説明

高圧分離器

改良された効率を有する高圧分離器が提供される。この分離器は、重力分離器の内側に配置された遠心分離器を含む。この遠心分離器は、取り囲まれた上方部分を有し、望ましくは単一の円筒を含む。この高圧分離器は、高圧下での低密度ポリエチレンの製造に於いて使用するのに特に適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には、改良された高圧分離器及び、気体から液体を分離する際の、その使用に関する。この分離器は、例えば低密度ポリエチレンを製造するのに使用する高圧反応器との組合せに、特に有用である。
【背景技術】
【0002】
連続高圧ポリオレフィン重合方法に於いて、ポリエチレン生成物及び低分子量ワックスは、反応器から出るキャリヤーエチレン中に溶解されている。種々の圧力低下及び冷却工程により、圧力及び温度が低下するとき、生成物及びワックスが溶液から現れて、二つの別の相、即ち一つは気相で一つは液相になる。
【0003】
液体は、続いて、種々の分離技術及び装置によって気体から分離される。図1に示されるこのような一つの装置には、その中に気/液混合物11が供給される垂直円筒形容器10、気/液混合物11を液体表面13の方に向けるラッパ型入口12が含まれる(この場合、液体小滴は液体表面13の上に衝突し、液体表面13に付着する)。分離された液相は,容器10の底部に配置されている液体出口14を通って、容器10から出、そして分離された気相は、容器10の頂部に配置されている気体出口15を通って、容器から出る。このような装置の分離効率は、気体成分及び液体成分の相対密度及び粘度、小滴サイズ、処理量並びに容器10及びラッパ12の形状に依存する。
【0004】
従来の分離装置は、100%効率ではなく、幾らかの生成物及びワックスは、分離容器から出て、エチレンキャリヤーガス中に同伴される。同伴された液体は、下流の熱交換器の汚染を増加させ、更に頻繁に「バーンアウト(burn-outs)」する。圧縮機及び配管(そこで、液体は潜在的に固化する)の中への液体の同伴は、プラント稼働係数及び運転速度を低下させ、クリーニング及び保全時間及びコストを増大させる。極端な場合には、同伴された液体は配管閉塞及び機械的コンポーネントの早すぎる故障を起こし得る。
【0005】
従って、分離器から気体流と一緒に出て、下流のプロセス及び装置中へ通過する液体の量を減少させる、改良された分離効率を有する高圧分離器についてのニーズが当該技術分野において存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの面に於いて、本発明は、気体及び液状粒子を含む高圧混合物を分離するための装置を提供する。この装置は、
(a)混合物を膨張させ、気相と液相とに分離する重力分離器及び
(b)この混合物に螺旋流を与える、重力分離器の内側に配置された遠心分離器
を含んでなる。
【0007】
この重力分離器は、垂直円筒形シェル、混合物入口用開口、円筒形シェルの上方部分に配置された気体出口及び円筒形シェルの下方部分に配置された液体出口を含む。
【0008】
この遠心分離器は、遠心分離器の上方部分内に配置された混合物用入口、入口以外は取り囲まれた上方部分及び遠心分離器の下方部分に配置された混合物用出口を含む。
【0009】
別の面に於いて、本発明は、気体及び液状粒子を含む高圧混合物を分離する方法を提供する。この方法は、
(a)混合物を、本発明に従った高圧分離装置中へ導入する工程、
(b)この混合物を気相と液相とに分離する工程、
(c)この気相を、円筒形シェルの上方部分に配置された気体出口を通して、重力分離器から取り出す工程及び
(d)この液相を、円筒形シェルの下方部分に配置された液体出口を通して、重力分離器から取り出す工程
を含んでなる。
【0010】
更に別の面に於いて、本発明は、低密度ポリエチレンを製造する装置を提供する。この装置は、
(a)500〜3,000気圧(約50〜300MPa)の圧力及び160〜350℃の温度で、エチレンを重合させる反応器、
(b)反応器からの生成物流の圧力を低下させる圧力低下デバイス並びに
(c)生成物流中の液状ポリエチレン粒子とガス状エチレンとを分離する、本発明に従った高圧分離装置
を含んでなる。
【0011】
更に別の面に於いて、本発明は、低密度ポリエチレンの製造方法を提供する。この方法は、
(a)反応器内で、500〜3,000気圧(約50〜300MPa)の圧力及び160〜350℃の温度で、エチレンを重合させる工程、
(b)反応器からの液状ポリエチレン粒子及びガス状エチレンを含む生成物流を、圧力低下デバイスに通して、生成物流の圧力を低下させる工程並びに
