説明

高粘度指数の、幅広い温度で機能性を有する流体組成物、その製造方法およびその用途

本発明は、高粘度指数(130以上)と、−30℃以下における高剪断/低温粘度の測定値対理論値の比という予想外の組み合わせを示す基油およびベースオイルを含んでなる潤滑油、並びに、それらを製造する方法に関する。具体的には、本発明は、新規な低粘度基油を含んでなり、幅広い温度の潤滑油、例えば油圧作動油として使用できる、低温粘度が性能改良された、高粘度指数の新規な低粘度潤滑油、およびその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な低粘度基油を含んでなり、幅広い温度の油圧作動油として使用できる、低温粘度が性能改良された高粘度指数の新規な低粘度潤滑油、およびその製造方法に関する。本発明に組み込まれる新規な基油およびベースオイルは、高粘度指数(130以上)と、−30℃以下での高剪断/低温粘度の測定値対理論値の比の予想外の組み合わせを示し、並びに、それらを製造する方法。
【背景技術】
【0002】
油圧機器の所有者は、彼らの装置が幅広い温度範囲にわたって効果的に作動することを要求する。例えば、貨物船上の荷役油圧装置は、熱帯性の条件から極寒の状件に及ぶ可能性がある、一般の気候に関係なく作動できなければならない。
【0003】
従って、過酷な低温気象条件下の役務の場合、良好な低温流動特性を有し、高温気象条件の場合、良好な高温性能を提供する油圧作動油が開発されてきた。
【0004】
要求される幅広い温度の作動範囲を達成するために、油圧作動油は、一般に2つの方法で調製される。第1の標準調製技術は、溶媒精製したパラフィン系ベースオイルと、溶媒精製したナフテン系ベースオイルの混合物を、剪断安定粘度調整剤および流動点降下剤を加えて使用することを含む。第2の標準調製技術は、ポリα−オレフィンベースオイル(PAO、グループIV基油)を使用することを含む。
【0005】
第1の技術は、より複雑な調製手法が要求されるが、PAOなどの費用のそのような特別な基油が要求される第2の技術よりも経済的であるので、一般に好ましい。また、選択肢(Option)(1)に詳述した鉱油混合物に使用される溶媒精製したパラフィン系ベースオイルの低温粘度を改良するために、溶媒精製したナフテン系ベースオイルを使用することがしばしば要求される。
【0006】
幅広い温度で使用できる油圧作動油は一般に、油圧機器使用者の役務予想を満足させるため、次の実験室ベンチテスト性能レベル(a)〜(c):
(a)ASTM D2270テストで測定して、約135〜140、好ましくは140以上の粘度指数
(b)ASTM D97テストで測定して、約−35〜−40℃、好ましくは−40℃以下の流動点
(c)ASTM D2983テストで測定して、−20°Fで約6500cP以下、好ましくは6200cP以下のブルックフィールド粘度(Brookfield viscosity)
を満たす。
幅広い温度の油圧作動油の用途では、従来のグループI鉱油および特別なPAOベースオイルに対する代替物として、高粘度指数のグループIIIベースオイルが使用できると予期される。グループIII基油は、溶媒精製したナフテン系基油を加えずに使用することができるが、一般に、粘度調整剤および流動点降下剤と共に調製し続けることになる。
【0007】
本発明の潤滑油組成物を記載する際に使用したテストは、
(a)コールド・クランキング・シミュレータ試験(Cold Cranking Simulator Test)(ASTM D5293)によって測定したCCS粘度、
(b)CEC−L−40−A−93によって測定したノアク(Noack)揮発性(または蒸発損失)、
(c)ASTM D2270によって測定した粘度指数(VI)、
(d)ウォルサー−マッコール(Walther−MacCoull)式(ASTM D341補遺1)から算出した理論粘度、
(e)ASTM D445によって測定した動粘度、
(f)ASTM D5950によって測定した流動点、
(g)ASTM D5133によって測定したスキャニング・ブルックフィールド粘度(Scanning Brookfield Viscosity)、
(h)ASTM D2983によって測定したブルックフィールド粘度、および
(i)ISO 3448の粘度等級分類によって定義されるISO粘度
である。
【0008】
本発明者らは、ASTM D341のウォルサー−マッコール式により、理論的な動粘度が算定されるが、CCSは絶対粘度を報告することを注記しておく。本明細書で使用する比を算定するため、本発明者は、ウォルサー−マッコール粘度を式(I)に従って変換した。
(I) 理論粘度(Theoretical viscosity)@T(℃)
=ウォルサー−マッコール式から算出した動粘度@T(℃)
×T(℃)での密度(式中、Tは所望の温度である。)
−35℃での密度は、良く知られた式を使用して20℃の密度から算定される。例えば非特許文献1を参照されたい。
【0009】
基油は(ベースオイルおよび潤滑油組成物とは対照的に)、単一の製造業者によって、同じ仕様で(原料供給源または製造業者の場所に無関係)製造される炭化水素ストリームと定義され、独自の調合法、製品識別番号またはその両方によって識別される。基油は、これらに制限されないが、蒸留、溶媒精製、水素処理、オリゴマー化、エステル化および再精製を含めて、様々な異なるプロセスを使用して製造することができる。再精製した基材油は、製造、汚染または以前の使用を通じて導入された物質を実質的に含まないものである。基油スレート(slate)は、異なる粘度を有するが同じ基油グループにある、同じ製造業者からの基油の製品ラインである。ベースオイルは、基油または調合潤滑油組成物に使用する基油の混合物である。潤滑油組成物は、基油、ベースオイル(共に単独)、または他の基材油、オイル、或いは機能性添加剤との混合物かのいずれかとすることができる。
【0010】
【特許文献1】米国特許第5,246,566号明細書
【特許文献2】米国特許第5,282,958号明細書
【特許文献3】米国特許第4,975,177号明細書
【特許文献4】米国特許第4,397,827号明細書
【特許文献5】米国特許第4,585,747号明細書
【特許文献6】米国特許第5,075,269号明細書
【特許文献7】米国特許第4,440,871号明細書
【特許文献8】米国特許第6,310,265号明細書
【特許文献9】国際公開第0242207号パンフレット
【特許文献10】国際公開第0078677号パンフレット
【特許文献11】米国特許第6,303,534号明細書
【特許文献12】米国特許第4,900,707号明細書
【特許文献13】米国特許第6,383,366号明細書
【特許文献14】米国特許第6,294,077号明細書
【特許文献15】米国特許第5,098,684号明細書
【特許文献16】米国特許第5,198,203号明細書
【特許文献17】米国特許出願第60/416,865号明細書
【特許文献18】米国特許第4,956,122号明細書
【特許文献19】米国特許第4,827,064号明細書
【特許文献20】米国特許第4,827,073号明細書
【特許文献21】米国特許第4,149,178号明細書
【特許文献22】米国特許第3,382,291号明細書
【特許文献23】米国特許第3,742,082号明細書
【特許文献24】米国特許第3,769,363号明細書
【特許文献25】米国特許第3,876,720号明細書
【特許文献26】米国特許第4,239,930号明細書
【特許文献27】米国特許第4,367,352号明細書
【特許文献28】米国特許第4,413,156号明細書
【特許文献29】米国特許第4,434,408号明細書
【特許文献30】米国特許第4,910,355号明細書
【特許文献31】米国特許第5,068,487号明細書
【特許文献32】米国特許第4,218,330号明細書
【特許文献33】米国特許第5,055,626号明細書
【特許文献34】欧州特許出願第168534号明細書
【特許文献35】米国特許第4,658,072号明細書
【特許文献36】米国特許第2,817,693号明細書
【特許文献37】米国特許第4,921,594号明細書
【特許文献38】米国特許第4,897,178号明細書
【特許文献39】英国特許第1,429,494号明細書
【特許文献40】英国特許第1,350,257号明細書
【特許文献41】英国特許第1,440,230号明細書
【特許文献42】英国特許第1,390,359号明細書
【特許文献43】欧州特許出願第464546号明細書
【特許文献44】欧州特許出願第464547号明細書
【特許文献45】米国特許第4,594,172号明細書
【特許文献46】米国特許第4,943,672号明細書
【特許文献47】米国特許第6,080,301号明細書
【特許文献48】米国特許第6,090,989号明細書
【特許文献49】米国特許第6,165,949号明細書
【特許文献50】米国特許第4,941,984号明細書
【特許文献51】米国特許第2,443,264号明細書
【特許文献52】米国特許第2,471,115号明細書
【特許文献53】米国特許第2,526,497号明細書
【特許文献54】米国特許第2,591,577号明細書
【特許文献55】米国特許第3,770,854号明細書
【特許文献56】米国特許第4,501,678号明細書
【特許文献57】米国特許第4,758,362号明細書
【特許文献58】米国特許第5,693,598号明細書
【特許文献59】米国特許第5,034,141号明細書
【特許文献60】米国特許第5,034,142号明細書
【特許文献61】米国特許第4,798,684号明細書
【特許文献62】米国特許第5,084,197号明細書
【特許文献63】米国特許第1,815,022号明細書
【特許文献64】米国特許第2,015,748号明細書
【特許文献65】米国特許第2,191,498号明細書
【特許文献66】米国特許第2,387,501号明細書
【特許文献67】米国特許第2,655,479号明細書
【特許文献68】米国特許第2,666,746号明細書
【特許文献69】米国特許第2,721,877号明細書
【特許文献70】米国特許第2,721,878号明細書
【特許文献71】米国特許第3,250,715号明細書
【特許文献72】米国特許第2,719,125号明細書
【特許文献73】米国特許第2,719,126号明細書
【特許文献74】米国特許第3,087,932号明細書
【非特許文献1】A.ボンディ(Bondi)、「潤滑油の物理化学(Physical Chemistry of Lubricating Oils)」(1951年、5ページ)
【非特許文献2】ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイアティ(J.Amer.Chem.Soc.)(1992年、114、10834)
【非特許文献3】「合成潤滑油(Synthetic Lubricants)」(グンターソン(Gunderson)およびハート(hart)、ラインホルド出版社(Reinhold Publ.Corp.)、ニューヨーク、1962年)
【非特許文献4】ACS石油化学前刷り(ACS Petroleum Chemistry Preprint)1053〜1058の「ポリn−アルキルベンゼン化合物:熱安定かつ幅広い液体範囲の流体クラス(Poly n−Alkylbenzene Compounds:A Class of Thermally Stable and Wide Liquid Range Fluids)」(イーペン(Eapen)ら、フィラデルフィア(Phila)、1984年)
【非特許文献5】「合成潤滑油および高性能機能性流体(Synthetic Lubricants and High Performance Functional Fluids)」(ドレスラー、H.(Dressler,H.)、第5章、(R.L.シュブキン(Shubkin)(編集))、マルセル・デッカー(Marcel Dekker)、ニューヨーク、1993年)
【非特許文献6】クラマン(Klamann)の「潤滑油および関連製品(Lubricants and Related Products)」(フェアラーグ・ケミー(Verlag Chemie)、デアフィールド・ビーチ(Deerfield Beach)、フロリダ州;ISBN 0−89573−177−0)
【非特許文献7】「潤滑油添加剤(Lubricant Additives)」(M.W.ラニー(Ranney)著、パークリッジのノイズ・データ・コーポレーション(Noyes Data Corporation of Parkridge)発行、ニュージャージー州(1973年))
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、低温(約−25℃以下)で改良された粘度性能を達成する基油およびベースオイルを組み込んだ機能性流体に関する。本発明はまた、天然、鉱油または合成(例えばフィッシャー−トロプシュタイプのプロセス)の供給源のいずれかからのワックス質炭化水素原料油から誘導されるベースオイルを含んでなる機能性流体に関する。本発明はまた、そのような機能性流体を製造するプロセスまたは方法に関する。
【0012】
より詳しくは、本発明は、予想外に有利な幅広い温度の粘度プロフィルを有し、かつ(−30℃以下での高剪断/低温粘度の測定値対理論値の比によって記述される)改良された低温流動性を有する新規な基油およびベースオイルを含んでなる機能性流体に関する。加えて本発明は、改良された低温粘度(−20°F以下でブルックフィールド粘度で測定)を有する、油圧作動油として驚くほど有用な機能性流体に関する。良好な低温流動性の有益な特性は、本発明に組み込まれる基油およびベースオイルを、他の類似したグループIIIベースオイルから一意的に差別化し、かつ、本発明の潤滑油組成物および機能性流体を、他のグループIIIベースの組成物からも差別化する。
【0013】
