説明

高圧洗浄液噴射式洗浄装置

【課題】簡略な構造で、洗浄時の装置振動を抑制し、均一な洗浄を可能にする低コストの高圧洗浄液噴射式洗浄装置を提供する。
【解決手段】高圧洗浄液を一本の直線状に噴射させて洗浄する多数の噴射ノズル3を備えた高圧洗浄液噴射式洗浄装置1で、ノズルホルダー2が3本で、相互に平行に隣接させて配置し、往復スライダ・クランク機構7を介して共通のサーボモータ30により中央のノズルホルダー2cと両側方のノズルホルダー2bとを逆向きに直進往復移動させるとともに、中央のノズルホルダー2cの質量を両側方のノズルホルダー2bの質量の2倍に設定し、かつ往復スライダ・クランク機構による偏心量rを各ノズルホルダー2b・2cについて同一にし、洗浄対象物xをノズルホルダー2b・2cの長手方向に直交する方向に搬送しながらノズルホルダー2b・2cを長手方向に往復移動させると同時に、各噴射ノズル3から高圧洗浄液を噴射させて洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、液晶パネル、プラズマパネル、太陽電池パネル、有機EL(エレクトリックルミナンス)パネルなどのFPD(フラットパネルディスプレイ)や大型板状ガラスや半導体ウエハーなどの平坦な板状物を高圧洗浄液を噴射して洗浄する高圧洗浄液噴射洗浄装置(ウォータジェット洗浄機ともいう)に関する。詳しくは、たとえば、液晶ディスプレイや半導体ウエハーなどの製造工程で、ガラス基板表面の微小な粒子や有機物や金属不純物といった歩留り低下の原因となる汚濁物質を高圧洗浄液(高圧水を含む)を噴射して除去するのに使用でき、構造が簡単で低コスト化が可能な高圧洗浄液噴射洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の高圧洗浄液噴射洗浄装置として、複数の高圧液噴射ノズルを並べて装着したノズルホルダーをその支持軸回りに旋回(円運動)させながら若しくは円錐状に揺動させながら、洗浄装置から噴射する高圧洗浄液を洗浄対象物に対し垂直に当てながら直交方向に移動させることで、噴射ノズルから噴射する高圧洗浄液にて洗浄対象物の一面を緻密に洗浄する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置は1本の直線状に高圧洗浄液が噴射する収束型ノズルを備えている。
【0003】
従来の一般的な洗浄装置で使用されているノズルは、噴射される洗浄液が円錐状に広がるコーン型、若しくは扇状に広がるファン型が多い。これらのノズルであれば、洗浄液の噴流が拡散し、その拡散する幅が広いために、上記特許文献1の洗浄装置のように円運動させたり、揺動させたりする必要がない。
【0004】
一方、特許文献1の洗浄装置では、洗浄液が拡散しない1本の直線状になって噴射される収束型噴射ノズルを使用しているため、噴射される洗浄液のエネルギー密度がコーン型やファン型に比べて数十倍と非常に高い。したがって、洗浄面での剥離・洗浄効果は非常に優れている。しかし、洗浄対象物に対し洗浄液が当たる領域(面積)が極めて狭く、局所部分しか洗浄できない。いいかえれば、洗浄液が当たっていない箇所が広く、それらの箇所は洗浄されない。
【0005】
これを解決するために、本願の発明者らは、洗浄対象物を一定速度で移動させながら多数の高圧液噴射ノズルから洗浄液を前記洗浄対象物に対し一直線状に噴射させて洗浄する高圧液噴射洗浄システムで、各高圧液噴射ノズルを洗浄対象物に向けかつ相互に間隔をあけて共通のノズルホルダーに配列し、前記各高圧液噴射ノズルの向きを揃え、前記各高圧液噴射ノズルを前記ノズルホルダーを介して一体的に水平面内で旋回円運動させながら各高圧液噴射ノズルから洗浄対象物に対し高圧液を噴射させるようにした洗浄方法と同洗浄装置を開発し、特許出願(2007−281322)している。
【0006】
この種の洗浄装置に関する他の先行技術に、洗浄対象物の表面内の他の領域より付着物が多い特定領域を検出する検出手段と、前記洗浄対象物をその搬送方向に沿って傾斜させた状態で保持する保持手段と、前記洗浄対象物を前記保持手段により保持されたままで前記搬送方向に沿って搬送する搬送手段と、前記洗浄対象物の表面に洗浄液を吐出する吐出手段と、前記表面の面内方向であり、かつ前記搬送方向に直交する方向である前記洗浄対象物の幅方向に沿って前記吐出手段を移動させる移動手段とを備え、前記特定領域に選択的に前記吐出手段から前記洗浄液を吐出する洗浄装置が提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許2705719号公報
【特許文献2】特開2006−10947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
・上記したように、ホルダーをその支持軸回りで旋回円運動させる際の回転速度を上げれば上げるほど、洗浄の緻密性(洗浄対象物に対し噴射洗浄液が当たる単位体積当たりの割合)が高まるが、一方でホルダーまたはホルダーを含む装置全体の振動が増大する。すなわち、この振動加速度は回転速度の2乗で増大するから、特許文献1に記載のような手持ち式洗浄装置にあっては、作業者が手で持った状態で洗浄作業を継続するのが困難になる。また、ホルダーに装着されるノズルの数を2倍〜3倍に増やすと、ホルダーの全長が延びるだけでなく、ホルダーの外径が大幅に大きくなるから、手持ち式洗浄装置としては不的確である。
【0009】
・特許文献2に記載の装置は、洗浄対象物上の付着物が多い特定流域を集中的に洗浄する装置であり、洗浄対象物の全体を均一に洗浄する装置ではない。
【0010】
