説明

高解像度構造を有する有機電子部品及びその生産方法

【課題】本発明は、高解像度構造を有する有機電子部品、特に低ソースドレーン間の距離を有する有機電界効果トランジスタ(OFET)及びその生産方法に関する。
【解決手段】有機電子部品は、生産中レーザーを用いて作られた凹部及び/又は修正された区域を有し、その中には、例えば、金属の導体トラック/電極が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高解像度(High Resolution)構造を有する有機電子部品、特に短ソースドレーン間の距離を有する有機電界効果トランジスタ(OFET)及び量産可能な生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積デジタル回路のスイッチング頻度及び/又はスイッチング速度は、特にチャネル長さ“l”により決定的に影響される。従って、今まではこのチャネル長さを成るべく小さくさせる、即ち、可能な最も高い解像度の構造を有する有機電子部品のためのチップを提供する試みが欠かせないことである。
【0003】
有機電子部品、特に高解像度構造及び小さいソースドレーン間の距離“l”を有するOFETは知られている。しかしながら、今まではこれらは高費用を伴う複雑な工程段階により生産されている。これらの工程段階は、経済的ではなく、一般的にフォトリソグラフィと、必要な容量を有する導体トラックが形成されるように、下側層或いは基板にフォトリソグラフィ的に作られる凹部とを備える。これらの凹部は槽状であり、鋭い輪郭を有しない。これらの凹部の底は、無変化のままである。
【0004】
特許文献1において、凹部に導体トラックが導入されかつ大規模に応用できる高解像度印刷方法は既知であるが、エンボシング金型による形成される凹部が、急な壁表面及び鋭く延伸されたエッジを有しなく、主に槽状型に形成され、鋭い輪郭を有しないということは、不利点である。これらの滑らかな遷移の結果としては、この凹部に導入された材料は、精確に凹部のみを充填せず、凹部の周りにも塗りつけられる。従って、電流を漏洩させる。結果的に、再び凹部から材料の大部分をふき取らないと、塗りつけられた材料もふき取れない。
【特許文献1】DE 10061299.0
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、大規模かつ効果的に生産でき及び主に有機材料から作られる電子部品、特に高解像度構造及び小さいソースドレーン間の距離を有する電子部品提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的及び主題は、主に有機材料から作られ、基板と少なくとも一つの導体トラック及び/又は電極を備えて、前記少なくとも一つの導体トラック及び/又は電極は、導電材料から作られ及び支持表面に設置されることと、前記支持表面の表面は、レーザー処理により加工される及び/又は粗くされる電子部品として達成される。
【0007】
さらに、本発明の主題は、少なくとも一つの導体トラック及び/又は電極は、下側層の凹部に配置され、前記凹部はレーザーを用いて作られ、すなわち、前記凹部は急な壁と鋭い輪郭及び相対的に粗い底表面を有する電子部品である。
【0008】
最後に、本発明の主題は、電子部品を生産する方法であって、導体トラック及び/又は電極を生産するために、下側層及び/又は基板はレーザーより処理され、少なくとも一つの凹部及び/又は一つの加工された区域が下側層及び/又は基板に形成され、前記凹部は急な壁、鋭い輪郭及び底に粗い表面を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一つの実施例によれば、二つの電極の間或いは電極と導体トラックの間の距離“l”は、20μmより小さい。これが、特に好ましくは10μmよりも以下に、特に数μmの高解像度構造に対応する。本発明によって、導体トラック及び/又は電極の間の漏れ電流は回避され、従って、それらの間の距離“l”を最小化することはできる。
【0010】
前記方法の一つの実施例によれば、過剰な導電材料は、例えば、粗くされた区域及び/又は粗くされた底を有する凹部から相当な量の導電材料を再び取り除かなくても、この材料の塗布及び/又はこの材料を用いて凹部の充填後の工程段階において機械的に取り除かれ、即ち、ふき取れる。
【0011】
前記導電材料の塗布及び/又は前記凹部の充填は、様々な技術を用いて実施することができる:蒸着法、スパッタ法、噴霧法、ドクターブレードの使用、インジェクション、コーティング、プリンティング、或いは本発明に係るいくつか他の塗布及び/又は導入方法。
【0012】
前記方法の一つの実施例によれば、前記下側層及び/又は基板は、例えば10ns前後のパルス長さを有するパルスレーザーにより処理される。この場合には、数パルスは既に十分である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
レーザー構造化により作り出された修正され及び/又は粗くされた区域及び/又は凹部は、導電材料の支持表面がレーザーにより処理されることに特徴がある。従って、レーザーにより作り出される修正された区域及び/又は凹部は、処理されていない、或いは、例えばエンボシングにより処理されている区域及び/又は凹部とは異なる。後者の場合には、凹部の周りに分布されている過剰な導電材料を大きな損失なくふき取ることは不可能である。
