説明

ABH抗原を利用した炎症疾患改善用組成物

本発明は、炎症疾患改善用組成物に関し、より詳しくは、皮膚のような上皮組織における炎症反応及び障壁機能改善と、抗老化、皮膚弾力の強化、及び老化を予防又は治療することのできる炎症疾患改善用組成物に関する。本発明によれば、ABH抗原の発現調節及び活性調節を介し炎症反応を制御することができるので、本発明の組成物は、ABH抗原が発現される皮膚を始めとする人体組織における炎症反応が原因になる疾患の鎮静や治療、及び治療補助を目的とする治療剤の開発標的に活用することができ、さらに角質形成細胞の分化及び皮膚障壁機能の調節による皮膚の正常機能回復及び保湿、しわの改善、美白、弾力の回復などを目的にする外用剤及び外用剤成分を含む化粧品の開発に用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炎症疾患改善用組成物に関し、より詳しくは皮膚などの炎症反応及び障壁機能改善と、抗老化、皮膚の弾力強化及び老化を予防又は治療することのできる、皮膚を含む上皮細胞における炎症疾患改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ABH抗原はABO式血液型を決める抗原であって、ABO式血液型は、特定の構造の糖質化末端がABO遺伝子の活性の差に従い決定される。このようなABH抗原は赤血球の表面に多量に発現されているので、血液型が異なる血液の輸血時に拒否反応を起こす主要原因として作用する。ABH抗原は、赤血球以外にも血管、唾腺、汗腺、小腸、大腸、膵臓など、非常に多様な組織で発現されるものと知られており、正常の皮膚では角質形成細胞の分化程度に従い、最も分化が多く起きた顆粒層と、顆粒層直前の細胞等で発現が観察され、有棘層、基底層では殆ど発現が観察されない(Ravn et al.,APMIS 108:1−28(2000);Lloyd,Glycoconjugate J 17:531−541(2000);Greenwell,Glycoconjugate J 14:159−173(1997);Dabelsteen et al.,J Invest dermatol 82:13−17(1984))。
【0003】
ABH抗原は、ABO遺伝子の多様性に伴いタンパク質や脂質の糖質化末端の構造がフコース−ガラクトース末端にN−アセチルガラクトサミンが結合すればA抗原(A型)になり、ガラクトースが結合すればB抗原(B型)になり、二種類が共存すればAB型になり、何も結合しなければH抗原(O型)になる(図1を参照)。したがって、共通的に存在するフコース−ガラクトース末端の合成を調節するフコシルトランフエェラーゼ(fucosyl transferase)1又は2(FUT1又はFUT2)の発現に従い組織学的な発現状態が調節される。
【0004】
一方、今まで血液型の種類に伴う輸血時の拒否反応以外に、ABH抗原の発現と多様な疾患等の発病率との相関関係を見付けるための努力等が引続かれてきたが、これに対しては未だに報告されたところがなく、ABH抗原の機能自体も明確に明かされたところがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ABH抗原又は前記ABH抗原の発現を調節する物質を有効成分に含む炎症疾患改善用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、ABH抗原又は前記ABH抗原の発現を調節する物質を有効成分に含む炎症疾患改善用組成物を提供する。本発明において、前記炎症疾患は、炎症性皮膚疾患及び胃腸、食道、小腸、尿道、結膜などのような組織の炎症性疾患が制限なく含まれ得るが、必ずしもこれに限定されるものではない。さらに、本発明の組成物は、薬学的組成物又は化粧料組成物の形態であることが好ましいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0007】
本明細書において、前記『ABH抗原』は、ABH抗原だけでなく、ABH抗原の類似体及びABH抗原とABH抗原類似体の接合体を全て含む意味に使われる。さらに、前記『ABH抗原類似体』とは、ABH抗体と反応性を有する糖質構造を含む物質であるか、これと類似する構造を有すると共にABH抗原の生理的な機能を模写するか抑制することのできる物質、又はこのような類似体を特定のキャリア分子に固定させ接合体を作って添加する場合を含む。例えば、ABH抗原類似体はABH抗原に一つ以上の異なる化合物、例えば単糖類、アミノ酸などがさらに結合されている物質であって、ABH抗原本来の機能と同一の機能をする物質を意味する。さらに、ABH抗原としては、抗原をなす単糖類、例えばフコース、ガラクトース、グルコース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、又は前記単糖類が組み合わせられた形態の混合物、例えばFG(Fucose:Galactose=1:1、H−antigen組成)、FGG(Fucose:Galactose=1:2、B−antigen組成)又はFGGN(Fucose:Galactose:N−acetylgalactosamine=1:1:1、A−antigen組成)なども制限なく使用可能であり、前記FG、FGG又はFGGNにおいて、混合物を構成するそれぞれの単糖類の比は、前記と多少相違しても差し支えない。
【0008】
