説明

駆動装置及び駆動システム

【課題】 連結が自在で小型化を図ることができるとともに、十分な伸縮が行うことができ、その際十分な力を発生させることができる駆動装置を提供する。
【解決手段】 一方が他方に対して挿抜されて、その挿抜方向に対して長さを可変とし、対をなす第1の筐体2及び第2の筐体3と、第1の筐体2に固定されるモータ4と、モータ4の回転軸4aと接続され、回転軸4aからの回転運動を挿抜方向の直線運動に変換する運動変換機構5とを備え、第2の筐体3は、運動変換機構5と接続され、第1の筐体2及び/又は第2の筐体3は、モータ4及び運動変換機構5を内包することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関し、特に、伸縮する筐体内に駆動源を備え、空間を有効に使うことができる駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボット等に用いられるアームの駆動装置は、関節アクチュエータといわれるもので、関節の回転を直接減速機をつけた回転式のモータで駆動する方式が用いられていた。
【0003】
また、人間の筋肉に類似した構造として、直線的に伸縮するアクチュエータが考えられている。具体的には、形状記憶合金のワイヤコイルの伸縮を利用したアクチュエータ、空気圧により細長い風船状のバルーンを膨張収縮させるアクチュエータ、超磁歪素子による伸縮を利用したアクチュエータなどが考えられているが、いずれも学術研究のレベルであり、実用化には程遠いものである。
【0004】
また、直線的な伸縮をするアクチュエータとしては、古くから様々な機械に使われているものとして、油圧・空圧シリンダがある。しかし、油圧・空圧シリンダは、コンプレッサ、タンク等の補助機器が必ず必要となっており、そのために小型化が難しいものとなっていた。また、油圧・空圧シリンダは、制御性に限界があり、騒音の点も含め、ロボットに用いられるアームの駆動装置としては、不向きであった。
【0005】
形状記憶合金や超磁歪素子を用いるものとしては、いずれも要素の伸縮量が小さく人間の筋肉に匹敵する20%程度の伸縮量と、必要な力を発生するにはエネルギ供給方法や変換効率などの面で課題が多い。
【0006】
さらに、現状のロボット機器用の関節アクチュエータは、工業用ロボット構造の転用で円筒型の大きなモータブロックが関節部に外付けされる構造のため、集中質量による重心のアンバランスや、デザイン的に制約されてしまうことがあった。また、この関節アクチュエータは、回転1自由度が関節部位を占領するため、人間の複雑な筋肉の動きを再現するには無理があった。
【0007】
【特許文献1】特開平07−332448号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の従来の問題点に鑑みて提案されたものであり、小型化を図ることができるとともに、十分な伸縮が行うことができ、その際十分な力を発生させることができる駆動装置、並びに、この駆動装置を複数用いた駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、本発明に係る駆動装置は、一方が他方に対して挿抜されて、その挿抜方向に対して長さを可変とし、対をなす第1の筐体及び第2の筐体と、上記第1の筐体に固定されるモータと、上記モータの回転軸と接続され、上記回転軸からの回転運動を上記挿抜方向の直線運動に変換する運動変換機構とを備える。そして、上記第2の筐体は、上記運動変換機構と接続され、上記第1の筐体及び/又は第2の筐体は、上記モータ及び上記運動変換機構を内包することを特徴とする。
【0010】
また、上記モータと上記運動変換機構との間に設けられ、上記モータの回転軸の回転を減速又は増速するギア機構を備えるようにしてもよい。
【0011】
また、上記第1の筐体及び上記第2の筐体は、上記第1の筐体内に上記第2の筐体が挿抜される略筒状体からなり、上記モータの回転軸と上記第1の筐体及び上記第2の筐体の挿抜方向とが略一致するようにしてもよい。
【0012】
