説明

2つのポリアミド部分の溶着方法

本発明は、一緒に溶着された2つのポリアミド部分を含むプラスチック体であって、2つのポリアミド部分のうちの少なくとも1つが鉄含有添加剤を含むポリアミド組成物からなる、プラスチック体に関する。本発明はまた、2つのポリアミド部分であって、そのうちの少なくとも1つが鉄含有添加剤を含むポリアミド組成物からなるポリアミド部分を溶着することによる、プラスチック体を作製するための溶着方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、両方共がポリアミドおよび場合により添加剤を含むポリアミド組成物から作製されている2つのポリアミド部分を溶着するための方法に関する。さらに本発明は、この方法により得ることができる、一緒に溶着された2つのポリアミド部分を含む、溶着されたプラスチック体に関する。
【0002】
このような方法および一緒に溶着された2つのポリアミド部分を含むこのようなプラスチック体は、欧州特許出願公開第1383825A1号明細書より周知である。欧州特許出願公開第1383825A1号明細書には、2つのポリアミド部分を振動溶着により一緒に溶着できることが記載されている。
【0003】
ポリアミド含有樹脂組成物から成形品を製造することは当該技術分野において周知である。場合によっては、成形品の幾何学形状に対する要求がこのような一体化された物品を成形する技術力を超えていたり、比較的費用および時間のかかるロストコア成形法を用いて成形を実施することしかできない場合がある。その結果、物品の一部分、例えば、中空物品の2つの半割殻をまず最初に成形し、次のステップにおいてこの殻を一緒に溶着することにより所望の物品を形成することによって、比較的複雑な形状を有する物品の製造を可能にする代替的な製造方法が開発された。
【0004】
しかしながら、このような溶着された物品が使用中に受ける力に耐えるための十分な強度を有する物品を製造するに当たっては困難に直面する場合もある。2つのポリアミド部分を一緒に溶着した溶着部を含むプラスチック体の一般的な問題は、溶着線の強度が、通常は、2つのポリアミド部分のバルクと比較してはるかに低いことにある。このような溶着されたプラスチック体を機械的試験に付した場合は、溶着線で破損が起こる。特に、溶着不良は、溶着された物品が高圧を受ける用途において問題となり得る。その典型例は、自動車産業用の吸気マニホールドに伴うものである。これは、例えば、この物品が内燃エンジンの吸気マニホールドであり、エンジンが逆火したときに起こり得る。
【0005】
溶着強度の問題を解決するための典型的な手法は、溶着線になると思われる部分の周囲の肉厚を厚くすることである。このように肉厚を増加させることは、他の技術的な理由により、必ずしも可能でないかまたは望ましいとは限らない。
【0006】
溶着不良に関するさらなる問題点は、多くの場合、完成品の溶着強度を増大させることを目的として熱可塑性樹脂組成物に化合物を添加すると、その代償として、成形品の他の幾つかの重要な特性が低下し得ることにある。特に、鉱物充填およびガラス繊維充填組成物を用いた場合は、バルク強度と溶着強度との差が激しく、しかも、フィラーまたはガラス繊維の量をさらに増加した場合は、溶着強度に悪影響が及ぼされる場合も多い。
【0007】
欧州特許出願公開第1383825A1号明細書においても、2つの溶着されたポリアミド部分を含むプラスチック体の不十分な強度に関する問題に対処している。2つの溶着された部分を含むプラスチック体の溶着強度を増大させるために、欧州特許出願公開第1383825A1号明細書では、2つのポリアミド部分を異なるポリアミド組成物から作製する(第1部分が、第2部分のポリアミド組成物中のポリアミドよりも軟化点が低いポリアミドを含むポリアミド組成物から作製されており、第1部分のポリアミド組成物が1種またはそれ以上の増粘剤をさらに含む)方法を提供している。
【0008】
これと同じ問題の他の解決策が、国際公開第98/11164号パンフレットにより提供されている。国際公開第98//11164号パンフレットには、2つのポリアミド部分を作製するポリアミド樹脂組成物中に特定の可塑剤化合物を含有させる溶着方法が記載されている。2つのポリアミド部分のポリアミド成分は同一である。
【0009】
欧州特許出願公開第1383825A1号明細書と同じく国際公開第98/11164号パンフレットの解決策も、可塑剤や軟化点がより低いポリアミドを使用することによって溶着されたプラスチック体の剛性が低下し、高温下での使用が制限されることに問題がある。
【0010】