さらに、本明細書において『ABH抗原の発現を調節する物質』は、ABH抗原の発現を増加させるか減少させる物質を全て含む意味に用いられる。ABH抗原の発現を増加させる物質はABH抗原の生合成、例えば、ABO、FUT1、FUT2等を含むABH抗原の段階別の糖質化酵素等の発現増加又は活性増大、ABH抗原が結合されているタンパク質、脂質、糖質などの発現増大などを介しABH抗原の生合成を増加させる物質であれば、その種類に係りなく全て含まれ得る。ABH抗原の生合成を増加させる物質としては、ABO、FUT1、FUT2などを含むABH抗原を合成する段階別の糖質化酵素等をコーディングする遺伝子又はその遺伝子を含むベクターがあり得る。前記遺伝子又はベクターが皮膚に加えられると、ABH抗原の発現が増加され、皮膚の分化が正常化されることにより免疫を強化させ、免疫体系の均衡を直し、皮膚障壁機能を強化させることにより健康な皮膚を作ることができる。前記ベクターは、当業界に広く知られている方法等のうち何れか一つにより製作されるか、又は市中で容易に購入することができる。さらに、本発明の好ましい具現例によれば、前記ABH抗原の発現を増加させる物質は、柳抽出物又は黄金抽出物であり得る(図6のBを参照)。
【0009】
これと同様に、ABH抗原の発現を減少させる物質は、ABH抗原の生合成、例えば、ABO、FUT1、FUT2などを含むABH抗原の段階別の糖質化酵素等の発現減少又は活性減少、ABH抗原が結合されているタンパク質、脂質、糖質等の発現減少などを介し、ABH抗原の生合成を減少させる物質であれば、その種類に係りなく全て含まれ得る。ABH抗原の生合成を減少させる物質は、ABO、FUT1、FUT2などを含むABH抗原を合成する段階別の糖質化酵素等の発現を抑制するsiRNAやshRNA、又はsiRNAやshRNA、アンチセンスコーディング配列を含むベクターがあり得る。前記遺伝子又はベクターが皮膚に加えられると、ABH抗原の発現が減少しTh1炎症反応を抑制させ、過多の炎症反応を一時的に和らげることにより炎症疾患の症状を緩和させることができる。前記ベクターは、当業界に広く知られている方法等のうち何れか一つにより製作されるか、又は市中で容易に購入することができる。さらに、本発明の好ましい具現例によれば、前記ABH抗原の発現を減少させる物質は、エゾウコギ抽出物、あざみ抽出物、シイタケ抽出物、高麗人参抽出物又はエキナセア抽出物であり得る(図6のAを参照)。
【0010】
本発明の組成物において、ABH抗原又は前記ABH抗原の発現を調節する物質は、全体組成物の中で0.001〜10重量%の量で含まれるのが好ましい。0.001重量%未満であれば炎症疾患改善の効果が僅かであり、10重量%を超過すれば、他の成分との混和性と剤形安定性が劣る。このような観点で、前記ABH抗原又は前記ABH抗原の発現を調節する物質は0.01〜5重量%を含むのがより好ましい。
【0011】
本発明に適用可能な炎症疾患は、炎症性皮膚疾患及び胃腸、食道、小腸、尿道、結膜などのような組織の炎症性疾患が制限なく含まれ得る。前記皮膚疾患には乾癬、アトピー、魚鱗癬、天疱瘡、にきび、紅斑性狼瘡、皮膚老化、皮膚しわなどの疾患が含まれるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、皮膚での炎症反応によりもたらされ得る任意の疾患が、全て本発明の皮膚疾患の範囲に含まれ得る。
【0012】
本発明の組成物の剤形には、特に限定されるものではないが、皮膚外用剤の剤形であるのが好ましく、前記皮膚外用剤剤形の一つの好ましい形態には、柔軟化粧水、栄養化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ゲル又は皮膚粘着タイプ化粧料の剤形を有する化粧料組成物を挙げることができ、他の好ましい形態にはローション、軟膏、ゲル、クリーム、パッチ又は噴霧剤のような経皮投与型の剤形を挙げることができる。さらに、各剤形の外用剤組成物において、前記の必須成分以外の他の成分等は、その他外用剤の剤形又は使用目的などに従い、当業者が難なく適宜選定して配合することができる。
【0013】
本発明の組成物を化粧品に適用する場合、好ましくは化粧品学的に許容可能な媒質又は基剤を含む。これは局所適用に適した全ての剤形であって、例えば溶液、ゲル、固体又は練り無水生成物、水相に油相を分散させて得たエマルジョン、懸濁液、マイクロエマルジョン、マイクロカプセル、微細顆粒球又はイオン型(リポソーム)及び/又は非イオン型の小嚢分散剤の形態で、又はクリーム、スキン、ローション、パウダー、軟膏、スプレー又はコンシールスティックの形態で提供され得る。さらに、泡沫(foam)の形態又は圧縮された推進剤をさらに含んだエーロゾル組成物の形態でも製造され得る。さらに、本発明の化粧料組成物は、皮膚科学的に許容可能な媒質又は基剤を含むことにより、皮膚科学分野で通常用いられる局所適用又は全身適用することのできる補助剤の形態で製造可能であり、これら組成物は当該分野の通常的な方法により製造され得る。
【0014】
本発明の組成物を化粧品に適用する場合、前記化粧料組成物は脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型又は非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性又は親油性活性剤、脂質小嚢又は化粧品に通常用いられる任意の他の成分のような、化粧品学分野で通常用いられる補助剤を含むことができる。これら補助剤は、化粧品学分野で一般に用いられる量で導入される。
【0015】
