説明

CHK1を阻害するために有用な化合物

本発明は、Chk1を阻害し、癌の治療において有用であるアミノピラゾール化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Chk1を阻害し、デオキシリボ核酸(DNA)複製、染色体分離又は細胞分裂における不具合を特徴とする癌を治療するのに有用であるアミノピラゾール化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物に関する。
【背景技術】
【0002】
Chk1は、DNA損傷のチェックポイントシグナル伝達経路におけるAtm及び/又はAtrの下流にあるタンパク質キナーゼである。哺乳類細胞では、イオン化放射線(IR)、紫外(UV)線及びヒドロキシウレアを含むDNAに損傷を引き起こす因子に応答してChk1がリン酸化される。哺乳類細胞にてChk1を活性化するこのリン酸化はAtrに左右される。Chk1は、S期及びG2Mでの停止を招くAtr依存性のDNA損傷チェックポイントにて役割を担う。Chk1は、S期を介して進行を止めるサイクリンE/Cdk2を通常脱リン酸化する二重特異性のホスファターゼであるCdc25Aをリン酸化し、不活化する。Chk1はまた、G2と有糸分裂の境界での細胞周期の進行を停止するサイクリンB/Cdc2(Cdk1としても知られる)を脱リン酸化する二重特異性のホスファターゼであるCdc25Cをリン酸化し、不活化する(非特許文献1)。双方の場合、Cdk活性の調節が細胞周期の停止を誘導し、DNA損傷又は複製されないDNAの存在下で細胞が有糸分裂に入るのを妨げる。
【0003】
Chk1の種々の阻害剤が報告されている。たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4を参照のこと。さらに、一連のアミノピラゾールChk1阻害剤は、特許文献5に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第05/066163号パンフレット
【特許文献2】国際公開第04/063198号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/093297号パンフレット
【特許文献4】国際公開第02/070494号パンフレット
【特許文献5】国際公開第05/009435号パンフレット
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Ferneryら,Science,277:1495−7,1997
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、DNA損傷因子の増強剤として効果的に作用することができる細胞周期のチェックポイントの強力な阻害剤であるChk1阻害剤へのニーズは依然として存在する。本発明は、Chk1の強力な阻害剤である新規のアミノピラゾール化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を提供する。該化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物は、組織培養及び生体内にてDNA損傷因子による処理によって誘導されるChk1が介在する細胞周期の停止を強力に排除する。さらに、本発明の該化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物はまた、Chk2の阻害も提供し、それは癌の治療に有益であり得る。加えて、たとえば、CDK1のような特定のそのほかのタンパク質キナーゼの阻害の欠如は望ましくない効果を最少限に抑えることによって治療効果を提供することができる。さらに、本発明の該化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物は、Chk1阻害に依存するメカニズムによって癌細胞の細胞増殖を阻害する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、Chk1の拮抗剤である、新しいアミノピラゾール化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を提供する。そのような新しい化合物は、癌の安全で有効な治療に対するニーズに対処し得る。
【0008】
本発明は、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルである化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を提供する。好ましい実施態様は、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルギ酸塩、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル塩化二水素塩、及び5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルメタンスルホン酸塩、及び2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]モノメシレート一水和物である。
【0009】
特定の実施態様として、本発明は、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルである化合物を提供する。
【0010】
本発明は、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルのギ酸塩、塩化二水素塩及びメタンスルホン酸塩を提供する。
【0011】
本発明はまた、2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]モノメシレート一水和物である化合物を提供する。
【0012】
本発明は、2θ±0.02=12.64、21.25及び26.15でピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする結晶形態での2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]モノメシレート一水和物を提供する。
【0013】
本発明は、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせた、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。
【0014】
本発明は、癌の治療を必要とする患者に、有効量の5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を投与することを含む、癌を治療する方法を提供する。さらに、本発明はまた、癌の治療を必要とする患者に、有効量の5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物と、イオン化放射線を投与することを含む、癌を治療する方法も提供する。さらに、本発明は、癌の治療を必要とする患者に、有効量の5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物と、化学療法剤を投与することを含む、癌を治療する方法を提供する。
【0015】
本発明は、癌を治療するための薬剤を製造するための、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物の使用を提供する。さらに、本発明はまた、治療がイオン化放射線の併用療法を含む、癌の前記治療のための薬剤を製造するための、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物の使用も提供する。さらに、本発明は、併用療法によって癌を治療するための薬剤を製造するための、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物の使用を提供し、その際、前記併用療法の治療は、同一患者への前記薬剤の投与と、1以上のそのほかの化学療法剤の投与とを含む。
【0016】
本発明は、治療に使用するための5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を提供する。本発明はまた、癌の治療において使用するための5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を提供する。さらに、本発明はまた、治療に使用するための5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物と、イオン化放射線を提供する。さらに、本発明は、治療に使用するための5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物と、化学療法剤を提供する。
【0017】
本発明は、癌の治療に使用するための5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を提供する。さらに、本発明はまた、癌の治療に使用するための5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物と、イオン化放射線を提供する。さらに、本発明は、癌の治療に使用するための5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物と、化学療法剤を提供する。
【0018】
本発明は、癌の治療のための薬剤を製造するために5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物の使用を提供し、その際、薬剤は、イオン化放射線と同時に、別々に又は順次投与されるべきである。
【0019】
本発明は、癌の治療のための薬剤を製造するために5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物の使用を提供し、その際、薬剤は化学療法剤も含み、又は薬剤は、化学療法剤と同時に、別々に又は順次投与されるべきである。
【0020】
本発明は、癌の治療においてイオン化放射線と同時の、別々の又は順次の併用にて使用するために5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を提供する。
【0021】
本発明は、癌の治療において化学療法剤と同時の、別々の又は順次の併用にて使用するために5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を提供する。
【0022】
本発明は、薬学的に許容可能な担体及び任意でそのほかの治療成分と一緒に、5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を含む医薬組成物を提供する。
【0023】
さらに、本発明は、本明細書に記載されるように方法及び使用の好ましい実施態様を提供し、その際、化学療法剤は、5−フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、ゲムシタビン、メソトレキセート、ペメトレキセド、ドキソルビシン、エトポシド、シスプラチン及びタキソールから成る群から選択される。本明細書で記載される方法及び使用の好ましい実施態様は、膀胱癌、結腸癌、胃癌、肝臓癌、肺癌、乳癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、中皮腫、腎臓癌及び子宮癌から成る群から選択される癌である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物は、互変異性型として存在してもよい。互変異性型が存在する場合、各型及びその混合物が本発明で意図される。
【化1】

