説明

高分子化合物及びそれを配合する皮膚外用剤又は化粧料

【課題】使用感に優れ、水分保持能の向上し、皮膚外用剤や化粧料に配合した場合には、該皮膚外用剤や化粧料に保湿性を付与する(メタ)アクリル系親水性高分子化合物を提供すること。
【解決手段】水分保持能が非常に高いピログルタミン酸に重合性基を導入して重合性単量体化して重合させることにより得られた親水性高分子化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な親水性高分子化合物及びそれを配合する皮膚外用剤又は化粧料に関し、更に詳しくは、保水性を有する新規な親水性高分子化合物及び、かかる親水性高分子化合物を配合した保湿性に優れる皮膚外用剤又は化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
角質の水分量低下や水分透過の異常昂進は、角質バリア機能の低下にもつながり、肌の恒常性維持の点では排除すべき事象である。この理由から、皮膚外用剤や化粧料、殊に基礎化粧料においては角質水分量の保持や水分透過量の抑制を目的として、保湿成分を配合することが多く行われている。皮膚外用剤や化粧料に配合される保湿成分としては、NMF(天然保湿因子)であるとされている、尿素、アミノ酸、ピログルタミン酸(ピロリドンカルボン酸:PCA)や、いくつかの生体高分子物質や、トレハロース、ヒアルロン酸ナトリウム等の生体類似成分などが広く用いられているが、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、架橋型ポリアクリル酸等の合成高分子も保湿成分として使用されており、特に、カルボキシビニルポリマーは、その清涼感に富む良好な使用感と、優れた増粘性、構造粘性の付与効果とにより皮膚外用剤や化粧料に汎用されている。また、超高分子量のポリ−ガンマ−グルタミン酸(例えば、特許文献1参照)も提案されている。
【0003】
また、高分子化合物をさらに化学的に修飾することにより水分保持能を向上させることも試みられており、例えば、特定の構造を有する糖系高分子様モノマーを用いて共重合して得られるポリマーを1種又は2種以上含有することを特徴とする高分子吸水剤(例えば、特許文献2参照)や、多分岐多糖誘導体を含む構成単位からなる保湿性高分子化合物(例えば、特許文献3参照)や、親水性を有するフィルムを形成する(メタ)アクリロイル−アミノ酸ポリマー(例えば、特許文献4参照)が提案されている。また、アミノ酸に重合性基を導入し、ポリマー化したものを皮膚に適用し、経表皮水分損失量を低減させ、肌荒れ等の標識物質として利用する技術(例えば、特許文献5参照)についても開示されている。
【0004】
一方、ピログルタミン酸は、ピロリドンカルボン酸(PCA)とも呼ばれることがある、グルタミン酸のαエステルの加熱などにより生じる化合物であり、ピログルタミン酸やその塩は、各種化合物の中間体として有用であり、例えば、ピログルタミン酸にアクリロイル基又はメタクリロイル基を導入したピログルタミン酸誘導体について、血圧降下剤の中間体が提案されているが(例えば、特許文献6参照)、かかる文献にはピログルタミン酸誘導体の重合性に関する示唆又は開示はない。また、ピログルタミン酸の非常に高い水分保持能により、ピログルタミン酸塩とジグリセリドとポリオール保湿成分を含有する高い保湿効果を有する化粧料(例えば、特許文献7参照)や、ピログルタミン酸塩等の電解質とアクリルアミド等の架橋コポリマーとカルボキシメチルセルロース塩とを含有する保湿効果に優れた化粧料(例えば、特許文献8参照)が提案されている。また、ポリアクリル酸ナトリウムと、α−オレフィン・ビニルピロリドン共重合体を含有することを特徴とする含水睫用化粧料(例えば、特許文献9参照)が提案されている。
【0005】
さらに、ピログルタミン酸を誘導体化したポリマーに、水分保持機能以外の性能を付与する試みも行われており、ピロリドンカルボン酸変性オルガノポリシロキサンから誘導されるエステルを含有する、顔料分散性を高め色移り防止効果を付与した油性化粧料(例えば、特許文献10参照)や、N−ヤシ油脂肪酸アシルL−アルギニンエチルDL−ピロリドンカルボン酸を含有する防腐効果を有する含浸シート状化粧料(例えば、特許文献11参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−532462号公報
【特許文献2】特開平9−309855号公報
【特許文献3】特開2005−314402号公報
【特許文献4】特開2001−226345号公報
【特許文献5】WO00/32560号公報
【特許文献6】特開昭57−54167号公報
【特許文献7】特開昭63−185912号公報
【特許文献8】特開2003−267855号公報
【特許文献9】特開2005−306853号公報
