高エネルギー高出力電極および電池
サブアセンブリを準備するプロセスおよびサブアセンブリを組み込んだ電気化学セルと共に、電気化学装置で使用するためのサブアセンブリが提供される。いくつかの実施形態では、サブアセンブリは、(a)第1の電極と、(b)セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方とを含む。第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に結合されている。いくつかの実施形態では、サブアセンブリは、更に、第2の電極と、第2の集電体とを含む。いくつかの実施形態では、電極またはセパレーターは焼結される。直列に接続された複数の積層電気化学セルを含む双極型セルがまた提供される。各積層の正電極と負電極は、焼結された電極を含む。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、「高エネルギー高出力電極および電池」と題し、2008年3月25日に出願された同時係属米国特許出願第61/039,387号に基づいて米国特許法119条(e)の優先権を伴っており、引用することによって本明細書に含めることとする。
【背景技術】
【0002】
現在のリチウム充電式電池の活性材料の体積および重量利用は、いくつかの要因により50%よりはるかに小さい。リチウム充電式電池で現在使用されている微粒子系電極は、出発粉末と、高分子バインダー、溶媒、および炭素などの導電性添加剤粉末との混合によって調製されている。混合された混合物は、次いで金属箔集電体上に被覆され、高圧で乾燥、カレンダーされて、高密度化コーティングを得る。これらの電極は、活性材料の充填密度が不十分であり、典型的に60体積%未満であり、適切な率容量については、開放気孔率は典型的に30体積%〜40体積%である。電極体積の実質的な割合も、電極の処理を向上させるために導入される高分子バインダー、および電極の電子伝導性を向上させるために添加される炭素添加剤によって占有されている。炭素添加剤は、インターカレーション酸化物およびポリアニオン化合物などの電子伝導性が不十分な化合物を使用する電極において特に必要である。これは、そのような化合物の粉末粒子が圧縮された場合、硬質非変形粒子間で高抵抗性「点」接触を形成する傾向があり、伝導性ネットワークが不十分となるからである。これらの電極添加剤は低い比重を有しており、従って実質的な体積を占有する。
【0003】
更に、そのような電極におけるリチウムイオンおよび電子の輸送は、不十分であり、活性材料の完全な利用を達成するために、比較的薄い電極、通常、150μm未満の厚みを必要とする。そのような充電式電池の薄いラミネート構造は、バインダー、導電性添加剤、集電体箔、セパレーターフィルムおよび電解質を含めて非蓄電材料の大きな割合を必要とし、前述の不十分な体積および重量利用となる。高出力電池では、電極の熱伝導率は、また、サイクル中の過剰の熱を防ぐために高くあるべきであり、過剰の熱は、エネルギーおよび出力の低下を引き起こすとともに電池の寿命を制限する。限られた点接触を介して粒子から粒子に熱を運ばなければならないので、微粒子系電極は不十分な熱伝導率を有する。これらの制限は、更に、インターカレーション酸化物またはリン酸塩や硫酸塩などのポリアニオン化合物を使用する正極または負極において深刻になる。そのような化合物が不十分な熱伝導率を有するからである。
【0004】
従来の電池構造の利用を制限する他の態様は、各電極が共通端子に接続されるという要件である。巻回セルでは、接続点が、各電極の側面から延在するタブを介する。このタブの体積および表面積は、タブを介して流れることができるとともに装置に到達可能な電流の量を制限する。
【0005】
従って、活性材料の高い充填密度、速い電子およびイオン輸送反応速度、高い熱伝導率を有するとともに、更に、高い電気化学利用を有しながら厚い電極として準備することができる電極を有することは価値がある。
【0006】
Chiangらの2008年5月23日に出願され、「電池およびその使用のための電極」と題する国際公開WO08/153749号公報は、新規な電極材料および設計を含めて、電池または他の電気化学装置、ならびにこれらで用いるシステムおよび材料に関し、引用することによってその全体を含めることとする。その公報は、更に、高出力および最小体積を有する電池を開示している。
【発明の概要】
【0007】
この文献は、電極材料、セル材料、セル設計、製造方法、および本発明の装置のために達成可能な比エネルギーおよび体積エネルギーを含めて、いくつかの詳細な実施形態について説明する。
【0008】
電池の次の特徴をもたらす。
・充電式電池のための同時焼成された電極−セパレーター構造。
・高エネルギー密度および比エネルギー、または高出力密度および比出力をもたらす活性材料の高い体積および重量利用を有する前記同時焼成された電極構造を利用する充電式リチウム電池。設計は、携帯電子または無線通信装置、電動工具、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグイン電気自動車(PHEV)、完全電気自動車(EV)、バックアップ電源、エネルギー取り込みシステム用蓄電池、または出力ユーティリィティ用の周波数調整システムを含む出力特性向上システムに役立つ。
・熱伝導率および安全性を向上した焼結正極および負極または同時焼成電極−セパレーター構造を使用する双極型セルの設計。
【0009】
300Wh/kgの比エネルギーおよび600W/kg(即ち、稼動の〜2C放電率)の比出力を満足するまたは超えることができる電極およびエネルギー貯蔵装置を提供する。
【0010】
1つの態様では、電気化学装置で用いるサブアセンブリ(部分組立品)を記載する。サブアセンブリは、(a)第1の電極と、(b)セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含む。第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に結合されている。用語「結合(Bonded)」は、本技術分野、特に電気化学および電気化学装置の技術分野において理解されるように使用される。例えば、結合は、材料間の密接な関係を示し、結合としては化学的結合または物理的結合が挙げられるが、必ずしもそれらを含むというわけではない。「結合」は、材料が溶融することをも示すために使用される。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に熱結合されている。熱結合によって、示されるのは材料が熱の適用を含む方法によって結合または溶融するということである。
【0012】
いくつかの実施形態では、サブアセンブリは焼結サブアセンブリである。
【0013】
他の態様では、電気化学装置で用いるサブアセンブリを記載する。サブアセンブリは、(a)第1の焼結電極と、(b)焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含む。第1の焼結電極は、焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に結合されている。
【0014】
更なる態様では、電気化学装置で用いるサブアセンブリは、(a)第1の電極と、(b)セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含む。サブアセンブリは、(i)第1の電極をセパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせ、(ii)第1の電極と、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方とを、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱することによって製造されている。
【0015】
更に他の態様では、電気化学装置で用いるさらなるサブアセンブリは、(a)第1の焼結電極と、(b)焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含む。サブアセンブリは、(i)第1の焼結電極を焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせ、(ii)第1の焼結電極と、焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方とを、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱することによって製造されている。
【0016】
1つの実施形態では、電気化学装置を記載しており、電気化学装置は、
(a)外部回路と電気的に接続した正の集電体と電子的に接触した正極と、
(b)外部回路と電気的に接続した負の集電体と電子的に接触した負極と、
(c)正極と負極との間に位置したセパレーターと、
(d)正極および負極とイオン接触した電解質と、を含む。
【0017】
正極または負極およびセパレーターは焼結サブアセンブリを含む。いくつかの実施形態では、装置中の不活性材料の質量分率は約50%未満である。いくつかの実施形態では、装置の比エネルギーは約600W/kgより大きな出力密度で約300Wh/kgより大きい。
【0018】
他の態様では、電気化学装置で用いるサブアセンブリを準備する方法は、
(a)第1の電極をセパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせること、
(b)第1の電極およびセパレーターまたは第1の集電体を、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱すること、を含む。
【0019】
更なる態様では、双極型セルを記載する。双極型セルは複数の積層電気化学セルを含み、電気化学セルは直列に接合されている。各積層電気化学セルは、
(a)外部回路と電気的に接続した正の集電体と電子的に接触した正極と、
(b)外部回路と電気的に接続した負の集電体と電子的に接触した負極と、
(c)正極と負極との間に位置したセパレーターと、
(d)正極および負極とイオン接触した電解質と、を含み、
各スタックの正極および負極は焼結電極を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の集電体およびセパレーターは第1の電極の対向面に結合されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載したサブアセンブリは、第2の電極を含み、第1および第2の電極はセパレーターの対向面に結合されている。いくつかの実施形態では、第2の電極および第1の電極は、セパレーターの対向面との熱結合を有しており、第2の集電体およびセパレーターは第2の電極の対向面に結合されている(例えば、図1)。所定のサブアセンブリでは、第1および第2の電極は各々独立して焼結される、または焼結されない。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した焼結サブアセンブリは、厚みが少なくとも約200μmである。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および焼結サブアセンブリの厚みは、平均厚みから25%未満変動する。即ち、電極またはサブアセンブリの、その長さおよび幅にわたる最小寸法の長さは、厚みが大きくばらつくことなく実質的に一定である。いくつかの実施形態では、厚みのばらつきは、平均厚みから20%未満、15%未満または10%未満である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、開示のみを目的に示し、本発明の限定を意図しない以下の図面を参照して説明される。
【0024】
【図1】双極型セルの断面図である。
【図2】双極型セルの分解図である。
【図3a】厚いモノリシック電極を組込む高エネルギーバイレイヤーセルの設計の概略説明図である。
【図3b】多層セルの繰り返し単位の概略説明図であり、集電体を有する焼結カソードを表し、各面上の負極によって境界を示される。
【図3c】例示の多層積層セル構成の概略説明図である。
【図4a】85%の密度を有する電極の写真説明図である(上面図)。
【図4b】図4aに示す電極の側面図の写真説明図である。
【図4c】図4a、4bに示すLiCoO2電極についての第6及び第7サイクルの間の充電−放電曲線を示す。
【図5】5つの異なる電気活性材料についての、焼結電極の密度の関数としてのカソード利用を示すグラフである。
【図6】5つの異なるカソード化合物についての、密度の関数としての比エネルギーを示すグラフである。
【図7】積層双極型セルアレイの積層を含めて、本明細書に記載したセル設計を拡大するための開発段階の概略描写である。
【詳細な説明】
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するセルおよび装置はモノリシック高密度焼結電極を利用する。そのような電極は、従来の電極の不活性成分およびセル充填で占有された寄生体積および質量を最小限にし、それによって、優れた質量および体積効率を有するセルおよび装置をもたらす。
【0026】
重要で予想外の発見は、電気化学サイクル中の制限された結晶体積変化を有する正極について、焼結された肉眼的に厚く(>200μm)高密度(理論的に>65%)の電極が、機械的または電気的不具合のない実用的な率で繰り返しサイクルすることができるということである。浸透電極ネットワークは、導電性添加剤およびバインダーがない場合に高い電子伝導性をもたらす。この技術革新は、従来達成できなかった体積および重量利用の新しいセル設計を可能にする。1つの実施形態では、本明細書に記載したセルおよび装置は、本明細書に記載した電極の全体にわたる急速な反応速度を得るために液体またはゲル電解質を含む(例えば、厚い焼結電極または電極−セパレーターサブアセンブリ)。他の実施形態では、固体高分子電解質は電極およびセルを介して注入される。
【0027】
高エネルギーおよび/または高率を示す電気活性化合物は、本明細書に記載した質量効率セルの設計に役立つ。いくつかの実施形態において、本明細書により詳細に説明するように、少なくとも1つの電極材料は、金属酸化物または金属フッ化物化合物を含む。そのような化合物は、この設計アプローチに適する固有の結晶および物理的特性を有する。更に、ナノ構造の形態では、これらの化合物は、所望の電気化学的性能をもたらすと考えられる。1つの実施形態では、金属フッ化物化合物は、比較的より高い固有エネルギー密度および向上した安全性をもたらす。
【0028】
セル構造は、また、技術革新的な負極の特徴およびセパレーターの特徴を一体にする。いくつかの実施形態では、電解質またはセパレーター層は、金属リチウムアノードと共に使用される、Lipon(酸窒化リン酸リチウム)のフィルムなどの固体イオン伝導性バリアフィルムまたは固体高分子電解質を含む。この組みあわせは、リチウム−デンドライト関連の不具合を抑制するのに有効である。リチウムデンドライト形成を抑制することができる他のバリアコーティングおよび/または電解質添加剤を使用してもよい。
【0029】
本明細書で使用するように、「カソード(cathode)」および「正極(positive electrode)」は置き替え可能に使用される。また、本明細書で使用するように、「アノード(anode)」および「負極(negative electrode)」は置き替え可能に使用される。
【0030】
また、本明細書で使用するように、「粒子サイズ(particle size)」は凝集体粒子サイズを称する。凝集体粒子は、溶融一次粒子の分鎖を称する。 凝集体粒子サイズは、凝集体粒子の平均最大寸法を称し、凝集体粒子を構成する一次粒子ではない。凝集体は、更に塊と区別され、容易に分散することができる凝集体のゆるいつながりである。
【0031】
「ナノスケール(nanoscale)」は、500nm未満を意味し、好ましくは100nm未満である。
【0032】
本発明は、前例がない質量および体積効率の、製造可能で安全なリチウム充電式電池技術を提供する。不活性成分およびセル充填で占有された寄生体積および質量を最小限にするために、モノリシック高密度焼結電極を使用する新規な設計アプローチを使用する(図3)。
【0033】
いくつかの実施形態では、焼結電極は正極である。焼結電極を使用すると、とりわけ、より高い体積充填率(化合物の理論密度の>65%に対して典型的なカソード中の〜55%)も有しながら、カソードの厚みが増加する(>200μmに対して典型的な充電式電池カソードの〜100μm)。この組みあわせによって、不活性材料の質量分率をセルレベルで50%未満に低減することが可能となる。いくつかの実施形態において、所定のセル容量に必要なセルにおける繰り返し層の数を、典型的な充電式電池カソードの要件に対して低減する。本明細書の繰り返し層は、カソード層、アノード層およびこれらの2つの層間のセパレーターを含む連続するものを称する。例えば、いくつかの実施形態では、繰り返し層の数はおよそ5だけ低減される。いくつかの実施形態では、セルは、単一カソード層および単一アノード層を含み、1つの繰り返し層を有する「ユニセル(unicell)」と称される。他の実施形態では、セルは、1つの電極と2つの外層との中心層を有し、互いの鏡像である2つの繰り返し層を含み、「バイセル(bicell)」と称される。他の実施形態では、2〜100の繰り返し層を使用するが、任意の例では、電極がより厚いと、従来の巻回セルまたは積層セルと同じ容量を達成しながら、繰り返し層の使用をより少なくすることが可能となる。いくつかの実施形態では、2〜75の繰り返し層、2〜50の繰り返し層、2〜25の繰り返し層または2〜15の繰り返し層を使用する。層の数を低減するので、セルの不活性成分に関連する質量は低減する(例えば、集電体箔、セパレーター、電解質、バインダー、導電性添加剤、タブ、パッケージ)。従って、いくつかの実施形態では、不活性材料の質量分率は、セルレベルで約40%未満、約30%未満、約20%未満または約10%未満である。いくつかの実施形態では、不活性材料の質量分率は、約10%〜約40%、約10%〜約30%または約20%〜約30%である。
【0034】
1つの実施形態では、図1および2の焼結電極、例えば、カソード101、101’、101”・・・およびアノード102、102’、102” ・・・は、少なくとも50体積%の1つまたは複数のリチウム貯蔵化合物を有し、更に、電解質相が導入される連続または開放気孔を有する。電解質相は、液体電解質、ゲル電解質、または固体ポリマーまたは固体無機電解質であってもよい。リチウム貯蔵化合物の焼結構造を形成することによって、焼成工程の間に粉末粒子間に生ずる接触即ち「焼結ネック(sinter-necks)」は、従来の粒子系電極に発生するより、粒子を結合する大きな断面積をもたらす。より大きな接触面積によって、電極強度が向上し、電子またはイオン伝導率が向上し、熱伝導率が向上し、体積充填がより高くなり、その上、電池の充放電のために、適切な電解質で満たされた気孔を更に有する。
【0035】
厚いモノリシック電極を組込む例示的な高エネルギーセルの設計が、図3に示されている。図3aは、例示的なバイレイヤーセルを表す。図3bは、多層セルの繰り返し単位を表し、焼結カソードは、その周囲で取り付けられた集電体を有し、各面で負極によって境界を示され、左の像におけるよりも大きなカソード厚みを可能とする。図3cは、例示的な多層積層構成を表す。
【0036】
他の実施形態では、本明細書(例えば、図3)に記載した積層角柱の設計は、重合体充填システムにまとめられる。そのような重合体システムは、携帯機器用の充電式リチウム電池に使用されており、自動車用途や他の用途のための大きな高出力電池用に現在開発されている。この充填アプローチへの利点は、金属充填に比較して著しい質量低減である。
【0037】
図4は、本明細書に記載した例示的な焼結電極の性能を表す。今まで、サイクル中に起こる体積変化による電池材料に広がる「放電研摩(electrochemical grinding)」現象は、モノリシック焼結電極が電池システムで機能することができることをあり得ないものとしていた。
【0038】
図4において、0.7mmの厚みの焼結電極に電解質が注入され、リチウム金属アノードに対してサイクルされた。図4aは、85%の密度を有するLiCoO2電極の上からの図を示す。図4aで示すように、電極寸法は1.8×2.4mmである。図4bは、電極の電子顕微鏡写真の描写であり、0.6mmのその高さを示す。図4cは、第6及び第7サイクルのプロットである。結果は、電極が高い可逆容量を得ながら機械的または電気的不具合のない繰り返しサイクルができることを実証する。電極はC/20率でほぼ100%の利用(130mAh/g)を示し、無視できる容量フェードを示し、20サイクル後に検出可能な機械的損傷はなかった。更に、この族における他の化合物のようなLi1−xCoO2は、部分的に脱リチウムされる場合、優れた電子伝導体であるので、電極は、機能する別個の導電性添加剤を必要としない。いくつかの実施形態において、高い利用が、この設計において達成可能である(例えば、2C以内の率)。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、C/20率、C/10率、C/4、1C、2Cまたは5Cで少なくとも約75%の利用を示す。他の実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、C/20率、C/10率、C/4、1C、2Cまたは5Cで少なくとも約80%の利用を示す。さらなる実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、C/20率、C/10率、C/4、1C、2Cまたは5Cで少なくとも約85%の利用を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、C/20率で約75%〜100%の利用を示す。更に高い性能がナノ構造の材料のために得られる。
【0039】
所定の焼結電極の許容体積変化は、関係する材料の機械的特性、使用の間に発現した濃度勾配、および特定の微構造またはナノ構造に依存する。電極は、材料およびナノ構造から設計されて、材料選択およびミクロ構造の長さスケールの低減の両方を介して、使用の間に機械的堅牢性をもたらし、材料の歪対破壊を増加させる。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載した焼結電極およびサブアセンブリは技術革新的なナノスケールおよびナノ複合体カソード材料を組込む。他の実施形態では、本明細書に記載した焼結電極およびサブアセンブリは、また、独特のセパレーターアプローチを組込む。更なる実施形態では、本明細書に記載した焼結電極およびサブアセンブリは、また、低い質量および高い比エネルギーのアノード材料を組込む。これらの材質選定によって、高い質量効率および体積効率充電式セルが可能となる。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した充電式セルは、唯一得られた活性材料の理論比エネルギーの>50%、および>600W/kgの出力密度で絶対比エネルギー>300Wh/kgを達成しながら、少なくとも約56cm3(つまり、Dセルに等しい)の体積を有する。比較すると、今日の市場に出ている主要な充電式リチウム電池は250Wh/kg、または理論的限界の約20%を実現する。従って、いくつかの実施形態では、既存の一次(使い捨て)リチウム電池(米軍によって使用されるBA5590など)より高い容量を供給する充電式電池を提供する。
【0041】
1つの実施形態では、セルは、少なくとも3つの繰り返し層のスタックを含む角柱構成を含むが、繰り返し層の電圧が少なくとも部分付加的であるように層が配置される。即ち、各繰り返し層を含むセルは、双極型セルの設計でのように直列に接合されて、セルで用いる電気化学対の使用電圧より高い電圧の完成セルを生成する。他の実施形態では、充電式セルは従来のポリマー充填技術を使用して充填される。
【0042】
モノリシック電極を使用することによって、新しい設計の可能性がもたらされる。1つの実施形態では、カソード材料が一般にアノードより不十分な電子伝導性を有するので、カソードはアノードというよりむしろモノリシック焼結電極である。従って、カソードは、本質的にそれ自体の集電体の役割をする焼結カソードの電子伝導性の増加からより得である。両電極が焼結される配置であるとともに、対向配置も検討される。更に、いくつかの実施形態では、電極は、セパレーターおよび/または集電体などの他のセル部品と同時焼成または焼結される。例えば、正極、セパレーターおよび正の集電体は、同時焼成されて単一構造を形成し、個々の部品は互いに結合する。同様に、負極、セパレーターおよび負の集電体は、同時焼成されて、単一構造を形成する。いくつかの実施形態では、2つの電極はセパレーターと同時焼成される。いくつかの実施形態では、1つの集電体は同時焼成された構造に含まれる。
