説明

BACE455、ヒトβ−セクレターゼの選択的スプライシング変異体

本発明は一般に、遺伝学、生化学、薬化学および医学の分野に関する。本発明は、より詳細には神経病理学的症状に関係するヒト遺伝子変異体の同定、およびそのような疾病および関連する障害の診断、予防および治療のための方法、ならびに治療用活性薬剤のスクリーニングのための方法を開示する。本発明は、触媒活性を有するβセクレターゼ(メマプシン2、BACE)変異体、およびそれをコードする核酸に関する。本発明は、特定のBACEアイソフォームの活性を阻害する薬剤の同定、したがってアルツハイマー病および認知症を含む神経病理学的症状の発生、発症または進行に影響する薬剤および治療法の同定に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に遺伝学、生化学、医薬品化学および医学の分野に関する。本発明は、より詳細には神経病理学的症状に関連するヒト遺伝子変異体の同定、およびそのような疾病および関連する障害の診断、予防および治療のための、ならびに治療活性のある薬剤のスクリーニングのための方法を開示する。本発明は、触媒活性を有するβ−セクレターゼ(Memapsin2、BACE)変異体、およびそれらをコードする核酸に関する。本発明は、特定のBACEアイソフォームの活性を阻害する薬剤の同定に、したがってアルツハイマー病と認知症を含む神経病理学的症状の起源、発症または進行に影響する薬剤および療法の同定に役立つ。
【背景技術】
【0002】
遺伝的多様性の生成における選択的RNAスプライシングの重要性は、単一の遺伝子が1以上のmRNA転写物をコードする最も重要な方法の1つであるとして(選択的プロモーターおよび選択的ポリアデニル化の使用と共に)現在広く認められている。選択的スプライシングの結果生ずるmRNA前駆体またはmRNAアイソフォームは、安定性、翻訳可能性、またはコードされたタンパク質配列において相異なる可能性があり、その個々はコードされたタンパク質の機能を変化させる可能性がある。
【0003】
これの最良の例を、アポトーシスの分野で示すことができる。(Jiang and Wu,. Proc. Soc. Exp. Biol. Med. 220: 64-72 (1999))。選択的スプライシングにおける変化、特にイントロン/エクソン境界における標準的な配列の特定の突然変異が、異常なスプライシングパターンを引き起こし、遺伝子発現に影響して疾病を引き起こす可能性がある。Cooper et al. (1998) は最近、ヒトの遺伝性疾患の少なくとも10%がRNAスプライシング欠陥を生成する突然変異を伴うことを示した;例えば Cooper et al., Nucleic Acids Res. 26: 285-287 (1998) を参照のこと。
【0004】
共通スプライシングシグナル中の散発的突然変異が、癌、神経変性障害、炎症/喘息および他の代謝病などの広範囲の病理において観察される。RNAスプライシングの欠陥は、エクソンの読み飛ばし、イントロンの保留、および隠れたスプライシング部位の使用または新たなスプライシング共通配列の生成による新たなスプライシング事象を含む可能性がある (Lopez, Annu. Rev. Genet. 32: 279-305 (1998))。細胞のスプライシング因子の活性、レベル、またはアミノ酸配列の変化が、スプライシングの効率または選択的スプライシングの調節に影響する可能性がある。例えば、運動ニューロン生存遺伝子のヌクレオチド配列中に1個のヌクレオチドが存在することが、この遺伝子のスプライシングを調節し、それが脊髄性筋萎縮症の原因となっている(Lorson et al. Proc. Natl.Acad.Sci.USA, 96: 6307-6311 (1999))。散発性アルツハイマー病患者から得たヒト脳中では、a)ps1遺伝子のエクソン9の欠失により引き起こされたプレセニリン−1(PS1)タンパク質のアミノ酸配列の変化、b)プレセニリン2をコードする遺伝子(ps2遺伝子)のエクソン5の欠失、およびc)(散発性前頭側頭認知症の場合)ps2遺伝子のエクソン5の異常スプライシング、を含むスプライシング事象が関係していると神経病理学において示されている (Isoe-Wada. et al. Eur J Neurol, 6,163-167 (1999); Sato et al. J. Biol. Chem. 276: 2108-2114 (1991))。
【0005】
アルツハイマー病(AD)は、顕著なアミロイド斑の形成、神経原線維変化、神経膠症およびニューロン脱落を伴う脳の荒廃的変性障害である (Hardy et al. Nat. Neurosci 1: 355-358 (1998); Selkoe, D. J. In: Alzheimer disease, Ed 2 (Terry, R. D., Katzman, R., Bick, K. L., Sisodia, S. S., eds), pp 293-310. Philadelphia: Lippincott Williams and Wilkins. (1999))。最も影響を受ける領域は、大脳皮質、海馬、鉤状回、海馬回および扁桃体である。ADに罹患した患者は、記憶喪失、知的機能および技能、人格変化並びに統合失調症について増大する問題を抱える。ADは高齢者における認知症の主要原因であり、また神経変性を緩和または予防する有効な治療法はない。
【0006】
ADの原因となる機構としていくつかの遺伝的および非遺伝的因子が示唆されてきた;これらには、遺伝的疾病素質、感染因子、毒素、金属、頭部外傷および血管性認知症が含まれる。全体的に見れば、それはアミロイド前駆体タンパク質(APP)のタンパク質分解プロセシングに責任のある細胞内経路の調節不全であり、それがA−Beta(Aβ)1−42と名付けられるペプチドの生成を増大させることになり、これは特にアミロイド生成性のAβペプチド型であり、これが現在、ADの病態生理学の中心となっているようだ(Selkoe, Neuron 32 : 177-180(2001))。
【0007】
Aβペプチドはまた、脳血管性アミロイド沈着における主要なタンパク質要素である。アミロイドは、β−プリーツシートに配列しているフィラメント状物質である。Aβペプチドは、43個までのアミノ酸を含む疎水性のペプチドである。Aβペプチドは、活性酸素種(ROS)の誘導、変化した遺伝子転写の誘導、興奮毒性の感受性増大の誘起、および神経変成症状に共通して関連した他のプロセスを含む様々な形でニューロンに有毒であることが示されている (Ramsden et al., J. Neurochem. 79: 699-712 (2001); Shukla et al., J. Cell. Path.5: 241-249 (2002); Green and Peers, Neurochem. 77: 953-956 (2001); Kowall et al., Neurobiol. Aging 13: 537-542 (1992); MacManus et al., J. Biol. Chem. 275: 4713-4718 (2000))。APP中の突然変異、プレセニリン1および2(それぞれPS1およびPS2)が、APPプロセシングを大幅に変更して、Aβ1−42の形成を増大させる結果となる。アミロイド斑は、30歳まで生き残るダウン症候群の老いた患者にも検出される。ダウン症候群で観察されるAPP発現の上方制御が、恐らくダウン症患者におけるADの進行の原因である(Rumble et al., N. Engl. J. Med. 320: 1446-52 (1989); Mann, Neurobiol. Aging 10: 397-399 (1989))。アミロイド斑は正常に老化する脳中にもより少数であるが存在する (Vickers et al., Exp. Neurol. 141: 1-11 (1996))。
【0008】
現在知られているヒトAPPの種々の形は、695〜770個の範囲のアミノ酸サイズであり、細胞表面に局在し、1つのC末端膜貫通領域を有する。多くのAPPcDNAが同定され、その中には最も豊富に存在する3つの形である:Kang et al.(1987) Nature 325:733-736 に記載され、「正常な」APPと呼ばれるAPP695;Tanzi et al. (1988) Nature 331: 528-530 に記載された751個のアミノ酸ポリペプチド(APP751);および、Kitaguchi et al. (1988) Nature 331: 530-532 に記載された770個のアミノ酸ポリペプチド(APP770)、が含まれる。これらの形は、単一の前駆体RNAから選択的スプライシングにより生ずる。3つのAPPスプライシング変異体の各々に共通であるAβペプチドは、膜貫通領域に隣接し、膜貫通領域の一部分を含むAPP領域に由来する。
【0009】
3つの異なるプロテアーゼがAPPをインビボでプロセシングする (Vassar and Citron, Neuron 27: 419-422 (2000))。α−セクレターゼは、APPを原形質膜の内腔側表面から12アミノ酸残基離れた部位で切断する;これはAβ産生には関係しない。Aβ生成の第一工程は、I型膜結合アスパラギン酸プロテアーゼであるβ−セクレターゼ(BACE)によるAPPの切断によって実施される。BACE切断が、外部領域−APPの細胞表面から突出している部分−の100kDaの可溶形(sAPP)、およびAβペプチドのN末端を含む99個のアミノ酸(C99と呼ぶ)からなる12kDaの細胞膜に結合した中間ペプチドを生成する (Vassar et al., Science 286 (5440): 735-41(1999))。C99ペプチドはその後、プロテアーゼγセクレターゼによりプロセシングされて、サイズまたは末端部の修飾が異なる様々なAβペプチド(40〜42および43個のアミノ酸残基がインビボで最も頻繁に見出されるペプチドである)を産出する(総説としては Selkoe et al., Nature 399 (6738 Suppl): A23-31 (1999); Tekirian, J. Alzheimers. Dis. 3 (2): 241-248.(2001) を参照のこと)。βセクレターゼ切断部位の近くのAPP配列は次のとおりである:
EVKM*DAE。
【0010】
これらの残基を、標準プロテアーゼ命名法により P4−P3−P2−P1*P1’−P2’−P3’とラベルし、P1とP1’の間の切断部位には*を付す。KMのNLへの突然変異(いわゆるスウェーデン突然変異)などのこの領域の突然変異が、APPをBACEにとってより好ましい基質に変換することができる。従って、BACEによるAPP切断が増大する結果となるAPPのアミノ酸配列変化は、アルツハイマー病発症の可能性を増大させる (Citron et al., Nature 360 (6405): 672-674 (1992))。実験的証拠により、APPプロセシングは順次行われること、およびβ−セクレターゼによるAPPの切断がγ−セクレターゼを介するAPPプロセシングの前提条件であることが示唆されている。γ−セクレターゼによるAPPの膜貫通領域内での切断により40/42残基のAβペプチドが作られ、その脳中での産生および蓄積の上昇が、アルツハイマー病の病因の中心事象である (Selkoe,.Nature 399: 23-31 (1999))。さらに、γセクレターゼの後に、BACEがAβ40−42を消費して、再びAβペプチド40−42を切断し、神経毒性Aβ34ペプチドを生成することができることが現在明らかである(Fluhrer et al., J. Biol. Chem. 278 (8): 5531-5538 (2003))。
【0011】
既存のADの治療戦略の多くはγ−セクレターゼ阻害に注目してきた。しかし現在は、ADを治療または予防するためには、そのような戦略が十分でないか、または適切ですらないようである。例えば、C99ペプチドはその生成にはBACE切断が必要であってγ−セクレターゼ切断は必要でないが、それ自身、Aβペプチド全体を含んでおり、培養細胞中での評価では神経毒性を示し、またさらにADの脳に蓄積することが現在では明らかである (Tekirian, J. Alzheimers. Dis. 3 (2): 241-248. (2001))。更に、γ−セクレターゼ阻害剤が深刻に免疫系に影響し、かつC末端APP断片の蓄積をもたらし、それら自身が有毒であることが示された。さらに、γセクレターゼ阻害が、様々な重大なタンパク質のプロセシングを変更させる可能性がある (Doerfler, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U S A 98: 9312-9317 (2001), Ni et al., Science 294: 2179-2181 (2001), Marambaud, et al., EMBO J 21: 1948-1956 (2002), Kim, et al., J. Biol. Chem. 277: 499976-499981 (2002))。BACE活性の欠如は子宮内では必ずしも致命的ではない一方、プレセニリン1および2遺伝子の2重遺伝子ノックアウトは致命的であることが分かった (Herreman, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96: 11872-11877 (1999))。この毒性は一次的には、細胞から細胞へのシグナル伝達に関係しているノッチ・シグナル伝達経路の阻害の結果である。確かに、ノッチレセプターおよびその同系統のリガンドであるジャグドおよびデルタはプレセリニンの既知の基質であり (De Strooper, et al. Nature 398: 518-522 (1999))、ノッチおよびそのリガンドの切断は細胞シグナリングにおいて活性を有するタンパク質分解断片の放出をもたらすからである (LaVoie and Selkoe, J. Biol. Chem. 278 (36): 34427-34437 (2003))。
【0012】
対照的に、APPペプチドのβセクレターゼ部位のインビボにおけるプロセシングはAβペプチド産生の律速段階であると考えられる (Sinha, S. & Lieberburg, Proc Natl Acad Sci USA.96 (20): 11049-53(1999); Vassar, Adv. Drug Deliv. Rev. 54 (12): 1589- 1602 (2002))。BACEが、他の生理学的に重要なタンパク質の生成に関与するようには見えない (Cai et al., Nat. Neurosci 4: 233-234 (2001); Luo et al., Nat. Neurosci 4: 231-232 (2001))。したがって、BACEがAβ生成を減少させる、または阻害するための最も強い治療標的であるように見える。
【0013】
BACEは不活性酵素前駆体として合成される。分泌経路における成熟中に、BACEは4つのN−結合部位のうちの3つでグリコシル化され、プロテアーゼの前駆タンパク質転換酵素ファミリーの一員によってそのプロペプチド領域から分離される。さらに、BACEはまた、その細胞質領域内のシステイン残基がパルミトイル化され、そのC末端がリン酸化される。小胞体(ER)中でコアがグリコシル化された後、BACEはゴルジ装置に迅速に、かつ効率的に輸送され、エンドソーム系に向けて送り込まれる (Fluhrer, R. et al.; J Biol Chem. 278 (8): 5531-5538 (2003))。
【0014】
現在までに、BACEの3つのアイソフォーム:BACE476、BACE457およびBACE432、が単離されている。これらのアイソフォームはすべて、遺伝子のエクソン3領域の選択的使用により生成されたインフレーム欠失であり、また、それらはすべて、もし有るとしてもBACE501よりも極めて低いAPPプロセシング活性を示す(Bodendorf, et al., J. Biol. Chem. 276 (15): 12019-12023 (2001), Zohar et al., Brain Res. Mol. Brain Res. 115(1):63-68 (2003), Tanahashi and Tabira, Neurosci. Lett. 307(1): 9-12 (2001))。
【発明の開示】
【0015】
本発明は、神経病理学的疾病に罹患している患者の脳組織(例えば、ヒトADの脳)に選択的に発現されており、触媒活性を有し、また既存の他の活性を有するネイティブのBACEアイソフォームBACE501と薬理学的に異なる、ヒトβ−セクレターゼ(BACE)の新規なアイソフォームの同定に関連する組成物および方法を目標とする。BACE455と名付られた、BACEのこの新規な神経病理学的−特異的アイソフォームは、エクソン4の欠失およびエクソン3とエクソン5の結合部に存在する新規なヌクレオチドおよび対応するアミノ酸配列の発生から生じたものであることが見出された。
【0016】
ネイティブのBACEの公表された結晶構造に基づくと、本発明の新規なアイソフォームBACE455はBACEと類似の三次元構造を有し、プロテアーゼの活性部位内に依然として互いに向かい合っている2つのアスパラギン酸塩残基を有していると予想される。しかしながら、BACE455の活性部位は、よりオープンで、より容易にアクセスでき、したがってネイティブのBACE分子と比較して、著しく増加したレベルのAβペプチドを生産する可能性が高い。さらに、BACE455は、BACEの不活性化の原因であり、したがってネイティブの分子において活性調節を担うエンドプロテアーゼにより分解される部位を欠く。したがって、BACEおよび他の既知のBACEアイソフォームと比較して、BACE455は翻訳後調節を欠き、変化した三次元構造を有し、より高いレベルの病理的Aβペプチドを産生する可能性がある。BACE455は、阻害プロフィールの点からBACE501とは著しく異なる。これは、よく知られた阻害剤を用いて示される。このようにBACE455中のエクソン4の欠失が、他の既知の活性を有するBACEアイソフォームと比較したとき、重要な薬理学的相違をつくり出す。