【0025】
特に定義されない限り、本発明は、実施例3の化合物の薬学的に許容可能な塩、並びに実施例3の化合物の遊離の塩基の溶媒和物又は薬学的に許容可能なその塩を含む。用語「薬学的に許容可能な塩」は本明細書で使用されるとき、実施例3の化合物の塩を指す。薬学的に許容可能な塩及びその調製のための方法の例は、従来技術で慣習として認められている。たとえば、Stahlらの「Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use」、VCHA/Wiley−VCH,(2002);Gould,P.L.の「Salt selection for basic drugs」、International Journal of Pharmaceutics,33:201−217(1986);及びBastinらの「Salt Selection and Optimization Procedures for Pharmaceutical New Chemical Entities」、Organic Process Research and Development,4:427−435(2000)を参照のこと。
【0026】
薬学的に許容可能な塩に加えて、ほかの塩が本発明に含まれる。それらは、化合物の精製又はほかの薬学的に許容可能な塩の調製において中間体として役立ち、同定、性状分析又は精製に有用である。
【0027】
本明細書で使用されるとき、用語「患者」は、ヒト又は非ヒト哺乳類を指す。さらに具体的には用語「患者」はヒトを指す。
【0028】
用語「治療すること」(又は「治療する」又は「治療」)は、症状、障害、状態又は疾患の進行又は重症度を遅くする、妨害する、停止させる、制御する、抑制する又は逆転することに関与する過程を指す。
【0029】
本明細書で使用されるとき、用語「有効量」は、患者に対して単回用量又は複数回用量を投与する際、診断又は治療のもとで患者にて所望の効果を提供する、単独で又はイオン化放射線若しくは化学療法剤との併用での、本明細書に記載される本発明の化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物の量又は投与量を指す。哺乳類の種;その大きさ、年齢及び全身状態;必要であれば、ほかの剤の同時投与;関与する特定の疾患;その疾患の程度又は重症度;個々の患者の応答;投与される特定の化合物;投与方式;投与される製剤の生物利用効率の特徴;選択される投与計画;付随する薬物の使用、及びそのほかの関連する状況のような多数の因子を考慮することによって、当業者としての主治医である診断医により有効量を容易に決定することができる。本発明では決して限定として解釈されるべきではない一方で、20〜150mg/mが、本明細書で記載される化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物の有効量を表す。
【0030】
本明細書で使用されるとき、用語「併用療法」は、本発明の化合物、又は薬学的に上許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物と、化学療法剤との別々の、同時の又は順次の投与を指す。さらに、用語「併用療法」は、本発明の化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物と、イオン化放射線との別々の、同時の又は順次の投与を指す。
【0031】
実施例3の化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物は、医薬組成物の一部として投与のために製剤化されてもよい。従って、1以上の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤との組み合わせで実施例3の化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物を含む医薬組成物は本発明の重要な実施態様である。それらの調製のための医薬組成物及び方法の例は当該技術で周知である。たとえば、REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY、A.Gennarら編、第19版、Mack Publishing(1995)を参照のこと。
【0032】
本発明の化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物は、経口及び非経口の経路を含む、それを生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与することができる。たとえば、化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物は、経口で、皮下に、筋肉内に、静脈内に、経皮で、局所に、鼻内に、直腸に、頬内になどで投与することができる。或いは、化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物は、点滴によって投与することができる。IV点滴は投与の好ましい経路である。
【0033】
本明細書で使用されるとき、以下の用語は指示された意味を有する:「BCA」はビシンコニン酸を指し;「boc又はt−boc」はtert−ブトキシカルボニルを指し;「BSA」はウシ血清アルブミンを指し;「CPMS」は1分当たりのカウントを指し;「DIAD」はジイソプロピルアゾジカルボキシレートを指し;「DMFM」はダルベッコの改変イーグル培地を指し;「DMF」はジメチルホルムアミドを指し;「DMSO」はジメチルスルホキシドを指し;「DPBS」はダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水を指し;「DTT」はジチオスレイトールを指し;「EDTA」はエチレンジアミン四酢酸を指し;「EtOH」はエタノールを指し;「FBS」はウシ胎児血清を指し;「HEPES」はN−2−ヒドロキシエチルピペラジン−N’−2−エタンスルホン酸を指し;「MEM」は最小必須培地を指し;「MeOH」はメタノールを指し;「PBS」はリン酸緩衝生理食塩水を指し;「PBST」はリン酸緩衝生理食塩水ツイーン20を指し;「PI」はヨウ化プロピジウムを指し;「RNAase」はリボヌクレアーゼAを指し;「SDS」はドデシル硫酸ナトリウムを指し;「RT」は室温を指し;「TBS」はトリス緩衝生理食塩水を指し;「TBST」はトリス緩衝生理食塩水ツイーン20を指し;「THF」はテトラヒドロフランを指し;「TR−FRET」は時間分割蛍光エネルギー移動を指し;「Tris」はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを指し;「Triton−X」は4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェニル−ポリエチレングリコールt−オクチルフェノキシポリエトキシエタノールポリエチレングリコールtert−オクチルフェニルエーテルを指し;「ツイーン20」はポリソルベート20を指す。
【0034】
以下のアッセイの結果は、本発明の化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物が、Chk1阻害剤、Chk2阻害剤及び抗癌剤として有用である証拠を明らかにする。本明細書で使用されるとき、「IC50」はその剤について考えられる最大阻害反応の50%を生じる剤の濃度を指し、「EC50」はその剤について考えられる最大の応答の50%を生じる剤の濃度を指す。
【0035】
Chk1生化学アッセイ
TR−FRETアッセイを用いて、Chk1の生化学的な活性に対する化合物の効果を測定することができる。このアッセイでは、テルビウムを標識した抗体を用いて、キナーゼと蛍光標識の基質とATPとの反応から形成されるリン酸化された生成物を検出する。抗体はリン酸化された基質に結合し、その結果、受容体シグナル(フルオレセイン)対供与体シグナル(テルビウム)の比として算出されるTR−FRET値が上昇する。
【0036】
96穴の面積の半分が黒色のポリスチレンプレート(Costa、カタログ番号3694)にてキナーゼ反応(25μLの反応体積)を行う。ATPの添加によって反応が開始する。最終的な反応条件は、50mMのHEPES、pH7.5、0.005%(v/v)のTRITON(商標)X−100、2mMのDTT、2mMのMgCl、104nMのフルオレセイン−PKC基質(インビトロゲン、カタログ番号PV3506)、30μMのATP、1.5nMの活性のあるChk1酵素(ミリポア、カタログ番号14−346)、4%(v/v)のDMSO及び連続希釈した実施例2の化合物(20μMで出発した1:3の連続希釈、10ポイント)である。ATPの添加に続いて、反応を室温で75分間インキュベートし、次いで10mMのEDTAと2.1nMのTb−pSer抗体(インビトロゲン、カタログ番号PV3574)を含有する25μLのTR−FRET希釈緩衝液(インビトロゲン、カタログ番号PV3574)の添加によって終了する。反応を止めた反応物を室温で60分間インキュベートし、次いでEx340nm、Em495nm及びEm520nmの波長のフィルターを持つパーキンエルマーのEnvisionプレートリーダーを用いてTR−FRETを測定する。
【0037】
IC50の決定については、各プレートでの対照からのTR−FRETの比を用いて各濃度についてパーセント阻害を算出する。その後、ActivityBase4.0を用いて10ポイントの化合物濃度のデータを4つのパラメータの対数方程式に当てはめる。得られた曲線からIC50の絶対値を算出する。実施例2の化合物は、このアッセイで0.001μM未満のIC50を有することが測定される。このことは、本発明の化合物がChk1の強力な阻害剤であることを明らかにしている。
【0038】
Chk2の生化学アッセイ
TR−FRETアッセイを用いてChk2の生化学的活性に対する化合物の効果を測定することができる。このアッセイでは、テルビウムを標識した抗体を用いて、キナーゼと蛍光標識の基質とATPとの反応から形成されるリン酸化された生成物を検出する。抗体はリン酸化された基質に結合し、その結果、受容体シグナル(フルオレセイン)対供与体シグナル(テルビウム)の比として算出されるTR−FRET値が上昇する。
【0039】
96穴の面積の半分が黒色のポリスチレンプレート(Costa、カタログ番号3694)にてキナーゼ反応(25μLの反応体積)を行う。ATPの添加によって反応が開始する。最終的な反応条件は、50mMのHEPES、pH7.5、0.005%(v/v)のTRITON(商標)X−100、2mMのDTT、2mMのMgCl、104nMのフルオレセイン−PKC基質(インビトロゲン、カタログ番号PV3506)、30μMのATP、2.5nMの活性のあるChk2酵素(ミリポア、カタログ番号14−347)、4%(v/v)のDMSO及び連続希釈した実施例2の化合物(20μMで出発した1:3の連続希釈、10ポイント)である。ATPの添加に続いて、反応を室温で75分間インキュベートし、次いで10mMのEDTAと2.1nMのTb−pSer抗体(インビトロゲン、カタログ番号PV3574)を含有する25μLのTR−FRET希釈緩衝液(インビトロゲン、カタログ番号PV3574)の添加によって終了する。反応を止めた反応物を室温で60分間インキュベートし、次いでEx340nm、Em495nm及びEm520nmの波長のフィルターを持つパーキンエルマーのEnvisionプレートリーダーを用いてTR−FRETを測定する。
【0040】
IC50の決定については、各プレートでの対照からのTR−FRETの比を用いて各濃度についてパーセント阻害を算出する。その後、ActivityBase4.0を用いて10ポイントの化合物濃度のデータを4つのパラメータの対数方程式に当てはめる。得られた曲線からIC50の絶対値を算出する。実施例2の化合物は、このアッセイで0.0047μMのIC50を有することが測定される。このことは、本発明の化合物がChk2の強力な阻害剤であることを明らかにしている。
【0041】
Chk1自己リン酸化細胞に基づくアッセイ
