説明

駆動システムの振動ダンパー装置

2つの回転自在取付部材(1、4)を有する、駆動システムの振動ダンパー装置(17)であって、前記2つの回転自在取付部材(1、4)に対応して固定されたベアリングキャリア(3)、前記2つの回転自在取付部材(1、4)間の回転運動を減衰および伝達するダンピング要素(12、13、14、15)を備える、駆動システムの振動ダンパー装置(17)が提案される。摩滅が生じることを回避又は低減するために、回転ベアリング(2、5)が、前記2つの回転自在取付部材(1、4)のそれぞれと、前記固定されたベアリングキャリア(3)との間に備えられ、前記部材(1、4)の一方が該部材(1、4)の他方から独立して前記固定されたベアリングキャリア(3)上に取り付けられるように、前記回転ベアリングが用いられる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、請求項1のプレアンブルに沿った駆動システムの振動ダンパー装置に関する。
[従来技術]
駆動システムの振動ダンパー装置は、他の実施形態にて周知である。度々、回転可能な配列において、駆動側が、所定の最大回転角度の範囲内にて、減衰効果を発揮するダンピング要素によって、被駆動側に連結される。ここでは、様々なダンピング要素を提供し、弱いトルクと強いトルクの両方を伝達するという解決方法が知られている。しかし、動きを伝達する際、このタイプの振動ダンパー配列は、動作中において、様々な作用を及ぼす強い力や振動にさらされる。
[本発明の課題と効果]
本発明の課題は、駆動システムの振動ダンパー装置を提供することであり、特に、燃焼機関を有する自動車において補助ユニットを駆動する駆動システムの振動ダンパー装置を提供することである。また、本装置が摩耗したとしても、本装置の機能効率は比較的下がりにくい。
【0002】
この課題は、請求項1の特徴事項を有する振動ダンパー装置の長所によって、達成される。
本発明の有利、かつ目的に適った変形例は、従属請求項にて説明される。
【0003】
本発明は、2つの回転自在取付部材、前記回転自在取付部材に対応して固定されたベアリングキャリア、前記2つの回転自在取付部材間の回転運動を減衰および伝達するダンピング要素を有する、駆動システムの振動ダンパー装置に基づく。本発明の核心は、回転ベアリングが、前記2つの回転自在取付部材のそれぞれと、前記固定されたベアリングキャリアとの間に備えられ、前記部材の一方が該部材の他方から独立して前記固定されたベアリングキャリア上に取り付けられるように、前記回転ベアリングが用いられることにある。
【0004】
これは、各回転自在取付部材の場合について、それぞれの回転ベアリング(例えば、ベアリングリング)の一方が、動作中に回転自在取付部材のそれぞれと同時に回転すると、それぞれの回転ベアリングの他方が、固定されたベアリングキャリア内で回転不能となることを意味する。これら2つの回転自在取付部材が結合している結果、回転ベアリングの両方が、駆動作動中に動き始める。よって、これら回転自在な部材を別々に取り付けることにより、回転式ベアリングが回転しない状態が発生しないという実質的な効果が保証され、結果、この構造の特徴により、機能効率を損なわせ得る損傷が、効果的に回避される。
【0005】
この効果は、2つの回転自在取付部材が、同心状に、互いの上に直接取り付けられ、互いに対して回転可能であるという配置と比較すると、明らかである。理由は、回転自在な部材が互いの上に直接取り付けられるというこのタイプの配列においては、比較的小さい回転運動のみが、減衰結合の結果、2つの回転自在な部材の間に配置されたベアリング内の中心位置周りに発生するからである。これにより、長期に渡って使用した場合、中間に位置するベアリングの対応する箇所において、ベアリング部材が摩耗し、変形してしまう。
【0006】
本発明による、振動ダンパー装置の他の効果は、2つの回転自在取付部材間でトルクを伝達する力のみが、ダンピング要素に作用し、ベアリング力が、回転自在取付部材の回転ベアリングにより主に吸収され、固定されたベアリングキャリア上でも吸収される、という点にある。負荷の低減により、ダンピング要素の機能が、より長期に渡って効果的に維持され得る。それとは反対に、互いに同心状に配置された、回転自在取付部材の2つの回転部材の間に、ダンピング要素が配置された、振動ダンパー装置に、静的駆動力と動的駆動力の両方が荷重を及ぼす。よって、回転運動の間、静的荷重が、動的荷重と同様に、ある程度、ダンピング要素に作用する。
【0007】
本装置の好ましい実施形態では、部材それぞれが、固定されたベアリングキャリア上に直接取り付けられる。これにより、ベアリングキャリアが、少ない部品から組み立てられ、例えば、一部品により組立て可能である。
【0008】
本発明の他の好ましい実施形態では、ストッパーが、回転自在取付部材の間に設けられる。これにより、大きな駆動トルクを伝達可能であるという効果がもたらされる。ここで、機械的なストッパーにより、2つの回転自在取付部材間の所定の最大回転角度を決めることができる。また、過剰に負荷がかかる場合、このタイプのストッパーを解除し、2つの回転自在取付部材の結合が切断されるように、機械的なストッパーを過剰トルク用に用いることも可能である。