2つの溶着されたポリアミド部分から作製されたプラスチック体のさらなる問題点は、溶着強度が2つの部分のバルクよりもはるかに低いことだけでなく、劣化速度が2つの部分のバルクよりもはるかに速いことにある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、2つのポリアミド部分を溶着する方法であって、その結果として得られる溶着されたプラスチック体の溶着強度および/または高温下におけるその保持に関する性能が改善されている方法を提供することにある。
【0012】
この目的は、2つのポリアミド部分のうちの少なくとも1つが鉄含有添加剤を含むポリアミド組成物からなる、本発明による方法を用いることにより達成された。
【0013】
本発明による溶着方法において、2つのポリアミド部分のうち少なくとも1つが鉄含有添加剤を含むポリアミド組成物からなることの効果により、溶着の結果として得られる溶着されたプラスチック体は、2つのポリアミド部分の両方共がその組成物中に鉄含有添加剤を含まない、対応する溶着方法により得られる対応する溶着されたプラスチック体と比較して、溶着強度がより高く、かつ/または高温下におけるその保持性がより高くなる。
【0014】
本発明による方法において、2つの部分は、好適には、同一のポリアミド組成物からなっていても異なるポリアミド組成物からなってもよい。異なるポリアミド組成物である場合は、一方の組成物が鉄含有添加剤を含む点で異なっていても、組成物が、異なるポリアミドおよび/または異なるさらなる添加剤を含む点で異なっていてもよい。
【0015】
本発明による方法の好ましい態様においては、2つの部分は両方共、鉄含有添加剤を含むポリアミド組成物からなる。その利点は、溶着されたプラスチック体の溶着強度がさらに増大するとともに、高温下においてより良好に保持されることにある。
【0016】
鉄含有添加剤は、鉄を唯一の金属元素として含んでいてもよいし、さらなる金属元素を含んでいてもよい。したがって、この添加剤に含まれる鉄の含有量が金属元素の総含有量を構成してもよいし、あるいは金属の総含有量が高く、鉄含有量がその一部を構成していてもよい。本発明の有益な効果を添加剤の鉄含有量と関連させることができるとすると、鉄含有添加剤の鉄含有量は、鉄含有添加剤に含まれる金属の総重量に対し、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%である。
【0017】
好適には、鉄含有添加剤は、単体形態の鉄すなわち鉄単体ならびに/または酸化鉄および/もしくはその塩を含む。好ましくは、鉄含有添加剤は、鉄含有添加剤の非高分子の総重量%に対し、鉄単体を少なくとも60重量%、より好ましくは75重量%含む。
【0018】
典型的には、このような材料の粒子の粒度分布は、粒度の大部分が、例えば、最大で2mmである。通常、金属単体の重量平均粒度(dm)は、最大で1mmである。
【0019】
好ましくは、鉄含有添加剤に含まれる鉄単体は、ポリアミド組成物中に微細に分散されている。微細分散された鉄単体は、粒度範囲が非常に広い粒子からなるものであってもよい。好ましくは、微細分散された鉄単体の重量平均粒度は、最大500μm、より好ましくは最大300μm、200μm、または100μmでさえあり、よりさらに好ましくは最大50μmである。鉄単体の粒度は非常に小さくてもよく、重量平均粒度が、例えば、10または5μmであっても、それより小さくてさえもよい。鉄単体の重量平均粒度がより小さいことの利点は、溶着強度特性が一層改善されることにある。
【0020】
重量平均粒度は、ASTM標準D 1921−89のA法に準拠し、Dとして測定されるものである。
【0021】
本発明による方法に使用されるポリアミド部分に含まれていてもよい好適な鉄単体は、例えば、オハイオ州SMC・メタル・プロダクツ(SMC Metal Products,Ohio)から入手可能なSCM鉄粉A−131である。
【0022】
好適には、酸化鉄および/またはその塩を含む鉄含有添加剤は、酸化鉄(II)[FeO]、酸化鉄(III)[Fe2O3]および/もしくはその組合せ[Fe3O4]、フェライト、鉄リン系酸化物(iron phosphorous oxide)、ならびに/またはこれらの混合物を含む。
【0023】
酸化鉄および/またはその塩は、粒度範囲が非常に幅広い粒子からなるものであってもよい。好ましくは、酸化鉄および/またはその塩は、重量平均粒度が最大1mm、好ましくは最大0.5mm、より好ましくは最大0.1mm、よりさらに好ましくは最大50μmの粒子からなる。
【0024】
費用効率に関する理由から、鉄含有添加剤および特に鉄単体は、重量平均粒度が好ましくは1μmを超え、より好ましくは2μmを超え、よりさらに好ましくは3μmを超える。一般に、添加剤がこれよりも微細な等級のものになると原料および配合にかかる費用が増加するが、普通は、これと引き替えにするほど性能が向上することはない。さらに、微粉砕された鉄単体は爆発の危険性も有している。
【0025】
