説明

高電圧供給装置

【課題】高電圧を複数の処理系に効率的且つ効果的に供給する。
【解決手段】ハイブリッド車両10において、高電圧供給システム900は、各モータジェネレータの電源として機能するバッテリ500に接続された共有電圧供給ライン910並びに触媒コンバータ700及びプラズマリアクタ800に夫々対応して設けられた動作電圧供給ライン920a及び920bを備える。高電圧供給システム900の動作時には、バッテリ500の直流電圧Vbatは、共有電圧供給ライン910により共通に伝送された後、分岐する各動作電圧供給ラインに伝送される。また、数十キロボルトの高電圧を必要とするプラズマリアクタ800に対応する動作電圧供給ラインには、昇圧電源ユニット930が設けられており、直流電圧Vbatは、昇圧効率の低下を招くことなく昇圧され、また交流電圧に変換されてプラズマリアクタ800に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばEHC(Electric Heated Catalyst:電気加熱式触媒装置)やプラズマ放電浄化装置等の各種処理系に動作電圧を供給するための高電圧供給装置の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置に関連する技術として、プラズマ発生用の高圧電源ユニットと発熱体に低電圧を印加するための低圧電源ユニットとの間で直流電源を共有する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された排ガス浄化装置(以下、従来の技術と称する)によれば、補機用のバッテリから供給される直流電圧を高圧電源ユニットにおいて昇圧すると共に、この昇圧以前の直流電圧を低圧電源ユニットに供給することにより、係る直流電源として係る補機用のバッテリを使用することが可能であるとされている。
【0003】
尚、ヒータの電位を放電電極の電位と捕集電極の電位の間且つ捕集電極寄りの電圧とする技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
また、加熱手段への電力供給を車両制御用バッテリと共用とし、加熱手段の電力用として充電制御を行う技術も開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2005−48753号公報
【特許文献2】特開2005−232970号公報
【特許文献3】特開2001−355434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
補機用のバッテリにより供給される低圧の直流電圧を、プラズマ発生装置に係るプラズマ放電に供し得る程度の高電圧まで昇圧しようとした場合には、昇圧の度合いが大き過ぎて昇圧効率が低下しかねない。即ち、従来の技術には、複数の処理系間で相互に電源を共有することが実質的にみて困難であるという技術的な問題点がある。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、複数の処理系に対し効率的且つ効果的に動作電圧を供給し得る高電圧供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明に係る高電圧供給装置は、内燃機関、所定種類の補機に対応する1次電圧よりも高い2次電圧の供給源となる高圧電源、前記2次電圧以上の動作電圧で動作可能であり且つ前記内燃機関に関連する所定種類の処理を行うための複数の処理系を備えたシステムにおいて該複数の処理系のうち少なくとも複数の処理系に前記動作電圧を供給するための高電圧供給装置であって、前記高圧電源に接続され且つ前記少なくとも複数の処理系で共有され、前記2次電圧を供給するための共有電圧供給手段と、前記少なくとも複数の処理系の各々に設けられ、該各々に対し前記共有電圧供給手段を介して供給される2次電圧に基づいて前記動作電圧を供給する複数の動作電圧供給手段とを具備することを特徴とする。
【0009】
例えば車両等の形態を採り得る本発明に係るシステムには、内燃機関、高圧電源及び複数の処理系が備わる。ここで、本発明に係る「内燃機関」とは、例えば複数の気筒を有し、当該複数の気筒の各々における燃焼室において燃料が燃焼した際に発生する爆発力たる動力を、例えばピストン及びコネクティングロッド等の機械的な伝達経路を経て、例えばクランク軸等の入出力軸を介して動力として出力可能な機関を包括する概念であり、例えばガソリン、アルコール、アルコール混合燃料又は軽油等を燃料とする、例えば2サイクル或いは4サイクルレシプロエンジン等を指す。
【0010】
また、本発明に係る「高圧電源」とは、例えばエアコンディショナ、シガーライタ、カーナビゲーション装置、パワーステアリング装置或いはパワーウィンドウ装置等の補機に対応する1次電圧(例えば、直流12V)よりも高い、例えば100V以上、或いは例えば200〜500V程度の2次電圧の供給源として機能し得る手段を包括する概念であり、例えば、本発明に係るシステムが内燃機関の他に動力源としてモータ等の電動機を備えたハイブリッドシステムである場合等には、係る電動機に対する電圧供給源として機能するハイブリッド用バッテリ等であってもよいし、予め何らかの理由でシステムに搭載される例えば200V程度のバッテリであってもよい趣旨である。
【0011】
更に、本発明に係る「処理系」とは、このような2次電圧以上の動作電圧で動作可能であって、且つ内燃機関に関連する、本発明に係る高圧電源を電圧供給源の少なくとも一部として使用し得る電気的な処理を実行可能な手段を包括する概念であり、例えば、HC(炭化水素)、CO(一酸化炭素)及びNOx(窒素酸化物)等を浄化可能であると共に更にヒータ等の加熱装置により触媒活性を促進可能に構成された、例えばEHC等の電気加熱式触媒装置、例えばSiC(窒化珪素)等、導電性を有する基材で構成され、印加電圧に応じて発熱可能に構成されたDPF(Diesel Particulate Filter)等のフィルタ装置、或いはプラズマ放電により、HC、CO或いはPM(Particulate Matter:粒子状物質)等を酸化燃焼を伴って浄化することが可能な、例えばプラズマリアクタ等のプラズマ放電浄化装置等であってもよい。
【0012】
