説明

高強度低損失複合軟磁性材の製造方法と高強度低損失複合軟磁性材

【課題】本発明により、高強度かつ低損失の複合軟磁性材を提供できる。
【解決手段】本発明は、 軟磁性粒子を絶縁皮膜で被覆してなる複数の絶縁被覆軟磁性粒子と平均粒径2nm〜200nmの低融点ガラスの原料粉末粒子と内部潤滑剤を混合して圧密し、焼成することにより、絶縁被覆軟磁性粒子同士の粒界に、低融点ガラスの境界層を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ、アクチュエータ、リアクトル、トランス、チョークコア、磁気センサコアなどの各種電磁気回路部品の素材として使用される高強度低損失複合軟磁性材の製造方法と高強度低損失複合軟磁性材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータ、アクチュエータ、磁気センサなどの磁心用材料として、鉄粉末、Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Co系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Co−V系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−P系鉄基軟磁性合金粉末(以下、これらを軟磁性粒子と総称する)を焼結して得られた軟磁性焼結材が知られている。
一方、鉄粉末や合金粉末をガス又はアトマイズ法で粉末化して作製した場合、鉄粉末や合金粉末は単体では比抵抗が低いため、鉄粉末や合金粉末の表面に絶縁皮膜の被覆を行うか、有機化合物を混合するなどして焼結を防止し、比抵抗を上げるなどの対策を講じている。この種の軟磁性焼結材において、渦電流損失を抑制するために、鉄を含む金属磁性粒子の表面を非鉄金属の下層被膜と無機化合物を含む絶縁膜とで覆った圧粉軟磁性材料などが提案されている。
【0003】
この種の軟磁性材の強度を向上させる1つの手段として、MgおよびOが表面から内部に向かって減少しておりかつFeが内部に向かって増加している濃度勾配を有するMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜を鉄粉末の表面に被覆したMg含有酸化膜被覆鉄粉末を用い、鉄粉末との界面領域に鉄粉末の中心部に含まれる硫黄よりも高濃度の硫黄を含む硫黄濃化層を有するMg含有酸化鉄膜被覆鉄粉末を低融点ガラス相で結合してなる高強度複合軟磁性材が知られている。(特許文献1参照)
また、この種の軟磁性材の強度を向上させる他の手段として、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と鉄粉末との界面領域に鉄粉末の中心部に含まれる硫黄よりも高濃度の硫黄を含む硫黄濃化層を有するMg含有酸化鉄膜被覆鉄粉末を低融点ガラス相で結合してなる高強度複合軟磁性材であって、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、結晶粒径200nm以下の微細結晶組織を有し、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、その最表面を実質的にMgOで構成している高強度複合軟磁性材が知られている。(特許文献2参照)
【0004】
次に、この種の軟磁性材の強度を向上させる更に他の手段として、鉄粉末、リン酸塩被覆鉄粉末または酸化物膜被覆鉄粉末の表面に低融点ガラスを構成する元素の錯体またはアルコキシドを有機溶媒に溶かした溶液を塗布することにより溶液膜形成鉄粉末、溶液膜形成リン酸塩被覆鉄粉末または溶液膜形成酸化物膜被覆鉄粉末を作製し、この溶液膜形成鉄粉末、溶液膜形成リン酸塩被覆鉄粉末または溶液膜形成酸化物膜被覆鉄粉末における溶液膜の有機成分を加熱分解することにより低融点ガラスを被覆した鉄粉末、リン酸塩被覆鉄粉末または酸化物膜被覆鉄粉末を作製したのちこれら粉末を圧縮成形したのち熱処理するか、または前記溶液膜形成鉄粉末、溶液膜形成リン酸塩被覆鉄粉末または溶液膜形成酸化物膜被覆鉄粉末を圧縮成形したのち熱処理して複合軟磁性材を製造する技術が知られている。(特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−332525号公報
【特許文献2】特開2006−332524号公報
【特許文献3】特開2006−278833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記各特許文献に記載の技術を用いて複合軟磁性材料の特性改善を行う場合、絶縁被覆した鉄粉に低融点ガラスなどの原料粉末を混合し、圧密後に焼成することで製造しているが、絶縁皮膜被覆鉄粉と低融点ガラスの原料粉末との均一混合を行ったとしても、焼成後に得られた軟磁性複合材において数10〜数100μm程度の微細粒径をもつ鉄粉末の周囲の隅々に均一な厚さの低融点ガラス層をバインダー層として形成することが困難なことから、得られた複合軟磁性材の特性において、特に強度の面で不均一性を解消することができない問題があった。
【0007】