鉄含有添加剤は、幅広い範囲の量で存在してもよい。非常に少量であっても、溶着強度特性には既に確実に効果があり、この効果は、鉄含有添加剤の量が増加するに伴い増大する。大量になるとこの効果は横ばいになる。好ましくは、鉄含有添加剤は、ポリアミド組成物の総重量に対し0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜4重量%、よりさらに好ましくは0.1〜2重量%の量で存在する。この量がより多いと、溶着線の性質がさらに向上するという利点がある。
【0026】
鉄含有添加剤を含有するポリアミド組成物中のポリアミドポリマーは、ポリアミド部分の作製およびそれを溶着したプラスチック体の製造に好適な任意のポリアミドポリマーであってもよい。
【0027】
好適には、ポリアミドポリマーは、熱可塑性ポリアミド、非晶質または半結晶性ポリアミドに加えて、脂肪族または半芳香族ポリアミドである。
【0028】
好適な脂肪族ポリアミドは、例えば、PA−6、PA−11、PA−12、PA−4,6、PA−4,8、PA−4,10、PA−4,12、PA−6,6、PA−6,9、PA−6,10、PA−6,12、PA−10,10、PA−12,12、PA−6/6,6−コポリアミド、PA−6/12−コポリアミド、PA−6/11−コポリアミド、PA−6,6/11−コポリアミド、PA−6,6/12−コポリアミド、PA−6/6,10−コポリアミド、PA−6,6/6,10−コポリアミド、PA−4,6/6−コポリアミド、PA−6/6,6/6,10−ターポリアミド、ならびに1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ならびに2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンから得られるコポリアミド、ならびに上述したポリアミドのコポリアミドである。
【0029】
好適な半芳香族ポリアミドは、例えば、PA−6,I、PA−6,I/6,6−コポリアミド、PA−6,T、PA−6,T/6−コポリアミド、PA−6,T/6,6−コポリアミド、PA−6,I/6,T−コポリアミド、PA−6,6/6,T/6,I−コポリアミド、PA−6,T/2−MPMD,T−コポリアミド(2−MPMD=2−メチルペンタメチレンジアミン)、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD,T(2−MOMD=2−メチル−1,8−オクタメチレンジアミン)、テレフタル酸、2,2,4−および2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンから得られるコポリアミド、イソフタル酸、ラウリンラクタム、および3,5−ジメチル−4,4−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、イソフタル酸、アゼライン酸、および/またはセバシン酸ならびに4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、カプロラクタム、イソフタル酸、および/またはテレフタル酸ならびに4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタンから得られるコポリアミド、カプロラクタム、イソフタル酸、および/またはテレフタル酸ならびにイソホロンジアミンから得られるコポリアミド、イソフタル酸および/またはテレフタル酸および/または他の芳香族もしくは脂肪族ジカルボン酸、場合によりアルキル置換されたヘキサメチレンジアミン、ならびにアルキル置換された4,4−ジアミノジシクロヘキシルアミンから得られるコポリアミド、ならびに上述のポリアミドから得られるコポリアミドである。
【0030】
好ましくは、ポリアミドは、PA−6、PA−6,6、PA−6,10、PA−4,6、PA−11、PA−12、PA−12,12、PA−6,I、PA−6,T、PA−6,I/6,T−コポリアミド、PA−6,T/6,6−コポリアミド、PA−6,T/6−コポリアミド、PA−6/6,6−コポリアミド、PA−6,6/6,T/6,I−コポリアミド、PA−6,T/2−MPMD,T−コポリアミド、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD,T−コポリアミド、PA−4,6/6−コポリアミド、ならびに上述のポリアミドの混合物およびコポリアミドからなる群から選択される。より好ましくは、PA−6,I、PA−6,T、PA−6,I/6,T−コポリアミド、PA−6,6,PA−6,6/6T、PA−6,6/6,T/6,I−コポリアミド、PA−6,T/2−MPMD,T−コポリアミド、PA−9,T、PA−9T/2−MOMD,T−コポリアミド、もしくはPA−4,6、またはその混合物もしくはコポリアミドがポリアミドとして選択される。