さらに、上記ギア機構は、上記モータの回転軸に固定される入力側ブラケットと、上記モータの筐体と固定された第1のリングと、その回転軸が上記第1のリングの中心軸と略一致するように上記第1のリングに対して回転自在に配置された第2のリングと、上記モータの回転軸を中心とする円周上に略等しい角度間隔で上記入力側ブラケットに配置された複数のシャフト及び該シャフトにそれぞれ回転自在に取り付けられた複数の遊星車と、上記第2のリング及び出力軸に固定される出力側ブラケットとを有し、上記各遊星車の一部が上記第1のリングの内周面に沿って回転されるとともに上記遊星車の他の部分が上記第2のリングの内周面に沿って回転されるようにしてもよい。
【0013】
また、上記運動変換機構は、上記モータの回転軸又は上記ギア機構の出力軸に固定され、外周面に雄ネジ部が形成された第1の環状部材と、上記第2の筐体の内周面に固定され、内周面に雌ネジ部が形成された第2の環状部材とを有し、上記第1の環状部材の雄ネジ部と上記第2の環状部材の雌ネジ部とが噛合されるようにしてもよい。
【0014】
また、上記運動変換機構は、上記ギア機構の出力側ブラケットに固定され、その中心軸と略一致する位置に設けられ内周面に雌ネジ部が形成された第3の環状部材と、上記第2の筐体の内面で、上記出力側ブラケットの中心軸と略一致する位置に立設され、外周面に雄ネジ部が形成された棒状部材とを有し、上記第3の環状部材の雌ネジ部と上記棒状部材の雄ネジ部とが噛合されるようにしてもよい。
【0015】
また、上記モータの回転軸は、その回転軸の軸心に亘って中空部が設けられ、上記棒状部材は、上記第1の筐体及び上記第2の筐体とによって形成される回転軸方向の長さと略等しい長さを有し、上記棒状部材は、上記中空部内を移動するようにしてもよい。
【0016】
また、上記第1の筐体の内周面及び上記第2の筐体の外周面は、上記第1の筐体内に上記第2の筐体が挿入される略筒形状からなり、上記第1の筐体の内周面及び上記第2の筐体の外周面のいずれか一方に、上記第1の筐体及び上記第2の筐体が上記挿抜方向に対して回転する方向と上記挿抜方向への相対移動を規制するための規制片が設けられ、他方に上記規制片が摺動できる規制溝を備えるようにしてもよい。また、上記第1の筐体及び上記第2の筐体の上記挿抜方向における端部に、取付部材が設けられるようにしてもよく、上記モータは、動力供給用の配線を有し、該配線は、上記第1の筐体に設けられた挿通孔に挿通されるようにしてもよい。
【0017】
さらに、本発明に係る駆動システムは、上述の駆動装置を並列及び/又は直列に連結したことを特徴とする。
【0018】
また、2つの本発明に係る駆動装置を、上記各モータの回転方向を逆にすることにより起動及び/又は変速時の回転モーメントを相殺できるように反対向きに正対称に配置するようにしてもよい。
【0019】
また、本発明に係る駆動装置を、捻り運動を可能とするために、その挿抜方向が被駆動物の駆動方向に対して非平行となるように取り付けるようにしてもよく、また、上記各駆動装置をそれぞれ独立して制御するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る駆動装置は、第1の筐体及び第2の筐体の内部に駆動源であるモータや、運動変換機構が設けられており、第1の筐体及び第2の筐体とが挿抜方向に対して長さが可変とされ、伸縮する。そのため、第1の筐体や第2の筐体の内部の空間を無駄なく使うことができ、小型化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る駆動装置を実施するための最良の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1〜図3に示すように、駆動装置1は、円筒状の筐体2と、筐体2に挿入される円筒状の筐体3と、筐体2内部に固定されたモータ4と、モータ4の回転運動を直線運動に変換する運動変換機構5とから構成される。駆動装置1は、図1(A)及び図1(B)に示すように、筐体2に挿入された筐体3が挿抜され、全体長を可変とするように駆動する。駆動装置1は、運動変換機構5において、モータ4の回転運動を直線運動に変換し、筐体2と筐体3とを相対的に移動させ、全体の長さを可変とする。また、駆動装置1は、それぞれの筐体2、3の端部に、例えば、別の駆動装置1を連結させるための取付片6が設けられている。
【0023】
