説明

高圧電源

【課題】 高圧電源を小型化、軽量化、低コスト化する。
【解決手段】 周波数信号によって駆動するスイッチング素子、電圧共振回路、整流回路、電圧共振回路と整流回路との間に接続された電流検出回路を有し、電圧共振回路と整流回路をコンデンサを介して接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧を発生する高圧電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置として電子写真方式を用いた装置が知られている。この電子写真方式の画像形成装置では、現像剤としてのトナーを用いて像担持体に形成された潜像を現像する現像部材、像担持体を一様に帯電する帯電部材、像担持体に形成されたトナー像を記録材に転写する転写部材に高電圧を印加して画像形成を行う構成となっている。このような画像形成のための複数の部材に対して、高電圧を出力する高圧電源として巻線式の電磁トランスを用いた高圧電源が知られている。例えば、特許文献1に、電磁トランスを用いた高圧電源の一例が記載されている。
【0003】
図7に電磁トランスを二つ用いて、正負両極性の高電圧を出力する高圧電源の一例を示す。図7の713は負電圧を出力する高圧電源であり、電磁トランス701を有している。電磁トランス701はスイッチング素子を含む電磁トランス701の一次側の駆動回路705によりトランス一次巻線に交流電力を供給することにより二次巻線に交流高圧を発生させる。そして、二次巻線に発生した交流高圧はダイオード702とコンデンサ703によって整流及び平滑されて負の直流電圧として出力される。704は負電圧の高圧電源のブリーダ抵抗である。一方、図中の712は正電圧の高圧電源であり、負電圧の高圧電源713と同様に電磁トランス706を有しており、一次側の駆動回路710により電磁トランス706の一次巻線に交流電力を供給することにより二次巻線に交流高圧を発生させる。そして、発生した交流高圧はダイオード707と高圧コンデンサ708によって整流及び平滑されて正の直流高圧として出力される。709は正電圧の高圧電源のブリーダ抵抗である。なお、負電圧高圧電源713と正電圧高圧電源712は直列に接続されており、夫々の高圧電源で発生した直流高圧は、ブリーダ抵抗704、709を介して、負荷711に印加される。また、714は電流検知回路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−309044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、画像形成装置をより小型化、軽量化、低コスト化することが求められており、そのためには、装置に搭載される高圧電源を更に小型化、軽量化、低コスト化することが必要になっている。
【0006】
図7に示すような電磁トランスを用いた高圧電源を小型化、軽量化、低コスト化するに際し、以下のような課題がある。一般的に電磁トランスは他の電子部品に比べて、高さや体積が大きい。そのため、高圧電源を更に小型化しようとする場合、電磁トランスのサイズが小型化に影響してくる。電磁トランスは上記したように必要な高電圧を出力するため所定数以上の巻線数が必要になる。従って高電圧を出力するための電磁トランスそのものを小型化するには限界がある。また、電磁トランスはフェライトや銅線を用いる構成が一般的であり、他の電子部品と比べて重いため高圧電源の軽量化にも限界がある。また、フェライトや銅線を用いるため他の電子部品に比べるとコスト高となるため、高圧電源の低コスト化にも影響を及ぼす。このように電磁トランスを用いた高圧電源の更なる小型化、軽量化、低コスト化には限界がある。つまり、複数の高圧電源を搭載する画像形成装置の更なる小型化、軽量化、低コスト化を妨げる要因になる可能性がある。
【0007】
本発明は上記課題を鑑み、高圧電源の小型化、軽量化、低コスト化を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の高圧電源は、周波数信号に応じて駆動するスイッチング手段と、前記スイッチング手段に接続され、前記スイッチング手段が駆動されることにより電圧が印加されるインダクタとコンデンサを備えた電圧共振手段と、前記電圧共振手段に接続され、コンデンサとダイオードを夫々複数備えた整流手段と、
前記電圧共振手段に接続され、前記整流手段に接続される負荷に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記電圧共振手段で発生する交流電流と前記整流手段で発生する直流電流とを分離するためのコンデンサとを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、高圧電源の小型化、軽量化、低コスト化を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1の高圧電源の回路構成を示す図。
