説明

1,3−プロパン−1−アリールジオールの新規環状リン酸ジエステルおよびそのプロドラッグへの使用

式(I)の化合物、
【化1】


〔式中、VおよびLは相互にトランスであり;Vは炭素環式アリール、置換炭素環式アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールよりなる群から選択され;Lは、ハロゲン、スルホン酸アルキル、1個から2個の置換基で任意に置換されてもよいアリールオキシ、含窒素ヘテロアリール、およびN-ヒドロキシ化窒素を含むヘテロアリールよりなる群から選択される脱離基を表す。〕
およびその塩、その調製および合成用中間体、およびプロドラッグの合成におけるそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は1-アリール-1,3-プロパンジオールの新規環状リン酸ジエステル、その調製および合成用中間体、並びにプロドラッグの合成におけるその使用に向けられたものである。より具体的には、本発明は、任意に置換基を有する、1-アリール-1,3-プロパンジオールの環状リン酸ジエステル(立体化学がトランス)、およびシス配位のリン酸エステルプロドラッグを合成するためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
以下に記載する本発明の背景技術は発明の理解を助けるためのものであり、発明の先行技術とは認められないし、またそれを記載するものではない。すべての刊行物はその全体を参考のために援用する。
【0003】
遊離のリン、リン酸およびその塩は生理的pHにおいて強く荷電していて、そのため経口での生物学的利用率や細胞浸透は低く、組織分布は限られている(例えば、CNS)。加えて、これらの酸はまた薬物としての使用を妨げる他の性質を併せ持ち、これには、毒性(例えば、腎臓、胃腸管等)の他、急速な腎クリアランスのために血漿中の半減期が短い等の性質が含まれる〔例えば、Antimicrob Agents Chemother. May; 42(5): 1146-50 (1998)〕。リン酸エステルはホスファターゼ(例えば、アルカリホスファターゼ、ヌクレオチダーゼ)の作用により速やかに加水分解されるので、多くの組織中と同様に血漿中でも安定ではないという追加的な制限がある。従って、リン酸エステルは特に水難溶性の化合物に対して高い水溶性を与え、非経口的な薬物輸送を可能とするのでプロドラッグの戦略でしばしば用いられる。
【0004】
肝臓癌は現在の治療法では処置が難しい。一般に、肝臓の腫瘍は放射線療法に対して抵抗し、化学療法に対しても応答が乏しく、細胞が極めて不均一であるという特徴がある。
現在の治療法では肝外の副作用で用量が制限されまたは標的組織への化学療法剤の輸送が不十分なために、肝炎および肝臓癌は依然として処置が難しい。
【0005】
多くのヌクレオシドは腫瘍退縮化剤または抗ウィルス剤として用いられる。これら化合物はしばしば低活性と報告されるが、これは、ウィルスキナーゼに対応するヌクレオシドの基質活性が乏しいか、ヌクレオシドをモノホスフェートに変換するのに必要なウィルスヌクレオシドキナーゼが下方制御を受けているため、ウィルス抵抗性によるかのいずれかである。しかしながら、モノホスフェートは強く荷電しており、血漿中でモノホスフェートが不安定な場合には、経口投与によりウィルス感染した細胞に輸送するのが難しい。加えて、これら化合物は多くの場合高い腎クリアランスのためにしばしばその半減期が短い。ある場合には、高い腎クリアランスが腎毒性を与え、または腎機能がしばしば危うくなっている糖尿病のような疾患においては主たる使用制限となり得る。
上記手段の制限には、薬物装填容量、製造および抱合体の特徴付けの複雑さ、受容体の下方制御等が含まれる。そこで、リン含有薬物のプロドラッグが依然として必要である。
【発明の開示】
【0006】
発明の要約
本発明は1-アリール-1,3-プロパンジオールの新規な環状リン酸ジエステル、その調製および合成用中間体、並びにプロドラッグの合成におけるその使用に向けられたものである。
【化1】

【0007】
ここで、式中、VおよびLはお互いにトランスであり;
Vは炭素環状アリール、置換炭素環状アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールよりなる群から選択され;
Lは脱離基であってハロゲン、アリールオキシアルキルスルホン酸エステル、置換アリールオキシ基、ハロアルコキシ、パーハロアルコキシ、またはN−ヒドロキシ−含窒素ヘテロアリール基よりなる群から選択される。
式Iの化合物はラセミ体、C′炭素がS配位、またはC′炭素がR配位のいずれでもよい。
【0008】
本発明は、式Aの1-(V)-1,3-プロパンジオールを用いた式Iの化合物の立体選択的な合成法をいくつか提供する。
【化2】

【0009】
本発明はまた、式IIのシス-リン酸エステルの立体選択的合成のため、これらのトランス-リン酸エステル化試薬を使用する方法を提供する。
【化3】

〔式中、MはPO32-、P2O63-、またはP3O94-に結合する群から選択され、生物学的に活性な薬物であって、式IIのリンに対して酸素、硫黄または窒素原子を介して結合する。〕
本発明は、さらにその薬学的に許容されるプロドラッグおよび塩を提供する。
【0010】
これら化合物は不斉中心を有するので、本発明はそのラセミ体およびジアステレオマー混合物のみならず、個々のジアステレオマーにもまた向けられる。本発明はまた式Iの化合物の薬学的に許容される塩および/または有用な塩を含み、その酸付加塩を含む。
【0011】
定義
本発明に従い、およびここで記載されているように、他に明示的に記載のない限り、以下の術語は以下の意味で定義される。
【0012】
「アリール」の語は、5個から14個の環構成原子を保有して共有π電子系を有する環を少なくとも一つ含み、炭素環アリール、ヘテロシクロアリール、およびビアリール基を包含して、いずれも任意に置換基を有することができる。適切なアリールとしてはフェニルおよびフラン-2,5-ジイルが含まれる。
炭素環アリール基とは、芳香環の環原子が炭素原子である基をいう。炭素環アリール基には、単環性炭素環アリール基および多環性若しくは、例えば任意に置換されたナフチル基のような縮合化合物が含まれる。
【0013】
ヘテロシクロアリールまたはヘテロアリール基とは、芳香環の環構成原子として1個から4個のヘテロ原子を有し、他の環構成原子が炭素原子である基をいう。適切なヘテロ原子としては、酸素、硫黄、窒素およびセレンが含まれる。適切なヘテロアリール基としては、フラニル、チエニル、ピリジル、ピロリル、N-低級アルキルピロリル、ピリジル−N−オキシド、ピリミジル、ピラジニル、イミダゾリル、等が含まれ、いずれも任意に置換基を有することができる。
「含窒素ヘテロアリール」の語は、環構成原子として1個から3個の窒素原子を有し炭素原子を介して結合するヘテロアリール基をいう。
【0014】
「ビアリール」の語は、ひとつより多い芳香環を含むアリール基をいい、縮合環系、および他のアリール基で置換されたアリール基を含む。これらは任意で置換基を有することができる。適切なビアリール基にはナフチルおよびビフェニールが含まれる。
【0015】
「任意で置換された」または「置換された」の語は、1個から4個の置換基で置換された基を含み、その置換基は、低級アルキル、低級アリール、低級アラルキル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、低級アリールオキシ、パーハロアルコキシ、アラルコキシ、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアラルコキシ、アジド、アミノ、グアニジノ、アミジノ、ハロ、低級アルキルチオ、オキソ、アシルアルキル、カルボキシエステル、カルボキシ、カルボキシアミド、ニトロ、アシルオキシ、アミノアルキル、アルキルアミノアリール、アルキルアリール、アルキルアミノアルキル、アルコキシアリール、アリールアミノ、アラルキルアミノ、ホスホノ、スルホニル、カルボキサミドアルキルアリール、カルボキサミドアリール、ヒドロキシアルキル、ハロアルキル、アルキルアミノアルキルカルボキシ、アミノカルボキサミドアルキル、シアノ、低級アルコキシアルキル、低級パーハロアルキルおよびアリールアルキルオキシアルキルから独立して選択される。「置換アリール」および「置換ヘテロアリール」は、好ましくは、1個から4個の置換基を有するアリール基およびヘテロアリール基をいう。これらの置換基は、好ましくは、低級アルキル、低級アルコキシ、低級パーハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、およびアミノよりなる群から選択される。
【0016】
「脱離基」の語は、反応において切断されたときに、結合に供されるリン原子を含まない、基質分子の一部をいう。
「電子吸引性基」の語は、当該技術分野において、置換基がその隣接基より原子価電子を吸引する傾向、即ち、該置換基がその隣接基に対して電気的に陰性であることを意味し、またそのように認識される。電子吸引力の程度は、Hammetのσ定数により定量的に与えられる。この有名な定数は多数の参考文献に記載されているが、例えば、J. March, Advanced Organic Chemistry, McGraw Hill Book Company, New York, (1977 edition) pp. 251-259.がある。Hammet定数の値は一般に、電子供与性基の場合は負(NH2の場合、σ=-0.66)であり、電子吸引性基の場合は正(ニトロ基の場合、σ=0.78)である。ここでσはパラ位の置換を示す。電子吸引性基の例としては、ニトロ、ケトン、アルデヒド、スルホニル、トリフルオロメチル、-CN、塩素、フッ素、等が含まれる。
【0017】
「アラルキル」の語は、アリール基が置換したアルキレン基をいう。適切なアラルキル基としては、ベンジル、ピコリル、等が含まれ、任意で置換されることができる。「ヘテロアリールアルキル」はヘテロアリール基が置換したアルキレン基をいう。
「アルキルアリール」の語は、アルキル基の置換したアリール基をいう。「低級アルキルアリール」はそのような置換基でアルキル基が低級アルキルであるものをいう。
「低級」の語は、それぞれ有機ラジカルまたは化合物との関連において10個以下、好ましくは6個以下、そして有利には1個から4個の炭素原子を有するものと定義され、これらは直鎖状、分枝鎖状または環状となることができる。
【0018】
「アルキルアミノ」の語は−NRR′をいい、RおよびR′は水素またはアルキルより独立して選択される。
「アリールアミノ」(a)および「アラルキルアミノ」(b)の語は−NRR′をいい、それぞれ、(a)Rはアリール、R′は水素、アルキル、アラルキルまたはアリール;(b)Rはアラルキル、R′は水素、アラルキル、アリールまたはアルキルである。
「アシル」の語は、−C(O)Rをいい、Rはアルキルまたはアリールである。
「カルボキシエステル」の語は、−C(O)ORをいい、Rはアルキル、アリールまたはアラルキルであっていずれも任意で置換されることができる。
「カルボキシル」の語は、−C(O)OHをいう。
【0019】
「オキソ」の語は、アルキル基における=Oをいう。
「アミノ」の語は、−NRR′をいい、RおよびR′は、水素、アルキル、アリール、アラルキル、およびアリサイクリックから独立して選択され、H以外は任意で置換されていてもよい;RおよびR′はまた、環状構造を形成することもできる。
「カルボキシアミド」の語は、−C(O)NRをいい、それぞれのRは独立して水素またはアルキル基である。
「ハロゲン」または「ハロ」の語は、−F、−Cl、−Brおよび−Iをいう。
「スルホニル」の語は、R−SOをいい、Rはアルキル、アリール、アラルキル、およびアリサイクリックから選択される。
【0020】
「スルホネート」の語は、R−SO−O−をいい、Rはアルキル、アリール、アラルキル、およびアリサイクリックから選択される。
「スルホン酸」の語は、R−SO,−OHをいい、Rはアルキル、アリール、アラルキル、およびアリサイクリックから選択される。
「アルキルアミノアルキルカルボキシ」の語は、原子団のアルキル−NR−alk−C(O)−O−をいい、ここで「alk」はアルキレン基、RはHまたは低級アルキルである。
「アルキル」の語は、直鎖、分枝鎖および環状基を含む飽和脂肪族基をいう。アルキル基は任意で置換されていても良い。適切なアルキル基としては、メチル、イソプロピル、シクロプロピルが包含される。
【0021】
「環状アルキル」または「シクロアルキル」の語は、3原子から10原子、好ましくは3原子から6原子の環状アルキル基をいう。適切な環状基として、ノルボルニルおよびシクロプロピルも含まれる。これらの基は置換されていてもよい。
「ヘテロシクロ」および「ヘテロシクロアルキル」の語は、少なくとも一つのヘテロ原子を含み、3原子から10原子、好ましくは3原子から6原子の環状基をいう。そのようなヘテロ原子としては、酸素、硫黄、および窒素が含まれる。ヘテロシクロ基は環状の窒素または炭素原子を介して結合することができる。ヘテロシクロアルキル基には、不飽和環状、縮合環状およびスピロ環状基が含まれる。適切なヘテロシクロ基には、ピロリジニル、モルホリノ、モルホリノエチル、およびピリジルが含まれる。
【0022】
「アルケニル」の語は、少なくとも一つの炭素-炭素二重結合を有し、直鎖、分枝鎖および環状基を含む不飽和基をいう。アルケニル基は任意で置換されていてもよい。適切なアルケニル基には、アリル基が含まれる。「1-アルケニル」の語は、二重結合が第一炭素と第二炭素の間にあるアルケニル基をいう。1-アルケニル基が他の基と結合する場合、例えば、環状ホスフェートに結合するV置換基の場合、それは第一炭素で結合している。
「アルキニル」の語は、少なくとも一つの炭素-炭素三重結合を有し、直鎖、分枝鎖および環状基を含む不飽和基をいう。アルキニル基は任意で置換されていてもよい。適切なアルキニル基には、エチニル基が含まれる。「1-アルキニル」の語は、三重結合が第一炭素と第二炭素の間にあるアルケニル基をいう。1-アルキニル基が他の基と結合する場合、例えば、環状ホスフェートに結合するV置換基の場合、それは第一炭素で結合している。
【0023】
「アルキレン」の語は、直鎖、分枝鎖または環状の二価の飽和脂肪族基をいう
「アシルオキシ」の語は、エステル基の-O-C(O)Rをいい、RはH、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、またはアラルキルをいう。
「アミノアルキル」の語は、原子団のNR-alk-をいい、「alk」はアルキレン基、Rはアルキレン基、RはH、アルキル、アリール、およびアラルキルより選択される。
「アルキルアミノアルキル」の語は、原子団のアルキル-NR-alk-をいい、「alk」は独立して選択されたアルキレン基、RはHまたは低級アルキルである。「低級アルキルアミノアルキル」の語は、各アルキレン基が低級アルキレン基である基をいう。
「アリールアミノアルキル」の語は、原子団のアリール-NR-alk-をいい、「alk」はアルキレン基、RはH、アルキル、アリールまたはアラルキルである。「低級アリールアミノアルキル」の場合、該アルキレン基は低級アルキレン基である。
【0024】
「アルキルアミノアリール」の語は、原子団のアルキル-NR-アリール-をいい、ここで「アリール」は2価の基、RはH、アルキル、およびアラルキルである。「低級アルキルアミノアリール」の場合、該アルキレン基は低級アルキルである。
「アルコキシアリール」の語は、アルキルオキシ基が置換したアリール基をいう。「低級アルコキシアリール」の場合、該アルキル基は低級アルキル基である。
「アリールオキシアルキル」の語は、アリールオキシ基が置換したアルキル基をいう。
「アラルキルオキシアルキル」の語は、原子団のアリール-alk-O-alk-をいい、「alk」はアルキレン基である。「低級アラルキルオキシアルキル」はそのような原子団であってアルキレン基が低級アルキレンであるものをいう。
「アリールオキシ」の語は、原子団のアリール-O-をいう。
【0025】
「アルコキシ」または「アルキルオキシ」の語は、原子団のアルキル-O-をいう。
「アルコキシアルキル」または「アルキルオキシアルキル」の語は、原子団のアルキル-O-alk-をいい、「alk」はアルキレン基である。「低級アルコキシアルキル」の場合、各アルキルおよびアルキレンは低級アルキレンである。
「アルキルチオ」の語は、原子団のアルキル-S-をいう。
「アルキルチオアルキル」の語は、原子団のアルキル-S-alkをいい、「alk」はアルキレン基である。「低級アルキルチオアルキル」の場合、各アルキルおよびアルキレンは低級アルキレンである。
「アルコキシカルボニルオキシ」の語は、原子団のアルキル-O-C(O)-O-をいう。
【0026】
「アリールオキシカルボニルオキシ」の語は、原子団のアリール-O-C(O)-O-をいう。
「アルキルチオカルボニルオキシ」の語は、原子団のアルキル-S-C(O)-O-をいう。
「アミド」または「カルボキサミド」の語は、NR-C(O)-およびRC(O)−NR-をいい、ここでRおよびRはH、アルキル、アリール、およびアラルキルを含む。この語はウレアのNR-C(O)-NR-を含まない。
「カルボキサミドアルキルアリール」および「カルボキサミドアリール」の語は、それぞれアリール-alk-NR-C(O)およびアリール-NR-C(O)-alk-をいい、ここで「alk」はアルキレン基、RおよびRはH、アルキル、アリール、およびアラルキルを含む。
【0027】
「ヒドロキシアルキル」の語は、一つのOHで置換されたアルキル基をいう。
「ハロアルキル」の語は、一つのハロで置換されたアルキル基をいう。
「シアノ」の語は、-C≡Nをいう。
「ニトロ」の語は、-NOをいう。
「アシルアルキル」の語は、アルキル-C(O)-alk-をいい、ここで「alk」はアルキレンである。
「アミノカルボキサミドアルキル」の語は、原子団のNR-C(O)-N(R)-alk-をいい、Rはアルキル基またはH、「alk」はアルキレンである。「低級アミノカルボキサミドアルキル」は、そのような原子団で「alk」が低級アルキレンであるものをいう。
【0028】
「ヘテロアリールアルキル」の語は、ヘテロアリール基が置換したアルキル基をいう。
「パーハロ」の語は、すべてのC-H結合がC-ハロ結合で置き換えられた脂肪族基またはアリール基をいう。適切なパーハロアルキル基としては、-CFおよび-CFClが含まれる。
「グアニジノ」の語は、-N=C(NR)と同様、-NR-C(=NR)-NRをいい、各R基は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリールよりなる群から独立して選択され、-H以外は任意で置換されていてもよい。
「アミジノ」の語は、-C(=NR)-NRをいい、各R基は、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、およびアリールよりなる群から独立して選択され、-H以外は任意で置換されていてもよい。
【0029】
「4-ピリジル」、「ピリド-4-イル」および「4-ピリジニル」は次の基をいう。
【化4】

「N-ヒドロキシ含窒素ヘテロアリール」の語は、ヒドロキシ基が窒素原子に結合した含窒素ヘテロアリールをいう。例としては、N-ヒドロキシベンゾトリアゾールである。
「含窒素ヘテロアリール溶媒」の語は、一個から三個の窒素原子を環構成原子として含むヘテロアリールであって、4<pKa<6であり、非含窒素ヘテロアリール溶媒とのすべての混合物をいう。
【0030】
「薬学的に許容される塩」の語は、本発明化合物と(有機若しくは無機の酸若しくは塩基)との組み合わせにより得られる式Iの化合物およびそのプロドラッグの塩を包含する。適切な酸としては、酢酸、アジピン酸、ベンゼンスルホン酸、(+)-7,7-ジメチル-2-オキソビシクロ[2.2.1]ヘプタン-1-メタンスルホン酸、クエン酸、1,2-エタンジスルホン酸、ドデシルスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、馬尿酸、ヘミエタノール酸HCl、HBr、HCl、HI、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、メチルブロミド酸(methylbromide acid)、メチル硫酸、2-ナフタレンスルホン酸、硝酸、オレイン酸、4,4'-メチレンビス[3-ヒドロキシ-2-ナフタレンカルボン酸]、リン酸、ポリガラクツロン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、スルホサリチル酸、タンニン酸、酒石酸、テレフタル酸、p-トルエンスルホン酸が含まれる。
【0031】
ここで用いられる「プロドラッグ」の語は、生体系に投与したとき、自発的な化学反応、酵素触媒による化学反応、および/または代謝的な化学反応、またはこれらの組み合わせにより、生物学的に活性な化合物を与えるすべての化合物をいう。標準的なプロドラッグは、薬物に係る官能基、例えば、HO-、HS-、HOOC-、RN-等に結合する置換基で、生体内で切断されるものを使用して形成される。標準的なプロドラッグとしては、アルキル、アリール、アラルキル、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニルオキシアルキル等のカルボキシレートエステルの他、ヒドロキシ、チオール、アミンに対してアシル基、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、リン酸または硫酸が結合したエステルが含まれるが、これらに限定されない。ここで示された原子団は例示であって、網羅的ではなく、当業者は既に知られたその他の種類のプロドラッグを調製することができる。そのような式Iの化合物のプロドラッグは本発明の範囲内に含まれる。プロドラッグはある種の価額返還を介して生物学的に活性な化合物またはそのような化合物の前駆体を生じさせなければならない。ある場合にはプロドラッグ自体が生物学的に活性な場合があり、この場合、通常は親化合物ほど活性ではなく、経口の生物学的利用率や、薬力学的半減期等を改善して薬効の改良に寄与する。この生物学的に活性な化合物としては、例えば、抗ガン剤、抗ウィルス剤、抗菌剤等が含まれる。
【0032】
「リン酸エステル」の語は、ホスフェート、チオホスフェートおよびホスホラミデートをいい、これらはそれぞれO、S、およびNを介してP(O)(OR)(OR)(環状構造を含む)のリン原子と結合する化合物である。
「環状ホスフェート」の語は、P(O)(OR)(OR)が下式で示されるホスフェートジエステルをいう。
【化5】

(式中、Vと結合する炭素原子はC-H結合を持たなければならない。)
【0033】
「ホスフェート」の語は、C、O、S、またはNを介してPO2−と結合する化合物をいう。
「ホスフェート」の語は、-O-POをいう。
「チオホスフェート」の語は、-S-POをいう。
「ホスホラミデート」の語は、-N-POをいう。
「炭素環糖」の語は、糖環において通常見られる酸素原子の代わりに炭素原子を含む糖アナログをいう。例えば、リボフラノシルやアラビノフラノシル糖のような、環上の酸素が炭素で置き換えられた5員環が含まれる。
「非環式糖」の語は、環構造、例えば、リボフラノシル環を有しない糖をいう。リボフラノシル環に代わるHO-CH2-CH2-O-CH2-がその例である。
【0034】
「L-ヌクレオシド」の語は、天然のβ-D-ヌクレオシドアナログのエナンチオマーをいう。
「アラビノフラノシルヌクレオシド」の語は、アラビノフラノシル糖を含むヌクレオシドアナログ、即ち、リボフラノシル糖の2'-ヒドロキシ基が糖環の反対面にあるものをいう。
「ジオキソラン糖」の語は、リボフラノシル糖の3'-炭素の代わりに酸素原子を含む糖をいう。
「フッ素化糖」の語は、1-3炭素-フッ素原子を有する糖をいう。
「ヌクレオシド」の語は、糖に結合するプリン若しくはピリミジン塩基またはそのアナログであって、ヘテロシクロおよびその炭素環式アナログをいう。
「VおよびLは相互にトランス」、「トランス配位」、「トランス-リン酸エステル」、「トランス-リン酸化試薬」および「トランス-異性体」の語は、式I.AおよびI.Bをいう。
【化6】

【0035】
「VおよびLは相互にシス」、「シス-配位」、「シス-プロドラッグ」および「シス-異性体」の語は、式II.AおよびII.Bをいう。
【化7】

【0036】
「S-配位」または「S-異性体」の語は、炭素C'の絶対配位がSをいう。
【化8】

【0037】
「R-配位」または「R-異性体」の語は、炭素C'の絶対配位がRをいう。
【化9】

【0038】
「親薬物」の語は、リン酸エステルに対するMHをいい、MはP(O)(OR)(OR)に対して酸素、硫黄または窒素を介して結合する。例えば、AZTはMHの形の親薬物と考えられる。体内でAZTは最初リン酸化されてAZT-PO2−となり、これがさらにリン酸化されて生体内で活性なAZT-トリホスフェートとなる。親薬物のMHはMがN、SまたはOを介して結合するときにのみ適用できる。
「生物学的に活性な薬物または薬剤」の語は、生物学的な効果を与える化学的存在物をいう。本発明において生物学的に活性な薬剤とは、M-PO2−、M-P3−またはM-P4−をいい、Mは親薬物または代謝物のMと同じである。
【0039】
「エナンチオマー過剰%(%ee)」の語は、光学純度をいい、下式により得られる;
【数1】