本発明に係る高電圧供給装置によれば、その動作時には、高圧電源に接続された、例えばケーブル、ワイヤーハーネス及びコネクタ等の端子類の一部或いは全部を適宜含み得る共有電圧供給手段によって、高圧電源を供給源とする2次電圧が、複数の処理系のうち少なくとも複数の処理系に対し相互に共通に供給される(即ち、共有される)。尚、本発明に係る「共有電圧供給手段」とは、このような各種ケーブル類等を含み、高圧電源を供給源とする2次電圧を供給可能な機械的、物理的或いは機構的な手段を包括する概念である。
【0013】
一方、本発明に係るシステムに備わる複数の処理系のうち少なくとも複数の処理系(以下、適宜「対象処理系」と称する)の各々には、例えばケーブル、ワイヤーハーネス及びコネクタ等の端子類の一部或いは全部を含み得る動作電圧供給手段が夫々対応付けられて備わっており、共有電圧供給手段を介して供給される2次電圧に基づいて当該各々に動作電圧が供給される。
【0014】
ここで、「動作電圧」とは、無論2次電圧そのもの(共有電圧供給手段及び動作電圧供給手段に係る伝送過程における損失は無視し得るとする)であってもよいし、例えば供給される2次電圧が更に然るべき昇圧手段により昇圧されてなる2次電圧よりも更に高い電圧であってもよい。
【0015】
尚、動作電圧供給手段により供給される動作電圧は、直流電圧及び交流電圧のいずれであってもよく、高圧電源が直流電源であり、動作電圧が交流電圧である場合、共有電圧供給手段及び動作電圧供給手段の少なくとも一方に、例えばインバータ等の直流交流変換手段が設けられていてもよい。
【0016】
ここで特に、当該各々に対し動作電圧を供給する系統が相互に独立して設けられる場合、システム構成の複雑化は避けられず、動作電圧は効率的且つ効果的に供給され難い。一方で、前述した補機用のバッテリ等、低電圧電源をこれら各々で共有しようとしても、処理系の種類によっては、既に述べたように動作電圧を効率的に供給し難い事態が生じ得る。
【0017】
その点、本発明に係る高電圧供給装置によれば、システムに予め搭載された、2次電圧を供給可能な高圧電源を電源として利用し、且つ対象処理系相互間で、共有電圧供給手段により、その2次電圧の供給経路の少なくとも一部を共有することが可能となる。従って、対象処理系として、例えば数十キロボルトに達する高電圧で動作させる必要がある装置が含まれる場合であっても、昇圧効率の低下を実践的にみて顕在化しない程度に抑制しつつ、動作電圧供給手段を介して動作電圧を供給することが可能となる。また、昇圧の必要がない(即ち、2次電圧或いは2次電圧と同等とみなし得る電圧が動作電圧として使用され得る)場合であっても、或いは当該各々が、2次電圧よりも低い動作電圧で動作可能であったとしても、少なくとも効率的且つ効果的な動作電圧の供給が妨げられることはない。即ち、本発明に係る高電圧供給装置によれば、複数の処理系に対し効率的且つ効果的に動作電圧を供給することが可能となるのである。
【0018】
本発明に係る高電圧供給装置の一の態様では、前記少なくとも複数の処理系は、夫々前記内燃機関の排気を浄化可能な、加熱式排気浄化手段及びプラズマ放電浄化手段のうち少なくとも一方を含む。
【0019】
この態様によれば、対象処理系として、例えばEHC等の電気加熱式排気浄化手段を含み得る加熱式排気浄化手段及び例えばプラズマリアクタ等のプラズマ放電浄化手段のうち少なくとも一方が含まれる。これらの手段は、内燃機関の排気浄化に係る効果が高く、また相応に高い動作電圧を必要とする、或いは高い動作電圧で動作が可能である。従って、本発明に係る効果が顕著に現れ得る。
【0020】
尚、本発明に係る「加熱式排気浄化手段」とは、何ら係る手段が講じられない場合と比較して幾らかなりとも内燃機関の排気を浄化可能であり、且つ係る排気浄化の際に動作電圧供給手段を介して動作電圧が印加され、排気浄化に係る何らかの効果が得られる手段を包括する概念である。
【0021】
従って、このような手段としては、例えば印加電圧(動作電圧)による通電を介して発熱する例えばヒータ等の発熱手段を備えたEHC等の電気加熱式排気浄化手段、又は例えば印加電圧による電気着火をトリガとするバーナ等の燃焼ガス供給手段等、電圧の印加により直接的又は間接的に生じ得る熱によって排気の酸化又は燃焼を促進する各種手段、或いは排気自体を浄化せずとも、例えば印加電圧により発生するマイクロ波により燃料を改質することによって間接的に排気を浄化させる又は触媒劣化を抑制すること等が可能な例えば燃料改質触媒等の各種手段等を含む、各種形態を採ることも可能である。
【0022】
また、本発明に係る「プラズマ放電浄化手段」とは、動作電圧供給手段を介して印加される、例えば直流電圧、交流電圧又はパルス電圧等の動作電圧によりもたらされるプラズマ放電により、例えばHCやCO或いはPM等を酸化燃焼せしめ得る手段を包括する概念である。両者とも、係る概念が担保される限りにおいて、その物理的、機械的、電気的又は機構的な構成は何ら限定されることなく自由であってよい。
【0023】
本発明に係る高電圧供給装置の他の態様では、前記共有電圧供給手段及び前記動作電圧供給手段のうち少なくとも一方に設けられ、前記少なくとも複数の処理系の少なくとも一部における前記動作電圧の供給の有無を切り替えることが可能な切り替え手段を更に具備する。
【0024】
この態様によれば、共有電圧供給手段及び動作電圧供給手段のうち少なくとも一方に設けられた、例えばスイッチング素子等からなる切り替え手段によって、対象処理系における動作電圧の供給の有無が切り替えられる。従って、高圧電源の負荷を軽減することが可能となり好適である。
【0025】
尚、このような動作電圧の供給の有無は、対象処理系のうち一の処理系についてのみ選択的に切り替えられてもよいし、対象処理系の各々について個別に切り替えられてもよい。また、動作電圧の供給の有無とは、最終的に動作電圧の供給がなされるか否かを規定し得る限りにおいて、2次電圧の供給の有無であってもよい。
【0026】
尚、この態様では、前記内燃機関の動作条件に応じて前記供給の有無が切り替わるように前記切り替え手段を制御する切り替え制御手段を更に具備してもよい。
【0027】
この場合、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される切り替え制御手段によって、例えば冷却水温等によって表される暖機状態等の各種動作条件に応じて、前述した動作電圧の供給の有無が切り替えられる。従って、各処理系の動作の必要性に応じて、適切に動作電圧の供給を行うことが可能となり、実践上有益である。
【0028】
