説明

1−ブテンプロピレンコポリマー組成物

4〜10重量%のプロピレン誘導単位の含量を有し、ポリマーの少なくとも50%が、室温において100時間後に熱力学的に安定な三方晶形態Iで存在し、(a)次の特徴:(i)4以下の分子量分布Mw/Mn;(ii)示差走査熱量計(DSC)で検出できる融解エンタルピーを有さない;及び(iii)0.5%より低い赤外結晶化度;を有するアタクチック1−ブテンプロピレンコポリマー5重量%〜95重量%;(b)次の特徴:(i)13C−NMRによって測定して80%より高いアイソタクチックペンタド(mmmm);(ii)70℃より高い融点(Tm(II));及び、(iii)4以下の分子量分布Mw/Mn;を有するアイソタクチック1−ブテンプロピレンコポリマー5重量%〜95重量%;を含む、1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタロセンベースの触媒系を用いることによって得られる1−ブテン/プロピレンベースのコポリマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
1−ブテンポリマーは当該技術において周知である。耐圧性、耐クリープ性、及び衝撃強さに関するこれらの良好な特性を考慮して、これらは、例えば金属パイプ代替用のパイプ、易開封性包装、及びフィルムの製造において広く用いられている。
【0003】
メタロセンベースの触媒系を用いることによって製造されるアイソタクチックの1−ブテンベースのポリマーは当該技術において周知であり、それらを得る方法は、例えば特許文献1〜3、に記載されているが、得られるポリマーは非常に高いアイソタクチシティーを有する。
【0004】
他の面からはアタクチック1−ブテンポリマーは当該技術において公知であり、これは主として接着剤組成物用の成分として用いられる粘着性のポリマーである。このポリマーを製造する方法の例は、特許文献4〜6;及びにおいて与えられている。
【0005】
幾つかの用途のためには、アイソタクチック1−ブテンポリマーよりも軟質の弾性特性を有する材料に対する必要性が存在するが、この材料は、容易に処理できなければならず、とりわけアタクチック1−ブテンポリマーのように粘着性であってはならない。
【0006】
分留可能なエラストマー1−ブテンポリマーが特許文献7に記載されている。このポリマーは、テトラネオフィルジルコニウムのような有機ジルコニウム化合物、即ち金属がメタロセン化合物のようにπ結合を有しない化合物を用いることによって得られる。得られる1−ブテンポリマーはジエチルエーテルを用いて分留することができ、エーテル可溶フラクションは、幾つかの性質の中でもとりわけ、1%〜15%の範囲の赤外結晶化度値を有する。この値は、本発明の1−ブテンポリマーの可溶フラクションの赤外結晶化度と比較して非常に高い。
【0007】
非特許文献1及び2において報告されているように、1−ブテンベースのポリマーを製造すると、それらは通常、四方晶形態IIでその溶液から結晶化し、次に自然に熱力学的に安定な三方晶形態Iに変換する。室温における完全な変換には数日間を要し、通常は完了までは進行しない。2つの形態の間の最も重要な相違点は融点であり、形態Iは形態IIよりも高い。これらの2つの形態は、DSCサーモグラムによって確認することができる。実際、サーモグラムにおいて、形態I(より高温で溶融する形態)及び形態II(より低温で溶融する形態)の溶融エンタルピーを示す2つのメインピークを確認することができる。試料をエイジングすることにより、形態IIを示すピークが減少し、形態Iを示すピークが現れるか又は増加し、一方、2つのピークの面積の合計によって示される全エンタルピーは実質的に一定のままで保持されることに注目することができる。形態Iを示すピークは試料の低エイジング時においては必ずしも存在していないが、一定の時間後においては、サーモグラム中に現れることを注目すべきである。さもなくば、2つのピークはサーモグラムの時間0においても存在する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO−02/100908
【特許文献2】WO−02/100909
【特許文献3】WO−03/014107
【特許文献4】US−6,288,192
【特許文献5】EP−604,908
【特許文献6】EP−04101912.6
【特許文献7】US−4,298,722
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】J. Appl. Phys. 1964, 35, 3241
【非特許文献2】Macromolecules 1998, 31, 9253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、より短い時間で形態Iに転化する材料を可能にして、材料が最終特性を有する前の長い保管時間を避けることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明の対象は、4〜10重量%のプロピレン誘導単位の含量を有し、結晶質ポリマーの少なくとも50%が、室温において最初の溶融の100時間後に熱力学的に安定な三方晶形態Iで存在する(DSC分析によって検出)、1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物であって、
該組成物が、
(i)13C−NMRによって測定して30%〜80%、好ましくは45%〜75%、より好ましくは50%〜60%の範囲のアイソタクチックペンタド(mmmm);
(ii)70℃より高い融点(Tm(II));
(iii)4.0以下の分子量分布Mw/Mn;及び
(iv)75.0%より高く、好ましくは90.0%より高く、より好ましくは95.0%より高く、更により好ましくは99.0%より高い0℃におけるキシレン中の溶解度(以下に記載の手順による);
を有し、
該組成物が、
(a)少なくとも1種類の、メソ又はメソ様形態の式(Ia)のメタロセン化合物:
【0012】
【化1】

