説明

BF3錯体およびその製造方法

【課題】リチウム二次電池の電解液に用いることができるBF錯体、およびその製造方法を提供する。
【解決手段】ジメトキシエタン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、メトキシエチルメチルカーボネート、およびメトキシプロピオニトリルのBF錯体。該BF錯体は、BFーエーテル錯体と、ジメトキシエタンなどの置換用有機溶媒とを混合し、エーテルを反応系内から除去することにより、容易に合成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば二次電池の電解液に用いることができるBF錯体、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
三フッ化ホウ素(BF)は、常温常圧で気体の化学物質であり、ホウ素原子が電子吸引性の強い3個のフッ素原子と結合しているため、酸性が非常に強いという性質を有する。一方、BFのホウ素の空軌道に有機分子が配位したBF錯体は、BF錯体のBF部が強い電子吸引性を有するため、配位した有機分子の電子がホウ素原子に引き寄せられ、その結果、配位した有機分子の耐酸化性は向上することが予想される。
【0003】
しかしながら、現在、市販で入手可能なBF錯体は、例えばBF−ジエチルエーテル錯体、BF−ジメチルエーテル錯体、BF−THF錯体等に限られている。これは、BFの取り扱いが難しいこと等に起因するものであると考えられる。
【0004】
また、例えば、BF−ジエチルエーテル錯体の合成方法として、ジエチルエーテルにBFガスを吹き込む方法が知られているが、この反応は、反応性の高いBFガスを用いる液相−気相反応であることから、取り扱いが難しいという問題があった。そのため、容易にBF錯体を得ることができる方法が望まれていた。
【0005】
一方、BF−ジエチルエーテル錯体等のBF錯体は、二次電池の分野に使用されている。例えば、特許文献1においては、容量減衰率抑制添加剤としてBF錯体を用いた非水系リチウム電池が開示されている。特許文献1は、添加剤としてBF錯体を用いることにより、長期使用に伴うリチウム二次電池の容量低下の防止を図るものであった。このように、BF錯体を、二次電池等の電気化学デバイスに用いることが検討されているが、それに用いられるBF錯体の種類は限られているというのが実情であった。
【0006】
また従来、リチウム二次電池に用いられる電解液には、非水溶媒にリチウム塩を溶解した電解液が使用されている。さらに、非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート等の混合溶媒が一般的に使用されている。
【0007】
上記のカーボネート系溶媒は、非水溶媒として一般的に使用されているものの、耐酸化性が十分でないという問題があった。そのため、リチウム二次電池の性能向上の観点から、より酸化され難い電解液が望まれていた。一般的には、電解液は酸化および還元を受け難いことが好ましく、言い換えると、電位窓が広い電解液が望まれている。
【0008】
一方、電解液にBF錯体を添加したリチウム二次電池が知られている。上述したように、特許文献1においては、容量減衰率抑制添加剤としてBF錯体を用いた非水系リチウム電池が開示されている。また、特許文献2においては、三フッ化ホウ素のウェルナー型錯体を含有する非水電解質二次電池が開示されている。特許文献2は、添加剤としてBF錯体を用いることにより、LiF等のハロゲンリチウムの被膜が負極表面に生じることを防止し、電池インピーダンスの増加を抑制することを目的とするものであった。
【0009】
しかしながら、特許文献1および特許文献2のいずれにおいても、BF錯体はあくまで添加剤としての使用であり、その使用量は極少量であった。具体的には、特許文献1においては、電解質に対して1〜5重量%程度であり、特許文献2においては、電解液全体に対して0.5〜5重量%程度であった。さらに、特許文献1および特許文献2においては、電解液の電位窓を広くし、リチウム二次電池の性能を向上させる旨の記載は一切無かった。
【0010】
なお、特許文献3には、電極活物質に、さらにBF錯体等の両性化合物を含むリチウム二次電池用電極活物質が開示されている。
【特許文献1】特開平11−149943号公報
【特許文献2】特開2000−138072号公報
【特許文献3】特開2005−510017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、例えばリチウム二次電池の電解液に用いることができるBF錯体を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明においては、下記構造式(1)〜(4)で表される化合物からなる群から選択される一種であることを特徴とするBF錯体を提供する。
【0013】
【化1】

【0014】
本発明においては、上記構造式(1)〜(4)で表されるBF錯体は、沸点が高く凝固点が低く、極性が高いことから、溶媒として有用であるという利点を有する。
【0015】
また、本発明においては、下記一般式(V)で表されることを特徴とするBF錯体を提供する。
【0016】
【化2】

【0017】
(一般式(V)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
本発明によれば、電子吸引性が強いBFに加えて、BFに配位する有機分子中にも電子吸引性基のニトリル基(CN)を有していることから、BFに配位する酸素原子(O)が酸化されにくくなり、耐酸化性に非常に優れたBF錯体とすることができる。
