説明

高速ヒ素吸着材料及びその作製方法

【課題】
SVが10h−1より高い条件で、ヒ素の除去ができ、且つ大量の処理水を迅速に処理することが可能な高速砒素吸着材。
【解決手段】
繊維状のイミノ二酢酸基型吸着材に、そのイミノ二酢酸基に3価の鉄を吸着させた後に、酸性溶液でコンディショニングを行うことにより得られた高速ヒ素吸着材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下水や河川水に含有されるヒ素を除去することに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒ素を除去する技術としては、既に下記の技術文献が存在している。
(1)溶液中ナトリウム型のユニチカ製UR-10(イミノ二酢酸型樹脂)にpH3.5に調整した50mM塩化第ニ鉄溶液を流したあと、水洗する。鉄の担時量は1.84mmol/gであり、SV=7 h-1 で pH8.4、100 ppmのヒ酸を流した場合、ヒ素の吸着量は0.24mmol/gであった。(非特許文献1)
(2)pH2.0に調整した100mM塩化第ニ鉄溶液をバイエル製TP-207(イミノ二酢酸型樹脂)に流す。鉄の担時量は2.15-2.7mmol/gであり、これを1000ppmのヒ酸溶液中に浸漬すると、pH1.8でヒ素の吸着量は0.45mmol/gであった。(非特許文献2)
【非特許文献1】Separation Science and technology, 13(2) 173-184 (1978)
【非特許文献2】Reactive & Functional Polymers 54(2003)85-94
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記文献以外のヒ素を除去する方法としては、市販されている活性アルミナのヒ素吸着材(住友化学KHD-12SR)はカラムに充填して、ヒ素を含有した溶液を流して、溶液中のヒ素を除去する。この場合、20ppmのヒ酸溶液を空間速度(SV:1時間当たりの流量を吸着材の充填容量を基準にして表した値)が10h-1のとき、破過容量は0.0076mmmol/g-アルミナであった。さらに、SVを100h-1にした場合、破過容量は0.0010mmmol/g-アルミナまで低下し、ヒ素除去の性能は著しく低下した。
【0004】
そこで、SVが10h-1より高い条件で、ヒ素の除去ができれば、大量の処理水を迅速に処理することが可能になる。
【発明を解決するための手段】
【0005】
繊維状のイミノ二酢酸型吸着材に上記非特許文献に記載の二つ条件で3価の鉄の担持を行ない、ヒ酸の吸着特性を評価したが、ヒ素は吸着できなかった。そのため、本発明においては、pH5.5の酢酸バッファーに三価の鉄を溶解し、100mg/の溶液を作成して、繊維状のイミノ二酢酸型吸着材を充填したカラムに流して鉄を担持の後、pH2.5でコンディショニングさせて、ヒ素の吸着材を作製した。
[発明の効果]
【0006】
本発明の吸着材により、地下水や河川水中に含まれるヒ素の除去では、高速にその処理を行なうことにより、大量の処理水を迅速に処理することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
繊維状のイミノ二酢酸型吸着材は、グラフト重合法で作製した。不織布に窒素雰囲気中で、電子線またはガンマ線を20〜200kGy照射し、10/90vol%グリシジルメタクリレート(GMA)ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液に浸漬させ、40℃で2時間グラフト重合させた。DMSOのかわりにメタノール溶液または界面活性剤溶液(特願2004-167017号)を使用できる。イミノ二酢酸ナトリウム(NH(CH2COONa)2)を、その濃度が0.425Mになるように、DMSOと純水とを体積比1:1で混合した溶媒に、溶解した。この溶液に、GMAをグラフトした不織布を80℃で20時間反応させ、イミノニ酢酸基(IDA基;-N(CH2COOH)2)を導入した。IDA基導入後の不織布を0.5M硫酸に80℃で2時間反応させ、未反応のエポキシ基をジオール基に変換するとともに、Na形のイミノニ酢酸基をH形にした。DMSOの場合、グラフト率は2時間の反応で170%、イミノニ酢酸基量の導入量は2.1mmol/g-吸着材となった。pH5.5になるように酢酸バッファーを作成し、それを溶媒として塩化鉄(III)六水和物(FeCl3・6H2O)を溶解し、100mg/l-Feの溶液を調整した。コンディショニングの条件はpHが0.5-3であるが、2.5-3.0が好ましい。以下、本発明を実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0008】
