説明

2種類の流体のための熱交換器、特に空調装置のための蓄積蒸発器

【課題】熱交換器の組み立てを容易にする。
【解決手段】熱交換器(10)は、第1流体(F1)のための第1室(42)、および第2流体(F2)のための第2室(44)の境界を定める少なくとも1つのヘッダー箱(12、14)と、前記収集箱(12、14)内で終端し、前記収集箱(12、14)の第1室(42)に連通する少なくとも1つの第1管(18)、および前記収集箱(12、14)の第2室(44)に連通する少なくとも1つの第2管(20)とを有する、前記管のコア(16)とを備え、前記第1管(18)は、第2管(20)に結合され、前記第1管(18)と第2管(20)との間で熱交換を可能にするモジュール(22)を形成している。一定のピッチ(P)だけ離間した収集箱(12、14)の挿入孔(34)に、前記第1管(18)の端部(30)と前記第2管(20)の端部(32)とを交互に嵌合できるように、前記第2管(20)の端部(32)は、前記第1管(18)の前記端部(30)に対してオフセットしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器に関し、特に自動車用熱交換器に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、各々が第1流体のための第1室および第2流体のための第2室の境界を定める互いに対向する2つの収集箱(ヘッダー)と、2つの収集箱の第1室に連通する第1管および2つの収集箱の第2室に連通する第2管とを含み、2つの収集箱の間に挿入された管のコアとを備え、各第1管は、第2管に接合され、第1管と第2管との間で熱交換を可能にするモジュールを形成し、モジュールを、積み重ねて、管のコアを流れる第3流体が通過できるように互いに離間してある熱交換器に関する。
【背景技術】
【0003】
かかる熱交換器は、例えばフランス国特許出願明細書第FR2861166号が教示するように、特に自動車用の暖房、換気および/または空調装置の一部となっている。
【0004】
自動車におけるこのような特殊な用途では、熱交換器を、例えば空調蒸発器とし、この蒸発器を冷却剤が通過し、空気流を冷却すると共に、車両の内部へ送られる冷却された空気を発生するようになっている。
【0005】
この熱交換器を、暖かい流体が通過する暖房用放熱器とすることもでき、この場合、この放熱器は、通常、自動車の機関の冷却ループ内に設置され、空気流を加熱し、自動車の内部へ送られる暖かい空気を発生するようになっている。
【0006】
上記タイプの熱交換器では、冷却剤、すなわち熱交換流体である第1流体は、第2流体と熱を交換することができる。この第2流体は、蓄積流体であるが、コアの上を流れる第3流体は、自動車の内部に送るべき空気流からなっている。
【0007】
古典的な空調回路の場合には、流体は冷却剤であり、この冷却剤は、圧縮器と、使用される冷却剤に従って決まる凝縮機またはガス冷却器と、膨張弁と、蒸発器とを、この順序で通過し、蒸発器を通過した後に圧縮器へ戻る。蒸発器では、冷却剤は、空気流から熱を受けることによって、液相または液相/気相状態から気相状態に変化し、これにより空気流は冷却される。かかる回路では、R134Aとして知られているようなフッ化炭化水素から成る冷却剤が通過する。
【0008】
超臨界サイクルに従って作動する冷却剤、例えば二酸化炭素(CO2)が通過する空調回路も知られている。
【0009】
公知の蒸発器の欠点は、空気流を冷却する蒸発器の容量が、圧縮器の作動および空調回路内の冷却剤の循環に応じて決まるということである。換言すれば、圧縮器が一旦停止すると、空気流は、それ以上冷却されないことになる。
【0010】
ほとんどの自動車では、圧縮器はエンジンによって駆動されるので、エンジンが停止すると、圧縮器も停止する。
【0011】
現在特に空気汚染規格を満たすために、ニュートラルギアのとき、または停車しているときには、内燃機関が停止し、内燃機関が停止すると、空調も停止するようになっている自動車が製造されている。内燃機関の停止は、圧縮器を停止させることとなるので、空調回路内の冷却剤の循環も停止する。その結果、数秒の空気の流れの後に、空調された空気流がなくなるので、乗客は不快になってしまう。
【0012】
従来、自動車の内燃機関によって駆動されるポンプによって、熱交換流体が循環させられるため、熱交換器が加熱用放熱器である場合にも同様の問題が生じ得る。従って、内燃機関が停止すると、ポンプは停止し、流体の循環も停止される。この結果、特に外部温度が極めて低いときに、不快となる。