本発明の組成物を医薬品に適用する場合、本発明の組成物はABH抗原又は前記ABH抗原の発現を調節する物質を有効成分にし、臨床投与時に経口又は非経口で投与可能であり、一般の医薬品製剤の形態で使用可能である。即ち、本発明の炎症疾患改善用組成物は、実際の臨床投与時に経口及び非経口の多様な剤形で投与され得るが、製剤化する場合は、普通用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調剤される。経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤はABH抗原、又は前記ABH抗原の発現を調節する物質に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース又はラクトース、ゼラチンなどを混合して調剤される。さらに、単なる賦形剤以外にマグネシウムスチレートタルクのような潤滑剤等も用いられる。経口投与のための液状製剤には懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、通常用いられる単純希釈剤の水、リキッドパラフィン以外に多様な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれ得る。非経口投与(注射、経皮投与又は外用塗布)のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤にはプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが用いられ得る。坐剤の基剤にはウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロール、ゼラチンなどが用いられ得るが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0016】
本発明において、前記有効成分は商法に従い容易に製剤化することができ、このとき界面活性剤、賦形剤、着色料、香辛料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、その他常用する補助剤を適宜用いることができる。
【0017】
本発明の組成物の有効成分であるABH抗原、又は前記ABH抗原の発現を調節する物質の投与量は、炎症疾患の改善が必要な対象の年齢、性別、体重と、治療する特定疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路及び処方者の判断に従って変わり得る。このような因子に基づいた投与量の決定は当業者の水準内にあり、注射剤を除いた製剤に対しては局所部位に外用塗布する式で当業者の水準で適用することができ、注射剤の場合は、真皮と皮下脂肪に局所的に注射することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。一般に投与量は、大凡0.001mg/kg/日〜2,000mg/kg/日の範囲である。さらに好ましい投与量は1μg/kg/日〜100μg/kg/日である。投薬単位は、例えば個別投薬量の1、2、3又は4倍で、又は1/2、1/3又は1/4倍で含むことができる。個別投薬量は有効成分が1回に投与される量を含み、これは通常1日投与量の全部、1/2、1/3又は1/4倍に該当する。
【0018】
本発明の好ましい具現例によれば、多様な遺伝的/環境的要因により皮膚に異常炎症反応や免疫体系の不均衡、及び非正常的角質形成細胞の分化が伴われる乾癬、アトピー、魚鱗癬、天疱瘡などの炎症性皮膚疾患の場合を調べた場合、顆粒層でのABH抗原の発現が消失するか、角質形成細胞の異常分化に伴い、非正常位置でABH抗原の非正常的な発現などの異常現象が観察される(図4及び図5を参照)。このような多様な皮膚疾患等で現われる角質形成細胞の不完全な顆粒層への分化が、患者等の皮膚障壁機能に問題を引き起こす主要原因になり得る。さらに、個体別の最小炎症誘導強度の2倍の紫外線を正常の皮膚に照射した場合も、顆粒層でのABH抗原の発現が3日後に大部分消失されるものと表れた(図3を参照)。
【0019】
本発明の他の具現例によれば、多様な種類の天然物抽出物を角質形成細胞に処理する場合、エゾウコギ、あざみ、シイタケ、高麗人参及びエキナセア抽出物などは細胞で血液型抗原の発現を減少させ、柳及び黄金抽出物などは血液型抗原の発現を増加させる効果が表れた(図6を参照)。前記のように、血液型抗原の発現を増加させる物質の場合は、個体の免疫力を増加させる効果を得ることができ、血液型抗原の発現を減少させる物質の場合は、過多炎症反応を抑制させるのに効果的に用いられ得る。さらに、ABH抗原又は前記ABH抗原を構成する単糖類の投与が血液型抗原の発現に及ぼす影響を検討してみた結果、ABH抗原又は前記ABH抗原を構成する物質等を処理すれば、細胞及び皮膚での血液型糖の発現が増加するものと表れた(図7〜図9を参照)。したがって、このような観察結果などに基づく場合、ABH抗原の発現が、角質形成細胞の分化過程は勿論、皮膚で発生する炎症反応の状態と密接な相関関係があることが分かる。
【0020】
さらに、本発明の他の好ましい具現例によれば、ABH抗原の発現を調節する実験を介しABH抗原の発現が人為的に除去された場合、インターフェロンガンマによるTh1免疫反応が抑制されることを観察した(図10〜図12を参照)。さらに、ABH抗原の発現を抑制した後TNF−α及びIL−1βを処理した場合、対照群で強く誘導されるBD−2遺伝子の発現がより少なく誘導されており(図13を参照)、さらに他の具現例で、ABH抗原の発現を抑制させた場合は角質形成細胞の移動速度が遅くなることが観察された(図14を参照)。これは特に、アトピー皮膚炎の進行段階を考慮するとき、炎症反応を調節するサイトカイン(cytokine)の不均衡と考えられる、初期段階の原因を分からないTh1炎症反応の低下段階を経た後、正確な抗原が不明な兔疫グロブリンE(IgE)レベルの増加を伴う急激なTh2免疫反応の増幅反応が続く過程で、多様な原因による顆粒層のABH抗原の発現減少が、初期のTh1炎症反応の減少原因中一つに作用することがあり、これを改善することにより、アトピー皮膚炎のような皮膚疾患の予防及び治療に役立ち得るはずである。さらに、正常人の皮膚が多様な種類の皮膚刺激により引き起される持続的な炎症反応に露出されると、皮膚組織が活性酸素に持続的に露出され、それに伴い皮膚組織の損傷、しわ及び皮膚老化が促進され得るので、適切な皮膚炎症反応の鎮静と制御を介し活性酸素の発生を減少させることにより、皮膚の損傷、しわ及び皮膚老化を予防することができるようになる。