【0017】
観察されたこのアイソフォームの、ネイティブのBACEから区別する、機能的および薬理学的性質が、哺乳動物の、特にヒト被検者の病理学的症状の一因となり、また症状を選択的に進行させると提唱されている。
【0018】
単離したBACE455、ならびにその特有の断片、および対応する核酸を、BACE455に関連する神経病理学的症状の診断のために用いることができ、また神経学的障害、特に神経変性障害および認知症を含む神経病理学的症状、より好ましくはアルツハイマー病およびその関連障害などの現在Aβの形成または蓄積と関連することが知られている障害、の治療において治療活性を有する医薬品、特にBACE455の阻害剤のスクリーニングのために用いることができる。
【0019】
本発明の別の実施態様では、BACE455の転写、翻訳または活性の阻害剤を罹患した組織へ投与することを含む神経病理学的症状の治療のための方法を提供する。
【0020】
「神経病理学的症状」とは、運動ニューロン疾患(ALS)、ダウン症候群、パーキンソン症候群、多発性硬化症、広汎性大脳皮質萎縮、レーヴィ体認知症、ピック病、中皮質辺縁認知症、視床変性、球麻痺、ハンチントン舞踏病、皮質−線条体−脊髄変性、皮質−基底神経節変性、大脳小脳変性、痙性麻痺を伴う家族性認知症、ポリグルコサン小体病、シャイ−ドレーガー症候群、オリーブ橋小脳萎縮、進行性核上性麻痺、変形性筋失調症、ハレルフォルデン−スパッツ病、メージ症候群、家族性振戦、ジルドラトゥレット症候群、有刺赤血球舞踏病、フリードライヒ運動失調症、ホームズ家族性皮質小脳萎縮、AIDS関連認知症、ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病、進行性脊髄性筋萎縮症、進行性球麻痺、非滲出性加齢黄斑変性症(ARMD)および滲出性加齢黄斑変性症などの黄斑障害および網膜変性、原発性側索硬化症、遺伝性筋萎縮、痙性対麻痺、腓骨筋萎縮、肥厚性間質多発性神経炎、遺伝性多発神経炎性失調、視神経症、糖尿病性網膜症、アルツハイマー病および眼筋麻痺、を含む1つ以上の症状を意味するが、しかしそれらに限られない。眼の症状の例には、開放隅角緑内障を含む緑内障、高眼圧症、非滲出性加齢黄斑変性症(ARMD)、滲出性加齢黄斑変性症(ARMD)、脈絡膜血管新生、糖尿病性網膜症、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、近視性網膜変性などの黄斑障害および網膜変性;急性多病巣性小板状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット網脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(毛様体扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(MEWDS)、眼サルコイドーシス、後強膜炎、蛇行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト−小柳−原田症候群、小斑点内側脈絡膜症、急性後部多発性小板状色素上皮症、急性網膜色素上皮炎、急性黄斑視神経網膜障害などの炎症性疾患;糖尿病性網膜症、網膜中心動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内凝固症候群、網膜静脈分枝閉塞症、高血圧性眼底変化、眼球虚血症候群、網膜動脈微小動脈瘤、コーツ病、傍中心窩毛細管拡張症、辺網膜静脈閉塞、乳頭静脈炎、網膜中心動脈閉塞、網膜分枝動脈閉塞、頚動脈疾患(CAD)、霜状分枝血管炎、鎌状赤血球網膜症および他のヘモグロビン異常症、網膜色素線条、家族性滲出性硝子体網膜症などの、血管疾患および滲出性疾患;イールス病;交感神経性眼炎、ブドウ膜炎性網膜疾患、網膜剥離、外傷、網膜レーザー、光力学療法、光凝固、手術中の低灌流、放射線網膜症、骨髄移植網膜症;などの、外傷性・外科的障害および環境性障害;増殖性ガラス体網膜症および増殖性網膜上膜などの増殖障害;眼ヒストプラスマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラズマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎性疾病、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性網膜外層壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、びまん性片側性亜急性神経網膜炎、ハエウジ病などの伝染性障害;網膜色素変性症、網膜ジストロフィーを伴う全身性障害、先天的定常性夜盲症、錐体ジストロフィー、スタルガルト病および黄色斑眼底などを伴う全身性障害、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X染色体連鎖網膜分離症、ソルスビーの基底部ジストロフィー、良性同心黄斑障害、ビエティーの水晶体ジストロフィー、弾性線維偽黄色腫などの遺伝障害;黄斑孔、巨大網膜裂孔などの網膜損傷;腫瘍関連網膜疾患、RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の合併過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫および眼球内リンパ腫瘍、などの網膜腫瘍;が含まれるが、しかしそれらに限られない。
【0021】
「単離された」とは、ヒトの介在なしに自然界で通常存在する環境以外の環境に存在する分子を意味する。したがって、例えば、「単離されたBACE455」には、細胞溶解物に含まれている自然に生成されたBACE455、精製または部分精製されたBACE455、組換えBACE455、ならびに任意の生物から得られた組織培養細胞(ヒト、ラット、サルまたは他の哺乳動物細胞、バクテリアまたは真菌細胞、または昆虫細胞を、非限定的に含む)などの、異種の宿主細胞または培養物内に存在しているBACE455が含まれる。
【0022】
本発明のある実施態様では、BACE455タンパク質活性の選択的阻害を包含する方法について記述する。そのような方法を治療上、アルツハイマー病、他の認知症、緑内障、パーキンソン病、ALS、および脳卒中の影響など(それらに限定されるものではないが)の神経病理学的症状の進行を阻害するために用いることができる。
【0023】
別の実施態様では、本発明はAβペプチドの生産を阻害する分子をスクリーニングするための、BACE455をコードするBACE455 mRNAまたはその特有の断片の使用、BACE455タンパク質またはBACE455タンパク質の任意の特有の断片の使用、を目的とする。
【0024】
好ましくは本発明によるタンパク質またはポリペプチドの断片は、隣接するアミノ酸配列を含む少なくとも10個のアミノ酸を含み、より好ましくは隣接するアミノ酸配列を含む少なくとも9個のアミノ酸を、さらに好ましくは隣接するアミノ酸配列を含む少なくとも8個のアミノ酸を、さらに好ましくは隣接するアミノ酸配列を含む少なくとも7個のアミノ酸を、さらにより好ましくは隣接するアミノ酸配列を含む少なくとも6個のアミノ酸を、さらにより好ましくは隣接するアミノ酸配列を含む少なくとも5個のアミノ酸を含む。
【0025】
好ましくは本発明による核酸またはポリヌクレオチドの断片は、隣接するヌクレオチド配列を含む少なくとも30個のヌクレオチドを含み、より好ましくは隣接するヌクレオチド配列を含む少なくとも27個のヌクレオチドを、さらにより好ましくは隣接するヌクレオチド配列を含む少なくとも24個のヌクレオチドを、さらにより好ましくは隣接するヌクレオチド配列を含む少なくとも21個のヌクレオチドを、さらにより好ましくは隣接するヌクレオチド配列を含む少なくとも18個のヌクレオチドを、さらにより好ましくは隣接するヌクレオチド配列を含む少なくとも15個のヌクレオチドを含む。
【0026】
「特有の」とは、BACE455タンパク質またはその断片をコードする核酸を記述するために用いられた時には、そのような核酸のヌクレオチド配列は、BACE455DNA配列のエクソン5由来の少なくとも1つのコドンに直接隣接するエクソン3由来の少なくとも1つのコドンを含み、そのような核酸または断片によってコードされるものと同じアミノ酸配列を有するタンパク質またはその断片をコードするか、あるいはそのようなヌクレオチド配列に正確に相補的である、ことを意味する。特定の実施態様では、特有の核酸は、BACE455のエクソン3およびエクソン5の連結部にある少なくとも5つの隣接するヌクレオチドを含むヌクレオチド配列を含む。
【0027】
「特有の」とは、BACE455タンパク質またはその断片を記述するために用いられた時には、BACE455タンパク質またはその断片をコードする特有の核酸によってコードされたアミノ酸配列を含むペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質を意味する。
【0028】
BACE455タンパク質、その特有の断片、およびこれらの分子をコードする核酸は、有機化学および酵素学の当業者によく知られている市販のソフトウエアプログラムおよび技術を用いることにより、当業者が新規なBACE455阻害剤を設計するために利用することができる。そのような阻害剤は、アルツハイマー病および他の神経病理学的症状の診断ならびに治療および/または予防の両方に役立つ。BACE455阻害剤を作成するための方法は、コンビナトリアルまたは他の化学的ライブラリー、化学的ライブラリーのハイスループットスクリーニングにおいて単離したBACE455タンパク質またはその特有の断片の使用、構造−活性相関に基づいた薬化学技術を用いる合理的なドラッグデザインなどであって、しかしこれらに限られない当該技術分野における周知の技術を利用することができる。本発明のポリペプチドを、従来の低能力スクリーニング法およびさらにハイスループットスクリーニング(HTS)フォーマット中で採用することができる。そのようなHTSフォーマットには、例えば、96ウエルおよび384ウエルマイクロタイタープレートが挙げられる(Bennett, et al., J. Mol. Recognition, 8: 52-58 (1995); および Johanson, et al., J. Biol. Chem., 270 (16): 9459-9471 (1995) を参照のこと)。BACE阻害剤を作成するために用いることができる典型的な方法は、WO 9967221, WO 9967220, WO 9967219, WO 9966934, WO 9932453, WO 9838177, WO 9828268, WO 9822494, WO 9822493, WO 9822441, WO 9822433, および WO 9822430 中に開示されている。化合物のコンビナトリアルライブラリーを作成するための方法は、Turner et al. Biochemistry 40: 10001-10006 (2001) またはGrueninger-Leicht et al., J. Biol. Chem. 277: 4687-4693 (2002) など参照文献中に、開示されている。
【0029】
BACE455阻害剤を、小分子阻害剤、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、iRNAおよび阻止抗体から選ぶことができる。したがって、BACE455の阻害には、インビボにおけるBACE455の転写、スプライシング、翻訳、および/または活性を阻害する薬剤の使用が含まれる。
【0030】
本発明は好ましくは、しかしそれに限られないが、BACE455の阻害において他の既知のBACEアイソフォームと比較して、2倍、または5倍、または10倍、または30倍、または100倍、または1000倍、または>1000倍の選択性のいずれかを発揮するBACE455阻害剤を目的とする。そのような阻害剤は、そのような選択性を欠く化合物、またはBACE455よりむしろネイティブのBACEを好んで阻害する化合物と比較して、改善された有用性を有する。BACE455を阻害する際に、2倍、5倍、10倍またはそれより大きな選択性を有する選択的BACE455阻害剤は、病理学的疾患の進行の阻害についてより大きな効能を有すること、病理学的でないAβ産生の阻害をより少なくすることにより副作用を減少すること、およびそのような化合物の選択性の増加により安全性を改善すること、を含む多くの利点を有する。
【0031】
BACE455タンパク質、核酸、これらの分子の特有の断片およびBACE455阻害剤を、神経病理学的症状を診断する目的で使用することができる。BACE455ポリペプチドまたは核酸、またはそれらの特有の断片に特異的に結合する化合物は、ADを発症しやすい個体の同定に役立つことができる。さらに、BACE455阻害剤を、治療効果を伴って、アルツハイマー病およびAβ40または42ペプチドのレベルの上昇に関連した症状、およびアミロイド斑中のペプチドの蓄積ならびに他の神経病理学的症状の治療および/または予防に用いることができる。
【0032】
本発明の別の局面では、エクソン4の新規な欠失、およびエクソン3および5の新規な連結部を、神経病理学的症状の実際の発症またはその可能性を診断および/または評価するために用いることができる。例えば、ヒト組織または体液のインビトロの核酸および/または抗体に基づいた、量的分析を含む分析の展開を通じて、患者がBACE455の産生および発現を含む神経病理学的症状に罹患しているか、または罹患しかかっているかどうかを判断することができる。そのような分析方法には、例えば、ノーザンブロット法、オリゴヌクレオチドベースの連結部アレイによる核酸検出法;RT−PCR、定量的PCRおよびライゲーションPCRおよび他の方法などの核酸増幅法、が含まれるが、これらに限られない。これらの方法には、新しいスプライシング連結部を含む領域を選択的にまたは特異的に検出することができるオリゴヌクレオチドプローブの使用が含まれてもよい。BACE455を、その特異的なリガンド、例えば新しいスプライシング連結部を含むBACE455の領域(1つの例としては、BACE455タンパク質のアミノ酸残基190〜235を含む領域)を特異的に認識する抗体を用いて直接検出することもできる。
【0033】
さらに別の実施態様では、本発明には、ネイティブのBACE501または他のアイソフォームよりもむしろBACE455アイソフォームまたはその特有の断片を特異的に発現する、バクテリア、昆虫および哺乳動物の細胞または細胞系統、およびヒト以外のトランスジェニック動物が含まれる。好ましい宿主細胞は哺乳動物細胞である。適当な哺乳動物細胞のそれらに限られない例には、マウス胚培養NIH3T3系統 (Jainchill et al. J. Virol. 4: 549-553 (1969))、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、ヒトの胚腎臓細胞系統293または神経芽細胞腫細胞系統SH−SY5Y細胞系統(Biedler et al. Cancer Res. 38: 3751-3757 (1978)) が含まれる。例えば、特異的にBACE455アイソフォームを発現している細胞系統を、(a)例えば発現カセットへクローニングされたBACE455の全長のcDNAを備えたpcDNA3ベクターなどのBACE455発現ベクターを興味のある細胞型へトランスフェクションすること、および(b)発現ベクターによってコードされた耐性遺伝子に対応する抗生物質または選択用薬剤を用いて、トランスフェクションされた細胞を選択すること、により得ることができる。安定した形質転換体によって構成されたクローンの細胞系統の生成の方法が、例えば Wigler et al. (Cell 11: 223-232 (1977)); Kriegler (Gene Transfer and Expression. Stockton Press, New York, New York (1990)) またはGramer & Goochee (Biotechnol. Prog. 9 (4): 366-73 (1993)) に開示されている。あるいは、トランスフェクションされた細胞を、BACE455活性をモニターするために一過性トランスフェクション分析に、それ以上の選別をすることなく用いることができる。トランスジェニック動物を、当該技術分野において既知のように、Sambrook et al.(Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor N. Y. (1988)) および Ausubel (Current Protocols in Molecular Biology (1989)) などの参照文献に記載されている、分子生物学技術分野で周知の方法を用いた組換え技術により、得てもよい。
【0034】
そのような細胞系統は、Aβプロセシングを妨げる化合物のための独創的なスクリーニングツールであり、またヒト以外のトランスジェニック動物は、Aβ依存性認知症の発症の研究のために、およびインビボにおけるAβ依存性疾患の進行を阻害する化合物の同定のために役立つであろう。
【0035】
発明の詳細な説明
最初の実施態様では、本発明はBACE455ポリペプチドのすべてまたは特有の断片を含むポリペプチドを目的とする。BACE455アミノ酸配列を、図1に表す。用語「BACE455」または「BACE455ポリペプチド」とは、野生型BACEペプチドをコードする遺伝子のエクソン4のすべてまたは一部の欠失を含む任意のBACEポリペプチド(好ましくはヒト起源の)を意味する。
【0036】
BACE455ポリペプチドの特有の断片の好ましい例は、アミノ酸配列 IARIIG(配列番号3)を含むものである。そのような断片のさらなる例は、アミノ酸配列 EIARIIG(配列番号4)を含むポリペプチドであり、典型的にはEIARIIGG(配列番号5)、AEIARIIG(配列番号6)、AEIARIIGG(配列番号7)、AEIARIIGGI(配列番号8)、YAEIARIIG(配列番号9)、YAEIARIIGG(配列番号10)および YAEIARIIGGI(配列番号11)から選ばれる配列である。大部分の好ましい断片は、少なくとも6、7、8、9個または10個のアミノ酸の長さである。