Chk1の阻害剤は、DNA損傷反応が活性化されている細胞にてタンパク質のキナーゼ活性が基質をリン酸化するのを妨げる。Chk1の容易に検出可能な基質は、Chk1自体の自己リン酸化部位、セリン296である。以下の免疫ブロットアッセイを用いてChk1におけるセリン296のリン酸化の量を測定し、Chk1タンパク質キナーゼの活性レベルを間接的に測定することができる。10%(v/v)熱非働化FBS(ギブコ(商標))、1×MEM非必須アミノ酸(ギブコ(商標))、1×ピルビン酸(ギブコ(商標))、及び24穴培養プレートのウエル当たり600μLのMEM培養培地(上記)に入れた1×10個の細胞で補完された、Earle’s塩(インビトロゲン)とL−グルタミン(ギブコ(商標))を伴ったMEMにてHeLa細胞(ATCCから購入)を培養する。37℃、5%CO及び95%〜100%の湿度にて細胞を24時間インキュベートする。培養培地中の4μMのドキソルビシン(シグマ)のストック16μLを各適当なウエルに加え、100nMの最終濃度のドキソルビシンを作製する。Chk1阻害剤化合物を添加する前にさらに24時間、プレートをインキュベータに戻す。化合物を100%DMSOにて10mMで可溶化し、次いで40%(v/v)のDMSOで2mMに希釈し、次いで4%(v/v)のDMSOを加えた培養培地で100μMに希釈する。その後、100μM〜0.005μMの範囲にわたって化合物の連続希釈(1:3)を調製する。66μLの化合物ストックをプレートの適当なウエルに加えて0.4%(v/v)の最終DMSO濃度と1μM〜0.0005μMの間の最終化合物濃度の範囲を生じる。さらに2時間プレートをインキュベータに戻し、次いで細胞の溶解と処理のために取り出す。次いでプレートから培地を取り除き、0.5mLの氷冷DPBS(ギブコ(商標))で各ウエルを1回洗浄し、液体をすべて取り除き、残りの手順のためにプレートを氷上に置く。ホスファターゼ阻害剤(シグマ)とプロテアーゼ阻害剤(ロシュダイアグノスティクス)を含有する細胞抽出緩衝液(インビトロゲン)から成る氷冷溶解緩衝液75μLを各ウエルに加える。10分後、各ウエルを擦り、溶解物を氷上の1.5mLのポリプロピレン微量遠心管に移す。各溶解物をプレートカップホルンソニケータ(ミソニックス)によって45秒間超音波処理するが、水/氷槽にて懸濁する。4×ラムリ試料緩衝液(240mMのトリス−HCl、pH6.8、40%のグリセロール、0.05%のブロモフェノールブルー、8%w/vのSDS及び20%(v/v)のβ−メルカプトエタノール)25μLを含有する0.5mLのポリプロピレン微量遠心管に50μLの各試料を移し、95℃で5分間加熱し、−80℃にて凍結保存する。残りの溶解物は、タンパク質濃度を決定する(BCA(商標)プロテインアッセイキット、サーモサイエンティフィック)のに用いる。試料緩衝液中の各細胞溶解物5μgをE−Pageウエルゲル(インビトロゲン)に適用し、製造元の指示書に従って電気泳動に供する。当該技術でよく理解されている手順に従ってタンパク質をゲルからイモビロン−P膜(ミリポア)に電気的に移す[Towbinら、1979]。10mMのトリス/HCl、pH8.0、150mMのNaCl及び0.05%(v/v)のツイーン20(TBST)で手短に膜をすすぎ、TBST/5%(v/v)の再構成されたCarnation(登録商標)即席ミルク中にて25℃で1時間浸す。TBSTにて5分間、膜を4回洗浄し、次いで適当な希釈のウサギ抗ホスフォChk1(セリン296)(セルシグナリング)を伴ったTBST/5%(w/v)BSAにて4℃で24時間、膜を浸す。25℃にてTBSTで5分間、膜を4回洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;アマシャム)を結合したロバ抗ウサギIgGの適当な希釈物を含有するTBST/5%ミルクにて25℃で2時間、膜を浸し、自己リン酸化したChk1タンパク質を検出する。25℃にてTBSTで5分間、膜を4回、再び洗浄する。化学発光撮影装置(富士フィルム)を用いて、製造元によって推奨されるように、Super Signal Western Femoto HRP−検出試薬(ピアース)によって膜に固定化された抗原−抗体−リポーター抱合体が検出される。「Total Lab」ソフトウエア(ノンリニアダイナミックス)を用いてホスフォ−Chk1(Ser296)バンドの強度を算出する。ドキソルビシン誘導のChk1自己リン酸化のパーセント阻害は、以下の式:%阻害=(試料のホスフォChk1バンドの強度−ドキソルビシンなしの陰性対照のホスフォChk1バンドの強度)/(ドキソルビシン陽性対照のホスフォChk1バンドの強度−ドキソルビシンなしの陰性対照のホスフォChk1バンドの強度)×100を用いて算出する。実施例2の化合物はこのアッセイで0.0005μM未満のEC50を有することが測定される。このことは、本発明の化合物がChk1の強力な阻害剤であることを明らかにしている。
【0042】
ドキソルビシン誘導のG2Mチェックポイント破棄のHeLa細胞に基づいた鋭敏アッセイ
Chk1の阻害剤は、トポイソメラーゼII阻害剤であるドキソルビシンによって処理されたp53マイナス腫瘍細胞におけるG2MのDNA損傷チェックポイントを無効にする。G2Mのチェックポイントの破棄の測定は、細胞がG2Mチェックポイントを越えて有糸分裂に入った後生じるセリン10におけるヒストンH3のリン酸化である。以下の高含量の画像化アッセイを用いて細胞におけるヒストンH3のリン酸化を測定することができる。ポリD−リジンを被覆した透明な底の黒色プレート(BDバイオコート、カタログ番号3504640)にて、ウエル当たり100μL体積で、10%(v/v)のFBSを補完し、ウエル当たり2000個の細胞を入れたMEM培地(ギブコ(商標))においてHeLa細胞(ATCCから購入した)を培養する。次いで細胞培養インキュベータにて18〜24時間、プレートをインキュベートする(37℃、5%CO及び95%相対湿度)。最初のインキュベートに続いて、625nMのドキソルビシンを含有するギブコ(商標)MEM培地10%FBS20μLをプレートの適当なウエルに加え、125nMの最終濃度を生じる。細胞をG2Mチェックポイントで停止させるのに十分な24時間、プレートをインキュベータに戻す。翌日、細胞を実施例2の化合物で処理する。実施例2の化合物は、100%DMSOに10mMにて可溶化し、次いで4%(v/v)のDMSO−MEMにて50μMから出発して10×ストックに希釈する。その後、50μM〜0.39μMにわたって化合物の連続希釈(1:2)を調製する。13μLの化合物ストックをプレートの適当なウエルに加え、0.4%のDMSO最終濃度と5μM〜0.039μMの間の範囲の化合物の最終濃度を生じる。プレートをさらに7時間インキュベータに戻し、次いで固定のために取り出す。各ウエルから液体を慎重に取り除き、100μLのPREFER(商標)固定液(アナテック社、カタログ番号414)を加える。プレートを室温にて20分間保持し、固定液を除き、次いで100μL/ウエルのDPBS(ギブコ(商標)、カタログ番号14040)中の0.1%(v/v)Triton(登録商標)X−100(ピアース、カタログ番号28314)を10分間添加することによって細胞を透過処理する。溶液を取り除き、ウエル当たり100μLのDPBSで2回プレートを洗浄し、次いで室温にて1時間、50μg/mLのRNAase(リボヌクレアーゼA、シグマ、カタログ番号R−6513)を含有する100μLのDPBSを加える。RNAase溶液を取り除き、1:500希釈のウサギ抗pHH3(ser10)(UBI、カタログ番号06−570)と1%(w/v)のBSA(ギブコ(商標)、カタログ番号15260)を含有するRNAase溶液50μLを各ウエルに加えることによってセリン10にてリン酸化されたヒストンH3(pHH3)の存在について細胞を染色する。プレートを密封し、一晩4℃に保つ。ウエル当たり100μLのDPBSによって各プレートを2回洗浄することによって一次抗体を取り除き、DPBSと1%(w/v)BSA中のAlexa染料488(インビトロゲン、カタログ番号A11008)に結合したヤギ抗ウサギIgGの1:750希釈50μLで置き換える。アルミニウムホイルで覆って光から保護して室温にてプレートを1時間保持する。ウエル当たり100μLのDPBSによって再び2回プレートを洗浄し、15nMのヨウ化プロピジウム100μL(元々の溶液からのPBSによる1:100希釈、モレキュラープローブ、カタログ番号P3566)によって置き換える。黒色シールでプレートを密封し、光からプレートを保護する。プレートを30分間インキュベートして核を染色する。488nmの励起(TTPラボテック社)を用いたACUMEN EXPLORER(商標)レーザー走査蛍光マイクロプレートサイトメータによってプレートを走査し、pHH3と2N及び4Nを含むDNA含量とを測定する。Alexa488からの519nmでの平均強度によってpHH3陽性細胞を特定する。ヨウ化プロピジウム/DNAからの655〜705nmでの総強度を用いて細胞周期(2N細胞、4N細胞)における個々の細胞及び細胞の亜集団を特定する。%pHH3、%2N及び%4Nの最終アッセイ出力を生じる総細胞の%を正規化することによって各集団についての最終的な読み取りを決定する。次いで、100nMでの阻害剤対照化合物の最大濃度で細胞を処理することによって100%活性を決定して、各化合物の最終的な%活性を決定する。0%の活性は、化合物で処理しないことに基づく。相対的なEC50は、ACTIVITY BASE(商標)、エクセルフィット、4つのパラメータの対数適合を用いた曲線の適合、方程式205を用いて100%の最大対照に対する%pHH3を決定することによって決定される。実施例2の化合物は、このアッセイで0.0105μMのEC50を有することが測定される。このことは、本発明の化合物がG2MのDNA損傷チェックポイントを無効にすることを明らかにしている。
【0043】
ECtfs(2倍の感作)アッセイ
Chk1の阻害剤は、S期内のチェックポイントの破棄を介してゲムシタビン(又はそのほかの細胞毒性剤)の抗増殖活性を増強することができ、結果的に持続し、高められたDNA損傷を生じる。DNA損傷後、継続して増殖する腫瘍細胞の能力は、そのDNAを複製する細胞の能力を測定することによって分析することができる。このアッセイは、細胞がDNA損傷を修復する機会を有した後、そのDNAを複製する細胞の能力を評価する。このアッセイでは、細胞をゲムシタビン、次いで実施例2の化合物で処理する。回復期に続いて、S期の間、DNAに放射性チミジンを取り込む能力について細胞をアッセイする。ECtfsパラメータは、ゲムシタビンのGI90濃度を半減するのに必要とされるChk1阻害剤の濃度の測定値であり、Chk1阻害の非存在下でこのアッセイにて測定される。10%(v/v)の熱非働化FBSを加えたRPMI1640(ギブコ(商標))にてHT−29細胞(ATCCから入手した)を増殖させる。コーニングコースター96穴組織培養プレートにウエル当たり1.3×10個にてこれらの細胞を入れる。細胞を入れた後、37℃に戻す前に組織培養プレートを室温にて45分間保持する。ゲムシタビンを加える前にプレートを24時間インキュベートする。ゲムシタビン添加の前に、すべてのウエルから培地を取り除き、ウエル当たり150μLの新鮮なRPMI培地に置き換える。リン酸緩衝生理食塩水にて10mMでのゲムシタビンのストックを調製する。RPMI培地中で4×濃度でゲムシタビンの希釈を調製し、ウエル当たり50μLをウエルに加えた。使用したゲムシタビンの最高最終濃度は80μMであり、4倍段階で希釈を進める。2時間後、ゲムシタビン含有の培地をウエルから取り除き、ウエル当たり150μLの新鮮なRPMI培地で置き換える。実施例2の化合物(DMSO中10mM)を先ず、DMSOにて2000×の最終濃度に希釈し、次いでRPMI培地で1:500に希釈してウエルへの添加用に4×ストックを生成する。添加の体積は50μLである。化合物の希釈は、5000nMから出発して2倍希釈によって開始する。実施例2の化合物の添加後24時間で、阻害剤を含有する培地を吸引によって取り除き、ウエル当たり200μLの新鮮なRPMI培地で置き換える。実施例2の化合物を取り除いた72時間後、トリチウム化したチミジン標識を開始する。H−チミジン(NET027X001、パーキンエルマー、比活性20Ci/ミリモル)を完全RPMIにて1:20に希釈して0.05mCi/mLの濃度を得る。この溶液20μLを各ウエルに添加して1μCi/ウエルのH−チミジンを得る。細胞を22時間標識する。H−チミジンを含有する培地をウエルから十分に取り除く。次いで−20℃にてプレートを数時間凍結する。取り込まれたH−チミジンを含有するDNAを回収するために、プレートを数分で融解し、ウエル当たり120μLの0.1NのNaOHを各ウエルに添加する。次いで、回転装置にてゆっくり混合しながら、各プレートを10分間37℃にてインキュベートする。Filtermate196ハーベスタ(パーキンエルマー)によってDNAを回収し、96穴UnifilterGF/Cプレート(パーキンエルマー、No.6005174)に集める。細胞が標識された組織培養プレートのウエルを水で5回洗浄する。ウエル当たり追加の4.5mL(3×1.0mL及び最終的に1.5mLの洗浄)によってUnifilterプレート膜を洗浄する。次いで37℃にて少なくとも6時間、Unifilterプレートを乾燥する。各フィルタープレートの底をBackseal粘着シート(パーキンエルマー)で封止し、50μL/ウエルのMicroScint−20(パーキンエルマー)を添加する。次いでTopseal透明粘着シート(パーキンエルマー)によって各プレートを封止する。Topcountシンチレーションカウンター(パーキンエルマー)にてウエル当たり1分、プレートを計数する。解析とプロットのためにH−チミジンの1分当たりのカウント(cpm)をPrism(GraphPad)に転送する。実施例2の化合物の各濃度についてゲムシタビンの用量反応を決定する。これを行うために、ゲムシタビンの非存在下での実施例2の化合物の濃度についての平均cpmとして100%取り込みを設定し、取り込みなし(100%阻害)をcpm=0(1分当たりのカウントなし)として設定してcpmを正規化する。Prismにおけるデータのプロットについては、ゲムシタビンの濃度を対数値に変換し、非線形回帰によって用量反応曲線を適合させる。最上の適合も最下の適合も拘束されない。ECtfs値は0.3nMである。さらに、HT29結腸癌細胞にて3nMの実施例2の化合物は、ゲムシタビンのEC50を37nMから5nMに7倍低下させる。実施例2の化合物の作用はまた、増殖阻害の比率をゲムシタビンの52から併用の73に上昇させる。単独では、3nMの実施例2の化合物がHT29細胞の増殖にほとんど効果を有さない。
