説明

高圧燃料供給ポンプ

【課題】本発明の目的は、燃料接合ジョイントとの位置精度を向上し、かつ、低コストで溶接性の高いポンプを提供することにある。
【解決手段】本発明になる高圧燃料ポンプでは、ポンプハウジング側面に平面部を設け、平面部に直交する燃料通路を形成し、燃料通路開口部に高さ1〜2mmの円筒部を有するポンプハウジングに、燃料通路開口部に設置した円筒部の外径と同径の円筒部を有する接合部材を溶接接合することにより、上記目標を達成する。ポンプハウジングを深く切削することなく、円筒部を有する接合部材を溶接することができるため、ポンプハウジングの内使用領域を充分得られやすくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の高圧燃料供給ポンプに関し、ことにポンプハウジングに付属部品を取付けるための、接合部の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2005−279778号公報に記載されている高圧燃料ポンプでは、例えば燃料配管接続用ジョイントをポンプハウジング側面に溶接固定するために、ポンプハウジングから突出する段付き部を設け、ジョイント溶接接合面をポンプハウジングの最外形よりさらに飛び出した位置に設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−279778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては溶接接合部がポンプハウジングの側面より突出した段付き部にあるため、突出した段付き部の寸法だけジョイントを含めた高圧燃料供給ポンプの外郭が大きくなる。
【0005】
本発明の目的は、小型で低コストの高圧燃料供給ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目標を達成するために本発明になる高圧燃料供給ポンプでは、ポンプハウジングの側面に加工された平面部を設け、この平面部にポンプハウジング内部の流体室に連通する通路が開口しており、この通路の開口部の周囲に部品接合用の環状面が設けられており、この部品接合用の環状面の周囲に窪み若しくは溝によって形成される凹部を設けた。
【0007】
好適には、この窪みあるいは溝の深さは1〜2mmとすると良い。
【0008】
結果的に、ポンプハウジングの側面に環状の平面部を加工形成し、この平面部の中心に燃料通路が開口しており、先端に接合用の環状面が形成された高さ1〜2mmの円筒部を構成している。
【0009】
なお、好適には、部品の先端に設けられた接合面にはポンプハウジングに設けた円筒部の外径と同径の環状の接合面を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成される本発明では、ポンプハウジングの外郭から突出する接合用突起を設ける必要がないため、ポンプハウジングの無駄肉を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明が実施された第一実施例による高圧燃料供給ポンプを用いた燃料供給システムの一例である。
【図2】本発明が実施された第一実施例による高圧燃料供給ポンプの縦断面図である。
【図3】本発明が実施された第一実施例による高圧燃料供給ポンプの別の角度の縦断面図であり、図2とは周方向に90度ずれた位置の縦断面を表す。
【図4】本発明が実施された第一実施例による高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁機構の拡大図であり、電磁コイルに無通電の状態を示す。
【図5】本発明が実施された第一実施例による高圧燃料供給ポンプの電磁吸入弁機構の拡大図であり、電磁コイルに通電された状態を示す。
【図6】本発明が実施された第一実施例による高圧燃料供給ポンプの横断面図である。
【図7】本発明が実施された第二実施例による高圧燃料供給ポンプの横断面図のである。
【図8】本発明が実施された第二実施例による高圧燃料供給ポンプの鳥瞰図である。
【図9】本発明が実施された第三実施例による高圧燃料供給ポンプの横断面図のである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づきさらに詳しく実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
図1から図6により本発明の実施例について説明する。
【0014】