【0009】
本発明の同様な好ましい実施形態では、回転自在取付部材のうち少なくとも1つが、ベルトプーリーである。結果として、回転自在取付部材のうち少なくとも1つが、その大きさや重さの点で、駆動システムの部材の条件、特に、ベルトドライブの条件に適合する。
【0010】
好ましくは、回転自在取付部材が、他の部品を取り付け可能なフランジを有している。これにより、例えば、他の駆動部材など、他の部材を取り付けることで、この種の振動ダンパー装置は、他のアプリケーションにも容易に適応可能である、という効果がもたらされる。
【0011】
振動ダンパー装置の他の好ましい実施形態では、ベアリングキャリアのベアリング受け部材が、回転可能に取り付けられる。これにより、例えば、メンテナンス作業の目的で、ベアリング受け部材をさらにもう少し回転させることもでき、結果、片側で発生する摩耗や、回転ベアリング内での沈着が回避される。
【0012】
さらに好ましくは、第1の回転自在取付部材の回転シャフトが、第2の回転自在取付部材の中央穴の内部に突出する。これにより、回転運動の減衰および伝達を許容するために、少なくとも回転自在取付部材の複数のダンピング要素が、1つが他に径方向にかみ合って係合するように、第2の回転自在取付部材、または、第2の部材に配列するオプションがもたらされる。
【0013】
特に好ましくは、第1の回転自在取付部材の回転シャフトが、第2の回転自在取付部材の中央穴の内部に延在する。これにより、複数のダンピング要素が、回転自在取付部材上にて、中央穴に左右に係合でき、または、その部分の中に係合できるという効果がもたらされる。その際、大きい径の箇所で係合するので、より小さい力がダンピング要素に及ぼされる。
【0014】
好ましくは、回転自在取付部材の回転シャフトが、第2部材の回転軸に対して、同心状に配置される。これにより、装置が簡素で費用対効果のある構造となる。さらには、こういったタイプの構造の場合、二つの回転自在取付部材の回転中の摩擦力をより容易に回避できる。
【0015】
本発明の他の好ましい実施形態では、回転自在取付部材の第1の部材に取り付けられた前記ダンピング要素が、前記第2の回転自在取付部材の前記ダンピング要素と磁力により協働する。これにより、例えば、駆動システムの作動の遊びを無くすのに、比較的小さいトルクを適用できる。
【0016】
本発明による振動ダンパー装置は、実施される駆動システムのタイプに関して、特に要件を求めない。よって、本発明は、けん引機構装置、例えば、駆動ベルト駆動システム、つまりチェーン式駆動システム、または、摩擦ギヤを含むギヤ機構にて使用可能である。
[例示的実施形態]
本発明による振動ダンパー装置の例示的実施形態を、図面を参照して説明する。また、本発明の更なる特徴や効果も説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明による振動ダンパー装置の概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態の一例として、図1は、駆動ベルトを介して燃焼機関により駆動される、回転振動ダンパー17を示す。エンジン、および、ベルトは、図1に示されていない。駆動ベルトは、テンションアーム3上にベアリング2を介して取り付けられるベルトプーリー1によって、駆動される。ベアリングポイント2は、軸方向の力、および、径方向の力を吸収する。シャフト4は、この配列において、フランジ6と共に、第2の回転自在取付部材を形成する。回転自在取付部材は、ここに示す配列とは異なる方法として、テンションアームの片側だけに取り付けることも可能である。
【0019】
ドライブシャフト4は、テンションアーム3内に、ベアリング5を介して、ほぼ直接的に取り付けられる。そうすることで、ベアリングポイント5もまた、この配列の軸方向の力、および、径方向の力の両方を吸収する。駆動フランジ6は、前方に取り付けられ、および/または、ドライブシャフト4上で摩擦係合する。ねじ8によりねじ締めされたワッシャー7を用いることで、ドライブシャフト4の位置がベアリング5を介して固定される。さらに、ベアリング2および5は、固定リング9、10、および11によって、軸方向の位置が固定される。
【0020】
ベルトプーリー1は、複数の円状凹部を有し、ねじコネクション16によってドライブシャフト4上に取り付けられる、複数のストップセグメント15が、その円状凹部内に突き出ている。各凹部の内径は、各ストップセグメント15の外径より大きいか、または、円形弓状に広げられてもよい。結果、凹部14、および、ストップセグメント15によって、ベルトプーリー1と駆動フランジ6との間の到達可能な最大回転角度が決まる。ストップセグメント15は、筒状表面がゴムでコーティングされており、減衰作用を伴って凹部の内側縁に当接する。
【0021】
更に、複数の磁石13が、ドライブシャフト4に取り付けられ、複数の磁石12が、磁石13にそれぞれ対面して、ベルトプーリー1に配列される。磁石12と磁石13の間に生成される吸引力によって、ストップ部材16の所定の好ましい位置が、凹部14内でのそれらの回転能力に応じて決まる。このように、回転式振動ダンパー17は、駆動システムからの嫌な伝達ノイズを低減、または防止するために、たとえば歯面が接触をもたらし得ることで、比較的小さなトルクを伝達可能である。