尚、この際、内燃機関の動作条件に応じた切り替え手段の切り替え態様は、例えば予め実験的に、経験的に或いはシミュレーション等に基づいて、対象処理系の各々を効率的且つ効果的に動作させ得るように決定されていてもよい。例えば、対象処理系としてEHC及びプラズマアリクタを備える場合、内燃機関が比較的冷えた状態にある始動時等にはEHCに動作電圧を供給し、触媒温度を早期に触媒活性温度まで上昇せしめると共に、触媒活性が担保された後にプラズマリアクタに動作電圧を供給して一層の排気浄化を図るように切り替え制御が行われてもよい。或いは、排気管が被水した状態でプラズマリアクタが作動することのないように、排気温度が十分に上昇した後にプラズマリアクタに動作電圧が供給されるように切り替え制御が行われてもよい。
【0029】
本発明に係る高電圧供給装置の他の態様では、前記システムは、前記システムの動力源として機能する電動機を備えたハイブリッドシステムであり、前記電源は、前記電動機の電圧供給源である。
【0030】
この場合、システムが、例えばモータ又はモータジェネレータ等の各種電動機を含んでなるハイブリッドシステムとして構成されるため、係る電動機に電圧を供給するための、例えばハイブリッド用バッテリ等の高圧電源装置が備わることになる。本来電動機に対する電圧供給源として機能するこれらバッテリ等の電圧供給源を本発明に係る高圧電源として利用した場合には、少なくとも複数の処理系の各々に専用の電源装置を用意する必要が生じない。従って、この態様では、極めて効率的且つ効果的に、処理系に対し動作電圧を供給することが可能となる。
【0031】
尚、この態様における「ハイブリッドシステム」とは、少なくともシステムの動力源として機能し得る電動機が少なくとも一つ備わる限りにおいて、その電気的、機械的、物理的或いは機構的な構成は何ら限定されず、例えば、主として内燃機関を動力源とし電動機が補助的に使用されてもよいし、主として電動機を動力源とし内燃機関が補助的に使用されてもよい。或いは常に内燃機関及び電動機のうち一方が動力源として使用される態様を有していてもよいし、内燃機関及び電動機の動作が、例えばシステム全体としての動作効率が良好となるように相互に協調して制御される態様を有していてもよい。また、本発明に係る電動機とは、電動機としての機能を有する限りにおいて、更に発電機としての機能を有していてもよい。
【0032】
例えば、本発明に係るハイブリッドシステムが車両の形態を採る場合には、車軸に連結された駆動軸に動力を出力可能な、主として電動機として作動する電動発電機と、主として発電機として作動する電動発電機とを備え、内燃機関の出力が、例えばプラネタリギアユニット等として構成される動力分配手段を介して所定の比率でこられ電動発電機の各々に分配される構成を有していてもよい。
【0033】
本発明に係る高電圧供給装置の他の態様では、前記少なくとも複数の処理系は、前記動作電圧が前記2次電圧よりも高い高電圧処理系を含み、前記高電圧供給装置は、前記高電圧処理系に対応する前記動作電圧供給手段において前記2次電圧を前記高電圧処理系の動作電圧に昇圧する昇圧手段を更に具備する。
【0034】
この態様によれば、対象処理系に、動作電圧が2次電圧よりも高いものが含まれる。この場合、共有電圧供給手段を介して供給される2次電圧を更に昇圧せしめる必要が生じるが、この態様では、係る処理系に対応する動作電圧供給手段において2次電圧を昇圧する、例えばDC−DCコンバータやトランス等を適宜含み得る、或いは更に例えばインバータ等の直流交流変換手段を含み得る昇圧手段が備わっており、最終的には、適切な動作電圧が各処理系に供給される。
【0035】
この際、係る昇圧手段は、2次電圧の供給源たる高圧電源と、動作電圧が2次電圧よりも高い処理系との間に介在するため、例えば、2次電圧よりも低い、例えば前述した1次電圧から昇圧する場合と較べれば、明らかに効率的に昇圧が行われる。即ち、この態様によれば、2次電圧を共有しつつ、各処理系に適切な動作電圧を効率的且つ効果的に供給するといった、実践上極めて有益な効果が奏される。
【0036】
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
<発明の実施形態>
以下、適宜図面を参照して本発明の好適な各種実施形態について説明する。
【0038】
<1:第1実施形態>
<1−1:実施形態の構成>
<1−1−1:ハイブリッド車両の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両10の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両10のブロック図である。
【0039】
図1において、ハイブリッド車両10は、車軸11、車輪12、ECU100、エンジン200、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と称する)、動力分割機構300、PCU(Power Control Unit)400、バッテリ500及びSOC(State Of Charge)センサ600を備えた、本発明に係る「システム」の一例たる車両である。
【0040】
車軸11は、エンジン200及びモータジェネレータMG2から出力された動力を車輪に伝達するための、例えばプロペラシャフト或いは更に各車輪に対応するドライブシャフト等を含む回転軸である。尚、本発明に係る「車軸」の構成としては、例えば、減速機(減速ギア)及びデファレンシャル、並びに係るデファレンシャルに接続された、個々の車輪に対応するドライブシャフト等を含む構成を有していてもよく、ハイブリッド車両の駆動態様に応じて多様な形態を有していてよい。
【0041】
車輪12は、車軸11を介して伝達される動力を路面に伝達する手段であり、図1においては左右一輪ずつが示されるが、実際には、前後左右に一輪ずつ備わりハイブリッド車両10全体で計4個備わっている。
【0042】
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、ハイブリッド車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「切り替え制御手段」の一例である。
【0043】