【0013】
本明細書の導入部に記載したタイプの熱交換器では、蓄積流体となっている第2流体が存在することによって、これらの欠点を解消できる。
【0014】
この第2流体は、自動車の機関が作動しているときに、(解放熱による)低温または熱のいずれかの蓄積を可能にし、機関が停止されたときに、自動車内部において、この低温または熱の回収を可能にする。
【0015】
フランス国特許出願第FR2863044号は、累積流体を使用する同じ原理で作動するが、単一の収集箱が設けられており、各モジュールは、2つのU字管を含むような熱交換器について述べている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
フランス国特許出願第FR2861166号および同FR2863044号に記載の熱交換器は、全体として満足できるものであるが、その組み立てには、収集箱内に管を挿入する上で問題がある。
【0017】
更に、収集箱を製造する際に、第1流体と第2流体とを分配できるようにするための多数の部品が必要となる。
【0018】
本発明は、特に上記欠点を克服するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明は、モジュールを形成する第1管と第2管とが、実質的にそれらの全長にわたって接触しており、第2管は、一定のピッチだけ離間した収集箱の挿入孔に、第1管の端部と第2管の端部とが交互に嵌合されるように、第1管の端部に対してオフセットした端部を有する、冒頭に記載したタイプの熱交換器を提案するものである。
【0020】
従って、単一モジュールでは、第1管と第2管とは、これらの管が含む第1流体と第2流体との間の熱の交換を可能にするように接合されているが、第2管の端部は、第1管の対応する端部に対してカーブし、オフセット、すなわち中心がずらされており、この中心のずれは、収集箱の挿入孔のピッチに対応している。従って、収集箱が一定のピッチで2つずつ離間した挿入孔を有する状態で、これら2つの収集箱の間にモジュールを積み重ね、挿入できる。
【0021】
換言すれば、別の挿入孔に隣接する挿入孔に、モジュールの第1管を挿入することができ、次に別の挿入孔に隣接するモジュールの第2管の端部が挿入される。
【0022】
本発明の別の特徴によれば、第1管は、両端のうちの一端から他端へ直線状の本体を有する。更に第2管は、曲げられて、オフセットした2つの端部で終端する直線状の本体を有する。第2管の端部は、バヨネット状に曲げられていることが好ましい。
【0023】
本発明の別の好ましい実施形態では、収集箱は、第1管および第2管のために挿入孔が設けられている収集板と、第2管の端部に対する停止体を形成し、第2管と流体連通する第2室の境界を定め、第1管の端部のための開口部を含む、収集箱に対向して配置された第2分配板と、第1管の端部に対する停止体を形成し、第1管と流体連通する第1室の境界を定める、第2分配板に対向して配置された第1分配板と、第2分配板と反対に第1分配板に対向して配置された閉鎖組立体とを備えている。
【0024】
従って、収集箱は、少なくとも4つの部品、すなわち直列に配置された収集板と、第2分配板と、第1分配板と、閉鎖組立体とから形成されている。
【0025】
この閉鎖組立体は、単一部品として製造できるが、この閉鎖組立体は、第1分配板に対して配置された中間板と、第1分配板をカバーし、所定の流路に従って第1分配板内で第1流体を分配させるための室を共に構成する蓋とを含んでいることが好ましい。
【0026】
単なる例として示した次の記載においては、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係わる熱交換器の正面図である。
【0028】
【図2】図1の熱交換器の部分略断面図である。
【0029】
【図3】図1の熱交換器の収集箱のうちの1つの分解斜視図である。
【0030】
【図4】図1の熱交換器の収集箱のうちの1つの第2分配板を示す。
【0031】
【図5】図1の熱交換器の収集箱のうちの1つの第1分配板を示す。
【0032】
【図6】図1の熱交換器の収集箱のうちの他方の第2分配板を示す。
【0033】
【図7】図1の熱交換器の収集箱のうちの他方の第1分配板を示す。
【0034】
【図8a】図1の熱交換器の4つの連続する組み立てステップのうちの1つを略図で示す。
【0035】
