説明

CCK−B/ガストリン受容体に対する免疫原性組成物および腫瘍の治療法

本発明は、ガストリン依存性腫瘍を治療するための、免疫原、免疫原性組成物、および方法に関する。免疫原は、免疫原性キャリアと抱合したガストリン受容体免疫模倣ペプチドを含む。免疫原は、ガストリン応答性悪性腫瘍または前悪性腫瘍のガストリン受容体(GR)に結合する抗体をin vivoで誘導し、それにより増殖刺激ペプチドホルモンが受容体に結合するのを阻止して、腫瘍細胞増殖を阻害する能力を有する。本発明はまた、受動免疫化のための、ガストリン受容体に対する特異的抗体に関する。そのうえさらに、本発明は細胞毒性分子で誘導体化された抗GR抗体を含む。本発明はまた、本発明の抗体を用いて、in vivoで、または組織生検からガストリン依存性腫瘍を検出する診断法に関する。能動および受動免疫化は、組み合わせて、GR、G17および/またはG17−Glyに対する免疫応答を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連する出願の相互参照]
本出願は、出願第09/076,372号の一部継続出願であり、1997年5月12日に出願された米国仮出願第60/046,201号の米国特許法第119条第(e)項に基づく優先権を主張する。
【0002】
[発明の背景]
ガストリンは、テトラトリアコンタガストリン(G34)およびヘプタデカガストリン(G17)の2種の形で生じるペプチドホルモンであり、幽門洞(stomach antrum)にある、特殊化細胞のG細胞により合成および分泌される。ホルモンは循環血液中に分泌されて、胃の特定の細胞、すなわち腸クロム親和性細胞様(ECL)細胞および壁細胞に結合し、これが間接的または直接的に胃酸の分泌量(output)に影響を及ぼす。歴史的には、ガストリンホルモンは胃酸分泌の刺激を伴うものとされてきた(Edkins, J. S. 1905)。(本明細書中に記載される参照のための全引用は、特許請求の範囲に先立つ参照の項で提供される。)近年では、ガストリンは胃腸管内で栄養因子として作用する可能性があること(Johnson, L. 1997)、ならびに胃腸管癌(Watson et al. 1989, Dickinson, C. J. 1995)および肺の小細胞癌を始めとする非胃腸管癌(Rehfeld et al. 1989)の成長を促進し得ることの証拠が積み上げられてきた。ガストリンの翻訳後プロセシングにおいて、その5個のカルボキシ末端アミノ酸を介して高親和性でコレシストキニンB/ガストリン受容体に結合するのは、「成熟」カルボキシアミド化形である(Kopin et al. 1992)。CCK−B/ガストリン受容体(GR)は、Gタンパク質を介して、様々な遺伝子の発現を順に制御する細胞内シグナル伝達経路にカップリングした膜貫通タンパク質である。
【0003】
CCK−B/ガストリン受容体は、CCKとガストリンの両方に対して等しい親和性を有する7個の膜貫通ドメインを有する、Gタンパク質結合受容体のファミリーに属する(Soll et al. 1984)。この受容体は、脳で優勢的に見いだされたことから、CCKB型受容体と名付けられた(Wank et al. 1992)。受容体は、その後、胃の壁細胞およびECL細胞の末梢CCK/ガストリン受容体(GR)と同一であることが見いだされた(Nakata et al. 1992)。この受容体は、多数の正常組織(Fourmy et al. 1984, Grider et al. 1990)および腫瘍組織(Singh et al. 1990, Watson et al. 1993)で十分に特性決定されてきており、ラット膵臓腺癌細胞株AR42Jを用いて広く研究されてきている(Scemama et al. 1987)。AR42J GR cDNAは、クローニングおよび配列決定されており、そしてラットとヒト脳とではGRのDNA配列に90%を超える相同性が、そしてイヌ壁細胞GR cDNAの配列には84%を超える相同性があり(Wank, S. A. 1995)、種と種の間でさえ高い配列相同性を実証している。
【0004】
複数の型の腫瘍、例えば結腸直腸腺癌、胃腺癌、膵臓腺癌、および肝細胞腺癌は、それらの形質膜にGRを保有すること、およびそれらが強力な細胞増殖でガストリンに応答することが示されている(Rehfeld, J. F. 1972, Upp et al. 1989 and Watson et al. 1993)。さらに最近では、これらの癌細胞の多くがガストリンの分泌も行い、したがって自律増殖経路に影響を及ぼすことが発見されている(Van-Solinge et al. 1993, Nemeth et al. 1993, Seva et al. 1994 and 1995)。
【0005】
ペプチドホルモンの、ガストリン17(G17)およびガストリン34(G34)は、正常細胞の細胞膜上のGRに結合する。しかしながら、G17はガストリン依存性癌細胞の増殖を刺激するが、G34は刺激しないことが見いだされている。血清付随G17は、特に、腫瘍細胞のCCK−B/ガストリン受容体(Watson et al. 1993 and 1996)に媒介される内分泌様式で、結腸直腸腫瘍の成長を刺激する潜在能力を有する。G17は、腫瘍細胞のGRに対する親和性が、他のガストリンホルモン種に勝って増加する可能性があるため、結腸直腸腺癌の成長を刺激するのに特に関係しているらしい(Rehfeld 1972)。GRは、56.7%のヒト原発性結腸直腸腫瘍において、高親和性形で発現されることが見いだされた(Upp et al. 1989)。そのような腫瘍によるガストリンペプチド前駆体の内因性産生のため、強力な(potential)オートクラインループもまた存在する可能性があると仮定されている(Van- Solinge et al. 1993 and Nemeth et al. 1993)。得られたG17リガンド/受容体複合体は、細胞機能を調節する二次メッセンジャーを介して、細胞増殖を刺激する(Ulrich et al. 1990)。G17のGRへの結合は、ホスファチジルイノシトール分解の活性化、タンパク質リン酸化酵素C活性化および結果として細胞内カルシウムイオン濃度の増加、ならびに分裂促進因子活性化タンパク質リン酸化酵素を介したc−fos遺伝子およびc−jun遺伝子の導入(これは細胞増殖の調節に関係している)を導く(Todisco et al. 1995)。さらに、GRに結合したガストリンは、続いてチロシンリン酸化酵素、ppl25FADK(局所接着リン酸化酵素)によるリン酸化の増加を伴い、これもまた、細胞増殖シグナルの伝達の役割を担っている可能性がある(Tanaguchi et al. 1994)。
【0006】
多数の高親和性CCK−B/ガストリン受容体アンタゴニストが、多数の試験胃腸管癌で、in vitroおよびin vivoの両方で、治療面で評価されてきた。例えば、グルタミン酸誘導体のプログルミド(Seva et al. 1994; Harrison et al. 1990 and Watson et al. 1991a)、トリプトファンのN−アシル誘導体であるベンゾトリプト(Benzotrypt)、アスペルクリン(Aspercillin)誘導体のL−365,260(Bock et al. 1989)、およびCCKのペンタペプチド配列のC−末端を模倣した分子であるCI−988(Hughes et al. 1990)は、in vitroおよびin vivoの両方の胃腸管腫瘍成長における外因性ガストリンの影響を効果的に中和することが示されている(Watson et al. and Romani et al. 1994)。しかしながら、これらのアンタゴニストは、重篤な毒性の副作用を有し、かつ、それらは正常細胞の受容体の全ての潜在的リガンド(G34およびCCKなど)の作用を遮断するといったように、特異性を欠いている。最近では、YM022(Yuki et al., 1997)およびYF476(Takinami et al. , 1997)などの非常に強力かつ選択的なCCKB/ガストリン受容体アンタゴニストもまた、記載されている。
【0007】
プログルミドおよびベンゾトリプトは、前臨床試験で広く評価されている。これらの化合物が有する主な問題は、G17と置換するのに必要な比較的高い濃度では、それらの効力が失われることである(Watson et al., 1992a; Watson et al., 1992b)。これにも関わらず、プログルミドおよびベンゾトリプトは、多数の細胞株の基礎増殖およびガストリン刺激増殖を阻害した(Seva et al., 1990; Watson et al., 1991a)。また、プログルミドは、ガストリン感受性マウス結腸腫瘍、MC26を保持する異種移植マウスの生存を、対象動物で25日から、処置動物で39日まで増加させた。
【0008】
GRに対するガストリン拮抗性薬剤のこのクラスの低い特異性のため、腫瘍成長の阻害は、ガストリンアンタゴニストで効果的に制御することができない可能性がある。そのうえ、ガストリンを認識して結合する細胞性受容体は、試験したインヒビター全てに結合しなかった(Seva et al. 1994)。したがって、受容体に結合するガストリンの完全な阻害がオートクライン増殖カスケードで起こらない場合には、ガストリンアンタゴニストは、腫瘍成長促進のこの機構を遮断することができない可能性がある。
【0009】
[発明の概要]
GRを保持する腫瘍を治療するための異なるアプローチは、宿主の免疫系を、GRを標的とすることにより腫瘍を特異的に攻撃するように仕向けることである。
【0010】
このような背景で、本発明は、ガストリンに対する受容体を発現する、免疫原性組成物および腫瘍を治療する免疫学的方法を提供する。本方法は、CCK−B/ガストリン受容体免疫原(GR免疫原)または抗CCK−B/ガストリン受容体抗体(抗GR Ab)を用いた、患者の能動または受動免疫化を含む。免疫原により誘導される抗体は、腫瘍細胞のCCK−B/ガストリン受容体(GR)に対して特異的であり、そして受容体上のガストリンの成長促進効果を遮断する。抗体は、ガストリンペプチドホルモンがガストリン依存性腫瘍細胞のGRに結合するのを阻止する。したがって、腫瘍の成長が停止する。さらに、受容体のNH末端に特異的な抗体は、受容体への結合に際して、内部化されて迅速に腫瘍細胞の細胞質および核中に移動する。この内部化は、細胞を抗体に暴露してから10秒後もの早さで起こることができ、そしてガストリンホルモン結合と独立して起こる。抗体/受容体複合体のこの迅速な内部化は、次に、アポトーシスまたは自殺を起こすように影響を及ぼされた腫瘍細胞を引き起こす。
【0011】
本発明の免疫原は、免疫原の免疫模倣部分として、ヒトGR由来の天然または合成ペプチドを含む。受動または能動免疫化が主に細胞外ドメインに対して向けられているものの、生検標本のGR診断手順は、例えば、腫瘍発現突然変異型配列の構造的再配列を同定するように、GRの細胞内ドメインに対して特に向けられた抗体も利用し得る。
【0012】
したがって、本発明はGR免疫模倣ペプチドエピトープの幅広い補体を提供する。これらのガストリン受容体特異的ペプチドエピトープの頭字語は、以下に記載されるとおり、各種配列間で識別ナンバー(numerical distinction)をつけたGREである(以前はGRPとされていた)。
【0013】
免疫原はまた、免疫模倣ペプチドの末端に結合させたスペーサーペプチド配列を含んでもよい。免疫原はまた、ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド、ウシ血清アルブミンなどのタンパク質キャリアと抱合していてもよい。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、GRに対する免疫化法は能動免疫を含み、患者は免疫原で免疫される。GRE免疫原は、腫瘍細胞上のGRに対する抗体産生を刺激する。GRE免疫原により産生された抗体は、腫瘍細胞上のGRに結合して、ガストリンペプチドホルモンの受容体への結合を効果的に阻止し、それにより腫瘍細胞区画のオートクライン成長刺激経路を、そして最終的に腫瘍の成長を阻害する。
【0015】
また、能動免疫は、または受動免疫化もまた、例えば、5−FU/ロイコボリンを用いる化学療法的治療と組み合わせて投与され得る。
【0016】
本発明の別の実施形態において、GRに対する外因性抗体が腫瘍細胞のGRに結合するのに十分な濃度で患者に投与され、それによりリガンドが受容体に結合するのを遮断するという点で、治療法は受動免疫化を含む。本発明のこの態様の別の実施形態において、ヒト治療用抗体は、当該技術分野で既知である方法により産生することが可能な、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体であり得る、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよい。抗GR抗体は、IgG特異的、またはGR特異的リガンド交換マトリクスを用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、さらに精製され得る。特異的リガンドは、GRE免疫模倣ペプチドに由来する。