例えば、前述の鉄粉末と低融点ガラスの原料粉末を均一混合して焼成する方法により軟磁性材を得ようとすると、微細化された鉄粉末の周囲に前述の技術に基づき形成しているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、厚さ100nm程度であるが、この軟磁性材にバインダーとして低融点ガラスの原料粉末を混合する場合、一般的な方法により低融点ガラスの原料粉末を極微細に粉砕しても、粉砕法により微細化する限り、その粒径を1μm程度、あるいはそれよりも若干細粒とする程度が限界であるので、この程度の粒径の原料粉末を前述のMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜を備えた鉄粉末と混合して圧密し、焼成しても低融点ガラスの原料成分が全ての鉄粉末の周囲に均一に回り込むことができず、バインダー層としての低融点ガラスの境界層が不均一になり易いという問題を有している。
【0008】
また、前述の粒径の低融点ガラス原料粉末を用いて製造した複合軟磁性材は、微細化された鉄粉末の周囲にMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜を形成して各軟磁性粉末を個々に絶縁することで比抵抗を向上させ、複合軟磁性材としての渦電流損失を少なくしようとしているが、この複合軟磁性材を実際に製造してみると、期待したほど比抵抗が向上しないという問題を有していた。
この原因について本発明者らが鋭意研究したところ、軟磁性粉末を加圧成形する時にMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が低融点ガラス原料粉末によって部分的に損傷される場合があり、本来鉄粉末の周囲を完全に取り囲んでいるべきMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が部分的に損傷し、本来有するはずの優れた絶縁性を確保できていない結果として、比抵抗を向上させることができず、渦電流損失の面で不利となり易い問題があるとの知見に至った。
【0009】
本発明は前記の問題に鑑みて創案されたものであり、その目的は、軟磁性粒子の周囲に形成する絶縁皮膜に損傷を与えることなく圧密し、焼成することが可能であり、高抵抗化することが可能であり、また、バインダーとして用いる低融点ガラスを軟磁性粒子の周囲の隅々まで浸透させて焼成し生成するので、高強度化することができ、しかも高比抵抗かつ低損失な特性を確保できる高強度低損失複合軟磁性材の製造方法と高強度低損失複合軟磁性材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の高強度低損失複合軟磁性材の製造方法は、軟磁性粒子を絶縁皮膜で被覆してなる複数の絶縁被覆軟磁性粒子と平均粒径2nm〜200nmの低融点ガラスの原料粉末粒子と内部潤滑剤を混合して圧密し、焼成することにより、絶縁被覆軟磁性粒子の粒界に、低融点ガラスの境界層を形成することを特徴とする。
【0011】
本発明の絶縁皮膜として(Mg、Fe)Oを主体としてなるMg含有絶縁皮膜を備えた絶縁被覆軟磁性粒子を用いることができる。
本発明の低融点ガラスとして、SiO−B−NaO系、NaO−B−ZnO系、SiO−B−ZnO系、SiO−B−LiO系ガラスのうち、少なくとも1種類以上を用いることができる。
本発明の前記内部潤滑剤として、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸アルミニウムの1種以上を用いることができる。
【0012】
本発明において、前記内部潤滑剤の添加量を0.6質量%以下の範囲とすることができる。
本発明において、前記低融点ガラスの原料粉末粒子の添加量を0.1〜5質量%の範囲とすることができる。
本発明の高強度低損失複合軟磁性材は、先のいずれかに記載の高強度低損失複合軟磁性材の製造方法により得られたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高強度低損失複合軟磁性材によれば、平均粒径2nm〜200nmの低融点ガラスの原料粉末粒子を内部潤滑剤と絶縁被覆軟磁性粒子とともに混合して圧密し焼成するので、圧密焼成後において、絶縁被覆軟磁性粒子が個々に絶縁皮膜で確実に被覆された上に、絶縁皮膜に欠損部が少ないので、圧密焼成後の状態において個々の軟磁性粒子が確実に絶縁被覆されている結果として、圧密焼成後に得られた状態において比抵抗を大きくすることができる結果、鉄損を少なくすることができる。
内部潤滑剤を添加したガラス原料粒子を圧密し焼成してなる低融点ガラスの境界層を介し絶縁被覆軟磁性粒子同士を結合しているので、軟質の内部潤滑剤が圧密時の絶縁皮膜の損傷を抑制する結果、圧密焼成後の境界層部分における機械的結合力に優れ、高強度な複合軟磁性材が得られる。
境界層が均一であり、かつ、軟磁性粒子が個々に確実に絶縁被覆されているので、低融点ガラスの境界層が高比抵抗の状態とされる結果、軟磁性焼成材として高抵抗化ができており、渦電流損失も抑制することができる。
【0014】
また、絶縁被覆が(Mg、Fe)Oを主体としてなるMg含有絶縁皮膜であるならば、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子が個々に高比抵抗の境界層で分離されているので、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子が本来有する、優れた軟磁気特性を維持しながら、高比抵抗で渦電流損失の抑制された低損失の高強度低損失複合軟磁性材を提供できる。
本発明の高強度低損失複合軟磁性材は、高密度、高強度、高比抵抗および高磁束密度を有するので、本発明の複合軟磁性材は、高強度と高磁束密度、かつ、高周波低鉄損の特徴を兼ね備え、優れたものであり、これらの特徴を生かした各種電磁気回路部品の材料として使用できる。