【図8b】図1の熱交換器の4つの連続する組み立てステップのうちの1つを略図で示す。
【0036】
【図8c】図1の熱交換器の4つの連続する組み立てステップのうちの1つを略図で示す。
【0037】
【図8d】図1の熱交換器の4つの連続する組み立てステップのうちの1つを略図で示す。
【0038】
【図9】図1の熱交換器の第1管の断面図である。
【0039】
【図10】図1の熱交換器の第2管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次の詳細な説明は、蓄積流体を貯蔵できるようにする空調用蒸発器として製造される熱交換器に関するものであるが、本発明は、この特定の用途だけに限定されず、加熱用放熱器もカバーするものであることを理解されたい。
【0041】
図1に示す熱交換器10は、互いに対向する2つの収集箱12および14を有し、この例では、便宜上これらの箱を、上部収集箱12および下部収集箱14と呼ぶ。
【0042】
これら2つの収集箱12と14との間には、コア16が挿入されている。このコアは、熱交換器10のコアを形成し、第1管18および第2管20を有している。各第1管18は、第2管20に接合されており、1つのモジュール22を形成している。
【0043】
波形スペーサ24は、隣接する2つのモジュール22の間に配置されたディスラプターおよび領域を形成し、コア16の上を流れる流体、特に空気流による熱交換器のための表面を広くしている。
【0044】
第1管18には、第1流体F1が通過するようになっており、この第1流体F1は、この例では冷却剤から成っている。第2管20は、第2流体F2を有し、この第2流体は、この例では蓄積流体、より詳細には、低温蓄積流体から成っている。最後に、コアには空気である第3流体F3が流れ、波形スペーサ24のレベルでモジュール22の間を通過する。
【0045】
第2流体F2は、第2管20内では静止していてもよいし、または第2管20内で循環してもよく、第2管20は、第2流体F2の循環領域に結合されている。
【0046】
第1流体F1は、熱交換器10内で、入口マニホールド26から出口マニホールド28へ循環するようになっている。この例では、このマニホールドは、収集箱12と接続されている。図1の実施形態によれば、第2流体F2は、熱交換器内に貯蔵されたままである。
【0047】
図1および図2から分かるように、モジュール22では、第1管18と第2管20とは、形状が実質的に同一となっている。第1管18および第2管20は、互いに平行に配置された2つの広い面を有し、第1管18および第2管20のこれら広い面は、狭い面で互いに接合されている。
【0048】
第1管18と第2管20とは、それぞれの広い面のうちの1つに沿って全長にわたって接触している。この例における各第1管18は、端部30のうちの一方から他方まで、直線状となっている本体を有する。
【0049】
しかしながら、第2管20の端部32は、第1管18の端部30に対して中心がずれている。第2管20の端部32は、カーブしており、オフセットしている。
【0050】
このように形成してあるので、収集箱12および14にそれぞれ設けられた挿入孔34内に、第1管18の端部30と第2管20の端部32を交互に嵌合することが可能となる。図2には、収集箱12の挿入孔34が示されており、この収集箱14にも、同様の挿入孔が設けられているということが分かると思う。
【0051】
図2は、図1にも示されている一定のピッチPで、2つずつ離間した挿入孔34を示す。
【0052】
これら各挿入孔34は、カラー36によって囲まれている。このカラー36は、第1管18の端部30と第2管20の端部32とを、それぞれの挿入孔34内に、同時に容易に挿入しうるようにするための下部面取り部を有していることが好ましい。
【0053】
挿入孔34とカラー36とは、上部収集箱12の収集板38内に形成されている。下部収集箱14も、同様の収集板40を有し、この収集板40は、図1に示すように、同様の挿入孔34、およびカラー36(図示せず)を有している。第2管20の各端部32は、第1管18の端部30に対してオフセットしている。第2管20の端部32も、上記と同じように、オフセットしている。すなわち、中心がずれるよう変形され、カーブされている。
【0054】
バヨネット状をした2回の曲げにより、管20の端部のオフセット、すなわち中心のずれを生じさせることが好ましい。したがって、第2管20の各端部32は、実際の第2管20の本体の軸方向と平行な方向に延びている。