【0037】
特有のBACE455ポリペプチド断片を含む本発明のポリペプチドは、BACE455またはその変異体の全アミノ酸配列を含んでもよい。この文脈中の用語「変異体」とは、BACE455ポリペプチドの特有の断片、およびさらに図1に表した配列と比較して1個または数個のアミノ酸の突然変異、置換および/または挿入の結果、修飾されたアミノ酸配列を含む任意のポリペプチドを指す。典型的には、そのようなBACE455変異体はエクソン4のすべてを欠く。好ましい変異体は、自然発生の変異体、すなわち多型性、スプライシングなどに起因するBACEポリペプチドであり、それはエクソン4を欠く。本発明の最も好ましいポリペプチドは、ヒト起源であり、および/または図1のBACE455の1つの特性、特に少なくとも1つのBACE455−選択的な免疫学的性質および/またはβセクレターゼ活性を保持している。
【0038】
そのようなポリペプチドは、場合によっては、追加の残基または機能、例えば追加のアミノ酸残基、ラベル、タグ、スタビライザー、標的部分、精製用タグ、分泌ペプチド、機能化反応基などを含む化学的または生物学的基など(しかしそれらに限られない)を含んでもよい。そのような追加の残基または機能は、化学的に誘導体化され、融合タンパク質のアミノ酸配列領域として加えられ、複合体に形成され、またはそうでなければ共有結合でまたは非共有結合で結合されてもよい。さらに、それらが自然のまたは非自然のアミノ酸を含んでいてもよい。ポリペプチドは可溶の形であっても、あるいは基質、カラム、ビーズ、膜、細胞、脂質、もしくはリポソームなどの支持材に結合されて(または複合体化されて、または埋め込まれて)いてもよい。
【0039】
本発明のあるポリペプチドを、インビトロまたはインビボでAβペプチドの産生を引き起こすように用いてもよい。それらはまた、上に定義したようなBACE455ポリペプチドを特異的に検出し、結合し、または発現または活性に影響する特異的試薬、例えばペプチド、抗体(およびその誘導体)、アンタゴニスト、アゴニストなどを設計するために用いてもよい。ポリペプチドをまた、ワクチン組成物中の免疫原として、または特異抗体を生産し、検知し、投薬するために用いてもよい。
【0040】
さらに別の実施態様では本発明は、上に定義したBACE455ポリペプチドをその特有の断片も含めてコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドを含む。ポリヌクレオチドは、好ましくは哺乳類メマプシン2(BACE)タンパク質の断片を含むポリペプチドをコードし、前記ポリペプチドはエクソン4(全長のBACEタンパク質のアミノ酸190〜235によりコードされる)をすべて欠いている。そのようなポリペプチドの代表例は、図1(配列番号2)で述べたヌクレオチド配列のすべてまたは特有の断片を含む。
【0041】
本発明の特定の実施態様は、さらにBACE455RNA(あるいはその正確な相補的RNA)の特有の断片にストリンジェントな条件下で選択的にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む任意のポリヌクレオチドも含む。より好ましくは、そのような選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドが、βセクレターゼ活性を有するポリペプチドをコードする。ストリンジェントな条件とは、例えばハイブリダイゼーション・フィルターを約42℃で約2.5時間2×SSC/0.1%SDS中でインキュベーションし、続いてフィルターを4回15分間1×SSC/0.1%SDS中65℃で洗浄することをいう。用いるプロトコルは: Sambrook et al. (Molecular Cloning: a Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor N. Y. (1988)) および Ausubel (Current Protocols in Molecular Biology (1989))のような参照文献に記載されている。
【0042】
特に好ましい実施態様では、コードされたBACEポリペプチドは、ヒトBACEタンパク質の特有の断片を含む。
【0043】
本発明の核酸、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドは、DNAまたはRNA、例えばゲノムDNA、相補的DNA、合成DNA、mRNA、または例えば3’アルコキシリボヌクレオチド、メチルホスファネートなどの修飾されたヌクレオチドおよびペプチド核酸(PNAs)その他などを含むこれらのアナログなどであってよい。ポリヌクレオチドを、本出願に含まれる配列情報を用いて、化学的合成方法、インビトロの転写、または組換えDNAの方法などの、それ自体が周知の従来技術によって生成してもよい。特にポリヌクレオチドを、化学的オリゴヌクレオチド合成、ライブラリースクリーニング、増幅、ライゲーション、組換え技術およびそれらの組合せにより生成してもよい。
【0044】
本発明の特別の実施態様は、配列番号2として記載したアミノ酸配列を有する特有のBACE断片を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチドにある。
【0045】
本発明のポリヌクレオチドは追加のヌクレオチド配列、例えばBACE455ポリペプチドの発現を引き起こすかまたは調節するために用いることができる調節領域、すなわちプロモーター、エンハンサー、サイレンサー、ターミネーター、その他などを含んでもよい。
【0046】
本発明のポリヌクレオチドを、本発明の組換えポリペプチドを生成するために用いてもよい。それらをまた、プライマー、プローブ、あるいはアンチセンス分子(アンチセンスRNA、iRNA、アプタマー、リボザイム、その他を含む)などの、上に定義したBACE455ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを特異的に検出し、結合し、その発現に影響する特異的試薬を設計するために用いてもよい。さらにそれらを、治療用分子(例えば、遺伝子療法プログラムでエンジニアリングされたアデノウイルスまたはアデノ関連ウイルスベクターなどの、しかしそれに限定されないエンジニアリングされたウイルスの一部)として、あるいは、例えば、BACE455活性をモジュレートする薬剤のための化合物ライブラリーをスクリーニングする際に有用である組換え細胞または遺伝的に修飾されたヒト以外の動物を生成するために、用いてもよい。
【0047】
本発明のさらなる局面は、上に定義したBACE455ポリヌクレオチドを含む発現ベクターまたはリポーターベクターなどのベクターにある。そのようなベクターをプラスミド、組換えウイルス、ファージ、エピソーム、人工染色体その他から選んでもよい。多くのそのようなベクターが市販されており、またSambrook et al., Molecular Cloning (2d ed. Cold Spring Harbor Press 1989, 参照文献によりその全体が本明細書に組み入れられる) などのマニュアルに記載されている方法などの、従来技術において周知の組換え技術によって生成することができる。
【0048】
本発明のさらなる局面は、上に定義したポリヌクレオチドまたはベクターにより形質転換またはトランスフェクションされた宿主細胞にある。宿主細胞は、遺伝的に修飾することができ、また好ましくは培養できる任意の細胞でよい。細胞は、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、真菌、バクテリア細胞その他などの真核細胞または原核細胞でよい。代表例には、哺乳動物の一次細胞または株化細胞(3T3、CHO、Vero、Hela、その他)、ならびに酵母細胞(例えば、サッカロミセス種, クルイベロミセス(Kluyveromyces)、その他)およびバクテリア(例えば大腸菌)が挙げられる。本発明は、いかなる特定の細胞型に関しても限定はなく、共通の一般的知識に従いすべての種類の細胞に適用することができると理解されたい。
【0049】
核酸プローブ
本発明の特別な型のポリヌクレオチドは、BACE455ポリペプチドの特有の断片をコードする核酸またはその断片へ、厳格なハイブリダイゼーション条件下で選択的にハイブリダイズする核酸プローブである。従来技術において周知のように、「厳格なハイブリダイゼーション条件」はプローブの長さおよび生じるハイブリッド中のグアニン−シトシン対とチミン(ウラシル)−アデニン対との比率に依存する。
【0050】
本発明の文脈内で「プローブ」とは、BACE455RNAの特有の断片(あるいは正確にそれに相補的なヌクレオチド配列)と選択的ハイブリダイゼーションが可能なポリヌクレオチド配列を有する核酸またはオリゴヌクレオチドであって、前記RNAまたはその相補性物を含む任意の試料中のBACE455RNA(あるいはそれと正確に相補的な核酸配列を有する核酸)の存在を検出するために好適であるものを指す。プローブは、BACE455RNAの特有の断片に完全に相補的なことが好ましい。プローブは典型的には、長さが8〜1400ヌクレオチド、例えば10〜1000、より好ましくは15〜800、典型的には20〜600のヌクレオチドの一本鎖核酸を含む。またより長いプローブを用いてもよいと理解するべきである。本発明の好ましいプローブは、特異的にBACE455RNAの特有の断片にハイブリダイズすることができる長さが8〜600ヌクレオチドの一本鎖の核酸分子である。
【0051】
本発明の特別な実施態様は、エクソン4を欠くBACEのアイソフォームに対して選択的な核酸プローブであって、前記アイソフォーム遺伝子またはRNAに選択的にハイブリダイズし、全長のエクソン4を含む少なくとも1つの他のBACEアイソフォームに実質的にハイブリダイズしない核酸プローブ、およびこれらに正確に相補的な核酸プローブである。
【0052】
本発明のさらに特別な実施態様は、BACE455RNAに選択的な核酸プローブ、すなわち前記BACE455遺伝子またはRNAに選択的にハイブリダイズし、少なくとも1つの他のBACEアイソフォームに実質的にハイブリダイズしない核酸プローブ、およびこれらに正確に相補的な核酸である。
【0053】
選択性とは、核酸のハイブリダイゼーションを表すために用いるときには、プローブが少なくとも1つの他のBACEをコードする核酸に実質的にハイブリダイズせず、標的配列へハイブリダイゼーションできることを表す。
【0054】
本発明の好ましいプローブは、BACE455RNA(またはその正確な相補性物)の特有の断片に相補的な配列を含む。そのようなプローブの特別の例は、下記の核酸配列を含む:
ATTGCCAGGATCATTGGA
配列番号:12 。
【0055】
プローブの配列は、本出願で提供されるBACE455RNAの配列に由来することができる。プローブの化学修飾だけでなく、ヌクレオチド置換を行ってもよい。そのような化学修飾を、上に開示したように、ハイブリッドの安定性を増加させるために(例えば、2’−アルコキシリボヌクレオチドなどの挿入基、または修飾されたヌクレオチド)、またはプローブをラベルするために遂行してもよい。ラベルの代表例には、放射能、蛍光、発光、酵素的ラベル付け、その他が含まれるがそれらに限られない。プローブは、溶液、懸濁液中の、あるいはビーズ、カラム、プレート、基質(核酸アレイまたはチップ生成用の)などの、しかしこれらに限られない固体担体に結合された、標的とする核酸にハイブリダイズできる。
【0056】
1つの実施例において、BACE455RNAの特有の断片に正確に相補的な15塩基対のBACE455選択的オリゴヌクレオチドプローブを化学発光化合物、例えば一般に、Weeks et al., Clin. Chem. 29: 1474-1478 (1983), および Nelson et al., U.S. Pat. No. 5,658,737(参照文献により両者共に本明細書に組込まれる)に記載されている、アクリジニウムの N−ヒドロキシスクシンイミド (NHS) エステル(例えば、4−(2−スクシンイミジルオキシカルボニルエチル)フェニル−10−メチルアクリジニウム9−カルボキシラート フルオロスルホナート)などによりラベルする。リンカーアーム:ハイブリダイゼーションプローブ接合体の一級アミンと、選択したNHS−アクリジニウムエステルとの反応を以下のように行なう。上述のように合成したオリゴヌクレオチドハイブリダイゼーションプローブ:リンカーアーム接合体をSavant SPEED−VAC(登録商標)乾燥装置中で減圧乾燥し、次に50%(v/v)DMSO中の0.125M HEPES緩衝液(pH 8.0)8μlに溶かす。この溶液に、25mM の所望のNHS−アクリジニウムエステルを2μl加える。その溶液を混合し、37℃で20分間インキュベーションする。
【0057】
追加のDMSO中の25mMのNHS−アクリジニウムエステル3μlを溶液に加えて穏やかに混合し、次に0.1M HEPES緩衝液(pH 8.0)2μlを加え、混合し、そして試験管をさらに20分間37℃でインキュベーションする。反応を、DMSO中の0.1M HEPES緩衝液(pH8.0)中の0.125Mリジン5μlの追加により停止させ、それを穏やかに混合して溶液とする。
【0058】
ラベルされたオリゴヌクレオチドを、30μlの3M酢酸ナトリウム緩衝液(pH 5.0)、245μlの水および5μlの40mg/mlグリコーゲンの追加により、溶液から回収する。640μlの冷却100%エタノールを試験管に加え、試験管をドライアイス上に5〜10分間保持する。沈殿したラベルされたプローブを、標準ローターヘッドを用いて 冷却微量遠心器中で15,000rpmで沈殿させる。上清を吸引して除き、沈殿を0.1%(w/v)の硫酸ドデシルナトリウム(SDS)を含む0.1Mの酢酸ナトリウム(pH 5.0)20μl中に再溶解する。
【0059】
ラベルされたプローブの11 fモルを、様々な量(0.00、0.01、0.02、0.05、0.20、0.50、2、5、20、50、200、500、2000、および5000 fモル)の標的BACE455RNAにハイブリダイズさせる。各セットは、100mM コハク酸リチウム(pH 5.0)、8.5%(w/v)のラウリル硫酸リチウム、1.5mM EDTAおよび1.5mM EGTAを含む、100μlのハイブリダイゼーション反応液から成り、各反応混合液をそれぞれ50℃で50分間インキュベーションした。150mM Na247(pH 8.6)および1%(v/v)のTRITON(登録商標)X−100を含む300μlの溶液を各反応液に加え、混合液を50℃で11分間インキュベーションした。反応混合液を次にLEADER(登録商標)50照度計 (Gen-Probe, Inc.)に入れ、化学発光反応を各混合液に200μlの0.1%(v/v)のH22および1mM HNO3を、次に200μlの1.5NのNaOHを注入して開始した。第2の注入に続いて化学発光を300から650nmまでの波長範囲で2秒間読み取り、ネガティブとポジティブの対照標準と比較した。ネガティブ対照以上の有意性のある化学発光が、BACE455選択的なハイブリッドの存在を表す。
【0060】
核酸プライマー
本発明の他の選択的ポリヌクレオチドは、BACE455RNAの特有の断片を含む領域またはその正確な相補性物を増幅するための核酸プライマーである。そのようなプライマーを、BACE455選択的な核酸断片を増幅するために設計する。
【0061】
本発明の特定のプライマーは、アイソフォーム特異的な核酸配列領域、より好ましくはBACE455RNAのエクソン3とエクソン5の間の新しく形成された連結部から導かれる領域またはその正確な相補的領域の側面に位置するBACE455RNAの部分またはその相補性部分に、選択的にハイブリダイズすることができる。用語「側面に位置する」とは、その部分が標的領域から通常のポリメラーゼ活性と適合する距離だけ離れて、例えば新しく作成された連結部から300bp以下、好ましくは200、150、100bp以下離れて、さらに好ましくは、前記連結部から50bpだけ上流に、位置するべきであることを示す。そのようなプライマーの例は、配列番号1の中のヌクレオチド領域567−704の側面に位置する配列の一部を含むかまたはその部分に相補的である。そのようなプライマーの特異的な例には次の配列が含まれる:AGGCATCCTG(配列番号13)、GGGCTGGCCT(配列番号14)、ATGCTGAGAT(配列番号15)、TGCCAG(配列番号16)、GATCAT(配列番号17)、TGGAGGTATC(配列番号18)、GACCACTCGC(配列番号19)、TGTACACAGG(配列番号20)またはCAGTCTCTGG(配列番号21)。
【0062】
本発明の他の特定のプライマーは、BACE455RNAの特有の断片またはその正確な相補性物を含むアイソフォーム特異的領域、より具体的にはエクソン3とエクソン5の間の新しく作成された連結部から生ずるBACE455の領域と選択的にハイブリダイズすることができる。そのようなプライマーは、鋳型がアイソフォーム特異的変化を含む場合に限り、増幅が起こるという点で有利である。そのようなプライマーを用いることにより、増幅産物が検出されることはBACE455RNAの存在を示すことになる。対照的に、増幅産物が存在しないことが、特異的な変化が試料中に存在しないことを示す。そのようなプライマーの例は、次の配列のすべてまたは一部を含む:CAGGAT(配列番号22)、CCAGGATC(配列番号23)、GCCAGGATCA(配列番号24)またはATTGCCAGGATCATTGGA(配列番号25)。
【0063】
本発明のさらなる局面には少なくとも一対の核酸プライマーも含まれ、この一対のプライマーはセンスおよびリバースプライマーを含み、前記センスおよびリバースプライマーは、BACE455RNAまたはそのアイソフォームに特異的な部分、または正確な相補的配列の選択的増幅を可能にする。本発明のさらなる実施態様は、一対の核酸プライマーであり、この一対はセンスおよびリバースプライマーを含み、前記センスおよびリバースプライマーは、エクソン4のすべてまたは一部を欠くBACE RNAアイソフォームのすべてまたはアイソフォーム特異的部分の選択的増幅を可能にする。
