説明

高温で化学反応を連続的に行うための装置

本発明の対象は、マイクロ波発生器、内部にマイクロ波透過性管があるマイクロ波アプリケータ、及び等温反応区域を含む、化学反応を連続的に行うための装置であって、前記マイクロ波透過性管内の反応物が、加熱ゾーンとして機能するマイクロ波アプリケータ中を通って誘導され、前記マイクロ波アプリケータ中では、マイクロ波発生器から前記マイクロ波アプリケータへ誘導されるマイクロ波を使って、該反応物が反応温度まで加熱され、そして加熱され、そして場合によっては圧力下にある該反応物が、前記加熱ゾーンから出た直後に前記加熱ゾーンに直接つながる等温反応区域中に移され、そしてその等温反応区域から出た後に冷却されるように、前記マイクロ波発生器、前記マイクロ波アプリケータ、及び前記等温反応区域が配置されている装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的規模でマイクロ波照射によって加熱しながら高温および過剰圧力にて化学反応を連続的に行うための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学反応は温度上昇により加速させることができる。しかし工業的には温度上昇は、その際に生じる圧力により制約を受ける。少なくとも数リットルまたは数立方メートルの大きな容器内では、高圧下での反応の実施は、その際に生じる安全性リスクのため、もし実施されるとしても、大きな技術的労力を伴ってのみ実現可能である。さらに、古典的な撹拌容器(例えば、ファウドラー型撹拌機(Pfaudler−Kesseln)など)において行われる反応は、要求される熱伝導を確保するためには、反応温度を調節する際に、対応するより高いジャケットまたは発熱体の温度を必要とする。しかしそのため、加熱面において局所的な過熱が生じ、また望ましくない副反応または反応混合物の分解もしばしば生じ、それによって生成物の品質低下、および/または収率の低下が生じる。
【0003】
高圧に起因する安全性リスクは、連続的に作動する反応管を使用することにより減少させることができるが、その場合も、反応媒体への熱伝導の際に、必要な熱勾配によって生じる問題がある。大きな加熱速度には高いジャケット温度が必要となり、これがさらに望ましくない副反応または分解をもたらすことがある。それに対して中程度のジャケット温度では、反応管において標的時間に達するのに長い滞留時間が必要となり、したがって小さな流速および/または長い管が必要となる。このように徐々に加熱する間に、多くの反応において、同様に望ましくない副反応が観察される。
【0004】
マイクロ波場において反応を実施することは化学合成の新たな傾向である。1日当たり数kgを超える製造を可能とする装置が今まで知られていなかったので、このような反応技法は、今まで主として実験室規模で使用されており、小工業規模では稀にしか使用されていなかった。
【0005】
国際公開第90/03840号明細書(特許文献1)は、連続的な実験室マイクロ波反応器において多様な化学反応を行うための連続的な方法を開示している。その場合、反応物は、マルチモード電子レンジにおいて1.4l/時までの可変流速にて12バールまでの圧力下で190℃までの温度に加熱される。反応生成物は基本的に、マイクロ波ゾーンを通過した後ただちに冷却される。しかし、達成される転化は、多くの場合、なお最適化ポテンシャルを示し、反応物のマイクロ波吸収に関するこの方法の効率は、マルチモードマイクロ波アプリケータ内においてマイクロ波エネルギーが照射空間に多かれ少なかれ均質に分布し、管コイル(Rohrschlange)に集束されないため、低い。入射されるマイクロ波出力を強く上昇させると、ここでは望ましくないプラズマ放電が生じることになる。さらに、ホットスポット(Hot−Spots)と称される、マイクロ波場の、経時的に変動する空間不均一性のために、確実かつ再現性のある反応を大規模で実施し得ない。
【0006】
欧州特許出願公開第1291077号明細書(特許文献2)は、マイクロ波中空導波管(Mikrowellenhohlleiter)を通過する管内の液体が定常電磁波の伝播方向を横切って案内され、その中で分子がマイクロ波放射による解離および/またはイオン化によって活性化されて、反応空間でさらなる反応体と反応する、マイクロ波リアクターを開示している。照射ゾーンが非常に小さいため、一方ではその中で処理可能な物質量が極めて限られ、他方では導入可能なエネルギー量が少ない。その上、反応物中へのマイクロ波の浸入深さが一般に数ミリメートルから数センチメートルまでに制限されているため、管断面を拡大することによってこの方法を規模拡大することが妨げられている。
【0007】
Esveld et al., Chem. Eng. Technol. 23 (2000), 429 − 435(非特許文献1)は、モンモリロナイトの存在下に脂肪族アルコールと脂肪酸を溶媒なしでエステル化させる、ろうエステルを連続的に製造する方法を記述している。コンベヤーベルト上において、反応混合物がマイクロ波照射によって5分以内に反応温度まで加熱され、次いで、発生する反応水を十分に除去するためにさらに30分間その温度に維持される。開放系で行われるこの方法は当然、高沸点の反応体(および反応生成物)に対してのみ適用可能である。
【0008】
慣習的に筒形連続反応器内で連続的に行われるマイクロ波支援反応の場合、反応物は、照射ゾーンを出た直後に、例えば国際公開第04/054707号(特許文献3)による断熱膨張によって可能な限り急速に冷却される。
【0009】
多くの化学反応は、化学平衡を調節するために、そしてそれでもって収率を最適化するために、迅速かつ的確な加熱とともに、標的温度における一定の滞留時間を必要とする。したがって、化学平衡を調節するために、そしてそれでもって可能な限り高い収率を得るために、マイクロ波照射ゾーンで対応する滞留時間が望まれるが、それはスループットを、そしてそれでもって空時収率を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開第90/03840号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1291077号明細書