【0021】
即ち、多様な炎症性皮膚疾患でABH抗原が消失すると、非正常的な炎症反応を起こすことになり、正常な皮膚の分化は勿論、皮膚固有の防御機転に良くない波及効果をもたらし、したがって、外部からABH抗原を投入するか、ABH抗原の発現を増加させる有用な物質を添加することになれば、正常な免疫反応を強化させることができる。したがって、顆粒層でのABH抗原の発現を増加させると、皮膚での免疫反応を強化させることにより、一時的又は遺伝的なABH抗原の発現減少を補って正常な皮膚の免疫体系を維持することを補助することにより、非正常的な皮膚の免疫体系の不均衡により引き起される各種の皮膚疾患を治療及び予防することができ、皮膚障壁機能の強化を介し健康な皮膚を維持することにも役立つ。
【0022】
さらに、本発明は、候補物質等から試験管内(in vitro)又は生体内(in vivo)で表皮の角質形成細胞の分化を促進し、ABH抗原の発現を増加させるか減少させる物質を選別することを含む皮膚有用物質のスクリーニング方法を提供する。例えば、候補物質等を細胞に同一の条件で同量ずつ処理したあと細胞を培養し、ウエスタンブロット法などを利用してABH抗原の量を測定することにより、有用な物質等を選別することができる。その他にも、候補物質等から有用なタンパク質をスクリーニングする当業界に公知の方法等のうち何れの方法も適用可能である。
【0023】
さらに、本発明は、正常皮膚及び損傷した皮膚の顆粒層で正常なABH抗原の発現量を増大させることにより内因性免疫反応を強化させ、皮膚障壁機能の改善と抗菌ペプチドの発現を促進することを含む皮膚美容方法を提供する。
【0024】
さらに、本発明は、持続的に炎症反応が起きた皮膚でのABH抗原の発現量を一時的に減少させ、Th1炎症反応に関連した因子等の発現を弱化させることにより、過多な炎症反応が原因となる皮膚疾患等の症状を緩和させることを含む皮膚炎症鎮静方法を提供する。
【0025】
さらに、本発明は、免疫機能が弱化した皮膚で顆粒層での正常なABH抗原の発現量を増大させ免疫反応を正常化させることにより、非正常的な炎症反応と角質形成細胞の不完全な分化を抑制することを含む皮膚での免疫機能を回復させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の組成物は、皮膚を始めとする多様な組織で、炎症反応を伴う炎症疾患の症状を改善するか補助する効果があり、皮膚障壁機能の改善と抗菌ペプチドの発現促進を介し、健康な皮膚の維持と皮膚疾患により損傷した弱い皮膚の回復に役立つことができる。さらに、持続的な炎症反応の抑制を介して老化を予防又は改善し、皮膚の弾力を強化させて皮膚のしわを予防又は改善することのできる効果があり、炎症性皮膚疾患及び老化を改善することのできる有用物質のスクリーニングに有効に用いられ得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】血液型糖の化学的構造を示す概路図である。
【図2】正常組織でのABH抗原の発現様相を示す写真である。
【図3】紫外線照射に伴う皮膚でのABH抗原(B型抗原)の発現減少を示す写真である。
【図4】各種の皮膚疾患組織でのABH抗原の発現様相を示す写真である。
【図5】各種の皮膚疾患の免疫組織化学染色の結果を示した図である。
【図6】多様な天然物抽出物がABH抗原の発現に及ぼす影響を示す電気泳動写真である。
【図7】ABH抗原の処理が血液型抗原の発現に及ぼす影響を示す電気泳動写真である。
【図8】ABH抗原を構成する単糖類の投与が血液型抗原の発現に及ぼす影響を示す免疫組織化学染色写真である。
【図9】ABH抗原を構成する単糖類の投与が血液型抗原の発現に及ぼす影響を示す電気泳動写真である。
【図10】ABH抗原の除去によるICAM−1、HLA−DRの発現減少を示すウエスタンブロット写真である。
【図11】ABH抗原の除去によるIL−8、GM−CSFの発現減少を示す実時間PCR結果のグラフである。
【図12】ABH抗原の除去によるBD−2の発現減少を示す実時間PCR結果のグラフである。
【図13】ABH抗原の除去後、TNF−α又はIL−1β処理によるBD−2発現の誘導抑制可否を示すグラフである。
【図14】ABH抗原の発現が細胞の移動速度に及ぼす影響を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。
但し、下記実施例は本発明を例示するためのものであるだけで、本発明の内容が下記実施例により限定されるものではない。
【実施例】
【0029】
実験例1. 多様な人体組織でのABH抗原の発現調査