【0013】
(式中、
Mは、元素周期律表の第3、4、5、6族、又はランタニド族若しくはアクチニド族に属するものから選択される遷移金属の原子であり;好ましくは、Mは、チタン、ジルコニウム、又はハフニウムであり;
pは、0〜3の整数であり、好ましくはpは2であり、金属Mの形式酸化数マイナス2に等しく;
Xは、同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、或いは、R、OR、OSOCF、OCOR、SR、NR、又はPR基であり、ここで、Rは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する、線状又は分岐で環式又は非環式の、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、又はC〜C40アリールアルキル基であり;好ましくは、Rは、線状又は分岐のC〜C20アルキル基であり;或いは2つのXは、場合によっては置換又は非置換のブタジエニル基或いはOR’O基を形成してもよく、ここで、R’は、C〜C40アルキリデン、C〜C40アリーリデン、C〜C40アルキルアリーリデン、及びC〜C40アリールアルキリデン基から選択される2価の基であり;好ましくは、Xは、水素原子、ハロゲン原子、又はR基であり;より好ましくは、Xは、塩素、又はC〜C10アルキル基、例えばメチル又はエチル基であり;
Lは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する2価のC〜C40炭化水素基であるか、或いは5個以下のケイ素原子を有する2価のシリリデン基であり;好ましくは、Lは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する、C〜C40アルキリデン、C〜C40シクロアルキリデン、C〜C40アリーリデン、C〜C40アルキルアリーリデン、又はC〜C40アリールアルキリデン基、及び5個以下のケイ素原子を有するシリリデン基、例えばSiMe、SiPhから選択される2価の橋架基であり;好ましくは、Lは基:(Z(R”)であり、ここで、Zは炭素又はケイ素原子であり、nは1又は2であり、R”は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C20炭化水素基であり;好ましくは、R”は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する、線状又は分岐で環式又は非環式の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり;より好ましくは、基:(Z(R”)は、Si(CH、SiPh、SiPhMe、SiMe(SiMe)、CH、(CH、及びC(CHであり;
及びRは、互いに同一か又は異なり、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C40炭化水素基であり;好ましくは、これらは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する、線状又は分岐で環式又は非環式の、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、又はC〜C40アリールアルキル基であり;より好ましくは、R及びRは、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基であり;より好ましくは、R及びRは、メチル又はエチル基であり;
Tは、互いに同一か又は異なり、式(IIa)、(IIb)、又は(IIc):
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、記号*で示される原子は、式(Ia)の化合物中の同じ記号で示される原子と結合し;少なくとも1つのT基は式(IIb)又は(IIc)を有し;
は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C40炭化水素基であり;好ましくは、Rは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する、線状又は分岐で環式又は非環式の、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、又はC〜C40アリールアルキル基であり;より好ましくは、Rは、線状又は分岐の、C〜C20アルキル、C〜C40アリール、C〜C40アリールアルキル基であり:更により好ましくは、Rは、場合によっては1以上のC〜C10アルキル基で置換されているC〜C20アリール基であり;
及びRは、互いに同一か又は異なり、水素原子、或いは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C40炭化水素基であり;好ましくは、R及びRは、互いに同一か又は異なり、水素原子、或いは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する、線状又は分岐で環式又は非環式の、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、又はC〜C40アリールアルキル基であり;好ましくは、R及びRは水素原子であり;
は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C40炭化水素基であり;好ましくは、Rは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する、線状又は分岐で環式又は非環式の、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、又はC〜C40アリールアルキル基であり;より好ましくは、Rは、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基であり;更により好ましくは、Rはメチル又はエチル基であり;
及びRは、互いに同一か又は異なり、水素原子、或いは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C40炭化水素基であり;好ましくは、R及びRは、水素原子、或いは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する、線状又は分岐で環式又は非環式の、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、又はC〜C40アリールアルキル基であり;
好ましくは、Rは、水素原子、或いは、線状又は分岐で飽和又は不飽和のC〜C20アルキル基であり;より好ましくは、Rはメチル又はエチル基であり;
好ましくは、Rは、C〜C40アルキル、C〜C40アリール、又はC〜C40アリールアルキルであり;より好ましくは、Rは、式(III):
【0016】
【化3】

【0017】
(式中、R、R10、R11、R12、及びR13は、互いに同一か又は異なり、水素原子、或いは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する、線状又は分岐で環式又は非環式の、C〜C20アルキル、C〜C20アルケニル、C〜C20アルキニル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり;好ましくは、R及びR12は水素原子であり;R10、R11、及びR13は、好ましくは、水素原子、或いは線状又は分岐で環式又は非環式のC〜C10アルキル基である)
の基である)
部分である);

(b)少なくとも1種類の、ラセミ(rac)又はラセミ様形態の式(Ib)のメタロセン化合物:
【0018】
【化4】

【0019】
(式中、R、R、T、L、M、X、及びpは上記に記載した通りであり;R、R、T、L、M、X、及びpは上記に記載した通りであり;記号*で示される原子は、式(IIa)、(IIb)、又は(IIc)の部分中の同じ記号で示される原子と結合している);
(c)アルモキサン、又はアルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物;及び場合によっては、
(d)有機アルミニウム化合物;
を接触させることによって得られ、ラセミ又はラセミ様形態とメソ形態又はメソ様形態との間の比が20:80〜80:20、好ましくは30:70〜70:30、より好ましくは35:65〜65:35の範囲である触媒系の存在下において、1−ブテン及びプロピレンを重合することによって得られる、上記組成物である。
【0020】
本発明の目的のために、「メソ(meso)形態」という用語は、2つのシクロペンタジエニル部分上の同じ置換基が、ジルコニウム及び該シクロペンタジエニル部分の中心を含む面に対して同じ側に存在することを意味する。「メソ様形態」は、下記の化合物において示されるように、メタロセン化合物上の2つのシクロペンタジエニル部分のより嵩高の置換基が、ジルコニウム及び該シクロペンタジエニル部分の中心を含む面に対して同じ側に存在することを意味する。
【0021】
【化5】

【0022】
本発明の目的のために、「ラセミ(rac)形態」という用語は、2つのシクロペンタジエニル部分上の同じ置換基が、ジルコニウム及び該シクロペンタジエニル部分の中心を含む面に対して反対側に存在することを意味する。「ラセミ様形態」は、下記の化合物において示されるように、メタロセン化合物上の2つのシクロペンタジエニル部分のより嵩高の置換基が、ジルコニウム及び該シクロペンタジエニル部分の中心を含む面に対して反対側に存在することを意味する。
【0023】
【化6】