より詳しくは、本発明は、基油を組み込んだ機能性流体を包含し、それは、驚異的かつ予想外の、以下の特性(a)〜(c):
(a)粘度指数(VI)130以上
(b)流動点−10℃以下
(c)−30℃以下における低温粘度の測定値対理論値の比1.2以下(測定粘度は、コールド・クランク・シミュレータ粘度であり、理論粘度は、ウォルサー−マッコール式を使用して同じ温度で算出される)
の同時の組み合わせを有する。
【0014】
本発明に組み込まれるベースオイル組成物には、製造される個々の基油だけでなく、得られた混合物またはブレンドが本発明の基油要件を満足させるような、2種以上の基油および/またはベースオイルの混合物またはブレンドもまた包含される。本発明のベースオイル組成物は、100℃でのベースオイル動粘度が約1.5〜8.5cSt、好ましくは約2〜8cSt、より好ましくは約3〜7.5cStである有用な粘度範囲を包含する。本発明のベースオイルは、流動点が約−10〜−30℃超、好ましくは約−12〜−30℃超、より好ましくは約−14〜−30℃超である有用な流動点範囲を包含する。事例によっては、流動点は−18〜−30℃に及ぶ場合があり、更に−20〜−30℃に及ぶ場合がある。
【0015】
本明細書で使用される、本発明に組み込まれる基油およびベースオイルは、−30℃以下における低温粘度の測定値対理論値が約0.8〜約1.2になることが好ましい。ここで、測定粘度は、コールド・クランク・シミュレータ粘度であり、理論粘度は、ウォルサー−マッコール式を使用して同じ温度で算出される。
【0016】
驚いたことに、粘度の測定値対理論値の比が小さいことは、本発明の基油およびベースオイルの一つの予想外の性能利点を特徴づけるが、−35℃未満、例えば、−40℃または更にそれ以下の温度で観測されることをも予期し得る。従って、本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルの実際の粘度は、これらの低い温度で、所望の理想的理論粘度に近づくことが予期されるが、比較用の基油およびベースオイルは、理論粘度からより一層大幅にそれる(即ち、粘度の測定値対理論値の比が大きい)ことが予期される。
【0017】
加えて、本発明に組み込まれる新規な基油およびベースオイルは、次の特性:
(a)飽和物含量少なくとも90重量%、および
(b)硫黄含量0.03重量%以下
を有することができる。
【0018】
本発明に組み込まれる新規な基油およびベースオイルの粘度指数は130以上、好ましくは135以上、事例によっては140以上とすることができる。本発明に組み込まれる新規な基油およびベースオイルの要求される流動点は、約−10℃以下、好ましくは−12℃以下、事例によっては、より好ましくは−14℃以下である。事例によっては、流動点は−18以下、より好ましくは−20℃およびそれ以下とすることができる。本発明に組み込まれる新規な基油およびベースオイルの場合、低温コールド・クランキング・シミュレータ(CCS)粘度の測定値対理論値の要求される比は約1.2以下、好ましくは約1.16以下、より好ましくは約1.12以下である。本発明に組み込まれる新規な基油およびベースオイルの低温粘度プロフィルとして、本発明に組み込まれる要求される新規な基油およびベースオイルは、CCS粘度(@−35℃)5500cP未満、好ましくは5200cP未満、事例によっては、より好ましくは5000cP未満を有する。
【0019】
本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルは、他の潤滑油基油およびベースオイル、または共基油および共ベースオイルと共に、調合された潤滑油組成物または機能性流体に使用することができる。事例によっては、本発明に組み込まれるこれらの新規な基油およびベースオイルの、極めて有利な低温(−30℃以下)特性のため、潤滑油および潤滑油組成物、または機能性流体の性能が、そのような組成物に含まれる基油およびベースオイル全体の濃度が20重量%以上のとき、有利に改良され得る。好ましくは、本発明に組み込まれる新規な基油およびベースオイルを、他の個々の基油およびベースオイルと組み合わせて使用し、完成した潤滑油組成物または機能性流体において、本質的な低温性能の利点を得ることができる。より好ましくは、調合された潤滑油組成物または機能性流体に含まれる基油およびベースオイルを全体で40重量%以上として、この基油およびベースオイルを、本発明の原理を損なわずに使用することができる。場合によっては、完成した潤滑油組成物または機能性流体において、基油およびベースオイルを全体で50重量%以上として、更には、基油およびベースオイルを全体で70重量%以上として、このベースオイルを最も好ましく使用することができる。
【0020】
本発明に組み込まれる新規な基油およびベースオイルは、下記工程(a)〜(d):
(a)原料油であって、前記原料油を基準として少なくとも50重量%のワックス含量を有する原料油を、650°F(343℃)マイナス生成物に転化される前記原料油が5重量%未満である有効な水素化処理条件下で、水素化処理触媒を用いて水素化処理して、前記原料油のVIに対するそのVI増加が4未満である水素化処理原料油を製造する工程;
(b)水素化処理原料油をストリッピングまたは蒸留して、液体生成物からガス生成物を分離する工程;
(c)ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、ECR−42、ITQ−13、MCM−68、MCM−71、ゼオライトベータ、フッ化アルミナ、シリカ−アルミナおよびフッ化シリカ−アルミナのうちの少なくとも1種である脱ロウ触媒を用いて、有効な接触水素化脱ロウ条件下で、液体生成物を水素化脱ロウする工程であって、前記脱ロウ触媒は、少なくとも1種の第9族または第10族貴金属を含む工程;および
(d)場合により、M41S族からのメソ細孔性水素化精製触媒を用いて、工程(c)からの生成物を水素化精製条件下で水素化精製する工程
により製造することができる。
【0021】
本発明の別の実施形態は、本発明に組み込まれ、例えば油圧作動油において、低温粘度が低下した本質的な性能利点を有する新規な基油およびベースオイルを含んでなる潤滑油および潤滑油組成物、または機能性流体を製造する方法に関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、新規な基油およびベースオイルを含んでなる新規な潤滑油および潤滑油組成物、並びに、低温および高温の両条件下で潤滑性能を最適化する方法に関する。本発明の潤滑油組成物は、高粘度指数と良好な低温流動性(低温ブルックフィールド粘度で記載)の予想外に有利な組み合わせを有する基油およびベースオイルを含んでなる。これらの潤滑油組成物は、油圧作動油として有用であり、幅広い両方の温度条件下、即ち低温および高温条件下で、驚くほど有利な性能の組み合わせを有することを見出した。
【0023】
驚いたことに、本発明の基油を含んでなる潤滑油は、優れた低温粘度性能(20°F以下でブルックフィールド粘度で測定)を示すことを見出した。加えて、本明細書で詳述される新規な本発明の基油だけを含んでなる本発明の機能性流体により、粘度調整剤を加えることなく、予想外に優れたブルックフィールド粘度性能成果が達成される。これは、幅広い温度の用途、例えば幅広い温度の油圧作動油において、良好な低温粘度を良好な高温粘度と釣り合わせるという課題に対する、予想外かつ新規な代替の解決策を意味する。
【0024】
加えて、より伝統的な調合戦略を使用する場合、即ち、低粘度基油またはベースオイルを粘度調整剤と組み合わせる場合でも、ブルックフィールド粘度性能の改良が、本明細書で詳述される本発明の機能性流体によって示される。例えば、本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルを含んでなる油圧作動油組成物において、−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度が見出され、これは現在入手できるグループIII基油を調合した組成物のブルックフィールド粘度に比べて、著しく良好であった。
【0025】
本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルを含んでなる機能性流体を調合して、約ISO2〜約ISO1500の、有用な範囲のISO粘度等級(ISO 3448による)を有する完成した潤滑油生成物を得ることができる。具体的には、本発明に組み込まれるこれらの新規な基油およびベースオイルを含んでなる油圧作動油組成物は、約ISO10〜ISO150、好ましくは約ISO15〜ISO100、より好ましくは約ISO22〜ISO100、事例によっては、最も好ましくはISO32〜ISO68の有用なISO粘度等級を有することができる。
【0026】
本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルを含んでなる本発明の機能性流体は、予想外に良好な低温粘度(ブルックフィールド粘度テスト(ASTM D2983)で測定)を有する。本発明の新規な基油を記載する際に使用するCCS粘度は、対応する調合された潤滑油組成物に見出されるブルックフィールド粘度を予期させるものではないので、この結果は予期されない。CCS粘度およびブルックフィールド粘度は、様々な低温基油の性能メカニズムに影響を受けやすく、CCS粘度およびブルックフィールド粘度は、種々の剪断条件下で定められる。
【0027】
本発明の一実施形態は、−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有する新規な機能性流体を包含し、それは幅広い温度の潤滑油用途、例えば油圧作動油において、有利に使用することができる。
【0028】
本発明に組み込まれる高粘度指数の基油は、他の高粘度指数の基油と比較して優れた低温性能を有する。性能の相違は、−30℃未満の温度範囲で最も決定的であり、従来の高粘度指数のグループIII基油は、著しく理論粘度からそれる。例示すると、比較用の従来の高粘度指数のグループIII基油の測定された低温CCS粘度は、低温での同じ基油の予期される理論粘度の予測値(ウォルサー−マッコール式)に比べて、より高い粘度値にそれる傾向がある(図1)。
【0029】
本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルは、驚くべきことに、ウォルサー−マッコール式(ASTM D341補遺)により記載されているような、基油およびベースオイルの理論粘度挙動によって予測される、より理想的かつ強く望まれる性能を示す。加えて、本発明に組み込まれる新規な基油およびベースオイルは、低温粘度の測定値対理論値の比に関して、商業上入手できるグループIIIベースオイルとは驚くほど異なることが見出された(実際の粘度は、−30℃以下の温度でコールド・クランキング・シミュレータ(CCS)粘度として測定され、理論粘度は、測定されたCCS粘度と同じ温度で、ウォルサー−マッコール式(ASTM D341補遺)から誘導される)。同様に、これらの新規な基油は、低温(−20℃未満)でもっと低いスキャニング・ブルックフィールド粘度(ASTM D5133)値を有することが観測されている。CCS粘度は、大きい剪断条件下で測定されるが、スキャニング・ブルックフィールド粘度は、低剪断条件下で測定される。
【0030】
本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルは、粘度の測定値対理論値の比1.2以下、好ましくは1.16以下、多くの場合より好ましくは1.12以下という、他に例をみないかつ強く望まれる特性を有する。粘度の測定値対理論値の比が低いことは、低温での性能および操作性における本質的な利点を示すので、この比が1.0に近い約1.2未満である基油およびベースオイルは極めて好ましい。しかし、現在入手できるグループIII基油およびベースオイルは、1.2以上という、粘度の測定値対理論値の特徴的な比を有し、ベースオイルの不十分な低温粘度および操作性を示す。事例によっては、測定値対理論値の粘度の比が約0.8〜約1.2の間にあるようにすることが好ましい。
【0031】
本発明の一実施形態では、本発明に組み込まれる新規な基油およびベースオイルは、下記特性(a)〜(c):
(a)粘度指数(VI)130以上;
(b)流動点−10℃以下;および
(c)−30℃以下における低温粘度の測定値対理論値の比1.2以下(測定粘度は、コールド・クランク・シミュレータ粘度であり、理論粘度は、ウォルサー−マッコール式を使用して同じ温度で算出される)
の、驚異的かつ予想外の同時の組み合わせを有する。
【0032】
加えて、本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルはまた、次の特性:
(a)飽和物含量少なくとも90重量%、および
(b)硫黄含量0.03重量%以下
を有することができる。
本明細書で使用されるとき、用語「潤滑油」には、これらに限定されないが、潤滑油組成物、調合された潤滑油組成物、ルーブ(lubes)、機能性流体、潤滑油生成物、ルーブオイル、完成したルーブ、完成した潤滑油、潤滑油、グリースなどが含まれる。
【0033】
本発明はまた、下記特性(a)〜(c):
(a)粘度指数(VI)130以上;
(b)流動点−10℃以下;および
(c)−30℃以下における低温粘度の測定値対理論値の比1.2以下(測定粘度は、コールド・クランク・シミュレータ粘度であり、理論粘度は、ウォルサー−マッコール式を使用して同じ温度で算出される)
を有する本発明のベースオイル組成物を含んでなる機能性流体を包含する。
事例によっては、測定値対理論値の粘度の比が約0.8〜約1.2の間にあるようにすることが好ましい。
【0034】