図1中で、破線で囲まれた部分が高圧ポンプのポンプハウジング1を示し、この破線の中に示されている機構,部品は高圧ポンプのポンプハウジング1に一体に組み込まれていることを示す。
【0015】
燃料タンク20の燃料は、エンジンコントロールユニット27(以下ECUと称す)からの信号に基づきフィードポンプ21によって汲み上げられ、適切なフィード圧力に加圧されて吸入配管28を通して高圧燃料供給ポンプの吸入口10aに送られる。
【0016】
吸入口10aを通過した燃料は、吸入ジョイント101内に固定されたフィルタ102を通過し、さらに吸入流路10b,金属ダイアフラムダンパ9,10cを介して容量可変機構を構成する電磁駆動型弁機構30の吸入ポート30aに至る。
【0017】
吸入ジョイント101内の吸入フィルタ102は、燃料タンク20から吸入口10aまでの間に存在する異物を燃料の流れによって高圧燃料供給ポンプ内に吸収することを防ぐ役目がある。
【0018】
図4は電磁吸入弁機構30の拡大図で、電磁コイル53に通電されていない無通電の状態である。
【0019】
図5は電磁吸入弁機構30の拡大図で、電磁コイル53に通電されている通電の状態である。
【0020】
ポンプハウジング1には中心に加圧室11としての凸部1Aが形成されており、この加圧室11の開口するように、電磁吸入弁機構30装着用の孔30Aが形成されている。
【0021】
可動プランジャを構成するプランジャロッド31は、吸入弁部31a,ロッド部31b,アンカー固定部31cの3部分からなり、アンカー固定部31cにはアンカー35が溶接部37bによって、溶接固定されている。
【0022】
ばね34は図のようにアンカー内周35a、および第一コア部内周33aに嵌め込まれ、アンカー35、および第一コア部33を引き離す方向にばね34によるばね力が発生するようになっている。
【0023】
電磁コイル53に通電されていない無通電の状態で、かつ吸入流路10c(吸入ポート30a)と加圧室11との間の流体差圧が無い時は、プランジャロッド31はばね34により、図4のように図中の右方向に移動した状態となる。この状態では、吸入弁部31aと吸入弁シート部32aが接触した閉弁状態となり、吸入口38は塞がれる。
【0024】
後述するカムの回転により、ピストンプランジャ2が図2の下方に変位する吸入工程状態にある時は、加圧室11の容積は増加し加圧室11内の燃料圧力が低下する。この工程で加圧室11内の燃料圧力が吸入流路10c(吸入ポート30a)の圧力よりも低くなると、吸入弁部31aには燃料の流体差圧による開弁力(吸入弁部31aを図1の左方に変位させる力)が発生する。
【0025】
この流体差圧による開弁力により、吸入弁部31aは、ばね34の付勢力に打ち勝って開弁し、吸入口38を開くように設定されている。
【0026】
この状態にて、ECU27からの制御信号が電磁吸入弁機構30に印加されると、電磁吸入弁機構30の電磁コイル53には電流が流れ、第一コア部33とアンカー35の間には、互いに引き合う磁気付勢力が発生する。その結果、プランジャロッド31には図中の左方に磁気付勢力が印加されることになる。
【0027】
その結果、吸入弁部31aが吸入口38を開いた状態が維持され、燃料は吸入ポート30aから弁シート部材32の吸入通路部32b,吸入口38を通過し加圧室11内へ流れ込む。
【0028】
電磁吸入弁機構30に入力電圧の印加状態を維持したままピストンプランジャ2が吸入工程を終了し、ピストンプランジャ2が図2の上方に変位する圧縮工程に移ると、磁気付勢力は維持されたままであるので、依然として吸入弁部31aは開弁したままである。
【0029】
加圧室11の容積は、ピストンプランジャ2の圧縮運動に伴い減少するが、この状態では、一度加圧室11に吸入された燃料が、再び開弁状態の吸入口38を通して吸入流路10c(吸入ポート30a)へと戻されるので、加圧室の圧力が上昇することは無い。この工程を戻し工程と称す。
【0030】
この状態で、ECU27からの制御信号を解除して、電磁コイル53への通電を断つと、プランジャロッド31に働いている磁気付勢力は一定の時間後(磁気的,機械的遅れ時間後)に消去される。吸入弁部31aにはばね34による付勢力が働いているので、プランジャロッド31に作用する電磁力が消滅すると吸入弁部31aはばね34による付勢力で吸入口38を閉じる。吸入口38が閉じるとこのときから加圧室11の燃料圧力はピストンプランジャ2の上昇運動と共に上昇する。そして、燃料吐出口12の圧力以上になると、吐出弁ユニット8を介して加圧室11に残っている燃料の高圧吐出が行われ、コモンレール23へと供給される。この工程を吐出工程と称す。すなわち、ピストンプランジャ2の圧縮工程(下始点から上始点までの間の上昇工程)は、戻し工程と吐出工程からなる。