【0024】
本発明の1−ブテンプロピレンコポリマー組成物は、形態IIと形態Iとの間の特に迅速な転移を有する。この転移は、DSC分析によって測定される。典型的なサーモグラムは、形態I(より高い融点)及び形態II(より低い融点)を示す2つのメインピークを示す。時には、より短い時間においては形態IIのピークのみが存在し、その後、より長いエイジング時間において形態Iのピークが出現する。これらのピークの面積は、形態I及び形態IIで与えられる結晶質ポリマーの量に対して正比例する。かくして、面積の比(それぞれの形態の融解エンタルピーにも正比例する)は、ポリマー中に存在する形態I又は形態IIの結晶質ポリマーの量に正比例する。かくして、第1のDSCサーモグラムによってポリマーを融解させ、融解エンタルピーを測定することによって形態Iと形態IIの比が測定される。次に、室温において100時間後に融解エンタルピーを再度測定して、これらの形態の融解エンタルピーを示すピークの面積を測定することによって形態IIと形態Iとの間の転移を測定する。
【0025】
上述したように、本発明の対象であるポリマーは、形態IIと形態Iとの間の特に迅速な転移を示す。この迅速な転移は、樹脂のアニーリングを大きく減少させるという有利性を有する。この効果は、樹脂の特定の組成(アタクチック及びアイソタクチックポリマー)によって向上する。転移は、以下に記載するようにDSCによって測定することができる。好ましくは、本発明の対象である1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物においては、室温において16時間のアニーリングの後に、結晶質ポリマーの少なくとも80%が熱力学的に安定な三方晶形態Iで存在し;更により好ましくは、240時間後に、結晶質ポリマーの少なくとも99%が熱力学的に安定な三方晶形態Iで存在する。
【0026】
本発明の対象であるポリマー組成物の融点は、80℃〜100℃の範囲であり、より好ましくは85℃〜98℃の範囲である。
【0027】
本発明の目的のためには、コポリマーの融点は、常に形態Iに関するものであるか、又は他に記載する。
【0028】
好ましくは、135℃においてテトラヒドロナフタレン(THN)中で測定する本発明の対象であるポリマー組成物の固有粘度(IV)は、0.5dL/g〜4.0dL/gの範囲であり、好ましくは1.0dL/g〜3.0dL/gの範囲であり、更により好ましくは、固有粘度(IV)は、1.1dL/gより高く、2.5dL/gより低い。
【0029】
本発明の対象である1−ブテン組成物を用いると、アイソタクチックの1−ブテンベースのポリマーを極めて効率的に軟化させて、幾つかの用途のために、例えばポリ塩化ビニル、ポリウレタン、又はスチレンブロックコポリマーと置き換えるために用いることができる新規な材料を達成することができる。実際、式(I)のメタロセン化合物のラセミ及びメソ形態の両方を含む上記記載の触媒系を用いることにより、アイソタクチック(ラセミ形態)及びアタクチック(メソ形態)の1−ブテン/プロピレンコポリマーの極めて密なブレンドを得ることができる。アイソタクチック1−ブテンコポリマーが存在することは、アタクチック1−ブテンポリマーの殆どの特性を保持していても、得られる組成物が粘着性にならず、このようにして組成物の加工性が大きく改良されるという有利性を有する。
【0030】
したがって、本発明による1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物は、更に、50〜100の範囲の極めて低いショアA値(ISO−868にしたがって測定)を有する。
【0031】
他の態様においては、式(Ia)及び(Ib)の化合物は、それぞれ、下式(Va)又は(Vb):
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、M、X、p、L、R、R、R、及びRは、上記に記載の意味を有する)
を有する。
【0034】
式(Ia)及び(Ib)のメタロセン化合物は、当該技術において周知であり、WO−01/44318、WO−03/045964、PCT/EP02/13552、及びDE−10324541.3に記載されているもののような公知の手順にしたがって製造することができる。
【0035】
かかるプロセスを用いると、本発明の対象であるポリ(1−ブテン)組成物を、簡単で経済的な方法で且つ高収率で得ることができる。実際、式(Ia)のメタロセン化合物のようなC又はC様対称性を有するメタロセン化合物は、通常、合成からラセミ及びメソ形態の混合物で得られ、メソ形態は通常不活性であるか、又は極めて低い分子量を有するポリマーを生成する。本出願人は、驚くべきことに、式(Ia)の化合物のメソ形態が、アタクチックな高分子量のポリ(1−ブテン)を高収率で与えることを見出した。したがって、本発明の対象である組成物を達成するために2つの異性体を分離するために更なる精製を行う必要なしに、メタロセン化合物のラセミ及びメソの混合物をそのまま用いることができる。本発明の組成物中のアタクチックコポリマーの量は、触媒系において用いるメタロセン化合物のメソ形態の量に正比例する。同時に、組成物のアイソタクチック成分の量は、メタロセン化合物のラセミ形態の量に正比例する。したがって、おおざっぱに言うと、2つの形態(rac及びmeso)の活性は非常に類似しているので、アタクチック/アイソタクチックポリマーの比は、本発明方法において用いるrac/mesoの比によって予測することができる。
【0036】
好ましくは、かかるプロセスにおいては、式(Ia)のメタロセン化合物と式(Ib)のメタロセン化合物とは、空間配置(ラセミ又はラセミ様とメソ又はメソ様)に関してのみ異なる同じ構造を有する。このように、達成することのできる更なる有利性は、得られる1−ブテンポリマー組成物の分子量分布(Mw/Mn)が、3.5より低く、好ましくは3より低く、更により好ましくは2.5より低いということである。
【0037】
上記のプロセスにおいて成分(b)又は(c)として用いられるアルモキサンは、水と、式:HAlU3−j又はHAl6−j(式中、U置換基は、同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、場合によってはケイ素又はゲルマニウム原子を有する、C〜C20アルキル、C〜C20シクロアルキル、C〜C20アリール、C〜C20アルキルアリール、又はC〜C20アリールアルキル基であり、但し少なくとも1つのUはハロゲンとは異なり、jは0〜1の範囲であり、非整数でもある)の有機アルミニウム化合物とを反応させることによって得ることができる。この反応において、Al/水のモル比は、好ましくは1:1〜100:1の範囲である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、実施例1及び2並びに比較例1のコポリマーの形態IIから形態Iへの転移対時間の定性関係の図である
【図2】種々の時間における実施例1のポリマーの定性サーモグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明方法において用いられるアルモキサンは、式:
【0040】
【化8】