【0031】
好ましくは、ポリアミドポリマーは、ガラス転移温度(Tg)を有する非晶質ポリアミドまたは融解温度(Tm)を有する半結晶性ポリアミドであり、上記温度(非晶質ポリアミドのTgまたは半結晶性ポリアミドのTmのいずれか)は、少なくとも200℃、より好ましくは少なくとも220℃、250℃、270℃、280℃、または少なくとも290℃でさえある。
【0032】
本明細書における融解温度という用語は、DSCを用いて昇温速度10℃/分で測定した場合に、融解エンタルピーが最も高くなる温度として定められる融解温度と理解される。
【0033】
本明細書におけるガラス転移温度という用語は、ASTM E1356−91に準拠し、DSCを用いて昇温速度20℃/分で測定した場合に、元の温度曲線(parent thermal curve)の変曲点に相当する、1次微分(時間に対する)のピーク温度として定められる温度と理解される。
【0034】
ポリアミド部分を用いる最新技術による溶着方法では、PA6を含み、かつガラス含有量が低い場合に最良の溶着結果が得られる。本発明の効果は、より高いTgまたはTmを有する他のポラミズ(polamides)を用いてもより優れた結果を得ることができ、ガラス含有量がより高くてもより優れた結果を得ることができることにある。
【0035】
その効果は、熱変形温度(HDT)がより高い製品でより優れた溶着結果を得ることができ、それによって溶着されたプラスチック体を使用することができる温度範囲が広くなることにある。
【0036】
好ましくは、ポリマー組成物のISO 75/Aに準拠して測定されたHDTは、少なくとも200℃、230℃、250℃、260℃、または少なくとも270℃でさえある。
【0037】
好ましくは、ポリアミドポリマーは、PA−6,6、PA−4,6、および/またはテレフタル酸由来の半結晶性半芳香族ポリアミド、および/またはその任意のコポリマーを含む。
【0038】
好適には、ポリアミド組成物は、第1および第2ポリミド(polymide)を含む少なくとも2種のポリアミドのブレンド物を含む。本発明による方法の好ましい実施形態においては、ポリアミドポリマーは、融点が少なくとも260℃である半結晶性ポリアミドおよび融解温度が260℃未満である第2ポリアミドのブレンドであるか、または第2ポリアミドが、ガラス転移温度が260℃未満である非晶質ポリアミドである。好ましくは、第1ポリアミドは、PA−6,6、PA−4,6、および/もしくはテレフタル酸由来の半結晶性半芳香族ポリアミド、ならびに/またはその任意のコポリマーであり、第2ポリアミドは、PA−6またはそのコポリアミドである。
【0039】
同じく好適には、本発明による方法における2つの部分およびそれにより得られる溶着されたプラスチック体は、異なるポリアミド組成物からなる。これらの異なるポリアミド組成物は、2種類の組成物のそれぞれに含まれるポリアミドポリマーが異なるという点で異なっていてもよい。
【0040】
好適には、一方の部分(部分L)のポリアミドポリマーは、軟化温度が他方の部分(部分H)のポリアミドよりも低く、部分Lのポリアミド組成物は、高分子量ポリアミドおよび/または増粘剤を含む。
【0041】
1種または複数種のポリアミド組成物は、ポリアミドポリマーおよび鉄含有添加剤以外に、1種またはそれ以上の添加剤を含んでいてもよい。
【0042】
この種の添加剤としては、好適には、本発明から本質的に逸脱しない限り、フィラー、強化繊維、および溶着工程ステップ用途に用いられるポリアミド組成物に慣用されている当業者に周知の他の添加剤が挙げられる。ポリアミド組成物に含まれていてもよい好適な他の添加剤は、例えば、ポリアミド以外の熱可塑性ポリマー、耐衝撃性改良剤(このようなゴムおよびエラストマー)、相溶化剤、顔料、難燃剤、安定剤(例えば、UV吸収剤、酸化防止剤、および熱安定剤)、処理剤(離型剤、核剤)、および無機塩、酸性化成分、ならびにこれらの混合物である。好適な無機塩の例としては、アルカリ、アルカリ土類、および遷移金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩、亜硫酸塩、およびリン酸塩(塩化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸銅、ヨウ化銅、酢酸銅等)、ならびにこれらの混合物が挙げられる。好適な酸性化成分は、例えば、ピロリン酸塩等のリン緩衝剤であり、その好適な例が、ピロリン酸ナトリウム(NaPO)である。
【0043】
耐衝撃性改良剤として使用することができる好適なゴムは、例えば、SBSゴムおよびEPDMゴムである。
【0044】