・先願にかかる上記特許出願の洗浄装置70は、図10に示すように多数の高圧水噴射ノズル72が配列されたノズルホルダー71を、両側の駆動軸74を偏心回転させて水平面内で旋回円運動しながら洗浄する構造からなる。このため、図10においてY方向への加振時に二等辺三角形状の曲げモーメントがノズルホルダー71に作用する。したがって、ノズルホルダー71にはその曲げモーメントに打ち勝つだけの断面強度を持たせる必要があり、ノズルホルダー71の剛性を上げるために大型化し、重量が増大する。それに伴って、両側の偏心回転駆動部73および駆動モータも増強しなければならず、コストアップの要因になるほか、外部振動の増大につながる。また、密閉した洗浄室76を確保するためには、旋回円運動するノズルホルダー71から両側方に延びる支持部75と洗浄室76の両側壁77とに所定の隙間(図10のG部)を設けた上で、洗浄対象物(図示せず)の搬送方向前後部の隙間をシールしなければならない。このため、シール装置が複雑になる。
【0011】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、上記の先願に係る洗浄装置に比べて構造を簡略化でき、小型・軽量化を図れ、低コスト化を達成でき、また洗浄時の装置の振動を抑制し、均一で効率的な洗浄を可能にする高圧洗浄液噴射式洗浄装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために本発明の高圧洗浄液噴射式洗浄装置は、高圧洗浄液を洗浄対象物に対し一本の直線状に噴射させて洗浄する多数の高圧洗浄液噴射ノズルを備えた高圧洗浄液噴射式洗浄装置であって、多数の前記噴射ノズルをノズルホルダーの長手方向に沿って一定の間隔をあけて配列するとともに、少なくとも2本の前記ノズルホルダーを相互に平行に隣接して配置しそれぞれ長手方向に直進往復移動可能に支持し、前記洗浄対象物を前記ノズルホルダーの長手方向に直交する方向に搬送しながら、隣接する前記ノズルホルダー同士を駆動装置により前記ノズルホルダー長手方向に対し相互に逆向きに直進往復移動させると同時に、各噴射ノズルから高圧洗浄液を前記洗浄対象物に対し噴射させて洗浄することを特徴とする。
【0013】
上記の構成を有する請求項1に係る高圧洗浄液噴射式洗浄装置によれば、多数の高圧洗浄液噴射ノズルがノズルホルダーとともにノズルホルダーの長手方向(左右方向)に所定距離内で直線状に往復移動すると同時に、多数の噴射ノズルから高圧洗浄液が一直線状に噴射されるから、高い洗浄強度が得られる。また、隣接する少なくとも2本のノズルホルダーが駆動装置により相互に逆方向に往復移動して洗浄作業を行うから、全体としての重心位置が移動しないために容易に重量バランスおよびモーメントバランスが取れた状態で往復移動させられるので、振動が少なくノズルホルダーがスムーズに移動し、また2本以上のノズルホルダーを相互に隣接した状態で洗浄対象物の幅方向にわたってほぼ隙間なく高圧洗浄液を均一に噴射させられ、洗浄ムラが生じにくい。さらに、洗浄の高速化を図るために洗浄対象物の移動速度を速めたり、往復移動時間を短縮したり、往復するノズルホルダーの移動速度を速めたりしても、ノズルホルダーあるいはノズルホルダーを含む装置全体の振動加速度が増大することがなく、振動が抑制される。
【0014】
請求項2に記載のように、前記ノズルホルダーが3本で、相互に平行に隣接させて配置し、ピストンクランク機構や往復スライダクランク機構などの各種クランク機構を介して共通の駆動用モータにより中央のノズルホルダーと両側方のノズルホルダーとを同時に逆向きに直進往復移動させるとともに、中央の前記ノズルホルダーの質量を両側方の前記ノズルホルダーの質量の2倍に設定し、かつ前記往復スライダ・クランク機構による偏心量を前記各ノズルホルダーについて同一にすることが望ましい。
【0015】
このようにすれば、洗浄作業時に中央のノズルホルダーとこのノズルホルダーを挟んで両側方のノズルホルダーとが力Fおよび運動モーメントM(F×r)においてそれぞれバランスした状態で往復移動するから、たとえば偏心量(r)10mmで800〜1000rpm程度の高回転速度で各ノズルホルダーを往復移動させても、振動が生じずスムーズに移動する。
【0016】
請求項3に記載のように、前記ノズルホルダーの下面に前記各噴射ノズルを長手方向に沿って等間隔に配列するとともに、前記ノズルホルダーの長手方向に沿って高圧洗浄液供給路を前記各噴射ノズルに連通させて設け、前記高圧洗浄液供給路の端部に可撓性の高圧洗浄液供給管の一端を接続することができる。
【0017】
このようにすれば、ノズルホルダーの一端部に可撓性の高圧洗浄液供給管を接続して洗浄液をノズルホルダーに供給するので、クランク機構やモータなどを介してノズルホルダーを往復移動させることができる。また、ノズルホルダーは長手方向(左右方向)に直線状に往復移動するので、ノズルホルダーの往復移動時に可撓性の高圧洗浄液供給管が屈曲変形してノズルホルダー端部の変位を吸収する。そして、高圧洗浄液供給管を通じて高圧洗浄液供給路内に供給される高圧の洗浄液は高圧洗浄液供給路内に臨む(連通する)各噴射ノズルからほぼ均等に洗浄液が高圧下で噴射される。
【0018】
請求項4に記載のように、前記各ノズルホルダーをその長手方向に直進往復移動可能に支持するとともに、その長手方向の軸回りに回転可能に支持し、前記各ノズルホルダーをその長手方向に所定距離内で往復移動させながら、同時に長手方向に直交する方向に所定回転角度内で往復回転させるようにすることができる。
【0019】
このようにすれば、多数の噴射ノズルから高圧下で洗浄液を噴射しながら各ノズルホルダーをその長手方向(左右方向)に往復移動させると同時に、各ノズルホルダーの長手方向に直交する方向(前後方向)に往復回転させることができる。このため、ノズルホルダーの長手方向に直交する方向(前後方向)における方向転換点とホルダーの長手方向における方向転換点とで時間的なずれがあるので、高圧の洗浄液が洗浄対象物上の特定箇所に集中して噴射されることがない。また、ノズルホルダーを長手方向に往復移動させながら長手方向に直交する方向にも所定の回転角度内で往復回転させられるから、円形状だけでなく任意の楕円形状を描くように高圧洗浄液を洗浄対象物に噴射して洗浄でき、洗浄の均一性を確保する上で自由度が拡がる。
【0020】
請求項5に記載のように、共通のモーターにより前記ノズルホルダーに対し長手方向の往復移動を許容しつつ前記ノズルホルダーの長手方向軸回りに往復回転可能な回転力を付与するとともに、前記ノズルホルダーの長手方向軸回りの回転を許容しつつ長手方向に往復移動可能な直動力を付与することができる。