【0064】
本発明の典型的なプライマーは、長さが約5〜60ヌクレオチドの、より好ましくは長さが約8〜約35ヌクレオチドの、さらに好ましくは長さが約10〜25ヌクレオチドの一本鎖核酸分子である。それらの配列は、本出願で開示されるBACE455のヌクレオチド配列から導出されるか、または直接推定することができる。完全な相補性が、高い特異性を保証するために好ましい。しかし一定のミスマッチは許容できる。
【0065】
阻害的核酸
本発明はさらに、BACE455ポリペプチドまたはその断片を含むポリペプチド(または機能的なエクソン4を欠く任意のBACEポリペプチド)の発現または活性を特異的に変更することができる核酸分子に関する。そのような阻害的核酸には、アンチセンス核酸、iRNA、リボザイム、アプタマーその他が含まれる。これらの阻害的核酸は、標的とするアイソフォーム遺伝子またはRNAの一部に相補的な配列を含み、それの転写または翻訳の特異的な減少を引き起こす。絶対的な相補性が好ましいが、必要ではない。
【0066】
そのような分子の生産および使用のための技術は当業者に周知であり、簡潔に下記に述べる。オリゴヌクレオチドを当該技術分野で既知の標準的方法により、例えば、自動DNA合成装置(Applied Biosystem社から市販されているものなど)を使用して合成することができる。例として、ホスホロチオ酸オリゴヌクレオチドをMatsukura et al.(Gene. 1988 72: 343-7)の方法などにより合成することができる。
【0067】
アンチセンスデオキシヌクレオチドが、所定の遺伝子の影響を研究するために広く用いられてきており(総説として、Stein & Cheng, Science 261: 1004-12 (1993)を参照のこと)、またエクソン−エクソン接合部および標的特異的なmRNAアイソフォームに用いることができる (Sugi et al. Dev. Biol. 157:28-37 (1993); Mahon et al. Exp Hematol. 23: 1606-11 (1995); Desire et al. J. Neurochem. 75: 151-163 (2000))。
【0068】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖の、DNAまたはRNAまたはそれらのキメラ混合物またはそれらの誘導体または修飾されたものであり得る。オリゴヌクレオチドは、例えば、分子、ハイブリダイゼーションなどの安定性を改善するために塩基部分、糖部分またはリン酸骨格を、(ホスホロチオ酸,ホスホロジチオ酸、ホスホルアミドチオ酸,ホスホルアミド酸,ホスホルジアミド酸,メチルホスホン酸,アルキル ホスホトリエステル およびホルムアセタール、またはそれらのアナログから成る群より選んで)修飾することができる。オリゴヌクレオチドは、他の追加のグループ、例えばペプチド(例えば、インビボで宿主細胞レセプターを標的とするための)、または細胞膜または血液脳関門を横切る輸送を促進する薬剤 (Letsinger (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86: 6553-6556)、ハイブリダイゼーション誘発切断剤 (Krol(1988) Bio. Techniques 6: 958-976)または挿入剤(Zon (1988) Ann. N. Y. Acad. Sci. 616: 161-72 (1990)) などを含んでいてもよい。
【0069】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、平行鎖中の相補的RNAと特異的二本鎖ハイブリッドを形成するαアノマーオリゴヌクレオチドでもよい (Gautier et al. (1987) Nucl.Acids Res. 15: 6625-6641)。オリゴヌクレオチドは、2’−O−メチルリボヌクレオチド (Mayeda et al. J. Biochem. 108: 399-405 (1990))、またはキメラRNA−DNAアナログ (Inoue et al.,(1987) FEBS Lett. 215: 327-330)である。
【0070】
遺伝子サイレンシングを、哺乳動物細胞中で小さい干渉RNAを用いて達成することもでき(Elbashir et al. Nature 411: 494-498; Brummelkamp et al. Science 296: 550-553 (2003))、そして、これは特定のアイソフォームの機能的関連性を研究するために選択的スプライシングの場面で成功裡に用いられてきた(Celotto & Graveley, RNA 8: 718-724 (2002))。
【0071】
リボザイムはRNAの特異的切断を触媒することができる酵素的RNA分子であり、それをさらに、標的遺伝子mRNAの翻訳、およびそれ故に、標的遺伝子産物の発現を防止するためにも用いることができる (Sarver et al. (1990) Science 247: 1222-1225; Rossi (1994) Current Biology 4: 469-471)。リボザイム作用の機構は、リボザイム分子の相補的な標的RNAへの配列特異的なハイブリダイゼーションとそれに続くエンドヌクレオチド分解的な切断事象を含む。ハンマーヘッドリボザイムは、標的mRNAと相補的塩基対を形成するフランキング領域によって決定された位置でmRNAを切断する修飾されたリボザイムである。ハンマーヘッドリボザイムの構造および産生は従来技術において周知であり、Haseloff and Gerlach, 1988 (Nature) 334: 585-591により完全に記述されている。
【0072】
これらの阻害的核酸を、本出願に開示された配列に基づいて設計することができる。
【0073】
特異的リガンド
本発明はまた、上に開示したようなBACE455アイソフォームまたはその特有の断片を選択的に結合するリガンドに関する。
【0074】
特異抗体、合成分子、アプタマー、ペプチド、その他などの種々の型のリガンドを考慮することができる。
【0075】
特別な実施態様では、リガンドは抗体、またはその断片または誘導体である。従って、本発明の特定の局面は、BACE455特異的なエピトープ、より好ましくはエクソン4(配列番号9のアミノ酸190〜235によってコードされる)のすべてまたは一部の欠失によって生成されたエピトープを特異的に結合する抗体にある。
【0076】
本発明の文脈内では、抗体とは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、並びに実質的に同じ抗原特異性を有するそれらの断片または誘導体を指す。断片には、Fab、Fab’2、CDR領域などが含まれる。誘導体には、1本鎖抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、多機能抗体その他が挙げられる。
【0077】
ヒトBACE455タンパク質に対する抗体を、従来技術において一般に知られている手順によって生成してもよい。例えば、ポリクローナル抗体を、タンパク質のみをまたは適当なタンパク質と一緒にヒト以外の動物中へ注入することにより生成してもよい。適当な期間の後、動物を瀉血し、血清を回収して、当該技術分野において既知の技術によって精製する (Paul, W.E."Fundamental Immunology" Second Ed. Raven Press, NY, p. 176, 1989; Harlow et al., "Antibodies: A laboratory Manual", CSH Press, 1988; Ward et al (Nature 341 (1989) 544 を参照のこと)。モノクローナル抗体を、例えば免疫Bリンパ球のミエローマ細胞への融合を含むケーラー・ミルシュタイン(2)技術 (Kohler-Millstein, Galfre, G., and Milstein, C, Methods Enz. 73 p.1 (1981)) により調製してもよい。例えば、上述の抗原をマウスに上述のようにして、マウス血清中にポリクローナル抗体反応が検出されまで注入することができる。再びマウスをブーストし、その脾臓を取り出し、様々な方法によってミエローマとの融合を行うことができる。個々の生き残ったハイブリドーマ細胞を、抗BACE抗体の分泌について、始めに免疫化抗原を結合する能力により、次に細胞からのBACEを免疫沈殿させる能力により、テストする。
【0078】
「BACE455ポリペプチドに選択的な」抗体とは、他のBACEアイソフォームより高度にBACE455ポリペプチドを選択的に結合する抗体、すなわち、BACE455ポリペプチドまたはそのエピトープを含む断片に対して生成された抗体を指す。他の抗原への非特異的結合が生じる可能性があるが、標的とするBACE455ポリペプチドへの結合がより高い親和性で生じ、信頼性を持って非特異的結合と識別することができる。好ましい抗体は、エクソン3とエクソン5の間の新しく生成された連結部位を含むBACE455特異的領域に選択的である。前記領域に選択的な抗体が、試料中のBACE455ポリペプチドの存在の検出を可能にする。リガンドを溶解した形で、または表面または支持体上に被覆して、用いてもよい。
【0079】
合成阻害剤の特別の例には、グリーベックおよびブレフェルジンAが含まれる。ペプチド阻害剤の特別の例がBACE阻害剤III(配列番号3)である。
【0080】
検出と診断
本発明は、とりわけ試料または被検者中のBACE455または対応する核酸の存在、非存在または存在量を検知するために用いることができる検出用または診断用分析を実施することを可能にする。用語「診断」とは、哺乳類(好ましくはヒト)の試料中のBACE455アイソフォーム、対応する核酸、およびこれらの断片の検出方法、診断方法(質的または量的のどちらかの)、薬理ゲノミクス、予後診断その他を含むものである、と解釈してほしい。
【0081】
特定の局面においては、本発明は、試料中の、好ましくはヒト組織の試料中の、BACE455の核酸またはポリペプチドまたはこれらの断片の検出方法であって、前記試料をそれらの特異的なリガンドと接触させること、および複合体形成を測定することを含む検出方法に関する。
【0082】
本発明の特定の目的は、被検者における神経変性疾患または関連する障害の存在、あるいはそれらに対する素質、を検出する方法であって、被検者から得た試料中の特有のBACE455核酸またはポリペプチド、特にエクソン4をすべて欠くBACEアイソフォーム、さらにより好ましくは、それぞれ配列番号1のポリヌクレオチド配列または配列番号2のアミノ酸配列を有するBACEアイソフォーム、の存在を検出することを含む方法である。
【0083】
本発明の別の実施態様は、被検者の神経変性疾患または関連する障害の治療に対する応答を評価する方法であって、治療の前および治療中の様々な時に被検者から得た試料中の特有のBACE455の核酸またはポリペプチドの存在を検出することを含む方法、を目的とする。
【0084】
本発明はまた、神経変性疾患または関連する障害の治療の有効性を決定する方法であって、(i)前記治療中またはその治療後に被検者から得た組織試料を用意すること、(ii)前記試料中のBACE455の核酸またはポリペプチドまたはそれらの特有の断片の存在および/または存在量を測定すること、および(iii)前記存在および/または存在量を、治療に先立ってまたは初期段階で前記被検者から得た参照試料中のそのような核酸、ポリペプチドまたは断片の量と比較すること、を含む方法に関する。
【0085】
試料中に特有のBACE455ポリペプチドまたは核酸が存在すること(あるいはその増加)は、神経変性疾患または関連する障害の存在、素質または進行段階を示す。したがって、本発明は、より有効で個別に対応している適切な治療的介入の設計を可能にする。さらに、徴候が出る前のレベルでのこの測定が、予防的措置を適用することを可能にする。
【0086】
試料中の特有のBACE455ポリペプチドまたは核酸の、存在、非存在、または相対的存在量の測定を、様々な技術により行なうことができる。より好ましくは、この測定は、試料を上に定義したプローブ、プライマーまたはリガンドなどのBACE455の選択的試薬と接触させること、そしてそれにより、はじめから試料中に存在したBACE455ポリペプチドまたは核酸の存在を検出することあるいは存在量を測定することを含む。接触を、プレート、マイクロタイターディッシュ、試験管、ウエル、グラス、カラムその他の任意の適当な装置中で行なうことができる。特別の実施態様では、接触を、核酸アレイまたは特異的リガンドアレイなどの試薬で被覆された基質上で行なう。基質は、ガラス、プラスチック、ナイロン、紙、金属、ポリマーその他を含む任意の適当な支持体などの、固体または半固形基質でよい。基質は、スライド、メンブレン、ビーズ、カラム、ゲルその他などの様々な形およびサイズでよい。接触は、試薬と試料中の核酸またはポリペプチドとの間で形成される、核酸ハイブリッドまたは抗体抗原複合体などの、検出可能な複合体にとって適切な任意の条件下で行えばよい。
【0087】
ある特別の実施態様では、方法は、上述のように被検者から得た試料を、BACE455選択的抗体(で被覆された支持体)と接触させること、および免疫複合体の存在を測定することを含む。免疫複合体を検出するための様々な周知の方法、例えばELISA、ラジオイムノアッセイ(RIA)など、を用いることができる。
【0088】
別の特別の実施態様では、方法は、上述のように、被検者から得た試料を、BACE455選択的核酸プローブ(で被覆された支持体)とハイブリダイゼーションが生じることが可能な適当な条件下で接触させること、およびハイブリッドの存在を測定することを含む。
【0089】
別の特別の実施態様では、方法は、被検者から得た試料を、核酸増幅が起こることが可能な条件下で上に定義した核酸プライマーと接触させること、および増幅産物(「アンプリコン」)の存在を測定すること、を含む。増幅を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写を介する増幅(TMA)、鎖置換増幅(SDA)および核酸配列に基づく増幅(NASBA)などの(しかしこれらに限られない)、従来技術において元来知られた様々な技術により行なうことができる。
【0090】
試料中の核酸を検出する適当な方法には下記の方法が含まれる(しかしこれらに限られない):対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチド(ASO)、対立遺伝子特異的増幅、サザンブロット(DNA用)、ノーザンブロット(RNA用)、一本鎖構造解析(SSCA)、蛍光インサイチュ・ハイブリダイゼーション(FISH)、ゲル泳動、固定変性ゲル電気泳動法、ヘテロ二本鎖分析など。
【0091】
本発明の診断方法を、インビトロ、エクスビボ、またはインビボで、好ましくはインビトロまたはエクスビボで遂行することができる。試料は、それぞれに見合った核酸またはポリペプチドを含む被検者由来の任意の生物学的試料でよい。そのような試料の例には、体液、組織、細胞試料、器官、生検などが含まれる。最も好ましい試料は血液、血漿、唾液、尿、精液、その他である。出生前診断を、例えば胎児細胞または胎盤細胞の検査により行なってもよく、試料を従来技術によって集め、診断に直接用いるかまたは貯蔵しておいてもよい。試験用の核酸またはポリペプチドの有効性を与えるため、または改善するために、方法を実施する前に試料を処理してもよい。処理には、例えば、細胞融解(例えば、機械的、物理的、化学的その他)、遠心分離、抽出、カラムクロマトグラフイー、その他、の1つ以上が含まれていてもよい。
【0092】
治療方法
APPベースの基質の切断に加えて、組換えヒトBACEは、さらに配列 LVNM/AEGD、即ちヒトプレセリニンのインビボのプロセシング部位配列である配列を有する基質を切断する(Lin et al. Proc Natl Acad Sci U S A. 97 (4): 1456-1460 (2000))。プレセリニン1およびプレセリニン2は、未知のプロテアーゼによってプロセシングされ、続いて安定化される不安定なタンパク質である(Capell et al., J. Biol. Chem. 273, 3205 (1998); Thinakaran et al., Neurobiol. Dis. 4,438 (1998))。プレセリニンがγ−セクレターゼ部位でAPPを切断することによりAβペプチド形成を制御するだけでなく、BACE活性についても知られている。プレセリニンはしたがって、アルツハイマー病の進行を促進する。したがって、BACEによるプレセリニンのプロセシングがAβペプチドの生産を向上させ、したがって、さらにアルツハイマー病の進行を刺激する。したがって、BACE阻害剤は、β−セクレターゼ部位でのAPP切断を阻害することにより、および/(または)プレセリニンのプロセシングを防止し、それ故間接的にγセクレターゼ部位でのAPP切断を阻害することにより、アルツハイマー病の発症の可能性を減少させるかまたは進行を遅延させるであろう。
【0093】
本発明のさらなる目的は、BACE455阻害剤を含む医薬組成物、好ましくはBACE455選択的阻害剤および薬学的に許容される担体または媒体を含む医薬組成物である。特別の実施態様では、本発明は(i)上述のBACE455特異的リガンドまたはBACE455阻害的核酸分子および(ii)薬学的に許容される担体または媒体を含む、医薬組成物に関する。
【0094】
本発明はまた、被検者の神経変性疾患または関連する障害を治療あるいは予防する方法であって、前記被検者に有効量のBACE455選択的阻害剤を投与することを含む方法に関する。
【0095】
本発明の別の実施態様は、被検者のAβペプチドの産生または蓄積を治療または予防する方法であって、前記被検者に有効量のBACE455選択的阻害剤を投与することを含む方法にある。
【0096】
本発明はさらに、一般的に、被検者における神経変性疾患または関連する障害の治療または予防のための医薬組成物の製造における、BACE455選択的阻害剤の使用に関する。