【0017】
また、抗GR抗体は、腫瘍細胞の殺傷を向上させるために、コレラもしくはジフテリアもしくはリシン毒素などの細胞毒性分子と、または99イットリウム、111インジウム、125ヨウ素、および131ヨウ素などの放射性核種で標識した放射性分子とさらに抱合されてもよい。抗GR抗体はまた、リポソームがGR陽性腫瘍を標的とするように、リポソーム表面に結合されてもよい。そのような標的化リポソームは、放射性核種および/または細胞毒性剤を始めとする抗腫瘍剤を含有し得る。また、これらのGR標的化リポソームは、例えばCOX−2(シクロ−オキシゲナーゼ−2)またはHB−EGF(ヘパリン結合上皮細胞成長因子様成長因子)などの、ガストリンの下流標的に対して向けられた他の薬剤のビヒクルとして働き得る。
【0018】
本発明はまた、本発明の抗体を用いた、組織生検からのガストリン応答性(ガストリン受容体含有)腫瘍の免疫化学的検出を含む、ガストリン応答性腫瘍を診断する方法を提供する。本発明の特異的抗GR抗体は、標準免疫化学手順を用いて腫瘍組織中のガストリン受容体を検出するのに、ビオチン、西洋ワサビペルオキシダーゼ、およびフルオレセインなどの化合物を用いる検出系で標識され得る。
【0019】
本発明はまた、抗GR抗体を用いた、ガストリン依存性(CCK−B/ガストリン受容体含有)腫瘍のin vivo検出を含む、ガストリン依存性腫瘍を診断する方法を提供する。この方法は、GR発現腫瘍を保持する患者に静脈内注射を介して有効用量の放射標識化抗CCK−B/ガストリン受容体抗体を投与すること、および、標準シンチグラフィー走査手順により、腫瘍細胞の細胞膜に結合した抗GR抗体を有する腫瘍細胞を画像化または検出することを含む。本発明のこの態様において、抗GR抗体は、99テクネチウム、111インジウム、90イットリウム、および131Iなどの検出可能な放射性核種で標識され得る。
【0020】
[発明の詳細な説明]
本発明の方法は、ヒトを始めとする動物のガストリンホルモン依存性腫瘍の治療に関し、ホルモンの成長促進効果を阻害するために受容体へのホルモンの結合を阻止するように、免疫された患者で腫瘍細胞上のCCK−B/ガストリン受容体(GR)に結合する抗体を産生する抗CCK−B/ガストリン受容体免疫原を患者に投与することを含む。GR免疫模倣ペプチドは、GRの外部から到達できる部分またはエピトープに対して向けられた抗体を産生するのに有利なように選択される。
【0021】
より重要なことに、臨床的観点から、免疫原は、迅速に内部化され、細胞質を横切って核に入る受容体/抗GRE1抗体複合体を形成する能力がある抗体を産生するように構築される。この反応は、影響を受けた腫瘍細胞が自殺をすること(アポトーシス)の引き金となると思われる。
【0022】
免疫原は、免疫模倣物(immunomimic)として作用する、ヒトGRの天然もしくは合成ペプチドを含む。免疫模倣物として開発されてきた各種の合成ペプチドを表1にまとめる。有効エピトープを含み、GRのアミノ酸配列から開発されたこれらのペプチドは、in vivoおよびin vitroの両方で、腫瘍細胞のGRと交差反応性である抗体を誘導する能力がある。例えば、GRE1エピトープは、CCK−B/ガストリン受容体配列の5から21、KLNRSVQGTGPGPGASL(配列表の配列番号1)までのアミノ酸からなる。GRE1は、受容体のアミノ末端領域に由来し、そして細胞膜の細胞外表面上に位置する(図1参照)。GRE11などの他の配列は、GRのアミノ末端を含む。
【0023】
別の実施形態において、免疫原はエピトープGRE4を含み、これはGRの以下のアミノ酸配列、GPGAHRALSGAPISF(配列表の配列番号6)か、または合成スペーサーを備えたペプチドであるGRE4−Ser(配列番号7)からなる。GRE4は受容体の第四細胞外ドメインの一部であり、そしてこれもまた形質膜の細胞外表面上にある(図1参照)。
【0024】
別の実施形態において、免疫原はエピトープGRE9またはエピトープGRE10を含み、腫瘍細胞によりほとんど独占的に発現される胃受容体(GR)の変異体のアミノ酸配列からなる。例えば、この領域に対して誘導された、抗血清、精製IgG、またはモノクローナル抗体が、患者から収集した生検標本で、診断目的で用いられ得る。
【0025】
表1に列挙されるように、異なるGRエピトープを含む各種の合成ペプチドが、ガストリン結合の遮断、およびアポトーシスを導く可能性がある受容体の内部化の能力がある抗GR抗体を誘導し得る。
【0026】
【表1】

表1:ガストリン受容体免疫模倣ペプチド
【0027】
例えば、表1にペプチドGRE1 Ser(配列番号4)を含むように、このスペーサー配列がGRE1エピトープと組み合わせられる。
【0028】
合成ペプチドGRE11〜GRE15は、GRのN末端から残基1(GRE11(すなわちGR1〜22))、残基2(GRE12)、残基3(GRE13)、残基4(GRE14)、および残基5(GRE15)で始まる配列を含み、全て残基22で配列が終わる。GRE16は、残基2で始まり残基12で終わるさらに短いペプチドにカルボキシ末端SSCスペーサーを保有させたものである。GRE17は残基11で始まり残基22で終わるGRE1のフラグメントである。GRE11Sは、GRE11のSerスペーサー伸長形を示す。
【0029】
免疫原はまた、免疫模倣ペプチドをタンパク質キャリアから突出させるのに、およびリンパ球受容体に結合するその能力を向上させるのに適した、エクステンションまたはスペーサーペプチドを含んでもよい。適したスペーサーペプチドは、アミノ酸配列SSPPPPC(セリン(Ser)スペーサー、配列表の配列番号3)を含む。しかしながら、例として、表1に示すように、他のスペーサーペプチドもまた適しているだろう。スペーサーペプチドはGR由来ペプチドと免疫学的に関連せず、それゆえ、受容体由来ペプチドの特異的免疫原性を、決定するのではなく、向上させるのに用いられる。
【0030】
表1に示すように、各種ペプチド免疫原は、スペーサーペプチドを保有するように随意に改変され得る。有効な免疫原性構築物において、合成ペプチドGRE1は、そのアミノ末端またはそのカルボキシ末端でスペーサーペプチドを保有するように改変され得る。本発明の実施形態によれば、例えば、改変にはC末端SSPPPPC(Serスペーサー)もしくはAAC、またはN末端CGGが含まれるが、これらに限定されない。
【0031】
スペーサーを有した、または有さない免疫模倣ペプチドは、カルボキシ末端で、システイン残基を介して、ジフテリアトキソイドなどのタンパク質キャリアに抱合される。
【0032】
患者の腫瘍細胞上のGRの存在および密度は、標識化抗受容体抗体を腫瘍生検から得られた試料と反応させることにより、決定され得る。抗受容体抗体は、動物を、本発明の免疫原で免疫することにより得ることができる。抗受容体抗体は、放射性トレーサー、色素、または蛍光標識のいずれかで標識される。また、腫瘍細胞のガストリンに対する応答性は、標準技法を用いて、患者の腫瘍生検試料からin vitroで評価され得る。抗GR抗体タグに陽性である腫瘍を有する患者は、本発明の方法による治療の代表的な候補者である。
【0033】
0.001〜2mgの範囲の有効投薬量の免疫原性組成物が、胃腸管癌の治療のため患者に投与される。免疫原性組成物の有効投薬量は、有効レベルのGRに対する抗体からなる免疫応答を免疫化の1〜3カ月後に患者に惹起できるはずである。患者の免疫化に続いて、腫瘍の存在および大きさを検出するために、超音波および核磁気共鳴画像法(MRI)などの標準的な臨床手順により免疫原の有効性がモニタリングされる。受容体に対する抗体の力価レベルもまた、患者から採取された血液試料からモニタリングされてもよい。有効抗体力価を維持するために必要に応じてブースター免疫化が与えられるべきである。ガストリン依存性癌(胃腺癌、肝臓腺癌、膵臓腺癌、および結腸直腸腺癌など)の本方法によるそのような治療は、腫瘍成長の阻害および腫瘍の大きさの減少をもたらすはずである。
【0034】
本発明のGRペプチド免疫原により産生した抗体は、3通りの可能な機構により、ガストリン依存性腫瘍に対して抗栄養効果を有する可能性がある。(i)ガストリンがその受容体に結合することの阻害、(ii)腫瘍細胞増殖のシグナル伝達経路の分解または分断、(iii)受容体/抗体複合体が内部化して核内に移動した細胞でのアポトーシス(すなわち細胞の自殺)の誘導、および殺傷機構を伴う免疫応答(抗体依存性細胞性細胞毒性または補体媒介溶解またはオプソニン作用(opsonization)など)。
【0035】
本発明の別の実施形態において、抗GR抗体は、ガストリン応答性腫瘍を有する患者に直接投与される。外因性抗体は、腫瘍細胞のGR補体に特異的に結合する。抗体の受容体への結合は、ガストリンの細胞膜中のその受容体への結合を阻止し、それゆえ、ガストリン依存性腫瘍細胞の増殖シグナルが阻害されて腫瘍の成長が停止される。
【0036】
これらの外因的に産生された抗体は、腫瘍細胞に毒性物質を送達することにより、形質膜上にGRを有する腫瘍細胞を殺傷するのにも有用であるかもしれない。例えば、治療に適した抗CCK−B/ガストリン抗体は、図1にそれぞれGRE1およびGRE4として示される、受容体タンパク質の細胞外ドメイン1および4と反応性のものである。GRE11、GRE6、GRE9、GRE12、GRE13、またはGRE14などのGRエピトープに対して産生した抗体は、受容体タンパク質のアミノ酸配列を特異的に認識して結合する。抗体は、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、モノクローナル抗体、またはヒトモノクローナル抗体であってもよい。本方法の免疫化での腫瘍成長の阻害は、超音波画像化およびMRIによってもモニタリングされ、そして患者によって必要とされれば繰り返し免疫化が行われる。
【0037】
抗体はまた、標的受容体に有効に結合するそれらのそのような抗体の反応性フラグメント(すなわち、F(ab)またはFab)でもあることができ、そして米国特許第5,023,077号、米国特許第5,468,494号、米国特許第5,688,506号、および米国特許第5,662,702号に開示されるものなどの標準技法により産生されてもよい(これらの開示は本明細書中で参照により援用される)。フラグメントは、当該技術分野で既知のとおり、パパインまたはペプシンでの酵素的消化により産生されてもよい。あるいは、特異的抗原結合フラグメントが、組換えDNAまたは固相ペプチド合成により産生されてもよい。
【0038】
腫瘍細胞成長を阻止し腫瘍細胞を殺傷する抗体の有効性は、細胞毒性分子への抱合化により向上し得る。細胞毒性分子は、例えば、コレラ毒素、リシン、α−アマニチンなどの毒素、または例えば125Iもしくは131Iで標識された放射性分子、あるいは例えば、シトシンアラビノシドもしくは5−フルオロウリジンなどの化学療法薬であり得る。
【0039】
抗GRE抗体は、親和性精製抗体、ヒト化抗体もしくはヒト抗体、ポリクローナル抗体、またはモノクローナル抗体であってもよく、細胞毒性分子に抱合した場合に、したがって特異的標的化キャリアタンパク質として作用し得る。抗体は、精製IgGフラクションとして、またはF(ab)もしくはFabフラグメントなどのさらに改変した形で用いられることが理解される。したがって、抗体の結合は、Fcフラグメントと無関係である。抗原結合部分もまた、腫瘍組織の透過の改善、またはもし必要であれば、ヒト血液脳関門の通過さえもできるだろう。
【0040】
抗GRE抗体はさらに、抗癌効果の補助要素のキャリアとして用いることができ、抗癌効果として、タキサン、シスプラチン、オキシプラチン、カンプトテシン/カンプトサール、ルベテカン、シクロホスファミド、ドキシルビシン、マイトマイシンC、ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド、ノスカピン、カルボプラチン、5−フルオロウリジン、そしてさらにゲムシタビンまたはイリノテカン(irinotecan)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
あるいは、適切なGR含有腫瘍細胞を標的としてこれに実質的な量の抗癌剤を輸送するように、抗GR抗体は、リポソーム膜に組み込まれ得る。リポソームは、標準技法により調製される(米国特許第4,691,006号を参照)。
【0042】
各種の型および量の抱合化抗GRE IgGキャリアが、必要性および抗腫瘍効果に基づいて、担当医により治療に選択される。一般に、単位投薬量は、タンパク質が0.020mg〜500mgの範囲であり、投与の頻度の点から、治療の過程でこの範囲を上回ることが可能である。
【0043】
125Iおよび131Iで放射標識した抗体に加えて、抗GR抗体はまた、99テクネチウム、111インジウム、および90イットリウムなどの放射性核種で標識され得る。本発明のこの態様において、抗体は、これらの抗体を患者に投与して、GR含有腫瘍細胞に結合した抗体を検出することにより、GR保有腫瘍をin vivoで検出および診断するのに有用である。放射標識化抗GR抗体を腫瘍に到達させた後、注射の約1〜2時間後、先に開示されるとおり、標準的なシンチグラフィー手順を用いて放射性「ホットスポット」を画像化する(「ハリソン内科学(Harrison's Principles of Internal Medicine)」, Isselbacher et al. eds. 13th Ed. 1994)。
