説明

駆動力伝達機構

【課題】駆動ギア及び従動ギアを組み付ける際、前記駆動ギア及び従動ギアの容位置決めを容易に行うと共に、前記駆動ギアから前記従動ギアへの駆動力の伝達を確実且つ効率的に行う。
【解決手段】駆動力伝達機構22は、駆動源20に装着される第1ギア44と、前記第1ギア44に噛合する第2ギア46と、前記第2ギア46及び前記エアミックスダンパ18のラック部32に噛合するダンパシャフト50とを備え、前記第2ギア46に形成された第1ロケート部56を、第1ギア44における第1ロケート溝54aに挿入し、且つ、第2ロケート部66を、ダンパギア82における第2ロケート溝88に対して挿入する。また、第1ロケート部56の噛合溝70aに、第1ギア44に形成された第1幅狭歯58を噛合させ、一方、第2ロケート部66の噛合溝70bには、ダンパギア82の第2幅狭歯90を噛合させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動部の出力を駆動ギア及び従動ギアを介して伝達して出力する駆動力伝達機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両に搭載される車両用空調装置では、ハウジング内において、冷却手段であるエバポレータにより冷却された冷風と、加熱手段であるヒータコアにより加熱された温風とを、エアミックスダンパの開度を調整することによって混合し、この混合された混合風を、車室内に設けられた各吹出口に設けられた吹出ドアを開閉させることによって選択的に送風している。このエアミックスダンパ及び吹出ダンパは、ハウジングに対して軸支された軸部を有し、該軸部を中心として所定角度回動することによって前記冷風と温風との混合比率や前記吹出口の開閉状態を切り換えている。
【0003】
上述したような車両用空調装置では、例えば、エアミックスダンパ及び吹出ダンパを開閉させる際、駆動源の駆動力を、複数の歯車を介して前記エアミックスダンパ等へと伝達可能な駆動力伝達機構が用いられることがある。
【0004】
このような駆動力伝達機構は、例えば、駆動源に連結された駆動ギアと、該駆動ギアにおける小ギア部と噛合される第1の伝達ギアと、前記第1に伝達ギアにおける第2ギア部に噛合される第2の伝達ギアと、前記第2の伝達ギアに噛合され駆動ギアからの駆動力の伝達される出力ギアとを備えている。この出力ギアには、歯厚の厚い1つの太歯を備え、該太歯が、第2の伝達ギアにおいて歯幅の長い長歯領域に形成された歯溝に噛合されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−147060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術に係る駆動力伝達機構では、出力ギアの小ギア部に設けられた歯厚が小さい複数の歯と、第2の伝達ギアに設けられた歯との噛合状態、すなわち、互いの歯同士の噛み合い(引っ掛かり)状態が適切となるようにクリアランスを設定した場合、前記出力ギアの太歯と前記第2の伝達ギアの歯との噛み合い(引っ掛かり)が不足し、駆動力が伝達がされない懸念がある。
【0007】
本発明は、前記の課題を考慮してなされたものであり、駆動ギア及び従動ギアを組み付ける際、前記駆動ギアと従動ギアとの位置決めを容易に行うことが可能であり、しかも、前記駆動ギアから前記従動ギアへの駆動力の伝達を確実且つ効率的に行うことが可能な駆動力伝達機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、複数のギアを有し、駆動部からの駆動力を伝達するための駆動力伝達機構において、
前記駆動部に連結され外周部位に複数の第1歯部を有した駆動ギアと、
前記第1歯部に噛合される複数の第2歯部を外周部位に有し、前記駆動ギアに噛合される従動ギアと、
前記駆動ギア及び従動ギアの外周部位において、前記第1歯部及び第2歯部に隣接し、前記駆動ギア及び従動ギアの回転方向への位置決めを行う位置決め部と、
前記位置決め部の内部に設けられ、前記駆動ギアと前記従動ギアとを互いに噛合させる噛合部と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、駆動力伝達機構を構成する駆動ギア及び従動ギアの外周部位において、第1及び第2歯部に隣接した位置決め部を設け、前記位置決め部によって前記駆動ギアと前記従動ギアとを組み付ける際、回転方向への位置決めを行うと共に、前記位置決め部の内部に設けられた噛合部によって、該位置決め部において前記駆動ギアと前記従動ギアとを互いに噛合させている。