【0015】
前記高強度高比抵抗低損失複合軟磁性材を用いて構成される電磁気回路部品として、例えば、磁心、電動機コア、発電機コア、ソレノイドコア、イグニッションコア、リアクトルコア、トランスコア、チョークコイルコアまたは磁気センサコアなどとしての利用が可能であり、いずれにおいても優れた特性を発揮し得る電磁気回路部品を提供できる。
そして、これら電磁気回路部品を組み込んだ電気機器には、電動機、発電機、ソレノイド、インジェクタ、電磁駆動弁、インバータ、コンバータ、変圧器、継電器、磁気センサシステム等があり、これら電気機器の高効率高性能化や小型軽量化に寄与するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明に係る高強度高比抵抗複合軟磁性材の一例構造を示す組織写真の模式図。
【図2】図2は本発明に係る高強度高比抵抗複合軟磁性材を製造するための工程の一例を示す工程図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明をMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子に適用した場合を例にして以下に詳細に説明するが、本発明では軟磁性粒子の外面に被覆する絶縁皮膜をMgOの絶縁皮膜に限定するものではなく、リン酸塩皮膜、またはシリカのゾルゲル溶液(シリケート)もしくはアルミナのゾルゲル溶液などの湿式溶液を添加し、混合した後に乾燥し焼成した酸化ケイ素もしくは酸化アルミニウム皮膜等であってもよい。
【0018】
図1は本発明に係る第1実施形態の高強度高比抵抗複合軟磁性材の一例構造を示す組織写真の模式図であり、この形態の高強度高比抵抗複合軟磁性材Aは、低融点ガラスからなる境界層8でMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5A、5Aを結合した組織構造とされている。
なお、図1では2つのMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5Aを低融点ガラスからなる境界層8で結合した構造の一部分のみを示しているが、実際の高強度低損失複合軟磁性材Aは多数のMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5Aがそれらの境界部分に境界層8を介在させて結合された組織構造とされている。
また、この形態の高強度低損失複合軟磁性材Aは、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5A、5A間に低融点ガラスからなる境界層8が確実に介在されたものであり、境界層8が確実に存在することにより高強度かつ低損失の高強度低損失複合軟磁性材Aが得られる。
【0019】
この形態の高強度低損失複合軟磁性材Aにあっては、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子本体5の表面に存在するMg含有絶縁皮膜6が軟磁性粒子に十分に密着し、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5Aが形成されている。
このような組織であると、多数のMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子本体5が十分な量のMg含有絶縁皮膜6により絶縁被覆されるとともに、それらが低融点ガラスの境界層8を介し確実に接合されている。なお、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子本体5とMg含有絶縁皮膜6、粒界層8については後に詳細に説明する。
【0020】
以下、図1に示す組織構造の高強度低損失複合軟磁性材Aを製造する方法の一例について以下に順次工程順に説明する。
「Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子の製造」
本発明ではまず、(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が軟磁性粒子の表面に被覆形成されたMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子(粉末)を作製する。
この被覆軟磁性粒子を得るためには、以下のいずれかの原料粉末を用い、後述に記載の方法で実施すれば良い。
この発明のMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子の製造方法において使用する原料粉末としてのFe系軟磁性粒子は、従来から一般に知られている鉄粉末、Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Co系鉄基軟磁性合金粉末、Fe−Co−V系鉄基軟磁性合金粉末またはFe−P系鉄基軟磁性合金粉末であることが好ましい。
更に具体的には、鉄粉末は純鉄粉末であり、Fe−Al系鉄基軟磁性合金粉末はAl:0.1〜20質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Al系鉄基軟磁性合金粉末(例えば、Fe−15質量%Alからなる組成を有するアルパーム粉末)であることが好ましい。
【0021】