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たる直列4気筒ガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両10の主たる動力源として機能する。尚、エンジン200の詳細な構成については後述する。
【0044】
モータジェネレータMG1は、本発明に係る「電動機」の一例であり、バッテリ500を充電するための或いはモータジェネレータMG2に電力を供給するための発電機として、更にはエンジン200の駆動力をアシストする電動機として機能するように構成されている。
【0045】
モータジェネレータMG2は、本発明に係る「電動機」の他の一例であり、エンジン200の動力をアシストする電動機として、或いはバッテリ500を充電するための発電機として機能するように構成されている。
【0046】
尚、これらモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える。但し、他の形式のモータジェネレータであっても構わない。
【0047】
動力分割機構300は、エンジン200の出力をMG1及び車軸11へ分配することが可能に構成された遊星歯車機構であり、本発明に係る「動力分配手段」の一例である。図示は省略するが、動力分割機構300は、中心部に設けられたサンギアと、サンギアの外周に同心円状に設けられたリングギアと、サンギアとリングギアとの間に配置されてサンギアの外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギアと、後述するクランクシャフト205の端部に結合され、各ピニオンギアの回転軸を軸支するプラネタリキャリアとを備える。
【0048】
サンギアは、サンギア軸を介してMG1のロータ(符合は省略)に結合され、リングギアは、リングギア軸を介してMG2の不図示のロータに結合されている。リングギア軸は、車軸11と連結されており、MG2が発する動力は、リングギア軸を介して車軸11へと伝達され、同様に車軸11を介して伝達される車輪12からの回転力は、リングギア軸を介してMG2に入力される。係る構成の下、動力分割機構300は、エンジン200が発するトルクを、プラネタリキャリアとピニオンギアとによってサンギア及びリングギアに伝達し、エンジン200のトルクを2系統に分割することが可能である。
【0049】
PCU400は、DC―DCコンバータ及びインバータ等(いずれも不図示)を含む電力制御ユニットであり、バッテリ500から取り出した直流電圧を、例えばモータジェネレータMG2に要求される出力等に応じて昇圧せしめ、且つ昇圧せしめた直流電圧を交流電圧に変換し、最終的に交流電力としてモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500を充電することが可能に構成されている。尚、PCU400は、ECU100と電気的に接続されており、その動作がECU100によって制御される構成となっている。
【0050】
バッテリ500はモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る、接地電位に対し約200V程度の直流電圧Vbatを供給可能な蓄電池であり、本発明に係る「高圧電源」の一例である。尚、直流電圧Vbatは、本発明に係る「2次電圧」の一例である。また、バッテリ500から供給される直流電圧Vbatは、図示せぬインバータ装置等を介して、エアコンディショナ、EPS(Electronic Power Steering)或いはシガーライタ等といった各種補機類の動作に供される、接地電位に対し概ね10〜20V程度の低電圧(即ち、本発明に係る「1次電圧」の一例)の供給源としても機能するように構成されている。
【0051】
SOCセンサ600は、バッテリ500の残容量を検出することが可能に構成されたセンサである。SOCセンサ600は、ECU100と電気的に接続されており、SOCセンサ600によって検出されたバッテリ500のSOCは、常にECU100によって把握される構成となっている。
【0052】
<1−1−2:エンジンの詳細構成>
次に、図2を参照して、エンジン200の構成を、その基本動作と共に説明する。ここに、図2は、エンジン200及びその周辺装置の模式図である。
【0053】
エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。また、このクランクシャフト205の近傍には、クランクシャフト205の回転状態を表すクランク角を検出するためのクランクポジションセンサ206が設置されている。クランクポジションセンサ206は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100は、クランクポジションセンサ206によって検出されたクランク角に基づいてピストン203の位置を把握し、点火装置202による点火時期等を制御することが可能に構成されている。更に、ECU100は、クランクポジションセンサ206によって検出されたクランク角を時間処理することによって、エンジン200の機関回転数Neを算出することが可能に構成されている。
【0054】
以下、エンジン200の更なる詳細な構成を、その動作と共に説明する。尚、本実施形態において、エンジン200は、直列4気筒エンジンであり、本来、図2において、紙面と垂直な方向に複数の気筒が直列に配置されているが、紙面及び説明の煩雑化を防ぐ目的から、ここでは、一の気筒についてのみ説明することとする。
【0055】
図2において、外部から吸入された空気(即ち、吸入空気)は、吸気管207を通過する過程においてエアクリーナ208により不純物が濾過される。エアクリーナ208の後段には、ホットワイヤ式のエアフローメータ209が設置されており、吸入空気の質量流量を直接検出することが可能に構成されている。このエアフローメータ209は、ECU100と電気的に接続されており、検出された吸入空気量は、ECU100によって常に把握される構成となっている。
【0056】
吸気管207におけるエアフローメータ209の下流側には、気筒201内部へ流入する吸入空気の量を調節するスロットルバルブ210が配設されている。スロットルバルブ210の開度たるスロットル開度は、スロットルポジションセンサ212によって検出され、スロットルポジションセンサ212と電気的に接続されたECU100によって絶えず把握される構成となっている。また、スロットル開度は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ211によって可変に制御される構成となっている。