【0018】
上記発明においては、上記BF錯体が、下記構造式(5)で表される化合物であることが好ましい。電気化学デバイスの電解液用溶媒として特に有用だからである。
【0019】
【化3】

【0020】
また、本発明においては、上述したBF錯体を溶媒として含有することを特徴とする電気化学デバイス用電解液を提供する。
【0021】
本発明によれば、上記BF錯体を溶媒として用いることにより、広い電位窓を有する電気化学デバイス用電解液を得ることができる。
【0022】
また、本発明においては、正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、上記正極層および上記負極層の間に設置されたセパレータと、少なくとも上記セパレータに含浸された電解液とを有するリチウム二次電池であって、上記電解液が、上述した電気化学デバイス用電解液であることを特徴とするリチウム二次電池を提供する。
【0023】
本発明によれば、上述したBF錯体を溶媒として含有する電解液を用いることにより、高電圧で使用可能なリチウム二次電池とすることができる。
【0024】
また、本発明においては、BF部およびエーテル部を有するBF−エーテル錯体と、置換用有機溶媒とを混合する混合工程と、上記BF−エーテル錯体のエーテル部を反応系内から除去する除去工程と、を有し、BF部および置換用有機溶媒部を有するBF錯体を形成することを特徴とするBF錯体の製造方法を提供する。
【0025】
本発明によれば、通常、常温で液体のBF−エーテル錯体と、置換用有機溶媒とを用いることから、液相反応によりBF錯体を形成することができる。そのため、従来のBFガスを吹き込む方法に比べて、取り扱いが容易であるという利点を有する。
【0026】
上記発明においては、上記BF−エーテル錯体が、BF−ジエチルエーテル錯体であることが好ましい。BF−ジエチルエーテル錯体は市販品として入手可能であるからである。
【0027】
上記発明においては、上記置換用有機溶媒が、ジメトキシエタン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメトキシエチルメチルカーボネートからなる群から選択される一種であることが好ましい。例えば、電気化学デバイスの電解液溶媒として有用なBF錯体を得ることができるからである。
【0028】
上記発明においては、上記置換用有機溶媒が、下記一般式(v)で表される溶媒であることが好ましい。耐酸化性および耐還元性に優れたBF錯体を得ることができるからである。
【0029】
【化4】

【0030】
(一般式(v)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
【0031】
上記発明においては、上記置換用有機溶媒が、メトキシプロピオニトリルであることが好ましい。例えば、電気化学デバイスの電解液溶媒として有用なBF錯体を得ることができるからである。
【発明の効果】
【0032】
本発明においては、例えば二次電池の電解液の溶媒として有用なBF錯体を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明のBF錯体、電気化学デバイス用電解液、リチウム二次電池、およびBF錯体の製造方法について説明する。
【0034】
A.BF錯体
まず、本発明のBF錯体について説明する。本発明のBF錯体は、その構造に応じて、2つの実施態様に大別することができる。以下、本発明のBF錯体について、第一実施態様と、第二実施態様とに分けて説明する。
【0035】
1.第一実施態様
まず、本発明のBF錯体の第一実施態様について説明する。本実施態様のBF錯体は、上記構造式(1)〜(4)で表される化合物からなる群から選択される一種であることを特徴とするものである。
【0036】
本実施態様によれば、上記構造式(1)〜(4)で表されるBF錯体は、沸点が高く凝固点が低く、極性が高いことから、溶媒として有用であるという利点を有する。また、上述したように、BF錯体のBF部は、非常に電子吸引性が強いため、BF部に配位した有機分子の耐酸化性を向上させることができ、全体として耐酸化性に優れた溶媒とすることができる。
【0037】
本実施態様のBF錯体の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、種々の溶質を溶解させる溶媒として用いることができる。具体的には、二次電池やキャパシタ等の電気化学デバイスの電解液用溶媒として用いることができる。すなわち、本実施態様においては、上記構造式(1)〜(4)で表される化合物からなる群から選択される一種であることを特徴とする、電気化学デバイスの電解液用溶媒を提供することができる。特に、本実施態様においては、上記BF錯体を、リチウム二次電池の電解液用溶媒として用いることが好ましい。
【0038】
また、本実施態様のBF錯体は、上記構造式(1)〜(4)で表される化合物からなる群から選択される一種であることを特徴とするものであるが、本実施態様のBF錯体をリチウム二次電池の電解液用溶媒として用いる場合は、上記構造式(1)または(2)で表される化合物からなる群から選択される一種であることが好ましい。Li電解質の溶解性に優れているからである。上記BF錯体は一般的に用いられるLi電解質に対して良好な溶解性を示すが、特に、LiPFに対して優れた溶解性を示す。
【0039】