また、Fe−Ni系鉄基軟磁性合金粉末はNi:35〜85質量%を含有し、必要に応じてMo:5質量%以下、Cu:5質量%以下、Cr:2質量%以下、Mn:0.5質量%以下の内の1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるニッケル基軟磁性合金粉末(例えば、Fe−49質量%Ni粉末)であり、Fe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末はCr:1〜20質量%を含有し、必要に応じてAl:5質量%以下、Ni:5質量%以下の内の1種または2種を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Cr系鉄基軟磁性合金粉末であり、Fe−Si系鉄基軟磁性合金粉末は、Si:0.1〜10質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Si系鉄基軟磁性合金粉末であることが好ましい。
また、Fe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末は、Si:0.1〜10質量%、Al:0.1〜20質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Si−Al系鉄基軟磁性合金粉末であり、Fe−Co−V系鉄基軟磁性合金粉末は、Co:0.1〜52質量%、V:0.1〜3質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Co−V系鉄基軟磁性合金粉末であり、Fe−Co系鉄基軟磁性合金粉末は、Co:0.1〜52質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−Co系鉄基軟磁性合金粉末であり、Fe−P系鉄基軟磁性合金粉末は、P:0.5〜1質量%を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなるFe−P系鉄基軟磁性合金粉末であることが好ましい。
【0022】
そして、これらFe系の軟磁性粒子は平均粒径:5〜500μmの範囲内にある軟磁性金属粉末(粒子)を使用することが好ましい。その理由は、平均粒径が5μmより小さすぎると、軟磁性粒子の圧縮性が低下し、軟磁性粒子の体積割合が低くなるために磁束密度の値が低下するので好ましくなく、一方、平均粒径が500μmより大きすぎると、軟磁性粒子内部の渦電流が増大して高周波における透磁率が低下することによるものである。
【0023】
これら各種のFe系軟磁性粒子のいずれかを原料粉末として用い、酸化雰囲気中において室温〜500℃に保持する酸化処理を施した後、この原料粉末にMg粉末を添加し混合して得られた混合粉末を温度:150〜1100℃、圧力:1×10−12〜1×10−1MPaの不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で加熱し、さらに必要に応じて酸化雰囲気中、温度:50〜400℃で加熱すると、Fe系軟磁性粒子の表面にMg含有酸化絶縁皮膜6を有するMg含有絶縁物被覆軟磁性粉末(粒子)5が得られる。
前記Mg粉末の添加量は0.1〜0.3質量%の範囲内にあることが好ましく、前記加熱温度は650℃、前記真空雰囲気は圧力:1×10−7〜1×10−4MPaの真空雰囲気であることが好ましい。
このMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子本体5は、従来のMgフェライト膜を形成したMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子に比べて密着性が格段に優れたものとなり、このMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子本体5をプレス成形して圧粉体を作製しても絶縁皮膜が破壊し剥離することが少なく、また、このMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子本体5の圧粉体を温度:400〜1300℃で焼成して得られた軟磁性複合圧密焼成材は粒界にMg含有酸化膜が均一に分散し、粒界三重点にMg含有酸化膜が集中していない組織が得られる。
【0024】
前述の製造方法の場合、酸化処理した軟磁性粒子を原料粉末とし、この原料粉末にMg粉末を添加し混合して得られた混合粉末を温度:150〜1100℃、圧力:1×10−12〜1×10−1MPaの不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で加熱するには、前記混合粉末を転動させながら加熱することが好ましい。
【0025】
「堆積膜」という用語は、通常、真空蒸着やスパッタされた皮膜構成原子が例えば基板上に堆積された皮膜を示すが、本発明において用いる堆積膜とは、酸化鉄膜を有するFe系軟磁性粒子の酸化鉄(Fe−O)とMgが反応を伴って当該Fe系軟磁性粒子表面に堆積したMg含有絶縁皮膜を示す。このFe系軟磁性粒子の表面に形成されているMg含有絶縁皮膜(Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜)の膜厚は、圧粉成形後に軟磁性複合圧密焼成材の高磁束密度と高比抵抗を得るために、5nm〜200nmの範囲内にあることが好ましい。
ここでの膜厚が5nmより薄いと、圧粉成形した軟磁性複合圧密焼成材の比抵抗が充分ではなくなる傾向があり、渦電流損失が増加するので好ましくなく、膜厚が200nmを越える厚さでは、圧粉成形した軟磁性複合圧密焼成材の磁束密度が低下する傾向となる。このような範囲において好ましい膜厚は、5nm〜100nmの範囲内である。