【0041】
(式中、置換基Uは、同一か又は異なり、上記に定義した通りである)
のタイプの少なくとも1つの基を有する、線状、分岐、又は環式の化合物であると考えられる。
【0042】
特に、線状化合物の場合には、式:
【0043】
【化9】

【0044】
(式中、nは0又は1〜40の整数であり、置換基Uは上記に定義した通りである)
のアルモキサンを用いることができ;或いは、環式化合物の場合には、式;
【0045】
【化10】

【0046】
(式中、nは2〜40の整数であり、U置換基は上記に定義した通りである)
のアルモキサンを用いることができる。
【0047】
本発明にしたがって用いるのに好適なアルモキサンの例は、メチルアルモキサン(MAO)、テトラ(イソブチル)アルモキサン(TIBAO)、テトラ(2,4,4−トリメチルペンチル)アルモキサン(TIOAO)、テトラ(2,3−ジメチルブチル)アルモキサン(TDMBAO)、及びテトラ(2,3,3−トリメチルブチル)アルモキサン(TTMBAO)である。
【0048】
特に興味深い共触媒は、アルキル及びアリール基が特定の分岐パターンを有するWO−99/21899及びWO−01/21674に記載されているものである。
【0049】
WO−99/21899及びWO−01/21674に記載されている、水と反応させて好適なアルモキサン(b)を与えることのできるアルミニウム化合物の非限定的な例は、トリス(2,3,3−トリメチルブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルヘキシル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチルヘプチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチルペンチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチルヘキシル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−エチルヘプチル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−プロピルヘキシル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−メチルブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−メチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジエチルペンチル)アルミニウム、トリス(2−プロピル−3−メチルブチル)アルミニウム、トリス(2−イソプロピル−3−メチルブチル)アルミニウム、トリス(2−イソブチル−3−メチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3,3−トリメチルペンチル)アルミニウム、トリス(2,3,3−トリメチルヘキシル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3,3−ジメチルブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3,3−ジメチルペンチル)アルミニウム、トリス(2−イソプロピル−3,3−ジメチルブチル)アルミニウム、トリス(2−トリメチルシリルプロピル)アルミニウム、トリス(2−メチル−3−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2−エチル−3−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2,3−ジメチル−3−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2−フェニルプロピル)アルミニウム、トリス[2−(4−フルオロフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス[2−(4−クロロフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス[2−(3−イソプロピルフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス(2−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(3−メチル−2−フェニルブチル)アルミニウム、トリス(2−フェニルペンチル)アルミニウム、トリス[2−(ペンタフルオロフェニル)プロピル]アルミニウム、トリス[2,2−ジフェニルエチル]アルミニウム、及びトリス[2−フェニル−2−メチルプロピル]アルミニウム、並びにヒドロカルビル基の1つが水素原子で置き換えられている対応する化合物、及びヒドロカルビル基の1つ又は2つがイソブチル基で置き換えられているものである。
【0050】
上記のアルミニウム化合物の中で、トリメチルアルミニウム(TMA)、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)、トリス(2,4,4−トリメチルペンチル)アルミニウム(TIOA)、トリス(2,3−ジメチルブチル)アルミニウム(TDMBA)、及びトリス(2,3,3−トリメチルブチル)アルミニウム(TTMBA)が好ましい。
【0051】
アルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物の非限定的な例は、式:D(式中、Dは、ブレンステッド酸であり、プロトンを供与し、式(Ia)及び(Ib)のメタロセンの置換基Xと不可逆的に反応することができ、Eは、適合しうるアニオンであり、2つの化合物の反応から生成する活性触媒種を安定化することができ、十分に不安定でオレフィン性モノマーによって除去することができる)の化合物である。好ましくは、アニオンEは1以上のホウ素原子を含む。より好ましくは、アニオンEは、式:BAr(−)(式中、置換基Arは、同一であっても異なっていてもよく、フェニル、ペンタフルオロフェニル、又はビス(トリフルオロメチル)フェニルのようなアリール基である)のアニオンである。WO−91/02012に記載されているようなテトラキス−ペンタフルオロフェニルボレートが、特に好ましい化合物である。更に、式:BArの化合物を好都合に用いることができる。このタイプの化合物は、例えば、国際特許出願WO−92/00333に記載されている。アルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物の他の例は、式:BArP(式中、Pは、置換又は非置換ピロール基である)の化合物である。これらの化合物は、WO−01/62764に記載されている。ホウ素原子を含む化合物は、DE−A−19962814及びDE−A−19962910の記載にしたがって好都合に担持させることができる。これらのホウ素原子を含む化合物は全て、約1:1〜約10:1、好ましくは1:1〜2:1の範囲、より好ましくは約1:1の、ホウ素とメタロセンの金属との間のモル比で用いることができる。
【0052】
式:Dの化合物の非限定的な例は、
トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート;
トリメチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラ(トリル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
トリプロピルアンモニウムテトラ(ジメチルフェニル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラ(トリフルオロメチルフェニル)ボレート;
トリブチルアンモニウムテトラ(4−フルオロフェニル)ボレート;
N,N−ジメチルベンジルアンモニウム−テトラキスペンタフルオロフェニルボレート;
N,N−ジメチルヘキシルアンモニウム−テトラキスペンタフルオロフェニルボレート;
N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート;
N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボレート;
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
N,N−ジメチルベンジルアンモニウム−テトラキスペンタフルオロフェニルボレート;
N,N−ジメチルヘキシルアンモニウム−テトラキスペンタフルオロフェニルボレート;
ジ(プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
ジ(シクロヘキシル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
トリフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート;
トリエチルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート;
ジフェニルホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート;