【特許文献3】国際公開第04/054707号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Esveld et al., Chem. Eng. Technol. 23 (2000), 429 − 435
【非特許文献2】K. Lange, K.H. Locherer, Taschenbuch der Hochfrequenztechnik”, Band 2, Seite K21 ff
【非特許文献3】D. Bogdal, Microwave−assisted Organic Synthesis, Elsevier 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって本発明の課題は、工業規模にて高温で化学反応を連続的に行うための装置であって、反応物を出来る限り迅速に、かつ部分的過熱なしに所望の温度に加熱し、その後一定時間前記反応温度を維持し、続いて冷却することができる装置を提供することである。さらにこの装置は、反応混合物のすべての成分が液体状態に留まるように、大気圧を超える稼働を可能にすべきである。この装置は、高い空時収率、高いエネルギー効率、さらにその上確実かつ再現性のある稼働を可能にすべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
驚くべきことに、マイクロ波透過性の管内の反応物が加熱ゾーン中を導かれ、加熱ゾーン内で反応物がマイクロ波により最少時間で反応温度に加熱され、加熱され場合によっては加圧された反応物が加熱ゾーンから等温反応区域に移され、等温反応区域から出た後に反応物が場合によっては減圧され冷却されるような装置内で、化学反応を特に穏やかにかつ非常に高い空時収率で行うことができることが見いだされた。
【0014】
本発明の対象は、マイクロ波発生器と、マイクロ波透過性管を収容したマイクロ波アプリケータと、等温反応区域とを含む、化学反応を連続的に行うための装置であって、マイクロ波透過性管内の反応物が、加熱ゾーンとして機能するマイクロ波アプリケータ中を導かれ、マイクロ波アプリケータ内で、マイクロ波発生器からマイクロ波アプリケータへと導かれるマイクロ波によって反応物が反応温度まで加熱され、加熱され場合によっては加圧された反応物が、加熱ゾーンから出た直後に加熱ゾーンに隣接する等温反応区域に運ばれ、等温反応区域から出た後に冷却されるように、マイクロ波発生器、マイクロ波アプリケータ、および等温反応区域が配列されている装置である。
【0015】
本発明のさらなる対象は、化学反応を連続的に行うための方法であって、マイクロ波透過性管内の反応物が加熱ゾーン中を導かれ、加熱ゾーン内で反応物がマイクロ波により反応温度まで加熱され、加熱され場合によっては加圧された反応物が加熱ゾーンから出た直後に加熱ゾーンに隣接する等温反応区域に運ばれ、等温反応区域から出た後に冷却される方法である。
【0016】
本発明による装置および本発明による方法は、一定の活性化エネルギーを要する反応に特に適している。本発明による装置および方法は、活性化エネルギーが少なくとも0.01kJ/mol、特に少なくとも0.1kJ/Mol(例えば、1〜100kJ/molなど)である反応に特に適している。さらに好ましくは、本発明による装置および本発明による方法は、大きな反応熱を伴わずに進行する反応に適している。したがって、本発明による装置および方法は、反応熱ΔHが−20kJ/mol未満、特に−10kJ/mol未満(例えば、−2kJ/mol未満など)である反応に適している。本発明による装置および本発明による方法は、反応熱ΔHが+0.1kJ/mol超、特に+1kJ/mol〜+100kJ/mol、例えば、+2kJ/mol〜70kJ/molである吸熱反応に特に適している。適切な化学反応の例には、エステル化、アミド化、エステル加水分解、エーテル化、アセタール化、エン反応、ディールス・アルダー反応、酸化、還元、水素添加、求核置換、付加、加水分解、異性化、縮合、脱カルボキシル化、脱離、および重合、例えば、重縮合がある。本来の反応体の他に、反応混合物は、例えば、溶剤および/または反応を促進させるための触媒などの助剤も含んでいてよい。
【0017】
約1cm〜1mの波長、および約300MHz〜30GHzの周波数を有する電磁波をマイクロ波と呼ぶ。この周波数帯域が原理的に本発明による方法に適している。好ましくは、工業的、学問的、医学的、家庭用または類似の用途向けに許可された周波数(例えば、915MHz、2.45MHz、5.8GHzまたは24.12GHzなど)を有するマイクロ波放射が本発明により使用される。
【0018】
好ましい一実施形態において、本発明による装置はマイクロ波透過性管として、反応物がその中を貫流する際にマイクロ波放射にさらされる、耐圧性の化学的に不活性な管(加熱管)を含む。マイクロ波照射には、様々な形状のマルチモードおよび単一モードの電子レンジ(またはマルチモードおよび単一モードのマイクロ波アプリケータ)を使用することができる。
【0019】
マイクロ波発生器、マイクロ波アプリケータ、およびマイクロ波透過性管は、前記マイクロ波透過性管内の反応物が、加熱ゾーンとして機能するマイクロ波アプリケータ中を導かれ、マイクロ波アプリケータ内で、マイクロ波発生器からマイクロ波アプリケータへと導かれるマイクロ波によって反応物が反応温度まで加熱されるように配列されている。等温反応区域は、加熱され場合によっては加圧された反応物が、加熱ゾーンから出た直後に加熱ゾーンに隣接する等温反応区域に運ばれ、等温反応区域から出た後に冷却されるように配置されている。
【0020】
その際、加熱管は、例えば、直線または管コイルに形成されていてよい。例えば、マルチモード電子レンジ内にある場合、加熱管として管コイルの使用が特に有用である。さらに単一モード電子レンジ内にある場合、加熱管として直線管の使用が特に有用である。特に好ましい一実施形態において、その長軸が単一モードマイクロ波アプリケータのマイクロ波伝播方向にある、マイクロ波透過性の直線管内で反応物の加熱が行われる。
【0021】
好ましくは、マイクロ波による反応物の照射は、マイクロ波発生器に結合された中空導波管の内部に存在する、マイクロ波透過性で直線状の加熱管内で行われる。好ましくは、加熱管は中空導波管の中心対称軸と軸方向に一直線に並ぶ。
