説明

高電圧電装部品の保護構造

【課題】高電圧電装部品のサービス部を保護しつつ、そのサービス性も確保する。
【解決手段】高電圧バッテリユニット5は、操作者に操作されるサービス部6を有し、車両の荷室フロア部2に配設される。サービス部6を保護するプラグプロテクタ7が設けられている。サービス部6は、車両後方を臨むようにして高電圧バッテリユニット5に設けられている。プラグプロテクタ7は、車両後方に向かって開口する、サービス部6を操作するための開口部70を有し、サービス部6と車両前後方向に間隔を有した状態でサービス部6を車両後方から覆っている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の荷室フロアに配設された高電圧電装部品の保護構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や燃費性能に対する高い関心から、ハイブリッド自動車や電気自動車に対するニーズが高まっている。このような車両には、高電圧バッテリやキャパシタ等の高電圧電装部品が搭載される。例えば、特許文献1に係る車両においては、シート後方の荷室フロアに高電圧バッテリが搭載されている。
【0003】
このような高電圧電装部品には、操作者に操作されるサービス部が設けられている。例えば、特許文献2に係る電池には、電源系統の接続・遮断を行うためのサービスプラグが設けられている。車両の修理や点検等のときに、操作者がこのサービスプラグを引き抜いて電源系統を遮断することによって、作業時の安全を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−1683号公報
【特許文献2】特開2011−8954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、高電圧電装部品を荷室フロアに搭載した構成においては、急制動時や車両衝突時などに、荷室フロア上の荷物等の車載物が前方へ移動し、高電圧電装部品に衝突する可能性がある。ここで、前記サービス部が車両後方を臨むように設けられていると、車載物がサービス部に衝突する虞がある。このサービス部には電気回路が接続されているため、サービス部が破損すると、漏電の虞がある。そのため、サービス部を車載物の衝撃から保護する必要がある。その一方で、サービス部は操作者により操作される部分であるため、サービス性を確保する必要もある。
【0006】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高電圧電装部品のサービス部を保護しつつ、そのサービス性も確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された技術は、操作者に操作されるサービス部を有し、車両の荷室フロアに配設された高電圧電装部品の保護構造を対象としている。そして、この高電圧電装部品の保護構造は、前記サービス部を保護する保護部材を備え、前記サービス部は、車両後方を臨むようにして前記高電圧電装部品に設けられており、前記保護部材は、車両後方に向かって開口する、前記サービス部を操作するための開口部を有し、該サービス部と車両前後方向に間隔を有した状態で該サービス部を車両後方から覆っているものとする。
【0008】
前記の構成においては、サービス部が車両後方を臨むように設けられているものの、該サービス部を保護部材により覆っている。これにより、後方から移動してきた車載物がサービス部に衝突することを防止することができる。このとき、サービス部と保護部材との間には車両前後方向へ間隔が空いているため、保護部材を潰してしまうほどの衝撃が保護部材に作用したとしても、前記間隔の分だけは、保護部材はサービス部に干渉することなく変形して衝撃を吸収することができる。さらに、保護部材によりサービス部を覆う構成であっても、該保護部材に後方に開口する開口部を設けることによって、操作者は該開口部を介してサービス部を操作することができる。
【0009】
また、前記サービス部及び前記保護部材は、車両の車幅方向中央よりも車幅方向外側へずれた位置に配設されており、前記保護部材の車幅方向内側部分には、車幅方向内側ほど車両前方に位置するように傾斜した傾斜部が設けられていてもよい。
【0010】