なお、本実施態様のBF錯体の製造方法としては、例えば原料有機物にBFガスを通気する方法等を挙げることができる。また、後述する「D.BF錯体の製造方法」で説明する方法によっても、本実施態様のBF錯体を得ることができる。本実施態様のBF錯体は、炭素−核磁気共鳴法(13C−NMR法)および水素−核磁気共鳴法(H−NMR法)により同定することができる。
【0040】
2.第二実施態様
次に、本発明のBF錯体の第二実施態様について説明する。本実施態様のBF錯体は、上記一般式(V)で表されることを特徴とするものである。
【0041】
本実施態様によれば、電子吸引性が強いBFに加えて、BFに配位する有機分子中にも電子吸引性基のニトリル基(CN)を有していることから、BFに配位する酸素原子(O)が酸化されにくくなり、耐酸化性に非常に優れたBF錯体とすることができる。さらに、上記一般式(V)で表されるBF錯体は、通常、沸点が高く凝固点が低く、極性が高いことから、溶媒として有用であるという利点を有する。
【0042】
本実施態様のBF錯体の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、種々の溶質を溶解させる溶媒として用いることができる。具体的には、二次電池やキャパシタ等の電気化学デバイスの電解液用溶媒として用いることができる。すなわち、本実施態様においては、上記一般式(V)で表される錯体であることを特徴とする、電気化学デバイスの電解液用溶媒を提供することができる。特に、本実施態様においては、上記BF錯体を、リチウム二次電池の電解液用溶媒として用いることが好ましい。
【0043】
一般式(V)において、Rは、通常、炭素数1〜5のアルキル基であるが、その炭素数は1〜3の範囲内であることが好ましく、1であることがより好ましい。一方、Rは、通常、炭素数2〜5のアルキレン基であるが、その炭素数は2〜3の範囲内であることが好ましく、2であることがより好ましい。なお、Rは、分岐を有しないアルキル基であっても良く、分岐を有するアルキル基であっても良いが、分岐を有しないアルキル基であることが好ましい。このことは、Rについても同様である。また、RおよびRの炭素数は、互いに同じであっても良く、異なっていても良い。
【0044】
特に、本実施態様においては、BF錯体が、下記構造式(5)で表される錯体であることが好ましい。電気化学デバイスの電解液用溶媒として特に有用だからである。
【0045】
【化5】

【0046】
なお、本実施態様のBF錯体の製造方法としては、例えば原料有機物にBFガスを通気する方法等を挙げることができる。また、後述する「D.BF錯体の製造方法」で説明する方法によっても、本実施態様のBF錯体を得ることができる。本実施態様のBF錯体は、炭素−核磁気共鳴法(13C−NMR法)および水素−核磁気共鳴法(H−NMR法)により同定することができる。
【0047】
B.電気化学デバイス用電解液
次に、本発明の電気化学デバイス用電解液について説明する。本発明の電気化学デバイス用電解液は、BF錯体を溶媒として含有するものであるが、そのBF錯体の構造に応じて、2つの実施態様に大別することができる。以下、本発明の電気化学デバイス用電解液について、第三実施態様と第四実施態様とに分けて説明する。
【0048】
1.第三実施態様
本実施態様の電気化学デバイス用電解液は、上記「A.BF錯体」に記載した第一実施態様のBF錯体を溶媒として含有することを特徴とするものである。
【0049】
本実施態様によれば、上記BF錯体を溶媒として用いることにより、広い電位窓を有する電気化学デバイス用電解液を得ることができる。本実施態様に用いられるBF錯体は、BF部分の酸性が非常に強いため、配位している有機分子の電子はBF部分に引き寄せられる。そのため、錯体の有機分子部分の耐酸化性が向上し、広い電位窓を有する電解液とすることができる。
【0050】
本実施態様の電気化学デバイス用電解液は、上記「A.BF錯体」に記載した第一実施態様のBF錯体を溶媒として含有するものである。本実施態様においては、BF錯体が、全溶媒に対して、例えば10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。特に、本実施態様においては、用いられる溶媒が実質的に全てBF錯体であることが好ましい。
以下、本実施態様の電気化学デバイス用電解液について、構成ごとに説明する。
【0051】
(1)BF錯体
本実施態様に用いられるBF錯体については、上記「A.BF錯体」に記載した第一実施態様のBF錯体と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0052】
(2)電気化学デバイス用電解液の溶媒
本実施態様においては、上記「A.BF錯体」に記載した第一実施態様のBF錯体を溶媒として用いる。例えばBF錯体の融点が充分に低い場合は、電気化学デバイス用電解液に用いる溶媒が、全てBF錯体であっても良い。一方、BF錯体の融点が常温よりも高い場合は、通常、BF錯体以外の溶媒を併用する。なお、好ましい溶媒組成については、上述した通りである。
【0053】
BF錯体以外の溶媒としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、およびエチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;エチルメチルエーテル、ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、およびメチルテトラヒドロフラン等のエーテル類;メトキシプロピオニトリル、およびアセトニトリル等のニトリル類;酢酸メチル等のエステル類;トリエチルアミン等のアミン類;メタノール等のアルコール類;およびアセトン等のケトン類;等を挙げることができ、中でもカーボネート類が好ましい。また、BF錯体以外の溶媒として、BF錯体のBFに配位する有機分子を用いても良い。