【0044】
患者のガストリン依存性腫瘍の治療のため投与される免疫原を含む組成物は、様々な形であってもよい。これには、例えば、粉末、液状溶液、懸濁液、坐剤、ならびに注射液および輸液などの固体、半固体、および液体剤形が含まれる。適した形は、意図される投与様式および治療用途に依存する。組成物は、本発明の免疫原および適した薬学的に許容可能な構成成分を含み、そして他の薬剤、キャリア、アジュバント、賦形剤などを含んでもよい。適したアジュバントは、nor−ムラミルジペプチド(nor−MDP, Peninsula Labs., CA)、およびMontanide ISA 703(Seppic, Inc., Paris, France)などのオイルを含んでもよく、これは標準技法を用いて混合され得る。組成物は、単位用量の形であることが有利である。免疫化のためまたは医薬品として、1回でまたは一定時間をかけて、投与される活性化合物の量は、治療される被検体、投与の様式および形、ならびに治療に当たる医師の判断に依存するだろう。
【0045】
本発明に従って、受動免疫化のための本発明の抗GR抗体は、滅菌生理食塩水溶液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)などの薬学的に許容可能なキャリアを用いて、患者に静脈内投与される。
【0046】
本発明の別の実施形態は、ガストリンの結合またはガストリン応答性細胞の活性化を阻害する治療の組み合わせを提供する。詳細には、そのような実施形態は、ガストリン免疫原での免疫化(米国特許第5,468,494号)とガストリン受容体免疫原での同時免疫化を提供し得る。あるいは、この方法は、抗G17抗体などの抗ガストリン抗体ならびに抗GR抗体での免疫化を組み合わせ得る。これらの抗体は、モノクローナルであることができ、これはヒトまたはヒト化動物抗体であってもよい。そのうえさらに、抗体は、記載されるように、細胞毒性物質で改変され得る。能動免疫化および受動免疫化は、受動免疫化が、能動免疫による抗体力価が十分に高くて効果的である場合には軽減され得る即時有効活性として働くように、有利に組み合わせられ得る。
【0047】
受動免疫化の一時的な比較的短期間の使用は、経時的な抗抗体免疫拒絶を回避または減少させる助けとなり得る。
【0048】
それゆえ、プロトコルは、G17免疫原を用いるおよびGR免疫原に対する能動免疫化と組み合わせた抗G17抗体および抗GR抗体の初期投与を提供し得る。
【0049】
ガストリン(例えば、G17またはG17−Gly(グリシン伸長−G17)など)ならびにGR部分の阻害の組み合わせは、相乗的に、ガストリンに促進される他の成長因子の活性化を阻止し、ならびに免疫化患者または宿主のガストリンシグナルの減少に応答したGR発現の促進を阻止するだろう。
【0050】
以下に記載されるように、5−フルオロウリジン(5FU)およびロイコボリンと組み合わせたラットGRE1エピトープでの能動免疫は、ラットで、ガストリン受容体発現ラット腫瘍DHDK12の肝臓転移物の壊死を増加させた。
【実施例1】
【0051】
GRE1−DT抱合体およびGRE4−DT抱合体の調製
免疫模倣エピトープを提供するために選択されたCCK−B/ガストリン受容体ペプチドを、標準的な固相ペプチド合成により調製した。免疫原をより特異的免疫応答を誘導する能力があるものにするため、カルボキシ末端にスペーサー配列SSPPPPC(配列表の配列番号3)を含有するGRE1およびGRE4のそれぞれを合成した。続いて、以下に記載されるように、方法A、方法B、または方法Cのいずれかにより、これらのペプチドを、架橋剤の一端にスクシンイミジルエステルおよび他端にマレイミドを含有するヘテロ二官能性架橋剤を用いて、スペーサーの末端ペプチドアミノ酸残基のシステインを介して、キャリアであるジフテリアトキソイド(「DT」)上に存在するアミノ基に抱合させた。
【0052】
方法A:米国特許第5,023,077号に先に記載されたとおりに、上記のペプチド1または4とキャリアとの結合を以下のように達成する。乾燥ペプチドを30倍モル過剰のジチオトレイトール(「DTT」)とともに0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.0)に溶解させた。溶液を、水分飽和窒素ガス雰囲気下で4時間撹拌した。還元システイン含有ペプチドを、0.2M酢酸で平衡化したG10 Sephadexカラムにかけてクロマトグラフィーにより他の成分構成成分から分離した。ペプチドを凍結乾燥させて、使用するまで真空下貯蔵した。10分子量のキャリアあたり約25個の遊離アミノ基の活性化を達成するのに十分な割合で、ヘテロ二官能性架橋剤(例えば、ε−マレイミドカプロン酸N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、(「EMCS」))を用いた処理により、キャリアを活性化した。ジフテリアトキソイドの具体例では、これは6.18mgのEMCS(純度75%)を各20mgのジフテリアトキソイドに加える量になった。
【0053】
各20mg分取したジフテリアトキソイドを1mlの0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.45)に溶解させることにより、ジフテリアトキソイドの活性化を達成した。EMCSの6.18mg分取量を0.2mlのジメチルホルムアミド(「DMF」)中に溶解させた。暗条件下、EMCSを、50マイクロリットル(「μl」)の量で、撹拌しながらDTに滴下した。暗中での2時間インキュベーション後、混合物を、0.1mM EDTA含有0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化したG50 Sephadexカラムでクロマトグラフィーにかけた。
【0054】
暗条件下、EMCS活性化ジフテリアトキソイドを含有する画分を、PM10限外濾過膜に通して濃縮した。濃縮物のタンパク質含量を、Lowry法またはBradford法のいずれかで定量した。活性化キャリアをシステイン−HClでインキュベートし、続いて10mMのEllman試薬5,5’ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)10mMと反応させることにより、キャリアのEMCS含量を定量した。システイン−HClを含有するブランク管とシステイン−HClおよびキャリアを含有する試料管との間の光学密度の差を、5−チオ−2−ニトロ安息香酸の412nmでのモル吸光係数13.6×10を用いてEMCS基含量に換算した。
【0055】
ペプチドの還元システイン含量(−SH)もまた、Ellman試薬を用いて定量した。約1mgのペプチドを1mlの窒素ガス飽和水に溶解させ、そしてこの溶液の0.1ml分取量をEllman試薬と反応させた。5−チオ−2−ニトロ安息香酸のモル吸光係数(13.6×10)を用いて、遊離システイン−SHを計算した。キャリア上の25個のEMCS活性化アミノ基それぞれと反応するのに十分な遊離−SHを含有する量のペプチドを0.1m MEDTA含有0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)に溶解させ、そして暗条件下、EMCS活性化キャリアに滴下した。ペプチド溶液を全てキャリアに加えた後、混合物を、水分飽和窒素ガス雰囲気下、暗中で一晩インキュベートした。
【0056】
EMCSを介してキャリアに結合したペプチドの抱合体を、0.2M重炭酸アンモニウムで平衡化したG50 Sephadexカラムにかけてクロマトグラフィーにより、混合物の他の成分から分離した。カラム空隙容量に溶出した抱合体を凍結乾燥させて、使用するまで20℃で乾燥させて貯蔵した。
【0057】
得られる抱合体は、重量増加、アミノ酸分析などを始めとする当業者に既知である多数の方法により、ペプチド含量について特性決定することができる。この方法により生成する、スペーサーおよびジフテリアトキソイドとともに構成されるGRE1抱合体およびGRE4抱合体は、100KD MWのキャリアあたり5〜35モルのペプチドという有効ペプチド/キャリア比を有することが確定され、そして全てが試験動物の免疫化の免疫原として適していると判断された。通常、100KD MWのDTあたり10〜30モルの範囲のペプチドが有効免疫応答を産生した。
【0058】
方法B:好適な方法において、GRE1ペプチド、GRE4ペプチド、またはDTにカップリングした任意の他の適したGRのペプチド免疫模倣を含む抱合体を、以下のように、室温で調製した。精製DT(400mg)を、窒素ガスを飽和させた20mlの0.5Mリン酸緩衝液(pH=6.6)に溶解させて、20mg/mlのDT溶液を得た。DT溶液を、60mlの暗褐色ガラスボトル(反応容器および濾液貯蔵器として用いる)に入れた。EMCSカップリング試薬(123.6mg)を2.0mlのジメチルホルムアミドに溶解させた。EMCS溶液を、連続して撹拌しながら、15分かけてDT溶液に滴下した。ボトルに蓋をして、混合物を室温でさらに1時間45分間撹拌し、活性化DT(M−DT)を形成させた。次いで、M−DTを、Amicon Model TFC10 Thin−Channel 限外濾過システムを用い、取り扱い説明書I−113Gに従いXM50ダイアフロー限外濾過膜を用いてダイアフィルトレーションにより精製した。M−DTを、420mlリン酸緩衝液の容量に対して2回洗浄し、各回20mlに濃縮し、次いで420mlの0.1Mクエン酸ナトリウム緩衝液(pH=6.0、0.1MのEDTA含有)に対して1回洗浄し、20mlまで溶液を濃縮した。
【0059】
例えば、GRE1−DT抱合体を作るために、2.02mlのM−DT溶液(22.3mg M−DTを含有)を10ml暗褐色ガラスバイアルに入れ、次いで13mgのGRE1ペプチドをクエン酸緩衝液に溶解させて40mg/mlペプチドとして、撹拌しながらM−DT溶液に滴下した。あるいは、GRE4−DT抱合体を作るために、2.21mlのM−DT溶液(24.4mgのM−DTを含有)を10ml暗褐色ガラスバイアルに入れ、次いで13mgのGRE4ペプチドをクエン酸緩衝液に溶解させて40mg/mlペプチドとして、撹拌しながらM−DT溶液に滴下した。
【0060】
暗中で一晩、反応を進行させた。各抱合体を、反応容器から取り出して、500mlの0.1M重炭酸アンモニウム溶液を5回交換して、12,000〜14,000MWカットオフ透析管で別々に透析した。各抱合体を凍結乾燥した。次いで、抱合体をアミノ酸分析により分析して、それらのペプチド対DT置換比が、GRE1−DTについて10MWのDTあたり21.8ペプチド、およびGRE4−DTについて10MWのDTあたり21.1ペプチドであると確定した。
【0061】
この方法により生成するスペーサー付きGRE1とスペーサー付きGRE4およびDTの抱合体は、100KD MWのキャリアあたり5〜35モルのペプチドである有効ペプチド/キャリア比について選択されており、そして全て免疫原として適していると判断される。有効免疫応答を産生するのに有効な比は、100KD MWのDTあたり10〜25モルの範囲のペプチドである。これらの方法の代わりに、同一出願人に譲渡された米国特許第6,359,114号に記載されるように、閉鎖系抱合化を用いてもよい。
【0062】
そのうえさらに、これらの方法例は、他の受容体ペプチド(その多くは本明細書中に開示される)にも同様に適用される。
【0063】
方法C:この手順は、免疫原の連続抱合化および精製のための閉鎖系(または細胞毒性IgGなどタンパク質の他の誘導体化)に言及する。この系は同一出願人に譲渡された米国特許第6,359,114号に記載され、その開示は本明細書中でその全体が参照により援用される。
【0064】
免疫原性組成物の調製
スペーサー有りまたは無しでDTと抱合したGRE1またはGRE4のいずれかを含有する本発明の免疫原を用いて、ウサギを免疫した。免疫原を以下のように調製した:抱合体を0.15Mリン酸ナトリウム緩衝食塩水(pH7.3)に溶解させ、濃度3.79mg/mlとした。抱合体溶液を30:70(wt:wt)の抱合体溶液対Montanide ISA703の比でMontanide ISA703アジュバント(Seppic, Inc.)に加え、次いで、混合物を、Silversonホモジナイザーを用いて8,000RPMで3分間ホモジナイズして、1mg/mlの抱合体を含有する乳濁液を形成した。
【0065】
免疫化および試料採取
ウサギに、0.1mgのGRE1−DTまたはGRE4−DT抱合体のいずれかからなる0.1mlの免疫原を筋肉内注射した。各ウサギに0週および4週で免疫原を注射した。実験の6週および8週で、各ウサギから血液を採取した。各血液試料から血清を調製して、抗GR抗体の存在を測定するアッセイに用いるまで、−20℃で貯蔵した。
【0066】
酵素結合免疫吸着反応測定法(ELISA)