前記の構成においては、保護部材は、サービス部よりも車両後方に設けられているため、保護部材は、荷室空間を多少なりとも占有してしまう。それに対して、保護部材を車両の車幅方向中央よりも外側に設けることによって、荷室フロアにおける車幅方向中央付近のスペースを確保することができる。それに加えて、保護部材の車幅方向内側部分に前記傾斜部を設けることによって、保護部材の後方且つ車幅方向内側への張り出し量を抑制することができる。これによっても、荷室フロアにおける車幅方向中央付近のスペースを確保することができる。また、前記傾斜部を設けることによって、該傾斜部へ衝突した車載物を車両前方へ受け流すことができる。
【0011】
さらに、前記傾斜部は、前記サービス部の車幅方向中央よりも車幅方向内側にずれていることが好ましい。
【0012】
前記傾斜部は、前述の如く車幅方向内側ほど車両前方へ位置するため、車幅方向内側へいくほど、サービス部との車両前後方向間隔が徐々に狭くなっている。そのため、傾斜部をサービス部の車幅方向中央よりも車幅方向内側へずらすことによって、サービス部との車両前後方向間隔が狭くなる部分をサービス部の車幅方向中央からずらすことができる。
【0013】
また、前記保護部材は、タイヤを前記高電圧電装部品の後方において立てた状態で且つ車両後方から見て前記サービス部と重なった状態で固定するための固定部材が係合する係合部を有しているようにしてもよい。
【0014】
この構成によれば、固定部材を係合するための部材を省略することができる。また、タイヤを固定する固定部材を保護部材に係合させるようにすると、タイヤは保護部材に比較的近接した状態で固定されることになる。この場合、車両衝突等によりタイヤが前方へ移動するにしても、タイヤが保護部材に勢いよく衝突することを防止することができる。また、タイヤの前方に保護部材を位置させることによって、タイヤが前方へ移動したとしても、保護部材によりそれ以上前方への移動が抑制される。
【0015】
また、前記保護部材は、荷室フロアから離間して設けられていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、車両が後方から衝突される等して荷室フロアが変形しても、保護部材への影響が抑制されるため、保護部材がサービス部と車両前後方向に間隔を有した状態でサービス部を覆った状態を維持できる。
【発明の効果】
【0017】
前記の構成によれば、開口部を有する前記保護部材で該サービス部を車両前後方向に間隔を有した状態で後方から覆うことによって、高電圧電装部品のサービス部を保護しつつ、そのサービス性も確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態に係る車両のフロアパネル上方の構造を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】高電圧バッテリユニットを取り除いた状態における図1に相当する平面図である。
【図4】荷室フロア上方の構造を示す斜視図である。
【図5】高電圧バッテリユニットの概略的な回路図である。
【図6】サービス部の分解斜視図である。
【図7】サービス部の断面図である。
【図8】プラグプロテクタ及び取付ブラケットの斜視図である。
【図9】タイヤを立てて固定した状態における荷室フロアの背面図である。
【図10】タイヤを立てて固定した状態における、プラグプロテクタ周辺の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0020】
図1は、電動車両(以下、単に車両という)のフロアパネル1の上側の構造を、図2は、図1のII−II線における断面図を示している。この車両には、実施形態に係る高電圧電装部品の保護装置が適用されている。この車両についての前、後、右、左、上及び下を、それぞれ単に前、後、右、左、上及び下という。
【0021】
フロアパネル1は、ダッシュパネル下端から後部座席足下までのフロントフロア部(図示省略)と、フロントフロア部の後端から後方へ延び、後部座席下のフロアを構成するシートパン部11と、シートパン部11の後端から後方へ延び、荷室フロアを構成する荷室フロア部2とを有している。シートパン部11の後端部は、後側ほど上方に位置するように傾斜したキックアップ部11aとなっている。
【0022】
荷室フロア部2の車幅方向中央には、スペアタイヤ90(図1,3でのみ図示)を収納するスペアタイヤパン20が下側に膨出するように形成されている。荷室フロア部2のうち、スペアタイヤパン20の前方に位置する前端部21の上方には、高電圧バッテリユニット5が配設されている。また、高電圧バッテリユニット5の右側には通常バッテリ8が搭載されている。荷室フロア部2は、荷室フロアを構成し、荷物等が搭載される。
【0023】