【0010】
従って、駆動ギアと従動ギアとを組み付ける際、該駆動ギア及び従動ギアの外周部位に設けられた位置決め部によって相対的な回転方向への位置決めを容易に行うことができるため、駆動力伝達機構の組付性を向上できると共に、前記位置決め部において、前記駆動ギアと前記従動ギアとを噛合部によって噛合させることができるため、前記駆動ギアからの駆動力を、前記位置決め部においても前記噛合部を介して前記従動ギアへと確実且つ効率的に伝達することができる。
【0011】
また、位置決め部は、駆動ギア及び従動ギアのいずれか一方に設けられ、第1歯部及び第2歯部の歯先径より小径で形成される溝部と、
前記溝部を有していない前記従動ギア及び前記駆動ギアのいずれか一方に形成され、前記溝部に挿入される係合部と、
から構成するとよい。これにより、駆動ギア及び従動ギアを噛合させる際、前記駆動ギア及び従動ギアのいずれか一方に設けられた溝部に対して係合部を挿入することによって、容易に前記駆動ギアと従動ギアとの回転方向における位置決めを行うことが可能となる。
【0012】
さらに、噛合部は、駆動ギア及び従動ギアのいずれか一方に設けられ、前記第1歯部又は第2歯部の歯先径と同一径で形成される噛合歯と、
前記噛合歯を有していない前記従動ギア及び前記駆動ギアのいずれか一方に形成され、前記噛合歯の噛合される噛合溝と、
から構成するとよい。これにより、駆動ギア及び従動ギアの位置決めが位置決め部によってなされた際、噛合歯と噛合溝とを噛合させることにより、前記駆動ギアの駆動力が前記位置決め部においても前記従動ギアへと確実に伝達される。
【0013】
さらにまた、係合部は、隣接する一組の第1歯部又は第2歯部と、前記第1歯部又は第2歯部同士を接合する壁部とからなり、前記第1歯部又は第2歯部と前記壁部によって囲まれた内部に噛合溝を設けるとよい。
【0014】
またさらに、溝部は、隣接する一組の第1歯部又は第2歯部の間に形成され、一方の第1歯部又は第2歯部と、他方の第1歯部又は第2歯部との間に、前記噛合歯を設けるとよい。これにより、溝部に係合部を係合させることにより、該溝部に設けられた噛合歯を噛合溝に噛合させることができるため、前記溝部及び係合部から駆動ギア及び従動ギアの位置決めがなされ、しかも、前記噛合溝及び噛合歯によって前記駆動ギア及び従動ギアの噛合状態が維持される。
【0015】
また、駆動力伝達機構を、車両の外部又は内部から導入された空気を所定温度に調温して車内へと供給する車両用空調装置に用い、駆動部の駆動力を駆動ギア及び従動ギアを介してケーシングの内部に設けられた切換ダンパへと伝達させるとよい。これにより、車両用空調装置における駆動力伝達機構を容易に組み付けることができると共に、駆動部からの駆動力を、駆動ギア及び従動ギアを介して確実且つ効率的に切換ダンパへと伝達して駆動させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、以下の効果が得られる。
【0017】
すなわち、駆動力伝達機構を構成する駆動ギア及び従動ギアの外周部位において、第1及び第2歯部に隣接した位置決め部を設けることにより、前記駆動ギアと前記従動ギアとを組み付ける際、前記位置決め部によって回転方向への相対的な位置決めを容易に行うことができると共に、前記位置決め部の内部に設けられた噛合部によって、該位置決め部において前記駆動ギアと前記従動ギアとを互いに噛合させることができるため、前記位置決め部においても、前記駆動ギアからの駆動力を前記噛合部によって確実且つ効率的に前記従動ギアへと伝達することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る駆動力伝達機構の適用された車両用空調装置の外観斜視図である。
【図2】図1に示す車両用空調装置の全体断面図である。
【図3】駆動源、駆動力伝達機構及びエアミックスダンパとの関係を示す一部省略斜視図である。
【図4】図3を別の方向から見た一部省略斜視図である。
【図5】駆動部及び駆動力伝達機構とからなる駆動力伝達ユニットの正面図である。
【図6】図5に示す駆動力伝達ユニットをケーシング側から見た背面図である。