本発明の一実施形態は、本発明の基油および少なくとも1種の性能添加剤を含んでなる、−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有する機能性流体を包含する。本発明の別の実施形態は、本発明の基油と、1種以上の追加の基油の組み合わせ、および少なくとも1種の性能添加剤を含んでなる、−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有する機能性流体を包含する。本発明の別の実施形態は、適宜加えられる粘度調整剤を用いずに、本発明の基油を含んでなる、−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有する機能性流体を包含する。
【0035】
本発明の別の実施形態は、−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有し、本明細書に記載の新規な基油を含んでなる油圧作動油を包含する。本発明の更なる実施形態は、本明細書で詳述される新規なベースオイルを使用して、機能性流体のブルックフィールド粘度を改良する方法を包含する。
【0036】
本発明の他の実施形態は、
(a)本明細書で詳述される新規な基油を含んでなる、幅広い温度の油圧作動油として有用な機能性流体を製造する方法、および
(b)−20°F以下で改良された低温ブルックフィールド粘度を有するそのような組成物または流体を用いて、本明細書で詳述される新規なベースオイルを含んでなる調合された機能性流体を製造する方法
に関する。
【0037】
別の実施形態は、−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有し、本明細書で詳述される新規な基油を含んでなる、調合された潤滑油組成物または機能性流体を包含し、前記機能性流体は、約135以上、好ましくは140以上の粘度指数を有する。
【0038】
別の実施形態は、−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有し、本明細書で詳述される新規な基油を含んでなる機能性流体を包含し、前記機能性流体は、約−35℃以下、好ましくは約−40℃以下の流動点を有する。
【0039】
別の実施形態は、−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有し、本明細書で詳述される新規な基油を含んでなる、調合された潤滑油組成物または機能性流体を包含し、前記潤滑油組成物または機能性流体は、−20°Fで、約40000cP以下、好ましくは約28000cP以下、より好ましくは6500cP以下、更により好ましくは約6200cP以下のブルックフィールド粘度を有する。
【0040】
本明細書で詳述される新規な基油またはベースオイルを組み込んだ生成物は、従来のグループIII基油から製造される他の類似した生成物に対する利点を明瞭に有する。本発明の一実施形態は、本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルを、1種以上の更なる共基油およびベースオイルと組み合わせて含んでなる、調合された潤滑油組成物または機能性流体である。本発明の別の実施形態は、本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルを、1種以上の性能添加剤と組み合わせて含んでなる、調合された潤滑油組成物または機能性流体である。
【0041】
本発明に使用する性能添加剤は、例えば、成分としての個々の添加剤、添加剤系としての、1種以上の個々の添加剤または成分の組み合わせ、添加剤濃縮物またはパッケージとしての、1種以上の添加剤と1種以上の適切な希釈剤オイルの組み合わせを包含することができる。添加剤濃縮物は、成分濃縮物および添加剤パッケージを包含する。潤滑油組成物または機能性流体を製造または調合する際、しばしば、粘度調整剤または粘度指数向上剤を、成分、濃縮物、またはパッケージの形での他の性能添加剤の使用とは無関係に、成分または濃縮物として個別に使用することがある。本発明のベースオイルと一緒にできる性能添加剤の量および種類は、このベースオイル混合物全体と、1種以上の性能添加剤を含んでなる潤滑油組成物が、幅広い温度の油圧作動油の用途にとって有用な、−20°F以下での低温ブルックフィールド粘度および40℃以上での高温動粘度を同時に満たすように制限される。
【0042】
本発明は、完成した潤滑油または機能性流体の性能にとって低温特性が重要である用途において、驚くほど有利である。本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルは、例えば作動油、圧縮機油、タービン油、循環油、ギヤオイル、抄紙機械油、工業用油、自動車用油、手動変速機流体、自動変速機流体、動力伝達流体、エンジンオイル、ガス・エンジンオイル、航空ピストン油、ディーゼル油、船舶用油、グリースなど、多くの用途において有利に使用できる。
【0043】
プロセス
本発明のプロセスに由来する生成物は、他に例をみない物理的性質の組み合わせを示すだけでなく、それらを、商業上入手できる生成物から区別かつ差別化する他に例をみない組成上の特性も示す。従って、本明細書で詳述されるプロセスに由来する本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルは、本発明の基油およびベースオイルを一義的に定義する、他に例をみない化学的、組成上、分子的、かつ構造上の特徴を有すると期待される。
【0044】
本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルは、ワックス質原料油を転化して高粘度指数を有する潤滑粘度の油を製造することを含んでなるプロセスにより製造され、かつ高収率で製造される。従って、少なくとも130、好ましくは少なくとも135、より好ましくは少なくとも140のVIを有し、かつ、優れた低温特性を有する基油およびベースオイル、または基油を得ることができる。これらのプロセスにより製造される基油は、グループIII基油の要件を満たし、高収率で調製することができ、同時に、高いVI、低い流動点などの優れた特性を有する。
【0045】
これらのプロセスに使用するワックス質原料油は、天然、鉱油または合成の供給源から誘導することができる。このプロセスへの原料は、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも70重量%、より好ましくは少なくとも80重量%のワックス質パラフィン含量を有することができる。好適な合成ワックス質原料油は、一般には少なくとも90重量%、しばしば少なくとも95重量%、事例によっては、少なくとも97重量%のワックス質パラフィン含量(重量による)を有する。加えて、本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルを製造するこれらのプロセスに使用するワックス質原料基材油は、1種以上の個々の天然、鉱油または合成ワックス質原料油、或いはそれらの任意の混合物を含んでなるものであってよい。
【0046】
加えて、これらのプロセスへの原料油は、従来の鉱油または合成プロセスからとることができる。例えば、合成プロセスは、フィッシャートロプシュ法またはケルベル−エンゲルハート法のようなプロセスによって製造される、GTL(ガスツーリキッド(gas−to−liquids))またはFT(フィッシャー−トロプシュ(Fischer−Tropsch))炭化水素を含むことができる。好適な原料油の多くは、主に飽和(パラフィン性)組成物を有するものとして特徴づけられる。
【0047】
より詳細には、本発明のプロセスで使用する原料油は、通常、650°F(343℃)を超える10%蒸留点(ASTM D86またはASTM 2887で測定)を有し、鉱油または合成の供給源から誘導される、潤滑油領域で沸騰するワックス含有原料である。原料油のワックス含量は、原料油を基準にして少なくとも約50重量%であり、最高で100重量%ワックスに及ぶことができる。原料のワックス含量は、核磁気共鳴スペクトル法(ASTM D5292)、相関ndM法(ASTM D3238)または溶媒法(ASTM D3235)によって測定できる。ワックス質原料は、天然、鉱油または合成などの相当数の供給源から誘導することができる。具体的には、ワックス質原料には、例えば、ラフィネートなどの溶媒精製プロセスから誘導される油、部分的に溶媒脱ロウした油、脱アスファルト油、留出物、減圧軽油、コーカーガスオイル、スラックワックス、フーツ油など、およびフィッシャー−トロプシュワックスが含まれうる。好適な原料は、スラックワックスおよびフィッシャー−トロプシュワックスである。スラックワックスは通常、溶媒またはプロパン脱ロウ法によって、炭化水素原料から誘導される。スラックワックスは、若干の釜残油を含み、通常脱油される。フーツ油は、脱油されたスラックワックスから誘導される。フィッシャー−トロプシュ合成プロセスにより、フィッシャー−トロプシュワックスが調製される。適切なワックス質原料油の限定されない例には、パラフリント(Paraflint)80(水素化フィッシャー−トロプシュワックス)、およびシェルMDSワックス質ラフィネート(Shell MDS Waxy Raffinate)(水素化および部分異性化された、中質留分合成ワックス質ラフィネート)が含まれる。
【0048】
原料油は、高い含量の窒素および硫黄汚染物質を有する場合がある。原料を基準にして、最高で0.2重量%の窒素、および最高で3.0重量%の硫黄を含む原料を、本プロセスで処理することができる。高いワックス含量を有する原料は、典型的には最高で200以上の高い粘度指数を有する。硫黄および窒素含量は、ASTM規格の方法D5453およびD4629によって、それぞれ測定することができる。
【0049】
溶媒抽出法から誘導される原料の場合、常圧蒸留からの高沸点石油留分を減圧蒸留装置に送り、この装置からの蒸留留分を溶媒抽出する。減圧蒸留からの残留分は脱アスファルトされる。溶剤抽出法は、パラフィン性成分をラフィネート相に残しながら、芳香族化合物成分を抽出相に選択的に溶解させる。ナフテンは、抽出相と抽残相の間に分配される。溶媒抽出法用の典型的な溶媒には、フェノール、フルフラールおよびN−メチルピロリドンが含まれる。溶媒対油の比、抽出温度および溶媒で抽出すべき留出物の接触方法を制御することによって、抽出相と抽残相の間の分離度を制御することができる。
【0050】
水素化処理
水素化処理については、触媒は、第6族金属(第1〜18族を有するIUPAC周期律表形式に基づく)、第8〜10族金属およびこれらの混合物を含む触媒などの、水素化処理に有効なものである。好適な金属には、ニッケル、タングステン、モリブデン、コバルトおよびこれらの混合物が含まれる。これらの金属または金属の混合物は、通常、耐火性金属酸化物担体上に酸化物または硫化物として存在する。金属の混合物はまた、バルク金属触媒として存在することができ、この場合、金属の量は、触媒を基準にして30重量%以上である。適切な金属酸化物担体には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナまたはチタニアなどの酸化物(好ましくはアルミナ)が含まれる。好適なアルミナは、ガンマ、ベータなどの多孔性のアルミナである。金属の量は、個別または混合物のいずれでも、触媒を基準にして約0.5〜35重量%の範囲である。第9〜10族金属と第6族金属の好適な混合物の場合、第9〜10族金属は、触媒を基準にして0.5〜5重量%の量で存在し、第6族金属は5〜30重量%の量で存在する。金属の量は、原子吸光スペクトル分析法、誘導結合高周波プラズマ−原子発光分析法、または個々の金属に対して指定されたASTMによる他の方法によって測定することができる。
【0051】
金属酸化物担体の酸性は、助触媒および/またはドーパントを加えることによって、あるいは、金属酸化物担体の性状を制御することによって、例えば、シリカ−アルミナ担体に組み込むシリカの量を制御することによって、制御することができる。助触媒および/またはドーパントの例には、ハロゲン(特にフッ素)、リン、ホウ素、イットリア、希土類酸化物およびマグネシアが含まれる。ハロゲンなどの助触媒は、一般に金属酸化物担体の酸性を増大させるが、イットリアまたはマグネシアなどのマイルドに塩基性のドーパントは、そのような担体の酸性を低下させる傾向がある。
【0052】
水素化処理条件には、150〜400℃、好ましくは200〜350℃の温度、1480〜20786kPa(200〜3000psig)、好ましくは2859〜13891kPa(400〜2000psig)の水素分圧、0.1〜10時間基準液空間速度(LHSV)、好ましくは0.1〜5LHSVの空間速度、および89〜1780m/m(500〜28000scf/B)、好ましくは178〜890m/mの水素対原料の比が含まれる。
【0053】
水素化処理は、窒素および硫黄含有汚染物質の量を、以降の脱ロウ工程において、脱ロウ触媒に許容不可能な影響を及ぼさないような水準まで低減する。また、このマイルドな水素化処理工程を通過する、ある種の多核芳香族化学種が存在する場合がある。これらの汚染物質は、存在する場合、以降の水素化精製工程において除去されることになる。
【0054】
水素化処理の間に、原料油の5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満が650°F(343℃)マイナス生成物に転化されて、そのVI増加が、原料油のVIに比べて4未満、好ましくは3未満、より好ましくは2未満である水素化処理原料油が製造される。このワックス含量の高い原料では、水素化処理工程の間のVI増加が最小になる。
【0055】
水素化処理した原料油は、脱ロウ工程に直接通すことができ、または、脱ロウの前に、好ましくはストリッピングして、硫化水素、アンモニアなどのガス状汚染物質を除去することができる。ストリッピングは、フラッシュドラム、分留塔などの従来の手段によることができる。
【0056】
脱ロウ触媒