また、シートパン部11及び荷室フロア部2の車幅方向両端部には、前後方向に延びる左右一対のリアサイドフレーム22,22が設けられている。各リアサイドフレーム22は、断面が略ハット形状をしている。各リアサイドフレーム22は、シートパン部11及び荷室フロア部2に接合されて、前後方向に延びる閉断面空間を形成する。各リアサイドフレーム22は、前後方向において、前側部分22aと中間部分22bと後側部分22cとの三分割構造となっている。前側部分22a、中間部分22b及び後側部分22cは、この順で剛性が低くなっている。そのため、車両に後方から衝撃が加わったときには、後側部分22c、中間部分22b、前側部分22aの順で潰れやすくなっている。
【0024】
キックアップ部11aの後端部には、車幅方向に延びて、該リアサイドフレーム22,22同士を連結するクロスメンバ23が設けられている。クロスメンバ23は、上側クロスメンバ23aと下側クロスメンバ23bとを有している。上側及び下側クロスメンバ23a,23bは、断面が略ハット形状をしている。上側及び下側クロスメンバ23a,23bは、シートパン部11のキックアップ部11aを上下から挟み込み、リアサイドフレーム22,22だけでなくキックアップ部11aにも接合されている。こうして、クロスメンバ23は、車幅方向に延びる閉断面空間を形成している。尚、スペアタイヤパン20とクロスメンバ23との間には、別途のクロスメンバが設けられていない。
【0025】
図3は、高電圧バッテリユニットを取り除いた状態における図1に相当する平面図である。高電圧バッテリユニット5は、前側及び後側取付メンバ41,42を介してクロスメンバ23及びリアサイドフレーム22,22に取り付けられている。詳しくは、前側取付メンバ41は、車幅方向に延びる部材であって、クロスメンバ23の上部に取り付けられている。後側取付メンバ42は、荷室フロア部2の前端部21の上方に設けられている。後側取付メンバ42は、車幅方向に延びる部材であって、両リアサイドフレーム22,22に接合されている。さらに詳しくは、後側取付メンバ42は、各リアサイドフレーム22の前側部分22aに接合されている。後側取付メンバ42は、前端部21との間に間隔を有しており、前端部21に直接は取り付けられていない。尚、前端部21のうち、スペアタイヤパン20の前方正面から車幅方向端部にずれた部分であって且つ、後突によりスペアタイヤ90が前進したときにスペアタイヤパン20の正面の部分と比べて変形し難い部分であれば、前端部21であっても、前側又は後側取付メンバ41,42を取り付けてもよい。
【0026】
また、後側取付メンバ42の車幅方向中央よりも少し右側の部分であって且つリアサイドフレーム22よりも車幅方向内側の部分に、後側取付メンバ42よりも後方に突出する取付ブラケット44が設けられている。取付ブラケット44は、後側取付メンバ42に接合されており、荷室フロア部2に直接は取り付けられていない。この取付ブラケット44は、後述するプラグプロテクタ7及び前後連結メンバ43を取り付けるための部材である。
【0027】
図4に、荷室フロア上方の構造を示す斜視図を、図5に、高電圧バッテリユニットの概略的な回路図を示す。高電圧バッテリユニット5は、複数のバッテリモジュール50,50,…と、該バッテリモジュール50,50,…を収納するケース51と、バッテリモジュール50,50,…を冷却する冷却装置52と、複数のバッテリモジュール50,50,…間の電気的接続及び遮断を切り替えるためのサービス部6とを有している。ここで、「高電圧」とは24Vよりも高い電圧を意味し、バッテリにおいては定格電圧が24Vよりも高いことを意味する。各バッテリモジュール50は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などで構成される複数のセルを直列接続して構成されている。さらに、このように構成された、複数のバッテリモジュール50,50,…は、直列接続されている。この高電圧バッテリユニット5が高電圧電装部品を構成する。
【0028】
ケース51は、概略直方体状に形成されている。ケース51は、その長手方向が車幅方向と一致する状態で、前側取付メンバ41及び後側取付メンバ42上に載置されている。この状態で、ケース51の前端縁が前側取付メンバ41にボルト締結されており、ケース51の後端縁が後側取付メンバ42にボルト締結されている。
【0029】