【図7】駆動力伝達機構を構成する第1ギア、第2ギア及びダンパギアの噛合状態を示す正面図である。
【図8】図7に示す第1ギア、第2ギア及びダンパギアの噛合状態を反対側から見た平面図である。
【図9】駆動力伝達機構を構成する第2ギアの外観斜視図である。
【図10】駆動力伝達機構を構成するダンパシャフトにおけるダンパギア近傍を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る駆動力伝達機構について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0020】
図1において、参照符号10は、本発明の実施の形態に係る駆動力伝達機構の適用された車両用空調装置を示す。
【0021】
この車両用空調装置10は、図1及び図2に示されるように、空気の各通路を構成するケーシング12と、前記ケーシング12の内部に配設され、空気を冷却するエバポレータ14と、前記空気を加熱するヒータコア16と、前記ケーシング12内に導入された空気を、エバポレータ14及びヒータコア16によって熱交換を行い、調温された冷風及び温風を所定の混合比率で混合して混合風とするエアミックスダンパ(切換ダンパ)18と、前記ケーシング12の側面に設けられた駆動源(駆動部)20の駆動力を前記エアミックスダンパ18へと伝達し、回動変位させる駆動力伝達機構22とを含む。なお、ケーシング12の内部には、前記混合風の車室内に開口した各吹出口から選択的に供給するための複数の吹出口ダンパ24a〜24cが設けられる。
【0022】
なお、車両用空調装置10は、図1に示される右側(矢印A方向)が車両の前方側となり、左側(矢印B方向)が該車両の後方側となるように搭載されるため、以下、矢印A方向を前方とし、矢印B方向を後方として説明する。
【0023】
ケーシング12は、略対称形状の第1及び第2分割ケーシング26、28からなり、該第1分割ケーシング26の側部に開口した開口部には、該ケーシング12内へ空気を導入する送風機が接続されるダクト30が装着される。
【0024】
また、ケーシング12の内部には、車両用空調装置10における前方側で開口部近傍となる位置にエバポレータ14が設けられると共に、前記ケーシング12における後方側に、ヒータコア16が前記エバポレータ14と所定間隔離間して設けられる。このエバポレータ14とヒータコア16との間には、該エバポレータ14によって冷却された空気を、ケーシング12内において下流へと流通させる際、ヒータコア16側への流通量を調整するエアミックスダンパ18が設けられる。
【0025】
エアミックスダンパ18は、図2〜図4に示されるように、大きな半径で形成された断面円弧状のプレートであり、略一定厚さで形成されている。そして、エアミックスダンパ18は、第1及び第2分割ケーシング26、28にそれぞれ設けられている。なお、エアミックスダンパ18は、エバポレータ14から離間する方向に向かって凸状となるように設けられる。
【0026】
一方、エバポレータ14に臨むエアミックスダンパ18の内壁面には、図3及び図4に示されるように、後述する駆動力伝達機構22のダンパシャフト50と噛合するラック部32が形成される。このラック部32は、第1及び第2分割ケーシング26、28の内壁面に臨むエアミックスダンパ18の両側部と直交した一端部から他端部まで前記内壁面に沿って延在している。
【0027】
なお、エアミックスダンパ18は、ケーシング12の幅方向に沿って設けられ、その両側部が、第1及び第2分割ケーシング26、28の内壁面に設けられた一対のガイド壁34a、34bに沿って案内される。なお、以下の説明においては、第1分割ケーシング26側に設けられたエアミックスダンパ18についてのみ説明する。
【0028】
すなわち、エアミックスダンパ18は、ケーシング12の内部において、ヒータコア16に臨むように下方に位置している場合には、エバポレータ14を通過した空気が、ヒータコア16へと流通することが前記エアミックスダンパ18によって阻止され、一方、前記エアミックスダンパ18が、前記ヒータコア16から離間して上方へと移動した場合には、前記エバポレータ14を通過した空気が前記ヒータコア16へと流通する。また、エアミックスダンパ18が中間位置にある場合には、エバポレータ14を通過した空気の一部が、前記ヒータコア16へと流通し、残りの空気が、前記ヒータコア16側へと流通することなく前記ケーシング12内に流通する。