脱ロウ触媒は、結晶質でも非晶質でもよい。結晶性材料は、少なくとも1つの10または12環チャネル(ring channel)を含むモレキュラーシーブであり、アルミノシリケート(ゼオライト)またはシリコアルミノホスフェート(SAPO)を基礎にすることができる。酸素化物処理に使用するゼオライトは、少なくとも1つの10または12環チャネルを含むことができる。そのようなゼオライトの例には、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−57、フェリエライト、ITQ−13、MCM−68およびMCM−71が含まれる。少なくとも1つの10環チャネルを含むアルミノホスフェートの例には、ECR−42が含まれる。12環チャネルを含むモレキュラーシーブの例には、ゼオライトベータおよびMCM−68が含まれる。このモレキュラーシーブは、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7に記載されている。MCM−68は、特許文献8に記載されている。MCM−71およびITQ−13は、PCT出願の特許文献9および特許文献10に記載されている。ECR−42は特許文献11に開示されている。好適な触媒には、ZSM−48、ZSM−22およびZSM−23が含まれる。特に好ましいのはZSM−48である。モレキュラーシーブは水素型であることが好ましい。還元は、脱ロウ工程自体の間にその場で起こすこともでき、実験施設内の別の容器中で起こすこともできる。
【0057】
非晶質の脱ロウ触媒には、アルミナ、フッ化アルミナ、シリカ−アルミナ、フッ化シリカ−アルミナおよび第3族金属をドープしたシリカ−アルミナが含まれる。そのような触媒は、例えば特許文献12および特許文献13に記載されている。
【0058】
この脱ロウ触媒は二官能性であり、即ちそれらには、少なくとも1種の第6族金属、少なくとも1種の第8〜10族金属またはこれらの混合物である金属水素化成分が負荷されている。好適な金属は、第9〜10族金属である。特に好ましいのは、Pt、Pdまたはこれらの混合物などの、第9〜10族(第1〜18族を有するIUPAC周期表形式に基づく)貴金属である。これらの金属は、触媒を基準にして0.1〜30重量%の割合で負荷される。触媒調製および金属の負荷方法は、例えば特許文献14に記載されており、例えば、分解可能な金属塩を使用したイオン交換および含浸が含まれる。金属分散技術および触媒粒子径制御は、特許文献2に記載されている。小さい粒子径および十分に分散した金属を有する触媒が好ましい。
【0059】
モレキュラーシーブは、典型的には、脱ロウ条件下で使用されうる高温に抵抗力があるバインダ材料と組み合わせて、完成した脱ロウ触媒を形成してもよいが、バインダなし(自己結合)でもよい。バインダ材料は通常、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、シリカと他の金属酸化物、(チタニア、マグネシア、トリア、ジルコニアおよびこれらの類似物など)の二成分の組み合わせ、並びに、シリカ−アルミナ−トリアおよびシリカ−アルミナ−マグネシアなどのこれら酸化物の三種の組み合わせなどの無機質酸化物である。完成した脱ロウ触媒中のモレキュラーシーブの量は、触媒を基準にして10〜100重量%、好ましくは35〜100重量%である。そのような触媒は、噴霧乾燥、押出成形などの方法によって形成される。脱ロウ触媒は、硫化型または非硫化型で使用することができ、好ましくは硫化型で使用される。
【0060】
脱ロウ条件には、250〜400℃、好ましくは275〜350℃の温度、791〜20786kPa(100〜3000psig)、好ましくは1480〜17339kPa(200〜2500psig)の圧力、0.1〜10hr−1、好ましくは0.1〜5hr−1の時間基準液空間速度、および、45〜1780m/m(250〜28000scf/B)、好ましくは89〜890m/m(500〜5000scf/B)の水素処理ガス比が含まれる。
【0061】
水素化精製
脱ロウ工程からの生成物のうちの少なくとも一部は、離脱なしで直接に水素化精製工程に通される。製品品質を所望の規格に調節するためには、脱ロウから得られた生成物を水素化精製することが好ましい。水素化精製は、任意の潤滑油領域のオレフィンおよび残留芳香族化合物を飽和させること、並びに、任意の残留ヘテロ原子および色相体を除去することを目的とするマイルドな形態の水素化処理である。脱ロウ後水素化精製は、通常脱ロウ工程とカスケードで行われる。一般に、水素化精製は、約150〜350℃、好ましくは180〜250℃の温度で行われることになる。全圧力は、一般に2859〜20786kPa(約400〜3000psig)である。時間基準液空間速度は、一般に0.1〜5LHSV(hr−1)、好ましくは0.5〜3hr−1であり、44.5〜1780m/m(250〜10,000scf/B)の水素処理ガス比である。
【0062】
水素化精製触媒は、第6族金属(第1〜18族を有するIUPAC周期表形式に基づく)、第8〜10族金属およびこれらの混合物を含むものである。好適な金属には、強い水素化機能を有する少なくとも1種の貴金属、特に白金、パラジウムおよびこれらの混合物が含まれる。金属の混合物は、バルク金属触媒として存在することもでき、この場合、金属の量は、触媒を基準にして30重量%以上である。適切な金属酸化物担体には、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、チタニアなどの酸性の低い酸化物、好ましくはアルミナが含まれる。芳香族化合物の飽和用の好適な水素化精製触媒は、多孔性の担体上に、相対的に強い水素化機能を有する少なくとも1種の金属を含んでなるものである。代表的な担体材料には、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナなどの非晶質または結晶質の酸化物材料が含まれる。触媒の金属含量は、非貴金属の場合、しばしば約20重量パーセントと高い。貴金属は、通常約l重量%以下の量で存在する。
【0063】
水素化精製触媒は、触媒のM41S類または族に属するメソ細孔性材料であることが好ましい。触媒のM41S族は、高いシリカ含量を有するメソ細孔性材料であり、その調製法は非特許文献2に記載されている。MCM−41、MCM−48およびMCM−50が例に含まれる。メソ細孔性材料は、15〜100オングストロームの細孔径を有する触媒を指す。このクラスの好適な一員はMCM−41であり、その調製法は特許文献15に記載されている。MCM−41は、均一の大きさの細孔の六角形の配列を有する無機質多孔性の非層状相である。MCM−41の物理的構造は、ストローの束のようであり、ストローの開口(細孔のセル直径)は、15〜100オングストロームの範囲にある。MCM−48は、立方対称性を有し、例えば特許文献16に記載されているが、MCM−50はラメラ構造を有する。MCM−41は、メソ細孔範囲内の、異なるサイズの細孔開口で製造することができる。メソ細孔性材料は、金属水素化成分を保持することができ、それは、第8族、第9族および第10族金属のうちの少なくとも1種である。好ましいのは貴金属、特に第10族貴金属、最も好ましくはPt、Pdまたはこれらの混合物である。
【0064】
一般に、水素化精製は、約150〜350℃、好ましくは180〜250℃の温度で行われることになる。全圧力は、一般に2859〜20786kPa(約400〜3000psig)である。時間基準液空間速度は、一般に0.1〜5LHSV(hr−1)、好ましくは0.5〜3hr−1であり、44.5〜1780m/m(250〜10,000scf/B)の水素処理ガス比である。
【0065】
一実施形態では、本発明は、少なくとも130のVIを有し、
(1)原料油であって、前記原料油を基準として少なくとも約60重量%のワックス含量を有する原料油を、650°F(343℃)マイナス生成物に転化される前記原料油が5重量%未満である有効な水素化処理条件下で、水素化処理触媒を用いて水素化処理して、前記原料油のVIに対するそのVI増加が4未満である水素化処理原料油を製造する工程;
(2)水素化処理原料油をストリッピングして、液体生成物からガス生成物を分離する工程;および
(3)ZSM−48、ZSM−57、ZSM−23、ZSM−22、ZSM−35、フェリエライト、ECR−42、ITQ−13、MCM−71、MCM−68、ゼオライトベータ、フッ化アルミナ、シリカ−アルミナおよびフッ化シリカ−アルミナのうちの少なくとも1種である脱ロウ触媒を用いて、有効な接触水素化脱ロウ条件下で、液体生成物を水素化脱ロウする工程であって、前記脱ロウ触媒は、少なくとも1種の第9族または第10族貴金属を含む工程
を含む方法によって製造される少なくとも1種の基油を含んでなる潤滑油に関するものである。
【0066】
本発明の別の実施形態は、少なくとも130のVIを有し、
(1)潤滑油原料油であって、前記原料油を基準として少なくとも約50重量%のワックス含量を有する原料油を、650°F(343℃)マイナス生成物に転化される前記原料油が5重量%未満である有効な水素化処理条件下で、水素化処理触媒を用いて水素化処理して、前記原料油のVIに対するそのVI増加が4未満である水素化処理原料油を製造する工程;
(2)水素化処理原料油をストリッピングして、液体生成物からガス生成物を分離する工程;
(3)ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、フェリエライト、ZSM−48、ZSM−57、ECR−42、ITQ−13、MCM−68、MCM−71、ゼオライトベータ、フッ化アルミナ、シリカ−アルミナおよびフッ化シリカ−アルミナのうちの少なくとも1種である脱ロウ触媒を用いて、有効な接触水素化脱ロウ条件下で、液体生成物を水素化脱ロウする工程であって、前記脱ロウ触媒は、少なくとも1種の第9族または第10族貴金属を含む工程;および
(4)M41S族からのメソ細孔性水素化精製触媒を用いて、工程(3)からの生成物を水素化精製条件下で水素化精製する工程
を含む方法によって製造される少なくとも1種の基油を含んでなる潤滑油に関するものである。
【0067】
本発明の別の実施形態は、少なくとも130のVIを有し、
(1)潤滑油原料油であって、前記原料油を基準として少なくとも60重量%のワックス含量を有する原料油を、650°F(343℃)マイナス生成物に転化される前記原料油が5重量%未満である有効な水素化処理条件下で、水素化処理触媒を用いて水素化処理して、前記原料油のVIに対するそのVI増加が4未満である水素化処理原料油を製造する工程;
(2)水素化処理原料油をストリッピングして、液体生成物からガス生成物を分離する工程;
(3)ZSM−48である脱ロウ触媒を用いて、有効な接触水素化脱ロウ条件下で、液体生成物を水素化脱ロウする工程であって、前記脱ロウ触媒は、少なくとも1種の第9族または第10族貴金属を含む工程;および
(a)場合により、MCM−41を用いて、工程(3)からの生成物を水素化精製条件下で水素化精製する工程
を含む方法によって製造される少なくとも1種の基油を含んでなる潤滑油に関するものである。本発明を構成する方法に関する他の詳細は、同時係属出願の特許文献17に見出すことができ、それは引用により全体として本明細書に組み込まれたものとする。
【0068】
基油およびベースオイル
広範囲の基油およびベースオイルが、当技術分野で知られている。本発明の基油およびベースオイルと組み合わせて、共基油または共ベースオイルとして使用できる基油およびベースオイルは、天然油、鉱油および合成油である。これらの潤滑基油およびベースオイルは個別に、または任意の組み合わせの混合物として本発明に使用することができる。天然油、鉱油および合成油(またはそれらの混合物)を、未精製で、精製して、または再精製して使用することができる(後者は再生または再処理油としても知られている)。未精製油は、天然、鉱油または合成供給源から直接に得られるものであり、精製を加えることなく使用される。これらには、乾留運転から直接に得られるシェール油、一次蒸留から直接に得られる石油、およびエステル化プロセスから直接に得られるエステル油が含まれる。精製油は、精製油を1つ以上の精製工程にかけて、少なくとも1つの潤滑油特性を改良することを除いて、未精製油に対して議論した油に類似している。当業者は、多くの精製プロセスに精通している。これらのプロセスには、例えば溶媒抽出、蒸留、二次蒸留、酸抽出、塩基抽出、ろ過、パーコレーション、脱ロウ、水素異性化、水素化分解、水素化精製その他が含まれる。再精製油は、精製油に類似しているが、以前に使用した油を使用するプロセスによって得られる。
【0069】
グループI、II、III、IVおよびVは、潤滑基油およびベースオイルの指針を作成するために、米国石油協会によって開発・定義された、ベースオイルおよび基材油の幅広いカテゴリである(API刊行物1509;www.API.org)。グループI基油は一般に、約80〜120の間の粘度指数を有し、約0.03重量%を超える硫黄および/または約90%未満の飽和物を含む。グループII基油は一般に、約80〜120の間の粘度指数を有し、約0.03重量%以下の硫黄および約90%以上の飽和物を含む。グループIII基材油は一般に、約120を超える粘度指数を有し、約0.03重量%以下の硫黄および約90%を超える飽和物を含む。グループIVは、ポリα−オレフィン(PAO)を含む。グループV基油には、グループI〜IVに含まれない基油が含まれる。以下の表に、これらの5つのグループのそれぞれの特性をまとめる。
【0070】
【表1】

【0071】
基油およびベースオイルは、多くの供給源から誘導することができる。天然油には、動物油、植物油(例えば、ヒマシ油およびラード油)および鉱油が含まれる。動物および植物油に関しては、良好な熱酸化安定性を有するものが使用できる。天然油のうち、鉱油が好ましい。鉱油は、それらの粗供給源に従って、例えば、それらが、パラフィン系か、ナフテン系か、パラフィン系−ナフテン系混合かに従って広範囲に変化する。天然油はまた、それらの製造および精製に使用される方法に従って、例えば、それらの蒸留範囲、およびそれらが直留か、分解、水素精製または溶媒抽出したものかどうかに従って変化する。
