説明

駆動制御装置と制御方法及び画像形成装置

【課題】 回転体駆動もしくは回転体を介して駆動されるベルト駆動系に付加し、駆動系の負荷トルクや張力を制御するための駆動制御装置を提供する。
【解決手段】 回転機構8もしくはこの回転機構を介して駆動されるベルト機構1と、前記回転機構8もしくはベルト機構1を駆動する第1の電動機5と、所定の目標速度もしくは目標位置に応じて前記第1の電動機5を制御する第1の制御部13とこの第1の制御部13からの出力に応じて第1の電動機5を駆動する第1のモータドライバ14から構成される駆動制御装置において、前記回転機構8もしくはベルト機構1に前記第1の電動機5とは異なる駆動力を伝達する第2の電動機6を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置の感光体(回転体・ベルト)駆動、中間体(回転体・ベルト)駆動、ベルト搬送を使用したインクジェットプリンタ、その他ギヤ伝達系、軽負荷のフィルムや紙搬送等の回転体駆動系もしくは回転体を介して駆動されるベルト駆動系の駆動制御装置と制御方法、及びこれらの駆動制御装置と制御方法を備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、画像形成装置の感光体(回転体・ベルト)駆動、中間体(回転体・ベルト)駆動、ベルト搬送を使用したインクジェットプリンタ、その他ギヤ伝達系、軽負荷のフィルムや紙搬送等の回転体駆動系もしくは回転体を介して駆動されるベルト駆動系を駆動する駆動制御装置および方法が提案されている(例えば特許文献1乃至4参照)。
特許文献1には、入り側ロールと出側ロールに独立した電動機を備えたブランドルと、前記電動機の速度制御に関するブランドル設備のライン速度制御方法および装置が開示されている。
特許文献2には、トナー像担持体(感光体)の速度変動による画像劣化を防止するため、回転速度変動抑制手段(発電機)を備えた画像形成装置が開示されている。
特許文献3には、感光体ドラムや転写材搬送ベルト駆動ローラ等の回転駆動系に、負荷発生手段(パウダーブレーキまたはヒステリシスブレーキ)を付加し、回転ムラを抑える駆動制御装置およびこれを備えた画像形成装置が開示されている。
特許文献4には、中間転写体に転写動作時とは別の負荷を作用させる構成を設け、負荷変動を抑えることにより回転ムラを防止する画像形成装置が開示されている。
【0003】
特許文献1には、ブランドル設備の入り側ロールと出側ロールに独立駆動する電動機を備え、電動機の速度を制御する。また、入り側ロールと出側ロールとの間の鋼板の張力値を入り側張力設備と出側張力設備の張力値の平均値より小さくするように電動機の速度制御するようにしている。
このような特許文献1の技術では、入り側と出側に設けられた電動機を所定の方法で速度制御し、入り側もしくは出側一方の電動機を基準として、残る一方(従動側)の電動機に鋼板に加わる張力を考慮したトルク指令を加える(フィードフォワード)方法および設備に関するものである。
しかしながら、鋼板の表面処理設備であるブランドル設備は、ブランドル設備の入り側出側の両ロールの電動機を速度制御する形態である。このため、従動側の電動機の制御は速度制御に加えて鋼板の張力を考慮したトルクの補正制御を行う必要があることから、複雑な制御設備および制御方法が必要になる。
また、重量が大きな鋼板を搬送するブランドル設備では、搬送に必要な力を入り側出側の両ロールで分担する必要があるため、両ロールを速度制御する必要があると考えられるが、負荷トルクを発生させるための手段として複雑な装置や制御方法が必要になる。
また、画像形成装置において、画像品質を低下させる原因の1つとして、回転体やベルトからなる感光体や中間体に加わる外乱により発生する駆動系の回転ムラがある。前記外乱は給紙時の紙突入や、クリーニング装置の接離動作等によって発生する負荷変動である。負荷変動は駆動系の電動機に対しトルク外乱として印加され回転ムラを発生させる。これら外乱の影響を抑える従来例としてイナーシャを大きくする方法があるが、イナーシャを大きくすると装置全体が大きく重くなる問題と、外乱以外の回転変動成分である偏心成分を抑制しようとしても駆動系の目標追従性能が低下してしまう問題がある。
特に、高速化を目指すカラー画像形成装置の場合、4色分の感光体と1つの中間体とそれぞれの駆動機構から構成される場合が多いため、それぞれの駆動系の小型化が望まれている。