【0097】
本明細書全体に亘り、最も好ましくは、被検者はヒトの被検者である。
【0098】
BACE455選択的阻害剤は、被検者中の、BACE455ポリペプチドまたはその特有の断片の発現または活性を低下させる;あるいはBACE455の核酸またはその特有の断片の発現、転写または翻訳を低下させる、任意の薬剤、条件または治療でよい。最も好ましくは、BACE455選択的阻害剤は特異的である、すなわち、BACE455アイソフォームの発現または活性を優先的に変化させ、事実上他のBACEスプライシングアイソフォームの発現を直接に変化させない。しかし、阻害剤は野生型BACEの発現または活性に多かれ少なかれ影響してもよい。
【0099】
少なくとも1つの他のBACEアイソフォームの活性に対するよりも、BACE455活性の阻害に2倍、または5倍、または10倍、または30倍、または100倍、および/または >1000倍の選択性を示すBACE455選択的阻害剤は、そのような選択性を欠くか、著しく野生型BACEの活性を低下させる化合物と比較して、改善された有効性を有する。BACE455活性を阻害し、野生型BACEと比較してBACE455の阻害に2倍以上の選択性を有する阻害剤は、病理的疾患の進行を阻止するより大きな効力、病理的ではないAβ産生のより少ない阻害による副作用の減少、および化合物の選択性の増加による安全性の改善を含む(しかしそれらに限られない)、多くの自明ではない利点を有する。阻害剤を、例えばアルツハイマー病並びにAβ40または42ペプチドの上昇したレベルおよびアミロイド斑中のペプチドの蓄積に関連した他の症状を含む症状の予防的または治療的処置の目的で用いることができる。BACE455阻害剤を、ペプチド、タンパク質、核酸、小さな薬物その他から選んでもよい。代表例には、上に開示した阻害的核酸および抗体、ならびに小さな薬物が含まれる。以下に開示するようなスクリーニングのアプローチを用いて、そのような薬物の特性を決定しまたは確認することができる。それらを既存の分子のライブラリーから得てもよいし、または、有機化学および酵素学の当業者によく知られている市販のソフトウエアプログラムおよび技術を用いて、それらを設計することができる。阻害剤を生成する方法は、コンビナトリアル・ケミストリー、分子ライブラリーのスクリーニング、合理的ドラッグデザインを含んでもよい(しかしそれらに限られない)−これらのスクリーニング法はBACE455ポリペプチドまたは核酸、またはこれらの断片を、適切な治療薬候補の選択のための分析の要素として使用してもよい。BACE455を阻害する方法は、小さな分子阻害剤、ペプチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、iRNA、リボザイムおよび遮断抗体、即ちBACE455タンパク質レベル、活性を減少させるか、あるいは脳に自然に存在する基質の切断を阻止する薬剤の使用を含んでもよい、しかしそれらに限られない。
【0100】
特別の実施態様では、BACE455阻害剤がBACE455を結合する抗体である。抗体を、従来技術において元来知られている様々な技術により生成することができる。特に、ヒト以外の動物をBACE455ポリペプチドまたはその特有の断片により免疫化すること、および前記動物から抗体または抗体産生細胞を集めることを含む方法により、それを生成してもよい。抗体は、実質的に同じ抗原特異性(すなわち、BACE455を結合する能力)を有するモロクローナル、ポリクローナル、ならびにそれらの断片または誘導体でよい。抗体断片は、Fab、Fab’2、CDRなどを含む。抗体誘導体は一本鎖抗体(ScFv)、ヒト化抗体、ヒト抗体、組換え抗体、二重特異的抗体などを含む。一本鎖抗体産生のために記載された技術 (U.S. Pat. No. 4,946,778; Bird, Science 242: 423-42 (1988); Huston et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 5879-5883 (1988); および Ward et al., Nature 334: 544-54 (1989)) を、一本鎖抗体を産生するために適用することができる。一本鎖抗体を、Fv領域の重鎖および軽鎖断片をアミノ酸ブリッジを介してリンクすることにより一本鎖ポリペプチドを生成することにより形成する。大腸菌(E. coli)中で機能的Fv断片をアセンブルする技術を用いてもよい(Skerra et al., Science 242: 1038-1041 (1988))。さらに、適切な抗原特異性を有するマウス抗体分子の遺伝子を適切な生物活性を有するヒト抗体分子の遺伝子と共にスプライシングすることによる「キメラ抗体」の産生のために開発された技術 (Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81: 851-855 (1984); Neuberger et al., Nature 312: 604-608 (1984); Takeda et al., Nature 314: 452-454 (1985))を用いることができる。キメラ抗体は異なる部分が種々の動物種に由来する分子、例えばマウスmAbに由来する可変領域およびヒト免疫グロブリン不変領域を有する分子(例えばヒト化抗体)などである。
【0101】
ヒト抗体がヒト患者の治療処置に望ましい。ヒト抗体を、ファージディスプレー法を含む、様々な当該技術分野で公知の方法 (Brinkman et al., J. Immunol. Methods 182: 41-50 (1995); Ames et al., J. Immunol. Methods 184:177-186 (1995); Kettleborough et al., Eur. J. Immunol. 24: 952-958 (1994); Persic et al., Gene 187 9-18 (1997); Burton et al., Advances in Immunology 57: 191- 280 (1994); PCT publications WO 90/02809; WO 91/10737) により、ヒト免疫グロブリン配列由来の抗体ライブラリーを用いて作成することができる。そのような抗体を生成する方法は、限定されない次の参照文献:Harlow et al (Antibodies: A laboratory Manual, CSH Press, 1988; Ward et al (Nature 341 (1989) 544)) に示されるように、文献において周知である。最も好ましい抗体は、選択的にBACE455を結合する、例えば他のBACEアイソフォームと比較して、BACE455に特有なエピトープを結合する。
【0102】
別の特定の実施態様において、BACE455阻害剤は、BACE455遺伝子またはRNA、好ましくはBACE455RNA、を結合し、それの転写または翻訳を阻害するか低下させる阻害的核酸である。そのような阻害的核酸を上に開示したようにして生成することができる。それらは、好ましくは、上に開示したようなBACE455RNA分子の特有の断片にハイブリダイズする配列を含む。
【0103】
別の実施態様において、BACE455阻害剤は、BACE阻害剤III(配列番号3)などの選択的阻害剤である。
【0104】
BACE455阻害剤を、製薬学的用途に合致する任意の適当な希釈剤、賦形剤、担体または媒体中に調剤してもよい。この点ついては、本発明はさらにBACE455阻害剤を含む組成物を作成する方法であって:
i)BACE455を阻害する化合物を選択すること、
ii)前記化合物を生産すること、および
iii)前記化合物をその薬学的に許容される塩と混合すること、
を含む方法を目標とする。
【0105】
本発明のBACEを阻害する化合物を経口で、そのような投与にこの分野で公知の任意の薬学的に許容される剤形を用いて、投与することができる。媒体は、シロップ剤または水性懸濁液などの、等張液、緩衝液および食塩水を含む任意の溶液、懸濁液、粉末、ゲルなどでよい。化合物を、全身への送達、静脈内注入、動脈内注入、大脳内注入、または髄腔内注入を含む任意の適当なルートにより投与することができる。所望であれば、反復注入を行なってもよい。用量は広い範囲内で変化することができ、個々の特定の症例において個人の必要性に応じて当業者に既知のいくつかの因子に依存して調節しなければならないことになる。活性化合物の用量を決定する因子は、特定の薬剤の薬動力学的特性およびそれを投与する様式および経路;受容者の年齢、健康および体重;症状の特性および重篤さ;併用療法の種類;治療の回数;および望まれる効果、であり得る。有効成分の一日当たりの用量は、体重の1キログラム当たり約0.001〜約1000ミリグラムであり、好ましい用量は約 0.1〜約30mg/kgであると予想することができる。毎日の経口用量は、化合物の1日当たり約0.01mg〜1000mg、0.1mg〜100mg、または10mg〜500mgまで変化し得る。一日量を一回量として、または分割して投与すればよく、さらにこれが必要であると分かったときは上限を超過することができる。
【0106】
本発明の化合物を、錠剤、カプセル剤(その個々は徐放性または持続性放出製剤を含むことができる)、ピル、粉末、顆粒、エリキシル剤、チンキ剤、懸濁液、シロップ剤および乳剤などのような経口剤形で投与することができる。同様に、静脈内(ボーラス注入または点滴)、腹腔内、皮下、筋肉内の形で、すべて製薬技術における当業者に周知の剤形を用いて、それらを投与してもよい。有効であるが無毒である量の所望の化合物を、アルツハイマー病およびダウン症候群などのベータアミロイドの産生または蓄積に関連した神経学的障害を予防または治療するために使用することができる。
【0107】
化合物を単独で投与することができるが、一般に標準の薬学的慣行に従って(Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing に記載などの)薬学的担体と共に投与する。
【0108】
BACE455を阻害する化合物を、活性薬剤と、ヒトまたは哺乳動物などの宿主の体内における薬剤の作用部位との接触を生じさせる任意の手段により投与することができる。それらを、調合薬と同時の使用に利用できる任意の従来の手段により、個々の治療薬としてまたは治療薬の組合せで、単独で、または選ばれた投与経路および標準の薬学的慣行に基づいて選択された薬学的担体と共に投与することができる。
【0109】
本発明のBACE455を阻害する化合物を、適当な鼻腔内媒体を局所的に使用する鼻腔内形式で、または当業者の周知技術である経皮的な皮膚貼付剤形式を用いる経皮的な経路により投与することができる。
【0110】
活性化合物を含む錠剤またはカプセルの形の経口投与は、ラクトース、デンプン、ショ糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、マニトール、ソルビトールその他などの、経口的な、無毒で薬学的に許容される不活性の担体と組み合わせることができるし; 液体の形での経口投与については、経口薬物成分を、エタノール、グリセロール、水、その他などの、任意の経口的な、無毒で薬学的に許容される不活性の担体と組み合わせることができる。さらに、望ましいときあるいは必要なときに、混合物に適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤を組み入れることができる。上述の甘味料、および香料を、味の良い経口調合薬を提供するために加えてもよい。これらの組成物を、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはαトコフェロールなど酸化防止剤を加えて保存してもよい。適当な結合剤には、デンプン、ゼラチン、グルコースまたはβラクトースなどの自然の糖、トウモロコシ甘味料、アラビアゴム、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウムのような天然ゴムおよび合成ゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスその他、が挙げられる。これらの剤形中で用いられる滑沢剤は、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムその他を含む。崩壊剤には、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムその他が含まれるが、これに限られない。
【0111】
BACE455を阻害する化合物を、小さな単層の小胞、大きな単層の小胞、および多層小胞などのリポソーム微粒子送達システムの形で投与することができる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの様々なリン脂質から形成することができる。あるいは、本発明の化合物をさらに、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミド−フェノール、またはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシド−ポリリジン、でできたポリマーなどの、標的へ向かうことができる薬担体としての可溶性ポリマーと結合させてもよい。ポリマーはさらに、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸・ポリグリコール酸コポリマー、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリシアノアシル酸(polycyanoacylates)その他、あるいはヒドロゲルのブロックコポリマーなどの、薬物の放出制御を達成するために役立つ生物分解性ポリマーのクラスに属してもよい。
【0112】
本発明のための化合物を、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸その他を粉末の担体として加えてゼラチン・カプセル剤へ調製してもよい。同様の希釈剤を、圧縮錠剤を作るために用いることができる。錠剤およびカプセル剤の両方を、何時間もの間にわたる薬物の連続的な放出を提供する徐放性製剤として、製造することができる。圧縮錠剤は、砂糖またはフィルムで被覆して、任意の不快な味をマスクしかつ環境から錠剤を保護したり、または胃腸管中での選択的な分解のために腸溶性被覆をすることができる。経口投与用の液体剤形は、患者による受容を増すために着色剤および香味料を含むことができる。一般に、水、適当な油、食塩水、デキストロース(グルコース)水溶液、ならびに関連する糖溶液およびプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールは、非経口溶液にふさわしい担体である。非経口投与のための溶液は、好ましくは有効成分の水溶性塩類、適当な安定化剤、および必要なら緩衝物質を含む。亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウムまたはアスコルビン酸などの抗酸化剤は、単独であるいは組み合わせて、適当な安定化剤である。さらにクエン酸およびその塩およびEDTAナトリウムも用いられる。さらに、非経口溶液は、塩化ベンザルコニウム、メチルまたはプロピルパラベン、およびクロロブタノールなどの保存剤を含むことができる。本発明の治療用組成物および方法を、アルツハイマー病、認知症、緑内障、パーキンソン病、ALSおよび卒中などの(しかしそれらに限られない)病理学的疾病の進行を阻止するために用いることができる。本発明の文脈内では、用語「治療」とは、神経学的障害の進行の初期あるいは後期を含む段階における、その予防または治療処置を指す。治療は、疾病の進行を遅らせること、Aβペプチドの産生または蓄積を減少させること、患者の症状を改善することなどを含む。治療を単独でまたは他の活性薬剤と組み合わせて用いることができる。
【0113】
薬物スクリーニング
別の実施態様では、本発明はさらに、薬物候補またはリード化合物のスクリーニングのための新規な標的および方法も提供する。その方法は、結合分析および/または機能的(活性)分析を含み、またインビトロで、細胞システムで動物中などで行なわれてもよい。
【0114】
本発明の特定の目的は、生物学的活性化合物の選択、特性決定、スクリーニング、または最適化の方法であって、インビトロで試験化合物を特有のBACE455核酸、ポリペプチドまたはこれらのうちの一つの断片と接触させること、および前記試験化合物が前記BACE455核酸またはポリペプチドに結合し、および/または前記BACE455核酸またはポリペプチドの活性に影響を及ぼす能力を測定することを含む前記方法にある。結合のみで化合物が前記標的の活性をモジュレートする、したがって神経変性障害をもたらす経路に影響する能力に関していくらかの示唆を提供する(非結合性のアロステリック阻害剤もまた、本発明の治療方法において有用かもしれないし、本発明の治療方法の範囲内に含まれているが)。現在の好ましい実施態様では、方法が、インビトロで試験化合物を特有のBACE455ポリペプチドまたはその断片と接触させること、および前記試験化合物の前記ポリペプチドまたは断片を結合する能力を測定することを含む。断片は好ましくはアイソフォーム特異的領域および/または触媒領域を含む。
【0115】
結合の測定を、試験化合物のラベルを付けること、ラベルした参照リガンドとの競合、または結合複合体を検出する他の直接または間接の手段などの様々な技術により実施できる。
【0116】
本発明のさらなる実施態様は、生物学的活性化合物を選択し、特性決定し、スクリーニングし、または最適化する方法であって、インビトロで試験化合物をBACE455ポリペプチドと接触させること、および前記試験化合物が前記ポリペプチドの活性をモジュレートする能力を測定することを含む方法にある。特別の実施態様では、試験化合物をBACE455ポリペプチドとBACEの基質(例えば、APPまたはそれの適当な断片)の存在下で接触させ、BACE455活性、例えばタンパク質分解活性、の任意の変化を観察する。好ましい実施態様では、方法は、試験化合物がBACEを介する基質の加水分解に選択的に影響するかどうかを判断することを含む。典型的にはそのテストを、BACE455ポリペプチドを発現する細胞(例えば組換え宿主細胞)を用いて行なう。