【図2】実施例1の高圧電源の回路が動作した際の電流及び電圧波形を示す図。
【図3】実施例2の高圧電源の回路構成を示す図。
【図4】実施例2の高圧電源の回路が動作した際の電流及び電圧波形を示す図。
【図5】実施例3の高圧電源の回路構成を示す図。
【図6】実施例4の高圧電源の回路構成を示す図。
【図7】従来の電磁トランスを用いた高圧電源の概略構成を示す図。
【図8】本発明の高圧電源を適用例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、上述した課題を解決するための本発明の具体的な構成について、以下に実施例に基づき説明する。なお、以下に示す実施例は一例であって、この発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0012】
以下、実施例1の構成及び動作について図面を用いて詳細に説明する。本実施例は、電磁トランスを用いずに高電圧を出力する回路構成を特徴としている。図1に実施例1の高電圧を出力する高圧電源の回路構成を示す。
【0013】
図1おいて、インダクタL100とコンデンサC100で電圧共振部である電圧共振回路を構成している。この電圧共振回路から発生した電圧は、以降、フライバック電圧という。インダクタL100は、電圧共振回路を駆動するスイッチング部としてのスイッチング素子Q101と電源電圧Vcc(本例では+24Vとする)との間に接続される。そして、インダクタL100は、スイッチング素子Q101が駆動(オンオフ)することにより断続的に電圧が印加されるインダクタンス成分を有する素子の一例である。なお、本実施例では、一例として、スイッチング素子Q101を電解効果トランジスタQ101(以下、MOSFET Q101という)として説明する。また、コンデンサC100は接地されている。この電圧共振回路からの出力されるフライバック電圧は、そのフライバック電圧を整流する整流部として機能する整流回路107によって正電圧に整流される。本実施例では、一例として、5つのダイオードと5つのコンデンサで整流回路を形成する構成(5段構成ともいう)として説明する。
【0014】
整流回路107は、順方向に電流を流すダイオードD101と、ダイオードD101のカソード端子と電源電圧Vcc間に接続されて電荷を充電するコンデンサC101によって、正極性のフライバック電圧が取り出される。具体的な回路の接続は、インダクタLの電源電圧側の接続部(接続点)にコンデンサC101が接続され、さらにコンデンサC101の他端にダイオードD101が接続される構成である。続いて、ダイオードD102、D103、D104、D105及びコンデンサC102、C103、C104、C105を夫々複数備えた(複数段)の整流回路107が形成される。そして、整流回路107からの出力は平滑用コンデンサC106を介して接地されて出力電圧波形が平滑される。
【0015】
なお、整流回路107はコンデンサC109を介して接続される。具体的には、電流共振回路のインダクタL100とMOSFET Q1との接続部(接続点)にコンデンサC109が接続される。このコンデンサC109はコンデンサC100に比べて静電容量が十分に大きいコンデンサである。従って、このコンデンサC109が電圧共振回路に与える影響は殆ど無いと考えてよい。整流回路107の出力は、出力端子104に接続されて直流電圧が取り出される。この直流電圧は、高電圧が必要な負荷110に印加される。負荷110の一例としては、画像形成装置の画像形成のための現像部や転写部等の負荷である。
【0016】
このように、インダクタL100とコンデンサC100により構成される電圧共振回路によって昇圧されたフライバック電圧を多段構成の整流回路107によって昇圧及び整流して出力することができる。出力する高電圧の値をどの程度昇圧するかについては、出力対象の負荷が必要とする高電圧の値に応じて整流回路107の段数を変更して調整することができる。
【0017】
次に、上記の電圧共振回路及び整流回路を駆動する方法について説明する。本実施例では、コントローラ101とクロック発振器102を用いて、MOSFET Q1の駆動周波数信号の周波数を可変に制御することによって出力される高電圧の値を可変制御することを特徴としている。以下、駆動周波数信号による制御動作について説明する。なお、本実施例では、駆動周波数信号のデューティー比(信号のオン時間とオフ時間の比)は固定としている。
【0018】