【0031】
そして、電磁吸入弁機構30の電磁コイル53への通電を解除するタイミングを制御することで、吐出される高圧燃料の量を制御することができる。
【0032】
電磁コイル53への通電を解除するタイミングを早くすれば、圧縮工程中、戻し工程の割合が小さく吐出工程の割合が大きい。
【0033】
すなわち、吸入流路10c(吸入ポート30a)に戻される燃料が少なく、高圧吐出される燃料は多くなる。
【0034】
一方、入力電圧を解除するタイミングを遅くすれば、圧縮工程中の、戻し工程の割合が大きく、吐出工程の割合が小さい。すなわち、吸入流路10cに戻される燃料が多く、高圧吐出される燃料は少なくなる。電磁コイル53への通電を解除するタイミングは、ECUからの指令によって制御される。
【0035】
以上のように構成することで、電磁コイル53への通電を解除するタイミングを制御することで、高圧吐出される燃料の量を内燃機関が必要とする量に制御することができる。
【0036】
かくして、燃料吸入口10aに導かれた燃料はポンプハウジング1の加圧室11にてピストンプランジャ2の往復動によって必要な量が高圧に加圧され、燃料吐出口12からコモンレール23に圧送される。
【0037】
コモンレール23には、インジェクタ24,圧力センサ26が装着されている。インジェクタ24は、内燃機関の気筒数に合わせて装着されており、エンジンコントロールユニット(ECU)27の制御信号にしたがって開閉弁して、燃料をシリンダ内に噴射する。
【0038】
ポンプハウジング1には中心に加圧室11としての凸部1Aが形成されており、この加圧室11の周壁を貫通して、吐出弁ユニット8装着用の凹所11Aが形成されている。
【0039】
加圧室11の出口には吐出弁ユニット8が設けられている。吐出弁ユニット8はシート部材(弁シート)8a,吐出弁8b,吐出弁ばね8c,吐出弁ストッパとしての保持部材8dからなり、ポンプハウジング1の外で、溶接部8eを溶接することにより吐出弁ユニット8を組立てる。その後、図中左側から組立てた吐出弁ユニット8をポンプハウジング1に圧入固定する。圧入部は加圧室11と吐出口12を遮断する機能も備える。
【0040】
加圧室11と吐出口12との間に燃料の差圧が無い状態では、吐出弁8bは吐出弁ばね8cによる付勢力でシート部材8aに圧着され閉弁状態となっている。加圧室11内の燃料圧力が、吐出口12の燃料圧力よりも所定の値だけ大きくなった時に初めて、吐出弁8bは吐出弁ばね8cに抗して開弁し、加圧室11内の燃料は吐出口12を経てコモンレール23へと吐出される。
【0041】
シリンダ6は外周がシリンダホルダ7の円筒嵌合部7aで保持されている。シリンダホルダ7の外周に螺刻されたねじ7gを、ポンプハウジング1に螺刻されたねじ1bにねじ込むことによって、シリンダ6をポンプハウジング1に固定する。
【0042】
また、プランジャシール13は、シリンダホルダ7の内側円筒面部7cに圧入固定されたシールホルダ15とシリンダホルダ7によって、シリンダホルダ7の下端に保持されている。この時、プランジャシール13はシリンダホルダ7の内側円筒面部7cによって、軸を円筒嵌合部7aの軸と同軸に保持されている。ピストンプランジャ2とプランジャシール13は、シリンダ6の図中下端部において摺動可能に接触する状態で設置されている。
【0043】
これによりシール室10f中の燃料がタペット3側、つまりエンジンの内部に流入するのを防止する。同時にエンジンルーム内の摺動部を潤滑する潤滑油(エンジンオイルも含む)がポンプハウジング1の内部に流入するのを防止する。
【0044】
また、シリンダホルダ7には外側円筒面部7bが設けられ、そこには、O−リング61を嵌め込むための溝7dを設ける。O−リング61はエンジン側の嵌合穴70の内壁とシリンダホルダ7の溝7dによりエンジンのカム側と外部を遮断し、エンジンオイルが外部に漏れるのを防止する。
【0045】
シリンダ6はピストンプランジャ2の往復運動の方向に交差する圧着部6aを有し、圧着部6aはポンプハウジング1の圧着面1aと圧着している。圧着は、ねじの締付けによる推力によって行われる。加圧室11はこの圧着によって成形され、加圧室11内の燃料が加圧され高圧になっても、加圧室11から外へ圧着部を通って燃料が漏れることがないよう、ねじの締付けトルクは管理しなくてはならない。
【0046】