【0021】
このようにすれば、前記ノズルホルダーを長手方向に一定のピッチで直線状にスムーズに往復移動させながら長手方向の軸回り(前後方向)に往復回転させられるから、円形状だけでなく任意の楕円形状を描くように高圧洗浄液を洗浄対象物に噴射して洗浄でき、洗浄の均一性を確保する上で自由度が拡がる。しかも、共通のモーターにより前記ノズルホルダーの長手方向への往復移動とそれに直交する方向への往復回転とを同時に行わせるので、構造が簡単で二つの動作の連動(同期)が容易になる。
【0022】
請求項6に記載のように、前記ノズルホルダーの長手方向(左右方向)への往復移動ストローク距離と前記ノズルホルダーの長手方向に直交する方向(前後方向)への往復回転ストローク距離と前記を一致させることができる。
【0023】
このようにすれば、洗浄対象物に対し洗浄液を真円形状の円を描くように噴射させることができる。しかも、上記した先願の高圧洗浄液噴射式洗浄装置に比べて構造が簡単で、ほぼ同様の洗浄作用を得られる。また、ノズルホルダー前後方向の加速度のバランスは、先願の高圧洗浄液噴射式洗浄装置に比べて取りやすいので、取り扱いが容易になる。
【0024】
請求項7に記載のように、2本の前記ノズルホルダーを対として複数組を平行に、前記洗浄対象物の搬送方向に沿って配列することができる。
【0025】
このようにすれば、たとえば請求項1に記載の少なくとも2本のノズルホルダーを対として複数組配列することにより、洗浄の緻密性を向上させられる。
【0026】
請求項8に記載のように、2本のノズルホルダーの組を1の列とし、上方より見て2つの前記列の境に対して鏡面対象となる構成および動作をするように、前記各列のノズルホルダーの組を相互に隣接させて配置することができる。
【0027】
このようにすれば、たとえば請求項1に記載の2本のノズルホルダーの駆動反力により生ずる小さな偶力の振動を、必要に応じて対称になる配置で2組設けることにより解消することができる。
【0028】
請求項9に記載のように、前記複数本のノズルホルダーのうちの一部を、高圧水洗浄機構を具備しないダミーホルダーとすることができる。
【0029】
このようにすれば、重量バランスを図るために多数本配置されるノズルホルダーについて、洗浄の緻密性を必要としない場合には一部のノズルホルダーの噴射ノズル数を減らしたり、重量バランス専用のダミーのノズルホルダーを設けることによって構造を簡略化できる。
【0030】
請求項10に記載のノズルホルダー駆動装置は、高圧洗浄液を洗浄対象物に対し一本の直線状に噴射させて洗浄する多数の噴射ノズルを備えた高圧洗浄液噴射式洗浄装置であって、多数の前記高圧洗浄液噴射ノズルをノズルホルダーの長手方向に沿って一定の間隔をあけて配列するとともに、少なくとも2本の前記ノズルホルダーを相互に平行に隣接して配置しそれぞれ長手方向に直進往復移動可能に支持し、前記洗浄対象物を前記ノズルホルダーの長手方向に直交する方向に搬送しながら、隣接する前記ノズルホルダーを相互に逆向きに直進往復移動させると同時に、各噴射ノズルから高圧洗浄液を前記洗浄対象物に対し噴射させて洗浄する高圧洗浄液噴射式洗浄装置における前記各ノズルホルダーの駆動装置で、前記ノズルホルダーをその長手方向の軸回りに所定回転角度内で往復回転させるとともに、前記ノズルホルダーの直進往復移動の周期と長手方向軸回りの往復回転の周期とを同期させ、前記ノズルホルダーの前記噴射ノズルから噴射される洗浄液による洗浄軌跡が円形または楕円形にすることを特徴とする。
【0031】
上記の構成を有するノズルホルダー駆動装置によれば、ノズルホルダーごとにこの駆動装置を用いて駆動させることにより、各ノズルホルダーの噴射ノズルから噴射される洗浄液による洗浄軌跡を円形または楕円形にすることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明に係る高圧洗浄液噴射式洗浄装置は上記の構成を有するから、下記のような優れた効果を奏する。すなわち、
多数の噴射ノズルが少なくとも2本のノズルホルダーとともにその長手方向に所定の速度で往復移動し、この往復移動時に多数の噴射ノズルから洗浄液が洗浄対象物に対して高圧下で噴射され、洗浄作業が行われる。ノズルホルダーを長手方向に往復移動させる場合に、図1に示すように洗浄軌跡がジグザグ(蛇腹状)になるから、洗浄対象物の幅方向(搬送方向に直交する方向)にわたって一定幅の洗浄領域が形成される。したがって、洗浄対象物をその洗浄領域を横切るように一定速度で搬送することにより、洗浄対象物の全面に対して高圧下で洗浄液を均一にかつ洗浄密度を高く保って噴射させられるので、高い洗浄力が得られ、洗浄ムラが生じにくい。
【0033】
また、ノズルホルダーをその長手方向(左右方向)に往復移動させて洗浄し、隣接配置した少なくとも2本のノズルホルダーを相互に逆向きに移動させる構造からなるから、高速化を図っても振動加速度が増大せず振動が抑制され、洗浄密度の高い優れた洗浄効果が得られる。そして、何よりも本発明の洗浄装置は、先願の、ホルダーを水平面内で旋回させて洗浄する構造の洗浄装置に比べて、ホルダーの剛性を低減でき、軸受などの回転支持構造を軽量化でき、振動が低減されるとともに、製造コストを大幅に低減できる。
【0034】
さらに、本発明の洗浄装置はクリーン室と呼ばれる密閉された洗浄室内に設置する場合に、図10に示すような隙間(ノズルホルダー75と洗浄室側壁77との間隔)を最小限に抑えることができ、シール機構を簡素化できる。
【0035】
また、ノズルホルダーの長手方向の往復直線運動に加えてノズルホルダーの長手方向に直交する方向への往復揺動(回転)運動を同時に行わせることにより、洗浄対象物に対し洗浄液を真円形や楕円形状の軌跡を描くように噴射させて洗浄することができるから、先願の洗浄装置に比べて遜色のない洗浄性能が得られ、しかも、構造が簡単で大幅なコストダウンが図れる。また、ノズルホルダーの往復直線運動のタイミングやストローク距離を調整することにより、真円形の洗浄軌跡だけでなく、任意の楕円形状の洗浄軌跡も描けるので、洗浄の均一性を確保する上で自由度が大きくなる。
