように電力調整する請求項1から請求項3のいずれかに記載の風力発電装置。
【請求項5】
前記電力調整手段は、蓄電できる電力貯蔵装置である請求項4に記載の風力発電装置。
【請求項6】
前記電力貯蔵装置は、前記制御手段に電力を供給する請求項5に記載の風力発電装置。
【請求項7】
風力によって回転するロータと、前記ロータの回転により駆動される固定速方式の誘導発電機と、前記ロータの回転を制動させるブレーキとを備え、電力系統に連系される風力発電装置の制御方法であって、
前記電力系統の電圧が第1閾値より小さくなった場合に低電圧事象が発生したと判断し、前記誘導発電機の回転数を、同期速度と定格出力が得られる前記誘導発電機の回転数との間の回転数となるよう前記ブレーキを制御する風力発電装置の制御方法。
【請求項8】
風力によって回転するロータと、前記ロータの回転により駆動される固定速方式の誘導発電機と、前記ロータの回転を制動させるブレーキとを備え、電力系統に連系される風力発電装置の制御プログラムであって、
前記電力系統の電圧が第1閾値より小さくなった場合に低電圧事象が発生したと判断し、前記誘導発電機の回転数を、同期速度と定格出力が得られる前記誘導発電機の回転数との間の回転数となるよう前記ブレーキを制御することをコンピュータに実行させるための風力発電装置の制御プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−106437(P2013−106437A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248826(P2011−248826)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】