【0029】
駆動源20は、図3〜図6に示されるように、例えば、図示しないコントローラからの制御信号に基づいて回転制御されるサーボモータからなり、ハウジング36と、該ハウジング36の略中央部に設けられ回転する駆動軸38(図4及び図6参照)とを有する。そして、駆動源20は、例えば、複数の取付部を有した取付ブラケット40を介して第1分割ケーシング26の側面に対して固定される。この取付ブラケット40は、略十字状に形成され、第1分割ケーシング26において駆動源20の下方となる位置に複数のボルト42を介して固定される。この際、駆動源20は、その駆動軸38が第1分割ケーシング26の側面に臨み、該側面に対して所定間隔離間した状態で固定される。
【0030】
駆動力伝達機構22は、図3〜図8に示されるように、駆動源20の駆動軸38に装着される第1ギア(駆動ギア)44と、前記第1ギア44に噛合する第2ギア(従動ギア)46と、該駆動源20のハウジング36に連結され前記第2ギア46を支持するギアホルダ48と、ケーシング12の内部に収容され、前記第2ギア46及びエアミックスダンパ18のラック部32に噛合するダンパシャフト50とを含む。
【0031】
第1ギア44は、扇状に形成され、その中央部に形成された孔部を介して駆動軸38に連結され、断面半円状に形成された前記駆動軸38に対して固定されることにより、相対的な回転変位が規制される。すなわち、第1ギア44は、駆動源20の駆動作用下に常に一体的に回転駆動する。そして、この第1ギア44は、駆動源20と第1分割ケーシング26の側面との間に設けられる。
【0032】
また、第1ギア44の外周部位には、半径方向に凹凸状となる複数の第1ギア歯(第1歯部)52が周方向に沿って形成され、その外周部位における両端部近傍には、前記第1ギア歯52の欠けた一組の第1ロケート溝(溝部)54a、54bがそれぞれ形成される。第1ロケート溝54a、54bは、隣接する3つの第1ギア歯52のうちで、その中央となる第1ギア歯52の位置を中心とした所定幅で形成され、第2ギア46を構成する第1及び第2ロケート部56、66(後述する)がそれぞれ挿入可能に形成される。
【0033】
第1ロケート溝54a、54bは、断面略台形状で第1ギア44の厚さ方向に沿って形成され、該第1ロケート溝54a、54bには、前記厚さ寸法の中央部位から駆動源20側となる端面までの厚さ寸法で第1幅狭歯(噛合歯)58が形成される。この第1幅狭歯58は、第1ギア歯52に対して幅狭に形成され、且つ、前記第1ギア歯52と同一ピッチ、且つ、同一断面形状で形成されている。換言すれば、第1幅狭歯58は、第1ロケート溝54a、54bの位置に形成された第1ギア歯52の厚さ(幅)寸法を小さく設定したものである。
【0034】
第2ギア46は、第1ギア44の上方において、略同一平面上となるように設けられると共に、その中央に設けられて突出した軸部60が、ギアホルダ48の孔部62に挿入されることによって回転自在に保持される。この第2ギア46の外周部位には、第1ギア44と同様に、凹凸状に形成された複数の第2ギア歯(第2歯部)64が形成され、前記第2ギア歯64が、前記第1ギア44の第1ギア歯52に噛合される。なお、第2ギア46は、周方向に沿った所定範囲が半径内方向に縮径して形成され、この縮径部位には、第2ギア歯64が設けられていない。
【0035】
また、第2ギア46における外周部位の中央部には、第2ギア歯64の間となる位置に第1ロケート部(係合部)56が形成され、一方、前記外周部位における一端部には、前記第2ギア歯64の間となる位置に第2ロケート部(係合部)66が形成される。第1及び第2ロケート部56、66は、隣接する2つの第2ギア歯64と、該第2ギア歯64同士を接合する壁部68a、68bとからそれぞれ構成され、第2ギア46の外周方向から見てギアホルダ48とは反対側に向かって開口した断面U字状に形成される(図6及び図9参照)。この第1及び第2ロケート部56、66は、第2ギア歯64の歯先径と略同一径で形成されると共に、2つの第2ギア歯64及び壁部68a、68bによって囲まれた内部には、第1幅狭歯58及び第2幅狭歯(噛合歯)90(後述する)の噛合される噛合溝70a、70b(図8参照)を有する。
【0036】