人体の多様な部位の組織を生検して得た後、ABH抗原に特異的に結合する抗体を利用し、免疫組織化学染色法で各組織でのABH抗原の発現可否を調査した。具体的に、生検した組織を10%のホルマリンに入れて一晩中固定させた後、ホルマリンを除去し組織を脱水させてパラフィン中に凝固してブロックを作製した。以後、4μmの厚さに組織を切断してスライドに貼付け、乾燥機(dry oven)で58℃で1時間の間パラフィンを溶解させた。キシレン(xylene)に5分ずつ4回処理してパラフィンを完全に除去し、100%のエタノールに1分ずつ2回、95%のエタノールに1分、80%のエタノール、70%のエタノールに1分ずつ浸漬して段階的に組織を再水和させた後、流れる水道水に5分洗浄し、さらに蒸溜水で5分間洗浄した後、pH 6.0 TRS(Dako)に入れたまま120℃で10分間オートクレーブ(autoclave)させた。湯煎で10分間組織を冷やした後、蒸溜水で5分ずつ2回洗浄してから、PBSで5分間洗い出した後PBSで希釈した3%の過酸化水素水溶液に10分間浸漬しておいた。その後、組織をPBSに10分ずつ3回洗浄した後、組織周辺にPAPペンで枠を描き、ブロッキング溶液(Zymed)を組織に30分間処理した。A型又はB型抗原を認知する1次抗体(SantaCruz)を処理した後16時間の間4℃に放置し、以後PBSに10分ずつ3回洗浄した後、HRP(horseradish peroxidase)が結合された2次抗体(SantaCruz)を15分間処理し、PBSに10分ずつ2回、蒸溜水に10分ずつ2回洗浄した。AEC発色剤(Zymed)を利用して発色した後、流水に5分間、さらに蒸溜水で5分間洗浄し、Hematoxylin(Dako)で核を染色して流水に10分間洗浄してから、組織周辺の水分だけ除去した後、水性マウンティング溶液(aqueous mounting solution)(Dako)でマウンティングし、顕微鏡で観察し、組織写真を得た。
【0030】
その結果、ABH抗原は赤血球だけでなく、個人の血液型に従い胃腸(A型)、食道(A型)、小腸(B型)、尿道(A型)、結膜(A型)、皮膚(A型)などの組織でも発現されていることを確認した(図2)。血液型がA型の人の組織は、A抗原を認知する抗体にのみ染色が可能であってB抗原を認知する抗体には染色されていず、B型の人はB抗原を認知する抗体によってのみ染色が可能であり、AB型の人は2種の抗体全てが染色可能であり、O型の人は2種全てが染色されなかった。
【0031】
実験例2. 紫外線照射に伴うABH抗原の発現減少
正常皮膚組織でA型の人はA抗原を認知する抗体にのみ染色され、主に表皮の顆粒層で染色される(Dabelsteen et al.,J Invest dermatol 82:13−17(1984))。個人別に皮膚に紫外線を照射したとき、紅斑が発生する最小紅斑強度(minimal erythema dose、MED)を測定し、2 MEDの強度で紫外線を照射した後、0、24、48、72時間に皮膚組織を生検し、実験例1と同一の方式で免疫組織化学染色法を介しABH抗原の発現を調査した。
【0032】
その結果、24時間まではABH抗原が正常に発現されたが、48、72時間になりながら、ABH抗原の発現が漸次消失されることを確認した(図3)。
【0033】
実験例3. 多様な皮膚疾患におけるABH抗原の発現減少
炎症が誘導される強い強度の紫外線照射によりABH抗原の発現が消失されるとの点に基づき、炎症反応の異常調節により症状が主に表れるものと思われる多様な皮膚疾患でのABH抗原の発現程度を調査した。このため、乾癬(A型)、アトピー(A型)、魚鱗癬(A型)、蜂窩織炎(A型)、円板状紅斑性狼瘡(A型)、にきび(B型)などの皮膚疾患の患者等から組織を生検し、実験例1と同一の方式で免疫組織化学染色法でABH抗原の発現を調査した。
【0034】
その結果、殆どの病理組織で顆粒層での正常なABH抗原の発現が消失し、患者に従って非正常的に有棘層や基底層でもABH抗原が発現される現象を見せた(図4及び図5)。これは顆粒層の不完全な分化、及び/又は有棘層や基底層の非正常的な分化を示唆する。
【0035】
実験例4. 天然物抽出物がABH抗原の発現に及ぼす影響の調査
多様な種類の天然物抽出物がABH抗原の発現に及ぼす影響を調査した。このため、エゾウコギ、あざみ、シイタケ、高麗人参、エキナセア、黄金及び柳抽出物原液(それぞれバイオスペクトラム(株)から購入)をそれぞれ0.1%(v/v)、1%(v/v)及び2%(v/v)の濃度でHaCaT細胞に処理した後、48時間の間培養した。以後、ウエスタンブロット実験によりB型抗原の発現を調査した。対照群としては、アルファ−チューブリン又はSTAT1アルファタンパク質を用いた。
【0036】
その結果、エゾウコギ、あざみ、シイタケ、高麗人参及びエキナセア抽出物はHaCaT細胞でB型抗原の発現を減少させ、柳及び黄金抽出物はB型抗原の発現を増加させる効果があることを確認した(図6)。
【0037】
実験例5. ABH抗原が血液型抗原の発現に及ぼす影響を調査
A、B、H抗原(Dextra Laboratoriesから購入)を、B抗原を保有しているHaCaT細胞に100nMの濃度で24時間の間処理した後、ウエスタンブロット分析によりB抗原の発現可否を観察した。その結果、B、H抗原によりそれぞれB型抗原の発現が増加しており、A抗原は24時間にはB型抗原の発現を増加させなかった(図7−0)。さらに、A、B抗原をそれぞれ100nM又は200nMの濃度でHaCaT細胞に48時間の間処理した場合は、A、B抗原全てB型抗原の発現を増加させた(図7)。前記結果から、A、B、H抗原全てがHaCaT細胞のB型抗原の発現を増加させるとのことを確認した。
【0038】
実験例6. ABH抗原を構成する単糖類の投与が血液型抗原の発現に及ぼす影響の調査(1)
一般に、アトピー皮膚炎のある患者の尻皮膚には肉眼で区分される病変はないが、血液型抗原の発現は正常人の皮膚に比べて減少している場合がある。したがって、これを回復させる効果を確認するため、100%のガラクトース、FGG(Fucose:Galactose=1:2、B−antigen組成)及びFGGN(Fucose:Galactose:N−acetylgalactosamine=1:1:1、A−antigen組成)の組成を有している糖の混合物をポリエチレングリコール:エタノール:水=3.5:1.5:5で配合した溶媒に0.5%(w/v)で溶解させた。前記溶解物を30歳の男性B型アトピー患者(志願者)と24歳の男性A型アトピー患者(志願者)の尻皮膚に閉鎖的に貼り付けて48時間ずつ2回(合計96時間)処理した後生検組織を得た。生検された組織は、ABH抗原に特異的に結合する抗体を利用し、実験例1に開示された免疫組織化学染色法と同一の方式で各組織におけるABH抗原の発現可否を調査した。