【0117】
本発明のさらなる実施態様は、生物学的活性化合物を選択し、特性決定し、スクリーニングし、および/または最適化する方法であって、試験化合物をBACE455RNAと接触させること、および前記試験化合物が前記BACE455RNAの翻訳をモジュレートする能力を測定することを含む方法にある。
【0118】
化合物の選択性を、全長のエクソン4を含む他のBACEスプライシングアイソフォームに対するその影響を測定することにより評価できる。
【0119】
上記のスクリーニング分析を、プレート、チューブ、ディッシュ、フラスコその他などの任意の適当な器具で実施できる。典型的には、マルチウエル・マイクロタイターディッシュ中で分析を行なう。本発明を用いていくつかの試験化合物を平行して分析することができる。更に試験化合物は様々な起原、特性および組成であってもよい。それは他の物質から単離されたまたは他の物質との混合物中の、脂質、ペプチド、ポリペプチド、核酸、小分子などの任意の有機または無機物質でよい。化合物は、例えば化合物のコンビナトリアルライブラリーのすべてまたは部分でよい。
【0120】
本発明のさらなる局面および利点を次の実施例において開示することにする。それらは実例を挙げるためであって、本出願の範囲を制限するものではないと見なすべきである。本明細書および実施例の全体にわたって引用したすべての文献、特許または特許出願の全内容を参照文献により本明細書に組込む。
【0121】
実施例
【実施例1】
【0122】
DATAS技術が、ヒトBACE中の選択的スプライシング事象を同定する。
発現プロファイリング研究用のDATAS技術(詳細は、例えば Patent Number US 6,251,590に記載;これは参照文献により本明細書に組込まれる)を、よく特性決定されたAD患者および健全な対照者の前頭前皮質中に存在する選択的スプライシングされたRNAを比較するために用いた。対照被検者は認知症でなく、年齢が一致し、また、脳組織はプロファイリング研究において年齢に関連した変化およびmRNA安定性に関連した変化を除去するために死後同程度経過していた。
【0123】
EXH−NADC5033 DATAS断片を、BACE501タンパク質(変異アイソフォーム)のコード配列を含むNM_012104とアラインメントする。これらの2つの配列中の差異により、EXH−NADC5033変異体の存在はADに罹患している患者の脳中の正常なRNAスプライシング事象の調節不全を表している。
【0124】
BACE配列のエクソン3および4のレベルの様々な選択的スプライシング事象を通して、種々のアイソフォームが以前に記載されている(転写変異体−aから−d)(Bodendorf et al., J Biol Chem. 276 (15): 12019-12023 (2001), Zoharet al., Brain Res. Mol Brain Res. 115 (1): 63-68 (2003), Tanahashi and Tabira, Neurosci Lett. 307(1) : 9-12 (2001), 参照文献によりこれらは本明細書に取り入れられる)。
【0125】
次のプライマーを、このDATAS断片に関連した選択的RNAスプライシング事象の存在を確認するために用いた:DATAS断片を包含する核酸断片の増幅用の、PR_NM_012104−F01(BACE501コード配列3760−3780の位置)(配列番号26)およびPR_NM_012104−R01(BACE501コード配列4312−4330の位置)(配列番号27)、および以前に同定された選択的スプライシング事象(転写変異体−aから−dまで)(Bodendorf et al., J Biol Chem. 276 (15): 12019-12023 (2001), Zoharet al., Brain Res. Mol Brain Res.115(1): 63-68 (2003), Tanahashi and Tabira, Neurosci Lett.307(1): 9-12 (2001)) に用いられたRNA部位を包含する核酸断片の増幅用の、PR_NM_012104−F02(BACE501コード配列698−716の位置)(配列番号28)およびPR_NM_012104−R02(BACE501コード配列1158−1178の位置)(配列番号29)。
【0126】
よく特性決定されたAD患者の前頭前皮質から分離されたヒト脳からの全RNAを、Trizol(Invitrogen) を用いて単離した。1μgのRNAを、Superscript RT kit (Invitrogen) を用いて、35μl中42℃で1時間逆転写し、続いて1μl RNAse1(Promega)と15分間37℃でインキュベーションした。PCRを、逆転写物の1/10について、1.5mM MgCl2、0.2mMdNTP、1μMの各プライマーと行った。条件は次のとおりであった:94℃で3分、ならびに94℃で30秒、60℃で30秒および72℃で45秒を30サイクル。72℃で5分の最終の伸長後、全長のcDNAに対応するPCR断片を1.5%アガロースゲル上で解析し、TOPO TAクローニング・キット(Invitrogen)を用いてTOPO TAベクターへクローニングし、ライゲーション産物をTOP10 E. coli細胞(Invitrogen)中へ形質転換した。細胞を、96ウェルプレート中37℃で終夜成長させ、コロニーを採り、終夜37℃で2XTY細菌培地中アンピシリン存在下増殖させた。
【0127】
シーケンシングに先立って、SP6およびT7プライマー(各1μM, Invitrogen)を用いるPCRを、各培養物の1μl分取標本について、55℃で30サイクル行った。5μlのPCR反応物を1.5%アガロースゲルで泳動させ、残りのPCR産物をP100 Bio-Gel(Biorad) カラムで精製した。シーケンス反応をABI Prism Big Dye Terminator Cycles Sequencing Ready Reaction キット、バージョン3.0(Aplera) を用いて行い、また反応生成物をG50セファデックス・カラム (Amersham) で精製し、3100 Genetic Analyser Sequencer(Applied Biosystems) で解析した。
【0128】
すべてのPCR産物のバッチ・クローニングおよびシーケンシングにより、BACE501転写変異体aおよびbならびに新しいアイソフォームに対応する2つの異なる転写物の存在が明らかになった。
【0129】
一部がDATAS断片によってコードされるタンパク質の解析を、DATAS断片がBACE501とBACE455の間の変異座位であったと仮定して導出した。このタンパク質は、Sinha et al., Nature 402, 537-540 (1999) および Vassar et al., Science 286, 735-741 (1999)(それらの両方を参照文献により本明細書に組込む)により記述されたアスパラギン酸プロテアーゼ2 BACE(またはASP2)への高いホモロジーを示す。BLAT(Kent, Genome res. 12: 656-664 (2002)) などの公開のバイオインフォマティック・ツールを用いた、Genbank、DDBJ(日本のDNAデータバンク)およびEMBL(ヨーロッパ分子生物学研究所)などの様々な公開のETSデータベースの検索、または市販の DoubleTwist Annotated Human Genome Databace および DoubleTwist Annotated Human and Mouse Gene Indices(DoubleTwist, Inc によって生成された)を用いた探索によっては、新しい転写アイソフォームを同定することはできなかった。新しい転写アイソフォームを文献 (Bodendorf et al., J Biol Chem. 276(15):12019-12023 (2001), Zoharet al., Brain Res Mol Brain Res. 115(1):63-68 (2003), Tanahashi and Tabira, Neurosci Lett. 307(1):9-12 (2001)) の命名法に従いBACE455と命名した。BACE501および他のアイソフォームとのアラインメントに基づき、BACE455転写物はエクソン4を欠くと決定された。
【実施例2】
【0130】
ヒトBACE455、即ちBACEの新しい選択的スプライシング形、の分子クローニング
続いて全長のBACE501 cDNAおよびBACE455 cDNAを、アルツハイマー病の脳から得た同じ出発材料からGC−RICH−PCRシステム (Roche Molecular Biochemicals) を用いてクローニングした (Capell et al., J. Biol. Chem. 275: 40, 30849-30854 (2000))。逆転写RNA(実施例1参照)を、次のプライマー:PR_NM_012104−F03(BACE501コード配列442−459の位置)(配列番号6)およびPR_NM_012104−R03(BACE501コード配列1971−1984の位置)(配列番号7)を1μM 濃度で用い、1.5mM MgCl2存在下、メーカーの仕様書を用いて増幅した。BACE501およびBACE455の全長のcDNAに対応するPCR産物を実施例1に記載したようにTOPO TAベクター中へクローンニングし、SP6およびT7プライマー、ならびにプライマーPR_NM_012104−F01(配列番号26)、(PR_NM_0l2104−F02(配列番号28)およびPR_NM_012104−R02(配列番号29)を用いてシーケンシングした。
【0131】
BACE455アイソフォームに対応するcDNA中のcDNA集団を豊富にするために、20μlの第1鎖の逆転写反応物を、DNAポリメラーゼI、dNTP混合物10mM、RNaseH (E. Coli, Gibco) およびDNAリガーゼ (E. coli, Gibco) を含むSecond Strand Buffer (Gibco) 中で2時間16℃の第2鎖の合成に供した。その後、二本鎖cDNA(dscDNA)をフェノール/クロロフォルム/イソアミルアルコール(24:25:1,v/v)抽出し、沈殿させた。dscDNAをその後制限酵素Stu1またはBcl1(New England Biolabs) で消化した。消化反応は、精製したdscDNA反応生成物の5分の1を用い、2時間37℃で20μl中で行った。欠失したDNA断片中を切断するStu1またはBcl1は、Bace 455を切断することができない。一方、BACE501は消化され、PCRによって増幅できない。BACE455を、プライマーPR_NM_012104−F03(BACE501コード配列442−459の位置)(配列番号30)およびPR−NM−012104−R03(BACE501コード配列1971−1984の位置)(配列番号31)を1μMの濃度で用い、1.5mM MgCl2、SP6およびT7プライマー、ならびにプライマーPR_NM_012104−FO1(配列番号26)、PR_NM_012104−F02(配列番号28)、およびPR_NM_012104−R02(配列番号29)の存在下で、PCR増幅(60℃、30サイクル)した。全長のcDNAに対応するPCR産物を、1.5%アガロースゲル上で解析し、実施例1に記述したようにTOPO TAベクターへサブクローニングし、シーケンシングした。
【0132】
全長クローニングおよびシーケンシングの後、BACE455の全長ヌクレオチド(配列番号1)および推定アミノ酸配列(配列番号2)を決定した。結果とアラインメントを図1に示す。
【0133】
BACE501を、EST IMAGEデータベースで見出されたEST:BC036084、クローンMGC:33762、からもクローニングした。EST配列を含む対応する菌株 # MHS1010を、Open Biosystem (Huntsville, AL) から得た。PCRを、GC−RICH−PCRシステム (Roche Molecular Biochemicals) を用い、メーカーの仕様書および1μMのプライマーPR_NM_012104−F03(配列番号30)およびPR_NM_012104−R03(配列番号31)および1.5mM MgCl2を用いて行った。PCR産物を1.5%アガロースゲル上で解析し、全長の配列に対応するcDNAを実施例1に記載したようにTOPO TAベクター中へクローンニングし、SP6とT7プライマー、ならびにプライマーPR_NM_012104−F01(配列番号26)およびPR_NM_0l2104−F02(配列番号28)およびPR_NM_012104−R02(配列番号29)を用いてシーケンシングした。
【0134】
BACE455と名付けた新しいBACE変異体は、BACE501タンパク質の2つの細胞外突出部を架橋する、溶媒に露出したαヘリックス内の2つの活性アスパラギン酸残基間に位置するインフレームの138塩基対(アミノ酸残基190〜235)の欠失に起因して、BACE501のエクソン4を完全に欠く。Hong et al., Science. 290(5489):150-3 (2000) によって公表されたBACE501結晶構造に基づくと、BACE455の活性部位はよりオープンでまたより接近しやすく、したがって著しく増加したレベルのAβペプチドを生産する可能性が高いようである。
【0135】
新規でより短いタンパク質は455個のアミノ酸残基を含み、約50kDaの理論的分子量を有する。BACE455は、プロ領域、アスパラギン酸プロテアーゼ領域、C末端近くの膜貫通領域、および正確なBACEプロセシング(Asn153およびAsn172)システム(Fluhrer, R. et al.; J Biol Chem. 278(8):5531-5538 (2003), Haniu, M. et al. J. Biol. Chem. 275:21099-106 (2000))にとって不可欠なN結合型グリコシル化領域を含み、新規なBACE455変異体が分泌経路中で正確にプロセシングされて成熟することを示唆する。活性型酵素はBACE455であり、またプロ酵素はプロBACE455である。
【0136】
Huseらによる最近のデータ (J Biol Chem. 278(19):17141-9 (2003)) は、BACEβ−セクレターゼ活性がBACE1のタンパク質内部分解的切断により一部終了することを示した。この最近発見されたプロセスが、BACEの2つの細胞外突出部位の間(Leu228とAla229の間)のαヘリックスに生じる。未知のプロテアーゼによるこの部位での切断の結果、各々〜37kDのサイズの特有のN−およびC−末端断片が生成されることが報告された。2つの断片は、ジスルフィド結合により擬活性を有する立体構造に維持されるらしく、その結果、酵素活性は著しく弱められたが、無くなりはしなかった。重要なことは、BACE455はこのタンパク質内分解的なプロセシングの基質ではない。この領域は欠失したエクソン4によりコードされるからである。
【実施例3】
【0137】
BACE455は、トランスフェクションされた哺乳動物細胞中でBACE501と同程度の免疫反応性を示す。
BACEは、細胞中で9時間以上の半減期を有し(Haniu et al., J. Biol. Chem. 275: 21099-21106 (2000))、そしてこの期間に細胞膜へ数回循環する。したがって、N末端部分に特異的な抗体を用いると、BACEを、インタクトな(すなわち透過化処理しない)細胞の細胞表面で、および透過性を与えた細胞の細胞内部(ゴルジおよび小胞体のコンパートメント)で、免疫的に位置決定することができる。対照的に、不活発で、また分泌経路に沿った輸送が不十分で、かつ小胞体のレベルで阻止されるBACE457のようなBACE変異体は、細胞表面で検出することができない (Bodendorf et al., J Biol Chem. 276: 2019-23 (2001))。
【0138】
したがって、免疫組織化学的研究によって、BACE455などの与えられたBACE変異体がAPPと同じ細胞内部位に存在するか、またはBACE501のように細胞内・細胞外の両方に存在する(それがアミロイド生成活性の前提条件である)かどうかを決定することができる。
【0139】
材料と方法
pcDNA3ベースの発現ベクターを作成するために、TOPO TAベクター中のBACE501およびBACE455の全長cDNAをpcDNA3(Invitrogen)中のEcoRl部位へサブクローンし、それぞれpcDNA3−BACE501およびpcDNA3−BACE455を作成した。cDNA(200 ng プラスミド/シーケンシング反応)を、挿入物の立証および配向決定のために、Invitrogenから得たSP6およびT7プライマーを用い、実施例1に記述されたプロトコルを用いてシーケンシングした。NIH3T3細胞(ATCC #CRL1658)を、細胞質の大きなサイズおよびそれがマウス起源であるという理由で、BACE免疫反応性を研究するために用いた。細胞を通例通り37℃および5%CO2で、4.5g/Lグルコースを加え、10%の新生仔ウシ血清、1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補ったDulbecco修正Eagle培地中、T150培養フラスコ中で生育させる。細胞を6ウエルプレートに40,000細胞/ウエルで、トランスフェクションの前日にプレートする。一過性トランスフェクション実験を、pcDNA3−BACE501、pcDNA3−BACE455またはpcDNA3−GFP(lμg ベクター/ウエル)、および Lipofectamine Plus試薬 (Life Technologies) で、メーカーの推薦を用いて行なう。トランスフェクションの2日後に、免疫的局在決定または機能的分析のために細胞を処理する。
【0140】