また、ピストンプランジャ2とシリンダ6の摺動長を適正に保つために加圧室11内にシリンダ6と深く挿入する構造とした。シリンダ6の圧着部6aより加圧室11側では、シリンダ6の外周とポンプハウジング1の内周の間にクリアランス1Bを設ける。シリンダ6は外周がシリンダホルダ7の円筒嵌合部7aで保持されているので、クリアランス1Bを設けることにより、シリンダ6の外周とポンプハウジング1の内周が接触することが無いようにすることができる。
【0047】
以上のようにして、シリンダ6は加圧室11内で進退運動するピストンプランジャ2をその進退運動方向に沿って摺動可能に保持される。
【0048】
ピストンプランジャ2の下端には、エンジンのカムシャフトに取付けられたカム5の回転運動を上下運動に変換し、ピストンプランジャ2に伝達するタペット3が設けられている。ピストンプランジャ2はリテーナ15を介してばね4にてタペット3に圧着されている。リテーナ15は圧入によってピストンプランジャ2に固定されている。これによりカム5の回転運動に伴い、ピストンプランジャ2を上下に進退(往復)運動させることができる。
【0049】
ここで、吸入流路10cは吸入流路10d、およびシリンダホルダ7に設けられた吸入流路10eを介して、シール室10fに接続しており、シール室10fは常に吸入燃料の圧力に接続している。加圧室11内の燃料が高圧に加圧されたときには、シリンダ6とピストンプランジャ2の摺動クリアランスを通して微小の高圧燃料がシール室10f内に流入するが、流入した高圧燃料は吸入圧力に開放されるのでプランジャシール13が高圧により破損することはない。
【0050】
また、ピストンプランジャ2はシリンダ6と摺動する大径部2aと、プランジャシール13と摺動する小径部2bからなる。大径部2aの直径は小径部2bの直径より大きく設定されており、互いに同軸に設定されている。シリンダ6との摺動部は大径部2aであり、プランジャシール13との摺動部は小径部2bである。これにより、大径部2aと小径部2bの接合部はシール室10f内に存在するので、ピストンプランジャ2の摺動運動に伴って、シール室10fの容積が変化し、それに伴って燃料は、吸入流路10d,吸入流路10sを通ってシール室10fと吸入流路10cの間を運動する。
【0051】
金属ダイアフラムダンパ9は2枚の金属ダイアフラムで構成され、両ダイアフラム間の空間にガスが封入された状態で外周を溶接部にて全周溶接にて互いに固定している。そして金属ダイアフラムダンパ9の両面に低圧圧力脈動が負荷されると、金属ダイアフラムダンパ9は容積を変化し、これにより低圧圧力脈動を低減する機構となっている。
【0052】
高圧燃料供給ポンプのエンジンへの固定は、フランジ41,止めねじ42、およびブッシュ43により行われる。フランジ41は溶接部41aにてポンプハウジング1に全周を溶接結合されている。本実施例では、レーザ溶接を用いている。
【0053】
図6は図2に示す高圧燃料ポンプの横断面図である。
【0054】
ポンプハウジング1の側面に加工された平面部90f,90gを設け、この平面部90f,90gにポンプハウジング1内部の流体室92,93に連通する通路が開口しており、この通路の開口部の周囲に部品接合用の環状面90b,90eが設けられており、この部品接合用の環状面90b,90eの周囲に窪み90h,90h2若しくは溝90cによって形成される凹部が設けられている。
【0055】
具体的には通路の開口部の周囲に、窪み90h若しくは溝90cの底面から高さu2,u3の円筒部(凸部)90d1,90d2が形成されている。
【0056】
円筒部(凸部)90d1の先端にはさらに直径の小さい円筒部90aが形成されている。円筒部(凸部)90d1,90d2にはそれぞれ部品としてのジョイント91,電磁駆動機構の第一コア部33平が溶接接合される平面部90b,90eが設けられている。図1の実施例では円筒部(凸部)90d1の周囲には環状の凹部90h,90h2が2段に加工形成されている。
【0057】
円筒部(凸部)90d1の中心にはポンプハウジング1の内部に形成された流体室92と連通する流体通路が形成されている。
【0058】
高圧配管用のジョイント91のポンプハウジング1側端部には円筒部90aの周囲に嵌合され、円筒部(凸部)90d1の外径と同径の外径を持つ円筒部91bが形成されている。ポンプハウジング1の円筒部(凸部)90d1の部品接合用の環状面90bにジョイント91の端面を突合せて、その接合部の外周全周をレーザ照射により溶接接合する。
【0059】
かくして、流体室92がジョイント91によって覆われ、接合部は溶接部によってシールされる。
【0060】
円筒部(凸部)90d2の中心にはポンプハウジング1の内部に形成された流体室93と連通する穴が形成されている。
