説明

CHK1の阻害に有用な化合物

DNA損傷またはDNA複製の障害に関連する疾病および症状の治療に有効であるアリールおよびヘテロアリール置換尿素化合物が開示されている。 例えば、DNA複製、染色体分裂、または細胞分裂の欠陥によって特徴づけられる癌およびその他の疾病の治療のためのこれら化合物の製造方法、および治療薬としての使用についても開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、遺伝物質の完全性を維持および修復する酵素を阻害する上で有用な化合物に関する。 具体的には、本願発明は、アリールおよびヘテロアリール置換された一連の尿素化合物、当該化合物の製造方法、および、例えば、デオキシリボ核酸(DNA)複製、染色体分裂、または、細胞分裂での欠陥を特徴とする癌疾患やその他の疾患の治療ために用いられる治療剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に広範な疾患、病態および障害(以下、「適応症」と称する)において、異常増殖する細胞の関与が認められる。 本明細書で使用する「異常増殖する細胞」(または、「異常な細胞増殖」)の用語は、正常、適正または想定内の細胞増殖から逸脱していることを指すものである。 例えば、異常な細胞増殖には、DNAやその他の細胞成分が損傷を受けたりして不能となった細胞の不十分な増殖も含まれる。 異常な細胞増殖には、高レベルの細胞分化、異常に低レベルの細胞死(例えば、アポトーシス)、またはその双方が起因するもの、これらが媒介するもの、あるいはこれらに帰結する適応症もある。 このような適応症は、例えば、細胞、細胞の集団または組織の局所的な単一または複数の異常増殖を特徴とする場合があり、例えば、癌性(良性または悪性)または非癌性の適応症を含む。
【0003】
定義によって、すべての癌(良性および悪性)が、異常な細胞増殖の形態に関わっているとされている。 癌腫や肉腫などがあるが、これらに限定されない。 その他のものについては、後述する。 異常な細胞増殖が関与する非癌性の適応症もある。 異常な細胞増殖が関与する非癌性の適応症として、関節リウマチ、乾癬、白斑症、ウェグナー肉芽腫症、および全身性紅斑などがあるが、これらに限定されない。 その他のものについては、後述する。
【0004】
異常な細胞増殖が関与する適応症を処置するための方法として、DNA損傷剤を使用する方法がある。 これら薬剤は、DNA代謝、DNA合成、DNA転写、および微小管紡錘体形成のような活性細胞プロセスを破壊することにより、異常に増殖した細胞を殺傷するようにデザインされている。 また、これら薬剤は、例えば、染色体構造の完全性を撹乱するDNAを病巣部に導入する作用も奏する。 DNA損傷物質がデザインされ、そして、DNA損傷を最小限にしながらも、正常な健常細胞に与える影響を最小限にしつつ、異常増殖している細胞を細胞死に導くための数々の投与が試行的になされている。
【0005】
これまでに数多くのDNA損傷物質が開発されている。 その他の物質についても研究開発中である。 DNA損傷物質は、化学療法および放射線療法の用途で使われている。
【0006】
しかしながら、異常な細胞増殖が関与する病態、特に、癌の治療でのDNA損傷物質の効果は満足のゆくものではなかった。 異常増殖する細胞のためのそれら損傷物質の正常細胞に対する選択性(治療係数と呼ばれる場合もある)は、ごく僅かである場合がほとんどである。
【0007】
さらに、すべての細胞は、DNA損傷物質に対して作用可能な知覚機構と修復機構とを具備している。 知覚機構は、細胞周期チェックポイントとも呼ばれており、様々な細胞複製過程での状態を保ち、そして、各工程の正確な進行を担保する役目を果たしている(Hartwell et al., Science, 246: pp.629-634 (1989); Weinert et al., Genes Dev., 8: p.652 (1994))。 細胞が、DNA損傷物質の意図的な挿入による損傷などのDNA損傷を検出すると、シグナル経路が細胞周期チェックポイントを駆動させ、そして、細胞複製サイクルを一次的に中止(「停止」)する。 この停止によって、通常は、影響を受けた細胞が生存および増殖を継続するに十分な程度にまで、異常増殖する細胞のDNAを修復する機会が与えられる。 この好ましくない修復は、異常増殖する細胞を殺傷するに十分なDNA損傷を誘発するとの成果を得る上での障害となっている。
【0008】
例えば、Gemzar(商品名)(ゲムシタビン、または2',2'-ジフルオロ-2'-デオキシシチジン)の名称の化学療法剤は、それ自体が合成中のDNAに導入して、DNAに損傷を与える。 通常、修復がされないままの損傷したDNAは、生命の維持に寄与することはできない。 しかしながら、多くの標的細胞において、細胞周期チェックポイントは、不適切に形成された(あるいは損傷を受けた)DNAを検出する。 活性化した細胞周期チェックポイントは、損傷したDNAの修復のために必要な時間だけ、細胞周期を停止する。 このことは、化学療法剤、放射線療法剤、およびその他の治療剤などのDNA損傷物質の細胞殺傷効果に対して異常増殖する細胞が耐性を示すとの理論に裏付けられた機構の一つである。
【0009】
その他のDNA損傷物質は、腫瘍細胞をS期で停止する。 腫瘍細胞をS期で単に停止させつつ、化学療法剤を投与することによって、ある特定の化学療法剤に対して腫瘍細胞が耐性を示すことは知られていた。 次いで、薬剤が除去され次第に、DNAの損傷が修復され、細胞周期の停止が終了し、そして、細胞周期の進行が中途から再開することとなる(Shi et al., Cancer Res. 61: pp.1065-1012, 2001)。 その他の治療剤は、(以下に詳述するような)G1やG2などを含めたその他のチェックポイントで細胞周期を停止させる。 細胞周期チェックポイントを活性化させるDNA損傷物質は、本明細書では、通常、「チェックポイント活性化物質」と称している。 「Chk1」(「チェックワン」と発音する)と称するチェックポイントを活性化するDNA損傷物質を、本明細書では、「Chk1活性化物質」と称している。 これらチェックポイントの阻害剤を、本明細書では、総称的および具体的に、「チェックポイント阻害剤」および「Chk1阻害剤」と称している。
【0010】
したがって、治療過程で発生したDNA損傷を細胞が修復せず、そして、DNA損傷物質に対する標的細胞を感作させるなどの効果を期待して、様々なDNA損傷チェックポイントを阻害することが考えられる。 なお、感作することで、これら治療剤での治療係数の増大が期待される。
【0011】
本願発明の十分な理解を促すために、細胞周期の各期とChk1の役割について詳述する。
【0012】
この細胞周期は、構造的にも、機能的にも、すべての真核細胞種での基本的な調節プロセスおよび調節方式と同じである。 有糸分裂(体細胞)細胞周期は、G1期(間期)、S期(合成)、G2期(間期)、およびM期(有糸分裂)の四期から構成される。 G1期、S期、およびG2期は、細胞周期の間期と総称される。 G1期では、細胞の生合成活性は迅速に進展する。 DNA合成を開始した時点でS期は始まり、次いで、細胞の核内のDNA含量が複製され、そして、染色体の同一の二組が形成された時点でS期は終了する。
【0013】
そして、この細胞は、有糸分裂の開始に至るまで継続するG2期に移行する。 有糸分裂では、染色体の対形成と対分離を経て、二つの新規の核が形成され、そして、細胞分裂によって、二組の染色体の一方を受け継いだ単一の核を有する二つの娘細胞へと細胞が分割される。 細胞分裂は、M期を終結させ、そして、次の細胞周期に至る間期の始まりを示す。 先の細胞周期が完結して初めて、次の細胞周期が始まるなど、細胞周期の一連の現象は厳格に調節されている。 このことは、ある世代の体細胞に由来する遺伝物質を忠実に複製および分離して、次世代へ引き継ぐことを可能としている。
【0014】
細胞周期チェックポイントは、染色体機構において細胞周期シグナルまたは血管に応答して連続的に作用する少なくとも三つの明確なポリペプチドクラスを含むことが報告されている(Carr, A.M., Science, 272:314-315 (1996))。 最初のクラスは、DNAの損傷や細胞周期の異常を検出または知覚するタンパク質のファミリーである。 これら知覚要素として、失調-末梢血管拡張変異(Atm)タンパク質および失調-末梢血管拡張Rad関連(Atr)タンパク質がある。 第二のクラスのポリペプチドは、検出要素によって検出されたシグナルを増幅および伝達し、そして、Rad53(Alen et al., Genes Dev. 8: pp.2416-2488 (1994))およびChk1によって検証されている。 第三のクラスのポリペプチドとして、例えば、有糸分裂およびアポトーシスの停止などの細胞反応を媒介するp53のような細胞周期エフェクターがある。
【0015】
細胞周期チェックポイントの機能に関する現在の知識の多くは、腫瘍由来細胞系の研究から得られたものである。 多くの事例において、腫瘍細胞は、要となる細胞周期チェックポイントを喪失している(Hartwell et al., Science 266: p.1821-28, 1994)。 細胞が腫瘍状態に移行する要となる段階では、p53が関与する突然変異のような、細胞周期チェックポイント経路を不活性化する突然変異を獲得する工程であることが報告されている(Weinberg, R.A., Cell 81: pp.323-330, 1995; Levine, A. J., Cell 88: pp.3234-331, 1997)。 これら細胞周期チェックポイントの喪失は、DNA損傷があるにもかかわらず、腫瘍細胞の複製を招く。
【0016】
無傷の細胞周期チェックポイントを有する非癌性組織は、通常、単一のチェックポイント経路の破壊から一時的にでも免れる。 しかしながら、腫瘍細胞は、細胞周期の進行を制御する経路に欠陥を抱えているため、その他のチェックポイントを撹乱してしまい、その結果、DNA損傷剤に対して特に感受的になる。 例えば、変異型p53を含む腫瘍細胞は、G1 DNA損傷チェックポイントおよびG2 DNA損傷チェックポイントを維持する能力の双方において欠陥を有している(Bunz et al., Science, 282: pp.1497-1501, 1998)。 G2チェックポイントまたはS期チェックポイントの初期化を標的とするチェックポイント阻害剤は、これら腫瘍細胞がDNA損傷を修復する能力をさらに損うと考えられるので、放射線療法および全身的化学療法の双方の治療係数を増大させる候補物として挙げられる(Gesner, T., Abstract at SRI Conference: Protein Phosphorylation and Drug Discovery World Summit, March 2003)。
【0017】
DNA損傷の存在下またはDNAの複製不能な条件下では、チェックポイントタンパク質AtmおよびAtrが、細胞周期の停止に至る信号伝達経路をもたらす。 Atmは、電離放射線に反応してDNA損傷チェックポイントにおいて役割を果たすことが知られている。 Atrは、二本鎖DNAの損傷や一本鎖DNAの損傷を招く薬剤、それに、DNA照射をブロックする薬剤によって刺激される。
【0018】
Chk1は、DNA損傷チェックポイントシグナル伝達経路において、プロテインキナーゼAtmおよび/またはAtrの下流に位置するプロテインキナーゼである(Sanchez et al., Science, 277: pp.1497-1501, 1997;米国特許第6,218,109号を参照)。 哺乳動物の細胞において、Chk1は、電離放射線、紫外線(UV)、およびヒドロキシ尿素を含むDNA損傷を引き起こす薬剤に反応してリン酸化される(Sanchez et al., 前出; Lui et al., Genes Dev., 24: pp.1448-1459, 2000)。 哺乳動物の細胞でのChk1を活性化するこのリン酸化は、Atm(Chen et al., Oncogene, 18: pp.249-256, 1999)および Atr(Lui et al., 前出)に依存している。 さらに、Chk1は、細胞周期を制御する上で重要な公知の遺伝子産物であるwee1(O'Connell et al., BMBO J., 16: pp.545-554, 1997)とPds1(Sanchez et al., Science, 286: pp.1166-1171, 1999)の双方をリン酸化することが知られている。
【0019】
これらの研究は、哺乳動物のChk1が、S期での停止を実現するAtm依存性DNA損傷チェックポイントにおいても役割を果たすことを示している。 最近になって、S期での哺乳動物細胞でのChk1の役割に関する研究発表が行われており(Feijoo et al., J. Cell Biol., 154: pp.913-923, 2001; Zhao et al., PNAS USA, 99: pp.14195-800, 2002; Xiao et al., J Biol Chem., 278 (24): pp.21767-21773, 2003; Sorensen et al., Cancer Cell, 3(3): pp.247-58, 2003)、その中で、DNA合成の完全性をモニターするChk1の役割が脚光を浴びている。 Chk1は、サイクリンA/cdk2活性を調節するCdc25Aをリン酸化してS期を停止する(Xiao et al., 前出、およびSorensen et al., 前出)。 また、Chk1は、細胞がG2から有糸分裂へと移行する際に、通常はサイクリン-B/cdc2(Cdk1としても知られている)を脱リン酸化する二重特異性ホスファターゼであるCdc25Cをリン酸化および不活性化して、G2を停止する(Fernery et al., Science, 277: pp.1495-7, 1997; Sanchez et al., 前出; Matsuoka et al., Science, 282: pp.1893-1897, 1998; および、Blasina et al., Curr. Biol., 9: pp.1-10, 1999)。 双方の事例において、Cdk活性を調節することで、DNA損傷または非複製DNAの存在下で、有糸分裂への移行を妨げるために、細胞周期の活動は制限を受けることとなる。
【0020】
その他のクラスの細胞周期チェックポイント阻害剤は、G1期またはG2/M期のいずれかで作用する。 プロテインキナーゼCに関して基本的な作用を示す非特異的なキナーゼ阻害剤として、当初は、UCN-01、または7-ヒドロキシスタウロスポリンが単離されたが、最近になって、Chk1の活性を阻害し、そして、G2細胞周期チェックポイントを廃除することが明らかになってきた(Shi et al., 前出)。 よって、UCN-01は、非選択性Chk1阻害剤であり、また、UCN-01を高用量で用いると、細胞に対して毒性を呈する。 低用量では、多くの細胞性キナーゼを非特異的に阻害すると共に、G1チェックポイントも阻害する(Tenzer and Pruschy, Curr. Med Chem. Anti-Cancer Agents, 3:35-46, 2003)。
【0021】
UCN-01は、放射線療法、抗癌剤カンプトテシン(Tenzer and Pruschy, 前出)、およびゲムシタビン(Shi et al., 前出)などの癌治療時に併用されているが、その効果は限定的であった。 加えて、UCN-01は、多形性神経膠芽腫(Hirose et al., Cancer Res., 52: pp.5843-5849, 2001)でのDNAミスマッチ修復(MMR)を誘発するテモゾロミド(TMZ)の効果を増強するために用いられてきた。 臨床現場では、UCN-01は、期待したほど効果的な化学療法剤ではなく、このことは、治療計画の策定の誤りや、要となる分子標的の同定が十分でないことに起因するものと考えられる(Grant and Roberts, Drug Resistance Updates, 6: pp.15-26, 2003)。 Mack et al.は、培養した非小細胞肺癌細胞系での細胞周期依存的なシスプラチンを、UCN-01が増強することを報告しているが、UCN-01によって標的化される要となる具体的な細胞周期チェックポイントは特定していない。 (Mack et al., Cancer Chemother Pharmacol., 51(4): pp.337-348, 2003)。
【0022】
腫瘍細胞を感作させて、化学療法剤に影響を与える細胞周期を利用した処置に供するための、その他の幾つかの手法が存在する。 例えば、2-アミノプリンを投与することで、ミノシンを誘発するG1期の停止またはヒドロキシ尿素を誘発するS期の停止などの複数の細胞周期チェックポイントの機能が廃除され、これにより、細胞は、有糸分裂に向けて進行および移行できるこことなる(Andreassen et al., Proc Natl Acad Sci USA., 86: pp.2272-2276, 1992)。 G2チェックポイントの進行を媒介し、それにより、細胞死を招くことによって、シスプラチンや電離放射線のようなDNA損傷物質が有する細胞毒性を増強するために、カフェイン、すなわち、メチルキサンチンも利用されている。 (Bracey et al., Clin. Cancer Res., 3: pp.1371-1381, 1997)。 しかしながら、細胞周期を廃除するために用いるカフェインの量は、臨床的に許容可能な量を超えているなど、有効な治療方法とはいえない。 さらに、トポイソメラーゼ阻害剤BNP1350に対する感受性を増大するために、Chk1キナーゼに対するアンチセンスヌクレオチドが利用されている(Yin et al., Biochem. Biophys. Res. Conwnun., 295: pp.435-44, 2002)が、そこでは、アンチセンス処置および遺伝子治療でよく認められる問題点が出現している。
【0023】
Chk1阻害剤は、WO 02/070494、WO 04/014876、およびWO 03/101444に開示されている。 その他のChk1阻害剤として、ジアリール尿素化合物、例えば、米国公開特許公報第2003-0069284号に開示されたアリールおよびヘテロアリールで置換された尿素化合物;メチルキサンチンおよび関連化合物(Fan et al., Cancer Res., 55: pp.1649-54 (1995); ウレイドチオフェン(WO 03/029241);N-ピロロピリジニルカルボキシアミド(WO 03/28724); アンチセンスChk1ヌクレオチド(WO 01/57206); Chk1受容体アンタゴニスト(WO 00/16781); ヘテロ芳香族カルボキシアミド誘導体(WO 03/037886); アミノチオフェン(WO 03/029242); (インダゾリル)ベンズイミダゾール(WO 03/004488); ヘテロ環状ヒドロキシイミノ-フルオレン (WO 02/16326); シトネマン骨格含有誘導体(シトネミン)(米国特許第6,495,586号); ヘテロアリールベンズアミド(WO 01/53274); インダゾール化合物(WO 01/53268); インドラカルバゾール(Tenzer et al., 前出を参照); クロマン誘導体(WO 02/070515);パウロン(Schultz et al., J. Med. Chem., Vol. 42: pp.2909-2919 (1999)); インデノピラゾール(WO 99/17769); フラボン(Sedlacek et al., Int. J. Oncol., 9: pp.1143-1168 (1996); セリントレオニンキナーゼのペプチドループのペプチド誘導体(WO 98/53050); および、オキシンドール(WO 03/051838)がある。
【0024】
しかしながら、当該技術分野では、Chk1に対して効果的かつ選択的な阻害剤が依然として待望されているのである。 本願発明は、この要望は勿論、その他の要望にも応えるものである。
【発明の開示】
【0025】
本願発明は、強力かつ選択的なチェックポイントキナーゼChk1の阻害剤に関する。 本願発明のChk1阻害剤は、異常な細胞増殖が関与する適応症状を処置する上で有用であり、また、DNA損傷が関係する適応症状やDNA複製の異常を処置するための化学的増感剤や放射線増感剤としても有用である。
【0026】
したがって、本願発明の一実施態様によれば、構造式(I)の化合物が提供される。 この化合物は、有効量の構造式(I)の化合物を個体に投与する工程を含むChk1を阻害する方法において有用である。
【0027】
化学式(I)の化合物は、構造式、すなわち;
【0028】
【化1】