【特許文献10】特開2003−261415号公報
【特許文献11】特開2003−335626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述の如く、合成高分子と他の成分を組み合わせ、相乗的に水分保持能を向上させる技術は存在するが、高分子自体を修飾し、その水分保持能を向上させる技術については、ほとんど報告されていない。加えて、糖系高分子、ポリアミノ酸系高分子を修飾して水分保持を改良する技術は存在するが、化粧料に汎用されるアクリル系の高分子化合物自体を修飾し、それ自体の水分保持能を向上させる試みはなされていない。カルボキシビニルポリマーに代表される架橋型ポリアクリル酸およびその塩が、化粧料に汎用される理由は、その清涼感に富む良好な使用感と、優れた増粘性、構造粘性の付与であり、これは糖系高分子、ポリアミノ酸系高分子にはない特長である。よって、本発明の課題は、使用感に優れ、水分保持能の向上し、皮膚外用剤や化粧料に配合した場合には、該皮膚外用剤や化粧料に保湿性を付与する(メタ)アクリル系親水性高分子化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、水分保持能が非常に高いピログルタミン酸に重合性基を導入して重合性単量体化して重合させることにより得られた親水性高分子化合物が、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、[1]ピログルタミン酸誘導体の1種又は2種以上に由来する、下記式(1)で表される繰り返し単位:(A)
【0010】
【化1】

【0011】
(式(1)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Xは、水酸基、又はOM基(Mは、アルカリ金属元素、アンモニウム基、又は有機塩基から誘導された基を表す)を表す)と、必要に応じて、一分子内に少なくとも二個以上の重合性基を有する架橋型重合性単量体の1種又は2種以上に由来する単位:(B)とからなり、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が2,000〜2,000,000であることを特徴とする親水性高分子化合物や、[2]架橋型重合性単量体が、多価アルコールのアクリル酸エステル、多価アルコールのメタクリル酸エステル、アリル化蔗糖及びメチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする上記[1]記載の親水性高分子化合物や、[3]上記[1]又は[2]に記載の親水性高分子化合物の1種又は2種以上を含有する皮膚外用剤や、[4]上記[1]又は[2]に記載の親水性高分子化合物の1種又は2種以上を含有する化粧料に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の親水性高分子化合物は、保水性に優れており、また、かかる親水性高分子化合物を含有する本発明の皮膚外用剤又は化粧料は、保湿性に優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(ピログルタミン酸誘導体の1種又は2種以上に由来する、式(1)で表される繰り返し単位)
上記式(1)中のR1は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。具体的には、炭素数1〜3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基を挙げることができる。また、Xは、水酸基(−OH基)、又は−OM基のいずれかを表し、−OM基において、Mは、アルカリ金属元素、アンモニウム基、有機塩基から誘導される基を表す。アルカリ金属元素としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等を挙げることができ、有機塩基から誘導される基としては、メチルアンモニウムイオン、ジメチルアンモニウムイオン、フェニルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、キノリニウムイオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等の中心となるヘテロ原子が窒素原子であるオニウムイオンや、トリメチルスルホニウムイオン、トリドデシルスルホニウムイオン等の中心となるヘテロ原子が硫黄原子であるオニウムイオンや、テトラフェニルホスホニウムイオン等の中心となるヘテロ原子がリン原子であるオニウムイオンなどを挙げることができる。
【0014】