【0057】
一方、運転者による不図示のアクセルペダルの踏み込み量は、不図示のアクセルポジションセンサによって検出され、アクセルポジションセンサと電気的に接続されたECU100により絶えず把握される構成となっている。ECU100は、通常、係るアクセルポジションセンサによって検出されたアクセルペダルの踏み込み量に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ211の駆動制御を介してスロットルバルブ210を制御している。但し、スロットルバルブ210は、スロットルバルブモータ211によって駆動される電子制御式のスロットルバルブであり、スロットル開度は、最終的にはECU100の制御により、運転者の意思(即ち、アクセルペダルの踏み込み量)とは無関係に可変に制御され得る。
【0058】
スロットルバルブ210を通過した空気は、吸気管207の一部たる吸気ポート213に到達する。気筒201内部と吸気ポート213とは、吸気バルブ214の開閉によってその連通状態が制御されている。即ち、吸気ポート213に到達した空気は、吸気バルブ214の開弁期間において気筒201内部に導かれる構成となっている。ここで、気筒201内部に吸入された空気(以下、適宜「吸入空気」と称する)は、直噴インジェクタ215から噴射されるガソリンと混合され、前述した混合気となる。気筒201内部で燃焼した混合気及び未燃焼燃料等を含む排気は、吸気バルブ214の開閉に連動して開閉する排気バルブ222を通過し、排気ポート223に排出される構成となっている。
【0059】
ここで、燃料たるガソリンは、燃料タンク216に貯留されており、低圧ポンプ217の作用によってデリバリパイプ218に汲み上げられ、更にデリバリパイプ218上に設置された高圧ポンプ219の作用によってレール部220に圧送される。レール部220は、高圧状態のガソリンを安定に貯留することが可能に構成されている。このレール部220は、気筒201の配列方向(即ち、紙面と垂直な方向)に延在しており、各気筒201に対応する複数のサブデリバリ221が接続されている。直噴インジェクタ215は、このサブデリバリ221に接続されており、サブデリバリ221から供給される高圧状態のガソリンを、ECU100によって制御された噴射タイミングで高温高圧の燃焼室内に直接噴射することが可能に構成されている。
【0060】
排気ポート223に排出された排気は、排気ポート223に連なる排気管224を介して排出される。排気管224には、空燃比センサ225が設置されており、エンジン200の空燃比が絶えず検出されている。また、空燃比センサ225は、ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比は、ECU100によって把握され、空燃比のフィードバック制御に供される構成となっている。
【0061】
一方、係る排気は、この排出過程において、排気管224上に設けられた触媒コンバータ700を通過する。触媒コンバータ700は、排気を浄化することが可能に構成された本発明に係る「処理系」の一例である。尚、触媒コンバータ700の詳細については後述する。
【0062】
他方、エンジン200は、既に述べた如くガソリン直噴エンジンであり、成層燃焼と均質燃焼との間で燃焼形態が適宜切り替えられつつ動作するように構成されている。ここで特に、燃焼形態によっては、エンジン200から排出されるPM量は無視し得ない程度に大きくなるため、この触媒コンバータ700の下流には、更にプラズマリアクタ800が設置されている。プラズマリアクタ800は、触媒コンバータ700と同様、排気を、例えば排気中のPMを酸化燃焼させることにより浄化することが可能に構成された、本発明に係る「処理系」の他の一例である。尚、プラズマリアクタ800の詳細については後述する。
【0063】
気筒201を収容するシリンダブロックにおけるウォータージャケットには、エンジン200の冷却水温を検出するための水温センサ226が配設されている。水温センサ226は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたエンジン200の冷却水温は、絶えずECU100によって把握される構成となっている。
【0064】
以上説明したように、エンジン200は直噴ガソリンエンジンであるが、無論係る構成は本発明に係る内燃機関の一例に過ぎず、ハイブリッド車両10は、エンジン200の代わりに、ガソリンが吸気ポート213に噴射される構成を有するエンジンを搭載していてもよいし、ガソリンエンジンではなく軽油を燃料とするディーゼルエンジンを備えていてもよい。
【0065】
<1−1―3:触媒装置の詳細>
次に、図3を参照して、触媒コンバータ700及びプラズマリアクタ800の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、排気を浄化するための排気浄化系の模式図である。尚、同図において、図1及び図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0066】
図3において、触媒コンバータ700は、EHC710及び三元触媒720を備える。尚、このような触媒コンバータ700の構成は一例に過ぎず、例えば三元触媒720の代わりに、酸化触媒、NOx吸蔵還元触媒、HC又は尿素を利用したNOx選択還元触媒等が備わっていてもよい。
【0067】
EHC710は、電気的に接地されたケーシング710a、ケーシング710aに収容されるメタル担体710b、メタル担体710bに担持された触媒物質(不図示)及びケーシング710aとメタル担体710bとの間にEHC710の動作電圧Vehc(以下、適宜「EHC動作電圧Vehc」と称する)を付与するための電極(不図示)を備える。
【0068】
一方、バッテリ500には、共有電圧供給ライン910(即ち、本発明に係る「共有電圧供給手段」の一例)の端部が接続されており、前述した直流電圧Vbatが供給されている。この共有電圧供給ライン910とEHC710の電極との間には、動作電圧供給ライン920a(即ち、本発明に係る「動作電圧供給手段」の一例)が介在しており、EHC動作電圧Vehcは、係る動作電圧供給ライン920aを介して与えられる構成となっている。従って、本実施形態において、EHC動作電圧Vehcは、バッテリ500から供給される直流電圧Vbatと等しくなっている。