ここで、[R]はR異性体の量、[S]はS異性体の量である。この式は、Rが主体である場合の%eeを与える。
【0040】
「光学純度」の語は、単一エナンチオマーよりなる化学的存在物をいう。
「エナンチオマーに富む」(enantioenrichedまたはenantiomerically enriched)の語は、あるエナンチオマーを他のエナンチオマーよりも多く含むキラル化合物をいう。試料中のエナンチオマー豊富の程度はエナンチオマー比またはエナンチオマー過剰で定量化される。
以下の良く知られた薬物は明細書および特許請求の範囲において参照される。略号および一般名もまた提供する。
【0041】
araA; 9-β-D-アラビノフラノシルアデニオン (ビダラビン)
AZT; 3'-アジド-2',3'-ジデオキシチミジン (ジドブジン)
d4T; 2',3'-ジデヒドロ-3'-デオキシチミジン(スタブジン)
ddI; 2',3'-ジデオキシイノシン(ジダノシン)
ddA; 2',3'-ジデオキシアデノシン
ddC; 2',3'-ジデオキシシチジン(ザルシタビン)
L-ddC; L-2',3'-ジデオキシシチジン
L-FddC; L-2',3'-ジデオキシ-5-フルオロシチジン
L-d4C;β-L-2',3'-ジデヒドロ-2',3'-ジデオキシシチジン
L-Fd4C;β-L-2',3'-ジデヒドロ-2',3'-ジデオキシ-5-フルオロシチジン
【0042】
3TC;(-)-2',3'-ジデオキシ-3'-チアシチジン;2'R,5'S(-)-1-[2-(ヒドロキシメチル)オキサチオラン-5-イル]シトシン(ラミブジン)
1-β-D-リボフラノシル-1,2,4-トリアゾロ-3-カルボキサミド(リバビリン)
5-フルオロ-2'-デオキシウリジン(フロクスリジン)
FIAU; 1-(2'-デオキシ-2'-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)-5-ヨードウリジン
FIAC; 1-(2'-デオキシ-2-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)-5-ヨードシトシン
BHCG; (±)-(1α,2β,3α)-9-[2',3'-ビス(ヒドロキシメチル)シクロブチル]グアニン
L-FMAU;2'-フルオロ-5-メチル-β-L-アラビノフラノシルウラシル
BvaraU; 1'-β-D-アラビノフラノシル-E-5-(2-ブロモビニル)ウラシル(ソリブジン)
E-5-(2-ブロモビニル)-2'-デオキシウリジン
TFT; トリフルオロチミジン
【0043】
5-プロピニル-1-アラビノフラノシルウラシル (ゾナビル)
CDG;炭素環式-2'-デオキシグアノシン
DAPD; (-)-β-D-2,6-ジアミノプリンジオキソラン
FDOC; (-)-β-D-5-フルオロ-1-[2'-(ヒドロキシメチル)-1',3'-ジオキソラン]シトシン
d4C;-2',3'-ジデヒドロ-2', -ジデオキシシチジン
DXG;ジオキソラングアノシン
FEAU;2'-デオキシ-2'-フルオロ-1'-β-D-アラビノフラノシル-5-エチルウラシル
FLG; 2',3'-ジデオキシ-3'-フルオログアノシン
FLT; 3'-デオキシ-3'-フルオロチミジン
FTC; (-)-cis-5-フルオロ-1-[2'-(ヒドロキシメチル)-1',3'-オキサチオラン-5'-イル]シトシン
【0044】
L-dT;β-L-2'-デオキシチミジン (NV-02B)
L-dC;β-L-2'-デオキシシトシン、β-L-2'-デオキシシトシンのバリンプロドラッグ誘導体
5-イル-カルボサイクリック-2'-デオキシグアノシン(BMS200,475)
オキセタノシンA; 9-(2'-デオキシ-2'-ヒドロキシメチル-β-D-エリスロ-オキセタノシル)アデニン
オキセタノシンG; 9-(2'-デオキシ-2'-ヒドロキシメチル-β-D-エリスロ-オキセタノシル)グアニン
シクロバット A; (+/-)-9-[(1'-β,2'-α,3'-β)-2',3'-ビス(ヒドロキシメチル)-1'-シクロブチル]アデニン
シクロバット G; (+/-)-9-[(1'-β,2'-α,3'-β)-2,3-ビス(ヒドロキシメチル)-1-シクロブチル]グアニン (ロブカビル)
dFdC; 2',2'-ジフルオロ-2'-デオキシシチジン(ゲムシタビン)
araC; アラビノフラノシルシトシン(シタラビン)
ブロモデオキシウリジン
【0045】
IDU; 5-ヨード-2'-デオキシウリジン (ヨードキシウリジン)
CdA; 2-クロロ-2'-デオキシアデノシン (クラドリビン)
FaraA; 2-フルオロアラビノフラノシルアデノシン (フルダラビン)
コホルマイシン
2'-デオキシコホルマイシン
araT; 1-β-D-アラビノフラノシドチミジン
ddAPR: 2,6-ジアミノプリン-2',3'-ジデオキシリボシド
9-(アラビノフラノシル)-2,6-ジアミノプリン
9-(2'-デオキシリボフラノシル)-2,6-ジアミノプリン
9-(2'-デオキシ-2'-フルオロリボフラノシル)-2,6-ジアミノプリン
【0046】
9-(アラビノフラノシル)グアニン
9-(2'-デオキシリボフラノシル)グアニン
9-(2'-デオキシ-2'-フルオロリボフラノシル)グアニン
FMdC; (E)-2'-デオキシ-2'(フルオロメチレン)シチジン
DMDC; 2'-デオキシ-2'-メチレデンシチジン-
4'-チオ-araC; 4'-チオ-アラビノフラノシル-シチジン
5,6 ジヒドロ-5-アザシチジン
5-アザシチジン
5-アザ-2'-デオキシシチジン
AICAR; 5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミド-1-リボフラノシル
【0047】
NK-84-0218 ヌクレオシドアナログ
AM365,非環式グアノシンヌクレオシドアナログ
MCC478, ヌクレオシドアナログ
ICN 2001, ヌクレオシドアナログ
フロール L および D ヌクレオシド、ヌクレオシドアナログ
ファミクロビル, 2-[2-(2-アミノ-9H-プリン-9-イル)エチル]-1,3-プロパンジオールジアセテート
ACV; 9-(2'-ヒドロキシエトキシメチルグアノシン) (アシクロビル)
GCV; 9-(1',3'-ジヒドロキシ-2'-プロポキシメチル)グアニン(ガンシクロビル)
9-(4'-ヒドロキシ-3'-ヒドロキシメチルブタ-1'-イル)グアニン (ペンシクロビル)
(R)-9-(3',4'-ジヒドロキシブチル)グアニン(ブシクロビル)
[1-(4'-ヒドロキシ-1',2'-ブタジエニル)シトシン] (シタレン)
【0048】
式IIIの2'-β-メチル-リボフラノシル ヌクレオシド:
【化10】

式中、Bは下式より構成される群から選択され、
【化11】

【0049】
ここで、A、G、L′は独立してCHまたはNであり;
DはN、CH、C-CN、C-NO、C-C1−3アルキル、C-NHCONH、C-CONR1111、C-CSNR1111、C-COOR11、C-C(=NH)NH、C-ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、C-アミノ、C-C1−4アルキルアミノ、C-ジ(C1−4アルキル)アミノ、C-ハロゲン、C-(1,3-オキサゾール-2-イル)、C-(1,3-チアゾール-2-イル)、またはC-(イミダゾール-2-イル)であって、アルキルは無置換、またはハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC1−3アルコキシから独立して選択される1個から3個の置換基で置換され;
EはNまたはCR
WはOまたはS;
【0050】
はH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−4アルキルアミノ、CF、またはハロゲンであり;
は、H、OH、SH、NH、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、またはCFであり;
はH、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノ;
は、H、ハロゲン、CN、カルボキシ、C1−4アルキルオキシカルボキシ、N、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニル、または(C1−4アルキル)0−2アミノメチル;
11は、HまたはC1−6アルキル
14はH、CF、C1−4アルキル、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノである。
【0051】
発明の詳細な説明
本発明は1-アリール-1,3-プロパンジオールの新規環状リン酸ジエステル(立体化学はトランス)、その調製および合成用中間体、並びにプロドラッグの合成におけるその使用に向けられたものである。
【0052】
I.ある側面においては、式Iの化合物が好ましい:
【化12】

式中、Vは炭素環式アリール、置換炭素環式アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールよりなる群から選択される。一つの側面においては、炭素環式アリールおよび置換炭素環式アリールには、フェニルおよび1個から4個の置換基を有するフェニルが含まれる。別の側面においては、ヘテロアリール基には0個から2個の置換基を有する単環ヘテロアリール基が含まれる。別の側面においては、ヘテロアリール基には、4-ピリジル、3-ピリジル、および2-ピリジルが含まれる。別の側面においては、炭素環式基には、3-クロロフェニル、3-ブロモフェニルおよび3,5-ジクロロフェニルが含まれる。
【0053】
Lは脱離基であって、ハロゲン、アリールオキシ、スルホン酸アルキル、置換アリールオキシ基、ハロアルコキシ、パーハロアルコキシ、含窒素ヘテロアリール、およびN-ヒドロキシル化含窒素ヘテロアリールよりなる群から選択される。ある側面において、脱離基は、ハロゲン、スルホン酸アリール、1個から3個の電子吸引性基で置換されたアリールオキシ基である。別の側面において脱離基は、塩素、臭素等のハロゲン、8-キノリルスルホネートや2,4,6-トリメチルフェニルスルホネートのようなアリールスルホネート、クロロフェノキシ、ジクロロフェノキシまたはニトロフェノキシのような置換アリールオキシ基である。別の側面において脱離基は、4-クロロフェノキシ、3,5-ジクロロフェノキシ、4-ニトロフェノキシ、および2,4-ジクロロフェノキシである。
【0054】
別の側面において、VおよびLは相対的にトランスである。
式中、Vは炭素環式アリール、置換炭素環式アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールよりなる群から選択される。一つの側面においては、炭素環式アリールおよび置換炭素環式アリールには、フェニルおよび1個から4個の置換基を有するフェニルが含まれる。別の側面においては、ヘテロアリール基には0個から2個の置換基を有する単環ヘテロアリール基が含まれる。別の側面においては、ヘテロアリール基には、4-ピリジル、3-ピリジル、および2-ピリジルが含まれる。別の側面においては、炭素環式基には、3-クロロフェニル、3-ブロモフェニルおよび3,5-ジクロロフェニルが含まれる。
【0055】
Lは脱離基であって、ハロゲン、アリールオキシ、スルホン酸アルキル、置換アリールオキシ基、ハロアルコキシ、パーハロアルコキシ、含窒素ヘテロアリール、およびN-ヒドロキシル含窒素ヘテロアリールよりなる群から選択される。ある側面において、脱離基は、ハロゲン、スルホン酸アリール、1個から3個の電子吸引性基で置換されたアリールオキシ基である。別の側面において脱離基は、塩素、臭素等のハロゲン、8-キノリルスルホネートや2,4,6-トリメチルフェニルスルホネートのようなアリールスルホネート、クロロフェノキシ、ジクロロフェノキシまたはニトロフェノキシのような置換アリールオキシ基である。別の側面において脱離基は、4-クロロフェノキシ、3,5-ジクロロフェノキシ、4-ニトロフェノキシ、および2,4-ジクロロフェノキシである。
【0056】
別の側面において、VおよびLは相対的にシスである。
式中、Vは炭素環式アリール、置換炭素環式アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールよりなる群から選択される。一つの側面においては、炭素環式アリールおよび置換炭素環式アリールには、フェニルおよび1個から4個の置換基を有するフェニルが含まれる。別の側面においては、ヘテロアリール基には0個から2個の置換基を有する単環ヘテロアリール基が含まれる。別の側面においては、ヘテロアリール基には、4-ピリジル、3-ピリジル、および2-ピリジルが含まれる。別の側面においては、炭素環式基には、3-クロロフェニル、3-ブロモフェニルおよび3,5-ジクロロフェニルが含まれる。
【0057】
Lは脱離基であって、ハロゲン、アリールオキシ、スルホン酸アルキル、置換アリールオキシ基、ハロアルコキシ、パーハロアルコキシ、含窒素ヘテロアリール、および含ヒドロキシル化窒素ヘテロアリールよりなる群から選択される。ある側面において、脱離基は、ハロゲン、スルホン酸アリール、1個から3個の電子吸引性基で置換されたアリールオキシ基である。別の側面において脱離基は、塩素、臭素等のハロゲン、8-キノリルスルホネートや2,4,6-トリメチルフェニルスルホネートのようなアリールスルホネート、クロロフェノキシ、ジクロロフェノキシまたはニトロフェノキシのような置換アリールオキシ基である。別の側面において脱離基は、4-クロロフェノキシ、3,5-ジクロロフェノキシ、4-ニトロフェノキシ、および2,4-ジクロロフェノキシである。
式Iの化合物はC′炭素上においてS配位、R配位、またはラセミ体のいずれかである。ある側面においては、C′炭素上においてS配位またはR配位で>95%eeの光学純度の化合物である。
【0058】
II. リン酸化剤の合成
II.1 1-(アリール)-プロパン-1,3-ジオールの合成
1,3-ジオールの調製には種々の合成法が知られている。適切な方法は二つの種類に分類される;1)ラセミ化1-(アリール)-プロパン-1,3-ジオールの合成、および2)エナンチオマーに富む1-(アリール)-プロパン-1,3-ジオールの合成、である。
【0059】
II.1.1 ラセミ化1-(アリール)-プロパン-1,3-ジオールの合成
1,3-ジヒドロキシ化合物は文献に記載された、いくつかのよく知られた方法によって合成可能である。1-(アリール)プロパン-1,3-ジオールのラセミ体を合成するためには置換芳香族アルデヒドを用い、酢酸アルキルのリチウムエノレートを付加させ、続いてエステルを還元させる(経路A)〔Turner, J. Org. Chem. 55:4744(1990)〕。別法としては、1-ヒドロキシプロパン-3-アールにアリールグリニヤール付加を行っても1-(アリール置換)プロパン-1,3-ジオール(経路B)が得られる。この方法は種々の置換アリールハライドから1-(アリール置換)-1,3-プロパンジオールへの変換を可能とする〔Coppi, et al., J. Org. Chem. 53:911(1988)〕。アリールハライドはまた、1,3-ジオキシ-4-エンのHeck縮合およびこれに続く還元と加水分解〔Sakamoto, et al., Tetrahedron Lett., 33:6845(1992)〕により、1-置換プロパンジオールの合成に用いることができる。ピリジル、キノリン、イソキノリンプロパン-3-オールを酸化してN-オキシドを形成させ無水酢酸条件下で転位させることにより1-置換-1,3-ジオールとすることもできる(経路C)〔Yamamoto, et al., Tetrahedron 37:1871(1981)〕。ビニルグリニヤール試薬の付加と続くハイドロボレーション反応によって種々の芳香族アルデヒドを1-置換-1,3-ジオールへ変換することもできる(経路D)。
【0060】
【化13】

【0061】
II.1.2 エナンチオマーに富む1-(アリール)-プロパン-1,3-ジオールの合成
ジオールのエナンチオマーを調製するため、化学剤若しくは酵素剤を用いて二級アルコールを分離する方法が種々知られている。置換3-アリール-3-オキソプロピオン酸若しくはエステルを遷移金属触媒下で水素化する方法は、エナンチオマー純度の高いβ-ヒドロキシ酸若しくはエステルのR体若しくはS体を調製する効率のよい方法である〔Comprehensive Asymmetric Catalysis, Jacobsen, E. N., Pfaltz, A., Yamamoto, H. (Eds), Springer, (1999); Asymmetric Catalysis in organic Synthesis, Noyori, R., John Wiley, (1994)〕。生成したβ-ヒドロキシ酸またはエステルを更に還元することにより、必要な1-(アリール)-プロパン-1,3-ジオールを高い%eeで得ることができる(経路A)。高圧水素化反応または水素移動反応の基質であるβ-ケト酸またはエステルは、例えば、塩基存在下におけるアセトフェノンと炭酸ジメチルの縮合〔Chu, et al., J. Het Chem. 22:1033 (1985)〕のような種々の方法やエステル縮合〔Turner, et al., J. Org. Chem. 54:4229 (1989)〕により、またはアリールハライドより〔Kobayashi, et al., Tetrahedron Lett. 27:4745 (1986)〕調製することができる。
【0062】
別法として、β-ヒドロキシエチルアリールケトン誘導体またはβケト酸誘導体のエナンチオ選択的ホウ素還元により、エナンチオマー純度の高い1,3-ジオールが得られる〔Ramachandran, et al., Tetrahedron Lett. 38:761 (1997)〕。また別の方法として、市販品として得られるシンナミルアルコールを触媒的不整エポキシ化反応によりエポキシアルコールとすることができる。これらエポキシアルコールをRed-Alで還元すると高いeeで1,3-ジオールが得られる(経路C)〔Gao, et al., J. Org. Chem. 53:4081 (1980)〕。エナンチオ選択的なアルドール縮合も、芳香族アルデヒドから高eeで1,3-酸素化官能基を合成するための方法としてよく記述される(経路D)〔Mukaiyama, Org. React. 28:203 (1982)〕。
【0063】
【化14】

【0064】
II.2 ホスホリル化試薬の合成
ホスホリル化試薬の合成は一般的に、1-アリール-3-プロパンジオールと式ClP(O)-Lのホスホロジクロリド酸との反応により達成される。Lがアリールオキシであるホスホロジクロリデートは置換フェノールをオキシ塩化リンと反応させて合成される〔Rathore et al., Indian J. Chem B 32(10), 1066(1993)〕。
【0065】
エナンチオマーに富む活性ホスホリル化剤は、塩基の存在下エナンチオマーに富む1-(V)-1,3-プロパンジオールを式L-P(O)Clのホスホロジクロリデートでホスホリル化することにより調製される〔Ferroni et al., J. Org. Chem. 64(13), 4943 (1999)〕。ある側面において、添加の順序はジオール溶液と塩基を選択された溶媒中のホスホロジクロリデート溶液へ添加することを含む。別の側面において、ジオールと塩基の溶液、およびホスホロジクロリデートを含む別の溶液(同じ溶媒または異なる溶媒)が同時に選択された溶媒へ加えられる。また別の側面では、ジオールの溶液がリン試薬の溶液へ加えられ続いて塩基が加えられる。ジオールのホスホリル化の典型的溶媒はホスホロジクロリデートとの反応性が乏しくジオールおよびホスホロジクロリデートを溶解する非プロトン性極性溶媒である。ある側面において、ホスホリル化反応を進行させる溶媒はジクロロメタン、THF、アセトニトリル、ピリジン、テトラアルキルウレア、リン酸トリアルキルまたはヘキサアルキルホスホラミドである。別の側面では、溶媒は、ジクロロメタン、THF、アセトニトリル、DMPU、DMEU、テトラメチルウレア、リン酸トリメチル、ヘキサメチルホスホラミドである。反応温度は、特に発熱する反応初期においては試薬の完全性を維持するために低く保つ。
【0066】
ある側面においては、温度は室温以下の-20℃から10℃である。ある側面においては、発熱を制御して、反応温度を徐々に室温まで移行させホスフェート試薬の形成を完全にする。別の側面では、試薬の完全性を維持するために反応が完結するまで温度を同範囲に保つ。リン原子の立体的性質のため、上記反応条件下のホスホロジクロリデートとジオールとの反応はシスおよびトランス異性体混合物を、わずかにシス異性体が多い状態で与える。シス/トランス比の典型は50/50から60/40である。シスおよびトランス異性体はカラククロマトグラフィーおよび/または結晶化を組み合わせて分離される。
【0067】
本発明の一つの側面として我々は、4-ニトロフェノキシホスホリル化剤のシス異性体を単離し4-ニトロフェノールの塩と共に加熱すると得られたホスホリル化試薬の>85%がトランス異性体であることを見出した。別の側面では、4-ニトロフェノキシホスホリル化試薬のシス/トランス混合物を単離して、ホスホリル化工程と同じ溶媒またはその他の溶媒中で4-ニトロフェノール塩と共に加熱すると、得られたホスホリル化試薬の>85%がトランス異性体であることを見出した。さらにこの豊富化を達成するために前もって混合物を単離する必要がないことも見出した。こうして、ジオールのアリールオキシホスホリル化剤が生成している未精製の反応混合物にフェノール脱離基の塩を添加することにより、式Iのトランス異性体を豊富化することができ、その異性体比はそのホスホリル化試薬混合物を単離した後に豊富化を行った場合と同じであった。同様に、式Iの化合物のホスホロジクロリデートのシス/トランス異性体等モル混合物を加熱した場合もトランス異性体のみが単離された。
【0068】
フェノールを塩基、好ましくはトリアルキルアミン、含窒素ヘテロシクロまたはナトリウムと反応させると対応するフェノキシド塩が生成する。一つの側面では、塩基はトリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、DABCO、DBU、水素化ナトリウムまたはアルキル金属である。別の側面では、塩基はトリエチルアミン、DBU、またはフェノキシドのナトリウム塩である。豊富化の工程は室温で実施できるが反応時間短縮のため一般には加熱、好ましくは40℃から70℃の範囲に加熱して行う。アリールオキシホスホリル化試薬の変換は対応するフェノキシド塩の添加を必要とするが、好ましい塩基によるホスホロジクロリデートそれ自身の生成が2当量の塩素イオンを生じさせるので、一方のエナンチオマーが多いジオールのホスホロジクロリデートの変換は可溶性クロリド塩の添加を必要としない。一つの側面において、ジオールのホスホリル化が完了したら、反応混合物を加熱、好ましくは40℃から70℃の範囲に加熱して、シス異性体からトランス異性体へ完全に変換させる。別の側面では、試薬の添加に用いた場合と同じ温度に維持する。
【0069】
一方のエナンチオマーが豊富なジオールから、同様なホスホリル化試薬を調製するためには、式Iの炭素C'におけるキラリティーの保存が決定的である。大抵のエナンチオマーが豊富なジオールにおいて、炭素C'のエピメリ化は最小であるが既に述べた反応条件下でいくつかのジオールにつきeeの減少が観察された。特に問題だったのは1-(含窒素ヘテロアリール)-1,3-プロパンジオールの場合で、ジオールにおける98%のeeが単離したトランス-ホスホリル化試薬では<85%に減少した。本発明の一つの側面は、含窒素ヘテロアリール溶媒の使用によりトランス-ホスホリル化試薬のeeが95%以上に維持されることを見出したことである。一つの側面は、含窒素ヘテロアリール溶媒は任意で置換されたピリジン、キノリンおよびピラジンである。別の側面は、含窒素ヘテロアリール溶媒は任意で置換されたピリジンである。また別の側面では、含窒素ヘテロアリール溶媒はピリジンである。本発明の別の側面では、ホスホロジクロリデートまたはオキシ塩化リンの添加前の1-(含窒素ヘテロアリール)-1,3-プロパンジオールの塩の生成と、続く塩基の添加が炭素C'のエピメリ化を防ぎ、含窒素ヘテロアリール溶媒の使用を必要としないことが見出された。
【0070】
一つの側面では、1-(含窒素ヘテロアリール)-1,3-プロパンジオールの塩は、1-(含窒素ヘテロアリール)-1,3-プロパンジオールと有機酸またはpka<2の鉱酸との反応で調製される塩である。別の側面では、塩はpka<1の鉱酸との反応で調製される。別の側面では、塩酸塩または臭酸塩である。シスおよびトランス異性体はカラムクロマトグラフィーおよび/または結晶化の組み合わせによって分離される。しかしながら、豊富化工程の後、トランス異性体の単離は非常に単純化され、トランス異性体純度が>95%、eeが>95%のホスホリル化試薬を与えることが分かった。ある側面では、トランスホスホリル化試薬が単離される。別の側面では、該トランスホスホリル化試薬は溶液中で保存され、精製することなくヌクレオシドのホスホリル化に用いられる。リン原子の相対的立体配置は31P-NMRスペクトルの比較で決定される。イカトリアル(equatorial)のホスホリルオキシ部分(トランス異性体)の化学シフトは、アキシャル(axial)異性体(シス異性体)に比してより高磁場である(Verkade, et al., J. Org. Chem. 42, 1549 (1977))。
【0071】
III.プロドラッグ調製のためのホスホリル化剤の使用
【化15】