【0043】
従って、いくつかの実施形態では、焼結電極は、図1および図2においてその表面に取り付けられたセパレーター、例えば、103、103’、103”を有することによって、電池のサブアセンブリを形成する。いくつかの実施形態では、セパレーターは無機化合物、無機−有機複合材料または混合物、もしくは有機化合物を含む。いくつかの実施形態では、セパレーターは、焼結電極に適用され、次いで熱処理される微粒子材料を含む。いくつかの実施形態では、セパレーターは焼結微粒子セラミックを含む。いくつかの実施形態では、セパレーターは、コーティングの後に任意に焼成されるゾルゲル・コーティングを含む。いくつかの実施形態では、電極およびセパレーターは同時焼成される。
【0044】
いくつかの実施形態では、集電体、例えば、図1および図2の104、104’、104”は、電極、または電極およびセパレーターと同時焼成されて、集電体が電極に熱結合されているサブアセンブリを製造する。
【0045】
モノリシック焼結カソードによって可能にされた基準となる高エネルギー電池設計を、図3で説明する。いくつかの実施形態では、カソード層はおよそ1mmの厚みで製造されており、その各半分の厚みは、セルの稼動中に一方の側に置かれたアノード層で完全に利用されてもよい。図3bおよび図3cの多層セルで説明した1つの実施形態では、カソード集電タブは、電極周囲に結合されている。結合は、例えば、カソード縁上のスパッタ金属膜への金属−金属結合を使用することによって、または導電性接着剤の使用によって達成される。図3に示すように、いくつかの実施形態では、アノード設計は銅箔の層からなり、リチウム金属膜、または合金アノードを含むフィルムまたはコーティングで両側に被覆されている。フィルムは標準コーティング技術を使用して被覆される。例えば、1つの限定しない実施形態では、フィルムは銅に加圧積層されたリチウム箔である。他の実施形態では、フィルムは蒸着リチウムである。リチエート化カソードを利用する実施形態では、充電時のリチウム金属の堆積を促進し、かつサイクル中に不可逆なリチウム損失に対応するために、リチウム金属を主として核形成の支援としてアノードで使用する。アノード−活性金属合金を使用する場合、前記合金は電池のサイクル中にリチウムを貯蔵、放出する。そのような合金は、スパッタ、蒸着、加圧積層、熱噴霧コーティングによって、または合金の粉末を含むコーティングとして堆積されてもよい。
【0046】
上記のように、本明細書に記載した焼結電極および電極サブアセンブリは、従来の粒子系電極の設計より厚い電極を可能にする。いくつかの実施形態では、単一の焼結電極層は、焼結電極の厚みの実質的に2分の1が、各対向電極層とイオンを交換するように各面で対向電極の層を有する。そのような例では、焼結電極の活性層の厚みはその厚みの半分である。他の実施形態では、焼結電極層は、金属箔などの集電体に取り付けられており、活性層の厚みは全体厚みである。いくつかの実施形態では、電極または電極サブアセンブリの活性層の厚みは約200μmより大きい。他の実施形態では、活性層の厚みは約400μmより大きい。更なる実施形態では、活性層の厚みは約600μmより大きい。いくつかの実施形態では、活性層の厚みは約200μm〜約1000μmである。
【0047】
焼結電極および電極サブアセンブリは、特に従来の粒子系電極の設計に比べて高密度である。いくつかの実施形態では、活性材料の充填密度は、化合物の理論密度の約65%より大きい。他の実施形態では、充填密度は、化合物の理論密度の約80%より大きい。いくつかのセパレーターの選択を検討する。1つの実施形態では、セルに、その後液体電解質を注入し、従来の多孔性セパレーターフィルム(例えば、約20〜25μmの厚み)を使用する。他の実施形態では、リチウムデンドライト形成による内部短絡に対する保護として、Liponなどの固体電解質化合物の絶縁保護層を、多孔性カソード上に堆積する。いくつかの実施形態では、Lipon層は厚みが約0.5〜1.0μmである。いくつかの実施形態では、セパレーター(例えば、Lipon)層は厚みが約0.5μm、厚みが約0.6μm、厚みが約0.7μm、厚みが約0.8μm、厚みが約0.9μmまたは厚みが約1μmである。スパッタ堆積されたLiponフィルムは、高度な絶縁保護で多孔性カソードを被覆することができる。更に、この厚み範囲のフィルムは、0.5mmのカソード厚みに対して、2C率に対応する電流密度でのサイクル中に典型的には0.3V未満の電位降下に寄与する。いくつかの実施形態では、フィルムは、サイクル中に0.2V未満の電位降下、サイクル中に0.15V未満の電位降下、またはサイクル中に0.1V未満の電位降下に寄与する。更に、いくつかの実施形態では、リチウム金属アノードは、被覆されたカソードに直接積層される。そのような構成は、例えば、約0.5〜1.0μm厚みのLiponフィルムを含む。いくつかの実施形態では、Liponフィルムは約0.5μmの厚み、約0.6μmの厚み、約0.7μmの厚み、約0.8μmの厚み、約0.9μmの厚み、または約1μmの厚みである。いくつかの実施形態では、Liponフィルムは実質的にピンホールはない。いくつかの実施形態では、さらなる絶縁セパレーターがセルまたは装置構成に含まれている。いくつかの実施形態では、従来のセパレーターを使用する。他の実施形態では、被覆されたナノ複合材料セパレーターを使用してもよい(例えば、2008年8月21日に出願され、電気化学セル用のセパレーターおよびその製造のための方法と題する米国特許出願第12/196,203号を参照されたく、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする)。ナノ複合材料セパレーターは、それらの比較的向上した安全特性を鑑みて望ましい。
【0048】
いくつかの実施形態では、焼結電極をまず焼結し、または部分的に焼結し、次いで、セパレーター層をその表面に適用し、次いで、サブアセンブリを同時焼成して、2つの層を結合するとともに電気化学セルのサブアセンブリを形成する。そのような同時焼成されたセパレーター層は、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ケイ酸塩ガラスまたは他の化合物を含めて、電気絶縁であり、電気化学的に不活性なセラミックまたはガラス化合物を含んでいてもよい。そのような例では、同時焼成されたセパレーター層は、焼成後に多孔性であってもよい。他の例では、同時焼成されたセパレーターは、酸窒化リン酸リチウム、ヨウ化リチウム、結晶質またはガラス質リン酸リチウム等のイオン導電性であるが、電子的に絶縁性の化合物を含んでいてもよい。そのような例では、同時焼成されたセパレーターは、焼成後に多孔性であってもよく、または実質的に緻密であってもよい。いずれかの例では、同時焼成されたセパレーター層は、厚みが約1μm〜200μmである。いくつかの実施形態では、同時焼成されたセパレーター層は、厚みが約1μm〜約150μm、約1μm〜約100μm、約1μm〜約75μm、約1μm〜約50μm、約1μm〜約25μm、または約1μm〜約10μmである。
【0049】
他の実施形態では、焼結電極を、金属集電体と同時焼成し、前記集電体を、面または焼結電極の1つまたは複数の端に適用する。いくつかの実施形態では、同時焼成された集電体は、金属箔、または焼成の間に焼結される金属粉末を含む。電極と同時焼成された正の集電体は、アルミニウム金属箔またはアルミニウム金属粉末を含んでいてもよい。負の集電体は銅箔または銅金属粉末を含んでいてもよい。負の集電体は、また、Li金属に対して測定される場合に約1Vよりも大きな平均リチウム挿入電圧を有するアノード−活性材料と共に使用されるなら、アルミニウム箔またはアルミニウム粉末を含んでいてもよい。例えば、リチウム−チタネートスピネルは、Li金属に対して約1.55Vのリチウム挿入電圧を有しており、アルミニウム集電体と共に使用してもよい。金属粉末集電体の例では、同時焼成された組立品は、金属粉末スラリーまたはセラミック充填およびハイブリッド回路において焼成抵抗器または内部接続を製造するために使用される金属粉末製剤に類似する懸濁液を調製し、スクリーン印刷、ディッピング法、噴霧法または他のそのような方法を使用して電極に金属粉末スラリーまたは懸濁液を適用し、その後に乾燥、脱バインダーおよび焼結することによって製造してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、同時焼成されたセパレーターまたは同時焼成された集電体を、未焼成状態で、その未焼結状態の少なくとも1つの焼結電極に適用し、材料をともに同時焼成する。
【0051】
いくつかの実施形態では、焼結電極、セパレーター層および対向電極を有する繰り返し層全体を任意に焼結してもよく、ともに同時焼成する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電極層を含むサブアセンブリ、1つのセパレーター層および1つの集電体層をともに同時焼成する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのユニセル、少なくとも1つのバイセル、または多層セルを含む組立品は、そのセパレーターおよび集電体層を含み、1ユニットとして同時焼成される。他の実施形態では、そのような同時焼成層、サブアセンブリまたは組立品は、同時焼成前に未焼結状態または部分的焼結状態である少なくとも1つの電極を含む。
【0052】
同時焼成または焼結サブアセンブリを組込む電気化学セルおよび装置は、特に、セルまたは装置の安全性および耐久性に関して利点をもたらす。従来のパウチセルの構成部品は、時間とともに分離する傾向を有する。そのような分離を防ぐために、セルまたはスタックに最小限のスタック圧力を適用して、分離を回避しなければならない。同時焼成または焼結サブアセンブリの部品を結合するので、それらは、不十分なスタック圧力で、その結果、分離の影響を受けにくい。従って、セルまたはサブアセンブリの構成部品間の結合は、使用の物理的応力(例えば、電子装置の携帯性に起因する応力)に耐えることができるより耐久力のある装置をもたらす。
【0053】
更に、セルおよび装置で焼結サブアセンブリを使用すると、使用する集電体およびセパレーター材料の量が低減されることを可能にする。例えば、いくつかの実施形態では、集電体は、従来の装置でのように、電極の一方の側の全表面積ではなく、電極(例えば、図3b)の周囲に主として接触する。焼結電極全体が導電性なので、特定のエネルギーまたは電流量を得るのに必要な電極と集電体との間の接触量が低減される。例えば、いくつかの実施形態では、集電体は、第1の電極の周囲に主として制限される。例えば、いくつかの実施形態では、集電体は、中実な長方形の形状ではなく、輪郭または枠の形状である。いくつかの実施形態では、第1の集電体に結合された第1の電極の部分の周囲面積は、それが接触する電極の全面積の約50%未満である。例えば、結合面積は、それが接触する電極の全面積の45%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満または10%未満である。
【0054】
そのような製造手順の一例として、LiCoO2などのカソード化合物の粉末を、まず、電極の形状に固定する。次いで、アルミナまたはシリカなどのセパレーター化合物の粉末懸濁液を、未焼成カソードの1つの面に適用する。アルミニウム粉末集電体懸濁液を、未焼成カソードに他の面または縁に適用する。集電体−カソード−セパレーターサブアセンブリを、次いでともに同時焼成する。
【0055】
言及した前記同時焼成ステップのいずれかにおいて、粉末懸濁液の製剤、および焼結電極の製剤およびプレス密度を、電子部品および構造部品を同時焼成する当業者に公知の方法を使用して調整して、実質的に欠陥のない同時焼成品を達成する。焼成スケジュールは、焼成温度、時間、および加熱および冷却速度を含み、同時焼成する当業者に公知な方法を使用することによっても調整する。例えば、いくつかの実施形態では、部品をプレスし、少なくとも約1.5時間、空気またはアルゴン中で少なくとも775℃の温度で焼成する。いくつかの実施形態では、焼結プロセスを700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、950℃、1000℃、1050℃、1100℃、またはそれ以上の温度で実行する。いくつかの実施形態では、電極およびサブアセンブリを、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約5時間または約10時間焼成する。バインダーおよび残留有機物の除去を支援し、所望の高密度化率を達成し、使用する化合物の望ましくない酸化または還元を防ぐために、不活性酸化雰囲気または部分酸化ガス雰囲気で焼成を行う。同時焼成の間に回避される一般的な欠陥としては、部品層の1つまたは複数の亀裂または層間剥離、焼成プロセスの間の部品の異なる収縮による反り、部品間の異なる熱膨張による亀裂または反り、または電極、セパレーターまたは集電体で使用される構成化合物の組成または相の変化が挙げられる。
【0056】
本明細書に記載したセル、サブアセンブリおよび装置の質量利用は、使用する活性材料の特定の物理的および電気化学的特性に依存する。
【0057】
まず、このセル設計の可能性を説明して、このプログラムの質量利用および比エネルギーの密度の目標に達するために、図5は、本明細書に記載し、負極としてリチウム金属と共に使用する特定のカソード材料についての計算結果を表す。活性材料の質量分率は、アノードとしてリチウム金属と共に使用する場合、カソードによって支配される。例えば、図5aは、焼結カソードの密度の関数としてカソード利用を表し、活性材料によるセルの特定の質量利用が達成される焼結カソード密度を示す。図5は、約60%のみの焼結密度でいくつかのカソード化合物が80%の質量利用に達することができることを実証する。85%の焼結密度では、LiCoO2を使用してカソードを実証し、質量利用は約90%である。ここで、表記LNMOは電気活性化合物Li1+x(Ni0.5Mn0.5)1−xO2を称する(例えば、J.Electrochem.Soc.154(3)、A264-A274(2007)で報告したアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)による研究を参照されたく、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする)。図6では、本セル設計の絶対比エネルギーは、いくつかの候補カソードについて示される。特に、図6は、焼結カソードの密度の関数として比エネルギーを表す。例えば、500Wh/kgが、〜23%のみのLNMOカソード密度で到達されることができ、一方、80%の質量利用に対応する60%のカソード密度では、絶対比エネルギーが約800Wh/kgであることが分かる。提案する比較的大きな構成のセルについて、充填が質量利用を増加させる比較的小さな機会をもたらす状態で、活性材料の含有量によって性能が支配されることに留意されたい。
【0058】
従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極およびサブアセンブリは、完成セルにおいて80%ほどの活性材料質量利用を実現する。他の実施形態では、活性材料充填密度は理論的に約85%である。さらなる実施形態では、充填密度は理論的に約90%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載したセルの材料質量利用は約60%より大きい、約80%より大きい、または約90%より大きい。
【0059】
いくつかの実施形態では、電極および電極組立品は、約40%のカソード密度で少なくとも約60%、約60%のカソード密度で約75%、または約70%のカソード密度で約80%のセルレベルで、質量利用を達成する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、約20%〜約90%、約20%〜約80%、約20%〜約70%、約20%〜約60%、約50%〜約60%、約50%〜約70%、約50%〜約80%または約50%〜約95%のカソード密度で少なくとも約300Wh/kgのセルレベルで比エネルギーを達成する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、約20%〜約90%、約20%〜約80%、約20%〜約70%、約20%〜約60%、約50%〜約60%、約50%〜約70%、約50%〜約80%または約50%〜約95%のカソード密度で少なくとも約500Wh/kgのセルレベルで比エネルギーを達成する。
【0061】
反対に、本明細書に記載した約50%のカソード密度を有する電極および組立品は、約250Wh/kg、約350Wh/kg、約550Wh/kg、約750Wh/kgまたは約950Wh/kgの絶対比エネルギーを示す。約70%のカソード密度では、本明細書に記載した電極および組立品は、少なくとも約300Wh/kg、約400Wh/kg、約600Wh/kg、約800Wh/kgまたは約1000Wh/kgのセルレベルで比エネルギーを達成する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、約250Wh/kg〜約950Wh/kg、約350Wh/kg〜約750Wh/kg、または約450Wh/kg〜約650Wh/kgの約50%のカソード密度について、セルレベルで絶対比エネルギーを有する。
【0062】
本発明で使用してもよい充電式リチウム化学的性質用の多くの電気化学対のうちで、いくつかの実施形態を表1に示す。表1は、カソード材料の4つの実施形態およびアノード材料の2つの実施形態をもたらす。8つの可能性のうちの6対(下線)が500Wh/kgの比エネルギーを満足する、即ち超える。
【0063】
表1
2つのアノード(行)と共に使用されるカソード(列)についてのWh/kgでの比エネルギー。下線値は、80%質量利用で500Wh/kgを超える電気化学対を表す。
*導電性を向上させるために、20重量%のマトリックスを有する予めリチエート化された金属フッ化物を前提とする。
【0064】
いくつかの実施形態では、焼結電極は、電気化学的サイクルの耐微小割れ性のために選択される。耐熱衝撃性セラミックスの方法でのように、焼結電極はある程度の微小割れを許容することができるが、その焼結粒子ネットワークの広がりを失わず、巨視的亀裂を受けない。焼結電極は、高い機械的強度を犠牲にして耐損傷性であるように設計されている。適切な材料および材料処理パラメーターは、耐熱衝撃性の用途のためにセラミック材料の技術から選択することができる。
【0065】
1つの実施形態では、焼結電極は、また、電極の焼結を向上させるために添加された1つまたは複数の相を含む。例示的な添加剤は、金属、合金またはセラミックスを含む無機化合物であってもよく、または1つまたは複数のポリマーまたは有機化合物であってもよい。添加剤は、焼結において使用される焼成温度で固体またはガラスまたは液体であってもよい。例えば、酸化物カソード粉末は、アルミニウム粉末と混合しても、プレスしてもよく、実質的にLiCoO2を分解することなく、金属−セラミック結合を生成するために周囲温度より高いがアルミニウムの融点(660℃)より低い温度で焼成してもよい。ケイ酸塩またはホウケイ酸ガラス粉末を焼結助剤として使用して、酸化物カソード粉末を結合するとともに、粒子間の焼結ネック形成の高密度化または範囲を向上させてもよい。PVdFと炭素の混合物、またはBayerのPEDOTなどの導電性高分子、または低いガラス転移温度のイオン導電性ブロックと高いガラス転移温度の構造ブロックとが混合されたブロック共重合体を使用して、比較的低い焼成温度で酸化物粉末を結合してもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、添加相(単数または複数)は、焼結電極の電子またはイオン伝導率を向上させる導体材料である。いくつかの実施形態では、添加相は、焼結電極の気孔面、例えば、電極の内面で連続的または部分連続的コーティングを形成する。いくつかの実施形態では、このコーティングは、セルの使用条件下で電気化学的に安定している炭素または金属である。例えば、アルミニウムは正極添加剤として適切であり、銅またはチタンは負極添加剤として適切である。いくつかの実施形態では、気孔面コーティングは、電極の焼成の間に必然的に生じる。いくつかの実施形態では、電極を焼結した後、気孔面コーティングを適用する。いくつかの実施形態では、気孔面コーティングを蒸着によって適用する。いくつかの実施形態では、気孔面コーティングを液体の浸透によって適用し、その後に乾燥および任意に焼成工程を行う。
【0067】
いくつかの実施形態では、添加相(単数または複数)は、電極の熱サイクルまたは電気化学的サイクルにおける強度または破壊靱性または損傷許容性または疲労抵抗性を向上させる。いくつかの実施形態では、この相は、上記伝導性添加材料を含めて、金属、合金およびポリマーを含む延性固体であるが、これらに限定されない。例えば、アルミニウム金属および銅金属は、焼結酸化物カソードおよびアノードの強度および破壊靱性をそれぞれ向上させる。ポリマーはセラミックスおよび金属より典型的に延性があり、焼結電極およびサブアセンブリの強度および破壊靱性を向上させることができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、焼結電極またはサブアセンブリの気孔率が制御される。いくつかの実施形態では、焼結電極における気孔割合、気孔形状、気孔トポロジーおよび気孔率の空間分布は、電極の電気化学的作用および機械的作用を向上させるために選択される。いくつかの実施形態では、所望の気孔構成を形成するために、除去可能な、即ち「一過性(fugitive)」材料を電極に添加する。いくつかの実施形態では、除去可能な材料は、氷、もしくは昇華、熱分解または化学分解によって後に取り除かれるハロゲン化アルカリ、ナフタリン、ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルまたはポリスチレンを含む無機または有機化合物またはポリマー、もしくは高温での酸化によって取り除かれる炭素粒子、もしくは化学分解によって取り除かれるガラスまたは金属繊維である。いくつかの実施形態では、比較的高い長さ/直径アスペクト比の気孔チャンネルが、焼結前に、圧縮された粉末電極に、除去可能または部分的に除去可能な材料の繊維を組み入れることによって焼結電極に導入されている。いくつかの実施形態では、そのような繊維はポリマーまたはガラスまたは炭素繊維を含む。いくつかの実施形態では、気孔率は、電極のより高い利用または出力をもたらすために、集電体側からセパレーター境界に電極の厚みを介して徐々に変化させられる。
【0069】
いくつかの実施形態では、焼結電極またはサブアセンブリは、電気化学的サイクル後に、その電子またはイオン伝導率を増大させるエネルギー貯蔵化合物を含む。これは一般に有益であり、サイクルが電極におけるいくらかの機械的損傷または接続損失を導く場合、特に有益となり得る。例えば、LiCoO2またはLiMPO4またはLi4Ti5O12などの正極材料を検討されたく、ここでMは金属を含む。そのような化合物が実質的なリチウム固溶体を提供することができるように選択または設計されている場合、固溶体の生成は、遷移金属のより大きな多価への電子伝導性の増大をもたらす。第1の2つの例では、これらの例は、高リチエート化状態で一般に製造される正極化合物であり、セルがリチウムのいくらかの不可逆的損失により完全放電される場合でさえ、特定の電気化学セルでの使用によって、それらの化合物が部分的にLiを奪われる。その結果、化合物は電子伝導性を得て、初期電気化学サイクルまたはセル「形成(formation)」後に、より高い伝導状態で使用可能である。Li4Ti5O12の例では、これはリチウムが使用の間に挿入される負極化合物である。リチウムの挿入は、同様に、化合物の電子伝導性を増大させ、焼結電極としてのその機能を向上させる。
【0070】
「層状(layered)」酸化物と同族の例示的な酸化物カソードとしては、LiCoO2およびLiNiO2が挙げられ、例示的な金属フッ化物は転換または置換反応の材料の族からのものである。これらのカソード材料は、現在、技術的な成熟度の様々な段階にある。NCAおよびLNMOはLiCoO2のより高いエネルギー密度の派生物である。
【0071】