本発明における上記式(1)で表される繰り返し単位の原料となるピログルタミン酸誘導体としては、d体、l体、dl体(ラセミ体)のいずれをも使用することができる。具体的には、N−アクリロイルピログルタミン酸、N−メタクリロイルピログルタミン酸、又はそれらの塩等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することもできる。N−アクリロイルピログルタミン酸、N−メタクリロイルピログルタミン酸等の遊離酸の形式の誘導体が、重合性が良好な点で好ましく、N−アクリロイルピログルタミン酸が最も好ましい。
【0015】
ピログルタミン酸誘導体の製法としては、公知の方法を含め特に制限されないが、例えば、ピログルタミン酸をアセトニトリルに溶解し、トリエチルアミンを適宜添加して0℃を維持しながら、アクリル酸クロライドを撹拌下でゆっくり滴下し、攪拌後減圧濃縮等する方法などを挙げることができる。
【0016】
(一分子内に少なくとも二個以上の重合性基を有する架橋型重合性単量体の1種又は2種以上に由来する単位)
当該単位の原料として使用される、ピログルタミン酸誘導体と共重合し得る架橋型重合性単量体としては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ブチレングリコールジ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタンジオールジ(メタ)アクリル酸エステル、ペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ)(メタ)アクリル酸エステル、ジペンタエリスリトール(ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサ)(メタ)アクリル酸エステル、トリメチロールプロパン(ジ、トリ)(メタ)アクリル酸エステル等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルや、アリル化蔗糖や、メチレンビスアクリルアミドや、トリアリルホスフェイトなどを挙げることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。
【0017】
なお、上記「(メタ)アクリル酸」の表記は、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を表す。かかる架橋型重合性単量体を共重合成分としない場合、本発明の親水性高分子化合物は線状の一次元的な、曳糸性や粘着性が発現しやすい線状高分子となるが、架橋型重合性単量体を含めて共重合した場合には、三次元的高分子となり、皮膚外用剤又は化粧料に汎用されるカルボキシビニルポリマーの挙動と類似の有限膨潤性の親水性高分子的な挙動を示す点で、皮膚外用剤又は化粧料への配合を意図する場合により好ましい。
【0018】
(親水性高分子化合物)
本発明の親水性高分子化合物は、上記ピログルタミン酸誘導体に由来する、式(1)で表される繰り返し単位:(A)のみからなる場合と、一分子内に少なくとも二個以上の重合性基を有する架橋型重合性単量体に由来する単位:(B)を共重合成分として含む場合とを包含する。式(1)で表される繰り返し単位:(A)は、1種でもよく、2種以上であってもよい。架橋型重合性単量体に由来する単位も、1種でもよく、2種以上であってもよい。
【0019】
本発明の親水性高分子化合物の重量平均分子量としては特に制限されないが、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、直鎖ポリスチレン標準品で作成した校正曲線及び屈折率検出器を使用する液体ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、2,000〜2,000,000の範囲であることが好ましく、10,000〜500,000の範囲であることがより好ましい。2,000,000を超えると溶解速度が低下し、親水性高分子化合物の水性溶液の粘度が上昇し、皮膚外用剤又は化粧料に配合した場合、皮膚への適用時に好ましくない感触を生じる場合がある。
【0020】
本発明の親水性高分子化合物は、水又は水アルコール溶液に可溶であるか、或は、水又は水アルコール溶液中で膨潤するという特徴を有する。また、上記式(1)のピログルタミン酸誘導体の遊離酸部分をアルカリ性物質で中和することにより、さらに溶解性や膨潤性が増すという特徴を有する。
一分子内に少なくとも二個以上の重合性基を有する架橋型重合性単量体の1種又は2種以上を使用する場合、架橋型重合性単量体の仕込み量は、当該架橋型重合性単量体一分子中の重合性基の数によって変化し、限定的ではないが、ピログルタミン酸誘導体の総量に対し、0.1〜2質量%が好ましく、0.2〜1質量%がより好ましい。
【0021】
(製造方法)