そこで、イナーシャを大きくする従来方法の不具合を改善する方法として、特許文献2、3および4の技術が提案されている。
【0004】
特許文献2は、画像形成装置の駆動系において、駆動系に取り付けられた発電機によって発電し、発電機の電力を抵抗で消費することにより定常負荷を与えるようにしている。例えば、給紙等による外乱が前記駆動系に加わると、駆動系の回転数が低減し、発電量が低減することにより発電機による負荷は低減する。これにより、負荷変動による回転速度を抑制するようにしている。
しかしながら、特許文献2は、駆動系が動くことによって負荷トルクを発生するように構成されている。このため、ギヤのバックラッシュ防止やベルトの張力を一定にするための負荷を与えるには駆動系を動かすことが必要になる。また、負荷トルクを一定に制御するためには回転数に合わせた抵抗値の選定が必要になる。
特許文献3は、駆動制御装置にパウダーブレーキもしくはヒステリシスブレーキからなる負荷発生手段を備えることにより定常負荷を与える装置に関する技術である。これにより、PWM駆動される駆動源の特性の良い条件下で使用でき、負荷変動に対して制御性能の向上を図るようにしている。
しかしながら、特許文献3は、特許文献2と同様に、駆動系が動くことによって負荷トルクが発生するようにしているため、ギヤのバックラッシュ防止やベルトの張力を一定にするために負荷を与えるには駆動系を動かすことが必要になる。
また特許文献3に開示されている画像形成装置は、中間転写体に転写動作時と別の負荷を作用させる構成を設け、クリーニング装置の接離によって発生する負荷変動を抑えることにより回転ムラを防止するようにしている。
しかしながら、特許文献3では、摩擦部材を使用し機械的に負荷を与えるものであるため、経時的な変化に対して弱い。また、機構的に負荷を切り換えることから、機械的な時定数は遅く、切り換えの瞬間に負荷の過渡的な状態が発生してしまうため、負荷変動による回転ムラが発生してしまう。加えて、給紙時の紙突入の負荷変動に対しては対応できないという問題点があった。
【特許文献1】特許第3199192号
【特許文献2】特開平11−119592号公報
【特許文献3】特開2000−224878公報
【特許文献4】特開2002−296872公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図8は、従来の画像形成装置の感光体、中間転写体、紙搬送機構に使用されているベルト駆動制御装置の主たる要素を取り出して示す簡易図である。ベルト4は駆動ローラ1、従動ローラ2、テンションローラ3によって支持され、駆動モータ5により駆動ローラ1を駆動することによって、ベルト4は所定の方向へ駆動される。
テンションローラ3は、ばね等の弾性体で支持され、駆動力の伝達率の向上およびベルトのたわみや寄りを防止するために、ベルトに所定の張力を与えるように押し付けられる。
図8は、駆動モータ5と駆動軸の間に減速機構は入っていないダイレクトドライブの形式であるが、歯車やタイミングベルトとプーリを使用した減速機構を使用する形式もある。駆動モータ5には、DCブラシ付モータ、DCブラシレスモータ、ステッピングモータ等、速度を変更できるモータが使用される。
図9は従来の画像形成装置の感光体、中間転写体に使用されている回転体駆動制御装置の主たる要素を取り出して示す簡易図である。駆動モータ10が発生した駆動力は、歯車8、9からなる減速機構を介して回転体7を駆動する。
図9の減速機構は、歯車によるものであるが、タイミングベルトとプーリを使用した減速機構の形式もある。駆動モータ10には、DCブラシ付モータ、DCブラシレスモータ、ステッピングモータ等、速度を変更できるモータが使用される。
図8及び図9の駆動制御装置は、駆動モータ5もしくは駆動モータ10のみで、装置を駆動できる軽負荷下で使用される駆動制御機構である。画像形成装置の他の応用例としては、テープやフィルム等の生産装置、あるいは駆動装置、印刷機等がある。
従来、ベルト駆動制御系では伝達率の向上およびベルトの撓みや寄りを防止するために、ばね等の弾性体で支持された回転体等を押し付けることによって、所定の張力を与えている。
しかし、ばね力はばねの変形量で決まるため、過渡的状態や経時的なことからベルトの伸びが発生すると、初期の張力からの誤差が生じてしまうという問題がある。また、張力の変動は駆動系の負荷の変動にも繋がるため、回転速度の誤差も発生してしまう。