【0022】
マイクロ波アプリケータとして機能する中空導波管は、好ましくは空洞共振器として形成される。さらに好ましくは、中空導波管内の反応物に吸収されなかったマイクロ波は、その末端で反射される。好ましくは、空洞共振器の長さは、その中で定常波が形成されるような寸法である。マイクロ波アプリケータを反射型の共振器として形成することによって、アプリケータにおいて、発生器から供給される出力が同じ場合には電場強度の局所的増大が生じ、エネルギー利用が高まる。
【0023】
空洞共振器は好ましくはE01nモードで稼働する。ただし、nは整数を表し、共振器の中心対称軸に沿ったマイクロ波場の極大の数を示す。この操作に際して、電場は、空洞共振器の中心対称軸の方向を向く。空洞共振器は中心対称軸の領域で1つの極大を有し、外側面に向かって値0へと減少する。この電場の形状は、中心対称軸の周りで回転対称である。nが整数となる長さを有する空洞共振器を使用することにより、定常波の形成が可能となる。加熱管を通過する反応物の所望の流速、所望の温度、およびそのために必要とされる共振器内での滞留時間に応じて、使用されるマイクロ波の波長に対する共振器の長さが選択される。nは、好ましくは1〜200の整数、特に好ましくは2〜100の整数、特には3〜50の整数、とりわけ4〜20の整数(例えば、3、4、5、6、7、8、9または10)である。
【0024】
空洞共振器のE01nモードは、英語ではTM01nモードとも称される(例えば、K. Lange, K.H. Locherer, Taschenbuch der Hochfrequenztechnik”, Band 2, Seite K21 ff(非特許文献2)を参照)。
【0025】
マイクロ波アプリケータとして機能する中空導波管内へのマイクロ波エネルギーの入射は、適切な寸法の穴またはスリットを通して行うことができる。本発明による特に好ましい一実施形態において、マイクロ波による反応物の照射は、マイクロ波の同軸遷移を伴う中空導波管内に存在する加熱管内で行われる。この方法にとって特に好ましいマイクロ波装置は、空洞共振器と、空洞共振器にマイクロ波場を結合するための結合装置と、2つの対向する端壁に位置し、反応管を共振器中を貫通させるための、それぞれ1つの開口部とから構成されている。空洞共振器中へのマイクロ波の結合は好ましくは、空洞共振器内に突出する結合ピンを介して行われる。結合ピンは、結合アンテナとして機能する、好ましくは金属製の内部導体管(Innenleiterrohr)として形成されていることが好ましい。特に好ましい一実施形態において、結合ピンは前面開口部の1つを通って空洞共振器内に突出している。特に好ましくは加熱管は同軸遷移の内部導体管に接続され、特に加熱管はその空洞を通って空洞共振器内に導かれる。好ましくは、加熱管は空洞共振器の中心対称軸と軸方向に一直線に並ぶ。そのために空洞共振器は好ましくは、2つの対向する端壁に位置し、加熱管を貫通させるための、それぞれ1つの中心開口部を有する。
【0026】
結合ピンまたは結合アンテナとして機能する内部導体管へのマイクロ波の供給は、例えば、同軸の接続ライン(Anschlussleitung)によって行われる。好ましい一実施形態において、マイクロ波場は中空導波管を介して共振器に導入され、その際、空洞共振器から、中空導波管の壁に存在する開口部内に突き出た結合ピンの端部が、中空導波管内に突き出し、中空導波管からマイクロ波エネルギーを取り出して、共振器内に結合する。
【0027】
特定の一実施形態において、マイクロ波による反応物の照射は、マイクロ波の同軸遷移を伴うE01n丸形中空導波管内に軸対称に存在するマイクロ波透過性加熱管内で行われる。その際、好ましくは加熱管は、結合アンテナとして機能する内部導体管の空洞を通って空洞共振器へと導かれる。さらなる好ましい一実施形態において、マイクロ波による反応物の照射は、マイクロ波の同軸入射を伴うE01n空洞共振器中を導かれるマイクロ波透過性加熱管内で行われ、その際、空洞共振器の長さは、マイクロ波場の極大がn=2以上形成されるようになっている。さらなる好ましい一実施形態において、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸入射を伴うE01n空洞共振器を通して導かれるマイクロ波透過性加熱管内で行われ、その際、空洞共振器の長さは、マイクロ波場の極大をn=2以上有する定常波が形成されるようになっている。さらなる好ましい一実施形態において、マイクロ波による反応物の照射は、マイクロ波の同軸遷移を伴う円筒形E01n空洞共振器内に軸対称に存在するマイクロ波透過性加熱管内で行われ、その際、空洞共振器の長さは、マイクロ波場の極大がn=2以上形成されるようになっている。さらなる好ましい一実施形態において、マイクロ波による反応混合物の照射は、マイクロ波の同軸遷移を伴う円筒形E01n空洞共振器内に軸対称に存在するマイクロ波透過性加熱管内で行われ、その際、空洞共振器の長さは、マイクロ波場の極大をn=2以上有する定常波が形成されるようになっている。
【0028】
例えば、マグネトロン、クライストロン、およびジャイロトロンなどのマイクロ波発生器が当業者に周知である。
【0029】
マイクロ波照射に使用される加熱管は好ましくは、マイクロ波透過性の高融点材料から製造される。特に好ましくは、非金属の加熱管が使用される。本明細書において「マイクロ波透過性」とは、それ自体では限りなくわずかにマイクロ波エネルギーを吸収し、熱に変化させる材料を意味する。物質の、マイクロ波エネルギーを吸収し熱に換える能力の尺度としてしばしば誘電損率tanδ=ε''/ε'が使用される。誘電損率tanδは、誘電損失ε''と誘電定数ε'との比として定義される。様々な材料のtanδ値の例は、例えば、D. Bogdal, Microwave−assisted Organic Synthesis, Elsevier 2005(非特許文献3)に挙げられている。本発明による適切な反応管としては、2.45GHzおよび25℃で測定したtanδ値が0.01未満、特に0.005未満、とりわけ0.001未満となるものが好ましい。マイクロ波透過性で熱に安定な材料としては、第一に鉱物をベースとした材料、例えば、水晶、酸化アルミニウム、サファイア、酸化ジルコニウム、窒化ケイ素などが考慮の対象となる。特にフルオロポリマー、例えば、テフロン(登録商標)などの熱に安定なプラスチック、およびポリプロピレンやポリアリールエーテルケトン、例えば、ガラス繊維強化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などのエンジニアリング・プラスチックも管材料として適切である。反応中の温度条件に耐えるためには、これらのプラスチックでコートした水晶や酸化アルミニウムなどの鉱物が反応装置用材料として認められている。