本発明の親水性高分子化合物の製造方法としては、上記特徴を有する本発明の親水性高分子化合物を製造することができる限り特に制限はないが、上記式(1)で表される繰り返し単位の原料となる重合性ピログルタミン酸単量体の1種又は2種以上と、必要に応じて、架橋型重合性単量体の1種又は2種以上を構成モノマー成分とを、例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法等により製造することができる。中でも過酸化物、アゾ化合物等のラジカル発生剤を利用したラジカル重合法を好適に示すことができる。かかるラジカル発生剤の使用量は、構成モノマーの総量に対して、0.05〜5質量%、好ましくは、0.2〜2質量%である。また、共重合体の形態は、ランダム共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよいが、上記式(2)の重合性単量体の添加時期等を調整することにより、ランダム共重合体、部分ブロック共重合体、ブロック共重合体等の形態が選択できる。また、上記ラジカル重合法としては、公知の、塊重合、乳化重合、溶液重合等のいずれも可能であるが、本発明の親水性高分子化合物を得る製造方法においては溶液重合が好ましく、該溶液重合を行う方法としては、窒素、アルゴン等の不活性ガスの雰囲気下、温度を50〜100℃、好ましくは65〜75℃として重合反応を行う方法を例示することができる。また、上記溶液重合を行う場合における有機溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類や、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類や、ジオキサン等のエーテル類や、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類や、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類や、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類などを例示することができるがこれらに制限されない。
【0022】
(皮膚外用剤・化粧料)
本発明の親水性高分子化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて、皮膚外用剤や化粧料の他、塗料、インク等の添加剤、生理用品等の吸液性素材、紙用添加剤、糊剤、食品用添加剤等、様々な用途に使用することができるが、皮膚外用剤又は化粧料に使用することが好ましく、化粧料に配合することがより好ましい。本発明における化粧料としては、化粧水、クリーム、乳液、美容液等の基礎化粧料や、シャンプー、リンス、トリートメント等の頭髪化粧料や、リキッドファンデーション、下地乳液等のメイクアップ化粧料や、日焼け止め化粧料等の化粧料(医薬部外品を含む)を例示することができ、皮膚外用剤としては、皮膚用化粧料のほか、リニメント剤、ローション剤、軟膏剤等の外用医薬品を例示することができる。
【0023】
本発明の親水性高分子化合物の皮膚外用剤又は化粧料への配合は、1種又は2種以上を、適宜組み合わせて配合してもよい。
本発明の親水性高分子化合物の配合割合は、本発明の効果が奏される限り特に制限されないが、通常、皮膚外用剤又は化粧料全体に対して、0.01〜80質量%が好ましく、0.1〜40質量%がより好ましい。
【0024】
本発明の皮膚外用剤又は化粧品では、本発明の親水性高分子以外に、通常、皮膚外用剤又は化粧料に配合される油性成分、界面活性剤、アルコール類、保湿剤、ゲル化剤、粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、酸化防止剤、pH調整剤、美肌用成分、香料等の1種又は2種以上を、本発明の親水性高分子化合物の効果を損なわない範囲で適宜組み合わせて配合してもよい。
【0025】
上記油性成分としては、例えば炭化水素油、エステル油、グリセライド油、シリコーン油、高級アルコール、脂肪酸、ラノリン類等を挙げることができる。上記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。上記アルコール類としては、例えばエタノール、イソプロパノール等の低級アルコールや、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール等の多価アルコールや、ソルビトール、マルトース、キシリトール、マルチトール等の糖アルコールや、コレステロール、シトステロール、フィトステロール、ラノステロール等のステロール類などを挙げることができる。上記保湿剤としては、例えば、尿素、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ピロリドンカルボン酸塩等を挙げることができる。
【0026】
