説明

駆動装置および画像形成装置

【課題】小型化、軽量化および低コスト化が可能でかつこれらの機能を発揮させる構成を用いた場合の回転精度の悪化を防止できる構成を備えた駆動力伝達機構を提供する。
【解決手段】周波数発電機を用いて速度制御が可能な駆動源100を備えた駆動装置において、上記駆動源100の回転子106に設けられている磁極106A、301に対向するパターンにより形成された回転信号発生部500,501を、上記駆動源100の回転軸103Aを中心として複数設けた円周毎に配置し、上記信号発生部500,501同士の周期を全ての円周間で同一とし、該信号発生部の周波数を円周数に合わせた倍数にしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、駆動源での回転速度制御のための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にモータなどの駆動源での回転を減速して伝達する方式には、歯車列を用いた方式やウォームギヤを用いる方式あるいはベルトの掛け回し径を変化させる方式などが知られている。
【0003】
一方、減速機構を用いた装置の一つに画像形成装置がある。
画像形成装置においては、駆動モータからの回転を伝達される感光体ドラムや転写ベルトの駆動ローラあるいは定着ローラが装備されている。これら各被駆動部材に対する駆動モータの回転数は数千rpmであることが多く、この回転数を数十〜百数十rpmに減速して用いられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
駆動モータの回転数を各被駆動部材に必要な回転数に減速する際に、上述した回転減速方式を用いることは、大きな減速比を設定するための回転精度に悪影響を及ぼすことがあり、これにより、例えば、多色画像を形成するような場合の画像同士の位置合わせ精度に影響して画質低下を招く虞がある。このような回転精度の問題は、部品の加工精度や組み立て精度が原因することが多い。
【0005】
ところで、減速機構を用いて駆動源であるモータの回転を従動部材として用いられる感光体ドラムや転写ベルトの駆動プーリなどに伝達する際に、駆動源の出力軸に取り付けられた駆動ギヤに対して従動ギヤを噛み合わせて減速歯車群を構成する場合がある。
【0006】
上述した減速機構に用いられる駆動モータは、回転精度を維持するために回転速度を所定速度に維持することが要求される。このため、駆動モータでの回転速度制御を行う構成として、モータの回転子である磁石の極性変化に伴って1回転あたり2周期以上の信号を発生する信号発生器と回転信号の少なくとも1周期に要する時間を計測する計時手段とを設けた、いわゆる、周波数発電機を用いて1周期に要する時間と目標回転数とによる回転速度を制御する手段により目標回転数における所要時間の情報を1回転における回転数信号により判別して回転速度を制御するようにした構成が提案されている(例えば、特許文献2)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−42238号公報(段落「0002」欄、「0011」欄)
【特許文献2】特開平5−234242号公報(段落0025)欄)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
回転速度制御のために用いられる回転子、いわゆる、インナーロータは、その外径が予め決まっている関係で信号発生用のパターンなどの配置スペースが限られていることが多いことから信号発生数が制約を受けることがある。このため、回転精度を高めるために必要な回転信号発生用のパターンの配列間隔を細分化することができないという問題があった。殊に一定間隔の回転信号を用いて速度制御を行うのが通例であることから回転信号よりも高周波数成分に対する制御を行うことができないのが現状であった。
【0009】
減速機構に用いられるギヤ同士の噛み合い時に発生する歯面へのラジアル方向の圧力により、駆動軸が偏心しやすくなることがあり、これによりインナーロータの回転が不安定となり、回転信号の発生が安定しないことがある。
【0010】