【0072】
合成油には、炭化水素油が含まれる。炭化水素油には、重合および共重合した(interpolymerized)オレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレン・イソブチレン共重合体、エチレン−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体、およびヒドロカルビル置換オレフィンのポリマーまたは共重合体であって、ヒドロカルビル基が、場合によりO、NまたはSを含むもの)などの油が含まれる。ポリα−オレフィン(PAO)油基油は、一般に使われる合成炭化水素油である。一例として、C、C10、C12、C14オレフィンまたはそれらの混合物から誘導されるPAOを利用することができる。特許文献18、特許文献19および特許文献20を参照されたい。これらは、引用によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0073】
グループIIIおよびPAOの基油およびベースオイルは、通常、相当数の粘度等級で入手できて、例えば、100℃での動粘度には、4cSt、5cSt、6cSt、8cSt、l0cSt、12cSt、40cSt、100cStおよびこれ以上、並びに中間の任意数の粘度等級がある。加えて、高い粘度指数特性を有するPAO基油およびベースオイルは、一般にもっと高い粘度等級で入手できて、例えば、100℃での動粘度には、100cSt〜3000cSt以上がある。周知の材料であり、一般に、エクソンモービル・ケミカル・カンパニー(ExxonMobil Chemical Company)、シェブロン−フィリップス(Chevron−Phillips)、BP−アモコ(BP−Amoco)その他の供給業者から主要な商業規模で入手できるPAOの数平均分子量は、典型的には約250から約3000まで変化する。PAOは通常、α−オレフィンの比較的低分子量の水素化ポリマーまたはオリゴマーを含んでなり、これには、これらに限定されないが、C〜約C32のα−オレフィンが含まれ、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンなどのC〜約C16のα−オレフィンが好ましい。好適なポリα−オレフィンは、ポリ−1−オクテン、ポリ−1−デセンおよびポリ−1−ドデセン、これらの混合物、並びに混合オレフィン由来のポリオレフィンである。しかし、C14〜C18の範囲の高級オレフィンの二量体を使用して、許容できる低揮発性の低粘度基油を供給することができる。粘度等級および出発オリゴマーに応じて、PAOは、約1.5〜12cStの粘度範囲を有する、主として出発オリゴマーの三量体および四量体である(少量の高級オリゴマーを有する)場合がある。PAO基油およびベースオイルは、個別にまたは2種以上を任意に組み合わせて、調合された潤滑油組成物または機能性流体に使用することができる。
【0074】
PAO流体は、フリーデル−クラフツ触媒などの重合触媒(例えば、三塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素や、水、アルコール(エタノール、プロパノール、ブタノールなど)、カルボン酸またはエステル(酢酸エチル、プロピオン酸エチルなど)を有する三フッ化ホウ素錯体を含む)の存在下、α−オレフィンの重合によって、好都合に製造することができる。例えば、特許文献21または特許文献22により開示されている方法は、本発明で都合よく使用することができる。PAO合成のその他の説明は、特許文献23、特許文献24、特許文献25、特許文献26、特許文献27、特許文献28、特許文献29、特許文献30、特許文献18および特許文献31に見出される。C14〜C18オレフィンの二量体は、特許文献32に記載されている。上述した特許の全ては、引用によりそれらの全体として本明細書に組み込まれる。
【0075】
他のタイプの合成PAO基油およびベースオイルには、特許文献19および特許文献20に記載されているような高粘度指数の潤滑油流体が含まれ、それらは、本発明の基油およびベースオイルと組み合わせて、またこの同じ本発明の調合された潤滑油組成物または機能流体と組み合わせて、極めて有利に使用することができる。その他の有用な合成潤滑油、例えば非特許文献3に記載されているものもまた利用することができる。これは、全体として組み込まれる。
【0076】
その他の合成基油およびベースオイルには、その反応基がオレフィンではない低分子量化合物のオリゴマー化または重合から、高分子量化合物に誘導される炭化水素油が含まれ、それは場合により、追加のプロセス(例えば、イソ脱ロウ(isodewaxing)、アルキル化、エステル化、水素異性化、脱ロウなど)において、更に反応して、または化学的に改変されて、潤滑粘度のベースオイルを与えることができる。
【0077】
ヒドロカルビル芳香族基油およびベースオイルもまた、潤滑油および機能性流体において広範囲に使用される。アルキル化芳香族基材油(例えば、ヒドロカルビル芳香族化合物)では、アルキル置換基は、典型的には炭素原子約8〜25個、通常は炭素原子約10〜18個のアルキル基であり、アルキルベンゼンの場合、非特許文献4に記載されているように、最高で3個のそのような置換基が存在することができる。トリアルキルベンゼンは、特許文献33に記載されているように、炭素原子8〜12個の1−アルキンのシクロ二量化によって製造することができる。その他のアルキルベンゼンは、特許文献34および特許文献35に記載されている。アルキルベンゼンは、特に低温用途(極寒の車両役務および冷凍油)の潤滑油基油として、および製紙油において使用される。それらは、ビスタ・ケミカル社(Vista Chem.Co)、ハンツマン・ケミカル社(Huntsman Chemical Co.)、シェブロン・ケミカル社(Chevron Chemical Co.)および日本石油社(Nippon Oil Co.)などの直鎖状アルキルベンゼン(LAB)の生産者から商業的に入手可能である。直鎖状アルキルベンゼンは一般に、良好な低流動点、低温粘度、100を超えるVI値および添加剤の良好な溶解力を有する。望ましい場合に使用できるその他のアルキル化芳香族は、例えば非特許文献5に記載されている。芳香族基油およびベースオイルは、例えばベンゼンのヒドロカルビルアルキル化誘導体、ナフタレン、ビフェニル、ジ−アリールエーテル、ジ−アリール硫化物、ジ−アリールスルホン、ジ−アリールスルフォキシド、ジ−アリールメタン、エタン、プロパンまたはそれ以上の同族体、あるいは、1個以上のO、N、SまたはPを含むモノ、ジまたはトリ−アリール複素環式化合物を含むことができる。
【0078】
使用できるヒドロカルビル芳香族化合物は、ベンゼノイド部分またはナフテノイド部分などの芳香族部分、あるいはそれらの誘導体から誘導される、その重量の少なくとも約5%を含む任意のヒドロカルビル分子でよい。これらのヒドロカルビル芳香族化合物には、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、アルキルジフェニルオキシド、アルキルナフトール、アルキルジフェニルスルフィド、アルキル化ビスフェノールA、アルキル化チオジフェノールなどが含まれる。芳香族は、モノアルキル化、ジアルキル化、ポリアルキル化などをすることができる。芳香族は、モノまたはポリ官能化することができる。ヒドロカルビル基はまた、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基その他の関連するヒドロカルビル基の混合物を含んでなることができる。ヒドロカルビル基は、約C〜最高で約C60まで及ぶことができ、約C〜約C40の範囲がしばしば好ましい。ヒドロカルビル基の混合物が、しばしば好ましい。ヒドロカルビル基は、場合により、硫黄、酸素および/または窒素含有置換基を含むことができる。芳香族基はまた、分子の少なくとも約5%が上記種類の芳香族部分を含んでなる場合には、天然の(石油)供給源から誘導することができる。100℃で約3cSt〜約50cStの粘度が好ましく、ヒドロカルビル芳香族成分の場合、約3.4cSt〜約20cStの粘度がしばしばより好ましい。一実施形態では、アルキル基が主に1−ヘキサデセンを含んでなるアルキルナフタレンが使用される。芳香族化合物の他のアルキル化物も有利に使用することができる。例えば、ナフタレンは、オクテン、デセン、ドデセン、テトラデセンまたはこれ以上の高級オレフィンなど、および類似のオレフィンの混合物などでアルキル化することができる。潤滑油組成物におけるヒドロカルビル芳香族の有用な濃度は、用途に応じて、約2%〜約25%、好ましくは約4%〜約20%、より好ましくは約4%〜約15%とすることができる。
【0079】
その他の有用な潤滑油基油には、ワックス異性体基油およびベースオイルが含まれ、これは、水素異性化ワックス質基材油(例えば、ガスオイルなどのワックス質基材油、スラックワックス、燃料油水素化分解装置塔底物など)、水素異性化フィッシャー−トロプシュワックス、ガスツーリキッド(GTL)基油およびベースオイル、並びに他のワックス異性体水素異性化基油およびベースオイル、或いはそれらの混合物を含んでなる。フィッシャー−トロプシュ合成の高沸点残留分であるフィッシャー−トロプシュワックスは、硫黄含量が非常に低い、高度にパラフィン性の炭化水素である。そのような基油の製造に使用する水素処理には、非晶質の水素化分解/水素異性化触媒、例えば、特化したルーブ水素化分解(LHDC)触媒のうちの1つ、または結晶質の水素化分解/水素異性化触媒を、好ましくはゼオライト系触媒を使用することができる。例えば、一つの有用な触媒は、特許文献6に記載されているようなZSM−48である。水素化分解/水素異性化留出物および水素化分解/水素異性化ワックスを製造する方法は、例えば、特許文献36、特許文献3、特許文献37および特許文献38、並びに特許文献39、特許文献40、特許文献41および特許文献42に記載されている。特に有利な方法が、特許文献43および特許文献44に記載されている。フィッシャー−トロプシュワックス原料を使用する方法は、特許文献45および特許文献46に記載されている。ガスツーリキッド(GTL)基油およびベースオイル、フィッシャー−トロプシュワックス誘導基油およびベースオイル、並びに、他のワックス異性体水素異性化(ワックス異性体)基油およびベースオイルは、本発明に使用することが有利であり、100℃で、約3cSt〜約50cSt、好ましくは約3cSt〜約30cSt、より好ましくは約3.5cSt〜約25cStの有用な動粘度、並びに、GTL4によって例証されるように、100℃で、約3.8cStの動粘度および約138の粘度指数を有することができる。これらのガスツーリキッド(GTL)基油およびベースオイル、フィッシャー−トロプシュワックス誘導基油およびベースオイル、並びに、他のワックス異性体水素異性化基油およびベースオイルは、約−20℃以下の有用な流動点を有し、ある条件下で、約−25℃以下の有利な流動点、および約−30℃〜約−40℃以下の有用な流動点を有することができる。ガスツーリキッド(GTL)基油およびベースオイル、フィッシャー−トロプシュワックス誘導基油およびベースオイル、並びに、ワックス異性体水素異性化基油およびベースオイルの有用な組成は、例えば特許文献47、特許文献48および特許文献49に詳述されている。引用によりそれら全体として本明細書に組み込まれる。
【0080】
ガスツーリキッド(GTL)基油およびベースオイル、フィッシャー−トロプシュワックス誘導基油およびベースオイルは、従来のグループIIおよびグループIII基油およびベースオイル(本発明の共基油または共ベースオイルとして使用することができる)に対して有益な動粘度の利点を有する。ガスツーリキッド(GTL)基油およびベースオイルは、かなり高い動粘度、即ち100℃で最高で約20〜50cStを有することができるが、比較すると、市販のグループII基油およびベースオイルは、100℃で最高で約15cStの動粘度を有し、市販のグループIII基油およびベースオイルは、100℃で最高で約10cStの動粘度を有することができる。グループIIおよびグループIII基油およびベースオイルのより限定された動粘度の範囲と比較して高い、ガスツーリキッド(GTL)基油およびベースオイルの動粘度の範囲は、本発明と組み合わせて潤滑油組成物を調合する際に更に有益な利点を提供することができる。また、ガスツーリキッド(GTL)基油およびベースオイル、並びに、他のワックス異性体水素異性化基油およびベースオイルの硫黄含量が例外的に低いことは、適切なオレフィンオリゴマーおよび/またはアルキル芳香族化合物基油およびベースオイルの硫黄含量が低いことと組み合わせて、並びに、本発明と組み合わせて、潤滑油組成物に更なる利点を提供することができ、この場合、全体の硫黄含量が非常に低いことは、潤滑油性能に有益な影響を与えることができる。
【0081】
アルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマー、並びに、例えば、エステル化またはエーテル化によって得た改変された末端水酸基を含むそれらの誘導体は、有用な合成潤滑油である。一例として、これらの油は、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシド、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリールエーテル(例えば、約1000の平均分子量を有するメチル−ポリイソプロピレン・グリコールエーテル、約500〜1000の分子量を有するポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、および約1000〜1500の分子量を有するポリプロピレングリコールのジエチルエーテル)、あるいは、そのモノおよびポリカルボン酸エステル(例えば、酸性の酸エステル、混合C脂肪酸エステル、またはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステル)の重合によって得ることができる。