トリ(メチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート;
トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムテトラキス(フェニル)ボレート;
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
トリフェニルカルベニウムテトラキス(フェニル)アルミネート;
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
フェロセニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)アルミネート;
トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;及び
N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート;
である。
【0053】
化合物(c)又は(d)として用いられる有機アルミニウム化合物は、上記記載の式:HAlU3−j又はHAl6−jのものである。
【0054】
本発明の重合プロセスは、液相中において、場合によっては不活性炭化水素溶媒の存在下で行うことができる。かかる炭化水素溶媒は、芳香族(例えばトルエン)か又は脂肪族(例えば、プロパン、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、シクロヘキサン、イソドデカン、及び2,2,4−トリメチルペンタン)のいずれであってもよい。好ましくは、本発明の重合プロセスは、重合媒体として1−ブテン及びプロピレンの液体混合物を用いることによって行う。
【0055】
重合温度は、好ましくは0℃〜250℃の範囲、好ましくは20℃〜150℃の範囲、特に好ましくは40℃〜90℃の間、更により好ましくは、60℃〜80℃の間である。
【0056】
好ましくは、重合プロセスは溶液中で行う。即ち、得られるポリマーは重合媒体中に完全に可溶である。
【0057】
固有粘度(IV)は、テトラヒドロナフタレン(THN)中、135℃において測定した。デカヒドロナフタレン中で測定したと示されている場合には、以下の実験式:
IV(THN)=0.87IV(DHN)
にしたがって、テトラヒドロナフタレン中で測定される固有粘度とデカヒドロナフタレン中で測定される固有粘度との間の変換を行った。
【0058】
この等式は、幾つかのポリブテン試料のTHN及びDHN中で測定したIVを分析することによって誘導した。
【0059】
ポリマーの融点(T)は、標準法にしたがって、Perkin Elmer DSC-7装置上での示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。重合から得られた秤量した試料(5〜7mg)をアルミニウムパンに密封し、10℃/分で180℃に加熱した。試料を180℃において5分間保持して結晶の全てを完全に溶融させ、次に10℃/分で20℃に冷却した。20℃において2分間放置した後、試料に10℃/分で180℃への2回目の加熱を行った。この第2の加熱操作において、ピーク温度を溶融温度(T)、ピークの面積を溶融エンタルピー(ΔH)とした。形態I及び形態IIの量を測定するために、DSCで得られた2つの形態の融点のピークの面積を測定した。
【0060】
全ての試料に関する分子量パラメーター及び分子量分布は、4つの混合ゲルカラムPLgel-20μm混合−A LS(Polymer Laboratories, Church Stretton, 英国)を取り付けたWaters 150C ALC/GPC装置(Waters, Milford, Massachusetts, 米国)を用いて測定した。カラムの寸法は300×7.8mmであった。用いた溶媒はTCBであり、流速は1.0mL/分に保持した。溶液の濃度は、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中0.1g/dLであった。0.1g/Lの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を加えて分解を防止し、注入体積は300μLであった。全ての測定は135℃において行った。1−ブテンポリマーに関しては明確に特徴づけられた狭い分子量分布の標準参照物質が入手できないので、GPC較正は複雑である。かくして、580〜13,200,000の範囲の分子量を有する12種類のポリスチレン標準試料を用いて標準較正曲線を得た。マーク・ホーウィンク式のK値は、ポリスチレン及びポリ−1−ブテンに関して、それぞれ、KPS=1.21×10−4dL/g及びKPB=1.78×10−4dL/gであると仮定した。マーク・ホーウィンク指数αは、ポリスチレンに関して0.706、ポリ−1−ブテンに関して0.725であると仮定した。この方法においては、得られる分子パラメーターはそれぞれの鎖の流体力学的体積の概算値に過ぎないが、相対的な比較を行うことは可能であった。
【0061】
13C−NMRスペクトルは、100.61MHzにおいて、フーリエ変換モードで、120℃で運転するDPX−400分光計上で得た。試料を、120℃において、1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2中に、8%wt/vの濃度で溶解した。90°のパルス、H−13Cカップリングを除去するために、15秒のパルスとCPD(waltz16)との間の遅延を用いて、それぞれのスペクトルを得た。6000Hzのスペクトルウィンドウを用いて、約3000の過渡スペクトルを32Kのデータポイントで保存した。コポリマーのアイソタクチシティーは、13C−NMRによって測定し、エチル分岐の分析メチレンのmmmmトライアドピークの相対強度として定義する。27.73ppmにおけるこのピークを内部参照として用いた。ペンタドの割り当てはMacromolecules, 1992, 25, 6814-6817にしたがって与える。
【0062】
ブテン/プロピレンコポリマーの割り当て及び組成の評価は、(1)H.N. Cheng, Journal of Polymer Science, Polymer Physics Edition, 21, 573 (1983)にしたがって行った。
【0063】
組成は、Sαα炭素を用いて以下のようにして算出した。
【0064】
PP=Sαα(47.15−46.52ppm)/Σ
BP=Sαα(43.67−43.27ppm)/Σ
BB=Sαα(40.23ppm)/Σ
(ここで、Σ=ΣSαα)
1−ブテン及びプロピレンの合計量は、モル%として、以下の関係式を用いてダイアドから算出した。
【0065】
[P]=PP+0.5BP
[X]=BB+0.5BP
50以下のC3(m%)を有するコポリマーにおける立体エラーによるシーケンスとコモノマーシーケンスとの間の重複のために、mm含量としてのB中心トライアド(PBP、BBP、及びBBB)の立体規則性は、領域A及びBを用いて評価した。ここで、
A:28.4〜27.45ppmはXBXmmトライアドを示し;
B:27.45〜26.4ppmはXBXmr+rrトライアドを示す。
(ここで、XはB又はPのいずれかであってよい)
したがって、アイソタクチックフラクションの含量は以下のようにして得る。
【0066】
XBXmm=100×A/(A+B)
0℃におけるキシレン可溶分は以下の手順にしたがって測定した。
【0067】
上記で製造した反応器組成物の2.5の試料を、予め蒸留した250mLのキシレン中に懸濁した。混合物を、少量の窒素流下で穏やかに撹拌しながら、約30分で135℃の温度に達するように加熱した。135℃の温度に達して試料の溶解が完了したら、混合物を更に30分間135℃に保持した。
【0068】
溶解工程が終了したら、溶液を、約100℃の温度に達するまで撹拌下で空気冷却した。次に、溶液を含むフラスコを、氷水浴を有するデュワー瓶内に配置して、フラスコ内部の温度が0℃に低下するようにした。不溶物の結晶化が完了するように、溶液を、撹拌下において1時間0℃に保持した。
【0069】
得られた混合物を、短脚ガラス漏斗及び迅速濾紙フィルターを通して濾過した。濾液が完全に透明でない場合には、濾過を繰り返した。濾過工程の間は、混合物を0℃に保持した。濾過が終了したら、濾液を25℃において平衡化させ、次に2つの50mLアリコートを2つのメスフラスコ中に配置した。
【0070】
2つの50mL濾液アリコートの1つを、予め較正したアルミニウムパンに移した(アルミニウムパンは、使用前に500℃のマッフル炉内に30分間保持しなければならない)。アルミニウムパンを140℃に加熱して、少量の窒素流下で溶媒を蒸発させるようにし、同時に、蒸発した溶媒蒸気を回収及び凝縮した。溶媒の蒸発が完了したら、パンを、75〜80℃で窒素流下の真空(200〜400mbar)オーブン内に配置して、内容物を一定重量(全可溶分)まで乾燥させるようにした。この手順を、濾液の50mLの第2のアリコートに関して繰り返した。
【0071】
並行して、ブランク参照を得るために、キシレンの50mLアリコートを同じ蒸発手順にかけた。
【0072】
0℃におけるo−キシレン中の可溶フラクション(全可溶分)は、次の一般式:
【0073】
【化11】