式中、X1が、不存在、-O-、-S-、-CH2-、または-N(R1)-であり;
2が、-O-、-S-、または-N(R1)-であり;
Yが、酸素または硫黄であり;または、=Yは、共通する炭素原子に結合している二つの水素原子を表し;
Wが、ヘテロアリール、アリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、およびヘテロアリールまたはアリール基で置換されたC1-6アルキルからなるグループから選択され、(a)前記W基でのアリール基またはヘテロアリール基が、少なくとも一つのCF3およびヘテロアリールで置換されており、(b)前記W基でのアリール基が、R2で表される1個〜3個の置換基で任意に置換されており、および、(c)前記W基でのヘテロアリール基が、R5で表される1個〜3個の置換基で任意に置換されており;
1が、ヒドロ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびアリールからなるグループから選択され;
2が、ヘテロアリール、ハロ、任意に置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、N(R3)2、OR3、CO23、C(O)N(R3)2、C(O)R3、N(R1)COR3、N(R1)C(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)R3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)R3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンOR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンNHC-(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンSO2NR3、C1-6アルキレンOR3、およびSR3からなるグループから選択され;
3が、ヒドロ、ハロ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、CO24、SO24、ハロ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、N(R4)2、およびSO24の一つまたはそれ以上で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルキレンアリール、C1-6アルキレンヘテロアリール、C1-6アルキレンC3-8ヘテロシクロアルキル、C1-6アルキレンSO2アリール、任意に置換されたC1-6アルキレンN(R4)2、OCF3、C1-6アルキレンN(R4)3+、C3-8ヘテロシクロアルキル、およびCH(C1-6アルキレンN(R4)2)2からなるグループから選択され、または、二つのR3基をもってして、任意に置換された三員〜六員の脂肪族環が形成され;
4が、ヒドロ、C1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1-6アルキレンアリール、およびSO21-6アルキルからなるグループから選択され、または、二つのR4基をもってして、任意に置換された三員〜六員の環が形成され;
5が、C1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、N(R3)2、OR3、ハロ、N3、CN、C1-6アルキレンアリール、C1-6アルキレンN(R3)2、C(O)R3、C(O)OR3、C(O)N(R3)2、N(R1)C(O)R3、N(R1)CO23、CF3、および以下の式、
【0029】
【化2】

の構造からなるグループから選択され;
6が、OR11、-C≡C-R7、およびヘテロアリールからなるグループから選択され;
7が、ヒドロ、C1-6アルキル、アリール、C1-6アルキレンアリール、ヘテロアリール、C1-6アルキレンヘテロアリール、およびアルコキシからなるグループから選択され;
8、R9およびR10が、独立して、ヒドロ、ハロ、任意に置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、OCF3、CF3、NO2、CN、NC、N(R3)2、OR3、CO23、C(O)N(R3)2、C(O)R3、N(R1)COR3、N(R1)C(O)OR3、N(R8)C(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)R3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)OR3、N(R1)C(O)C1-3アルキレンOR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンNHC(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンSO2NR3、C1-6アルキレンOR3、およびSR3からなるグループから選択され;
11が、ヒドロ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、SO24、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、N(R4)2、およびSO24の一つまたはそれ以上で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルキレンアリール、C1-6アルキレンヘテロアリール、C1-6アルキレン-C3-8ヘテロシクロアルキル、C1-6アルキレンSO2アリール、任意に置換されたC1-6アルキレンN(R4)2、OCF3、C1-6アルキレンN(R4)3+、C3-8ヘテロシクロアルキル、およびCH(C1-6アルキレン-N(R4)2)2からなるグループから選択される、化学構造式で表される化合物であり、薬学的に許容可能なその塩、またはプロドラッグ、または溶媒和物をも意図している。
【0030】
本願発明のその他の実施態様によれば、1個またはそれ以上の構造式(I)の化合物を含む薬学的組成物を提供し、また、Chk1を阻害することで、in vivoまたはex vivoで治療上の効果が得られる疾患または障害の治療処置での当該組成物の使用、あるいは研究または診断目的での使用をも意図している。
【0031】
本願発明のさらにその他の実施態様によれば、構造式(I)の化合物を、化学療法剤、放射線療法剤、またはこれらの組み合わせと共に個体に投与することを含む、医学的適応症のために化学療法または放射線療法を受けている個体の細胞を感作する方法が提供される。 この方法が対処する適応症として、癌が挙げられるが、これに限定されない。
【0032】
本願発明のさらにその他の実施態様によれば、異常な細胞増殖を阻害または防止する方法が提供される。 ある実施態様によれば、この方法は、異常増殖する細胞を含む細胞集団と少なくとも一つのChk1活性剤とを、異常増殖する当該細胞の実質的な同期性細胞周期を停止するに十分な量と時間をもってして接触させることを含む。 当該細胞集団での同期性細胞周期が停止すれば、この細胞集団と少なくとも一つのChk1阻害剤とを、当該細胞周期を実質的に廃除するに十分な量と時間でもっしてして接触させる。
【0033】
本願発明のこれら実施態様とその他の実施態様は、本願発明の好適な実施態様について詳述した以下の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
本願発明の化合物は、構造式(I)、すなわち;
【0035】
【化3】

式中、X1が、不存在、-O-、-S-、-CH2-、または-N(R1)-であり;
2が、-O-、-S-、または-N(R1)-であり;
Yが、酸素または硫黄であり;または、=Yは、共通する炭素原子に結合している二つの水素原子を表し;
Wが、ヘテロアリール、アリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、およびヘテロアリールまたはアリール基で置換されたC1-6アルキルからなるグループから選択され、(a)前記W基でのアリール基またはヘテロアリール基が、少なくとも一つのCF3およびヘテロアリールで置換されており、(b)前記W基でのアリール基が、R2で表される1個〜3個の置換基で任意に置換されており、および、(c)前記W基でのヘテロアリール基が、R5で表される1個〜3個の置換基で任意に置換されており;
1が、ヒドロ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびアリールからなるグループから選択され;
2が、ヘテロアリール、ハロ、任意に置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、N(R3)2、OR3、CO23、C(O)N(R3)2、C(O)R3、N(R1)COR3、N(R1)C(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)R3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)R3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンOR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンNHC-(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンSO2NR3、C1-6アルキレンOR3、およびSR3からなるグループから選択され;
3が、ヒドロ、ハロ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、CO24、SO24、ハロ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、N(R4)2、およびSO24の一つまたはそれ以上で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルキレンアリール、C1-6アルキレンヘテロアリール、C1-6アルキレンC3-8ヘテロシクロアルキル、C1-6アルキレンSO2アリール、任意に置換されたC1-6アルキレンN(R4)2、OCF3、C1-6アルキレンN(R4)3+、C3-8ヘテロシクロアルキル、およびCH(C1-6アルキレンN(R4)2)2からなるグループから選択され、または、二つのR3基をもってして、任意に置換された三員〜六員の脂肪族環が形成され;
4が、ヒドロ、C1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1-6アルキレンアリール、およびSO21-6アルキルからなるグループから選択され、または、二つのR4基をもってして、任意に置換された三員〜六員の環が形成され;
5が、C1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、N(R3)2、OR3、ハロ、N3、CN、C1-6アルキレンアリール、C1-6アルキレンN(R3)2、C(O)R3、C(O)OR3、C(O)N(R3)2、N(R1)C(O)R3、N(R1)CO23、CF3、および以下の式、
【0036】
【化4】

の構造からなるグループから選択され;
6が、OR11、-C≡C-R7、およびヘテロアリールからなるグループから選択され;
7が、ヒドロ、C1-6アルキル、アリール、C1-6アルキレンアリール、ヘテロアリール、C1-6アルキレンヘテロアリール、およびアルコキシからなるグループから選択され;
8、R9およびR10が、独立して、ヒドロ、ハロ、任意に置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、OCF3、CF3、NO2、CN、NC、N(R3)2、OR3、CO23、C(O)N(R3)2、C(O)R3、N(R1)COR3、N(R1)C(O)OR3、N(R8)C(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)R3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)OR3、N(R1)C(O)C1-3アルキレンOR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンNHC(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンSO2NR3、C1-6アルキレンOR3、およびSR3からなるグループから選択され;
11が、ヒドロ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、SO24、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、N(R4)2、およびSO24の一つまたはそれ以上で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルキレンアリール、C1-6アルキレンヘテロアリール、C1-6アルキレン-C3-8ヘテロシクロアルキル、C1-6アルキレンSO2アリール、任意に置換されたC1-6アルキレンN(R4)2、OCF3、C1-6アルキレンN(R4)3+、C3-8ヘテロシクロアルキル、およびCH(C1-6アルキレン-N(R4)2)2からなるグループから選択される、化学構造式で表される化合物であり、薬学的に許容可能なその塩、またはプロドラッグ、または溶媒和物をも意図している。
【0037】
本願発明の好ましい化合物として、X1およびX2が、-N(H)-であり;Yが、酸素または硫黄であり;そして、好ましくは、Wが、ヘテロアリールである化合物がある。 ある実施態様によれば、Wは、窒素、酸素および硫黄からなるグループから選択される少なくとも二つのヘテロ原子を含む任意に置換されたヘテロアリールであり、前記環が、C1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、N(R3)2、OR3、C(O)N(R3)2、CO23、CN、CF3、およびハロからなるグループから選択されされ、かつR3が先に定義した通りのものである一つまたは二つの置換基で任意に置換されている。
【0038】
構造式(I)で表されるその他の好適な化合物として、Wが、C1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、N(R3)2、OR3、C(O)OR3、C(O)N(R3)2、およびハロからなるグループから選択された1個または2個の置換基で任意に置換されたピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、およびトリアジニルからなるグループから選択されている化合物がある。
【0039】
好ましい実施態様によれば、Wは、C1-6アルキル、C2-6アルキニル、アリール、ヘテロアリール、CN、CO23、N(R3)2、OR3およびハロからなるグループから選択された1個〜4個の置換基で任意に置換され、かつ以下の式、すなわち;
【0040】
【化5】