【0039】
その結果、血液型糖を構成する物質等を処理すると、30歳の男性B型アトピー患者(志願者)(図8のA)と24歳の男性A型アトピー患者(志願者)(図8のB)全てで細胞及び皮膚での血液型糖の発現が増加するとのことを確認した。
【0040】
実験例7. ABH抗原を構成する単糖類の投与が血液型抗原の発現に及ぼす影響の調査(2)
前記実験例5に開示されたものと同一のA、B、H抗原を構成するFGG及びFGGN混合物及びFG(Fucose:Galactose=1:1、H−antigen組成)混合物と、前記A、B、H抗原を構成する単糖類であるグルコース、ガラクトース、フコース、N−アセチルガラクトサミン及びN−アセチルグルコサミンをそれぞれ0.1、1、10μMの濃度で、B抗原を保有するHaCaT細胞に24時間の間処理した後、ウエスタンブロット分析によりB抗原の発現可否を観察した。その結果、これら全てがB型抗原の発現を増加させるとのことを確認した(図9)。
【0041】
実験例8. ABH抗原の除去によるICAM−1、HLA−DR発現の減少
一般に、皮膚での炎症過程で最も重要な役割を果たすTh1サイトカインであるインターフェロンガンマ(IFNg)は、多様なTh1免疫反応を媒介する因子等の発現を増大させるが、その中でも特に角質形成細胞が抗原提供細胞としての役割を果たすとき最も重要な分子にはICAM−1とHLA−DRを挙げることができる(Barker et al.、Lancet 337:211−214(1991))。B抗原を保有している角質形成細胞株のHaCaT細胞を5% FBS(Fetal bovine serum、Hyclone)を含むDMEM(Dulbecco's modificastion of Eagle's medium、Welgene)培地で培養し、細胞が35mm大きさの培養皿に70%程度育つように細胞培養器で育てた後、Opti−MEM培地(Invitrogen)で2時間インキュベーションした。2.5μlのリポフェクタミン2000(Invitrogen)を利用し、陰性対照群として目標遺伝子のないRNA(Bioneer)とFUT1遺伝子を標的とするsiRNA(Bioneer、配列番号1)を250pmolずつトランスフェクションした。翌日培地をFBSのないDMEMに取り替え、さらに一日後インターフェロンガンマ(Peprotech)を10ng/mlの濃度で処理した後、0、12、15、18、24、36、48時間後にそれぞれ細胞からタンパク質を抽出し、FUT1のsiRNAによるB型抗原の発現減少と、抗原提供細胞の主要機能因子であるICAM−1、HLA−DRの変化をそれぞれの抗体(Abcam、Dako)を利用してウエスタンブロット実験を行った。大きく変化しない対照群タンパク質にはアルファチューブリン(alpha−tubulin、SantaCruz)を用いた。
【0042】
その結果、対照群の場合、インターフェロンガンマによりICAM−1とHLA−DRの発現が大きく増加するが、HaCaT細胞でFUT1のsiRNAを250pmol/mlで処理しB型抗原の発現を抑制した場合は、インターフェロンガンマによるICAM−1の発現の増加が相当部分抑制されることを確認し、HLA−DRの場合は初期18時間までの発現増加が抑制されるが、24時間以後には回復し48時間には逆転されることを確認した(図10)。
【0043】
実験例9. ABH抗原の除去によるIL−8、GM−CSF、BD−2発現の減少
B抗原を保有している角質形成細胞株のHaCaT細胞に、実験例4と同一の方法でリポフェクタミン2000のみ処理した対照群(CNT)、陰性対照群として目標遺伝子のないRNA(NC)とFUT1(siFUT1)、ABO(siABO)遺伝子を標的とするsiRNA(Bioneer)を250pmolずつトランスフェクションした4種類のサンプルに、インターフェロンガンマを処理しないか、10ng/mlの濃度で処理した後、24時間後に細胞からRNAを抽出し、36b4に補正したIL−8、GM−CSF、BD−2(β−defensin 2)のmRNAの発現量を、サイバーグリーン(sybrgreen、Takara master mix)を利用した実時間(Realtime)RT−PCR法(Applied Biosystems、7500 Real−Time PCR system)で確認した。このとき、FUT1遺伝子のsiRNA配列は実験例4と同一であり、ABO遺伝子のsiRNA配列は配列番号2で記載される塩基配列を用いた。さらに、人間IL−8遺伝子のプライマーには配列番号3及び配列番号4で記載される塩基配列を用い、GM−CSFのプライマーには配列番号5及び配列番号6で記載される塩基配列を用い、BD−2のプライマーには配列番号7及び配列番号8で記載される塩基配列を用いた。
【0044】
その結果、Th1免疫反応を媒介する分子等の中でインターフェロンガンマにより誘導されるIL−8、GM−CSFの発現がB型抗原の除去により減少することを確認しており、皮膚の抗菌ペプチド中一つであるBD−2の発現はインターフェロンガンマに増加されないが、その発現がB型抗原の除去により減少することを確認した(図11及び図12)。
【0045】
実験例10. ABH抗原除去後、TNF−α又はIL−1β処理によるBD−2発現の誘導を抑制