そして、第2ギア46が第1ギア44に対して噛合される際、第1ギア歯52と第2ギア歯64とが噛合すると共に、該第1及び第2ギア44、46が回転することにより、第1ロケート部56が、前記第1ギア44における一方の第1ロケート溝54aに噛合され、第2ロケート部66が、他方の第1ロケート溝54bに対して噛合される。
【0037】
また、第1及び第2ロケート部56、66が、第1ギア44における第1ロケート溝54a、54bにそれぞれ噛合された際、その内部に形成された噛合溝70a、70bに対して前記第1ギア44の第1幅狭歯58が噛合され、該第1ギア44からの駆動力が前記第1幅狭歯58及び噛合溝70aを介して第2ギア46へと伝達される。
【0038】
すなわち、第1ロケート部56は、第1及び第2ギア44、46を含む駆動力伝達機構22を組み付ける際、第1ギア44の第1ロケート溝54aに挿入されることにより、互いの回転方向における位置決めを行う位置決め手段として機能すると共に、その内部に形成された噛合溝70aに、第1幅狭歯58を噛合させることによって前記第1ギア44からの駆動力を確実に第2ギア46へと伝達可能な駆動力伝達機能を兼ね備えている。
【0039】
ギアホルダ48は、その下部から上部に向かって先細となる略三角形状に形成され、その下部に形成された第1取付部72を介して駆動源20を構成するハウジング36に連結されると共に、上部に形成された第2取付部74を介して第1分割ケーシング26の側面に固定される。詳細には、第1取付部72は、2本のボルト76によってハウジング36の上部に共締めされ、一方、第2取付部74は、1本のボルト76によって第1分割ケーシング26の側面から所定間隔離間するように固定される。
【0040】
また、ギアホルダ48の略中央部には、第2ギア46の軸部60が挿入される孔部62が形成され、前記軸部60が挿入されて嵌合されることによって前記第2ギア46が回転自在に保持される。なお、第2ギア46は、ホルダと第1分割ケーシング26の側面との間に配置される。
【0041】
この孔部62の上方には、第2取付部74に向かって斜め上方に延在するシャフト溝78が形成され、後述するダンパシャフト50の端部が、前記シャフト溝78に対して回転自在に支持される。このシャフト溝78は、支持孔から離間する方向に向かって徐々に先細状となる一直線状に形成され、その先端部は断面半円状に形成される。
【0042】
ダンパシャフト50は、ケーシング12の内部において、エアミックスダンパ18の内壁面に臨むように設けられ、前記ケーシング12の幅方向に沿って設けられる。ダンパシャフト50の一端部は、第1分割ケーシング26と第2分割ケーシング28との間に挟持されたセンタープレート(図示せず)に対して回転自在に支持され、他端部が、前記第1分割ケーシング26の側部に設けられたシャフト孔80(図1参照)に挿通される。
【0043】
また、ダンパシャフト50の他端部には、図10に示されるように、第1分割ケーシング26の外側となり、第2ギア46に噛合されるダンパギア82が形成されると共に、該ダンパギア82より先端には、半径内方向に縮径した支軸部84が形成され、ギアホルダ48のシャフト溝78に挿通されて回転自在に保持される。詳細には、支軸部84は、断面半円状に形成されたシャフト溝78の先端部において軸支される。
【0044】
すなわち、ダンパシャフト50は、その両端部がセンタープレートとギアホルダ48に支持されることによってケーシング12に回転自在に保持されることとなる。
【0045】
一方、ダンパシャフト50には、エアミックスダンパ18のラック部32に臨む位置にピニオンギア86がそれぞれ形成され、該ラック部32に対してそれぞれ噛合している。すなわち、ダンパシャフト50が回転することによってピニオンギア86及びラック部32の噛合作用下にエアミックスダンパ18がケーシング12のガイド壁34a、34bに沿って上下方向に移動する。
【0046】
ダンパギア82は、ダンパシャフト50の軸線方向に沿って所定幅を有し、その外周面に沿って複数の歯部が形成される。そして、ダンパギア82には、1つの歯部の欠けた第2ロケート溝(溝部)88が形成される。第2ロケート溝88は、隣接する3つの歯部のうちで、その中央となる歯部の位置を中心とした所定幅で形成され、第2ギア46を構成する第2ロケート部66が挿入可能に形成される。
【0047】