の式で表される構造からなるグループから選択される。
【0041】
さらに好ましい実施態様によれば、Wは、
【0042】
【化6】

である。
【0043】
最も好ましい実施態様によれば、Wが、ピラジニルであり、そして、X1とX2のそれぞれが、N(H)である。
【0044】
その他の好適な実施態様によれば、Wに関するヘテロアリール置換基およびR6のヘテロアリール基が、独立して、
【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
【化9】

【0048】
【化10】

【0049】
【化11】

からなるグループから選択される。
【0050】
本明細書で用いる「アルキル」の用語は、指定された数の炭素原子を有する直鎖および分岐炭化水素基、典型的には、メチル、エチル、直鎖および分岐鎖のプロピルおよびブチル基を含む。 特に断りのない限り、炭化水素基は、20個までの炭素原子を含むことができる。 「アルキル」の用語は、「架橋アルキル」、すなわち、例えば、ノルボニル、アダマンチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、またはデカヒドロナフチルといったC6-C16の二環式または多環式炭化水素基を含む。 アルキル基は、例えば、ヒドロキシ(OH)、ハロ、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノ(N(R3)2)、およびスルフォニル(SO23)で置換されることが可能であり、ここでR3とは、先に定義した通りのものである。
【0051】
「シクロアルキル」の用語は、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロヘキシルまたはシクロペンチルといった環状C3-C8炭化水素基として定義される。 「ヘテロシクロアルキル」の用語は、酸素、窒素、および硫黄からなるグループより選択される1個〜3個のヘテロ原子を含むこという点を除いて「シクロアルキル」と同様に定義される。 シクロアルキル基およびヘテロシクロアルキル基は、C1-4アルキル、C1-3アルキレンOH、C(O)NH2、NH2、オキソ(=O)、アリール、トリフルオロエタノイル、およびOHからなるグループより独立して選択される1個〜3個の基で任意に置換された飽和または部分的に不飽和な環系とすることができる。 ヘテロシクロアルキル基は、さらに任意に、C1-6アルキル、ヒドロキシC1-6アルキル、C1-3アルキレンアリール、またはC1-3アルキレンヘテロアリールでN置換される。
【0052】
「アルケニル」の用語は、置換基が炭素-炭素二重結合を含むという点を除いて、「アルキル」と同一に定義される。
【0053】
「アルキニル」の用語は、置換基が炭素-炭素三重結合を含むいう点を除いて、「アルキル」と同一に定義される。
【0054】
「アルキレン」の用語は、置換基を有するアルキル基を指す。 例えば、「C1-6アルキレンC(O)OR」の用語は、-C(O)OR基で置換された1個から6個の炭素原子を含むアルキル基を指す。 このアルキレン基は、1個またはそれ以上の前掲の任意のアルキル置換基で任意に置換される。
【0055】
「ハロ」または「ハロゲン」の用語は、本明細書にあっては、フッ素、臭素、塩素およびヨウ素を含むことと定義される。
【0056】
「アリール」の用語は、本明細書にあっては、単独で、または組み合わせで、単環系または多環系芳香族基、好ましくは、例えば、フェニルまたはナフチルといった単環系または二環系芳香族基と定義される。 特に断りのない限り、「アリール」基は非置換であるか、または1個以上、特に、1個〜4個のハロ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、N(R3)2、OR3、CO23、C(O)N(R3)2、C(O)R3、N(R1)COR3、N(R1)C(O)OR3、N(R1)C(O)C1-3アルキレンC(O)R3、N(R1)C(O)C1-3アルキレンC(O)OR3、N(R1)C(O)C1-3アルキレンNHC(O)OR3、N(R1)C(O)C1-3アルキレンSO2NR3、C1-3アルキレンOR1、およびSR3で置換され、ここでのR1およびR3は、先に定義した通りである。 典型的なアリール基として、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、クロロフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニル、2,4-メトキシクロロフェニルなどがあるが、これらに限定されない。 「アリールC1-3アルキル」と「ヘテロアリールC1-3アルキル」の用語は、C1-3アルキル置換基を有するアリール基またはヘテロアリール基と定義される。
【0057】
「ヘテロアリール」の用語は、本明細書にあっては、1個または2個の芳香環を有し、かつ少なくとも1個の窒素、酸素または硫黄の原子を芳香環中に有する単環式または二環式環系と定義される。 特に断りのない限り、ヘテロアリール基は、非置換であるか、または1個以上、特に、1個〜4個の、例えば、C1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、CF3、CN、C(O)N(R3)2、CO22、N(R3)2、OR3、およびハロで置換され、ここでR3とは、先に定義した通りである。 ヘテロアリール基としては、チエニル、フリル、ピリジル、オキサゾリル、キノリル、イソキノリル、インドリル、トリアジニル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリルおよびチアジアゾリルなどがあるが、これらに限定されない。
【0058】
「ヒドロ」の用語は、-Hと定義される。
【0059】
「ヒドロキシ」の用語は、-OHと定義される。
【0060】
「ニトロ」の用語は、-NO2と定義される。
【0061】
「シアノ」の用語は、-CNと定義される。
【0062】
「イソシアノ」の用語は、-NCと定義される。
【0063】
「トリフルオロメトキシ」の用語は、-OCF3と定義される。
【0064】
「アジド」の用語は、-N3と定義される。
【0065】
「3〜8員環」の用語は、本明細書では、1個以上、特に1個〜3個の先述した「アリール」基で任意に置換されたモルフォリニル、ピペリジニル、フェニル、チオフェニル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピリミジニル、およびピリジニルを含む炭素環式およびヘテロ環式の脂肪族または芳香族基を意味するが、これらに限定されない。
【0066】
炭化水素部分の炭素原子含量は、炭化水素部分の炭素原子の最小数と最大数を明示する添え字によって表示され、例えば、「C1-6アルキル」は、1個〜6個の炭素原子を有するアルキル基を包括的に意味する。
【0067】
本明細書で示す構造式にあっては、置換基を欠いた結合については、置換基はメチルであり、例えば、
【0068】
【化12】

である。
【0069】
環上の炭素原子に結合する置換基が何も表示されていない場合、炭素原子が適切な数の水素原子を有していると理解される。 さらに、カルボニル基または窒素原子に結合する置換基が何も表示されていない場合、置換基は水素であり、例えば、
【0070】
【化13】