固相ELISAを用いて、各免疫化ウサギのペプチド1およびペプチド4に対して産生した抗血清の反応または交差反応についてスクリーニングした。ポリスチレン96ウェルプレート(IMMULON II, Dynatech)を、25μl/ウェルで、0.1Mグリシン−HCl緩衝液(pH9.5)中10μg/mlの、ウシ血清アルブミン(BSA)に結合したペプチド1(「GRE1−BSA」)またはBSAに結合したペプチド4(「GRE4−BSA」)抗原でコーティングすることによりELISAを行った。プレートを4℃で一晩インキュベートし、続いて緩衝液中洗浄した。
【0067】
免疫化ウサギから得られた抗血清を、1%BSA−FTA赤血球凝集緩衝液(pH7.2)中10−1〜10−8の範囲で連続的に希釈した。1ウェルあたり25μlの試験抗血清を、各試験ペプチドとともに、室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、プレートを緩衝液で隅々まで洗浄して未結合抗体を全て除去した。各ウェルを、室温で1時間、1%BSA−FTA希釈緩衝液中に1:1000に希釈したビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(H+L)25μlで処理した。プレートを洗浄して未結合抗ウサギ試薬を除去した後、各ウェルを、1%BSA−FTA緩衝液液中に1:1000に希釈したアビジン−アルカリホスファターゼコンジュゲート25μlとともに、室温で1時間インキュベートした。プレートを隅々まで洗浄して未結合アビジン−アルカリホスファターゼ試薬を除去して、10%ジエタノールアミン緩衝液(0.01%MgCl・6HO含有、pH9.8)中1mg/mlのp−ニトロフェニルホスフェート(「PNPP」)25μlとともにインキュベートした。波長490nmでの反応の吸光度が0.8〜1.5の光学密度に達するまで、プレートを展開させた。ウサギにより産生された抗血清の特性を試験するため、ウサギをDTでも免疫し、そしてELISA試験のため、プレートを抗原としてDTでコーティングして、キャリアに対して産生された抗血清の反応性を測定した。
【0068】
図2は、GRE1を用いたELISAの結果を示し、図3は、抗原としてペプチド4/GRE4を用いたELISAの結果を示す。図2に見られるように、ELISAの結果は、抗血清の高希釈(1:100,000)でさえ抗体がGRE1に結合することにより示されるように、ペプチド1−スペーサー−DT抱合体で免疫したウサギがペプチド1に特異的に結合する高い抗体力価を産生したことを示す。同様に、図3は、ペプチド4−スペーサー−DT抱合体で免疫したウサギが抗GRE4抗体の高力価を産生したことを示す。図2および図3に見られるように、各ペプチドに対して免疫されたウサギは低い抗血清濃度で各ペプチドに特異的に結合する抗体を産生した。データは、抗GRE1抗体および抗GRE4抗体がCCK−B/ガストリン受容体のリガンドGRE1およびリガンドGRE4に結合する巨大な能力を有することを示す。データはまた、本抱合体でのウサギの免疫化が、それぞれGRE1およびGRE4に対する強力な免疫応答を惹起することも示す。また、GRE−1またはGRE−4抱合体のいずれかで免疫したウサギは見た目も行動も正常で、かつ実験の間どのような疾患の症状も病変も現さなかった。
【実施例2】
【0069】
方法Bを用いた実施例1に記載されるSerスペーサーを含有するGRE1−DTペプチドに対してウサギで産生した抗体の特異性を確立するために、以下の実験を行った。一連の試験を行い、GRE1−DTでの免疫化により誘導してGRE1−Serセファロースカラムにかけて免疫吸着により親和性精製したウサギ抗体の特異性を評価した。
【0070】
阻害ELISAを用いて、親和性精製した、GRE1−Serペプチドの抗体の特異性を評価した。アッセイを以下のように実行した。グリシン緩衝液(0.1M、pH=9.5)中2μg/mlの抱合体溶液50μlを、4℃で、一晩インキュベーションすることにより、GRE1−Ser−BSA抱合体で96ウェルプレート(Immulon U bottom)をコーティングした。親和性精製した抗GRE1 Ab(10ng/mlの最終濃度で)を各種インヒビター(1:10希釈シリーズで)と結合させて、室温で1時間インキュベートした。インヒビターには、GRE1−Ser、GRE1 EPT、Ser、ヒトガストリン17(1−9)−Serスペーサー(hG17(9)−Ser)、GRE1 EPT+Ser、および緩衝液(インヒビターなし)が含まれた。インキュベーション緩衝液は、PBS+0.5%BSA+0.05%Tween20+0.02%NaNからなった。続く工程でも、BSAを含まない同じ緩衝液を用いた。96ウェルプレートを洗浄して未結合GRE1−Ser−BSAを除き、そしてAb+インヒビター混合物を添加した(50μl/ウェル)。1時間後、プレートを洗浄してヤギ抗ウサギIg(H+L)アルカリホスファターゼコンジュゲート(Zymed)を添加した(1:2000希釈)。1時間インキュベーション後、プレートを洗浄して未結合試薬を除去し、そして50μl/ウェルのpNPP基質(Sigma)溶液(1mg/ml)を、基質緩衝液(PBS+0.1mg/mlMgCl+10%ジエタノールアミン+0.02%NaN)に添加した。60分のインキュベーションに続いて、MRX読み取り機(Dynatech Laboratories)で吸光度を測定した。試料を2回測定し、各濃度について平均を計算した。バックグラウンド結合(親和性精製したウサギ抗GnRH抗体で確立した)を全ての値から差し引いて、試験した各インヒビターについてインヒビター無添加(抗GRE1Ab+緩衝液)に対する阻害%を計算した。阻害%=(100)(A未阻害−A阻害)/(A未阻害)、式中A=吸光度。結果を図4に示す。
【0071】
図4は、抗体結合の阻害%をインヒビター濃度の関数として示す。図からわかるように、GRE1−SerペプチドはGREl−Ser−BSAへの抗体結合を完全に阻害した。約60%の阻害は、Serスペーサー配列を含まないGRE1 EPTペプチドで、およびGRE1 EPT+Serスペーサーの等モル混合物により達成された。これらのペプチドが完全な阻害をもたらさないことは、抗体の割合がGRE1配列およびSerスペーサー配列の両方の要素を含むエピトープ(単数または複数)に特異的であったことを示す。Serスペーサー配列自身による、またはSerスペーサー(「hG17(9)−Ser」、hG17のアミノ末端9残基とそれに続くSerスペーサーからなる)を保持する未関連ペプチドによる阻害はいずれも得られなかった。これらのELISAの結果は、親和性精製した抗体調製物がGRE1−Serペプチドに特異的であること、および結合活性の60%がペプチドのガストリン−受容体エピトープ構成成分に対して向けられていたことを実証する。
【実施例3】
【0072】
AR42J腫瘍細胞(European Collection of Animal Cell Cultures, Porton Down, UK)は、ラット膵臓腺癌に由来し、十分に特性決定されたCCK−B/ガストリン−受容体を有することが既知である。そこで、AR42Jを放射性リガンド阻害により試験してGRの発現およびhG17の受容体の特異性を確認した。AR42J細胞を、10%FCS(Gemini Bioproducts)、2mMグルタミン(JRH Biosciences)、1mMピルビン酸ナトリウム(JRH B.)および50μg/mlゲンタマイシン(Gemini Bioproducts)を補充した完全RPMI 1640(Sigma)中、37℃、7%COで、培養した。細胞を、0.25%EDTA含有PBSを含む175cmT−フラスコ(Falcon Plastics)から回収し、次いで、遠心分離(400×g、10分間)によりPBS(EDTAなし)で2回洗浄した。全ての操作中、細胞を0〜4℃に維持した。単独細胞懸濁液を緩衝液で調製して、細胞濃度を10個/mlに調整した。細胞懸濁液を1ml分取して12×75mm培養管に添加し、次いで細胞を遠心分離して上清を廃棄した。細胞を、ヒトG17(hG17)含有、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)含有、またはペプチドを含まないPBS(0.1ml/管)に再懸濁させた。ペプチド濃度は、1.0ng/ml、100ng/mlおよび10μg/mlであった。約26,300CPM(特異的活性、2200Ci/mmol)が含まれる125I−hG17(NEN)の0.1ml分取量を、各管に添加した。管をボルテックスし、次いで15分間インキュベートした。細胞をPBSで2回洗浄し、次いでγ計数機(Wallac)で計数した。試料を2回測定した。バックグラウンド計数を差し引き、次いで各インヒビターによる125I−hG17結合の阻害%を、以下の式を用いて計算した:%阻害=(100)(CPM未阻害−CPM阻害)/CPM未阻害)。
【0073】
放射性リガンド結合阻害試験の結果を図5に示す。これは個別の値の平均(±SE)で示している。図からわかるように、125I−hG17のAR42J細胞への結合は、hG17により阻害された。阻害の程度は、添加するインヒビターの量とともに、試験したペプチドの最高濃度である、管あたり1μgのhG17で32%の阻害まで増加した。反対に、GnRHは2つの試験した最高濃度で阻害をもたらさず(100pgのGnRHで得られた6%の阻害は非特異的であると判断された)、hG17による阻害がガストリンに特異的であったことを示している。これらの結果により、AR42J腫瘍細胞によるガストリン受容体の細胞表面での発現が確認された。
【実施例4】
【0074】
GRE1−Ser特異的抗体のAR42J細胞への結合を免疫蛍光法により評価した。AR42J細胞を先の実施例におけるように増殖させて、175cmT−フラスコからセルスクレーパーで回収し、そして遠心分離(400×g、7分間)により緩衝液(0.02%NaN含有PBS)で2回洗浄した。全ての操作中、細胞を0〜4℃に維持した。単独細胞懸濁液を緩衝液で調製して、細胞濃度を10個/mlに調整した。細胞懸濁液を、1.5mlマイクロ管に添加した(1ml/管)。細胞を遠心分離によりぺレット化して、上清を吸引した。細胞をペプチドインヒビター含有(1.0mg/ml)緩衝液(0.1ml/管)に再懸濁させた。インヒビターには、GRE1−Ser、GnRH、hG17(9)−Ser、および緩衝液(インヒビターなし)が含まれた。ウサギ抗GRE1−Ser(100μg/ml)、親和性精製したウサギ抗DT(ネガティブコントロール、100μg/ml)、マウス抗AR42J抗血清(ポジティブコントロール、1:100希釈、熱不活性化)、または正常マウス血清を含む抗体を適切な管に添加して内容物を混合した。細胞を、ときどき混合しながら、1時間インキュベートした。次いで、細胞を緩衝液で3回洗浄し、そして1管あたり0.1mlのフルオレセイン標識化ヤギ抗ウサギIgG(Antibodies Incorporated)(1:50に希釈)を添加した。マウス血清で処理した細胞はフルオレセイン−抗マウスIgG試薬(Zymed)で展開させた。細胞をボルテックスして再懸濁させ、次いで1時間インキュベートした。再度、細胞を3回洗浄し、次いで50μl/管でグリセロール:PBS(1:1、v:v)に再懸濁させた。各管の内容物で湿潤マウント(Wet mounts)を調製して、Laborlux12蛍光顕微鏡(Leitz)を用いて細胞を評価した。蛍光を0〜4の段階で評価し、ここで0はバックグラウンド蛍光(正常マウス血清で得られる)を表し、4は最大蛍光(マウス抗AR42Jポジティブコントロール抗血清で得られる)を表す。
【0075】
蛍光免疫試験の結果を表2に示す。表からわかるように、ペプチドインヒビターなしで抗GRE1−Ser抗体で処理したAR42J細胞は強く蛍光を発し、抗体が細胞に結合したことを示している。ウサギ抗DT抗体は蛍光染色をもたらさず、抗GRE1−Ser抗体で観測される染色がウサギ免疫グロブリンによる非特異的細胞表面結合の結果ではなかったことを実証している。そのうえ、結合はGRE1−Serペプチドに特異的であることが示された。GRE1−Serの添加は、結合を完全に阻害したが、一方hG17(9)−SerおよびGnRHを含む未関連ペプチドは阻害しなかった。GRE1エピトープはガストリン受容体配列の残基5〜21を含むので、抗GRE1−Ser抗体がAR42J細胞により発現されるガストリン受容体に特異的であったことが結論付けられた。
【0076】
【表2】

【実施例5】
【0077】
継代数16〜18のAR42J細胞を、10%FCSおよび2mMグルタミンを含有するRPMI−1640培地で培養した。全細胞を湿度100%で5%COの空気中37℃に維持し、T75フラスコ(Falcon, London, UK)中80%の集密度(conflucency)に増殖および続いて0.02%EDTAで処理して継代させ、付着細胞を懸濁液中に移した。ペプチド1で調製したカラムでのアフィニティークロマトグラフィーにより精製してある、実施例1に記載されるようにして本発明のCCK−B/ガストリンペプチド1受容体免疫原を用いてウサギに産生させた抗CCK−B/ガストリン受容体抗体(aGR)とともに細胞を、10秒、30秒、30分、および1時間インキュベートした。