コントローラ101は制御信号をクロック発振器102(以下、VCO102という)に出力する。VCO102は、入力される制御信号に応じた駆動周波数信号をMOSFET Q101のゲート端子に出力する。ここで、駆動周波数信号によって出力電圧Voutを制御する場合、出力電圧Voutを高くしたいときは駆動周波数信号の周波数を低くし、出力電圧Voutを低くしたい場合は駆動周波数信号の周波数を高くする。さらに詳細に説明すれば、駆動周波数信号の周波数を低くすると、MOSFET Q101のオン時間が長くなり、オン時間に応じて、インダクタL100により多くのエネルギーが蓄えられ、電圧共振回路のフライバック電圧の最大値も高くなる。すなわち、出力端子104から出力される電圧が高くなる。逆に、周波数を高くすると、MOSFET Q101のオン時間が短くなり、短くなったオン時間に応じて、インダクタL100に蓄えられるエネルギーが低下し、電圧共振回路のフライバック電圧の最大値も低くなる。すなわち、出力端子104から出力される電圧が低くなる。このように、駆動周波数信号の周波数を可変に制御することにより出力電圧Voutを制御することができる。この周波数の可変制御のために、出力電圧Voutをフィードバックしてコントローラ101からの制御信号と比較して、比較結果に応じて周波数を可変に制御する動作を実行する。
【0019】
次に、負荷に流れる電流を検出する構成及び動作について説明する。図1において、電圧共振回路は、コンデンサ109を介して多段の整流回路107に接続される。このコンデンサC109を設けるのは、電圧共振回路を構成するインダクタL100とコンデンサC100間の交流電流の流れを妨げることなく、電圧共振回路の交流電流の流れと整流回路107の直流電流の流れを分離することができる。図1において、この交流電流の流れを矢印点線で示す(AC)。また、直流電流の流れを矢印点線で示す(DC)。このコンデンサ9を設けることによるACとDCの夫々の電流の流れを分離するための構成と動作が本実施例において特徴的な点である。これにより、後述する電流検出部106に流れる電流i2は、分離したDCの電流の流れになり、負荷に流れる電流i1と等しくなるため、電流検出部106で検知して負荷に流れる電流を正確に検出することができる。
【0020】
次に、電流検出部106の構成と動作について説明する。電流検出部106は、オペアンプQ102、抵抗R102、R103、R101、コンデンサC107からなるオフセット電位設定のための回路構成であり、電圧共振回路と整流回路107の入力側に接続されている。具体的には図1において、電圧共振回路のインダクタL100とC100とが接続されるラインに抵抗R100を介して接続される。オペアンプQ102は、非反転入力端子にオフセット電位を設定するための抵抗R102とR103が接続されており、所定の電圧が入力されて、反転入力端子と同一電位になるように制御動作する。なお、所定の電圧は、Vref×R103/(R102+R103)と定義される。抵抗R100及びコンデンサC107はオペアンプQ102の反転入力端子へのACの重畳を防ぐ役割を果たす。また、コンデンサC108は、オペアンプQ102のACのゲインを下げる機能をする。負荷に流れる電流i1は電流検出部106に流れる電流i2と等しいので、電流値の検出信号Aは負荷に流れる電流i1に応じた電圧値VAを出力する。電圧値VAは、以下の式で示すことができる。
VA=R101×i1+{Vref×R103/(R102+R103)}・・・式(1−1)
また、負荷に流れている電流i1は、以下の式で示すことができる。
i1=〔VA−{Vref×R103/(R102+R103)}〕/R101・・・式(1−2)
したがって、電流値の検出信号Aをモニタすることで、負荷に流れる電流を検出することができる。
【0021】
次に、本実施例の回路が動作した際の電流及び電圧波形の一例を図2に基づき説明する。図2に示す波形は、電流検出部106で検出される電流が一定の値になるように制御する(定電流制御する)際の波形の一例である。
【0022】
図2の電流値検出信号Aは、負荷に流れる電流i1を電圧値VAに変換した波形を示している。図2のQ101ゲート電圧は、クロック発振器102からMOSFETQ101のゲートに印加される電圧波形を示している。図2のQ101ドレイン電流は、MOSFETQ101のドレイン・ソース間に流れる電流波形を示している。このQ101ドレイン電流は、MOSFETQ101がオンすると電源電圧VccからインダクタL101に電流が流れ始める。インダクタL100はQ101ドレイン電流の流れる時間に応じてエネルギーが蓄積される。図2のQ101ドレイン電圧は、MOSFETQ101がオフしたときに電圧共振回路から発生するフライバック電圧波形を示している。フライバック電圧の最大値vd1は、電源電圧Vccの数倍の電圧値になる。図2においては、ドレイン電圧が零の時点でスイッチング(一般に、「ゼロボルトスイッチング:ZVS」)を行っている。ゼロボルトスイッチングを行うことで、ターンオン時のスイッチング損失や放射ノイズを大幅に削減することができる。図2の出力電圧Voutは、出力端子104に生じる電圧波形を示している。
【0023】
本実施例では、負荷電流を増加させたときの回路動作波形について説明する。図2のW1の時点は負荷の抵抗値が高くなったときを示している。出力電圧Voutが一定とすると、負荷電流は減少し電流値検出信号Aはvi1からvi2(vi1>vi2)へ変化する。負荷電流を増加するには、出力電圧voutを高くすればよい。そこで、図2のX1の地点ではMOSFETQ101の駆動(オンオフ)周期を長くし、インダクタL100に蓄えられるエネルギーを増加することで、フライバック電圧の最大値を高くしている。