筐体2及び筐体3は、金属材料から形成され、一方の端部が開口された略円筒形状を有し、筐体2と筐体3とで、内部に空間を形成するように、それぞれの開口された端部同士を対向させて、筐体2に筐体3が挿抜される。具体的には、筐体2は、円筒部分の外径が、例えば直径10mmであり、筐体3の円筒部分の外径はそれよりも小さい。なお、筐体2及び筐体3は、上述に限らず一方が他方に対して挿抜される一対の筐体であればよく、例えばその断面が矩形となるものであってもよい。また、筐体2及び筐体3は、上述のように金属材料からなるものに限らず、十分な強度を有するものであればいかなる材料から形成されてもよい。
【0024】
モータ4は、駆動装置1の駆動源であり、外部から供給される電源によって駆動する小型の回転式のモータである。モータ4は、その回転軸4aが筐体2の中心軸と略一致するように、筐体2内の底部2aに固定されている。なお、モータ4は、上述のように筐体2の底部2aに固定されることに限らず、筐体2と筐体3との伸縮に影響を与えない位置であれば、いかなる場所において固定されてもよい。
【0025】
運動変換機構5は、図2及び図3に示すように、モータ4の回転軸4aに固定され、外周面に雄ネジ部7aが形成された環状部材7と、筐体3の内周面に固定される環状部材8とから構成されており、モータ4からの回転運動を筐体2と筐体3とが挿抜される方向、つまりモータ4の回転軸4a方向の直線運動に変換する。
【0026】
取付片6は、筐体2及び筐体3のそれぞれの端部に設けられ、例えば、複数の駆動装置1を連結する際に連結部材を掛けることができるように、貫通孔6aが形成されている。
【0027】
環状部材7は、金属材料からなり、その内径がモータ4よりも大きく、外径が筐体3よりも小さい大きさに形成され、モータ4の回転軸4aに回転軸ブラケット4bを介して接続される。環状部材7は、外周面に雄ネジ部7aが形成され、その中心軸はモータ4の回転軸4aと略一致する位置に取り付けられ、モータ4の回転軸4aの回転と一体になって回転する。環状部材8は、金属材料からなり、筐体3の内周面に取り付けられる。また、環状部材8は、その内周面に雌ネジ部8aが形成され、環状部材7の外周面に設けられた雄ネジ部7aと噛合される。なお、環状部材7は、上述のように、回転軸ブラケット4bを介して回転軸4aと接続されているが、これに限らず、回転軸ブラケット4bと一体に形成されるようなものであってもよい。また、同様に、環状部材8においても、筐体3と一体に形成し、その内周面に雌ネジ部8aを設けるようにしたものであってもよい。
【0028】
このように構成された運動変換機構5は、モータ4が回転駆動すると、モータ4の回転軸4aと一体に回転する環状部材7も回転し、その外周面に設けられた雄ネジ部7aと噛合された環状部材8の雌ネジ部8aが送り出され、結果として筐体3がその中心軸方向、すなわち、筐体2、3が挿抜される方向に移動する。
【0029】
なお、環状部材7の雄ネジ部7a及び環状部材8の雌ネジ部8aは、それぞれ環状部材7の外周面全体や環状部材8の内周面全体に亘って設けられることに限らず、互いに噛合される所定の位置で、移動する所定の長さだけ設けるようにしてもよい。
【0030】
なお、運動変換機構5は、環状部材8、すなわち筐体3が環状部材7と一緒に回転しないために、筐体2と筐体3との間に回転防止の規制手段9を設けるようにしてもよい。具体的には、規制手段9は、図3及び図4に示すように、筐体3の外周面の所定箇所に設けられた規制片11と、規制片11が摺動する筐体2の中心軸方向に所定の長さに形成された規制溝12とから構成される。この規制手段9により、筐体3は、筐体2と一緒に回転することがない。つまり、規制手段9は、規制溝12が延伸される方向にのみ、移動することになる。さらに、規制手段9は、規制溝12を延伸させる方向の長さを規制することにより、伸縮量までも規制することができる。なお、規制手段9は、上述に限らず、規制片11を筐体2の内周面に設け、規制溝12を筐体3に設けるようにしてもよい。また、規制溝12は、説明上、図4に示すように、貫通孔を形成しているが、これに限ったものではない。
【0031】
以上のように構成された駆動装置1は、筐体2及び筐体3の内部に駆動源であるモータ4や、運動変換機構5が設けられており、2つの筐体2、3とが挿抜方向に対して長さが可変とされ、伸縮する。そのため、筐体2や筐体3の内部の空間を無駄なく使うことができ、小型化を実現することができる。
【0032】