【0030】
本発明による特にマイクロ波照射に適した加熱管は、1mm〜約50cm、特に2mm〜35cm、とりわけ5mm〜15cm(例えば、10mm〜7cmなど)の内径を有する。加熱管とは本明細書において、長さと直径の比が、5を超え、好ましくは10〜100.000、特に好ましくは20〜10.000(例えば、30〜1.000など)である容器を意味する。その際、加熱管の長さとは、マイクロ波照射が行われる、管の区間を意味する。加熱管には、バッフルおよび/または他の混合要素が組み込まれていてもよい。
【0031】
本発明による特に適切なE01空洞共振器は好ましくは、印加されるマイクロ波放射の少なくとも半分の波長に相当する直径を有する。空洞共振器の直径は、印加されるマイクロ波放射の半波長の、好ましくは1.0〜10倍、特に好ましくは1.1〜5倍、とりわけ2.1〜2.6倍である。E01空洞共振器は好ましくは円形の横断面を有し、E01丸形中空導波管とも呼ばれる。E01空洞共振器は、特に好ましくは筒形、とりわけ円筒形を有する。
【0032】
加熱ゾーンにおける反応物の滞留時間は、様々な要因、例えば、加熱管の形状、入射するマイクロ波エネルギー、反応物のマイクロ波比吸収率、および所望の反応温度などに依存する。加熱ゾーンにおける反応物の滞留時間は、通常30分未満、好ましくは0.01秒〜15分、特に好ましくは0.1秒〜10分、とりわけ1秒〜5分(例えば、5秒〜2分など)である。その際、マイクロ波光線の強度(出力)は、反応物が加熱ゾーンから出る際に所望の温度を有するように調整される。
【0033】
本発明による方法を実施する際に空洞共振器内に入射されるマイクロ波出力は、特に目標とする反応温度、ならびに加熱管の形状、したがって反応容積、および加熱ゾーンを通過する反応物の流速に依存する。入射されるマイクロ波出力は、通常200W〜数100kW、特に500W〜100kW(例えば、1kW〜70kW)である。マイクロ波出力は、1つまたは複数のマイクロ波発生器によって発生させることができる。空時収率を最大にするために、マイクロ波出力は好ましくは、反応混合物が可能な限り短時間で所望の反応温度に達するが、マイクロ波アプリケータ内で放電を起こすことはないように調整される。
【0034】
好ましくは、マイクロ波照射に起因する温度上昇は、マイクロ波強度および/または流速を調節することによって、少なくとも有機化学の反応に対しては最大で500℃に制限される。無機化学反応では、より高い温度に調整することも可能である。特に、本発明による方法の実施は、70〜最大400℃の温度、特に120〜最大330℃の温度、とりわけ150〜最大300℃、例えば、180〜270℃の温度で有用であった。
【0035】
加熱ゾーンにおいて、反応材、生成物、場合によっては副産物、および存在する限りの溶剤は、温度上昇によって圧力蓄積をもたらし得る。この過剰圧力は好ましくは、反応区域を通過後にはじめて減圧され、その際、過剰に存在する1種または複数の反応材、生成物、副産物、および場合によっては溶剤を揮発および分離させるために、および/または反応生成物を冷却するためにこの減圧を利用することができる。
【0036】
反応物の転化は、加熱ゾーンですでに始まっていることが多いが、一般に加熱ゾーンの端部ではまだ化学的平衡にはなっていない。反応温度に達した後、反応物は直接に、すなわち中間冷却なしに、加熱管から等温反応区域に運ばれる。加熱ゾーンから出るときと等温反応区域に入るときの間の温度差は好ましくは、±30℃未満、特に±20℃未満、特に好ましくは±10℃未満、とりわけ±5℃未満である。特定の一実施形態において、反応区域に入る際の反応物の温度は、加熱ゾーンから出る際の温度に一致する。さらなる特定の一実施形態において、等温反応区域に入る前に、反応物にさらなる反応体および/または助剤を添加してもよい。
【0037】
加熱ゾーンと等温反応区域との直接接続とは、熱を供給および特に熱を排出するための積極的な処置を伴わない接続を意味する。
【0038】
等温反応区域としては、加熱ゾーンで調整された温度での反応混合物の滞留を可能にする、化学的に不活性なあらゆる容器が考慮の対象となる。等温反応区域とは、反応区域にある反応物の温度が流入温度に比べて±30℃、好ましくは±20℃、特に好ましくは±10℃、とりわけ±5℃で一定に保たれることを意味する。したがって、反応区域から出る際に反応物は、反応区域に入る際の温度から、最大で±30℃、好ましくは±20℃、特に好ましくは±10℃、とりわけ±5℃異なる温度を有する。
【0039】
連続的に稼働する撹拌容器および容器カスケードの他に、特に管が等温反応区域として適切である。この反応区域は、選定された温度条件および圧力条件下で機械的に安定であり、化学的に不活性であるという条件付きで、例えば、金属、セラミック、ガラス、水晶またはプラスチックなどの様々な材料からなるものでよい。その際、断熱容器が特に有用である。反応区域における反応物の滞留時間は、例えば、反応区域の体積によって調整することができる。撹拌容器および容器カスケードを使用する際は、容器の充填度によって滞留時間を調整することも同様に有用である。
【0040】