【0055】
収集箱12は、第1管18の各端部と連通する、第1流体F1を循環させるための第1室42、および第2管20の各端部と連通し、第2流体F2を循環させるための第2室44の境界を定めている。収集箱14も、同様の室を備えている。
【0056】
本明細書で使用する「室」なる用語は、単一部品、または複数の部品から製造でき、対応する管の端部と連通する流体を含むようになっている内部空間を意味する。
【0057】
この例では、第2流体は、移動しない蓄積流体、すなわち貯蔵流体であり、従って熱交換器は、静的な貯蔵機能を発揮する。しかしながら、ダイナミックな貯蔵機能を発揮するように、第2流体は移動してもよい。
【0058】
次に、収集箱14の構造は、収集箱12の構造と同一であることを理解した上で、図2および図3を参照して、収集箱12の構造について説明する。
【0059】
既に述べたように、収集箱12は、収集板38を備え、この収集板38には、第1管18の端部30および第2管20の端部32が嵌合される挿入孔34が設けられている。
【0060】
収集板38に対向するように第2流体F2の分配板46、すなわち第2分配板46が配置されており、この板は、第2管20の端部32に対する停止体を形成している。この第2流体F2の分配板46は、第2流体F2の分配を保証し、よってこの分配板46は、第2室44の境界を共に構成する第2開口部78を備え、これら第2開口部78には、第2管20の端部32が挿入されている。更に、第2流体F2の分配板46は、第1管18の端部30が挿入される第1開口部80を備えている。
【0061】
分配板46に対向して、第1流体F1の別の分配板50、すなわち第1分配板50が配置されている。この第1流体F1の分配板50は、第1管18の端部30のための停止体を形成すると共に、第1流体F2の分配を保証している。第1流体F1の分配板50は、同時に第1室42の境界を定めている。このように、第1流体F1の分配板50は、共に第1室42の境界を定める開口部82を備え、この開口部82には、第1管18の端部30が挿入されている。
【0062】
第1流体F1の分配板50には、この分配板50に対して配置された閉鎖組立体52が重ねられている。この閉鎖組立体52は、第2流体F2の分配板46の反対側に配置されている。
【0063】
図示の例によれば、閉鎖組立体52は、中間板54と蓋56とを備えている。
【0064】
このような構成により、第1管18は第1室42と連通し、他方、第2管20は第2室44と連通するようになっている。これによって、どのケースにおいても、流体連通を保証できるようになっている。
【0065】
図3の分解図を検討すれば、収集箱12の構造をより良好に理解できると思う。収集板38は、挿入孔34の2つの列を備え、これら挿入孔の列には、第1管18と第2管20とを交互に含むモジュール22の2つの列を嵌合することができる。
【0066】
収集板38は、クランプ用タブ60が設けられた長手方向の2つの立ち上がったエッジ58を備え、これらタブは、蓋56のそれぞれの周辺エッジに対して折り曲げられ、収集箱12を形成するすべての機素を、相互にクランプされた状態に保持するようになっている。
【0067】
入口マニホールド26および出口マニホールド28は、第1流体F1に対する第1入口および第1出口をそれぞれ構成している。これら入口マニホールド26および出口マニホールド28は、収集板38および第1流体F1の分配板46を通して、収集箱12の第1室42と連通している。
【0068】
上記とは異なり、別の実施形態では、入口マニホールド26および出口マニホールド28を、それぞれ収集箱12および収集箱14に配置することも可能である。
【0069】
この実施形態によれば、第1の入口26および第1の出口28は、同じ収集箱12上に配置され、これらは、収集板38内に配置された開口部62および64、更に第1流体F1の分配板46の開口部66および68を通って、収集箱12の第1室42と連通している。
【0070】
更に、収集箱12および14は、それぞれ、図1に示す第2の入口70および第2の出口72を有し、熱交換器10内での第2流体F2の調整を可能にしている。第2の入口70および第2の出口72は、収集板38および40のうちの少なくとも1つを通して、第2の室44のうちの少なくとも1つと連通している。
【0071】
この実施形態によれば、第2の入口70は、収集板38内に配置され、第2の出口72は、収集板40内に配置されている。これら第2の入口70および第2の出口72は、既に述べたように、移動しない流体となっている第2の流体の不動化を可能にするように閉じられた孔となる。