また、駆動装置1は、モータ4への電源の配線を筐体2の底部2aに設けた挿通孔を介して行うようにすると、配線のための煩わしさがなく、設計上優位なものとなる。
【0033】
なお、筐体2及び筐体3は、上述のように金属材料からなるものに限らず、十分な強度を有するものであればいかなる材料から形成されてもよい。
【0034】
次に、本発明に係る駆動装置の第2の実施の形態について説明をする。なお、本説明において、駆動装置1と同様の構成については同様の符号を付し、その説明を省略する。
【0035】
駆動装置20は、図5及び図6に示すように、円筒状の筐体2と、筐体2に挿入される円筒状の筐体3と、筐体2内部に固定されたモータ4と、モータ4の回転軸4aの回転を減速又は増速するギア機構21と、ギア機構21と接続され、ギア機構21の出力軸からの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構22とから構成される。駆動装置20は、筐体2及び筐体3の中空部内にモータ4、ギア機構21、運動変換機構22が設けられ、モータ4と運動変換機構22との間にギア機構21を設けることにより、モータ4の回転軸4aの回転を減速又は増速することができる。
【0036】
ギア機構21は、モータ4の回転軸4aに固定される入力側ブラケット28と、モータ4に固定された固定リング23と、固定リング23に対して回転自在に配置された回転リング24と、モータ4の回転軸4aを中心とする円周上に等しい角度間隔で入力側ブラケット28に配置された遊星車25、26、27と、回転リング24及び出力軸29aに固定される出力側ブラケット29とから構成されている。
【0037】
固定リング23は、金属材料から形成され、モータ4と固定されたフレーム23bによりモータ4と固定されている。固定リング23は、その内周面にゴム系材料等の摩擦係数の高い材料によって形成された帯状の部材が全周に亘って貼り付けられており、ガイド部23aが形成されている。
【0038】
回転リング24は、金属材料から形成され、固定リング23に対して回転自在に設けられている。回転リング24は、その外径及び内径が固定リング23より小さく形成されている。回転リング24は、固定リング23と同様に、その内周面にゴム系材料等の摩擦係数の高い材料によって形成された帯状の部材が全周に亘って貼り付けられており、ガイド部24aが形成されている。
【0039】
なお、固定リング23及び回転リング24は、上述に限らず、それぞれの内周面に摩擦部材を設ける代わりに、内周面にローレット加工等の摩擦面加工や、従来から用いられている内歯車加工を施すようにしても良い。
【0040】
入力側ブラケット28は、ギア機構21に入力される入力軸であるモータ4の回転軸4aに固定される。入力側ブラケット28は、金属材料によって形成され、略円柱形状を有し、その中心軸がモータ4の中心軸と略同一となるように配置される。入力側ブラケット28は、円周上近傍に等間隔で、中心軸方向が入力側ブラケット28の中心軸と平行となるように、3本のシャフトが立設され、それぞれのシャフトに遊星車25、26、27が取り付けられている。
【0041】
遊星車25は、入力側ブラケット28から立設されたシャフト30に対し回転自在に設けられている。遊星車25は、金属によって形成され、その外周面には固定リング23、回転リング24に沿ってそれぞれ案内される2つの被ガイド面が形成されている。
【0042】
遊星車25は、その外周面に固定リング23のガイド部23aに沿うように被ガイド面であるローラ部25aが形成されており、このローラ部25aとガイド部23aとが当接された状態で案内される。また、遊星車25は、その外周面に回転リング24のガイド部24aに沿うように被ガイド面であるローラ部25bが形成されており、このローラ部25aとガイド部24aとが当接された状態で案内され一体となって回転する。なお、本説明においては、遊星車25のローラ部25aは、ローラ部25bより径が大径に形成されているが、これに限らず、所望とする減速比を得るために、適宜変更するようにしてもよい。なお、ローラ部25a、25bは、上述に限らず、固定リング23、回転リング24に対応した外歯車であってもよい。
【0043】
また、遊星車25の内部には、複数のベアリング30a、30aが設けられており、これらベアリング30a、30aを介してシャフト30に回転自在に軸支されている。