【0024】
図2のY1の地点でフライバック電圧の最大値がvd1からvd2(vd2>vd1)へ変化したとすると、それに応じて出力電圧Voutもvo1からvo2(vo2>vo1)へ変化する。出力電圧Voutの変化に応じて電流値検出信号Aもvi2からvi1へ変化する。このように、MOSFETQ101の駆動(オンオフ)周期を長くすることで、負荷電流を増加させることができる。
【0025】
以上のように、複数の容量素子としてのコンデンサと複数のダイオードで多段の整流回路を構成し、電磁トランスを設けずに、高電圧を出力する回路構成にすることで、小型且つ軽量且つ安価な高圧電源を提供することができる。そして、電圧共振回路と多段の整流回路を容量素子を介して接続して、電圧共振回路の交流電流の流れと整流回路107の直流電流の流れを分離することができるので、電流検出回路によって負荷に流れる電流を正確に検出することができる。
【0026】
なお、本実施例に拠れば、コントローラ101で電流値の検出信号Aをモニタして、負荷に流れる電流が一定になるように周波数信号の周波数を可変制御して定電流制御を実行することも容易になるという効果もある。
【0027】
また、本実施例では正電圧を出力する回路構成を示したが、本実施例において整流回路107のダイオードの極性を反転するように接続すれば負電圧を出力する回路を構成すことができる。負電圧を出力する回路のとしては、図1の回路とは異なり、整流回路107を構成しているダイオードの極性が反転して接続している。なお、整流回路107の動作に関しては上記と同様、コンデンサによる電圧ホールドとフライバック電圧分の電圧加算を整流段の段数分、繰り返して電圧が増幅される動作になる。
【実施例2】
【0028】
本実施例は、実施例1の構成に対して、更に負荷に印加される電圧を検出する電圧検出部を追加した点が異なる。本実施例では、実施例1と共通する構成については説明を省略し、追加した電圧検知部について詳細に説明する。
【0029】
本実施例の電源回路を図3に示す。図3において電圧共振回路と多段の整流回路は実施例1と同様の構成であり同様に動作する。なお、図3の回路は実施例1で説明した図1の回路と基本的な構成は同様であり、以下のとおり対応する。図1におけるコントローラ101、クロック発振器102は、図3において201、202と記載している。また、インダクタL100をL200、コンデンサC100をC200、スイッチング素子Q101をQ201と記載している。また、図1の多段の整流回路107のコンデンサC101〜C105、ダイオードD101〜D105は、図3における多段の整流回路207として、C201〜C205、D201〜D205と記載している。また、図1の電流検出回路106のR101〜R103、C108、Q102は、図3の電流検出回路206としてR201〜R203、C208、Q202と記載している。また、図1のコンデンサC106、C107は、図3としてC206、C207と記載している。
【0030】
本実施例では、上記したとおり実施例1の回路構成に対して、更に電圧検出部208が追加されている点が特徴である。そして、電圧検出部208は直接接地せずに、電流検出部206を介して接地する回路構成となっている。このような回路構成によって負荷に流れる電流i3(図1のi1と同じ)と電流検出部206に流れる電流i4(図1のi2と同じ)が等しい関係になる。したがって、電流値検知信号Cを検知すれば負荷に流れる電流を検出することができる。
【0031】
次に、電圧検出部208の構成及び動作について説明する。電圧検出部208は、抵抗R204、R205で構成された回路であり、コントローラ201と電流検出部206と出力端子に接続される。出力電圧Voutは抵抗R204、R205によって分圧されるので、電圧値検知信号Dは出力電圧Voutに応じた電圧値VDを出力する。この電圧値VDは、以下の式で示される。
VD=
[Vout−{Vref×R203/(R202+R203)}]×
{R204/(R204+R205)}+
{Vref×R203/(R202+R203)}
・・・ 式(2−1)
また、負荷に印加される出力電圧Voutは、以下の式で示される。
Vout=
[VD−{Vref×R203/(R202+R203)}]/
{R204/(R204+R205)}+
{Vref×R203/(R202+R203)}
・・・ 式(2−2)
上記の式で示されるように、電圧値検知信号Dをコントローラ201によって検知することで、負荷に印加される電圧を検知することができる。
【0032】
次に、本実施例の回路が動作した際の電流及び電圧波形の一例を図4に基づき説明する。図4に示す波形は、電圧検出部208で検出される電圧が一定の値になるように制御する(定電圧制御する)際の波形の一例である。
【0033】