高電圧バッテリユニット5の車幅方向中央よりも少し右側の部分には、高電圧バッテリユニット5を跨ぐように上下に延びる前後連結メンバ43が設けられている。前後連結メンバ43の前端部は、前側取付メンバ41にボルト締結されている。一方、前後連結メンバ43の後端部は、後側取付メンバ42に設けられた取付ブラケット44にボルト締結されている。この前後連結メンバ43により、前側及び後側取付メンバ41,42の剛性を補強することができる。前後連結メンバ43には、後述する冷却ファン53が取り付けられている。
【0030】
冷却装置52は、冷却ファン53と、冷却ファン53に接続され、空気を冷却ファン53へ導くための吸入ダクト54と、上流端が冷却ファン53に接続され、下流端がケース51に接続され、冷却ファン53から吐出された空気をケース51へ導くための流入ダクト55と、ケース51に接続され、空気をケース51から排出するための排出ダクト56とを有している。冷却ファン53には、前後連結メンバ43に取り付けられている。流入ダクト55及び排出ダクト56は、ケース51の右側面に接続されている。冷却ファン53は、吸入ダクト54を介して空気を吸い込み、流入ダクト55を介して該空気をケース51内へ流入させる。ケース51内へ流入した空気は、ケース51内を循環してバッテリモジュールを冷却した後、排出ダクト56を介してケース51から排出される。
【0031】
図6に、サービス部の分解斜視図を、図7に、サービス部の断面図を示す。サービス部6は、サービスプラグ61と、該サービスプラグ61が着脱可能なプラグ受け部62とを有している。
【0032】
サービスプラグ61は、絶縁体で構成されたハウジング61aと、ハウジング61aに設けられた把持部61bと、ハウジング61aに覆われた導電体61cとを有している。把持部61bは、ハウジング61aに対して軸支されており、把持部61bが車幅方向に沿った収納状態(図5で図示された状態)と、把持部61bが前後方向に沿った操作状態との間で回転可能となっている。導電体61cは、概略U字状に形成されている。導電体61cの2つの端部は、ハウジング61aから外方に臨むように配置されている。
【0033】
プラグ受け部62は、ケース51の後面のうち右側の端部に設けられている。すなわち、プラグ受け部62は、荷室フロア部2の車幅方向中央よりも外側にずれた位置に設けられている。プラグ受け部62は、ハウジング62aと、2つの導電板(図示省略)とを有する。2つの導電板は、互いに絶縁されている。一方の導電板は、ケース51内の或るバッテリモジュール50の正極端子に接続されており、他方の導電板は、別のバッテリモジュール50の負極端子に接続されている。ケース51内の複数のバッテリモジュール50,50,…は、2つの導電板が接続されたバッテリモジュール50,50間では電気的接続が遮断されており、それ以外のバッテリモジュール50,50,…は互いに直列接続されている。ハウジング62aは、サービスプラグ61が挿嵌されるように後方へ開口している。ハウジング62a内には、2つの導電板の一端部が配置されている。
【0034】
サービスプラグ61は、車両後方から、プラグ受け部62に装着される。詳しくは、サービスプラグ61がプラグ受け部62に挿嵌されると、導電体61cの2つの端部がハウジング内の2つの導電板に電気的に接続される。それにより、2つの導電板は、導電体61cを介して互いに導通することになる。その結果、ケース51内の全てのバッテリモジュール50,50,…は、直列接続されることになる。
【0035】
一方、サービスプラグ61をプラグ受け部62から取り外すときは、把持部61bを後方へ90度回転させて、その状態でサービスプラグ61を後方へ引き抜く。その結果、2つの導電板が接続されたバッテリモジュール50,50間の電気的接続が遮断され、高電圧バッテリユニット5は、全体として非導通状態となる。
【0036】
このサービス部6の後方には、サービス部6を保護するためのプラグプロテクタ7が設けられている。図8に、プラグプロテクタ及び取付ブラケットの斜視図を示す。プラグプロテクタ7は、板金を屈曲させて形成されている。プラグプロテクタ7は、中央に略長方形状の開口部70が形成された、略長方形状の枠状壁部71と、枠状壁部71の車幅方向外側端部の短辺から屈曲して前方へ延びる外側壁部72と、枠状壁部71の車幅方向内側の短辺から屈曲して前方へ延びる内側壁部73とを有している。このプラグプロテクタ7が保護部材を構成する。
【0037】