【0082】
エステルは、有用な基油を含んでなる。添加剤の溶解力およびシール適合性の特性は、モノカルボン酸のモノアルカノールおよびポリオールエステルを有する二塩基酸のエステルなどの、エステルの使用によって確実にすることができる。前者のタイプのエステルには、例えばフタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸二量体、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸などのジカルボン酸と、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2−エチルヘキシルアルコールなどの様々なアルコールとのエステルが含まれる。これらのタイプのエステルの具体的な例には、アジピン酸ジブチル、セバシン酸ジ−(2−エチルヘキシル)、フマル酸ジ−n−ヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシルなどが含まれる。
【0083】
特に有用な合成エステルは、1種以上の多価アルコール、好ましくはヒンダード・ポリオール(ネオペンチル・ポリオール、例えばネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、2−メチル−2−プロピル−1、3−プロパンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、ジペンタエリトリトールなど)と、C〜C30酸などの少なくとも約4個の炭素原子を含むアルカン酸(カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸およびベヘン酸を含む飽和直鎖脂肪酸、もしくは対応する分岐鎖脂肪酸、またはオレイン酸などの不飽和脂肪酸、あるいはそれらの混合物など)とを反応させることによって得たものである。
【0084】
適切な合成エステル構成成分には、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールエタン、ペンタエリトリトールおよび/またはジペンタエリトリトールと、約5〜約10個の炭素原子を含む1種以上のモノカルボン酸とのエステルが含まれる。そのようなエステルは、広く市販されており、例えば、モービルP−41およびP−51エステル(エクソンモービル・ケミカル・カンバニー)がある。
【0085】
その他のエステルは、完全エステル化または部分エステル化の天然エステルおよびそれらの誘導体、場合により、遊離ヒドロキシルまたはカルボキシル基を有するものを含むことができる。そのようなエステルは、グリセリド、天然および/または改変した植物油、脂肪酸または脂肪アルコールの誘導体を含むことができる。
【0086】
シリコン系の油は、有用な合成潤滑油の別の一群である。これらの油には、ポリアルキル、ポリアリール、ポリアルコキシおよびポリアリールオキシのシロキサン油、並びにシリケート油が含まれる。適切なシリコン系の油の例には、ケイ酸テトラエチル、ケイ酸テトライソプロピル、ケイ酸テトラ−(2−エチルヘキシル)、ケイ酸テトラ−(4−メチルヘキシル)、ケイ酸テトラ−(p−tert−ブチルフェニル)、ヘキシル−(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン、ポリ(メチル)シロキサンおよびポリ−(メチル−2−メチルフェニル)シロキサンが含まれる。
【0087】
合成潤滑油の別の一群は、リン含有酸のエステルである。これらには、例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、デカンホスホン酸のジエチルエステルが含まれる。
【0088】
基油およびベースオイルの別のタイプには、高分子テトラヒドロフランなど、およびそれらの誘導体が含まれ、この場合、反応性ペンダントまたは末端基が、場合により、O、NまたはSを含むことができる適切なヒドロカルビル基で、部分的にまたは完全に誘導体化またはキャップ化される。
【0089】
本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルの極めて有益な粘度の利点は、1種以上の性能添加剤と組み合わせて実現することができ、−25℃未満、望ましくは−30℃以下での粘度の測定値対理論値の望ましい比が、調合された潤滑油組成物または機能性流体を得る際に実現される。これらの潤滑油組成物または機能性流体はまた、粘度の測定値対理論値の比1.2以下、好ましくは1.16以下、多くの場合、より好ましくは1.12以下という、他に例をみない、かつ強く望まれる特性を有する。従って、本明細書に記載の新規な基油およびベースオイルの粘度の測定値対理論値の特徴の効果は、性能添加剤の存在下でも維持され、本明細書に記載の新規な基油およびベースオイル、並びに1種以上の性能添加剤を含んでなる、改良された調合された潤滑油組成物または機能性流体になる。
【0090】
性能添加剤
本発明は、潤滑油組成物において有効な量の追加の潤滑油構成成分と共に使用することができ、これらには、例えば、極性および/または非極性の潤滑油ベースオイルなど、並びに、例えば、これらに限定されないが、金属および無灰酸化防止剤、金属および無灰分散剤、金属および無灰界面活性剤、腐食防止剤および防錆剤、金属不活性化剤、減摩添加剤(金属および非金属、低灰分、リン含有および非リン、硫黄含有および非硫黄のタイプ)、極圧添加剤(金属および非金属、リン含有および非リン、硫黄含有および非硫黄のタイプ)、焼付け防止剤、流動点降下剤、ワックス改質剤、粘度指数向上剤、粘度調整剤、シール適合化剤、摩擦調整剤、潤滑剤、汚染防止剤、発色剤、消泡剤、乳化破壊剤、およびその他などの性能添加剤、がある。一般に多く使われる添加剤の総説として、非特許文献6を参照されたい。これにはまた、以下に述べる、議論した相当数の潤滑油添加剤のためになる議論がある。非特許文献7もまた参照されたい。特に、本発明のベースオイルは、調合された潤滑油組成物または機能性流体に対して、低硫黄、低リン、および/または低灰分の特性を与える最新の添加剤、および/または添加剤系、並びに、添加物パッケージを用いて、本質的な性能利点を示すことができる。
【0091】
減摩添加剤および極圧添加剤
追加の減摩添加剤が、本発明と共に使用することができる。多くの異なるタイプの減摩添加剤があるのに対して、この数10年間、内燃機関クランクケース油用の主な減摩添加剤は、アルキルチオリン酸金属、より具体的には、主金属成分が亜鉛であるジアルキルジチオリン酸金属またはジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZDDP)である。ZDDP化合物は、一般に、式Zn[SP(S)(OR)(OR)]であり、式中、RおよびRは、C〜C18アルキル基、好ましくはC〜C12アルキル基である。これらのアルキル基は、直鎖でもまたは分岐鎖でもよい。例えば、適切なアルキル基には、イソプロピル、4−メチル−2−ペンチル、およびイソオクチルが含まれる。ZDDPは、一般に、全体の潤滑油組成物の約0.4重量%〜約1.4重量%の量で使用されるが、しばしば、より多量または少量を有利に使用することができる。
【0092】
しかし、これらの添加剤からのリンは、触媒コンバータの触媒や、自動車の酸素センサに有害な影響を及ぼすことが判明している。この影響を最小限に抑える一つの方法は、若干または全てのZDDPをリンを含まない減摩添加剤で置換することである。
【0093】
様々な非リン添加剤も減摩添加剤として使用される。硫化オレフィンは、減摩添加剤およびEP添加剤として有用である。硫黄含有オレフィンは、加硫、あるいは脂肪族、アリール脂肪族、または、約3〜30個の炭素原子、好ましくは3〜20個の炭素原子を含む脂環式のオレフィン性炭化水素を含む様々な有機材料によって調製することができる。このオレフィン性化合物は、少なくとも1個の非芳香族二重結合を含む。そのような化合物は、式RC=CRによって定義される(式中、R〜Rは、各々独立に水素または炭化水素基である)。好適な炭化水素基は、アルキルまたはアルケニル基である。R〜Rのうちの任意の2つが、環を形成するように結合してもよい。硫化オレフィンおよびそれらの調製に関するその他の情報は、特許文献50に見出すことができ、これは、引用により全体として本明細書に組み込まれる。
【0094】
チオリン酸の多硫化物およびチオリン酸エステルを潤滑油添加剤として使用することは、特許文献51、特許文献52、特許文献53および特許文献54に開示されている。減摩添加剤、酸化防止剤およびEP添加剤としてのホスホロチオニル(phosphorothionyl)ジスルフィドの添加は、特許文献55に開示されている。アルキルチオカルバモイル化合物(例えば、ビス(ジブチル)チオカルバモイル)を、モリブデン化合物(例えば、オキシモリブデン・ジイソプロピルホスホロジチオ酸スルフィド)およびリンエステル(例えば、ジブチル水素亜リン酸)と組み合わせて、潤滑油の減摩添加剤として使用することは、特許文献56に開示されている。特許文献57は、改良された耐摩耗および極圧特性を提供するために、カルバメート添加剤の使用を開示している。減摩添加剤としてチオカルバメートを使用することは、特許文献58に開示されている。モリ−硫黄アルキルジチオカルバメート三量体錯体(R=C−C18アルキル)などのチオカルバメート/モリブデン錯体類もまた、有用な減摩添加剤である。上述した特許のそれぞれは、引用により全体として本明細書に組み込まれる。
【0095】
グリセロールのエステルを、減摩添加剤として使用してもよい。例えば、モノ、ジ、およびトリオレアート、モノパルミタート、並びにモノミリスタートを使用することができる。
【0096】
ZDDPは、耐摩耗特性を提供する他の組成物と併用される。特許文献59は、チオジキサントゲン化合物(例えば、オクチルチオジキサントゲン)とチオリン酸金属(例えば、ZDDP)の組み合わせが、耐摩耗特性を改良できることを開示している。特許文献60は、アルキオキシアルキルキサントゲン酸金属(例えば、エトキシエチルキサントゲン酸ニッケル)とジキサントゲン(例えば、ジエトキシエチルジキサントゲン)を、ZDDPと組み合わせて使用すると、耐摩耗特性が改良されることを開示している。
【0097】
減摩添加剤は、約0.01〜6重量パーセント、好ましくは約0.01〜4重量パーセントの量で使用することができる。
【0098】
粘度指数向上剤
粘度指数向上剤(VI向上剤、粘度調整剤または増粘剤としても知られている)は、高および低温の運転性能を有する潤滑油を提供する。これらの添加剤は、高温度での剪断安定性および低温での許容可能な粘度を与える。
【0099】
適切な粘度指数向上剤には、低分子量および高分子量の両方の炭化水素、ポリエステル、並びに粘度指数向上剤および分散剤の両方の働きをする粘度指数向上剤分散剤が含まれる。これらのポリマーの典型的な分子量は、約10,000〜1,000,000、より典型的には約20,000〜500,00、更により典型的には約50,000〜200,000の間である。
【0100】
適切な粘度指数向上剤の例は、メタクリラート、ブタジエン、オレフィン、またはアルキル化スチレンのポリマーおよび共重合体である。ポリイソブチレンは、一般に使われる粘度指数向上剤である。適切な別の粘度指数向上剤は、ポリメタクリレート(例えば、様々な連鎖長のアルキル・メタクリレートの共重合体)であり、そのいくつかの調合物はまた、流動点降下剤としても働く。その他の適切な粘度指数向上剤には、エチレンとプロピレンの共重合体、スチレンとイソプレンの水素化ブロック共重合体、およびポリアクリレート(例えば様々な連鎖長のアクリレートの共重合体)が含まれる。具体的な例には、約50,000〜200,000の分子量のスチレン−イソプレンまたはスチレン−ブタジエン系ポリマーが含まれる。
【0101】
粘度指数向上剤は、約0.01〜15重量パーセント、好ましくは約0.01〜10重量パーセント、事例によっては、より好ましくは約0.01〜5重量パーセントの量で使用することができる。
【0102】
酸化防止剤
酸化防止剤は、役務の間、ベースオイルの酸化劣化を遅らせる。そのような劣化は、金属表面上への沈積、スラッジの存在または潤滑油の粘度増加をもたらす場合がある。当業者は、潤滑油組成物において有用な多種多様な酸化防止剤を承知している。例えば、非特許文献6、特許文献61および特許文献62を参照されたい。これらの明細は、引用によりそれら全体として本明細書に組み込まれる。有用な酸化防止剤は、ヒンダード・フェノールを含む。これらのフェノール酸化防止剤は、無灰(金属フリー)フェノール化合物、または、ある種のフェノール化合物の中性もしくは塩基性の金属塩とすることができる。典型的なフェノールの酸化防止剤化合物は、ヒンダード・フェノール樹脂であり、それは、立体障害型水酸基を含むものであり、これらには、ヒドロキシル基が互いにo−またはp−の位置にあるジヒドロキシアリール化合物の誘導体が含まれる。典型的なフェノール酸化防止剤には、C6+アルキル基で置換されたヒンダード・フェノール、およびこれらのヒンダード・フェノールのアルキレン結合誘導体が含まれる。このタイプのフェノール材料の例には、2−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール、2−t−ブチル−4−オクチルフェノール、2−t−ブチル−4−ドデシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ドデシルフェノール、2−メチル−6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール、および2−メチル−6−t−ブチル−4−ドデシルフェノールがある。その他の有用なヒンダード・モノフェノール酸化防止剤には、例えば、ヒンダード・2,6−ジ−アルキルフェノールプロピオンエステル誘導体を含むことができる。ビス−フェノール酸化防止剤もまた、本発明と組み合わせて使用することが有利であろう。オルト結合のフェノールの例には、2,2’−ビス(6−t−ブチル−4−ヘプチルフェノール)、2,2’−ビス(6−t−ブチル−4−オクチルフェノール)、および2,2’−ビス(6−t−ブチル−4−ドデシルフェノール)が含まれる。パラ結合のビスフェノールには、例えば、4,4’−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)および4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)が含まれる。