【0061】
この穴に電磁駆動機構の外周の一部を挿入し、第一コア部33とポンプハウジング1の円筒部(凸部)90d2の平面部90eを接合して流体室93を塞ぐように構成し、接合面の全周を溶接することにより流体をシールしている。
【0062】
ポンプハウジング1の円筒部(凸部)90d1,2の高さを増やすには、ポンプハウジング1の内側に掘り下げるか、外側に突出させるかの2通りの方法がある。ポンプハウジング1の内部にはポンプ性能を得るための構造が外壁面の限界まで設けられていることが往々にしてあり、内側に深く掘り下げることは難しい。このため、ポンプハウジング1外周の大きさを増やす必要があり、材料費や加工費が増加することになる。
【0063】
そこで、ポンプハウジング1の円筒部(凸部)90d1,2の高さu2,u3、つまり溝90c,窪み90hの深さをポンプハウジング1の平面部90b,90eより1〜2mm以下とすることで、ポンプハウジング1を深く削ることなく溶接平面を確保することができる。
【0064】
ポンプハウジング1の円筒部(凸部)90d1,2および窪み90h若しくは溝90cによって形成される凹部の隅部201,202はR0.2〜R1.0の曲線で繋ぐ。これは切削加工を行う際に使用する刃具の刃先Rに合わせる。溶接に突合せ継手を用いる場合、溶接部同士は平行面である事が望ましい。平行面が得られず、曲線部で繋ぐと、溶接面が凸凹になり、接合長が変わる。これによりあらかじめ溶接機に設定を行っていた溶接出力にて溶接を行った際に、設計した接合長を得られない要因となる。
【0065】
円筒部(凸部)90d1,2の高さを1〜2mmとする理由について説明する。
【0066】
隅部201,202がR0.2の場合平行部を1.8mm確保でき、隅部201,202がR1の場合でも、平行部を1mm確保する事ができる。一方、レーザ溶接を行う際の最低限必要な平行部の長さは、片側0.5mmとされている。つまり、刃具の刃先Rを考慮しつつ、溶接部の平面部を最低限確保できる距離である。また、隅部201,202のRを0.2以上にすることで、切り欠き形状で無い構造にすることができ、強度を増すことができる。
【0067】
バルブシート32と第一コア部33を圧入固定した状態で、バルブシート32をポンプハウジング1に圧入固定する構造にしたことで、ポンプハウジング1と第一コア部33の相対位置を決定できるので、ポンプハウジング1と第一コア部33を保持することなく溶接を行う事ができる。
【0068】
ポンプハウジング1の円筒部90d1,90d2の各平面部90b,90eと円筒部を有する接合部材33,91の突合せ面は流体室92,93を形成する横穴の中心軸に対し直角であることが望ましい。また、ポンプハウジング1と燃料接合ジョイント91の突合せ面としての平面部90bは隙間がないことが望ましい。そして、ポンプハウジング1流体室92,93横穴の中心軸と円筒部を有する接合部材33,91の中心軸は同軸であることが望ましい。
【0069】
これにより、溶接精度および組立精度がさらに向上する。その結果、エンジン側との取付け部、たとえば、燃料配管や制御信号入力コネクタとの位置度精度も向上する。
【0070】
円筒部を有する接合部材33,91はポンプハウジング1との圧入部と溶接を行う円筒外径部が同一部材で加工されると、同軸になりやすい。
【0071】
ポンプハウジング1の円筒部90d1,90d2に形成された平面部90b,90eが窪み90h若しくは溝90cによって形成される凹部の底の面より1〜2mmの位置に形成されていることで、ポンプハウジング1側面からレーザ照射により、全周を溶接することができる。
【0072】
以上のように構成した本発明の基本的構成を請求範囲に対応させると以下の通りである。
【0073】
ポンプハウジング(1)の側面に加工された平面部(90f,90g)を設け、この平面部(90b,90e)の中心にポンプハウジング(1)内部に向かって燃料通路(92,93)を形成し、燃料通路(92,93)開口部の周囲に部品接合用の環状面(90b,90e)を設け、この部品接合用の環状面(90b,90e)の周囲に窪み若しくは溝で形成される凹部(90h,90h2,90c)を形成した。好適には、この窪みあるいは溝で形成される凹部(90h,90h2,90c)の深さは1〜2mmとすると良い。結果的に、ポンプハウジング(1)の側面に形成された加工平面部(90b,90e)を備え、その中心に燃料通路(92,93)開口部を有し、その先端に部品接合用の環状面(90b,90d)を有する高さ1〜2mmの円筒部(90b,90d)を設置することで上記目標を達成する。なお、好適には、部品としてのジョイント(91)の先端に設けられた接合部(90a)には円筒部(90b,90d)の外径と同径の環状接合面を有する。