【0044】
なお、駆動装置20においては、図5に示すように、シャフト30は、入力側ブラケット28に3本設けられていることについて記載したが、中心軸周りに等間隔に配置されるものであればこれに限定されない。また、遊星車26、27については、遊星車25と同様の構成を有しており、その説明は省略する。
【0045】
出力側ブラケット29は、中心部が中空に形成された出力軸29aと、回転リング24が固定され回転リング24と一体に回転されるようにする円盤上のフレーム29bとから構成されている。出力軸29aは、後述する筐体3に設けられた棒状部材33が螺合されるように中心部に貫通孔32に形成されている。フレーム29bは、略円盤上の部材からなり、出力軸29aと一体に形成され、回転リング24からの力を出力軸29aに伝達するため、円周部近傍において回転リング24が固定されている。また、出力側ブラケット29の出力軸29bの外周面には、固定部材31aを介して筐体2と固定されたベアリング31が設けられている。
【0046】
以上のように構成されたギア機構21は、入力軸であるモータ4の回転軸4a、固定リング23、回転リング24、出力軸29aの中心軸が全て同軸となるように配置されており、モータ4の回転軸4aの回転力が遊星車25、26、27を介して回転リング24及びこれに接続された出力側ブラケット29、出力軸29aに伝達されることによって減速又は増速される。つまり、回転軸4aの回転によって入力側ブラケット28が回転すると、遊星車25、26、27のローラ部25aが固定リング23のガイド部23aに沿って自転しながら公転するとともに遊星車25、26、27のローラ部25bがローラ部25aとそれぞれ一体に自転しながら公転し、これによって遊星車25、26、27のローラ部25bに当接されている回転リング24が回転されるため、減速又は増速された出力が出力側ブラケット29に伝達され出力軸29aから取り出されることになる。なお、この場合の減速比は、遊星車のローラ部の外径、歯数比等によって規定される。
【0047】
次に、駆動装置20における運動変換機構22について説明する。運動変換機構22は、ギア機構21の出力軸29aから出力される回転運動を、中心軸方向への直線運動に変換する機構であり、出力側ブラケット29に形成された貫通孔32の内周面に設けられた雌ネジ部32aと、この貫通孔32に螺合される筐体3に形成された棒状部材33とによって構成される。
【0048】
出力側ブラケット29の中心軸に沿って形成された貫通孔32は、その内周面に亘って雌ネジ部32aが形成されている。貫通孔32は、その中心軸がモータ4の回転軸4aと略同一となるような位置に設けられている。
【0049】
棒状部材33は、筐体3内の底部3aに立設され、その外周面に雄ネジ部33aが形成され、雌ネジ部32aと螺合されるような大きさに形成されている。
【0050】
このように構成された運動変換機構22は、出力軸29aが回転することにより、貫通孔32の雌ネジ部32aに螺合される棒状部材33を中心軸方向に移動させる。これにより、棒状部材33に接続された筐体3が移動し、駆動装置20として、直線運動をすることができる。
【0051】
また、運動変換機構22は、棒状部材33がモータ4の回転軸4a等と同様の中心軸に沿って移動することになり、全体長を短くする場合は、出力側ブラケット29を貫通し遊星車が設けられたギア機構21の内部まで移動することになる。ギア機構21は、遊星車25、26、27が中心軸に対して公転するので、中心軸付近は中空状態となっている。したがって、棒状部材33は、ギア機構21の中心軸に沿って移動しても、ギア機構21に何の影響も与えず、中空部を移動することとなり、スペースを有効に使用でき、装置全体の小型化を実現することができる。
【0052】
以上のように構成された駆動装置20は、駆動装置1と同様に、筐体2及び筐体3の内部に駆動源であるモータ4、ギア機構21、運動変換機構22が設けられており、2つの筐体2、3とが挿抜方向に対して長さが可変とされ、伸縮する。そのため、筐体2や筐体3の内部の空間を無駄なく使うことができ、小型化を実現することができる。さらに、駆動装置20においては、運動変換機構22の送りネジ機能を有する棒状部材33は、筐体3内に形成され、ギア機構21の遊星車25、26、27が公転する中心軸に沿って移動でき、筐体2及び筐体3の伸縮量を十分確保できるとともに、小型化を実現することができる。