NCA(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)は層状酸化物であり、工業的に成熟したカソードである。この材料は、LiCoO2と比較して充電時により大きな体積変化を有し(−6%対+2%)、焼結カソードの機械的耐久性に影響を及ぼす可能性があり、特に粒子サイズが低減した状態で、充電状態における安全性を低下させる。しかし、本電極の設計の利点は、焼結に伴う比表面積の低減が、粒子サイズの低減に典型的に伴う安全の問題を緩和することに役立つ。
【0072】
層状酸化物化合物Li1+x(Ni0.5Mn0.5)1−xO2(LNMO)(xは0〜約0.3である)は、NCAより最大で25%高いエネルギーを付与し、近年、室内実験において適当なサイクル寿命および率容量を実証した。この化合物は、充電時に低い体積膨張(+3%)を有し、化合物を本設計にとって魅力的にする。この酸化物は、アルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)(J.Electrochem.Soc.154(3)、A264-A274(2007))で研究者によって報告されたプロセスに記載された方法を使用して製造され、拡大されており、開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする。このプロセスは、撹拌タンク型反応器内でアルカリ条件で共沈したNi0.5Mn0.5(OH)2前駆体を使用する。次いで、水酸化物をわずかに過剰なLi2CO3と混合して、空気中で1000℃で12時間仮焼する。
【0073】
他の実施形態では、正の電気活性材料は金属フッ化物である。金属フッ化物は、安全で非常に高い容量のカソード材料として重要な特性を有する。
【0074】
例示的な金属フッ化物としては、BiF3、CoF2およびNiF2が挙げられる。これらの材料は、FeF3およびBiF3でうまくなされるようにナノ複合材料の形態で調製することができる。例えば、BiF3は、伝導性マトリックスとしての炭素またはMoS2と製剤して、極めて可逆的な高エネルギー密度のナノ複合材料を得た。BiF3−20%MoS2ナノ複合材料は、NCAより高いエネルギー密度を有し、はるかに安全である。体積膨張は大きい(NiF2に対してとても小さい)が、ナノ複合材料が延性マトリックス材料(MoS2は、潤滑剤として広く使用される「板状(platy)」黒鉛状材料である)に基づくということは、MoS2含有ナノ複合材料が不具合なしでサイクル可能な堅牢な機械的特性を有することを意味する。NiF2は、BiF3より著しく高いエネルギー密度電位を付与する。
【0075】
金属フッ化物ナノ複合材料は、優れたエネルギー密度を可能するが、リチウムイオンの動作源を設けることなく、リチウムイオン電池に直接組み入れることはできない。リチエート化ナノ複合材料(MeFx→Me+xLiF)の制御形成は、それが金属フッ化物領域内に生ずるサブナノ複合材料であるのでとても重大である。ナノ複合材料のプレリチオ化への少なくとも2つのアプローチがあり、両方とも所望の(LiF+Me)サブナノ複合材料を導き、ここで、Meは、他の金属のうちでFe、Ni、CoおよびBiであってもよい。1つの技術は、化学的または物理的手段によって、LiF+Meのナノ複合材料を直接製造することである。他の技術は、予め製造された金属フッ化物に適用される還元反応を利用することである。後者の反応は前者よりも多くの利点を有する。実際的な利点は、トップダウンのアプローチからの純金属およびアルカリフッ化物からなる約l〜2nmのナノ複合材料を直接形成することは非常に困難であることである。還元反応は、還元剤での物理的、熱的または電気化学的相互作用、または電位によって促進され、非常に微細なナノ構造を形成する最も的確な方法である。この技術によって、成分(LiFおよびMe)の形成が核形成および成長プロセスから発展されるので、約l〜2nmでナノ複合材料を形成することが可能である。
【0076】
金属フッ化物は、エネルギー密度と同様に高い比エネルギーを付与する。表2は、今日の最先端技術のインターカレーション材料によって例示した600〜800Wh/kgを軽く超える比エネルギー密度を付与する金属フッ化物のいくつかの実施形態を表す。プレリチオ化技術はNiに適用してもよい。プレリチオ化は、LiF/Me領域だけでなく新しい混合伝導性マトリックスも設計する性能をもたらす。
【0077】
表2 様々な単一の2価および3価のフッ化物に対するLiとの転換反応の間に予想される理論平均電圧、比容量および比エネルギー
【0078】
いくつかの実施形態では、リチウム貯蔵材料は化合物LixMyXO4Z2を含み、Mは金属を含み、XはP、SまたはAsであり、Zはハロゲンであり、制限なく、オリビンまたはNASICON構造タイプの化合物、またはMが1つまたは複数の第1列遷移金属を含む化合物を含む。いくつかの実施形態では、電極は、ドープされたリチウム鉄リン酸塩オリビンまたはドープされたリチウムマンガンリン酸塩オリビンまたはその2つの固溶体を含む。リチウム金属リン酸塩、ケイ酸塩および硫酸塩は、オリビン構造で結晶化する組成LixMyPO4(Mは1つまたは複数の第1列遷移金属および他の非遷移金属を含む)のものを含み、そのような電極に基づいた焼結電極および電池で使用することができる。そのようなオリビンは、電動工具、輸送および静止用途を含む広範囲の用途用の高出力および長寿命電池のための対象となる。例示的なリチウム貯蔵材料としては、米国特許公開出願第2004/0005265号(「導電性リチウム貯蔵電極」と題する米国特許出願第10/329,046号に対応する)、2006年4月3日に出願され、「ナノスケールイオン貯蔵材料」と題する米国特許出願第11/396,515号、2006年9月11日に出願され、「高充放電率容量および低インピーダンス成長を有するリチウム二次電池」と題する米国特許出願第11/518,974号に開示したものが挙げられ、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする。
【0079】
いくつかの実施形態では、正極は、電気活性材料としてリチウム−遷移金属−リン酸塩化合物を含む。リチウム−遷移金属−リン酸塩化合物は、金属、メタロイドまたはハロゲンで任意にドープされてもよい。いくつかの実施形態では、正の電気活性材料はオリビン構造化合物LiMPO4であり、MはV、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiの1つまたは複数であり、化合物はLi、MまたはOサイトで任意にドープされる。Liサイトでの欠陥は、金属またはメタロイドの添加によって補償され、Oサイトでの欠陥はハロゲンの添加によって補償される。いくつかの実施形態では、正の活性材料は熱的に安定であり、遷移金属をドープしたリチウム遷移金属リン酸塩は、オリビン構造を有し、式(Li1−xZx)MPO4またはLi(M1−xZx)PO4を有し、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niの1つまたは複数であり、Zは、Ti、Zr、Nb、Al、Ta、WまたはMgの1つまたは複数などの非アルカリ金属ドーパントであり、xは0.005〜0.05の範囲である。典型的な電池では、電気活性材料は(Li1−xZx)MPO4であり、ZはZr、NbまたはTiである。
【0080】
ドープされたリチウム鉄リン酸塩化合物は、炭酸リチウム、リン酸アンモニウムおよびシュウ酸鉄を含むがそれらに限定されないリチウム塩、鉄化合物およびリン塩の出発原料から調製してもよく、Mg,Al、Ti、Fe、Mn、Zr、Nb、TaおよびWなどのドーパント金属を、低い添加濃度に、典型的に金属酸化物または金属アルコキシドとしてそれに添加する。粉末混合物を、300℃〜900℃の温度で低い酸素環境で加熱する。これらの化合物は、室温でおよびその室温近くで、増加した電子伝導性を示し、リチウム貯蔵材料としてのそれらの使用には特に有利である。これらの化合物の組成および調製に関するさらなる詳細は、米国特許公開出願第2004/0005265号(「導電性リチウム貯蔵電極」と題する米国特許出願第10/329,046号に対応する)で見られ、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする。
【0081】
いくつかの実施形態では、アルカリ遷移金属リン酸塩は、「ナノスケールイオン貯蔵材料」と題する2006年4月3日に出願された米国特許出願第11/396,515号に記載されたものが挙げられ、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする。例としては、オリビン(AxMPO4)、NASICON(Ax(M’M”)2(PO4)3)、VOPO4、LiVPO4F、LiFe(P2O7)またはFe4(P2O7)3構造タイプのナノスケール秩序構造または部分的無秩序構造が挙げられ、Aはアルカリイオンであり、M、M’およびM”は金属である。
【0082】
1つの実施形態では、正極活性化合物は、Lix−aM”aFePO4の全体組成を有する。
【0083】
いくつかの実施形態において、正極活性化合物はLiFePO4である。
【0084】
いくつかの実施形態において、正極活性化合物はLiCoO2である。
【0085】
電極材料は、リチウム貯蔵材料としての使用中に、実質的に大きなモル体積変化を受ける(モル体積は、化合物の式単位のモルに対する体積として定義され、例えば、LiMPO4のモルであり、Mは金属である)。リチウム挿入または除去時のモル体積の変化は、化合物の相の膨張または収縮による可能性があり、または異なる結晶相間または結晶相とアモルファス相の間の変化を含む材料の相の変化による可能性がある。大きな体積差を有する異なる状態間の複合エレクトロサイクルは、電極の機械的不具合、例えば、巨視的亀裂に結びつく可能性がある。いくつかの実施形態では、モル体積の変化は、約2%を超える可能性があり、または組成LiCoO2と組成Li0.5CoO2の間でサイクル間にLiCoO2のものを超える可能性がある。いくつかの実施形態では、モル体積の変化は約5%、または約10%さえ超える可能性がある。
【0086】
高密度で電子伝導性で機械的に堅牢なモノリシック電極およびサブアセンブリを提供する焼結されたナノ構造およびプロセスを提供する。いくつかの実施形態では、カソード化合物は、典型的には、より不十分な電子伝導性を有し、提案された設計から最も利益を得るので、カソードは多孔性高密度化部材である。他の実施形態では、アノードは多孔質部材である。合成された粉末、またはナノスケールの寸法(出力に関して)の一次結晶に粉砕された粉末から始めて、焼結は、所望の密度および粒子サイズの電極をもたらす。焼結カソードの微構造および物理的/機械的特性、および電気化学的サイクルテストは、サイクル率および微構造の長さスケールの関数として機械的耐久性およびサイクル寿命を確立することができる。例えば、可逆的微小割れはおそらく許容範囲である。簡単な実験は、所望のレベルの性能をもたらす材料、微構造および方法の組みあわせに到達するために、カソード活性材料の長さスケールを繰り返して低減することを可能にして、率容量および寿命を向上させる。
【0087】
いくつかの実施形態において、より大きなスケールのカソード、例えば、7.4×7.4cmが、乾燥プレス、回転圧縮、またはテープキャスティングによって調製される。これらは、セラミック処理の当業者に公知な成形プロセスである。テープキャスティングは大きく薄い平らなセラミック部品には適切である。1mmの厚みはテープキャスト厚み範囲内で適切であり、プロセスは高容量製造に適切である。テープキャスティングプロセスは次のステップを含む。
【0088】
a)スラリー調製
出発スラリーは、ナノ複合材料酸化物またはフッ化物、キャリヤ液体、および任意に、スラリー懸濁液を安定させるための様々な添加剤を含む。安定した懸濁液は、キャスティング中に均一の粒子分布を得る場合に重要である。いくつかの実施形態では、添加剤は、解膠剤、湿潤剤、バインダーおよび焼結助剤の1つまたは複数を含む。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーは、プログラムされた混合速度および所要時間を使用して、ジャーミルで調製する。キャリヤ液体および添加剤タイプに加えて、スラリー調製での他の基本変数は、ジャーおよびミリング媒体のサイズおよび構成、ならびにスラリー中の固形物を含む。スラリー粘性は、通常、Brookfield DV−E回転式粘度計を使用して測定することができる。
【0089】
b)テープキャスティング
スラリーをテープキャスティングして、電極材料のグリーンシートを形成する。テープキャスティングプロセスにおいて、基本変数は、キャスティングヘッド、キャストスピードおよび乾燥方法である。例示的な乾燥プロセスは、スラリーで用いる溶媒キャリヤを取り除くための放射、伝導および強制空気加熱の様々な組みあわせを含む。プロセス変数は、縦軸の均一な粉末密度、均一なバインダー分布、および膜形成のない表面均一性を達成するために調整される。
【0090】
c)焼成
制御雰囲気で、プログラムされた加熱スケジュールを使用してキャストグリーン構造を焼成する。いくつかの実施形態では、焼結ステップによって良好なフィルム均一性を保持するために、加熱速度を厳重に制御して、バインダーを焼き尽くすための開始点に特に接近して、フィルムの膨れや亀裂を最小限にする。バインダーを焼き尽くした後、いくつかの実施形態では、焼成ステップは継続して、所望の気孔率に電極材料を焼結する。適切な加熱条件は、DSC/TGAデータを用いて確立して、過剰な粒成長によるナノ構造の低下またはマトリックス材料の分離を限定することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載したセルおよび装置は、リチウム金属アノードを含む。他の実施形態では、セルおよび装置はアモルファス金属合金アノードを含む。
【0092】
1つの実施形態では、負の電気活性材料はリチウム金属を含む。他の実施形態では、負の電気活性材料はリチウム合金を含む。一例では、アノードはリチウム金属であり、エネルギー密度を最大にすることができる。正極材料はプレリチオ化されるので、アノード中のリチウムは可逆容量に寄与しないが、第1のサイクルロスを補償するとともに、充電の間に堆積されるフィルムの質および可逆性を高めるテンプレートをもたらす役目をする。銅集電体基板上へのリチウム金属アノードの蒸着は、アノードを製造する1つの方法である(他の方法は、薄いリチウム箔の物理的ラミネート加工である)。リチウムについては、1つの実施形態では、真空熱蒸発源を使用する。Liponが十分に欠陥のないバリアをもたらす場合、Lipon上にリチウムを直接堆積することによって、液体電解質が除去され、デンドライト形成に対する境界が完全に安定される。
【0093】
他の例示的なアノード材料は、SiまたはSn系リチウム合金である。リチウム合金系セル設計は、従来の電極キャスティングアプローチを使用して製造されたアノードを使用する。
【0094】
1つの実施形態では、セパレーターはLiponバリアコーティングである。Liponバリアコーティングは、例えば薄膜材料の物理蒸着を使用して準備する。1つの例示的プロセスのスパッタは、酸窒化リチウムリン電解質を堆積し、Liponとして知られている。この電解質は、薄膜電池用の薄膜(例えば、0.5〜3μmの厚み)として堆積される。材料はアモルファスであり、従って、リチウムデンドライト成長用の経路の役割をする粒界はない。Liponは、>300℃で安定であり、リチウムでおよび>5.5Vのセル電位で電気化学的に安定している。リチウムイオン輸送は薄膜に適しており、セル抵抗に〜100Ωcm2を加え、電子伝導は無視できる。非常に高い電子抵抗は、自己放電率が低いことを確実にする。Liponは、安全性および比エネルギーの両方を増加させるために望ましい。
【0095】
方法は、電池中の内部短絡を回避するために、粒界に沿った溝の中への電解質で良好な補償範囲を望ましくもたらす。良好な補償範囲を達成するよく理解された技術がある。
【0096】
Liponは、ほとんどのスパッタ原子が基板に達する場合に、熱エネルギーおよび軸外衝突角度を有する条件でRFマグネトロンスパッタリングによって一般に成長する。フィルム補償範囲は、様々な基板配列、電気および磁界構成、およびプロセスガス組成および圧力の制御を使用して向上させることができる。Liponフィルムは、補償範囲、組成、微構造、密度およびリチウム伝導性について評価することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、セパレーターの技術的アプローチは、また、上記のような独自開発したナノ複合材料セパレーター技術を挿入することを含む。これらの技術革新的セパレーターは、モノリシック正極上に被覆される。ナノ複合材料セパレーターは、寄生重量を低減するとともに過充電または衝撃事象での安全性を向上させる可能性を与える。
【0098】
例示的な被覆ナノ複合材料セパレーターは、2008年8月21日に出願され、電気化学セル用のセパレーターおよびその製造のための方法と題する米国特許出願第12/196,203号に開示されたものを含み、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする。例えば、いくつかの実施形態では、セパレーターは、無機充填剤(または、セラミック)粒子およびポリマーを含む多孔性複合材料である。セパレーターは、極めて均一な無機充填剤材料およびポリマーから形成されており、即ち、薄膜の全体にわたるポリマーおよび無機充填剤材料の分布に認識できる不均一はない。主に、ポリマーまたはセラミック材料の認識できる領域を有する薄膜の領域は実質的にない。分離材料は、電気化学セルで使用する場合、電子的に絶縁であるべきである。
【0099】
セラミックセパレーターを使用すると、従来のポリマーセパレーターに対する安全性の利点がもたらされる。焼成または焼結プロセス中に、従来のポリマーセパレーターは、縮む傾向を有しており、それによって、電極とセパレーターとの間の結合の有効性を低減する。セラミック材料を含むセパレーターは焼成時に縮まない。従って、セパレーターと電極(単数または複数)との間の結合は、分離する傾向が小さく強いままである。
【0100】
電気化学セル用のセパレーター薄膜は、ポリマー、ポリマー用の溶媒系および溶媒に分散したセラミック材料で構成されたコーティング溶液を利用することによって、電極上に直接形成されてもよい。電極層に溶液からセパレーター薄膜成分を適用すると、2つの層の間の耐久力のある結合がもたらされる。セパレーター前駆体溶液は、液体層を形成するように電極の表面上に被覆される。溶媒をこの層から取り除いて、ポリマーおよびセラミック材料を含む多孔性固形物を残す。最後に、このポリマーは、ポリマー溶融温度(Tm)またはガラス転移温度(Tg)より高い温度にある時間加熱することによって硬化される。その結果、セパレーター薄膜は、電極の表面に直接結合され、その結果、薄膜は電極活性層に対して著しく良好に密着する。この優れた密着は、電極とセパレーター膜との間の界面抵抗を低減することによって性能を向上させる。
【0101】
被覆ナノ複合材料セパレーターとともに使用するための例示的なポリマー材料は、特定の電池系の化学的性質と適合するポリマーを含む。ポリマーは、電気的に絶縁しているべきであり、電解質溶媒への可溶性が低くあるべきであり、セルにおいて化学的および電気化学的に安定しているべきである。ポリマーは単一ポリマーまたはポリマーの混合物であってもよい。例示的な材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系ポリマーが挙げられ、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、およびヘキサフロオルエチレン、テトラフロオルエチレン、クロロトリフロオルエチレン、ポリ(フッ化ビニル)、ポリテトラエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフロオルエチレン共重合体(ETFE)、ポリブタジエン、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびスチレン−ブタジエンゴムとのその混合物、ポリアクリロニトリル、エチレンプロピレンジエン三元重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体とのその共重合体および三元重合体である。リチウムおよびリチウムイオン電池系および他の電池系において有用性を有するポリマーの1つのグループは、スチレンブタジエンおよび他のスチレン系ポリマーなどのフッ素系ポリマーおよびラテックスポリマーを含む。ラテックスポリマー系は、ポリマー懸濁液を形成する傾向があり、液体キャリヤに可溶性にならなくてもよい。ポリフッ化ビニリデンポリマー組成物は、ポリフッ化ビニリデン共重合体および三元重合体を含み、特定の有用性を有するポリマーの1つのグループである。そのような様々な材料が本技術分野で公知で利用可能であり、そのような材料は、実質的に均一なPVDF、および混合物および共重合体を含んでいてもよい。1つの特定の材料は、Kureha7208(商標)で販売されているPVDF材料である。他の同等で同様の材料を同様に使用してもよい。例えば、アノードおよびカソード活性層を準備するために上記検討した材料については参照されたい。
【0102】
被覆ナノ複合材料セパレーター用の無機成分は、膜が組込まれる特定の電池系および化学的性質と適合する様々な天然および人工材料から選択される。2つ以上の適切な無機成分の混合物を検討する。無機成分はセラミック材料であってもよい。セラミック材料の特定の1つのグループはシリカを含み、ヒュームドシリカは1つの特定の形態で使用されてもよいシリカである。ヒュームドシリカは高い表面積で、一般に高純度シリカ材料である。ヒュームドシリカは一般に親水性であり、ほとんどの電解質溶媒および多くの極性ポリマーによって容易に湿潤させることができる。1つまたは複数の実施形態で使用された材料は、およそ200m2/gの表面積を有する。粒子は非常に小さく、典型的には直径が500nm未満、または直径が200nm未満、およびより典型的に約10〜20nmである。1つまたは複数の実施形態では、セラミック材料は、狭い粒径分布および実質的に球状であるヒュームドシリカである。ヒュームドシリカは、極めて制御可能で狭い粒径分布をもたらす四塩化珪素(SiCl4)の慎重に制御された反応で調製することができる。1つの実施形態では、粒子サイズが約14nmのヒュームドシリカを使用してもよい。
【0103】
他のシリコン化合物はセパレーターのセラミック成分として利用してもよく、例えば、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)はこの開示の文脈でセラミック材料であると考えられる。他のセラミック材料としては天然および合成ゼオライト、アルミナ、チタニア等が挙げられる。更に、適切なサイズの他の電気化学的に安定した無機粒子、例えば、MgO、CaCO3および他の金属炭酸塩、ジルコニア、シリコンリン酸塩、ケイ酸塩を使用することができる。セラミック材料は、なお、均一または混合サイズおよび形状で、単独または組みあわせて使用してもよい。
【0104】
コーティング溶液の調製で用いる溶媒系は、コーティング溶液の少なくとも1つの成分がポリマー成分を溶解することができる任意の溶媒系を含む。適切な第2のまたはさらなる成分を使用してもよく、ポリマーを溶解することができない場合、さらなる成分は第1の溶媒と極めて混合できる。好ましくは、溶媒は後の処理ステップの間に取り除くことが比較的容易である。PVDF系膜と関連して有用性を有することが分かった1つの溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)を含み、NMPは、例えば、アセトン、酢酸エチルおよび酢酸プロピルなどの他の溶媒と混合して、適切なスラリーレオロジーを得てもよい。一例として、異なる沸点の溶媒を使用して、溶媒蒸発速度、従って液体スラリーの乾燥の間に生成される膜応力を制御してもよい。本発明の1つの実施で利用した1つの特定の溶媒混合物は、体積基準で30:70のNMP/アセトン混合物を含んでいた。他のものは、NMP30%と酢酸プロピル70%の混合物、メチルエチルケトン(MEK)または酢酸エチルを含む。複合材料スラリーは、せん断がない場合比較的安定している比較的均一の懸濁液である。
【0105】
本明細書に記載した高エネルギー密度セルは、従来の炭酸塩系電解質を使用して作動する。いくつかの実施形態では、リチウムデンドライト形成(苔状リチウム)を抑制するために当業者に公知の添加剤を使用する。電極モノリスで電解質の湿潤は主な問題ではなかった。しかし、提案されたより大きな断面電極は、濡れおよび電極浸透を促進するために、界面活性剤/表面機能化および粒子/気孔サイズ技術を必要としてもよい。