【0036】
ノズルホルダーの長手方向における往復移動時のストロークや往復移動回数を変更したり、スタンドオフを変更したりすることにより、洗浄幅(軌跡)を容易に変更でき、条件設定の自由度が広い。とくに請求項2に記載のように3連のノズルホルダーとすることにより、一層緻密な洗浄軌跡の制御が可能になる。また、ノズルホルダーの応力や固有振動数を配慮する必要がなく、つまり撓みと座屈を考慮するだけで済み、ノズルホルダーの小型軽量化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の高圧洗浄液噴射式洗浄装置の第1実施例を示す平面図である。
【図2】図1に示す高圧洗浄液噴射式洗浄装置1の正面図である。
【図3】ノズルホルダー2の往復移動用クランク機構の他の実施例を示す概念図(原理を表す図)である。
【図4】ノズルホルダー2の実施例を示すもので、図4(a)は図4(b)のa−a断図、図4(b)は図4(a)のb−b断面図である。
【図5】図5(a)は洗浄液供給管9をホルダー2の一端に接続した状態の正面を示す説明図、図5(b)(c)は洗浄液供給管9の他の実施例を示すもので、図5(b)は高圧ホースからなる洗浄液供給管9’を接続した状態の正面を示す説明図、図5(c)は螺旋状に形成した金属製の洗浄液供給管9”を下から上向きに接続した状態の正面を示す説明図、図5(d)は螺旋状に形成した金属製の洗浄液供給管9”を側方から横向きに接続した状態の正面を示す説明図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る高圧洗浄液噴射式洗浄装置1’を示す図面で、図6(a)は平面図、図6(b)は図6(a)の正面方向より見た断面図である。
【図7】本発明の高圧洗浄液噴射洗浄装置における長手方向の往復直線運動と前後方向の往復回転とを組み合わせた第3実施例にかかる洗浄装置1”を示す図面で、(a)は平面図で、(b)は往復回転用駆動機構を概略的に表した正面図である。
【図8】図8および図9は上記第3実施例にかかる高圧洗浄液噴射式洗浄装置1”の、とくに駆動機構の別の実施例を詳細に示す図面で、図8(a)は図8(c)のA−A断面図、図8(b)は図8(a)のB−B断面図、図8(c)は図8(a)のC−C断面図である。
【図9】図9(d)は図8(a)の左側面図、図9(e)は図9(d)のE方向矢視図、図9(f)は図8(c)のF部を拡大して示す詳細図である。
【図10】多数の高圧水噴射ノズル72が配列されたノズルホルダー71を、両側の駆動軸74を偏心回転させて水平面内で旋回円運動しながら洗浄する構造の、先願にかかる洗浄装置70を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下に、本発明に係る高圧洗浄液噴射式洗浄装置の実施の形態について説明する。
【実施例1】
【0039】
図1に示すように、本実施例の高圧洗浄液噴射式洗浄装置1は 直動式(直進往復移動方式とも称される)の洗浄装置で、多数の高圧洗浄液噴射ノズル3を下面に配列した2本のノズルホルダー2・2を相互に平行に隣接させて備えている。各ノズルホルダー2は、上方より見て長方形状の角筒状体からなり、その下面の長手方向に等間隔に多数の高圧洗浄液噴射ノズル3を配列している。各ノズルホルダー2の長さは洗浄対象物xの幅よりやや長く、また洗浄対象物xの幅を十分にカバーできるように噴射ノズル3がノズルホルダー2の下面に装着されている。
【0040】
本実施例の高圧洗浄液噴射式洗浄装置1は、図1に示すように長方形の薄板状の洗浄対象物xを洗浄する装置である。洗浄対象物xは図2に示すように洗浄室10内において、ローラコンベヤ11により前後方向に沿って搬送される。洗浄室10の両側方に一対の支持台12が洗浄室10を挟むように設置されている。両側の支持台12上に支柱13・14が立設され、各支柱13・14の上端部間にノズルホルダー2・2が独立して直線状に往復移動可能に支持されている。詳しくは、各ノズルホルダー2・2の支柱13・14側端部は、それぞれリニアガイド15によりそれぞれ長手方向に摺動自在に支柱13または支柱14に対し支持されている。また、支柱14側では、共通のピストン・クランク機構6により隣接するノズルホルダー2・2が相互の逆方向に往復移動する。すなわち、回転軸18aを中心に回転可能で、各ノズルホルダー2・2の一端とそれぞれピン19b・20bを介して連接棒19・20の一端が接続され、連接棒19・20の他端とクランクピン19a・20aで接続された円板18が、駆動用モータ16により一方向に回転する。円板18はモータ16の駆動軸と回転軸18aで一体回転可能に接続されている。
【0041】
図3はノズルホルダー2の往復移動用クランク機構の他の実施例を示す概念図で、円板18上のクランクピン21・22が共通のモータ16により一方向に半径rで回転し、クランクピン21で一端が連結された連接棒23の他端にピン25aで接続されたスライダ25およびクランクピン22で一端が連結された連接棒24の他端にピン26aで接続されたスライダ26がそれぞれガイド27またはガイド28に沿って直線状に相互に逆向きに往復移動する。各ノズルホルダー2の質量は同一で、一方はスライダ25に他方はスライダ26にそれぞれ一体的に移動可能に連結されている。なお、本例では往復スライダ・クランク機構7が用いられ、円板18上におけるクランクピン21・22の半径rはそれぞれ10mmに設定されている。
【0042】
これらの構成により、隣接する2本のノズルホルダー2が洗浄対象物xの幅方向に±10mmの範囲内で水平状態に保たれ、相互に逆方向に直線状に往復移動する。図1・図2の実施例1では、ノズルホルダー2を往復回転させる機構としてピストン・クランク機構6を用いており、図3の実施例では往復スライダ・クランク機構7を用いており、いずれの実施例でもモータ16の一方向への回転により行われる。すなわち、ノズルホルダー2は、ピストン・クランク機構6または往復スライダ・クランク機構7により直線状に往復移動する。