ポリアミドポリマー以外にポリアミド組成物中に使用することができる熱可塑性ポリマーは、溶着工程ステップを含む用途に用いられる成形組成物中に使用するのに好適な任意の種類の熱可塑性ポリマーであってもよい。熱可塑性ポリマーは、例えば、非晶質ポリマーまたは半結晶性ポリマーであってもよい。好適な非晶質ポリマーは、例えば、ポリイミド(PI)ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、およびポリアリレート(PAR)非晶質ポリエステル(PES)である。好適な半結晶性ポリマーは、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレスルフィズ(polyphenylesulfides)(PPS)、および半芳香族熱可塑性ポリエステルである。熱可塑性ポリマーはまた、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、PE/PPコポリマー等のポリオレフィンであってもよい。熱可塑性ポリマーは、異なる熱可塑性ポリマーのブレンド物も含んでいてもよい。
【0045】
熱可塑性ポリマーが少量でも使用される場合、これは、好ましくは、ポリアミドポリマーの重量に対し0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜10質量%、最も好ましくは1〜5質量%の量で存在する。
【0046】
相溶化剤は、有利には、熱可塑性ポリマーおよびこの熱可塑性ポリマーとの混和性が低い耐衝撃性改良剤と併用される。
【0047】
好適な顔料としては、カーボンブラックやニグロシン等の黒色顔料およびTiOやZnS等の白色顔料が挙げられる。
【0048】
好適な熱安定剤は、例えば、フェノール系熱安定剤(例えば、イルガノックス(Irganox 1098)、リン酸エステル(例えば、Irgafos 168)、芳香族アミン、および金属塩である。好適な金属塩の例は、例えば、ジチオカルバミン酸ニッケル(ホスタビン(Hostavin)VPNiCS1等)、ジチオカルバミン酸亜鉛(ホスタノックス(hostanox)VPZnCS1等)、および銅塩(CuI/KI等)である。
【0049】
特にポリアミド組成物は、好ましくは、フィラーおよび/または強化繊維を含む。
【0050】
本明細書におけるフィラーとは、粒子形状の材料と理解される。フィラーの粒子は、様々な構造、例えば、薄片状、板状、米粒状、六角形状、または球状形状を有していてもよい。フィラーは、ポリアミド成形化合物を作製する当業者に周知の任意のフィラーであってもよい。好適には、本発明によるポリアミド組成物中に含まれるフィラーのアスペクト比L/Dは、5未満である。同じく好適には、フィラーは、例えば、ガラスビース、硫酸バリウムやケイ酸アルミニウム等の無機フィラー、およびタルカム、炭酸カルシウム、カオリン、珪灰石、雲母、クレー、焼成粘土等の鉱物系フィラーを含む無機フィラーである。フィラーは、場合により、熱可塑性ポリアミドとの混和性を高めるために表面処理されていてもよい。
【0051】
本発明による方法に使用されるポリアミド部分および上記方法により得られる溶着されたプラスチック体の少なくとも1つの部分に含まれる繊維状強化剤は、繊維強化された熱可塑性溶着プラスチック体に使用するのに好適な任意の種類の繊維状強化剤であってもよい。本明細書において、繊維状強化剤とは、長さ、幅、および厚みを有し、長さの平均が幅および厚みのどちらよりもかなり大きい材料とみなされる。一般に、このような材料のアスペクト比L/D(長さ(L)と、幅および厚みの大きい方(D)との比率の平均値と定義される)は、少なくとも5である。好ましくは、繊維状強化剤のアスペクト比は、少なくとも10、より好ましくは少なくとも20、よりさらに好ましくは少なくとも50である。
【0052】
好適な繊維状強化剤は、例えば、非金属繊維状強化剤(ガラス繊維、炭素またはグラファイト繊維、アラミド繊維、セラミック繊維、鉱物繊維(珪灰石等)、ウイスカー等)であり、金属繊維(銅、鉄、およびアルミニウム繊維等)は、本組成物に想定される適用分野を考慮すると、本発明による方法および組成物には好ましくない。
【0053】
本発明による方法に使用されるポリアミド部分に含まれるフィラーおよび繊維状強化剤の量は幅広い範囲で変化してもよい。通常、この量は、ポリアミドポリマー100重量部(pbw)に対し0〜300pbwの範囲にある。好ましくは、この量は、ポリアミドポリマー100pbwに対し5〜235pbw、より好ましくは10〜150pbw、よりさらに好ましくは25〜100pbwである。
【0054】
好適には、ポリアミド組成物は、銅塩を含む安定剤、フィラー(例えば、鉱物フィラー)、繊維状強化剤、アルカリ金属ハロゲン化物(NaCl等)、およびピロリン酸塩(ピロリン酸ナトリウムすなわちNaPO等)の群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む。これらのそれぞれの利点は、溶着強度がさらに向上することにある。