【0106】
1つの実施形態では、電解質系は、液体電解質を含んで、電極全体にわたって急速な反応速度を得る。LiPON固体電解質バリアに加えて液体電解質を使用すると、本明細書に記載した焼結電極および焼結電極−セパレーターサブアセンブリなどの厚い電極に関係する状況に特に役立つ。
【0107】
電極は、任意のサイズ、設計または形状を有する任意のエネルギー貯蔵装置に組み入れられてもよい。1つの実施形態では、電極は双極型セルに組み入れられる。双極型セルは、少なくとも2つの電気化学セルを含み、ここで、連続セルの負極および正極は共通の集電体を共有し、直列に積層されている。従って、セル電圧は付加的である。そのような設計の利点は、不活性材料および電流路の量が最小限にされるので、高出力および高エネルギー密度である。いくつかの実施形態では、電気経路が異なる粒子間で連続的であるので、焼結電極は、より厚い電極を使用することを可能にする。焼結電極は、また、従来の湿潤溶媒スラリー−キャスト電極コーティングより厚みがより均一であってもよい。これは、容量または出力性能におけるセル間のばらつきが使用を複雑にする可能性があるので、双極型の設計において重要である。
【0108】
他の実施形態では、アルミニウム系集電体(例えば、Li4Ti5O12)と適合する負極を使用する。これは、正極および負極の両方を同じ集電体材料に被覆することを可能にし、製造および稼動を単純化し、コストを低下する。
【0109】
他の実施形態では、歪が低いまたはゼロの電極材料を双極型セル用の負および正極活性材料に使用する。または、負極材料および正極材料を一致させて、最小限の最終体積変化を達成する。LiMPO4およびLi4Ti5O12は歪が低いまたはゼロの材料の例である。これは、スタック中の機械的歪を最小限にする。
【0110】
他の実施形態では、レドックスシャトルを双極型セルで使用する。レドックスシャトルは、定義された電位または電圧で、電流を「往復する(shuttles)」または電流がカソードからアノードに通ることを可能にする電気化学的化合物または電気活性添加剤である。レドックスシャトルは、セルの制御された自己放電としての機能を果たし、このように、双極型スタックにおいてセルの平衡を保つために使用されてもよい。例えば、1つのセルがスタックにおいて他のセルより低い容量を有する場合、それは、より早く十分に充電された電圧に達する。しかし、セルは直列であるので、電流は、他のセルが十分に充電されるために、十分に充電されたセルを流れ続けなければならない。レドックスシャトルは、十分に充電されたセルが、過充電されることなくその充電状態(SOC)を維持することを可能にする。
【0111】
他の実施形態では、電気活性ポリマーは、集電体間または負極および正極間で使用されて、定義された電位または電圧で、制御された自己放電を可能とする。これは、レドックスシャトルに類似する。しかし、電気活性ポリマーは、電解質中の成分である代わりに、セル設計の一部である。セパレーターは、電子絶縁材料および電気活性材料の粒子で構成された多孔性骨格を含み、電気活性材料は、多孔性セパレーターに浸透経路を形成する。電気活性ポリマーの特性としては、電池電解質中での不溶性、正極の標準帯電電位より高く、分解反応がセルに生じる電位より低い酸化電位、負極に隣接しているポリマー用負極による還元に対する安定性、「過酸化(overoxidization)」に対する耐性(「過酸化」は、ポリマーに対する不可逆変化をもたらす酸化として定義される)、および充電中に電流を短絡するのに十分な酸化した状態での伝導性が挙げられる。適切な材料および設計は、「過充電保護用固体セパレーター」と題する2008年6月2日に出願された米国特許公開第2009/0029261号に記載されており、引用することによって、その開示内容全体を本明細書に含めることとする。
【0112】
例示的な電気活性ポリマー(電圧窓)は、ポリ(チオフェン)(3.8V〜4.8V)、
ポリ(ピロール)(3.3V〜4.3V)、ポリ(フルオレン)、ポリ(フェニレン−ビニレン)、ポリアニリン、ポリ(ポリフェニレンサルファイド)、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリフェニレンを含み、それらのうちのいずれもアルキル、芳香族および/またはハロゲン置換基を含んでいてもよい。例示的な置換ポリマーとしては、ポリ(3−ブチルチオフェン)およびポリ(ジオクチルフルオレニル)が挙げられる。
【0113】
例示的な電子絶縁材料は、電子的に絶縁しているとともに電気活性材料および電解質に構造的な支持をもたらすことができるいずれかの不活性材料から構成することができる。それは有機ポリマーまたはセラミック材料とすることができる。構造絶縁材料は、セパレーターが組込まれる特定の電池系および化学的性質と適合する様々な天然および人工材料から選択されてもよい。1つまたは複数の実施形態では、不活性構造の絶縁材料は連続相を形成する。例示的な材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエーテルスルホン、またはリチウムイオン電池用のセパレーターの当業者に公知の同様のポリマーを含むポリマーが挙げられる。例示的な材料としては、また、セラミック酸化物などのセラミック粉末が挙げられる。セラミック材料の1つの特定のグループはシリカを含み、シリカの1つの特定の形態であるヒュームドシリカを使用してもよい。ヒュームドシリカは高い表面積の、一般に高純度シリカ材料である。ヒュームドシリカは一般に親水性であり、本発明の実行において利用された材料は、およそ200m2/gの表面積を有する。他のシリコン化合物をセパレーターのセラミック成分として利用してもよい。他の例示的なシリコン系材料は、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)であり、この開示の文脈でセラミック材料であると考えられる。他のセラミック材料としては、天然および合成ゼオライト、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等が挙げられる。構造絶縁材料は、単独または組みあわせて使用してもよい。構造絶縁材料は、約2μm未満または約0.5μm未満または約0.1未満の粒子サイズを有する粒子とすることができる。
【0114】
例示的なセルは、図3で説明するように、7.4×7.4× 0.1cmの5〜10の電極の平行アレイスタックから組み立てられた角柱パウチセルである。電極面積の拡大および平行アレイの構成は、増加発達段階(図6)で実行してもよい。図6は、7.4cmの電極の1cmの平行スタックとして組み立てられた56cm3の試作品を示す。
【0115】
いくつかの実施形態では、電極は、リチウム箔アノード、ポリプロピレンセパレーターおよび1MのLiPF6:炭酸アルキル電解質を組込むラボパウチセルに組み立てられる。いくつかの実施形態では、組み立てられたセルは、C/10でいくつかの形成サイクルを受ける。
【0116】
容量および率容量試験
セルは、確立している試験プロトコルを使用して、コンピュータ制御の電池試験装置、例えば、Maccor96−チャンネル電池試験装置で評価される。セルは、最初にC/5の低い定電流でサイクルされて、電極またはセル容量を決定する。次いで、セルは、異なるC率でサイクルされて、率性能を検討する。
【0117】
サイクルテスト
可逆容量が第1のサイクル容量の80%未満に弱まるまで、電気化学セルを選択したC率で充放電して、サイクル安定性を検討することができる。異なる温度でのサイクルは、材料の熱的安定性およびセル設計を検討するために行われる。
【0118】
インピーダンス分析
インピーダンス分析は、例えば、SI1287電気化学的界面を備えたSolartron SI 1260インピーダンス/ゲイン相アナライザーを使用して、サイクル前後に二者択一的にセル上で行われる。電気化学的インピーダンス分光法(EIS)は、ナノ複合材料電極の輸送特性を充電状態の関数としてみなすことに役立つ。EISデータは、巨視的応答と電極微構造の間の量的リンクを確立するために使用することができる。3つの電極セル構成を使用する多次元のインピーダンス分析は、異なる充電状態で材料と電解質の間の相互作用をよりよく理解するために使用される。薄いリチウム箔(200μm)は、両方の対向および基準電極を準備するために使用することができる。
【0119】
酷使試験
ARC測定を、様々な電極/電解質の組みあわせの基本となる熱的安定特性を評価するために行う。充電式リチウム電池用のUL標準テスト手順によるホットボックス、釘刺し試験および過充電テストは、また、セルの安全性を確立する。
【関連出願】
【0001】
本出願は、「高エネルギー高出力電極および電池」と題し、2008年3月25日に出願された同時係属米国特許出願第61/039,387号に基づいて米国特許法119条(e)の優先権を伴っており、引用することによって本明細書に含めることとする。
【背景技術】
【0002】
現在のリチウム充電式電池の活性材料の体積および重量利用は、いくつかの要因により50%よりはるかに小さい。リチウム充電式電池で現在使用されている微粒子系電極は、出発粉末と、高分子バインダー、溶媒、および炭素などの導電性添加剤粉末との混合によって調製されている。混合された混合物は、次いで金属箔集電体上に被覆され、高圧で乾燥、カレンダーされて、高密度化コーティングを得る。これらの電極は、活性材料の充填密度が不十分であり、典型的に60体積%未満であり、適切な率容量については、開放気孔率は典型的に30体積%〜40体積%である。電極体積の実質的な割合も、電極の処理を向上させるために導入される高分子バインダー、および電極の電子伝導性を向上させるために添加される炭素添加剤によって占有されている。炭素添加剤は、インターカレーション酸化物およびポリアニオン化合物などの電子伝導性が不十分な化合物を使用する電極において特に必要である。これは、そのような化合物の粉末粒子が圧縮された場合、硬質非変形粒子間で高抵抗性「点」接触を形成する傾向があり、伝導性ネットワークが不十分となるからである。これらの電極添加剤は低い比重を有しており、従って実質的な体積を占有する。
【0003】
更に、そのような電極におけるリチウムイオンおよび電子の輸送は、不十分であり、活性材料の完全な利用を達成するために、比較的薄い電極、通常、150μm未満の厚みを必要とする。そのような充電式電池の薄いラミネート構造は、バインダー、導電性添加剤、集電体箔、セパレーターフィルムおよび電解質を含めて非蓄電材料の大きな割合を必要とし、前述の不十分な体積および重量利用となる。高出力電池では、電極の熱伝導率は、また、サイクル中の過剰の熱を防ぐために高くあるべきであり、過剰の熱は、エネルギーおよび出力の低下を引き起こすとともに電池の寿命を制限する。限られた点接触を介して粒子から粒子に熱を運ばなければならないので、微粒子系電極は不十分な熱伝導率を有する。これらの制限は、更に、インターカレーション酸化物またはリン酸塩や硫酸塩などのポリアニオン化合物を使用する正極または負極において深刻になる。そのような化合物が不十分な熱伝導率を有するからである。
【0004】
従来の電池構造の利用を制限する他の態様は、各電極が共通端子に接続されるという要件である。巻回セルでは、接続点が、各電極の側面から延在するタブを介する。このタブの体積および表面積は、タブを介して流れることができるとともに装置に到達可能な電流の量を制限する。
【0005】
従って、活性材料の高い充填密度、速い電子およびイオン輸送反応速度、高い熱伝導率を有するとともに、更に、高い電気化学利用を有しながら厚い電極として準備することができる電極を有することは価値がある。
【0006】
Chiangらの2008年5月23日に出願され、「電池およびその使用のための電極」と題する国際公開WO08/153749号公報は、新規な電極材料および設計を含めて、電池または他の電気化学装置、ならびにこれらで用いるシステムおよび材料に関し、引用することによってその全体を含めることとする。その公報は、更に、高出力および最小体積を有する電池を開示している。
【発明の概要】
【0007】
この文献は、電極材料、セル材料、セル設計、製造方法、および本発明の装置のために達成可能な比エネルギーおよび体積エネルギーを含めて、いくつかの詳細な実施形態について説明する。
【0008】
電池の次の特徴をもたらす。
・充電式電池のための同時焼成された電極−セパレーター構造。
・高エネルギー密度および比エネルギー、または高出力密度および比出力をもたらす活性材料の高い体積および重量利用を有する前記同時焼成された電極構造を利用する充電式リチウム電池。設計は、携帯電子または無線通信装置、電動工具、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグイン電気自動車(PHEV)、完全電気自動車(EV)、バックアップ電源、エネルギー取り込みシステム用蓄電池、または出力ユーティリィティ用の周波数調整システムを含む出力特性向上システムに役立つ。
・熱伝導率および安全性を向上した焼結正極および負極または同時焼成電極−セパレーター構造を使用する双極型セルの設計。
【0009】
300Wh/kgの比エネルギーおよび600W/kg(即ち、稼動の〜2C放電率)の比出力を満足するまたは超えることができる電極およびエネルギー貯蔵装置を提供する。
【0010】
1つの態様では、電気化学装置で用いるサブアセンブリ(部分組立品)を記載する。サブアセンブリは、(a)第1の電極と、(b)セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含む。第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に結合されている。用語「結合(Bonded)」は、本技術分野、特に電気化学および電気化学装置の技術分野において理解されるように使用される。例えば、結合は、材料間の密接な関係を示し、結合としては化学的結合または物理的結合が挙げられるが、必ずしもそれらを含むというわけではない。「結合」は、材料が溶融することをも示すために使用される。
【0011】
いくつかの実施形態では、第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に熱結合されている。熱結合によって、示されるのは材料が熱の適用を含む方法によって結合または溶融するということである。
【0012】
いくつかの実施形態では、サブアセンブリは焼結サブアセンブリである。
【0013】
他の態様では、電気化学装置で用いるサブアセンブリを記載する。サブアセンブリは、(a)第1の焼結電極と、(b)焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含む。第1の焼結電極は、焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に結合されている。
【0014】
更なる態様では、電気化学装置で用いるサブアセンブリは、(a)第1の電極と、(b)セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含む。サブアセンブリは、(i)第1の電極をセパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせ、(ii)第1の電極と、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方とを、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱することによって製造されている。
【0015】
更に他の態様では、電気化学装置で用いるさらなるサブアセンブリは、(a)第1の焼結電極と、(b)焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含む。サブアセンブリは、(i)第1の焼結電極を焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせ、(ii)第1の焼結電極と、焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方とを、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱することによって製造されている。
【0016】
1つの実施形態では、電気化学装置を記載しており、電気化学装置は、
(a)外部回路と電気的に接続した正の集電体と電子的に接触した正極と、
(b)外部回路と電気的に接続した負の集電体と電子的に接触した負極と、
(c)正極と負極との間に位置したセパレーターと、
(d)正極および負極とイオン接触した電解質と、を含む。
【0017】
正極または負極およびセパレーターは焼結サブアセンブリを含む。いくつかの実施形態では、装置中の不活性材料の質量分率は約50%未満である。いくつかの実施形態では、装置の比エネルギーは約600W/kgより大きな出力密度で約300Wh/kgより大きい。
【0018】
他の態様では、電気化学装置で用いるサブアセンブリを準備する方法は、
(a)第1の電極をセパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせること、
(b)第1の電極およびセパレーターまたは第1の集電体を、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱すること、を含む。
【0019】
更なる態様では、双極型セルを記載する。双極型セルは複数の積層電気化学セルを含み、電気化学セルは直列に接合されている。各積層電気化学セルは、
(a)外部回路と電気的に接続した正の集電体と電子的に接触した正極と、
(b)外部回路と電気的に接続した負の集電体と電子的に接触した負極と、
(c)正極と負極との間に位置したセパレーターと、
(d)正極および負極とイオン接触した電解質と、を含み、
各スタックの正極および負極は焼結電極を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1の集電体およびセパレーターは第1の電極の対向面に結合されている。いくつかの実施形態では、本明細書に記載したサブアセンブリは、第2の電極を含み、第1および第2の電極はセパレーターの対向面に結合されている。いくつかの実施形態では、第2の電極および第1の電極は、セパレーターの対向面との熱結合を有しており、第2の集電体およびセパレーターは第2の電極の対向面に結合されている(例えば、図1)。所定のサブアセンブリでは、第1および第2の電極は各々独立して焼結される、または焼結されない。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した焼結サブアセンブリは、厚みが少なくとも約200μmである。
【0022】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および焼結サブアセンブリの厚みは、平均厚みから25%未満変動する。即ち、電極またはサブアセンブリの、その長さおよび幅にわたる最小寸法の長さは、厚みが大きくばらつくことなく実質的に一定である。いくつかの実施形態では、厚みのばらつきは、平均厚みから20%未満、15%未満または10%未満である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明は、開示のみを目的に示し、本発明の限定を意図しない以下の図面を参照して説明される。
【0024】
【図1】双極型セルの断面図である。
【図2】双極型セルの分解図である。
【図3a】厚いモノリシック電極を組込む高エネルギーバイレイヤーセルの設計の概略説明図である。
【図3b】多層セルの繰り返し単位の概略説明図であり、集電体を有する焼結カソードを表し、各面上の負極によって境界を示される。
【図3c】例示の多層積層セル構成の概略説明図である。
【図4a】85%の密度を有する電極の写真説明図である(上面図)。
【図4b】図4aに示す電極の側面図の写真説明図である。
【図4c】図4a、4bに示すLiCoO2電極についての第6及び第7サイクルの間の充電−放電曲線を示す。
【図5】5つの異なる電気活性材料についての、焼結電極の密度の関数としてのカソード利用を示すグラフである。
【図6】5つの異なるカソード化合物についての、密度の関数としての比エネルギーを示すグラフである。
【図7】積層双極型セルアレイの積層を含めて、本明細書に記載したセル設計を拡大するための開発段階の概略描写である。
【詳細な説明】
【0025】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載するセルおよび装置はモノリシック高密度焼結電極を利用する。そのような電極は、従来の電極の不活性成分およびセル充填で占有された寄生体積および質量を最小限にし、それによって、優れた質量および体積効率を有するセルおよび装置をもたらす。
【0026】
重要で予想外の発見は、電気化学サイクル中の制限された結晶体積変化を有する正極について、焼結された肉眼的に厚く(>200μm)高密度(理論的に>65%)の電極が、機械的または電気的不具合のない実用的な率で繰り返しサイクルすることができるということである。浸透電極ネットワークは、導電性添加剤およびバインダーがない場合に高い電子伝導性をもたらす。この技術革新は、従来達成できなかった体積および重量利用の新しいセル設計を可能にする。1つの実施形態では、本明細書に記載したセルおよび装置は、本明細書に記載した電極の全体にわたる急速な反応速度を得るために液体またはゲル電解質を含む(例えば、厚い焼結電極または電極−セパレーターサブアセンブリ)。他の実施形態では、固体高分子電解質は電極およびセルを介して注入される。
【0027】
高エネルギーおよび/または高率を示す電気活性化合物は、本明細書に記載した質量効率セルの設計に役立つ。いくつかの実施形態において、本明細書により詳細に説明するように、少なくとも1つの電極材料は、金属酸化物または金属フッ化物化合物を含む。そのような化合物は、この設計アプローチに適する固有の結晶および物理的特性を有する。更に、ナノ構造の形態では、これらの化合物は、所望の電気化学的性能をもたらすと考えられる。1つの実施形態では、金属フッ化物化合物は、比較的より高い固有エネルギー密度および向上した安全性をもたらす。
【0028】
セル構造は、また、技術革新的な負極の特徴およびセパレーターの特徴を一体にする。いくつかの実施形態では、電解質またはセパレーター層は、金属リチウムアノードと共に使用される、Lipon(酸窒化リン酸リチウム)のフィルムなどの固体イオン伝導性バリアフィルムまたは固体高分子電解質を含む。この組みあわせは、リチウム−デンドライト関連の不具合を抑制するのに有効である。リチウムデンドライト形成を抑制することができる他のバリアコーティングおよび/または電解質添加剤を使用してもよい。
【0029】
本明細書で使用するように、「カソード(cathode)」および「正極(positive electrode)」は置き替え可能に使用される。また、本明細書で使用するように、「アノード(anode)」および「負極(negative electrode)」は置き替え可能に使用される。
【0030】
また、本明細書で使用するように、「粒子サイズ(particle size)」は凝集体粒子サイズを称する。凝集体粒子は、溶融一次粒子の分鎖を称する。 凝集体粒子サイズは、凝集体粒子の平均最大寸法を称し、凝集体粒子を構成する一次粒子ではない。凝集体は、更に塊と区別され、容易に分散することができる凝集体のゆるいつながりである。
【0031】
「ナノスケール(nanoscale)」は、500nm未満を意味し、好ましくは100nm未満である。
【0032】
本発明は、前例がない質量および体積効率の、製造可能で安全なリチウム充電式電池技術を提供する。不活性成分およびセル充填で占有された寄生体積および質量を最小限にするために、モノリシック高密度焼結電極を使用する新規な設計アプローチを使用する(図3)。
【0033】