そこで、本発明の目的は、上述した実情を考慮して、回転体駆動しくは回転体を介して駆動されるベルト駆動系に付加し、駆動系の負荷トルクや張力を制御するための駆動制御装置と制御方法、及びそのような駆動制御装置を備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回転機構もしくはこの回転機構を介して駆動されるベルト機構と、前記回転機構もしくはベルト機構を駆動する第1の電動機と、所定の目標速度もしくは目標位置に応じて前記第1の電動機を制御する第1の制御部と、この第1の制御部からの出力に応じて前記第1の電動機を駆動する第1のモータドライバから構成される駆動制御装置において、前記回転機構もしくはベルト機構に前記第1の電動機とは異なる駆動力を伝達する第2の電動機を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、前記第2の電動機の駆動トルクもしくは駆動電流と、所定の目標トルクもしくは目標電流とを比較する比較手段と、前記第2の電動機をトルク制御もしくは電流制御する第2の制御部と、該第2の制御部からの出力に応じて前記第2の電動機を駆動する第2のモータドライバとをさらに備えることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、前記第1の電動機のトルクに変動が発生したとき、前記第2の電動機の前記目標トルクもしくは目標電流を変化させる目標値変更手段を備えることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、前記回転機構もしくはベルト機構の速度に変動が発生したとき、前記第2の電動機の前記目標トルクもしくは目標電流を変化させる目標値変更手段を備えることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、前記第2の電動機をトルク制御もしくは電流制御する第2の制御部への入力に応じて、前記第1の制御部の出力を補正する補正手段を備えることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、前記第2の電動機の出力が前記第1の電動機の出力より小さいことを特徴とする。
【0007】
請求項7に記載の発明は、請求項2記載の駆動制御装置を制御する制御方法において、前記第1の電動機の駆動方向と反対方向に作用するように、前記第2の電動機の前記所定の目標トルクもしくは目標トルクに相当する目標電流を設定するように制御を行うことを特徴とする。
請求項8に記載の発明は、請求項2記載の駆動制御装置を制御する制御方法において、前記第1の電動機によって前記回転機構もしくはベルト機構が所定の目標位置に位置決めされている状態において、前記回転機構もしくはベルト機構に常時所定のトルクが掛かるように前記第2の電動機の前記所定の目標トルクもしくは目標電流を設定するように制御を行うことを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、請求項3に記載の駆動制御装置を制御する方法において、前記第1の電動機のトルクに変動が発生したとき、前記第2の電動機の前記目標トルクもしくは目標電流を変化させるように制御を行うことを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項4記載の駆動制御装置を制御する制御方法において、前記回転機構もしくはベルト機構の速度に変動が発生したとき、前記第2の電動機の前記目標トルクもしくは目標電流を変化させるように制御することを特徴とする。
請求項11に記載の発明は、請求項2記載の駆動制御装置を制御する制御方法において、前記第1の電動機の目標速度に応じて前記第2の電動機の前記目標トルクもしくは目標電流を変化させる用に制御することを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項5記載の駆動制御装置を制御する制御方法において、前記第2の電動機をトルク制御もしくは電流制御する第2の制御部への入力に応じて、前記第1の制御部の出力を補正する制御を行うことを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の駆動制御装置もしくは請求項7乃至請求項12のいずれか一項に記載の制御方法を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転駆動系もしくは回転体を介して駆動されるベルト駆動系に付加することによって、駆動系の負荷トルクや張力を制御するための駆動制御装置を提供できる。