【実施例2】
【0074】
図7は図6に示す高圧燃料ポンプ横断面図の第二実施例である。
【0075】
ポンプハウジング1の側面には平面部90bを有し、環状の凹部90cが設けられている。環状の凹部90cの内側にある平面部90bに穴を設け、この穴の内径部を流体室92とする。環状の凹部90c内壁面の径と同径の外径を持つ燃料接合ジョイント91とポンプハウジング1環状の凹部90c内壁面を接合して流体室92を塞ぐように構成し、溶接することにより流体をシールしている。
【0076】
ポンプハウジング1に設ける環状の凹部90cの深さu2はポンプハウジング1の平面部90bより1〜2mm以下にすることで、ポンプハウジング1を深く削ることなく溶接平面を確保することができる。この溶接平面を形成することにより突合せ継手による溶接が行える。
【0077】
ポンプハウジング1平面部90bに設けた穴(流体室)92の内径と環状の凹部90cの内壁面との間に凸部90aを設け、凸部90a外径と同径の内径を持つ燃料接合ジョイント91を凸部90aに圧入することで燃料接合ジョイント91を固定することもできる。これにより、溶接を行う際にポンプハウジング1と燃料接合ジョイント91を保持することなく溶接を行う事ができる。
【0078】
ポンプハウジング1凸部90aに燃料接合ジョイント91の内壁面を圧入固定させることで、組立作業中に振動を加えたり、ポンプハウジング1を傾けても、燃料接合ジョイント91が移動することはなくなる。また、ポンプハウジング1と燃料接合ジョイント91を同軸に保持し、相対位置をずらさずに溶接が可能となるため、組立精度を向上させることができる。
【0079】
円筒部を有する接合部材91の内壁面はポンプハウジング1凸部90aに支えられる構造にすることで、ポンプハウジング1流体室92の空間を確保しつつ、円筒部を有する接合部材91を固定することができ、さらに強度を増すことができる。
【0080】
図8は図7に示す高圧燃料ポンプの鳥瞰図である。
【0081】
従来技術によれば、図2に示す高圧燃料ポンプのようにポンプハウジング1低面部は垂直に切削された形状になっている。しかしながら、このような形状では加工後にバリが多く発生し、仕上げ作業に時間がかかってしまう問題があった。そこで、ポンプハウジング1側面にテーパ94を設ける構造とした。これにより、ポンプハウジング1の加工時に発生するバリの量を低減でき、仕上げ作業の時間を短縮することができる。そして、ポンプハウジング1を切削したことで体積が減少するので軽量化することができる。また、テーパ94によりボディハウジング1を流線型にすることで、エンジンからの熱を滞留させない構造にした。これにより、ポンプハウジング1内に蓄積される熱量が減少されるので、内部流体の温度上昇や内部部品の熱変形による性能の変化が少なくなる。ポンプハウジング1側面にテーパ94を設けたことで、高圧燃料ポンプ取付け時に取付け工具と干渉しずらく、ポンプ取付け時の作業がしやすくなるため、取付け性を向上させることができる。また、テーパは複数段に分けても、バリ低減効果があがる。
【実施例3】
【0082】
図9は図7に示す高圧燃料ポンプ横断面図の第三実施例である。
【0083】
図に示すように、ポンプハウジング1の形状は真円,楕円,四角,六角等の様々な形状でも適応が可能である。
【0084】
以上の各実施例によれば、以下のような課題が解消できる。
【0085】
従来技術においては溶接接合部がポンプハウジングの側面より突出した段付き部にあるため、突出した段付き部の寸法だけジョイントを含めた高圧燃料供給ポンプの外郭が大きくなる。
【0086】
また、溶接接合部がポンプハウジングの側面より突出した段付き部にある従来技術では組立精度が悪化しやすく、ジョイントと突出した段付き部の接合部の位置ずれにより、接続配管に過大な応力が発生し破損する可能性がある。
【0087】
また、レーザの照射の焦点位置が接合部からほんのわずかずれただけで乱反射を起こし、溶接が完全に行われない。このため、ジョイントと突出した段付き部との組立位置公差と位置決め精度が厳しく要求され、またレーザ溶接のビーム照射の位置を制御する精度が高く求められる。
【0088】
本実施例によれば、ジョイントや制御弁機構のような付属部品とポンプハウジングとの接合部の位置決めを楽にし、またその精度を向上し、結果的に小型で低コストの高圧燃料供給ポンプを提供するができる。