【0078】
標準技法を用いて、細胞を、1%グルタルアルデヒド中で1時間固定化して免疫電子顕微鏡(ImmunoEM)検査用に調製した。細胞懸濁液を2回、2000rpmで2分間遠心分離し、次いで細胞ぺレットをリン酸緩衝液生理食塩水(PBS)に再懸濁させた。細胞ぺレットにLR白色プラスチック樹脂を浸潤させた。厚さ70〜90nmの極薄切片を切断して、Pioloformコーティングしたニッケル格子に置いた。格子を0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)(Sigma, Poole, Dorset)中に正常ヤギ血清(Dako, High Wycombe, UK)中に置き、室温で30分間インキュベートした。格子をPBSでリンスし、次いで1%BSA中1:50に希釈した二次抗体の金粒子標識化ヤギ抗ウサギ抗体とともに、室温で1時間インキュベートした。二次抗体なしで対照実験を行った。最後のPBS洗浄後、格子を、酢酸ウラニル飽和水溶液で3分間、およびReynoldクエン酸鉛で3分間、対比染色した。細胞膜上、細胞質中、核膜上、および核内の金粒子を計数した。独立した観測者により25個の細胞/格子が計数された。対照として、AR42J細胞を抗体に1秒未満暴露させ、そしてGRを欠いた肝細胞を用いた。正常IgGに暴露したAR42J細胞もまた、抗GR抗体の非特異的結合を確定する対照として用いた。これらの実験の結果を表3および図6に示す。
【0079】
【表3】

CCK−B/ガストリン受容体免疫金粒子のAR42J細胞内分布
【0080】
表3および図6に示されるように、GRに結合した免疫金抗体粒子は、腺癌細胞の形質膜、細胞質、核膜、および核マトリックスに局在化し、抗体/受容体複合体が細胞により内部移行していることをさらに実証する。
【0081】
表3からわかるように、GRのアミノ末端に対して向けられた抗血清を用いる免疫EM研究は、抗体受容体複合体の12%が細胞膜に伴い、36.6%が細胞質内にあり、7.9%が核膜にあり、そして非常に驚くべきことに、43.5%が細胞核内にあることからも、1時間インキュベーション後、免疫金標識化GR抗体の分布が迅速に内部移行することを示す。核内の強力なGR免疫反応性領域はクロマチン上に見いだされ、このことはDNA調節のための特異的結合部位を示唆しているのかもしれない。
【0082】
図6からわかるように、金ビーズ(免疫金)と結合した抗免疫グロブリンを用いたこれらの電子顕微鏡研究は、腫瘍細胞における抗受容体抗体/受容体複合体の迅速なターンオーバーを明らかにした。これらの試験はまた、抗GR抗体が腫瘍細胞の核に取り込まれることを実証する。
【実施例6】
【0083】
腺癌細胞株、すなわちAR42J、HCT116、C170HM2、LoVo、ST16、およびMGLVA1を、実施例3に記載されるように、in vitroで増殖させて回収した。30個のT−75フラスコからの細胞を5mlの均質化緩衝液(1mMの炭酸水素ナトリウム、2mMの塩化マグネシウム、1nMのフェニルメチルスルホニルフルオリド、40mMの塩化ナトリウム、10μlのロイぺプチン、1μMのペプスタチン、5nMのEDTA[Sigma])に懸濁させた。ホモジナイザー中5回の5秒間バーストで均質化を行った。核外膜について、組織細片(tissue debris)を、4℃で、500gで7分間の遠心分離によりぺレット化した。ぺレットを廃棄して、上清を4℃で、500gで遠心分離してさらに細片を除去した。上清を、4℃で、48,000gで1時間再遠心分離した。核外膜調製物を含むぺレットをTris/NP−40溶液(0.1MのTRIZMA、0.5%のNONIDET P40[Sigma Chemical])に懸濁させた。
【0084】
核膜調製物については、第二均質化緩衝液(25mMのTris−HCI、pH7.4、0.1%のTRITON 100、0.32Mのスクロース、3mMのMgCl、2mMのEGTA、0.1mMのスペルミン四塩酸塩、2mMのPMSF、10mMのベンズミヂン(bezamidine)塩酸、3mMのEGTAアミノアセトニトリル塩酸[Sigma])中の均質化に続いて、組織細片を、4℃で、400gで10分間の遠心分離によりぺレット化した。ぺレットを、HPLC水中55%(0.2M)スクロースに再懸濁させた。この混合物を、4℃で、60,000gで1時間回転させた。ぺレットを、TRITON 100を含まない均質化緩衝液中0.4%NONIDET P40で洗浄した。ぺレットを、4℃で、700gで15分間回転させて、TRITON 100を含まない均質化緩衝液に再懸濁させた。
【0085】
タンパク質含量をLowry法により定量した(Pierce製キットを用いて)。10〜15μgのタンパク質を含有する試料をTris/グリシン緩衝液中の8〜16%Tris/グリシン勾配ポリアクリルアミドゲル電気泳動PAGE(Novex R and D systems)にロードして、125定電圧、36mAで90分間流した。ゲルを10%氷酢酸中1時間固定化し、そして試料をニトロセルロース膜上にブロッティングした。膜を1%BSA中で1時間インキュベートし、続いてGRE1抗血清(前吸収有りまたは無しで)で1時間インキュベートした。基質としてジアミノ−ベジデン(bezidine)を用いてアビジン:ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体法により抗体結合を検出した。GRE1(ウサギ抗GREl抗血清)に対して産生したウサギ抗血清を用いるウエスタンブロット分析の結果を図7および図8に示す。
【0086】
図7に示されるとおり、タンパク質分子量マーカーは、116、66、45、および29kDaのタンパク質を含んだ。ブロットは、1つ(AP5LV)を除く研究した全ての腺癌細胞、すなわちHCT116、C170HM2、LoVo、ST16、およびMGLVA1で、約43kDaに局在化した突出した抗GRE1免疫反応性バンドを示す。このタンパク質はGRの切断型に相当する。細胞株によっては(HCT116およびC170HM2)60〜100KDaの分子量の範囲で、少なくとも3つの他のバンドを示す。データは、抗CCK−B/ガストリン受容体抗体が、腫瘍細胞のCCK−B/ガストリン受容体の各種アイソフォームを認識して結合し得ることを示す。
【0087】
図8は、C170HM2およびHCT116腺癌細胞の核外膜(ENM)および形質膜からのウェスタンブロットを示す。図8に示されるとおり、ENM GRについて試験した腺癌細胞株は、2つの強く染色されたバンド(1つは約43KDaおよびもう一方は約66KDa)の存在を示す。形質膜画分のみが染色された場合、約66KDaに単独バンドが存在した。したがって、ウェスタンブロット研究は、GRが腺癌腫瘍細胞に存在するという免疫EMの結果を確証するものの、免疫EM研究はGRのアイソフォーム同士を区別できない。データは、本発明の免疫原が受容体の各種アイソフォームを認識して結合し得る抗GR抗体を惹起し、これはこれらの腫瘍の治療に有利であるだろうということを示す。
【実施例7】
【0088】
腺癌(the adenocarinoma)細胞株でのCCK−B/ガストリン受容体の発現を検出するため、RT−PCRを行ってCCK−B/ガストリン受容体mRNAを検出した。総RNAを全細胞株から単離した。トリプシン−EDTAを用いて細胞懸濁液を調製し、そして取り扱い説明書に従ってSV総RNA単離システム(Promega)を用いて総RNAを1〜3×10細胞から単離した。一段階AccessRT−PCRシステム(Promega)を用いて、ガストリン受容体(McWilliams et al. 1998)とポジティブコントロールとしてβアクチン(10)との両方に特異的なプライマーで逆転写およびPCRを行った。RTを48℃で45分間行い、PCRは、94℃で45秒間、60℃で90秒間、68℃で2分間のサイクルを40回行い、ガストリン受容体mRNA増幅のためこの過程(round)を2回行った。生成物をアガロースゲル電気泳動で分析した。
【0089】
全細胞株で行われたRT−PCRにより、古典型および切断型のガストリン受容体遺伝子で形質移入されたAR42J、C170HM2、HepG2、およびNIH3T3細胞でのガストリン受容体mRNAの存在が確認された。ガストリン受容体mRNAは、形質移入されていないNIH3T3細胞で検出されなかった。全細胞株が、βアクチンmRNAについて陽性であった(表4を参照)。
【0090】
【表4】

細胞株におけるmRNAについてのβアクチンおよびガストリン受容体のRT−PCR
【0091】
結果は、AR42J、C170HM2、HepG2、形質移入されたNIH3T3がβアクチンおよびガストリン受容体mRNAについて陽性であり、形質移入されていないNIH3T3細胞はβアクチンmRNAにのみ陽性であることを示した。
【0092】
RG−G7の取り込み
ロダル・グリーン(rhodal green)標識化ヘプタガストリン(RG−G7)の結合および内部移行は、AR42J細胞、HepG2、およびC170HM2細胞で見られた。ガストリンはこれらの細胞の細胞質中に取り込まれた。結合もまた、ガストリン受容体を安定して形質移入されたNIH3T3細胞で見られたが、形質移入されていないNIH3T3では見られなかった。形質移入された細胞において、ガストリンは細胞膜に結合するようであった。ガストリン取り込みを示すAR42J細胞を固定化して、Alexa−546抱合化GRE1抗体を用いてガストリン受容体を染色したところ、ガストリンおよびガストリン受容体の同時発現が見られた。ガストリン受容体は、これらの細胞の膜上および細胞質中で検出された。
【0093】
形質移入されていないNIH3T3細胞では、RG−G7の結合も内部移行も見られなかった。
【0094】
最初にRG−G7(緑)とともにインキュベートし、次いで固定化して抗ガストリン受容体抗体、GRE1で染色したAR42J細胞の共焦点顕微鏡写真を撮った。ガストリンおよびガストリン受容体の同時局在化が見られ、ガストリン受容体だけは1つの細胞の表面で見られるようにして、ガストリンがこれらの細胞の細胞質中に取り込まれたことが観測された。共焦点顕微鏡を用いた細胞の光学的切片により、ガストリンが細胞質中には取り込まれるが、細胞の核には取り込まれないことが確認された。
【0095】
抗GRE1抗体の取り込み
腫瘍細胞株、AR42J、C170HM2、およびHepG2において、生きた腫瘍細胞への抗GRE1抗体の添加は、細胞の細胞質中および核中への抗体の結合および内部移行をもたらした。抗GRE1抗体のF(ab)およびF(ab)フラグメントもまた、これらの腫瘍細胞株からの生きた細胞とともにインキュベートすると、細胞質および核中への取り込みが見られた。これらの細胞株によるFITC結合無関連抗体(ウサギ抗マウスIg、F(ab)フラグメント)の取り込みは見られなかった。抗GRE1抗体の取り込みは、形質移入されていないNIH3T3細胞でも、正常リンパ球でも見られなかったが、野生型および切断型のヒトガストリン/CCK−B受容体で形質移入されたNIH3T3細胞では見られた。抗GRE1抗体は、形質移入されたNIH3T3細胞の膜に結合するようであったが、これらの細胞の細胞質または核中には取り込まれなかった。これは、GRを正常に暴露する腫瘍細胞株で見られるものと異なるパターンの取り込みであった。
【0096】
Alexa−546標識化抗ヒトGRE1抗体とともにインキュベートしたAR42J細胞は、細胞中への抗体取り込みを示した。共焦点を用いた細胞の光学的切片は、細胞の核ならびに細胞質中への抗体取り込みを示した。
【0097】
a)C170HM2細胞およびb)HepG2細胞に添加された抗GRE1抗体は、細胞の細胞質および核内に見られる。
【0098】
Alexa−546で標識されたGRE1抗体を用いて得られた免疫染色の特異性および感度は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)ガストリン産生腫瘍からの切片を染色することにより確かめられた。ガストリン産生腫瘍の核染色は、蛍光標識した、および未標識のGRE1抗体の両方で得られた。この染色は、エピトープでの前吸収により消すことが可能である。ローダミンで標識したGRE1のF(ab)およびF(ab)フラグメントは、この材料で同じ染色パターンを与えた。この染色はまた、エピトープを用いた抗体の前吸収により消すことが可能である。
【0099】
ガストリン産生腫瘍(FFPE)を抗ガストリン受容体抗体GRE1で染色し、a)抗ウサギAPにより検出される結合(赤色)は核染色を示し、b)Alexa−546標識化GRE1(赤色蛍光)はガストリン産生腫瘍の核染色を示し、バックグラウンドの肝臓には染色がなく、c)抗体のエピトープ前吸収後のAlexa−546標識化GRE1は染色を消していた。
【0100】
生きた腫瘍細胞へのGRE1抗体のFabおよびF(ab)フラグメントの添加は、AR42J細胞、HepG2細胞、およびC17OHM2細胞の細胞質および核内にGRE1を再び示す。
【0101】