好ましい一実施形態においては、反応区域として管が使用される。その際、マイクロ波透過性加熱管が延長されたものでも、同一材料または異なる材料からなる、加熱管と接続された別個の管でもよい。管の長さおよび/またはその横断面によって、所与の流量における反応物の滞留時間を決定することができる。反応区域として機能する管は最も単純な場合には断熱されており、したがって反応物が反応区域に入る際に支配的な温度は、上記の限界内に保たれる。しかし、反応区域内で、例えば熱媒体または冷媒を介して、反応物に適切なエネルギーを供給または除去することもできる。この実施形態は、この装置または方法を開始するため、および強い吸熱反応または発熱反応を実施するために有用である。したがって、反応区域は、例えば、管コイルまたは管束として形成することが可能で、これらは加熱浴もしくは冷却中にあるか、または二重ジャケット管(Doppelmantelrohre)の形で、熱媒体または冷媒の作用を受ける。反応区域は、さらなるマイクロ波アプリケータ内にあってもよく、反応物はその中でもう一度マイクロ波で処理される。その際、単一モードおよびマルチモードで動作するアプリケータが使用可能である。
【0041】
反応区域における反応物の滞留時間は、実施すべき反応の反応速度、および場合によっては望ましくない副反応の速度に依存する。理想的には、反応区域における滞留時間は、支配的条件によって規定される熱平衡状態にちょうど達するようになっている。滞留時間は、一般に1秒〜10時間、好ましくは10秒〜2時間、特に好ましくは20秒〜60分、例えば、30秒〜30分である。
【0042】
好ましい一実施形態において、反応物は、等温反応区域から出た直後に、120℃未満、特に100℃未満、とりわけ60℃未満の温度に出来る限り急速に冷却される。これは、例えば、熱交換器、断熱膨張、または冷溶剤による希釈によって行うことができる。
【0043】
本発明による装置は通常、入口に少なくとも計量ポンプおよびマノメーターが設けられている。加熱管と等温反応区域との移行部に、少なくとも1つの温度測定装置が存在することが好ましい。装置および方法の安全性を向上させるために、加熱管と等温反応区域との移行部にはさらに逆止め弁が設置されていると有用である。等温反応区域が比較的長い場合には、さらなる逆止め弁によってこれを複数のセグメントに再分割してもよい。好ましい一実施形態において、反応区域は、少なくとも1つの圧力解放装置(Druckentlastungsvorrichtung)により過剰圧に対して保護されている。等温反応区域の出口において、反応物は冷却され減圧される。そのために、本発明による装置には通常、少なくとも1つの圧力保持装置、温度測定装置および冷却装置、例えば、熱交換器が設けられている。通常、反応混合物は大気圧まで減圧されるが、続く工程段階に向けて、または特殊な装置を使用する場合には、大気圧より高いまたは低い圧力に減圧することもできる。すなわち、例えば、溶媒および/または未転化反応材を分離するには、明らかに反応混合物を大気圧未満の圧力に減圧することが有用である。冷却は、転化された生成物の性質および予定されるさらなる工程段階に応じて、減圧の前もしくは後に、または減圧途中の圧力下で行うことができる。
【0044】
反応混合物の製造は、連続的、非連続的、または準バッチ工程で行うことができる。したがって、反応混合物の製造は、上流の(準)バッチ工程で、例えば、撹拌容器内で行うことができる。反応混合物は好ましくは、その場で製造され、単離はされない。好ましい一実施形態において、反応材は、互いに独立に、場合によっては溶媒で希釈されて、反応管に入る直前に混合される。したがって、反応混合物の諸成分が、混合区域で一緒にされ、そこから、場合によっては中間冷却の後に、加熱ゾーンに運ばれることが、特に有用である。さらに、好ましくは、反応材は、本発明による方法に、液状で供給される。そのために、融点がより高いおよび/または粘性がより高い反応材は、例えば、溶融状態でおよび/または溶媒と混合して、例えば溶液、分散液、乳濁液として添加することができる。触媒が添加される場合、加熱管に入る前にこれを反応材の1つにまたは反応材混合物に添加してもよい。不均一系も、本発明による方法によれば転化することができ、その際、反応物を運ぶために対応する技術的な装置が必要となる。
【0045】
副反応を避けるために、および出来る限り純粋な生成物を製造するためには、反応材および生成物を不活性な保護ガス、例えば、窒素、アルゴンまたはヘリウムの存在下で取り扱うことが有用である。
【0046】
反応物は、内部導体管中を導かれる端部またはそれに対向する端部において、反応管に供給することができる。したがって、反応混合物は、マイクロ波アプリケータ中をマイクロ波の伝播と平行または逆平行に導くことができる。
【0047】
本発明による方法を実施するためには、管断面、加熱ゾーン(反応物がマイクロ波照射にさらされる、管の区域を意味する)の長さ、流速、空洞共振器の形状、および入射されるマイクロ波出力を選択することによって、反応条件を、所望の反応温度が出来る限り迅速に得られるように調整する。個々の化学反応に望ましい反応条件の調節は、好ましくは、入射されるマイクロ波出力を介しておよび/または加熱ゾーンを通過する反応混合物の流速を介して、加熱ゾーンの端部で達成される反応混合物の温度を制御することによって行われる。その際、圧力は、減圧反応区域の端部にある減圧弁(圧力維持装置)を介して、発生する生成物および副生成物を含めた反応混合物が沸騰しない程度に調整される。
【0048】
本方法は、好ましくは1バール(大気圧)〜500バール、特に好ましくは1.5〜200バール、特には3バール〜150バール、とりわけ10バール〜100バール(例えば、15バール〜50バール)の圧力で実施される。常圧より高い圧力下での稼働が特に有用であり、その際、反応材、生成物、場合によっては存在する溶媒および/または反応中に形成される生成物の沸点(常圧において)より上で稼働される。特に好ましくは、圧力は、マイクロ波照射中、反応混合物が液体状態に留まり、沸騰しない程度に調節される。
【0049】
本発明による装置および本発明による方法により、化学反応を、高収率にてラージスケールで、非常に迅速に、エネルギーを節約して、かつ安価に実施することが可能になる。その際、本発明による方法の利点は、特に、例えば容器の壁面における反応物の平均温度を大幅に超過することなく、マイクロ波により反応物が目的とする反応温度まで迅速かつ適切に加熱されることである。これは、長軸が、単一モードマイクロ波アプリケータのマイクロ波伝播方向にあり、特に、例えばマイクロ波の同軸遷移を伴うE01空洞共振器の内部にある、反応管の内部の対称なマイクロ波場の中心において反応物が照射される場合に、特に著しい。温度勾配による熱伝達を用いた従来の加熱法とは対照的に、本発明による装置を用いれば、反応混合物を最も熱に弱い成分の分解温度近くまで加熱することができ、この条件で支配的な平衡状態に達するまでその温度を維持することが可能となる。