【0072】
本発明はまた、式IIの化合物を合成するための式Iのホスホリル化剤の使用に向けられており、当該式IIの化合物は肝臓およびこの特異的な酵素を含むその他の組織に大量に存在するP450酵素により対応するリン酸エステル含有化合物へと効率的に変換される。このように本発明は、肝臓疾患または肝臓がグルコース、コレステロール、脂肪酸、トリグリセリドのような生化学的最終産物の過剰産生の責を負っている病気の治療に有効である化合物のシスプロドラッグを合成するために極めて有用である。そのような病気には、例えばウィルスおよび寄生虫感染、肝臓癌、肝線維化、糖尿病、高脂血症、および肥満が含まれる。加えて、該プロドラッグの肝臓特異性はまた肝臓診断薬の薬物輸送にも有用であろう。
【0073】
ある側面において本発明は、ヌクレオシドおよびヌクレオシドアナログのリン酸モノエステルのシスプロドラッグを合成するための該ホスホリル化剤の使用に向けられている。該ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログは酸素、窒素または硫黄原子を介してそのプロドラッグ部分のリン原子と結合し得るが、別の側面では、該化合物は酸素原子を介してリン原子と結合している。また、ある側面では、該ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログは一級ヒドロキシル基を介してそのプロドラッグ部分のリン原子部分と結合している。別の側面では、そのプロドラッグ部分は該ヌクレオシドまたはヌクレオシドアナログの5'-ヒドロキシル基と結合している。
【0074】
一般には、Mは一級ヒドロキシル基の酸素原子を介し結合するのが好ましい。ある側面において、MHはaraA;AZT;d4T;ddI;ddA;ddC;L-ddC;L-FddC;L-d4C;L-Fd4C;3TC;イバビリン;5-フルオロ-2'-デオキシウリジン;FIAU;FIAC;BHCG;L-FMAU;BvaraU;E-5-(2-ブロモビニル)-2'-デオキシウリジン;TFT;5-プロピニル-1'-アラビノフラノシルウラシル;CDG;DAPD;FDOC;d4C;DXG;FEAU;FLG;FTC;L-dC;L-dT;5-イル-カルボシクロ-2'-デオキシグアノシン;オキセタノシンA;オキセタノシンG;シクロバットA;シクロバットG;dFdC;araC;ブロモデオキシウリジン;IDU;CdA;FaraA;コホルマイシン;2'-デオキシコホルマイシン;araT;チアゾフリン;ddAPR;9-(アラビノフラノシル)-2,6-ジアミノプリン;9-(2'-デオキシリボフラノシル)-2,6-ジアミノプリン;9-(2'-デオキシ-2'-フルオロリボフラノシル)-2,6-ジアミノプリン;9-(アラビノフラノシル)グアニン;9-(2'-デオキシリボフラノシル)グアニン;9-(2'-デオキシ-2'-フルオロリボフラノシル)グアニン;FMDC;DMDC;4'-チオ-araC;5,6-ジヒドロ-5-アザシチジン;5-アザシチジン;5-アザ-2'-デオキシシチジン;AICAR;NK-84-0218;AM365;MCC478;ICN 2001;フロールLおよびD ヌクレオシド;ファムシクロビル;ACV;GCV;ペンシクロビル;
【0075】
(R)-9-(3',4'-ジヒドロキシブチル)グアニン、シタレンまたは式IIIの2'-β-メチル-リボフラノシルヌクレオシドであり:
【化16】

【0076】
ここで、Bは下記の群より選択され;
【化17】

【0077】
式中、A、G、L′は独立してCHまたはNであり;
DはN、CH、C-CN、C-NO、C-C1−3アルキル、C-NHCONH、C-CONR1111、C-CSNR1111、C-COOR11、C-C(=NH)NH、C-ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、C-アミノ、C-C1−4アルキルアミノ、C-ジ(C1−4アルキル)アミノ、C-ハロゲン、C-(1,3-オキサゾール-2-イル)、C-(1,3-チアゾール-2-イル)、またはC-(イミダゾール-2-イル)であって、アルキルは無置換、またはハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC1−3アルコキシから独立して選択される1個から3個の置換基で置換され;
EはNまたはCR
WはOまたはS;
【0078】
はH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−4アルキルアミノ、CF、またはハロゲンであり;
は、H、OH、SH、NH、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、またはCFであり;
はH、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノ;
は、H、ハロゲン、CN、カルボキシ、C1−4アルキルオキシカルボキシ、N、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニル、または(C1−4アルキル)0−2アミノメチル;
11は、HまたはC1−6アルキル
14はH、CF、C1−4アルキル、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノである。
【0079】
ある側面においては、式IIの化合物はMがヌクレオシドであってフラノシル基の有する一級ヒドロキシル基の酸素原子を介してリン原子と結合する。一つの側面において、そのような化合物には、araA;AZT;d4T;ddI;ddA;ddC;L-ddC;L-FddC;L-d4C;L-Fd4C;3TC;リバビリン;5-フルオロ-2'-デオキシウリジン;FIAU;FIAC;BHCG;L-FMAU;BvaraU;E-5-(2-ブロモビニル)-2'-デオキシウリジン;TFT;5-プロピニル-1'-アラビノフラノシルウラシル;CDG;DAPD;FDOC;d4C;DXG;FEAU;FLG;FTC;L-dC;L-dT;5-イル-カルボシクロ-2'-デオキシグアノシン;オキセタノシンA;オキセタノシンG;シクロバットA;シクロバットG;dFdC;araC;5-ブロモデオキシウリジン;IDU;CdA;FaraA;コホルマイシン;
【0080】
2'-デオキシコホルマイシン;araT;チアゾフリン;ddAPR; 9-(アラビノフラノシル)-2,6-ジアミノプリン;9-(2'-デオキシリボフラノシル)-2,6-ジアミノプリン;9-(2'-デオキシ-2'-フルオロリボフラノシル)-2,6-ジアミノプリン;9-(アラビノフラノシルグアニン;9-(2'-デオキシリボフラノシル)グアニン;9-(2'-デオキシ-2'-フルオロリボフラノシル)グアニン;FMDC;DMDC;4'-チオ-araC;5,6-ジヒドロ-5-アザシチジン;5-アザシチジン;5-アザ-2'-デオキシシチジン;AICAR;NK-84-0218;AM365;MCC478;ICN 2001;フロール L および D ヌクレオシド、ファムシクロビル、または式IIIの2'-β-メチル-リボフラノシルヌクレオシドが含まれる。
【化18】

【0081】
ここで、Bは下記の群より選択され;
【化19】

【0082】
式中、A、G、L′は独立してCHまたはNであり;
DはN、CH、C-CN、C-NO、C-C1−3アルキル、C-NHCONH、C-CONR1111、C-CSNR1111、C-COOR11、C-C(=NH)NH、C-ヒドロキシ、C1−3アルコキシ、C-アミノ、C-C1−4アルキルアミノ、C-ジ(C1−4アルキル)アミノ、C-ハロゲン、C-(1,3-オキサゾール-2-イル)、C-(1,3-チアゾール-2-イル)、またはC-(イミダゾール-2-イル)であって、アルキルは無置換、またはハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシおよびC1−3アルコキシから独立して選択される1個から3個の置換基で置換され;
EはNまたはCR
WはOまたはS;
【0083】
はH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−4アルキルアミノ、CF、またはハロゲンであり;
は、H、OH、SH、NH、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、またはCFであり;
14はH、CF、C1−4アルキル、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノであり;
【0084】
はH、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノ;
11は、HまたはC1−6アルキル;
は、H、ハロゲン、CN、カルボキシ、C1−4アルキルオキシカルボキシ、N、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニル、または(C1−4アルキル)0−2アミノメチルである。
別の側面において、Mは非環式糖上にあるヒドロキシル基の酸素原子を介して結合する。別の側面において、MHは、ACV、GCV、ペンシクロビル、および(R)-9-(3',4'-ジヒドロキシブチル)グアニンまたはシタレンを含む。
【0085】
III.1 保護ヌクレオシドのホスホリル化
式IIのシスプロドラッグを合成するため、プロドラッグ部分を合成の異なる段階で導入することができる。環状リン酸エステルは一般に種々の反応条件に敏感なため、合成の後半の段階で導入されるのが最も多い。化合物中に存在する官能基の反応性により、保護または無保護のヌクレオシド若しくはヌクレオシドアナログを用いて合成を進めることもできる。シスプロドラッグの単一立体異性体は、ジアステレオマー/エナンチオマーをカラムクロマトグラフィーおよび/または結晶化を組み合わせて分離するか、または特定のエナンチオマーに富む活性化リン酸中間体を用いエナンチオ選択的な合成を行うことにより得ることができる。
【0086】
保護ヌクレオシドのホスホリル化工程は、一般に、適切に保護したヌクレオシドと塩基を反応させ、生じたアルコキシドをホスホリル化試薬と反応させることにより行われる。保護ヌクレオシドはヌクレオシドの保護について記載された多くの方法のひとつを用いることにより当業者によって調製され得る〔Greene T.W., Protective Groups in Organic Chemistry, John Wiley & Sons, New York (1999)〕。ヌクレオシドは、該ヒドロキシル基のみが反応に晒されるよう、リン酸化工程で干渉し得る、または位置異性体を生成し得る他のすべてのヒドロキシル基およびその他の官能基を保護する。ある側面においては、強塩基に抵抗する保護基が選択され、例えばエーテル、シリルエーテル、ケタールである。またある側面においては、任意に置換されたMOMエーテル、MEMエーテル、トリアルキルシリルエーテルおよび対称なケタールである。
【0087】
他の側面では、保護基はブチルジメチルシリルエーテルおよびイソプロピリデンである。塩基性のアミノ基が存在する場合、酸性プロトンをすべて除去するために更なる保護としてそのマスキングが必要である。ある側面においてN-保護基はジアルキルホルムアミジン、モノおよびジアルキルイミン、モノおよびジアリールイミンよりなる群から選択される。またある側面において、N-保護基はジアルキルホルムアミジンおよびモノアルキルイミンおよびモノアリールイミンよりなる群から選択される。またある側面において、該モノアルキルイミンはベンジルイミン、該モノアリールイミンはフェニルイミンである。別の側面において、N-保護基はジメチルホルムアミジンおよびジエチルホルムアミジンの群より選択される対象ジアルキルホルムアミジンである。
【0088】
適切に保護されたヌクレオシド中の無保護のヒドロキシル基よりアルコキシドを発生させるには非プロトン性溶媒中塩基を用いれば達成できる。ここで、そのような溶媒としては、THF、ジアルキルおよび環状ホルムアミド、エーテル、トルエン、およびこれらの混合溶媒のような、塩基に対して反応しないものが挙げられる。ある側面においては、該溶媒はDMF、DMA、DEF、N-メチルピロリジン、THF、およびこれら溶媒の混合物である。
【0089】
環状および非環状ホスホリル化剤によるヌクレオシドおよび非ヌクレオシド化合物のホスホリル化には多くの異なる塩基が使用される。例えば、トリエチルアミン(Roodsari et al., J. Org. Chem. 64(21), 7727 (1999))またはジイソプロピルエチルアミン(Meek et al., J. Am. Chem. Soc. 110(7), 2317 (1988))のようなトリアルキルアミン;ピリジン(Hoefler et al., Tetrahedron 56(11), 1485 (2000))、N-メチルイミダゾール(Vankayalapati et al., J. Chem. Soc. Perk T 1 14, 2187(2000))、1,2,4-トリアゾール(Takaku et al., Chem. Lett. (5), 699 (1986))、イミダゾール(Dyatkina et al., Tetrahedron Lett. 35(13), 1961 (1994))のような含窒素ヘテロシクロアミン;カリウムt-ブトキシド(Postel et al., J. Carbohyd. Chem. 19(2), 171 (2000))、ブチルリチウム(Torneiro et al., J. Org. Chem. 62(18), 6344 (1977))、
【0090】
塩化t-ブチルマグネシウム(Hayakawa et al., Tetrahedron Lett. 28(20), 2259 (1987))またはLDA(Aleksiuk et al., J. Chem. Soc. Chem. Comm. (1), 11 (1993))のような有機金属塩基;フッ化セシウム(Takaku et al., Nippon Kagaku Kaishi (10), 1968 (1985))、水素化ナトリウム(Hanaoka et al., Heterocycles 23(11), 2927 (1985))、ヨウ化ナトリウム(Stromberg et al., J. Nucleos. Nucleot. 6(5), 815 (1987))、ヨウ素(Stromberg et al., J. Nucleos. Nucleot. 6(5), 815 (1987))または水酸化ナトリウム(Attanasi et al., Phosphorus Sulfur 35(1-2), 63 (1988))のような無機塩基;銅(Bhatia et al., Tetrahedron Lett. 28(3), 271 (1987))のような金属等がある。しかしながら、式Iのホスホリル化試薬を上記の条件により縮合を試みても、リン原子不斉中心のラセミ化または反応は観測されなかった。
【0091】
特に、前に置換環状ホスホリル化剤と共に用いて対応する環状リン酸エステルを高収率で与えた塩基、例えば、水素化ナトリウム(Thuong et al., Bull. Soc. Chim. Fr. 667 (1974))、ピリジン(Ayral-Kaloustian et al., Carbohydr. Res. 187(1991))、ブチルリチウム(Hulst et al., Tetrahedron Lett. 1339 (1993))、DBU (Merckling et al., Tetrahedron Lett. 2217 (1996))、トリエチルアミン(Hadvary et al., Helv. Chim. Acta, 1986, 69(8), 1862)、N-メチルイミダゾール(Li et al., Tetrahedron Lett. 6615 (2001))、またはナトリウムメトキシド(Gorenstein et al., J. Am. Chem. Soc. 5077 (1980))では反応しなかった。本発明のある側面において、Grignard試薬の使用が、リン酸中心のエピメリ化を最小に抑え、ホスホリル化を促進することが分かった。ある側面において、Grignard試薬はアルキルおよびアリールGrignardである。別の側面において、Grignard試薬は塩化t-ブチルマグネシウムおよび塩化フェニルマグネシウムである。
【0092】
本発明の別の側面においては、ヌクレオシドのマグネシウム5'-アルコキシドを発生させるためにマグネシウムアルコキシドが用いられる。一つの側面において、マグネシウムアルコキシドはMg(O-t-Bu)およびMg(O-iPr)から選択される。
本発明の別の側面においては、アルコキシドのカルボカチオンを交換し、および/または生成したアルコキシドの反応性をホスホリル化剤で調節するため、上記の塩基の一つを用いて作製したアルコキシド溶液にLewis酸を添加することもできる。Lewis酸の例としては、アルカリ塩、希土類塩、または遷移金属塩が含まれる。ある側面においては、Lewis酸はマグネシウム塩、カルシウム塩、セシウム塩、アルミニウム塩またはセリウム塩である。別の側面では、Lewis酸は塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、およびヨウ化マグネシウムである。
【0093】
ある側面において、式IIの化合物合成の反応条件は、第一にGrignard試薬、または他の塩基とこれに続くマグネシウム塩の添加によるアルコキシドの発生;第二に式Iのホスホリル化試薬を溶液として(一般には同じ溶媒だがこれに限られない)、または固体のまま直接、ヌクレオシド溶液へ添加することを包含する。別の側面においては、アルコキシド溶液をホスホリル化試薬の溶液中へ添加する。一つの側面において、塩基によるアルコキシド発生の温度は-78℃から40℃の範囲より選択される。ある側面では温度は-20℃から25℃の範囲より選択される。別の側面において、ホスホリル化工程の温度は-10℃から70℃の範囲より選択される。別の側面において、温度は10℃から40℃の範囲より選択される。
【0094】
上記により生成した保護プロドラッグは当業者に知られた多くの方法(Greene T.W., Protective Groups in Organic Chemistry, John Wiley & Sons, New York (1999))の一つでリン酸プロドラッグの安定性に影響しない方法を用いて、すべての保護基が除去される。一つの側面において、脱保護試薬にはシリル保護基を除去するフッ素塩、シリル基および/またはケタールおよびN-保護基(存在すれば)のように酸に不安定な保護基を除去する鉱酸若しくは有機酸が含まれる。別の側面においては試薬はTBAF、塩酸、および水性TFA溶液である。最終プロドラッグの単離と精製は、すべての中間体の場合と同様、カラムクロマトグラフィーおよび/または結晶化を組み合わせて行われる。
【0095】
本発明の一つの側面は、式IIの化合物の単一の異性体を合成する方法を提供する。環状リン酸エステル試薬上のVが結合した炭素には不斉中心が存在するため、この炭素原子は二つの相異なる配向性、即ちRまたはSを与える。このように、当該トランス-リン酸エステル試薬はS-トランス体またはR-トランス体として存在し得、これらは互いにエナンチオマーである。従って、R-トランス体およびS-トランス体の等量混合物はラセミ混合物である。加えて、大抵のヌクレオシドはキラルであるから、ラセミのトランス-リン酸エステル試薬によるこれらヌクレオシドのホスホリル化は二つのジアステレオメリックなシス-プロドラッグを生成させ、他方キラルでないヌクレオシドアナログ(例えば、ACV)をホスホリル化するとシス-プロドラッグのラセミ混合物を与える。
【0096】
これらの化合物はカラムクロマトグラフィーおよび/または結晶化を組み合わせることにより分離される。あるいは、ヌクレオシドアルコキシドのホスホリル化をエナンチオリッチなトランス-リン酸エステル試薬で行うと、エナンチオリッチなシス-プロドラッグが得られる。このように、C'-S-トランス-リン酸エステル試薬はヌクレオシドのC'-S-シス-プロドラッグを与え、C'-R-トランス-リン酸エステル試薬はヌクレオシドのC'-R-シス-プロドラッグを与える。
【0097】
別の側面において、トランス-リン酸エステル試薬とヌクレオシドとの反応速度と比較し、シス-リン酸エステル試薬からトランス-リン酸エステル試薬へのエピメリ化の速度により、シス-ホスホリル化試薬は依然としてヌクレオシドのシス-プロドラッグを与えることが見出された。この側面において、少量のプロドラッグの生成によって生じたわずかな脱離基によりシス-ホスホリル化試薬はトランス-リン酸エステル試薬へエピメリ化する。それからヌクレオシドが溶液中で生じたトランス-リン酸エステル試薬と反応してシス-プロドラッグを与える。別の側面では、ヌクレオシドがホスホリル化試薬の未精製混合物と反応してシス-プロドラッグを与える。ある側面では、ホスホリル化試薬の未精製混合物はトランス異性体に富んでいる。別の側面では、ホスホリル化試薬は異性体の富裕化をすることなく用いられる。
【0098】
III.2 無保護ヌクレオシドのホスホリル化
別法として、ヌクレオシドプロドラッグは、該ヌクレオシドを前もって保護することなく、一級のヒドロキシル基を選択的にホスホリル化する反応条件を用いて合成できる。例えば酸クロリドによる、araCのようなヌクレオシドの選択的な5'-アシル化はよく確立されている(Gish et al., J. Med. Chem. 14, 1159 (1971))。しかしながら、ホスホリル化試薬はより反応性が高いと考えられ、位置選択性および収率を低下させ、同様に反応に供した溶媒(DMF)との反応も生じると推測される。本発明の一つの側面は、式Iのホスホリル化剤と無保護ヌクレオシドとの反応がヌクレオシドの5'-シス-リン酸エステルプロドラッグを高い収率、位置選択性および立体選択性で与えることを見出したことである。
【0099】
ある側面においては、単離したホスホリル化試薬がヌクレオシド溶液に対して加えられる。別の側面では、ヌクレオシドがホスホリル化試薬の溶液に加えられる。無保護のヌクレオシドは一般の溶媒には難溶性で、またホスホリル化試薬と溶媒とが反応する可能性があるため、誘電率が高くてホスホリル化試薬との反応性が低い溶媒が必要である。そのような溶媒の例としては、テトラアルキルウレア、リン酸トリアルキル、またはヘキサアルキルホスホラミドがある。ある側面においては、溶媒はDMPU、テトラメチルウレア、DMEU、リン酸トリメチルまたはヘキサメチルホスホラミドである。プロドラッグ生成のための温度は、試薬の安定性に依存して-20℃から40℃の範囲である。ある側面では、ヌクレオシドのホスホリル化温度は-10℃から10℃の範囲に保たれる。別の側面では0℃から室温の間に保たれる。
【実施例】
【0100】
本発明で使用される化合物およびその調製法は実施例により更に理解できる。実施例には、これら化合物を調製する方法が説明されている。これらの実施例は発明を具体的なものに限定するのではなく、化合物のバリエーションは既知のものまたは後日得られるものも含め、以降に記載する本発明の範囲内にすべて包含されると考えられる。
式IおよびIIの化合物は文献記載の方法に従い、当業者によってよく理解される添加物および修正を加えて調製される。TLC条件はAnaltech UNIPLATE、シリカゲルGHLF、10 X 20cm(分割)、250ミクロンを用いた。
1-(アリール)プロパン-1,3-ジオールのラセミ体の合成
【0101】
実施例1
Grignard付加およびハイドロボレーションによる1-(2'-フラニル)プロパン-1,3-ジオールの調製:
2-フルアルデヒド(3g、31.2mmol)をTHF(60mL)に溶解し、臭化ビニルマグネシウムのTHF溶液(1M溶液、34mL)を0℃で加えた。1時間撹拌した後、BH3 THF錯体の1M THF溶液を加えた。0℃で3N NaOH溶液(20mL)および30%過酸化水素溶液(10mL)を添加して反応を停止させた。有機層を分液して濃縮し、5%MeOH-ジクロロメタンで溶出するカラムクロマトグラフィーにより精製して1-(2'-フラニル)プロパン-1,3-ジオール(1g、22%)を得た。
【0102】
実施例2
ベンジル酸化による1-(2'-ピリジル)プロパン-1,3-ジオールの調製
工程A:(J. Org. Chem. 22:589 (1957))
3-(2'-ピリジル)プロパン-1-オール(10g、72.9mmol)を酢酸(75mL)に溶解し、30%過酸化水素溶液をゆっくりと加えた。反応混合物を80℃で16時間加熱した。反応物を減圧下で濃縮し残渣を無水酢酸に溶解して110℃で終夜加熱した。反応完結と同時に無水酢酸を減圧下で留去した。混合物をクロマトグラフィーに付しメタノール-塩化メチレン(1:9)で溶出して純粋なジアセテート10.5g(60%)を得た。
【0103】
工程B:
ジアセテート(5g、21.1mmol)をメタノール−水(3:1、40mL)に溶解し、炭酸カリウム(14.6g、105.5mmol)を加えた。室温で3時間撹拌し、反応混合物を濃縮した。残渣をクロマトグラフィーに付しメタノール-塩化メチレン(1:9)で溶出して、結晶性のジオール2.2g(68%)を得た。
【0104】
実施例3
Grignard付加による、プロパン-1,3-ジオールからの1-(アリール)-プロパン-1,3-ジオールの調製
工程A:(J. Org. Chem. 53:911 (1988))
塩化オキサリル(5.7mL、97mmol)をジクロロメタン(200mL)に溶解し、-78℃でジメチルスルホキシド(9.2mL、130mmol)を加えた。反応混合物を-78℃で20分間撹拌し、3-ベンジルオキシ)プロパン-1-オール(11g、65mmol)/ジクロロメタン(25mL)を加えた。-78℃で1時間経過後、トリエチルアミン(19mL、260mmol)を加えて反応を停止させ、室温にまで加温した。後処理をしてカラムクロマトグラフィーに付し、ジクロロメタンで溶出して3-(ベンジルオキシ)プロパン-1-アール8g(75%)を得た。
【0105】
工程B:
3-(ベンジルオキシ)プロパン-1-アール(1g、6.1mmol)をTHFに溶解し0℃に冷却して、臭化4-フルオロフェニルマグネシウムのTHF溶液(1M、6.7mL、6.7mmol)を加えた。反応液を室温にまで加温し1時間撹拌した。後処理をしてカラムクロマトグラフィーに付し、ジクロロメタンで溶出してアルコール0.7g(44%)を得た。
【0106】
工程C:
ベンジルエーテル(500mg)を酢酸エチル(10mL)に溶解し、10% Pd(OH)2C(100mg)を添加した。混合物を水素ガス下で16時間撹拌した。反応混合物をセライトで濾過して濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーに付し、酢酸エチル-ジクロロメタン(1:1)で溶出して生成物340 mg (79%)を得た。
【0107】
実施例4
アリールアルデヒドから1-アリール置換プロパン-1,3-ジオールを調製する一般法
工程A:(J. Org. Chem. 55:4744 (1990))
ジイソプロピルアミン(2mmol)をTHF (0.7ml/mmol ジイソプロピルアミン)に溶解し-78℃に冷却して、n-ブチルリチウム(2mmol、2.5Mヘキサン溶液)をゆっくりと加えた。反応液を-78℃で15分間撹拌し、酢酸エチル(2mmol)をTHF(0.14ml/mmol 酢酸エチル)に溶解してゆっくりと加えた。-78℃で更に30分間撹拌してアリールアルデヒド(1.0mmol/0.28ml THF)のTHF溶液を加えた。反応液を-78℃で30分間撹拌し室温にまで加温してさらに2時間撹拌した。0.5M HClで処理をして、有機層を濃縮しβ-ヒドロキシエステルの未精製オイルを得た。
【0108】
工程B:
未精製のヒドロキシエステルをエーテル(2.8ml/mmol)に溶解し、氷水浴で冷却して水素化リチウムアルミニウム(3mmol)を塊で加えた。氷水浴の氷が溶解するまで撹拌し反応液を室温にまで加温した。室温で終夜撹拌した後、反応液を再度氷水浴で冷却し酢酸エチルを添加して反応を停止した。0.5M HClで処理をして、得られた未精製オイルを蒸留またはクロマトグラフィーで精製した。
【0109】
実施例4a
1-(3-メトキシカルボニルフェニル)-1,3-プロパンジオールの合成
実施例4と同様にして1-(3-ブロモフェニル)-1,3-プロパンジオールを調製し、続いて以下のように修飾した。
1-(3-ブロモフェニル)-1,3-プロパンジオール(2g、8.6mmol)、メタノール(30mL)、トリエチルアミン(5mL)および塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.36g、05mmol)を圧力容器に入れた。一酸化炭素で55 psiに加圧して密封し、85℃で24時間加熱した。容器を冷却して開放し反応混合物をセライト(登録商標)で濾過してメタノールで洗浄した。濾液をあわせて減圧下で濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製して題記化合物を得た(1.2g、66%)。
TLC: ヘキサン/酢酸エチル=2/8; Rf = 0.5
H-NMR(CDCl3、Varian Gemini 200 MHz): 5.05-4.95(m, 1H), 3.9(s, 3H), 2-1.8(m, 2H).
【0110】
実施例4b
1-(4-メトキシカルボニル)-1,3-プロパンジオールの合成
1-(4-ブロモフェニル)-1,3-プロパンジオールを実施例4と同様に調製し、更に実施例4aのように修飾した。
TLC: ヘキサン/酢酸エチル=3/7; Rf = 0.35
H-NMR (CDCl3、Varian Gemini 200 MHz): 5.1-5(m, 1H), 3.91(s, 3H), 2.05-1.9(m, 2H).
エナンチオリッチな1-(アリール)プロパン-1,3-ジオールの合成
【0111】
実施例5
1,3-ジオールラセミ体分割の一般法
下記に示すとおり、実施例1−4で調製されたラセミ体ジオールを分割すると両方のエナンチオマーが得られる。
工程A:
ジオール(1.0mmole)をTHF(1.0ml)に溶解し、ヘキサメチルジシラジド(2.1mmole)、続いて触媒量のトリメチルシリルトリフレート(2、3滴)を加えた。室温で1時間撹拌した後反応液をヘキサン(4ml)で希釈し、氷冷水で処理をした。得られたジシリルエーテルをクロマトグラフィーで精製し、または十分に純度が高ければそのまま次の反応に供した。
【0112】
工程B:
ジシリルエーテル(1.0mmole)、および(-)-メントーン(1.1mmole)を塩化メチレン(2.0 ml)に溶解し、-40℃に冷却してトリメチルシリルトリフレート(0.11mmole)をゆっくりと加えた。反応液を48時間、-50℃から-60℃に保ち、その後ピリジンを加えて反応を停止した。室温にまで加温した後、粗反応物をヘキサン(4.0ml)で希釈し、水で処理した。二つのケタールをクロマトグラフィーで分離した。
【0113】
工程C:
分離したケタールをそれぞれメタノール(4.0ml/mmole)に溶解し、触媒量の濃塩酸を加えて加水分解した。室温で終夜撹拌した後、減圧下でメタノールを除去し残渣を水で処理した。分割したジオールを更にクロマトグラフィーまたは蒸留で精製した。
【0114】
実施例6
Sharplessの不斉エポキシ化を用いるエナンチオリッチな1-(3'-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロキシプロパンの合成
工程A:
m-クロロ桂皮酸(25g、137mmol)をエタノール(275mL)中に分散させ、室温で濃硫酸(8mL)を加えた。反応液を終夜還流し濃縮した。氷水を加えて析出した白色固体を濾取し冷水で洗浄した。固体を減圧下で乾燥しエステル25g(87%)を得た。
Rf= 0.5 (シリカ上、ジクロロメタン)
【0115】
工程B:
エチルm-クロロ桂皮酸(23g、109.5mmol)をジクロロメタンに溶解し-78℃に冷却して1 M DIBAL-Hのジクロロメタン溶液(229mL、229mmol)を1時間かけて滴下した。反応液を-78℃でさらに3時間撹拌した。酢酸エチルを添加して反応を停止させ、酒石酸カリウムナトリウムの飽和水溶液を加えて室温で3時間撹拌した。有機層を分液して塩を酢酸エチルで洗浄した。有機層をあわせて濃縮し120℃/1mmで蒸留して純粋なアリルアルコール14g (76%)を得た。
Rf=0.38、(シリカ上、酢酸エチル/ヘキサン=1/1)
【0116】
工程C:
m-クロロ桂皮アルコール(5g、29.76mmol)をジクロロメタン(220mL)に溶解し、モレキュラーシーブス粉末(4Å)(2.5g)を加えて混合物を-20℃に冷却した。(+)-酒石酸ジエチルを-20℃で加えて、15分間撹拌し、チタンテトライソプロポキシド(0.87g、2.97mmol)を添加した。反応液を30分間撹拌し、t-ブチルヒドロパーオキシドのヘプタン溶液(5-6M、10mL、60mmol)を滴下し、その間内部温度を-20℃から-25℃の間に保った。混合物を-20℃で3時間撹拌し、10% NaOH/飽和NaCl水溶液(7.5mL)、続いてエーテル(25mL)を加えた。反応液を10℃にまで加温し15分間撹拌して無水硫酸マグネシウム(10g)およびセライト(登録商標)(1.5g)を加えた。混合物をさらに15分間撹拌し、濾過して25℃で濃縮し。未精製のエポキシアルコールを得た。
Rf=0.40、(シリカ上、酢酸エチル/ヘキサン=1/1)
【0117】
工程D:
先の反応で得られたm-クロロエポキシ桂皮アルコールをジメトキシエタン(300mL)に溶解し、窒素下、0℃に冷却して65% Red-Alトルエン溶液(18.63mL、60mmol)を滴下した。室温で3時間撹拌した後、溶液を酢酸エチル(400mL)で希釈して飽和硫酸ナトリウム水溶液(50mL)を加えて反応を停止した。室温で30分間撹拌した後、生じた白色沈殿を濾取し、酢酸エチルで洗浄した。濾液を乾燥し濃縮した。粗生成物を125-130℃/0.1mmで蒸留してエナンチオリッチな(R)-1-(3'-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロキシプロパン3.75g (67%)を得た。
Rf=0.4、(酢酸エチル/ジクロロメタン=1/1)
【0118】
エナンチオマー過剰率はジアセテート(ジオールを塩化メチレン中無水酢酸、トリエチルアミン、および触媒量のDMAPで処理して調製される)としてHPLC〔(S,S) Whelko-0、250cm X 4.0mm ID、Regisより購入〕を用いて定められる。
(R)-1-(3'-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロキシプロパン:91% ee
(+)-ジイソプロピル酒石酸を用いると、>96% eeの(R)-1-(3'-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロキシプロパンを得た。
(S)-1-(3'-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロキシプロパンもまた、(-)-酒石酸を使用し、同じ条件により不斉エポキシ化と還元を経由して調製された。79% eeの(S)-1-(3'-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロキシプロパンが得られた。
【0119】
実施例7
水素移動反応によるエナンチオリッチな1-(3'-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロキシプロパンの合成
工程A:3-(3'-クロロフェニル)-3-オキソ-プロパン酸メチルの調製
撹拌装置、温度計保護管/温度計、および窒素流入口を備えた22Lの三ツ口丸底フラスコを窒素ガスでフラッシュし、続いてTHF(6L)、カリウムt-ブトキシド(1451g)およびTHF (0.5L)を入れた。得られた混合物を周辺温度で15分間撹拌し、20℃の水浴を装着した。3Lの丸底フラスコ内に3'-クロロアセトフェノン (1000g)と炭酸ジエチル(1165g)を入れ、得られた黄色の溶液を上記のt-ブトキシド溶液中へゆっくりと加えた。この間、温度は16℃から31℃の間に保った。添加操作(1時間10分)が完了後、冷却バスを取り除いて溶液を1.5時間撹拌した。TLCは反応完了を示した。固定式の5ガロン分液ロートに氷水(4L)と濃塩酸(12M溶液、1.3L)を入れた。暗赤色の反応溶液を該溶液中に加えて反応を停止させ混合物を15分間撹拌した。分液して水層をトルエン(4 L)で更に抽出した。有機層をあわせて飽和食塩水で洗浄し(2 × 3L、それぞれ10分間撹拌)、乾燥して(MgSO4)、濾過し減圧下で濃縮して褐色のオイル1480gを得た。このオイルを高真空下(10 torr)で終夜放置すると1427gとなった。これを減圧下で蒸留し(短カラム、分画受器)、108-128℃/1-0.5 torrの留分を集めて黄色オイル1273.9gを得た(92.6%)。
Rf=0.36(20% 酢酸エチル/ヘキサン).
【0120】
工程B:(S)-3-(3'-クロロフェニル)-3-ヒドロキシプロピオン酸メチルの調製
【化20】