一方、特許文献2に開示されているように、回転速度制御に用いられる周波数発電機においては、インナーロータ側の信号発生部と信号発生部の通過を検知する検知部に用いられるホール素子を備えた回路基板との対向間隔が変化すると両者間での磁力関係が悪化し、適正な回転信号の検出ができないことがある。つまり、駆動源に用いられる駆動軸にはギヤ同士が連結されて駆動力の伝達が行えるように構成されているが、ギヤ同士の噛み合い回転時にスラスト方向の荷重が発生するために駆動軸の位置が変化して上記信号発生部と回路基板との間の間隔が変化してしまうことがある。このため、両者間で設定されている磁力関係が変化し、ホール素子に取り込まれる回転信号出力が低下してしまい、正確な回転信号が得られずに回転変動の検知精度が悪化してしまう虞がある。
そこで、インナーロータの表裏両面に回転信号発生用のパターンを設けることも考えられるが、インナーロータのスラスト方向の変位により一方の面と他方の面とで検知部材を有する回路基板に対する間隔が相対的に変化してしまい、両方の面で安定した回転信号の取り込みが行えなくなる虞がある。
【0011】
上述したように、スラスト方向の負荷により両者間の間隔が変化、特に離れる方向変化した場合には、検知に必要な磁力が得られず回転信号が出力されない場合がある。そこで、回転子における異なる面に信号発生部を設けた場合、一方での信号発生部と信号検出部との間隔が小さくなると他方での両者間の間隔が大きくなるために適正な信号出力が得られなくなることがある。また、駆動軸の偏心が原因して回転方向によっては適正な信号出力が得られなくなることがあった。
【0012】
このように、回転信号発生の取り込みが適正に行えずに回転速度制御が適正化されないと、画像形成装置の場合には、駆動源で上述したような異常事態が発生すると画像形成処理が続行できなくなるばかりでなく、回転精度が悪化して画像品質にも悪影響を及ぼすことになる。
【0013】
本発明は、上記従来の駆動力伝達機構およびこれを用いる画像形成装置における問題に鑑み、小型化、軽量化および低コスト化が可能でかつこれらの機能を発揮させる構成を用いた場合の回転精度の悪化を防止できる構成を備えた駆動装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明は次の構成よりなる。
【0015】
(1)周波数発電機を用いて速度制御が可能な駆動源を備えた駆動装置において、上記駆動源の回転子に設けられている磁極に対向するパターンにより形成された回転信号発生部を、上記駆動源の回転軸を中心として複数設けた円周毎に配置し、上記信号発生部同士の周期を全ての円周間で同一とし、該信号発生部の周波数を円周数に合わせた倍数にしたことを特徴とする駆動装置。
【0016】
(2)周波数発電機を用いて速度制御が可能な駆動源を備えた駆動装置において、上記駆動源の回転子に設けられている磁極に対向するパターンにより形成された回転信号発生部を、上記駆動源の回転軸を中心として複数設けた円周毎に配置し、各円周に設けられている回転信号発生部同士の位相を1/周波数以下の任意の位相だけずらして互いに重ならないようにしたことを特徴とする駆動装置。
【0017】
(3)上記駆動源の回転軸には連動可能な複数のギヤが連結され、複数のギヤとして上記回転軸の軸芯に対して均一な角度により連結されたはす歯ギヤが用いられ、各はす歯ギヤのねじれ角が上記駆動軸にかかる偏荷重をなくすことができる角度に設定されていることを徴とする(1)または(2)に記載の駆動装置。
【0018】
(4)上記駆動源の回転軸には連動可能な複数のギヤが連結され、複数のギヤとして上記回転軸の軸芯に対して均一な角度により連結されたはす歯ギヤが用いられ、各はす歯ギヤのねじれ角として、上記駆動軸にかかるスラスト方向の荷重において上記回転子側の磁極とこれに対向する回転信号発生部のうちで最小直径の円周上に設けられている回転信号発生部とが接近する方向のスラスト方向荷重が得られる角度に設定されていることを特徴とする(1)または(2)に記載の駆動装置。
【0019】
(5)上記複数の円周は、上記回転子に対して異なる対向面を対象として設定されていることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の駆動装置。
【0020】