【0043】
上記の各噴射ノズル3から噴射される洗浄液(洗浄水を含む)は、高圧下で1本の直線状になって噴射されるようになっている。各噴射ノズル3から噴射される洗浄液は1本の直線状で洗浄能力(洗浄力)が大きい。また、各噴射ノズル3から噴射される洗浄液は1本の直線状であるが、洗浄対象物xの幅方向に沿って2本のノズルホルダー2が相互に逆方向に往復移動するとともに、洗浄対象物xをローラコンベヤ11などの搬送機構によって所定の速度で搬送するので、両者の速度を調整することにより、洗浄対象物xの全面をほぼ隙間なく洗浄することができる。
【0044】
図4は多数の噴射ノズル3を下面に配列したノズルホルダー2の実施例を示す図面で、本例のノズルホルダー2は、図4(a)・図4(b)に示すように、断面四角形状の長尺なノズルホルダー2の上部に高圧洗浄液供給路32が長手方向に沿って設けられている。また、多数の噴射ノズル3を一定ピッチで装着したノズル部4がノズルホルダー2の下部に設けられ、ノズル部4には各噴射ノズル3の下方に臨む下端を開放した開口4cが形成されている。さらに、ノズルホルダー2の下部の一端部には、高圧洗浄液供給路32に連通する接続孔4dが設けられ、この接続孔4dに高圧洗浄液供給路32の一端が接続されている。なお、本例の場合、可撓性を有する金属製やゴム製で外周面に金属ブレード(ワイヤー)を巻装して強化した高圧ホースなどの洗浄液供給管9(図5(a)参照)を高圧洗浄液供給路32の一端部に接続する。
【0045】
金属製供給管9の他端は、高圧洗浄液貯留タンク(図示せず)に接続され、この高圧洗浄液貯留タンクから金属製供給管9を介してノズルホルダー2の高圧水供給路32の一端に接続され、その高圧水供給路32から各噴射ノズル3へ高圧下で洗浄液が供給され、各噴射ノズル3から一直線状に高圧の洗浄液が噴射される。なお、金属製の高圧洗浄液供給管9は可撓性を備えていれば螺旋状にしなくてもよく、たとえば直線状にして供給管9の全体が湾曲するようにしてもよい。また、図5(b)(c)は洗浄液供給管9の他の実施例を示すもので、図5(b)は高圧ホースからなる洗浄液供給管9’を示し、図5(c)は螺旋状に形成した金属製の洗浄液供給管9”を下から上向きに接続した状態を示し、図5(d)は螺旋状に形成した金属製の洗浄液供給管9”を側方から横向きに接続した状態を示している。
【0046】
上記実施例にかかる高圧洗浄液噴射式洗浄装置1によれば、図1に示すように洗浄対象物xの搬送方向(矢印)に対して直交し、2本のノズルホルダー2・2の各噴射ノズル3から1本の直線状に高圧下で洗浄液を噴射しながら洗浄対象物xの幅方向に揺動(往復回転)する。すなわち、本実施例にかかる高圧洗浄液噴射洗浄装置1によれば、ノズルホルダー2下面に等間隔に配列された各噴射ノズル3から噴射される洗浄液が洗浄対象物xの幅方向に往復移動し、矢印方向に搬送される洗浄対象物xは、多数の噴射ノズル3から噴射される高圧洗浄液の軌跡が重なり合って構成される洗浄領域を横切るように移動することになるから、洗浄対象物x上の全面がほぼ隙間なく洗浄液にて洗浄されることになる。
【0047】
以上に、本発明にかかる高圧洗浄液噴射式洗浄装置について実施例を示したが、この実施例に限定されるものではなく、たとえば、下記のように実施することができる。
【実施例2】
【0048】
図6は本発明の高圧洗浄液噴射式洗浄装置の実施例2を示す図面で、図6(a)は平面図、図6(b)は図6(a)の正面方向より見た断面図である。
【0049】
図6に示すように、本実施例にかかる洗浄装置1’は、ノズルホルダーが3本で、相互に隣接させて平行に配置し、各ノズルホルダー2はそれぞれ両端面をバネ板8でノズルホルダー2・2の長手方向に移動可能に支持し、各ノズルホルダー2をそれぞれ独立してその長手方向に往復移動できるように構成する。中央のノズルホルダー2cの質量を両側のノズルホルダー2bの質量の2倍にしている。本例では、3本のノズルホルダー2の一側方(図の左側)にサーボモータ30を設置し、図6(b)に示すように駆動軸30aの一端側に3つのクランク33・34・33が一連に連結され、一体回転可能に連結される。3連のクランク33・34・33を挟むようにその両端の駆動軸30aが軸受35により回転可能に支持される。中央のクランク34のクランクピン34aとその両側のクランク33のクランクピン33aとは180°位相をずらしている。また、両側のノズルホルダー2bにピン36aで一端が連結された連接棒36の他端がクランク33にクランクピン33aで連結されるとともに、中央のノズルホルダー2cにピン37aで一端が連結された連接棒37の他端がクランク34にクランクピン34aで連結されている。なお、各クランク33・34の他端側(クランクピン33a・34aの反対側)には、カウンタウエイト(図示せず)が一体に形成されている。また、3つのクランク33・34・33におけるクランクピン33a・34a・33aまでの回転中心からの偏心量rは全て同一にする。
【0050】
この構成により、サーボモータ30により各クランク33・34・33が一方向(たとえば時計方向)に回転することにより、各ノズルホルダー2は基準位置を中心にその長手方向に±10mm、合計20mmの範囲内で直線状に往復移動する。この状態で、中央に位置するノズルホルダー2cとその両側のノズルホルダー2bとは、移動方向が相互に逆向きになる。このように、共通のモータ30により中央のノズルホルダー2cと両側方のノズルホルダー2bとを逆向きに移動させるとともに、中央のノズルホルダー2cの質量を両側方の前記ノズルホルダー2bの質量の2倍にし、かつクランク33・34による偏心量rを各ノズルホルダー2について同一にしているので、洗浄作業時の3本のノズルホルダー2c+2×2bに作用する力の和がF=0となり、同モーメントの和もF×r=0となる。したがって、サーボモータ30の回転速度を、たとえば800〜1000rpmあるいはそれ以上の高回転速度に上げても、ノズルホルダー2の駆動系やノズルホルダー2を初め洗浄装置1’全体には振動等が生じず、安定している。