枠状壁部71は、車幅方向外側に位置する第1壁部71aと、車幅方向内側に位置する第3壁部71cと、第1壁部71aと第3壁部71cとの間に位置する第2壁部71bとを有している。第1及び第3壁部71a,71cは、その法線方向が前後方向を向いている。第2壁部71bは、車幅方向内側ほど車両前方に位置するように傾斜している。開口部70は、第1〜第3壁部71a〜71cに亘って形成されている。第2壁部71bが傾斜部を構成する。
【0038】
第1壁部71aの下端部は、後方へ折り曲げられ、フランジ71dが形成されている。外側壁部72の前部における下端部は、車幅方向外側へ折り曲げられ、フランジ72aが形成されている。また、内側壁部73の前端部は、車幅方向内側へ折り曲げられ、フランジ73aが形成されている。
【0039】
枠状壁部71には、略L字形状のビード74が形成されている。詳しくは、ビード74は、開口部70の上側の長辺及び左側の短辺に沿うように、第1〜第3壁部71a〜71cに亘って形成されている。また、枠状壁部71と外側壁部72との屈曲部、枠状壁部71と内側壁部73との屈曲部、及び内側壁部73とフランジ73aとの屈曲部にも、複数のビード75,75,…が形成されている。
【0040】
このように構成されたプラグプロテクタ7は、取付ブラケット44に取り付けられている。詳しくは、取付ブラケット44の後端には、フランジ44aが設けられている。このフランジ44aには、ウェルドナットが設けられている。プラグプロテクタ7は、外側壁部72のフランジ72aが取付ブラケット44上に載置されると共に枠状壁部71がフランジ44aに後方から当接する状態で、フランジ44aにボルト締結される。このようにして、プラグプロテクタ7は、荷室フロア部2に直接は取り付けられておらず、荷室フロア部2から離間して設けられている。
【0041】
プラグプロテクタ7が取付ブラケット44に取り付けられた状態においては、サービス部6がプラグプロテクタ7に後方から覆われ且つプラグプロテクタ7とサービス部6と間には前後方向に間隔が設けられている。このとき、プラグプロテクタ7の開口部70は、サービス部6と前後方向に並んでいる。また、第2壁部71bの車幅方向中心は、サービス部6の車幅方向中心よりも車幅方向内側にずれている。さらに、内側壁部73のフランジ73aは、前後連結メンバ43と、僅かな間隔を有した状態で向き合っている。ただし、フランジ73aは、前後連結メンバ43に当接していてもよい。
【0042】
このように構成された荷室フロア部2、高電圧バッテリユニット5及びプラグプロテクタ7等はトリム24に覆われている。トリム24は、高電圧バッテリユニット5及びプラグプロテクタ7を後方から覆い、荷室フロア部2を上方から覆う。トリム24のうちプラグプロテクタ7の開口部70に対応する部分には同様の開口部24aが設けられると共に、開口部24aを塞ぐ蓋24bが設けられている。トリム24のうち荷室フロア部2を覆う部分の上には、ラゲッジボード25が載置されている。そして、ラゲッジボード25上に、トランク等の荷物が搭載される。
【0043】
また、この荷室フロア部2は、タイヤ91を立てた状態で保持できるように構成されている。図9に、タイヤを立てて固定した状態における荷室フロアの背面図を、図10に、タイヤを立てて固定した状態における、プラグプロテクタ周辺の拡大斜視図を示す。例えば、タイヤ91がパンクしてスペアタイヤ90に交換したときには、パンクしたタイヤ91を荷室フロア部2に収容して運搬する。このとき、タイヤ91は、スペアタイヤ90に比べて大きいため、スペアタイヤパン20内には収まらない。そのような場合、タイヤ91は、荷室フロア部2内に立てた状態で収容される。詳しくは、タイヤ91は、高電圧バッテリユニット5の後方においてトリム24に立て掛けた状態でスペアタイヤパン20内に配設される。このとき、車両後方から見ると、タイヤ91は、プラグプロテクタ7と重なっている。即ち、タイヤ91とプラグプロテクタ7は、少なくとも部分的に前後方向に並んでいる。タイヤ91は、この状態で、固定ベルト93を用いて固定される。詳しくは、後側取付メンバ42のうち、左側のリアサイドフレーム22の近傍には、固定ベルト93を係合させる係合孔42aが貫通形成されている。また、プラグプロテクタ7のフランジ71dにも、固定ベルト93を係合させるための係合孔71eが貫通形成されている。固定ベルト93は、例えば、両端にフックが設けられている。このように構成された固定ベルト93を、タイヤ91のスポーク92,92,…間を縫うように引き渡し、両端のフックをそれぞれ係合孔42a,71eに係合させる。そして、固定ベルト93の長さを調節して、タイヤ91を締め付ける。こうして、タイヤ91を固定ベルト93で固定する。この固定ベルト91が固定部材を構成し、係合孔42a,71eが係合部を構成する。