第2ロケート溝88は、ダンパギア82の厚さ方向に沿って形成され、該第2ロケート溝88には、ダンパシャフト50の一端部側となる端部から他端部側に向かって延在し、他の歯部に対して略半分の厚さ寸法で形成された第2幅狭歯90が設けられる。第2幅狭歯90は、歯部と同一ピッチ且つ同一断面形状で形成されている。すなわち、第2幅狭歯90は、1つの歯部の厚さ(幅)寸法を略半分とすることにより構成される。
【0048】
そして、ダンパギア82と第2ギア46とが噛合される際、第2幅狭歯90が、第2ロケート部66における噛合溝70bに噛合される(図8参照)。
【0049】
すなわち、第2ロケート部66は、第2ギア46とダンパギア82とを組み付ける際、前記第2ギア46の第2ロケート溝88に挿入されることにより、互いの回転方向における位置決めを行う位置決め手段として機能すると共に、その噛合溝70bに第2幅狭歯90が噛合されることにより、前記第2ギア46からの駆動力を確実にダンパギア82へと伝達可能な駆動力伝達機能を兼ね備えている。
【0050】
本発明の実施の形態に係る駆動力伝達機構の適用された車両用空調装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、駆動力伝達機構22を、ケーシング12、駆動源20及びエアミックスダンパ18に対して組み付ける場合について説明する。
【0051】
先ず、駆動源20の駆動軸38に第1ギア44を装着すると共に、該駆動源20のハウジング36に対してギアホルダ48の第1取付部72をボルト76によって固定する。そして、第1ギア44の第1ロケート溝54aに対して第2ギア46の第1ロケート部56を挿入し、第1幅狭歯58を噛合溝70aに噛合させた状態で、前記第2ギア46の軸部60を前記ギアホルダ48の孔部62に挿入して嵌合させる。
【0052】
これにより、第1ギア44と第2ギア46との回転方向への相対的な位置決めが、第1ロケート部56及び第1ロケート溝54aによってなされた状態で、前記第1及び第2ギア44、46がギアホルダ48を介して組み付けられ、且つ、駆動源20の一体的に連結された駆動力伝達ユニット92が構成される。
【0053】
次に、この駆動力伝達ユニット92を、ケーシング12を構成する第1分割ケーシング26の側面に対して組み付ける。なお、この場合、駆動源20の下部には、複数のボルト42を介して予め取付ブラケット40が装着され、一方、ケーシング12の内部には、エアミックスダンパ18及びダンパシャフト50が収容され、該ダンパシャフト50のダンパギア82がシャフト孔80を通じて前記側面から突出した状態にある。
【0054】
上述した状態において、作業者は、第2ギア46を第1分割ケーシング26に対峙させ、且つ、取付ブラケット40が下方、ギアホルダ48における第2取付部74が上方となるように駆動力伝達ユニット92を把持し、前記第1分割ケーシング26の側面に接近させる。そして、ダンパシャフト50の支軸部84を、ギアホルダ48のシャフト溝78に挿入させると共に、第2ギア46を、該ダンパシャフト50のダンパギア82に噛合させる。この際、ダンパギア82の第2ロケート溝88に第2ギア46の第2ロケート部66を挿入し、且つ、前記ダンパギア82の第2幅狭歯90が、前記第2ロケート部66の噛合溝70bに噛合されるように組み付ける。
【0055】
これにより、第2ギア46とダンパギア82との相対的な回転方向への位置決めが、第2ロケート部66によってなされ、この第2ギア46及びダンパギア82の位置決めが確認された後、取付ブラケット40を第1分割ケーシング26の側面に固定し、同時に、ギアホルダ48の第2取付部74を、ボルト76によって前記第1分割ケーシング26の側面に固定する。
【0056】
これにより、ギアホルダ48に支持された第2ギア46が、駆動源20に連結された第1ギア44及びエアミックスダンパ18を回動させるダンパシャフト50のダンパギア82にそれぞれ噛合された状態でケーシング12の側面に組み付けられる。すなわち、第1及び第2ギア44、46、ダンパギア82が、相互に回転方向に位置決めされた状態で組み付けられた状態となる。
【0057】
次に、このように、駆動力伝達ユニット92の組み付けられた車両用空調装置10の動作並びに作用効果について簡単に説明する。
【0058】
先ず、運転者が、車室内における温度調整を行うために図示しない操作スイッチを操作することにより、コントローラ(図示せず)を通じて駆動源20に対して制御信号が出力される。
【0059】