【0051】
本実施例では、図6に示すように洗浄室38を設けて同洗浄室38内で洗浄対象物xを洗浄するようにしている。3本のノズルホルダー2b・2cは洗浄室38の幅よりも長くし、洗浄室38内を横切ってノズルホルダー2b・2cの両側部分を洗浄室38の両側方に張り出させ、各ノズルホルダー2を洗浄室38の幅方向に貫通させた状態で長手方向に往復移動できるようにしている。洗浄室38内の下部にローラコンベヤ40を配備し、各ノズルホルダー2の下方において、その長手方向に直交する方向に洗浄対象物xを搬送するようにしている。洗浄室38の両側壁と各ノズルホルダー2との間にわずかに隙間を設け、この隙間をシール機構39で密封するとともに、ノズルホルダー2の往復移動時に洗浄室38内で発生する空気流をシール機構39の上端部に排気口39aを設けて外部(大気中)へ排出できるようにしている。また、各ノズルホルダー2の一端部上面に可撓性を有する高圧洗浄液供給管9の一端を接続し、洗浄液貯留タンク(図示せず)からノズルホルダー2の下面の各噴射ノズル3に供給できるようにしている。
【実施例3】
【0052】
つぎに、図7は本発明の高圧洗浄液噴射式洗浄装置における実施例3の原理図を示すものである。本実施例にかかる洗浄装置1”は、図1の直進往復移動式洗浄装置1に2本の各ノズルホルダー2の長手方向に直交する方向への、いいかえれば長手方向の軸回りにおける往復回転を付加することにより、各噴射ノズル3からの洗浄液を円形や楕円形を描くように洗浄対象物xに対し噴射させることができる。このため、各ノズルホルダー2の両側部を両側方の支柱13・14に対し軸受装置15’を介して、各ノズルホルダー2の長手方向への移動が可能なように支持するとともに、各ノズルホルダー2を長手方向軸回りに回転可能に支持している。
【0053】
図7(a)に示すように、各ノズルホルダー2に対し長手方向に一定のピッチで往復直線運動を付与する駆動機構には、往復スライダ・クランク機構41が用いられている。この機構41によりサーボモータ42の一方向への回転力を後述の円筒体状伝達部46・46をガイドとして各ノズルホルダー2の長手方向への往復駆動力に変換し、各ノズルホルダー2に対し相互に逆向きに往復移動可能な直動力(直線方向の往復駆動力)を付与する。モータ42で回転する円板43の外周部において、回転軸43aを中心に対向する位置に連接棒44・45の一端がクランクピン44a・45aで接続され、連接棒44・45の他端が各ノズルホルダー2の一端に一体に連結されたスプライン軸2dにピン44b・45bで接続されている。
【0054】
各伝達部46の内周面にはノズルホルダー2の一端のスプライン軸2dに噛合するスプライン歯46cが形成され、各スプライン軸2dの周囲に配置され、スプライン機構を介して軸方向に摺動可能にかつ軸回りの回転力を伝達可能に接続されている。一方、図7(b)に示すように、別のサーボモータ48の一方向への回転力を、ピストン・クランク機構47により一対の円筒体状伝達部46・46の一方に伝達する。各伝達部46にはレバー46aが一体回転可能に連結され、2つのレバー46aの先端部間が連接棒46bで接続されている。モータ48で回転する円板49の外周部において、連接棒47aの一端がクランクピン47bで接続され、他端が一方のレバー46aの先端部に接続されている。各ノズルホルダー2・2のスプライン軸2dが伝達部46内に挿入され、各スプライン軸2dに対しスプライン機構を介して軸方向の移動を許容するように接続されている。モータ48で円板49が一方向に回転することにより、レバー46aを介して一対の伝達部46が同時に所定角度θの範囲内で左右に往復回転する。このようして、ノズルホルダー2の長手方向の軸回りに往復回転力が付与される。これにより、2本のノズルホルダー2は、駆動機構41によりその長手方向に相互に逆方向に往復移動すると同時に、駆動機構47により長手方向に直交する方向において同一方向に往復回転する。
【0055】
以上の構成により、本実施例にかかる洗浄装置1”では、多数の噴射ノズル3から高圧下で洗浄液を噴射しながら、サーボモータ42・48の回転により各ノズルホルダー2を相互に逆向きに長手方向に往復移動させると同時に、各ノズルホルダー2を長手方向軸回り(前後方向)に往復回転させることができる。また、ノズルホルダー2の長手方向への往復移動と長手方向軸回り(前後方向)の往復回転とを同期させることによって、洗浄液を真円形状ないし楕円形状の円を描くように噴射させられるので、洗浄対象物xに対し隙間なく均一に洗浄液を噴射でき、洗浄密度の高い優れた洗浄効果が得られる。しかも、ノズルホルダー2(噴射ノズル3)の前後方向における方向変換位置とノズルホルダー2の長手方向における方向変換位置とに時間的なずれがあるので、洗浄液が洗浄対象物x上の特定箇所に集中して噴射されることがない。さらに、ノズルホルダー2の長手方向への往復移動ストローク距離とノズルホルダー2の前後方向への揺動ストローク距離とを一致させることもでき、この場合には、洗浄対象物xに対し洗浄液を真円形状の円を描くように噴射させることができる。また、両方のストローク距離を調整することで、真円形状だけでなく任意の楕円形状を描くように洗浄液を噴射させることができ、洗浄の均一性を確保する上で自由度が拡がる。その他の構成については、上記実施例1にかかる高圧洗浄液噴射式洗浄装置1と共通するので、共通の部材については同一の符号を用いて図面に示し、説明を省略する。なお、図示は省略するが、上記第2実施例における3連のノズルホルダー2についても、上記の図7に示す駆動機構41・47を適用することにより、各ノズルホルダー2を相互に逆向きに長手方向に往復移動させると同時に、各ノズルホルダー2を長手方向軸回り(前後方向)に往復回転させることができる。
【0056】
さらにまた、本例の高圧洗浄液噴射式洗浄装置1”は上記した先願の洗浄装置に比べて構造が簡単で、ほぼ同様の洗浄作用を得られる。また、ノズルホルダー2の前後方向の加速度バランスは、先願の洗浄装置よりも取りやすいので、取り扱いが容易になる。
【0057】