【0044】
このような構成によれば、高電圧バッテリユニット5は、荷室フロア部2の前部に位置するため、トランク等の車載物は荷室フロアにおいて高電圧バッテリユニット5の後方に位置することになる。かかる状態で車両が急制動したり、後方から衝突されたりすると、車載物が前方へ移動する。しかしながら、サービス部6は後方からプラグプロテクタ7で覆われているため、車載物がサービス部6へ直接衝突することが防止される。その結果、サービス部6が接続されている高電圧の電源系統に漏電等の故障が生じることを防止することができる。
【0045】
また、車載物の衝撃が大きいと、車載物がプラグプロテクタ7を押し潰してサービス部6へ衝突する可能性もあり得る。それに対して、プラグプロテクタ7とサービス部6との間に前後方向の間隔を設けているので、その間隔の分だけは、プラグプロテクタ7がサービス部6に干渉することなく変形することができる。その結果、車載物の衝撃をプラグプロテクタ7が変形することで吸収することができる。万が一、車載物がプラグプロテクタ7を押し潰してサービス部6へ衝突することがあったとしても、サービス部6への衝撃を和らげることができる。
【0046】
そして、このようにサービス部6をプラグプロテクタ7で後方から覆って保護する構成であっても、プラグプロテクタ7に後方に開口する開口部70を設けているので、後方から開口部70を介してサービス部6へ手を延ばして、サービス部6を操作することができる。プラグプロテクタ7はさらにトリム24で覆われているので、操作者がサービス部6を操作するときには、まず、トリム24の蓋24bを取り外す。そうすると、プラグプロテクタ7の開口部70が現れる。操作者は、開口部70を介して、サービスプラグ61まで手を延ばし、収納状態となっている把持部61bを掴み、90度回転させて操作状態とし、後方へ引き抜く。こうして、サービスプラグ61をプラグ受け部62から引き抜くと、高電圧バッテリユニット5の電気的接続が遮断される。このように、サービス部6をプラグプロテクタ7で後方から覆う構成であっても、サービス部6のサービス性を確保することができる。
【0047】
上記の構成に加えて、プラグプロテクタ7に複数のビード74,75を形成することによって、プラグプロテクタ7の強度を向上させることができる。こうすることで、プラグプロテクタ7によって、より大きな衝撃を受け止めることができる。
【0048】
また、プラグプロテクタ7を高電圧バッテリユニット5に直接取り付けないことによって、プラグプロテクタ7に作用した衝撃が高電圧バッテリユニット5にそのまま伝達することを防止することができる。
【0049】
また、プラグプロテクタ7の内側壁部73のフランジ73aを前後連結メンバ43に近接させることによって、プラグプロテクタ7に衝撃が作用したときにフランジ73aが前後連結メンバ43に当接して、該衝撃を前後連結メンバ43に伝達させることができる。こうすることで、車載物の衝撃をプラグプロテクタ7だけでなく、前後連結メンバ43でも受け止めることができる。さらに、前後連結メンバ43は、クロスメンバ23に取り付けられた前側取付メンバ41に接合されているので、前後連結メンバ43に伝達した衝撃は、前側取付メンバ41に伝達し、さらにはクロスメンバ23に伝達する。クロスメンバ23は、閉断面空間を有する高剛性の部材であるため、衝撃をしっかりと受け止めることができる。ここで、前後連結メンバ43は、高電圧バッテリユニット5には取り付けられていないので、高電圧バッテリユニット5に作用する衝撃を抑制することができる。
【0050】
さらに、プラグプロテクタ7を少なくとも部分的に、前後方向に対して傾斜させることによって、プラグプロテクタ7に衝突する車載物を傾斜に沿った方向へ受け流すことができる。具体的には、第2壁部71bを車幅方向内側ほど前方へ位置するように傾斜させることによって、該2壁部71bに衝突した車載物を車幅方向内側且つ前方へ受け流すことができる。これにより、プラグプロテクタ7で受け止めなければならない衝撃を低減することができ、プラグプロテクタ7の変形を抑制することができる。
【0051】