撹拌装置、温度計、滴下漏斗および窒素流入口を備えた12Lの丸底三ツ口フラスコを窒素ガスでフラッシュし、ギ酸(292mL、350g)を入れた。トリエチルアミン(422mL、306g)を滴下漏斗に入れ、フラスコを撹拌しながら<45℃の温度でアミンをゆっくりと滴下した。滴下終了の後(1.5時間)、氷浴中で該溶液を20分間撹拌し、更に周辺温度で1時間撹拌した。続いて、3-(3-クロロフェニル)-3-オキソ-プロパン酸メチル(1260g)、DMF(洗浄分を含めて2.77L)、および(S,S)-Ts-DPEN-Ru-Cl-(p-シメン)(3.77g)をフラスコ内に入れた。フラスコに加熱用のマントルを装着し滴下漏斗を濃縮器(5C循環式冷却液)と交換した。反応液を撹拌しながらゆっくりと60℃に加熱し(60℃に到達するのに90分)、内容物を4.25時間60℃に維持した。HPLCは3%の出発物質の残存を示した。溶液を60℃でさらに8時間撹拌し、その後終夜で徐々に周辺温度にまで冷却した。HPLCは0.5%の出発物質の残存を示した。5ガロンの固定式分液漏斗内に水(10 L)およびMTBE(1L)を加えた。上記の反応液を該水溶液中に注ぎ、さらに反応フラスコを1LのMTBEで洗浄してこの分液漏斗内に加えた。内容物を数分間撹拌し、二層を分液した。水層をさらにMTBE(2 X 1L)で抽出し、有機層を合一して食塩水で洗浄し減圧下で濃縮して赤色のオイル1334gを得た(105%)。このオイルは更に精製することなく次の工程で使用した。
【0121】
未精製のヒドロキシエステル(10mg、0.046mmol)をジクロロメタン(1mL)に溶解した。無水酢酸(22μL、0.23mmol)、および4-(ジメチルアミノ)ピリジン(22mg、0.18mmol)を加えて溶液を周辺温度で15分間撹拌した。溶液をジクロロメタンで希釈し1N塩酸で洗浄した(3 X 3mL)。有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過して減圧下に濃縮した。残渣のオイルをメタノールに溶解しキラルHPLCで分析した〔Zorbax Rx-C18、250 X 4.6mm; 移動相: 水/アセトニトリル=65/35(v/v);イソクラティック溶出;流速=1.5mL/min;注入体積=15μL;検出UV 220nm;保持時間:生成物=9.3min、出発物質=17.2min.〕。ヒドロキシエステルをアセチル化した後キラルHPLC分析に供したところ、91% eeであった〔HPLC条件:カラム:Pirkle covalent (S,S) Whelk-O 10/100 krom FEC, 250 X 4.6mm; 移動相: メタノール/水=70/30(v/v);イソクラティック溶出;流速=1.5mL/min;注入体積=10μL;検出 UV 220nm;保持時間:S-(アセチル化)ヒドロキシエステル=9.6min、R-(アセチル化)ヒドロキシエステル=7.3min〕。
【0122】
工程C:(S)-3-(3'-クロロフェニル)-3-ヒドロキシプロパン酸の調製
10Lの回転式エバポレーター用フラスコ内に未精製のヒドロキシエステルを入れ、2M水酸化ナトリウム溶液(2.5L)を加えた。得られた溶液を回転式エバポレーター上で、周辺の気圧および温度条件下、2時間撹拌した。HPLCは5%の出発物質の残存を示した〔HPLC条件:カラム、Zorbax Rx-C18, 250 X 4.6mm;移動相、水/アセトニトリル=65/35(v/v);イソクラティック溶出;流速=1.5mL/min;注入体積=15μL;検出、UV 220 nm;保持時間、生成物=3.8min、出発物質=18.9min.〕。溶液のpHは11であった(広域pHメーター)。2M NaOH溶液(約100mL)を追加してpHを14に調節し、溶液をさらに30分間撹拌した。HPLCは反応の完結を示した。溶液を5ガロンの固定式分液漏斗内に移し、MTBE(2L)で抽出した。
【0123】
二層を分液して、有機層を捨てた。水層を分液漏斗内に戻して12M塩酸(600mL)で酸性化し、混合物をMTBE (1 X 2L、2 X 1L)で抽出した。酸性下の有機抽出物を合一して乾燥し濾過して減圧下で濃縮し、褐色の油状半固体1262gを得た。残渣に酢酸エチル(1L)を加えてスラリーとし、撹拌装置、加熱用マントル、濃縮器、および温度計を備えた12Lの三ツ口丸底フラスコに移した。混合物を撹拌しながら加熱しすべての固体を溶解させ(28℃)、暗色の溶液を10℃に冷却した(11℃で沈殿析出)。混合物をゆっくりとヘキサンで希釈し(4Lで1時間)、得られた混合物を<10℃で2時間撹拌した。混合物を濾過して集めた混合物を冷ヘキサン/酢酸エチル(4/1)(1L)で洗浄し、恒量となるまで乾燥した(-30 in. Hg、50℃、4時間)。ベージュ色の固体837gを回収した(70.4%)。mp=94.5-95.5℃
【0124】
ヒドロキシ酸のサンプル50mgをボラン-THFでジオールに還元し(工程C参照)、これをジアセチル化(工程Bと同様)してキラルHPLCで分析した。保持時間:S-ジオール(ジアセチル化)=12.4min、R-ジオール(ジアセチル化)=8.8min。ee = 98%。
ヒドロキシ酸の二次晶を単離した。上記の濾液を減圧下に濃縮し260gのスラッジを得た。これを酢酸エチル(250mL)に溶解し、この暗色溶液を撹拌しながらヘキサン(1000mL)でゆっくりと希釈し、得られた混合物を周辺温度で終夜撹拌した。混合物を濾過して集めた固体をヘキサン/酢酸エチル(5/1)(200mL)で洗浄し恒量となるまで乾燥した(-30 in. Hg、50℃、16時間)。ベージュ色の固体134gを回収した(11.2%)。ee = 97%。
【0125】
工程D:(S)-(-)-1-(3-クロロフェニル)-1,3-プロパンジオールの調製
【化21】

撹拌装置、温度計保護管/温度計および窒素流入口を備えた22Lの三ツ口丸底フラスコ内に2M ボラン-THF(3697g、4.2L)を入れて撹拌しながら5℃に冷却した。(S)-3-(3-クロロフェニル)-3-ヒドロキシプロパン酸(830g)をTHF(1245mL)に溶解した(わずかに発熱)。反応フラスコに滴下漏斗(1L)を装着し、このヒドロキシ酸溶液をボラン溶液中に撹拌しながらゆっくりと滴下した。温度は<16℃に保った。滴下終了後(3時間)、混合物を氷浴中の温度で1.5時間撹拌した。水(2.5L)を注意して加えて反応を停止させた。滴下の終了後(30分間)、3M NaOH溶液(3.3L)を加え(温度は35℃に上昇)、得られた混合物を更に20分間撹拌した(温度は30℃)。反応混合物を5ガロンの固定式分液漏斗内に移し、二層を分液した。水層をMTBE (2.5L)で抽出し有機層(THFおよびMTBE)を合一して20wt% NaCl溶液(2L)で洗浄し、MgSO4(830g)とともに30分間撹拌した。混合物をセライト(登録商標)で濾過し、減圧下に濃縮して粘稠な褐色のオイル735gを得た。
【0126】
オイルを減圧蒸留により精製し135-140℃/0.2mmHgの留分を集めて、無色のオイル712.2gを得た(92.2%)。
該オイルをジアセチル化しキラルHPLCにて分析した(工程B参照)。保持時間:S-ジオール(ジアセチル体)=12.4min、R-ジオール(ジアセチル体)=8.9min。[α]=-51.374(5mg/mL、CHCl3)
【0127】
実施例8
水素移動反応による、エナンチオリッチな1-(4'-ピリジル)-1,3-ジヒドロキシプロパンの合成
工程A: 3-オキソ-3-(ピリジン-4-イル)プロパン酸メチルの合成
頭上型撹拌装置、加熱用マントル、および窒素ガス流入口を備えた50Lの三ツ口フラスコにTHF(8L)、カリウムt-ブトキシド(5kg、44.6mol)、およびTHF(18L)を入れた。さらに、4-アセチルピリジン(2.5kg、20.6mol)、続いて炭酸ジメチル(3.75L、44.5mol)を加えた。加熱せずに反応混合物を2.5時間撹拌し、次いで57-60℃で3時間撹拌した。加熱を停止し混合物を終夜でゆっくりと冷却した(15時間)。45cmのブフナー漏斗で混合物を濾過した。固体を50Lフラスコ内に戻し、酢酸水(酢酸3L、水15L)で希釈した。
【0128】
混合物をMTBE(1 x 16L, 1 x 12L)で抽出し、有機層をあわせてNa2CO3水溶液(1750g/水12.5L)、NaHCO3飽和水溶液(8L)、飽和食塩水(8L)でそれぞれ洗浄しMgSO4(500g)上で終夜乾燥した。溶液を濾過して溶媒を回転式エバポレーターで留去し6.4kgの塊を得た。得られた懸濁液を氷浴で冷却し2時間撹拌した。固体を濾取して、MTBE(500mL)で洗浄し、減圧下20℃のオーブンで15時間乾燥しケトエステル2425gを黄白色固体として得た(収率66%)。
MTBEの母液を約1Lに濃縮した。得られた懸濁液を氷浴で1時間冷却した。固体を濾取してMTBE(2 x 150mL)で洗浄し減圧オーブンで乾燥して二次晶240gを得た(6%)。
TLC:Merck シリカゲルプレート、THF/ヘキサン(1/2)、UVランプ検出、 Rf(SM)=0.25、Rf(生成物)=0.3.
mp.74-76℃
【0129】
工程B:S-3-ヒドロキシ-3-(ピリジン-4-イル)-プロパン酸メチルの合成
【化22】

頭上型撹拌装置、温度計保護管/温度計、滴下漏斗(1 L)、および冷却容器(空)を備えた22Lの三口丸底フラスコを、窒素ガスでフラッシュし、ギ酸(877g)を入れて氷浴で冷却した。滴下漏斗にトリエチルアミン(755g)を入れ、ギ酸を撹拌しつつゆっくりと50分間かけてアミンを滴下した。滴下が完了後、冷却浴を取り除き反応溶液をDMF(5.0L)で希釈した。ケトエステル(2648g)を一度に加え、続いてDMF 0.5Lを追加した。フラスコに加熱用マントルを装着し、混合物を撹拌しながら徐々に加熱し16℃ですべての固体が溶解した。
【0130】
触媒の(S,S)-Ts-DPEN-Ru-Cl-(p-シメン) (18.8g)を一度に加え、混合物を撹拌しながら55℃で1時間加熱した。得られた暗色の溶液を55℃で16時間撹拌した。TLCは反応の完結を示した。溶媒を減圧下で留去し(Buchi R152 回転式高真空エバポレーター、浴温60℃)3574gの褐色オイルを得た。該オイルをジクロロメタン (10L)に溶解し、5ガロンの固定式分液漏斗へ移した。暗色の溶液を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(3.0L)で洗浄し、その水溶液をジクロロメタン(3.0 L)で再び抽出した。ジクロロメタン抽出液を合一してMgSO4(300g)上で乾燥し、濾過して減圧下に濃縮し、3362gの褐色オイル(理論量の125%、1H-NMRよりDMFを含む)を得た。
【0131】
カラム:Chiralpak AD、0.46 x 25cm;移動相、エタノール:ヘキサン=10:90;イソクラティック溶出;流速=1.5mL/min;注入体積=10μL;検出 UV 254nm.
保持時間:R-ヒドロキシエステル=19.9min.
S-ヒドロキシエステル=21.7min.
保持時間:R-ジオール=14.2min.
S-ジオール=15.5min
ヒドロキシエステル:
1H-NMR (CDCl3):δ 2.73(d, 2H, J=1.5Hz), 3.73(s, 3H), 4.35(s, 1H), 5.11-5.19(m, 1H), 7.31(d, 2H, J=6.6Hz), 8.53(d, 2H, J=6.0Hz).
TLC:Merck シリカゲル60プレート、2.5 X 7.5cm、250ミクロン; UVランプ: 5% MeOH-CH2Cl2; Rf(S.M.)=0.44、Rf(生成物)=0.15.
e.e. = 87% S-ヒドロキシエステル
【0132】
工程C:S-(-)-1-(ピリド-4-イル)-1,3-プロパンジオールの合成
【化23】