FUT1遺伝子のshRNAを過発現させ得るレンチウイルスベクターと、ABO遺伝子のshRNAを過発現させ得るレンチウイルスベクター(SantaCruzから購入)をHaCaT細胞株に感染させた後、ピューロマイシン(puromycin)で一ヶ月間選択培養し、陰性対照群レンチウイルスベクターに比べて安定的にFUT1又はABOの発現が抑制されるHaCaT細胞株を製作した。この細胞等にTNFαとIL−1βをそれぞれ24時間の間処理した後、BD−2のmRNAの発現量を36b4遺伝子の発現量に補正して前記実験例7と同一の実時間RT−PCR法で比較した。
【0046】
その結果、何等の処理もしない場合、BD−2の発現は勿論、炎症性サイトカインであるTNF−αとIL−1βを処理して炎症反応を誘導した場合の増加したBD−2の発現も、FUT1又はABOタンパク質の発現が抑制されたHaCaT細胞株で全て一定部分減少した(図13)。
【0047】
実験例11. ABH抗原の発現が細胞の移動速度に及ぼす影響
HaCaT細胞株にsiRNAを処理しないか、実験例4と同一の方法で陰性対照群siRNA(NC)、FUT1或いはABOのsiRNAをリポフェクタミン2000を利用してトランスフェクションし、培養皿に溢れるまで培養した後、一定の幅に傷痕(scratch)を出して細胞のない空間を作った。10%のFBSが含まれたDMEM培地で培養しながら、それぞれ0、24、48、72及び96時間に写真を撮って細胞の移動を確認した。
【0048】
その結果、siRNAを処理しないかNC siRNAをトランスフェクションした場合に比べ、ABOやFUT1のsiRNAをトランスフェクションした場合は、傷痕の閉じる速度が著しく減少し、さらにFUT1の場合がABOの場合に比べてさらに遅く閉じる傾向を見せた(図14)。これは皮膚での傷治癒過程における角質形成細胞の移動速度が、FUT1及びABOの発現が少ない場合、即ち血液型抗原の発現が少ない場合に遅くなり得るとのことを意味する。
【0049】
前記で検討してみたところのように、多様な炎症性皮膚疾患でABH抗原の発現が減少していることに着目し、角質形成細胞で強制にABH抗原の発現を除去してみた結果、インターフェロンガンマにより誘導される多様なTh1免疫反応因子等の減少に伴い、免疫システムが正常に比べて弱化することを確認した。したがって、ABH抗原の発現を調節することが炎症反応の程度を調節する効果があることを確認した。
【0050】
製造例1. 薬学的組成物の製造
1.1. シロップ剤の製造
有効成分を20%(重量/体積)で含むシロップを次のような方法で製造した。先ず、H型抗原、サッカリン、糖を温水80gに溶解させた。前記溶液を冷却させた後、これにグリセリン、サッカリン、香味料、エタノール、ソルビン酸及び蒸溜水でなる溶液を製造して混合した。この混合物に水を添加して100mlになるようにした。
【0051】
前記シロップ剤の構成成分は次の通りである。
H型抗原..........................20g
サッカリン..........................0.8g
糖.............................25.4g
グリセリン..........................8.0g
香味料..............................0.04g
エタノール..........................4.0g
ソルビン酸..........................0.4g
蒸溜水..............................定量
【0052】
1.2. 錠剤の製造
B型抗原250gをラクトース175.9g、じゃがいも澱粉180g及びコロイド性ケイ酸32gと混合した。前記混合物に10%のゼラチン溶液を添加させた後、粉砕して14メッシュの篩を通過させた。これを乾燥させ、これにじゃがいも澱粉160g、滑石50g及びステアリン酸マグネシウム5gを添加して得た混合物を錠剤に作った。
【0053】
前記錠剤の構成成分は次の通りである。
B型抗原..........................250g
ラクトース.........................175.9g
じゃがいも澱粉.......................180g
コロイド性ケイ酸......................32g
10%ゼラチン溶液
じゃがいも澱粉......................160g
滑石............................50g
ステアリン酸マグネシウム...................5g
【0054】
1.3. 注射液剤の製造
有効成分10mgを含む注射液剤を次のような方法で製造した。
A型抗原1g、塩化ナトリウム0.6g及びアスコルビン酸0.1gを蒸溜水に溶解させて100mlを作った。前記溶液を瓶に入れ加熱して滅菌させた。
【0055】
前記注射液剤の構成成分は次の通りである。
A型抗原..........................1g
塩化ナトリウム.......................0.6g
アスコルビン酸.......................0.1g
蒸溜水............................定量
【0056】
製造例2. 化粧料組成物の製造
2.1. 乳化剤形の化粧品の製造
表1に記載された組成で乳化剤形の化粧品を製造した。製造方法は下記の通りである。
1)1〜9の原料を混合した混合物を65〜70℃で加熱した。
2)10の原料を前記段階1)の混合物に投入した。
3)11〜13の原料の混合物を65〜70℃で加熱して完全に溶解させた。
4)前記段階3)を経ながら、前記2)の混合物を徐々に添加し8,000rpmで2〜3分間乳化させた。