また、サービス部6及びプラグプロテクタ7を車両の車幅方向中央よりも車幅方向外側にずれた位置に設けることによって、荷室スペースを拡大することができる。さらに、この第2壁部71bは、プラグプロテクタ7の中でも比較的車幅方向内側に位置する部分であるため、第2壁部71bを車幅方向内側ほど前方へ位置するように傾斜させることによって、プラグプロテクタ7の後方且つ車幅方向内側への突出を抑えることができる。これによっても、荷室スペースを拡大することができる。ここで、第2壁部71bを車幅方向内側ほど前方へ位置するように傾斜させると、第2壁部71bがサービス部6に接近することになり、プラグプロテクタ7の変形スペースが小さくなってしまう。しかしながら、第2壁部71bの車幅方向中央をサービス部6の車幅方向中央よりも車幅方向内側へずらしている。こうすることによって、第2壁部71bのうち、相対的に後方へ位置する部分(即ち、車幅方向外側部分)がサービス部6と前後方向に並ぶことになるため、第2壁部71bとサービス部6との前後方向間隔をできる限り確保することができる。
【0052】
また、プラグプロテクタ7を荷室フロア部2から離間して設けているので、車両が後方から衝突されて荷室フロア部2が変形したとしても、プラグプロテクタ7とサービス部6との位置関係を維持することができる。具体的には、プラグプロテクタ7は、取付ブラケット44に取り付けられており、取付ブラケット44は、後側取付メンバ42に取り付けられている。そして、後側取付メンバ42は、荷室フロア部2との間に間隔を有した状態で左右のリアサイドフレーム22,22に取り付けられている。一方、高電圧バッテリユニット5は、前側取付メンバ41と後側取付メンバ42とに取り付けられており、荷室フロア部2に直接は取り付けられていない。ここで、荷室フロア部2のうち、後側取付メンバ42の下方に位置する前端部21にはクロスメンバが設けられていないため、車両が後方から衝突されたときに変形しやすい。しかし、前端部21が変形したとしても、前側及び後側取付メンバ41,42は前端部21には取り付けられていないため、高電圧バッテリユニット5及びプラグプロテクタ7は前端部21の変形による影響をあまり受けない。また、後側取付メンバ42は、リアサイドフレーム22のうち相対的に高剛性の前側部分22aに取り付けられており、前側取付メンバ41もクロスメンバ23を介してリアサイドフレーム22の前側部分22aに取り付けられている。車両が後方から衝突されたとしても、リアサイドフレーム22のうち中間及び後側部分22b,22cが優先的に変形するので、前側部分22aの変形は抑制される。そのため、前側取付メンバ41と後側取付メンバ42との相対的な位置関係は可及的に維持され、ひいては、高電圧バッテリユニット5とプラグプロテクタ7との相対的な位置関係も可及的に維持される。その結果、荷室フロア部2を含む車両後部が変形したとしても、プラグプロテクタ7とサービス部6との位置関係を維持して、サービス部6を保護することができる。
【0053】
さらに、プラグプロテクタ7は、高電圧バッテリユニット5の後部且つ車幅方向端部に設けられていると共に、プラグプロテクタ7の車幅方向外側には通常バッテリ8が配設されている。つまり、プラグプロテクタ7は、通常バッテリ8に対して、後方且つ車幅方向内側に位置する。そのため、プラグプロテクタ7は、車載物の通常バッテリ8への衝突も抑制することができる。
【0054】
また、タイヤ91を荷室フロア部2に収容する際にプラグプロテクタ7を利用してタイヤ91を固定することができる。詳しくは、プラグプロテクタ7に係合孔71eを設けることによって、タイヤ91を固定するための固定ベルト93を係合孔71eに係合させることができる。これにより、固定ベルト93を係合させるための部材を別途設ける必要がなく、部品点数を省略することができる。さらに、固定ベルト93を係合孔71eに係合させる以上、タイヤ91はプラグプロテクタ7に比較的近接した位置に固定されることになる。この状態から車両衝突等によってタイヤ91が前方へ移動したとしても、タイヤ91が勢いよくプラグプロテクタ7に衝突することを防止することができる。
【0055】
《その他の実施形態》
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0056】
例えば、前記実施形態では、高電圧電装部品として、高電圧バッテリユニット5を採用しているが、これに限られるものではない。高電圧電装部品としては、定格電圧が24Vより高い、任意の電装部品を採用することができる。例えば、高電圧バッテリユニット以外に、高電圧キャパシタ及び高電圧パワーコントロールユニット等を採用することができる。また、高電圧バッテリユニットは、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池だけでなく、燃料電池であってもよい。
【0057】