頭上型撹拌装置、温度計保護管/温度計、滴下漏斗(2L)、濃縮器および冷却容器(空)を備えた22Lの四ツ口丸底フラスコを、窒素ガスでフラッシュし、水素化ホウ素ナトリウム(467g、12.3mol)、1-ブタノール(9.0L)、および水(148mL、8.23mol)を順次加えた。未精製のヒドロキシエステルを1-ブタノール(1.0L)に溶解し、その溶液を滴下漏斗に入れた。温度を<62℃に保つため必要により冷却しつつ、ヒドロキシエステル溶液を3.25時間かけて滴下した。滴下の終了後、混合物を0.5時間撹拌し、その後フラスコに加熱用マントルを装填して混合物を撹拌しながら90℃に0.75時間加熱した。さらに混合物を撹拌しながら90-93℃で2.25時間加熱し、その後1.5時間かけて28℃まで冷却した。炭酸カリウム水溶液(10 wt/vol%、6L)を加えて反応を停止させ、混合物を10分間撹拌した。二層を分液してブタノール層を炭酸カリウム水溶液 (10 wt/vol%、2L)、および塩化ナトリウム水溶液(15 wt/vol %、2L)で洗浄した。濃縮液および留去溶媒10.5Lを得るまで、溶媒を減圧下で除去した(Buchi R152回転式高真空エバポレーター、浴温=60℃)。
【0133】
アセトニトリル(3L)をエバポレーターフラスコ内に注ぎ、減圧下で溶媒を留去した。アセトニトリル(9 L)を再度エバポレーターフラスコ内に注ぎ、スラリーを約60℃で(浴温70℃、大気圧下)15分間撹拌した(回転式エバポレーター上で回転)。熱いスラリーをセライト(登録商標)521で濾過した(アセトニトリル1L中、スラリーとして250gを24cmのBuchner漏斗にあらかじめパック)。濾液を少し減圧下で濃縮し(留去溶媒5L)、得られたスラリーを大気圧下回転式エバポレーターで加熱して固体をすべて溶解させた(浴温=65℃)。加熱を停止し、得られた溶液を回転式エバポレーター上で10時間撹拌し、徐々に周辺温度にまで冷却した。混合物を濾過して得られた固体をアセトニトリルで洗浄し(2 X 200mL)、恒量となるまで乾燥した(-30 in. Hg、55℃、4時間)。S-(-)-1-(4-ピリジル)-1,3-プロパンジオール496gを黄色固体として得た(収率39%)。
【0134】
mp.= 98-100℃
HPLC条件:
カラム:Chiralpak AD、0.46 x 25cm;移動相:エタノール/ヘキサン=10/90、イソクラティック溶出;流速=1.5mL/min;注入体積=10μL;検出 UV 254nm.
保持時間:R-ジオール=14.2min.
S-ジオール=15.5min.
TLC:Merck シリカゲル60プレート、2.5 X 7.5cm、250ミクロン、UVランプ、15%MeOH-CH2Cl2、Rf(出発物質)=0.38、Rf(生成物)=0.17、Rf(ホウ素錯体)=0.26.
【0135】
実施例9: (-)-β-クロロジイソピノカンフェニルボラン(DIPCl)還元による(S)-3-(3'-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロキシプロパンの合成
工程A:3-(3-クロロフェニル)-3-オキソ-プロパン酸の調製
撹拌装置、および滴下漏斗(2L)を備えた12Lの三ツ口丸底フラスコを、窒素ガスでフラッシュし、ジイソプロピルアミン(636mL)およびTHF(1.80L)を入れた。熱電対電極を反応溶液中に沈め、内容物を撹拌しながら-20℃に冷却した。n-ブチルリチウム(2.5M ヘキサン溶液1.81L)を滴下漏斗に入れ、フラスコを撹拌して温度を-20から-28℃に維持しながらこれをゆっくりと滴下した。滴下の終了後(30分)、滴下漏斗をヘキサン(30mL)で洗浄し、溶液を-62℃に冷却して撹拌した。溶液を撹拌しながら、酢酸トリメチルシリル(300g)をゆっくりと加え、温度は<-60℃に維持した。
【0136】
滴下の完了後(30分)、-60℃で15分間溶液を撹拌した。次に、<-60℃の温度を維持しながら、塩化3-クロロベンゾイル(295mL)をゆっくりと加えた。添加の終了後(65分)、冷浴を取り去り反応溶液を徐々に0℃にまで加温しながら1.25時間撹拌した。反応フラスコを氷浴で冷却し、撹拌しながら水(1.8L)を加えた。反応混合物を10分間撹拌してから、t-ブチルメチルエーテル(1.0L)で希釈した。下層の水層を分離して、撹拌装置付きの12L三口フラスコに移し、t-ブチルメチルエーテル(1.8L)を加えて氷浴で<10℃に冷却しながら撹拌した。濃塩酸(12M、300mL)を加えて混合物を激しく撹拌した。二層を分離し、水層に濃塩酸(30mL)を追加してこれを酸性化しt-ブチルメチルエーテル(1.0L)で再度抽出した。MTBE抽出物をあわせて食塩水(1L)で洗浄し、乾燥し(MgSO4、70g)、濾過して減圧下に濃縮し、827gの黄色固体を得た。この未精製の固体にヘキサン(2.2L)を加えてスラリー化し、これを撹拌装置付きの5L三口フラスコに移した。混合物を氷浴で<10℃に冷却しながら1時間撹拌し、濾過してヘキサン(4 X 100mL)で洗浄し恒量となるまで乾燥した(-30 in. Hg、周辺温度、14時間)。黄白色の粉末309gを得た(68.6%)。
【0137】
工程B:(S)-3-(3-クロロフェニル)-3-ヒドロキシプロパン酸の調製
【化24】

撹拌装置および滴下漏斗を備えた12Lの三ツ口丸底フラスコを窒素ガスでフラッシュし、3-(3-クロロフェニル)-3-オキソ-プロパン酸(275.5g)およびジクロロメタン(2.2L)を入れた。反応スラリーに熱電対電極を沈め、内容物を撹拌しながら-20℃に冷却した。5分間かけてトリエチルアミン(211mL)を撹拌中のスラリーに滴下し、固体をすべて溶解させた。(-)-β-クロロジイソピノカンフェニルボランのジクロロメタン溶液(1.60M、1.04L)を滴下漏斗内に入れ、フラスコ内を撹拌しながら温度を-20℃から-25℃に維持しつつこれを滴下した。滴下の完了後(35分)、温度を氷浴温度にまで加温し(2-3℃)、4時間撹拌した。
【0138】
製造中のNMR分析によると出発物質は<4%であった。その曇ったオレンジ色の反応混合物に水(1.2 L)を加え。続いて3M NaOH溶液(1.44L)を加えた。混合物を5分間激しく撹拌し、次いで分液漏斗に移した。二層を分液し、塩基性の水層を酢酸エチル(1.0L)で洗浄した。水層に濃塩酸(300mL)を加えて酸性化し、酢酸エチル(2 X 1.3L)で抽出した。二つの酢酸エチル抽出液をあわせて食塩水(600mL)で洗浄し、乾燥した(MgSO4、130g)。濾過して、減圧下に濃縮し黄色オイル328gを得た(放置すると結晶化)。この固体に酢酸エチル(180mL)を加えてスラリー化し、これを撹拌装置付きの2L三口フラスコに移した。混合物を<10℃に冷却(氷浴)して撹拌し、ヘキサン(800mL)で希釈した。得られた混合物を氷浴温度で4時間撹拌してから濾過した。得られた固体をヘキサン/酢酸エチル(4/1)で洗浄し(3 X 50mL)、恒量となるまで乾燥した(-30 in. Hg、周辺温度、12時間)。白色の粉末207.5gを得た(74.5%)。
【0139】
工程C:(S)-(-)-1-(3-クロロフェニル)-1,3-プロパンジオールの調製
【化25】

この化合物は実施例7、工程Dと同様にして調製した。
残渣をメタノール(1 mL)に溶解し、キラルHPLC(実施例7、工程B参照)で分析した。ee >98%であった。
【0140】
実施例10:触媒的不斉水素化による1,3-ジオールの調製
工程A:
β-ケトエステルは実施例7、工程Aと同様にして合成した。
工程B:
β-ケトエステル(1 mmole)のメタノールまたはエタノール溶液(5-10 ml/mmole ケトエステル)を室温で脱気して窒素ガスを加える操作を数回繰り返した。脱気した溶液をグローブバッグ内に移し、窒素雰囲気下でステンレススチール製容器内に撹拌子と1モル%のRu-BINAP触媒を入れ、これに当該溶液を注いだ。金属容器を密封し、グローブバッグから取り出してH2ガスでパージしてからH2ガス150psi、室温の条件下で18-24時間撹拌した。水素圧を開放して容器を開け反応混合物を取り出して濃縮した。未精製のβ-ヒドロキシエステルをそのまま加水分解に供した。
【0141】
工程C:
実施例7、工程Cと同様にして未精製のβ-ヒドロキシエステルを加水分解した。
工程D:
光学活性なβ-ヒドロキシエステルを実施例7、工程Dと同様にして還元した。
式Iのホスホリル化剤(ラセミ体)の合成
【0142】
実施例11:式Iのトランス-4-(アリール)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの一般的合成法
【化26】

【0143】
実施例11a:トランス-4-(3-クロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキソホスホリナンの合成
1-(3-クロロフェニル)-1,3-プロパンジオール(25g、134mmol)およびトリエチルアミン (62.5mL、442mmol)をTHFに溶解し、室温で4-ニトロフェニル-ホスホロジクロリデート(37.7g、147mmol)のTHF溶液に加えて得られた溶液を加熱環流した。2時間後、TLCは出発物質のジオールの消滅とシスおよびトランス異性体の生成(60/40の比、HPLC)を示した。透明の黄色溶液を30℃に冷却し、4-ニトロフェノキシナトリウム(56g、402mmol)を加えて反応混合物を再び加熱環流した。90分後、赤みを帯びた反応混合物を室温にまで冷却し同温度で2時間撹拌してから冷蔵庫内で終夜放置した。最終的なトランス/シスの比はHPLCにより96/4と決定された。
【0144】
塩化アンモニウムの飽和水溶液で反応を停止させ酢酸エチルで希釈した。二層を分液して有機層を0.3N水酸化ナトリウム水溶液で4回洗浄してニトロフェノールを除去し、続いて塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。濾過して濾液を減圧下に濃縮し得られた固体を酢酸エチルから再結晶して灰白色の大きな針状結晶を得た(45g、収率91%、mp=115-116℃、純度 98 A%)。
1H-NMR(CDCl3、Varian Gemini 200MHz): C'-プロトン: シス異性体 5.6-5.8(m, 1H), トランス異性体 5.5-5.69(m, 1H).
TLC条件:Merckシリカゲル60 F254プレート、厚さ250μm;移動相、ヘキサン/酢酸エチル=60/40;Rf、ジオール=0.1, シスホスフェート=0.2, トランスホスフェート=0.35.
HPLC条件:カラム=Waters μ Bondapack C18 3.9 x 300mm;移動相、アセトニトリル/リン酸緩衝液pH6.2=40/60;流速=1.4mL/min;検出=UV 270nm;保持時間(分)、シス異性体=14.46, トランス異性体=16.66, 4-ニトロフェノール=4.14.
【0145】
実施例11b:トランス-4-(3-ピリド-3-イル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例11aと同様
1H-NMR(CDCl3、Varian Gemini 200MHz): C'-プロトン、トランス異性体5.6-5.8(m, 1H)
【0146】
実施例11c:トランス-4-(3,-5-ジフルオロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成:
実施例11aと同様
TLC条件:Merckシリカゲル60 F254プレート、厚さ250μm;移動相、ヘキサン/酢酸エチル=50/50;Rf、ジオール=0.1、シスホスフェート=0.25、トランスホスフェート=0.4.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz): C'-プロトン: トランス異性体5.7-5.5(m, 1H)
【0147】
実施例11d:トランス-4-(4-メチルフェニル)-2-(4-ニトロフェニル)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
1-(4-メチルフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC:ヘキサン/酢酸エチル=50/50;Rf、シスホスフェート=0.25、トランスホスフェート=0.35.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz):C'-プロトン、トランス異性体5.65-5.5(m, 1H).
【0148】
実施例11e:トランス-4-(3,5-ジメチルフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
1-(3,5-ジメチルフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC:ヘキサン/酢酸エチル=50/50;Rf、シスホスフェート=0.2、トランスホスフェート=0.3.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200 MHz): C'-プロトン、トランス異性体5.6-5.45(m, 1H).
【0149】
実施例11f:トランス-4-(3,5-ジクロロフェニル)-2-(4-ニトロフェニル)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
1-(3,5-ジクロロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC:ヘキサン/酢酸エチル=70/30;Rf、シスホスフェート=0.3;トランスホスフェート=0.5.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200 MHz): C'-プロトン、トランス異性体5.85-5.7(m, 1H).
【0150】
実施例11g:トランス-4-(ピリド-4-イル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
1-(ピリド-4-イル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC:ジクロロメタン/エタノール=95/5;Rf、トランスホスフェート=0.35.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200 MHz): C'-プロトン、トランス異性体5.7-5.55(m, 1H).
【0151】
実施例11h:トランス-4-(3-メトキシカルボニルフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
1-(3-メトキシカルボニルフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC:ヘキサン/酢酸エチル=30/70;Rf、シスホスフェート=0.5、トランスホスフェート=0.6.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200 MHz):C'-プロトン、トランス異性体5.7-5.6(m, 1H).
【0152】
実施例11i:トランス-4-(4-メトキシカルボニルフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
1-(4-メトキシカルボニルフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC:ヘキサン/酢酸エチル=30/70;Rf、シスホスフェート=0.35、トランスホスフェート=0.5.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.7-5.6(m, 1H).
【0153】
実施例11j:トランス-4-(5-ブロモピリド-3-イル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
1-(5-ブロモピリド-3-イル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.8-5.65(m, 1H).
【0154】
実施例11k:トランス-4-(2,3-ジクロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13aにおいて4-ニトロフェノールと水素化リチウムで異性化を行うこと以外は、1-(2,3-ジクロロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体6-5.9(m, 1H).
【0155】
実施例11l:トランス-4-(2,3,5-トリクロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13bにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、1-(2,3,5-トリクロロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.9-5.7(m, 1H).
【0156】
実施例11m:トランス-4-(2-クロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13aにおいて4-ニトロフェノールと水素化リチウムで異性化を行うこと以外は、1-(2-クロロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体6-5.9(m, 1H).
【0157】
実施例11n:トランス-4-(3,5-ジメトキシフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13bにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、1-(3,5-ジメトキシフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.55-5.45(m, 1H), 3.3(s, 6H).
【0158】
実施例11o:
トランス-4-(2-ブロモフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13aにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、1-(2-ブロモフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.95-5.85(m, 1H).
【0159】
実施例11p:トランス-4-(3-ブロモ-5-エトキシフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13bにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、1-(3-ブロモ-5-エトキシフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.9-5.75(m, 1H), 4.04(q, 2H), 1.39(t, 3H).
【0160】
実施例11q:トランス-4-(2-トリフルオロメチルフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13bにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、1-(2-トリフルオロメチルフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体6-5.75(m, 1H).
【0161】
実施例11r:トランス-4-(4-クロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-(4-クロロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC;ヘキサン/酢酸エチル=1/1;Rf、シスホスフェート=0.2、トランスホスフェート=0.6.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.6-5.5(m, 1H).
【0162】
実施例11s:トランス-4-(3-メチルフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-(3-メチルフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC;ヘキサン/酢酸エチル=6/4; Rf、シスホスフェート=0.2、トランスホスフェート=0.5.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.65-5.5(m, 1H).
【0163】
実施例11t:トランス-4-(4-フルオロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-(4-フルオロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.78-5.85(m, 1H).
【0164】
実施例11u:トランス-4-(2-フルオロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-(2-フルオロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.9-6.1(m, 1H).
【0165】
実施例11u:トランス-4-(3-フルオロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-(3-フルオロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.8-5.9(m, 1H).
【0166】
実施例11v:トランス-4-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニル]-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.75-5.9(m, 1H).
【0167】
実施例11w:トランス-4-(3-ブロモメチル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-(3-ブロモメチル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC;ヘキサン/酢酸エチル=1/1;Rf、シスホスフェート=0.25、トランスホスフェート=0.5.
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.8-5.95(m, 1H).
【0168】
実施例11x:トランス-4-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-2-(4-ニトロフェニル)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-(3,4-エチレンジオキシフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC;ヘキサン/酢酸エチル=1/1;Rf、トランスホスフェート=0.6.
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.8-5.9(m, 1H).
【0169】
実施例11y:トランス-4-(2-フルオロ-4-クロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-(2-フルオロ-4-クロロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC;ヘキサン/酢酸エチル=1/1;Rf、トランスホスフェート=0.7.
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.9-6(m, 1H).
【0170】
実施例11z:トランス-4-(2,6-ジクロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-(2,6-ジクロロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
TLC;ヘキサン/酢酸エチル=1/1;Rf、トランスホスフェート=0.65.
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体6.2-6.4(m, 1H).
【0171】
実施例11aa:トランス-4-(2-フルオロ-5-メトキシフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
異性化を行うことなくシス/トランス混合物からトランス体を単離すること以外は、1-(2-フルオロ-5-メトキシフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.8-5.95(m, 1H), 3.8(s, 3H).
【0172】
実施例11bb:トランス-4-(3-フルオロ-4-クロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13bにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、1-(3-フルオロ-4-クロロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.4-5.6(m, 1H).
【0173】
実施例11cc:トランス-4-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13bにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、1-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.5-5.6(m, 1H).
【0174】
実施例11dd:トランス-4-(2-フルオロ-5-ブロモフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13bにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、1-(2-フルオロ-5-ブロモフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.8-5.9(m, 1H).
【0175】
実施例11ee:トランス-4-(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13bにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、1-(2,3,5,6-テトラフルオロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.9-6(m, 1H).
【0176】
実施例11ff:トランス-4-(2,3,6-トリフルオロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13bにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、1-(2,3,6-トリフルオロフェニル)-1,3-プロパンジオールより出発し、実施例11aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、トランス異性体5.9-6(m, 1H).
【0177】
実施例12
オキシ塩化リンを用いる、トランス-4-(アリール)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの一般合成法
1-(3-クロロフェニル)-1,3-プロパンジオールをジクロロメタンに溶解し0℃に冷却してオキシ塩化リン(3.4mL、36.3mmol)、続いてトリエチルアミン(10.2mL、73mmol)を滴下した。2時間後、ナトリウム4-ニトロフェノキシド(10.63g、66mmol)をこのシス/トランスホスホロクロリデート試薬の溶液に加え、オレンジ色の反応混合物を1時間加熱環流した。溶液を冷却して、酢酸エチルと塩化アンモニウムの飽和水溶液で分液した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過して減圧下に濃縮した。残渣をTHFに溶解し、ナトリウム4-ニトロフェノキシド(10.63g、66mmol)を加えてオレンジ色の反応混合物を3時間加熱環流した(HPLC、トランス/シス=95/5)。溶液を冷却して、酢酸エチルと塩化アンモニウムの飽和水溶液で分液した。有機層を0.3N水酸化ナトリウム水溶液および飽和食塩水で洗浄し硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過して減圧下に濃縮した。実施例10と同様にして酢酸エチルから再結晶しリン酸エステル試薬を得た。
【0178】
実施例13
4-(アリール)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンのシス/トランス混合物中におけるトランス体の濃縮方法
実施例11と同様にして、4-(3-クロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンのシス/トランス混合物を調製した。但し、シスおよびトランス異性体は4-ニトロフェノールを加える前にカラムクロマトグラフィーで分離した。シス異性体溶液を下記塩基により調製される4-ニトロフェノキシド溶液に加えることによって、シス-4-(3-クロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンはトランス異性体に異性化した。
【0179】
実施例13a:
室温で、水素化リチウム(19.4mg、2.44mmol)を4-ニトロフェノールのTHF溶液に加えた。黄色の溶液を室温で30分間撹拌した。シス-4-(3-クロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナン(300mg、0.813mmol)をTHFに溶解してリチウム4-ニトロフェノキシド溶液に加えた。オレンジ色の反応混合物を室温で撹拌した。5時間後、トランス/シスの比は92.9/5.4(HPLCで決定)であった。
【0180】
実施例13b:
水素化リチウムに代えてトリエチルアミンを使用し、上記と同様にした。20時間後、トランス/シスの比は90.8/5.3であった。
実施例13c:
水素化リチウムに代えてDBUを使用し、上記と同様にした。3時間後、トランス/シスの比は90.8/5.3であった。
【0181】
実施例14:
トランス-4-(アリール)-2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナン合成の一般法
実施例14a:
Example 14a:トランス-4-(3-クロロフェニル)-2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
1-(3-クロロフェニル)-1,3-ジヒドロプロパン(17g、91.1mmol)をジクロロメタン(250mL)に溶解し0℃に冷却してオキシ塩化リン(16.76g、109.3mmol)をゆっくりと加えた。0℃で10分間撹拌した後、トリエチルアミンを塩化メチレン(50mL)に溶解して5分間かけて加えた。滴下が終了した後、反応混合物を2時間加熱環流した。褐色の反応混合物を室温にまで冷却し減圧下に冷却した。残渣を酢酸エチルで希釈し炭酸水素ナトリウム飽和水溶液(4 x 100mL)、水、飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。
【0182】
濾液を減圧下に濃縮し黄褐色固体を得た。エーテルより再結晶し目的物13.62gを白色粉末として得た(一次晶、56%)。母液からさらに再結晶させることにより二次晶1.53gを得、総収量15.15g(62%, mp=71-73℃)となった。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);C'-プロトン、シス異性体5.6-5.8(m, 1H)、トランス異性体5.55-5.69(m, 1H).
TLC条件:移動相、酢酸エチル/ヘキサン=1/1;Rf、生成物=0.53、ジオール=0.36;検出ホスホモリブデン酸/エタノール発色.
【0183】
実施例14b:トランス-4-(S)-(-)-(4-ピリジル)-2-クロロ-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
【化27】

オーブンで乾燥した250mLの丸底フラスコに磁気撹拌子を入れ、S-(-)1-(4-ピリジル)-1,3-プロパンジオール3.49g、続いてアセトニトリル60mLを加えた。不均一な混合物を室温で15分間撹拌し、4M HCl/ジオキサン5.7mLで5分間処理をした。反応混合物を室温で1時間撹拌し、2.16mLのPOCl3をシリンジで一度に加えた。別の25mLフラスコ内で窒素下、DABCO 2.68gをアセトニトリル15mLに溶解し、シリンジまたは滴下漏斗により該反応混合物に5分間で加えた。DABCO溶液の添加終了時、わずかに発熱反応が観測された(+10℃)。反応混合物を周辺温度で1時間撹拌したが反応液は不均一のままであった。反応混合物の少量サンプルを採取し乾燥N2を吹き付けて素早く乾燥し残渣をDMSO-d6に溶解しNMR測定した。
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz): C'-プロトン、トランス異性体5.85-5.75(d, 1H).
エナンチオリッチな式Iのホスホリル化剤の合成
【0184】
実施例15
キラルなトランス-4-(アリール)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの一般合成法
【化28】

実施例15a:(+)-(4R)-トランス-4-(3-クロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
4-ニトロフェノキシホスホロジクロリデート(7.63g、29.8mmol)を150mLのTHFに溶解して0℃に冷却し、(+)-(R)-1-(3-クロロフェニル)-1,3-プロパンジオール(3g、16.1mmol)およびトリエチルアミン(6.03ml、59.6mmol)をTHF(80mL)に溶解して滴下した。約2時間の後、出発物質のジオールは消失して4-ニトロフェニルリン酸エステルの二種の異性体が生成し、トリエチルアミン(8.31mL)、続いて4-ニトロフェノール(8.29g、59.6mmol)を追加した。
【0185】
反応混合物を終夜撹拌した。溶媒を減圧下に留去し、残渣を酢酸エチルと水に分配した。有機層を洗浄し(0.4M NaOH水溶液、水、および飽和食塩水)、MgSO4上で乾燥した。濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(30%酢酸エチル-ヘキサン)で精製して目的物4.213gを得た(71%)。
1H-NMR(200MHz, CDCl3):8.26(2H, d, J=9.7Hz), 7.27.5(6H, m), 5.56(1H, apparent d, J=11.7Hz), 4.44.7(2H, m), 2.22.6(1H, m), 2.02.2(1H, m).
m.p.:114 115℃.
[α]D= +91.71.
元素分析:Calculated for C15H13NO6ClP: C:48.73, H:3.54, N:3.79. Found: C:48.44, H:3.20, N:3.65.
【0186】
実施例15b
(-)-(4S)-トランス-4-(3-クロロフェニル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
【化29】