【0055】
好ましくは、ポリアミド組成物は、銅塩(CuI等)および/またはアルカリ金属ハロゲン化物(KIおよび/またはNaCl等)および/またはピロリン酸ナトリウムの組合せを含む。
【0056】
銅塩、アルカリ金属ハロゲン化物、および/またはピロリン酸ナトリウムの組合せは、好ましくは、ポリアミド組成物の総重量に対し、総量が0.001〜10重量%、より好ましくは0.01〜5重量%、よりさらに好ましくは0.01〜3重量%で存在する。
【0057】
好ましくは、フィラーおよび/または繊維状強化剤は、ポリアミド組成物の総重量に対し、総量が1〜70重量%、より好ましくは10〜50重量%で存在する。
【0058】
本発明の好ましい実施形態においては、少なくとも1つの部分は、
・ポリアミドポリマーを30〜95重量%pbwと、
・鉄含有添加剤を0.01〜10重量%と、
・フィラーおよび/または繊維状強化剤を0〜70重量%と、
・銅塩、アルカリ金属ハロゲン化物、およびピロリン酸塩から選択される少なくとも1種の添加剤を0.01〜5重量%と、
・さらなる添加剤を0〜20重量%と
を含むポリアミド組成物からなる。
【0059】
より好ましい実施形態においては、ポリアミド組成物は、
・ポリアミドポリマーを30〜90重量%pbwと、
・鉄含有添加剤を0.05〜5重量%と、
・フィラーおよび/または繊維状強化剤を5〜70重量%と、
・銅塩、アルカリ金属ハロゲン化物、およびピロリン酸塩から選択される少なくとも1種の添加剤を0.1〜3重量%と、
・さらなる添加剤を0〜10重量%と
からなる。
【0060】
本明細書における重量百分率(重量%)は、ポリアミド組成物の総重量に対するものである。
【0061】
本発明による方法に使用されるポリアミド部分は、ポリアミド部分の作製に好適な任意の方法で作製されたものであってもよい。好ましくは,ポリアミド部分は、射出成形法または押出成形法により作製される。
【0062】
本発明による方法における溶着ステップには、ポリアミド部分の溶着に好適な任意の溶着技法が含まれていてもよい。好適な溶着技法は、例えば、接触溶着(contact welding)、電磁溶着、熱板溶着、高周波溶着、超音波溶着、振動または摩擦溶着、およびレーザ溶着である。しかしながら、鉄含有添加剤が典型的には非透過性の性質を有するため、一般に、レーザ溶着は好ましくない。
【0063】
好ましくは、溶着技法は、接点溶着、熱板溶着、高周波溶着、超音波溶着、振動または摩擦溶着からなる群から選択される。
【0064】
好ましくは、溶着は、振動溶着または熱板溶着、より好ましくは振動溶着により実施される。
【0065】
本発明による方法によって生成する、本発明による溶着されたプラスチック部分に含まれる溶着継手も、プラスチック部分の溶着により得ることができる任意の溶着継手であってもよい。好適な溶着継手は、突合せ継手、角継手、T継手、重ね継手、またはへり継手である。
【0066】
本発明はまた、一緒に溶着された2つのポリアミド部分を含む溶着されたプラスチック体にも関する。本発明による溶着されたプラスチック体においては、2つのポリアミド部分の少なくとも1つが、鉄含有添加剤を含むポリアミド組成物からなる。
【0067】
上記ポリアミド組成物からなる少なくとも1つのポリアミド部分を含む溶着されたプラスチック体中の鉄含有添加剤の効果は、上述したように、溶着強度性能が向上することにある。
【0068】
本発明は、特に、本発明による方法およびその上述した任意の実施形態または好ましい実施形態により得ることができる、溶着されたプラスチック体に関する。好ましくは、本発明による溶着されたプラスチック体の少なくとも1つの部分に含まれる、鉄含有添加剤を含むポリアミド組成物は、本発明による溶着方法に関し上述された好ましい任意の実施形態による組成を有し、かつ/またはさらなる成分を含む。
【0069】
溶着されたプラスチック体は、本発明による方法を用いて得ることができる任意のプラスチック体であってもよい。好適には、本発明による方法は、コルゲートチューブ、ベローズ、容器、燃料入口系、空気入口マニホールド、エアダクトの製造に用いられる。
【0070】
さらに本発明は、本発明による方法を用いて製造された、コルゲートチューブ、ベローズ、インタークーラーのエンドキャップ、容器、燃料入口系、空気入口マニホールド、エアダクトに関する。
【0071】
以下の実施例および比較実験を用いて本発明をさらに例示する。
【0072】
[使用した材料]
PA−6:ポリアミド6、種類K122、粘度数115ml/g(ISO307に準拠し測定)(オランダ国のDSM(DSM,The Netherlands)から)
PA−4,6:ポリアミド−4,6、種類KS200、粘度数160ml/g(ISO307に準拠し測定)(オランダ国のDSMから)
GF−I:ガラス繊維強化剤:ポリアミド−6に使用される標準的な種類のガラス繊維