図8および図9は上記の高圧洗浄液噴射式洗浄装置1”の、とくに駆動機構の他の実施例を詳細に示す図面である。
【0058】
これらの図面に示すように、本例の駆動機構50では共通のモータ61によりギヤ機構62・63を介してノズルホルダー2の長手方向への直動往復運動とノズルホルダー2の長手方向軸回りの往復回転とを、それぞれピストンクランク機構51・52を介して行うようにしている。図8に示すようにノズルホルダー2(図1参照)の一端部には、スプライン機構53を介してノズルホルダー2の長手方向への往復直線運動を可能にする一方、スプライン機構53の一部周囲を覆う円筒体状の外筒部53aに隣接(図8(c)では外筒部53aの右側方に隣接)する回転連結部54において、図9(f)に示すように軸受54aおよび細径支持棒2eを介してノズルホルダー2を回転可能に連結している。細径支持棒2eは、図1に示すノズルホルダー2の一端に連結した回転軸2bに一体回転可能に固定されている。また、回転連結部54が一端を開口したコの字状カバー体55内に遊嵌され、この状態で支軸55aおよび軸受55bを介して支軸55aを中心に折曲可能に連結されている。また、図9(f)に示すように、コの字状カバー体55の他端側中心部とピストンクランク機構52のピストン部52aとが連結杆56で連結されている。つまり、外筒部53aはスプライン機構53によりノズルホルダー2の長手方向への往復移動を許容しつつ、ノズルホルダー2の軸回りに所定角度θずつ往復回転する(図9(d)ではθ=30°)。なお、外筒部53aは軸受53bを介して装置本体のケーシングに回転可能に支持されている。
【0059】
まず、モーター61の回転がギヤ機構62(ギヤ62a・62b)を介して減速され、第1回転駆動軸67に伝達されて回転する。駆動回転軸67の先端にクランク68の一端が軸受68aを介して軸回りに回転可能に接続され、クランク68の他端のピストン部68bはレバー69の一端に軸着にて接続されている。また、レバー69の他端は外筒部53aに一体回転可能に接続され、長手方向の軸回りに往復回転する。さらに、第1回転駆動軸67に直交して第2駆動回転軸60が配置され、第1駆動回転軸67の回転がベベルギヤ63a・63bを介して第2駆動回転軸60に伝達され、第2駆動回転軸60が同時に回転する。また、第2駆動回転軸60と平行に第3駆動回転軸64が配置され、第2駆動回転軸60の回転がギヤ60a・64aを介して第3駆動回転軸64に伝達される。第3駆動回転軸64の一方向への回転より先端の、対向的に配置されたクランク65が回転し、各クランク65先端のピストン部65aおよび連結杆56および回転連結部54を介してノズルホルダー2がその長手方向へ直動往復移動する。なお、連結杆56のピストン部65a側の各クランク65による往復回転は、回転連結部54における支軸55aを中心に連結杆56の他端側が折れ曲がり運動することにより吸収される。また、第1駆動回転軸67は連結杆56と平行に配置される。
【0060】
このように構成される本実施例にかかる高圧洗浄液噴射式洗浄装置1”について、1本のノズルホルダー2について動作を説明する。
【0061】
図8・図9に示すように、モーター61の回転を開始することにより、ギヤ機構62を介して第1駆動回転軸67が回転し、同時にベベルギヤ機構63を介して第2駆動回転軸60が回転し、さらにギヤ60a・64aを介して第3駆動回転軸64に伝達され、第3駆動回転軸64が回転する。駆動回転軸64の回転でクランク65が回転し、クランク65先端のピストン部65aおよび連結杆56を介して回転連結部54で支軸55aを中心に連結杆56の他端(ピストン部65a)側が図8(c)のように連結杆56の軸線に対し直交する方向に往復回転しながら、ノズルホルダー2が長手方向に沿って往復直線移動する。また、第1駆動回転軸67が同時に回転することにより、クランク68が回転してその先端のピストン部68bが所定角度ずつ往復回転し、レバー69および外筒部53aを介してノズルホルダー2を長手方向軸回りに往復回転させる。なお、回転連結部54によるノズルホルダー2の長手方向への直線往復移動はスプライン機構53で許容され、外筒部53aの往復回転には支障を来さない。一方、回転連結部54の往復回転は軸受54a(図9(f))で許容されるので、ノズルホルダー2の直線往復移動には支障を来さない。したがって、ノズルホルダー2は共通(1台)のモーター61の回転により長手方向への往復直線移動と軸回りの往復回転とを同時に行うことができる。なお、上記の駆動機構50を各ノズルホルダー2ごとに用いて電気的に同期させることにより、複数本のノズルホルダー2について各ノズルホルダー2を相互に逆向きに長手方向に往復移動させると同時に、各ノズルホルダー2を長手方向軸回りに往復回転させることができる。
【他の実施例】
【0062】
・請求項7に記載のように
・上記実施例1・2では、ノズルホルダー2の下面に噴射ノズル3を一定間隔で直線状に配列したが、千鳥状に等間隔に2列〜3列を配列することができる。
【0063】
・上記実施例1・2では、ノズルホルダー2が2本と3本の場合について説明したが、4本あるいは5本以上に増やすこともできる。
【0064】
・ノズルホルダー2を長手方向に往復移動させる駆動機構として、オフセットクランク機構やクランクにクランクの幅rの1/2の小歯車を用いたリニアクランク機構を使用することができる。
【0065】
・上記実施例3ではノズルホルダー2が2本の場合を例示したが、たとえば3本であっても同様に実施できることは言うまでもない。
【0066】
・上記各実施例では、ノズルホルダー2を洗浄対象物xの上面側にのみ配置したが、洗浄対象物xの上下両面に配置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、主に、FPD(フラットパネルディスプレイ)や大型板状ガラスや半導体ウエハーなどの平坦な板状物を高圧洗浄液を噴射して洗浄する高圧洗浄液噴射洗浄装置として利用される。
【符号の説明】
【0068】
1・1’・1”高圧洗浄液噴射式洗浄装置
2・2b・2cノズルホルダー
2a回転軸