いくつかの実施形態では、焼結電極は正極である。焼結電極を使用すると、とりわけ、より高い体積充填率(化合物の理論密度の>65%に対して典型的なカソード中の〜55%)も有しながら、カソードの厚みが増加する(>200μmに対して典型的な充電式電池カソードの〜100μm)。この組みあわせによって、不活性材料の質量分率をセルレベルで50%未満に低減することが可能となる。いくつかの実施形態において、所定のセル容量に必要なセルにおける繰り返し層の数を、典型的な充電式電池カソードの要件に対して低減する。本明細書の繰り返し層は、カソード層、アノード層およびこれらの2つの層間のセパレーターを含む連続するものを称する。例えば、いくつかの実施形態では、繰り返し層の数はおよそ5だけ低減される。いくつかの実施形態では、セルは、単一カソード層および単一アノード層を含み、1つの繰り返し層を有する「ユニセル(unicell)」と称される。他の実施形態では、セルは、1つの電極と2つの外層との中心層を有し、互いの鏡像である2つの繰り返し層を含み、「バイセル(bicell)」と称される。他の実施形態では、2〜100の繰り返し層を使用するが、任意の例では、電極がより厚いと、従来の巻回セルまたは積層セルと同じ容量を達成しながら、繰り返し層の使用をより少なくすることが可能となる。いくつかの実施形態では、2〜75の繰り返し層、2〜50の繰り返し層、2〜25の繰り返し層または2〜15の繰り返し層を使用する。層の数を低減するので、セルの不活性成分に関連する質量は低減する(例えば、集電体箔、セパレーター、電解質、バインダー、導電性添加剤、タブ、パッケージ)。従って、いくつかの実施形態では、不活性材料の質量分率は、セルレベルで約40%未満、約30%未満、約20%未満または約10%未満である。いくつかの実施形態では、不活性材料の質量分率は、約10%〜約40%、約10%〜約30%または約20%〜約30%である。
【0034】
1つの実施形態では、図1および2の焼結電極、例えば、カソード101、101’、101”・・・およびアノード102、102’、102” ・・・は、少なくとも50体積%の1つまたは複数のリチウム貯蔵化合物を有し、更に、電解質相が導入される連続または開放気孔を有する。電解質相は、液体電解質、ゲル電解質、または固体ポリマーまたは固体無機電解質であってもよい。リチウム貯蔵化合物の焼結構造を形成することによって、焼成工程の間に粉末粒子間に生ずる接触即ち「焼結ネック(sinter-necks)」は、従来の粒子系電極に発生するより、粒子を結合する大きな断面積をもたらす。より大きな接触面積によって、電極強度が向上し、電子またはイオン伝導率が向上し、熱伝導率が向上し、体積充填がより高くなり、その上、電池の充放電のために、適切な電解質で満たされた気孔を更に有する。
【0035】
厚いモノリシック電極を組込む例示的な高エネルギーセルの設計が、図3に示されている。図3aは、例示的なバイレイヤーセルを表す。図3bは、多層セルの繰り返し単位を表し、焼結カソードは、その周囲で取り付けられた集電体を有し、各面で負極によって境界を示され、左の像におけるよりも大きなカソード厚みを可能とする。図3cは、例示的な多層積層構成を表す。
【0036】
他の実施形態では、本明細書(例えば、図3)に記載した積層角柱の設計は、重合体充填システムにまとめられる。そのような重合体システムは、携帯機器用の充電式リチウム電池に使用されており、自動車用途や他の用途のための大きな高出力電池用に現在開発されている。この充填アプローチへの利点は、金属充填に比較して著しい質量低減である。
【0037】
図4は、本明細書に記載した例示的な焼結電極の性能を表す。今まで、サイクル中に起こる体積変化による電池材料に広がる「放電研摩(electrochemical grinding)」現象は、モノリシック焼結電極が電池システムで機能することができることをあり得ないものとしていた。
【0038】
図4において、0.7mmの厚みの焼結電極に電解質が注入され、リチウム金属アノードに対してサイクルされた。図4aは、85%の密度を有するLiCoO2電極の上からの図を示す。図4aで示すように、電極寸法は1.8×2.4mmである。図4bは、電極の電子顕微鏡写真の描写であり、0.6mmのその高さを示す。図4cは、第6及び第7サイクルのプロットである。結果は、電極が高い可逆容量を得ながら機械的または電気的不具合のない繰り返しサイクルができることを実証する。電極はC/20率でほぼ100%の利用(130mAh/g)を示し、無視できる容量フェードを示し、20サイクル後に検出可能な機械的損傷はなかった。更に、この族における他の化合物のようなLi1−xCoO2は、部分的に脱リチウムされる場合、優れた電子伝導体であるので、電極は、機能する別個の導電性添加剤を必要としない。いくつかの実施形態において、高い利用が、この設計において達成可能である(例えば、2C以内の率)。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、C/20率、C/10率、C/4、1C、2Cまたは5Cで少なくとも約75%の利用を示す。他の実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、C/20率、C/10率、C/4、1C、2Cまたは5Cで少なくとも約80%の利用を示す。さらなる実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、C/20率、C/10率、C/4、1C、2Cまたは5Cで少なくとも約85%の利用を示す。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、C/20率で約75%〜100%の利用を示す。更に高い性能がナノ構造の材料のために得られる。
【0039】
所定の焼結電極の許容体積変化は、関係する材料の機械的特性、使用の間に発現した濃度勾配、および特定の微構造またはナノ構造に依存する。電極は、材料およびナノ構造から設計されて、材料選択およびミクロ構造の長さスケールの低減の両方を介して、使用の間に機械的堅牢性をもたらし、材料の歪対破壊を増加させる。従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載した焼結電極およびサブアセンブリは技術革新的なナノスケールおよびナノ複合体カソード材料を組込む。他の実施形態では、本明細書に記載した焼結電極およびサブアセンブリは、また、独特のセパレーターアプローチを組込む。更なる実施形態では、本明細書に記載した焼結電極およびサブアセンブリは、また、低い質量および高い比エネルギーのアノード材料を組込む。これらの材質選定によって、高い質量効率および体積効率充電式セルが可能となる。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した充電式セルは、唯一得られた活性材料の理論比エネルギーの>50%、および>600W/kgの出力密度で絶対比エネルギー>300Wh/kgを達成しながら、少なくとも約56cm3(つまり、Dセルに等しい)の体積を有する。比較すると、今日の市場に出ている主要な充電式リチウム電池は250Wh/kg、または理論的限界の約20%を実現する。従って、いくつかの実施形態では、既存の一次(使い捨て)リチウム電池(米軍によって使用されるBA5590など)より高い容量を供給する充電式電池を提供する。
【0041】
1つの実施形態では、セルは、少なくとも3つの繰り返し層のスタックを含む角柱構成を含むが、繰り返し層の電圧が少なくとも部分付加的であるように層が配置される。即ち、各繰り返し層を含むセルは、双極型セルの設計でのように直列に接合されて、セルで用いる電気化学対の使用電圧より高い電圧の完成セルを生成する。他の実施形態では、充電式セルは従来のポリマー充填技術を使用して充填される。
【0042】
モノリシック電極を使用することによって、新しい設計の可能性がもたらされる。1つの実施形態では、カソード材料が一般にアノードより不十分な電子伝導性を有するので、カソードはアノードというよりむしろモノリシック焼結電極である。従って、カソードは、本質的にそれ自体の集電体の役割をする焼結カソードの電子伝導性の増加からより得である。両電極が焼結される配置であるとともに、対向配置も検討される。更に、いくつかの実施形態では、電極は、セパレーターおよび/または集電体などの他のセル部品と同時焼成または焼結される。例えば、正極、セパレーターおよび正の集電体は、同時焼成されて単一構造を形成し、個々の部品は互いに結合する。同様に、負極、セパレーターおよび負の集電体は、同時焼成されて、単一構造を形成する。いくつかの実施形態では、2つの電極はセパレーターと同時焼成される。いくつかの実施形態では、1つの集電体は同時焼成された構造に含まれる。
【0043】
従って、いくつかの実施形態では、焼結電極は、図1および図2においてその表面に取り付けられたセパレーター、例えば、103、103’、103”を有することによって、電池のサブアセンブリを形成する。いくつかの実施形態では、セパレーターは無機化合物、無機−有機複合材料または混合物、もしくは有機化合物を含む。いくつかの実施形態では、セパレーターは、焼結電極に適用され、次いで熱処理される微粒子材料を含む。いくつかの実施形態では、セパレーターは焼結微粒子セラミックを含む。いくつかの実施形態では、セパレーターは、コーティングの後に任意に焼成されるゾルゲル・コーティングを含む。いくつかの実施形態では、電極およびセパレーターは同時焼成される。
【0044】
いくつかの実施形態では、集電体、例えば、図1および図2の104、104’、104”は、電極、または電極およびセパレーターと同時焼成されて、集電体が電極に熱結合されているサブアセンブリを製造する。
【0045】
モノリシック焼結カソードによって可能にされた基準となる高エネルギー電池設計を、図3で説明する。いくつかの実施形態では、カソード層はおよそ1mmの厚みで製造されており、その各半分の厚みは、セルの稼動中に一方の側に置かれたアノード層で完全に利用されてもよい。図3bおよび図3cの多層セルで説明した1つの実施形態では、カソード集電タブは、電極周囲に結合されている。結合は、例えば、カソード縁上のスパッタ金属膜への金属−金属結合を使用することによって、または導電性接着剤の使用によって達成される。図3に示すように、いくつかの実施形態では、アノード設計は銅箔の層からなり、リチウム金属膜、または合金アノードを含むフィルムまたはコーティングで両側に被覆されている。フィルムは標準コーティング技術を使用して被覆される。例えば、1つの限定しない実施形態では、フィルムは銅に加圧積層されたリチウム箔である。他の実施形態では、フィルムは蒸着リチウムである。リチエート化カソードを利用する実施形態では、充電時のリチウム金属の堆積を促進し、かつサイクル中に不可逆なリチウム損失に対応するために、リチウム金属を主として核形成の支援としてアノードで使用する。アノード−活性金属合金を使用する場合、前記合金は電池のサイクル中にリチウムを貯蔵、放出する。そのような合金は、スパッタ、蒸着、加圧積層、熱噴霧コーティングによって、または合金の粉末を含むコーティングとして堆積されてもよい。
【0046】
上記のように、本明細書に記載した焼結電極および電極サブアセンブリは、従来の粒子系電極の設計より厚い電極を可能にする。いくつかの実施形態では、単一の焼結電極層は、焼結電極の厚みの実質的に2分の1が、各対向電極層とイオンを交換するように各面で対向電極の層を有する。そのような例では、焼結電極の活性層の厚みはその厚みの半分である。他の実施形態では、焼結電極層は、金属箔などの集電体に取り付けられており、活性層の厚みは全体厚みである。いくつかの実施形態では、電極または電極サブアセンブリの活性層の厚みは約200μmより大きい。他の実施形態では、活性層の厚みは約400μmより大きい。更なる実施形態では、活性層の厚みは約600μmより大きい。いくつかの実施形態では、活性層の厚みは約200μm〜約1000μmである。
【0047】
焼結電極および電極サブアセンブリは、特に従来の粒子系電極の設計に比べて高密度である。いくつかの実施形態では、活性材料の充填密度は、化合物の理論密度の約65%より大きい。他の実施形態では、充填密度は、化合物の理論密度の約80%より大きい。いくつかのセパレーターの選択を検討する。1つの実施形態では、セルに、その後液体電解質を注入し、従来の多孔性セパレーターフィルム(例えば、約20〜25μmの厚み)を使用する。他の実施形態では、リチウムデンドライト形成による内部短絡に対する保護として、Liponなどの固体電解質化合物の絶縁保護層を、多孔性カソード上に堆積する。いくつかの実施形態では、Lipon層は厚みが約0.5〜1.0μmである。いくつかの実施形態では、セパレーター(例えば、Lipon)層は厚みが約0.5μm、厚みが約0.6μm、厚みが約0.7μm、厚みが約0.8μm、厚みが約0.9μmまたは厚みが約1μmである。スパッタ堆積されたLiponフィルムは、高度な絶縁保護で多孔性カソードを被覆することができる。更に、この厚み範囲のフィルムは、0.5mmのカソード厚みに対して、2C率に対応する電流密度でのサイクル中に典型的には0.3V未満の電位降下に寄与する。いくつかの実施形態では、フィルムは、サイクル中に0.2V未満の電位降下、サイクル中に0.15V未満の電位降下、またはサイクル中に0.1V未満の電位降下に寄与する。更に、いくつかの実施形態では、リチウム金属アノードは、被覆されたカソードに直接積層される。そのような構成は、例えば、約0.5〜1.0μm厚みのLiponフィルムを含む。いくつかの実施形態では、Liponフィルムは約0.5μmの厚み、約0.6μmの厚み、約0.7μmの厚み、約0.8μmの厚み、約0.9μmの厚み、または約1μmの厚みである。いくつかの実施形態では、Liponフィルムは実質的にピンホールはない。いくつかの実施形態では、さらなる絶縁セパレーターがセルまたは装置構成に含まれている。いくつかの実施形態では、従来のセパレーターを使用する。他の実施形態では、被覆されたナノ複合材料セパレーターを使用してもよい(例えば、2008年8月21日に出願され、電気化学セル用のセパレーターおよびその製造のための方法と題する米国特許出願第12/196,203号を参照されたく、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする)。ナノ複合材料セパレーターは、それらの比較的向上した安全特性を鑑みて望ましい。
【0048】
いくつかの実施形態では、焼結電極をまず焼結し、または部分的に焼結し、次いで、セパレーター層をその表面に適用し、次いで、サブアセンブリを同時焼成して、2つの層を結合するとともに電気化学セルのサブアセンブリを形成する。そのような同時焼成されたセパレーター層は、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ケイ酸塩ガラスまたは他の化合物を含めて、電気絶縁であり、電気化学的に不活性なセラミックまたはガラス化合物を含んでいてもよい。そのような例では、同時焼成されたセパレーター層は、焼成後に多孔性であってもよい。他の例では、同時焼成されたセパレーターは、酸窒化リン酸リチウム、ヨウ化リチウム、結晶質またはガラス質リン酸リチウム等のイオン導電性であるが、電子的に絶縁性の化合物を含んでいてもよい。そのような例では、同時焼成されたセパレーターは、焼成後に多孔性であってもよく、または実質的に緻密であってもよい。いずれかの例では、同時焼成されたセパレーター層は、厚みが約1μm〜200μmである。いくつかの実施形態では、同時焼成されたセパレーター層は、厚みが約1μm〜約150μm、約1μm〜約100μm、約1μm〜約75μm、約1μm〜約50μm、約1μm〜約25μm、または約1μm〜約10μmである。
【0049】
他の実施形態では、焼結電極を、金属集電体と同時焼成し、前記集電体を、面または焼結電極の1つまたは複数の端に適用する。いくつかの実施形態では、同時焼成された集電体は、金属箔、または焼成の間に焼結される金属粉末を含む。電極と同時焼成された正の集電体は、アルミニウム金属箔またはアルミニウム金属粉末を含んでいてもよい。負の集電体は銅箔または銅金属粉末を含んでいてもよい。負の集電体は、また、Li金属に対して測定される場合に約1Vよりも大きな平均リチウム挿入電圧を有するアノード−活性材料と共に使用されるなら、アルミニウム箔またはアルミニウム粉末を含んでいてもよい。例えば、リチウム−チタネートスピネルは、Li金属に対して約1.55Vのリチウム挿入電圧を有しており、アルミニウム集電体と共に使用してもよい。金属粉末集電体の例では、同時焼成された組立品は、金属粉末スラリーまたはセラミック充填およびハイブリッド回路において焼成抵抗器または内部接続を製造するために使用される金属粉末製剤に類似する懸濁液を調製し、スクリーン印刷、ディッピング法、噴霧法または他のそのような方法を使用して電極に金属粉末スラリーまたは懸濁液を適用し、その後に乾燥、脱バインダーおよび焼結することによって製造してもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、同時焼成されたセパレーターまたは同時焼成された集電体を、未焼成状態で、その未焼結状態の少なくとも1つの焼結電極に適用し、材料をともに同時焼成する。
【0051】
いくつかの実施形態では、焼結電極、セパレーター層および対向電極を有する繰り返し層全体を任意に焼結してもよく、ともに同時焼成する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの電極層を含むサブアセンブリ、1つのセパレーター層および1つの集電体層をともに同時焼成する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのユニセル、少なくとも1つのバイセル、または多層セルを含む組立品は、そのセパレーターおよび集電体層を含み、1ユニットとして同時焼成される。他の実施形態では、そのような同時焼成層、サブアセンブリまたは組立品は、同時焼成前に未焼結状態または部分的焼結状態である少なくとも1つの電極を含む。
【0052】
同時焼成または焼結サブアセンブリを組込む電気化学セルおよび装置は、特に、セルまたは装置の安全性および耐久性に関して利点をもたらす。従来のパウチセルの構成部品は、時間とともに分離する傾向を有する。そのような分離を防ぐために、セルまたはスタックに最小限のスタック圧力を適用して、分離を回避しなければならない。同時焼成または焼結サブアセンブリの部品を結合するので、それらは、不十分なスタック圧力で、その結果、分離の影響を受けにくい。従って、セルまたはサブアセンブリの構成部品間の結合は、使用の物理的応力(例えば、電子装置の携帯性に起因する応力)に耐えることができるより耐久力のある装置をもたらす。
【0053】
更に、セルおよび装置で焼結サブアセンブリを使用すると、使用する集電体およびセパレーター材料の量が低減されることを可能にする。例えば、いくつかの実施形態では、集電体は、従来の装置でのように、電極の一方の側の全表面積ではなく、電極(例えば、図3b)の周囲に主として接触する。焼結電極全体が導電性なので、特定のエネルギーまたは電流量を得るのに必要な電極と集電体との間の接触量が低減される。例えば、いくつかの実施形態では、集電体は、第1の電極の周囲に主として制限される。例えば、いくつかの実施形態では、集電体は、中実な長方形の形状ではなく、輪郭または枠の形状である。いくつかの実施形態では、第1の集電体に結合された第1の電極の部分の周囲面積は、それが接触する電極の全面積の約50%未満である。例えば、結合面積は、それが接触する電極の全面積の45%未満、40%未満、30%未満、25%未満、20%未満、15%未満または10%未満である。
【0054】
そのような製造手順の一例として、LiCoO2などのカソード化合物の粉末を、まず、電極の形状に固定する。次いで、アルミナまたはシリカなどのセパレーター化合物の粉末懸濁液を、未焼成カソードの1つの面に適用する。アルミニウム粉末集電体懸濁液を、未焼成カソードに他の面または縁に適用する。集電体−カソード−セパレーターサブアセンブリを、次いでともに同時焼成する。
【0055】
言及した前記同時焼成ステップのいずれかにおいて、粉末懸濁液の製剤、および焼結電極の製剤およびプレス密度を、電子部品および構造部品を同時焼成する当業者に公知の方法を使用して調整して、実質的に欠陥のない同時焼成品を達成する。焼成スケジュールは、焼成温度、時間、および加熱および冷却速度を含み、同時焼成する当業者に公知な方法を使用することによっても調整する。例えば、いくつかの実施形態では、部品をプレスし、少なくとも約1.5時間、空気またはアルゴン中で少なくとも775℃の温度で焼成する。いくつかの実施形態では、焼結プロセスを700℃、750℃、800℃、850℃、900℃、950℃、1000℃、1050℃、1100℃、またはそれ以上の温度で実行する。いくつかの実施形態では、電極およびサブアセンブリを、約1時間、約1.5時間、約2時間、約2.5時間、約3時間、約5時間または約10時間焼成する。バインダーおよび残留有機物の除去を支援し、所望の高密度化率を達成し、使用する化合物の望ましくない酸化または還元を防ぐために、不活性酸化雰囲気または部分酸化ガス雰囲気で焼成を行う。同時焼成の間に回避される一般的な欠陥としては、部品層の1つまたは複数の亀裂または層間剥離、焼成プロセスの間の部品の異なる収縮による反り、部品間の異なる熱膨張による亀裂または反り、または電極、セパレーターまたは集電体で使用される構成化合物の組成または相の変化が挙げられる。
【0056】
本明細書に記載したセル、サブアセンブリおよび装置の質量利用は、使用する活性材料の特定の物理的および電気化学的特性に依存する。
【0057】
まず、このセル設計の可能性を説明して、このプログラムの質量利用および比エネルギーの密度の目標に達するために、図5は、本明細書に記載し、負極としてリチウム金属と共に使用する特定のカソード材料についての計算結果を表す。活性材料の質量分率は、アノードとしてリチウム金属と共に使用する場合、カソードによって支配される。例えば、図5aは、焼結カソードの密度の関数としてカソード利用を表し、活性材料によるセルの特定の質量利用が達成される焼結カソード密度を示す。図5は、約60%のみの焼結密度でいくつかのカソード化合物が80%の質量利用に達することができることを実証する。85%の焼結密度では、LiCoO2を使用してカソードを実証し、質量利用は約90%である。ここで、表記LNMOは電気活性化合物Li1+x(Ni0.5Mn0.5)1−xO2を称する(例えば、J.Electrochem.Soc.154(3)、A264-A274(2007)で報告したアルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)による研究を参照されたく、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする)。図6では、本セル設計の絶対比エネルギーは、いくつかの候補カソードについて示される。特に、図6は、焼結カソードの密度の関数として比エネルギーを表す。例えば、500Wh/kgが、〜23%のみのLNMOカソード密度で到達されることができ、一方、80%の質量利用に対応する60%のカソード密度では、絶対比エネルギーが約800Wh/kgであることが分かる。提案する比較的大きな構成のセルについて、充填が質量利用を増加させる比較的小さな機会をもたらす状態で、活性材料の含有量によって性能が支配されることに留意されたい。
【0058】
従って、いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極およびサブアセンブリは、完成セルにおいて80%ほどの活性材料質量利用を実現する。他の実施形態では、活性材料充填密度は理論的に約85%である。さらなる実施形態では、充填密度は理論的に約90%である。いくつかの実施形態では、本明細書に記載したセルの材料質量利用は約60%より大きい、約80%より大きい、または約90%より大きい。
【0059】
いくつかの実施形態では、電極および電極組立品は、約40%のカソード密度で少なくとも約60%、約60%のカソード密度で約75%、または約70%のカソード密度で約80%のセルレベルで、質量利用を達成する。
【0060】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、約20%〜約90%、約20%〜約80%、約20%〜約70%、約20%〜約60%、約50%〜約60%、約50%〜約70%、約50%〜約80%または約50%〜約95%のカソード密度で少なくとも約300Wh/kgのセルレベルで比エネルギーを達成する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、約20%〜約90%、約20%〜約80%、約20%〜約70%、約20%〜約60%、約50%〜約60%、約50%〜約70%、約50%〜約80%または約50%〜約95%のカソード密度で少なくとも約500Wh/kgのセルレベルで比エネルギーを達成する。
【0061】