図4において電流値検出信号CとQ201ゲート電圧とQ201ドレイン電流とQ201ドレイン電圧は実施例1と同様な回路動作波形である。図4の電圧値検出信号Dは、出力電圧Voutを電圧値VDに変換した波形を示している。図4の出力電圧Voutは、出力端子104に生じる電圧波形を示している。
【0034】
本実施例では、出力電圧を高くしたときの回路動作波形について説明する。図4のW2の時点は負荷の抵抗値が低くなったときを示している。負荷電流が一定(電流値検出信号Cはvi3で一定)とすると、出力電圧Voutは低くなり電圧値検出信号Dはv3からv4(v3>v4)へ変化する。そこで、図4のX2の地点ではMOSFETQ101の駆動(オンオフ)周期を長くし、インダクタL100に蓄えられるエネルギーを増加することで、フライバック電圧の最大値を高くしている。図4のY2の地点でフライバック電圧の最大値がvd3からvd4(vd4>vd3)変化したとすると、それに応じて電流値検出信号CはVi3からvi4に、出力電圧Voutはvo4からvo3(vo4>vo3)にそれぞれ変化している。出力電圧Voutの変化に応じて電圧値検出信号Dもv4からv3へ変化している。このように、MOSFETQ101の駆動(オンオフ)周期を長くすることで、出力電圧を高くすることができる。
【0035】
以上のように、複数の容量素子と複数のダイオードで多段の整流回路を構成し、高電圧の出力を可能とすることで、小型且つ軽量且つ安価な高圧電源を提供することができる。そして、コントローラ201で電流値検知信号Cを検知し、負荷に流れる電流が一定になるように制御周波数を可変制御することで、負荷に印加される電圧を検知しながら定電流制御することが可能になる。
【0036】
また、コントローラ201で電圧値検知信号Dを検知し、負荷に印加される電圧が一定になるように制御周波数を可変制御して、負荷に流れる電流をモニタしながら定電圧制御することも可能になる。
【0037】
以上、本実施例によれば、小型且つ軽量且つ安価な高圧電源を提供すると共に、電圧検知回路を追加して、高圧電源から負荷に対して出力する際に、定電流制御や定電圧制御を行うことが可能となる。
【実施例3】
【0038】
本実施例は、実施例2の構成に対して、さらに、負電圧と正電圧を出力可能とし、夫々の電圧を重畳することにより正負どちらの電圧でも出力できるようにした点が異なる。図5に本実施例の回路構成を示す。
【0039】
図5において、電圧共振回路と多段の整流回路による出力電圧制御については実施例1と同様に動作する。本実施例の電源回路を図5に示す。なお、実施例1で説明した図1の回路と基本的な構成は同様である。図1におけるコントローラ101、クロック発振器102は、図5において301、302と記載している。また、インダクタL100をL300、コンデンサC100をC300、スイッチング素子Q101をQ301と記載している。また、図1の多段の整流回路107のコンデンサC101〜C105は、ダイオードD101〜D105は、図5における多段の整流回路307として、C301〜C305、D301〜D305と記載している。また、図1の電流検出回路106のR101〜R103、C108、Q102は、図5の電流検出回路306としてR301〜R303、C308、Q302と記載している。なお、図1における負荷に流れる電流i1、検出される電流i2は、夫々i5,i6と記載している。また、図1のコンデンサC106、C107は、図5としてC306、C307と記載している。
【0040】
なお、本実施例では、多段の整流回路307からの正電圧が出力される構成である。そして、この整流回路307とは別に、もう1つ負電圧を出力するための回路が設けられている。負電圧を出力する回路は、スイッチング素子Q351、電圧共振回路としてのインダクタL350とコンデンサC350、コンデンサC351〜C355及びダイオードD351〜D355からなる多段の整流回路357から構成される。多段の整流回路357のダイオードの接続が整流回路307とは逆向きに接続して負電圧を出力するように構成されている。
【0041】
本実施例では、正電圧出力部として、第1のスイッチング素子Q301と第1の電圧共振回路と正電圧を昇圧する多段構成の第1の整流回路307で構成される正電圧生成回路を有する。そして、負電圧出力部として、第2のスイッチング素子Q351と第2の電圧共振回路と負電圧を昇圧する多段構成の第2の整流回路357で構成される負電圧生成回路を有する。多段の整流回路307は、コンデンサC309を介して電圧共振回路に接続され、多段の整流回路357は、コンデンサC359を介して電圧共振回路に接続される。コントローラ301とクロック発振器302は、正電圧生成回路と負電圧生成回路に接続され、夫々、実施例1で説明したのと同様に駆動周波数信号による制御を実行する。多段の整流回路307の出力側と多段の整流回路357の出力側は互いに接続される。図に示されるように互いにブリーダ抵抗R307、R308で接続される。R308は正電圧生成回路用のブリーダ抵抗、R306は負電圧生成回路用のブリーダ抵抗である。