(6)(1)乃至(5)のいずれかに記載の駆動装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、駆動軸の回転軸を中心とした複数の円周上に回転信号発生部を設けるようになっているので、単一の回転信号発生部を対象とする場合と違って、回転信号発生部を増設したことにより回転信号の取り込み数を増やして、より細密な回転速度制御が行えることになり回転速度制御の精度を向上させることができる。
【0022】
特に請求項1および2記載の発明においては、複数の円周上に設けられている回転信号発生部同士の周期を同一にして周波数を円周数の倍数に設定したり各信号発生部の位相をずらすことにより、周期をずらして交互に回転信号を取り込めるようにできるとともに取り込みタイミングが細かく設定でき、さらには同時に複数の回転信号を取り込めることで複数の速度制御が可能となる。
【0023】
請求項3記載の発明においては、駆動源に連結されるギヤとしてはす歯ギヤを用い、そのはす歯ギヤにおけるねじれ角を駆動軸への偏荷重が発生しない角度とすることにより駆動軸の偏心を防止して回転信号の取り込みができなくなるのを防止することができる。
【0024】
請求項4記載の発明においては、はす歯ギヤのねじれ角として、駆動軸にかかるスラスト方向の荷重において回転子に設けられている回転信号発生部のうちで最小直径の円周に設けられている回転信号発生部とこれに対向する磁気検知部を有した回路基板とが接近する方向の荷重が発生する角度を設定していることにより最小直径での回転信号発生部からの信号を取り込み損ねることがなくなるので、回転制御のための信号取り込み精度を向上させることができる。
【0025】
請求項5記載の発明においては、複数の回転信号発生部が回転子に対する異なる面にそれぞれ設けられているので、例えば、請求項4記載の発明における最小直径の円周上に位置する回転信号発生部と回路基板とが接近する方向にスラスト荷重が発生した場合、最小半径よりも大きい円周上に位置する回転信号発生部を最小直径の円周が位置する面と異なる面に設けておくことで、仮に回転信号発生部と回路基板との間の間隔が広がった場合でも回転速度が最小直径での速度よりも高速となることを利用して取り込まれる回転信号数を多くすることができるので、回転信号の細分化が可能となる。
【0026】
請求項6記載の発明においては、複数の円周上に設けられた回転信号発生部を用いることで細かな回転速度のための情報取り込みが可能となり、回転精度の悪化による画像品質の悪化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を、画像形成装置である電子写真方式のカラー複写機(以下、「複写機」という。)に適用した場合を対象として本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、本実施形態における複写機は、特許文献1に開示されたいわゆるタンデム式の画像形成装置であって、乾式二成分現像剤を用いた乾式二成分現像方式を採用したものである。
【実施例】
【0028】
図2は、本実施形態に係る複写機における画像形成部全体の概略構成図である。この複写機1000は、図示しない画像読取部から画像情報である画像データを受け取って画像形成処理を行う。この複写機には、図に示すように、イエロー(以下、「Y」と省略する。)、マゼンタ(以下、「M」と省略する。)、シアン(以下、「C」と省略する。)、ブラック(以下、「Bk」と省略する。)の各色用の4個の回転体としての潜像担持体である感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkが並設されている。これら感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkは、駆動ローラを含む回転可能な複数のローラに支持された無端ベルト状の中間転写ベルト5に接触するように、そのベルト移動方向に沿って並んで配置されている。また、感光体ドラム1Y,1M,1C,1Bkの周りには、それぞれ、帯電器2Y,2M,2C,2Bk、各色対応の現像装置9Y,9M,9C,9Bk、クリーニング装置4Y,4M,4C,4Bk、除電ランプ3Y,3M,3C,3Bk等の電子写真プロセス用部材がプロセス順に配設されている。
【0029】