【0103】
使用できる非フェノールの酸化防止剤には、芳香族アミン酸化防止剤が含まれ、これらは、酸化防止剤として、またはフェノールと組み合わせて、使用することができる。非フェノール酸化防止剤の典型的な例には、式R10Nの芳香族モノアミンなどのアルキル化および非アルキル化芳香族アミンが含まれる。式中、Rは脂肪族、芳香族または置換芳香族基であり、Rは、芳香族または置換芳香族基であり、R10はH、アルキル、アリールまたはR11S(O)12であり、式中、R1lはアルキレン、アルケニレン、またはアラルキレン基であり、R12は高級アルキル基、アルケニル、アリールまたはアルカリル(alkaryl)基であり、xは0、1または2である。脂肪族基Rは、1〜約20個の炭素原子を含むことができ、好ましくは6〜12個の炭素原子を含む。脂肪族基は、飽和脂肪族基である。RおよびRの両方が芳香族または置換芳香族基であることが好ましく、芳香族基は、ナフチルなどの縮合環芳香族基でよい。芳香族基RおよびRは、Sなどの他の基と共に接合してもよい。
【0104】
典型的な芳香族アミン酸化防止剤は、少なくとも約6個の炭素原子のアルキル置換基を有する。脂肪族基の例には、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルが含まれる。一般に、脂肪族基は、約14個を超える炭素原子を含まない。本組成物に有用なアミン酸化防止剤の一般的なタイプには、ジフェニルアミン、フェニルナフチルアミン、フェノチアジン、イミドジベンジルおよびジフェニルフェニレンジアミンが含まれる。2種以上の芳香族アミンの混合物もまた有用である。高分子アミン酸化防止剤もまた使用することができる。本発明に有用な芳香族アミン酸化防止剤の具体的な例には、p(p’−ジオクチルジフェニルアミン)、t−オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミンおよびp−オクチルフェニル−α−ナフチルアミンが含まれる。
【0105】
硫化アルキルフェノールおよびそのアルカリまたはアルカリ土類金属塩もまた有用な酸化防止剤である。低硫黄ペルオキシド分解剤は、酸化防止剤として有用である。
【0106】
潤滑油組成物に使用される酸化防止剤の別の一群は、油溶性銅化合物である。任意の油溶性の適切な銅化合物を、潤滑油にブレンドすることができる。適切な銅酸化防止剤の例には、ジヒドロカルビルチオまたはジチオリン酸銅およびカルボン酸の銅塩(天然産または合成)が含まれる。その他の適切な銅塩には、ジチアカルバミン酸銅、スルホナート、フェナートおよびアセチルアセトネートが含まれる。アルケニルコハク酸または無水物から誘導される、塩基性、中性または酸性の銅Cu(I)またはCu(II)塩は、特に有用であると知られている。
【0107】
好適な酸化防止剤には、ヒンダード・フェノール、アリールアミン、低硫黄ペルオキシド分解剤および他の関連する成分が含まれる。これらの酸化防止剤は、タイプによって個別にまたは互いに組み合わせて使用することができる。そのような添加剤は、約0.01〜5重量パーセント、好ましくは約0.01〜2重量パーセントの量で使用することができる。
【0108】
摩擦調整剤
摩擦調整剤は、そのような材料を含む任意の潤滑油または流体の摩擦係数を変えることができる適宜の材料である。摩擦調整剤はまた、摩擦低減剤、潤滑剤、油性向上剤、および潤滑油ベースオイル、調合された潤滑油組成物または機能性流体の摩擦係数を変える他のそのような薬剤として知られ、所望なら、本発明のベースオイルまたは潤滑油組成物と組み合わせて効果的に使用することができる。摩擦係数を下げる摩擦調整剤は、本発明のベースオイルおよび潤滑油組成物と組み合わせると特に有利である。摩擦調整剤は、金属含有化合物または材料、および無灰化合物または材料、またはそれらの混合物を含むことができる。金属含有摩擦調整剤は、金属塩または金属−配位子錯体を含むことができ、この場合、金属は、アルカリ、アルカリ土類、または遷移族金属を含むことができる。そのような金属含有摩擦調整剤はまた、低灰分特性を有することができる。遷移金属には、Mo、Sb、Sn、Fe、Cu、Znその他を含むことができる。配位子には、アルコールのヒドロカルビル誘導体、ポリオール、グリセロール、部分エステル化グリセロール、チオール、カルボキシレート、カルバメート、チオカルバメート、ジチオカーバメート、ホスフェート、チオホスフェート、ジチオホスフェート、アミド、イミド、アミン、チアゾール、チアジアゾール誘導体、ジチアゾール誘導体、ジアゾール、トリアゾール、および、有効量のO、N、S、またはPを、個別にまたは組み合わせて含む他の極性の分子官能基を含むことができる。具体的には、例えば、Mo−ジチオカーバメート、Mo(DTC)、Mo−ジチオホスフェート、Mo(DTP)、Mo−アミン、Mo(Am)、Mo−アルコラート、Mo−アルコール−アミドなどのMo含有化合物は、特に有効であるはずである。
【0109】
無灰摩擦調整剤にはまた、有効量の極性基を含む潤滑油材料、例えば、ヒドロキシル含有ヒドロカルビル・ベースオイル、グリセリド、部分グリセリド、グリセリド誘導体などを含ませることができる。摩擦調整剤中の極性基は、個別にまたは組み合わせて有効量のO、N、SまたはPを含むヒドロカルビル基を含むことができる。特に有効な可能性があるその他の摩擦調整剤には、例えば、脂肪酸、脂肪質アルコール、脂肪質アミド、脂肪質エステル、ヒドロキシル含有カルボキシレート、および相当する合成長鎖のヒドロカルビル酸、アルコール、アミド、エステル、ヒドロキシカルボキシレートなどの塩(灰分含有および無灰誘導体の両方)が含まれる。事例によっては、適切な摩擦調整剤として、脂肪質の有機酸、脂肪質のアミン、および硫化脂肪酸を使用することができる。
【0110】
摩擦調整剤の有用な濃度は、約0.01重量%〜10−15重量%以上まで及ぶことができ、しばしば約0.1〜5重量%の範囲が好ましい。モリブデン含有材料の濃度は、しばしばMo金属濃度によって記載される。Moの有利な濃度は、約10〜3000ppm以上まで及ぶことができ、しばしば約20〜2000ppmの範囲が好ましく、事例によっては、約30〜1000ppmの範囲がより好ましい。全てのタイプの摩擦調整剤は、単独でまたは本発明の材料との混合物で使用することができる。しばしば、2種以上の摩擦調整剤の混合物、または摩擦調整剤と代わりの表面活性剤との混合物もまた望ましい。
【0111】
流動点降下剤
従来の流動点降下剤(潤滑油流動性向上剤としても知られている)を、所望なら、本発明の組成物に加えることができる。これらの流動点降下剤を、本発明の潤滑油組成物に加えて、流体が流れることになる、または注ぐことができる最低温度を下げることができる。適切な流動点降下剤の例には、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアリールアミド、ハロパラフィン・ワックスおよび芳香族化合物の凝縮生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、フマル酸ジアルキルの三元重合体、並びに脂肪酸およびアリルビニルエーテルのビニルエステルが含まれる。特許文献63、特許文献64、特許文献65、特許文献66、特許文献67、特許文献68、特許文献69、特許文献70および特許文献71は、有用な流動点降下剤および/またはその調製を記載している。これらの参考文献のそれぞれは、全体として本明細書に組み込まれる。そのような添加剤は、約0.01〜5重量パーセント、好ましくは約0.01〜1.5重量パーセントの量で使用することができる。
【0112】
腐食防止剤
腐食防止剤は、潤滑油組成物と接触する金属部分の劣化を減少させるために使用される。適切な腐食防止剤には、チアジゾールが含まれる。例えば、特許文献72、特許文献73および特許文献74を参照されたい。それらは、引用によりそれら全体として本明細書に組み込まれる。そのような添加剤は、約0.01〜5重量パーセント、好ましくは約0.01〜1.5重量パーセントの量で使用することができる。
【0113】
シール適合化剤
シール適合化剤は、流体中での化学反応またはエラストマー中での物理的変化を引き起こすことによって、エラストマーのシールが膨潤するのを助ける。潤滑油用の適切なシール適合化剤には、有機ホスフェート、芳香族エステル、芳香族炭火水素、エステル(例えばフタル酸ブチルベンジル)およびポリブテニルコハク酸無水物が含まれる。このタイプの添加剤は商業的に入手可能である。そのような添加剤は、約0.01〜3重量パーセント、好ましくは約0.01〜2重量パーセントの量で使用することができる。
【0114】
消泡剤
消泡剤を潤滑油組成物に加えることが有利である。これらの薬剤は、安定な泡の形成を遅らせる。シリコーンおよび有機ポリマーが、典型的な消泡剤である。例えば、シリコン油またはポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサンは、消泡剤特性を提供する。消泡剤は商業的に入手可能であり、乳化破壊剤などの他の添加剤と共に普通のわずかな量で使用することができ、通常、組み合わせられるこれらの添加剤の量は、1パーセント未満であり、しばしば0.1パーセント未満である。
【0115】
インヒビターおよび防錆添加剤
防錆添加剤(または腐食防止剤)は、潤滑される金属表面を、水または他の汚染物質による薬品侵食から保護する添加剤である。これらの幅広い種類が商業的に入手可能であり、それらは非特許文献6にも言及されている。
【0116】
一つのタイプの防錆添加剤は、優先して金属表面を濡らす極性の化合物であり、油のフィルムでそれを保護する。他のタイプの防錆添加剤は、油だけが金属表面に接触するように、油中水滴型エマルジョンにそれを組み込むことによって、水を吸収する。更に別のタイプの防錆添加剤は、化学的に金属に粘着して、非反応的表面を生成する。適切な添加剤の例には、ジチオリン酸亜鉛、金属フェノラート、塩基性の金属スルホネート、脂肪酸およびアミンが含まれる。そのような添加剤は、約0.01〜5重量パーセント、好ましくは約0.01〜1.5重量パーセントの量で使用することができる。その他のタイプの添加剤も、更に、本発明の潤滑油組成物または機能性流体に組み込むことができ、必要に応じて、例えば、乳化破壊剤、可溶化剤、流動化剤、着色剤、発色剤などの1種以上の添加剤を含むことができる。更に、各タイプの添加剤は、個々の添加剤または添加剤の混合物を含むことができる。
【0117】
典型的な添加剤量
潤滑油組成物が上述の1種以上の添加剤を含む場合、添加剤は、添加剤がその意図した機能を行うのに十分な量で組成物の中にブレンドされる。本発明に有用なそのような添加剤の典型的な量を、以下の表2に示す。
【0118】
製造業者から購入した多くの添加剤、添加剤濃縮物および添加剤パッケージは、調合物中に、所定量のベースオイル溶媒または希釈剤を組み込んでいる場合があることに留意されたい。従って、下記表3の重量は、活性配合剤(即ち配合剤の非溶媒部分)の量を対象としている。以下に示す重量パーセントは、潤滑油組成物の全体の重量に基づく。しかし、実際の応用では、添加剤成分、添加剤濃縮物、および添加剤パッケージは、製造業者から購入したままの状態で使用され、所定量のベースオイル溶媒または希釈剤を含んでいるだろう。以下の実施例および比較例に詳述した添加剤および調合物成分は、特に注記しない限り、それらの製造業者または供給業者からの「そのままで」使用される。
【0119】
【表2】

【実施例】
【0120】
実施例1
当業者にとって周知の、本発明のものではない他のプロセスパラメータを制御することによって、本発明の方法により記載の、本発明の基油およびベースオイルを、工業において典型的な低粘度油から高粘度油までの範囲にわたって製造することができ、従って、それらの2つの端点間で最終的粘度を有する基油のブレンディングが可能になる。この実施例では、本発明の方法を使用して、6.6cStの高粘度レベルおよび4.0cStの低粘度レベルの基油を製造した。この実施例の場合、表4からわかるように、本発明の油Aは、鉱油ワックス原料油から本明細書に記載のプロセスまで誘導され、次いで、2つの粘度目標:4.0cStおよび5.7cStにブレンドした。同様に、この実施例の本発明の油Bは、フィッシャー−トロプシュワックスから誘導され、最終的粘度目標の4.0cStおよび6.3cStにブレンドした。この実施例の比較用油は、商業的に入手可能な基油であり、粘度目標4cSt、5cStおよび8cStにブレンドした。
【0121】
本発明のベースオイルAおよびB、並びにそれらに匹敵する粘度指数の、比較用ベースオイル1の粘度特性を以下に示す(表3)。動粘度は、ASTM法D445で測定した。測定CCS粘度は、ASTM法D5293を使用することによって見出した。理論粘度は、ASTM D341(補遺1)に見出されるウォルサー/マッコール式によって算出した。