【0044】
Chk1の生体内での標的阻害アッセイ
増殖培地(10%(v/v)熱非働化FBS(ギブコ(商標))、1×MEM非必須アミノ酸(ギブコ(商標))、1×ピルビン酸(ギブコ(商標))によって補完した、L−グルタミン(ギブコ(商標))を伴い、Earle’s塩(インビトロゲン)を伴ったMEM)でCalu−6細胞(ATCC)を培養し、増殖させる。細胞を回収し、リン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、増殖培地(血清なし)中の1×10個の細胞を、等量のBDMatrigel(商標)マトリクス(BDバイオサイエンス、ニュージャージー州、フランクリン)と混合し、次いで事前に放射線照射した(4.5Gy)ヌードマウス(インディアナ州、インディアナポリスのHarlanからの無胸腺ヌード)の横腹に皮下注射する。移植後15日目に(腫瘍サイズ=150〜200mm)、腹腔内経路にて150mg/kg用量にて生理食塩水で新鮮に調製したゲムシタビン(イリノイ州、レイクフォレストのHospira)を動物に毎日投与する。6時間後、モル比にてメタンスルホン酸/20%Captisol(カンザス州、オーバーランドパークのCYDEX)で調製された実施例2の化合物を静脈内経路にて用量を15mg/kg以下で変化させて動物に投与する。Chk1阻害剤投与の2時間後、動物を屠殺し、腫瘍を回収し、直ちに、ホスファターゼ阻害剤(シグマ)とプロテアーゼ阻害剤(ロシュダイアグノスティクス)を含有する氷冷した細胞抽出緩衝液(インビトロゲン、カタログ番号FNN0011)にて処理する。15秒間、高に設定されたモーター付きの組織ホモゲナイザー(Powergen700)を用いて、氷冷15mLポリプロピレン円錐管にて1.5〜2.0mLの溶解緩衝液中で腫瘍を処理する。試料を氷上の保持しながら、25ゲージの針を付けた1mLの注射筒を介して溶解物を4回引き出す。次に、0.15mLの4×ラムリ試料緩衝液(240mMのトリス−HCl、pH6.8、40%のグリセロール、0.05%のブロモフェノールブルー、8%w/vのSDS及び20%(v/v)のβ−メルカプトエタノール)を含有する1.5mLのポリプロピレン微量遠心管に0.35mLの腫瘍溶解物を移す。次いで、試料を混合し、95℃にて5分間加熱し、高出力Misonix3000プレートホルンソニケーターを用いて1分間超音波処理する。次いで、ウエスタンブロットによる標的阻害評価のために、試料を氷上で保存する、又は−80℃で保存する。残りの溶解物は、タンパク質濃度を決定する(BCA(商標)プロテインアッセイキット、サーモサイエンティフィック)のに用いる。試料緩衝液中の各腫瘍溶解物5μgをE−Page96ウエルゲル(インビトロゲン)に適用し、製造元の指示書に従って電気泳動に供する。当該技術でよく理解されている手順に従ってタンパク質をニトロセルロースProtranBA83膜(ワットマン)に移す[Towbinら,1979]。次いで膜を処理して、セリン296にて自己リン酸化されたChk1タンパク質を測定する。水、次いで10mMのトリス/HCl、pH8.0、150mMのNaCl及び0.05%(v/v)のツイーン20(TBST)で手短に膜をすすぎ、TBST/5%(v/v)の再構成されたCarnation(登録商標)即席ミルク中にて25℃で1時間浸す。次いでTBSTにて5分間、膜を4回洗浄する。次いで適当な希釈のウサギ抗ホスフォChk1(セリン296)(セルシグナリング)を伴ったTBST/5%(v/v)BSAにて4℃で16時間、膜を浸す。次に25℃にてTBSTで5分間、膜を4回洗浄し、次いで、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP;アマシャム)を結合したロバ抗ウサギIgGの適当な希釈物を含有するTBST/5%ミルクにて25℃で2時間、膜を浸し、ホスフォChk1(ser296)を検出する。25℃にてTBSTで5分間、膜を4回、再び洗浄する。製造元によって推奨されるように、Super Signal Western Femoto HRP−検出試薬(ピアース)によって、膜に固定化された抗原−抗体−リポーター抱合体が検出される。
【0045】
FUJI LAS−4000画像化システムを用いてシグナルを検出し、捕捉する。「Total Lab」ソフトウエア(ノンリニアダイナミックス)を用いてホスフォ−Chk1(ser296)バンドの強度を算出する。ゲムシタビンが誘導したChk1の自己リン酸化のパーセント阻害は、以下の式;%阻害=(試料のホスフォChk1バンドの強度−平均ゲムシタビン(Max)陽性対照のホスフォChk1バンドの強度)/(平均陰性対照(Min)のホスフォChk1バンドの強度−平均ゲムシタビン(Max)陽性対照のホスフォChk1バンドの強度)×100を用いて算出する。
【0046】
このアッセイでは、実施例2の化合物は、Chk1の自己リン酸化について0.03mg/kgの標的調節有効用量50(TMED50)を有することが測定される。
【0047】
ヒト腫瘍の異種移植モデル
Calu−6肺腫瘍及びHT29結腸腫瘍の異種移植有効性モデルを用いて、腫瘍の殺傷を達成するChk1阻害剤の能力を生体内で測定することができる。Calu−6肺癌細胞(ATCC)は、増殖培地(10%(v/v)熱非働化FBS(ギブコ(商標))、1×MEM非必須アミノ酸(ギブコ(商標))、1×ピルビン酸ナトリウム(ギブコ(商標))によって補完した、L−グルタミン(ギブコ(商標))を伴い、Earle’s塩(インビトロゲン)を伴ったMEM)で培養し、HT29結腸癌細胞(ATCC)は、増殖培地(10%FBS(ギブコ(商標))を補完したMcCoyの5A培地(ギブコ(商標))で培養し、増殖させる。細胞を回収し、リン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、増殖培地(血清なし)中の5×10個の細胞(HT−29)又は1×10個の細胞(Calu−6)を等量のBDMatrigel(商標)マトリクス(BDバイオサイエンス、ニュージャージー州、フランクリン)と混合し、次いでヌードマウス(マサチューセッツ州、ウィルミントンのチャールズリバーラボからのCD−1nu/nu)の横腹に皮下注射する。移植(150〜200mm)のおよそ16日後、ゲムシタビンを生理食塩水中で新鮮に調製し、腹腔内の経路にて60mg/kg用量で動物に毎日投与する。24時間後、モル比にてメタンスルホン酸/20%Captisol(カンザス州、オーバーランドパークのCYDEX)で調製された実施例2の化合物を静脈内経路にて動物に投与する。1日休んだ後、投与をさらに3サイクル(Chk1阻害剤の相殺によりQ3D×4+24時間)繰り返す。各投与群は9匹の動物から成る。治療の経過中、週に2回行う腫瘍体積の測定によって腫瘍の応答を判定する。腫瘍増殖の阻害(TGI)は、ビヒクル処理の対照群の平均腫瘍サイズからの化合物処理群の平均腫瘍サイズの%減少として算出される。単独で投与された及びゲムシタビンとの併用での実施例2の化合物は、HT−29及びCalu−6の腫瘍異種移植モデルの双方にて優れた用量依存性の抗腫瘍活性を示し、ゲムシタビン単独よりも6倍まで高い腫瘍増殖阻害を示す。
【0048】
単一剤の有効性投与
Calu−6肺異種移植有効性モデルを用いて、腫瘍の殺傷を達成するChk1阻害剤の能力を生体内で判定することができる。Calu−6肺癌細胞(ATCC)は上述のように培養する。細胞を回収し、リン酸緩衝生理食塩水で2回洗浄し、増殖培地(血清なし)中の1×10個の細胞(Calu−6)を等量のBDMatrigel(商標)マトリクス(BDバイオサイエンス、ニュージャージー州、フランクリン)と混合し、次いでヌードマウス(マサチューセッツ州、ウィルミントンのチャールズリバーラボからのCD−1nu/nu)の横腹に皮下注射する。移植(150〜200mm)のおよそ16日後、実施例2の化合物を15mg/kg(皮下に(SC)1日2回(BID×5で2日休み)にて3サイクル投与する。治療の経過中、週に2回行う腫瘍体積の測定によって腫瘍の応答を判定する。5日間のBIDスケジュール(15mg/kg)で投与された実施例2の化合物は、前述のゲムシタビンに加えた実施例2の化合物の併用スケジュールよりも優れた増殖阻害を提供する。完全な腫瘍の退行は迅速であり、永続的である。
【0049】
単層の増殖及び細胞傷害性のアッセイ
Chk1阻害剤の効能の手段の1つは、制御されない複製開始点の活性化による培養における癌細胞の増殖を阻害する能力である(Contiら,Cell Cycle 6:2760−2767,2007)。幅広い範囲の腫瘍種に由来する細胞株におけるChk1阻害剤の抗増殖活性の判定は、どの腫瘍種がChk1阻害剤による化学療法に臨床的に反応性であってもよいかを示している。以下に記載される細胞増殖アッセイはドイツ、Oncotest社で行われている。30の固形腫瘍細胞株は、13の異なった腫瘍の組織種に由来し、それぞれ1〜6の異なった細胞株によって表される(Oncotest社)。それらは、膀胱癌、脳腫瘍、結腸癌、胃癌、肝臓癌、肺癌、乳癌、卵巣癌、膵臓癌、腎臓癌及び子宮体癌、並びに黒色腫及び胸膜中皮種から樹立されている。細胞株はすべて、患者に由来する腫瘍異種移植からOncotestにて樹立されている(Rothら,1999)。供与者異種移植の起源はFiebigらによって記載されている(Fiebergら,1992および1999)。細胞株は慣例的に週1回又は2回継代し、20継代まで培養で維持される。細胞はすべて、10%(v/v)のウシ胎児血清(ドイツ、PAA、Colbe)と0.1mg/mLのゲンタマイシン(ドイツ、PAA、Colbe)で補完したRPMI1640培地(ドイツ、PAA、Colbe)にて5%COを伴った湿った雰囲気中37℃で増殖させる。改変されたヨウ化プロピジウムアッセイを用いてこれらの細胞株に対する化合物の細胞傷害性活性を評価する。手短には、トリプシン処理によって指数相培養から付着性細胞を回収し、計数し、細胞株に依存する細胞密度(4,000〜20,000細胞/ウエル)にて96穴平底マイクロタイタープレートに入れる。細胞が付着し、指数増殖を再開するのを可能にする24時間の回復期間の後、10μLの培養培地(6つの対照ウエル/プレート)又は実施例2の化合物を含有する培養培地を加える。DMSOにて1mMの濃度で実施例2の化合物のストック溶液を調製する。以下のように完全RPMI1640培養培地によってその後の希釈を行う:DMSOストック溶液を先ず1:22に希釈する(4.5%(v/v)のDMSOを含有する)。この溶液を用いて、細胞培養培地における連続希釈(1/2対数又は2倍)を作製する。最終の希釈工程(1:15)については、ウエル当たり10μLの各最終化合物溶液をウエル当たり140μLの培養培地に直接加える。最終的なDMSOの濃度は≦0.3%(v/v)である。実施例2の化合物を10ポイント濃度曲線での3つ組に適用し、処理を4日間継続する。4日間の処理の後、培養培地を取り除き、7μg/mLのPI水溶液200μLによって置き換える。生細胞の数を測定するには、凍結によって細胞に透過処理を行い、化合物による処理後、ウエルに付着したままだった細胞すべての死を生じる。最終的に、Cytofluor4000マイクロプレートリーダー(励起λ=530nm、放射λ=620nm)を用いてPIの蛍光を測定して全生細胞の数を決定する。増殖阻害は、試験/対照×100(%T/C)の値として表現される。T/C値に基づいて、反応(%T/C)に対する非線形回帰(log[阻害剤の濃度])を用いて相対的IC50値を決定する。実施例2の化合物は、20nMを下回るEC50にてこれら腫瘍細胞株の大半の増殖を阻害するということは、単剤として広い抗癌活性の可能性を示唆している。
【0050】
以下の調製及び実施例を提供して本発明をさらに詳細に説明し、化合物、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物の典型的な合成を表す。本発明の化合物の名称は、特に指示される場合を除いて一般に、ChemDraw Ultra(登録商標)10.0又は11.0によって提供される。
【0051】
経路A
調製1
5−イソチオシアナトピラジン−2−カルボニトリル
【化2】