【0050】
等温反応区域においては、反応物にさらに外から熱を負荷することなしに、本来の反応が起こり得、反応が完了し得る。その際、本発明による装置によれば、非常に高い圧力および/または温度において反応を実施することが可能となる。
【0051】
本発明による装置およびそれを利用した方法において、空洞共振器内に入射されるマイクロ波エネルギーを利用する場合に、非常に高い効率が得られ、その効率は一般に、入射されたマイクロ波出力の50%超、しばしば80%超、場合によっては90%超、特別の場合には95%超、例えば、98%であり、したがって、従来の製造法および従来技術のマイクロ波方法と比べて経済的にも生態学的にも有利である。
【0052】
その上、本発明による装置および方法により、ほんの少量の反応物への連続的マイクロ波照射によって、制御された、確実で再現可能な反応を行うことができる。特に、長軸が単一モードマイクロ波アプリケータのマイクロ波伝播方向にある、反応管内の対称的マイクロ波場の中心で反応物を照射する場合、マイクロ波照射中、反応物はマイクロ波の伝播方向と平行に移動される。したがって、例えば波高点および節点においてマイクロ波場の強度が変化することにより局所的過熱をもたらす、制御不能な場分布による既知の過熱現象が、反応物の流動運動によって相殺される。上記の利点により、例えば、10kW超または100kW超の高いマイクロ波出力で稼働し、したがって加熱管内でのごく短い滞留時間とあいまって、1施設1年当たり100トン以上の大きな生産量を達成することが可能になる。流速の低下により照射ゾーン内での滞留時間を延長する必要がないので、等温反応区域により、化学平衡を下流で調製することにより空時収率の最適化が達成されるである。したがって他方で、反応区域を欠く同様の装置に比べて加熱ゾーンにおいてより高いスループットが可能となり、この種のマイクロ波支援方法の経済性がいっそう改善される。
【0053】
その際、驚くべきことに、連続的に貫流する筒形連続反応器内においてマイクロ波場における反応物の滞留時間が非常に短いにもかかわらず、大した量の副産物が形成されずに、追加の反応区域の使用によって反応体の転化を明らかに上昇させることができた。同じ寸法の筒形連続反応器内でジャケット加熱下で反応物の対応する転化を引き起こす場合、適切な反応温度を達成するために、しばしば着色体の形成をもたらす、極めて高い壁面温度が必要となる。さらに、驚くべきことに、この反応条件下におけるアミド化およびエステル化などの縮合反応の場合、縮合で形成される反応水を除去せずに、上記の転化を達成することができた。さらに、本発明による方法に従って製造された生成物は一般に、非常に低い金属含有量を有し、粗生成物のさらなる処理を必要としない。したがって、本発明による方法に従って製造された生成物の金属含有量は、主要元素としての鉄に関して、一般に鉄が25ppm未満、好ましくは15ppm未満、特に10ppm未満、例えば、0.01〜5ppmである。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明による装置の一例を示す図である。本装置は、搬送ポンプ(2)を備える搬送ラインを介して反応物を供給する、撹拌式反応材受け器(1)を含む。マイクロ波透過性材料から製造された加熱管(7)内に反応物が入る前に、反応物の温度および圧力が測定点(3)で決定される。加熱管(7)中を、反応物が所定の方向(5)に貫流する。加熱管は、マイクロ波アプリケータ(4)内にある。加熱ゾーンの端部に、温度および場合によっては圧力を計るための測定点(8)がある。加熱管(4)を出た直後に、反応物は等温反応区域(9)に運ばれる。等温反応区域(9)の出口に、温度を計るための測定点(10)がある。等温反応区域の後方には冷却器(11)が取り付けられ、圧力および温度を計るための測定点(12)が続いている。冷却器を通過した後、生成物は減圧弁(13)を介して生成物受け器(14)に入る。
【図2】本発明によるさらなる装置の一例を示す図であり、この装置では、電子レンジ(4)として単一モードアプリケータ(Monomode−Applikator)が使用され、マイクロ波の伝播方向(6)は反応物(5)の流れ方向と平行または逆平行である。この図における等温反応区域(9)および冷却器(11)は、管コイルとして形成されている。
【発明を実施するための形態】
【0055】

マイクロ波による反応混合物の照射は、加熱管として、円筒形空洞共振器(60×10cm)内に軸対称に位置するセラミック管(60×1cm)を含む装置内で実施した。空洞共振器の1端面で、この加熱管が、結合アンテナとして機能する内部導体管の空洞を通って延びている。マグネトロンによって生じる、周波数2.45GHzのマイクロ波場が、結合アンテナにより空洞共振器内に結合され(E01空洞照射器、単一モード)、その中で定常波が形成された。加熱された反応混合物は続いてすぐに、断熱された特殊鋼管(特記しない限り、3.0m×1cm)を通って運ばれた。反応管を出た後、反応混合物は大気圧まで減圧され、直ちに集中熱交換器により約60℃まで冷却された。
【0056】
加熱ゾーンの端部における反応物の所望の温度が一定に保たれるように、マイクロ波出力を、実験期間にわたりそのつど調整した。したがって、実験記録に記されたマイクロ波出力は、入射マイクロ波の時間平均値を示す。反応混合物の温度測定は、加熱ゾーン(絶縁特殊鋼細管(φ1cm)内の約15cmの区間)から出た直後に、および反応区域から出た後にPt温度センサーを用いて行った。反応混合物によって直接吸収されなかったマイクロ波エネルギーは、空洞共振器の、結合アンテナと対向する端面で反射され、戻る際にも反応混合物によって吸収されずマグネトロンの方向に反射されたマイクロ波エネルギーは、プリズム系(サーキュレータ)によって水を入れた容器に導いた。入射エネルギーとこのウォータープールの加熱との差を求め、その値から反応物に加えられたマイクロ波エネルギーを計算した。
【0057】