上記ゲル化剤としては、皮膚外用剤又は化粧料に一般に用いられる水性ゲル化剤又は油性ゲル化剤であれば特に制限されず、例えば、水性ゲル化剤としては、アラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、キャロブガム、グァーガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード(マルメロ等由来の)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ等由来の)、アルゲコロイド、トラントガム、ローカストビーンガム等の植物系高分子や、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子や、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子や、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子や、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系高分子や、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子や、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等のビニル系高分子や、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合体、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等の無機系ゲル化剤増粘剤などを挙げることができ、油性ゲル化剤としては、アルミニウムステアレート、マグネシウムステアレート、ジンクミリステート等の金属セッケンや、N−ラウロイル−L−グルタミン酸、α,γ−ジ−n−ブチルアミン等のアミノ酸誘導体や、デキストリンパルミチン酸エステル、デキストリンステアリン酸エステル、デキストリン2−エチルヘキサン酸パルミチン酸混合エステル等のデキストリン誘導体や、脂肪酸エステル、ショ糖パルミチン酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステルや、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等のソルビトールのベンジリデン誘導体や、ジメチルベンジルドデシルアンモニウムモンモリロナイトクレー、ジメチルジオクタデシルアンモニウムモンモリロナイトクレー等の有機変性粘土鉱物などを挙げることができる。
【0027】
上記粉体としては、例えば、無機粉体、有機粉体、金属石鹸粉末、有色顔料、パール顔料、金属粉末、タール色素、天然色素等を挙げることができ、その粒子形状(球状、針状、板状等)や、粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)や、粒子構造(多孔質、無孔質等)を問わない。これらの粉体はそのまま使用してもよいが、2種以上の粉体を複合化したものを用いてもよく、油剤、シリコーン化合物、フッ素化合物等で表面処理を施してもよい。
【0028】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸等の安息香酸系紫外線吸収剤や、アントラニル酸メチル等のアントラニル酸系紫外線吸収剤や、サリチル酸メチル等のサリチル酸系紫外線吸収剤や、パラメトキシケイ皮酸オクチル等のケイ皮酸系紫外線吸収剤や、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤や、ウロカニン酸エチル等のウロカニン酸系紫外線吸収剤などを挙げることができる。上記防腐剤や抗菌剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロルメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、イソプロピルメチルフェノール等を挙げることができる。
【0029】
上記酸化防止剤としては、例えば、トコフェロール、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン等を挙げることができる。pH調整剤としては、例えば、乳酸、乳酸塩、クエン酸、クエン酸塩、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等を挙げることができる。
【0030】