【0053】
なお、駆動装置1は、上述に限らず、駆動装置20と同様のギア機構を設け、減速又は増速を行うようにしてもよい。
【0054】
また、駆動装置20は、上述のように遊星車を用いた中空部を有するギア機構21を用いることに限らず、例えば、回転軸に中空部を有するモータも用い、さらに、伸縮量を大きくすることができる。具体的には、図7に示すような駆動装置40を用いることができる。
【0055】
図7及び図8に示すように、駆動装置40は、駆動装置1のモータ4の代わりに、モータ41が用いられる。モータ41は、モータの回転軸の軸心に亘って中空部が設けられたモータである。モータ41を用いることにより駆動装置40は、棒状部材33を筐体2と筐体3とによって形成される全体長の最小長さと略等しい長さにすることができ、全体長を2倍近くまで伸縮させることができるようになる。具体的には、駆動装置40のモータ41は、中心軸が中空となっているドーナツ状の2種類のステータヨーク42、43を交互に並べ、その周囲を囲むように、永久磁石からなるロータヨーク44が設けられ、このロータヨーク44が回転することにより、出力を得るものである。このモータ41は、ステータヨーク42、43が中空に形成されており、この中空部に運動変換機構22の棒状部材33を挿抜させることができ、駆動装置40の伸縮量を多く取ることができる。なお、モータ41は、上述のように2種類のステータヨーク42、43を設けた2相駆動の場合について説明したが、これに限らず、3種類のステータヨークを設けて3相駆動させるようなものであってもよい。
【0056】
次に、本発明に係る駆動装置の利用例について説明する。
【0057】
図9に示すように、駆動システム60は、例えば本発明に係る駆動装置1を2個連結させるようにしたものである。また、このとき、一の駆動装置のモータは、他の駆動装置のモータの回転方向が逆回転となるようにする。このようにすることにより、駆動システム60は、動作開始時、動作終了時、変速時など、一方の駆動装置を駆動させ、他方の駆動装置に対し逆回転させることにより、発生する余分な回転モーメントを打ち消すようにすることができ、スムーズな駆動を行うことができる。
【0058】
また、本発明に係る駆動装置は、図10に示すように、駆動装置を複数個並列、直列に繋ぐ駆動システム70に適用することができる。駆動システム70は、小型で円筒状の駆動装置1を用いることにより、より筋肉組織に近い運動を実現することができる。例えば、駆動システム70は、3箇所の関節71、72、73に適用され、本発明に係る駆動装置が関節71、72間においては、それぞれの関節の駆動方向に設けられ、関節72、73間においては、2つ並列に接続されている。これにより、関節71、72間においては、あらゆる駆動方向に対応することができ、また、関節72、73間においては、2倍の駆動力を得ることができる。
【0059】
また、複数の駆動装置が設けられる駆動システム70は、その制御を、電流、電圧を制御するのみで、容易に力、速度を制御することができ、センサを設け、応答を確認しながらの制御と比べて、設計が容易となる。
【0060】
さらに、本発明に係る駆動装置は、図11〜図14に示すように、様々な駆動システムに用いることができる。具体的には、図11に示すように、駆動システム80は、可変テンショナとして用いられ、例えば、トランポリンやテントのテンションを制御することができる。駆動システム80は、例えばテントに適用する場合、駆動装置を伸縮させることで、組み立てを容易に行なうようにできる。また、図11に示すように、駆動システム80は、トランポリンのテンションを維持するテンショナとして利用でき、身体が不自由な方の補助装置としても利用できる。
【0061】
また、本発明に係る駆動装置は、図12に示すような配管用ロボットの駆動システムとして利用したり、図13に示すように、複数の駆動装置を接続し、駆動させることにより、立体造形の一部としての駆動システムとして利用したり、図14に示すような室内装飾用として利用することができる。
【0062】
また、本発明に係る駆動装置は、図15及び図16に示すように、ロボット用アームの関節として、具体的には、可動方向に対し、斜め、らせん状に架け渡すことにより、伸縮及び捻り運動を実現することができる。