本実施例に係る複写機でフルカラー画像を形成する場合、まず、図2に示すように、後述する感光体駆動装置により、感光体ドラム1Yを図中矢印の方向に回転駆動しながら帯電器2Yで一様帯電した後、図示しない光書込装置からの光ビームLYを照射して感光体ドラム1Y上にY静電潜像を形成する。このY静電潜像は、現像装置9Yにより、現像剤中のYトナーにより現像される。現像時には、現像ローラと感光体ドラム1Yとの間に所定の現像バイアスが印加され、現像ローラ上のYトナーは、感光体ドラム1Y上のY静電潜像部分に静電吸着する。
【0030】
このように現像されて形成されたYトナー像は、感光体ドラム1Yの回転に伴い、感光体ドラム1Yと中間転写ベルト5とが接触する1次転写位置に搬送される。この1次転写位置において、中間転写ベルト5の裏面には、1次転写ローラ6Yにより所定のバイアス電圧が印加される。そして、このバイアス印加によって発生した1次転写電界により、感光体ドラム1Y上のYトナー像を中間転写ベルト5側に引き寄せ、中間転写ベルト5上に1次転写する。以下、同様にして、Mトナー像、Cトナー像、Bkトナー像も、中間転写ベルト5上のYトナー像に順次重ね合うように1次転写される。
【0031】
中間転写ベルト5上に4色重なり合ったトナー像は、中間転写ベルト5の回転に伴い、2次転写ローラ7と対向する2次転写位置に搬送される。また、この2次転写位置には、図示しないレジストローラにより所定のタイミングで転写紙が搬送される。
2次転写位置において、2次転写ローラ7により転写紙の裏面に所定のバイアス電圧が印加され、そのバイアス印加により発生した2次転写電界及び2次転写位置での当接圧により、中間転写ベルト5上のトナー像が転写紙上に一括して2次転写される。その後、トナー像が2次転写された転写紙は、定着ローラ対8により定着処理がなされた後に装置外に排出される。
【0032】
次に、本実施例における特徴について説明する。
本実施例の特徴は、第1に回転速度制御に用いられる周波通発電機に設けられている回転信号発生部としてのパターンを駆動源の回転軸を中心として複数の円周上に設けたこと、第2に駆動源に連結されているギヤをはす歯ギヤとし、スラスト方向での回転軸の変位位置を最小直径の円周上に設けられている回転信号発生用パターンとこれに対向するインナーロータ側の磁極とが接近することができる角度にはす歯ギヤのねじれ角が設定されていることにある。
【0033】
図1は、本実施例による駆動装置の要部を示す図であり、同図に示す要部は、ブラシレスモータを用いる駆動部100と、駆動部100から延出するモータ軸、いわゆる、駆動軸の回転を伝達される駆動力伝達部200と、モータの回転変動制御部300とを備えている。
【0034】
駆動部100は、画像形成装置内の不動部である取り付け基板101に対してネジ止め(図1中、符号Sで示す箇所が締結位置)により一体化されている有底筒状のモータフレーム102を備えている。
モータフレーム102には、後述するブラシレスモータ103の駆動軸103Aが挿通されており、モータフレーム102から延出している駆動軸103Aの軸端には、駆動力伝達部200を構成する駆動ギヤ201および駆動ギヤ201に対して複数箇所で噛み合う複数の連結ギヤ202,203,204(図1においては連結ギヤ202,203のみが示されている)が備えられている。
【0035】
連結ギヤ202,203,204は、駆動軸103Aを駆動力伝達部200から遠ざかる向きに移動させることができるねじれ方向が設定されたはす歯ギヤが用いられており、はす歯ギヤのねじれ角は、後で説明する回転変動制御部300に設けられているパターンで構成される回転信号発生部のうちで、最小直径の円周上に設けられている回転信号発生部500に対してインナーロータ106側のラジアル方向マグネット部106Aが接近することができる方向のスラスト荷重が得られる角度に設定されている。
【0036】
図3は、駆動軸103Aの軸端側からみた状態の模式図であり、同図において、連結ギヤ202,203,204は、駆動軸103Aの中心を基準としてラジアル方向で均一な角度の位置、換言すれば120度の位相(θ)を以て駆動源側の駆動ギヤ201に噛み合うように配置されて連結されている。
【0037】