また、駆動系の負荷トルクや張力を制御するための制御装置およびドライバを備え、第2の電動機の駆動方法を指定することにより定常的な負荷トルクや張力を制御する制御方法を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。ここでは、画像形成装置を中心に本発明の実施の形態を説明する。図1は本実施の形態としてのベルト駆動制御装置の概略図である。
図1において、図8の従来例のベルト駆動制御装置の従動ローラ2軸上に駆動負荷を与える負荷モータ6(第2の電動機)を備えている。この負荷モータ6が発生する駆動力を制御することによって、ベルト駆動制御装置の負荷もしくはベルト張力を制御する。
図1は負荷モータ6と従動軸の間に減速機構が入っていないダイレクトドライブの形式であるが、歯車やタイミングベルトとプーリを使用した減速機構を使用してもよい。
負荷モータ6にはモータトルクを制御し、装置の負荷トルクもしくはベルトテンションを制御することから制御性の良いDCブラシ付モータやDCブラシレスモータが使用される。前記2種類のモータ以外にもトルク制御可能なものであれば使用することができる。
図2は、本実施の形態としての回転体駆動制御装置の概略図である。図2においては、図9の従来例の回転体駆動制御装置の回転体7軸上に駆動負荷を与える負荷モータ6を備えている。
この負荷モータ6が発生する駆動力を制御することによって、回転体駆動制御装置の負荷を制御する。図2は負荷モータ6と回転体軸の間に減速機構が入っていないダイレクトドライブの形式であるが、歯車やタイミングベルトとプーリを使用した減速機構を使用してもよい。
負荷モータ6には、モータトルクを制御し、装置の負荷トルクを制御することから制御性の良いDCブラシ付モータやDCブラシレスモータが使用される。前記2種類のモータ以外にもトルク制御可能なものであれば使用することができる。
【0010】
次に、モータ制御の説明をする。図1と図2の駆動制御装置は、ベルトと回転体の違いだけであるので、以下では、ベルト駆動制御装置を画像形成装置の中間転写体に適用した例で説明する。また、駆動制御装置の簡単化のために図1の駆動モータ5と負荷モータ6をDCブラシ付モータとして説明する。
図3は駆動モータを所定速度で駆動させるための速度制御系を示すブロック図である。図3では駆動モータ5を所定速度で駆動させるための速度制御系を示している。
中間転写体の目標速度に対応した駆動モータ(第1の電動機)5の目標回転速度と検出された駆動モータ速度は比較器12で比較され、速度偏差は補償器13へ入力される。補償器13ではPIやPID等の制御演算を行い、その出力を第1のモータドライバ14へ入力する。
第1のモータドライバ14はモータ電流を検出し、補償器13からの入力に応じたモータ電流を流す演算を行い、駆動モータ5を駆動する。この駆動モータ5の変位はモータ軸上に取り付けられたエンコーダ(図示せず)によって検出される。
駆動モータ5の速度検出方法として、前記エンコーダのパルス間隔を基準クロックで測定することによってモータ速度を検出する方法や、エンコーダより得られた変位の差分(微分)を計算する方法や、タコジェネレータを使用する方法がある。
第1のモータドライバ14としては、上記のような入力値相当のモータ電流を流す電流駆動型ドライバの他に、入力値相当のモータ電圧を流す電圧駆動型ドライバが使用される。ここでは、駆動モータ5軸上のエンコーダを使用して速度を検出するとしたが、前記ベルト4上に設けられたベルトエンコーダを使用してベルト速度を検出しても良い。その場合、目標速度はベルト4の目標速度となる。
【0011】
図4は駆動モータを所定位置で保持させるための位置制御系を示すブロック図である。図4では駆動モータ5を所定位置で保持させるための位置制御系を示している。
中間転写体の目標位置に対応した駆動モータ5の目標位置と検出された駆動モータ位置は比較器16で比較され、位置偏差は補償器17へ入力される。補償器17ではPIDや位相遅れ進み補償等の制御演算を行い、その出力を第1のモータドライバ18へ入力する。
第1のモータドライバ18はモータ電流を検出し、補償器17からの入力に応じたモータ電流を流す演算を行い、駆動モータ5を駆動する。駆動モータ5の変位はモータ軸上に取り付けられたエンコーダによって検出される。