GF−II:ガラス繊維強化剤:ポリアミド−46に使用される標準的な種類のガラス繊維
AADS:補助添加剤:潤滑剤付加物(annex)離型剤、CuI/KI安定剤、ピグメントコンセントレート、担体ポリマー、および相溶化剤を含む標準的な添加剤の組合せ
ICA:鉄含有添加剤:平均粒度30μmの鉄単体粒子20質量%をPE中に含むマスターバッチ
【0073】
[ポリアミド組成物の調製]
[比較実験A:PA−6−GF]
30重量%のガラス繊維で強化されたPA−6−1−GFを、PA−6およびGFから、バレル温度260℃、スクリュー回転数250rpmのZSK30型二軸押出機内で配合した。
【0074】
[比較実験B:PA−4,6−GF]
30重量%のガラス繊維で強化されたPA−4,6−GFを、PA−4,6およびGF−IIならびに通常の加工助剤および安定剤から、バレル温度300℃、スクリュー回転数275rpm(処理量20Kg/h)のZSK25押出機内で配合した。
【0075】
[実施例I:PA−6/46−GF−ICA−1]
ポリアミド−6およびポリアミド−46(質量比25/75)、ガラス繊維GF−II、通常の加工助剤および安定剤、ならびに鉄単体のマスターバッチ2.5質量%を、比較実験Bと同一条件でZSK25二軸押出機内において配合することにより、35重量%のガラス繊維で強化された、鉄含有添加剤で改質されたポリアミド−6/46の組成物を作製した。
【0076】
[実施例II:PA−6/46−GF−ICA−2]
ポリアミド−6およびポリアミド−46(質量比50/50)、ガラス繊維GF−II、通常の加工助剤および安定剤、ならびに鉄単体のマスターバッチ2.5質量%を、比較実験Bと同一条件でZSK25二軸押出機内において配合することにより、40重量%のガラス繊維で強化された、鉄含有添加剤で改質されたポリアミド−6/46の組成物を作製した。
【0077】
[射出成形]
試験に供したすべての材料を、以下の条件に従い、寸法120mm×120mm×4mmの板に射出成形した。
【0078】
[ポリアミド−6材料の射出成形]
比較実験Aのポリアミド−6材料の射出成形を、バレル温度の設定を230〜260℃、金型温度を80℃として、KM120射出成形機で実施した。
【0079】
[ポリアミド−4,6材料の射出成形]
実施例I〜IIおよび比較実験Bのポリアミド−4,6およびポリアミド−6/4,6材料の射出成形を、バレル温度の設定を300〜310℃、金型温度を120℃として、KM120射出成形機で実施した。
【0080】
[振動溶着]
Bielomatik(独国ノイヘン(Neuffen,Germany))K3210型振動溶着機を用いて溶着試験を実施した。溶着条件を以下に示す:周波数:240Hz;振幅:0.9mm;溶着圧:2Mpa;溶着時間:4秒間;保圧時間:7秒間。この工程を時間制御することにより、推定で1.8mmの溶着深さが得られるようにした。各材料について4回の溶着を実施した。
【0081】
溶着試験を行うために、射出成形部品を120mmの幅に沿って半分に切断した。突合せ溶着する試料を、切断線と反対側の120mm×4mmの成形面が溶着範囲となるような向きで工具内に配置した。この成形面で行われる溶着は、工業的な溶着工程を十分に反映するものである。振動は、120mmの板の幅と平行になるようにした。
【0082】
[引張試験]
突合せ溶着した試料を幅10mmの引張試験片に切断し、Zwick試験機を用い、クロスヘッド速度を10mm/minとして、破損に至るまで荷重をかけた。引張強さを、溶着面積すなわち4mm×10mmに標準化された破壊時点の力として得た。エクステンシオメーター(extensiometer)で歪みを測定し、巨視的な破壊歪みと定めた(多くの場合、実際の歪みはこれよりもはるかに高い可能性がある)。列挙した値は4つの試験片の平均値である。
【0083】
[実施例および比較実験]
上述した方法に従う振動溶着を、表Iに列挙した材料の組合せについて実施した。上述の方法に従い、溶着された材料について引張試験を実施した。試験結果を表Iに報告する。
【0084】
【表1】

【0085】