また、サービス部6は、サービスプラグ61及びプラグ受け部62に限られるものではない。例えば、サービス部6は、ブレーカスイッチ、リレースイッチ及びコネクタ等であってもよい。すなわち、サービス部6は、高電圧(24Vよりも高い電圧)が印加される電気回路に接続され且つ、操作者に操作される部分であれば、任意の構成を採用することができる。
【0058】
また、プラグプロテクタ7の構成は、前記実施形態に限られるものではない。サービス部6を後方から覆い、サービス部6との間に前後方向の間隔を有し、サービス部6を操作するための開口部を有する限り、プラグプロテクタは任意の構成とすることができる。
【0059】
また、荷室フロアにおけるタイヤ91の固定方法は、前記実施形態に限られるものではない。例えば、フックとリングが設けられた固定ベルトを用いて、タイヤ91を固定してもよい。このような固定ベルトの場合、係合孔42a,71eにフックを係合させるのではなく、係合孔42a,71eには固定ベルトを挿通させる。さらに、固定ベルトには、タイヤ91のスポーク92,92,…間も挿通させる。そして、固定ベルトのフックを、固定ベルトの別の部分に設けられたリングに係合させる。こうして、タイヤ91を固定ベルトで締め付けた状態で固定する。さらに、複数の固定ベルトを用いて、タイヤ91を固定するようにしてもよい。
【0060】
また、タイヤ91を固定ベルト以外の部材で固定するようにしてもよい。例えば、係合孔71eに替えて、プラグプロテクタ7にネジ孔やウェルドナットを設けてもよい。そして、タイヤ91をプラグプロテクタ7に立て掛けた状態で、タイヤ91のハブをプラグプロテクタ7にボルト締結する構成としてもよい。この場合、ボルトが固定部材を構成する。
【0061】
尚、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
以上説明したように、本発明は、車両の荷室フロアに配設された高電圧電装部品の保護構造について有用である。
【符号の説明】
【0063】
2 荷室フロア部(荷室フロア)
5 高電圧バッテリユニット
6 サービス部
7 プラグプロテクタ(保護部材)
70 開口部
71b 第2壁部(傾斜部)
71e 係合孔(係合部)
91 タイヤ
93 固定ベルト(固定部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者に操作されるサービス部を有し、車両の荷室フロアに配設された高電圧電装部品の保護構造であって、
前記サービス部を保護する保護部材を備え、
前記サービス部は、車両後方を臨むようにして前記高電圧電装部品に設けられており、
前記保護部材は、車両後方に向かって開口する、前記サービス部を操作するための開口部を有し、該サービス部と車両前後方向に間隔を有した状態で該サービス部を車両後方から覆っていることを特徴とする、高電圧電装部品の保護構造。
【請求項2】
請求項1に記載の高電圧電装部品の保護構造において、
前記サービス部及び前記保護部材は、車両の車幅方向中央よりも車幅方向外側へずれた位置に配設されており、
前記保護部材の車幅方向内側部分には、車幅方向内側ほど車両前方に位置するように傾斜した傾斜部が設けられていることを特徴とする、高電圧電装部品の保護部材。
【請求項3】
請求項2に記載の高電圧電装部品の保護構造において、
前記傾斜部は、前記サービス部の車幅方向中央よりも車幅方向内側にずれていることを特徴とする、高電圧電装部品の保護構造。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の高電圧電装部品の保護構造において、
前記保護部材は、タイヤを前記高電圧電装部品の後方において立てた状態で且つ車両後方から見て前記保護部材と重なった状態で固定するための固定部材が係合する係合部を有していることを特徴とする、高電圧電装部品の保護構造。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の高電圧電装部品の保護構造において、
前記保護部材は、荷室フロアから離間して設けられていることを特徴とする、高電圧電装部品の保護構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−32116(P2013−32116A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169531(P2011−169531)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】