【0074】
(式中、記号は次の意味を表す:
XS%=全可溶フラクションの重量%;
r1=蒸発による第1のアリコート残渣;
r2=蒸発による第2のアリコート残渣;
=蒸発によるブランク残渣;
=出発試料の重量;
=蒸発した溶液の体積;
=蒸発したブランクの体積;
=出発溶媒の体積)
を用いて重量%として表す。
【0075】
0℃におけるo−キシレン中の不溶フラクション(全可溶分)は、次の一般式:
XI%=100−XS% (2)
(式中、記号は次の意味を表す:
XI%=不溶フラクションの重量%;
XS%=全可溶分の重量%)
を用いて重量%として表す。
【0076】
図1は、実施例1及び2並びに比較例1のコポリマーの形態IIから形態Iへの転移対時間の定性関係の図である。比較例として、特許請求したコポリマーと同じ組成を有する1−ブテンホモポリマーを用いた。プロットから、コポリマーの転移が迅速であることが明瞭に示される。分析はDSCを用いることによって行った。
【0077】
図2は、種々の時間における実施例1のポリマーの定性サーモグラムを示す。
【実施例】
【0078】
以下の実施例は、例示目的で与えるものであり、本発明を限定する意図ではない。
【0079】
実施例:
固有粘度(IV)は、テトラヒドロナフタレン(THN)中、135℃において測定した。
【0080】
テトラヒドロナフタレン中で測定した固有粘度とデカヒドロナフタレン(DHN)中で測定した固有粘度との間の変換は、次の経験式:
IV(THN)=0.87IV(DHN)
にしたがって行った。
【0081】
この等式は、幾つかのポリブテン試料のTHN及びDHN中で測定したIVを分析することによって誘導した。
【0082】
ポリマーの融点(T)は、標準法にしたがって、Perkin Elmer DSC-7装置上での示差走査熱量測定(DSC)によって測定した。重合から得られた秤量した試料(5〜7mg)をアルミニウムパンに密封し、10℃/分で180℃に加熱した。試料を180℃において5分間保持して結晶の全てを完全に溶融させ、次に10℃/分で20℃に冷却した。20℃において2分間放置した後、試料に10℃/分で180℃への2回目の加熱を行った。この第2の加熱操作において、ピーク温度を溶融温度(T)、ピークの面積を溶融エンタルピー(ΔH)とした。
【0083】
形態I及び形態IIの量を測定するために、2つの形態の融点のピークの面積を測定した。
【0084】
全ての試料に関する分子量パラメーター及び分子量分布は、4つの混合ゲルカラムPLgel-20μm混合−A LS(Polymer Laboratories, Church Stretton, 英国)を取り付けたWaters 150C ALC/GPC装置(Waters, Milford, Massachusetts, 米国)を用いて測定した。カラムの寸法は300×7.8mmであった。用いた溶媒はTCBであり、流速は1.0mL/分に保持した。溶液の濃度は、1,2,4−トリクロロベンゼン(TCB)中0.1g/dLであった。0.1g/Lの2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)を加えて分解を防止し、注入体積は300μLであった。全ての測定は135℃において行った。1−ブテンポリマーに関しては明確に特徴づけられた狭い分子量分布の標準参照物質が入手できないので、GPC較正は複雑である。かくして、580〜13,200,000の範囲の分子量を有する12種類のポリスチレン標準試料を用いて標準較正曲線を得た。マーク・ホーウィンク式のK値は、ポリスチレン及びポリ−1−ブテンに関して、それぞれ、KPS=1.21×10−4dL/g及びKPB=1.78×10−4dL/gであると仮定した。マーク・ホーウィンク指数αは、ポリスチレンに関して0.706、ポリ−1−ブテンに関して0.725であると仮定した。この方法においては、得られる分子パラメーターはそれぞれの鎖の流体力学的体積の概算値に過ぎないが、相対的な比較を行うことは可能であった。
【0085】
13C−NMRスペクトルは、120℃においてフーリエ変換モードで、100.61MHzで運転するDPX−400分光計上で得た。試料を、120℃において、1,1,2,2−テトラクロロエタン−d2中に、8%wt/vの濃度で溶解した。90°のパルス、H−13Cカップリングを除去するために、15秒のパルスとCPD(waltz16)との間の遅延を用いて、それぞれのスペクトルを得た。6000Hzのスペクトルウィンドウを用いて、約3000の過渡スペクトルを32Kのデータポイントで保存した。コポリマーのアイソタクチシティーは、13C−NMRによって測定し、エチル分岐の分析メチレンのmmmmトライアドピークの相対強度として定義する。27.73ppmにおけるこのピークを内部参照として用いた。ペンタドの割り当てはMacromolecules, 1992, 25, 6814-6817にしたがって与える。
【0086】
ブテン/プロピレンコポリマーの割り当て及び組成の評価は、(1)H.N. Cheng, Journal of Polymer Science, Polymer Physics Edition, 21, 573 (1983)にしたがって行った。
【0087】
組成は、Sαα炭素を用いて以下のようにして算出した。
【0088】
PP=Sαα(47.15−46.52ppm)/Σ
BP=Sαα(43.67−43.27ppm)/Σ
BB=Sαα(40.23ppm)/Σ
(ここで、Σ=ΣSαα)
1−ブテン及びプロピレンの合計量は、モル%として、以下の関係式を用いてダイアドから算出した。
【0089】
[P]=PP+0.5BP
[B]=BB+0.5BP
50以下のC3(m%)を有するコポリマーにおける立体エラーによるシーケンスとコモノマーシーケンスとの間の重複のために(図1)、mm含量としてのB中心トライアド(PBP、BBP、及びBBB)の立体規則性は、領域A及びBを用いて評価した。ここで、
A:28.4〜27.45ppmはXBXmmトライアドを示し;
B:27.45〜26.4ppmはXBXmr+rrトライアドを示す。
(ここで、XはB又はPのいずれかであってよい)
したがって、アイソタクチックフラクションの含量は以下のようにして得る。
【0090】
XBXmm=100×A/(A+B)
赤外結晶化度:
赤外結晶化度は、ポリマーの約1mmの薄膜の赤外吸収スペクトルから、式:
【0091】
【化12】