【0014】
導電材料の作業機能(半導体と称する)が予定の電子部品に適合している場合に対して、過剰な材料は、レーザーにより変更されていない下側層及び/又は基板の区域において、例えば機械的に(布及び/又はゴムロールを用いて拭く)簡単に取り除かれ、構造化は終了する。
【0015】
作業機能が半導体に合わせていなければ、更に例えば伝導性悪い層を塗布することは可能である。またこの層の余分は、同様に機械的な方法を用いて取り除かれる。これら二つの導電層の組み合わせは、電極或いは導体トラックとして高伝導性を有し、適宜の作業機能を有する。
【0016】
最も下側(下側)導電層(複数の層)の構造化は、塗布された時点からすぐに実施することができ、又は、上側導電層の構造化と同時に実施することもできる。
【0017】
同様に、上側層の構造化(例えば、既に構造化された上側層はエッチング抵抗として使用することができる)の後に、下側層の構造化は順次に実施することができる。
【0018】
今の時点には、全て異なる種類の導電材料が既に成功的に使用されているため、ここで用語「導電材料」が何らかの形式で制限されることはない。
【0019】
金属、合金、金属ペースト、或いは有機導体化合物は導電材料として、例えば蒸着され、スパッタされ或いはドクターブレードを用いて適用され或いはいくつか他の方法による適用される。唯一の決定なポイントは、導入された導電材料がレーザーにより粗くされた表面に付着することである。
【0020】
挙げられる好ましい金属は、シルバー、ゴールド、アルミニウム、銅等のほかに、任意な所望の混合物及び気体形態、或いは、インク或いは金属ペースト(液体溶媒における金属粒子)のような液体形態、又は固体として適用されるこれらの成分の合金。
【0021】
PANI、DEPOT及びカーボンブラックは、好ましい有機材料であり、これらも、例えば金属から作られた下側導電層と精確に組み合わせられる。
【0022】
ここに、「加工」は、レーザー処理によって変化される下側層或いは基板の区域のために使われる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を本発明に係る三つの断面図を用いて更に詳しく説明する。これらの図面は、実施例を通って導体トラック/電極がどの様に作られるかを図解的に再現する。
【0024】
図1〜3は、本発明に係る方法により処理される基板及び/又は下側層を示す。
【0025】
A1、B1及びC1は、未処理の基板或いは未処理の下側層を示す。加工及び/又は粗くされる表面及び/又は凹部を有する区域が作り出されるように、これは最初にレーザー処理により修正される(図面A2、B2及びC2)。レーザー処理が表面の既存粗さを取り除くことも可能であり、従って、加工された区域はレーザー処理に修正されない区域より粗くなくなる。
【0026】
しかし、図面A2、B2及びC2の通りに、加工された区域の粗さは、加工されなかった区域の粗さより大きくなる。
【0027】
導電材料は、次の工程段階A3、B3及びC3において大面積に渡って塗布される。
【0028】
その後、過剰な材料は取り除かれ、導電材料が導入及び/又は塗布される好ましくは鋭く輪郭された区域は、導電材料のない他の区域と一緒に形成される(図A4参照)。
【0029】
実施例Bに従って、工程段階B4において、更に、例えば有機材料或いは機能的なポリマーから作られる追加の導電層は、まだ構造化されていない高導電層、例えば金属層に塗布される(Y)。直ちにこの追加の導電層は機械的に取り除かれる(B5)。この高導電層は機械的に取り除かれることができなければ(構造化された)、高導電層を構造化するために、工程段階B5の後に別種の方法(例えば化学方法)は使用される。ここで、この高導電層(x)は、加工或いは粗くされた位置に被膜され、取り除くことができない(B5)。化学構造化(例えば、エッチング工程)後、この高導電(例えば金属)層と導電(例えばポリマー)層の組み合わせは、構造化された形式として(B6)に存在する。
【0030】
同様に、追加の層はC4に塗布され、そしてこの二つの導電層は機械的に構造化される(C5)。
【0031】
本発明に係る工程は、以下のような導電構造を生産することができる:
− 例えば、適合の作業機能を保証するために、複数の層(異なる導電性をもつ)を有する;
− 高導電性或いは「ポケット」における高導電性;
− ほんのわずかだけ(3、4、5)の工程段階は要求されるため、コスト効率が良い;
− 必要な解像度(最も小さい可能な構造)を有する;及び
− 快速及び量産できる工程に基づいている。
【0032】
三つの工程段階のみ(例えば、レーザー構造化、導電層の塗布、導電層の構造化)が要求されるので、この簡単な生産方法には長所も存在する。例えば、再び金属導体(固体或いは液体)を用いて、有機材料から作られた追加の導体と組み合わせて、例えば、導体トラックに沿って問題となる電圧降下がなく、非常に高導電性小さい構造を生産することができる。さらに、作業機能は適合されることができる。この技術を用いて、回路サイズは極小化することができ、その結果として、同様に費用は同じ範囲に減少されることができる。
【0033】