チオホスゲン(1.86g、15ミリモル)のTHF(4mL)溶液を室温にて、5−アミノピラジン−2−カルボニトリル(1.20g、10ミリモル)とピリジン(2mL)のCHCl(200mL)とTHF(25mL)の溶液に一滴ずつ加える。反応混合物を室温にて3時間撹拌する。混合物を濃縮し、粗生成物を酢酸エチルで希釈し、濾過し、濃縮して標題の化合物を得る。
【0052】
調製2
(tert−ブチル3−(2−アセチル−3−メトキシフェノキシ)プロピルカルバメート
【化3】

室温にてtert−ブチル3−ヒドロキシプロピルカルバメート(2.45g、14.0ミリモル)と、1−(2−ヒドロキシ−6−メトキシフェニル)エタノン(1.94g、11.7ミリモル)と、トリフェニルホスフィン(3.66g、14.0ミリモル)の撹拌したTHF(50mL)溶液に、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(2.82g、14.0ミリモル)を加える。18時間撹拌した後、減圧下で溶媒を取り除き、粗生成物をクロマト分画し(ヘキサン−酢酸エチル:0〜60%の勾配)、1.60gの標題の化合物を得る。
【0053】
実施例1
5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルギ酸塩
【化4】

tert−ブチル3−(2−アセチル−3−メトキシフェノキシ)プロピルカルバメート(1.08g、3.17ミリモル)の撹拌された無水THF(25mL)溶液に、室温にてTHF(7.6mL、7.6ミリモル)中のリチウムヘキサメチルジシラザン1M溶液をゆっくり加える。10分間撹拌した後、THF(4mL)中の5−イソチオシアナトピラジン−2−カルボニトリル(0.510g、3.17ミリモル)を加え、撹拌を30分間継続する。反応混合物を濃縮し、エタノール(50mL)と酢酸(5mL)に再溶解し、その後、ヒドラジン水和物(2mL)を加える。次いで得られた反応混合物を120℃にて2分間加熱した。次いで反応混合物を室温に冷却し、水(100mL)で希釈し、酢酸エチル(100mLで2回)で抽出する。有機部分を無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗生成物をジクロロメタン(50mL)に再溶解し、トリフルオロ酢酸(10mL)で処理し、室温で15分間撹拌する。溶媒を取り除き、分取HPLCを用いて粗生成物(1.20g)を精製して0.046gの標題の化合物を得る。LC−ES/MS m/z 366.1[M+H]
【0054】
経路B
調製3
1−[2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル]エタノン
【化5】

THF中の1−(2−ヒドロキシ−6−メトキシフェニル)エタノン(30g、180.5ミリモル)と、炭酸カリウム(49.9g、361ミリモル)と、ヨウ化ナトリウム(2.68g、18.1ミリモル)と4−メトキシベンジルクロリド(27.0mL、198.6ミリモル)をフラスコに充填し、混合物を一晩加熱還流する。混合物を室温に冷却し、水で希釈し、酢酸エチルで抽出する。合わせた有機抽出物をブラインで洗浄し、無水MgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。酢酸エチル/ヘキサンの溶離液によるシリカゲルクロマトグラフィによって粗生成物を精製し、白色固形物として32.51g(57%)の所望の生成物を得る。
【0055】
調製4
1−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3,3−ビス(メチルチオ)プロパ−2−エン−1−オン
【化6】

500mLの丸底フラスコに95%NaH(7.28g、288ミリモル)を充填し、無水DMSO(170mL)を加える。得られた不均質な混合物に、無水DMSO(60mL)中の1−[2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル]エタノン(41.2g、144ミリモル)を一滴ずつ加える。混合物を室温で10分間撹拌し、その時点で、二硫化炭素(8.69mL、144ミリモル)を一滴ずつ加え、その後直ちにヨウ化メチル(18.0mL、2.88ミリモル)を加える。慎重な添加を促す双方の試薬の添加の間、熱と気体が発生する。均質な溶液を室温にて18時間撹拌し、次いで3倍容量の水にゆっくり注ぐ。固形生成物を濾別し、高真空下で乾燥させ、橙色の固形物として標題の化合物を得る。
【0056】
調製5
5−ブロモ−N−(5−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)ピラジン−2−アミン
【化7】