駆動ギヤ201に連結される複数の連結ギヤ202〜204は、駆動に必要な駆動トルクが同じではなく、ギヤ自体の仕様も異なることが多い。このため、駆動ギヤ201を備えた駆動軸103Aに作用するラジアル方向での側圧が均等ではないことが原因して駆動軸103Aが偏心しながら回転すると振動が発生することがある。そこで、本実施例では、連結ギヤ202〜204のはす歯ギヤにおけるねじれ角として、駆動軸103Aでのラジアル方向での側圧が均等となるようにして駆動軸103Aに作用する偏荷重をなくすことができる角度に設定されている。これにより、図3に示すように、駆動軸103Aの中心を基準として周方向で均等な位置でスラスト方向の荷重が作用することになり、駆動軸103Aの軸を中心とした場合に周方向での荷重の偏倚をなくすことができ、駆動軸103Aの撓みを生じることなくスラスト方向の荷重が得られるようになっている。
【0038】
図1において、モータフレーム102は、駆動軸103Aが挿通される中心位置が内方に向けて絞り加工されており、その加工部102Aの内面には駆動軸103Aを回転可能に支持するメタル軸受け104が圧入されている。
メタル軸受け104の近傍には、駆動軸103Aの軸上に固定されてモータフレーム102の底部側と対向している受け部材105が設けられており、受け部材105は、駆動軸103Aのスラスト方向の移動に連動するようになっている。
【0039】
一方、駆動軸103Aには、外周面にラジアル方向マグネット106Aが取り付けられた有底筒状のインナーロータ支持体106が一体化されて設けられている。また、インナーロータ支持体106側のラジアル方向マグネット106Aに対向するモータフレーム102の内面にはステータコイル107が設けられている。
【0040】
本実施例では、上述した駆動部100,駆動力伝達部200および回転変動制御部300を備えた駆動力伝達機構において、駆動軸103Aがスラスト方向に移動した場合の位置を一定位置に保持するための構成として、連結ギヤ202,203,2043におけるはす歯のねじれ角、およびスラスト方向での位置決め部材としての受け部材105が用いられる。
【0041】
連結ギヤ202,203,204は、前述したように、駆動軸103Aに対してモータフレーム102の底部から離れる向きの移動、つまり、図1において右側に向けた移動が可能な荷重を生起できるねじれ方向が設定されており、そのねじれ角として0度と90度を除く範囲が設定され、本実施例では20度に設定されている。この角度を規定する条件としては、回転変動制御部300におけるインナーロータ支持体106側のラジアル方向マグネット301と回路基板302との間の間隔が、これら両部材同士を非接触な状態で最小となるスラスト方向の荷重が生起できることと、噛み合い効率を低下させないことにある。
【0042】
受け部材105は、駆動軸103Aがスラスト方向に移動した際、換言すれば、インナーロータ支持体106と対向する側に向けて移動した際にはインナーロータ支持体106に有する凸状の基底部106Bに衝合し、回転変動制御部300におけるマグネット301と回路基板302との間の間隔を非接触で最小間隔に維持するようになっている。
【0043】
回転変動制御部300は、ブラシレスモータの定速回転を維持させるための制御部であり、インナーロータ支持体106の底部側に設けられた被検知部としての磁極を構成する複数のラジアル方向マグネット301と、モータフレーム102側に取り付けられていてラジアル方向マグネット301に対向してマグネット301の通過時に微弱電流を生起させる回転信号発生部を構成する磁気検知パターンを有する回路基板302とからなるエンコーダが用いられ、インナーロータ支持体106の回転変動をマグネット301と磁気検知パターンとの間で生じる検知タイミングのずれとして割り出すことにより、ずれを補正するようにモータへの給電制御を行うようになっている。
【0044】
上記回転信号発生部としての磁気検知パターンは、図1,2に示すように、インナーロータ支持体106の底部側に設けられた磁極を構成する複数のラジアル方向マグネット301に対して異なる対向面に設けられるようになっており、図1においては、複数のラジアル方向マグネット301の長手方向の両端面に対向する位置(図1において符号500で示す)、つまり、回路基板302側とこれと反対の面に相当してラジアル方向マグネット106Aに対向する位置(図1において符号501で示す)にそれぞれ設けられている。
【0045】