2dスプライン軸
3 噴射ノズル
4 ノズル部
4c開口
4d接続孔
6 ピストン・クランク機構
7 往復スライダ・クランク機構
8 バネ板
9・9’・9”高圧洗浄液供給管
10 洗浄室
11 ローラコンベヤ
12 支持台
13・14 支柱
15 リニアガイド
15’軸受
16 駆動用モータ
17 無端ベルト
18 円板
18a回転軸
19・20 連接棒
19a・20aクランクピン
19b・20bピン
21・22 クランクピン
23・24 連接棒
25・26 スライダ
25a・26aピン
27・28 ガイド
30 サーボモータ
30aモータ30の駆動軸
32 高圧洗浄液供給路
33・34 クランク
33a・34a クランクピン
35 軸受
38 洗浄室
39 シール機構
39a排気口
40 ローラコンベヤ
41 往復スライダ・クランク機構
42・48 サーボモータ
43・49 円板
44・45 連接棒
46 円筒体状伝達部
47 ピストン・クランク機構
46cスプライン機構(スプライン歯)
x 洗浄対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧洗浄液を洗浄対象物に対し一本の直線状に噴射させて洗浄する多数の噴射ノズルを備えた高圧洗浄液噴射式洗浄装置であって、
多数の前記高圧洗浄液噴射ノズルをノズルホルダーの長手方向に沿って一定の間隔をあけて配列するとともに、少なくとも2本の前記ノズルホルダーを相互に平行に隣接して配置しそれぞれ長手方向に直進往復移動可能に支持し、
前記洗浄対象物を前記ノズルホルダーの長手方向に直交する方向に搬送しながら、隣接する前記ノズルホルダーを相互に逆向きに直進往復移動させると同時に、各噴射ノズルから高圧洗浄液を前記洗浄対象物に対し噴射させて洗浄することを特徴とする高圧洗浄液噴射式洗浄装置。
【請求項2】
前記ノズルホルダーが3本で、相互に平行に隣接させて配置し、ピストン・クランク機構を介して共通のモータにより中央のノズルホルダーと両側方のノズルホルダーとを逆向きに直進往復移動させるとともに、中央の前記ノズルホルダーの質量を両側方の前記ノズルホルダーの質量の2倍に設定し、かつ前記ピストン・クランク機構による偏心量を前記各ノズルホルダーについて同一にしたことを特徴とする請求項1記載の高圧洗浄液噴射式洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズルホルダーの下面に前記各噴射ノズルを長手方向に沿って等間隔に配列するとともに、前記ノズルホルダーの長手方向に沿って高圧洗浄液供給路を前記各噴射ノズルに連通させて設け、
前記高圧洗浄液供給路の端部に可撓性の高圧洗浄液供給管の一端を接続したことを特徴とする請求項1または2に記載の高圧洗浄液噴射式洗浄装置。
【請求項4】
前記各ノズルホルダーをその長手方向に直進往復移動可能に支持するとともに、その長手方向の軸回りに回転可能に支持し、
前記各ノズルホルダーをその長手方向に所定距離内で往復移動させながら、同時に長手方向に直交する方向に所定回転角度内で往復回転させるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高圧洗浄液噴射式洗浄装置。
【請求項5】
共通のモーターにより前記ノズルホルダーの回転軸に対し長手方向の往復移動を許容しかつ前後方向に往復回転可能な回転力を付与するとともに、前記ノズルホルダーの回転軸に対し前後方向の回転を許容しかつ長手方向に往復移動可能な直動力を付与することを特徴とする請求項4に記載の高圧洗浄液噴射式洗浄装置。
【請求項6】
前記ノズルホルダーの前後方向への往復回転ストローク距離と前記ノズルホルダーの長手方向への往復移動ストローク距離とを一致させたことを特徴とする請求項4または5に記載の高圧洗浄液噴射式洗浄装置。
【請求項7】
2本の前記ノズルホルダーを対として複数組を平行に、前記洗浄対象物の搬送方向に沿って配列したことを特徴とする請求項1に記載の高圧洗浄液噴射式洗浄装置。
【請求項8】
2本のノズルホルダーの組を1の列とし、上方より見て2つの前記列の境に対して鏡面対象となる構成および動作をするように、前記各列のノズルホルダーの組を相互に隣接させて配置したことを特徴とする請求項1に記載の高圧洗浄液噴射式洗浄装置。
【請求項9】
前記複数本のノズルホルダーのうちの一部を、高圧水洗浄機構を具備しないダミーホルダーとしたことを特徴とする請求項1,2,7および8のいずれかに記載の高圧洗浄液噴射式洗浄装置。
【請求項10】
高圧洗浄液を洗浄対象物に対し一本の直線状に噴射させて洗浄する多数の噴射ノズルを備えた高圧洗浄液噴射式洗浄装置であって、多数の前記高圧洗浄液噴射ノズルをノズルホルダーの長手方向に沿って一定の間隔をあけて配列するとともに、少なくとも2本の前記ノズルホルダーを相互に平行に隣接して配置しそれぞれ長手方向に直進往復移動可能に支持し、前記洗浄対象物を前記ノズルホルダーの長手方向に直交する方向に搬送しながら、隣接する前記ノズルホルダーを相互に逆向きに直進往復移動させると同時に、各噴射ノズルから高圧洗浄液を前記洗浄対象物に対し噴射させて洗浄する高圧洗浄液噴射式洗浄装置における前記各ノズルホルダーの駆動装置で、
前記ノズルホルダーをその長手方向の軸回りに所定回転角度内で往復回転させるとともに、前記ノズルホルダーの直進往復移動の周期と長手方向軸回りの往復回転の周期とを同期させ、前記ノズルホルダーの前記噴射ノズルから噴射される洗浄液による洗浄軌跡が円形または楕円形にすることを特徴とするノズルホルダー駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−206143(P2010−206143A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−53244(P2009−53244)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(308007505)カワサキプラントシステムズ株式会社 (51)
【Fターム(参考)】