経時的な細胞内の抗GRE1 Ab蓄積を研究して、異なる細胞区画内にどれだけ速く抗体が取り込まれるかを評価した。この一連の実験にAR42J細胞を用いた。37℃または4℃で細胞を抗体とともにインキュベートし、そして上限1時間で、様々な時間後に観測した。37℃でインキュベートした細胞では、抗GRE1 Abは、インキュベーションのわずか5分後に核中に観測された。膜への抗体の結合および細胞を横切る移行は、迅速すぎて観測できなかった。4℃で15分後、抗体は細胞によっては細胞質中および核中に取り込まれていた。
【0102】
したがって、実験は、結腸、膵臓、および肝臓由来の腫瘍細胞株において、ならびにヒトGRの古典アイソマーおよび切断されたアイソマーで形質移入されたNIH3T3細胞においても、ガストリンおよびガストリン受容体の内部移行を実証した。
【0103】
ガストリンおよび抗ガストリン受容体抗体の内部移行は、ガストリン受容体mRNAを含有する細胞でのみ見られ、形質移入されていないNIH3T3細胞で、または正常リンパ球では見られず、CCK−B受容体を発現せず、またGR mRNAを活発に発現しなかった。
【0104】
共焦点顕微鏡法により、抗ガストリン受容体抗体が腫瘍細胞により内部移行されて細胞の細胞質および核中で検出され得ることを確かめた。この内部移行は迅速かつ特異的である。抗GRE1 Abは、37℃で5分間インキュベーション後にAR42J細胞の核中で見られた。内部移行は、GRE−11などの他の抗アミノ末端GRペプチドにより産生された抗体でも観測された。
【0105】
GRE1抗体のF(ab)フラグメントが同様にして内部移行され、無関連抗体の内部移行が同一条件下で検出されなかったことから、内部移行は、Fc受容体を介していない。したがって、内部移行は特異的である。
【実施例8】
【0106】
C170HM2腺癌細胞をヌードマウスに腹腔内注射して、腫瘍を肝臓で増殖させた。対照マウスにはリン酸緩衝液生理食塩水(PBS)の輸液を与え、実験マウスには抗GR抗体の輸液を与えた。1群では、各マウスは、ペプチドエピトープの1種に対して産生されたウサギ抗GR抗体、すなわちウサギ抗GRE1を毎日0.5mg注入された。2群では、各マウスは、GRE4に対して産生されたウサギ抗GR抗体、すなわちウサギ抗GRE4を毎日0.5mg与えられた。抗体注入後40日間の間、マウスを観察し、屠殺して、研究のため腫瘍を取り出した。標準技法により、腫瘍の重さ、大きさ、および断面積を評価した。
【0107】
結腸直腸腺癌癌細胞株C170HM2の移植は、処置なしのマウスでは、腫瘍の、腫瘍重量、または腫瘍の大きさ、および腫瘍断面積から確定されるように、巨大な腫瘍塊の迅速な増殖をもたらした。しかしながら、ウサギ抗GRE1抗体またはウサギ抗GRE4抗体を動物に注入すると、対照と比較して、検出可能な腫瘍をとにかく有する動物数、ならびに検出可能な腫瘍をとにかく有する動物における腫瘍の重さおよび大きさに顕著な減少をもたらした。平均腫瘍重量、平均腫瘍大きさ、または平均腫瘍数を計算した場合に、同じ効果が見られる。
【0108】
腫瘍数、重さ、および大きさの中央値を計算することにより、集団内の分布についてのさらなる洞察が得られる。腫瘍増殖の阻害において、ウサギ抗GRE1抗体は、一貫して、ウサギ抗GRE4抗体よりも有効であった。しかしながら、ウサギ抗GRE1抗体およびウサギ抗GRE4抗体の両方とも、対照治療と比較して、強力な腫瘍阻害活性を示さなかった。また、以下に示すように、別の研究では、ウサギ抗GRE 11Sがウサギ抗GRE1と少なくとも同じくらい有効であることが見いだされた。
【実施例9】
【0109】
実施例8に記載されるとおりの方法により、ただしより高い初期細胞接種量(innoculum)で、結腸癌細胞株C170HM2を用いて、ヌードマウスに大量の腫瘍量(burden)を産生した。C170HM2は、肝臓浸潤性異種移植モデルである。対照マウスおよび実験マウスを、同じく実施例8に記載されるとおりに処置した。
【0110】
抗体注入の40日後、マウスを屠殺して、肝臓腫瘍を取り出し研究した。図17、図18、および図19は、これらの実験結果を示す。図17は、対照動物および抗GR抗体処置した動物における、肝臓腫瘍数の平均および中央値を示す。データは、ウサギ抗GR抗体(「ウサギ@GRE」)が、肝臓で転移性腫瘍の増殖を阻害するのに有効であることを示す。対照と比較した場合、ウサギ抗GRE1を用いたマウス肝臓での平均肝臓腫瘍数にはp=0.0084(スチューデントT検定)、および中央値肝臓腫瘍数には、p=0.0016(マン・ホイットニー)の、統計的に有意(p<.05)減少が見られる。抗GRE4抗体で処置されたマウスもまた、平均肝臓腫瘍数の減少を示した。しかしながら、対照と比較した場合、これらの動物で平均肝臓腫瘍数に差異はなかった。
【0111】
図18は、対照動物と比較した場合、抗GRE1抗体および抗GRE4抗体に、肝臓転移の腫瘍重量の平均および中央値を減少させる能力もまたあることを示す。図19のデータは、対照動物と比較した場合、抗GR処置したマウスで肝臓腫瘍の断面積の平均および中央値にも有意減少があったことを示す。
【0112】
データは、ガストリン依存性大腸癌の転移性拡大の主な部位を占める肝臓で、この癌の拡大および増殖を制御するのに抗GR抗体が有効であることを示す。
【実施例10】
【0113】
本発明者らは、これらの研究を、C170HM2細胞におけるGRE1免疫反応性を確かめるために行った。研究の目的は、GRE1に対して産生した抗血清の腫瘍局在化を評価すること、およびヌードマウスの肝臓中でのC170HM2細胞増殖におけるその治療効果を確定することであった。上記の実施例8および実施例9で記載されるように、C170HM2細胞をヌードマウスに腹腔内注射した。GRE1抗血清はウサギで産生された。抗血清を125Iで放射標識し、ヌードマウスに、確立されたC170HM2異種移植片とともに、尾静脈注射で投与した。対照マウスには、125I放射標識化正常ウサギ血清を与えた。マウスを、125I抗体の単一容量の注射に続いて時間を延ばしながら各時点で終わらせた。組織1グラムあたり1分あたりの計数(CPM/g)で放射性を測定し、そして肝臓/肝臓腫瘍比を計算した。
【0114】
図20は、肝臓腫瘍に結合した放射標識化ウサギ抗GRE1抗体を対照と対比させて示すグラフである。図からわかるように、対照と比較した場合、より多くのウサギ抗GRE1抗体が肝臓腫瘍組織に結合している。図20はまた、放射標識化正常ウサギ血清および抗GRE1抗血清の両方について、y軸の肝臓腫瘍/肝臓比がx軸の時間とともに増加することを示している。正常ウサギ血清は、1日目から1の比を達成し5日目まで一定のままであった。このことは、肝臓腫瘍および正常肝臓における放射標識のレベルが等しかったことを示す。GRE1抗血清の比は、蓄積されて5日目に指数関数的に2に近付いた。このことは、放射標識化GRE1抗血清がC170HM2肝臓腫瘍内に特に局在化することを示す。したがって、放射標識化GRE1抗体は、抗体に結合した放射性核種に応じて、腫瘍の診断画像化に、または腫瘍の放射免疫療法に用いられ得る。
【実施例11】
【0115】
GRE1抗血清のC170HM2異種移植片における治療効果
C170HM2腫瘍異種移植片を、細胞の腹腔内注射により開始した。3種の異なる細胞接種を用いて、3つのレベルの腫瘍量を産生させた。0日目からGRE1抗血清を尾静脈注射で受動的に投与した。40日目に治療を終了した。
【0116】
腫瘍「取り込み速度」におけるGRE1抗血清の効果
評価された初期パラメーターは、肝臓中の平均腫瘍数であり、これは図21に示される。正常ウサギ抗血清処置された対照は、増加する細胞接種の群にまとめられる。図21からわかるように、対照群において、肝臓あたりの平均腫瘍数は、1〜3であった。GRE1抗血清処置群において、肝臓あたりの平均腫瘍数は、3種の細胞接種全てについて1未満であり、3つの実験全てについて有意であった(接種1、n=18、p=0.003、接種2、n=12、p=0.0001、および接種3、n=20、p=0.0068、マン・ホイットニー分析)。
【0117】
確立された腫瘍の腫瘍重量におけるGRE1抗血清の効果
図22は、3つの増加する細胞接種について、左側のパネルに、正常ウサギ血清処置された対照の平均腫瘍重量を示す。この図はまた、GRE1抗血清での処置に続くヌードマウスの平均腫瘍重量も示す。平均肝臓腫瘍重量は、3種の細胞接種全てで60%減少し、これは3つの実験全てについて有意であった(接種1、p=0.0016、接種2、p=0.0084、および接種3、p=0.0001、マン・ホイットニー分析)。
【0118】
ウエスタンブロット法により確定した場合のC170HM2異種移植片におけるGRE1免疫反応性
核外膜タンパク質を、実験物の2/3からのC170HM2異種移植片から調製した。GRE1抗血清を用いて、これらをウエスタンブロット法により分析した。図23は、ウエスタンブロット法の写真であり、正常ウサギ血清処置した異種移植片において、2本の免疫反応性バンドが74および50kDaに存在し、前者のバンドが最も強力な免疫反応性を示したことを示している。GRE1抗血清処置した異種移植片において、2本の免疫反応性バンドと一緒に、対照異種移植片またはin vitroで増殖した細胞には見られない中間バンドが存在する。50kDaバンドが最も強力な免疫反応性を示す。このことは、GRE1抗血清処置した異種移植片において、より多くの割合のGRが内部移行した形で存在する可能性があることを示している。
【0119】
C170HM2異種移植片の組織学的分析
図24は、ヌードマウスの肝臓に浸潤するC170HM2異種移植片の顕微鏡図を示す。腫瘍は一般に、それが肝臓に浸潤する時に肝細胞を押しつぶす生きた先行縁を有する壊死中心で構成される。in situeハイブリッド形成法により可視化された陽性細胞を用いて、Tunel法によりC170HM2腫瘍の生きた先行縁でアポトーシスの程度を測定した。図25は、アポトーシス細胞が、GRE1抗血清処置した異種移植片の生腫瘍細胞に存在したが、正常ウサギ血清処置した腫瘍に存在しなかったことを示す。
【0120】
データは、CCKB/ガストリン受容体のアミノ末端エピトープに対して産生された抗血清が選択的に肝臓浸潤性C170HM2腫瘍中に局在化することを示す。GRE1エピトープの中性化は、確立された腫瘍の腫瘍「取り込み速度」および総腫瘍量の両方に顕著な効果を誘導した。この腫瘍阻害性効果は、(a)GRを遮断することにより誘導される全般的な細胞毒性効果、および/または(b)抗体の標的を細胞の核にすることにより、おそらくはアポトーシスをもたらす間接的効果によるものである可能性がある。
【実施例12】
【0121】
ヒトCCK−B/ガストリン受容体(GR)のGRE−1エピトープの逆合成ペプチド配列免疫模倣物(配列番号5)を、N末端スペーサーペプチドを介して免疫原性キャリアタンパク質に結合させた。具体的には、合成アミノ酸配列は、CGGKLNRSVQGTGPGPGASL(配列番号5)を含み、下線部分はスペーサー配列を表し、残りはCCK−B/ガストリン7ループ受容体のN末端部分である5〜21番アミノ酸を表す。
【0122】
CGG−(5〜21)ペプチド免疫原を、適した実験動物で試験して、免疫応答を測定した。
【実施例13】
【0123】
別の合成GR免疫模倣物であるGRE11(配列番号11)は、GRペプチド配列の1〜22番アミノ酸を含み、これはペプチドの本来の配列の22位に位置するCys残基を介して免疫原性キャリアと結合している。その配列は、以下のとおりである。MELLKLNRSVQGTGPGPGASLC(配列番号11)。
【0124】
GRE11エピトープは、GRE1(5〜21)エピトープもまた包含する。
【0125】
免疫原性構築物は、DTなどの免疫原性キャリアタンパク質に抱合されたGRE11ペプチドを含む。別の実施形態は、改変GRE11 Serスペーサー、MELLKLNRSVQGTGPGPGASLSSPPPPC(配列番号12)を含む。
【0126】
免疫化試験ウサギは、抗GRE11ペプチド抗体の誘導を示した。
【0127】
試験により、GRE−1により一部阻害されながらも、抗GRE11抗体のエピトープGRE11へのin vitro結合が示された。定量免疫蛍光アッセイ試験は、はるかに少ないGRE6エピトープ(1〜12アミノ酸)との交差反応性を示した。GRE6ペプチドは、N末端配列:MELLKLNRSVQG(配列番号8)を有する。
【0128】
定量免疫蛍光アッセイは、96ウェル蛍光光度計で読み取られる。
【0129】
そのうえさらに、標準免疫蛍光および共焦点顕微鏡法を用いて、培養中の生細胞中への蛍光標識化抗GRE11抗体の取り込みが示された。
【0130】
抗GRE11抗体は、細胞質中に、および細胞核中に取り込まれることが見いだされた。抗体は細胞の細胞質および/または核に再配置して、自殺プロセス(すなわちアポトーシス)をもたらしたか誘導したことがさらに発見された。
【0131】
ウエスタンブロット法は、GR+細胞抽出物のGRE1バンドに結合した抗GRE11抗体を同定した。
【0132】
抗体はまた、GR+細胞抽出物をリガンド(すなわちガストリン)アフィニティカラムにかけて親和性精製することにより試験される。次いで、精製GRは、ウエスタンブロット法でGRE11抗体に対してプローブされる。バンドが細胞抽出物のものと同一であったことが見いだされた。