(c)圧力低下デバイスからの生成物流を、本発明に従った高圧分離装置に通して、液状ポリエチレン粒子をガス状エチレンから分離する工程
を含んでなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、現在使用中の、典型的な高圧分離器の断面図である。
【0013】
【図2】図2は、本発明に従った高圧分離器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、添付する図面を特に参照して、本発明に従った高圧分離装置の態様の下記の説明から一層容易に理解されるであろう。この態様は、例示目的のために提供され、本発明を限定すると解釈されるべきではない。
【0015】
図2は、本発明に従った高圧分離装置の縦断面図である。この装置は、気体及び液状粒子を含む高圧混合物を分離するのに特に適している。この分離装置に関連して用語「高圧」は、2〜500気圧(約2〜50MPa)の圧力を指す。
【0016】
この装置は、混合物を膨張させ、気相と液相とに分離する重力分離器20及びこの混合物に螺旋流29を与える、重力分離器20の内側に配置された遠心分離器21を含む。
【0017】
重力分離器20は、一般的に垂直の円筒形シェル22、気/液混合物入口用開口23、円筒形シェル22の上方部分に配置された気体出口24及び円筒形シェル22の下方部分に配置された液体出口25を含む。気体出口24は、好ましくは、円筒形シェル22の上四分の一区画又は頂部に配置されており、液体出口25はシェル22の底部に配置されている。
【0018】
遠心分離器21は、遠心分離器21の上方部分内に配置された混合物用入口26、入口26以外は取り囲まれた上方部分27及び遠心分離器21の下方部分に配置された混合物用出口28を含む。出口28は、好ましくは、遠心分離器21の底部に配置されている。
【0019】
運転の際に、気/液混合物は、重力分離器20のシェル22に入り、入口26を通して内部遠心分離器21の方に向けられる。内部遠心分離器21は、頂部27で閉じられており、底部28で開放端になっており、そうして気体及び合一された液体が、遠心分離器21の底部から排出されるようになっている。
【0020】
「閉じられた(closed)」又は「取り囲まれた(enclosed)」によって、遠心分離器21の上方部分27が、気/液混合物入口26以外は、遠心分離器21の内側と重力分離器の外側との間の流体連通を与えるパイプを有しないことが意味される。好ましくは、遠心分離器21の上方部分27は、また、圧力感受性安全装置、例えば破裂性ディスクと流体連通状態にもない。
【0021】
遠心分離器21は、入ってくる気/液混合物中の液状粒子を、遠心分離器21内でより大きい小滴又は液体プールに合一させ、その後、重力分離器20の中に放出する。この二重分離器設計は、先行技術の分離装置を超える改良された効率を有する。この設計は、分離器20から出る気体流24中の液体の同伴を減少し、それによって下流の装置の汚染を減少し、多くの場合に、プロセス収率を改良し、クリーニング及び保全の時間及びコストを減少し、稼働係数を改良し、そして運転速度を増加させる。
【0022】
図示された態様に於いて、遠心分離器21は、入ってくる気/液混合物に螺旋流29を与える、接線方向側入口26を有する。接線方向側入口の代わりに、又はこれに加えて、遠心分離器21は、遠心分離器21の長さに沿った何処かであるが、典型的には、その上方部分に、入ってくる気/液混合物に螺旋流29を与える、1個又はそれ以上の、案内羽根、スピナープレート(spinner plates)又は櫂(図示せず)を含んでよい。
【0023】
図示された態様に於いて、遠心分離器21は、重力分離器20の内側表面に接触しておらず、望ましくは、重力分離器20の軸中心内に実質的に配置されている。遠心分離器21は、重力分離器20の内側に、種々の方法で、例えば遠心分離器の頂部及び/又は側部を、重力分離器20の内側表面に取り付ける垂直及び/又は水平支持体(図示せず)を使用することによって、吊り下げることができる。
【0024】
また望ましくは、遠心分離器21は単一の円筒から構成されている。換言すると、これは遠心分離器21の内側に環状の空間を規定するための内側円筒を有しない。
【0025】
図示されていない一つの態様に於いて、気/液混合物用の遠心分離器21への入口26は重力分離器シェル22内の開口23を通して重力分離器20の外側に伸びている。入口26は気/液混合物の流を向けるためのノズル(図示せず)が取り付けられている導管又はパイプであってよい。
【0026】