5)14の原料を少量の水に溶解させた後、前記段階4)の混合物に添加し2分間さらに乳化させた。
6)15〜17の原料をそれぞれ秤量した後、前記段階5)の混合物に入れて30秒間さらに乳化させた。
7)前記段階6)の混合物を乳化後、脱気過程を経て25〜35℃で冷却させることにより乳化剤形の化粧品を製造した。
【0057】
【表1】

【0058】
2.2. 可溶化剤形の化粧品の製造
表2に記載された組成で可溶化剤形の化粧品を製造した。製造方法は下記の通りである。
1)2〜6の原料を1の原料(精製水)に入れ、ミキサーを利用して溶解させた。
2)8〜11の原料を7の原料(アルコール)に入れて完全に溶解させた。
3)前記段階2)の混合物を前記段階1)の混合物に徐々に添加しながら可溶化させた。
【0059】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ABH抗原又は前記ABH抗原の発現を調節する物質を有効成分として含む炎症疾患改善用組成物。
【請求項2】
前記炎症疾患は、炎症性皮膚疾患及び胃腸、食道、小腸、尿道及び結膜でなる群から選択される組織の炎症性疾患でなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ABH抗原の発現を調節する物質は、ABH抗原の発現を増加させる物質又はABH抗原の発現を減少させる物質であることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ABH抗原の発現を増加させる物質は、ABO、FUT1及びFUT2でなる群から選択される遺伝子、又は前記遺伝子を含むベクターであることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記ABH抗原の発現を減少させる物質は、ABO、FUT1及びFUT2でなる群から選択される遺伝子の発現を抑制するsiRNA、shRNA及び前記siRNAやshRNAのアンチセンスコーディング配列を含むベクターでなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記炎症性皮膚疾患は乾癬、アトピー、魚鱗癬、天疱瘡、にきび、紅斑性狼瘡、皮膚老化及び皮膚しわでなる群から選択されることを特徴とする請求項2に記載の組成物。
【請求項7】
前記ABH抗原又は前記ABH抗原の発現を調節する物質は、全体組成物中に0.001〜10重量%の量で含まれることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、薬学的組成物又は化粧料組成物の形態であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物の剤形は、皮膚外用剤の剤形であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記化粧料組成物は柔軟化粧水、栄養化粧水、マッサージクリーム、栄養クリーム、パック、ゲル、皮膚粘着タイプの化粧料剤形、ローション、軟膏、クリーム、パッチ及び噴霧剤でなる群から選択される請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記薬学的組成物は固体、半固体及び液状でなる群から選択される経口又は非経口投与剤の形態であることを特徴とする請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記ABH抗原は、タンパク質や脂質の糖質化末端の構造がフコース−ガラクトース末端にN−アセチルガラクトサミンが結合したA抗原、フコース−ガラクトース末端にガラクトースが結合したB抗原、フコース−ガラクトース末端にN−アセチルガラクトサミンとガラクトースが全て結合したAB抗原、フコース−ガラクトース末端に何も結合しないH抗原でなる群から選択される請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記ABH抗原は、フコース、ガラクトース、グルコース、N−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミン、FG(Fucose:Galactose=1:1、H−antigen組成)、FGG(Fucose:Galactose=1:2、B−antigen組成)及びFGGN(Fucose:Galactose:N−acetylgalactosamine=1:1:1、A−antigen組成)でなる群から選択される請求項1又は11に記載の組成物。
【請求項14】
前記ABH抗原の発現を増加させる物質は、柳抽出物又は黄金抽出物である請求項3に記載の組成物。
【請求項15】
前記ABH抗原の発現を減少させる物質は、エゾウコギ抽出物、あざみ抽出物、シイタケ抽出物、高麗人参抽出物及びエキナセア抽出物でなる群から選択される請求項3に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2012−514634(P2012−514634A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545293(P2011−545293)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際出願番号】PCT/KR2010/000103
【国際公開番号】WO2010/079978
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(509313511)ソウル大学校産学協力団 (2)
【Fターム(参考)】