同様にして、3.116gの(-)-(S)-1-(3-クロロフェニル)-1,3-プロパンジオールから目的とするリン酸エステル4.492gを得た(72%)。
1H-NMR(200MHz、CDCl3): 8.26(2H, d, J=9.7Hz), 7.27.5(6H, m), 5.56(1H, apparent d, J=11.7Hz), 4.44.7(2H, m), 2.22.6(1H, m), 2.02.2(1H, m).
m.p.:114115℃.
[α]D= -91.71.
元素分析:Calculated for C15H13NO6ClP: C:48.73, H:3.54, N: 3.79. Found: C:48.61, H:3.36, N:3.66.
【0187】
実施例15c
(-)-(4S)-トランス-フェニル-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
実施例13bにおいて4-ニトロフェノールとトリエチルアミンで異性化を行うこと以外は、S-(-)-1-フェニル-1,3-プロパンジオールより出発して、実施例11aと同様。
TLC;ヘキサン/酢酸エチル=4/1);Rf = 0.4
1H-NMR(DMSO-d6、Varian Gemini 300MHz): C'-プロトン、トランス異性体5.85-5.75(m, 1H).
【0188】
実施例16:
エナンチオリッチなホスホリル化試薬の合成において、エナンチオマー過剰率(ee)を維持する一般法
実施例16a
(-)-(4S)-トランス-(ピリド-4-イル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
【化30】

頭上型撹拌装置および窒素流入口を備えた12Lの丸底フラスコに、(S)-(-)-1-(ピリド-4-イル)-1,3-プロパンジオール(1.2kg、7.83mol)およびピリジン(6L)を入れた。室温で0.5時間混合物を激しく撹拌し、固体をすべて溶解させた。一方、22Lの三口フラスコに頭上型撹拌装置、熱電対、冷却浴槽および窒素流入口を装填した。この容器に4-ニトロフェニルホスホロジクロリデート(2.01kg、7.83mol)およびピリジン(6L)を入れた。得られた混合物を3.3℃に冷却した。ジオールが完全に溶解してから(0.5時間)、トリエチルアミン(190 mL, 1.36 mol)を加えて、少し曇った黄褐色溶液を該22Lのフラスコに装着された2Lの滴下漏斗に少しずつ移した。冷却したホスホロジクロリデート溶液に対して当該黄褐色溶液を3.25時間かけて滴下した。滴下が終了後、冷却浴を排水し、3時間撹拌を続けた。
【0189】
この間、頭上型撹拌装置、熱電対、滴下漏斗、冷却浴(氷水)および窒素流入口を備えた50Lの三口フラスコに水素化ナトリウム(180g、4.5mol)およびTHF(1L)を入れ、滴下漏斗には4-ニトロフェノール(817g、5.87mol)/THF(1L)を入れた。水素化ナトリウムの懸濁液を冷却しニトロフェノール溶液をゆっくりと滴下した。滴下が終了した後、得られた明るいオレンジ色の懸濁液を室温で1時間撹拌した。ジオール-ホスホロジクロリデートの反応が完了したと判断されたら暗色の懸濁液を吸引濾過した。ガラス器具および濾取したケーキ(トリエチルアミン-塩酸塩)をTHF(1L)で洗浄し、洗浄液と濾液をあわせて、これをオレンジ色のナトリウム4-ニトロフェノキシド懸濁液に注いだ。得られた混合物を40℃で3.5時間加熱し、それからマントルの加熱を停止して反応液をさらに室温で11時間撹拌した。未精製の反応混合物を回転式エバポレーターで減圧下(油圧ポンプ)45-50℃に加熱して濃縮した。得られた粘稠な泡状の黒いタールを1.5M 塩酸(12L)および酢酸エチル(8L)に溶解した。混合物を12.5-ガロンの分液漏斗に移し10分間撹拌してから分液した。酢酸エチル層を1.3Lの1.5M 塩酸で更に洗浄した。水層をあわせてからジクロロメタン(8 L)を加え、激しく撹拌しながら固体の炭酸水素ナトリウムで注意深く中和した。二層を分液して水層をジクロロメタン(8L)で抽出した。
【0190】
有機層をあわせて硫酸マグネシウム(600g)上で乾燥し濾過した。溶液を回転式エバポレーターで濃縮して溶媒を殆ど留去し粘稠な懸濁液を得た。2-プロパノール(5L)を加えて4Lの留去物が得られるまで濃縮を行った。次いで、2-プロパノール(3L)を加えて3Lの留去物が得られるまで濃縮を行った。粘稠なスラリーを2-プロパノール(2L)で希釈し、混合物を氷冷下で1時間撹拌した。固体を濾取して2-プロパノール(2 L)で洗浄し真空オーブン内で恒量となるまで乾燥し(-30 in. Hg、55℃、18時間)1.86kgの生成物を得た(収率70%)。
【0191】
mp.140142℃.
旋光度=-80.350(c=1.0、MeOH); ee = 99+% トランス
HPLC条件:
カラム:Chiralpak AD、0.46 x 25 cm;移動相= 50:50(2-プロパノール:ヘキサン);イソクラティック溶出;流速=1.0mL/min;注入体積=10μL;検出 UV 254nm.
シス/トランス平衡はHPLCで監視した。92%トランス、6.6%シスで停止。保持時間はトランス体6.9min、シス体10.9 min.
1H-NMR(DMSO-d6):δ=2.23-2.29(m, 2H), 4.56-4.71(m, 2H), 5.88-5.95(m, 1H), 7.44(d, 2Hh, J=5.8Hz), 7.59(d, 2H, J=9.2Hz), 8.34(d, 2H, J=9.4Hz), 8.63(d, 2H, J=5.8Hz).
【0192】
実施例16b:
(-)-(4S)-(-)-(ピリド-4-イル)-2-(4-ニトロフェノキシ)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンの合成
撹拌装置、滴下漏斗、温度計、および窒素流入口を備えた1Lの三ツ口丸底フラスコにS-(-)-1-(ピリド-4-イル)-プロパン-1,3-ジオール(25g、163.4mmol)および酢酸エチル(250mL)を加え、その懸濁液に4N HCl/ジオキサン(43mL、176mmol)を15分間かけてゆっくりと滴下した。室温で30分間撹拌した後、4-ニトロフェニルホスホロジクロリデート(41.81g、163.4mmol)を固体のまま窒素気流下でできる限り素早く加えた。反応混合物の内部温度は氷-アセトンの冷却浴を用いて-10℃に調節した。
【0193】
温度を<-5℃に保ちつつ、トリエチルアミン(79mL、572mmol)を酢酸エチル(100mL)に溶解して加えた。トリエチルアミン溶液の滴下が終了してから30分間経過後に冷却浴を取り除き反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応混合物を濾過してトリエチルアミン-塩酸塩を除去し、濾液がかすかな吸収しか示さなくなるまで酢酸エチル(3 x 30mL)で洗浄した。濾液を減圧下で150-175mLにまで濃縮した。4-ニトロフェノール(7.5g、54.3mmol)およびトリエチルアミン(9mL)を濃縮得金加えて、得られたオレンジ色の反応混合物を室温で24時間撹拌した。生成した固体を濾取し、酢酸エチル(2 x 25mL)およびメチルt-ブチルエーテル(25mL)で洗浄し、減圧下55℃で乾燥して31.96gの目的物を得た(58.4%)。実施例15aと同一の分析データを得た。
式IIのヌクレオシドプロドラッグの合成
【0194】
実施例18
ヌクレオシド保護の一般法
実施例18a
2'-デオキシ-2'-ジフルオロ-3'-O-TBS-4-N-(N,N-ジメチルホルムアミジン)-シチジンの合成;
工程A:パーシリル化:3',5'-ジ-O-TBS-2'-デオキシ-2'-ジフルオロ-シチジンの合成
2'-デオキシ-2'-ジフルオロ-シチジン(6.08g、20.3mmol)およびイミダゾール(13.8g、203mmol)をDMF(300mL)に溶解し、室温で塩化t-ブチルジメチルシリル(21.4g、142mmol)を加えた。室温で終夜撹拌した後、揮発物を減圧下に除去した。残渣を酢酸エチルと塩化アンモニウム飽和水溶液で分配した。二相を分液して有機層を食塩水で洗浄し硫酸ナトリウム上で乾燥し減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン/メタノール)で精製し、標記化合物8.3gを得た(70%)。
TLC: 塩化メチレン/メタノール=9/1;Rf=0.35.
1H-NMR(Gemini 300MHz、CD3OD):0.93(s, 9H), 0.89(s, 9H).
【0195】
工程B:選択的5'-脱シリル化:3'-O-TBS-2'-デオキシ-2'-ジフルオロ-シチジンの合成
3',5'-ジ-O-TBS-2'-デオキシ-2'-ジフルオロ-シチジン(8.3g)をTHF(15mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸-水の1:1溶液(15mL)を加えて、得られた溶液を-10℃の冷蔵庫内に放置した。After 18時間後、その冷溶液に固体の炭酸水素ナトリウムを加えて中和し(pH 8)、水層を酢酸エチル(3 X 100mL)で抽出した。有機層をあわせて乾燥し減圧下に濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、塩化メチレン/メタノール)で精製し、標記化合物5.3gを得た(83%)。
TLC:塩化メチレン/メタノール= 9/1;Rf=0.3
1H-NMR(Gemini 200MHz、CD3OD):0.9(s, 9H), 0.12(s, 3H), 0.11(s, 3H).
【0196】
工程C:窒素保護:2'-デオキシ-2'-ジフルオロ-3'-O-TBS-4-N-(N,N-ジメチルホルムアミジン)-シチジンの合成
3'-O-TBS-2'-デオキシ-2'-ジフルオロ-シチジンをピリジンに溶解し、室温でDMF-ジメチルアセタールを加えた。室温で終夜撹拌した後、揮発物を減圧下に除去し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、アセトン/ヘキサン、続いてアセトン/メタノール)で精製して、標記化合物6gを得た(99%)。
TLC:アセトン;Rf=0.35.
1H-NMR(Gemini 200MHz、CD3OD): 3.21(s, 3H), 3.12(s, 3H), 0.9(s, 9H), 0.13(s, 3H), 0.11(s, 3H).
【0197】
実施例18b:
Example 18b:
2',3'-ジ-O-TBS-ウラシル-β-D-アラビノフラノシドの合成
工程A:
実施例18a、工程Aと同様。
TLC;ヘキサン/酢酸エチル=5/5;Rf=0.75.
1H-NMR(Gemini 200MHz、CD3OD):0.9(s, 9H), 0.87(s, 9H), 0.82(s, 9H), 0.13(s, 3H), 0.12(s, 3H), 0.08(s, 3H), 0.07(s, 6H).
【0198】
工程B:
実施例18aと同様。
TLC;ヘキサン/酢酸エチル=2/8;Rf=0.5.
1H-NMR(Gemini 200MHz、CD3OD):0.89(s, 9H), 0.81(s, 9H), 0.12(s, 3H), 011(s, 3H), 0.06(s, 3H), -0.09(s, 3H).
【0199】
実施例18c:
Synthesis of 2',3'-ジ-O-TBS-アデニン-β-D-アラビノフラノシドの合成
工程A:
実施例18a、工程Aと同様。
TLC;塩化メチレン/酢酸エチル=2/8);Rf=0.5.
1H-NMR(Gemini 300MHz, DMSO-d6):1.34(s, 9H), 1.31(s, 9H), 1.06(s, 9H), 0.58(s, 6H), 0.48(s, 3H), 0.46(s, 3H), 0.35(s, 3H), 0.00(s, 3H).
【0200】
工程B
実施例18aと同様。
TLC:塩化メチレン/メタノール=9/1;Rf=0.5.
1H-NMR(Gemini 300MHz, DMSO-d6):1.33(s, 9H), 1.02(s, 9H), 0.57(s, 3H), 0.56(s, 3H), 0.34(s, 3H), 0.00(s, 3H).
【0201】
実施例18d
2',3'-ジ-O-TBS-4-N-(N,N-ジメチルホルムアミジン)-シチジン-β-D-アラビノフラノシドの合成
工程A:5'-O-ベンゾイルシタラビンの合成
【化31】

頭上型撹拌装置、熱電対、窒素流入口および空の冷却浴を備えた22Lの四ツ口フラスコにシタラビン(2.0kg、8.22mol)およびDMPU(4L)を入れると、粘稠だが撹拌可能な溶液となった。4N HCl/ジオキサン(2.5L、9.87mol)を一度に加え、混合物を1.75時間撹拌した。塩化ベンゾイル(2.3kg、16.45mol)を加えて混合物を周辺温度で12時間撹拌した。水(7L)および氷(3kg)を12.5ガロンの抽出器に入れ、上記の粘稠な懸濁液をその上に注いで混合物を30分間撹拌した。水層をジクロロメタン(2 x 4L)で抽出し、有機層をあわせて10%(vol/vol)塩酸(2 x 2L)で抽出した。水層をあわせて、頭上型撹拌装置と氷冷浴を備えた50Lフラスコに入れ、溶液を水(5L)で希釈した。ここに30%(wt/wt)NaOH水溶液(4kg)を加えて、pHを10に調節した。得られた粘稠な懸濁液を冷却下1.25時間撹拌した。固体を二つの24cmブフナー漏斗で濾取し、ケーキをそれぞれ水(2L)で洗浄した。固体を70℃の真空オーブン内で48時間乾燥し5'-O-ベンゾイルシタラビン2.38kgを得た(収率84%)。
【0202】
HPLC条件:
カラム:Zorbax Eclipse XDB-C8;溶媒A=5%アセトニトリル/20mM リン酸緩衝液、溶媒B=80%アセトニトリル/水;グラディエント溶出;流速=1.0mL/min;注入体積=10μL;検出 UV 270 nm;保持時間=4.3min.
含水率(KFによる)=4.95%.
【0203】
工程B:5'-O-ベンゾイル-2',3'-ジ-O-TBS-シタラビン
【化32】

頭上型撹拌装置、熱電対、濃縮器、および窒素流入口を備えた22Lの四ツ口フラスコ内にピリジン(1.5L、19.0mol)、DMF(3.3L)、および5'-O-ベンゾイルシタラビンをこの順序で加えた。混合物を5分間撹拌し、塩化t-ブチルジメチルシリル(2.4kg、15.8mol)を加えた。ときどきHPLCで確認しながら混合物を95℃±1℃で36時間加熱した。混合物を25℃に冷却し、メタノール(550mL)を加えた。混合物を30分間撹拌し、水(4.4L)を加えた。20分間撹拌した後、混合物を酢酸エチル(4.4L)で抽出した。上層の有機層を10%(vol/vol)塩酸(2 x 4.4L)、7%(wt/vol)NaHCO3水溶液(2 x 4.4L)、および10%(wt/vol)NaCl水溶液(4L)で洗浄した。有機層をMgSO4(300g)上で乾燥し、濾過した。溶媒を回転式エバポレーターで留去し、2.73kgの粘稠な黒色オイルを得た。この残渣をDMF(6.5L)に溶解し、溶媒を減圧下で留去した(回転式エバポレーター、浴槽温度=60℃、真空ポンプ)。再度、DMF(6L)を加えて溶媒の留去を2回繰り返し、1.99kgの5'-O-ベンゾイル-2',3'-ジ-O-TBS-シタラビンを黒色のタールとして得た(理論量の109%)。これは更に精製することなく次の反応に供した。
【0204】
HPLC条件:
カラム:Zorbax Eclipse XDB-C8;溶媒A=5%アセトニトリル/20mM リン酸ナトリウム緩衝液、溶媒B=80%アセトニトリル/水;グラディエント溶出;流速=1.0mL/min;注入体積=10μL;検出、UV 270 nm.
保持時間;ジシリル体=10.1min、モノシリル体=6.9min
【0205】
工程C: 2',3'-ジ-O-TBS-シタラビン塩酸塩の合成
【化33】

22Lの三口フラスコに、頭上型撹拌装置、上部に窒素バブラーを備えた濃縮器、熱電対、および加熱用マントルを取り付け、未精製の5'-O-ベンゾイル-2',3'-ジ-O-TBS シタラビンをエタノール(5L)に溶解して加え、更にヒドラジン(400g、12.5mol)を加えた。混合物を80℃で15時間加熱し、加熱用マントルを除いて混合物を2時間で30℃にまで冷却した。暗色の着色溶液を15%(wt/vol)NH4Cl水溶液(9L)に注ぎ、酢酸エチル(8L)で抽出した。有機層を15%(wt/vol) NH4Cl水溶液(4L)で洗浄し、回転式エバポレーター上で溶媒を留去して粘稠なオイルを得た。この残渣をアセトニトリル(6.5L)に溶解し、頭上型撹拌装置と滴下漏斗を備えた22Lフラスコに移した。水(6L)を加えた。濃塩酸(330mL)を15分間で滴下して混合物のpHを2.0(pHメーター)とした。得られた濁った溶液をヘキサン(4L)で抽出した。下層の水-アセトニトリル層を回転式エバポレーター上で6Lの留去物を得るまで濃縮した。水(3 L)を加えて得られた懸濁物を回転式エバポレーター上で15分間撹拌した。二つの24cmブフナー漏斗を用いて固体を濾取し、各ケーキを水(1.5L)で洗浄した。固体を65℃の真空オーブン内で24時間乾燥し、1.25kgの2',3'-ジ-O-TBS-シタラビン塩酸塩を黄色がかったオレンジ色の固体として得た(収率77%)。
【0206】
HCl塩
HPLC条件:
カラム;Zorbax Eclipse XDB-C8;溶媒A=5%アセトニトリル/20mM リン酸ナトリウム緩衝液、溶媒B=80%アセトニトリル/水;グラディエント溶出;流速=1.0mL/min;注入体積=10μL;検出、UV 270 nm.
保持時間=7.4min.
【0207】
工程D: 2'3'-ジ-O-TBS-4-N-(N,N-ジメチルホルムアミジン)-シチジン-β-D-アラビノフラノシドの合成
【化34】

頭上型撹拌装置を備えた12.5ガロンの抽出器にNaHCO3(412g)/水(7.5L)、酢酸エチル(6.5L)および2',3'-ジ-O-TBS-シタラビン塩酸塩(1.25kg、2.46mol)を加えた。混合物を15分間激しく撹拌してから、二層を分液した。有機層を10%(wt/vol) NaCl水溶液(5.5L)で洗浄し、MgSO4(450g)上で乾燥して濾過した。回転式エバポレーターで溶媒を除去し、オレンジ色の泡状遊離塩基1.35kg(理論量の116%)を得た。トルエン(2L)を加えて、1.5Lの留去物を得るまで濃縮した。トルエン(6L)を加えて溶液を頭上型撹拌装置と窒素流入口を備えた、22Lのフラスコへ移した。DMFのジメチルアセタール(405g、3.19mol)を加えて混合物を20℃で18時間撹拌した。回転式エバポレーターで溶媒を除去し、1.46kgの標記化合物を粘稠なオイルとして得た(113%)。これは更に精製することなく次の反応に供した。
【0208】
TLC条件:
反応混合物はMerckシリカゲル60プレート、2.5 x 7.5cm、250ミクロンを用いて追跡した。; UVランプ検出: 10%MeOH/CH2Cl2.
Rf(出発物質)= 0.4、(生成物)= 0.7.
1H-NMR(DMSO-d6):δ -0.27(s, 3H), -0.02(s, 3H). 0.11(s, 6H), 0.74(s, 9H), 0.88(s, 9H), 3.02(s, 3H), 3.16(s,3H), 3.51-3.69(m, 2H), 3.80-3.85(m, 1H), 4.05-4.08(m, 2H), 4.95-5.03(m, 1H), 5.93-6.01(m, 2H), 7.67(d, 1H, J=7.2Hz), 8.62(s, 1H).
式IIのヌクレオシドプロドラッグの合成
【0209】
実施例19
式IIのヌクレオシドプロドラッグの一般的合成法
実施例19a:
5'-O-シス-[4-(3-クロロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの合成
【0210】
工程A;ホスホリル化反応
2',3'-ジ-O-TBS-シトシン-β-D-アラビノフラノシド(5g、10.3mmol)をTHF(300mL)に溶解し、室温でt-BuMgCl(15.5mL、15.5mmol)のTHF溶液を加えた。黄褐色の溶液を室温で30分間撹拌し、トランス-2-(4-ニトロフェノキシ)-4-(3-クロロフェニル)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナンを一度に加えた。室温で18時間撹拌した後、その黄褐色溶液に塩化アンモニウムの飽和水溶液(200mL)を加えて反応を停止させ酢酸エチルで2回抽出した。有機抽出層を合一して1N 水酸化ナトリウム溶液で3回、飽和食塩水で2回それぞれ洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥した。濾過して濾液を減圧下に濃縮し、残渣をフラッシュクロマトグラフィーで精製(シリカゲル、ジクロロメタン/エタノール=95/5から85/15へのグラディエント溶出)して、少し黄色の泡状物質を得た(4.48g、62%)。
【0211】
TLC条件: Merckシリカゲル60 F254 プレート、厚さ250μm;移動相、ジクロロメタン/メタノール=90/10;rf、トランス-ホスフェート=0.9、4-ニトロフェノール=0.75、生成物=0.4、ヌクレオシド=0.3.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz):5.8-5.55 (m, 2H), 2.45-2(m, 2H), 0.95(s, 9H), 0.85(s, 9H), 0.17(s, 6H), 0.03(s, 3H), -0.1(s, 3H).
【0212】
工程B:保護プロドラッグの脱保護
保護プロドラッグ(4.28g、6.1mmol)をTHF(60mL)に溶解し、室温でフッ化テトラエチルアンモニウム(2.72g、18.3mmol)を加えた。不均一な混合物を室温で18時間撹拌した。粘稠な不均一混合物を減圧下に濃縮し、カラムクロマトグラフィーである程度精製(シリカゲル、ジクロロメタン/エタノール=85/15から60/40へのグラディエント溶出)した。分画をあわせて濃縮し、析出した固体を100mLの1N 塩酸に溶解しジクロロメタンで2回洗浄した。水層を濾過し、50% 水酸化ナトリウム溶液で水層のpHを7-8に調節した(pH3で白色沈殿の析出が始まり、pHの上昇に伴って濃厚となった)。室温で終夜撹拌した後、沈殿を濾取し水洗して風乾し、次いで高真空下25℃で乾燥して白色固体(1.62g、収率56%、純度=96%)を得た。
【0213】
TLC条件;Merckシリカゲル60 F254プレート、厚さ250μm;移動相、ジクロロメタン/メタノール=80/20;rf、生成物=0.15、反応中間体=0.7、保護プロドラッグ=0.8.
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz):6.15(m, 1H), 5.8-5.65(m,1H), 2.3-2.1(m, 2H).
HPLC条件
カラム、YMC-Pack ODS-AQ 250 x 46 mm I.D. S-5μm 120A;移動相、アセトニトリル(ACN)/20mM リン酸緩衝液、pH6.2のグラディエント溶出、(T=0min、10%ACN)、(T=15、55%)、(T=17、5%)、(T=25、10%);流速=1.4mL/min;検出、UV 270nm;保持時間、5'-O-シス-[4-(3-クロロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシド=12.32min.
元素分析(Robertson Microlit Laboratories);Calculated for C18H21ClN3O8P・1H2O: C, 43.96; H, 4.71; N, 8.54. Found: C, 4.79; H, 4.55; N, 8.39.
【0214】
実施例19b
5'-O-シス-[4-(4-ブロモフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの合成
工程A:
実施例19a、工程Aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);6.25-6.15(m, 1H), 6-5.8(m, 1H), 2.45-2(m, 2H), 0.89(s, 9H), 0.78(s, 9H), 0.11(s, 6H), 0.09(s, 3H), -0.2(s, 3H).
【0215】
工程B:
保護プロドラッグ(180mg、0.24mmol)をTHF(2mL)に溶解し、TBAF/THF (0.73mL、0.73mmol)の1M溶液を加えた。室温で1時間置いた後、シリカゲル(3g)を反応溶液に加えて、スラリーを減圧下に乾燥しカラムクロマトグラフィーで精製(シリカゲル、酢酸エチル/メタノール)し標記化合物を得た(105mg、87%)。
mp.:196℃
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz):6.15(m, 1H), 5.75-5.45(m, 4H), 2.3-2.05(m, 2H).
元素分析(Robertson Microlit Laboratories);Calculated for C18H21BrN3O8P・0.8H2O: C, 40.59; H,4.28; N,7.89. Found: C, 40.58; H, 3.94; N, 7.52.
【0216】
実施例19c
5'-O-シス-[4-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの合成
工程A:
実施例19a、工程Aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz): 6.25-6.15(m, 1H), 6.1-5.85(m, 1H), 2.4-2(m, 2H), 0.89(s, 9H), 0.81(s, 9H), 0.02(s, 6H), 0.09(s, 3H), -0.07(s, 3H).
【0217】
工程B;
実施例19b、工程Bと同様。
mp.;128-131℃
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz): 6.15-6.05(m, 1H), 5.8-5.65(m,1H), 2.3-2.1(m, 2H).
元素分析(Robertson Microlit Laboratories);Calculated for C18H20ClFN3O8P・0.9H2O: C, 42.56; H, 4.33; N, 8.27. Found: C =42.83, H =4.13, N =7.91.
【0218】
実施例19d
5'-O-シス-[4-(ピリド-4-イル))-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロ-シチジンの合成
工程A:
2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロ-3'-O-TBS-4-N-(N,N-ジメチルホルムアミジン)-シチジンを使用し、実施例19a、工程Aと同様。
TLC条件;ジクロロメタン/メタノール=90/10;rf=0.25.
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz);6.5-6.3(m, 1H), 6.3-6.15(m,1H), 5.75-5.6 m, 1H), 3.27(s, 3H), 3.25(s, 3H), 2.4-1.6(m, 2H).
【0219】
工程B:
保護プロドラッグ(50 mg)を70%水性トリフルオロ酢酸に溶解し50℃で終夜加熱した。溶液を冷却して減圧下に濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製(シリカゲル、ジクロロメタン/メタノール)して標記化合物(40mg)を得た。
mp.;150℃
1H-NMR(CD3OD, Varian Gemini 200MHz):6.35-6.15(m, 1H), 5.9-5.7(m, 2H), 2.4-2.2(m, 2H).
元素分析(Robertson Microlit Laboratories):Calculated for C17H19CF2N4O7P・0.8H2O: C, 43.01; H, 4.37; N, 11.80. Found: C, 43.34; H, 4.15; N, 11.45.
【0220】
実施例19e
5'-O-シス-[4-(3,5-ジクロロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロ-シチジンの合成
工程A:
2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロ-3'-O-TBS-4-N-(N,N-ジメチルホルムアミジン)-シチジンを用い、実施例19a、工程Aと同様。
TLC条件;ジクロロメタン/メタノール=90/10;rf=0.45.
1H-NMR (CD3OD, Varian Gemini 200MHz):6.4-6.15(m, 1H), 6.05-5.9(m, 1H), 5.8-5.6(m, 1H), 3.3(s, 3H), 3.2(s, 3H), 2.4-2(m, 2H).
【0221】
工程B:
実施例19d、工程Bと同様。
mp.:>200℃(dec)
1H-NMR(CD3OD, Varian Gemini 200MHz):6.35-6.15(m, 1H), 5.8-5.65(m, 2H), 2.4-2.1(m, 2H).
元素分析 (Robertson Microlit Laboratories): Calculated for C17H18Cl2N3O7P・0.25H2O: C =40.58, H =3.50, N =7.89; Found: C =40.55, H =3.64, N =7.79.
【0222】
実施例19f
5'-O-シス-[4-(ピリド-3-イル))-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-yl]-2'-デオキシ-2'-ジフルオロ-シチジンの合成
工程A:
2'-デオキシ-2'-ジフルオロ-3'-O-TBS-4-N-(N,N-ジメチルホルムアミジン)-シチジンを使用し、実施例19a、工程Aと同様。
TLC 条件;ジクロロメタン/メタノール=90/10;rf=0.35.
1H-NMR(CD3OD, Varian Gemini 200MHz);6.35-6.1(m, 1H), 6.1-5.95(m, 1H), 5.9-5.75(m, 1H), 3.27(s, 3H), 3.15(s, 3H), 2.5-2.1(m, 2H).
【0223】
工程B:
実施例19d、工程Bと同様。
mp.:>200℃(dec)
1H-NMR(CD3OD, Varian Gemini 200MHz);6.3-6.1(m, 1H), 5.9-5.7(m, 2H), 2.5-2.1(m, 2H).
元素分析 (Robertson Microlit Laboratories);Calculated for C17H19F2N4O7P・1.5H2O: C, 41.90; H, 4.55; N, 11.50. Found: C, 41.96; H, 4.52; N, 11.29.
式IIのヌクレオシドプロドラッグの単一異性体の合成
対応するエナンチオリッチなホスホリル化試薬を使用し、下記の化合物を合成した。
【0224】
実施例20:
(4S)-5'-O-シス-[4-(ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-ウラシル-β-D-アラビノフラノシドの合成
工程A:
実施例19a、工程Aと同様。
1H-NMR(CDCl3, Varian Gemini 200MHz):6.25-6.15(m, 1H), 5.75-5.6(m, 2H), 2.4-2(m, 2H).
【0225】
工程B;
実施例19b、工程Bと同様。
mp.;136-139℃
1H-NMR (CD3OD, Varian Gemini 200MHz):6.2-6.15(d, 1H), 5.85-5.7(m, 1H), 5.55-5.45(m, 1 H), 2.4-2.2(m, 2H).
元素分析(Robertson Microlit Laboratories);Calculated for C17H20N3O9P・1.8H2O: C, 43.10; H, 5.02; N, 8.8. Found: C, 43.18; H, 4.95; N, 8.52.
【0226】
実施例20a
(4S)-5'-O-シス-[4-(3-クロロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの合成
【化35】