反対に、本明細書に記載した約50%のカソード密度を有する電極および組立品は、約250Wh/kg、約350Wh/kg、約550Wh/kg、約750Wh/kgまたは約950Wh/kgの絶対比エネルギーを示す。約70%のカソード密度では、本明細書に記載した電極および組立品は、少なくとも約300Wh/kg、約400Wh/kg、約600Wh/kg、約800Wh/kgまたは約1000Wh/kgのセルレベルで比エネルギーを達成する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載した電極および組立品は、約250Wh/kg〜約950Wh/kg、約350Wh/kg〜約750Wh/kg、または約450Wh/kg〜約650Wh/kgの約50%のカソード密度について、セルレベルで絶対比エネルギーを有する。
【0062】
本発明で使用してもよい充電式リチウム化学的性質用の多くの電気化学対のうちで、いくつかの実施形態を表1に示す。表1は、カソード材料の4つの実施形態およびアノード材料の2つの実施形態をもたらす。8つの可能性のうちの6対(下線)が500Wh/kgの比エネルギーを満足する、即ち超える。
【0063】
表1
2つのアノード(行)と共に使用されるカソード(列)についてのWh/kgでの比エネルギー。下線値は、80%質量利用で500Wh/kgを超える電気化学対を表す。
*導電性を向上させるために、20重量%のマトリックスを有する予めリチエート化された金属フッ化物を前提とする。
【0064】
いくつかの実施形態では、焼結電極は、電気化学的サイクルの耐微小割れ性のために選択される。耐熱衝撃性セラミックスの方法でのように、焼結電極はある程度の微小割れを許容することができるが、その焼結粒子ネットワークの広がりを失わず、巨視的亀裂を受けない。焼結電極は、高い機械的強度を犠牲にして耐損傷性であるように設計されている。適切な材料および材料処理パラメーターは、耐熱衝撃性の用途のためにセラミック材料の技術から選択することができる。
【0065】
1つの実施形態では、焼結電極は、また、電極の焼結を向上させるために添加された1つまたは複数の相を含む。例示的な添加剤は、金属、合金またはセラミックスを含む無機化合物であってもよく、または1つまたは複数のポリマーまたは有機化合物であってもよい。添加剤は、焼結において使用される焼成温度で固体またはガラスまたは液体であってもよい。例えば、酸化物カソード粉末は、アルミニウム粉末と混合しても、プレスしてもよく、実質的にLiCoO2を分解することなく、金属−セラミック結合を生成するために周囲温度より高いがアルミニウムの融点(660℃)より低い温度で焼成してもよい。ケイ酸塩またはホウケイ酸ガラス粉末を焼結助剤として使用して、酸化物カソード粉末を結合するとともに、粒子間の焼結ネック形成の高密度化または範囲を向上させてもよい。PVdFと炭素の混合物、またはBayerのPEDOTなどの導電性高分子、または低いガラス転移温度のイオン導電性ブロックと高いガラス転移温度の構造ブロックとが混合されたブロック共重合体を使用して、比較的低い焼成温度で酸化物粉末を結合してもよい。
【0066】
いくつかの実施形態では、添加相(単数または複数)は、焼結電極の電子またはイオン伝導率を向上させる導体材料である。いくつかの実施形態では、添加相は、焼結電極の気孔面、例えば、電極の内面で連続的または部分連続的コーティングを形成する。いくつかの実施形態では、このコーティングは、セルの使用条件下で電気化学的に安定している炭素または金属である。例えば、アルミニウムは正極添加剤として適切であり、銅またはチタンは負極添加剤として適切である。いくつかの実施形態では、気孔面コーティングは、電極の焼成の間に必然的に生じる。いくつかの実施形態では、電極を焼結した後、気孔面コーティングを適用する。いくつかの実施形態では、気孔面コーティングを蒸着によって適用する。いくつかの実施形態では、気孔面コーティングを液体の浸透によって適用し、その後に乾燥および任意に焼成工程を行う。
【0067】
いくつかの実施形態では、添加相(単数または複数)は、電極の熱サイクルまたは電気化学的サイクルにおける強度または破壊靱性または損傷許容性または疲労抵抗性を向上させる。いくつかの実施形態では、この相は、上記伝導性添加材料を含めて、金属、合金およびポリマーを含む延性固体であるが、これらに限定されない。例えば、アルミニウム金属および銅金属は、焼結酸化物カソードおよびアノードの強度および破壊靱性をそれぞれ向上させる。ポリマーはセラミックスおよび金属より典型的に延性があり、焼結電極およびサブアセンブリの強度および破壊靱性を向上させることができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、焼結電極またはサブアセンブリの気孔率が制御される。いくつかの実施形態では、焼結電極における気孔割合、気孔形状、気孔トポロジーおよび気孔率の空間分布は、電極の電気化学的作用および機械的作用を向上させるために選択される。いくつかの実施形態では、所望の気孔構成を形成するために、除去可能な、即ち「一過性(fugitive)」材料を電極に添加する。いくつかの実施形態では、除去可能な材料は、氷、もしくは昇華、熱分解または化学分解によって後に取り除かれるハロゲン化アルカリ、ナフタリン、ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルまたはポリスチレンを含む無機または有機化合物またはポリマー、もしくは高温での酸化によって取り除かれる炭素粒子、もしくは化学分解によって取り除かれるガラスまたは金属繊維である。いくつかの実施形態では、比較的高い長さ/直径アスペクト比の気孔チャンネルが、焼結前に、圧縮された粉末電極に、除去可能または部分的に除去可能な材料の繊維を組み入れることによって焼結電極に導入されている。いくつかの実施形態では、そのような繊維はポリマーまたはガラスまたは炭素繊維を含む。いくつかの実施形態では、気孔率は、電極のより高い利用または出力をもたらすために、集電体側からセパレーター境界に電極の厚みを介して徐々に変化させられる。
【0069】
いくつかの実施形態では、焼結電極またはサブアセンブリは、電気化学的サイクル後に、その電子またはイオン伝導率を増大させるエネルギー貯蔵化合物を含む。これは一般に有益であり、サイクルが電極におけるいくらかの機械的損傷または接続損失を導く場合、特に有益となり得る。例えば、LiCoO2またはLiMPO4またはLi4Ti5O12などの正極材料を検討されたく、ここでMは金属を含む。そのような化合物が実質的なリチウム固溶体を提供することができるように選択または設計されている場合、固溶体の生成は、遷移金属のより大きな多価への電子伝導性の増大をもたらす。第1の2つの例では、これらの例は、高リチエート化状態で一般に製造される正極化合物であり、セルがリチウムのいくらかの不可逆的損失により完全放電される場合でさえ、特定の電気化学セルでの使用によって、それらの化合物が部分的にLiを奪われる。その結果、化合物は電子伝導性を得て、初期電気化学サイクルまたはセル「形成(formation)」後に、より高い伝導状態で使用可能である。Li4Ti5O12の例では、これはリチウムが使用の間に挿入される負極化合物である。リチウムの挿入は、同様に、化合物の電子伝導性を増大させ、焼結電極としてのその機能を向上させる。
【0070】
「層状(layered)」酸化物と同族の例示的な酸化物カソードとしては、LiCoO2およびLiNiO2が挙げられ、例示的な金属フッ化物は転換または置換反応の材料の族からのものである。これらのカソード材料は、現在、技術的な成熟度の様々な段階にある。NCAおよびLNMOはLiCoO2のより高いエネルギー密度の派生物である。
【0071】
NCA(LiNi0.8Co0.15Al0.05O2)は層状酸化物であり、工業的に成熟したカソードである。この材料は、LiCoO2と比較して充電時により大きな体積変化を有し(−6%対+2%)、焼結カソードの機械的耐久性に影響を及ぼす可能性があり、特に粒子サイズが低減した状態で、充電状態における安全性を低下させる。しかし、本電極の設計の利点は、焼結に伴う比表面積の低減が、粒子サイズの低減に典型的に伴う安全の問題を緩和することに役立つ。
【0072】
層状酸化物化合物Li1+x(Ni0.5Mn0.5)1−xO2(LNMO)(xは0〜約0.3である)は、NCAより最大で25%高いエネルギーを付与し、近年、室内実験において適当なサイクル寿命および率容量を実証した。この化合物は、充電時に低い体積膨張(+3%)を有し、化合物を本設計にとって魅力的にする。この酸化物は、アルゴンヌ国立研究所(Argonne National Laboratory)(J.Electrochem.Soc.154(3)、A264-A274(2007))で研究者によって報告されたプロセスに記載された方法を使用して製造され、拡大されており、開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする。このプロセスは、撹拌タンク型反応器内でアルカリ条件で共沈したNi0.5Mn0.5(OH)2前駆体を使用する。次いで、水酸化物をわずかに過剰なLi2CO3と混合して、空気中で1000℃で12時間仮焼する。
【0073】
他の実施形態では、正の電気活性材料は金属フッ化物である。金属フッ化物は、安全で非常に高い容量のカソード材料として重要な特性を有する。
【0074】
例示的な金属フッ化物としては、BiF3、CoF2およびNiF2が挙げられる。これらの材料は、FeF3およびBiF3でうまくなされるようにナノ複合材料の形態で調製することができる。例えば、BiF3は、伝導性マトリックスとしての炭素またはMoS2と製剤して、極めて可逆的な高エネルギー密度のナノ複合材料を得た。BiF3−20%MoS2ナノ複合材料は、NCAより高いエネルギー密度を有し、はるかに安全である。体積膨張は大きい(NiF2に対してとても小さい)が、ナノ複合材料が延性マトリックス材料(MoS2は、潤滑剤として広く使用される「板状(platy)」黒鉛状材料である)に基づくということは、MoS2含有ナノ複合材料が不具合なしでサイクル可能な堅牢な機械的特性を有することを意味する。NiF2は、BiF3より著しく高いエネルギー密度電位を付与する。
【0075】
金属フッ化物ナノ複合材料は、優れたエネルギー密度を可能するが、リチウムイオンの動作源を設けることなく、リチウムイオン電池に直接組み入れることはできない。リチエート化ナノ複合材料(MeFx→Me+xLiF)の制御形成は、それが金属フッ化物領域内に生ずるサブナノ複合材料であるのでとても重大である。ナノ複合材料のプレリチオ化への少なくとも2つのアプローチがあり、両方とも所望の(LiF+Me)サブナノ複合材料を導き、ここで、Meは、他の金属のうちでFe、Ni、CoおよびBiであってもよい。1つの技術は、化学的または物理的手段によって、LiF+Meのナノ複合材料を直接製造することである。他の技術は、予め製造された金属フッ化物に適用される還元反応を利用することである。後者の反応は前者よりも多くの利点を有する。実際的な利点は、トップダウンのアプローチからの純金属およびアルカリフッ化物からなる約l〜2nmのナノ複合材料を直接形成することは非常に困難であることである。還元反応は、還元剤での物理的、熱的または電気化学的相互作用、または電位によって促進され、非常に微細なナノ構造を形成する最も的確な方法である。この技術によって、成分(LiFおよびMe)の形成が核形成および成長プロセスから発展されるので、約l〜2nmでナノ複合材料を形成することが可能である。
【0076】
金属フッ化物は、エネルギー密度と同様に高い比エネルギーを付与する。表2は、今日の最先端技術のインターカレーション材料によって例示した600〜800Wh/kgを軽く超える比エネルギー密度を付与する金属フッ化物のいくつかの実施形態を表す。プレリチオ化技術はNiに適用してもよい。プレリチオ化は、LiF/Me領域だけでなく新しい混合伝導性マトリックスも設計する性能をもたらす。
【0077】
表2 様々な単一の2価および3価のフッ化物に対するLiとの転換反応の間に予想される理論平均電圧、比容量および比エネルギー
【0078】
いくつかの実施形態では、リチウム貯蔵材料は化合物LixMyXO4Z2を含み、Mは金属を含み、XはP、SまたはAsであり、Zはハロゲンであり、制限なく、オリビンまたはNASICON構造タイプの化合物、またはMが1つまたは複数の第1列遷移金属を含む化合物を含む。いくつかの実施形態では、電極は、ドープされたリチウム鉄リン酸塩オリビンまたはドープされたリチウムマンガンリン酸塩オリビンまたはその2つの固溶体を含む。リチウム金属リン酸塩、ケイ酸塩および硫酸塩は、オリビン構造で結晶化する組成LixMyPO4(Mは1つまたは複数の第1列遷移金属および他の非遷移金属を含む)のものを含み、そのような電極に基づいた焼結電極および電池で使用することができる。そのようなオリビンは、電動工具、輸送および静止用途を含む広範囲の用途用の高出力および長寿命電池のための対象となる。例示的なリチウム貯蔵材料としては、米国特許公開出願第2004/0005265号(「導電性リチウム貯蔵電極」と題する米国特許出願第10/329,046号に対応する)、2006年4月3日に出願され、「ナノスケールイオン貯蔵材料」と題する米国特許出願第11/396,515号、2006年9月11日に出願され、「高充放電率容量および低インピーダンス成長を有するリチウム二次電池」と題する米国特許出願第11/518,974号に開示したものが挙げられ、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする。
【0079】
いくつかの実施形態では、正極は、電気活性材料としてリチウム−遷移金属−リン酸塩化合物を含む。リチウム−遷移金属−リン酸塩化合物は、金属、メタロイドまたはハロゲンで任意にドープされてもよい。いくつかの実施形態では、正の電気活性材料はオリビン構造化合物LiMPO4であり、MはV、Cr、Mn、Fe、CoおよびNiの1つまたは複数であり、化合物はLi、MまたはOサイトで任意にドープされる。Liサイトでの欠陥は、金属またはメタロイドの添加によって補償され、Oサイトでの欠陥はハロゲンの添加によって補償される。いくつかの実施形態では、正の活性材料は熱的に安定であり、遷移金属をドープしたリチウム遷移金属リン酸塩は、オリビン構造を有し、式(Li1−xZx)MPO4またはLi(M1−xZx)PO4を有し、MはV、Cr、Mn、Fe、Co、Niの1つまたは複数であり、Zは、Ti、Zr、Nb、Al、Ta、WまたはMgの1つまたは複数などの非アルカリ金属ドーパントであり、xは0.005〜0.05の範囲である。典型的な電池では、電気活性材料は(Li1−xZx)MPO4であり、ZはZr、NbまたはTiである。
【0080】
ドープされたリチウム鉄リン酸塩化合物は、炭酸リチウム、リン酸アンモニウムおよびシュウ酸鉄を含むがそれらに限定されないリチウム塩、鉄化合物およびリン塩の出発原料から調製してもよく、Mg,Al、Ti、Fe、Mn、Zr、Nb、TaおよびWなどのドーパント金属を、低い添加濃度に、典型的に金属酸化物または金属アルコキシドとしてそれに添加する。粉末混合物を、300℃〜900℃の温度で低い酸素環境で加熱する。これらの化合物は、室温でおよびその室温近くで、増加した電子伝導性を示し、リチウム貯蔵材料としてのそれらの使用には特に有利である。これらの化合物の組成および調製に関するさらなる詳細は、米国特許公開出願第2004/0005265号(「導電性リチウム貯蔵電極」と題する米国特許出願第10/329,046号に対応する)で見られ、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする。
【0081】
いくつかの実施形態では、アルカリ遷移金属リン酸塩は、「ナノスケールイオン貯蔵材料」と題する2006年4月3日に出願された米国特許出願第11/396,515号に記載されたものが挙げられ、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする。例としては、オリビン(AxMPO4)、NASICON(Ax(M’M”)2(PO4)3)、VOPO4、LiVPO4F、LiFe(P2O7)またはFe4(P2O7)3構造タイプのナノスケール秩序構造または部分的無秩序構造が挙げられ、Aはアルカリイオンであり、M、M’およびM”は金属である。
【0082】
1つの実施形態では、正極活性化合物は、Lix−aM”aFePO4の全体組成を有する。
【0083】
いくつかの実施形態において、正極活性化合物はLiFePO4である。
【0084】
いくつかの実施形態において、正極活性化合物はLiCoO2である。
【0085】
電極材料は、リチウム貯蔵材料としての使用中に、実質的に大きなモル体積変化を受ける(モル体積は、化合物の式単位のモルに対する体積として定義され、例えば、LiMPO4のモルであり、Mは金属である)。リチウム挿入または除去時のモル体積の変化は、化合物の相の膨張または収縮による可能性があり、または異なる結晶相間または結晶相とアモルファス相の間の変化を含む材料の相の変化による可能性がある。大きな体積差を有する異なる状態間の複合エレクトロサイクルは、電極の機械的不具合、例えば、巨視的亀裂に結びつく可能性がある。いくつかの実施形態では、モル体積の変化は、約2%を超える可能性があり、または組成LiCoO2と組成Li0.5CoO2の間でサイクル間にLiCoO2のものを超える可能性がある。いくつかの実施形態では、モル体積の変化は約5%、または約10%さえ超える可能性がある。
【0086】
高密度で電子伝導性で機械的に堅牢なモノリシック電極およびサブアセンブリを提供する焼結されたナノ構造およびプロセスを提供する。いくつかの実施形態では、カソード化合物は、典型的には、より不十分な電子伝導性を有し、提案された設計から最も利益を得るので、カソードは多孔性高密度化部材である。他の実施形態では、アノードは多孔質部材である。合成された粉末、またはナノスケールの寸法(出力に関して)の一次結晶に粉砕された粉末から始めて、焼結は、所望の密度および粒子サイズの電極をもたらす。焼結カソードの微構造および物理的/機械的特性、および電気化学的サイクルテストは、サイクル率および微構造の長さスケールの関数として機械的耐久性およびサイクル寿命を確立することができる。例えば、可逆的微小割れはおそらく許容範囲である。簡単な実験は、所望のレベルの性能をもたらす材料、微構造および方法の組みあわせに到達するために、カソード活性材料の長さスケールを繰り返して低減することを可能にして、率容量および寿命を向上させる。
【0087】
いくつかの実施形態において、より大きなスケールのカソード、例えば、7.4×7.4cmが、乾燥プレス、回転圧縮、またはテープキャスティングによって調製される。これらは、セラミック処理の当業者に公知な成形プロセスである。テープキャスティングは大きく薄い平らなセラミック部品には適切である。1mmの厚みはテープキャスト厚み範囲内で適切であり、プロセスは高容量製造に適切である。テープキャスティングプロセスは次のステップを含む。
【0088】
a)スラリー調製
出発スラリーは、ナノ複合材料酸化物またはフッ化物、キャリヤ液体、および任意に、スラリー懸濁液を安定させるための様々な添加剤を含む。安定した懸濁液は、キャスティング中に均一の粒子分布を得る場合に重要である。いくつかの実施形態では、添加剤は、解膠剤、湿潤剤、バインダーおよび焼結助剤の1つまたは複数を含む。例えば、いくつかの実施形態では、スラリーは、プログラムされた混合速度および所要時間を使用して、ジャーミルで調製する。キャリヤ液体および添加剤タイプに加えて、スラリー調製での他の基本変数は、ジャーおよびミリング媒体のサイズおよび構成、ならびにスラリー中の固形物を含む。スラリー粘性は、通常、Brookfield DV−E回転式粘度計を使用して測定することができる。
【0089】
b)テープキャスティング
スラリーをテープキャスティングして、電極材料のグリーンシートを形成する。テープキャスティングプロセスにおいて、基本変数は、キャスティングヘッド、キャストスピードおよび乾燥方法である。例示的な乾燥プロセスは、スラリーで用いる溶媒キャリヤを取り除くための放射、伝導および強制空気加熱の様々な組みあわせを含む。プロセス変数は、縦軸の均一な粉末密度、均一なバインダー分布、および膜形成のない表面均一性を達成するために調整される。
【0090】
c)焼成
制御雰囲気で、プログラムされた加熱スケジュールを使用してキャストグリーン構造を焼成する。いくつかの実施形態では、焼結ステップによって良好なフィルム均一性を保持するために、加熱速度を厳重に制御して、バインダーを焼き尽くすための開始点に特に接近して、フィルムの膨れや亀裂を最小限にする。バインダーを焼き尽くした後、いくつかの実施形態では、焼成ステップは継続して、所望の気孔率に電極材料を焼結する。適切な加熱条件は、DSC/TGAデータを用いて確立して、過剰な粒成長によるナノ構造の低下またはマトリックス材料の分離を限定することができる。
【0091】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載したセルおよび装置は、リチウム金属アノードを含む。他の実施形態では、セルおよび装置はアモルファス金属合金アノードを含む。
【0092】
1つの実施形態では、負の電気活性材料はリチウム金属を含む。他の実施形態では、負の電気活性材料はリチウム合金を含む。一例では、アノードはリチウム金属であり、エネルギー密度を最大にすることができる。正極材料はプレリチオ化されるので、アノード中のリチウムは可逆容量に寄与しないが、第1のサイクルロスを補償するとともに、充電の間に堆積されるフィルムの質および可逆性を高めるテンプレートをもたらす役目をする。銅集電体基板上へのリチウム金属アノードの蒸着は、アノードを製造する1つの方法である(他の方法は、薄いリチウム箔の物理的ラミネート加工である)。リチウムについては、1つの実施形態では、真空熱蒸発源を使用する。Liponが十分に欠陥のないバリアをもたらす場合、Lipon上にリチウムを直接堆積することによって、液体電解質が除去され、デンドライト形成に対する境界が完全に安定される。
【0093】
他の例示的なアノード材料は、SiまたはSn系リチウム合金である。リチウム合金系セル設計は、従来の電極キャスティングアプローチを使用して製造されたアノードを使用する。
【0094】
1つの実施形態では、セパレーターはLiponバリアコーティングである。Liponバリアコーティングは、例えば薄膜材料の物理蒸着を使用して準備する。1つの例示的プロセスのスパッタは、酸窒化リチウムリン電解質を堆積し、Liponとして知られている。この電解質は、薄膜電池用の薄膜(例えば、0.5〜3μmの厚み)として堆積される。材料はアモルファスであり、従って、リチウムデンドライト成長用の経路の役割をする粒界はない。Liponは、>300℃で安定であり、リチウムでおよび>5.5Vのセル電位で電気化学的に安定している。リチウムイオン輸送は薄膜に適しており、セル抵抗に〜100Ωcm2を加え、電子伝導は無視できる。非常に高い電子抵抗は、自己放電率が低いことを確実にする。Liponは、安全性および比エネルギーの両方を増加させるために望ましい。
【0095】
方法は、電池中の内部短絡を回避するために、粒界に沿った溝の中への電解質で良好な補償範囲を望ましくもたらす。良好な補償範囲を達成するよく理解された技術がある。
【0096】
Liponは、ほとんどのスパッタ原子が基板に達する場合に、熱エネルギーおよび軸外衝突角度を有する条件でRFマグネトロンスパッタリングによって一般に成長する。フィルム補償範囲は、様々な基板配列、電気および磁界構成、およびプロセスガス組成および圧力の制御を使用して向上させることができる。Liponフィルムは、補償範囲、組成、微構造、密度およびリチウム伝導性について評価することができる。
【0097】
いくつかの実施形態において、セパレーターの技術的アプローチは、また、上記のような独自開発したナノ複合材料セパレーター技術を挿入することを含む。これらの技術革新的セパレーターは、モノリシック正極上に被覆される。ナノ複合材料セパレーターは、寄生重量を低減するとともに過充電または衝撃事象での安全性を向上させる可能性を与える。
【0098】
例示的な被覆ナノ複合材料セパレーターは、2008年8月21日に出願され、電気化学セル用のセパレーターおよびその製造のための方法と題する米国特許出願第12/196,203号に開示されたものを含み、その開示内容全体を引用することによって本明細書に含めることとする。例えば、いくつかの実施形態では、セパレーターは、無機充填剤(または、セラミック)粒子およびポリマーを含む多孔性複合材料である。セパレーターは、極めて均一な無機充填剤材料およびポリマーから形成されており、即ち、薄膜の全体にわたるポリマーおよび無機充填剤材料の分布に認識できる不均一はない。主に、ポリマーまたはセラミック材料の認識できる領域を有する薄膜の領域は実質的にない。分離材料は、電気化学セルで使用する場合、電子的に絶縁であるべきである。
【0099】