【0063】
駆動システム90は、図15に示すように、2つの駆動装置1が直列に接続され、その端部が被駆動物91の駆動方向に対して非平行となるように取り付ける。つまり、駆動システム90は、駆動装置1が連結された被駆動物91の伸縮方向である中心軸92方向に対して、捻れた状態で固定されている。これにより、駆動システム90は、被駆動物91に対し、伸縮と捻りが合わさった複雑な動作をさせることができる。
【0064】
駆動システム100は、図16に示すように、複合関節101に用いられ、駆動システム90と同様に、回転軸方向に対して非平行である捻れの状態となるように駆動装置を斜めに連結させる。これにより、複合関節101に対して容易に捻り運動を行なわせることができる。
【0065】
以上のように、本発明に係る駆動装置は、ロボット用のアームのアクチュエータのみならず、災害救助ロボット、リハビリテーション用器具、人工筋肉として様々な分野での利用が想定できる。また、本発明に係る駆動装置は、直列並列多数配置することができ、多自由度の動作を容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】(A)は、本発明に係る駆動装置の全体長が最も短い状態を示す斜視図であり、(B)は、駆動装置の全体長が最も長い状態を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る駆動装置の運動変換機構の構成を示した斜視図である。
【図3】本発明に係る駆動装置の図1(A)のx−x´線における断面図である。
【図4】本発明に係る駆動装置の規制手段を説明するための図である。
【図5】本発明に係る駆動装置の第2の実施の形態について説明するための分解斜視図である。
【図6】図5のy−y´線における断面図である。
【図7】本発明に係る駆動装置の第3の実施の形態について説明するための模式図である。
【図8】本発明に係る駆動装置の中空部を有するモータについて説明するための図である。
【図9】本発明に係る駆動装置の第4の実施の形態について説明するための斜視図である。
【図10】本発明に係る駆動装置をロボットアームとして利用した場合を示した図である。
【図11】本発明に係る駆動装置の一利用例を示した図である。
【図12】本発明に係る駆動装置の他の利用例を示した図である。
【図13】本発明に係る駆動装置の他の利用例を示した図である。
【図14】本発明に係る駆動装置の他の利用例を示した図である。
【図15】本発明に係る駆動装置の他の利用例を示した図である。
【図16】本発明に係る駆動装置の他の利用例を示した図である。
【符号の説明】
【0067】
1、20、40、50 駆動装置、2、3 筐体、2a、3a 底部、4 モータ、4a 回転軸、4b 回転軸ブラケット、5 運動変換機構、6 取付片、7、8 環状部材、7a 雄ネジ部、8a 雌ネジ部、9 規制手段、11 規制片、12 規制溝、21 ギア機構、22 運動変換機構、23 固定リング、23a、24a ガイド部、23b フレーム、24 回転リング、25、26、27 遊星車、25a、25b ローラ部、28 入力側ブラケット、29 出力側ブラケット、29a 出力軸、30 シャフト、30a ベアリング、31 ベアリング、31a 固定部材、32 貫通孔、32a 雌ネジ部、33 棒状部材、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が他方に対して挿抜されて、その挿抜方向に対して長さを可変とし、対をなす第1の筐体及び第2の筐体と、
上記第1の筐体に固定されるモータと、
上記モータの回転軸と接続され、上記回転軸からの回転運動を上記挿抜方向の直線運動に変換する運動変換機構とを備え、
上記第2の筐体は、上記運動変換機構と接続され、
上記第1の筐体及び/又は第2の筐体は、上記モータ及び上記運動変換機構を内包すること
を特徴とする駆動装置。
【請求項2】
上記モータと上記運動変換機構との間に設けられ、上記モータの回転軸の回転を減速又は増速するギア機構を備えることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