【0054】
(3)電気化学デバイス用電解液の電解質
本実施態様に用いられる電解質は、上記BF錯体を含む溶媒に溶解するものであれば特に限定されるものではない。また、上記電解質の種類としては、電解液の用途により異なるものであるが、例えば、Li塩、Na塩および四級アンモニア塩等を挙げることができ、中でもLi塩が好ましい。リチウム二次電池に用いることができるからである。
【0055】
上記Li塩としては、一般的なLi塩を用いることができ、特に限定されるものではないが、例えば、LiN(SOCF(LiTFSIと称する場合がある。)、LiN(SO(LiBETIと称する場合がある。)、LiClO、LiBFおよびLiPF等を挙げることができ、中でもLiTFSIおよびLiBeTIが好ましい。LiTFSIやLiBeTI等のリチウムイミド塩は熱分解温度が高く、フッ化水素(HF)の発生を抑制することができるからである。
【0056】
電気化学デバイス用電解液における電解質の濃度は、特に限定されるものではなく、一般的な電解液における濃度と同様であり、特に限定されるものではないが、通常1mol/L程度である。
【0057】
(4)その他
本実施態様の電気化学デバイス用電解液の用途としては、例えば、二次電池、キャパシタまたはセンサ等を挙げることができ、中でも二次電池およびキャパシタが好ましく、特に二次電池が好ましい。さらに、上記二次電池の中でも、本実施態様の電気化学デバイス用電解液は、リチウム二次電池用として用いることが好ましい。
【0058】
2.第四実施態様
本実施態様の電気化学デバイス用電解液は、上記「A.BF錯体」に記載した第二実施態様のBF錯体を溶媒として含有することを特徴とするものである。
【0059】
本実施態様によれば、上記BF錯体を溶媒として用いることにより、広い電位窓を有する電気化学デバイス用電解液を得ることができる。本実施態様に用いられるBF錯体は、電子吸引性が強いBFに加えて、BFに配位する有機分子中にも電子吸引性基のニトリル基(CN)を有していることから、BFに配位する酸素原子(O)が酸化されにくくなり、広い電位窓を有する電解液とすることができる。
【0060】
さらに、本実施態様の電気化学デバイス用電解液は、上述した耐酸化性のみならず、耐還元性にも優れているという利点を有する。耐還元性に優れる理由は、必ずしも明らかではないが、BF錯体が還元分解することで、良好な皮膜を形成するためであると考えられる。耐酸化性を向上させると、耐還元性が相対的に低下する場合もあるが、上記BF錯体を用いた場合は、耐還元性をも向上させることができるという異質な効果を有する。
【0061】
本実施態様の電気化学デバイス用電解液は、上記「A.BF錯体」に記載した第二実施態様のBF錯体を溶媒として含有するものである。上述した耐酸化性を向上させるという点を考慮すると、BF錯体は、全溶媒に対して、例えば10重量%以上であることが好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましい。特に、本実施態様においては、用いられる溶媒が実質的に全てBF錯体であることが好ましい。
以下、本実施態様の電気化学デバイス用電解液について、構成ごとに説明する。
【0062】
(1)BF錯体
本実施態様に用いられるBF錯体については、上記「A.BF錯体」に記載した第二実施態様のBF錯体と同様である。特に、本実施態様においては、上記BF錯体が、上述した構造式(5)で表される錯体であることが好ましい。
【0063】
(2)電気化学デバイス用電解液の溶媒
本実施態様においては、上記「A.BF錯体」に記載した第二実施態様のBF錯体を溶媒として用いる。例えばBF錯体の融点が充分に低い場合は、電気化学デバイス用電解液に用いる溶媒が、全てBF錯体であっても良い。一方、BF錯体の融点が常温よりも高い場合は、通常、BF錯体以外の溶媒を併用する。なお、好ましい溶媒組成については、上述した通りである。
【0064】
BF錯体以外の溶媒については、上記「1.第三実施態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、本実施態様に用いられる電解質、本実施態様の電気化学デバイス用電解液の用途、およびその他の事項についても、上記「1.第三実施態様」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0065】
C.リチウム二次電池
次に、本発明のリチウム二次電池について説明する。本発明のリチウム二次電池は、正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、上記正極層および上記負極層の間に配置されたセパレータと、少なくとも上記セパレータに含浸された電解液とを有するリチウム二次電池であって、上記電解液が、上述した電気化学デバイス用電解液であることを特徴とするものである。
【0066】
本発明によれば、上述したBF錯体を溶媒として含有する電解液を用いることにより、高電圧で使用可能なリチウム二次電池とすることができる。
【0067】
本発明のリチウム二次電池は、少なくとも正極層、負極層、セパレータおよび電解液を有するものである。なお、電解液については、上記「B.電気化学デバイス用電解液」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0068】