【0069】
三元触媒720は、EHC710の下流(図示右方向)に設置された触媒であり、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能に構成されている。
【0070】
プラズマリアクタ800は、電気的に接地された筒状の外周電極810と、外周電極810により形成される筒内部に外周電極810と間隙を介して配されてなる中心電極820とを備える。
【0071】
前述した共有電圧供給ライン910には、前述した動作電圧供給ライン920aと同様の構成を採る動作電圧供給ライン920b(即ち、本発明に係る「動作電圧供給手段」の他の一例)が接続されており、係る動作電圧供給ライン920bを介して中心電極820にプラズマリアクタ800に係るプラズマ放電用のプラズマリアクタ動作電圧Vplsが供給される構成となっている。
【0072】
ここで特に、本実施形態に係るプラズマリアクタ動作電圧Vplsとは、即ち、外周電極810と中心電極820との間にプラズマ放電を生じさせることが可能な、概ね数十キロボルト程度の交流電圧である。従って、動作電圧供給ライン920bの経路上には昇圧電源ユニット930が設けられている。昇圧電源ユニット930は、夫々不図示のDC−DCコンバータ、インバータ及びトランス等を含んでなり、DC−DCコンバータにより、共有電圧供給ライン910を介して得られる直流電圧Vbatをプラズマリアクタ動作電圧Vplsに対応する電位まで昇圧すると共に、係る昇圧された直流電圧をインバータ及びトランスにより交流電圧に変換することによって最終的にプラズマリアクタ動作電圧Vplsを供給することが可能に構成されている。尚、係る昇圧電源ユニット930はECU100と電気的に接続されており、プラズマリアクタ動作電圧Vplsの供給動作は、ECU100によって上位に制御される構成となっている。
【0073】
尚、プラズマリアクタ動作電圧Vplsとしては、直流電圧、交流電圧及びパルス電圧等を採用可能であり、また、交流電圧に係る周波数やパルス電圧に係るパルス周期等も、プラズマリアクタの構成に応じて適宜定められてよい。
【0074】
尚、上述した共有電圧供給ライン910、動作電圧供給ライン920a及び動作電圧供給ライン920b、並びに昇圧電源ユニット930は、本発明に係る「高電圧供給装置」の一例たる高電圧供給システム900を構成している。
【0075】
<1−2:実施形態の動作>
引き続き、図3を参照し、本実施形態の動作として、高電圧供給システム900の動作及びそれに伴う触媒コンバータ700及びプラズマリアクタ800の動作について説明する。
【0076】
高電圧供給システム900の動作時、共有電圧供給ライン910及び動作電圧供給ライン920を介してEHC動作電圧Vehc(即ち、直流電圧Vbat)がEHC710の電極に印加されると、メタル担体710bに電流が流れる。電流が流れることによりメタル担体710bは発熱する。メタル担体710bが発熱すれば、必然的にメタル担体710bに担持された触媒物質も早期に触媒活性温度に到達し、EHC710によるエンジン200の排気浄化が開始される。
【0077】
一方、触媒活性温度に到達したEHC710を通過する過程で排気温度も上昇するため、また、EHC710に近接して設けられることも手伝って、EHC710の発熱に伴い三元触媒720の温度も上昇し、触媒活性温度に到達する。三元触媒720が触媒活性温度に到達することにより、触媒コンバータ700全体としての排気浄化効率が上昇し、効率的且つ効果的に排気の浄化が行われる。
【0078】
他方、プラズマリアクタ800の動作としては、先ず共有電圧供給ライン910及び動作電圧供給ライン920を介して昇圧電源ユニット930に直流電圧Vbatが供給される。ECU100は、昇圧電源ユニット930を制御し、プラズマリアクタ800の中心電極820に印加すべき交流高圧のプラズマリアクタ動作電圧Vplsを生成し、中心電極820に供給する。
【0079】
プラズマリアクタ動作電圧Vplsが中心電極820に供給されると、外周電極810と中心電極820との間でプラズマ放電が発生する。このプラズマ放電により、排気中のPMは帯電し、また酸素がオゾン化され、係るオゾンによってPMの酸化燃焼が促進される。このように、高電圧供給システム900を介して触媒コンバータ700及びプラズマリアクタ800に動作電圧が供給されることにより、エンジン200の排気は好適に浄化される。
【0080】
この際、バッテリ500によりもたらされる直流電圧Vbatの供給経路は、共有電圧供給ライン910に相当する経路において触媒コンバータ800及びプラズマリアクタ900相互間で共有されるため、システム構成が簡素化され、コスト低下及び配置効率の上昇等の利点が得られる。とりわけ、触媒コンバータ700及びプラズマリアクタ800に対し相互に独立した電圧供給経路で電圧を供給する場合と比較すれば、その効果は顕著である。
【0081】
ここで特に、高電圧供給システム900は、200V程度の比較的高い電圧を有する、本来各モータジェネレータの動作に供すべきバッテリ500を電圧供給源として使用しており、数十キロボルト程度のプラズマリアクタ動作電圧Vplsを得るために昇圧すべき電圧(電位差)は、例えば、補機用として一般的な12Vの直流電圧から昇圧する場合と較べれば顕著に小さくて済み、昇圧効率の低下が、少なくとも実践的にみて問題が顕在化する程度には生じない。従って、先に述べた直流電圧Vbatの共有に係る効果と併せ、本実施形態に係る高電圧供給システム900によって、極めて効率的且つ効果的に、触媒コンバータ700及びプラズマリアクタ800への動作電圧の供給が実現されるのである。
【0082】
<2:第2実施形態>
第1実施形態に係る高電圧供給システム900では、触媒コンバータ700及びプラズマリアクタ800に同時に動作電圧が供給されるが、両者の動作タイミングは必ずしも同期しておらずともよく、従って、場合によっては、動作電圧をいずれか一方に供給すればよいこともある。ここで、図4を参照し、そのような本発明の第2実施形態について説明する。ここに、図4は、本発明の第2実施形態に係る排気浄化系の模式図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0083】