基板は、ロールツーロール方法を用いて、例えば複数のロール間から引き出される。そして、この基板或いは下側層における凹部及び/又は加工或いは粗くされた区域は、第一作業段階において、レーザー例えばエキシマレーザーを用いてマスクを介して作れる。前記凹部/区域が、必ずしもマスクより規定されたサイズと同じサイズでイメージされないように、適宜であれば、このエキシマレーザーには、光学レンズシステムが装備される。
【0034】
凹部/区域間に存在の可能性ある任意の導電材料は、例えば、機械的な構造化期間中に、ロールツーロール方法を用いて吸引ロールにより取り除かれる。例えば、そのロールは、他のロールよりもより遅く回転して、ふき取りを効率的に完成させる。
【0035】
ここに、用語「有機材料」、或いは「機能材料」或いは「(機能)ポリマー」は、全種類の有機、有機金属及び/又は有機/無機ポリマー(ハイブリッド)、特にそれらの英語で示されるもの、例えば、「plastics」を含有する。伝統的ダイオード(ゲルマニウム、シリコン)を形成する半導体以外、全種類の物質が含有される。従って、教義上に有機材料が炭素を含む材料に制限されることが予想されず、例えばシリコンの広範囲使用もむしろ念頭に置かれている。さらに、前記用語は、分子サイズ、特にポリマー及び/又はオリゴマー材料のサイズに関する制限を加える意図はないが、小分子の使用も完全に可能である。機能ポリマーにおいてその単語成分「ポリマー」は歴史的に条件付けられ、その時点で実際のポリマー化合物の現状には何も言及していない。
【0036】
本発明は、必ず金属成分及び層を含み、高スイッチング速度及び高信頼度を有する有機電子部品、例えばOFETを経済的に作り出すことが可能である方法をはじめて提出する。レーザーを用いて作り出される凹部及び/又は区域は、伝統的な凹部/構造より導電性有機材料の塗布に対応することが異なり、従って、この方法を用いて有機及び金属本質の導体トラックは、他の方法よりもより速く及びより効率的に生産することができることは示されている。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1〜3は、本発明に係る方法により処理される基板及び/又は下側層を示す。
【図1】

【図2】

【図3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
少なくとも一つの導体トラック及び/又は電極とを備える主に有機物から作られる電子部品であって、
前記少なくとも一つの導体トラック及び/又は電極は、導電材料から作られ及び支持表面に設置されることと、
前記支持表面の表面は、レーザー処理により修正及び/又は粗くされることとを特徴とする電子部品。
【請求項2】
少なくとも一つの導体トラック及び/又は電極は、下側層の凹部に配置され、前記凹部はレーザーを用いて予め作られ、すなわち、前記凹部は急な壁と鋭い輪郭及び相対的に粗い底表面を有することを特徴とする電子部品。
【請求項3】
二つの導体トラック及び電極の間、及び/又は導体トラック及び電極の間に10μmより小さい距離lを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
少なくとも一つの導体トラック及び/又は電極は、金属或は合金から作られることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
少なくとも一つの導体トラック及び/又は電極は、金属から作られるとともに、有機材料から作られる層を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項6】
導体トラック及び/又は電極を生産するために、下側層及び/又は基板はレーザーより処理され、少なくとも一つの凹部及び/又は一つの修正された区域が下側層及び/又は基板に形成されることを特徴とする有機電子部品を生産する方法。
【請求項7】
前記導電層は機械的に構造化されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
過剰な導電材料は、この材料から作られる層を形成した後の工程段階においてふき取れることを特徴とする請求項6又は7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
パルスレーザー、例えばエキシマレーザーを用いることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
連続的なロールツーロール(roll-to-roll)工程による実施されることを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−503712(P2007−503712A)
【公表日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524214(P2006−524214)
【出願日】平成16年8月14日(2004.8.14)
【国際出願番号】PCT/DE2004/001816
【国際公開番号】WO2005/022663
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506064784)ポリック ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (1)
【Fターム(参考)】