図示されていない別の態様に於いて、重力分離器20は、遠心分離器21から出る混合物に螺旋流を与える、1個又はそれ以上の、案内羽根、スピナープレート又は櫂を、遠心分離器21の出口28付近に含んでいる。
【0027】
図示されていない更に別の態様に於いて、遠心分離器21は、その下方部分に、気/液混合物が遠心分離器21から出るとき、気/液混合物の流を真っ直ぐにする羽根を含む。
【0028】
当業者によって容易に認められるように、重力分離器と遠心分離器との相対寸法並びに入口ライン及び出口ラインのサイズは、本発明が適用されるプロセスの必要条件に依存するであろう。勿論、気体及び液体成分の、圧力、温度、速度並びに密度及び粘度に於ける差異が、考慮に入れられなくてはならないであろう。一般的に言って、内部遠心分離器21は、乱流(chaotic flow)の代わりに、よく規定された螺旋流を達成するために十分に大きくなくてはならないが、外部分離容器と内部分離容器との間の環状断面内の許容できない上昇運動を作るように大きくはない。遠心分離器21の内側直径は重力分離器20の内側直径の0.05〜0.8倍であってよい。遠心分離器21の長さは重力分離器20の長さの0.1〜0.8倍であってよく又はその直径の4倍以下であってよい。入口ライン26の直径は0.01〜10m/秒又は0.01〜2m/秒の典型的な範囲内の速度を達成するように選択しなくてはならない。入口ノズル(図示せず)は遠心分離器21の頂部から遠心分離器21の一直径よりも短い位置にあってよい。存在する場合、遠心分離器21の底部の真っ直ぐする羽根は、高さが遠心分離器21の一直径よりも短くてよい。
【0029】
本発明の高圧分離器は、多数の二相気/液システム内で液体を気体から分離するのに、使用することができる。これは高圧下での低密度ポリエチレン(LDPE)の合成に於いて使用するのに特に適している。従って、他の面に於いて、本発明はLDPEを製造する装置及び方法の両方を提供する。
【0030】
LDPEを製造する装置は、
(a)500〜3,000気圧(約50〜300MPa)の圧力及び160〜350℃の温度でエチレンを重合させる反応器、
(b)反応器からの生成物流の圧力を低下させる圧力低下デバイス並びに
(c)生成物流中の液状ポリエチレン粒子とガス状エチレンとを分離する、本発明に従った高圧分離装置
を含む。
【0031】
LDPEを製造する方法は、
(a)反応器内で、500〜3,000気圧(約50〜300MPa)の圧力及び160〜350℃の温度で、典型的には開始剤の存在下で、エチレンを重合させる工程、
(b)反応器からの液状ポリエチレン粒子及びガス状エチレンを含む生成物流を、圧力低下デバイスに通して、生成物流の圧力を低下させる工程並びに
(c)圧力低下デバイスからの生成物流を、本発明に従った高圧分離装置に通して、液状ポリエチレン粒子をガス状エチレンから分離する工程
を含む。
【0032】
この反応器は、高圧下でLDPEを製造するのに当該技術分野で公知のものの何れか、例えば撹拌式オートクレーブ反応器であってもよい。圧力低下デバイスは、1種又はそれ以上の膨張弁であってよい。圧力低下デバイスは、500〜3,000気圧(約50〜300MPa)の範囲である、反応器から出てくる生成物流の圧力を、約50〜500気圧(約5〜50MPa)である、高圧分離器の運転圧力まで低下させるのに有効でなくてはならない。
【0033】
本発明の高圧分離器に入るLDPE生成物流の速度は広い範囲に亘って変えることができる。典型的には、この速度は0.01〜2m/秒であってよい。
【0034】
この重合反応は、典型的には、大気の酸素、過酸化物、当該技術分野で公知の別のフリーラジカル開始剤又はこれらの混合物によって開始される。使用される開始剤の量は開始剤の効率並びに所望の反応温度及び生成速度のような要因に依存して変えることができる。
【0035】
このエチレンは、また、コモノマー、例えば酢酸ビニル、ビニルエステル、オレフィン性不飽和カルボン酸又はα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンと共重合させることができる。
【0036】
この重合は、変性剤、例えば水素及び/又は炭化水素希釈剤、例えばエタン、プロパン若しくはブタンの存在下に実施することができる。このような場合に、高圧分離器に入る生成物流は、また、種々の変性剤及び/又は希釈剤を含有していてよい。
【0037】
本発明を、その好ましい態様を特に参照して詳細に説明したが、その変形及び修正が、本発明の精神及び範囲内で実施できることを理解されたい。
【符号の説明】
【0038】
10 垂直円筒形容器