トランスフェクションされた細胞を、ポリ−D−リジンで被覆したカバーガラス上で培養する。免疫染色のために、細胞を3%パラホルムアルデヒド中20℃で固定する。細胞にトリトンX100(PBS中0.1%)で透過性を与えるか、またはインタクトなままで(透過性を与えず)処理した。リン酸緩衝食塩水中の3%ウシ血清アルブミンでブロックした後に、透過性処理した、またはインタクトな細胞を、アミノ酸配列46〜65または487〜501(Calbiochem) の1:800希釈に対して作成したウサギ抗ヒトBACE抗体とインキュベーションする。Cy3− またはFITC−結合二次抗体 (Sigma) を1:800希釈で用いる。染色した細胞をFluorSave(Calbiochem) に抱埋する。
【0141】
結果
我々の結果から、BACE455が、細胞表面および細胞内コンパートメント中の双方で、BACE501と同程度の免疫反応性を示すことが明白である(図2)。これは、BACEは細胞膜に効率的に運び出されるので、BACE455中のエクソン4欠失はその輸送に影響しないことを示す。BACEの細胞内輸送はプロセシングおよび成熟に緊密にリンクされているため、BACE455プロセシングおよび成熟はどちらも変更されていない可能性が高く、従って、BACE455アミロイド生成活性は、BACE501のそれと比較して害されていない可能性が高い。
【実施例4】
【0142】
ペプチド基質に対するBACE455活性の実証
切断のβ部位を包含するAPPベースのペプチド基質に対するBACE455の活性を実証する2つの実験を行なった。基質のアミノ酸配列はAPPに対応し、KMアミノ酸残基がNLに変更されている遺伝性ADを有するスウェーデン家系で見出されたAPP中の突然変異を模倣する。スウェーデン突然変異はβセクレターゼによるAPPの切断を増加させることが知られている。第1の実験では、トランスフェクションされたヒト胚の腎臓HEK293の中のBACE455の増加した発現が、合成蛍光発生基質の切断を増加させることを示す。
【0143】
実験の第2のセットは、BACE455が蛍光発生分析においてBACE501と類似の活性効率を発揮することを実証する。そうするための、過剰発現されたタンパク質の機能を検討する実際的ツールの中で、十分に特性決定されたヒト胚腎臓HEK293細胞系統である。
【0144】
材料と方法
哺乳動物細胞トランスフェクションおよびクローン選択:
ヒト胚腎臓HEK293細胞(ATCC #CRC−1573)をInvitrogen から得た Lipofectamine Plus試薬を用いて、発現コンストラクトによりトランスフェクションした。細胞を、10 cm 培養皿に播種し、70〜80%密生密度とした。各プレートを、OptiMEM 中の2μg DNA、8μl Plus試薬、および4μl Lipofectamineでトランスフェクションした。5時間インキュベーション後、トランスフェクション溶液を抗生物質を加えたDMEM、10%FBS、ピルビン酸Naに置換し、細胞を正常条件(37℃、5%CO2)下、72時間インキュベーションした。トランスフェクションの3日後、細胞を400μg/ml濃度のG418を含む培地へ移した。選択培地で15日間成長の後、個々のクローンを、G418を加えた増殖培地を含む1個の96ウェルプレートの各ウエルの中に、選択してプレートした。クローンを、96ウェルプレートから24ウェルプレート、そして次に6ウェルプレートへと拡大させた。選択されたクローン中のBACE455またはBACE501発現を、実施例3のようにウェスタンブロッティングおよびC末端特異抗体を用いる免疫組織化学分析により分析した。選択された最終のBACE455またはBACE501細胞系統は、それぞれBACE455またはBACE501の最も高い発現レベルを示した。
【0145】
細胞抽出物の調製、蛍光発生分析プロトコル
細胞を回収し、1,500rpmで5分間遠心して、培地を除去した。細胞沈殿を1回PBSで洗浄した。さらにBACE455の活性をBACE501のそれと比較するために、インビトロの分析を、APP中にスウェーデン突然変異KM→NLを含む消光された蛍光発生基質(基質V,Calbiochem)に基づいて開発した。ペプチドの配列は:MCA−SEVNLDAEFK(DNP)−CONH2(配列番号32)であり、スウェーデンAPP突然変異(太字体)、蛍光団として7−アミノ−4−メチル・クマリン(MCA)、および消光剤としてジニトロフェノール(DNP)を含む。BACE455およびBACE501発現細胞の細胞溶解物を蛍光発生基質Vとインキュベーションする場合、プロテアーゼによる切断に際して、蛍光団が消光基から分離され、ドナーの十分な蛍光収量を回復する (Ermolief et al., Biochemistry 39: 12450-12456 (2000); Ellerby et al. J Neurosci. 17: 6165-6178 (1997); Capel et al., J Biol Chem. 277: 5637-43 (2002))。
【0146】
モックでトランスフェクションされたHEK293およびHEK293−BACE455およびHEK293−BACE501細胞を、氷冷20mMトリス/150mM NaCl、pH7.5プラス Complete Protease Inhibitor Cocktail(Roche Diagnostics) の中で掻き集めることにより回収した。凍結融解を繰り返して細胞を溶解し、500gで10分間遠心して除核後画分を生成した。沈殿をプロテアーゼ阻害剤カクテルを含む膜抽出緩衝液(20mM MES/1%トリトンX100)に再懸濁し、氷上で30分間インキュベーションした。分析を、黒色96ウェルプレート (ATGC)中、15μMのペプチド基質Vを含む反応緩衝液(25mM MES/25mM 酢酸ナトリウム/25mM トリス(pH4.4))で薄めた膜標品の容量200μl中で実行した。これらのコンポーネントを37℃で様々な時間平衡に保ち、反応を基質の追加により開始した。励起を320nmで行い、また反応速度論を420nmで蛍光放射を測定することによりモニターした。pHの影響をテストするために、溶解した細胞を、4.4〜8の範囲のpH値に調整した25mM MES/25mM 酢酸ナトリウム/25mM トリス中に再懸濁し、次に上記のようにインキュベーションを行なった。
【0147】
対照には、精製した組換えヒトBACE501タンパク質 (R&D Systems)、または基質のみが含まれ、またバックグラウンドの蛍光を記録したBACEアイソフォーム活性から差し引いた。
【0148】
結果
膜画分から抽出されたBACE455が、タンパク質分解分析において蛍光シグナルの時間に依存する増加を生じた。これはBACE455がβセクレターゼ活性を有することを示す。最大のタンパク質分解は2時間後に見られ、その後、恐らく完全な切断による基質の枯渇のためにプラトーに達した。
【0149】
【表1】

【実施例5】
【0150】
BACE455活性の特異性
BACE455のAPPベースのペプチド基質に対する特異性を、十分特性決定された市販のBACE501阻害剤、即ちBACE阻害剤III、の存在下でβセクレターゼ分析を行なうことにより、評価した。より重要なことに、用量応答実験を用いて、我々はBACE455が、BACE501と著しく異なる阻害プロフィール示すことを示す。
【0151】
材料と方法
Calbiochem から得たBACE阻害剤III(H−Glu−Val−Asn−スタチン−Val−Ala−Glu−Phe−NH2)(配列番号33)は、BACEの基質アナログ阻害剤である。それが、BACEをトランスフェクションされた細胞から可溶化された膜画分中のタンパク質分解活性を完全にブロックすることが以前に示された (Capel et al., J. Biol. Chem. 277: 5637-43 (2002))。ペプスタチンA、キモスタチン、E64c、ロイペプチン(Sigma)はそれぞれ、カテプシンD(および他のアスパラギン酸プロテアーゼ)またはセリンプロテアーゼおよびシステインプロテアーゼの阻害剤である。
【0152】
プロテアーゼ阻害剤を100μl の反応緩衝液(25mM MES/25mM 酢酸ナトリウム/25mM トリス、pH 4.4)に最終濃度100μM になるように加えた。表示した場合には、分析緩衝液は4.4〜8の範囲のpHを有していた。膜標品を実施例4のようにして得て、阻害剤と10分間室温でインキュベーションした。その後、基質(最終濃度15μM)を含む100μlの反応緩衝液を加えることにより反応を開始し、実施例4に記載したようにモニターした。図3の用量応答実験については、阻害剤IIIを100μM 〜100nM の範囲の様々な濃度で分析した。
【0153】
結果
BACE455の、またはBACE501の過剰発現に関係なく、BACE特異的でない阻害剤による小さな阻害活性が存在した。これは、この分析中に一緒に精製された他の非BACE膜結合プロテアーゼによるものであるといえる。しかしながら、BACE455またはBACE501抽出物では、全体として基質切断活性は、ペプスタチンおよび他のプロテアーゼ阻害剤(それぞれ、カテプシンD(および他のアスパラギン酸プロテアーゼ)またはセリンおよびシステインプロテアーゼの阻害剤である)の両方に対して極めて感受性が弱かった。これは、基質切断に対する非BACEタンパク質分解活性の寄与が小さいことを示唆する。
【0154】
対照的に、100μM のBACE阻害剤IIIは、BACE455活性ならびにBACE501活性も、完全に消滅させた。これは蛍光発生基質のBACEを介する切断に対する特異性を表す。
【0155】
【表2】

【0156】
示した結果は、BACE455、BACE501またはモックをトランスフェクションされた細胞の抽出液に、表示した阻害剤(各100μM)を加えた場合の平均切断阻害パーセンテージ±SEMである。
【0157】
さらにBACE455阻害プロフィールを検討し、それをBACE501と比較するために、用量応答実験を行なった(図3を参照のこと)。阻害剤IIIの10μM 濃度では、モック・トランスフェクションされた対照と比較したとき、BACE455活性は36.04±4.13%(±SEM)であり、一方でBACE501活性は57.6±3.12%(±SEM)であった。阻害剤IIIの1μM 濃度では、モック・トランスフェクションされた対照と比較したとき、BACE455活性は57.52±9.08%(±SEM)であり、一方でBACE501活性は85.15±2.93%(±SEM)であった。したがって与えられた阻害剤の濃度では、BACE455はBACE501よりもより弱く阻害されることが明らかであり、これはBACE455が阻害プロフィールの点でBACE501とは著しく異なり、BACE455中のエクソン4の欠失がBACE501と比較したとき重要な薬理学的相違を生み出すことを示唆する。
【実施例6】
【0158】
BACE455活性のための酸性pHの必要性
BACEは、ゴルジ体およびエンドソーム区画中に主として局在する酸性のアスパラギン酸プロテアーゼであり、これらの酸性区画のAPPを切断する。BACEは、6.0以上のpH値で事実上不活性である (Vassar R. et al. Science 286, 735-741 (1999); Lin X. et al. Proc. Natl Acad. Sci. USA 97, 1456-1460 (2000))。ここで、我々は、新規なBACE455変異体は真のβセクレターゼ活性を示すと主張するための別の論証:BACE特異的な切断に観察される強いpH要求性を提示する。
【0159】
材料と方法
膜標品を実施例4のようにして得て、最終pH4.4〜8の範囲に調整された分析用緩衝液(25mM MES/25mM 酢酸ナトリウム/25mM トリス)中で、BACE阻害剤III(最終濃度100μM)の存在下または存在しない状態で、インキュベーションした。基質(最終濃度15μM)を含む反応緩衝液(pH範囲4.4〜8)100μl を加えることにより反応を開始し、実施例4に記載したようにモニターした。我々はこれらの条件で阻害剤IIIによるBACE阻害のパーセンテージを測定した。
【0160】
結果
BACE特異的阻害剤の阻害活性はpH4.4で急激に最大となった。pH6および8では、pH4.4と異なり、非常に高い基質切断活性を観察したが、市販のBACE阻害剤には反応しなかった。これは、BACEがpH6またはそれ以上で悪評高いほどに不活性であるとすれば、恐らくpH6.0以上で作用する他のプロテアーゼの動員によるものである。これらのデータは、この分析ではBACE455およびBACE501セクレターゼ活性の選択的な使用は、文献中でBACE生物活性に適切であると知られているpHでのみ可能であることを示す。さらに、結果は、BACE455がBACE501と同様の活性の酸性pH依存性を呈することを示す。
【0161】
【表3】

【0162】
示した結果は、様々なpHに調整された反応緩衝液で行なわれたBACE455またはBACE501細胞抽出液中の切断阻害の平均パーセンテージである。
【0163】
したがって、BACE455およびBACE501は、同程度にHEK293細胞中で発現され、同一の条件を用いて精製された場合には、同一の分析条件を用いたタンパク質分解分析においてスウェーデンβセクレターゼペプチドも切断する。
【実施例7】
【0164】
内生的に発現されたAPPアイソフォームのプロセシングに対するBACE455およびBACE501の作用
APPのタンパク質分解プロセシングはアミロイド形成的および反アミロイド形成的経路に分けられる。アミロイド形成的経路では、BACEによるAPPの切断がAβ領域のN末端で起こり、分泌されるsAPPβ、ならびに11,145ダルトンの分子量で99個のアミノ酸から成るAPPのC末端断片(C99)を産出する。C99は、γ−セクレターゼにより、さらにその膜貫通領域内で切断されて、Aβペプチドの分泌およびAPPの細胞内領域AICDの生成をもたらす。反アミロイド形成的経路では、Aβペプチド領域内でのα−セクレターゼによるAPPの切断が、神経栄養的で神経保護的なsAPPαを産出する。
【0165】
APPからAβペプチドをプロセシングするヒト細胞系統は、細胞分析においてβ−セクレターゼの活性化剤および阻害剤をスクリーニングするツールを提供する。APP発現ならびに内生的APPプロセシングおよびAβペプチドの放出は低いが、SH−SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞系統(ATCC,CRL−2266)は、APPプロセシング、ならびにC99およびAβペプチドの生成を検出するための有用なシステムである。
【0166】
材料と方法
哺乳動物細胞トランスフェクションおよびクローン選択:
トランスフェクション用のSH−SY5Y細胞を、10%ウシ胎児血清を含むDulbecco修正Eagle培地(DMEM)中で80% 密生まで増殖させた。LipofectAmine Plus (Gibco-BRL) を用い、10×106 細胞当たり4のpcDNA3 DNAでトランスフェクションを行なった。トランスフェクションの3日後、細胞を、400μg/ml濃度のG418を含む培地へ移した。 選択培地で20日間成長後、個々のクローンを選択して、G418を加えた増殖培地を含む1個の96ウェルプレートの各ウエルの中に、プレートした。クローンを、96ウェルプレートから24ウェルプレート、そして次に6ウェルプレートへと拡大させた。最初のニューロン様の形態を失ったクローンは増幅させなかった。選択されたクローン中のBACE455またはBACE5O1発現を、ウェスタンブロッティングおよび免疫組織化学分析により、C末端特異抗体を用いて分析した。最終の細胞系統は、BACE455またはBACE501の最も高い発現レベルを示し、400μg/mlのG418中で4日ごとに新鮮な培地へ移して維持した。
【0167】
細胞抽出液の調製、ウェスタンブロット・プロトコル
細胞を、プレートした3日後に回収した。細胞をPBSで2度洗浄し、プロテアーゼ阻害剤カクテル (Roche Diagnostics) を加えたCellLytic溶液(Sigma)1ml中で15分間溶解した。溶解物を1.5mlのエッペンドルフチューブに移し、1,500rpmで5分間遠心した。上清を細胞抽出液として−80℃で保存した。BACE455または対照ベクター(モック)によりトランスフェクションされた細胞からの抽出物の同一量(20μg)を、12%Bis−TrisNOVEXゲル(Invitrogen)の電気泳動にかけた。分離したポリペプチドをPVDF膜へ電気的に移した後に、APPおよびC99のタンパク質分解断片を、0.1%PBS Tween20中のC末端特異的ウサギ抗−APP抗体(Serotec, UK) の1/500で、検出し、アルカリフォスファターゼを結合したヤギ抗−ウサギ抗体(1/5000)を用いて、抗体−抗原複合体を可視化した。一次抗体によって認識された配列は、C99断片のアミノ酸85〜99に対応する。細胞では、一次抗体がさらに45kDa付近で移動する非特異的バンドを検出する。
【0168】
結果
BACE455を発現するコンストラクトで、または空のベクター(モック)で、トランスフェクションされたSH−SY5Y細胞について、抗生物質G418により形質転換体を選択した後で、内生的に発現されたAPPアイソフォームからのC99断片の生産に対するBACE455の影響を評価した(図4)。C99の産生は、空ベクターDNAで形質転換された細胞と比較して、BACE455コンストラクトで形質転換された細胞中で強く増加した。これは、BACE501について記述されたのと同様に、内生的APPのAsp−1残基におけるタンパク質分解の増加に対応する。さらに、BACE501について文献中で報告されたように、BACE455の過剰発現はAPPレベルに影響しない。
【実施例8】
【0169】
内生的APPアイソフォームのBACE455依存プロセシングに対するブレフェルジンAおよびグリーベックの阻害作用