上記第1の筐体及び上記第2の筐体は、上記第1の筐体内に上記第2の筐体が挿抜される略筒状体からなり、上記モータの回転軸と上記第1の筐体及び上記第2の筐体の挿抜方向とが略一致することを特徴とする請求項1又は2記載の駆動装置。
【請求項4】
上記ギア機構は、
上記モータの回転軸に固定される入力側ブラケットと、
上記モータの筐体と固定された第1のリングと、
その回転軸が上記第1のリングの中心軸と略一致するように上記第1のリングに対して回転自在に配置された第2のリングと、
上記モータの回転軸を中心とする円周上に略等しい角度間隔で上記入力側ブラケットに配置された複数のシャフト及び該シャフトにそれぞれ回転自在に取り付けられた複数の遊星車と、
上記第2のリング及び出力軸に固定される出力側ブラケットとを有し、
上記各遊星車の一部が上記第1のリングの内周面に沿って回転されるとともに上記遊星車の他の部分が上記第2のリングの内周面に沿って回転されるようにしたこと
を特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項5】
上記運動変換機構は、
上記モータの回転軸又は上記ギア機構の出力軸に固定され、外周面に雄ネジ部が形成された第1の環状部材と、
上記第2の筐体の内周面に固定され、内周面に雌ネジ部が形成された第2の環状部材とを有し、
上記第1の環状部材の雄ネジ部と上記第2の環状部材の雌ネジ部とが噛合されること
を特徴とする請求項1又は4記載の駆動装置。
【請求項6】
上記運動変換機構は、
上記ギア機構の出力側ブラケットに固定され、その中心軸と略一致する位置に設けられ内周面に雌ネジ部が形成された第3の環状部材と、
上記第2の筐体の内面で、上記出力側ブラケットの中心軸と略一致する位置に立設され、外周面に雄ネジ部が形成された棒状部材とを有し、
上記第3の環状部材の雌ネジ部と上記棒状部材の雄ネジ部とが噛合されること
を特徴とする請求項4記載の駆動装置。
【請求項7】
上記モータの回転軸は、その回転軸の軸心に亘って中空部が設けられ、
上記棒状部材は、上記第1の筐体及び上記第2の筐体とによって形成される回転軸方向の長さと略等しい長さを有し、
上記棒状部材は、上記中空部内を移動すること
を特徴とする請求項6記載の駆動装置。
【請求項8】
上記第1の筐体の内周面及び上記第2の筐体の外周面は、上記第1の筐体内に上記第2の筐体が挿入される略筒形状からなり、上記第1の筐体の内周面及び上記第2の筐体の外周面のいずれか一方に、上記第1の筐体及び上記第2の筐体が上記挿抜方向に対して回転する方向と上記挿抜方向への相対移動を規制するための規制片が設けられ、他方に上記規制片が摺動できる規制溝を備えることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項9】
上記第1の筐体及び上記第2の筐体の上記挿抜方向における端部に、取付部材が設けられることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項10】
上記モータは、動力供給用の配線を有し、該配線は、上記第1の筐体に設けられた挿通孔に挿通されることを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項11】
請求項1乃至9記載の駆動装置を複数用い、並列及び/又は直列に連結したことを特徴とする駆動システム。
【請求項12】
請求項1乃至9記載の駆動装置を2つ用い、上記各モータの回転方向を逆にすることにより起動及び/又は変速時の回転モーメントを相殺できるように反対向きに正対称に配置することを特徴とする駆動システム。
【請求項13】
請求項1乃至9記載の駆動装置を用い、捻り運動を可能とするために、その挿抜方向が被駆動物の駆動方向に対して非平行となるように取り付けることを特徴とする駆動システム。
【請求項14】
上記各駆動装置をそれぞれ独立して制御することを特徴とする請求項11記載の駆動システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−28712(P2007−28712A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203554(P2005−203554)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】