5−ブロモピラジン−2−アミン(3.73g、21.4ミリモル)をTHF(30mL)に溶解し、−78℃に冷却する。n−ブチルリチウムのヘキサン(10.32mL、23.5ミリモル)溶液をゆっくり加える。低温にて反応混合物を15分間撹拌し、次いで室温にゆっくり温め、さらに1時間撹拌する。混合物を0℃に再冷却し、1−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3,3−ビス(メチルチオ)プロパ−2−エン−1−オン(8.39g、21.4ミリモル)のTHF(50mL)溶液を、カニューレを介して加える。溶液は均質になり、室温にて溶液を15分間撹拌したのち、10時間加熱還流する。次いで溶液を室温に冷却し、減圧下で溶媒を取り除く。固形残留物をEtOH(150mL)に溶解し、氷酢酸(1.3mL、23.5ミリモル)を加える。ヒドラジン水和物(5.25mL、107ミリモル)を加え、溶液をさらに8時間還流する。混合物を室温に冷却し、真空下で濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィ(CHCl/MeOH)によって生成物を精製して5.76g(74%)の茶色の固形物を得る。
【0057】
調製6
2−(3−(5−ブロモピラジン−2−イルアミノ)−1H−ピラゾール−5−イル)−3−メトキシフェノール
【化8】

5−ブロモ−N−(5−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−1H−ピラゾール−3−イル)ピラジン−2−アミン(3.1g、6.43ミリモル)をMeOH(100mL)に溶解する。反応混合物を介してHClガスを20分間混入する。混合物を2時間撹拌し、減圧下で溶媒を取り除く。残留物を3:1のクロロホルム/イソプロパノール(100mL)に再溶解し、飽和NaHCO溶液(100mL)と混ぜ合わせる。層を分離し、酢酸エチルで水性層を抽出する(50mLで3回)。合わせた有機層を濃縮し、メタノールで粉砕して1.5g(64%)の茶色固形物を得る。
【0058】
調製7
tert−ブチル3−(2−(3−(5−ブロモピラジン−2−イルアミノ)−1H−ピラゾール−5−イル)−3−メトキシフェノキシ)プロピルカルバメート
【化9】

tert−ブチル3−ヒドロキシプロピルカルバメート(0.83mL、4.83ミリモル)と、2−(3−(5−ブロモピラジン−2−イルアミノ)−1H−ピラゾール−5−イル)−3−メトキシフェノール)(1.59g、4.38ミリモル)と、ポリスチレントリフェニルホスフィン(5.91g、8.76ミリモル)の撹拌されたTHF(50mL)溶液に、室温にてジイソプロピルアゾジカルボキシレート(1.73mL、8.76ミリモル)を加える。45分間撹拌した後、反応物を濾過し、減圧下で溶媒を取り除く。得られた残留物をクロマト分画し(メタノール/CHCl)、1.27g(54%)の黄色固形物を得る。
【0059】
調製8
tert−ブチル3−(2−(3−(5−シアノピラジン−2−イルアミノ)−1H−ピラゾール−5−イル)−3−メトキシフェノキシ)プロピルカルバメート
【化10】

tert−ブチル3−(2−(3−(5−ブロモピラジン−2−イルアミノ)−1H−ピラゾール−5−イル)−3−メトキシフェノキシ)プロピルカルバメート(0.378g、0.730ミリモル)とシアン化亜鉛(0.10g、0.870ミリモル)のDMF(10mL)溶液を、窒素気流で1時間脱気し、次いで80℃に加熱する。Pd(PhP)(0.080g、0.070ミリモル)を反応に加え、混合物を一晩加熱する。反応物を室温に冷却し、減圧下で濃縮する。シリカゲルクロマトグラフィ(CHCl/MeOH)によって残留物を精製して0.251g(73%)の標題の化合物を得る。
【0060】
経路C
調製9
(E)−5−(3−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−1−(メチルチオ)−3−オキソプロパ−1−エニルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル
【化11】

空気撹拌器の棒及び羽根と、温度計と、水凝縮器と、窒素気泡器を備えた5リットルのフランジ付きフラスコに、水素化ナトリウム(22.4g、560.1ミリモル)と無水THF(3L)を充填する。よく撹拌した混合物に、2−アミノ−5−シアノピラジン(67.0g、557.8ミリモル)を1.5時間かけて少しずつ加えるが、泡立ちを可能にする。内部の温度は全体にわたって22℃のままである。混合物を35分間撹拌する。次いで、22℃にて1時間かけて1−(2−メトキシ−6−(4−メトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル)−3,3−ビス−メチルスルファニル−プロペノン(146.0g、373.9ミリモル)を加える。室温にて黄色の懸濁液を45分間撹拌し、次いで反応物が穏やかに還流されるまで加熱を適用する。65℃にて19時間後、反応混合物を15℃に冷却する。次いで、混合物を半分ずつ2つに分け、各ロットを水(2L)に入れて反応を止め、酢酸エチルで抽出する(1Lで2回)。有機抽出物を合わせ、ブラインで洗浄し、無水NaSO上で乾燥させ、濾過し、40℃にて減圧下で濃縮して196gの黄色/橙色の固形物を得るが、さらに精製することなく次の工程でそれを使用する。LC−ES/MS m/z 463.2[M+H]
【0061】
調製10
5−(5−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル
【化12】

空気撹拌器の棒及び羽根と、温度計と、水凝縮器と、窒素気泡器を備えた10リットルのフランジ付きフラスコに、(E)−5−(3−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−1−(メチルチオ)−3−オキソプロパ−1−エニルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル(196g、423.8ミリモル)と無水エタノール(3L)を充填する。窒素のもとで撹拌した懸濁液に、ヒドラジン水和物(41.0mL、838.7ミリモル)と氷酢酸(66.0mL、1.15モル)を加える。小さな発熱に留意する。黄色の懸濁液を65℃まで温める。次いで加熱を止め、反応混合物を室温に冷却する。窒素雰囲気下で一晩混合物を放置する。濾過によって固形物を回収し、新鮮なエタノールで洗浄し、45℃にて真空下で乾燥させ、140g(2工程について87%の収率)の鮮黄色の固形物を得る。さらに精製することなく生成物を次の工程で使用する。LC−ES/MS m/z 429.2[M+H]
【0062】
調製11
5−(5−(2−ヒドロキシ−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル
【化13】

空気撹拌器の棒及び羽根と、温度計と、水凝縮器と、苛性溶液ガスの洗浄器への出口を備えた10Lのフランジ付きフラスコに、5−(5−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル(140g、326.76ミリモル)と、1,4−ジオキサン中の4Nの塩化水素(2500mL、10.0モル)溶液を充填する。混合物を60〜65℃にて1.5時間よく撹拌し、次いで混合物を50℃に冷却する。合計4時間後、1,4−ジオキサン中の4Nの塩化水素をさらに加え(1000mL)、65℃への加熱を再開する。この温度にて1時間後、加熱を止め、一晩撹拌しながら、混合物を室温に冷却する。大きな焼結漏斗を介して混合物を濾過する。回収した固形物を新鮮な1,4−ジオキサンで洗浄し、次いで手短に吸引乾燥させる。嵩高な濾過ケーキを10Lのフラスコに戻し、水(2L)と酢酸エチル(3.5L)と共に激しく撹拌する。次いで濃アンモニア(440mL)を加えることによって混合物をアルカリ性にする。溶液を濾過し、次いで5Lの分液漏斗に移す。水性層を分離し、酢酸エチルで再び抽出する(0.5L)。合わせた有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。固形物を45℃にて真空下乾燥させ、101.3gを得る。温めた無水テトラヒドロフラン(2.2L)に粗生成物を懸濁し、イソ−ヘキサンを用いて詰めたシリカ(1kg)湿潤物のパッドに負荷する。酢酸エチルによって生成物を溶出する。合わせた分画を部分的に濃縮し、得られた沈殿物を濾過によって回収し、40℃にて一晩真空下で乾燥させて60.9gを得る。LC−ES/MS m/z 309.2[M+1]
【0063】
調製12
tert−ブチル3−(2−(3−(5−シアノピラジン−2−イルアミノ)−1H−ピラゾール−5−イル)−3−メトキシフェノキシ)プロピルカルバメート
【化14】

空気撹拌器の棒及び羽根と、温度計と、圧力均等化滴下漏斗と窒素気泡器を備えた5Lのフランジ付き丸底フラスコに、5−(5−(2−ヒドロキシ−6−メトキシ−フェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)−ピラジン−2−カルボニトリル(47.0g、152ミリモル)と無水THF(1.2L)を充填する。窒素のもとで撹拌した懸濁液を0℃に冷却する。大きな磁気撹拌器棒と、温度計と、窒素気泡器を備えた別の2Lの3つ口丸底フラスコに、トリフェニルホスフィン(44.0g、168ミリモル)と無水THF(600mL)を充填する。窒素のもとで撹拌した溶液を0℃に冷却し、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(34.2g、169ミリモル)を加え、乳状の溶液が形成される。3〜4分後、t−ブチル−N−(3−ヒドロキシプロピル)−カルバメート(30.3g、173ミリモル)の無水THF(100mL)溶液を加え、混合物を3〜4分間撹拌する。次いでこの混合物を0℃にて出発物質の撹拌した懸濁液に5分間かけて加える。反応混合物は迅速に黒っぽい溶液になり、それをゆっくりと室温に温める。6.5時間後、無水THF(150mL)中のPPh(8g)と、DIAD(6.2g)とカルバメート(5.4g)を用いて上記のようにさらなる試薬を調製する。混合物を反応混合物に加え、−5℃に冷却し、一晩かけて室温に温める。真空下で溶媒を取り除く。得られた粘性の溶液をシリカのパッドに負荷し、酢酸エチルで生成物を溶出する。濃縮された分画をメタノールで別々に粉砕し、得られた固形物を濾過により回収する。合わせた固形物をメタノール(400mL)で再び粉砕し、次いで濾過によって単離し、50℃にて一晩真空下で乾燥させて31.3gの所望の生成物を得る。LC−ES/MS m/z 466.2[M+1]
【0064】
実施例2
5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル塩化二水素塩
【化15】