【0072】
図4は、収集箱12の第2流体F2の分配板46の構造を示す。この第2流体F2の分配板46は、全体の形状が長方形となっており、一方の端に、第1流体F1を通過させるための開口部66および68を備えている。この第2流体F2の分配板46は、第2の入口70と連通し、第2流体F2を導入するための入口開口部74も備えている。
【0073】
入口開口部74は、第2開口部78を提供する長手方向チャンネル76に接続されており、このチャンネルと共に、第2室44を構成するようになっている。特に好ましい態様では、長手方向チャンネル76は、第2流体F2の分配板46の中心部分内に配置されており、長手方向チャンネル76は、第2流体F2の分配板46の対称軸を構成している。かかる配置によって、長手方向チャンネル76の両側に、第2開口部78を配置することが可能となっている。
【0074】
第2開口部78は、第1開口部80と交互に配置されており、これら第1開口部80を、第1管18の端部が貫通している。
【0075】
第1開口部80および第2開口部78の、形状は、第1管18および第2管20の断面とそれぞれ対応している。この実施形態によれば、第1開口部80および第2開口部78は、長円形状となっている。第1開口部80および第2開口部78は、2つの平行な列に従って配置することが好ましい。
【0076】
図5は、図4内の第2流体F2の分配板46と関連する第1流体F1の分配板50を示している。この第1流体F1の分配板50は、第2流体F2の分配板46の第1開口部80にそれぞれ連通し、第1流体F2を通過させるための開口部82を備え、第2流体F2の分配板46は、第1流体F1の流体板50と関連している。第1流体F1の分配板50の開口部82は、形状が第1管18の断面に対応する開口部となっている。この実施形態によれば、第1流体F1の分配板50の開口部82は、長円形状となっている。これらの開口部82は、2本の平行な列に従って配置されている。
【0077】
図4では、第2流体F2が占める領域を、ハッチングにより略示している。第1流体F1が占める領域には、図4または図5では、ハッチングがつけられていない。
【0078】
図6および図7は、収集箱12に対向する収集箱14の第2流体F2の分配板84、および第1流体F1の分配板86を、それぞれ示している。
【0079】
収集箱14の第2流体F2の分配板84は、収集箱12の第2流体F2の分配板46の構造と類似した構造となっている。この第2流体F2の分配板84は、開口部88も備え、この開口部は、第2開口部92を提供する長手方向チャンネル90を提供し、第2室を形成するようになっている。
【0080】
長手方向チャンネル90は、特に好ましい態様では、第2流体F2の分配板84の中心部分内に配置されている。この長手方向チャンネル90は、第2流体F2の分配板84の対称軸を構成し、かかる配置によって、長手方向チャンネル70の両側に第2開口部78を配置することが可能となっている。
【0081】
第2開口部92は、第1流体F1のための第1開口部94と交互に配置されており、この第1開口部を、第1管18の端部が貫通している。
【0082】
第2流体F2が占める領域は、ハッチングで示されているが、他方、第1流体F1が占める領域には、ハッチングはつけられていない。
【0083】
図7に示す第1分配板86は、第1流体F1のための開口部98を有し、これら開口部98は、第2流体F2の分配板84の第1開口部94とそれぞれ連通している。第2流体F2の分配板84は、第1分配板86と関連している。開口部98は、2つの平行な列に従って配置されている。
【0084】
第2流体F2の分配板84の開口部92、94と、第1流体F1の分配板86の開口部98とは、形状が、第1管18の横断面、および第2管20の横断面とそれぞれ対応した開口部となっている。この実施形態によれば、開口部92、94および98は、長円形状となっている。
【0085】
収集箱12のうちの図3に示すような中間板54および蓋56は、第1流体F1に対して異なる循環路を構成するように配置されている。この場合、中間板54は、細長いチャンネル96を有し、蓋56は、細長いチャンネル96に対応する細長い突起99を有し、収集箱12の長手方向に循環通路を構成している。
【0086】