である。
【0071】
「Me」という略語は、メチルである。 COおよびC(O)という略語は、カルボニル(C=O)である。
【0072】
例えば、Ra、Rb、R3、R4などのN(RX)2という表示、式中、Xはアルファベットまたは数字を表している表示は、共通の窒素原子に結合する2個のRX基を表す際に使用される。 このような表示が使われる場合、RX基は同一であっても、または異なっていてもよく、RX基によって定義される基から選択される。
【0073】
「Chk1阻害剤」とは、Chk1タンパク質の細胞周期チェックポイント活性の少なくとも一部を廃除することが可能な、公知または後に発見されるであろう、天然または合成のすべての化合物をも指す。 細胞周期のある期から次の期への細胞の移行が停止されたり、あるいは、細胞が直ちに細胞死に至る程度にまで細胞チェックポイント機構が変質することで、細胞周期チェックポイントの廃除が達成される。 細胞周期チェックポイントの廃除は、細胞が損傷や欠陥を抱えたままで細胞周期の次の期に移行するため、細胞死を誘発または増進することとなる。 細胞死は、アポトーシスおよびマイトティックカタストロフィを含めたどのような機構でも起こりうる。
【0074】
「Chk1活性化物質」とは、細胞周期チェックポインにおいてDNA修復と恒常性に関するChk1キナーゼ活性を活性化し、そして、少なくとも一部の細胞周期を停止することが可能な、公知または後に発見されるであろうすべての物質を指す。 Chk1活性化物質として、本明細書において活性化物質のための「標的期」と称する不特定の細胞周期において細胞周期を停止することができる物質が挙げられる。 標的期として、有糸分裂期以外の細胞周期を構成する期、すなわち、G1期、S期、およびG2期がある。 本願発明で有用なChk1活性化物質として、化学療法剤および/または電離放射線や紫外線などの放射線(または「放射線療法剤」)などのDNA損傷物質がある。 Chk1活性化物質放射線として、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、マイクロ波、およびこれらの組み合わせがあるが、これらに限定されない。
【0075】
「異常な細胞増殖を阻害する」とは、異常増殖する細胞の増殖速度を、減速または停止させることを指す。 この阻害は、複製速度の減速、細胞死の増大、またはその双方による結果でもある。 細胞死は、アポトーシスおよびマイトティックカタストロフィを含めたどのような機構でも起こりうる。
【0076】
「異常な細胞増殖を防止する」とは、異常な細胞増殖の発生に先駆けて異常な細胞増殖を阻害すること、あるいはその再発を阻害することを指す。
【0077】
「In vivo」とは、動物やヒトの体内でのことを指す。 これに関連して、異常に複製している細胞の増殖を減退または解消するために、治療目的で薬剤を患者に対して使用することができる。 異常な細胞増殖またはそれに関連する症状発現の発生または再発を防ぐために、これら薬剤を予防的に用いることもできる。
【0078】
「Ex vivo」とは、生体の体外でのことを指す。 Ex vivoでの細胞集団の例としては、in vitro細胞培養物の他に、ヒトや動物から得た体液や組織資料のような生物学的試料がある。 これら試料は、当該技術分野で周知の方法によって取得することができる。 生物学的液体試料の例として、血液、髄液、尿、唾液などがある。 生物学的組織試料の例として、腫瘍およびその生検などがある。 これに関連して、本願発明の化合物は、治療用途および実験用途の双方の面で、無数の態様で利用することができる。
【0079】
本明細書で用いる「放射線感受性増強物質」という用語は、電磁放射線に対する細胞の感受性を増大させ、および/または電磁放射線で治療しうる疾患の治療を促進するために、治療上有効量をヒトまたは他の動物に投与される化合物と定義される。
【0080】
本明細書で用いる「電磁放射線」および「放射線」という用語は、10-20〜100メートルの波長を有する放射線を含むが、これらに限定されない。
【0081】
本願発明は、構造式(I)の化合物の可能な限りすべての立体異性体と幾何学異性体を含む。 本願発明は、ラセミ体だけではなく、光学活性異性体も含む。 構造式(I)の化合物が単一鏡像異性体として所望される場合、最終生産物の光学的分割、光学的に純粋な出発物質からの立体特異的合成、あるいは、例えば、Ma et al., Tetrahedron: Asymmetry, 8(6), pp.883-888 (1997)に記載されたキラル補助剤のいずれかを用いて取得することができる。 最終生産物、中間体、または出発物質の光学的分割は、当該技術分野で公知である適当な方法によって達成できる。 さらに構造式(I)の化合物の互変異生体が可能な状況において、本願発明が、化合物のすべての互変形態を含むことも意図される。 後述するように、特異的立体異性体は、化学療法または放射線療法と併用しても、化学療法または放射線療法に起因する有害な影響を減少するという予期せぬChk1阻害効果をも示す。
【0082】
本願発明の方法にあっては、構造式(I)の化合物のプロドラッグも、当該化合物と同様に用いることができ。 化合物を処方および/または投与に適した形態へと誘導し、次いで、in vivoにおいて、薬物として放出されるプロドラッグを創製する手法は確立されており、化合物の物理化学的性質を一過的に(例えば、生化学的に可逆的に)変化させる際に巧みに利用されている(H. Bundgaard, Ed., "Design of Prodrugs", Elsevier, Amsterdam, (1985); Silverman, "The Organic Chemistry of Drug Design and Drug Action", Academic Press, San Diego, chapter 8, (1992); Hillgren et al., Med. Res. Rev., 15, 83(1995))。
【0083】
本発明の化合物は、1個またはそれ以上の官能基を有することができる。 もし要求されまたは必要であるなら、プロドラッグを得るために、官能期を修飾することができる。
【0084】
適切なプロドラッグとして、例えば、アミドやエステルなどの酸誘導体がある。 N-オキシドも、当業者によって、プロドラッグとして認識されている。
【0085】
本明細書で用いられている「薬学的に許容しうる塩」の用語は、酸成分を含み、適切な陽イオンと塩を形成する構造式(I)の化合物を指す。 適切な薬学的に許容しうる陽イオンは、アルカリ金属(例えば、ナトリウムまたはカリウム)およびアルカリ土類金属(例えば、カルシウムまたはマグネシウム)陽イオンを含む。 加えて、塩基性中心を有する構造式(I)の化合物の薬学的に許容しうる塩は、薬学的に許容しうる酸と共に形成される酸付加塩である。 その例として、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、リン酸水素塩、酢酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、グルコン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、およびp-トルエンスルホン酸塩などがあるが、これらに限定されない。 前記事項に鑑みて、本明細書で示した本願発明の化合物に関する記載は、構造式(I)の化合物の他に、薬学的に許容しうる塩および溶媒和物も含むことも意図している。
【0086】
本願発明の化合物は、純粋な薬品として治療上投与することが可能であるが、構造式(I)の化合物を薬学的組成物または処方として投与することが好ましい。 従って、本願発明の化合物は、構造式(I)の化合物と共に、薬学的に許容しうる当該化合物用の希釈剤または担体を含む薬学的処方を提供する。 構造式(I)の化合物と、薬学的に許容しうる当該化合物用の希釈剤または担体とを混合することを含む、薬学的組成物の調製プロセスも提供される。
【0087】
従って、本願発明は、構造式(I)の化合物、あるいは薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグまたは溶媒和物を、一つまたはそれ以上の薬学的に許容可能な担体、そして任意の、その他の治療用および/または予防用成分と共に含む薬学的製剤をさらに提供する。この担体は、製剤中の他の成分と混合しても化学反応を起こさず、また、患者にとって有害でなければ「許容」される。 そのような担体の例が、Remington's Pharmaceutical Sciences, 17th Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA. (1985)に記載されている。
【0088】
チェックポイントキナーゼの阻害は、通常は、部分的効果が観察されるより高い濃度を通じて、効果がない、または最小の効果が観察される濃度から最大の効果が得られる飽和濃度までを含む濃度範囲において、選択的アッセイ系を関心のある化合物と接触させる用量反応アッセイによって測定される。 理論的には、このような阻害化合物の用量依存効果アッセイは、濃度関数として阻害の程度を表すS字曲線として描くことができる。 その曲線は、理論的にはチェックポイントキナーゼ活性を、アッセイにおける最小および最大酵素活性間の差の50%の水準まで減少させるのに充分な濃度点を通過する。 この濃度は、「阻害濃度(50%)」または「IC50」値として定義される。 IC50値の測定は、好ましくは、簡便な生化学(無細胞の)アッセイ技術または細胞に基づくアッセイ技術を用いて実施される。
【0089】
阻害剤の有効性の比較は、比較化合物よりも高いIC50値を示す化合物は効果が低く、比較化合物よりも低いIC50値を示す化合物は効果が高いという比較用IC50値に関連してしばしば行われている。 本発明の化合物は、用量依存アッセイを用いて測定した際に、5μMに満たないIC50値を示し、そして、0.1nMにまで低下する。 好ましい化合物は、500nM以下のIC50値を示す。 本願発明のさらに好ましい化合物は、250nM以下、100nM以下、50nM以下、または20nM以下のIC50値を示す。
【0090】
本願発明の好ましいChk1阻害剤は、選択性、すなわち、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、cdc2、およびpp60v-srcの少なくとも20倍もの選択的なChk1阻害作用を示すことが実証されている。 本願発明のさらに好ましいChk1阻害剤は、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、cdc2、およびpp60v-srcの少なくとも75倍もの選択的なChk1阻害作用を示す。 本願発明の最も好ましいChk1阻害剤は、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、cdc2、pp60v-src、プロテインキナーゼB/Akt-1、p38MapK、ERK1、p70S6K、cdc2、cdk2、chk2、およびablチロシンキナーゼの少なくとも100倍もの選択性を示す。 「選択性の倍数」は、比較対象キナーゼに対するChk1阻害剤のIC50値を、Chk1に対するChk1阻害剤のIC50値で割って得た数値として求められる。
【0091】
本願発明での使用に適した化合物および薬学的組成物は、活性成分が、その意図した目的を達成するのに充分な量で投与されるものを含む。 具体的には、「治療上の有効量」とは、治療を受ける患者の病状の進行を阻止、または症状を軽減するのに有効な量を意味する。 治療上有効量は、本願明細書での詳細な開示に鑑みて、当業者によって決定することができる。
【0092】
Chk1阻害剤に加えて、本願発明の薬学的組成物は、その単独投与に起因または関連する副作用を減少させる1つ以上のサイトカイン、リンホカイン、成長因子、またはその他の造血因子、あるいはこれらの組み合わせを含む製剤とすることができる。 本願発明の薬学的組成物での使用に特に適したサイトカイン、リンホカイン、成長因子、またはその他の造血因子として、M-CSF、GM-CSF、TNF、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、IFN、TNF、G-CSF、Meg-CSF、GM-CSF、トロンボポイエチン、幹細胞因子、エリスロポエチン、Ang-1、Ang-2、Ang-4、Ang-Y および/またはヒトアンジオポエチン様ポリペプチドを含むアンジオポエチン、血管内皮成長因子(VEGF)、アンジオゲニン、骨形態形成プロテイン-1(BMP-1)、BMP-2、BMP-3、BMP-4、BMP-5、BMP-6、BMP-7、BMP-8、BMP-9、BMP-10、BMP-11、BMP-12、BMP-13、BMP-14、BMP-15、BMP受容体IA、BMP受容体IB、脳由来向神経性因子、繊毛様神経栄養因子、繊毛様神経栄養因子受容体、サイトカイン誘導走化因子1、サイトカイン誘導走化因子2、 サイトカイン誘導走化因子2、内皮細胞成長因子、エンドセリン1,上皮細胞成長因子、上皮由来好中球誘因物質、線維芽細胞成長因子(FGF) 4、FGF 5、FGF 6、FGF 7、FGF 8、FGF 8b、FGF 8c、FGF 9、FGF 10、酸性FGF、塩基性FGF、グリア細胞系由来栄養因子受容体1、グリア細胞系由来栄養因子受容体2、成長関連プロテイン、ヘパリン結合上皮細胞成長因子、肝細胞成長因子、肝細胞成長因子受容体、インスリン様成長因子I、インスリン様成長因子受容体、インスリン様成長因子II、インスリン様成長因子結合プロテイン、ケラチン生成細胞成長因子、白血病抑制因子、神経成長因子、神経成長因子受容体、ニュートロフィン-3、ニュートロフィン-4、胎盤成長因子、胎盤成長因子2、血小板由来成長因子、血小板由来成長因子A鎖、血小板由来成長因子AA、血小板由来成長因子AB、血小板由来成長因子B鎖、血小板由来成長因子BB、血小板由来成長因子受容体、血小板由来成長因子受容体、前B細胞成長促進因子、幹細胞因子、幹細胞因子受容体、トランスフォーミング成長因子(TGF)、TGF 1、TGF 1.2、TGF 2、TGF 3、TGF 5、潜在性TGF 1、TGF結合プロテインI、TGF結合プロテインII、TGF 結合プロテインIII、腫瘍壊死因子受容体I型、腫瘍壊死因子受容体II型、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体、血管内皮成長因子因子、およびキメラプロテイン、および、これらの生物学的または免疫学的活性断片などがあるが、これらに限定されない。
【0093】
構造式(I)の化合物は、治療上の使用方法において化合物の有効な性質を引き出す補助的成分と接合または結合する。 そのような接合は、関心のある特定の解剖学的部位または病巣部(例えば、腫瘍)への化合物の到達を促し、標的細胞での化合物の治療濃度の持続を可能とし、化合物の薬物動態的および薬力学的性質を変化させ、および/または化合物の治療指数または安全性を改善することができる。 好適な補助的成分として、例えば、アミノ酸、オリゴペプチド、例えば、モノクローナル抗体およびその他の加工された抗体のような抗体の形態のポリペプチド、標的細胞または組織内の受容体に結合する天然または合成リガンドなどがある。 その他の適切な補助剤として、標的細胞による化合物の生体摂取および/または取り込みを促進する脂肪酸または脂質成分がある(例えば、Bradley et al., Clin. Cancer Res. (2001) 7:3229を参照)。
【0094】
本願発明の製剤は、経口的、非経口的、経粘膜的(例えば、舌下的または口内投与)、局所的、経皮的、直腸投与、吸入(例えば、経鼻または深肺吸入)のような出現した疾患の標準的治療法に従って投与することができる。 非経口的投与として、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、くも膜下腔内、および関節内への投与があるが、これらに限定されない。 非経口投与は、POWDERJECT(商標)のような高圧技術を用いて実施することもできる。
【0095】
口内投与を含む経口投与のために、組成物は、通常の方法で、錠剤またはトローチの形態とすることができる。 例えば、経口投与用の錠剤およびカプセルには、結合剤(例えば、シロップ、アラビアゴム、ゼラチン、ソルビトール、トラガカンタ、デンプン粘漿剤、またはポリビニルピロリドン)、賦形剤(例えば、乳糖、ショ糖、微結晶性セルロース、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、またはソルビトール)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルク、ポリエチレングリコールまたはシリカ)、崩壊剤(馬鈴薯デンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム)、または、湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの通常の添加剤を加えることができる。 これら錠剤は、当該技術分野において周知の方法に従ってコーティングすることができる。
【0096】
あるいは、本願発明の化合物は、例えば、水性または油性懸濁液、溶液、エマルジョン、シロップ、またはエリキシルのような経口液体製剤に混合することもできる。 さらに、これらの化合物を含む製剤を、使用前に水またはその他の適切な溶媒と混ぜて形成される乾燥製剤としても提供することができる。 このような液体製剤に対して、通常の添加剤、例えば、ソルビトールシロップ、メチルセルロース、グルコース/糖シロップ、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ステアリン酸アルミニウムゲル、および硬化食用油脂のような懸濁化剤;レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、またはアラビアゴムのような乳化剤;アーモンド油、分別ココナッツ油、油性エステル、プロピレングリコール、およびエチルアルコールのような(食用油を含むことが可能な)非水溶媒;p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはプロピル、およびソルビン酸のような保存剤を取り入れることができる。
【0097】
このような製剤は、例えば、ココアバターまたはその他のグリセライドのような通常の座薬基剤を含む座薬として調製することもできる。 吸入用組成物は、通常、乾燥粉末として投与することができる溶液、懸濁液、またはエマルジョンの形態で、あるいは、ジクロロジフルオロメタンまたはトリクロロフルオロメタンのような通常の噴霧剤を用いたエアロゾルの形態でも提供することができる。 通常の局所用および経皮用製剤は、点眼剤、クリーム、軟膏、ローション、およびペーストなどで用いられている通常の水性または非水性溶媒を含み、あるいは、薬用の絆創膏、パッチ、または膜の形態で提供される。
【0098】
さらに、本願発明の組成物は、注射または持続的注入による非経口的投与のために処方することができる。 注射用製剤は、懸濁液、溶液、または油性もしくは水性溶媒中のエマルジョンの形態とすることができ、懸濁化剤、安定化剤、および/または分散剤のような成分を含めることができる。 あるいは、使用前に適切な溶媒(例えば、滅菌済の発熱物質不含水)を用いて調製するために、活性成分を粉末形態とすることができる。
【0099】
本願発明の組成物は、持続性製剤として処方することもできる。 このような持続性製剤は、埋め込み(例えば、皮下または筋肉内)または筋肉内注射によって投与される。 従って、本願発明の化合物は、重合体または疎水性物質(例えば、許容可能なオイル中のエマルジョン)、またはイオン交換樹脂と共に、または難溶解性誘導体(例えば、難溶解性塩)として処方することができる。
【0100】
獣医学用途においては、構造式(I)の化合物、または薬学的に許容可能なその塩、プロドラッグ、または溶媒和物が、好適かつ許容可能な製剤として、通常の獣医学習慣に従って投与される。 獣医師は、特定の動物に適した投薬計画および投与経路を容易に決定することができる。 本願発明の化合物によって処置可能な動物として、ペット、家畜、観賞用動物および展示動物などがあるが、これらに限定されない。
【0101】
合成方法
本願発明の化合物は、以下の合成スキームに従って調製することができる。 出発物質は、市販品から入手することもできるし、あるいは、当業者が熟知している既に確立された方法によって調製することもできる。 以下の官能基X、R1、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10およびR11は、先に定義した通りのものである。 R2は、先に定義した通りのものであり、また、以下の合成スキームにあっては、CF3やヘテロアリールをも含む。
【0102】
【化14】

スキーム1に示した通り、化学式6の化合物を、DIEAのような塩基およびジフェニルホホリルアジドで処理することで、化学式4の化合物が調製できる。 この反応で利用する一般的な溶媒は、THFであり、この反応は、室温下で、1時間〜12時間かけて行われる。
【0103】
【化15】

スキーム2は、化学式5の化合物に関する他の合成方法を示している。 化学式3の化合物は、スキーム3に従って調製された化学式7の化合物を用いて処理される。 有用な溶媒は、DMFであるが、これに限定されず、また、室温〜60℃の反応温度を、約1時間〜12時間維持する。
【0104】
【化16】

スキーム3に示した通り、化学式8の化合物を、ピリジンのような塩基の存在下で、クロロギ酸フェニルやクロロギ酸パラニトロフェニルのようなクロロギ酸アリールで処理することで、化学式7の化合物が調製できる。 0℃〜室温の温度下において、この反応で用いる溶媒として、CH2Cl2やピリジンがあるが、これらに限定されない。
【0105】
【化17】

スキーム4は、化学式3の化合物の調製経路を示している。 化学式1の化合物を、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、またはリン酸カリウムのような塩基性水溶液の存在下で、アリールホウ酸およびパラジウム(0)供給源(例えば、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン)で処理することで、化学式2の化合物に転化することができる。 この反応で利用する溶媒として、THF、ジオキサン、またはエチレングリコールヂメチルエーテルなどがあるが、これらに限定されない。 この反応は、通常、0℃〜90℃の温度下で、1時間〜12時間かけて行われる。 化学式2の化合物は、例えば、パラジウムカーボン、プラチナカーボン、または亜鉛の存在下で、化学式3の化合物に転化される。 この反応で用いる溶媒として、メタノール、エタノール、または酢酸などがあるが、これらに限定されない。 また、化学式1の化合物は、ジクロロパラジウムビストリフェニルホスフィンまたはその他のパラジウム(0)供給源を用いて、末端アルキン類11をアリール化するために用いることができる。 これら反応は、通常、室温〜90℃で、トリメチルアミンのような塩基の存在下で行われる。
【0106】
さらに、式中のXがトリフラート、すなわち、tfである化学式1の化合物を、化学式9の化合物から取得することができる。 一般的な試薬として、トリフリック無水物やN-フェニルトリフルイミドなどがある。 この反応は、通常、−10℃〜室温の温度で行われる。 溶媒として、ジクロロメタンがあるが、これに限定されない。 塩基としては、トリエチルアミンやジイソプロピルエチルアミンなどがあるが、これらに限定されない。
【0107】
【化18】