空気撹拌器の棒及び羽根と、温度計と、気泡器付きの空気冷却器を備えた5Lのフランジ付きの丸底フラスコに、tert−ブチル3−(2−(3−(5−シアノピラジン−2−イルアミノ)−1H−ピラゾール−5−イル)−3−メトキシフェノキシ)プロピルカルバメート(30.9g、66.3ミリモル)と酢酸エチル(3L)を充填する。機械的に撹拌した黄色の懸濁液を10℃直下に冷却する。次いで、そのまま定位置にある氷槽と一体化した気体流入管を介して、レクチャーボトルからの塩化水素を15分間激しく泡立てる。5時間後、混合物は外見上顕著に濃厚化する。濾過によって固形物を回収し、酢酸エチルで洗浄し、次いで60℃にて一晩、真空下で乾燥させて、30.0gを得る。H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ2.05(m,2H),2.96(m,2H),3.81(s,3H),4.12(t,J=5.8Hz,2H),6.08(br s,3H),6.777(d,J=8.2Hz,1H),6.782(d,J=8.2Hz,1H),6.88(br s,1H),7.34(t,J=8.2Hz,1H),8.09(br s,1H),8.55(br s,1H),8.71(s,1H),10.83(s,1H),12.43(br s,1H)。LC−ES/MS m/z 366.2[M+1]
【0065】
実施例3
5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル
【化16】

5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル塩化二水素塩(3.0g、6.84ミリモル)を200mLのCHClに懸濁する。1NのNaOHを加える(200mL、200ミリモル)。室温にて5時間、窒素のもとで混合物を磁気的に撹拌する。濾過によって固形物を回収し、水で十分に洗浄する。50℃にて一晩、真空下で濾過ケーキを乾燥させ、黄色の固形物として2.26g(90%)の遊離の塩基を得る。H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ1.81(m,2H),2.73(t,J=6.2Hz,2H),3.82(s,3H),4.09(t,J=6.2Hz,2H),6.76(t,J=8.2Hz,2H),6.93(br s,1H),7.31(t,J=8.2Hz,1H),8.52(br s,1H),8.67(s,1H)。LC−MS/ES m/z 366.2[M+1]
【0066】
実施例4
5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルメタンスルホン酸塩
【化17】

5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル(1.0g、2.74ミリモル)をMeOH(100mL)に懸濁する。撹拌しながら、メタンスルホン酸の1M、MeOH溶液(2.74mL、2.74ミリモル)を一滴ずつ混合物に加える。固形物をほぼ完全に溶解し、超音波処理し、15分間撹拌し、濾過して50mLに濃縮する。溶液を一晩−15℃に冷却し、形成される固形物を濾過によって回収する。固形物を一晩、真空オーブンで乾燥させ、0.938g(74%)の黄色固形物を得る。H−NMR(400MHz,DMSO−d6)δ1.97(m,2H),2.28(s,3H),2.95(m,2H),3.79(s,3H),4.09(t,J=5.9Hz,2H),6.753(d,J=8.4Hz,1H),6.766(d,J=8.4Hz,1H),6.85(br s,1H),7.33 (t,J=8.4Hz,1H),7.67(br s,3H),8.49(br s,1H),8.64(s,1H),10.70(s,1H),12.31(s,1H)。LC−ES/MS m/z 366.2[M+1]
【0067】
経路D
調製13
1−[2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル]エタノン
【化18】

1−(2−ヒドロキシ−6−メトキシフェニル)エタノン(1300g、7.82モル)とジメチルホルムアミド(10.4L)を22Lのフラスコに加え、撹拌して溶液を得る。炭酸カリウム(2700g、19.54モル)を少しずつ加え、次いで少なくとも30分間撹拌する。添加漏斗を用いて、塩化4−メトキシベンジル(14700g、9.39モル)を2.5時間かけて一滴ずつ混合物に加える一方で温度を30℃未満に維持する。反応混合物を35℃に温め、その温度を12時間保持する。反応の変換をHPLCによってモニターし、35℃にて13時間後、完全であると判断する。スラリーを濾過し、得られた固形物をジメチルホルムアミド(1L)で洗浄する。酢酸エチルと水による濾液の抽出後処理の後、濃縮によって蝋状の黄色固形物を得る。蝋状の黄色固形物に、メチルt−ブチルエーテル(2.6L)を加える。得られたスラリーを撹拌する。今や自由に流れるスラリーを濾過し、メチルt−ブチルエーテル(1L)で洗浄する。白色の固形物を真空乾燥させて1539グラム(69%)の標題の化合物を得る。mp105〜107℃。
【0068】
調製14
1−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3,3−ビス(メチルチオ)プロパ−2−エン−1−オン
【化19】

リチウムtert−ブトキシド(602.4g、7.52モル)の無水DMSO(11.0L)混合物に窒素雰囲気下で1−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)エタノン(1000.0g、3.49モル)を加える。得られた混合物を30分間撹拌し、1〜1.5時間かけてCS(259mL、4.296モル)をゆっくり加える一方で内部温度を30℃より低く維持する。常温にて少なくとも1時間撹拌した後、ヨードメタン(1000g、7.045モル)をゆっくり加える一方で内部温度を30℃より低く維持する。得られた混合物を常温にて30分〜1時間撹拌する。反応の完了をHPLCによって確認する。得られた反応混合物を冷却し、その後、水と酢酸エチルによる抽出後処理を行う。得られた有機部分を濃縮してスラリーを提供し、それを濾過し、酢酸エチル(1L)、その後メチルt−ブチルエーテル(1Lで2回)で洗浄する。単離された固形物を真空オーブンで40℃にて乾燥させて1057g(77%)の標題の化合物を得る。mp93〜94℃;ES/MS m/z 391.2[M+1]
【0069】
調製15
(E)−5−(3−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−1−(メチルチオ)−3−オキソプロパ−1−エニルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル
【化20】

乾燥した不活性の22Lフラスコに、水素化ナトリウム(159.2g、3.98モル)とテトラヒドロフラン(10.4L)を加える。混合物を5〜15℃に冷却する。5−イソシアノピラジン−2−アミン(382.2g、3.18モル)を30分間かけて4回に分けて加え、水素の放出を制御し、添加と10℃での温度の維持の間で発泡が弱まるようにする。混合物を15〜90分間撹拌する一方で温度を15℃に上げる。反応混合物に、1−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−3,3−ビス(メチルチオ)プロパ−2−エン−1−オン(1036g、2.65モル)を少しずつ充填して発泡を制御する。得られたスラリーを15分間撹拌する。混合物を66℃での穏やかな還流に加熱する。反応の変換をHPLCでモニターする。反応混合物の反応を冷水(14.2L)で止め、その後、酢酸エチルで抽出後処理を行う。有機部分を濃縮してスラリーを形成し、それを濾過して957g(78%)の標題の化合物を得る。mp128〜135℃;ES/MS m/z 463.2[M+1]
【0070】
調製16
5−(5−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル
【化21】

20Lの容器にて、エタノール(11.28L)と酢酸(318mL、5.545モル)を混ぜ合わせる。窒素のパージと共に反応物をブリーチスクラバーに放出する。22Lの反応フラスコに、(E)−5−(3−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−1−(メチルチオ)−3−オキソプロパ−1−エニルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル(940g、1.931モル)とエタノール/酢酸溶液を加える。得られた茶色のスラリーにヒドラジン一水和物(197g、3.935モル)を加え、軽い発熱を生じる。得られた黄色のスラリーを65〜70℃にゆっくり加熱し、HPLCによってモニターする。反応の持続時間は1時間未満である。濃厚なスラリーを1〜2時間かけて30℃未満にゆっくり冷却する。スラリーを濾過し、冷エタノールで洗浄する。40℃にて物質を真空乾燥して(820g、99.1%)の標題の化合物を得る。mp215〜117℃;ES/MS m/z 429.2[M+1]
【0071】
調製17
5−(5−(2−ヒドロキシ−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル塩化二水素塩
【化22】

以下の操作はすべて苛性スクラバーシステムに排出させてHClの気体発生を制御する。60Lのガラス製反応器に、5−(5−(2−メトキシ−6−(4−メトキシベンジルオキシ)フェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル(1.24kg、2.89モル)とジオキサン(26.06kg、99.28モル)中4NのHClを充填する。スラリーをゆっくり60〜70℃に加熱する。HPLCによって反応をモニターする。9時間後、反応が完全であると判定する。茶色のスラリーを20℃に冷却し、一晩保持する。酸性の反応混合物を濾過し、ケーキを酢酸エチル(7L)で洗浄する。湿ったケーキを一定の重量に真空乾燥し、(1010g、補正収率91.84%)の標題の化合物を得る。mp225〜228℃(遊離の塩基);ES/MS m/z 309.2[M+1]
【0072】
調製18
tert−ブチル3−(2−(3−(5−シアノピラジン−2−イルアミノ)−1H−ピラゾール−5−イル)−3−メトキシフェノキシ)プロピルカルバメート
【化23】