第1のモータドライバ18としては上記のような入力値相当のモータ電流を流す電流駆動型ドライバの他に、入力値相当のモータ電圧を流す電圧駆動型ドライバが使用される。ここでは、駆動モータ5の軸上のエンコーダを使用して位置を検出するとしたが、前記ベルト4上に設けられたベルトエンコーダを使用しベルト位置を検出しても良い。その場合、目標位置はベルト4の目標位置となる。また、位置制御系として、位置の負帰還の内部に速度の負帰還を持った制御系が使用される場合もある。
DCブラシ付モータやDCブラシレスモータを使用し、前記速度制御系もしくは位置制御系を構築する場合、速度や位置の負帰還を持った閉ループが構築されるが、ステッピングモータを使用する場合は、開ループの制御系となる。
図3および図4に示される補償器13、17はCPUやDSP等のデジタル演算器、もしくはアナログ回路によって構築される。また、電流駆動型のモータドライバ14中の制御演算もデジタル演算器もしくはアナログ回路によって構築される。
【0012】
図5は従動ローラ上の負荷モータのトルク制御系を示すブロック図である。この負荷モータ(第2の電動機)6のトルク制御系の駆動モータのトルクと電流は比例することから、図5では目標トルク相当の目標電流値を使用する場合を説明する。
負荷トルク相当の負荷目標電流irlmは、モータ電流ilmが比較器20で比較され、補償器21に入力される。補償器21ではPI等の制御演算を行ない、第2のモータドライバ22に入力される。
第2のモータドライバ22は入力と比例したモータ電圧Vlmを負荷モータ6に供給する。供給されたモータ電圧Vlmとモータ誘起電圧Velmの差となる電圧がモータインピーダンス23に入力され、モータ電流ilmとなる。負荷モータ6が発生する負荷モータトルクTlmは、演算器24においてトルク定数Kにモータ電流ilmを乗算した値となる。
負荷モータトルクTlmと負荷モータ軸換算の駆動モータトルクTdmの差を加算器29で求め、乗算器25で負荷モータ軸換算のイナーシャJで除算するとベルト駆動制御装置の負荷モータ軸上の角加速度ω’lmとなり、積分器26で1回積分した値が、角速度ωlmとなる。前記モータ誘起電圧Velmは前記角速度ωlmに誘起電圧定数Kを乗算器27で乗算した形となる。
前記負荷モータ6が発生する負荷モータトルクTlmによってベルト駆動制御装置に所定の負荷トルクもしくはベルト張力が与えられる。図2に示される回転体駆動制御機構では、負荷トルクとして作用する他に、減速機構の歯車のバックラッシを抑える力となる。
図5中の補償器21はCPUやDSP等のデジタル演算器、もしくはアナログ回路によって構築される。図1もしくは図2の機構に図3と図5で説明したモータ制御装置を備えたものが請求項2記載の駆動制御装置である。図1もしくは図2の機構に図4と図5で説明したモータ制御装置を備えたものが請求項8記載の駆動制御装置である。
紙送り機構にベルト駆動制御機構を備え、間欠送りを行なうインクジェットプリンタでは高精度な紙送り性能が要求される。このベルト駆動制御機構では負荷のバラツキが位置決め性能もしくは位置決め時間へ大きく影響する。ベルト駆動制御機構に加わる負荷は、ベルト張力の影響が大きい。
そこで、前記第1の電動機5によって前記回転機構もしくはベルト機構4が所定の目標位置に位置決めされている状態において、前記回転機構もしくはベルト機構4に常時所定のトルクがかかるように前記第2の電動機6の前記所定の目標トルクもしくは目標電流を設定する構成によって、ベルト張力が一定となるように制御して機構系の負荷変動を抑えることにより、紙送りの位置決め性能が向上し、これにより画像品質が向上する。
【0013】
図5では負荷目標電流を正に設定することによって、負荷モータ6は駆動モータ5の発生する駆動トルクTdmとは反対方向の負荷トルクTlmを発生し、Tlmがベルト駆動制御装置の負荷トルクもしくはベルト張力となる。
ベルトもしくは回転体駆動制御装置の負荷モータ6は、駆動トルクTdm方向に駆動され(Tdm>T)、加減速のためのトルクを発生させる必要がないため、負荷トルクTlmは駆動モータが発生する駆動トルクTdmよりも小さな値で十分である。
これにより、駆動モータ5の容量と比較し、負荷モータ6には容量が小さなモータを選定することができる。容量としては、負荷トルクTlmを発生できるものであれば良い。
画像形成装置のベルトもしくは回転体駆動制御装置において、感光体もしくは中間体上に形成された画像を紙に転写する際、紙が前記駆動制御装置に供給されると駆動制御装置には外乱トルクとして力が作用する。その後、紙が通過し外乱トルクがなくなり定常負荷トルクとなる。