例えば、図2に示される車両用空調装置10において暖房運転を行う場合には、操作スイッチによって運転モードを切り換えることにより、図示しないコントローラを通じて駆動源20へと出力される制御信号が切り換わり、該駆動源20の駆動作用下に駆動軸38が回転し、第1ギア44が、時計回り(図7中、矢印C1方向)に回転すると共に、それに伴って、第2ギア46が反時計回り(図7中、矢印D1方向)に回転し、ダンパギア82が時計回り(図7中、矢印E1方向)に回転する。
【0060】
そして、駆動源20から駆動力によってダンパシャフト50が反時計回り(矢印D1方向)に所定角度だけ回転し、図2に示されるエアミックスダンパ18がピニオンギア86とラック部32との噛合作用下にガイド壁34a、34bに沿ってヒータコア16から離間するように上方に向かって所定距離だけ移動する。
【0061】
これにより、エバポレータ14とヒータコア16との間を塞いでいたエアミックスダンパ18が移動し、該エバポレータ14を通過した空気の一部が、下流側に設けられた前記ヒータコア16へと流通して内部を通過する。その結果、空気の一部が、ヒータコア16によって加温された後、エバポレータ14のみを通過した空気と混合され、ケーシング12の内部において所定温度に温度調整される。そして、この調温された空気が、ケーシング12内の通路を経て、例えば、乗員の足元近傍に送風可能な吹出口から車室内へと送風される。
【0062】
一方、車両用空調装置10において冷房運転を行う場合には、運転者が操作スイッチで運転モードを切り換えることにより、駆動源20の駆動作用下に駆動軸38が前記とは反対方向に回転し、第1ギア44が該駆動軸38と共に反時計回り(図7中、矢印C2方向)に回転する。これにより、第2ギア46が第1ギア44との噛合によって時計回り(図7中、矢印D2方向)で回転すると共に、ダンパギア82が前記第2ギア46との噛合によって反時計回り(図7中、矢印E2方向)に回転する。これにより、駆動源20から駆動力によってダンパシャフト50が反時計回り(矢印E2方向)に回転し、ピニオンギア86にラック部32を介して噛合されたエアミックスダンパ18が、ガイド壁34a、34bに沿ってヒータコア16に臨む下方側へと移動する。
【0063】
その結果、エバポレータ14とヒータコア16との間を通じた空気の流れが、エアミックスダンパ18によって遮断されるため、送風機から供給されてエバポレータ14を通過した空気(冷風)が、ヒータコア16側へと流通せずに、ケーシング12内の通路を通じて吹出口へと流通し、例えば、乗員の顔近傍に送風可能な吹出口から車室内へと送風される。
【0064】
以上のように、本実施の形態では、駆動力伝達機構22を構成する第1ギア44の外周部位に、第1ギア歯52に隣接した第1ロケート溝54aを設け、該第1ロケート溝54aに対して第2ギア46の外周部位に形成された第1ロケート部56を挿入することにより、前記第1及び第2ギア44、46を噛合させる際、前記第1ギア44と第2ギア46の回転方向への相対的な位置決めを確実且つ効率的に行うことができると共に、第2ギア46とダンパシャフト50のダンパギア82とを噛合させる際にも同様に、前記第2ギア46の第2ロケート部66を、ダンパギア82の第2ロケート溝88に挿入することによって、前記第2ギア46とダンパギア82の回転方向への相対的な位置決めを確実且つ効率的に行うことができる。
【0065】
その結果、駆動力伝達機構22を構成する第1及び第2ギア44、46、ダンパギア82を組み付ける際、互いの回転方向への位置決めを簡便且つ確実に行って組み付けることが可能となり、前記駆動力伝達機構22の組付作業性を向上させることができる。
【0066】
また、第1及び第2ギア44、46を噛合させる際、第1ロケート部56に形成された噛合溝70aに対して前記第1ギア44の第1幅狭歯58を噛合させ、一方、第2ギア46とダンパギア82とを噛合させる際には、第2ロケート部66の噛合溝70bに対して前記ダンパギア82の第2幅狭歯90を噛合させることにより、前記第1ギア44及びダンパギア82における第1及び第2ロケート部56、66との係合部位において、駆動力を、第1及び第2幅狭歯58、90と噛合溝70a、70bとの噛合作用下に確実に伝達することができる。そのため、第1及び第2ロケート部56、66と第1及び第2ロケート溝54a、54b、88との係合作用下に第2ギア46と第1ギア44及びダンパギア82の相対的な位置決めを行った場合においても、駆動源20からの駆動力を、第1及び第2ギア44、46、ダンパギア82を介して確実にエアミックスダンパ18へと伝達することが可能となる。