(実施例1)
pH5.5の100mg/l-Fe3+溶液中に24h浸漬して、Fe3+をイミノ二酢酸吸着材に担持させた結果、1.7mmol/g-吸着材のFe3+を担持することができた。この吸着材をpH0.5-3の液でコンディショニングを行なった結果、pH2.5でコンディショニングを行ったものが、最もAsを吸着することができた(図1)。この条件での、Fe3+の担時量は1.5mmol/g-吸着材で、0.15mmol/g-吸着材のヒ素を吸着することができた。
(実施例2)
市販の活性アルミナを吸着材として用いてpH7のAs溶液(20mg/l)をSV=10h-1で通液させた結果、および本発明の繊維状ヒ素吸着材にSV=100h-1で通液させた場合のヒ素の除去における破過特性を図2に示す。
【0009】
アルミナの場合、破過点は通液倍率で28であり、本発明の繊維状ヒ素吸着材では39であった。アルミナの場合、SVを100h-1にした場合、破過点は通液倍率で4となり、この条件ではヒ素の除去はできない。これに対し、本発明の破過時の繊維状ヒ素吸着材の単位重量あたりの吸着量はアルミナの10倍で、0.073mmol/gで、容積あたりでもアルミナの1.5倍(図2の流出流量/捕集材体積において、アルミナの破過点は100程度であり、本発明の布状吸着材剤の破過点は150程度である)の10mmol/lであった。
【0010】
図2において、C/C0はカラムにつめた吸着材にヒ素溶液を流し込んだときの出口および入り口の濃度の比を表す。C/C0が0である状態では、ヒ素は吸着材によって捕集され、やがて、吸着容量に達すると吸着できないヒ素が出口に現われ、C/C0が増加して行くことを示している。又、上記破過点は通常C/C0が0.05となったときを表し、横軸は(流出流量/吸着材体積)となっているので、破過点での吸着されたヒ素の量は
濃度×(流出流量/吸着材体積)×吸着材体積
で算出でき、この量をmolに換算し、捕集材の重量で割ると、0.073mmol/gになる。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明により、高速にヒ素を除去処理できるため、小型のヒ素除去装置が製作でき、河川や地下水の浄化に利用の可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンディショニングpHのヒ素吸着量への影響を示す図である。
【図2】アルミナと布状吸着材の比較を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状のイミノ二酢酸基型吸着材に、そのイミノ二酢酸基に3価の鉄を吸着させた後に、酸性溶液でコンディショニングを行うことにより得られた高速ヒ素吸着材料。
【請求項2】
繊維状基材に重合性モノマーを重合側鎖として放射線グラフト重合させ、このグラフト重合側鎖にイミノ二酢酸基を導入し、このイミノ二酢酸基に3価の鉄を吸着させた後、酸性溶液でコンデショニング処理することにより高速ヒ素吸着材を作製する方法。
【請求項3】
重合性モノマーが、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル又は(クロロメチルスチレンである請求項2記載の方法。
【請求項4】
繊維状基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロースである不織布、織布、繊維からなる請求項2記載の方法。
【請求項5】
繊維状基材を放射線照射処理した後、グリシジルメタクリレート含有溶液に接触させてグリシジルメタクリレートを側鎖として基材にグラフト重合させ、グラフト側鎖が導入された基材をイミノ二酢酸ナトリウム溶液に接触させて側鎖にイミノニ酢酸Na基を導入後、酸性溶液と反応させて未反応のグリシジルメタクリレート側鎖のエポキシ基をジオール基に変換するとともに、Na形のイミノニ酢酸基をH形にした後、塩化鉄(III)含有溶液と接触させてイミノニ酢酸基を3価のFe形に変換し、その後pH0.5-3の酸性溶液でpH調整処理することからなる請求項2記載の方法。








【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−752(P2007−752A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182842(P2005−182842)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(503317784)株式会社ジー・ピー・ワン (3)
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】