本発明に用いられる正極層は、少なくとも正極活物質を含有するものである。上記正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiCoPO、LiMn、LiNiO、LiFePO、LiNi0.5Mn1.5、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiNi0.5Mn0.5、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等を挙げることができ、中でもLiCoOが好ましい。また、上記正極層は、通常、導電化材および結着材を含有する。上記導電化材としては、例えばカーボンブラック、アセチレンブラック等を挙げることができる。上記結着材としては、例えばポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)等のフッ素系樹脂等を挙げることができる。また、本発明のリチウム二次電池は、通常、正極層の集電を行う正極集電体を有する。上記正極集電体の材料としては、例えばアルミニウム、ステンレス、ニッケル、鉄、チタン等を挙げることができる。
【0069】
本発明に用いられる負極層は、少なくとも負極活物質を含有するものである。上記負極活物質としては、例えば金属リチウム、リチウム合金、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物等の金属化合物、および天然グラファイト、ハードカーボン、ソフトカーボン、MCMB(mesocarbon microbeads)、HOPG(Highly Oriented Pyrolytic Graphite)等の炭素材料等を挙げることができ、中でも炭素材料が好ましい。上記負極層は、必要に応じて、導電化材および結着材を含有していても良い。導電化材および結着材については、上記正極層と同様のものを用いることができる。また、本発明のリチウム二次電池は、通常、負極層の集電を行う負極集電体を有する。上記負極集電体の材料としては、例えば銅、ステンレス、ニッケル等を挙げることができる。
【0070】
本発明に用いられるセパレータとしては、一般的なリチウム二次電池に用いられるセパレータ基材と同様のものを用いることができ、特に限定されるものではないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル、セルロースおよびポリアミド等の樹脂を挙げることができ、中でもポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましい。また、本発明に用いられる電池ケースの形状としては、上述した正極層、負極層およびセパレータを収納できるものであれば特に限定されるものではないが、具体的には、円筒型、角型、コイン型、ラミネート型等を挙げることができる。
【0071】
D.BF錯体の製造方法
次に、本発明のBF錯体の製造方法について説明する。本発明のBF錯体の製造方法は、BF部およびエーテル部を有するBF−エーテル錯体と、置換用有機溶媒とを混合する混合工程と、上記BF−エーテル錯体のエーテル部を反応系内から除去する除去工程と、を有し、BF部および置換用有機溶媒部を有するBF錯体を形成することを特徴とするものである。
【0072】
本発明によれば、通常、常温で液体のBF−エーテル錯体と、置換用有機溶媒とを用いることから、液相反応によりBF錯体を形成することができる。そのため、従来のBFガスを吹き込む方法に比べて、取り扱いが容易であるという利点を有する。
【0073】
次に、本発明のBF錯体の製造方法について具体例を用いて説明する。反応式(1)は、BF−メトキシプロピオニトリル錯体の製造方法を示すものである。
【0074】
【化6】

【0075】
反応式(1)は、BF−ジエチルエーテル錯体(BF−エーテル錯体)と、メトキシプロピオニトリル(置換用有機溶媒)とを混合し、BF−ジエチルエーテル錯体のジエチルエーテル部をメトキシプロピオニトリルで置換することにより、BF−メトキシプロピオニトリル錯体を合成する反応である。なお、反応式(1)に示される反応を行う際に、BF−ジエチルエーテル錯体およびプロピオニトリルを混合する混合工程と、例えばアルゴンフロー下室温で撹拌し、さらに加熱状態で減圧蒸留する除去工程とを行う。
以下、本発明のBF錯体の製造方法について、工程毎に説明する。
【0076】
1.混合工程
まず、本発明における混合工程について説明する。本発明における混合工程は、BF部およびエーテル部を有するBF−エーテル錯体と、置換用有機溶媒とを混合する工程である。
【0077】
(1)BF−エーテル錯体
まず、本発明に用いられるBF−エーテル錯体について説明する。本発明に用いられるBF−エーテル錯体は、本発明により得られるBF錯体の原料となる錯体であり、BFのホウ素の空軌道にエーテル基の非共有電子対が配位した構造を有する。また、本発明に用いられるBF−エーテル錯体は、通常、常温で液体である。なお、「常温で液体」とは、25℃において流動性がある状態をいう。
【0078】
また、本発明において、BF−エーテル錯体のエーテル部は、後述する除去工程により反応系内から除去されるものである。そのため、除去工程により除去され易いものであることが好ましい。
【0079】
上記エーテル部を構成するエーテルの沸点は、特に限定されるものではないが、通常−50℃〜70℃の範囲内である。
上記エーテル部を構成するエーテルの分子量としては、特に限定されるものではないが、通常40〜200の範囲内であり、中でも46〜150の範囲内であることが好ましい。
【0080】