11 気/液混合物
12 ラッパ型入口
13 液体表面
14 液体出口
15 気体出口
20 重力分離器
21 遠心分離器
22 円筒形シェル
23 開口
24 気体出口
25 液体出口
26 混合物用入口
27 上方部分
28 混合物用出口
29 螺旋流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)気体及び液状粒子を含む高圧混合物を膨張させ、そして気相と液相とに分離する、垂直円筒形シェル、混合物入口用開口、円筒形シェルの上方部分に配置された気体出口及び円筒形シェルの下方部分に配置された液体出口を含んでなる重力分離器並びに
(b)前記混合物に螺旋流を与える、前記重力分離器の内側に配置された、遠心分離器であって、遠心分離器の上方部分内に配置された混合物用入口、入口以外は取り囲まれた上方部分及び遠心分離器の下方部分に配置された混合物用出口を含んでなる遠心分離器を含んでなる高圧混合物の分離用装置。
【請求項2】
前記混合物用入口が接線方向側入口である請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記遠心分離器が、螺旋流を与えるために、その上方部分内に、案内羽根、スピナープレート又は櫂を含む請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記重力分離器が、遠心分離器から出る混合物に螺旋流を与えるために、遠心分離器の出口付近に、案内羽根、スピナープレート又は櫂を含む請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記遠心分離器が、その下方部分内に、混合物の流れを真っ直ぐにするための羽根を含む請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記遠心分離器が重力分離器の内側表面に接触していない請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記遠心分離器が、それらの間に環状空間を規定するための内側円筒を含んでいない請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記遠心分離器の上方部分が圧力感受性安全装置と流体連通状態にない請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記混合物用の遠心分離器内の入口が混合物入口用開口を通して重力分離器の外側に伸びている請求項1に記載の装置。
【請求項10】
(a)気体及び液状粒子を含む高圧混合物を、請求項1に記載の装置に導入する工程、
(b)高圧混合物を気相と液相とに分離する工程、
(c)気相を、円筒形シェルの上方部分に配置された気体出口を通して、重力分離器から取り出す工程及び
(d)液相を、円筒形シェルの下方部分に配置された液体出口を通して、重力分離器から取り出す工程を含んでなる高圧混合物の分離方法。
【請求項11】
(a)500〜3,000気圧の圧力及び160〜350℃の温度で、エチレンを重合させる反応器、
(b)反応器からの生成物流の圧力を低下させる圧力低下デバイス並びに
(c)生成物流中の液状ポリエチレン粒子とガス状エチレンとを分離する請求項1に記載の高圧分離装置
を含んでなる低密度ポリエチレンの製造装置。
【請求項12】
(a)反応器内で、500〜3,000気圧の圧力及び160〜350℃の温度で、エチレンを重合させる工程、
(b)反応器からの液状ポリエチレン粒子及びガス状エチレンを含む生成物流を、圧力低下デバイスを通して、生成物流の圧力を低下させる工程並びに
(c)圧力低下デバイスからの生成物流を、請求項1に記載の高圧分離装置を通して、液状ポリエチレン粒子をガス状エチレンから分離する工程
を含んでなる低密度ポリエチレンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−511492(P2010−511492A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539312(P2009−539312)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/024527
【国際公開番号】WO2008/066861
【国際公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【出願人】(507141712)ウエストレイク ロングビュー コーポレイション (17)
【Fターム(参考)】