この結果から、実施例I〜IIのポリアミドポリマーは、その大半部分がポリアミド−4,6(単独では、ポリアミド−6よりも結果が劣る(比較実験AおよびB参照))からなり、しかも実施例I〜IIは、通常は溶着線の特性に悪影響を与えるガラス繊維をより高い重量%で含むという事実にも拘わらず、本発明による組成物(実施例I〜II)の溶着強度がポリアミド−6に匹敵するかまたはそれを上回ってさえいることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのポリアミド部分の溶着継手を作製する工程ステップを含み、ポリアミド部分が両方共、ポリアミドポリマーおよび場合により添加剤を含むポリアミド組成物からなる、前記2つのポリアミド部分の溶着方法であって、前記2つのポリアミド部分のうちの少なくとも1つが、鉄含有添加剤を含むポリアミド組成物からなることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記2つの部分が、それぞれ、鉄含有添加剤を含むポリアミド組成物からなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鉄含有添加剤が、鉄単体ならびに/または酸化鉄および/もしくはその塩を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記鉄含有添加剤が、鉄単体を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記鉄含有添加剤の、前記鉄含有添加剤の総金属含有量に対する鉄含有量が、少なくとも75重量%である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
鉄含有添加剤が、重量平均粒度が最大450μmである微細に分散された鉄単体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記鉄含有添加剤が、重量平均粒度が1μmを超える微細に分散された鉄単体を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記鉄含有添加剤が、酸化鉄(II)、酸化鉄(III)、および/もしくはこれらの組合せ、フェライト、ならびに/または鉄リン系酸化物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記鉄含有添加剤が、重量平均粒度が最大1mmである酸化鉄またはその塩を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記鉄含有添加剤が、前記ポリアミド組成物の総重量に対し0.01〜10質量%の量で存在する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記鉄含有添加剤を含む前記ポリアミド組成物が、フィラー、繊維、安定剤、処理剤、および補助添加剤からなる群から選択される添加剤を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記鉄含有添加剤を含む前記ポリアミド組成物が、銅塩および/またはアルカリ金属ハロゲン化物および/またはピロリン酸塩を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
両方のポリアミド部分の前記ポリアミド組成物が、無機フィラーおよび/または繊維状強化剤を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶着が、振動溶着または熱板溶着により実施される、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶着が、振動溶着により実施される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
一緒に溶着された2つのポリアミド部分を含み、前記2つのポリアミド部分が、ポリアミドポリマーおよび場合により1種またはそれ以上の添加剤を含むポリアミド組成物からなる、溶着されたプラスチック体であって、前記2つのポリアミド部分のうちの少なくとも1つが、鉄含有添加剤を含むポリアミド組成物からなることを特徴とする、溶着されたプラスチック体。
【請求項17】
前記溶着されたプラスチック体が、請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法により得ることができる溶着されたプラスチック体である、請求項12に記載の溶着されたプラスチック体。
【請求項18】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法を用いて製造された、コルゲートチューブ、ベローズ、インタークーラーのエンドキャップ、容器、燃料入口系、空気入口マニホールド、エアダクトからなる群から選択される製品。

【公表番号】特表2010−521335(P2010−521335A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553060(P2009−553060)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【国際出願番号】PCT/EP2008/001894
【国際公開番号】WO2008/110327
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】