スキーム5は、化学式5の化合物の別の合成経路を示している。 化学式3の化合物は、スキーム2に記載の手順に従って、化学式10の化合物に転化することができる。 化学式10の化合物は、スキーム4に記載の手順に従って、化学式5の化合物に転化することができる。
【0108】
【化19】

スキーム6に示したように、化学式11の化合物を、炭酸カリウム、トリエチルアミン、または水素化ナトリウムのような塩基で処理し、次いで、式中のXが、ハロゲン化物、メシル酸塩またはトシル酸塩であるR11Xを加えることによって、化学式12の化合物に転化することができる。 この反応で用いる溶媒として、DMF、THF、CH2Cl2およびこれらの組み合わせがある。 この反応は、0℃〜100℃の温度で、約15分〜12時間かけて行われる。
【0109】
また、化学式11の化合物を、式中のXが、ヒドロキシルであるR11Xを有する化合物と混合して、得られた混合物を、THFのような溶媒内で、トリフェニルホスフィンおよびジイソプロピルアゾジカルボキシレートを用いて処理すると、化学式12の化合物が得られる。
【0110】
化学式13の化合物を得るために、化学式12の化合物を、酸化プラチナ、パラジウムカーボン、またはラネーニッケルのような触媒の存在下で、水素ガスで処理することができ、あるいは、亜鉛金属の存在下で、飽和塩化アンモニウム水または塩化水素水のような酸供給源で処理することができる。 この反応で用いる溶媒として、メタノール、エタノール、酢酸エチル、またはこれらの組み合わせがある。 この反応は、通常、室温以下の温度で、1時間〜12時間かけて行われる。
【0111】
化学式15の化合物は、化学式13の化合物と、(スキーム1に記載の手順に従って調製された)化学式4の化合物とを化合して調製することができる。 この反応で用いる溶媒として、トルエン、ベンゼン、およびキシレンがある。 この反応は、60℃〜100℃の温度で、5時間〜12時間かけて行われる。
【0112】
【化20】

スキーム7は、化学式15の化合物の別の合成経路を示している。 化学式3の化合物は、スキーム3に記載の手順に従って調製された化学式7の化合物で処理される。 使用可能な溶媒としてDMFがあり、また、室温〜60℃の反応温度が、1時間〜12時間にわたって維持される。
【0113】
【化21】

スキーム8は、化学式15の化合物の別の調製経路を示している。 化学式19の化合物を、水素化ナトリウム、ビス(トリメチルシリル)アミンカリウム、またはn-ブチル-リチウムのような塩基の存在下で、アルコールで処理することによって、化学式12の化合物に転化される。 この反応で用いられる溶媒として、THFまたはジエチルエーテルなどがある。 この反応は、通常、−15℃〜室温の温度で、約1時間〜6時間かけて行われる。 スキーム6に記載の手順に従って、化学式12の化合物は、化学式15の化合物に転化される。
【0114】
【化22】

スキーム9は、化合物21および23の別の合成経路を示している。 化合物20は、R2=Brとするスキーム5またはスキーム6に記載の手順に従って調製することができる。 化合物20を、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、またはリン酸カリウムのような塩基性水溶液の存在下で、ヘテロアリールホウ酸(HetB(OH)2)およびパラジウム(0)供給源(例えば、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン)で処理することで、化合物21に転化することができる。 この反応で利用する溶媒として、THF、ジオキサン、またはエチレングリコールヂメチルエーテルなどがあるが、これらに限定されない。 この反応は、通常、0℃〜90℃の温度下で、約1時間〜12時間かけて行われる。 なお、ヘテロアリールホウ酸を、ヘテロアリールスタンナート、例えば、(HetSn(Bu)3)で代用することができる。
【0115】
化合物21を、トリエチルアミンまたはヒューニッヒ塩基のような塩基の存在下で、シアン化亜鉛およびパラジウム(0)供給源(例えば、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン)で処理することで、化合物22に転化することができる。 80℃で、1時間〜12時間かけて行われるこの反応で利用する溶媒として、DMFおよびDMEなどがあるが、これらに限定されない。 あるいは、パラジウム(0)供給源(例えば、パラジウムテトラキストリフェニルホスフィン)および銅供給源(例えば、ヨー化銅)の存在下で、シアン化カリウムを用いて、化合物21から化合物22を得ることができる。 この反応は、通常、室温〜200℃の温度で、約30分〜5時間かけて行われる。 この反応で利用する溶媒として、DMFなどがあるが、これに限定されない。
【0116】
最後に、化合物22を、トリエチルアミンのような塩基の存在下で、例えば、アジ化ナトリウムを用いて、化合物23に転化することができる。 この反応で利用する溶媒として、DMFやニトロベンゼンなどがあるが、これらに限定されない。 この反応は、通常、80℃〜100℃の温度で、約1時間〜5時間かけて行われる。
【0117】
構造式(I)で表される化合物の例を以下に示すが、これらに限定されるべきものではなく、また、それらは、以下に記載の手順ならびに本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国特許出願公開公報第2003-0069284号公報に記載の手順に従って合成した。
【0118】
以下の合成手順で用いた略称は、すなわち;時間(h)、水(H2O)、硫酸マグネシウム(MgSO4)、塩酸(HCl)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)、塩化メチレン(CH2Cl2)、クロロフォルム(CHCl3)、メタノール(MeOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、重水素クロロフォルム(CDCl3)、テトラヒドロフラン(THF)、N-メチルピロリドン(NMP)、酢酸(AcOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、酢酸エチル(EtOAc)、エタノール(EtOH)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエチルエーテル(Et2O)、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)、硝酸(HNO3)、塩化ナトリウム(NaCl)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、ジメチルホルムアミド(DMF)、1,8-ジアゾビシクロ-[5.4.0]ウンデク-7-エン(DBU)、およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)である。
【0119】
中間体1
【化23】

5-メチル-ピラジン-2-カルボニルアジド
室温の窒素雰囲気下で攪拌した5-メチル-ピラジン-2-カルボン酸(25g、181mmol)を含む540mlのTHFの懸濁液に対して、DIEA(31.7ml、181mmol)を加えたところ、茶褐色の溶液が生成した。 次いで、ジフェニルフォスフォリルアジド(39.2ml、181mmol)を、50mlのTHF溶液として、1時間かけて、防護柵内で滴下して加えた。 一晩かけて攪拌を継続して反応を行った。 次いで、得られた反応物を、室温下で、回転式濃縮機で濃縮して、ジエチルエーテル相(1リットル)と水相(1リットル)に分離した。 この水相を、2×250mlのジエチルエーテルで逆抽出して、合わせて得た有機相を、2×1リットルの飽和重炭酸ナトリウムで洗浄した。 有機相を、乾燥(MgSO4)、濾過、および濃縮して固形物を取得し、これをジエチルエーテルを用いて砕いて黄色固形物の産物(15g、50%)を得た。 1gの粗産物を20mlのジエチルエーテルに採り、1〜2gの漂白炭素を用いて、室温下で、数分間かけてこれを処理することで、より純度の高い化合物を単離することができた。 濾過と濃縮を終えた後に、この物質を、酢酸エチルを用いた薄層クロマトグラフィーで均質化したところ、純白の産物が得られた。 通常の回収率は、65%であった。
【0120】
化合物1
【化24】

1-[2-(ピペリジン-3-イルメトキシ)-5-トリフルオロメチル-フェニル]
-3-(5-トリフルオロメチル-ピラジン-2-イル)-尿素塩酸塩
工程1:3-[2-(4-ニトロ-フェノキシカルボニルアミノ)-4-トリフルオロメチル-フェノキシメチル]-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル
窒素雰囲気下、0℃にて攪拌した3-(2-アミノ-4-トリフルオロメチル-フェノキシメチル)-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル(240mg、0.64mmol)を含む2mlのCH2Cl2の溶液に対して、ピリジン(57μl、0.71mmol)を加え、次いで、クロロギ酸p-ニトロフェニル(130mg、0.64mmol)を加えた。 0℃で、1時間置いた後に、得られた反応混合物を、CH2Cl2で30mlの溶液になるまで希釈し、次いで、2×30mlの2Nの塩酸、1×30mlの水、そして、1×30mlの塩水で洗浄した。 有機相を、乾燥(MgSO4)、濾過および濃縮したところ、灰白色の泡状物が得られた。
【0121】
工程2:3-[4-トリフルオロメチル-2-[3-(5-トリフルオロメチル-ピラジン-2-イル)-ウレイド]-フェノキシメチル]-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル
3-[2-(4-ニトロ-フェノキシカルボニルアミノ)-4-トリフルオロメチル-フェノキシメチル]-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル(217mg、0.4mmol)および(米国特許第4,293,552号の方法に従って調製した)5-トリフルオロメチル-ピラジン-2-イルアミン(66mg、0.4mmol)を、5ml容の反応用ガラス瓶内で、固体のままで混合し、400μlのNMPで希釈し、閉蓋し、そして、攪拌を行い、次いで、得られた暗黄色の溶液を、85℃の油浴に浸して、6時間かけて攪拌を行った。 得られた反応混合物を、室温にまで冷却し、そして、一晩かけて攪拌を行った。 そして、0.5mmおよび800℃の条件で、クーゲルロール蒸留装置を稼働させてNMPを除去した。 褐色の残留物を、30mlのCH2Cl2の溶液に加えて希釈し、次いで、3×30mlのNa2CO3で洗浄して、p-ニトロフェノールを除去した。 有機相を、乾燥(MgSO4)、濾過および濃縮したところ、固体の粗製物が生成し、次いで、得られた粗製物を、酢酸エチルを用いて粉砕し、そして、濾過したところ、所望の産物が白色の固形物として得られた。
【0122】
工程3:室温下で、閉蓋した容器内で攪拌した3-[2-(4-ニトロ-フェノキシカルボニルアミノ)-4-トリフルオロメチル-フェノキシメチル]-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル(60mg、0.11mmol)を含む2mlのジオキサンの溶液に対して、2N塩酸を含むジオキサン(2ml)を加え、そして、反応混合物を一晩かけて攪拌した。 得られた懸濁液を回転式高真空蒸発法で濃縮したところ、最終産物に相当する黄色固形物が得られた(57mg、99%)。 1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 11.18 (br s, 1H), 9.91 (s, 1H), 9.13 (s, 1H), 8.79 (s, 1H), 8.62 (br s, 1H), 8.57 (s, 1H), 7.43 (d, 1H), 7.25 (d, 1H), 4.18 (m, 2H), 3.44 (m, 1H), 3.23 (m, 1H), 2.86 (m, 2H), 2.36 (m, 1H), 1.96 (m, 1H), 1.83 (m, 1H), 1.67 (m, 1H), 1.42 (m, 1H). LRMS (apci, ポジティブ) m/e 464.3 (M+l).
【0123】
化合物2
【化25】

1-[5-メチル-2-(ピペリジン-3-イルメトキシ)-フェニル]
-3-(5-トリフルオロメチル-ピラジン-2-イル)-尿素塩酸塩
工程1:3-[4-メチル-2-[3-(5-トリフルオロメチル-ピラジン-2-イル)-ウレイド]-フェノキシメチル]-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル
化合物1の工程2に記載した手順に従って、3-[4-メチル-2-(4-ニトロ-フェノキシカルボニルアミノ)-フェノキシメチル]-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステル(WO 02/070494)から調製した。 この産物は、白色の固形物として分離された。
【0124】
工程2:化合物1の工程3に記載した手順に従って、3-[4-メチル-2-[3-(5-トリフルオロメチル-ピラジン-2-イル)-ウレイド]-フェノキシメチル]-ピペリジン-1-カルボン酸 tert-ブチルエステルから調製した。 最終産物は、黄色固形物として得られた(30mg、99%)。 1H-NMR (400 MHz, d6-DMSO) δ: 10.86 (s, 1H), 9.61 (s, 1H), 9.05 (s, 1H), 8.77 (s, 1H), 8.58 (br s, 1H), 7.98 (s, 1H), 6.98 (d, 1H), 6.83 (d, 1H), 3.99 (m, 2H), 3.40 (m, 1H), 3.23 (m, 1H), 2.81 (m, 2H), 2.23 (m, 1H), 2.22 (s, 3H), 1.91 (m, 1H), 1.80 (m, 1H), 1.62 (m, 1H), 1.39 (m, 1H). LRMS (apci, ポジティブ) m/e 410.4 (M+l).
【0125】
化合物3
【化26】

1-[5-メチル-2-(1-メチル-ピペリジン-3-イルメトキシ)-フェニル]
-3-(5-トリフルオロメチル-ピラジン-2-イル)-尿素
化合物1の工程2に記載した手順に従って、[5-メチル-2-(1-メチル-ピペリジン-3-イルメトキシ)-フェニル]-カルバミン酸 4-ニトロ-フェニルエステル(WO 02/070494)から、白色固形物として得た。 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 11.01 (br s, 1H), 8.87 (br s, 1H), 8.82 (s, 1H), 8.44 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 6.84 (d, 1H), 6.76 (d, 1H), 3.84 (m, 2H), 3.16 (m, 1H), 2.81 (m, 1H), 2.37 (s, 3H), 2.29 (m, 1H), 2.20 (s, 3H), 1.99 (m, 1H), 1.87-1.62 (m, 4H), 1.11 (m, 1H). LRMS (apci, ポジティブ) m/e 424.3 (M+l).
本願発明のその他の化合物を以下に記載するが、これらに限定されない。
【0126】
化合物4
【化27】