【0067】
すなわち、駆動力伝達機構22を構成する第1及び第2ギア44、46、ダンパギア82の相対的な回転方向への位置決め機能と、前記第1ギア44からの駆動力を、前記第2ギア46及びダンパギア82へと確実に伝達できる駆動力伝達機能とを両立可能な構成としている。
【0068】
なお、本発明に係る駆動力伝達機構は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0069】
10…車両用空調装置 12…ケーシング
14…エバポレータ 16…ヒータコア
18…エアミックスダンパ 20…駆動源
22…駆動力伝達機構 44…第1ギア
46…第2ギア 48…ギアホルダ
50…ダンパシャフト 52…第1ギア歯
54a、54b…第1ロケート溝 56…第1ロケート部
58…第1幅狭歯 64…第2ギア歯
66…第2ロケート部 70a、70b…噛合溝
82…ダンパギア 88…第2ロケート溝
90…第2幅狭歯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のギアを有し、駆動部からの駆動力を伝達するための駆動力伝達機構において、
前記駆動部に連結され外周部位に複数の第1歯部を有した駆動ギアと、
前記第1歯部に噛合される複数の第2歯部を外周部位に有し、前記駆動ギアに噛合される従動ギアと、
前記駆動ギア及び従動ギアの外周部位において、前記第1歯部又は第2歯部に隣接し、前記駆動ギア及び従動ギアの回転方向への位置決めを行う位置決め部と、
前記位置決め部の内部に設けられ、前記駆動ギアと前記従動ギアとを互いに噛合させる噛合部と、
を備えることを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項2】
請求項1記載の駆動力伝達機構において、
前記位置決め部は、前記駆動ギア及び前記従動ギアのいずれか一方に設けられ、前記第1歯部及び第2歯部の歯先径より小径で形成される溝部と、
前記溝部を有していない前記従動ギア及び前記駆動ギアのいずれか一方に形成され、前記溝部に挿入される係合部と、
からなることを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の駆動力伝達機構において、
前記噛合部は、前記駆動ギア及び前記従動ギアのいずれか一方に設けられ、前記第1歯部又は第2歯部の歯先径と同一径で形成される噛合歯と、
前記噛合歯を有していない前記従動ギア及び前記駆動ギアのいずれか一方に形成され、前記噛合歯の噛合される噛合溝と、
からなることを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項4】
請求項3記載の駆動力伝達機構において、
前記係合部は、隣接する一組の第1歯部又は第2歯部と、前記第1歯部又は第2歯部同士を接合する壁部とからなり、前記第1歯部又は第2歯部と前記壁部によって囲まれた内部に、前記噛合溝が設けられることを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項5】
請求項3又は4記載の駆動力伝達機構において、
前記溝部は、隣接する一組の第1歯部又は第2歯部の間に形成され、一方の第1歯部又は第2歯部と、他方の第1歯部又は第2歯部との間には、前記噛合歯が設けられることを特徴とする駆動力伝達機構。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の駆動力伝達機構において、
前記駆動力伝達機構は、車両の外部又は内部から導入された空気を所定温度に調温して車内へと供給する車両用空調装置に用いられ、前記駆動部の駆動力を前記駆動ギア及び従動ギアを介してケーシングの内部に設けられた切換ダンパへと伝達することを特徴とする駆動力伝達機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−69431(P2011−69431A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220733(P2009−220733)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】