回転信号発生部としての磁気検知パターン500,501は、図4に示すように、駆動軸103Aを中心として複数の異なる円周上にそれぞれ設けられたパルス形状のパターンであり、マグネット106A、301が回転する際にパターン上を各マグネットが通過すると微弱電流が流れ、この微弱電流が検知部に取り込まれてパルス波として変換されると、パルス波の山部と谷部との入力時間を基準速度の場合のそれと対比してずれを判別するようになっている。
【0046】
本実施例では、磁気検知パターン500,501の形成条件として、駆動源の回転軸を中心として複数設けた円周毎に配置し、上記信号発生部同士の周期を全ての円周間で同一とし、周波数を円周数の倍数に相当させている。
【0047】
また、磁気検知パターン500,501は、別の構成として、図4に示すように、各磁気検知パターン同士の位相を半周期ずらして(図4中、パターンピッチ1と表示されている磁気検知パターン500のピッチP500に対してパターンピッチ2と表示されている磁気検知パターン500(パターンピッチP501) の位相を半周期ずらしてある)位置決めしている。
【0048】
この構成においては、半周期ずらすことで磁気検知パターンからの出力が交互に得られ、結果として、磁気検知パターンからの回転信号の出力間隔を短くすることができ、いわゆる、細分化した状態を得ることができる。
【0049】
一方、細分化した出力を得るためには、各円周に設けられている回転信号発生部同士の位相を1/周波数(磁気検知パターンの配列ピッチ)だけずらして位置決めする。これにより、ずらした位相毎に出力が得られることになり、出力数を多くして細分化することができる。
【0050】
ところで、上述した磁気検知パターンの構成においても出力の細分化により短い検知パターンからの出力間隔を短くできるが、さらにこの間隔を短くして速度変動の誤差を寄り細かく制御することが望まれることもある。この場合には、図4を用いて説明したように、最小直径以外の円周上に設けられている磁気検知パターン501を、1/周波数(磁気検知パターンの配列ピッチ)以下のピッチにずらす。これにより、パターン間隔をさらに短くして速度補正を行うことができる。
しかも、複数の円周上での磁気検知パターンを対象として同時にいずれかの磁気検知パターンからの出力に基づく速度制御も可能であり、複数の速度制御を実行することができる。
【0051】
ところで、複数の円周上に回転信号発生部としての磁気検知パターン500,501を設けた場合、各パターンの大きさが同じであると直径の大きい円周上に位置する磁気検知パターンの方が回転速度が速くなる。このため、直径の大きい円周上に位置する磁気検知パターン501を利用することで高速回転により大きな出力、つまり、高速回転による出力数が多い状態を得ることが可能となる。
【0052】
また、異なる直径の円周上に設けられている回転信号発生部である磁気検知パターン500,501のうちで、最小直径の円周上に設けてある磁気検知パターン500は、これ以外の円周上に位置する磁気検知パターンに比べて回転速度が低い。このため、連結ギヤとしてはす歯ギヤが用いられる構成においては駆動軸103Aにスラスト方向の荷重が作用する。このため、インナーロータ106A側の複数有するマグネット301との対向間隔が広がると回転速度が遅いことも相俟って磁力関係も弱まることにより磁気検知パターンに生起される電流も弱くなり、回転信号の取り損ねを生じる場合がある。
【0053】
本実施例では、このような不具合を解消するために、先に説明したが、連結ギヤとして用いられるはす歯ギヤ202〜204におけるねじれ角を最小直径の円周上に位置する磁気検知パターン500に対して複数のマグネット301が接近する方向の荷重が得られるような角度に設定されている。これにより、回転速度の遅い磁気検知パターン500からは、磁力線の生成状態が緩慢となることによる出力低下や出力の取り込み損ねをなくすことができる。このとき、最小直径よりも大径の円周上に位置する磁気検知パターン501は、ラジアル方向マグネット106Aの端面から遠ざかる傾向となるが、直径の大きさから得られる回転速度が速いことにより出力頻度を高めて出力の取り込み損ねが生じるのを防止することができる。
【0054】
なお、本実施例においては、はす歯ギヤのねじれ方向(傾き)を考慮してスラスト方向の荷重の発生が上述した条件に整合する回転方向を予め設定するようになっている。これにより、はす歯ギヤのねじれ方向との関係により駆動軸の回転方向は時計方向あるいは反時計方向のいずれをも選択することができる。