BACE活性だけでなく、APPプロセシングもまた妨害する1つの方法は、シス−、中間およびトランス−ゴルジ(しかしTGNではない)のERとの融合を促進する真菌代謝物質ブレフェルジンA(BFA) (Lippincott-Schwartz et al. Cell 67: 601-616 (1991))、またはゴルジ内の輸送を中断させるモネンシン (Dinter et al. Histochem. Cell Biol. 109: 571−590 (1998))の使用である。両薬剤は、APPプロセシングだけでなく、ERとゴルジ装置を通過する細胞内輸送を阻害することにより、ゴルジ内でのBACEプロペプチドの除去にも影響する。その結果、BFAの存在下でのBACEの過剰発現は、C99生成の低下をもたらす (Fischer et al. J. Neurochem. 80: 1079 (2002))。
【0170】
グリーベック(メシル酸イマチニブ)は、?−セクレターゼによるAPPの切断を阻止するため、Aβ放出を阻害することができる選択的チロシンキナーゼ阻害剤である (Netzer et al. Proc Natl Acad Sci USA 100: 12444-12449 (2003))。グリーベックは、細胞骨格、軸索の成長および樹状突起生成を制御するBcr−Ablの阻害剤である (Jones et al. J. Neurosci 24: 8510-8521 (2004))。したがってグリーベックを、細胞の細胞骨格と細胞内輸送にインパクトを与え、それによりAPPおよびBACEプロセシングを阻止し、その結果BACEによるC99生成を制御する薬物としてテストした。
【0171】
材料と方法
BACE455 SH−SY5Y細胞を実施例7と同様に処理した。細胞をプレートした3日後に回収し、上述のようにウェスタンブロッティング実験のために処理した。BFAおよびグリーベックによる処理については、細胞を、10μg/mlで最後の8時間、および10μMで最後の24時間、それぞれ処理した。
【0172】
結果
BFAがBACE455細胞中のC99産生を、BACE501で報告されたのと同様の様式で妨害するかどうかテストするため、BACE455細胞をBFAまたはグリーベックで処理し、C末端特異的ウサギ抗−APP抗体を用いて、細胞溶解物をウェスタンブロッティング実験に付す(図5)。予想通り、APPプロセシングだけでなく、BACEプロセシングにも影響するBFAの存在下で、BACE過剰発現がC99生成の低下を引き起こす。これは、BACE455に、BACE501と同様のER−ゴルジ装置を通じたプロセシングが行われることを示す。
【0173】
BACE455細胞のグリーベック処理もまた、強くC99ペプチドの生成を低下させた。作用機構は明らかではないが、おそらく細胞内輸送およびプロセシングの修飾を通じて、APPのBACE455との相互作用を阻止するような方法で、BACEまたはAPPの局在化に対する影響が、関与する可能性がある。
【実施例9】
【0174】
内生的に発現されるAPPアイソフォームからのAβペプチドの産生に対するBACE455およびBACE501の影響
APPからAβペプチドをプロセシングするヒト細胞系統は、βセクレターゼの活性化剤および阻害剤に対する細胞分析におけるスクリーニングのツールを提供する。複数の細胞内部位が種々のAβペプチドの産生を担っている。トランスゴルジ網は主にAβ1−40を生成するが(Xu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 94: 3748-3752 (12997), Hartmann et al., Nat. Med. 3: 1016-1020 (1997))、小胞体/中間体コンパートメントはAβ1−42を生成する(Lee et al., J. Biol. Chem., Vol. 278: 4458-4466 (2003), Greenfield et al. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 96, 742-747 (1999))。Aβペプチドの生産および培養液上清中への放出を酵素免疫測定法(ELISA)によりモニターすることができる。APPの発現、ならびに内生的なAPPのプロセシングおよびAβペプチド放出は低いが、SH−SY5Yヒト神経芽細胞腫細胞系統(ATCC、CRL−2266)はAβプロセシングを検出するための有用なシステムである。そうするために、細胞抽出液、血清、培地中のAβのインビトロでの定量化に指定されたアイソフォーム特異的なELISAを用いることができる。ELISAキットの一例が BioSource International からのアイソフォーム特異的Aβ1−40ELISAである。
【0175】
通常、正常条件において培養されたSH−SY5Y細胞は、約40pg/ml のAβ1−40を分泌する。それは十分に検出限界内であり、分析の直線領域である (Takahashi et al., J. Biol. Chem. 278: 18664-70 (2003))。対照的に、Aβ1−42の生成はAβ1−40より弱く、したがってAPPを過剰発現しなければ検出できない。
【0176】
AβのELISA解析(Aβ1−40のための二重抗体サンドイッチELISA):
プレートして72時間後に回収された細胞培養上清を、標準の二重抗体アイソフォーム特異的Aβ1−40ELISA (BioSource International) で、以下のように解析した。捕獲ウサギ抗体はAβ上に存在するエピトープに特異的であり、96ウエル免疫プレートをこれでコートした。検出抗体は、Aβ1−40に特異的であり、また結合された二次抗体はセイヨウワサビペルオキシダーゼに結合された抗−ウサギIgGである。合成ヒトAβ1−40標準ペプチドを、標準曲線を生成するために、供給された試料希釈液で順次希釈する。希釈後のペプチドの濃度は:容量100μl/ウエル中に、1000、500、250、125、62.5、31.3、15.6および0.0 pg/ml であった。
【0177】
培養上清の定量化のために、メタロエンドプロテアーゼ阻害剤ホスホラミドン1μMを加えた5mlのDMEMを17時間、3.5×106個のSH−SY5Y細胞(プレート密度)の1枚の10cmプレートにより調整し、低速で5分間遠心して細胞の破片を除去する(Haugabook et al., J. Neurosci. Methods. 108:171-179 (2001))。プレートを洗浄した後、ヒトAβ1−40の標準および100μl/ウエルの試料、例えばトランスフェクションされた細胞の培養上清を加えた。プレートを4℃で終夜インキュベーションした。翌日、プレートを4回洗浄した後に、100μl/ウエルのウサギ検出抗体を加え、20℃で2時間オービタルプレートシェーカー上でインキュベーションした。4回洗浄の後、100μl/ウエルの抗−ウサギIgG−セイヨウワサビペルオキシダーゼ抗体(1:100希釈)を加え、2時間室温で振盪してインキュベーションした。最後の5回の洗浄の後、100μl/ウエルのテトラメチルベンジジンを色素原基質として加え、暗黒下20分間室温で発色させた。100μl/ウエルの停止液を加え、各ウエルの吸光度を450nmで2時間以内に読み取った。100μlずつの色素原溶液および停止液の溶液をブランクとした。すべての基準および試料を3重に測定した。標準曲線以内にある吸光度値を有する試料を標準曲線から推定し(同じプレート上で解析されたAβ40およびAβ42標準ペプチドに対して得られた値との比較により)、pg/ml培地で表した。
【0178】
結果
内生的に発現されたAPPからのAβペプチドの生産に対するBACE455またはBACE501の影響を、BACE455またはBACE501を発現するコンストラクトを用いて、あるいは空のベクター(モック)を用いて、トランスフェクションされ、抗生物質G418により形質転換体を選択した後のSH−SY5Y細胞中で評価した。BACE455またはBACE501コンストラクトで形質転換された細胞中では、空のベクターDNAでトランスフェクションされた細胞と比較してAβ1−40の産生が2倍に増加した。空のベクターによってトランスフェクションされた細胞から集めた培養上清中のAβ1−40レベルは、43.21+1.46 pg/mlであって、十分分析の直線性の範囲内であった。対照(空のベクターDNAでトランスフェクションされた細胞)のパーセンテージとして表現された、BACE455またはBACE501でトランスフェクションされた細胞からのAβ1−40の放出は、それぞれ199.95+18%、および193.15+2.73%であった(両方共 p<0.001)。これは、BACE501と同様に、BACE455が内生的に発現されたAPPからのAβのプロセシングおよび放出を促進するように作用することを表す。
【0179】
APPプロセシングだけでなく、BACEプロセシングおよびAβ1−40が由来するC99断片の生成にも影響するBFAの存在下では、培養上清中のAβ1−40レベルは、モックによりトランスフェクションされた細胞のレベルと同程度であった。BACE455細胞をグリーベック処理すると、Aβ1−40の放出がやはり強く低下した。グリーベックは、Aβ1−40の生成に必要なAPPの?−セクレターゼによる切断をブロックすることが示されている(Netzer et al. Proc Natl Acad Sci USA 100: 12444-12449 (2003))。したがって、我々の結果は、グリーベックの影響はAPPの?−セクレターゼによる切断の低下を含むだけでなく、細胞内輸送とプロセシングに対する影響、すなわちAPPのBACE455との相互作用を阻止するようなBACEまたはAPPの局在化に対する影響にも起因することを示す。
【0180】
まとめると、これらのデータは、BACE455はAPPに直接作用してβ−セクレターゼ部位で切断すること、および切断速度はこのアイソフォームとBACE501との間で細胞内で著しくは相違しないこと、を確証した。しかしながら、BACE455活性は細胞内輸送およびプロセシングに依存し、ブレフェルジンAおよびグリーベックにより阻害され得る。BACE455は、このように、アルツハイマー病患者の脳中に発現される活性のあるAPP−切断プロテアーゼである。したがって、出願人は、BACE455がアルツハイマー病発症の原因であるアミロイド生成性Aβペプチドの蓄積を引き起こすと信じる。
【0181】
【表4】

【0182】
【表5】

【0183】
参照配列(NCBI参照配列)上の位置とは、BACE501ヌクレオチド配列(NM_012104)上のプライマーの位置を指す。参照配列は、遺伝子の同定および特性決定、突然変異解析、発現研究、多型性発見、および比較分析のための参照である。参照配列(RefSeq)コレクションは、主要な研究用生物に対するゲノムDNA、転写物(RNA)、およびタンパク質生成物を含む、配列の包括的で、統合され、重複しないセットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1】BACE455の核酸配列(A、配列番号1)、およびアミノ酸配列(B、配列番号2)ならびにBACE501とのアミノ酸配列のアラインメント。
【図2】BACE455またはBACE501を発現するコンストラクトによりトランスフェクションされたNIH3T3細胞上のBACE455(A、C)およびBACE501(B、D)の免疫学的局在測定。A、B:ポリクローナル抗−hBACE(481−501)(C−末端細胞内エピトープ)を用いたトリトンX100−透過化処理細胞上のBACEアイソフォームの細胞内染色。C、D:ポリクローナル抗−hBACE(46−65)(N−末端細胞外エピトープ)を用いた透過化処理をしない細胞上のBACEアイソフォームの細胞外染色。BACE455がBACE501と同様の細胞内局在を示し、また細胞膜に効率的に運び出され、そこでBACE501と同程度の細胞外膜免疫反応性を発揮することを示す顕微鏡写真。
【図3】BACE455およびBACE501が、市販のBACE阻害剤IIIを用いた蛍光発生解析において異なる阻害プロフィールを示す。示した結果は3つの独立な実験における活性パーセント±SEM である。
【図4】空のベクター(モック、M)により、またはBACE455(B)を発現するコンストラクトによりトランスフェクションされたSH−SY5Y細胞中で内生的に発現されたAPPアイソフォームからのC99断片の産生に対するBACE455の影響。MW: 分子量
【図5】BACE455を発現するコンストラクトによりトランスフェクションされたSH−SY5Y細胞中で内生的に発現されたAPPアイソフォームからのC99ペプチド生成がブレフェルジンA(BFA)およびグリーベックにより阻害される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BACE455のすべてまたは特有の断片を含む、単離されたポリペプチド。
【請求項2】
配列番号2のアミノ酸配列のすべてまたは特有の断片を含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
配列番号3〜11から成る群より選ばれるアミノ酸配列を含む、請求項2記載のポリペプチド。
【請求項4】
請求項1、2または3記載のポリペプチドをコードする、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号1の配列を含む、請求項4記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
請求項4または5記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
【請求項7】
a)BACE455ポリペプチドまたはその特有の断片をコードする第2の核酸に選択的にハイブリダイズする第1の核酸、および、b)該第1の核酸に正確に相補的な第3の核酸、から成る群より選ばれる核酸プローブ。
【請求項8】
BACE455ポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも1つの特有の断片を増幅するために用いることができる核酸プライマー。
【請求項9】
生理学的条件下でBACE455ポリペプチドをコードする核酸分子へハイブリダイズし、選択的にその転写または翻訳を阻害する、阻害的核酸分子。
【請求項10】
請求項4記載のポリヌクレオチドまたは請求項6記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
a)ストリンジェントな条件下で配列番号1に記載された核酸配列へハイブリダイズする第1のヌクレオチド配列を含む核酸、および、b)該第1のヌクレオチド配列に正確に相補的な第2のヌクレオチド配列を含む核酸、から成る群より選ばれるポリヌクレオチド。
【請求項12】
選択的にBACE455ポリペプチドまたはその特有の断片を結合することができるリガンド。
【請求項13】
抗体、抗体の断片、または抗体の誘導体から成る群より選ばれるポリペプチドを含む、請求項12記載のリガンド。
【請求項14】
BACE455ポリペプチドの特有の断片を結合する、請求項13記載のポリペプチド。
【請求項15】
BACE455のポリペプチドまたは核酸の発現または活性を阻害する、BACE455阻害剤。
【請求項16】
BACE455阻害剤および薬学的に許容しうる担体または媒体を含む医薬組成物。
【請求項17】
被検者における神経変性疾患または関連する障害を治療または予防する方法であって、該被検者に有効量のBACE455阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項18】
被検者におけるAβペプチドの産生または蓄積を治療または予防する方法であって、該被検者に有効量のBACE455阻害剤を投与することを含む方法。
【請求項19】
生物学的活性を有する化合物を選別し、特性決定し、スクリーニングし、または最適化する方法であって、試験化合物をBACE455の核酸、ポリペプチド、または該核酸もしくはポリペプチドの特有の断片と接触させること、および該試験化合物が該BACE455の核酸またはポリペプチドを結合するかどうか、または該BACE455の核酸またはポリペプチドの活性をモジュレーションするかどうかを判断すること、を含む方法。
【請求項20】
被検者における神経変性疾患または関連する障害の存在または素質を検出する方法であって、被検者から得た試料中のBACE455の核酸またはポリペプチドの存在を検出することを含む方法。
【請求項21】
神経変性疾患または関連する障害の治療に対する被検者の応答を評価する方法であって、被検者から得た試料中のBACE455の核酸またはポリペプチドの存在を検出することを含む方法。
【請求項22】
被検者における神経変性疾患または関連する障害の治療の有効性を決定する方法であって、(i)該治療中または該治療後に該被検者から得た試料中のBACE455の核酸またはポリペプチドの存在および/または存在量を決定すること、および(ii)該存在および/または存在量を治療に先立ってまたは初期段階で該被検者から得た参照試料と比較すること、を含む方法。
【請求項23】
BACE455のポリペプチドを結合する抗体を作成するための方法であって、ヒト以外の動物をBACE455のポリペプチドまたはその特有の断片で免疫化すること、および抗体または抗体産生細胞を該動物から集めること、を含む方法。
【請求項24】
BACE455阻害剤を含む組成物を作成する方法であって:
iv)BACE455を阻害する化合物を選択すること;
v)該化合物を生成すること;および
iv)該化合物を薬学的に許容しうるその塩と混合すること、
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−510425(P2007−510425A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538996(P2006−538996)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/IB2004/003897
【国際公開番号】WO2005/045021
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(599022270)エグゾニ・テラピューティック・ソシエテ・アノニム (12)
【氏名又は名称原語表記】EXONHIT THERAPEUTICS SA
【Fターム(参考)】