5−(5−(2−ヒドロキシ−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル(618g、1.62モル)をテトラヒドロフラン(6.18L、10容量)にてスラリーにし、アセトン/氷槽で−5〜0℃に冷やす。−5〜5℃にて30〜40分間かけて添加漏斗を介してトリエチルアミン(330g、3.25モル)を加える。得られたスラリーを−5〜5℃にて60〜90分間撹拌する。不溶性の塩酸トリエチルアミンを濾過し、適当な反応容器にフェノール((5−(2−ヒドロキシ−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル)の溶液を回収する。ケーキをTHF(1.24L)ですすぐ。必要とされるまで、15〜20℃にてフェノールのTHF溶液を保持する。
【0073】
室温にてトリフェニルホスフィン(1074g、4.05モル)をTHF(4.33L)に溶解する。透明な無色の溶液をアセトン/氷槽で−5〜5℃に冷却する。温度を10℃未満に保持して、40〜60分間かけて添加漏斗を介してジイソプロピルアゾジカルボキシレート(795g、3.89モル)を一滴ずつ加える。得られた濃厚な白色スラリーを−5〜0℃に冷やし戻す。tert−ブチル3−ヒドロキシプロピルカルバメート(717g、4.05モル)を最小量のTHF(800mL)に溶解する。tert−ブチル3−ヒドロキシプロピルカルバメート/THF溶液を−5〜5℃にて20〜30分間かけて添加漏斗を介して試薬スラリーに添加する。調製した試薬を使える状態になるまで−5〜0℃にて氷槽で撹拌する。
【0074】
調製した試薬スラリー(20%)を15〜20℃にて基質溶液に加える。残りの試薬は氷槽に戻す。常温にて基質溶液を30分間撹拌し、次いでHPLC用に試料採取する。試薬の第2のおよそ20%部分を基質に加え、常温で撹拌し、前のように試料採取する。HPLCによって反応の完了をモニターしながら、試薬の添加を継続する。完了した反応物を濃縮し、温めたメタノール(4.33L、50〜60℃)によって粉砕し、その後氷槽で冷却する。得られた黄色の沈殿物を濾過し、冷MeOH(2L)ですすぎ、一定の重量まで乾燥させて544g(72%)の標題の化合物を得る。mp214〜216℃;ES/MS m/z 466.2[M+1]
【0075】
実施例5
2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]モノメシレート一水和物(化学物質情報命名法)
【化24】

30Lの反応器でのアセトン(21.5L)と共に、tert−ブチル3−(2−(3−(5−シアノピラジン−2−イルアミノ)−1H−ピラゾール−5−イル)−3−メトキシフェノキシ)プロピルカルバメート(1430g、3.07モル)をスラリーにする。中程度の流れで添加漏斗を介してメタンスルホン酸(1484g、15.36モル)を加える。約52℃の還流に1〜3時間スラリーを温め、HPLC解析によって反応の完了についてモニターする。完了した反応物を4.5時間かけて還流から15〜20℃に冷却する。2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]ジメシレート塩の黄色スラリーを濾過し、アセトン(7L)ですすぎ、真空オーブンで乾燥させる。
【0076】
ジメシレート塩(1608g、2.88モル)を水(16L)でスラリーにする。水酸化ナトリウム(50%水溶液、228g、2.85モル)をゆっくりスラリーに注ぐ。スラリーを60℃に加熱し、1時間撹拌する。次いでそれを4時間かけて16℃に冷却し、濾過する。湿った濾過ケーキをアセトン(4L)ですすぎ、40℃での真空オーブンにて一定重量まで乾燥させ、833g(94%)の2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]モノメシレート一水和物を得る。mp222.6℃;ES/MS m/z 366.2[M+1]
【0077】
実施例5a
2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]モノメシレート一水和物(化学物質情報命名法)
以下の手順を用いて、粗精製の2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]モノメシレート一水和物を精製する。1:1のアセトン/水の溶媒混合物(14.7L)にて技術等級の2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]モノメシレート一水和物(1221g、2.55モル)をスラリーにする。混合物を50〜55℃に温めることによって固形物を溶解する。溶液を50〜55℃にて0.22μのカートリッジフィルターを介して艶出濾過する。溶液をゆっくりと約42〜45℃の播種温度に冷却し、播種する。緩慢な冷却をさらに30〜60分間継続し、核生成を確認する。薄いスラリーを3時間かけて38℃から15℃に冷却する。真空蒸留を設定し、110〜90mmで20〜30℃にてアセトンを取り除く。混合物を30℃から15℃に14時間かけて冷却し、15℃で2時間保持し、次いで濾過する。再結晶化した物質を19:1の水/アセトン(2L)、次いで水(6L)ですすぎ、40℃の真空オーブンにて一定の重量まで乾燥させて1024g(83.9%)の標題の化合物を得る。mp222.6℃;ES/MS m/z 366.2[M+1]
【0078】
位置感受性検出器を伴った、40kVと40mAで操作するCuKα源(λ=1.54056オングストローム)を備えたBrukerD8アドバンス粉末回折計にてX線粉末回折(XRPD)パターンを得ることができる。2θ±0.02における0.026°の刻み幅と、0.3秒の刻み時間を0.6mmの分岐スリットと10.39mmの検出スリットと共に用いて、°2θ±0.02における4°と35°の間で各試料を走査する。一次及び二次のソーラースリットはそれぞれ2°であり、分散防止スリットは6.17mmであり、分散シンクは定位置である。
特徴的なピーク位置と相対的な強度:
【表1】

【0079】
Mettler−Toledo DSC単位(Model DSC822e)にて示差走査熱量(DSC)解析を行うことができる。小さい穴を伴った密閉アルミニウム製皿で試料を、50mL/分の窒素パージと共に10℃/分にて25〜350℃に加熱する。Mettler Toledo TGA単位(Model TGA/SDTA 851e)にて熱重量分析(TGA)を行うことができる。小さい穴を伴った密閉アルミニウム製皿で試料を、50mL/分の窒素パージと共に10℃/分にて25〜350℃に加熱する。
【0080】
DSCの熱特性は、80〜140℃からの弱く、広い吸熱、その後222℃で開始する(225℃でピーク)の鋭い融解吸熱を示す。TGAによって25〜140℃で4%の質量損失が見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩若しくはその塩の溶媒和物である化合物。
【請求項2】
5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル、又は薬学的に許容可能なその塩である請求項1記載の化合物。
【請求項3】
5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルである請求項1記載の化合物。
【請求項4】
5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルギ酸塩である請求項1記載の化合物。
【請求項5】
5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリル塩化二水素塩である請求項1記載の化合物。
【請求項6】
5−(5−(2−(3−アミノプロポキシ)−6−メトキシフェニル)−1H−ピラゾール−3−イルアミノ)ピラジン−2−カルボニトリルメタンスルホン酸塩である請求項1記載の化合物。
【請求項7】
2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]モノメシレート一水和物である請求項1記載の化合物。
【請求項8】
2θ±0.02=12.64、21.25及び26.15にてピークを有するX線粉末回折パターンを特徴とする結晶形態での2−ピラジンカルボニトリル、5−[[5−[−[2−(3−アミノプロピル)−6−メトキシフェニル]−1H−ピラゾール−3−イル]アミノ]モノメシレート一水和物である請求項1記載の化合物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項の化合物又は塩を、薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて含む医薬組成物。
【請求項10】
有効量の、請求項1〜8のいずれか1項の化合物又は塩を、癌を治療することが必要な患者に投与することを含む癌を治療する方法。
【請求項11】
有効量の、請求項1〜8のいずれか1項の化合物又は塩とイオン化放射線を、癌を治療することが必要な患者に投与することを含む癌を治療する方法。
【請求項12】
有効量の、請求項1〜8のいずれか1項の化合物又は塩と化学療法剤を、癌を治療することが必要な患者に投与することを含む癌を治療する方法。
【請求項13】
前記化学療法剤が、5−フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、ゲムシタビン、メソトレキセート、ペメトレキセド、ドキソルビシン、エトポシド、シスプラチン及びタキソールから成る群から選択される請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記癌が、膀胱癌、結腸癌、胃癌、肝臓癌、肺癌、乳癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、中皮腫、腎臓癌及び子宮癌から成る群から選択される請求項10〜13のいずれか1項の方法。
【請求項15】
治療に使用するための請求項1〜8のいずれか1項の化合物又は塩。
【請求項16】
癌の治療に使用するための請求項1〜8のいずれか1項の化合物又は塩。
【請求項17】
癌の治療においてイオン化放射線と同時に、別々に又は順次組み合わせて使用するための請求項1〜8のいずれか1項の化合物又は塩。
【請求項18】
癌の治療において化学療法剤と同時に、別々に又は順次組み合わせて使用するための請求項1〜8のいずれか1項の化合物又は塩。
【請求項19】
前記化学療法剤が、5−フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、ゲムシタビン、メソトレキセート、ペメトレキセド、ドキソルビシン、エトポシド、シスプラチン及びタキソールから成る群から選択される請求項18に記載の使用のための化合物又は塩。
【請求項20】
前記癌が、膀胱癌、結腸癌、胃癌、肝臓癌、肺癌、乳癌、黒色腫、卵巣癌、膵臓癌、中皮腫、腎臓癌及び子宮癌から成る群から選択される請求項16〜19のいずれか1項に記載の使用のための化合物又は塩。

【公表番号】特表2012−512249(P2012−512249A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542264(P2011−542264)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際出願番号】PCT/US2009/067437
【国際公開番号】WO2010/077758
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(594197872)イーライ リリー アンド カンパニー (301)
【Fターム(参考)】