上記エーテル部を構成するエーテルの種類としては、用いる置換用溶媒の種類等によって異なるものであるが、具体的にはジエチルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等が挙げられ、中でもジエチルエーテルが好ましい。BF−ジエチルエーテル錯体は市販品として入手可能であるからである。
【0081】
なお、本発明においては、置換用溶媒の、置換に寄与する部分の塩基性が高いほど、置換反応が起きやすい。また、置換反応の逆反応を防ぐためには、BF−エーテル錯体のエーテル部を構成するエーテルの沸点が低く、除去されやすいものであることが好ましい。これらを考慮した上で、用いる材料の組合せを選択することで、容易に所望のBF錯体を得ることができる。
【0082】
(2)置換用有機溶媒
次に、本発明に用いられる置換用有機溶媒について説明する。本発明に用いられる置換用有機溶媒は、通常、液体であり、上述したBF−エーテル錯体のエーテル部と置換するものである。
【0083】
上記置換用有機溶媒は、通常、BFのホウ素の空軌道に配位するものであれば特に限定されるものではないが、通常、非共有電子対を有する官能基を有する。非共有電子対を有する官能基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カーボネート基、エーテル基、エステル基、アミド基、アミノ基、スルホン基、ヒドロキシル基、シアノ基等を挙げることができ、中でもカーボネート基およびエーテル基が好ましい。
【0084】
また、上記置換用有機溶媒は、BFと1:1で配位するものであることが好ましい。なお、例えばエチレンカーボネートやプロピレンカーボネート等のカーボネート類は、カルボニル基の近傍に非共有電子対を有する酸素原子を有するが、カルボニル基がBFのホウ素の空軌道に配位すると、通常、他の酸素原子上の電子密度が低下して上記酸素原子には配位しないため、BFと1:1で配位するものであるといえる。このように、有機分子が複数の非共有電子対を有する場合であっても、実質的にBFと1:1で配位できるものであることが好ましい。
【0085】
また、上記置換用有機溶媒の分子量としては、特に限定されるものではないが、通常46〜300の範囲内である。
【0086】
このような有機分子としては、具体的には、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびメトキシエチルメチルカーボネート等のカーボネート類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびテトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;メトキシプロピオニトリル、およびアセトニトリル等のニトリル類;酢酸メチル、およびプロピオン酸メチル等のエステル類;トリエチルアミン等のアミン類;およびアセトン等のケトン類;等を挙げることができる。
【0087】
特に、本発明においては、上記置換用有機溶媒が、ジメトキシエタン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメトキシエチルメチルカーボネートからなる群から選択される一種であることが好ましい。
【0088】
また、本発明においては、上記置換用有機溶媒が、下記一般式(v)を有する溶媒であることが好ましい。耐酸化性および耐還元性に優れたBF錯体を得ることができるからである。
【0089】
【化7】

【0090】
(一般式(v)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
なお、一般式(v)におけるRおよびRの好ましい範囲については、上述した一般式(V)で表されるBF錯体におけるRおよびRの好ましい範囲と同様である。特に、本発明においては、置換用有機溶媒が、メトキシプロピオニトリルであることが好ましい。
【0091】
(3)BF−エーテル錯体と置換用有機溶媒との混合
BF−エーテル錯体と置換用有機溶媒との混合比としては、特に限定されるものではないが、モル比で通常1:0.5〜2.0の範囲内であり、中でも1:1であることが好ましい。BF−エーテル錯体の混合比が大きすぎると、BF−エーテル錯体の大半が無駄になり、BF−エーテル錯体の混合比が小さすぎると、置換用有機溶媒の大半が無駄になり、コスト上好ましくないからである。
【0092】
2.除去工程
次に、本発明における除去工程について説明する。本発明における除去工程は、上述したBF−エーテル錯体のエーテル部を反応系内から除去する工程である。
【0093】
BF−エーテル錯体のエーテル部を反応系内から除去する方法としては、例えば、不活性ガスを流通させる方法、加熱する方法、減圧する方法等を挙げることができる。また、これらの方法を組み合わせて用いても良い。
【0094】
上記不活性ガスを流通させる方法において、用いられる不活性ガスとしては、例えば窒素やアルゴン等を挙げることができる。また、不活性ガスを流通させる際には、室温程度で、混合溶液を撹拌することが好ましい。なお、撹拌時間は、特に限定されるものではないが、通常、50時間以上である。
【0095】
また、上記加熱する方法において、その加熱温度としては、用いられるBF−エーテル錯体や置換用有機溶媒の種類によって異なるものであるが、通常40℃〜90℃の範囲内である。
【0096】
また、上記減圧する方法において、その圧力としては、用いられるBF−エーテル錯体や置換用有機溶媒の種類によって異なるものであるが、通常200mmHg〜500mmHgの範囲内である。
【0097】
3.BF錯体