【0042】
次に、電流検出部306の動作について説明する。本実施例では、電流検出部306は、コントローラ101には多段の整流回路307の入力側と多段の整流回路357の入力側に接続される。また、電圧検出部308は直接接地することなく、電流検出部306を介して接地される。実施例1と同様に、電圧共振回路と多段の整流回路307及び電圧共振回路と多段の整流回路357は、コンデンサC309、C359によって、電圧共振回路を構成するインダクタL100とコンデンサC100間の交流電流の流れを妨げることなく、電圧共振回路の交流電流の流れ(AC)と多段の整流回路307、357の直流電流の流れ(DC)を分離することができる。つまり、電流検出部306に流れる電流i6は、分離したDCの電流であり、負荷に流れる電流i5と等しくなる。したがって、電流値検知信号Eをモニタすることで、負荷に流れる電流を検出することができる。なお、実施例1と同様、電流検出部306で検出された電流が一定の値になるように制御することができる。
【0043】
次に、電圧検出部308の動作について説明する。電圧検出部308は、抵抗R304、R305で構成され、コントローラ301と電流検出部306と出力端子に接続されている。出力電圧Voutは抵抗R304、R305によって分圧されるので、電圧値検知信号Fは出力電圧Voutに応じた電圧値VFを出力する。なお、実施例2と同様、電圧検出部308で検出された電圧が一定の値になるように制御することができる。この電圧値VFは、以下の式で示される。
VF
=[Vout−{Vref×R303/(R302+R303)}]
×{R304/(R304+R305)}
+{Vref×R303/(R302+R303)}・・・式(3−1)
したがって、負荷に印加される出力電圧Voutは、以下の式で示される。
Vout
=[VF−{Vref×R303/(R302+R303)}]
/{R304/(R304+R305)}
+{Vref×R303/(R302+R303)}・・・式(3−2)
従って、電圧値検知信号Fをモニタすることで、負荷に印加される電圧を検出することができる。なお、負電圧の出力時において、電圧検出部308は出力電圧を分圧した値を検出するため、電圧値VFがマイナス電位にならないように抵抗R304、R305の値を調整している。
【0044】
以上のように、本実施例によれば、小型且つ軽量且つ安価であり正電圧と負電圧を出力可能であって、負荷に流れる電流と負荷に印加される電圧を検出することができる高圧電源を提供することができる。
【実施例4】
【0045】
本実施例は、実施例1乃至実施例3の構成に、さらに出力電圧を制御するために供給電圧可変部409を追加したことを特徴とする。なお、実施例1乃至実施例3と共通する構成については説明を省略する。
【0046】
図6に本実施例の回路構成を示す。なお、電圧共振回路と整流回路407、電流検出部406と電圧検出部408は実施例1と同様に動作する。本実施例の電源回路を図6に示す。なお、実施例1で説明した図1の回路と基本的な構成は同様である。図1におけるコントローラ101、クロック発振器102は、図6において401、402と記載している。また、インダクタL100をL400、コンデンサC100をC400、スイッチング素子Q101をQ401と記載している。また、図1の多段の整流回路107のコンデンサC101〜C105、ダイオードD101〜D105は、図5における多段の整流回路407として、C401〜C405、D401〜D405と記載している。また、図1の電流検出回路106のR101〜R103、C108、Q102は、図6の電流検出回路406としてR401〜R403、C408、Q402と記載している。なお、図1における負荷に流れる電流i1、検出される電流i2は、夫々i7,i8と記載している。
また、図1のコンデンサC106、C107は、図6としてC406、C407と記載している。
【0047】
次に、本実施例の特徴である供給電圧可変部409の動作について説明する。コントローラ401はスイッチング素子Q404に接続される。ここでは、一例として、スイッチング素子Q404を電解効果トランジスタQ404(以下、MOSFET Q404という)として説明する。MOSFET Q404と抵抗R409によって、コントローラ401からのPWM信号を基準電圧Vrefのクロック信号に変換する。この変換されたクロック信号は、抵抗R410及びコンデンサC410で構成されるローパスフィルタ回路によってアナログのDC信号に変換され、トランジスタQ403のベース電位を変化させる。したがって、トランジスタQ403のベース−エミッタ間の電圧分低下した電圧がインダクタL400に供給される。このように、供給電圧可変部409によりインダクタL400に供給する電圧を可変制御することが可能になる。
【0048】