【0026】
「高強度低損失複合軟磁性材の製造方法」
以上説明した方法により前述の如く作製したMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子を使用して高強度低損失複合軟磁性材を製造するには、まず、前述の方法で作製したMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子に対し、バインダー材としての低融点ガラスの原料粉末(粒子)と内部潤滑剤を添加する。
前記低融点ガラスの原料混合粉末(粒子)として、ナノオーダー、特に平均粒径2〜200nm程度の原料粉末であることが好ましく、平均粒径2nm〜100nmの範囲がより好ましい。また、低融点ガラスの原料混合粉末の添加量はMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子の質量に対して0.1〜5質量%の範囲が好ましく、0.5〜3質量%の範囲がより好ましい。
【0027】
内部潤滑剤は、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸アルミニウムの中から選択される1種以上を用いることが好ましい。これらの内部潤滑剤を添加する量は、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子の質量に対して0.6%以下が好ましく、より好ましくは0.01%〜0.6%の範囲が好ましい。
なお、これらのナノオーダーの粒径範囲の低融点ガラスの原料粉末をハンドリングすることは容易ではないので、先のMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子に添加する場合、原料粉末をエタノールなどの有機溶媒に超音波分散により均一分散し、この有機溶媒中に先のMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子を浸漬して取り出し、有機溶媒を加熱し乾燥して除去した後に内部潤滑剤を添加し、成形する方法を採用することが好ましい。ただし、乾式によって低融点ガラスの原料粉末と内部潤滑剤と先のMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子を混合し成形する方法も可能である。
【0028】
ここで用いる低融点ガラスとして、SiO−B−NaO系、NaO−B−ZnO系、SiO−B−ZnO系、SiO−B−LiO系ガラスのうち、少なくとも1種類以上を使用することが好ましい。
また、必要に応じ、これらの低融点ガラスにSiO、NaO、ZnO、B、LiO、SnO、BaO、CaO、Alの1種類または2種類以上を添加した組成を有する低融点ガラスを使用しても良い。
例えば、SiO−B−ZnO系にAlとLiOを添加した組成系、SiO−B−ZnO系にSnOとBaOとCaOとAlとKOを添加した組成系などを例示することができる。
【0029】
更に具体的な組成例として、(A1)SiO2:15質量%、ZnO:31質量%、B2O3:48質量%、Al2O3:4質量%、Li2O:2質量%の組成例、(A2)SiO2:10〜25質量%、Na2O:5〜10質量%、ZnO:30〜40質量%、B2O3:40〜50質量%の組成例、(A3)SiO2+Na2O:45質量%以下、ZnO:20〜30質量%、BaO:1〜10質量%、B2O3:20〜30質量%、Al2O3:1〜10質量%の組成例(A4)SiO2:5〜25質量%、SnO:1〜10質量%、ZnO:30〜55質量%、BaO:1〜10質量%、CaO:1〜10質量%、B2O3:20〜30質量%、Al2O3:1〜10質量%、KO:1〜10質量%の組成例などを例示することができる。
次に、先の成形体を望ましくは窒素雰囲気中などの非酸化性雰囲気において300℃〜1000℃、例えば650℃で数10分、例えば30分程度焼成して高強度低損失複合軟磁性材を形成する。
【0030】
図2は、Mg含有絶縁物被覆軟磁性材を製造する場合において、原料を準備するための最初の工程から、最終処理するまでの工程順の一例を記載したもので、図2の工程S1において用意した原料としての軟磁性合金粉末の原料(例えば純鉄粉末)を工程S2において前酸化して表面酸化し、工程S3においてMgを蒸着し、工程S4において別途用意した低融点ガラス原料粉末(粒子)1及び内部潤滑剤2と混合した後、工程S5において乾燥し、工程S6において目的の形状に成形し、工程S7において焼成処理することにより、先に説明した如く本発明に係る高強度低損失複合軟磁性材を得ることができる。
なお、前述の混合を行う工程S4においては、1つの例として、低融点ガラス原料混合粉末1をエタノールなどの有機溶媒中において超音波振動を付加してエタノール中に均一分散し、この有機溶媒中に前述のMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜を形成した絶縁被覆軟磁性粒子を投入し、この後の工程S5において乾燥した後に内部潤滑剤2と混合する方法でも良いし、前述のMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜を形成した絶縁被覆軟磁性粒子と低融点ガラス原料混合粉末1と内部潤滑剤2の粉末を直接混合しても良い。なお、このような乾式で直接混合する方法を採用する場合、工程S5の加熱し乾燥する工程は必要がない。
以上説明した工程S1〜S7において選択するべき各種の条件は前述した条件、あるいは後述する条件が好ましい。