図4において、第2実施形態に係る排気浄化系は、高電圧供給システム1000を備える。高電圧供給システム1000は、共有電圧供給ライン910上に、切り替えスイッチ1100を有する点において、高電圧供給システム900と相違している。
【0084】
切り替えスイッチ1100は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100の制御に応じて二種類の切り替え状態を採ることが可能に構成されている。即ち、バッテリ500から供給される直流電圧Vbatを触媒コンバータ700にのみ供給する第1の切り替え状態と、直流電圧Vbatを昇圧電源ユニット930にのみ供給する第2の切り替え状態である。
【0085】
ECU100は、ハイブリッド車両10の運転条件に応じて、切り替えスイッチ1100の切り替え状態を第1又は第2の切り替え状態に制御することにより、実質的にEHC710(より具体的には、メタル担体710bへの通電)及びプラズマリアクタ800のいずれか一方を選択的に作動させる。この際、いずれを作動させるかは、予め実験的に、経験的に或いはシミュレーションに基づいて、少なくとも触媒コンバータ700及びプラズマリアクタ800の動作に支障をきたさないように、且つ効率的且つ効果的にエンジン200の排気を浄化し得るように決定されている。
【0086】
例えば、ECU100は、エンジン200の始動時等、触媒コンバータ700が十分に暖まっていないと判断される状況では、切り替えスイッチ1100を第1の切り替え状態に制御し、プラズマリアクタ800の作動を停止させ、EHC710におけるメタル担体710bへの通電のみを実行する。先に述べたように、メタル担体710bへの通電に伴ってEHC710及び三元触媒720各々の触媒活性が促進されるため、触媒コンバータ700に係る排気浄化性能が早期に担保される。
【0087】
尚、この際、エンジン200が十分な暖機状態にあるか否かについての判断基準は特に限定されず、例えば始動時であるか否かによらず、絶えず水温センサ226によって検出されるエンジン200の冷却水温が参照されてもよいし、始動時に限れば、例えば始動後経過時間等が参照されてもよい。或いは外気温、湿度又は大気圧といった各種環境条件に関する指標値が参照されてもよい。
【0088】
一方、触媒コンバータ700が十分に暖まれば、基本的にEHC710への通電制御は必要なくなるため、例えば、エンジン200の暖機後は基本的に切り替えスイッチ1100が第2の切り替え状態に制御され、プラズマリアクタ800への通電が実行される。但し、排気管224には、とりわけエンジン200が未暖機状態である場合には特に、例えば凝縮水等の水分が発生し易い。排気管224が被水した状態でプラズマ放電を実行した場合、プラズマリアクタ800が故障しかねないため、EHC710への通電を終了し得るタイミングであっても、例えば、排気温度が100度以上となる等、排気管224が被水していない状況となった時点で、プラズマリアクタ800への通電制御が行われてもよい。
【0089】
以上説明したように、第2実施形態に係る高電圧供給システム1000によれば、切り替えスイッチ1100によって、電源たるバッテリ500の電位降下や共有電圧供給ライン910の過度の発熱等を招くことなく、効率的且つ効果的に触媒コンバータ700及びプラズマリアクタ800による排気浄化効果を担保することが可能となる。
【0090】
<3:第3実施形態>
第1及び第2実施形態では、バッテリ500を動作電圧の供給源として使用する処理系として、触媒コンバータ700が挙げられているが、無論このような処理系としては、これに限定されることなく各種態様を考えることができる。ここで、図5を参照し、そのような趣旨に基づいた本発明の第3実施形態について説明する。ここに、図5は、本発明の第3実施形態に係る排気浄化系の模式図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
【0091】
図5において、排気管224には、第1及び第2実施形態に係る触媒コンバータ700の代わりに、DPF1200が設けられている。即ち、図示は省略するが、第3実施形態に係るエンジンは、エンジン200とは異なり、ディーゼルエンジン等の圧縮自着火式内燃機関である。
【0092】
DPF1200はSiC等の基材で構成された導電性のフィルタである。フィルタ構造としては、紙面と垂直な平面で切った断面が、所謂モノリスと称される蜂の巣構造を有しており、個々の穴が交互に目詰めされ、図示左右方向に伸びる壁面に無数に設けられた細孔が濾過に使用される、ウォールフローフィルタ構造を有している。但し、他の構造であっても構わない。
【0093】
図示する通り、DPF1200には動作電圧供給ライン920aが図示せぬ電極及びスイッチを介して接続されており、係るスイッチが通電可能な位置に制御された状態において係る電極を介して導電性の基材に通電が行われる構成となっている。係るスイッチはECU100と電気的に接続されており、例えば第2実施形態と同様に、エンジンの運転条件等に応じてその状態が制御される構成となっている。
【0094】
エンジンからの排気中のPMは、DPF1200の表層で捕集されるか若しくはフィルタを通過する過程で基材に無数に形成された細孔に物理的にトラップされるため、DPF1200のトラップ容量には必然的に限界がある。そこで、例えば、トラップ量が一定レベルを超えた場合等然るべきタイミングで、ECU100は、共有電圧供給ライン910及び動作電圧供給ライン920aを介して基材に直流電圧Vbatを印加する。これに伴い、導電性の基材全体に電流が流れ、言わばDPF1200全体が発熱し、トラップされたPMの再生が行われる。無論、この基材を担体として触媒物質を例えば塗布すること等によって、DPF1200は、触媒としても機能する。この場合、DPF1200への通電により、上述した各種実施形態と同様に触媒活性が促進される。
【0095】
また更に、バッテリ500を動作電圧の供給源として使用する処理系としては、図5に示すDPF1200の他にも、以下の如く各種態様が考えられる(図示は省略する)。即ち、例えば係る処理系として、動作電圧供給ライン920a或いはそれに準じる動作電圧の供給手段を介して供給される動作電圧により生じさせた電気的な着火をトリガとして所定のガスを燃焼せしめ、係る燃焼に伴う燃焼ガスを排気管224に供給することによって排気を浄化せしめる燃焼ガス供給装置等が備わっていてもよい。
【0096】