前記紙の供給および通過による過渡的なトルク変動が駆動制御系の回転速度もしくは速度を変動させ、色ずれや白抜け等の画像品質低下を発生させる。また、クリーニング装置の接離動作等も同様に外乱トルクとして作用する。
図3の一般的な速度制御系では、ゲインを大きくすることによって外乱の影響を小さくしたり、積分項によって定常偏差を抑圧したりする方法がとられるが、機械共振からゲインの増大は限界があり、安定性から積分項の増大にも限界がある。
そこで、外乱が加わるタイミングで駆動モータの駆動力を補正するフィードフォワードも考えられているが、外乱が印加されるタイミングと補正のタイミングが異なると逆に悪影響を生じてしまう。
そこで、本発明では、駆動モータもしくはベルトの速度変動に応じて、負荷モータの目標値を変更し、駆動制御装置の負荷を制御することによって速度変動を抑制するようにしている。
【0014】
図6は駆動モータの速度変動に応じて負荷モータの負荷目標電流を補正する駆動制御装置を示すブロック図である。図示されていないが駆動モータのモータドライバが電流駆動型ドライバであれば駆動モータはトルク制御される。
そのため、電流指令値もしくはトルク指令値となる補償器12からの出力を負荷補正演算部30に入力し、既知である所定の回転速度の駆動モータの定常トルクと駆動トルクとの差から、負荷モータへのトルク補正値を求める。
次に、電流換算した負荷目標電流補正値Δirlmを求め、加算器31において負荷目標電流irlmと負荷目標電流補正値Δirlmとから負荷目標電流i’rlmを求め、この負荷目標電流i’rlmを使用し、図5の制御系により負荷モータ6に負荷トルクTlmを発生させる。すなわち、駆動制御系に外乱が加わったことにより駆動用電動機のトルクに変動が発生したとき、負荷用電動機により負荷トルクもしく張力を調整することにより、回転速度もしくは速度の変動を低減できる駆動制御装置およびその制御方法を提供できる。
駆動モータ5のモータドライバ14が電圧駆動型ドライバであるか、またはトルク指令値が検出できない場合は、駆動モータ5の角速度ωdmは負荷補正演算部30へ入力される。
【0015】
負荷補正演算部30では駆動モータの角速度ωdmの微分もしくは差分に駆動モータ軸換算イナーシャJdmを乗算し、変動トルクΔTdmを算出する。式を(1)式に示す。

一般的に微分や差分演算はノイズが多く含まれるため、ローパスフィルタ処理を行い、動作帯域を制限する。算出した変動トルクΔTdmから負荷モータ6へのトルク補正値を求める。
これを電流換算した負荷目標電流補正値Δirlmを求め、補正された負荷目標電流i’rlmを使用し、図5の制御系により負荷モータ6に負荷トルクTlmを発生させる。すなわち、駆動制御系に外乱が加わったことにより回転速度もしくは速度に変化が出たとき、負荷用電動機により負荷トルクもしく張力を調整することにより、回転速度もしくは速度の変動を低減できる駆動制御装置およびその制御方法を提供できる。
ここでは、駆動モータ5の角速度から変動トルクΔTdmを算出したが、ベルト表面に設けられたベルトエンコーダの値から速度を算出し、変動トルクを求めても良い。前記負荷補正演算部30の演算はCPUやDSP等のデジタル演算器、もしくはアナログ回路によって構築される。
モータの回転数に比例する誘起電圧が発生するため回転数の上昇に伴ってモータ駆動電圧は上昇する。しかし、製品や製造装置のモータ駆動用の電源電圧には限界があり、また、電動機を駆動するドライバにおいても線形性のある領域での使用が制御性から望ましい。
一般的に使用されるPWM駆動方式のモータドライバでは、モータ駆動電圧が低い領域の線形性能が悪い場合がある。そこで、ベルトもしくは回転体駆動制御装置の駆動モータの目標速度に応じて、図5中の負荷目標電流irlmを変更する。
これによって、負荷トルクもしくはベルト張力が調整され、駆動モータの定常回転時の駆動電圧を電源電圧以下で、かつ、制御性の良い領域に設定することができる。
すなわち、駆動制御系の回転速度もしくは速度の目標値に応じて、負荷用電動機により負荷トルクもしくは張力を調整することにより、駆動用電動機の定常的な駆動電圧の変動を低減できる駆動制御装置の制御方法を提供できる。
【0016】
画像形成装置のベルトもしくは回転体駆動制御装置において、感光体もしくは中間体上に形成された画像を紙に転写するさい、紙が前記駆動制御装置に供給されると駆動制御装置には外乱トルクとして力が作用する。その後、紙が通過し外乱トルクがなくなり定常負荷トルクとなる。