【0092】
において1221cm−1及び1151cm−1における吸光度Aを用いることによって求めた。
【0093】
この等式は、Nishioka及びYanagisawaによるChem. of High Polymers (日本)19, 667 (1962)に記載されている。
【0094】
0℃におけるキシレン可溶分:
上記で製造した反応器組成物の2.5の試料を、予め蒸留した250mLのキシレン中に懸濁した。混合物を、少量の窒素流下で穏やかに撹拌しながら、約30分で135℃の温度に達するように加熱した。135℃の温度に達して試料の溶解が完了したら、混合物を更に30分間135℃に保持した。
【0095】
溶解工程が終了したら、溶液を、約100℃の温度に達するまで撹拌下で空気冷却した。次に、溶液を含むフラスコを、氷水浴を有するデュワー瓶内に配置して、フラスコ内部の温度が0℃に低下するようにした。不溶物の結晶化が完了するように、溶液を、撹拌下において1時間0℃に保持した。
【0096】
得られた混合物を、短脚ガラス漏斗及び迅速濾紙フィルターを通して濾過した。濾液が完全に透明でない場合には、濾過を繰り返した。濾過工程の間は、混合物を0℃に保持した。濾過が終了したら、濾液を25℃において平衡化させ、次に2つの50mLアリコートを2つのメスフラスコ中に配置した。
【0097】
2つの50mL濾液アリコートの1つを、予め較正したアルミニウムパンに移した(アルミニウムパンは、使用前に500℃のマッフル炉内に30分間保持しなければならない)。アルミニウムパンを140℃に加熱して、少量の窒素流下で溶媒を蒸発させるようにし、同時に、蒸発した溶媒蒸気を回収及び凝縮した。溶媒の蒸発が完了したら、パンを、75〜80℃で窒素流下の真空(200〜400mbar)オーブン内に配置して、内容物を一定重量(全可溶分)まで乾燥させるようにした。この手順を、濾液の50mLの第2のアリコートに関して繰り返した。
【0098】
並行して、ブランク参照を得るために、キシレンの50mLアリコートを同じ蒸発手順にかけた。
【0099】
0℃におけるo−キシレン中の可溶フラクション(全可溶分)は、次の一般式:
【0100】
【化13】

【0101】
(式中、記号は次の意味を表す:
XS%=全可溶フラクションの重量%;
r1=蒸発による第1のアリコート残渣;
r2=蒸発による第2のアリコート残渣;
=蒸発によるブランク残渣;
=出発試料の重量;
=蒸発した溶液の体積;
=蒸発したブランクの体積;
=出発溶媒の体積)
を用いて重量%として表す。
【0102】
0℃におけるo−キシレン中の不溶フラクション(全可溶分)は、次の一般式:
XI%=100−XS% (2)
(式中、記号は次の意味を表す:
XI%=不溶フラクションの重量%;
XS%=全可溶分の重量%)
を用いて重量%として表す。
【0103】
成分(a)の製造:基本手順:
WO−01/44318にしたがって、meso−ジメチルシランジイルビス−6−[2,5−ジメチル−3−(2’−メチルフェニル)シクロペンタジエニル−[1,2−b]−チオフェン]ジルコニウムジクロリド(A−1)を調製した。WO−01/44318にしたがって、rac−ジメチルシランジイルビス−6−[2,5−ジメチル−3−(2’−メチルフェニル)シクロペンタジエニル−[1,2−b]−チオフェン]ジルコニウムジクロリド(A−2)を調製した。
【0104】
触媒系:
MAO/TIBAのモル比が2:1に達するように、イソドデカン中のTIBAの101g/Lの溶液をメチルアルモキサン(MAO)の30%wt/wtトルエン溶液と混合した。次に、この溶液をA−1およびA−2の混合物(60/40)に加えた。得られる触媒溶液は、3.21重量%のA−1+A−2および24.7重量%のAlを含む。
【0105】
1−ブテンの重合:
液体ブテン−1およびプロピレンが液体媒体を構成する直列に接続した2つの撹拌反応器を含むパイロットプラントにおいて重合を行った。表1に報告するデータにしたがって1−ブテンおよびプロピレンを供給しながら、表1に報告する触媒系を8〜10g/時の供給速度で反応器中に注入して、65℃の重合温度において重合を連続的に行った。2つの反応器の圧力は24bar−gにおいて一定に保持した。2つの実験を行った。1−ブテンポリマーを溶液から溶融体として回収し、ペレットに切断した。重合条件を表1に報告する。
【0106】
【表1】