また、例えば、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン或いは燃料電池搭載車両のエンジン等において、バッテリから各種供給手段を介して供給される高電圧によりマイクロ波を発生させるマイクロ波発生装置及び発生したマイクロ波を印加するためのマイクロ波印加装置等を含む燃料改質触媒を処理系の一例として備える場合等には、係る印加マイクロ波により例えば燃料中の硫黄成分を減少せしめ、もって燃料を改質せしめることにより、触媒劣化の抑制や排気の浄化を図ることも可能である。
【0097】
このように、バッテリ500の直流電圧Vbatを共有する対象処理系は、特に限定されることなく各種態様を採ることが可能であり、いずれの態様においても、上述したような動作電圧の効率的且つ効果的な供給が担保される。
【0098】
<4:第4実施形態>
プラズマリアクタの構造は、上述した各実施形態のものに限定されない。ここで、図6を参照して、このような趣旨に基づいた本発明の第4実施形態について説明する。ここに、図6は、本発明の第4実施形態に係るプラズマリアクタ800Aの模式図である。尚、同図において図5と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
【0099】
図6において、プラズマリアクタ800Aは、中心電極820の代わりに中心電極830を有する点において、プラズマリアクタ800と相違している。ここで、図7を参照し、中心電極830形状について説明する。ここに、図7は、図6において矢線Aの方向に見た中心電極830の模式断面図である。
【0100】
図7において、中心電極830の断面形状は、プラズマリアクタ800Aの外周に向って放射状に広がる複数の電極片を有する星型形状をなしている。
【0101】
図6に戻り、プラズマリアクタ800Aでは、中心電極830が、外周電極810との間で空間放電を行うことにより、排気ガスを浄化せしめることが可能である。また、図示は省略するが、例えば、外周電極810と結合する網状の凝集体を設置することにより、排気ガスの浄化と共に、PMの凝集を行うことも可能である。
【0102】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う高電圧供給装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の模式図である。
【図2】図1のハイブリッド車両におけるエンジンの模式図である。
【図3】図2のエンジンの排気を浄化する排気浄化系の模式図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る排気浄化系の模式図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る排気浄化系の模式図である。
【図6】本発明の第4実施形態に係るプラズマリアクタの模式図である。
【図7】図6において矢線A方向に見た中心電極の模式図である。
【符号の説明】
【0104】
10…ハイブリッド車両、100…ECU、200…エンジン、500…バッテリ、700…触媒コンバータ、710…EHC、800…プラズマリアクタ、800A…プラズマリアクタ、900…高電圧供給システム、910…共有電圧供給ライン、920a、920b…動作電圧供給ライン、930…昇圧電源ユニット、1000…高圧電源システム、1100…切り替えスイッチ、1200…DPF。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関、所定種類の補機に対応する1次電圧よりも高い2次電圧の供給源となる高圧電源、前記2次電圧以上の動作電圧で動作可能であり且つ前記内燃機関に関連する所定種類の処理を行うための複数の処理系を備えたシステムにおいて該複数の処理系のうち少なくとも複数の処理系に前記動作電圧を供給するための高電圧供給装置であって、
前記高圧電源に接続され且つ前記少なくとも複数の処理系で共有され、前記2次電圧を供給するための共有電圧供給手段と、
前記少なくとも複数の処理系の各々に設けられ、該各々に対し前記共有電圧供給手段を介して供給される2次電圧に基づいて前記動作電圧を供給する複数の動作電圧供給手段と
を具備することを特徴とする高電圧供給装置。
【請求項2】
前記少なくとも複数の処理系は、夫々前記内燃機関の排気を浄化可能な、加熱式排気浄化手段及びプラズマ放電浄化手段のうち少なくとも一方を含む
ことを特徴とする請求項1に記載の高電圧供給装置。
【請求項3】
前記共有電圧供給手段及び前記動作電圧供給手段のうち少なくとも一方に設けられ、前記少なくとも複数の処理系の少なくとも一部における前記動作電圧の供給の有無を切り替えることが可能な切り替え手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の高電圧供給装置。
【請求項4】
前記内燃機関の動作条件に応じて前記供給の有無が切り替わるように前記切り替え手段を制御する切り替え制御手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項3に記載の高電圧供給装置。
【請求項5】
前記システムは、前記システムの動力源として機能する電動機を備えたハイブリッドシステムであり、
前記電源は、前記電動機の電圧供給源である
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の高電圧供給装置。
【請求項6】
前記少なくとも複数の処理系は、前記動作電圧が前記2次電圧よりも高い高電圧処理系を含み、
前記高電圧供給装置は、
前記高電圧処理系に対応する前記動作電圧供給手段において前記2次電圧を前記高電圧処理系の動作電圧に昇圧する昇圧手段を更に具備する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の高電圧供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−14186(P2008−14186A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184360(P2006−184360)
【出願日】平成18年7月4日(2006.7.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】