【0122】
−30℃以下での測定粘度と理論粘度の間の比(即ち、比=測定/理論)は、本発明のベースオイルの場合1.2未満であるが、比較用ベースオイルの場合、同じ温度で1.2を超える。
【0123】
【表3】

【0124】
本明細書で詳述した新規な基油は、低温度(−20℃未満)ではるかに低いスキャニング・ブルックフィールド粘度(ASTM D5133)値を有することが同様に観測されている。スキャニング・ブルックフィールド粘度測定は、D5293 CCS技術に比べて、はるかに低い剪断速度および遅い冷却速度で行われる。表4に例示する具体的な実施例において、本発明の基油の(測定/理論的に予測される)粘度の比は、2.5(@−20℃)と7(@−35℃)の間の範囲にあるが、類似した粘度およびVIを有する、比較可能な商業的に入手可能な基油は、11(@−20℃)と63(@−25℃)の間の範囲にある比を有し、その粘度は、−25℃未満で測定するには高すぎる。
【0125】
比較用ベースオイルおよび本発明のベースオイルの粘度−温度性能はまた、100℃での動粘度によって測定されたように、ある範囲のベースオイル粘度にわたって明白に異なる。100℃で比較可能な動粘度では、本発明のベースオイルは、比較用ベースオイル1の低温粘度に比べて、例えば−30℃および−35℃の温度で、優れた(即ちより低い)低温粘度を有することが明らかである(表4および図2)。
【0126】
【表4】

【0127】
実施例2
この実施例では(表5)、本発明の機能性流体は、油圧作動油のそれである。性能添加物パッケージAは、油圧作動油組成物に使用するのに適切である。しかしこの実施例は、代替の可能な潤滑油組成物を制限するものではなく、その潤滑油組成物は、本発明に適切に使用することができる。この実施例では、ISO 32(ISO 3448による粘度等級、国際規格化機構(International Standards Organization)出版)の同じ粘度目標を満たすように調合され、これは、油圧作動油の多くの典型的な粘度等級のうちの一つである。
【0128】
驚いたことに、本発明の実施例1は、実施例1の本発明のベースオイルAだけで調合され、粘度調整剤は全くないが、−20°Fで3010cPの優れたブルックフィールド粘度を示した。この性能は、比較例CE.3(商業的に入手可能な組成物、パラフィン系/ナフテン系混合タイプの鉱油と粘度調整剤を有する)のそれに比べて、著しく良好(即ちより低い)であり、比較例CE.1(グループIII比較用ベースオイル比較用油1だけで調合され、粘度調整剤が全くない)のそれに比べて、劇的に良好(即ちより低い)である。
【0129】
同様に、本発明の実施例2は、実施例1の本発明のベースオイルAと粘度調整剤で調合されたが、−20°Fで2150cPの優れたブルックフィールド粘度を示した。この性能は、他の粘度改変比較例CE.1(グループIII比較用ベースオイル比較用油1と粘度調整剤で調合されている)およびCE.3(商業的に入手可能な組成物、パラフィン系/ナフテン系混合タイプの鉱油と粘度調整剤を有する)のそれに比べて、著しく良好(即ちより低い)である。
【0130】
【表5】

【0131】
これらの実施例は、全体として良好な幅広い温度性能に対して低温粘度が最も重要な貢献者であるような用途において、他のグループIII基油と対比して、本明細書で詳述した新規な基油の驚異的かつ予想外の利点を示す。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】様々な温度において測定されたCCS粘度を、予測されたウォルサー−マッコール粘度と比較するグラフである。
【図2】様々なオイルにつき、粘度対ノアク揮発性プロフィルを示すグラフである。
【図3】様々な本発明のオイルおよび比較例につき、動粘度対CCS粘度を比較するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)下記特性(i)〜(iii):
(i)粘度指数(VI)130以上;
(ii)流動点−10℃以下;および
(iii)−30℃以下における低温粘度の測定値対理論値の比であって、測定粘度は、コールド・クランク・シミュレータ粘度であり、理論粘度は、ウォルサー−マッコール式を使用して同じ温度で算出される比1.2以下
を有し、
グループIV基油またはベースオイルではない基油またはベースオイル;および
b)少なくとも1種の添加剤
を含んでなることを特徴とする機能性流体。
【請求項2】
a)少なくとも130のVIを有し、
(i)原料油であって、前記原料油を基準として少なくとも60重量%のワックス含量を有する原料油を、650°F(343℃)マイナス生成物に転化される前記原料油が5重量%未満である有効な水素化処理条件下で、水素化処理触媒を用いて水素化処理して、前記原料油のVIに対するそのVI増加が4未満である水素化処理原料油を製造する工程;
(ii)水素化処理原料油をストリッピングして、液体生成物からガス生成物を分離する工程;および
(iii)ZSM−48、ZSM−57、ZSM−23、ZSM−22、ZSM−35、フェリエライト、ECR−42、ITQ−13、MCM−71、MCM−68、ゼオライトベータ、フッ化アルミナ、シリカ−アルミナおよびフッ化シリカ−アルミナのうちの少なくとも1種である脱ロウ触媒を用いて、有効な接触水素化脱ロウ条件下で、液体生成物を水素化脱ロウする工程であって、前記脱ロウ触媒は、少なくとも1種の第9族または第10族貴金属を含む工程
を含んでなる方法によって製造される少なくとも1種の基油またはベースオイル;および
b)少なくとも1種の添加剤
を含んでなることを特徴とする機能性流体。
【請求項3】
a)少なくとも130のVIを有し、
(i)潤滑油原料油であって、前記原料油を基準として少なくとも50重量%のワックス含量を有する原料油を、650°F(343℃)マイナス生成物に転化される前記原料油が5重量%未満である有効な水素化処理条件下で、水素化処理触媒を用いて水素化処理して、前記原料油のVIに対するそのVI増加が4未満である水素化処理原料油を製造する工程;
(ii)水素化処理原料油をストリッピングして、液体生成物からガス生成物を分離する工程;
(iii)ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、フェリエライト、ZSM−48、ZSM−57、ECR−42、ITQ−13、MCM−68、MCM−71、ゼオライトベータ、フッ化アルミナ、シリカ−アルミナおよびフッ化シリカ−アルミナのうちの少なくとも1種である脱ロウ触媒を用いて、有効な接触水素化脱ロウ条件下で、液体生成物を水素化脱ロウする工程であって、前記脱ロウ触媒は、少なくとも1種の第9族または第10族貴金属を含む工程;および
(iv)M41S族からのメソ細孔性水素化精製触媒を用いて、工程(iii)からの生成物を水素化精製条件下で水素化精製する工程
を含んでなる方法によって製造される少なくとも1種の基油またはベースオイル;および
b)少なくとも1種の添加剤
を含んでなることを特徴とする機能性流体。
【請求項4】
a)少なくとも1種の基油であって、
少なくとも130のVIを有し、
(i)潤滑油原料油であって、前記原料油を基準として少なくとも60重量%のワックス含量を有する原料油を、650°F(343℃)マイナス生成物に転化される前記原料油が5重量%未満である有効な水素化処理条件下で、水素化処理触媒を用いて水素化処理して、前記原料油のVIに対するそのVI増加が4未満である水素化処理原料油を製造する工程;
(ii)水素化処理原料油をストリッピングして、液体生成物からガス生成物を分離する工程;
(iii)ZSM−48である脱ロウ触媒を用いて、有効な接触水素化脱ロウ条件下で、液体生成物を水素化脱ロウする工程であって、前記脱ロウ触媒は、少なくとも1種の第9族または第10族貴金属を含む工程;および
(iv)場合により、MCM−41を用いて、工程(iii)からの生成物を水素化精製条件下で水素化精製する工程
を含んでなる方法によって製造される基油;および
b)少なくとも1種の添加剤
含んでなることを特徴とする機能性流体。
【請求項5】
前記原料油は、合成ガスツーリキッド原料油であることを特徴とする請求項2、3または4に記載の機能性流体。
【請求項6】
前記原料油は、フィッシャー−トロプシュ法によって製造されることを特徴とする請求項2、3または4に記載の機能性流体。
【請求項7】
−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有し、請求項1、2、3または4に記載の基油またはベースオイルおよび少なくとも1種の性能改良添加剤を含んでなることを特徴とする機能性流体。
【請求項8】
−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有し、請求項1、2、3または4に記載の基油またはベースオイルおよび少なくとも1種の性能改良添加剤を含んでなり、前記性能改良添加剤は、粘度指数向上剤でないことを特徴とする機能性流体。
【請求項9】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載のベースオイルまたは基油を含んでなり、前記ブルックフィールド粘度は、−20°Fで40000cP以下であることを特徴とする機能性流体組成物。
【請求項10】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載のベースオイルまたは基油を含んでなり、前記ブルックフィールド粘度は、−20°Fで28000cP以下であることを特徴とする機能性流体組成物。
【請求項11】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載のベースオイルまたは基油を含んでなり、前記ブルックフィールド粘度は、−20°Fで6500cP以下であることを特徴とする機能性流体組成物。
【請求項12】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載のベースオイルまたは基油を含んでなり、前記ブルックフィールド粘度は、−20°Fで6200cP以下であることを特徴とする機能性流体組成物。
【請求項13】
−20°F以下で改良されたブルックフィールド粘度を有する機能性流体の製造方法であって、
基油またはベースオイルを組み込む工程を含んでなり、
前記基油またはベースオイルは、下記特性(a)〜(c):
(a)粘度指数(VI)130以上;
(b)流動点−10℃以下;および
(c)−30℃以下における低温粘度の測定値対理論値の比であって、測定粘度は、コールド・クランク・シミュレータ粘度であり、理論粘度は、ウォルサー−マッコール式を使用して同じ温度で算出される比1.2以下
を有し、
前記基油またはベースオイルは、グループIV基油またはベースオイルではない
ことを特徴とする機能性流体の製造方法。
【請求項14】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載の基油またはベースオイルを組み込む工程を含んでなることを特徴とする基油のブルックフィールド粘度を改良する方法。
【請求項15】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載の基油またはベースオイルを組み込む工程を含んでなることを特徴とする機能性流体のブルックフィールド粘度を改良する方法。
【請求項16】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載の基油またはベースオイルを組み込む工程を含んでなることを特徴とする油圧作動油のブルックフィールド粘度を改良する方法。
【請求項17】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載のベースオイルまたは基油を混合する工程により、機能性流体を改良する方法であって、最終混合物のブルックフィールド粘度は、−20°Fで40000cP以下であることを特徴とする機能性流体を改良する方法。
【請求項18】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載のベースオイルまたは基油を混合する工程により、機能性流体を改良する方法であって、最終混合物のブルックフィールド粘度は、−20°Fで28000cP以下であることを特徴とする機能性流体を改良する方法。
【請求項19】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載のベースオイルまたは基油を混合する工程により、機能性流体を改良する方法であって、最終混合物のブルックフィールド粘度は、−20°Fで6500cP以下であることを特徴とする機能性流体を改良する方法。
【請求項20】
請求項1、2、3または4のいずれかに記載のベースオイルまたは基油を混合する工程により、機能性流体を改良する方法であって、最終混合物のブルックフィールド粘度は、−20°Fで6200cP以下であることを特徴とする機能性流体を改良する方法。
【請求項21】
前記機能性流体は、油圧作動油であることを特徴とする請求項1〜20のいずれかに記載の機能性流体、機能性流体組成物、製造方法または改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−509899(P2006−509899A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−507923(P2005−507923)
【出願日】平成15年10月7日(2003.10.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/033325
【国際公開番号】WO2005/017077
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】