前記紙の供給および通過による過渡的なトルク変動が駆動制御系の回転速度もしくは速度を変動させ、色ずれや白抜け等の画像品質低下を発生させる。また、クリーニング装置の接離動作等も同様に外乱トルクとして作用する。
図3の一般的な速度制御系では、ゲインを大きくすることによって外乱の影響を小さくしたり、積分項によって定常偏差を抑圧したりする方法がとられるが、機械共振であるためゲインの増大は限界があり、安定性から積分項の増大にも限界がある。
そこで、外乱が加わるタイミングでモータの駆動力を補正するフィードフォワードも考えられているが、外乱が印加されるタイミングと補正のタイミングが異なると逆に悪影響を生じてしまう。
【0017】
図7は速度制御系および負荷モータの制御系によってモータトルクの変動もしくは電流値の変動を検出する駆動制御装置を示すブロック図である。図7に示すように負荷モータの制御系の補償器21に入る負荷電流偏差ielmを駆動力補正演算部32に入力する。
負荷電流偏差ielmは制御装置のトルク変動分と同等であるため、前記駆動力補正演算部32では、駆動モータ5によってトルク変動成分を抑圧するためのトルク補正値相当の駆動モータ電流補正値Δirdmを算出する。
ここでは、モータドライバ14は入力に比例したモータ電流を流す電流駆動型ドライバとする。補償器13の出力である駆動モータの電流指令値irdmは、加算器33において前記駆動モータ電流補正値Δirdmによって補正されモータドライバ14に入力さる。その結果、駆動モータ5は外乱相当のトルクを発生させて外乱を抑圧し、回転速度もしくは速度変動を抑える。
本実施の形態では、負荷モータの制御系によってモータトルクの変動もしくは電流値の変動を検出するため応答が速く、図3に示される速度制御系のみの場合と比較して、外乱抑圧の応答時間が短縮される。よって、画像品質の向上に繋がる。すなわち、駆動制御装置に外乱が加わり、回転速度もしくは速度が変化することによって変化した負荷用電動機の制御部への入力から、印加された外乱相当を検出し、駆動用の電動機の駆動力に対し前記印加外乱分の補正を行うことによって、駆動制御系の回転速度もしくは速度の変動を低減できる駆動制御装置の制御方法を提供できる。
駆動制御系の負荷トルクもしくは張力を制御する電動機の機能を負荷トルクの発生に限定することにより、負荷用の電動機の容量を小さなものにでき、安価な構成となる駆動制御装置を提供できる。
前記駆動力補正演算部32の演算はCPUやDSP等のデジタル演算器、もしくはアナログ回路によって構築される。なお、駆動モータ側へ負荷モータのトルク干渉(駆動モータへの外乱トルク)は発生するが、図7中では図示していない。また、図中の2つのモータの速度の関係は、ωdm=−ωlmとなる。
本実施の形態によれば、駆動用の第1の電動機の状態や制御方法に拘わらず、負荷発生用の第2の電動機の制御のみで負荷を調整できるため、特許文献1とは構成が異なり、構成や制御方法も単純である。
本実施の形態によれば、駆動系の状態に拘わりなく負荷を発生できるため、インクジェットプリンタのベルト紙搬送系のように、所定位置に保持させる位置決め制御を行なう場合においてもベルト駆動系に対し所定の張力を掛け続けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態としてのベルト駆動制御装置の概略図。
【図2】本実施の形態としての回転体駆動制御装置の概略図。
【図3】駆動モータを所定速度で駆動させるための速度制御系を示すブロック図。
【図4】駆動モータを所定位置で保持させるための位置制御系を示すブロック図。
【図5】従動ローラ上の負荷モータのトルク制御系を示すブロック図。
【図6】駆動モータの速度変動に応じて負荷モータの負荷目標電流を補正する駆動制御装置を示すブロック図。
【図7】速度制御系および負荷モータの制御系によってモータトルクの変動もしくは電流値の変動を検出する駆動制御装置を示すブロック図。
【図8】従来の画像形成装置の感光体、中間転写体、紙搬送機構に使用されているベルト駆動制御装置の主たる要素を取り出して示す簡易図。
【図9】従来の画像形成装置の感光体、中間転写体に使用されている回転体駆動制御装置の主たる要素を取り出して示す簡易図。
【符号の説明】
【0019】