高圧ポンプおよび適切な圧力解放弁により、装置内の反応混合物を、すべての反応材および生成物または縮合生成物を常に液状に保つのに充分な動作圧下に置いた。反応混合物を一定流量にて装置中をポンプ圧送し、流速を変更することによって加熱ゾーンおよび反応区域における滞留時間を調整した。
【0058】
生成物の分析は、CDCl中で500MHzの1H−NMR分光法により行った。
【0059】
例1: N−(3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル)ラウリルアミドの製造
撹拌器、内部温度計および圧力調整器を備える10lのビュッヒ撹拌オートクレーブ中にラウリル酸3.4kg(17mol)を投入し、60℃に加熱し、わずかに冷却しながらN,N−ジメチルアミノプロピルアミン2.6kg(25.5mol)を慎重に混ぜた。
【0060】
こうして得られた混合物を35バールの動作圧力にて10.0l/hで連続的に前記装置中をポンプ圧送し、加熱ゾーンにおいて4.8kWのマイクロ波出力にさらすと、その94%が反応体により吸収された。反応混合物の加熱ゾーンにおける滞留時間は約17秒であり、反応区域における滞留時間は約85秒であった。加熱ゾーンの端部で、反応混合物は296℃の温度を有し、反応区域を出た後では292℃の温度を有していた。
【0061】
理論値の97%の、脂肪酸の転化が達成された。反応生成物はわずかに黄色っぽく着色しており、生成物の鉄含有量は5ppm未満であった。反応水および過剰なN,N−ジメチルアミノプロピルアミンを蒸留により除去した後、直接のさらなる使用(第四級化)に充分な純度のN−(3−(N,N−ジメチルアミノ)プロピル)ラウリルアミド4.6kgが得られた。
【0062】
例2: N,N−ジエチルココ脂肪酸アミドの製造
ガス注入管、撹拌器、内部温度計および圧力調整器を備える10lのビュッヒ撹拌オートクレーブ中にココ油4.2kg(5.5mol、分子量764g/mol)を投入し、45℃に加熱した。この温度にて、ジエチルアミン2.0kg(27mol)および触媒としてナトリウムエチラート100gをゆっくり添加し、撹拌しながら均質化した。
【0063】
こうして得られた反応混合物を32バールの動作圧力にて5.5l/hで連続的に前記装置中をポンプ圧送し、加熱ゾーンにおいて2.7kWのマイクロ波出力にさらすと、その90%が反応物によって吸収された。反応混合物の加熱ゾーンにおける滞留時間は約31秒であり、反応区域における滞留時間は約155秒であった。加熱ゾーンの端部で反応混合物は260℃の温度を有し、反応区域を出た後では258℃の温度を有した。
【0064】
反応生成物はわずかに黄色っぽく着色していた。過剰なジエチルアミンを蒸留により除去し、希酢酸で触媒を中和し、生じたグリセリン/水相を除去した後、>97%の純度のN,N−ジエチルココ脂肪酸アミド4.66kgが得られた。
【0065】
例3: キャノーラ油酸メチルエステルの製造
撹拌器、内部温度計および圧力調整器を備える10lのビュッヒ撹拌オートクレーブ中にキャノーラ油脂肪酸3.1kg(10mol、分子量309g/mol)を投入し、メタノール2.58kg(80mol)およびメタンスルホン酸0.075kgを混合した。こうして得られた反応混合物を35バールの動作圧力にて10.01l/hで連続的に前記装置中をポンプ圧送し、加熱ゾーンにおいて2.6kWのマイクロ波電力にさらすと、その92%が反応物によって吸収された。反応混合物の加熱ゾーンにおける滞留時間は約17秒であり、反応区域における滞留時間は約86秒であった。加熱ゾーンの端部で反応混合物は251℃の温度を有し、反応区域を出た後では245℃の温度を有した。
【0066】
理論値の97%の、脂肪酸の転化が達成された。反応生成物はわずかに黄色っぽく着色しており、生成物の鉄含有量は5ppm未満であった。炭酸水素塩溶液で触媒を中和し、蒸留により過剰なメタノールを除去し、続いて水溶性塩を洗い流すと、0.2mgKOH/gの残存酸価を有するキャノーラ油メチルエステル3.1kgが得られた。
【0067】
例4: スズキ・カップリング
窒素不活性化処理(Stickstoffinertisierung)した1lの三つ口フラスコにエタノール500mlを投入し、強く撹拌しながらその中にテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)50g(44mmol)を微細に懸濁させた。撹拌器、内部温度計および圧力調整器を有する、窒素で不活性化処理した10lのビュッヒ撹拌オートクレーブ中に、エタノール/水/ジメチルホルムアミドの混合物2リットルを投入し、その中に4−ブロモトルエン376g(2.2mol)およびフェニルボロン酸244g(2.0mol)を溶解した。続いて窒素不活性化処理の下で、この触媒懸濁液を撹拌オートクレーブにゆっくりと加え、均質に撹拌した。こうして得られた容易にポンプ給送可能な懸濁液を30バールの動作圧力にて1.5l/hで連続的に前記装置中をポンプ圧送し、加熱ゾーンにおいて1.2kWのマイクロ波電力にさらすと、その92%が反応物によって吸収された。反応混合物の加熱ゾーンにおける滞留時間は約113秒であり、反応区域における滞留時間は約10分であった。加熱ゾーンの端部で反応混合物は255℃の温度を有し、反応区域を出た後では251℃の温度を有した。
【0068】
1H−NMRを使って測定された、理論値の72%の収率(過少量で使用されたフェニルボロン酸に対して)が得られ、生成物の鉄含有量は5ppm未満であった。濾過により、触媒および不溶性の副産物を粗生成物から分離し、続いてそのろ液を蒸留により処理した。処理後に、純度98%超の4−メチルビフェニル256gが得られた。
【0069】
例5: ポリ(イソブテニル)コハク酸無水物の製造
撹拌器、内部温度計および圧力調整器を有する10lのビュッヒ撹拌オートクレーブ中に、ポリ(イソブチレン)4.0kg(Glissopal(登録商標)1000、BASF AG、分子量1000、α位二重結合含有量80%、4.0mol)を投入し、無水マレイン酸431g(4.4mol)を混合し、撹拌しながら約70℃に加熱した。
【0070】