【0127】
化合物5
【化28】

【0128】
化合物6
【化29】

【0129】
化合物7
【化30】

【0130】
化合物8
【化31】

治療方法
本願発明の化合物は、ヒトおよびその他の動物の真核細胞が関与する癌やその他の細胞増殖障害の治療で用いられている放射線および/または化学療法剤の効果を増大させるために使用することができる。 例えば、本願発明の化合物は、例えば、通常は、メソトレキセートまたは5-フルオロウラシル(5-FU)のような代謝拮抗剤で治療される腫瘍の治療効果を増強するために使用することができる。 一般的には、本願発明の化合物は、癌性および非癌性の細胞の異常増殖を阻害する。
【0131】
本願発明の化合物を用いることで、異常増殖する細胞の一部または全部が退縮し、すなわち、細胞集団から異常増殖する細胞が部分的または完全に解消する。 したがって、例えば、異常増殖する細胞が腫瘍細胞である場合には、本願発明の方法は、腫瘍の成長速度を減速させ、腫瘍の大きさと個数を減少し、あるいは、腫瘍の一部または全部の退縮を誘発するために利用することができる。
【0132】
すべての実施態様において、異常な細胞増殖や異常な細胞増殖の進行が認められなくとも、各々について、異常な細胞増殖が疑われていたり、あるいは異常な細胞増殖が予測される状況下であれば、本願発明を、in vivoまたはex vivoで利用することができる。 さらに、異常な細胞増殖の再発を予防または阻害するためにかつて処置を施した異常な細胞増殖に対しても、本願発明を利用することができる。 これら実施態様および関連する実施態様において、「異常増殖する細胞を含む細胞集団」とは、異常な細胞増殖や異常な細胞増殖の進行が認められないものの、各々について、異常な細胞増殖が疑われていたり、あるいは異常な細胞増殖が予測される細胞集団、および/または、異常な細胞増殖の再発を予防または阻害するためにかつて処置を施した細胞集団を指す。
【0133】
本願発明のある方法は、一本鎖または二本鎖DNAの破壊をもたらし、または、DNA複製や細胞増殖を阻害する化学療法剤と共に、治療的有効量の本願発明のChk1阻害剤化合物を投与することを含む。 あるいは、本願発明の方法は、癌細胞の増殖を阻害する活性を有する抗体、例えば、ハーセプチンの使用を含む治療と共に、治療的有効量の少なくとも一つの本願発明のChk1阻害剤化合物を投与することを含む。 従って、直腸癌、頭部および頸部癌、膵臓癌、乳癌、胃癌、膀胱癌、外陰部癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、腎細胞癌腫、卵巣癌、脳腫瘍、骨肉腫、および肺癌などの癌は、化学療法剤または抗体と、本願発明のChk1阻害剤とを組み合わせて投与することで、治療効果が改善されやすくなる。
【0134】
癌には、細胞の増殖が無制限かつ進行性である組織細胞の成長を示す腫瘍や新生物がある。 そのような成長を示すものは良性であるが、その他は「悪性」と称されており、生物を死に至らしめる。 悪性新生物または「癌」は、活発な細胞の成長を示すことに加えて、周囲の組織に侵入して転移する点で良性の成長と区別される。 さらに、悪性新生物は、分化の重大な欠失(重大な「脱分化」)、および相互の組織および周辺組織に関連する組織化において特徴点が認められる。 この性質は、「退形成」と呼ばれている。
【0135】
本願発明によって治療可能な癌として、固形腫瘍、すなわち、癌腫や肉腫などがある。
【0136】
癌腫には、周辺組織に浸潤(すなわち、侵入)して転移する上皮細胞由来の悪性新生物が含まれる。 腺癌とは、腺性組織または認識可能な腺性構造を形成する組織に由来する癌腫である。 その他の癌に関する広範な分類は、原線維性物質または均質な物質に細胞が包埋されている胎児性結合組織のような肉腫を含む。 本願発明は、通常は、腫瘍として存在せず、血管やリンパ管を通じて分布する白血病、リンパ腫、およびその他の癌を含む骨髄系またはリンパ系の癌の治療も可能にする。
【0137】
Chk1活性は、例えば、成人および小児の腫瘍学、固形腫瘍/悪性腫瘍の増殖、粘液型および円形細胞腫、局所進行性腫瘍、転移性癌、ユーイング肉腫を含むヒト軟組織肉腫、リンパ性転移を含む癌転移、特に、頭部および頚部における扁平上皮細胞癌、食道扁平上皮細胞癌、口腔癌、多様性骨髄腫を含む血球悪性腫瘍、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄球性腫瘍、有毛細胞腫を含む白血病、浸出リンパ腫(体腔由来リンパ腫)、胸腺リンパ腫肺癌(小細胞癌を含む)、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、副腎皮質癌、ACTH産生腫瘍、非小細胞癌、乳癌(小細胞癌および浸潤性導管癌を含む)、胃腸癌(胃癌、大腸癌、直腸癌、および直腸腫瘍に関連するポリープを含む)、膵臓癌、肝臓癌、泌尿器癌(原発性表在性膀胱腫瘍、膀胱の浸潤性移行細胞癌、筋浸潤性膀胱癌のような膀胱癌を含む)、前立腺癌、女性生殖器の悪性腫瘍(卵巣腫瘍、原発性腹膜上皮性腫瘍、子宮頚癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰部癌、子宮癌および卵胞内固形腫瘍を含む)、男性生殖器の悪性腫瘍(精巣癌および陰茎癌を含む)、腎臓癌(腎細胞癌を含む)、脳の癌(内因性脳腫瘍、神経芽細胞腫、星状細胞脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系の転移腫瘍細胞浸潤を含む)、骨の癌(骨腫および骨肉腫を含む)、皮膚癌(悪性黒色腫、ヒト皮膚ケラチン生成細胞の腫瘍進行、扁平上皮癌を含む)、甲状腺癌、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、腹膜浸出、悪性胸膜浸潤、中皮腫、ウィルムス腫瘍、ニワトリ膀胱癌、栄養膜腫瘍、血管外皮細胞腫、およびカポジ肉腫などの様々な形態の癌と関連する。 従って、本願発明のChk1阻害剤の投与によって、治療計画の改善が期待される。
【0138】
本願発明の化合物は、炎症性疾患の治療に用いられる薬物の効力も増強する。 本願発明の方法に適した化合物と組み合わせて使用することで効果が期待できる疾病として、関節リウマチ、乾癬、白斑症、ウェグナー肉芽腫症、および全身性紅斑(SLE)がある。 関節炎、ウェグナー肉芽腫症、およびSLEの治療では、電離放射線、メソトレキセート、およびシクロホスファミドなどを用いる免疫抑制療法を利用することがよくある。 このような治療は、通常、直接的または間接的にDNAの損傷を引き起こす。 免疫細胞に悪影響を及ぼさない範囲のChk1の阻害は、これら標準的処置での調節作用に対する細胞の感受性を高める。 乾癬および白斑症は、通常は、ソラレンと紫外線照射(UV)を組み合わせて治療される。 本願発明のDNA損傷物質は、UVおよびソラレンの殺傷効果を誘発し、そして、この治療計画による治療係数を増大させる。 一般的に、本願発明の方法において有用な化合物は、現在使用されている免疫抑制剤と組み合わせて用いた場合、炎症性疾患細胞の調節を増強する。
【0139】
上掲の癌以外にも、本願発明は、非癌性の増殖性細胞を処置するための方法において利用することができる。 このような病態として、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、脈管炎、腎炎、網膜症、腎疾患、増殖性皮膚障害、乾癬、ケロイド瘢痕、光化学角化症、スティーヴンズ-ジョンソン症候群、慢性関節リウマチ(RA)、全身発症型若年性関節リウマチ(JCA)、骨粗鬆、全身性エリテマトーデス、上皮細胞の下方増殖を含む眼の過増殖性疾患、増殖性硝子体網膜症(PVR)、糖尿病性後遺障害、血管増殖性疾患、魚鱗癬または乳頭腫などがあるが、これらに限定されない。
【0140】
本願発明のChk1阻害剤の好ましい投与方法の例が、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する2003年9月17日に出願されたKeegan et al.,の米国仮特許出願第60/503,925号に開示されている。 異常な細胞増殖を阻害する方法は、Chk1活性化物質(例えば、化学療法剤)および本願発明のChk1阻害剤の投与計画とも関係している。 この方法では、増殖している細胞の細胞周期を実質的に同期的に停止させる上で十分な用量と時間でもってして、少なくとも一つのChk1活性化物質が投与される。 実質的な同期性に到達でき次第に、少なくとも一つのChk1阻害剤が投与されると、停止した細胞周期が廃除されて、治療上の細胞死に至ることとなる。 この方法は、いずれのChk1活性化物質でも有効に利用することができ、また、癌性および非癌性の異常な細胞増殖を処置または予防する用途にも利用できる。
【0141】
異常増殖する細胞の集団は、一つのChk1阻害剤と接触させることも、あるいは、一つを超えるChk1阻害剤と接触させることも可能である。 一つを超えるChk1阻害剤を使用する場合、担当する医師または実験責任者の判断で、これらChk1阻害剤を同時に投与することも、あるいは、分けて別々に投与することもできる。
【0142】
異常増殖する細胞の集団は、一つのChk1活性化物質と接触させることも、あるいは、一つを超えるChk1活性化物質と接触させることも可能である。 一つを超えるChk1活性化物質を使用する場合、担当する医師または実験責任者の判断で、これらChk1活性化物質を同時に投与することも、あるいは、分けて別々に投与することもできる。
【0143】
本願発明のChk1阻害剤は、ex vivoで、細胞集団に対して適用して、その挙動を研究または改変することができる。 例えば、対処する適応症、細胞型、患者、およびその他の要素に応じて、好適な投与計画および/または用量を決定するために、本願発明の化合物をex vivoで使用することができる。 このようにして得られた情報は、実験目的での利用に加えて、in vitro処置のためのプロトコールを作成するために臨床現場で使用することもできる。 当業者であれば、本願発明において好適な用途、すなわち、前述した以外のex vivoでの用途を容易に想到するであろう。
【0144】
本願発明のChk1化合物は、細胞を放射線感作することもできる。 電磁放射線で治療しうる疾病として、新生物性疾患、良性腫瘍および悪性腫瘍、および癌性細胞などがある。
【0145】
本明細書で言及していないその他の疾患に関する電磁放射線治療も、本願発明では意図している。 本願発明の好ましい実施態様では、γ線(10ー20〜10ー13m)、X線(10ー12〜10ー19m)、紫外光線(10nm〜400nm)、可視光線(400nm〜700nm)、赤外線(700nm〜1.0mm)、およびマイクロ波照射(1mm〜30cm)などの電磁放射線を用いている。
【0146】
多くの癌治療プロトコールは、電磁放射線、例えば、X線によって活性化される放射線感受性増強物質を用いている。 X線活性化放射線感受性増強物質として、メトロニダゾール、ミソニダゾール、デスメチルミソニダゾール、ピモニダゾール、エタニダゾール、ニモラゾール、マイトマイシンC、RSU 1069、SR 4233、EO 9、RB 6145、ニコチンアミド、5-ブロモデオキシウリジン(BUdR)、5-インドデオキシウルジン(IUdR)、ブロモデオキシシチジン、フルオロデオキシウリジン(FUdR)、ヒドロキシウレア、シスプラチン、および治療上有効なこれらの類似体と誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0147】
癌の光線力学的療法(PDT)は、感作剤の放射活性化要素として可視光線を用いる。 光線力学的放射線感受性増強物質として、ヘマトポルフィリン誘導体、PHOTOFRIN(登録商標)、ベンゾポルフィリン誘導体、NPe 6、エチオポルフィリンスズ(SnET2)、フェオボルビド-a、バクテリオクロロフィル-a、ナフタロシアニン、フタロシアニン、フタロシアニン亜鉛、および治療上有効なこれらの類似体と誘導体などがあるが、これらに限定されない。
【0148】
放射線感受性増強物質は、Chk1阻害剤に加えて、治療上有効量の一つ以上の化合物と共に投与することが可能であり、このような化合物として、標的細胞への放射線感受性増強物質の取り込みを促す化合物、薬物療法剤、標的細胞への栄養分および/または酸素の流れを制御する化合物、追加照射と共にまたは追加照射無しで腫瘍に作用する化学療法剤、または癌またはその他の疾病の治療に用いるその他の治療上有効な化合物などがある。
【0149】
放射線感受性増強物質と共に利用可能な治療剤として、5-フルオロウラシル(5-FU)、ロイコボリン、酸素、カルボゲン、赤血球輸血、パーフルオロカーボン(例えば、FLUOSOLW(登録商標)-DA)、2,3-DPG、BW12C、カルシウムチャンネル阻害剤、ペントキシフィリン、抗血管新生化合物、ヒドララジン、および L-BSOなどがあるが、これらに限定されない。
【0150】
利用可能な化学療法剤として、天然物の他に、アルキル化薬、代謝拮抗剤、ホルモンおよびそのアンタゴニスト、放射性同位元素、抗体、およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。 例えば、本願発明の阻害化合物は、ドキソルブシンおよびその他のアントラサイクリン類似体のような抗生物質、シクロホスファミドのようなナイトロジェンマスタード、5-フルオロウラシルのようなピリミジン類似体、シスプラチン、ヒドロキシ尿素、タキソールおよびその天然または合成誘導体などと共に投与することができる。 その他の例として、腫瘍がゴナドトロピン依存性およびゴナドトロピン非依存性細胞を含む乳腺癌のよな混合腫瘍の場合、本願発明の化合物は、ロイプロリドまたはゴセレリン(LH-RHの合成ペプチド類似体)と共に投与することが可能である。 その他の抗悪性腫瘍薬プロトコールでは、その他の治療手段、例えば、外科的手術または照射で利用され、かつ本明細書で「補助的抗悪性腫瘍様式」と称する阻害化合物の使用も意図している。 本願発明において有用なその他の化学療法剤として、ホルモンおよびそのアンタゴニスト、放射性同位元素、抗体、天然物およびこれらの組み合わせなどがあるが、これらに限定されない。 本願発明の方法に有用な化学療法剤の例を、以下の表に示した。
【0151】
【表1】