【0133】
GR同一性もまた、切り出されたブロッティングバンドのアミノ酸分析およびアミノ末端配列決定により試験される。
【0134】
以下に示すとおり、抗GRE11抗体は、抗DT抗体対照と比較して、ラット膵癌株から改変されたGRE+AR42J細胞の増殖をin vitroで阻害することを示した。
【0135】
抗GREl1抗体はまた、in vitroでGRE+腫瘍細胞株のアポトーシスを誘導することを示した。
【実施例14】
【0136】
ガストリン受容体(GR)を発現する細胞への抗体の定量的結合が実証され、そして合成GRE11、GRE1、およびGRE6ペプチドで試された。96ウェル 蛍光光度計を用いる定量免疫蛍光法は、抗GRE11抗体が、GRE11により、GRE1一部が、GRE6ではさらに少なくGRエピトープとの結合を阻害または阻止されたことを実証した。これらの観測は、以下の方法に基づいてなされた。全ての試料を、ネガティブコントロールであるウサギ抗ジフテリアトキソイド(DT)IgG(1:20で)、および親和性精製した抗GRE11を含むFTA緩衝液(PBS)で希釈した。
【0137】
抗GRE11抗体および対照(DT)抗体を、湿潤環境下室温で1時間、1:GRE11、2:GRE1、3:GRE1+6(1:1混合)、4:GRE6(ガストリン受容体の1〜12アミノ酸)、5:GnRH(ネガティブコントロール)との混合物中でインキュベートした。
【0138】
約10mg/mlのHoechst 33342三塩化水素三水和物色素を、FTAで1:1000に希釈した。
【0139】
H69細胞を、tフラスコから回収して、遠心分離管中約10mlのHoechst色素と懸濁させた。細胞を10μl分取して血球計数器で計数した。残りの細胞は30分間氷上に貯蔵した。
【0140】
細胞を遠心分離により1回洗浄し、そしてFTAに再懸濁させて5×10個/mlにした。
【0141】
約200μlの細胞懸濁液を、1×10個/管で、抗体およびおペプチドとともに、氷上で45〜50分間試験した。上清を除去してFTAで洗浄した後、10%Sigma正常ヤギ血清を含有する、FTA中1:50に希釈したヤギα−ウサギIgGのFITC−F(ab)200μlを各管に添加した。
【0142】
細胞をこの第二溶液に再懸濁させ、そして暗中で45〜50分間、氷上でインキュベートした。
【0143】
細胞を200μlのFTA緩衝液で2回遠心分離し、毎回洗浄緩衝液を吸引して洗浄した。
【0144】
200μlのFTAを各管に添加し、そして細胞を再懸濁させた。細胞を黒色Maxisorpプレートの2(duplicate)ウェルに100μl分取量で播き、そして設定したHoechst波長で蛍光光度計を用いて読み取り、設定したFITC波長でも読み取った。平均FITC/Hoechst蛍光比を計算して、抗DT値(アッセイ基準線)をそれぞれから差し引いた。各GREペプチドによる結合の阻害割合を、抗GRE−11抗体処理した細胞についてGnRHの存在下の結合と相対して、計算した。
【0145】
結果:
各ペプチドによる抗体結合の阻害割合は、GRE−11で84%、GRE1で57%、GRE1+GRE6(混合)で49%、およびGRE6で4%であった。
【0146】
したがって、強力な阻害が、GRE1による顕著な阻害とともに、GRE−11で得られた。このことは、GRE11がガストリン受容体と共通したさらなるエピトープを保有し、これはGRE1およびGRE6がこの受容体と共有するものに勝ることを示す。このことは、GRE−11配列が抗ガストリン受容体免疫原として驚くほどに有効なペプチドであることを示す。抗GRE−11Abは、以下のようにして、抗DT Abと比較して、GR+AR42J細胞(ラット、膵癌株)の増殖をin vitroで阻害することが示されている。
【0147】
AR42J細胞を、0.025%EDTAを用いてサブコンフルエントなT75フラスコから回収して、96ウェルプレートに播いた(1×10個/mLを100μl/ウェル)。細胞培養培地を、2mMのL−グルタミンおよび1%FBSを含むRPMI 1640から調製した。24時間後、親和性精製した抗GRE−11Ab、またはプロテインAで精製した正常ウサギIgGを、細胞培養培地中500μg/mLの濃度まで添加した。抗体の存在下で3日間培養後、細胞増殖をMTTアッセイにより評価した。3日間のアッセイで、抗GRE−11抗体がAR42J細胞増殖を25%減少させたことが見いだされた。
【0148】
また、抗GRE−11Abは、in vitroでGR+腫瘍細胞株のアポトーシスを誘導することも見いだされた。
【0149】
AGS腫瘍株は、通常、GRの発現レベルが低い。しかしながら、ヒトGRで形質移入された株変異体は、高いレベルのGRを発現する。この株を、AGSCCK−2Rと名付ける。AGS−CCK−2rのアポトーシスに対する、親和性精製したウサギ抗GRE11 Abの効果を、対照としてプロテインAで精製した正常ウサギIgGと比較した。ベクター対照AGSvc細胞を、さらなる対照として試験した。アポトーシスを、Tunnel方法により、以下のように測定した。
【0150】
AGS細胞(AGS−grおよびAGSvc)を、0.025%EDTAを用いてサブコンフルエントなT75フラスコから回収して、2nMのL−グルタミンおよび10%FBSを含むRPMI 1640培地中、1ウェルあたり1×10個で、24ウェルプレートに播いた。各ウェルは、直径13mmの組織培養処理したカバースリップを備えた。24時間後、培地をRPMI+2nMのL−グルタミンおよび1%FBSおよび試験抗体(500μg/mLのGRE−11またはウサギIgG対照)と交換した。18時間で、カバースリップに付着した細胞を、4%ホルムアルデヒド(PBS中)で10分間、in situで固定し、それからTdT−FragEL(登録商標)DNAフラグメント化検出キット(Oncogene Research Products、QIA33)で標識した。キットは、末端デオキシヌクレオチジル転移酵素(TdT)を、アポトーシスシグナルに応答して産生されたDNAフラグメントのむき出しの3'−OH末端に結合させることにより、アポトーシス核の検出を可能にする。TdTは、ビオチン標識化および未標識デオキシヌクレオチドのフラグメントへの付加を触媒し、フラグメントはストレプトアビジン(strepavidin)西洋ワサビペルオキシダーゼ抗ビオチン抗体コンジュゲートを介してDAB色素源により可視化される。
【0151】
細胞をTBSで再水和させて、20μgのプロテイナーゼKで5分間透過処理し、次いで内在ペルオキシダーゼを3%過酸化水素で5分間不活性化した。次いで、細胞を、37℃で90分間、TdT酵素で処理した。停止溶液で反応を中止させて、ブロッキング緩衝液とともにインキュベートし、それからHRP抱合化した。メチルグリーン対比染色に続いてDABを適用した。
【0152】
カバースリップをウェルから取り外し、そして標準的な封入剤を用いて、スライドガラスにマウントしてカバーガラスで覆った(coverslipped with glass)。Qwin Standard(Leica, Germany)を用いて画像分析を行い、各処理についてアポトーシス細胞数を評価した。各スライドについて20倍の対物倍率で、20を超える読み取りのアポトーシスの平均割合として結果を示す。アポトーシスの基礎割合(base rate)は、AGSvc細胞で<1%であった。抗GRE−11抗体での処理は、精製した正常ウサギIgGと比較して、AGS−gr細胞のアポトーシスに2.4倍(p<0.05)の顕著な増加を引き起こした。
【0153】
結果を分析すると、各群についてのアポトーシス平均割合(±SE)は、正常ウサギIgGを用いたAGSvcで0.37%±0.07、抗GRE−11を用いたAGSvcで0.83%±0.114、正常ウサギIgGを用いたAGS−grで0.86%+±0.14、そして抗GRE−11を用いたAGS−grで2.07%±0.27あったことが示された。したがって、ガストリン受容体形質移入細胞では抗GRE11抗体によるアポトーシスの顕著な増加が観測されたが、対照細胞では観測されなかった。
【0154】
ペプチドGRE−9およびGRE−10は、突然変異ヒトCCK−2/ガストリン受容体の第三内部ドメインの内部側(internal)スプライスバリアントである。抗GRE9抗体または抗GRE10抗体により検出される受容体は、特定の腫瘍細胞に対して独特である可能性がある。
【実施例15】
【0155】
ガストリン受容体に対するモノクローナル抗体を、本発明の免疫原を用いて産生した。
【0156】
GRE11(配列番号11)を含むペプチドを、実施例13に記載されるようにしてDTに結合させ、GRE11−DT抱合体を生成した。GRE1−DTについて実施例1で記載されたようにして、Montanide ISA 703を用いて、GRE11−DT抱合体で免疫原を作製した。0.1mgのGRE11−DT免疫原を腹腔内(IP)経路で0.1mL/マウスで注射することにより、成熟CAF1株マウスを免疫した。4週間後、マウスに2回目の注射を行った。
【0157】
細胞融合の4日前に、PBS中0.1mgの抱合体を用いてIP注射でマウスに追加免疫した。融合当日、脾臓を回収して抗体産生細胞源として用い、これを、当業者により実施される標準的なハイブリドーマ法によりマウスP3細胞と融合させた。
【0158】
2種のアッセイにおける抗体結合に基づいて、ガストリン受容体に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択した。第一のアッセイでは、細胞培養上清をGRE11ペプチドに対する抗体の存在について試験し、そしてELISAを、GRE11−BSAが抗GRE11抗体についての抗原標的として働くことを除いて、GRE1抗体について実施例1に記載されるもののように行った。この方法により、GRE11ペプチドに対する抗体を産生する細胞を同定した。例えば、融合体#446において、576ウェルのうち41ウェルで抗GRE11ペプチド抗体を産生するハイブリッド細胞が含まれていることが見いだされた。
【0159】
次いで、これらの細胞を第二の選択段階にかけ、ここで細胞は受容体陽性細胞上のガストリン受容体に結合する抗体の産生について試験された。免疫蛍光アッセイ(IFA)を用いて抗ガストリン受容体抗体を同定した。
【0160】
IFAについて以下の方法を用いた。ガストリン陽性細胞を、特定の細胞株に推奨される組織培養条件下、当業者に既知である方法により増殖する。そのような細胞株の例として、H69、C170HM2、AGS、ヒトガストリン受容体で形質移入されたAGS、およびヒトガストリン受容体で形質移入されたNIH3T3細胞などが挙げられるだろうが、これらに限定されない。IFAの前日に、T150フラスコからガストリン受容体陽性細胞を回収した(ガストリン受容体を形質移入されたAGS細胞など)。1つの細胞懸濁液を調製して細胞を計数した。細胞濃度を、1mLあたり約50万〜100万個に調整した。滅菌ぺトリ皿中、12ウェル培養スライドを細胞懸濁液で溢れさせ、次いで、滅菌条件下、室温で約1時間インキュベートした。スライドを完全DMEM(ダルベッコMEM)に浸漬し、次いで5%CO下、37℃で一晩インキュベートした。スライドをぺトリ皿から取り出して、PBSで1〜2分間リンスした。次に、スライドをパラホルムアルデヒド固定液に60分間浸漬し、次いでPBSで1回ごとに5分間、2回リンスした。過剰のPBSを振り落とし、そしてスライドをPBS中1%BSAで溢れさせ、次いで、湿性スライドチャンバー中、室温で1時間インキュベートした。PBS中1%BSAをデカントして、25μlの対照(マウス抗GRE11抗血清、および非特異的ネガティブマウス血清コントロール)および試験試料(ハイブリッド細胞ウェルから(rom)の上清試料)を個別のウェルに添加した。スライドを、湿性スライドチャンバー中、室温で60分間インキュベートした。PBSで満たした染色ジャーにスライドを5分間入れることで、スライドを洗浄した。これをもう1回繰り返した。スライドを1:40に希釈したFITCヒツジ抗マウスIgG、M&A(H+L)抱合体で溢れさせ、そして湿性スライドチャンバー中、暗中で室温で1時間インキュベートした。PBS緩衝液で満たした染色ジャーにスライドを5分間入れることで、スライドを洗浄した。これをもう1回繰り返した。スライドを封入剤で溢れさせ、そして20×60mmのカバースリップを各スライドに置いた。個別のウェルを蛍光顕微鏡で見て、スライドの各ウェル中の細胞をモノクローナル抗体による染色について視覚評価した。
【0161】
例えば、融合体#446において、細胞膜上のガストリン受容体に結合する抗体を産生することが見いだされたのは、抗GRE11ペプチド抗体を産生する41のハイブリッドのうち4つのハイブリッドのみであった。次いで、そのようにして抗ガストリン受容体抗体を産生すると同定された細胞を、標準ハイブリドーマ技法で、3回クローニングしてモノクローナル抗ガストリン受容体抗体を産生するモノクローナルハイブリドーマを得た。各クローニングに続いて、ハイブリッド細胞を抗ガストリン受容体モノクローナル抗体産生について上記されるように再試験した。放射免疫測定、細胞標的ELISA、ウェスタンブロットなどの当業者に既知である適した代替法が、ガストリン受容体に対する特異的高親和性抗体を産生するハイブリッド細胞を同定するために代わりに用いられ得ることに留意されたい。