【0089】
本発明はガソリンエンジンの高圧燃料供給ポンプだけでなく、ディーゼルエンジンの高圧燃料供給ポンプにも適用が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 ポンプハウジング
2 ピストンプランジャ
5 カム
6 シリンダ
7 シリンダホルダ
7a 円筒嵌合部
7b 外側円筒面部
7c 内側円筒面部
8 吐出弁ユニット
9 金属ダイアフラムダンパ
11 加圧室
12 吐出口
13 プランジャシール
61,62 O−リング
90b,90e 平面部
90c 溝(凹部)
90d1,90d2 円筒部
90h,90h2 窪み(凹部)
90f,90g 溶接接合部
91 燃料結合ジョイント
92,93 燃料通路(流体室)
100 エンジンブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジング,当該ポンプハウジングに組合わされるシリンダ,当該シリンダによって往復動可能に支承され、前記シリンダと前記ポンプハウジングとの間に形成される加圧室内の流体を加圧するプランジャを備え、当該プランジャの往復動によって前記加圧室内に吸入される燃料を加圧して前記加圧室から吐出するものにおいて、
ポンプハウジングの側面に加工された平面部を設け、この平面部にポンプハウジング内部の流体室に連通する通路が開口しており、この通路の開口部の周囲に部品接合用の環状面が設けられており、この部品接合用の環状面の周囲に窪み若しくは溝によって形成される凹部を設けた
高圧燃料供給ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載したものにおいて、
前記窪みあるいは溝の深さは1〜2mmである高圧燃料供給ポンプ。
【請求項3】
ポンプハウジング,当該ポンプハウジングに組合わされるシリンダ,当該シリンダによって往復動可能に支承され、前記シリンダと前記ポンプハウジングとの間に形成される加圧室内の流体を加圧するプランジャを備え、当該プランジャの往復動によって前記加圧室内に吸入される燃料を加圧して前記加圧室から吐出するものにおいて、
前記ポンプハウジングの側面に環状の平面部を加工形成し、この平面部に高さ1〜2mmの円筒部が形成され、そ中心に燃料通路が開口しており、前記平面部に接合用の環状面が形成されている
高圧燃料供給ポンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のものにおいて、
接合される部品の先端に設けられた接合面にはポンプハウジングに設けた円筒部の外径と同径の環状の接合面が形成されている
高圧燃料供給ポンプ。
【請求項5】
ポンプハウジング,当該ポンプハウジングに組合わされるシリンダ,当該シリンダによって往復動可能に支承され、前記シリンダと前記ポンプハウジングとの間に形成される加圧室内の流体を加圧するプランジャを備え、当該プランジャの往復動によって前記加圧室内に吸入される燃料を加圧して前記加圧室から吐出するものにおいて、
前記ポンプハウジングの側面に平面部を設け、該平面部に直交する燃料通路を設け、該燃料通路の外周に円筒部を形成し、該円筒部と同径の円筒部を有する接合部材の同径部を該円筒部に溶接接合したことを特徴とする高圧燃料供給ポンプ。
【請求項6】
請求項5に記載のものにおいて、
前記燃料通路外周円筒部は、前記平面部に環状の凹部を設けて形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項7】
請求項5に記載のものにおいて、
前記燃料通路外周円筒部は、前記平面部に環状の凸部を設けて形成されている高圧燃料供給ポンプ。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかに記載したものにおいて、
前記燃料通路外周円筒部は、円筒部の高さは1〜2mmである高圧燃料供給ポンプ。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかに記載したものにおいて、
前記燃料通路の少なくても一つは、逆止弁を有する高圧燃料供給ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−74759(P2011−74759A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223605(P2009−223605)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】