次に、本発明により得られるBF錯体について説明する。本発明により得られるBF錯体については、「A.BF錯体」に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。また、本発明により得られるBF錯体は、炭素−核磁気共鳴法(13C−NMR法)および水素−核磁気共鳴法(H−NMR法)により同定することができる。
【0098】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0099】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明する。
[実施例1−1]
BF−エーテル錯体としてBF−ジエチルエーテル錯体を用意し、置換用有機溶媒としてジメトキシエタン(DME)を用意し、両者を0.1molずつ等モル混合し、窒素フロー下室温で50時間以上撹拌した。撹拌中、ジエチルエーテル等の蒸発による質量減少が観測された。その後、加熱温度60℃、圧力6mmHgの条件で減圧蒸留を行い、BF−ジメトキシエタン錯体を得た。
得られたBF−ジメトキシエタン錯体について、13C−NMR法およびH−NMR法により測定を行った。その結果を図1および図2に示す。NMRスペクトルの結果から、BF−ジメトキシエタン錯体が合成されていることが確認された。また、得られたBF−ジメトキシエタン錯体の沸点は56℃/6mmHgであった。
【0100】
[実施例1−2〜1−6]
置換用有機溶媒、および減圧蒸留の条件を表1に示すように変化させたこと以外は、実施例1−1と同様にして、BF錯体を得た。
【0101】
【表1】

【0102】
なお、表中、EC、PC、DEC、MEMCおよびMPNは、それぞれエチレンカーボンネート、プロピオレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メトキシエチルメチルカーボネートおよびメトキシプロピオニトリルを表す。また、得られたBF錯体について、13C−NMR法およびH−NMR法による測定を行った。その結果を図3〜12に示す。いずれの実施例においても目的のBF錯体が合成されていることが確認された。
【0103】
[実施例2−1]
実施例1−1で得られたBF−DME錯体に対して、LiTFSI、LiPF、およびLiBFをそれぞれ0.5molkg−1となるように溶解させ、電解液を得た。次に、SUS電極を用いて、この電解液のイオン伝導度を交流インピーダンス法により測定した。各温度におけるイオン伝導度をアレニウスプロットしたグラフを図13に示す。
【0104】
[実施例2−2]
実施例1−1で得られたBF−DME錯体の代わりに、実施例1−3で得られたBF−PC錯体を用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして電解液を得た。イオン伝導度の測定結果を図14に示す。
【0105】
[実施例2−3]
実施例1−1で得られたBF−DME錯体の代わりに、実施例1−5で得られたBF−MEMC錯体を用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして電解液を得た。イオン伝導度の測定結果を図15に示す。
【0106】
[実施例2−4]
実施例1−1で得られたBF−DME錯体の代わりに、実施例1−6で得られたBF−MPN錯体を用いたこと以外は、実施例2−1と同様にして電解液を得た。イオン伝導度の測定結果を図16に示す。
【0107】
[評価]
実施例2−1〜2−4より明らかなように、BF−DME錯体、BF−PC錯体、BF−MEMC錯体およびBF−MPN錯体は、いずれも良好なイオン伝導性を示した。
【0108】
[実施例3−1]
原料有機溶媒としてメトキシプロピオニトリル(MPN)を用意し、0℃窒素雰囲気中でBFガスを20分以上通気したところ、白濁した液体を得た。得られた液体を冷却しながら濾過することで、固体を濾別しBF−MPN錯体を得た。なお、得られたBF−MPN錯体は、常温で液体であった。
【0109】
[評価]
実施例3−1で得られたBF−MPN錯体と、MPNとを用意し、(1)BF−MPN錯体のみからなる溶媒、(2)BF−MPN錯体とMPNとをモル比2:1で混合した混合溶媒、(3)BF−MPN錯体とMPNとをモル比1:1で混合した混合溶媒、(4)BF−MPN錯体とMPNとをモル比1:2で混合した混合溶媒、(5)MPNのみからなる溶媒、という5種類の溶媒を準備した。次に、これらの溶媒に、LiTFSIを1Mとなるように溶解させ、5種類の電解液を得た(それぞれ電解液(1)〜(5)とする。)。
【0110】
次に、得られた電解液に対して、酸化電位および還元電位を測定した。酸化電位の測定は、作用極にグラッシーカーボン、並びに、対極および参照極にリチウム金属を備えた3極式セルを用いて、リニアスィープボルタンメトリー法により行った。測定の際、作用極の電位を浸漬電位から高電位側に掃引した。掃引速度は5mVsec−1であった。一方、還元電位の測定は、上記と同様に、3極式セルを用いてリニアスィープボルタンメトリー法により行った。測定の際、作用極の電位を浸漬電位から低電位側に掃引した。掃引速度は5mVsec−1であった。得られた結果を図17に示す。
【0111】