セラミックセパレーターを使用すると、従来のポリマーセパレーターに対する安全性の利点がもたらされる。焼成または焼結プロセス中に、従来のポリマーセパレーターは、縮む傾向を有しており、それによって、電極とセパレーターとの間の結合の有効性を低減する。セラミック材料を含むセパレーターは焼成時に縮まない。従って、セパレーターと電極(単数または複数)との間の結合は、分離する傾向が小さく強いままである。
【0100】
電気化学セル用のセパレーター薄膜は、ポリマー、ポリマー用の溶媒系および溶媒に分散したセラミック材料で構成されたコーティング溶液を利用することによって、電極上に直接形成されてもよい。電極層に溶液からセパレーター薄膜成分を適用すると、2つの層の間の耐久力のある結合がもたらされる。セパレーター前駆体溶液は、液体層を形成するように電極の表面上に被覆される。溶媒をこの層から取り除いて、ポリマーおよびセラミック材料を含む多孔性固形物を残す。最後に、このポリマーは、ポリマー溶融温度(Tm)またはガラス転移温度(Tg)より高い温度にある時間加熱することによって硬化される。その結果、セパレーター薄膜は、電極の表面に直接結合され、その結果、薄膜は電極活性層に対して著しく良好に密着する。この優れた密着は、電極とセパレーター膜との間の界面抵抗を低減することによって性能を向上させる。
【0101】
被覆ナノ複合材料セパレーターとともに使用するための例示的なポリマー材料は、特定の電池系の化学的性質と適合するポリマーを含む。ポリマーは、電気的に絶縁しているべきであり、電解質溶媒への可溶性が低くあるべきであり、セルにおいて化学的および電気化学的に安定しているべきである。ポリマーは単一ポリマーまたはポリマーの混合物であってもよい。例示的な材料としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系ポリマーが挙げられ、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)、およびヘキサフロオルエチレン、テトラフロオルエチレン、クロロトリフロオルエチレン、ポリ(フッ化ビニル)、ポリテトラエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフロオルエチレン共重合体(ETFE)、ポリブタジエン、シアノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースおよびスチレン−ブタジエンゴムとのその混合物、ポリアクリロニトリル、エチレンプロピレンジエン三元重合体(EPDM)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリイミド、エチレン酢酸ビニル共重合体とのその共重合体および三元重合体である。リチウムおよびリチウムイオン電池系および他の電池系において有用性を有するポリマーの1つのグループは、スチレンブタジエンおよび他のスチレン系ポリマーなどのフッ素系ポリマーおよびラテックスポリマーを含む。ラテックスポリマー系は、ポリマー懸濁液を形成する傾向があり、液体キャリヤに可溶性にならなくてもよい。ポリフッ化ビニリデンポリマー組成物は、ポリフッ化ビニリデン共重合体および三元重合体を含み、特定の有用性を有するポリマーの1つのグループである。そのような様々な材料が本技術分野で公知で利用可能であり、そのような材料は、実質的に均一なPVDF、および混合物および共重合体を含んでいてもよい。1つの特定の材料は、Kureha7208(商標)で販売されているPVDF材料である。他の同等で同様の材料を同様に使用してもよい。例えば、アノードおよびカソード活性層を準備するために上記検討した材料については参照されたい。
【0102】
被覆ナノ複合材料セパレーター用の無機成分は、膜が組込まれる特定の電池系および化学的性質と適合する様々な天然および人工材料から選択される。2つ以上の適切な無機成分の混合物を検討する。無機成分はセラミック材料であってもよい。セラミック材料の特定の1つのグループはシリカを含み、ヒュームドシリカは1つの特定の形態で使用されてもよいシリカである。ヒュームドシリカは高い表面積で、一般に高純度シリカ材料である。ヒュームドシリカは一般に親水性であり、ほとんどの電解質溶媒および多くの極性ポリマーによって容易に湿潤させることができる。1つまたは複数の実施形態で使用された材料は、およそ200m2/gの表面積を有する。粒子は非常に小さく、典型的には直径が500nm未満、または直径が200nm未満、およびより典型的に約10〜20nmである。1つまたは複数の実施形態では、セラミック材料は、狭い粒径分布および実質的に球状であるヒュームドシリカである。ヒュームドシリカは、極めて制御可能で狭い粒径分布をもたらす四塩化珪素(SiCl4)の慎重に制御された反応で調製することができる。1つの実施形態では、粒子サイズが約14nmのヒュームドシリカを使用してもよい。
【0103】
他のシリコン化合物はセパレーターのセラミック成分として利用してもよく、例えば、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)はこの開示の文脈でセラミック材料であると考えられる。他のセラミック材料としては天然および合成ゼオライト、アルミナ、チタニア等が挙げられる。更に、適切なサイズの他の電気化学的に安定した無機粒子、例えば、MgO、CaCO3および他の金属炭酸塩、ジルコニア、シリコンリン酸塩、ケイ酸塩を使用することができる。セラミック材料は、なお、均一または混合サイズおよび形状で、単独または組みあわせて使用してもよい。
【0104】
コーティング溶液の調製で用いる溶媒系は、コーティング溶液の少なくとも1つの成分がポリマー成分を溶解することができる任意の溶媒系を含む。適切な第2のまたはさらなる成分を使用してもよく、ポリマーを溶解することができない場合、さらなる成分は第1の溶媒と極めて混合できる。好ましくは、溶媒は後の処理ステップの間に取り除くことが比較的容易である。PVDF系膜と関連して有用性を有することが分かった1つの溶媒は、N−メチルピロリドン(NMP)を含み、NMPは、例えば、アセトン、酢酸エチルおよび酢酸プロピルなどの他の溶媒と混合して、適切なスラリーレオロジーを得てもよい。一例として、異なる沸点の溶媒を使用して、溶媒蒸発速度、従って液体スラリーの乾燥の間に生成される膜応力を制御してもよい。本発明の1つの実施で利用した1つの特定の溶媒混合物は、体積基準で30:70のNMP/アセトン混合物を含んでいた。他のものは、NMP30%と酢酸プロピル70%の混合物、メチルエチルケトン(MEK)または酢酸エチルを含む。複合材料スラリーは、せん断がない場合比較的安定している比較的均一の懸濁液である。
【0105】
本明細書に記載した高エネルギー密度セルは、従来の炭酸塩系電解質を使用して作動する。いくつかの実施形態では、リチウムデンドライト形成(苔状リチウム)を抑制するために当業者に公知の添加剤を使用する。電極モノリスで電解質の湿潤は主な問題ではなかった。しかし、提案されたより大きな断面電極は、濡れおよび電極浸透を促進するために、界面活性剤/表面機能化および粒子/気孔サイズ技術を必要としてもよい。
【0106】
1つの実施形態では、電解質系は、液体電解質を含んで、電極全体にわたって急速な反応速度を得る。LiPON固体電解質バリアに加えて液体電解質を使用すると、本明細書に記載した焼結電極および焼結電極−セパレーターサブアセンブリなどの厚い電極に関係する状況に特に役立つ。
【0107】
電極は、任意のサイズ、設計または形状を有する任意のエネルギー貯蔵装置に組み入れられてもよい。1つの実施形態では、電極は双極型セルに組み入れられる。双極型セルは、少なくとも2つの電気化学セルを含み、ここで、連続セルの負極および正極は共通の集電体を共有し、直列に積層されている。従って、セル電圧は付加的である。そのような設計の利点は、不活性材料および電流路の量が最小限にされるので、高出力および高エネルギー密度である。いくつかの実施形態では、電気経路が異なる粒子間で連続的であるので、焼結電極は、より厚い電極を使用することを可能にする。焼結電極は、また、従来の湿潤溶媒スラリー−キャスト電極コーティングより厚みがより均一であってもよい。これは、容量または出力性能におけるセル間のばらつきが使用を複雑にする可能性があるので、双極型の設計において重要である。
【0108】
他の実施形態では、アルミニウム系集電体(例えば、Li4Ti5O12)と適合する負極を使用する。これは、正極および負極の両方を同じ集電体材料に被覆することを可能にし、製造および稼動を単純化し、コストを低下する。
【0109】
他の実施形態では、歪が低いまたはゼロの電極材料を双極型セル用の負および正極活性材料に使用する。または、負極材料および正極材料を一致させて、最小限の最終体積変化を達成する。LiMPO4およびLi4Ti5O12は歪が低いまたはゼロの材料の例である。これは、スタック中の機械的歪を最小限にする。
【0110】
他の実施形態では、レドックスシャトルを双極型セルで使用する。レドックスシャトルは、定義された電位または電圧で、電流を「往復する(shuttles)」または電流がカソードからアノードに通ることを可能にする電気化学的化合物または電気活性添加剤である。レドックスシャトルは、セルの制御された自己放電としての機能を果たし、このように、双極型スタックにおいてセルの平衡を保つために使用されてもよい。例えば、1つのセルがスタックにおいて他のセルより低い容量を有する場合、それは、より早く十分に充電された電圧に達する。しかし、セルは直列であるので、電流は、他のセルが十分に充電されるために、十分に充電されたセルを流れ続けなければならない。レドックスシャトルは、十分に充電されたセルが、過充電されることなくその充電状態(SOC)を維持することを可能にする。
【0111】
他の実施形態では、電気活性ポリマーは、集電体間または負極および正極間で使用されて、定義された電位または電圧で、制御された自己放電を可能とする。これは、レドックスシャトルに類似する。しかし、電気活性ポリマーは、電解質中の成分である代わりに、セル設計の一部である。セパレーターは、電子絶縁材料および電気活性材料の粒子で構成された多孔性骨格を含み、電気活性材料は、多孔性セパレーターに浸透経路を形成する。電気活性ポリマーの特性としては、電池電解質中での不溶性、正極の標準帯電電位より高く、分解反応がセルに生じる電位より低い酸化電位、負極に隣接しているポリマー用負極による還元に対する安定性、「過酸化(overoxidization)」に対する耐性(「過酸化」は、ポリマーに対する不可逆変化をもたらす酸化として定義される)、および充電中に電流を短絡するのに十分な酸化した状態での伝導性が挙げられる。適切な材料および設計は、「過充電保護用固体セパレーター」と題する2008年6月2日に出願された米国特許公開第2009/0029261号に記載されており、引用することによって、その開示内容全体を本明細書に含めることとする。
【0112】
例示的な電気活性ポリマー(電圧窓)は、ポリ(チオフェン)(3.8V〜4.8V)、
ポリ(ピロール)(3.3V〜4.3V)、ポリ(フルオレン)、ポリ(フェニレン−ビニレン)、ポリアニリン、ポリ(ポリフェニレンサルファイド)、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリフェニレンを含み、それらのうちのいずれもアルキル、芳香族および/またはハロゲン置換基を含んでいてもよい。例示的な置換ポリマーとしては、ポリ(3−ブチルチオフェン)およびポリ(ジオクチルフルオレニル)が挙げられる。
【0113】
例示的な電子絶縁材料は、電子的に絶縁しているとともに電気活性材料および電解質に構造的な支持をもたらすことができるいずれかの不活性材料から構成することができる。それは有機ポリマーまたはセラミック材料とすることができる。構造絶縁材料は、セパレーターが組込まれる特定の電池系および化学的性質と適合する様々な天然および人工材料から選択されてもよい。1つまたは複数の実施形態では、不活性構造の絶縁材料は連続相を形成する。例示的な材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、エチレン−プロピレン共重合体、ポリエーテルスルホン、またはリチウムイオン電池用のセパレーターの当業者に公知の同様のポリマーを含むポリマーが挙げられる。例示的な材料としては、また、セラミック酸化物などのセラミック粉末が挙げられる。セラミック材料の1つの特定のグループはシリカを含み、シリカの1つの特定の形態であるヒュームドシリカを使用してもよい。ヒュームドシリカは高い表面積の、一般に高純度シリカ材料である。ヒュームドシリカは一般に親水性であり、本発明の実行において利用された材料は、およそ200m2/gの表面積を有する。他のシリコン化合物をセパレーターのセラミック成分として利用してもよい。他の例示的なシリコン系材料は、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)であり、この開示の文脈でセラミック材料であると考えられる。他のセラミック材料としては、天然および合成ゼオライト、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア等が挙げられる。構造絶縁材料は、単独または組みあわせて使用してもよい。構造絶縁材料は、約2μm未満または約0.5μm未満または約0.1未満の粒子サイズを有する粒子とすることができる。
【0114】
例示的なセルは、図3で説明するように、7.4×7.4× 0.1cmの5〜10の電極の平行アレイスタックから組み立てられた角柱パウチセルである。電極面積の拡大および平行アレイの構成は、増加発達段階(図6)で実行してもよい。図6は、7.4cmの電極の1cmの平行スタックとして組み立てられた56cm3の試作品を示す。
【0115】
いくつかの実施形態では、電極は、リチウム箔アノード、ポリプロピレンセパレーターおよび1MのLiPF6:炭酸アルキル電解質を組込むラボパウチセルに組み立てられる。いくつかの実施形態では、組み立てられたセルは、C/10でいくつかの形成サイクルを受ける。
【0116】
容量および率容量試験
セルは、確立している試験プロトコルを使用して、コンピュータ制御の電池試験装置、例えば、Maccor96−チャンネル電池試験装置で評価される。セルは、最初にC/5の低い定電流でサイクルされて、電極またはセル容量を決定する。次いで、セルは、異なるC率でサイクルされて、率性能を検討する。
【0117】
サイクルテスト
可逆容量が第1のサイクル容量の80%未満に弱まるまで、電気化学セルを選択したC率で充放電して、サイクル安定性を検討することができる。異なる温度でのサイクルは、材料の熱的安定性およびセル設計を検討するために行われる。
【0118】
インピーダンス分析
インピーダンス分析は、例えば、SI1287電気化学的界面を備えたSolartron SI 1260インピーダンス/ゲイン相アナライザーを使用して、サイクル前後に二者択一的にセル上で行われる。電気化学的インピーダンス分光法(EIS)は、ナノ複合材料電極の輸送特性を充電状態の関数としてみなすことに役立つ。EISデータは、巨視的応答と電極微構造の間の量的リンクを確立するために使用することができる。3つの電極セル構成を使用する多次元のインピーダンス分析は、異なる充電状態で材料と電解質の間の相互作用をよりよく理解するために使用される。薄いリチウム箔(200μm)は、両方の対向および基準電極を準備するために使用することができる。
【0119】
酷使試験
ARC測定を、様々な電極/電解質の組みあわせの基本となる熱的安定特性を評価するために行う。充電式リチウム電池用のUL標準テスト手順によるホットボックス、釘刺し試験および過充電テストは、また、セルの安全性を確立する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学装置で用いるサブアセンブリであって、
(a)第1の電極と、
(b)セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含み、
第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に結合されているサブアセンブリ。
【請求項2】
第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に熱結合されている請求項1のサブアセンブリ。
【請求項3】
サブアセンブリは焼結サブアセンブリである請求項1のサブアセンブリ。
【請求項4】
第1の集電体およびセパレーターは、第1の電極の対向面に結合されている請求項1のサブアセンブリ。
【請求項5】
セパレーターは、有機化合物、無機−有機複合材料または混合物、無機化合物、微粒子材料、または焼結微粒子セラミックを含む請求項1のサブアセンブリ。
【請求項6】
第1の電極は、層状酸化物、金属フッ化物、またはリチウム−遷移金属リン酸塩化合物を含み、任意にドーパント金属を含む請求項1のサブアセンブリ。
【請求項7】
第1の集電体は第1の電極の周囲に主として制限されている請求項4のサブアセンブリ。
【請求項8】
第1の集電体に結合された第1の電極の部分の周囲面積は、第1の電極の全面積の約50%未満である請求項7のサブアセンブリ。
【請求項9】
第1の電極と、セパレーターと、を含み、更に、第2の電極を含み、
第1および第2の電極はセパレーターの対向面に結合されている請求項1のサブアセンブリ。
【請求項10】
第1の電極、第2の電極または両方は、焼結電極を含む請求項9のサブアセンブリ。
【請求項11】
更に、第2の電極を含み、第2の電極はセパレーターに結合されている請求項4のサブアセンブリ。
【請求項12】
更に、第2の電極と、第2の集電体と、を含み、
第2の電極および第1の電極はセパレーターの対向面との熱結合を有し、
第2の集電体およびセパレーターは第2の電極の対向面に結合されている請求項4のサブアセンブリ。
【請求項13】
第1の電極は正極であり、第2の電極は負極であり、第1の集電体は正の集電体であり、第2の集電体は負の集電体である請求項12のサブアセンブリ。
【請求項14】
サブアセンブリの厚みは少なくとも約200μmである請求項1のサブアセンブリ。
【請求項15】
サブアセンブリの密度は理論的に少なくとも約65%である請求項1のサブアセンブリ。
【請求項16】
電気化学装置で用いるサブアセンブリであって、
(a)第1の焼結電極と、
(b)焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含み、
第1の焼結電極は、焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に結合されているサブアセンブリ。
【請求項17】
第1の焼結電極は、焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に熱結合されている請求項16のサブアセンブリ。
【請求項18】
サブアセンブリは焼結サブアセンブリである請求項16のサブアセンブリ。
【請求項19】
第1の焼結集電体および焼結セパレーターは、第1の焼結電極の対向面に結合されている請求項16のサブアセンブリ。
【請求項20】
セパレーターは、有機化合物、無機−有機複合材料または混合物、無機化合物、微粒子材料、または焼結微粒子セラミックを含む請求項16のサブアセンブリ。
【請求項21】
第1の焼結電極は、層状酸化物、金属フッ化物、またはリチウム−遷移金属リン酸塩化合物を含み、任意にドーパント金属を含む請求項16のサブアセンブリ。
【請求項22】
第1の焼結集電体は、第1の焼結電極の周囲に主として制限されている請求項19のサブアセンブリ。
【請求項23】
第1の集電体に結合された第1の焼結電極の部分の周囲面積は、第1の焼結電極の全面積の約50%未満である請求項22のサブアセンブリ。
【請求項24】
第1の焼結電極および焼結セパレーターを含み、更に、第2の焼結電極を含み、
第1および第2の焼結電極は、焼結セパレーターの対向面に結合されている請求項16のサブアセンブリ。
【請求項25】
更に、第2の焼結電極を含み、第2の焼結電極は焼結セパレーターに結合されている、請求項19のサブアセンブリ。
【請求項26】
更に、第2の焼結電極および第2の集電体を含み、
第2の焼結電極および第1の焼結電極は焼結セパレーターの対向面との熱結合を有し、
第2の集電体および焼結セパレーターは第2の焼結電極の対向面に結合されている請求項19のサブアセンブリ。
【請求項27】
第1の焼結電極は正極であり、第2の焼結電極は負極であり、第1の集電体は正の集電体であり、第2の集電体は負の集電体である請求項26のサブアセンブリ。
【請求項28】
サブアセンブリの厚みは少なくとも約200μmである請求項16のサブアセンブリ。
【請求項29】
サブアセンブリの密度は理論的に少なくとも約65%である請求項16のサブアセンブリ。
【請求項30】
電気化学装置で用いるサブアセンブリであって、
(a)第1の電極と、
(b)セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含み、
サブアセンブリは、
(i)第1の電極をセパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせ、
(ii)第1の電極と、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方とを、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱することによって製造されているサブアセンブリ。
【請求項31】
第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に熱結合されている請求項30のサブアセンブリ。
【請求項32】
第1の電極は焼結電極を含む請求項30のサブアセンブリ。
【請求項33】
セパレーターは焼結セパレーターを含む請求項30のサブアセンブリ。
【請求項34】
加熱ステップは、第1の電極、セパレーターおよび第1の集電体を加熱して焼結サブアセンブリを形成することを含む請求項30のサブアセンブリ。
【請求項35】
第1の集電体およびセパレーターの各々は第1の電極の対向面に熱結合されている請求項34のサブアセンブリ。
【請求項36】
第1の集電体は第1の電極の周囲に主として制限されている請求項35のサブアセンブリ。
【請求項37】
第1の集電体に結合された第1の電極の部分の周囲面積は、第1の電極の全面積の約30%未満である請求項36のサブアセンブリ。
【請求項38】
第1の電極およびセパレーターを含み、更に、第2の電極を含み、第1および第2の電極はセパレーターの対向面に結合されている請求項30のサブアセンブリ。
【請求項39】
第1の電極、第2の電極または両方は焼結電極を含む請求項38のサブアセンブリ。
【請求項40】
更に、第2の電極を含み、第2の電極はセパレーターに結合されている請求項35のサブアセンブリ。
【請求項41】
更に、第2の電極および第2の集電体を含み、
第2の電極および第1の電極は、セパレーター、第1の集電体および第2の集電体とともに加熱されて、焼結サブアセンブリを形成している請求項30のサブアセンブリ。
【請求項42】
第1の電極は正極であり、第2の電極は負極であり、第1の集電体は正の集電体であり、第2の集電体は負の集電体である請求項41のサブアセンブリ。
【請求項43】
セパレーターは、有機化合物、無機−有機複合材料または混合物、無機化合物、微粒子材料、または焼結微粒子セラミックを含む請求項30のサブアセンブリ。
【請求項44】
第1の電極は、層状酸化物、金属フッ化物、またはリチウム−遷移金属リン酸塩化合物を含み、任意にドーパント金属を含む請求項30のサブアセンブリ。
【請求項45】
サブアセンブリの厚みは少なくとも約200μmである請求項30のサブアセンブリ。
【請求項46】
サブアセンブリの密度は理論的に少なくとも約65%である請求項30のサブアセンブリ。
【請求項47】
電気化学装置で用いるサブアセンブリであって、
(a)第1の焼結電極と、
(b)焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含み、
サブアセンブリは、
(i)第1の焼結電極を焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせ、
(ii)第1の焼結電極と、焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方とを、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱することによって製造されているサブアセンブリ。
【請求項48】
第1の焼結電極は焼結セパレーターまたは第1の集電体に熱結合されている請求項47のサブアセンブリ。