[参照符号]
1 ベルトプーリー
2 ベアリング
3 テンションアーム
4 ドライブシャフト
5 ベアリング
6 駆動フランジ
7 ワッシャー
8 ねじ
9 固定リング
10 固定リング
11 固定リング
12 磁石
13 磁石
14 凹部
15 ストップセグメント
16 ねじコネクション
17 回転式振動ダンパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの回転自在取付部材(1、4)を有する、駆動システムの振動ダンパー装置(17)であって、
前記2つの回転自在取付部材(1、4)に対応して固定されたベアリングキャリア(3)、前記2つの回転自在取付部材(1、4)間の回転運動を減衰および伝達するダンピング要素(12、13、14、15)を備える、駆動システムの振動ダンパー装置(17)において、
回転ベアリング(2、5)が、前記2つの回転自在取付部材(1、4)のそれぞれと、前記固定されたベアリングキャリア(3)との間に備えられ、
前記部材(1、4)の一方が、該部材(1、4)の他方から独立して、前記固定されたベアリングキャリア(3)上に取り付けられるように、前記回転ベアリングが用いられることを特徴とする、駆動システムの振動ダンパー装置(17)。
【請求項2】
前記部材(1、4)がそれぞれ、前記固定されたベアリングキャリア(3)上に直接取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の振動ダンパー装置(17)。
【請求項3】
ストッパー(14、15)が、前記回転自在取付部材(1、4)の間に設けられることを特徴とする、請求項1または2に記載の振動ダンパー装置(17)。
【請求項4】
前記回転自在取付部材(1、4)のうち少なくとも1つが、ベルトプーリーであることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の振動ダンパー装置(17)。
【請求項5】
前記回転自在取付部材(1、4)のうち少なくとも1つが、他の部品を取り付け可能なフランジ(6)を有することを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の振動ダンパー装置(17)。
【請求項6】
前記ベアリングキャリア(3)のベアリング受け部材が回転可能に取り付けられることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の振動ダンパー装置(17)。
【請求項7】
第1の前記回転自在取付部材(4)の回転シャフト(4)が、第2の前記回転自在取付部材(1)の中央穴の内部に突出することを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の振動ダンパー装置(17)。
【請求項8】
第1の前記回転自在取付部材(4)の回転シャフト(4)が、第2の前記回転自在取付部材(1)の中央穴の内部に延在することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の振動ダンパー装置(17)。
【請求項9】
回転シャフト(4)が、第2の前記部材(1)の回転軸に対して同心状に配置されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の振動ダンパー装置(17)。
【請求項10】
2つの前記回転自在取付部材(1、4)の第1の部材に連結される前記ダンピング要素 (12、13)が、第2の前記回転自在取付部材(1、4)の前記ダンピング要素(12、13)と磁力により協働することを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の振動ダンパー装置(17)。
【請求項11】
前記駆動システムがけん引機構装置であることを特徴とする、請求項1から10のいずれか1項に記載の振動ダンパー装置(17)。
【請求項12】
前記駆動システムがギヤ機構であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか1項に記載の振動ダンパー装置(17)。

【図1】
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【公表番号】特表2013−508631(P2013−508631A)
【公表日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534573(P2012−534573)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/006311
【国際公開番号】WO2011/047807
【国際公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(512103538)ケンドリオン リニッヒ ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】