【0031】
以上説明のS6工程においてMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子とその周囲に存在する低融点ガラス原料混合粉末及び内部潤滑剤とを金型等を用いて圧密すると、目的の形状の成形体を得ることができる。なお、圧密時にMg含有絶縁皮膜(Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜)の損傷をできるだけ防止する目的で、Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の膜厚が5nm〜200nmの範囲内にあり、低融点ガラスの原料混合粉末(粒子)として2〜200nm程度の原料粉末である場合、Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の膜厚に対して低融点ガラスの原料混合粉末の粒径を小さいものとすることが好ましい。
【0032】
これは、圧密時に必然的にMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜に対して低融点ガラスの原料混合粉末が押し付けられるので、物理的にMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が損傷するのを低減するためである。この関係を外れてMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の膜厚より大きい低融点ガラス原料粉末を用いると、圧密時にMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の損傷により、損傷部位で軟磁性粒子同士が接触し、導通が引き起こされることで、最終的に得られた複合軟磁性材の比抵抗値が低下する。また、この関係を外れてMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の膜厚より小さい低融点ガラスの原料混合粉末を用意しようとしても、粉末粒径が小さくなり過ぎて製造時のハンドリングに支障を来すおそれが高い。
【0033】
以上説明の方法により得られた高強度低損失複合軟磁性材Aは、前記複数のMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5Aの結合が、前記Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子本体5とその表面に被覆されたMg含有絶縁皮膜(Mg含有酸化物皮膜)6とを具備してなるMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5Aを介してなされたものであり、前述のナノオーダーの低融点ガラス原料混合粉末と内部潤滑剤を混合し、圧密して焼成することにより低融点ガラス層からなる境界層8が得られた材料であり、しかも、Mg含有絶縁皮膜6で軟磁性粒子本体5が十分に被覆されているので、高い比抵抗値が得られる。また、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5Aとともに内部潤滑剤を添加混合しているため、圧密時にMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5A同士が押圧された場合であっても混合した潤滑剤がMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5Aの表面のMg含有絶縁皮膜6の損傷を抑制するので、目的の厚さのMg含有絶縁皮膜6を備えたMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5Aを生成することができる。
従って例えば、図1に示す如く、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子5A、5Aの間に存在する低融点ガラスからなる境界層8が実質的に全てのMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子間に可能な限り均一に分散されて境界層8とされるとともに、各Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子本体5の表面にMg含有絶縁皮膜6が必要充分な厚さで存在するので、高強度かつ高比抵抗で低損失のものが得られる。これは、ナノオーダーの微細な低融点ガラスの原料混合粉末が軟化または溶融する際に各元素がMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子の周囲に容易に流動して組成比が均一な境界層8が生成するためであり、かつ、Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の膜厚に対して十分に小さな粒径の低融点ガラス原料混合粉末を用いたことにより、圧密時にMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の損傷が少なく、十分な膜厚で軟磁性粒子本体5が被覆されているためである。
【0034】
以上の製造方法により得られた高強度低損失複合軟磁性材は、高密度、高強度、高比抵抗、低損失および高磁束密度を有し、この高比抵抗低損失複合軟磁性材は、高磁束密度で高周波低鉄損の特徴を有する事から、この特徴を生かした各種電磁気回路部品の材料として使用できる。