【請求項49】
第1の集電体および焼結セパレーターの両方を含み、
加熱ステップは、第1の焼結電極、焼結セパレーターおよび第1の集電体を加熱して、焼結サブアセンブリを形成することを含む請求項47のサブアセンブリ。
【請求項50】
第1の集電体および焼結セパレーターの各々は第1の焼結電極の対向面に熱結合されている請求項49のサブアセンブリ。
【請求項51】
第1の集電体は、第1の焼結電極の周囲に主として制限されている請求項49のサブアセンブリ。
【請求項52】
第1の集電体に結合された第1の焼結電極の部分の周囲面積は、第1の焼結電極の全面積の約30%未満である請求項51のサブアセンブリ。
【請求項53】
第1の焼結電極および焼結セパレーターを含み、更に、第2の焼結電極を含み、
第1および第2の焼結電極は焼結セパレーターの対向面に結合されている請求項47のサブアセンブリ。
【請求項54】
更に、第2の焼結電極を含み、第2の焼結電極は焼結セパレーターに結合されている請求項50のサブアセンブリ。
【請求項55】
更に、第2の焼結電極および第2の集電体を含み、
第2の焼結電極および第1の焼結電極は、焼結セパレーター、第1の集電体および第2の集電体とともに加熱されて、焼結サブアセンブリを形成している請求項54のサブアセンブリ。
【請求項56】
第1の焼結電極は正極であり、第2の焼結電極は負極であり、第1の集電体は正の集電体であり、第2の集電体は負の集電体である請求項55のサブアセンブリ。
【請求項57】
焼結セパレーターは、有機化合物、無機−有機複合材料または混合物、無機化合物、微粒子材料、または焼結微粒子セラミックを含む請求項47のサブアセンブリ。
【請求項58】
第1の焼結電極は、層状酸化物、金属フッ化物、またはリチウム−遷移金属リン酸塩化合物を含み、任意にドーパント金属を含む請求項47のサブアセンブリ。
【請求項59】
サブアセンブリの厚みは少なくとも約200μmである請求項47のサブアセンブリ。
【請求項60】
サブアセンブリの密度は理論的に少なくとも約65%である請求項47のサブアセンブリ。
【請求項61】
電気化学装置であって、
(a)外部回路と電気的に接続した正の集電体と電子的に接触した正極と、
(b)外部回路と電気的に接続した負の集電体と電子的に接触した負極と、
(c)正極と負極との間に位置したセパレーターと、
(d)正極および負極とイオン接触した電解質と、を含み、
正極または負極およびセパレーターは焼結サブアセンブリを含む電気化学装置。
【請求項62】
装置中の不活性材料の質量分率は約50%未満である請求項61の電気化学装置。
【請求項63】
装置の比エネルギーは約600W/kgより大きな出力密度で約300Wh/kgより大きい請求項61の電気化学装置。
【請求項64】
電気化学装置で用いるサブアセンブリを準備する方法であって、
(a)第1の電極をセパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせること、
(b)第1の電極およびセパレーターまたは第1の集電体を、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱すること、
を含む方法。
【請求項65】
方法は、第1の電極とセパレーターまたは第1の集電体もしくは両方との間に熱結合を生成する請求項64の方法。
【請求項66】
第1の電極は焼結電極を含む請求項64の方法。
【請求項67】
セパレーターは焼結セパレーターを含む請求項64の方法。
【請求項68】
加熱ステップは、第1の電極、セパレーターおよび第1の集電体を加熱して、焼結サブアセンブリを形成することを含む請求項64の方法。
【請求項69】
第2の電極は第1の電極およびセパレーターと組み合わされ、
方法は第1および第2の電極とセパレーターの対向面との間に結合を生成する請求項64の方法。
【請求項70】
第2の電極は焼結電極を含む請求項69の方法。
【請求項71】
第2の電極は第1の電極およびセパレーターと組み合わされ、方法は、第2の電極とセパレーターとの間に結合を生じる請求項69の方法。
【請求項72】
第2の電極は焼結電極を含む請求項71の方法。
【請求項73】
組み合わせるステップは、更に、第2の電極および第2の集電体を第1の電極、第1の集電体およびセパレーターと組み合わせることを含み、加熱ステップは、第2の電極および第1の電極をセパレーター、第1の集電体および第2の集電体とともに加熱して、焼結サブアセンブリを形成することを含む請求項68の方法。
【請求項74】
第1の電極は正極であり、第2の電極は負極であり、第1の集電体は正の集電体であり、第2の集電体は負の集電体である請求項73の方法。
【請求項75】
焼結セパレーターは、有機化合物、無機−有機複合材料または混合物、無機化合物、微粒子材料、または焼結微粒子セラミックを含む請求項61の方法。
【請求項76】
第1の焼結電極は、層状酸化物、金属フッ化物、またはリチウム−遷移金属リン酸塩化合物を含み、任意にドーパント金属を含む請求項61の方法。
【請求項77】
複数の積層電気化学セルを含む双極型セルであって、
電気化学セルは直列に接合され、
各々の前記積層電気化学セルは、
(a)外部回路と電気的に接続した正の集電体と電子的に接触した正極と、
(b)外部回路と電気的に接続した負の集電体と電子的に接触した負極と、
(c)正極と負極との間に位置したセパレーターと、
(d)正極および負極とイオン接触した電解質と、を含み、
各スタックの正極および負極は焼結電極を含む双極型セル。
【請求項78】
セパレーターは焼結セパレーターを含む、請求項77の双極型セル。
【請求項79】
(a)セパレーターと(b)正極または負極もしくは両方とは、結合されている請求項77の双極型セル。
【請求項80】
(a)正極と(b)セパレーターまたは正の集電体もしくは両方とは、結合されている請求項77の双極型セル。
【請求項81】
(a)負極と(b)セパレーターまたは負の集電体もしくは両方とは、結合されている請求項77の双極型セル。
【請求項82】
正の集電体と、正極と、セパレーターと、負極と、負の集電体とは結合されている請求項77の双極型セル。
【請求項83】
(a)正極および(b)セパレーターまたは正の集電体もしくは両方は、焼結サブアセンブリを含む請求項77の双極型セル。
【請求項84】
(a)負極および(b)セパレーターまたは負の集電体もしくは両方は、焼結サブアセンブリを含む請求項77の双極型セル。
【請求項85】
正の集電体、正極、セパレーター、負極および負の集電体は焼結サブアセンブリを含む、請求項77の双極型セル。
【請求項86】
焼結セラミックから形成された正極または負極は、厚みが少なくとも約200μmである請求項77の双極型セル。
【請求項87】
焼結サブアセンブリは厚みが少なくとも約200μmである請求項77の双極型セル。
【請求項88】
セルは、更にレドックスシャトルを含む請求項77の双極型セル。
【請求項89】
電解質は電気活性添加剤を含む請求項77の双極型セル。
【請求項90】
セパレーターは電気活性ポリマーを含み、
電気活性ポリマーはセパレーターを介して浸透経路を形成している請求項77の双極型セル。
【請求項91】
焼結セラミックから形成された正極または負極の厚みは、平均厚みから25%未満変動する請求項77の双極型セル。
【請求項1】
電気化学装置で用いるサブアセンブリであって、
(a)第1の電極と、
(b)セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含み、
第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に結合されているサブアセンブリ。
【請求項2】
第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に熱結合されている請求項1のサブアセンブリ。
【請求項3】
サブアセンブリは焼結サブアセンブリである請求項1のサブアセンブリ。
【請求項4】
第1の集電体およびセパレーターは、第1の電極の対向面に結合されている請求項1のサブアセンブリ。
【請求項5】
セパレーターは、有機化合物、無機−有機複合材料または混合物、無機化合物、微粒子材料、または焼結微粒子セラミックを含む請求項1のサブアセンブリ。
【請求項6】
第1の電極は、層状酸化物、金属フッ化物、またはリチウム−遷移金属リン酸塩化合物を含み、任意にドーパント金属を含む請求項1のサブアセンブリ。
【請求項7】
第1の集電体は第1の電極の周囲に主として制限されている請求項4のサブアセンブリ。
【請求項8】
第1の集電体に結合された第1の電極の部分の周囲面積は、第1の電極の全面積の約50%未満である請求項7のサブアセンブリ。
【請求項9】
第1の電極と、セパレーターと、を含み、更に、第2の電極を含み、
第1および第2の電極はセパレーターの対向面に結合されている請求項1のサブアセンブリ。
【請求項10】
第1の電極、第2の電極または両方は、焼結電極を含む請求項9のサブアセンブリ。
【請求項11】
更に、第2の電極を含み、第2の電極はセパレーターに結合されている請求項4のサブアセンブリ。
【請求項12】
更に、第2の電極と、第2の集電体と、を含み、
第2の電極および第1の電極はセパレーターの対向面との熱結合を有し、
第2の集電体およびセパレーターは第2の電極の対向面に結合されている請求項4のサブアセンブリ。
【請求項13】
第1の電極は正極であり、第2の電極は負極であり、第1の集電体は正の集電体であり、第2の集電体は負の集電体である請求項12のサブアセンブリ。
【請求項14】
サブアセンブリの厚みは少なくとも約200μmである請求項1のサブアセンブリ。
【請求項15】
サブアセンブリの密度は理論的に少なくとも約65%である請求項1のサブアセンブリ。
【請求項16】
電気化学装置で用いるサブアセンブリであって、
(a)第1の焼結電極と、
(b)焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含み、
第1の焼結電極は、焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に結合されているサブアセンブリ。
【請求項17】
第1の焼結電極は、焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に熱結合されている請求項16のサブアセンブリ。
【請求項18】
サブアセンブリは焼結サブアセンブリである請求項16のサブアセンブリ。
【請求項19】
第1の焼結集電体および焼結セパレーターは、第1の焼結電極の対向面に結合されている請求項16のサブアセンブリ。
【請求項20】
セパレーターは、有機化合物、無機−有機複合材料または混合物、無機化合物、微粒子材料、または焼結微粒子セラミックを含む請求項16のサブアセンブリ。
【請求項21】
第1の焼結電極は、層状酸化物、金属フッ化物、またはリチウム−遷移金属リン酸塩化合物を含み、任意にドーパント金属を含む請求項16のサブアセンブリ。
【請求項22】
第1の焼結集電体は、第1の焼結電極の周囲に主として制限されている請求項19のサブアセンブリ。
【請求項23】
第1の集電体に結合された第1の焼結電極の部分の周囲面積は、第1の焼結電極の全面積の約50%未満である請求項22のサブアセンブリ。
【請求項24】
第1の焼結電極および焼結セパレーターを含み、更に、第2の焼結電極を含み、
第1および第2の焼結電極は、焼結セパレーターの対向面に結合されている請求項16のサブアセンブリ。
【請求項25】
更に、第2の焼結電極を含み、第2の焼結電極は焼結セパレーターに結合されている、請求項19のサブアセンブリ。
【請求項26】
更に、第2の焼結電極および第2の集電体を含み、
第2の焼結電極および第1の焼結電極は焼結セパレーターの対向面との熱結合を有し、
第2の集電体および焼結セパレーターは第2の焼結電極の対向面に結合されている請求項19のサブアセンブリ。
【請求項27】
第1の焼結電極は正極であり、第2の焼結電極は負極であり、第1の集電体は正の集電体であり、第2の集電体は負の集電体である請求項26のサブアセンブリ。
【請求項28】
サブアセンブリの厚みは少なくとも約200μmである請求項16のサブアセンブリ。
【請求項29】
サブアセンブリの密度は理論的に少なくとも約65%である請求項16のサブアセンブリ。
【請求項30】
電気化学装置で用いるサブアセンブリであって、
(a)第1の電極と、
(b)セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含み、
サブアセンブリは、
(i)第1の電極をセパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせ、
(ii)第1の電極と、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方とを、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱することによって製造されているサブアセンブリ。
【請求項31】
第1の電極は、セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方に熱結合されている請求項30のサブアセンブリ。
【請求項32】
第1の電極は焼結電極を含む請求項30のサブアセンブリ。
【請求項33】
セパレーターは焼結セパレーターを含む請求項30のサブアセンブリ。
【請求項34】
加熱ステップは、第1の電極、セパレーターおよび第1の集電体を加熱して焼結サブアセンブリを形成することを含む請求項30のサブアセンブリ。
【請求項35】
第1の集電体およびセパレーターの各々は第1の電極の対向面に熱結合されている請求項34のサブアセンブリ。
【請求項36】
第1の集電体は第1の電極の周囲に主として制限されている請求項35のサブアセンブリ。
【請求項37】
第1の集電体に結合された第1の電極の部分の周囲面積は、第1の電極の全面積の約30%未満である請求項36のサブアセンブリ。
【請求項38】
第1の電極およびセパレーターを含み、更に、第2の電極を含み、第1および第2の電極はセパレーターの対向面に結合されている請求項30のサブアセンブリ。
【請求項39】
第1の電極、第2の電極または両方は焼結電極を含む請求項38のサブアセンブリ。
【請求項40】
更に、第2の電極を含み、第2の電極はセパレーターに結合されている請求項35のサブアセンブリ。
【請求項41】
更に、第2の電極および第2の集電体を含み、
第2の電極および第1の電極は、セパレーター、第1の集電体および第2の集電体とともに加熱されて、焼結サブアセンブリを形成している請求項30のサブアセンブリ。
【請求項42】
第1の電極は正極であり、第2の電極は負極であり、第1の集電体は正の集電体であり、第2の集電体は負の集電体である請求項41のサブアセンブリ。
【請求項43】
セパレーターは、有機化合物、無機−有機複合材料または混合物、無機化合物、微粒子材料、または焼結微粒子セラミックを含む請求項30のサブアセンブリ。
【請求項44】
第1の電極は、層状酸化物、金属フッ化物、またはリチウム−遷移金属リン酸塩化合物を含み、任意にドーパント金属を含む請求項30のサブアセンブリ。
【請求項45】
サブアセンブリの厚みは少なくとも約200μmである請求項30のサブアセンブリ。
【請求項46】
サブアセンブリの密度は理論的に少なくとも約65%である請求項30のサブアセンブリ。
【請求項47】
電気化学装置で用いるサブアセンブリであって、
(a)第1の焼結電極と、
(b)焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と、を含み、
サブアセンブリは、
(i)第1の焼結電極を焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせ、
(ii)第1の焼結電極と、焼結セパレーターまたは第1の集電体もしくは両方とを、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱することによって製造されているサブアセンブリ。
【請求項48】
第1の焼結電極は焼結セパレーターまたは第1の集電体に熱結合されている請求項47のサブアセンブリ。
【請求項49】
第1の集電体および焼結セパレーターの両方を含み、
加熱ステップは、第1の焼結電極、焼結セパレーターおよび第1の集電体を加熱して、焼結サブアセンブリを形成することを含む請求項47のサブアセンブリ。
【請求項50】
第1の集電体および焼結セパレーターの各々は第1の焼結電極の対向面に熱結合されている請求項49のサブアセンブリ。
【請求項51】
第1の集電体は、第1の焼結電極の周囲に主として制限されている請求項49のサブアセンブリ。
【請求項52】
第1の集電体に結合された第1の焼結電極の部分の周囲面積は、第1の焼結電極の全面積の約30%未満である請求項51のサブアセンブリ。
【請求項53】
第1の焼結電極および焼結セパレーターを含み、更に、第2の焼結電極を含み、
第1および第2の焼結電極は焼結セパレーターの対向面に結合されている請求項47のサブアセンブリ。
【請求項54】
更に、第2の焼結電極を含み、第2の焼結電極は焼結セパレーターに結合されている請求項50のサブアセンブリ。
【請求項55】
更に、第2の焼結電極および第2の集電体を含み、
第2の焼結電極および第1の焼結電極は、焼結セパレーター、第1の集電体および第2の集電体とともに加熱されて、焼結サブアセンブリを形成している請求項54のサブアセンブリ。
【請求項56】
第1の焼結電極は正極であり、第2の焼結電極は負極であり、第1の集電体は正の集電体であり、第2の集電体は負の集電体である請求項55のサブアセンブリ。
【請求項57】
焼結セパレーターは、有機化合物、無機−有機複合材料または混合物、無機化合物、微粒子材料、または焼結微粒子セラミックを含む請求項47のサブアセンブリ。
【請求項58】
第1の焼結電極は、層状酸化物、金属フッ化物、またはリチウム−遷移金属リン酸塩化合物を含み、任意にドーパント金属を含む請求項47のサブアセンブリ。
【請求項59】
サブアセンブリの厚みは少なくとも約200μmである請求項47のサブアセンブリ。
【請求項60】
サブアセンブリの密度は理論的に少なくとも約65%である請求項47のサブアセンブリ。
【請求項61】
電気化学装置であって、
(a)外部回路と電気的に接続した正の集電体と電子的に接触した正極と、
(b)外部回路と電気的に接続した負の集電体と電子的に接触した負極と、
(c)正極と負極との間に位置したセパレーターと、
(d)正極および負極とイオン接触した電解質と、を含み、
正極または負極およびセパレーターは焼結サブアセンブリを含む電気化学装置。
【請求項62】
装置中の不活性材料の質量分率は約50%未満である請求項61の電気化学装置。
【請求項63】
装置の比エネルギーは約600W/kgより大きな出力密度で約300Wh/kgより大きい請求項61の電気化学装置。
【請求項64】
電気化学装置で用いるサブアセンブリを準備する方法であって、
(a)第1の電極をセパレーターまたは第1の集電体もしくは両方と組み合わせること、
(b)第1の電極およびセパレーターまたは第1の集電体を、焼結サブアセンブリを形成するのに有効な条件で加熱すること、
を含む方法。
【請求項65】
方法は、第1の電極とセパレーターまたは第1の集電体もしくは両方との間に熱結合を生成する請求項64の方法。
【請求項66】
第1の電極は焼結電極を含む請求項64の方法。
【請求項67】
セパレーターは焼結セパレーターを含む請求項64の方法。
【請求項68】
加熱ステップは、第1の電極、セパレーターおよび第1の集電体を加熱して、焼結サブアセンブリを形成することを含む請求項64の方法。
【請求項69】
第2の電極は第1の電極およびセパレーターと組み合わされ、
方法は第1および第2の電極とセパレーターの対向面との間に結合を生成する請求項64の方法。
【請求項70】
第2の電極は焼結電極を含む請求項69の方法。
【請求項71】
第2の電極は第1の電極およびセパレーターと組み合わされ、方法は、第2の電極とセパレーターとの間に結合を生じる請求項69の方法。
【請求項72】
第2の電極は焼結電極を含む請求項71の方法。
【請求項73】
組み合わせるステップは、更に、第2の電極および第2の集電体を第1の電極、第1の集電体およびセパレーターと組み合わせることを含み、加熱ステップは、第2の電極および第1の電極をセパレーター、第1の集電体および第2の集電体とともに加熱して、焼結サブアセンブリを形成することを含む請求項68の方法。
【請求項74】
第1の電極は正極であり、第2の電極は負極であり、第1の集電体は正の集電体であり、第2の集電体は負の集電体である請求項73の方法。
【請求項75】
焼結セパレーターは、有機化合物、無機−有機複合材料または混合物、無機化合物、微粒子材料、または焼結微粒子セラミックを含む請求項61の方法。
【請求項76】
第1の焼結電極は、層状酸化物、金属フッ化物、またはリチウム−遷移金属リン酸塩化合物を含み、任意にドーパント金属を含む請求項61の方法。
【請求項77】
複数の積層電気化学セルを含む双極型セルであって、
電気化学セルは直列に接合され、
各々の前記積層電気化学セルは、
(a)外部回路と電気的に接続した正の集電体と電子的に接触した正極と、
(b)外部回路と電気的に接続した負の集電体と電子的に接触した負極と、
(c)正極と負極との間に位置したセパレーターと、
(d)正極および負極とイオン接触した電解質と、を含み、
各スタックの正極および負極は焼結電極を含む双極型セル。
【請求項78】
セパレーターは焼結セパレーターを含む、請求項77の双極型セル。
【請求項79】
(a)セパレーターと(b)正極または負極もしくは両方とは、結合されている請求項77の双極型セル。
【請求項80】
(a)正極と(b)セパレーターまたは正の集電体もしくは両方とは、結合されている請求項77の双極型セル。
【請求項81】
(a)負極と(b)セパレーターまたは負の集電体もしくは両方とは、結合されている請求項77の双極型セル。
【請求項82】
正の集電体と、正極と、セパレーターと、負極と、負の集電体とは結合されている請求項77の双極型セル。
【請求項83】
(a)正極および(b)セパレーターまたは正の集電体もしくは両方は、焼結サブアセンブリを含む請求項77の双極型セル。
【請求項84】
(a)負極および(b)セパレーターまたは負の集電体もしくは両方は、焼結サブアセンブリを含む請求項77の双極型セル。
【請求項85】
正の集電体、正極、セパレーター、負極および負の集電体は焼結サブアセンブリを含む、請求項77の双極型セル。
【請求項86】
焼結セラミックから形成された正極または負極は、厚みが少なくとも約200μmである請求項77の双極型セル。
【請求項87】
焼結サブアセンブリは厚みが少なくとも約200μmである請求項77の双極型セル。
【請求項88】
セルは、更にレドックスシャトルを含む請求項77の双極型セル。
【請求項89】
電解質は電気活性添加剤を含む請求項77の双極型セル。
【請求項90】
セパレーターは電気活性ポリマーを含み、
電気活性ポリマーはセパレーターを介して浸透経路を形成している請求項77の双極型セル。
【請求項91】
焼結セラミックから形成された正極または負極の厚みは、平均厚みから25%未満変動する請求項77の双極型セル。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図3c】
【図4a】
【図4b】
【図4c】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2011−520214(P2011−520214A)
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502033(P2011−502033)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038308
【国際公開番号】WO2009/120812
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(505239219)エイ 123 システムズ,インク. (24)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【国際出願番号】PCT/US2009/038308
【国際公開番号】WO2009/120812
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(505239219)エイ 123 システムズ,インク. (24)
【Fターム(参考)】
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