上記美肌用成分としては、例えば、アスコルビン酸及びその誘導体、コウジ酸、アルブチン、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤や、ロイヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体等の細胞賦活剤・肌荒れ改善剤や、ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β−ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸、α−ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ−オリザノール等の血行促進剤や、酸化亜鉛、タンニン酸等の皮膚収斂剤や、イオウ、チアントロール等の抗脂漏剤などを挙げることができる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤又は化粧料は、その剤形を限定するものではないが、本発明の効果が最も奏される剤形は、水溶液系、可溶化系、水中油乳化系である。また、本発明の皮膚外用剤又は化粧料は、全ての皮膚外用剤又は化粧料に適用可能であるが、本発明の効果が最も奏されるものは、化粧水、クリーム、乳液、美容液等の基礎化粧料やシャンプー、リンス、トリートメント等の頭髪化粧料、リキッドファンデーション、下地乳液等である。
【0032】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
【0033】
(参考例1)
[N−アクリロイルピログルタミン酸の合成]
ピログルタミン酸12.9gをアセトニトリル500mLに溶解し、トリエチルアミン20.2gを添加し、0℃に冷却した。0℃を維持しながら、これにアクリル酸クロライド9.05gを撹拌下でゆっくり滴下した。滴下終了後、冷却を解除し、液温が室温と同じになったところで、撹拌を中止し、減圧濃縮を行った。濃縮物に精製水100mLを加え、1N塩酸でpH6.5に調整し、酢酸エチルで分配した。酢酸エチル分配物を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、減圧濃縮を行い、約15.5gの粗反応物を得た。この粗反応物をカラムクロマトグラフィー(担持体:シリカゲル、展開溶媒:クロロホルム−メタノール−水(90:9:1))で展開、精製し、N−アクリロイルピログルタミン酸14.5gを得た。得られたN−アクリロイルピログルタミン酸の比旋光度(〔α〕20/D)は、−47.6度、赤外分光吸収(石英板薄膜法)は、ν=3600−3000、1750、1680、1610、1400、1350、1300、1220、1180cm−1、H−NMR(重クロロホルム溶液中)では、δ=7.5(1H、dd)、6.5(1H、dd)、5.9(1H、dd)、4.9−4.7(1H、m)、2.9−2.0ppm(4H、m)を示した。また、質量分析では、m/e=183(M+)のピークを観察した。
【0034】
(参考例2)
[N−メタクリロイルピログルタミン酸ナトリウムの合成]
ピログルタミン酸12.9g、アセトニトリル500mL、トリエチルアミン20.2g、メタクリル酸クロライド10.4gを用い、参考例1と同様に操作して、N−メタクリロイルピログルタミン酸16.3gを得た。得られたN−メタクリロイルピログルタミン酸の比旋光度(〔α〕24/D)は、−22.5度、赤外分光吸収(石英板薄膜法)は、ν=3600−3000、1740、1670、1400、1350、1280、1200cm−1、H−NMR(重クロロホルム溶液中)では、δ=5.45(2H、d)、4.9−4.7(1H、m)、2.8−2.1(4H、m)、2.0ppm(3H、d)を示した。また、質量分析では、m/e=197(M+)のピークを観察した。このN−メタクリロイルピログルタミン酸の13.79gに、氷冷下で10%水酸化ナトリウム溶液28mLを加えて溶解したものを、200mLのアセトン中に投入し、析出するN−メタクリロイルピログルタミン酸ナトリウムを分取した。
【実施例1】
【0035】
(N−アクリロイルピログルタミン酸の重合体の合成)
500mLの3つ口フラスコに、窒素導入管、滴下ロート、冷却管を設置し、トルエン100mLを入れ、雰囲気を窒素置換した。脱気トルエン200mLに、参考例1と同様の操作で得られたN−アクリロイルピログルタミン酸10g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル0.02gを溶解し、滴下ロートに移送し反応液とした。反応容器を50℃に保った状態で、滴下ロートより反応液を滴下(1gtt/1秒)し、窒素バブリングを続行しつつ、撹拌した。滴下終了後、内温を70℃まで昇温し、そのまま1時間反応を続行した。冷却後、生成した白色固形物を分取し、トルエンで充分に洗浄した後乾燥し、N−アクリロイルピログルタミン酸の重合体9.1gを得た。得られた重合体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、32,000であった。このN−アクリロイルピログルタミン酸の重合体は、水酸化ナトリウムで中性に中和すると水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【実施例2】