次に、インダクタL400に供給する電圧を可変制御するによる出力電圧制御について説明する。MOSFET Q401のゲート端子には、クロック発振器402から駆動周波数信号が入力される。この駆動周波数信号は、本実施例においては、一例として予めMOSFET Q401がハードスイッチングしないように予め定められた周波数の信号として、コントローラ401からクロック発振器402を介してMOSFET Q401に入力する。なお、駆動周波数信号の周波数を固定値ではなく可変に設定可能とする構成でも良い。出力電圧を高くしたい場合は、インダクタL400に供給する電圧を高くし、出力電圧を低くしたい場合は、インダクタL400に供給する電圧を低くすることにより出力電圧を制御することができる。
【0049】
出力電圧の制御について詳細に説明すると、インダクタL400に供給する電圧を高くすると、電圧共振回路のフライバック電圧の最大値も高くなる。すなわち、出力端子404から出力される電圧が高くなる。逆に、インダクタL400に供給する電圧を低くすると、電圧共振回路のフライバック電圧波形の最大値も低くなる。すなわち、出力端子404から出力される電圧は低くなる。このように、インダクタL400に供給する電圧を変化させて、出力電圧を制御することが可能である。
【0050】
なお、本実施例においても、上記の実施例と同様、電流検出部406で検出される電流が一定の値になるように制御可能であり、また、電圧検出部408で検出される電圧が一定の値にあるように制御可能である。
【0051】
以上、説明したように、本実施例によれば、小型且つ軽量且つ安価であり正電圧と負電圧を出力可能であって、負荷に流れる電流と負荷に印加される電圧を検出することができる高圧電源を提供することができる。さらに、インダクタへの供給電圧を可変制御することで出力電圧が制御可能となりより幅広い範囲の電圧を容易に出力可能となる。
【0052】
なお、上記で説明した実施例1乃至4では、5つのダイオードと5つのコンデンサで整流回路を構成しており、例えばフライバック電圧が200(V)とすれば、約600Vに昇圧することができる。なお、ダイオードとコンデンサの個数を必要とする出力電圧に応じて追加すればよく、本実施例で説明した個数に限定されるものではない。
【0053】
(本発明の高圧電源の適用例)
例えばプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置における高電圧電源として適用することができる。画像形成装置の一例である電子写真方式のプリンタに適用する場合について以下に説明する。
【0054】
上記の実施例で説明した高圧電源は、電子写真方式のプリンタの画像形成部に対して高電圧を印加するための高圧電源として適用可能である。図8(a)に電子写真方式のプリンタの一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ200は、潜像が形成される像担持体としての感光ドラム211、感光ドラム211を一様に帯電する帯電部217、感光ドラム211に形成された潜像をトナーで現像する現像部212を備えている。そして、感光ドラム211に現像されたトナー像をカセット216から供給された記録材としてのシート(不図示)に転写部218によって転写して、シートに転写したトナー像を定着器214で定着してトレイ215に排出する。この感光ドラム211、帯電部217、現像部212、転写部218が画像形成部である。
【0055】
図8(b)はレーザビームプリンタ200に設けられる複数の高圧電源(上記実施例1乃至4に記載の電源回路)から出力された高電圧を帯電部、現像部、転写部の夫々に出力する構成を示している。高圧電源1(図の501)は帯電部217に高電圧を出力し、高圧電源2(図の502)は現像部212に高電圧を出力し、高圧電源3(図の503)は転写部218に高電圧を出力する。夫々の高圧電源1乃至3から出力される高電圧の値は、制御部としてのコントローラへ500から出力される制御信号に応じて必要な電圧値に制御される。そして、例えば、帯電部217に高電圧を出力した際に、帯電部217に流れる電流を上記の電流検出回路で検出して、検出した電流値が所定値になるように出力を調整する。また、転写部218に高電圧を出力した際に、転写部218に流れる電流を上記の電流検出回路で検出して、検出した電流値が所定値になるように出力を調整する。また、現像部212に高電圧を出力した際に、上記の電圧検出回路で電圧を検出して、検出した電圧が所定値になるように出力を調整する。このように、画像形成のための高電圧の印加のために適用可能である。
【0056】
以上説明したように、上記実施例1乃至4で説明した高圧電源を電子写真方式のプリンタの高圧電源として適用すれば、画像形成装置の小型化、低コスト化、軽量化に貢献することができる。
【符号の説明】
【0057】
101、201、301、401 コントローラ
102、202、302、402 クロック発振器
104、204、304、404 出力端子
107、207、307、357、407 整流回路
108、208、308、408 電圧検出部
409 供給電圧可変部
110、210、310、410 負荷