収集箱14も、同様の構成である。これらの構成により、蒸発器の技術分野で周知のように、第1流体F1は、U字路に従って第1層を循環し、次に第2U字路に従って、第2層を循環することが可能となっている。
【0087】
図8A〜図8Dは、本発明に係わる熱交換器10を組み立てる種々のステップを示している。
【0088】
第1ステップでは、第1のシリーズの第1管18を位置決めすることにより、コア16を形成する(図8a)。
【0089】
第2ステップでは、第2管20の本体に対してオフセットするように、予め端部がカーブされている第1のシリーズの第2管20を位置決めする(図8b)。
【0090】
第3ステップでは、隣接する2つのモジュール22の間に波形スペーサ24を配置する(図8c)。
【0091】
第4ステップでは、管18の端部30および管20の端部32が、例えば2つの収集箱12および14の挿入孔34のピッチに対応する、所望するピッチPだけ離間するように、積層体の方向にコアを圧縮する。
【0092】
最後に、第5ステップ(図8d)において、予め組み立てられている2つの収集箱12および14の挿入孔34内に、管18の端部30および管20の端部32を同時に挿入する。この作業は、管18および20の方向にあるコア16の方向に2つの収集箱12と14を一体にすることにより実行する。
【0093】
上記の組み立て方法によれば、モジュール22の2つの列を同時に取り付け、コア16の厚さの方向、例えば流体F3の方向に、単一スペーサ24を、隣接する2つのモジュール22の間に挿入する。
【0094】
上記方法とは異なり、管18および20の列の各々に対応する2つのハーフコアを形成することも可能である。この場合、波形スペーサ24の挿入を中断する。従って、熱交換器10を構成するように、類似する第2のハーフコアに接合される第1ハーフコアを形成することが可能である。かかる方法は、収集箱12および14が2つの部品から形成されている場合に特に好ましい。
【0095】
熱交換器10の種々の部品は、適当な鑞付けオーブン内で1回の作業で鑞付けすることにより、熱交換器の組み立てが可能となるように、アルミまたはアルミをベースとする合金から製造することが好ましい。
【0096】
複数の重ねられた板を組み立てることによって得られる収集箱12、および14の構造体により、冷却剤が特に150バールの大きさの高い圧力で超臨界サイクルで作動するCO2タイプの流体となっているときは、高い抵抗力を得ることが可能となる。種々の部品が、300バールの高いバースト圧に耐えられることが必要である。
【0097】
上記の例では、流体を超臨界流体、特にR744としても知られる二酸化炭素(CO2)またはサブ臨界流体、特にフッ化化合物、特にR134aと表示される冷却剤とすることができる。更に、他の代替流体と共に本発明を使用することもできる。
【0098】
更にこの構造体は、従来技術の相当する蒸発器のプロフィルに類似した全体のプロフィルを維持できるようにしている。
【0099】
図9に示すように、第1管18は、押し出し成形により製造でき、この第1管18は、特に高い冷却剤の圧力に耐えることができる複数のチャンネル100を備えている。熱交換流体が通過するようになっている第2管20では、図10に示すような平坦な管を使用することができる。第2管20は、所望の場合、その内側に波形ブレード102を収容し、熱ブリッジ機能を保証することができる。
【0100】
当然ながら、この管の構造は、その都度、対応する流体のタイプに適合させる。波形スペーサを鑞付けできるようにする2つの対向する平坦な面を有する細長い断面を有する管を使用することが望ましい。
【0101】
本発明の熱交換器が、好ましくは0〜10℃の間、好ましくは4〜8℃の間の融点を有する蓄積流体を構成する第2流体用の貯蔵蒸発器であるとき、第2流体は、少なくとも150kJ/kgの溶融エンタルピーを有することが好ましい。第2流体は、テトラデカン、パラフィン、水和塩、および共融混合物から有利に選択できる。
【0102】
本発明は、上に一例として詳細に説明したような貯蔵蒸発器内での特定の使用だけに限定されるものではない。本発明は、他のタイプの熱交換器、特に自動車の車室のための暖房用放熱器にも使用できる。
【0103】
更に上記の例は、2つの収集箱が設けられた熱交換器であるが、いわゆるU字形の流体循環管に関連する単一収集箱が設けられた熱交換器を想到することも可能である。コア内に管の多数の列が設けられているとき、U字形の循環が生じる。すなわち、互いに対向する2本の管に、逆方向に流体が進入する循環が生じるか、またはI字形の循環、すなわち互いに対向する2本の管内を、同一方向に流れる流体の循環が生じ得る。