【0036】
(N−メタクリロイルピログルタミン酸ナトリウムの重合体の合成)
参考例2と同様な操作で得られたN−メタクリロイルピログルタミン酸ナトリウム10g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル0.02gを用い、実施例1と同様に操作して、N−メタクリロイルピログルタミン酸ナトリウムの重合体8.8gを得た。得られた重合体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、25,000であった。このN−メタクリロイルピログルタミン酸ナトリウムの重合体は、水に透明に溶解し、粘稠な溶液となった。
【実施例3】
【0037】
(N−アクリロイルピログルタミン酸の架橋型重合体の合成)
参考例1と同様な操作で得られたN−アクリロイルピログルタミン酸9.5g、トリアクリル酸トリメチロールプロパン0.5g、N、N−アゾビスイソブチロニトリル0.02gを用い、実施例1と同様に操作して、N−アクリロイルピログルタミン酸の架橋型重合体8.9gを得た。得られた重合体のGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、16,000であった。このN−アクリロイルピログルタミン酸の架橋型重合体は、水酸化ナトリウムで中性に中和すると水を吸液し、軟ゲル状の粒状物となった。
【実施例4】
【0038】
(N−アクリロイルピログルタミン酸の架橋型重合体粉末の調製)
実施例3と同様な操作で得られたN−アクリロイルピログルタミン酸の架橋型重合体100gを冷却粉砕機(奈良機械社製「ゴブリン」)で粉砕し、平均粒子径13μmのN−アクリロイルピログルタミン酸の架橋型重合体粉末を得た。(平均粒子径測定は、レーザー散乱式粒度分布計で測定した。)
【実施例5】
【0039】
(保湿クリーム)
(処方)
質量%
1.ペンタオレイン酸デカグリセリル 3.0
2.ミツロウ 2.0
3.セタノール 2.0
4.スクワラン 5.0
5.トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 2.0
6.ジメチルポリシロキサン(注1) 0.5
7.グリセリン 5.0
8.N−アクリロイルピログルタミン酸の重合体(注2) 1.0
9.水酸化ナトリウム 0.4
10.防腐剤 適 量
11.精製水 合計で100%となる割合
(注1:KF−96A−6CS(信越化学工業社製))
(注2:実施例1で得られたもの。)
(製法)
A.成分1〜6を混合溶解し、80℃とする。
B.成分7〜11を混合溶解し、80℃とする。
C.Aを撹拌しつつ、Bを徐々に添加して乳化する。
D.Cを冷却し、保湿クリームを作製した。
【0040】
実施例5の保湿クリームは、使用後の保湿感が良好で、肌の潤いを長時間維持するものであった。
【0041】
(保湿性の評価)
下記処方及び製法でクリーム(比較クリーム)を製し、実施例5の「保湿クリーム」と保湿性を比較評価した。
【0042】
(比較クリーム)
(処方)
質量%
1.ペンタオレイン酸デカグリセリル 3.0
2.ミツロウ 2.0
3.セタノール 2.0
4.スクワラン 5.0
5.トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル 2.0
6.ジメチルポリシロキサン(注3) 0.5
7.グリセリン 5.0
8.水酸化ナトリウム 0.4
9.防腐剤 適 量
10.精製水 合計で100%となる割合
(注3:KF−96A−6CS(信越化学工業社製))
(製法)
A.成分1〜6を混合溶解し、80℃とする。
B.成分7〜10を混合溶解し、80℃とする。
C.Aを撹拌しつつ、Bを徐々に添加して乳化する。
D.Cを冷却し、保湿クリームを作製した。
【0043】
(保湿性評価方法)
女性パネル20名を用い、左右の前腕内側に3cm四方の試験領域を設け、「比較クリーム」と「保湿クリーム(実施例5)」の塗布(0.45g)を一週間続けた。被験パネルは、左右の前腕内側のどちらに「比較クリーム」、「保湿クリーム(実施例5)」を塗布しているか分からないブラインドテストを行った。保湿性の評価は、連用開始前の表皮角層水分量と一週間の連用後の表皮角層水分量の測定を行い、変化量で行った。水分量の測定は、まず、塗布部位を所定の洗浄料で洗浄し、その後一定条件の環境試験室(温度22℃、相対湿度50%)に入室後20分以上経過してから、IBS社製「SKICON200EX」を用いて行った。変化量は、下記計算式で算出した。