【0107】
第1又は第2の実験から得られるコポリマーの試料を回収し、約10日のアニーリングの後に、ISO527−1およびISO178にしたがって分析した。データを表2に報告する。
【0108】
【表2】

【0109】
実施例1〜2のポリマーの圧縮成形プラークを得た。形成された形態Iの割合を明らかにするために、これらのプラークの試料に関するDSC分析を種々の時間において行った。結果を、EP−04103525.4に記載されている組成物6の試料に関して行った同じ分析の結果と比較して表5に報告する。これらを図1にプロットした。
【0110】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
4〜10重量%のプロピレン誘導単位の含量を有し、結晶質ポリマーの少なくとも50%が、室温において最初の溶融の5時間後に熱力学的に安定な三方晶形態Iで存在する(DSC分析によって検出)1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物であって、
該組成物が、
(i)13C−NMRによって測定して30%〜80%の範囲のアイソタクチックペンタド(mmmm);
(ii)70℃より高い融点(Tm(II));
(iii)4以下の分子量分布Mw/Mn;及び
(iv)75%より高い0℃におけるキシレン中の溶解度(以下に記載の手順による);
を有し、
該組成物が、
(a)少なくとも1種類の、メソ又はメソ様形態の式(Ia)のメタロセン化合物:
【化1】

(式中、
Mは、元素周期律表の第3、4、5、6族、又はランタニド族若しくはアクチニド族に属するものから選択される遷移金属の原子であり;
pは、0〜3の整数であり、金属Mの形式酸化数マイナス2に等しく;
Xは、同一か又は異なり、水素原子、ハロゲン原子、或いは、R、OR、OSOCF、OCOR、SR、NR、又はPR基であり、ここで、Rは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する、線状又は分岐で環式又は非環式の、C〜C40アルキル、C〜C40アルケニル、C〜C40アルキニル、C〜C40アリール、C〜C40アルキルアリール、又はC〜C40アリールアルキル基であり;或いは2つのXは、場合によっては置換又は非置換のブタジエニル基或いはOR’O基を形成してもよく、ここで、R’は、C〜C40アルキリデン、C〜C40アリーリデン、C〜C40アルキルアリーリデン、及びC〜C40アリールアルキリデン基から選択される2価の基であり;
Lは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有する2価のC〜C40炭化水素基であるか、或いは5個以下のケイ素原子を有する2価のシリレン基であり;
及びRは、互いに同一か又は異なり、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C40炭化水素基であり;
Tは、互いに同一か又は異なり、式(IIa)、(IIb)、又は(IIc):
【化2】

(式中、記号*で示される原子は、式(Ia)の化合物中の同じ記号で示される原子と結合し;少なくとも1つのT基は式(IIb)又は(IIc)を有し;
は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C40炭化水素基であり;
及びRは、互いに同一か又は異なり、水素原子、或いは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C40炭化水素基であり;
は、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C40炭化水素基であり;
及びRは、互いに同一か又は異なり、水素原子、或いは、場合によっては元素周期律表の第13〜17族に属するヘテロ原子を有するC〜C40炭化水素基である)
の部分である);
(b)少なくとも1種類の、ラセミ(rac)又はラセミ様形態の式(Ib)のメタロセン化合物:
【化3】

(式中、R、R、T、L、M、X、及びpは上記に記載した通りであり;記号*で示される原子は、式(IIa)、(IIb)、又は(IIc)の部分中の同じ記号で示される原子と結合している);及び
(c)アルモキサン、又はアルキルメタロセンカチオンを形成することのできる化合物;
を接触させることによって得られ、ラセミ又はラセミ様形態とメソ形態又はメソ様形態との間の比が20:80〜80:20の範囲である触媒系の存在下において、1−ブテン及びプロピレンを重合することによって得られる、上記組成物。
【請求項2】
アイソタクチックペンタド(mmmm)が45%〜75%の範囲である、請求項1に記載の1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物。
【請求項3】
結晶質ポリマーの少なくとも80%が、室温において16時間後に熱力学的に安定な三方晶形態Iで存在する、請求項1又は2に記載の1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物。
【請求項4】
135℃においてテトラヒドロナフタレン(THN)中で測定した成分(b)の固有粘度(IV)が0.5dL/g〜4.0dL/gの範囲である、請求項1〜3のいずれかに記載の1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物。
【請求項5】
0℃におけるキシレン中の溶解度が90.0%より高い、請求項1〜4のいずれかに記載の1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物。
【請求項6】
分子量分布(Mw/Mn)が3より低い、請求項1〜5のいずれかに記載の1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物。
【請求項7】
ショアA(ISO868にしたがって測定)が50〜100の範囲である、請求項1〜6のいずれかに記載の1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物。
【請求項8】
溶液中で行う重合プロセスによって得られる、請求項1〜7のいずれかに記載の1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物。
【請求項9】
式(Ia)及び(Ib)の化合物のラセミ又はラセミ様形態とメソ形態又はメソ様形態との間の比が30:70〜70:30の範囲である方法によって得られる、請求項1〜8のいずれかに記載の1−ブテン/プロピレンコポリマー組成物。
【請求項10】
式(Ia)及び(Ib)の化合物が、それぞれ次式(Va)又は(Vb):
【化4】

(式中、M、X、p、L、R、R、R、及びRは、請求項9に記載した意味を有する)
を有する、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−501702(P2010−501702A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526051(P2009−526051)
【出願日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058781
【国際公開番号】WO2008/025721
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(500289758)バーゼル・ポリオレフィン・ゲーエムベーハー (118)
【Fターム(参考)】