また、以上の製造方法により得られた高強度低損失複合軟磁性材にあっては、(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と、その界面に存在する低融点ガラスの均一性に優れた境界層を備えているので、特にMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子同士の粒子接合が良好になされ、かつ、粒子個々の絶縁被覆が十分になされていて、強度が高く、比抵抗の大きな、渦電流損失の少ない、低鉄損失の軟磁気特性に優れた高強度低損失複合軟磁性材を得ることができる。
【0035】
なお、軟磁性粒子の表面に被覆する絶縁皮膜は先のMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜に限るものではなく、リン酸塩皮膜、酸化ケイ素皮膜、酸化アルミニウム皮膜等であっても良く、前述の望ましい膜厚とすることで、十分に小さな粒径の低融点ガラス原料混合粉末との混合圧密時に絶縁被膜の損傷を低減することができ、同等の作用効果を得ることができる。
【実施例】
【0036】
平均粒径100μmの軟磁性粒子(純鉄粉末)に対して大気中250℃にて加熱処理を0〜60分間行った。ここでMgO膜は前段の250℃大気中加熱処理で生成される酸化膜厚に比例するので、Mgの添加量は必要最小限度で良く、鉄粉に対して0.3質量%のMg粉末を配合し、この配合粉末を0.1Paの真空雰囲気中、バッチ式回転キルンによって転動させながら650℃に加熱することによりMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜被覆軟磁性粒子(Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子)を作製した。
このMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子の外周面に形成されている(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の膜厚は、前述の大気中加熱処理で生成される酸化膜厚に比例するので、膜厚20〜200nmのものを試験試料として用いた。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
次に表2に示す各組成比であって、表1に示す各平均粒径の低融点ガラス用の原料粉末試料1〜6を用い、これらの原料粉末を適宜使用し、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子とともにエタノール中に10g/cmの割合で投入し、超音波加振器により均一分散させた後、加熱してエタノールを蒸発させることで、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子の表面に前述の各組成比の低融点ガラスの原料粉末を付着させた混合粉末を得た。この混合粉末にステアリン酸リチウム(Li−st)あるいはステアリン酸カルシウム(Ca−st)のいずれかを乾式混合し、成形用原料粉末を作製した。
次に表1に示す成形圧力で圧密し、表3に示す如く窒素雰囲気中、650℃にて0.5時間焼成し、目的の軟磁性複合圧密焼成材を得た。
得られた軟磁性複合圧密焼成材の各試料の抗折強度(MPa)、比抵抗(μΩ・m)、密度(Mg/m)、10kA/mにおける磁束密度(T)、1.0T、400Hzにおけるコアロス(W/kg)の値を測定した結果を表3に示す。
【0040】
「比較例」
比較のために、表2に示す各組成比であって、表1に示す各平均粒径の低融点ガラス用の原料粉末試料7〜12を適宜使用してMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子とともにエタノール中に10g/cmの割合で投入し、超音波加振器により均一分散させた後、加熱してエタノールを蒸発させることで、Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子の表面に前述の各組成比の低融点ガラスの原料粉末を付着させた混合粉末を得た。
次に表1に示す内部潤滑剤添加量にて混合粉末と混合し、混合粉末を表1に示す成形圧力で圧密し、表3に示す如く窒素雰囲気中、650℃にて0.5時間焼成し、目的の軟磁性複合圧密焼成材を得た。
【0041】
「従来例」
Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子を成形圧力:790MPaで圧密し、表3に示す如く窒素雰囲気中、650℃にて0.5時間焼成し、前記低融点ガラス用の原料混合粉末無添加の軟磁性複合圧密焼成材を得た。
従来例および比較例で得られた軟磁性複合圧密焼成材の各試料の抗折強度(MPa)、比抵抗(μΩ・m)、密度(Mg/m)、10kA/mにおける磁束密度(T)、1.0T、400Hzにおけるコアロス(W/kg)の値を測定した結果を表3に示す。
【0042】
次に、表3のNo.3の試料について、2つの隣接するMg含有絶縁物被覆軟磁性粒子とそれらの間に存在する境界層部分を断面とした組織写真を図1に示す。図1の組織写真において、左斜め上側から右斜め下側の方向に延在する溝状の部分が境界層を示している。
【0043】
【表3】

【0044】