【0044】
変化量
=(一週間連用後の表皮角層水分量/連用開始前の表皮角層水分量)×100−100
【0045】
(保湿性評価結果)
【0046】
【表1】

【0047】
比較クリーム塗布群の平均変化量は、17.9、保湿クリーム(実施例5)塗布群の平均変化量は、23.7であり、本発明品である保湿クリーム(実施例5)は、肌水分量を高める化粧料であることが確かめられた。
【実施例6】
【0048】
(保湿美容液)
(処方)
質量%
1.N−メタクリロイルピログルタミン酸ナトリウムの共重合体(注4)1.0
2.水酸化ナトリウム 0.5
3.クエン酸ナトリウム 0.5
4.1,3−ブチレングリコール 7.0
5.グリセリン 5.0
6.ヒドロキシエチルセルロース 0.2
7.アーモンド種子エキス 1.0
8.防腐剤 適 量
9.エタノール 9.0
10.精製水 合計で100%となる割合
(注4:実施例2で得られたもの。)
(製法)
A.成分1〜10を混合溶解し、保湿美容液を作製した。
【0049】
実施例6の保湿美容液は、使用後の肌が潤うものであり、その効果が長時間持続するものであった。
【実施例7】
【0050】
(油性ファンデーション)
(処方)
質量%
1.タルク 15.0
2.カオリン 10.0
3.酸化チタン 10.0
4.ベンガラ 1.0
5.黄酸化鉄 4.0
6.黒酸化鉄 0.2
7.N−アクリロイルピログルタミン酸の架橋型重合体粉末(注5) 2.0
8.ポリプロピレンワックス 5.0
9.ポリエチレンワックス 5.0
10.マイクロクリスタリンワックス 8.0
11.ジイソステアリン酸ジグリセリル 10.0
12.スクワラン 5.0
13.ワセリン 5.0
14.ジグリセリン 0.5
15.トリ(カプリル/カプリン酸)グルセリル 合計で100%となる割合
(注5:実施例4で得られたもの。)
(製法)
A.成分8〜15を加熱混合溶解し、成分1〜7を加え、均一に混合する。
B.Aをロールミルにて混練し、容器に溶融充填し、油性ファンデーションを製した。
【0051】
実施例7の油性ファンデーションは、乾燥した肌にも均一に塗布できる使用性に優れるものだった。また、塗布後は肌の潤い感が得られ、且つ潤い感が持続するものであった。
【実施例8】
【0052】
(ローション剤)
(製法)
日本薬局方「水酸化カリウム」 5g
日本薬局方「グリセリン」 200mL
日本薬局方「エタノール」 250mL
N−アクリロイルピログルタミン酸の重合体(注6) 10g
日本薬局方「精製水」 適 量
全 量 1000mL
以上をとり、日本薬局方「グリセリンカリ液」の製法に準じてローション剤を製した。
(注6:実施例1で得られたもの)
【0053】
実施例8のローション剤は、皮膚のひび、あかぎれ等に好適に用いることができ、適用後は肌荒れもなく、しっとりとした感触を付与できるものであった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピログルタミン酸誘導体の1種又は2種以上に由来する、式(1)で表される繰り返し単位:(A)
【化1】

(式(1)中、R1は、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表し、Xは、水酸基、又はOM基(Mは、アルカリ金属元素、アンモニウム基、又は有機塩基から誘導された基を表す)を表す)と、
必要に応じて、一分子内に少なくとも二個以上の重合性基を有する架橋型重合性単量体の1種又は2種以上に由来する単位:(B)とからなり、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が2,000〜2,000,000であることを特徴とする親水性高分子化合物。
【請求項2】
架橋型重合性単量体が、多価アルコールのアクリル酸エステル、多価アルコールのメタクリル酸エステル、アリル化蔗糖及びメチレンビスアクリルアミドからなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の親水性高分子化合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の親水性高分子化合物の1種又は2種以上を含有する皮膚外用剤。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の親水性高分子化合物の1種又は2種以上を含有する化粧料。

【公開番号】特開2010−202766(P2010−202766A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49632(P2009−49632)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】