【0162】
別の例として、上述の技法によって、モノクローナル抗ガストリン受容体抗体を分泌する融合体#446および融合体#447からハイブリッド株を産生し、それにしたがって、それぞれ446−1、446−2、446−3、および447−1と番号付けられた。
【0163】
この方法論は、さらに、GRの細胞外部分において特異的標的を選択するために用いられ得る。
【実施例16】
【0164】
GRに対する免疫化と化学療法との併用治療をラットで試験した。結果を表5に報告する。
【0165】
被検体:ラット(BDIX株)
方法:ラット(BDIX株)に、GRE1または対照免疫原で7回免疫化を与えた(−4、−3、−2、0、1、4、7週目に注射した)。
【0166】
第0週で、全てのラットに10DHDK12ラット腫瘍細胞を注射した。
【0167】
群によっては、1週目および5週目に、5FU/ロイコボリンで処置した。
【0168】
10週で全てのラットを終わらせて腫瘍を評価した。
【0169】
【表5】

【0170】
群によっては比較的低い取り込み速度が見いだされた。差異は、測定した各パラメーターについて統計的に有意であった(マン・ホイットニー)。
結果は、以下を示す:
【0171】
GRE1エピトープでの免疫化は、対照免疫原を与えられたラットと比較して、腫瘍壊死領域を増加させて、腫瘍細胞の増殖およびガストリン受容体発現レベルの両方を減少させた。
【0172】
これらの効果は、5FUおよびロイコボリンとの同時処置により顕著に向上した。
【0173】
結論:
GRE1での免疫化は治療上有効であった。GRE1免疫化の化学療法との併用は、単独でのいずれの治療にも勝って、顕著に有効性を向上させた。
【図面の簡単な説明】
【0174】
【図1A】CCK−B/ガストリン受容体およびその7つの膜貫通ドメインの模式図を示す。
【図1B】CCK−B/ガストリン受容体およびその7つの膜貫通ドメインの模式図を示す。
【図2】CCK−B/ガストリン受容体のGRE1に対する免疫原で免疫されたウサギで産生される抗体を用いたELISAアッセイのデータを示す。
【図3】CCK−B/ガストリン受容体のペプチド4に対する免疫原で免疫されたウサギで産生される抗体を用いたELISAアッセイのデータを示す。
【図4】GRE1−DT免疫原に対して産生した親和性精製抗体の特異性を評価するために用いた阻害ELISAから得られたデータを示すグラフである。
【図5】125I−ヒトG17のAR42J細胞への結合の、ペプチドインヒビターによる阻害におけるデータを示す棒グラフである。
【図6】免疫金標識化AR4−2j腫瘍細胞の細胞分布の棒グラフである。
【図7】GRE1に対して産生した抗体を用いる、腺癌細胞の核膜からのタンパク質抽出物のウエスタンブロット分析の写真である。
【図8】GRE1に対して産生した抗体を用いる、腺癌細胞の核外膜および形質膜からのタンパク質抽出物のウエスタンブロット分析の写真である。
【図9】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体処置した動物のC170HM2腫瘍重量を示すプロットグラフである。
【図10】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体処置した動物からのC170HM2腫瘍の断面積を示すプロットグラフである。
【図11】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体処置した動物の平均C170HM2腫瘍重量を示す棒グラフである。
【図12】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体処置した動物のC170HM2腫瘍の平均断面積を示す棒グラフである。
【図13】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体処置した動物中のC170HM2腫瘍の平均数を示す棒グラフである。
【図14】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体処置した動物の肝臓転移のC170HM2腫瘍重量中央値を示す棒グラフである。
【図15】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体処置した動物からのC170HM2腫瘍の断面積中央値を示す棒グラフである。
【図16】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体処置した動物中のC170HM2腫瘍数の中央値を示す棒グラフである。
【図17】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体処置した動物中の肝臓C170HM2腫瘍数の平均および中央値を示す棒グラフである。
【図18】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体処置した動物の肝臓C170HM2腫瘍重量の平均および中央値を示す棒グラフである。
【図19】対照動物および抗CCK−B/ガストリン受容体抗体処置した動物のC170HM2肝臓腫瘍転移の断面積について平均および中央値を示す棒グラフである。
【図20】対照マウス(正常ウサギ血清)および抗GRE1処置したヌードマウスのC170HM2肝臓腫瘍異種移植片における放射標識化125I−抗体の濃度を示すグラフを示す。
【図21】対照マウスおよび抗GRE1処置したヌードマウスの異種移植肝臓あたりの平均C170HM2肝臓腫瘍数を示す棒グラフを示す。
【図22】対照マウスおよび抗GRE1処置したヌードマウスの肝臓異種移植片の平均C170HM2肝臓腫瘍重量を示す棒グラフを示す。
【図23】対照マウスおよび抗GRE1処置したヌードマウスのC170HM2肝臓腫瘍異種移植タンパク質のウェスタンブロットを示す。
【図24】対照マウスのC170HM2肝臓異種移植片のヘマトキシリン/エオシン染色切片を示す、光学顕微鏡で撮られた組織学的切片の写真である。
【図25】ウサギ抗GRE1抗体で処置したマウスからのC170HM2肝臓異種移植片のヘマトキシリン/エオシン染色切片を示す、光学顕微鏡で撮られた組織学的切片の写真である。以前にGRPと名付けられたペプチドエピトープは、GREと改名されている。
【配列表】






【特許請求の範囲】
【請求項1】
システイン末端で免疫原性キャリアに抱合された、
KLNRSVQGTGPGPGASLAAC(配列番号2)、
CCGKLNRSVQGTGPGPGASL(配列番号5)、
MELLKLNRSVQGC(配列番号8)、
RDBDLGEADVWRASSC(配列番号9)、
WERRSGGNWAGDWGDSPFSSC(配列番号10)、
MELLKLNRSVQGTGPGPGASLC(配列番号11)、
MELLKLNRSVQGTGPGPGASLSSPPPPC(配列番号12)、
ELLKLNRSVQGTGPGPGASLC(配列番号13)、
LLKLNRSVQGTGPGPGASLC(配列番号14)、
LKLNRSVQGTGPGPGASLC(配列番号15)、
KLNRSVQGTGPGPGASLC(配列番号16)、
ELLKLNRSVQGSSC(配列番号17)、および
GTGPGPGASLC(配列番号18)、
の合成配列からなる群より選択されるガストリン受容体ペプチドエピトープ(GRE)を含む免疫原。
【請求項2】
免疫原性キャリアに抱合された配列番号5、11、12、13、14、15、16、17、および18からなる群より選択されるGREを含む免疫原。
【請求項3】
免疫原性キャリアに抱合されたMELLKLNRSVQGC(配列番号8)からなるGREを含む免疫原。
【請求項4】
免疫原性キャリアに抱合された配列番号9または配列番号10のアミノ酸配列からなるGREを含む免疫原。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の免疫原、および薬学的に許容可能なキャリアまたはアジュバントを含む免疫原性組成物。
【請求項6】
配列番号2、5、6、9、10、11、12、13、14、15、16、17、および18により同定される配列からなる群より選択されるガストリン受容体免疫模倣ペプチドと結合する能力がある抗体。
【請求項7】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項6に記載の抗体。
【請求項8】
前記抗体がマウス抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
請求項7または8に記載の抗体を1つまたは複数含む組成物。
【請求項10】
配列番号2、5、8〜17、または18として同定されるアミノ酸配列からなるガストリン受容体エピトープに特異的である免疫血清または上清から調製される抗体を含む、ガストリン刺激性悪性増殖または前悪性増殖を阻止または治療する組成物。
【請求項11】
配列番号9または配列番号10として記載されるアミノ酸配列からなる腫瘍ガストリン受容体エピトープに特異的である免疫血清または上清から調製される抗体を含む、ガストリン刺激性悪性増殖または前悪性増殖を阻止または治療する組成物。
【請求項12】
前記抗体は細胞毒性物質に抱合される、請求項10または11に記載の組成物。
【請求項13】
前記細胞毒性物質は、毒素または放射性物質を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記毒素は、コレラ毒素、ジフテリア毒素、またはリシンであり、そして前記放射性物質は、125ヨウ素、131ヨウ素、99イットリウム、または111インジウムである、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
(i)患者から生検標本を得る工程と、
(ii)該標本を免疫血清または上清から調製した抗GR抗体に暴露させる工程であって、該抗体は配列番号2、5、8〜17、または18として記載されるアミノ酸配列からなるガストリン受容体ペプチドエピトープに特異的である、暴露させる工程と、
(iii)比色法、化学発光(chemiluminescent)法、蛍光法、放射分析法、またはシンチグラフィー法により、結合抗体を検出する工程を含む、生検でガストリン受容体を診断する方法。
【請求項16】
以下、比色分子、化学発光(chemiluminescent)分子、または放射性分子を含む検出可能な分子と結合した抗GR抗体の投与、および画像化技法による抗体複合体の画像化を含む、患者のガストリン応答性悪性腫瘍または前悪性腫瘍を検出する方法。
【請求項17】
(i)化学療法薬または放射性物質を保有するように改変されていてもよい、治療上有効量の動物抗GRE11抗体、ヒト抗GRE11抗体、もしくはヒト化抗GRE11抗体を投与すること、および
(ii)治療上有効量のガストリンG17免疫原を投与すること、および/または
(iii)治療上有効量の動物抗G17抗体、ヒト抗G17抗体、もしくはヒト化抗G17抗体を投与することを含む、ガストリン応答性腫瘍に罹病している患者を治療する方法。
【請求項18】
前記抗体は、単独のモノクローナル種または異なるモノクローナル種の混合である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
請求項6に記載の抗体を含有するリポソーム小胞懸濁液を含む、リポソーム組成物。
【請求項20】
(i)請求項1または2に記載のガストリン受容体エピトープに対する免疫原、および/または
(ii)請求項6に記載の抗体、および
(iii)5FU(+ロイコボリン)、ゲムシタビン、イリノテカン(irinotecan)、タキサン、オキシプラチン(oxiplatin)、カルボプラチン、シスプラチン、カンプトテシン/カンプトサール、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ルベテカン(rubitecan)、シクロホスファミド、ドキシルビシン(doxirubicin)、マイトマイシンC、エトポシド、およびノスカピンからなる群より選択される化学療法薬、の投与の組み合わせを含む、癌を治療する方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2006−523607(P2006−523607A)
【公表日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−562279(P2004−562279)
【出願日】平成15年12月17日(2003.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/040449
【国際公開番号】WO2004/056862
【国際公開日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(500522909)アフトン コーポレーション (5)
【Fターム(参考)】