【0104】
当然ながら、本発明は、一例として述べた上記実施形態だけに限定されず、特許請求の範囲に関連して、上に述べた種々の実施形態の組み合わせに関して、当業者が想到できる別の代替案も含むものである。
【符号の説明】
【0105】
10 熱交換器
12、14 収集ボックス
16 コア
18 第1管
20 第2管
22 モジュール
24 波形スペーサ
26 入口マニホールド
28 出口マニホールド
30、32 端部
34 挿入孔
36 カラー
38、40 収集板
42 第1室
44 第2室
46 分配板
50 第1分配板
52 閉鎖組立体
54 中間板
56 蓋
58 エッジ
62、64、66、68 開口部
70 第2入口
72 第2出口
74 入口開口部
76 チャンネル
78 第2開口部
80 第1開口部
82 開口部
84、86 分配板
88 開口部
90 チャンネル
92、94、98 開口部
96 チャンネル
99 突起
1 第1流体
2 第2流体
3 第3流体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体(F1)のための第1室(42)および第2流体(F2)のための第2室(44)の境界を定める少なくとも1つの収集箱(12、14)と、前記収集箱(12、14)内に接続し、前記収集箱(12、14)の第1室(42)に連通する少なくとも1つの第1管(18)および前記収集箱(12、14)の第2室(44)に連通する少なくとも1つの第2管(20)とを含む、前記管(18、20)のコア(16)とを備え、前記第1管(18)は、前記第2管(20)に接合され、前記第1管(18)と前記第2管(20)との間で熱交換を可能にするモジュール(22)を形成し、前記コア(16)は、第3流体(F3)が前記管(18、20)の前記コア(16)を通過できるように離間した少なくとも2つの積み重ねられたモジュール(22)を含む熱交換器(10)において、
前記モジュール(22)の第1管(18)と第2管(20)とは、実質的にそれらの全長にわたって接触しており、一定のピッチ(P)だけ離間した収集箱(12、14)の挿入孔(34)に、前記第1管(18)の端部(30)と前記第2管(20)の端部(32)とが交互に嵌合されるように、前記第2管(20)は、前記第1管(18)の端部(30)に対してオフセットした端部(32)を有することを特徴とする熱交換器(10)。
【請求項2】
前記第1管(18)および/または前記第2管(20)は、直線状の本体を有することを特徴とする請求項1に記載の熱交換器(10)。
【請求項3】
前記第2管(20)の端部(32)は、バヨネット状に曲げられていることを特徴とする請求項1または2に記載の熱交換器(10)。
【請求項4】
前記収集箱(18、20)は、前記第1管(18)および前記第2管(20)のための挿入孔(34)が設けられている収集板(38、40)と、前記第2管(20)と連通する第2室(44)の境界を定めると共に、前記第1管(18)の端部(30)のための開口部(80)を含む第2分配板(46、84)とを備えることを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項5】
前記第2分配板(46、84)は、前記第2管(20)の前記端部(32)のための停止体を形成することを特徴とする請求項4に記載の熱交換器(10)。
【請求項6】
前記収集箱(18、20)は、前記第1管(18)と流体で連通する前記第1室(42)の境界を定める第1分配板(50、86)を備えることを特徴とする請求項4または5に記載の熱交換器(10)。
【請求項7】
前記第1分配板(50、86)は、前記第1管(18)の前記端部(30)のための停止体を形成することを特徴とする請求項6に記載の熱交換器(10)。
【請求項8】
前記収集箱(18、20)は、前記第2分配板(46、84)に対向する閉鎖組立体(52)を備えることを特徴とする請求項4〜7のうちのいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項9】
前記閉鎖組立体(52)は、中間板(54)と、蓋(56)とを含み、前記第1分配板(50;86)をカバーし、所定のパスに従って前記第1分配板(50;86)内で前記第1流体(F1)を分配させるための室を共に構成していることを特徴とする請求項8に記載の熱交換器(10)。
【請求項10】