工程A:
実施例19a、工程Aと同様。
1H-NMR(200MHz, CDCl3):7.81(1H, d, J=7.7Hz), 7.2-7.4(4H, m), 6.27(1H, broad s), 5.83(1H, broad s), 5.64(1H, d, J=8.8Hz), 4.6-4.8(1H, m), 4.3-4.6(2H, m), 4.1-4.3(3H, m), 2.0-2.4(2H, m), 0.79(9H, s), 0.78(9H, s), 0.091(3H, s), 0.03(3H, s), 0.02(3H, s), -0.15(3H, s)
【0227】
工程B:
実施例19a、工程Bと同様。
1H-NMR(200MHz, DMSO-d6): 7.52(1H, d, J=7.32Hz), 7.3-7.5(4H, m), 7.07(2H, broad s), 6.10(1H, m), 5.5-5.8(4H, m), 4.2-4.6(4H, m), 3.8-4.0(3H, m), 2.1-2.3(2H, m).
mp.;>200℃.
[α]D= +55.16.
元素分析: Calculated for C18H21N3O8ClP・0.8H2O: C, 44.28; H, 4.67; N, 8.61. Found: C, 44.32; H, 4.47; N, 8.42.
【0228】
実施例20b:
(4R)-5'-O-シス-[4-(3-クロロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの合成
【化36】

工程A
実施例19a、工程Aと同様。
工程B:
実施例19a、工程Bと同様。
1H-NMR(200MHz, DMSO-d6):7.4-7.6(5H, m), 7.07(2H, broad s), 6.10(1H, d, J=3.3Hz), 5.71(1H, m), 5.6-5.7(3H, m), 4.2-4.6(4H, m), 3.8-4.0(3H, m), 2.1-2.3(2H, m).
mp.;>200℃.
[α]D= +91.40.
元素分析:Calculated for C18H21N3O8ClP・0.7H2O: C: 44.45, H: 4.64, N: 8.64. Found: C: 44.53, H: 4.45, N: 8.43
【0229】
実施例20c:
(4S)-5'-O-シス-[4-(S)-(ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシド〔2(1H)-ピリミジノン, 4-アミノ-1-[5-O-[(2R,4S)-2-オキシド-4-(4-ピラジニル)-1,3,2-ジオキサホスホリナン-2-イル]-β-D-アラビノフラノシル]としても知られる〕の合成
【化37】

頭上型撹拌装置、温度計保護管/温度計、滴下漏斗(2 L)および冷却浴を備えた50Lの三ツ口丸底フラスコを窒素ガスでフラッシュし、2',3'-ジ-O-TBS-4-N-(N,N-ジメチルホルムアミジン)-シトシン-β-D-アラビノフラノシド(1.46kg、2.46mol)をTHF(12.5L)に溶解して加えた。溶液を撹拌しながら5℃に冷却した(氷浴)。温度を≦10℃に保ちながら、塩化t-ブチルマグネシウム溶液(2.85L、3.19mol)を1.2時間かけて加えた。その後、溶液を氷浴温度で1.25時間撹拌した。リン酸エステル試薬(S)-(-)-トランス-(4-ピリジル)-2-(4-ニトロフェニル)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナン(1.36kg、4.04mol)を一度に加えて冷却浴を排水した。得られた混合物を周辺温度で17.5時間撹拌した。塩化アンモニウム水溶液(20wt%、12L)を加えて反応を停止させ、酢酸エチル(12L)を加えて希釈した。混合物を30分間撹拌して残渣をすべて溶解させ、二層を分液した。水層を酢酸エチル(4L)で逆抽出し、有機層をあわせて塩化ナトリウム水溶液(15wt%。

8 L)で洗浄しMgSO4(1.38kg)上で乾燥し、濾過して減圧下に濃縮し2.85kgの暗色スラッジを得た。
【0230】
当該スラッジをメタノール(12 L)に溶解し、頭上型撹拌装置、温度計保護管/温度計、塩基性のトラップとバブラーを備えた濃縮器、および加熱用のマントルを装着した22Lの四ツ口丸底フラスコに入れた。HCl/ジオキサン(4.1L、6.66mol)を加えて撹拌し、オレンジ色の溶液をHPLCで追跡しながら、50-55℃で16時間加熱した。減圧下で溶媒を留去しオレンジ色のタール2.88kgを得た。このタールを水(3.5L)および酢酸エチル(3.5L)に分配した。水層のpHが7.0(pHメーター)となるまで固体の炭酸水素ナトリウムを少しずつ加えた。二層を分液し水層を再び酢酸エチル(3.5L)で抽出した。水層を濾過して回転式エバポレーター上で水を留去した(真空ポンプ、浴温55℃)。大部分の水を除去した後、残渣にエタノール(3L)を加え(混合物のKF = 10.59%)、留去を継続した(水流ポンプ、浴温55℃)。エタノール(3L)を加えて(混合物のKF = 4.49%)留去を継続した。更に、エタノール(3L)を加えて (混合物のKF = 1.45%)スラリーを氷浴中で1.25時間撹拌した(温度=3℃)。混合物を濾過し、得られた固体をエタノール(1L)で洗浄した。固体を恒量となるまで乾燥し(-30 in. Hg、55℃、2時間)、ベージュ色の固体1005gを得た。
【0231】
この粗生成物を以下のように更に精製した。
頭上型撹拌装置を備えた22Lの丸底三ツ口フラスコにその未精製2(1H)-ピリミジノン,4-アミノ-1-[5-O-[(2R,4S)-2-オキシド-4-(4-ピリジル)-1,3,2-ジオキサホスホリナン-2-イル]-β-D-アラビノフラノシル](2.91kg)および水(14.5L)を加えた。該スラリーを撹拌し、固体がすべて溶解するまで濃塩酸を少しずつ加えた(355mLを要した。pHメーターによるとpH=3.9)。セライト521(登録商標)(175g)を加え、24cmブフナー漏斗上セライトパッド(100 g)を通じて混合物を濾過した。濾液を頭上型撹拌装置を備えた50Lフラスコに入れ、混合物のpHが6.3(pHメーター)となるまで固体の炭酸水素ナトリウム(393g)を少しずつ加えた。得られた混合物を周辺温度で2時間撹拌し、濾過した。濾取した固体を水(500mL)で洗浄し、恒量となるまで乾燥して(-30 in. Hg、55℃、16時間)、1.08kgの2(1H)-ピリミジノン, 4-アミノ-1-[5-O-[(2R,4S)-2-オキシド-4-(4-ピリミジニル)-1,3,2-ジオキサホスホリナン-2-yl]-β-D-アラビノフラノシル]を褐色の粒状固体として得た(収率35%)。
【0232】
KF=2.0%
ナトリウム含量=0.07%
元素分析:calculated for C17H21N4O8P・0.5H2O(MW 449.36): C, 45.44; H, 4.93; N, 12.47. Found: C, 45.56; H, 4.70; N, 12.48.
HPLC条件:
カラム、下記の二つを直列接続、Agilent, Zorbax Eclipse XDB-C8, 4.6 x 250 mm, 5μm;溶媒A=20mM リン酸ナトリウム緩衝液/11%アセトニトリル-水、溶媒B=50%アセトニトリル/脱イオン水;逆層;流速=1.0mL/min;注入体積=10μL;検出、UV 210 nm;カラム温度=30℃.
保持時間=13.4min (S異性体)
保持時間=14.1min (R異性体)
1H-NMR(DMSO-d6):δ 2.15-2.27(m, 2H), 3.90-3.97(m, 3H), 4.24-4.58(m, 4H), 5.58(d, 1H, J=7.4Hz), 5.62-5.65(m, 2H), 5.71-5.79(m, 1H), 6.10(d, 1H, J=3.6Hz), 7.08(s, 1H), 7.13(s, 1H), 7.42(d, 2H, J=5.8Hz), 7.48(d, 1H, J=7.4Hz), 8.59(d, 2H, J=6.0Hz)
【0233】
実施例20d
(4S)-5'-O-シス-[4-フェニル-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-アデニン-β-D-アラビノフラノシドの合成
工程A
実施例19a、工程Aと同様。
TLC;ジクロロメタン/メタノール=95/5; Rf = 0.35
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 300MHz): 6.85-6.8(d, 1H), 6.2-6.1(m, 1H), 2.7-2.55(m, 2H), 1.37(s, 9H), 1.09(s, 9H), 0.62(s, 3H), 0.61(s, 3H), 0.4(s, 3H), 0.00(s, 3H).
【0234】
工程B:
実施例19a、工程Bと同様。
mp.130-134℃
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 300MHz): 6.35-6.25(d, 1H), 5.7-5.6(m,1H), 2.3-2(m, 2H).
元素分析(Robertson Microlit Laboratories): Calculated for C19H22N5O7P・H2O・0.2CH2Cl2: C, 46.27; H, 4.93; N, 14.05. Found: C, 46.09; H, 4.47; N, 13.94.
【0235】
実施例20e
(4S)-5'-O-シス-[4-(ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-アデニン-β-D-アラビノフラノシドの合成
工程A:
実施例19a、工程Aと同様。
TLC:ジクロロメタン/メタノール=9/1;Rf=0.3
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 300MHz): 6.85-6.8(d, 1H), 6.25-6.15(m, 1H), 2.8-2.5(m, 2H), 1.37(s, 9H), 1.08(s, 9H), 0.62(s, 6H), 0.4(s, 3H), 0.00(s, 3H).
【0236】
工程B:
実施例19a、工程Bと同様。
mp.:>210℃(dec).
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 300MHz):6.35-6.25(d, 1H), 5.8-5.65(m,1H), 2.3-2(m, 2H).
元素分析(Robertson Microlit Laboratories): Calculated for C18H21N6O7P・0.5H2O: C, 45.67; H, 4.68; N, 17.75. Found: C, 45.36; H, 4.74; N, 17.46.
式IIのヌクレオシドプロドラッグの一段階合成
【0237】
実施例21a
5'-O-シス-[4-(3-クロロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの合成
シタラビン5gをDMPU10mLに懸濁し、4N HCl/ジオキサン溶液を加えた。室温で10分間撹拌すると透明な溶液が得られた。この溶液に対して、ホスホロクロリデートのトランス-2-クロロ-4-(3-クロロフェニル)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナン5.5gを一度に加えた。該ホスホリナンは徐々に溶解し溶液は高粘度化して撹拌が困難となった。室温で16時間経過後、ホスホロクロリデート3.79gを追加した。室温で24時間撹拌を続けたが、反応混合物中には10%のara-C(出発物質)が依然残っていた。反応混合物にジクロロメタン50mLおよび水15mLを加えて希釈した。二層を分液し有機層をさらに水(25mL)で6回抽出した。水層を合一して(総量175mL)濾過し、ジクロロメタン(25mL)で逆抽出してわずかに残存するDMPUを除去した。次いで、水溶液に炭酸水素ナトリウム5.4当量(9.35g)を加えて中和した。pHの上昇に従い白色固体が析出した。不均一な混合物を室温で9時間撹拌してから、固体を濾取し水洗した。白色の固体を減圧下40℃のオーブン内で終夜乾燥し6.4gの粗生成物を得た。HPLCによるとこの化合物は91/9のシス/トランス混合物であった。エタノールからの再結晶によりその比は96.5/3.5まで改善された。更に再結晶するとその比は98.8/1.2となった。
【0238】
1H-NMR(DMSO-d6, Varian Gemini 200MHz):実施例19a、工程B参照。
HPLC:YMC-Pack R-33-5 250 x 39mm I.D. S-5 μm 120A;移動相、アセトニトリル(ACN)/20mMリン酸緩衝液pH6.2のグラディエント溶出、(T=0 min、10%ACN)、(T=15、60%)、(T=17、10%)、(T=20、10%);流速=1.4mL/min;検出、 UV 270nm;保持時間(min)、5'-O-シス-[4-(3-クロロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシド=9.7、(R)-トランス異性体=9.975、(S)-トランス異性体=10.5.
TLC条件;Merckシリカゲル60 F254プレート、厚さ250μm;移動相、ジクロロメタン/メタノール=9/1;Rf、シタラビン=0.03、生成物=0.17.
【0239】
実施例21b
(4S)-5'-O-シス-[4-(3-クロロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの合成
【化38】

実施例21aと同様。
1H-NMR(200MHz、DMSO-d6);7.52(1H, d, J=7.32Hz), 7.3-7.5(4H, m), 7.07(2H, broad s), 6.10(1H, m), 5.5-5.8(4H, m), 4.2-4.6(4H, m), 3.8-4.0(3H, m), 2.1-2.3(2H, m).
mp.;>200℃. [α]D= +55.16.
元素分析;Calculated for C18H21N3O8ClP・0.8H2O: C, 44.28; H, 4.67; N, 8.61. Found: C, 44.32; H, 4.47; N, 8.42.
【0240】
実施例21c
(4R)-5'-O-シス-[4-(3-クロロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの合成
【化39】

実施例21aと同様。
1H-NMR(200MHz、DMSO-d6);7.4-7.6(5H, m), 7.07(2H, broad s), 6.10(1H, d, J=3.3Hz), 5.71(1H, m), 5.6-5.7(3H, m), 4.2-4.6(4H, m), 3.8-4.0(3H, m), 2.1-2.3(2H, m).
mp.;>200℃. [α]D= +91.40.
元素分析;Calculated for C18H21N3O8ClP・0.7H2O: C, 44.45; H, 4.64; N, 8.64. Found: C, 44.53; H, 4.45; N, 8.43.
【0241】
実施例21d
5'-O-シス-[4-(S)-(ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシド〔2(1H)-ピリミジノン,4-アミノ-1-[5-O-[(2R,4S)-2-オキシド-4-(4-ピリジニル)-1,3,2-ジオキサホスホリナン-2-イル]-β-D-アラビノフラノシル]としても知られる〕の合成
【化40】

【0242】
A法:
250mLの丸底フラスコをオーブンで乾燥し磁気撹拌子を入れてから、シタラビン-HCl 3.35gおよびDMPU 6.0mLを加えた。このフラスコ内に、実施例14bのトランス-4-(S)-(-)-(4-ピリジル)-2-クロロ-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オン溶液を濾過して直接加え、DABCO-HClをアセトニトリル(1 x 15mL)で洗浄した。揮発物を水流ポンプの減圧下(浴温<35℃)ロトバップ(roto-vap)により除去し、残渣のオイルを高真空で吸引した後、室温で48時間撹拌した。微量のサンプルを採取してHPLCの移動相緩衝液に溶解した。
【0243】
反応混合物にMeOH 100mLを加えて室温で2時間撹拌した。25wt% NaOMe メタノール溶液を用いて反応混合物のpHを7.0に調節した(およそ13mLを要した)。この時点での反応混合物は雑多であった。反応プロフィールを完全にするためHPLCを用いた。反応混合物を濃縮して乾固し残渣にジクロロメタン50mLを加えて室温で30分間撹拌した。沈殿物を濾取して塩化メチレンで洗浄し(1 x 20mL)、フラスコ内に戻してジクロロメタン50mLを加え15分間撹拌してから濾過した。固体をエタノール200mL中で1-2時間撹拌し、濾過してエタノール(2 x 10mL)で洗浄した。固体(1708-143-soild1)のHPLCは殆どが不純物で目的物は20-25%であったが、一方濾液(1708-143-エタノール)のHPLCは殆どが目的物であった。濾液を濃縮乾固して白色固体4.90gを得た。この固体を水10mLに溶解し室温で終夜撹拌し、固体を濾取して水で洗浄し(2 x 3mL)、真空オーブンで乾燥して2(1H)ピリミジノン,4-アミノ-1-[5-O-[(2R,4S)-2-オキシド-4-(4-ピリジニル)-1,3,2-ジオキサホスホリナン-2-イル]-β-D-アラビノフラノシル]を得た(1.38g、26%)。
【0244】
B法:
工程A:シタラビン塩酸塩の合成
頭上型撹拌装置と熱電対を備えた5Lの三ツ口フラスコにシタラビン(500g、2.06mol)およびメタノール(2.0L)を加えた。懸濁液を2℃に冷却した。HClガスをバブルさせると発熱して25℃まで温度上昇し粘稠な混合物が得られた。メタノール(0.5L)を加えて懸濁液を希釈し撹拌を容易にした。総量で108g(2.96mol)のHClガスを加えた。混合物を20℃で4時間撹拌してから、固体を濾取した。これをMTBE(3 x 250mL)で洗浄し70℃の真空オーブン中で乾燥し555gのシタラビン塩酸塩を綿状の白色固体として得た(収率96%)。
【0245】
工程B: 5'-O-シス-[4-(S)-(ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの合成
1Lのジャケット付き筒状反応器に頭上型撹拌装置、熱電対および二つの滴下漏斗(60mLおよび125mL)を装着し、窒素ガスでフラッシュしてDMPU(188mL、195.8g)を加えた。液体を撹拌し、-16℃に冷却した(Julabo F32 冷却器/循環装置)。
ジオール溶液:A 250mLの丸底フラスコに磁気撹拌子と温度計を入れ、S-(-)-1-(ピリド-4-イル)-1,3-プロパンジオール(50.0g)、DMPU(62.5mL、64.5g)およびピリジン(25.8g)を加え、更に窒素雰囲気下においた。内容物を撹拌して40℃(浴温)に加熱し、40-42℃で撹拌してすべての固体を溶解させた(10分間)。得られた淡いオレンジ色の溶液を22℃にまで冷却し、これを125mLの滴下漏斗に入れた(体積=127mL)。
【0246】
POCl3溶液:125mLのエルレンマイヤーフラスコにアセトニトリル(22.9g)およびオキシ塩化リン(50.0g)を加えた。よく撹拌した後これを60mLの滴下漏斗に移した(体積=60mL)。
上記の二つの溶液を同時に、2.6時間かけて1Lの反応器へ滴下した。温度は-11℃に保った。滴下が終了してから、温度を-11℃から-17℃の範囲に保ちながら粘稠な淡いオレンジ色の溶液を1時間撹拌した。反応溶液のサンプルを採取して反応の完結をHPLCで調べた(試料を環状リン酸に加水分解してHPLCで分析した)。シタラビン塩酸塩(60.9g)を加えた。混合物を1時間で5℃にまで加温し4-6℃で87時間撹拌した。HPLC分析のため粘稠な反応溶液から試料を毎日採取した。反応液を撹拌しながらNaOH溶液(13% wt/vol)で反応を停止させた。この場合、温度を<20℃に保ちながら該NaOH溶液をゆっくりと滴下し、溶液のpHを5.0に調節した(NaOH溶液290mLを要した)。
【0247】
ジクロロメタン(450 mL)を加えて、二層よりなる混合液を15-20℃で30分間撹拌した。撹拌を停止して30分間静置した。下層の有機層を分液した。上層の水層をさらにジクロロメタンで2回抽出した(450mL、30分間撹拌、30分間静置)(Note 5)。反応器にpH電極を装着しNaOH溶液(13% wt/vol)を10分間かけて加えてpH7.0とした(NaOH溶液68mLを要した)。ジャケットを用いて冷却し(5℃)温度を20℃以下に保った。溶液を周辺温度で20時間撹拌し、次いで5℃に冷却して5時間撹拌した。(Note 6)。混合物を濾過して得られた固体を水(2 X 100 mL)で洗浄し恒量となるまで乾燥した(-30 in. Hg、60℃、18時間)。淡黄色の細かい粒状固体として46.6gを得た(収率48%)。
【0248】
ホスホロクロリデート合成のためのHPLC:
カラム、Zorbax Eclipse XDB-C8, 4.6 x 250mm、粒子サイズ5μm;溶媒A=20mMリン酸ナトリウム緩衝液/11%アセトニトリル-水、溶媒B=50%アセトニトリル/脱イオン水(100%Aから100%Bへ15分間のグラディエント溶出);流速、1.0 mL/min;注入体積=10μL;検出 UV 250nm;カラム温度=30℃.
保持時間=4.3min
5'-O-シス-[4-(S)-(ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドのためのHPLC:
カラム、Inertsil ODS-3, 4.6 x 150 mm, 粒子サイズ3μm;溶媒A = 20mM リン酸アンモニウム緩衝液/5%アセトニトリル-水、溶媒B=アセトニトリル、グラディエント溶出〔(分/A%中の%B): 0/0, 30/10, 40/40, 40.1/0, 50/0〕; 流速=1.0mL/min;注入体積=50μL;検出、UV 210nm;カラム温度=30℃+5℃.
保持時間=15.7min
【0249】
工程C:5'-O-シス-[4-(S)-(ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの調製
第一工程:頭上型撹拌装置、温度計、滴下漏斗およびpH電極を備えた1Lの三ツ口フラスコに、未精製の5'-O-シス-[4-(S)-(ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシド(80g、0.18mol)および脱イオン水(256mL)を加えた。混合物のpHは5.16であった。10分間で、3.0M 硫酸(60.6mL、0.18mol)を滴下した。10℃の冷却浴を利用して温度を19-22℃の範囲に保った。わずかに濁った黄色の溶液が有られた。0.45μmのナイロン膜フィルターで溶液を濾過(直径47mm)した。フラスコおよびフィルターを水(40 mL)で洗浄した。濾液と洗浄液とを1Lフラスコに戻し、3M NaOH溶液(155 mL)および3M 硫酸を添加してpHを6.5に調節した。pH 5.1から沈殿形成が始まった。混合物を2.5時間撹拌し、固体を濾取した。フラスコおよび濾過したケーキを水(2 x 80 mL)で洗浄し、真空オーブン内で終夜乾燥して(-30 in. Hg、60℃、18時間)、73.4gの5'-O-シス-[4-(S)-(ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドを粗い淡黄色固体として得た(収率92%)。
【0250】
第二工程:頭上型撹拌装置、熱電対、滴下漏斗およびpH電極を備えた250mLの三ツ口フラスコに未精製の5'-O-シス-[4-(S)-( ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシド(16g、36.3mmol)および脱イオン水(50mL)を入れた。温度を22℃以下に保ちながら3.0Mの希硫酸(12mL、36.3mmol)を滴下してpH2.5に調節した。メタノール(160mL)を20分間かけて加え白色沈殿を得た。懸濁液を20℃で1.5時間撹拌し、固体を濾取した。これをメタノール(2 x 25mL)で洗浄し、真空オーブンで乾燥して(-30 in. Hg、60℃、1.5時間)18.89gの硫酸塩を得た。
【0251】
この固体を頭上型撹拌装置およびpH電極を備えた250mLの三ツ口フラスコ内に入れ、水(180 mL)を加えて混合物を10分間撹拌し固体をすべて溶解させた(pH=2.7)。一塩基性リン酸ナトリウム一水和物(0.25g、1.81mmol)を加えて混合物を5分間撹拌した。溶液をセライトで濾過し、濾液をフラスコに戻して13%(wt/vol) NaOH水溶液を加えてpH7.1とした。懸濁液を20℃で3時間撹拌した。固体を濾取し、水(2 x 15mL)で洗浄し真空オーブンで恒量となるまで乾燥し(-30 in. Hg、60℃、16時間)、13.55gの5'-O-シス-[4-(S)-(ピリド-4-イル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドを灰白色の粒状固体として得た(収率85%)。
ホスホリル化工程におけるマグネシウム塩の使用
【0252】
実施例22
5'-O-シス-[4-(3-クロロフェニル)-1,3,2-ジオキサホスホリン-2-オキソ-2-イル]-シトシン-β-D-アラビノフラノシドの合成
2',3'-ジ-O-TBS-シトシン-β-D-アラビノフラノシド(1mmol)をTHFに溶解し、室温でカリウムt-ブトキシド(1.1mmol)を加えた。室温で1時間撹拌した後、塩化マグネシウム(2mmol)、続いてホスホリル化剤のトランス-2-(4-ニトロフェノキシ)-4-(3-クロロフェニル)-2-オキソ-1,3,2-ジオキサホスホリナン(1.5mmol)/THFをそれぞれ室温で加えた。室温で16時間撹拌した後、塩化アンモニウム飽和溶液を加えて反応を停止させた。反応混合物を酢酸エチルで2回抽出した。有機抽出液をあわせて0.3N 水酸化ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄し硫酸ナトリウム上で乾燥し減圧下で濃縮した。残渣を実施例19a、工程Aと同様にしてカラムクロマトグラフィーで精製した。
工程B:
実施例19a、工程Bと同様。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物、
【化1】