放射線感受性増強物質と併用する上で特に有用な化学療法剤として、例えば、カンプトテシン、カルボプラチン、シスプラチン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、インターフェロン(α、β、γ)、イリノテカン、ヒドロキシ尿素、クロラムブシル、5-フルオロウラシル(5-FU)、メソトレキセート、2-クロロアデノシン、フルダラビン、アザシチジン、ゲムシタビン、ペメトレキセド、インターロイキン-2、イリノテカン、ドセタキセール、パクリタキセール、トポテカン、および治療上有効なこれらの類似体および誘導体などがある。
【0152】
本願発明によれば、本願発明の化合物は、ゲムシタビンそれ単独と、またはさらにパクリタキセルとの組み合わせにおいて有用である。 また、本願発明の化合物は、ペメトレキセドそれ単独と、またはさらにシスプラチン、カルボプラチン、またはその他のプラチン類との組み合わせにおいて有用である。 本願発明のChk1阻害剤は、ゲムシタビンおよびペメトレキセドの組み合わせと共に投与することができる。
【0153】
ゲムシタビンと共に投与された本願発明のChk1阻害剤は、例えば、膵臓癌、子宮の平滑筋肉腫、骨肉腫、転移性非小細胞肺癌、肢端および体幹での軟組織肉腫、腎細胞癌、腺癌、およびホジキンの疾患を治療する上で有用である。 ペメトレキセドと共に投与された本願発明のChk1阻害剤は、中皮腫を治療する上で有用である。
【0154】
当業者であれば、本明細書で言及している治療が、疾患や症状の治療のためのみならず、予防にも及ぶものであることは、容易に理解できるであろう。 また、本明細書で言及している治療とは、増殖速度の減少または処置した症状の再発頻度の減少をも指す。 さらに、治療の際に必要とされる本願発明の化合物の量は、治療対象の病態、および患者の年齢や症状によって変化し、そして、最終的には担当医師または獣医師によって決定されるものであることも、容易に理解できるであろう。
【0155】
しかしながら、一般的に、成人の治療に用いられる用量は、通常、1日あたり0.001mg/kg〜約100mg/kgの範囲内である。 望ましい用量は、単一用量で簡便に、または適当な間隔で、例えば、1日当たり2回、3回、4回またはそれ以上の回数で投与される複数回の服用をすることもできる。 実際には、個々の患者にとって最も適した正確な投与計画を医師が決定し、投与量は、その患者の年齢、体重および症状に応じて加減する。
【0156】
上記した投与量は平均的な数値を例示するものでしかなく、その投与量を多少なりとも増減させて適切な量にすることもでき、そのように加減された投与量も、本願発明の範囲内に属する。
【0157】
細胞周期チェックポイントを廃除するに十分な量と時間をもってして、細胞集団と本願発明のChk1阻害剤とを接触させることもできる。 通常は、様々な条件に応じて、接触時間を約72時間〜約96時間までとするが、これに限定されるものではない。 ある実施態様によれば、担当医師または担当技術者の判断で、数週間またはそれ以上の期間にわたってChk1阻害剤を投与することが望ましく、あるいは必要とされている。 よって、本願発明のChk1阻害剤は、通常、約1時間、約2時間、約3時間、約4時間、約6時間、約12時間、約18時間、約24時間、約48時間、または約72時間までの期間にわたって投与することができる。 本明細書に記載の数値範囲が単なる例示目的のものでしかなく、また、それら数値範囲の内外の範囲および部分範囲も本願発明の範囲に属するものであることを、当業者であれば、容易に理解できるであろう。
【0158】
本願発明のChk1阻害剤は、複数回の服用でもってして投与することができる。 例えば、4日間隔で1日当たり一用量を投与する4回の服用(q4d×4)、3日間隔で1日当たり一用量を投与する4回の服用(q3d×4)、5日間隔で1日当たり1回の服用(qd×5)、3週間で1週間当たり1回の服用(qwk3)、5日間毎日の服用、2日間の無服用、およびさらに5日間毎日の服用(5/2/5)、または、状況に応じて適切に決定された服用計画に従った頻度でChk1阻害剤を投与することができる。
【実施例】
【0159】
実施例1:Chk1阻害剤のIC50値の決定
1998年9月4日に出願された国際出願の国際公開パンフレット第WO 99/11795号に記載の手順に従い、ヒトChk1 cDNAを同定およびクローニングした。 全長Chk1のアミノ末端を有するフレーム内にFLAG(登録商標)タグを挿入した。 5'プライマーは、EcoRI部位、コザック配列を含み、また、M2抗体(シグマ社、セントルイス、イリノイ州)を利用するアフィニティー精製のためのFLAR(登録商標)タグもコードする。 3'プライマーは、SalI部位を含む。 PCR増幅した断片を、EcoRI-SalI断片(インビトロゲン、カールスバッド、カリフォルニア州)として、pCI-Neoにクローニングし、次いで、EcoRI-NotI断片として、FastBacI(ギブコ-BRL、ベセスダ、メリーランド州)にサブクローニングした。 ギブコ-BRL Bac-to-Bacマニュアルに記載の手順に従って組換えバキュロウィルスを調製し、そして、FLAG(登録商標)タグが付いたChk1タンパク質を発現するために、CCM3培地(ハイクローンラボラトリーズ、ローガン、ユタ州)で生育せしめたSf-9細胞を感染させるために用いた。
【0160】
FLAG(登録商標)タグが付いたChk1を、バキュロウィルス感染したSf9細胞の凍結ペレットから精製した。 凍結した細胞ペレットを、2倍量の溶菌緩衝液、すなわち、100mM Tris-HCl pH 7.5、200mM 塩化ナトリウム、50mM B-グリセロリン酸、25mM フッ化ナトリウム、4mM 塩化マグネシウム、0.5mM EGTA、0.2% TWEEN(登録商標)-20、2mM バナジウム酸ナトリウム、2mM DTT、およびプロテアーゼ阻害剤(コンプリート ミニ、べーリンガー マンハイム 2000 カタログ番号第1836170号)のカクテルを含む溶菌緩衝液と共に混合した。 次いで、加圧型細胞破砕装置の可動式乳棒を用いて細胞を20回破砕し、そして、48,400×gで、1時間かけて遠心分離した。 M2アフィニティーを、10カラム量のpH3.5の50mM グリシンで予洗し、次いで、pH 7.5の20mM Trisと150mM NaClで、交互に3回洗浄し、そして、最後にTris NaClで洗浄を行った。 次いで、このカラムを、25カラム量のpH7.5の20mM Tris、150mM NaCl、0.1% TWEEN(登録商標)-20、1mM EGTA、1mM EDTAおよび1×完全ミニプロテアーゼ錠で洗浄を行った。 そして、澄明にした分離物を、回分的に、40℃で、4時間、M2アフィニティー樹脂に結合させた。
【0161】
次いで、樹脂と分離物との混合物を、カラムに注いで、カラムの通過物を回収した。 この樹脂を、10カラム量のpH 7.5の20mM Tris、150mM NaCl、および3mM N-オクチルグルコシドで洗浄した。 そして、6カラム量のpH 7.5の20mM Tris、150mM NaCl、それに、0.5 mg/mL FLAG(登録商標)ぺプチド(シグマ、2000 カタログ番号第F-3290号)を含む3mM N-オクチルグルコシドを用いて、カラムからFLAG(登録商標)が付いたChk1を溶出した。 三つの画分を回収して、FLAGが付いたChk1の存在に関する分析に供した。
【0162】
100ngの精製したFLAG(登録商標)-Chk1(150pmolのATP/分)、20μmのCdc25Cぺプチド(H-leu-tyr-arg-ser-pro-ser-met-pro-glu-asn-leu-asn-arg-arg-arg-arg-OH)(配列番号:1)、4μm ATP、2μCiの[32P]γ-ATP、pH 7.2の20mM Hepes、5mM MgCl2、0.1% NP40、および1mM DTTを利用するChk1キナーゼ活性に関する分析に、プロテインキナーゼを供した。 この分析を、本願発明の化合物のIC50を決定するために用いた。 ATPを含む反応用混合物を添加して反応を開始し、そして、室温下で、10分間、反応を継続した。 リン酸(150mMの最終濃度)で反応を停止し、そして、ホスホセルロース製のディスクに移した。 このホスホセルロース製のディスクを、150mMのリン酸で5回洗浄し、そして、風乾した。 シンチレーション液を加え、次いで、Wallacのシンチレーション計数器を用いてディスクの計数を行った。 この分析に適用した本願発明のChk1阻害剤は、約8〜約500nMのIC50値を示していた。
【0163】
実施例2:選択性
一つまたは一つ以上のその他のプロテインキナーゼ、すなわち、DNA-PK、Cdc2、カゼインキナーゼI(CKI)、Chk2、p38 MAPキナーゼ、ERKキナーゼ、プロテインキナーゼA(PKA)、および/またはカルシウム-カルモジュリンプロテインキナーゼII(CaM KII)に対する選択性に関して、本願発明のChk1阻害剤を試験した。 Chk2以外のすべてのキナーゼに関する分析手順は、本明細書の一部を構成するものとしてその内容を援用する米国公開特許公報第2002-016521号および1994年1月21日に出願された米国特許出願第08/184,605号に開示されたものを含めて、すでに文献に記載されている。
【0164】
Chk2に対する化合物の活性を、次のようにして分析した。 128ngのHisが付いた精製したChk2を、4mM ATP、1mCi [32P]γ-ATP、pH 7.5の20mM Hepes、5mM MgCl2、および0.25% NP40の存在下、室温下で、20分間、100mMまでの濃度のChk1阻害剤と共にインキュベーションした。 最終濃度が150mMのリン酸でもってして反応を停止せしめて、反応混合物の5/8をホスホセルロース製のディスクに移した。 このディスクを、150mMのリン酸で5回洗浄してから風乾した。 シンチラントを加え、次いで、Wallacのベータカウンターを用いて放射能を計測した。
【0165】
p38 MAPキナーゼ、ERKキナーゼ、PKA、CaM KII、およびCdc2を、ニューイングランドバイオラブス社から購入し、そして、製造業者の指示に従い、4〜50μMのATPおよび100μMまでの濃度の試験用Chk1阻害剤を用いて、分析を行った。 試験したすべての阻害剤は、Chk1に対しては、他の酵素よりも少なくとも100倍の選択性を示した。
【0166】
実施例3:本願発明のChk1阻害剤は、細胞のChk1機能を阻害する
本願発明のChk1阻害剤が、細胞内でChk1機能を阻害することを確認するために、分子細胞レベルにて阻害剤を分析することもできる。 哺乳動物Chk1が、in vitroでCdc25Cをリン酸化することが知られており、また、DNA損傷に応じたサイクリンB/cdc2の調節能力をうかがうこともできるので、サイクリンB/cdc2の活性向上に関してChk1阻害剤を分析することができる。 次のような実験手順が利用できる。 すなわち、800ラドの放射線をHeLa細胞に照射し、次いで、37℃で、7時間かけてインキュベーションを行う。 これら細胞は、p53機能を欠いているため、細胞周期は専らG2期で停止する。 次いで、ノコダゾールを0.5μg/mlの濃度で加えてから、37℃で、15時間かけて細胞のインキュベーションを行う。 ノコダゾールの添加は、停止していたG2期からM期に進行する細胞を捕捉する目的で行われる。 最後に、8時間にわたってChk1阻害剤を添加し、そして、製造業者の指示に従って、細胞を、回収し、溶解し、そして、サイクリンB1(ニューイングランドバイオラブス社)に対する抗体を含む当量のタンパク質で免疫沈降させる。 次いで、ヒストンH1キナーゼ活性を分析することで、サイクリンB関連cdc2キナーゼ活性に関してIPが分析されることとなる(Yu et al., J Biol Chem., 1998年12月11日; 273(50):pp.33455-64)。
【0167】
加えて、本願発明のChk1阻害剤が、電離放射線で誘発されたG2期でのDNA損傷チェックポイントを排除する能力は、分裂指数分析試験を用いて確認することができる。 HeLa細胞(約1×106個)を、上記したようにして処理する。 遠心分離によって細胞を回収し、PBSで一度洗浄を行い、そして、75mMの塩化カリウムの2.5mlで再懸濁し、その後、再度の遠心分離を行う。 そして、これら細胞を、新たに調製した冷酢酸:メタノール(1:3)の3mlで固定し、そして、氷上で、20分間インキュベーションした。 細胞をペレット化し、固定液を吸引し、そして、0.5mlのPBSに再懸濁する。 固定した100μlの細胞をピペットで採取して、ガラス製の顕微鏡用スライド上に置き、そして、1mlの固定液で試料を浸して細胞分裂用重層を調製する。 次いで、スライドを風乾し、ライトの染色剤(シグマ社)を用いて、1分間にわたって染色を行い、その後、水で一度、そして、50%メタノールで一度の洗浄を行う。 凝縮した染色体の存在と細胞核外被の欠如によって、分裂細胞の存在が示される。
【0168】
実施例4:本願発明のChk1阻害剤は、癌処置によって細胞の殺傷性を改善する
本願発明の化合物によってChk1が阻害されることで、DNA損傷物質の殺傷効果に対して標的細胞が感作されることを実証するために、本願発明のChk1阻害剤の存在下で細胞をインキュベーションし、次いで、放射線またはDNA損傷薬剤のいずれかに曝すことができる。 96穴マイクロ滴定用プレートに、1000〜2000個/穴の密度で配置した細胞を、5%二酸化炭素が給気される加湿型インキュベーター内で、37℃で、18時間、10%のFBS、100U/mlのペニシリン、および100μg/mlのストレプトマイシンを含有するRMPI 1640で成長せしめる。 試験に供する細胞として、HeLa、ACHN、786-0、HCT116、SW620、HT29、Colo205、SK-MEL-5、SK-MEL-28、A549、H322、OVCAR-3、SK-OV-3、MDA-MB-231、MCF-7、PC-3、HL-60、K562、およびM0LT4などを含めた、任意の細胞または細胞系が利用可能である。 前述した細胞系の名称は、以下のヒト細胞系に対応している。
【0169】
【表2】