表3に示す結果から、従来例および比較例に比べ抗折強度が高く、比抵抗が大きく、密度が同等か若干高く、磁束密度が同等か若干高く、鉄損が少ない優れた高強度高比抵抗低損失複合軟磁性材を本発明方法により得られることが判明した。また、低融点ガラスの原料粉末の粒径の好ましい範囲は5〜200nmの範囲であるが、具体的に19〜135nmの範囲で良好な特性が得られ、より好ましい範囲は、5〜100nmの範囲であるが、具体的に19〜31nmの範囲ならば、抗折強度が高く、比抵抗がより高く、鉄損がより少ないことがわかった。
【0045】
表3においてNo.7〜No.12の試料はいずれも低融点ガラス原料粉末の平均粒径が200nmを超える大きい試料であるが、抗折強度においてNo.7、8、10の試料は実施例の試料より大幅に低く、比抵抗についてはNo.7〜12のいずれの試料においても実施例試料よりも大幅に小さく、鉄損について数値が大幅に増大し、特性が悪化した。また、従来例の試料は、抗折強度が著しく劣化しており、比較例の試料よりも比抵抗は若干高いものの、実施例の試料よりも遙かに低い比抵抗となり、鉄損も大幅に悪化している。
表3に示す対比から、本発明に係るNo.1〜6の試料は、抗折強度が高く、比抵抗値が大きく、従って鉄損が少なく、密度も高く磁束密度で示される磁気特性においても優秀であることが明らかとなった。
また、表1のNo.13〜16の試料によると内部潤滑剤の添加量が0.6質量%以下、より好ましくは0.01〜0.6質量%であることが望ましい。添加量が少ない場合は、圧密成形時の低融点ガラスによるMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の損傷を防ぎ、比抵抗を向上させるという潤滑剤の効果が小さくなり、添加量が多い場合は圧密成形時の密度が低くなるため強度が低下するととともに、磁束密度も低下する傾向となる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明による高強度高比抵抗低損失複合軟磁性材は、電磁気回路部品として、例えば、磁心、電動機コア、発電機コア、ソレノイドコア、イグニッションコア、リアクトルコア、トランスコア、チョークコイルコアまたは磁気センサコアなどとしての利用が可能であり、いずれにおいても優れた特性を発揮し得る電磁気回路部品へ適用ができる。
そして、これら電磁気回路部品を組み込んだ電気機器には、電動機、発電機、ソレノイド、インジェクタ、電磁駆動弁、インバータ、コンバータ、変圧器、継電器、磁気センサシステム等があり、これら電気機器の高効率高性能化や小型軽量化を推進できる。
【符号の説明】
【0047】
A…高強度高比抵抗複合軟磁性材、5…Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子本体、5A…Mg含有絶縁物被覆軟磁性粒子、6…Mg含有絶縁皮膜(Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜)、8…境界層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性粒子を絶縁皮膜で被覆してなる複数の絶縁被覆軟磁性粒子と平均粒径2nm〜200nmの低融点ガラスの原料粉末粒子と内部潤滑剤を混合して圧密し、焼成することにより、絶縁被覆軟磁性粒子同士の粒界に、低融点ガラスの境界層を形成することを特徴とする高強度低損失複合軟磁性材の製造方法。
【請求項2】
絶縁皮膜として(Mg、Fe)Oを主体としてなるMg含有絶縁皮膜を備えた絶縁被覆軟磁性粒子を用いることを特徴とする請求項1に記載の高強度低損失複合軟磁性材の製造方法。
【請求項3】
低融点ガラスとして、SiO2−B2O3−Na2O系、Na2O−B2O3−ZnO系、SiO2−B2O3−ZnO系、SiO2−B2O3−Li2O系ガラスのうち、少なくとも1種類以上を用いることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度低損失複合軟磁性材の製造方法。
【請求項4】
前記内部潤滑剤として、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸アルミニウムの1種以上を用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高強度低損失複合軟磁性材の製造方法。
【請求項5】
前記内部潤滑剤の添加量を0.6質量%以下の範囲とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の高強度低損失複合軟磁性材の製造方法。
【請求項6】
前記低融点ガラスの原料粉末粒子の添加量を0.1〜5質量%の範囲とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高強度低損失複合軟磁性材の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の高強度低損失複合軟磁性材の製造方法により得られたことを特徴とする高強度低損失複合軟磁性材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−238914(P2010−238914A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85350(P2009−85350)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【出願人】(306000315)株式会社ダイヤメット (130)
【Fターム(参考)】