1 ベルト機構、4 ベルト、5 第1の電動機(駆動モータ)、6 第2の電動機(負荷モータ)、7 回転体、8 回転機構、13 第1の制御部(補償器)、14 第1のモータドライバ、21 第2の制御部(補償器)、22 第2のモータドライバ、30 目標値変更部(補正部)、32 駆動力補正演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機構もしくはこの回転機構を介して駆動されるベルト機構と、前記回転機構もしくはベルト機構を駆動する第1の電動機と、所定の目標速度もしくは目標位置に応じて前記第1の電動機を制御する第1の制御部と、この第1の制御部からの出力に応じて前記第1の電動機を駆動する第1のモータドライバから構成される駆動制御装置において、前記回転機構もしくはベルト機構に前記第1の電動機とは異なる駆動力を伝達する第2の電動機を備えることを特徴とする駆動制御装置。
【請求項2】
前記第2の電動機の駆動トルクもしくは駆動電流と、所定の目標トルクもしくは目標電流とを比較する比較手段と、前記第2の電動機をトルク制御もしくは電流制御する第2の制御部と、該第2の制御部からの出力に応じて前記第2の電動機を駆動する第2のモータドライバとをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記第1の電動機のトルクに変動が発生したとき、前記第2の電動機の前記目標トルクもしくは目標電流を変化させる目標値変更手段を備えることを特徴とする請求項2記載の駆動制御装置。
【請求項4】
前記回転機構もしくはベルト機構の速度に変動が発生したとき、前記第2の電動機の前記目標トルクもしくは目標電流を変化させる目標値変更手段を備えることを特徴とする請求項2記載の駆動制御装置。
【請求項5】
前記第2の電動機をトルク制御もしくは電流制御する第2の制御部への入力に応じて、前記第1の制御部の出力を補正する補正手段を備えることを特徴とする請求項2記載の駆動制御装置。
【請求項6】
前記第2の電動機の出力が前記第1の電動機の出力より小さいことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の駆動制御装置。
【請求項7】
請求項2記載の駆動制御装置を制御する制御方法において、前記第1の電動機の駆動方向と反対方向に作用するように、前記第2の電動機の前記所定の目標トルクもしくは目標トルクに相当する目標電流を設定するように制御を行うことを特徴とする制御方法。
【請求項8】
請求項2記載の駆動制御装置を制御する制御方法において、前記第1の電動機によって前記回転機構もしくはベルト機構が所定の目標位置に位置決めされている状態において、前記回転機構もしくはベルト機構に常時所定のトルクが掛かるように前記第2の電動機の前記所定の目標トルクもしくは目標電流を設定するように制御を行うことを特徴とする制御方法。
【請求項9】
請求項3に記載の駆動制御装置を制御する方法において、前記第1の電動機のトルクに変動が発生したとき、前記第2の電動機の前記目標トルクもしくは目標電流を変化させるように制御を行うことを特徴とする制御方法。
【請求項10】
請求項4記載の駆動制御装置を制御する制御方法において、前記回転機構もしくはベルト機構の速度に変動が発生したとき、前記第2の電動機の前記目標トルクもしくは目標電流を変化させるように制御することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項2記載の駆動制御装置を制御する制御方法において、前記第1の電動機の目標速度に応じて前記第2の電動機の前記目標トルクもしくは目標電流を変化させる用に制御することを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項5記載の駆動制御装置を制御する制御方法において、前記第2の電動機をトルク制御もしくは電流制御する第2の制御部への入力に応じて、前記第1の制御部の出力を補正する制御を行うことを特徴とする制御方法。
【請求項13】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の駆動制御装置もしくは請求項7乃至請求項12のいずれか一項に記載の制御方法を備えていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−1688(P2006−1688A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−178858(P2004−178858)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】