〔式中、VおよびLは相互にトランスであり;
Vは炭素環式アリール、置換炭素環式アリール、ヘテロアリール、および置換ヘテロアリールよりなる群から選択され;
Lは、ハロゲン、スルホン酸アルキル、1個から2個の置換基で任意に置換されてもよいアリールオキシ、含窒素ヘテロアリール、およびN-ヒドロキシ化窒素を含むヘテロアリールよりなる群から選択される脱離基を表す。〕
およびその塩。
【請求項2】
式Iにおいて
【化2】

VおよびLは相互にトランスであり;
Vがフェニルおよび単環性ヘテロアリールよりなる群から選択され、すべて1個から4個の置換基で任意に置換されていてもよく;
Lがハロゲン、および(1個から2個の置換基で任意に置換されてもよいアリールオキシ)よりなる群から選択される脱離基である、請求項1の化合物。
【請求項3】
式Iにおいて
【化3】

VおよびLは相互にトランスであり;
Vがフェニルおよび含窒素ヘテロアリールよりなる群から選択され、すべて1個から4個の置換基で任意に置換されていてもよく;
Lがハロゲン、および(1個から2個の置換基で任意に置換されてもよいアリールオキシ)よりなる群から選択される脱離基である、請求項2の化合物。
【請求項4】
Vが1個から4個の置換基で任意に置換されていてもよいフェニルよりなる群から選択される請求項3の化合物。
【請求項5】
Vが3-クロロフェニル、3-ブロモフェニル、3,5-ジクロロフェニル、および2,4-ジクロロフェノキシよりなる群から選択される請求項4の化合物。
【請求項6】
Vが1個から4個の置換基で任意に置換されていてもよい単環ヘテロアリールよりなる群から選択される請求項3の化合物。
【請求項7】
Vが2-ピリジル、3-ピリジルおよび4-ピリジルよりなる群から選択される請求項6の化合物。
【請求項8】
Vが4-ピリジルである、請求項7の化合物。
【請求項9】
Lが、塩素、フッ素およびニトロからなる群より選択される1個から2個の置換基を有するフェノキシ基である、請求項3の化合物。
【請求項10】
Lが、フェニル、-OCNO、-OCCl、および-OCClからなる群より選択される、請求項9の化合物。
【請求項11】
Lが、4-ニトロフェノキシ、4-クロロフェノキシ、2,4-ジクロロフェノキシ、および3,5-ジクロロフェノキシよりなる群から選択される、請求項10の化合物。
【請求項12】
Lが4-ニトロフェノキシである、請求項11の化合物。
【請求項13】
Lがハロゲンである、請求項3の化合物。
【請求項14】
LがClおよびBrよりなる群から選択される、請求項13の化合物。
【請求項15】
C’がR-エナンチオマーである、請求項3の化合物。
【請求項16】
Vが4-ピリジルでLが4-ニトロフェノキシである、請求項15の化合物。
【請求項17】
Vが4-ピリジルでLがClである、請求項15の化合物。
【請求項18】
Vが3-クロロフェニルでLが4-ニトロフェノキシである、請求項15の化合物。
【請求項19】
Vが3-クロロフェニルでLがClである、請求項15の化合物。
【請求項20】
C’がS-エナンチオマーである、請求項3の化合物。
【請求項21】
Vが4-ピリジルでLが4-ニトロフェノキシである、請求項20の化合物。
【請求項22】
Vが4-ピリジルでLがClである、請求項20の化合物。
【請求項23】
Vが3-クロロフェニルでLが4-ニトロフェノキシである、請求項20の化合物。
【請求項24】
Vが3-クロロフェニルでLがClである、請求項20の化合物。
【請求項25】
式Iの化合物
【化4】

〔式中、VおよびLは相互にトランスであり;
Vはフェニルおよび単環性ヘテロアリールよりなる群から選択され、すべて1個から4個の置換基で任意に置換されていてもよく;
Lはハロゲン、および(1個から2個の置換基で任意に置換されてもよいアリールオキシ)よりなる群から選択される脱離基である。〕
およびその塩の製造方法であって、
a.塩基の存在下、1-(V)-1,3-プロパンジオールまたはその塩とL−P(O)Clを反応させる工程;
b.得られるトランス/シス異性体混合物をLにより異性化させ、トランス/シス比が85/15若しくはそれ以上の値の式Iの化合物を形成させる工程;または
c.得られた混合物からシス異性体を単離し;当該シス異性体をLで処理してトランス/シス比が85/15若しくはそれ以上の値の式Iの化合物を形成させる工程;
を含んでなる製造方法。
【請求項26】
当該トランス/シス比が少なくとも85/15である、請求項25の方法。
【請求項27】
当該トランス/シス比が85/15よりも大である、請求項25の方法。
【請求項28】
Lがフェノキシ、-OCNO、-OCCl、および-OCClよりなる群から選択される、請求項25の方法。
【請求項29】
Lが4-ニトロフェノキシ、4-クロロフェノキシ、3,5-ジクロロフェノキシ、および2,4-ジクロロフェノキシよりなる群から選択される、請求項28の化合物。
【請求項30】
Lが4-ニトロフェノキシである請求項29の方法。
【請求項31】
Lがハロゲンである請求項25の方法。
【請求項32】
Lが、ClおよびBrよりなる群から選択される請求項31の方法。
【請求項33】
C’における当該化合物がR-エナンチオマーである、請求項25の方法。
【請求項34】
Vが4-ピリジルであり、Lが4-ニトロフェノキシである請求項33の方法。
【請求項35】
Vが4-ピリジルであり、Lが塩素である請求項33の方法。
【請求項36】
Vが3-クロロフェニルであり、Lが4-ニトロフェノキシである請求項33の方法。
【請求項37】
Vが3-クロロフェニルであり、Lが塩素である請求項33の方法。
【請求項38】
C’における当該化合物がS-エナンチオマーである、請求項25の方法。
【請求項39】
Vが4-ピリジルであり、Lが4-ニトロフェノキシである請求項38の方法。
【請求項40】
Vが4-ピリジルであり、Lが塩素である請求項38の方法。
【請求項41】
Vが3-クロロフェニルであり、Lが4-ニトロフェニルである請求項38の方法。
【請求項42】
Vが3-クロロフェニルであり、Lが塩素である請求項38の方法。
【請求項43】
Lが1個または2個の置換基で任意に置換されてもよいアリールオキシよりなる群から選択され、更に含窒素ヘテロアリール溶媒を含む溶媒系の使用を包含する、請求項25の方法。
【請求項44】
当該溶媒系が工程aで使用される、請求項43の方法。
【請求項45】
含窒素ヘテロアリール溶媒がピリジンである、請求項43の方法。
【請求項46】
工程aにおいて、1-(V)-1,3-プロパンジオールの塩が塩基の存在下でL−P(O)Clと反応させられる、請求項25の方法。
【請求項47】
当該塩が鉱酸塩より選択される、請求項46の方法。
【請求項48】
当該塩が、HClおよびHBrよりなる群から選択される、請求項47の方法。
【請求項49】
当該塩がHCl塩である、請求項48の方法。
【請求項50】
さらに、式Iの化合物のトランス異性体の単離を含んでなる、請求項25の方法。
【請求項51】
Vが4-ピリジルであり、Lが4-ニトロフェニルである、請求項50の方法。
【請求項52】
Vが4-ピリジルであり、Lが塩素である、請求項50の方法。
【請求項53】
Vが3-クロロフェニルであり、Lが4-ニトロフェニルである、請求項50の方法。
【請求項54】
Vが3-クロロフェニルであり、Lが塩素である、請求項50の方法。
【請求項55】
式IIの化合物
【化5】

およびその塩の製造方法であって;
式Iの化合物
【化6】

〔式中、VおよびLは相互にトランスであり;
Vがヘテロアリールおよびフェニルよりなる群から選択され、すべて1個から4個の置換基で任意に置換されていてもよく;
Lがハロゲン、および(1個から2個の置換基で任意に置換されてもよいフェノキシ)よりなる群から選択される脱離基を示す。〕
またはその塩をMHと反応させ、
ここで、MHは保護若しくは無保護の腫瘍退縮剤および抗ウィルス剤よりなる群から選択され、HはO、SまたはNと結合し、Mは酸素、窒素または硫黄原子を介してリンと結合する、製造方法。
【請求項56】
MH上に存在する一級ヒドロキシル基の酸素原子を介してMがリンと結合する、請求項55の方法。
【請求項57】
MHが非環式ヌクレオシドである、請求項55の方法。
【請求項58】
MHを塩基の存在下で式Iの化合物と反応させる、請求項55の方法。
【請求項59】
MHが保護ヌクレオシドであって、さらに塩基でもってMHのアニオンを形成させ、式I若しくはその塩のホスホリル化剤を該アニオンへ添加する工程を含む、請求項55の方法。
【請求項60】
MHが無保護ヌクレオシドであって、式Iの化合物またはその塩をMHまたはその塩に添加する請求項55の方法。
【請求項61】
当該塩基がR’MgX’であって、
R’はC−Cアルキル、1個から3個の置換基で任意に置換されてもよいアリールよりなる群から選択され、
X’はハロゲンよりなる群から選択される、請求項58の方法。
【請求項62】
当該塩基が、tert-BuMgClおよびフェニルMgClよりなる群から選択される、請求項61の方法。
【請求項63】
当該塩基がtert-BuMgClである、請求項62の方法。
【請求項64】
さらに、塩基を用いて保護ヌクレオシドのアニオンを形成させ;ルイス酸を加え;および式Iの化合物を加えることを含む、請求項55の方法。
【請求項65】
MHがヌクレオシドであって、さらに、塩基を用いてMHのアニオンを形成させ;Mg塩を加えて、該アニオンのMg塩を発生させることを含む、請求項55の方法。
【請求項66】
当該塩基が水素化アルカリ、有機金属塩基、トリアルキルアミン、および含窒素ヘテロアリール塩基よりなる群から選択される、請求項65の方法。
【請求項67】
当該塩基がNaH、LiH、LDA、LHMDS、t−BuOK、およびBuLi、EtN、ジイソプロピルエチルアミン、DBU、DABCO、およびピリジンよりなる群から選択される、請求項65の方法。
【請求項68】
当該塩がMgCl、MgBr、およびMgIよりなる群から選択される、請求項65の方法。
【請求項69】
当該塩基がNaHであり、当該塩がMgClである、請求項65の方法。
【請求項70】
当該塩基がt−BuOKであり、当該塩がMgClである、請求項65の方法。
【請求項71】
当該塩基がBuLiであり、当該塩がMgClである、請求項65の方法。
【請求項72】
当該塩基がDBUであり、当該塩がMgClである、請求項65の方法。
【請求項73】
当該塩基がEtNであり、当該塩がMgClである、請求項65の方法。
【請求項74】
式IIの化合物
【化7】

およびその塩を製造する方法であって、式Iの化合物
【化8】

〔式中、式中、VおよびLは相互にトランスであり;
Vがヘテロアリールおよびフェニルよりなる群から選択され、すべて1個から4個の置換基で任意に置換されていてもよく;
Lがハロゲン、および(1個から2個の置換基で任意に置換されてもよいフェノキシ)よりなる群から選択される脱離基を示す。〕
またはその塩と式IIIのヌクレオシド
【化9】

〔式中、Bは下記の群より選択され、
【化10】

ここで、A、G、およびL’はそれぞれ独立してCHまたはNであり;
Dは、N、CH、C−CN、C−NO、C−C1−3アルキル、C-NHCONH、C−CONR1111、C−CSNR1111、C−COOR11、C−C(=NH)NH、C-ヒドロキシ、C−C1−3アルコキシ、C-アミノ、C−C1−4アルキルアミノ、C−ジ(C1−4アルキル)アミノ、C−ハロゲン、C−(1,3-オキサゾール-2-イル)、C−(1,3-チアゾール-2-イル)、またはC−(イミダゾール-2-イル)であってアルキルは無置換若しくはハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、およびC1−3アルコキシより独立して選択される1個から3個の置換基で置換され;
EはNまたはCR
WはOまたはS;
は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−4アルキルアミノ、CF、またはハロゲン;
は、H、OH、SH、NH、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、またはCF
は、H、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノ;
は、H、ハロゲン、CN、カルボキシ、C1−4アルキルオキシカルボニル、N、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニル、または(C1−4アルキル)0−2アミノメチル;
11はHまたはC1−6アルキル;
14はH、CF、C1−4アルキル、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノ〕
と反応させる工程を含む、方法。
【請求項75】
Bが下記の群
【化11】

〔式中、DはN、CH、C−CN、C−NO、C−C1−3アルキル、C−NHCONH、C−CONR1111、C−COOR11、C−ヒドロキシ、C−C1−3アルコキシ、C−アミノ、C−C1−4アルキルアミノ、C−ジ(C1−4アルキル)アミノまたはC−ハロゲンであり;
EはNまたはCR
は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−4アルキルアミノ、CFまたはハロゲン;
は、H、OH、SH、NH、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、またはCF
はH、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノ;
は、H、ハロゲン、CN、カルボキシ、C1−4アルキルオキシカルボニル、N、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニル、または(C1−4アルキル)0−2アミノメチル;
11はHまたはC1−6アルキル〕
より選択される、請求項74の方法。
【請求項76】
Bが下記の群
【化12】

〔式中、DはN、CH、またはC−ハロゲン;
EはNまたはC−Me;
はOHまたはNH
はHまたはアミノ;
はHまたはハロゲンを表す。〕
より選択される、請求項74の方法。
【請求項77】
Bが下記よりなる群
【化13】

から選択される、請求項74の方法。
【請求項78】
式Vの化合物
【化14】

の調製方法であって、式IVのホスホリル化試薬
【化15】

〔式中、Lは塩素および4-ニトロフェノキシよりなる群から選択される。〕
と任意で保護されていてもよいシタラビンとを縮合させる、方法。
【請求項79】
縮合反応において塩基を使用する、請求項78の方法。
【請求項80】
該塩基がRMgXであり、式中、RはC1−5アルキルよりなる群から選択され;Xはハロゲンよりなる群から選択される、請求項79の方法。
【請求項81】
該塩基がt-BuMgClである、請求項80の方法。
【請求項82】
シタラビンのヒドロキシル基および4-アミノ基が保護されている、請求項78の方法。
【請求項83】
シタラビンの4-アミノ基がジメチルホルムアミジンとして保護されている、請求項78の方法。
【請求項84】
シタラビンの2'位および3'位のヒドロキシル基保護基がトリアルキルシリルエーテル、任意で置換基を有してもよいMOMエーテル、および任意で置換基を有してもよいMEMエーテルよりなる群から選択される、請求項78の方法。
【請求項85】
当該シタラビンの2'位および3'位のヒドロキシル基保護基がt-ブチルジメチルシリルエーテルである、請求項84の方法。
【請求項86】
シタラビンのヒドロキシル基および4-アミノ基が保護されない、請求項78の方法。
【請求項87】
Lが塩素である、請求項86の方法。
【請求項88】
更に、塩基を用いて任意で保護されていてもよいシタラビンのアニオンを形成させ、Mg塩を加え、任意で保護されていてもよい該シタラビンアニオンのMg塩を形成させる、請求項78の方法。
【請求項89】
当該塩基が水素化アルカリ、有機金属塩基、トリアルキルアミン、および含窒素ヘテロアリール塩基よりなる群から選択される、請求項88の方法。
【請求項90】
当該塩がMgCl、MgBr、およびMgIよりなる群から選択される、請求項88の方法。
【請求項91】
当該塩基がNaHであり、当該塩がMgClである、請求項88の方法。
【請求項92】
当該塩基がt-BuOKであり、当該塩がMgClである、請求項88の方法。
【請求項93】
当該塩基がBuLiであり、当該塩がMgClである、請求項88の方法。
【請求項94】
当該塩基がDBUであり、当該塩がMgClである、請求項88の方法。
【請求項95】
当該塩基がEtNであり、当該塩がMgClである、請求項88の方法。
【請求項96】
塩基としてt-BuMgClを用い;式IVの化合物
【化16】

〔式中、Lは4-ニトロフェノキシ基を表す。〕
を用い;任意で保護されていてもよいシタラビンが、その2'位および3'位のヒドロキシル基がt-ブチルジメチルシリルエーテルで保護され、4-アミノ基がジメチルホルムアミジンで保護された、請求項78の方法。
【請求項97】
式IIの化合物
【化17】

およびその塩を製造する方法であって、式Iの化合物
【化18】

〔式中、Vがヘテロアリールおよびフェニルよりなる群から選択され、すべて1個から4個の置換基で任意に置換されていてもよく;
Lがハロゲン、および(1個から2個の置換基で任意に置換されてもよいフェノキシ)よりなる群から選択される脱離基を示す。〕
またはその塩とMHを反応させる方法で;
MHは保護若しくは無保護の腫瘍退縮剤および抗ウィルス剤から選択され;
HはO、S、またはNと結合し;
Mは酸素原子、窒素原子または硫黄原子を介してリンと結合する、方法。
【請求項98】
式IIの化合物
【化19】

およびその塩を製造する方法であって、式Iの化合物
【化20】

〔式中、Vはヘテロアリールおよびフェニルよりなる群から選択され、すべて1個から4個の置換基で任意に置換されていてもよく;
Lはハロゲン、および(1個から2個の置換基で任意に置換されてもよいフェノキシ)よりなる群から選択される脱離基を示す。〕
またはその塩と式IIIのヌクレオシド
【化21】

〔式中、Bは下記の群より選択され、
【化22】

ここで、A、G、およびL’はそれぞれ独立してCHまたはNであり;
Dは、N、CH、C−CN、C−NO、C−C1−3アルキル、C-NHCONH、C−CONR1111、C−CSNR1111、C−COOR11、C−C(=NH)NH、C-ヒドロキシ、C−C1−3アルコキシ、C-アミノ、C−C1−4アルキルアミノ、C−ジ(C1−4アルキル)アミノ、C−ハロゲン、C−(1,3-オキサゾール-2-イル)、C−(1,3-チアゾール-2-イル)、またはC−(イミダゾール-2-イル)であってアルキルは無置換若しくはハロゲン、アミノ、ヒドロキシ、カルボキシ、およびC1−3アルコキシより独立して選択される1個から3個の置換基で置換され;
EはNまたはCR
WはOまたはS;
は、H、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、C1−4アルキルアミノ、CF、またはハロゲン;
は、H、OH、SH、NH、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、ハロゲン、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、またはCF
は、H、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノ;
は、H、ハロゲン、CN、カルボキシ、C1−4アルキルオキシカルボニル、N、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、ヒドロキシ、C1−6アルコキシ、C1−6アルキルチオ、C1−6アルキルスルホニル、または(C1−4アルキル)0−2アミノメチル;
11はHまたはC1−6アルキル;
14はH、CF、C1−4アルキル、アミノ、C1−4アルキルアミノ、C3−6シクロアルキルアミノ、またはジ(C1−4アルキル)アミノ〕
と反応させる工程を含む、方法。

【公表番号】特表2006−504791(P2006−504791A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550353(P2004−550353)
【出願日】平成15年10月31日(2003.10.31)
【国際出願番号】PCT/US2003/034709
【国際公開番号】WO2004/041834
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(399124174)メタバシス・セラピューティクス・インコーポレイテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】METABASIS THERAPEUTICS, INC.
【Fターム(参考)】