【0055】
本実施例によれば、駆動装置に用いられるブラシレスモータの回転精度を向上させることができるので、例えば、単一色だけでなく複数色の画像を重畳転写する形式の画像形成装置を対象とした場合に、各駆動力伝達部で回転精度を一定に維持することができるので、画像を転写する際の転写位置ずれをなくすことができ、色ずれなどの異常画像の発生を防止することも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明実施例による駆動力伝達機構の構成を説明するための図である。
【図2】図1に示した駆動力伝達機構が用いられる画像形成装置の一例を示す図である。
【図3】図1に示した駆動力伝達機構におけるギヤの噛み合い状態を示す配置図である。
【図4】駆動源の回転軸を中心として設けられる回転信号発生部の構成を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0057】
100 駆動装置の駆動部
103 ブラシレスモータ
103A 駆動軸
104 メタル軸受け
105 受け部材
106 インナーロータ支持体
107 ステータコイル
200 駆動力伝達部
201 駆動ギヤ
202,203 連結ギヤ
300 回転変動制御部
301 マグネット
302 回路基板
500,501 回転信号発生部
θ 連結ギヤのラジアル方向配置角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数発電機を用いて速度制御が可能な駆動源を備えた駆動装置において、
上記駆動源の回転子に設けられている磁極に対向するパターンにより形成された回転信号発生部を、上記駆動源の回転軸を中心として複数設けた円周毎に配置し、上記信号発生部同士の周期を全ての円周間で同一とし、該信号発生部の周波数を円周数に合わせた倍数にしたことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
周波数発電機を用いて速度制御が可能な駆動源を備えた駆動装置において、
上記駆動源の回転子に設けられている磁極に対向するパターンにより形成された回転信号発生部を、上記駆動源の回転軸を中心として複数設けた円周毎に配置し、各円周に設けられている回転信号発生部同士の位相を1/周波数以下の任意の位相だけずらして互いに重ならないようにしたことを特徴とする駆動装置。
【請求項3】
上記駆動源の回転軸には連動可能な複数のギヤが連結され、複数のギヤとして上記回転軸の軸心に対して均一な角度により連結されたはす歯ギヤが用いられ、各はす歯ギヤのねじれ角が上記駆動軸にかかるラジアル方向での偏荷重をなくすことができる角度に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項4】
上記駆動源の回転軸には連動可能な複数のギヤが連結され、複数のギヤとして上記回転軸の軸芯に対して均一な角度により連結されたはす歯ギヤが用いられ、各はす歯ギヤのねじれ角として、上記駆動軸にかかるスラスト方向の荷重において上記回転子側の磁極とこれに対向する回転信号発生部のうちで最小直径の円周上に設けられている回転信号発生部とが接近する方向のスラスト方向荷重が得られる角度に設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の駆動装置。
【請求項5】
上記複数の円周上に設けられた回転信号発生部は、上記回転子に有する磁極に対して異なる対向面を対象として設定されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の駆動装置を用いることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−54452(P2008−54452A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−229622(P2006−229622)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(302057199)リコープリンティングシステムズ株式会社 (1,130)
【Fターム(参考)】