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数信号に応じて駆動するスイッチング手段と、
前記スイッチング手段に接続され、前記スイッチング手段が駆動されることにより電圧が印加されるインダクタとコンデンサを備えた電圧共振手段と、
前記電圧共振手段に接続され、コンデンサとダイオードを夫々複数備えた整流手段と、
前記電圧共振手段に接続され、前記整流手段に接続される負荷に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記電圧共振手段で発生する交流電流と前記整流手段で発生する直流電流とを分離するためのコンデンサと
を備えたことを特徴とする高圧電源。
【請求項2】
前記コンデンサは、前記インダクタと前記スイッチング手段の接続部と前記整流手段との間に接続したことを特徴とする請求項1に記載の高圧電源。
【請求項3】
前記電流検出手段は、前記コンデンサと前記整流手段の接続部から前記負荷に流れる電流を検知することを特徴とする請求項2に記載の高圧電源。
【請求項4】
更に、前記整流手段から出力される電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記電圧検出手段は、前記電流検出手段に接続されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の高圧電源。
【請求項5】
前記スイッチング手段は第1と第2のスイッチング手段を含み、前記電圧共振手段は第1と第2の電圧共振手段を含み、前記整流手段は第1と第2の整流手段を含み、
第1のスイッチング手段と第1の電圧共振手段と第1の整流手段を含み、正電圧を出力する正電圧出力手段と、
第2のスイッチング手段と第2の電圧共振手段と第2の整流手段を含み、負電圧を出力する負電圧出力手段と、を備え、
前記電流検出手段が前記正電圧出力手段と前記負電圧出力手段とに接続されることを特徴とする請求項1または2に記載の高圧電源。
【請求項6】
更に、前記電圧共振手段に入力される電圧を可変する電圧可変手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の高圧電源。
【請求項7】
記録材に画像を形成するための画像形成手段と、
前記画像形成手段に高電圧を印加する高圧電源であって、
周波数信号に応じて駆動するスイッチング手段と、前記スイッチング手段に接続され、前記スイッチング手段が駆動されることにより電圧が印加されるインダクタとコンデンサを備えた電圧共振手段と、前記電圧共振手段に接続され、コンデンサとダイオードを夫々複数備えた整流手段と、前記電圧共振手段に接続され、前記整流手段に接続される前記画像形成手段に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記電圧共振手段で発生する交流電流と前記整流手段で発生する直流電流とを分離するためのコンデンサとを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記コンデンサは、前記インダクタと前記スイッチング手段の接続部と前記整流手段との間に接続したことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記電流検出手段は、前記コンデンサと前記整流手段の接続部から前記画像形成手段に流れる電流を検知することを特徴とする請求項8に記載の高圧電源。
【請求項10】
前記画像形成手段は、像担持体を帯電する帯電手段、又は、前記像担持体に形成されたトナー像を転写する転写手段であって、
前記電流検出手段は、前記帯電手段、又は、前記転写手段に流れる電流を検出することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかの項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
更に、前記整流手段から出力される電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記画像形成手段は、像担持体に形成された潜像を現像する現像手段であって、前記電圧検出手段によって検出した電圧に基づき前記現像手段に出力する電圧を制御することを特徴とする請求項7乃至9のいずれかの項に記載の画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−120439(P2012−120439A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−6207(P2012−6207)
【出願日】平成24年1月16日(2012.1.16)
【分割の表示】特願2010−156922(P2010−156922)の分割
【原出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】