化学療法薬だけを含む培地または化学療法薬とChk1阻害剤を含む培地を用いて、細胞が処理される。 3H-チミジンの取込みレベルに基づいて成長度の評価を行う約5日前まで、細胞のインキュベーションは行われる。 化学療法薬として、エトポシド、ドキソルビシン、シスプラチン、クロラムブシル、5-フルオロウラシル(5-FU)がある。 対照の未処理細胞の90%の細胞の成長を阻害するために必要な薬剤濃度を、GI90として定義する。
【0170】
薬剤が奏する殺傷性の改善度を評価するために、メトトレキサート、ヒドロキシ尿素、2-クロロアデノシン、フルダラビン、アザシチジン、およびゲムシティビンなどの代謝拮抗物質を用いて、本願発明の化合物を試験することができる。 ゲムシティビンを併用してHT29結腸-直腸癌の殺傷性の改善度を評価することによって、本願発明の化合物を互いに比較することができる。
【0171】
加えて、放射線による殺傷性を改善する目的で、本願発明のChk1阻害剤の効果を試験することもできる。
【0172】
実施例5:動物の腫瘍モデル
DNA損傷物質によって発生したマウス腫瘍の殺傷性を改善する本願発明のChk1阻害剤の効果を試験するために、結腸癌細胞系を用いた異種移植腫瘍モデルを樹立する。 5-フルオロウラシル(5-FU)またはゲムシタビンを、DNA損傷物質として使用することができる。 6〜8週齢の雌の胸腺Balb/c(nu/nu)マウスでの異種移植腫瘍を増殖させるために、HT29とColo205(ヒト結腸癌)およびH460とCalu-6(非小細胞癌)細胞を用いることができる。 病原体が排除された条件下で層流が供給される個室にマウスを収容して、滅菌した食餌と浄水を制限無く与えた。 10%のFBS、100U/mlのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、および1.5mMのL-グルタミンが加えられたRMPI 1640において、5%二酸化炭素の湿潤条件下で、細胞系を略集密状態にまで成長せしめる。 単一細胞の懸濁液をCMF-PBSを用いて調製し、次いで、細胞濃度を1×108細胞/mlに調整する。
【0173】
マウスの右脇腹または右足に、1×107個の細胞(100μl)を、皮下(s.c.)接種する。
【0174】
マウスを、4つの処置グループ(5〜15匹/グループ)に無作為に振り分け、そして、75〜100cm3の大きさになった腫瘍(通常は、接種してから7〜11日目)を用いる。 ノギスを用いて腫瘍の計測を行い、そして、腫瘍の体積を、腫瘍体積(cm3)=腫瘍の長さ(cm)×腫瘍の幅(cm)×腫瘍の厚み(cm)/3.3の経験的に導いた数式を用いて概算する。 160mg/kgのゲムシタビンの100μlを腹膜内(i.p)に注射して処置する。 ゲムシタビンで処置したマウスにおいて、腫瘍の成長鈍化が認められる。 160mg/kgのゲムシタビンとChk1阻害剤の経口投与とを併用する処置によって、腫瘍体積の減少と延命効果とが期待される。 実験期間中は、一日おきに腫瘍の大きさを観察する。
【0175】
これまで説明してきた本願発明に、本願発明の趣旨を逸脱せずに、多くの修正や変更を加えることが可能であることは自明であり、従って、特許請求の範囲の欄に記載の限定事項のみが本願発明に付加されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造式;
【化1】

式中、X1が、不存在、-O-、-S-、-CH2-、または-N(R1)-であり;
2が、-O-、-S-、または-N(R1)-であり;
Yが、酸素または硫黄であり;または、=Yは、共通する炭素原子に結合している二つの水素原子を表し;
Wが、ヘテロアリール、アリール、ヘテロシクロアルキル、シクロアルキル、およびヘテロアリールまたはアリール基で置換されたC1-6アルキルからなるグループから選択され、(a)前記W基でのアリール基またはヘテロアリール基が、少なくとも一つのCF3およびヘテロアリールで置換されており、(b)前記W基でのアリール基が、R2で表される1個〜3個の置換基で任意に置換されており、および、(c)前記W基でのヘテロアリール基が、R5で表される1個〜3個の置換基で任意に置換されており;
1が、ヒドロ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、およびアリールからなるグループから選択され;
2が、ヘテロアリール、ハロ、任意に置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、OCF3、NO2、CN、NC、N(R3)2、OR3、CO23、C(O)N(R3)2、C(O)R3、N(R1)COR3、N(R1)C(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)R3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)R3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンOR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンNHC-(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンSO2NR3、C1-6アルキレンOR3、およびSR3からなるグループから選択され;
3が、ヒドロ、ハロ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、CO24、SO24、ハロ、ヒドロキシ、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、N(R4)2、およびSO24の一つまたはそれ以上で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルキレンアリール、C1-6アルキレンヘテロアリール、C1-6アルキレンC3-8ヘテロシクロアルキル、C1-6アルキレンSO2アリール、任意に置換されたC1-6アルキレンN(R4)2、OCF3、C1-6アルキレンN(R4)3+、C3-8ヘテロシクロアルキル、およびCH(C1-6アルキレンN(R4)2)2からなるグループから選択され、または、二つのR3基をもってして、任意に置換された三員〜六員の脂肪族環が形成され;
4が、ヒドロ、C1-6アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、C1-6アルキレンアリール、およびSO21-6アルキルからなるグループから選択され、または、二つのR4基をもってして、任意に置換された三員〜六員の環が形成され;
5が、C1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、N(R3)2、OR3、ハロ、N3、CN、C1-6アルキレンアリール、C1-6アルキレンN(R3)2、C(O)R3、C(O)OR3、C(O)N(R3)2、N(R1)C(O)R3、N(R1)CO23、CF3、および以下の式、
【化2】

の構造からなるグループから選択され;
6が、OR11、-C≡C-R7、およびヘテロアリールからなるグループから選択され;
7が、ヒドロ、C1-6アルキル、アリール、C1-6アルキレンアリール、ヘテロアリール、C1-6アルキレンヘテロアリール、およびアルコキシからなるグループから選択され;
8、R9およびR10が、独立して、ヒドロ、ハロ、任意に置換されたC1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、OCF3、CF3、NO2、CN、NC、N(R3)2、OR3、CO23、C(O)N(R3)2、C(O)R3、N(R1)COR3、N(R1)C(O)OR3、N(R8)C(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)R3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンC(O)OR3、N(R1)C(O)C1-3アルキレンOR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンNHC(O)OR3、N(R1)C(O)C1-6アルキレンSO2NR3、C1-6アルキレンOR3、およびSR3からなるグループから選択され;
11が、ヒドロ、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、SO24、ハロ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、N(R4)2、およびSO24の一つまたはそれ以上で置換されたC1-6アルキル、C1-6アルキレンアリール、C1-6アルキレンヘテロアリール、C1-6アルキレン-C3-8ヘテロシクロアルキル、C1-6アルキレンSO2アリール、任意に置換されたC1-6アルキレンN(R4)2、OCF3、C1-6アルキレンN(R4)3+、C3-8ヘテロシクロアルキル、およびCH(C1-6アルキレン-N(R4)2)2からなるグループから選択される、化学構造式で表される化合物または薬学的に許容可能なその塩、またはプロドラッグ、または溶媒和物。
【請求項2】
1およびX2が、-N(H)-であり;
Yが、酸素または硫黄であり;
Wが、窒素、酸素および硫黄からなるグループから選択される少なくとも二つのヘテロ原子を含む任意に置換されたヘテロアリールであり、前記環が、C1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、N(R3)2、OR3、C(O)N(R3)2、CO23、CN、CF3、およびハロからなるグループから選択された一つまたは二つの置換基で任意に置換する請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Wが、任意に置換されたC1-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、N(R3)2、OR3、C(O)OR3、C(O)N(R3)2、およびハロからなるグループから選択された1個または2個の置換基で任意に置換されたピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、およびトリアジニルからなるグループから選択される請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Wが、
【化3】

からなるグループから選択される請求項2に記載の化合物。
【請求項5】
Wが、
【化4】

からなるグループから選択される請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
Wが、ピラジニルである請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
6が、OR11である請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
7が、ヘテロアリールである請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Wに関するヘテロアリール置換基およびR6のヘテロアリール基が、独立して、
【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

からなるグループから選択される請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
【化9】

【化10】

からなるグループから選択される化合物。
【請求項11】
請求項1に記載の化合物および薬学的に許容可能な担体を含む組成物。
【請求項12】
有効量の請求項1に記載の化合物と細胞とを接触する工程を含む、細胞内でチェックポイントキナーゼ1を阻害する方法。
【請求項13】
治療上有効量の請求項1に記載の化合物を、化学療法剤、放射線療法剤、またはこれらの組み合わせと共に個体に投与することを含む、医学的病態のために化学療法または放射線療法を受けている個体の細胞を感作する方法。
【請求項14】
個体に対して、サイトカイン、リンフォカイン、成長因子、その他の造血因子、またはこれらの組み合わせを投与する工程をさらに含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記化学療法剤が、アルキル化薬、代謝拮抗物質、ホルモンまたはそのアンタゴニスト、放射性同位元素、抗体、およびこれらの組み合わせからなるグループから選択される請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記放射線療法剤が、γ線、X線、紫外線、可視光線、赤外線、およびマイクロ波からなるグループから選択される請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記病態が、直腸癌、頭部および頸部癌、膵臓癌、乳癌、胃癌、膀胱癌、外陰部癌、白血病、リンパ腫、黒色腫、腎細胞癌腫、卵巣癌、脳腫瘍、骨肉腫、および肺癌からなるグループから選択される癌である請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記病態が、粘液型および円形細胞腫、局所進行性腫瘍、転移性癌、ユーイング肉腫、癌転移、リンパ性転移、扁平上皮細胞癌、食道扁平上皮細胞癌、口腔癌、多様性骨髄腫、急性リンパ性白血病、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄球性腫瘍、有毛細胞白血病、浸出リンパ腫(体腔由来リンパ腫)、胸腺リンパ腫肺癌、小細胞癌、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、副腎皮質癌、ACTH産生腫瘍、非小細胞癌、乳癌、小細胞癌、浸潤性導管癌、胃癌、大腸癌、直腸癌、直腸腫瘍に関連するポリープ、膵臓癌、肝臓癌、膀胱癌、原発性表在性膀胱腫瘍、膀胱の浸潤性移行細胞癌、筋浸潤性膀胱癌、前立腺癌、卵巣腫瘍、原発性腹膜上皮性腫瘍、子宮頚癌、子宮内膜癌、膣癌、外陰部癌、子宮癌、卵胞内固形腫瘍、精巣癌、陰茎癌、腎細胞癌、内因性脳腫瘍、神経芽細胞腫、星状細胞脳腫瘍、神経膠腫、中枢神経系の転移腫瘍細胞浸潤、骨腫および骨肉腫、悪性黒色腫、ヒト皮膚ケラチン生成細胞の腫瘍進行、扁平上皮癌、甲状腺癌、網膜芽細胞腫、神経芽細胞腫、腹膜浸出、悪性胸膜浸潤、中皮腫、ウィルムス腫瘍、ニワトリ膀胱癌、栄養膜腫瘍、血管外皮細胞腫、およびカポジ肉腫からなるグループから選択される癌である請求項13に記載の方法。
【請求項19】
関節リウマチ、乾癬、白斑症、ウェグナー肉芽腫症、および全身性紅斑からなるグループから選択される炎症病態に対して処置がなされる請求項12に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物が、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、cdc2、およびpp60v-srcと比較して、Chk1に対して少なくとも20倍の選択的阻害性を示す請求項13に記載の方法。
【請求項21】
請求項1に記載の化合物が、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、cdc2、およびpp60v-srcと比較して、Chk1に対して少なくとも75倍の選択的阻害性を示す請求項13に記載の方法。
【請求項22】
請求項1に記載の化合物が、プロテインキナーゼA、プロテインキナーゼC、cdc2、およびpp60v-srcと比較して、Chk1に対して少なくとも100倍の選択的阻害性を示す請求項13に記載の方法。
【請求項23】
前記化学療法剤が、ゲムシタビン、ペメトレキセド、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセール、またはこれらの組み合わせを含む請求項13に記載の方法。
【請求項24】
異常な細胞増殖を阻害する方法であって、異常増殖する細胞を含む細胞集団と異常増殖する当該細胞の実質的な同期性細胞周期を停止するChk1活性剤とを接触させ、および、当該細胞集団と請求項1に記載の化合物とを接触させて停止した当該細胞周期を実質的に廃除する、ことを含む異常な細胞増殖を阻害する方法。
【請求項25】
前記Chk1活性剤が、少なくとも一つの化学療法剤を含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記Chk1活性剤が、電離放射線または紫外線を含む請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記電離放射線が、放射線感受性増強物質、感光性増強物質、またはこれらの組み合わせを利用して照射される請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記異常増殖細胞が、非癌性細胞である請求項24に記載の方法。

【公表番号】特表2008−510719(P2008−510719A)
【公表日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−528037(P2007−528037)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【国際出願番号】PCT/US2005/029518
【国際公開番号】WO2006/021002
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(398072160)イコス・コーポレイション (10)
【氏名又は名称原語表記】ICOS CORPORATION
【Fターム(参考)】