こうして得られた低粘度のエマルションを30バールの動作圧力にて2.0l/hで連続的に前記装置中をポンプ圧送し、加熱ゾーンにおいて1.8kWのマイクロ波電力にさらすと、その90%が反応物によって吸収された。反応混合物の加熱ゾーンにおける滞留時間は約85秒であった。反応区域として、ここでは、直径2cm、長さ10メートルの管を使用し、約94分の、反応区域における滞留時間が得られた。加熱ゾーンの端部で反応混合物は240℃の温度を有し、反応区域を出た後では235℃の温度を有した。使用したポリ(イソブチレン)の82%の転化が達成された。生成物の鉄含有量は5ppm未満であった。実験終了後に加熱ゾーンおよび反応域の内壁を肉眼で調べたが、装置の両部分に、従来の、熱により行われる反応で通常生じるような、コークス化または分解を示す沈殿物は認められなかった。
【0071】
例1V〜5V: 反応区域を使用しない比較実験
これらの実験においては、上記の加熱ゾーンのみを用いて、すなわち、反応管を使用せずに実験1〜5を繰り返した。対応する実験パラメータを表1にまとめた。列挙した温度は、加熱ゾーンを出る際に測定された値である。
【0072】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波発生器、内部にマイクロ波透過性管があるマイクロ波アプリケータ、及び等温反応区域を含む、化学反応を連続的に行うための装置であって、前記マイクロ波透過性管内の反応物が、加熱ゾーンとして機能するマイクロ波アプリケータ中を通って誘導され、前記マイクロ波アプリケータ中では、マイクロ波発生器から前記マイクロ波アプリケータへ誘導されるマイクロ波を使って、該反応物が反応温度まで加熱され、そして加熱され、そして場合によっては圧力下にある該反応物が、前記加熱ゾーンから出た直後に前記加熱ゾーンに直接つながる等温反応区域中に移され、そしてその等温反応区域から出た後に冷却されるように、前記マイクロ波発生器、前記マイクロ波アプリケータ、及び前記等温反応区域が配置されている、上記の装置。
【請求項2】
前記マイクロ波透過性反応管が、単一モード(Monomode)のマイクロ波アプリケータの内部に存在する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記マイクロ波透過性管の長軸が、単一モードのマイクロ波アプリケータのマイクロ波伝播方向にある、請求項1及び/又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記マイクロ波透過性反応管が、導波体を介してマイクロ波発生器と接続された中空導波管の内部に存在する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロ波アプリケータが空洞共振器として形成されている、請求項1〜4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
前記マイクロ波アプリケータが反射型の空洞共振器として形成されている、請求項1〜5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
前記反応管が、中空導波管の中心対称軸と軸を合わせて配列される、請求項1〜6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
前記空洞共振器が、マイクロ波の同軸遷移部を有する、請求項1〜7のいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
前記空洞共振器がE01nモードで稼働され、その際、nは1〜200の整数である、請求項1〜8のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
十分にマイクロ波透過性の反応管が、マルチモードマイクロ波アプリケータの内部にある、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記等温反応区域が断熱管である、請求項1〜10のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
前記等温反応区域が、エネルギーを供給又は放出するための装置を含む、請求項1〜11のいずれか一つに記載の装置。
【請求項13】
化学反応を連続的に行うための方法であって、請求項1〜12のいずれか一つに記載の装置内の反応物が、加熱ゾーンを介して誘導され、該加熱ゾーンでは、その反応物がマイクロ波を使って反応温度まで加熱され、そして加熱されかつ場合によっては圧力下にある前記反応物が、前記加熱ゾーンから出た直後にその加熱ゾーンに隣接する等温反応区域に移送され、そしてその等温反応区域から出た後に冷却される、上記の方法。
【請求項14】
前記化学反応が、−20kJ/mol未満の反応熱によって特徴づけられる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記化学反応が、吸熱性である、請求項13及び14のいずれか一つに記載の方法。
【請求項16】
前記反応物が、マイクロ波照射によって70〜500℃の温度に加熱される、請求項13〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
前記マイクロ波照射が、大気圧超の圧力で遂行される、請求項13〜16のいずれか一つに記載の方法。
【請求項18】
前記等温反応区域が、反応区域を通過した後の反応物の温度が、その進入温度に比べて最大で±30℃だけ異なるという性質をしている、請求項13〜17のいずれか一つに記載の方法。
【請求項19】
前記空洞共振器中で定常波が形成される、請求項13〜18のいずれか一つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−531304(P2012−531304A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518031(P2012−518031)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003443
【国際公開番号】WO2011/000460
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(398056207)クラリアント・ファイナンス・(ビーブイアイ)・リミテッド (182)
【Fターム(参考)】