前記収集箱(18、20)は、前記収集板(38、40)を介して、更に前記第2分配板(46、84)を介して、前記第1室(42)と連通する前記第1流体(F1)のための第1の入口(26)と、第1の出口(28)とを有することを特徴とする請求項4〜9のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項11】
前記第1入口(26)および前記第1出口(28)は、同じ収集箱(12)上に配置されており、前記収集板(38)の開口部(62、64)を介し、更に前記収集箱(12)の前記第1分配板(46)の開口部(66、68)を介し、前記収集箱(12)の前記第1室(42)と連通していることを特徴とする請求項10に記載の熱交換器(10)。
【請求項12】
前記第1の入口(26)および前記第1の出口(28)は、互いに対向するよう、2つの収集箱(12、14)上に配置されており、前記収集板(38)の開口部(62、64)を介し、更に前記収集箱(12、14)の前記それぞれの第2分配板(46)の開口部(66、68)を介し、前記収集箱(12、14)の前記それぞれの第1室(42)と連通していることを特徴とする請求項10に記載の熱交換器(10)。
【請求項13】
前記収集箱(12、14)は、前記収集板(38、40)を介して、前記第2室(44)と連通する前記第2流体(F2)のための第2入口(70)および第2出口(72)を有することを特徴とする請求項4〜11のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項14】
前記第2入口(70)および前記第2出口(72)は、互いに対向するよう、2つの収集箱(12、14)上にそれぞれ配置されており、前記それぞれの収集板(38、40)の開口部を介して、前記収集箱(12、14)の第2室(44)とそれぞれ連通していることを特徴とする請求項13に記載の熱交換器(10)。
【請求項15】
前記収集箱(12、14)は、前記第1管(18)および第2管(20)のための挿入孔(34)の2つの列を含むことを特徴とする請求項1〜14のうちのいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項16】
前記収集箱(12、14)の前記第2分配板(46;84)は、第2開口部(78;92)を提供する長手方向チャンネル(76;90)を含み、前記第2室(44)を構成するようになっており、前記第2開口部(78;92)は、前記第1流体(F1)のための第1開口部(80;94)と交互に配置されており、前記収集箱(12、14)の前記第1分配板(50;84)は、前記第2分配板(46;84)の第1開口部(80;94)とそれぞれ連通する前記第1流体(F1)のための開口部(82;98)を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の熱交換器(10)。
【請求項17】
前記モジュール(22)の間には、波形スペーサ(24)が配置されており、前記第3流体(F3)との熱交換の表面を広くしていることを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項18】
前記熱交換器(10)は、空調用蒸発器であり、前記第1流体(F1)は、冷却剤であり、前記第2流体(F2)は、熱を蓄積できる相変化流体であり、前記第3流体(F3)は、空気であることを特徴とする請求項1〜17のうちのいずれか1項に記載の熱交換器(10)。
【請求項19】
前記第1管(18)および/または前記第2管(20)は、多チャンネル管であることを特徴とする請求項1〜18のうちのいずれか1項に記載の熱交換器(10)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図8c】
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【図8d】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−175241(P2010−175241A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−13706(P2010−13706)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(505113632)ヴァレオ システム テルミク (81)
【Fターム(参考)】