図17に示されるように、BF−MPN錯体を有さない電解液(5)は、電位約5VvsLi/Li程度から、電流値の上昇が確認された。なお、作用極にグラッシーカーボンを用いる場合、特に活性なRedOx系が電極中および溶液中に存在しないため、ここで確認された電流は電解液自身の酸化分解によるものであると考えられる。これに対して、BF−MPN錯体を有する電解液(1)〜(4)は、5VvsLi/Li付近の電位ではほとんど電流が流れず、耐酸化性に優れていることが示された。また、全溶媒に占めるBF−MPN錯体の割合が増加すると、それに応じて耐酸化性が向上することが確認された。特に、BF−MPN錯体のみを溶媒として用いた電解液(1)は、6VvsLi/Li付近の電位でもほとんど電流が流れず、耐酸化性が極めて優れていた。
【0112】
一方、電解液(1)では、電位約0.5VvsLi/Li程度から、還元電流が確認された。これは、電解液自身の還元分解によるものであると考えられる。一方、電解液(1)〜(4)では、−0.5VvsLi/Liまで電流がほとんど流れず電解液の耐還元性が向上していることが確認された。また、電位約1VvsLi/Li付近で、低レベルの還元電流が確認されるが、ここで、BF錯体が還元分解し、良好な皮膜を形成したものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】BF−ジメトキシエタン錯体のH−NMRスペクトルである。
【図2】BF−ジメトキシエタン錯体の13C−NMRスペクトルである。
【図3】BF−エチレンカーボネート錯体のH−NMRスペクトルである。
【図4】BF−エチレンカーボネート錯体の13C−NMRスペクトルである。
【図5】BF−プロピレンカーボネート錯体のH−NMRスペクトルである。
【図6】BF−プロピレンカーボネート錯体の13C−NMRスペクトルである。
【図7】BF−ジエチルカーボネート錯体のH−NMRスペクトルである。
【図8】BF−ジエチルカーボネート錯体の13C−NMRスペクトルである。
【図9】BF−メトキシエチルメチルカーボネート錯体のH−NMRスペクトルである。
【図10】BF−メトキシエチルメチルカーボネート錯体の13C−NMRスペクトルである。
【図11】BF−メトキシプロピオニトリル錯体のH−NMRスペクトルである。
【図12】BF−メトキシプロピオニトリル錯体の13C−NMRスペクトルである。
【図13】BF−ジメトキシエタン錯体のイオン伝導度を示すグラフである。
【図14】BF−プロピオレンカーボネート錯体のイオン伝導度を示すグラフである。
【図15】BF−メトキシエチルメチルカーボネート錯体のイオン伝導度を示すグラフである。
【図16】BF−メトキシプロピオニトリル錯体のイオン伝導度を示すグラフである。
【図17】BF−メトキシプロピオニトリル錯体を含有する電解液の酸化電位および還元電位を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式(1)〜(4)で表される化合物からなる群から選択される一種であることを特徴とするBF錯体。
【化1】

【請求項2】
下記一般式(V)で表されることを特徴とするBF錯体。
【化2】

(一般式(V)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
【請求項3】
前記BF錯体が、下記構造式(5)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載のBF錯体。
【化3】

【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載のBF錯体を溶媒として含有することを特徴とする電気化学デバイス用電解液。
【請求項5】
正極活物質を含有する正極層と、負極活物質を含有する負極層と、前記正極層および前記負極層の間に設置されたセパレータと、少なくとも前記セパレータに含浸された電解液とを有するリチウム二次電池であって、
前記電解液が、請求項4に記載の電気化学デバイス用電解液であることを特徴とするリチウム二次電池。
【請求項6】
BF部およびエーテル部を有するBF−エーテル錯体と、置換用有機溶媒とを混合する混合工程と、
前記BF−エーテル錯体のエーテル部を反応系内から除去する除去工程と、
を有し、BF部および置換用有機溶媒部を有するBF錯体を形成することを特徴とするBF錯体の製造方法。
【請求項7】
前記BF−エーテル錯体が、BF−ジエチルエーテル錯体であることを特徴とする請求項6に記載のBF錯体の製造方法。
【請求項8】
前記置換用有機溶媒が、ジメトキシエタン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、およびメトキシエチルメチルカーボネートからなる群から選択される一種であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のBF錯体の製造方法。
【請求項9】
前記置換用有機溶媒が、下記一般式(v)で表される溶媒であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載のBF錯体の製造方法。
【化4】

(一般式(v)中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数2〜5のアルキレン基である。)
【請求項10】
前記置換用有機溶媒が、メトキシプロピオニトリルであることを特徴とする請求項9に記載のBF錯体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−94825(P2008−94825A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−110568(P2007−110568)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】